説明

ナビゲーション装置

【課題】正常動作を不能とすることで盗難を未然に防ぐとともに、正規ユーザだけが確実に正常動作に復帰させることができること。
【解決手段】予め、ユーザが指定した有効化経路をメモリ19に記憶する。制御回路2は、車載バッテリが接続されてから初めて起動された時または電源オンにより起動された時に、ユーザの使用に支障が生じるように所定の機能を無効化する。制御回路2は、車両が通過した経路を特定し、その車両の通過経路に有効化経路が含まれることとなった場合に無効化した機能を有効化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難防止機能を備えたナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両盗難や車上荒しが増加しており、特にカーナビゲーション装置の盗難が問題となっている。車両盗難に対しては、設定された走行経路から所定の範囲を越えたかどうかを監視し、所定の範囲を越えた場合に警告を発生し、警告を操作者が解除しない場合には異常警報を出力するとともに位置情報を含む盗難情報を情報センターまたは警備会社に通報する車両盗難防止装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、カーナビゲーション装置の盗難に対しては、エンジン停止時における位置を記憶し、次のエンジン始動時にその記憶した位置と現在位置との一致を判断し、不一致の場合にはパスワードの入力がない限りカーナビゲーション装置が通常通り動作しなくなる盗難防止技術が示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−112604号公報
【特許文献2】特開2001−184569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術は、車両自体の盗難には有効であるが、カーナビゲーション装置の盗難抑止には対応できない。また、特許文献2に記載された技術は、カーナビゲーション装置の盗難に有効であるが、カーナビゲーション装置が取り外された正規ユーザの車両とそのカーナビゲーション装置が新たに取り付けられた不正ユーザの車両とが接近していると、カーナビゲーション装置が通常通り動作してしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、所定の機能を無効化することで盗難を未然に防ぐとともに、無効化した機能を正規ユーザだけが確実に有効化することができるナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した手段によれば、事前に正規ユーザにより設定された有効化経路が記憶手段に記憶される。例えば、ナビゲーション装置を車両から取り外して他の車両に取り付けた場合、バッテリを接続した後初めて起動すると、機能制御手段は、ユーザの使用に支障が生じるように所定の機能を無効化する。バッテリの接続後初めての起動に替えてまたは当該起動に加えて、電源をオフからオンにして起動する毎に上記無効化を行う構成とすることもできる。
【0007】
通過経路特定手段は、位置検出手段により検出された位置に基づいて通過した経路を特定している。上記設定された有効化経路を通過すると、機能制御手段は、通過経路特定手段により特定された通過経路に有効化経路が含まれるようになるので、上記無効化した機能を有効化する。その結果、ナビゲーション装置は正常動作に復帰する。
【0008】
正規ユーザは、例えば通勤経路などの通り慣れた経路を有効化経路として設定すれば、パスワードなどとは異なり忘れにくく解除用の記録媒体も不要であるため(予備的には用いてもよい)、ナビゲーション装置を確実に正常動作状態に復帰させることができる。一方、不正ユーザは、ナビゲーション装置を盗んでも有効化経路を知らないので、ナビゲーション装置を正常に動作させることができない。従って、盗難に対する抑止効果が得られる。
【0009】
請求項2に記載した手段によれば、起動時から所定の猶予期間が経過するまでの間機能を無効化せず、猶予期間の経過時点で通過経路特定手段により特定された通過経路に記憶手段に記憶された有効化経路が含まれていない場合に所定の機能を無効化する。これにより、正規ユーザは、猶予期間内に有効化経路を通過すれば、起動時から継続してナビゲーション装置を正常動作させることができる。
【0010】
請求項3に記載した手段によれば、有効化経路を一旦通過すると、その後の所定期間、起動の有無に関わらずナビゲーション装置は正常動作する。従って、正規ユーザは、上記所定期間内であれば起動後に有効化経路を通過する必要がないので、起動時から自由な経路を通過して目的地に向かうことができる。
【0011】
請求項4に記載した手段によれば、位置検出手段により検出された位置が記憶手段に記憶された有効化経路上にある場合、ナビゲーション装置は正常動作する。従って、有効化経路を知っている正規ユーザは、その有効化経路上で目的地の検索、設定などを行うことができ、ナビゲーション装置を利用できない不都合な状態を極力低減することができる。
【0012】
請求項5に記載した手段によれば、事前に正規ユーザにより設定された有効化地点が記憶手段に記憶される。請求項1に記載した手段と同様に、バッテリを接続した後初めて起動すると、機能制御手段は所定の機能を無効化する。バッテリの接続後初めての起動に替えてまたは当該起動に加えて、電源をオフからオンにして起動する毎に上記無効化を行う構成としてもよい。通過経路特定手段は、予め設定された有効化地点に達すると、無効化した機能を有効化する。その結果、ナビゲーション装置は正常動作に復帰する。
【0013】
正規ユーザは、例えば通勤経路などの通り慣れた経路内の地点、行き付けの店舗などを有効化地点として設定すれば忘れにくく解除用の記録媒体も不要であるため(予備的には用いてもよい)、ナビゲーション装置を確実に正常動作状態に復帰させることができる。一方、不正ユーザは、ナビゲーション装置を盗んでも有効化地点を知らないので、ナビゲーション装置を正常に動作させることができない。従って、盗難に対する抑止効果が得られる。
【0014】
請求項6に記載した手段によれば、起動時から所定の猶予期間が経過するまでの間、機能を無効化せず、猶予期間内において位置検出手段により検出された位置と記憶手段に記憶された有効化地点とが一致しなかった場合に所定の機能を無効化する。これにより、正規ユーザは、猶予期間内に有効化地点を通過すれば、起動時から継続してナビゲーション装置を正常動作させることができる。
【0015】
請求項7に記載した手段によれば、有効化地点を一旦通過すると、その後の所定期間、起動の有無に関わらずナビゲーション装置は正常動作する。従って、正規ユーザは、上記所定期間内であれば起動後に有効化地点に達する必要がないので、起動時から自由な経路を通過して目的地に向かうことができる。
【0016】
請求項8に記載した手段によれば、有効化地点に所定時間以上継続して止まっている場合に、ナビゲーション装置は正常動作に復帰する。従って、不正ユーザが偶然に有効化地点を通過しただけで正常動作に復帰することを防止でき、より高いセキュリティをかけることができる。
【0017】
請求項9に記載した手段によれば、表示手段の表示機能を無効化(例えば画面を消去)してユーザの使用に支障を生じさせるので、不正ユーザはナビゲーション装置を全く利用することができず、盗難に対するより高い抑止効果が得られる。この場合、音声出力機能も併せて無効化するとよい。
【0018】
請求項10に記載した手段によれば、所定の機能を無効化している間、機能の無効化中である旨を報知するので、ユーザが故障と誤認識することを防止できる。
【0019】
請求項11に記載した手段によれば、近年特に問題となっているカーナビゲーション装置の盗難を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1ないし図3を参照しながら説明する。
図1は、カーナビゲーション装置の電気的構成を示すブロック図である。カーナビゲーション装置1は、マイコンを主体として構成された制御回路2、車両の現在位置を検出するための位置検出器3、地図データ入力器4、操作スイッチ群5、外部メモリ6、カラー液晶ディスプレイ等からなる表示装置7、スピーカ8が接続された音声コントローラ9、マイク10から入力された音声を認識する音声認識装置11、リモコン12との間でコマンド等の送受信を行うリモコンセンサ13、および外部(例えばVICSセンター15や種々の情報センター、VICS:登録商標)との間で無線通信によりデータの送受信を行う外部情報入出力装置14から構成されている。
【0021】
位置検出器3(位置検出手段に相当)は、車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ16、車両の走行距離を検出する距離センサ17、人工衛星からの送信電波に基づいて車両の現在位置を検出(測位)するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機18を有している。各センサ16〜18は、それぞれ性質の異なる誤差を有している。このため、制御回路2は、各センサ16〜18の検出値を補間しながら用いることにより、車両の現在位置、進行方向、速度、走行距離、現在時刻等を高精度で検出するようになっている。なお、精度によっては、位置検出器3を上述したセンサ16〜18の一部のみで構成してもよい。また、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0022】
地図データ入力器4は、道路地図データ、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ(施設データベース)、交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータなどの各種データを記録した地図データ記録メディアからデータを読み出すためのドライブ装置により構成されている。地図データ記録メディアには、DVD等の大容量記憶媒体を用いるのが一般的であるが、メモリカード、ハードディスク装置等の媒体を用いてもよい。
【0023】
上記道路地図データは、道路形状、道路幅、道路名、信号、踏切、建造物、各種施設、地名、地形等のデータを含むとともに、その道路地図を表示装置7の画面上に表示するためのデータを含んでいる。また、目的地データは、駅等の交通機関、レジャー施設、宿泊施設、公共施設等の施設や、小売店、デパート、レストラン等の各種の店舗、住居やマンション、地名などに関する情報からなり、このデータにはそれらの電話番号や住所、緯度および経度等のデータが含まれるとともに、施設を示すランドマーク等を、表示装置7の画面上に道路地図に重ね合せて表示するためのデータを含んで構成されている。
【0024】
入力手段である操作スイッチ群5は、表示装置7の画面の近傍に設けられたメカニカルスイッチや、表示装置7の画面上に設けられるタッチパネルを含んで構成されている。ユーザ(ドライバ)は、この操作スイッチ群5を用いて、目的地、目的地の検索に必要な情報(目的地検索条件)、通過点などの入力、後述する有効化経路および有効化地点および表示装置7の画面や表示態様の切り替え(地図縮尺変更、メニュー表示選択、経路探索、経路案内開始、現在位置修正、音量調整等)を行う各種のコマンドの入力を行う。また、リモコン12には複数の操作スイッチが設けられており、スイッチ操作によりリモコン12からリモコンセンサ13を介して各種の指令信号が制御回路2に送信される。なお、操作スイッチ群5とリモコン12は、何れの操作によっても制御回路2に同様の機能を実行させることができる。
【0025】
外部メモリ6は、フラッシュメモリカード等から構成されている。この外部メモリ6には、特定のデータ例えば経路案内時に制御回路2が設定した目的地までの経路のデータ、車両が通過した経路のデータ等が記憶される。
【0026】
表示装置7(表示手段、出力手段に相当)の画面には、車両の位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、その表示に重ね合わせて、車両の現在位置と進行方向とを示す現在地マーク(ポインタ)が表示される。また、目的地までの経路案内の実行時には経路案内用の画面が表示される。さらに、ユーザが目的地の検索に必要な情報等を入力したり、目的地の検索や設定を行うための入力用の画面や、各種のメッセージ等も表示される。ただし、後述する盗難防止機能により、画面が消去状態となる場合がある。
【0027】
音声認識装置11は、マイク10を介して入力した音声と内部に記憶する認識用の辞書データとを照合し、入力された音声を認識する。音声コントローラ9は、音声認識装置11を制御して音声認識結果を制御回路2に出力するとともに、認識された音声はスピーカ8を介してトークバック出力する。また、制御回路2からの音声出力指令に基づいて音声出力信号をスピーカ8に出力する。スピーカ8から出力される音声は、案内に関する音声、操作説明に関する音声、盗難防止機能の動作中であることを報知する音声、音声認識結果に応じたトークバック音声などである。ここで、スピーカ8と音声コントローラ9は、出力手段に相当する。
【0028】
制御回路2を構成するマイコンは、CPU、メモリ(RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等)、I/Oなどを備えている。このうちメモリ19(記憶手段に相当)は、EEPROM、フラッシュメモリなど電気的に書き換え可能な不揮発性メモリであって、後述する有効化経路および有効化地点のデータが記憶されるようになっている。CPUがROM(またはフラッシュメモリ)に記憶されたプログラムを実行することにより、制御回路2は、目的地設定手段、経路探索手段、表示制御手段、経路案内手段、通過経路特定手段、機能制御手段、現在位置修正手段として機能する。経路探索手段としての機能は、車両の出発地(現在位置)から目的地までの推奨する走行経路を自動計算するものであり、その手法としては例えばダイクストラ法が用いられている。
【0029】
経路案内手段としての機能は、走行経路に沿って移動可能なように、表示装置7の画面に現在地周辺の道路地図を表示するとともに、車両の現在位置と進行方向を示す現在地マークを道路地図に重ね合わせて表示する機能である。この場合、車両の走行に伴って現在地の表示は地図上を移動し、地図は車両の位置に応じてスクロール表示される。このとき、車両の現在地を道路上にのせるマップマッチングが行われる。
【0030】
次に、カーナビゲーション装置1の盗難防止機能について図2および図3も参照しながら説明する。
カーナビゲーション装置1が盗まれる場合、他の車載機器と接続している信号ケーブルが切り離されるとともに、車載バッテリと接続している電源ケーブルが外される。そして、別の車両に搭載されて上記信号ケーブルと電源ケーブルが接続される。図2に示すフローチャートは、車載バッテリからカーナビゲーション装置1に電源が供給された時に制御回路2が実行する機能制御処理を表している。
【0031】
制御回路2は、ステップS1において、車載バッテリを接続した後初めての起動か否かを判断する。カーナビゲーション装置1は、車載バッテリからAcc(アクセサリ)スイッチを介して供給される電源VBにより動作するが、車載バッテリからAccスイッチを介さずに直接供給される電源+Bも入力可能に構成されている。そして、電源+Bが失われた場合、制御回路2内の所定のメモリ領域がハードウェアによってクリアされるようになっている。制御回路2は、この所定のメモリ領域のデータを読み出すことにより、上記ステップS1の判断を実行できる。判断後、上記メモリ領域に所定データを書き込む。
【0032】
ステップS1で「NO」と判断すると、ステップS2に移行し、Accスイッチがオフからオンにされたことによる起動か否かを判断する。Accスイッチをオンするタイミングは、エンジンをかけるタイミングとほぼ一致している。ステップS2でも「NO」と判断すると処理を終了する。これに対し、ステップS1とS2の何れかで「YES」と判断するとステップS3に移行する。なお、本実施形態では車載バッテリを接続した後初めての起動と、Accスイッチがオンにされる毎の起動の両者について判断するが、何れか一方の起動についてのみ判断するように設定することもできる。
【0033】
さて、ステップS3において、制御回路2は、カーナビゲーション装置1が正常動作するために不可欠な所定の機能を無効化(停止)し、ユーザの使用に支障を生じさせる。この無効化する機能としては、画面表示機能、地図表示機能、音声出力機能、経路設定機能、経路案内機能などの個別的な機能の他、ナビゲーションに関する全ての機能であってもよい。また、同カーナビゲーション装置にオーディオ(ラジオ、CD、MDの再生等)機能を有する場合、その機能であってもよい。すなわち、無効化する機能は、ユーザの使用に支障が生じるような機能であり、この無効化した状態において、ユーザは、カーナビゲーション装置1を利用することができず、また利用できたとしても極めて制限的な利用形態となる。
【0034】
無効化した機能を有効化するには、車両が正規ユーザにより予め登録された経路(有効化経路)を通過することが必要となる。また、これに替えて、車両が正規ユーザにより予め登録された地点(有効化地点)を通過することが必要となる。有効化経路と有効化地点の何れを有効化条件とするかは、ユーザが予め設定することができる。なお、有効化経路と有効化地点の一方ではなく両者をAND条件またはOR条件として有効化条件としてもよい。
【0035】
この有効化条件(有効化経路、有効化地点)は、パスワード(後述)を入力した後または有効化経路または有効化地点を通過した後に設定可能となる。具体的には、操作スイッチ群5またはリモコン12を操作して設定モードに移行し、ポインティング操作等により地図表示画面の上に有効化経路または有効化地点を設定する。この場合、目的地検索機能や経路探索機能などを利用して目的地までの最適経路を表示させ、その経路の一部(または全部)、経路上の地点をそれぞれ有効化経路、有効化地点とすることができる。
【0036】
図3は、有効化経路および有効化地点を設定するときの画面表示例を示している。(a)は、自宅から幹線道路に出るまでの経路(図中、太い実線Rで示す)を有効化経路に設定した場合であり、(b)は、ある地点(図中、特別な記号Mで示す)を有効化地点に設定した場合を示している。また、これとは別の設定方法として、設定開始操作から設定終了操作までの間に車両が実際に通過した経路を有効化経路として設定し、或いは設定操作時における車両の位置を有効化地点として設定するようにしてもよい。なお、一旦設定した有効化経路および有効化地点は、パスワードを入力した後または有効化経路または有効化地点を通過した後の一定期間を除き、画面表示させることはできない。
【0037】
制御回路2は、位置検出器3により検出された車両の位置と道路地図データとに基づいてマップマッチングを実行し、起動してからの車両の通過経路を特定した通過経路データを生成して外部メモリ6に記憶する。制御回路2は、ステップS4において、外部メモリ6に記憶された通過経路データにメモリ19に記憶された有効化経路が含まれることとなったか否か、つまり車両が有効化経路を通過したか否かを判断する。
【0038】
また、有効化条件として有効化地点を用いている場合には、ステップS4において、外部メモリ6に記憶された通過経路データに有効化地点が含まれることとなったか否か、つまり車両が有効化地点を通過したか否かを判断する。これらの判断は、マップマッチングをした経路データ(リンク情報)に基づいて行うので、GPSの計算結果にずれ(位置ずれ)が生じても誤判断しにくくなっている。
【0039】
ステップS4で通過した(YES)と判断すると、ステップS5に移行して無効化した機能を有効化して処理を終了する。これにより、カーナビゲーション装置1は正常動作に復帰し、正規ユーザはカーナビゲーション装置1を利用可能となる。これに対し、盗難によりカーナビゲーション装置1が不正に他の車両に載せ替えられた場合には、その不正ユーザは有効化経路および有効化地点を知らないので、車両が有効化経路または有効化地点を通過することは極めて起こりにくい。
【0040】
制御回路2は、ステップS4で通過していない(NO)と判断すると、ステップS6に移行して正しいパスワードが入力されたか否かを判断する。このパスワードは、カーナビゲーション装置1ごとに与えられるシリアル番号である。正しいパスワードが入力されると「YES」と判断して上述したステップS5に移行するが、正しいパスワードが入力されないと「NO」と判断して再び判断ステップS4に戻る。
【0041】
従って、車両が有効化経路または有効化地点を通過せず且つ正しいパスワードも入力されない場合にはステップS4とS5の処理を繰り返し、カーナビゲーション装置1は正常動作に復帰することはない。この間、正規ユーザが故障と誤認識することがないように、表示装置7に「盗難防止機能の動作中」などの注意メッセージを表示する。また、これに替えてまたはこれとともに、スピーカ8から上記注意メッセージを出力してもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、カーナビゲーション装置1を車両から取り外して他の車両に取り付けた場合のように車載バッテリを接続した後初めての起動時、またはAccスイッチがオンにされる毎の起動時に、カーナビゲーション装置1は、所定の機能が無効化されて正常動作できない状態となる。正常動作に復帰させるには、正規ユーザが予め設定した有効化経路または有効化地点を通過することが条件とされるので、正規ユーザだけが正常動作に復帰させることができる。つまり、カーナビゲーション装置1を盗んでもその不正ユーザはカーナビゲーション装置1を利用できないため、盗難に対する抑止効果が得られる。
【0043】
有効化経路または有効化地点には、例えばユーザの通勤経路またはその途中地点などを設定するとよい。ユーザが自ら設定することができ、しかも生活に深く関係しているので、パスワードなどとは異なり忘れにくいという利点がある。このため、正規ユーザだけが確実且つ容易に正常動作に復帰させることができる。なお、機能を無効化している間、盗難防止機能の動作中であることを報知するので、ユーザが故障と誤認識することを防止できる。
【0044】
予備的な手段としてパスワードが準備されており、正しいパスワードを入力するとカーナビゲーション装置1を正常動作に復帰させることができる。有効化経路または有効化地点を通過できない旅行先等で用いられる。このパスワードは、新規購入時、転売時またはバッテリ上がりの後などにおける有効化経路または有効化地点の設定、車載バッテリを接続した後初めての起動かどうかを判断する設定有無、Accスイッチがオンにされる毎の起動かどうかを判断する設定有無にも用いることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態を示す図2相当図である。図2と同一処理には同一のステップ番号を付している。本実施形態の制御回路2は、起動時から所定の猶予時間が経過するまでの間(猶予期間)所定の機能を無効化せず、その間カーナビゲーション装置1は正常に動作し続ける。
【0046】
すなわち、制御回路2は、ステップS2の後に機能を無効化するステップS3を実行せず、それに替えてタイマをスタートさせる。その後、ステップS4、S6でともに「NO」と判断した場合、つまり有効化経路または有効化地点を通過せず且つ正しいパスワードも入力されていない場合にステップS12に移行する。制御回路2は、このステップS12において、タイマにより計測された時間(タイマ時間)が予め設定されている猶予時間(例えば10分)を超えたか否かを判断する。超えていない場合には「NO」と判断してステップS4に戻る。
【0047】
これに対し、猶予時間を超えた場合には「YES」と判断してステップS3に移行し、ここで初めて所定の機能を無効化する。そして、ステップS13でタイマをクリアおよび停止してからステップS4に戻る。タイマを停止したので、これ以降ステップS3、S13を実行することはなく、第1の実施形態である図2と同様の動作となる。
【0048】
本実施形態によれば、起動から猶予時間内に有効化経路または有効化地点を通過すれば、起動時から継続してカーナビゲーション装置1を正常動作させることができるので、正規ユーザにとって(一時的にせよ)カーナビゲーション装置1を利用できなくなる不都合を解消することができる。なお、不正ユーザも猶予期間だけはカーナビゲーション装置1を利用できるが、猶予時間が経過した後は利用できなくなるので、盗難に対する抑止効果が低減することはない。
【0049】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態を示す図2相当図である。図2と同一処理には同一のステップ番号を付している。本実施形態の制御回路2は、車両が有効化経路または有効化地点を通過すると、その時点から所定の許可時間が経過するまでの間(許可期間)、起動の有無に関わらず所定の機能を無効化せず、その間カーナビゲーション装置1は正常に動作し続ける。
【0050】
すなわち、制御回路2は、起動状態の判断処理ステップS1、S2に先立って、ステップS21で許可時間を計測するタイマが計時動作中であるか否かを判断し、非動作中であれば「NO」と判断してステップS1に移行する。このタイマは、車載バッテリが一時的に外された場合でも正常に計時動作し続けるように、タイマ時間を不揮発性メモリまたは電池でバックアップされたRAMに記憶するようになっている。または、車載バッテリから外される直前の時刻を不揮発性メモリに保持させておき、車載バッテリが再度接続された時刻と比較してタイマ時間を算出してもよい。
【0051】
タイマが動作中であれば「YES」と判断してステップS22に移行し、タイマ時間が予め設定されている許可時間(例えば24時間)を超えたか否かを判断する。超えていない許可期間中は「NO」と判断して機能制御処理を終了する。一方、許可時間を超えた場合には「YES」と判断してステップS23に移行し、タイマの計時動作を停止する。これ以降は、第1の実施形態である図2とほぼ同様の動作となるが、有効化経路または有効化地点を通過しまたは正しいパスワードが入力されたことにより、一旦無効化した機能を有効化した場合には、その後のステップS24でタイマのクリアおよびスタートを行う。
【0052】
本実施形態によれば、有効化経路または有効化地点を一旦通過すると、その後の許可期間、起動の有無に関わらずカーナビゲーション装置1は正常動作する。従って、正規ユーザは、許可期間内であれば起動する毎に有効化経路または有効化地点を通過する必要がなくなるので、起動時から自由な経路を通過して目的地に向かうことができる。例えば、毎日決まった時間に有効化経路を通過してマイカー通勤するユーザは、許可時間を24時間に設定しておけば、通勤以外の目的で車両を用いる場合に有効化経路を通過する手間がなくなる。なお、盗まれたカーナビゲーション装置1も最長で許可時間だけは利用できるが、許可時間が経過した後は利用できなくなるので、盗難に対する抑止効果が低減することはない。
【0053】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態を示す図2相当図である。図2と同一処理には同一のステップ番号を付している。本実施形態の制御回路2は、検出された車両の位置が有効化経路上にある場合には所定の機能を無効化せず、カーナビゲーション装置1は正常に動作し続ける。
【0054】
すなわち、制御回路2は、ステップS1またはS2で車載バッテリを接続した後初めての起動またはAccスイッチがオンにされたことによる起動であると判断すると、ステップS31に移行して車両の現在位置が有効化経路上にあるか否かを判断する。有効化経路上にある(YES)と判断すると、機能の無効化を行うステップS3へは進まず、当該判断ステップS31を繰り返す。この間、カーナビゲーション装置1は正常に動作する。一方、有効化経路上にない(NO)と判断すると、第1の実施形態である図2と同様の動作となる。
【0055】
本実施形態によれば、正規ユーザは、その有効化経路上で目的地の検索、設定などを行うことができる。例えば、自宅の駐車場を有効化経路の一部として設定しておけば、起動時にカーナビゲーション装置1を利用できない不都合な状態を極力低減することができる。なお、本実施形態では、起動時に車両が有効化経路上にある場合に、その後車両が有効化経路から外れるまで機能の無効化を実行しないが、起動時に車両が有効化経路上にない場合であっても、その後有効化経路に位置した時には無効化した機能を一時的に有効化するように構成してもよい。
【0056】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に示す各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張が可能である。
図2、図4、図5に示すステップS4において、車両の位置と有効化地点とが一致する状態が所定時間以上継続したことを条件として、無効化した機能を有効化するように構成してもよい。例えば、有効化地点として設定したディーラーに15分間以上停車した場合にカーナビゲーション装置1が正常動作に復帰する。この継続時間はタイマを用いて計測する。この構成によれば、不正ユーザが偶然に有効化地点を通過しただけで正常動作に復帰することを防止できる。
【0057】
第2ないし第4の実施形態は、任意に組み合わせた構成としてもよい。
各実施形態では、有効化経路または有効化地点を通過すると無効化した機能を自動的に有効化したが、所定の解除操作がなされたことを条件に有効化するように構成してもよい。
パスワードの入力に替えて、購入時に製品に添付された記録媒体(例えばCD)からパスワードを読み出す構成としてもよい。
各実施形態において、パスワードの入力判断処理は省略してもよい。
【0058】
有効化経路および有効化地点を記憶する記憶手段として、外部メモリ6、その他の不揮発性メモリやメモリカード、ハードディスク装置などを用いてもよい。なお、有効化経路および有効化地点を容易に解読できないように暗号化するなどして記憶することが好ましい。
本発明は、カーナビゲーション装置に限られず、携帯型のナビゲーション装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すカーナビゲーション装置の電気的なブロック構成図
【図2】機能制御処理を示すフローチャート
【図3】(a)有効化経路、(b)有効化地点を設定するときの画面表示を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す図2相当図
【図5】本発明の第3の実施形態を示す図2相当図
【図6】本発明の第4の実施形態を示す図2相当図
【符号の説明】
【0060】
1はカーナビゲーション装置、2は制御回路(通過経路特定手段、機能制御手段)、3は位置検出器(位置検出手段)、7は表示装置(表示手段、出力手段)、8はスピーカ(出力手段)、9は音声コントローラ(出力手段)、19はメモリ(記憶手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置を検出する位置検出手段と、
この位置検出手段により検出された位置に基づいて通過した経路を特定する通過経路特定手段と、
ユーザにより設定された有効化経路が記憶される記憶手段と、
バッテリが接続されてから初めて起動された時または電源オンにより起動された時に所定の機能を無効化し、前記通過経路特定手段により特定された通過経路に前記記憶手段に記憶された有効化経路が含まれることとなったことを条件として前記無効化した機能を有効化する機能制御手段とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記機能制御手段は、前記起動時から所定の猶予期間が経過するまでの間、前記所定の機能を無効化せず、前記猶予期間の経過時点で前記通過経路特定手段により特定された通過経路に前記記憶手段に記憶された有効化経路が含まれていない場合に前記所定の機能を無効化することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記機能制御手段は、前記通過経路特定手段により特定された通過経路に前記記憶手段に記憶された有効化経路が含まれることとなった場合、その後の所定期間、起動の有無に関わらず前記所定の機能を有効に維持することを特徴とする請求項1または2記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記機能制御手段は、前記位置検出手段により検出された位置が前記記憶手段に記憶された有効化経路上にある場合、前記所定の機能を無効化しないことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
位置を検出する位置検出手段と、
ユーザにより設定された有効化地点が記憶される記憶手段と、
バッテリが接続されてから初めて起動された時または電源オンにより起動された時に所定の機能を無効化し、前記位置検出手段により検出された位置が前記記憶手段に記憶された有効化地点に一致したことを条件として前記無効化した機能を有効化する機能制御手段とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
前記機能制御手段は、前記起動時から所定の猶予時間が経過するまでの間、前記所定の機能を無効化せず、前記猶予期間内において前記位置検出手段により検出された位置と前記記憶手段に記憶された有効化地点とが一致しなかった場合に前記所定の機能を無効化することを特徴とする請求項5記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記機能制御手段は、前記位置検出手段により検出された位置が前記記憶手段に記憶された有効化地点に一致した場合、その後の所定期間、起動の有無に関わらず前記所定の機能を有効に維持することを特徴とする請求項5または6記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記機能制御手段は、前記位置検出手段により検出された位置と前記記憶手段に記憶された有効化地点とが一致する状態が所定時間以上継続したことを条件として前記無効化した機能を有効化することを特徴とする請求項5ないし7の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
表示手段を備え、
前記機能制御手段は、前記表示手段の表示機能を無効化することを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
出力手段を備え、
前記機能制御手段は、前記所定の機能を無効化している間、前記出力手段を通して前記機能の無効化中である旨を報知することを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
車両に搭載され、前記位置検出手段は当該車両の位置を検出し、前記通過経路特定手段は当該車両が通過した経路を特定することを特徴とする請求項1ないし10の何れかに記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−256163(P2007−256163A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82842(P2006−82842)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】