説明

ハイブリッド自動車およびその報知制御方法

【課題】発進しようとする運転者に違和感を与えるのを抑制する。
【解決手段】停車時にシフトポジションSPがNポジションの状態でエンジンが自立運転されているときに(S140)、アクセル開度Accが所定開度Aref以上になったときには(S160)、運転者のシフト操作が誤りである旨の警告情報やシフトポジションSPのDポジションへの変更を要求する旨の警告情報,警告音を運転者に報知する(S170)。これにより、運転者はシフトレバーの誤操作に気づきやすくなり、発進しようとする運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車およびその報知制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、第1モータジェネレータと、エンジンと第1モータジェネレータと前輪に連結された駆動軸とがそれぞれキャリアとサンギヤとリングギヤとに接続されたプラネタリギヤと、駆動軸に接続された第2モータジェネレータと、第1および第2モータジェネレータに電気的に接続されたバッテリと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、モータからの動力により走行する電気自動車において、走行中に運転者のシフトの誤操作により、アクセルが踏み込まれた状態でシフト位置が前進用のD位置から駆動停止用のN位置へ変更されたときには、アラーム音やランプ点滅などにより警報出力を行なうものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−170128号公報
【特許文献2】特開平8−322105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したのと同様に構成されたハイブリッド自動車では、停車してエンジンがアイドル運転など自立運転されている状態から発進する際に、運転者がシフト操作を誤っているときには、運転者に違和感を与える場合がある。このハイブリッド自動車では、停車してエンジンが自立運転されている状態から発進する際に、シフトの誤操作のためにシフトポジションが走行用ポジションでなくニュートラルポジションのときには、アクセル操作を行なっても、車両が発進しない状態でエンジンからの動力のみにより走行する自動車のようにはエンジン回転数が上昇しないため、運転者はシフトの誤操作に気付きにくく違和感を感じてしまう。また、このハイブリッド自動車では、その構成上、自立運転しているエンジンの回転数を変更すると、イナーシャによるトルクが駆動軸に作用するため、シフトポジションが駆動軸にトルクを出力すべきでないニュートラルポジションのときには、自立運転しているエンジンの回転数を変更することは難しい。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車およびその報知制御方法は、発進しようとする運転者に違和感を与えるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車およびその報知制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と駆動輪に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備えるハイブリッド自動車であって、
運転者のシフト操作に基づくシフトポジションを検出するシフトポジション検出手段と、
運転者のアクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、
運転者に情報を報知する報知手段と、
前記検出されたシフトポジションがニュートラルポジションのときには走行用の動力が前記駆動軸に出力されないよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する駆動制御手段と、
停車時に前記検出されたシフトポジションがニュートラルポジションの状態で前記内燃機関が自立運転されているときに前記検出されたアクセル操作量が所定操作量以上になったときには運転者のシフト操作の誤りに関する所定の情報が報知されるよう前記報知手段を制御する報知制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、停車時に運転者のシフト操作に基づくシフトポジションがニュートラルポジションの状態で内燃機関が自立運転されているときに運転者のアクセル操作量が所定操作量以上になったときには、運転者のシフト操作の誤りに関する所定の情報が報知されるよう報知手段を制御する。これにより、発進しようとする運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。ここで、「所定回転数」には、内燃機関をアイドル運転する際の回転数などが含まれる。また、「所定操作量」には、停車した状態から運転者が発進しようとしていると判断することができるアクセル操作量として予め実験により定められた操作量などが含まれる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記報知制御手段は、停車時に前記検出されたシフトポジションがニュートラルポジションの状態で前記内燃機関が自立運転されているときにブレーキオンのときには、前記検出されたアクセル操作量が前記所定操作量以上になったか否かに拘わらずに前記所定の情報が報知されないよう前記報知手段を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、発進しようとしていない運転者に対して不要な情報が報知されるのを抑制することができる。
【0010】
また、本発明のハイブリッド自動車において、前記所定の情報は、運転者のシフト操作が誤りである旨および/またはシフトポジションの走行用ポジションへの変更を要求する旨の表示および音声の少なくとも一方による情報である、ものとすることもできる。こうすれば、発進しようとする運転者に違和感を与えるのをより確実に抑制することができる。
【0011】
本発明のハイブリッド自動車の報知制御方法は、
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と駆動輪に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、運転者に情報を報知する報知手段と、運転者のシフト操作に基づくシフトポジションがニュートラルポジションのときには走行用の動力が前記駆動軸に出力されないよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する駆動制御手段と、そ備えるハイブリッド自動車の報知制御方法であって、
停車時に運転者のシフト操作に基づくシフトポジションがニュートラルポジションの状態で前記内燃機関が自立運転されているときに運転者のアクセル操作量が所定操作量以上になったときには運転者のシフト操作の誤りに関する所定の情報が報知されるよう前記報知手段を制御する、
ことを特徴とする。
【0012】
この本発明のハイブリッド自動車の報知制御方法では、停車時に運転者のシフト操作に基づくシフトポジションがニュートラルポジションの状態で内燃機関が自立運転されているときに運転者のアクセル操作量が所定操作量以上になったときには、運転者のシフト操作の誤りに関する所定の情報が報知されるよう報知手段を制御する。これにより、発進しようとする運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。ここで、「所定回転数」には、内燃機関をアイドル運転する際の回転数などが含まれる。また、「所定操作量」には、停車した状態から運転者が発進しようとしていると判断することができるアクセル操作量として予め実験により定められた操作量などが含まれる。さらに、「所定の情報」には、運転者のシフト操作が誤りである旨および/またはシフトポジションの走行用ポジションへの変更を要求する旨の表示および音声の少なくとも一方による情報などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるNポジション時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0016】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、エンジン22からの排気は、排気系に取り付けられて一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する触媒を有する浄化装置23を介して外気へ排出される。エンジン22は、浄化装置23に取り付けられて触媒の温度を検出する温度センサ23aからの触媒温度Tcを含むエンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0017】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0018】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0019】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0020】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、乗員室21の運転席前方に取り付けられて文字情報や画像情報を表示可能なディスプレイ88への出力信号や乗員室21に取り付けられて運転者に音声出力が可能なスピーカ89を駆動するアンプ89aへの出力信号などが出力ポートを介して出力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、シフトポジションSPとしては、例えば、前進走行用のドライブ(D)ポジションや後進走行用のリバース(R)ポジション,駐車用(P)ポジション,中立のニュートラル(N)ポジションなどがある。
【0021】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0022】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に停車時にシフトポジションSPがニュートラル(N)ポジションのときの動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるNポジション時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、停車している状態でシフトポジションSPがNポジションのときに所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。なお、停車している状態は、車速センサ87からの車速Vが所定車速(例えば時速3kmや時速5kmなど)未満の状態などとして判定することができる。
【0023】
Nポジション時制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accやブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,浄化装置23の触媒温度Tcなど制御に必要なデータを入力し(ステップS100)、モータMG1,MG2を駆動するインバータ41,42のゲート遮断が行われるようモータECU40に指示信号を送信する処理を実行する(ステップS110)。ここで、触媒温度Tcは、浄化装置23に取り付けられた温度センサ23aにより検出されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、指示信号を受信したモータECU40は、インバータ41,42のゲート遮断を行なうか又はゲート遮断が行われている状態を保持する。
【0024】
続いて、入力した触媒温度Tcが浄化装置23の触媒が活性化して機能する下限温度やこれより若干高い温度として予め実験などにより定められた所定温度Tref未満であるか否かを判定し(ステップS120)、触媒温度Tcが所定温度Tref以上のときには、触媒を暖機するためにエンジン22を運転する必要はないと判断し、エンジン22の運転が停止されるよう指示信号をエンジンECU24に送信して(ステップS130)、Nポジション時制御ルーチンを終了する。指示信号を受信したエンジンECU24は、エンジン22の運転を停止するか又はエンジン22が停止されている状態を保持する。
【0025】
触媒温度Tcが所定温度Tref未満のときには、触媒を暖機するためにエンジン22を運転する必要があると判断し、エンジン22が所定回転数(例えば、アイドル運転用の回転数(800rpmや1000rpmなど)やこれより若干高い回転数など)で自立運転されるようエンジン22に指示信号を送信する(ステップS140)。指示信号を受信したエンジンECU24は、エンジン22が所定回転数で自立運転されるよう燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を行なう。
【0026】
こうしてエンジン22の自立運転を行なうと、ブレーキオフされているか否かを判定すると共に(ステップS150)、アクセル開度Accが停車した状態から運転者が発進しようとしていると判断することができる開度として予め実験などにより定められた所定開度Aref(例えば、8%や10%,12%など)以上であるか否かを判定し(ステップS160)、ブレーキオンされているときや、アクセル開度Accが所定開度Aref未満のときには、運転者は発進しようとはしていないと判断し、そのままNポジション時制御ルーチンを終了する。
【0027】
一方、ブレーキオフされており且つアクセル開度Accが所定開度Aref以上のときには、運転者が発進しようとしていると判断し、運転者のシフト操作が誤りである旨の表示による警告情報(例えば、「シフトレバーがNレンジです。」や「シフトレバーがNレンジですので発進することができません。」などのメッセージを文字や画像により表示出力する情報)とシフトポジションSPのDポジションへの変更を要求する旨の表示による警告情報(例えば、「シフトレバーをDレンジに操作して下さい。」などのメッセージを文字や画像により表示出力する情報)とがディスプレイ88に表示出力されるようディスプレイ88に信号を出力すると共に警告音(例えばビープ音など)がスピーカ89から音声出力されるようアンプ89aに信号を出力して(ステップS170)、Nポジション時制御ルーチンを終了する。
【0028】
ここで、こうした警告情報や警告音を報知する理由について説明する。停車時にシフトポジションがNポジションの状態でエンジンが自立運転されているときに、車両を発進させるために運転者がアクセルペダルを踏み込んだ場合、走行用のモータを備えずにエンジンからの動力のみにより走行する自動車では、停車した状態が変化せずにエンジン回転数の上昇によりエンジン音が変化することによって、運転者はシフトレバーの誤操作に気づきやすい。一方、この場合、実施例のハイブリッド自動車20では、停車した状態が変化せずにエンジン回転数の上昇によりエンジン音が変化することもないため、運転者はシフトレバーの誤操作に気付かずに、即ち発進することができない原因が理解できずに違和感を感じてしまう。そこで、運転者がシフトレバー81の誤操作に気づきやすくなるようにエンジン22の回転数Neを上昇させることも考えられるが、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションSPがNポジションのときには、エンジン22の回転数Neを変化させることはできない。即ち、実施例のハイブリッド自動車20は、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに対してエンジン22のクランクシャフト26やモータMG1の回転子が遊星歯車機構としての動力分配統合機構30を介して機械的に接続されているため、エンジン22が自立運転しているときの回転数Ne(所定回転数)を上昇させると、モータMG1やエンジン22を含む回転系のイナーシャによるトルクがリングギヤ軸32aを回転上昇させる方向に作用してしまう。このため、シフトポジションSPが車軸側にトルクを出力すべきでないNポジションのときにはこうしたモータリングを行なうことは基本的にできない。実施例のハイブリッド自動車20では、こうした車両の特性を考慮して、停車時にシフトポジションSPがNポジションの状態でエンジン22が自立運転されているときのアクセル開度Accが所定開度Aref以上になったときには、前述の警告情報や警告音を運転者に報知するのである。こうした制御により、運転者はシフトレバー81の誤操作に気づきやすくなり、発進しようとする運転者に対して車両が発進しない原因を理解できないことによる違和感を与えるのを抑制することができる。この結果、運転者によるシフトレバー81の走行用のDポジション(またはRポジション)への変更が促され、運転者の要求に応じた車両の発進を行ないやすくすることができる。
【0029】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、停車時にシフトポジションSPがNポジションの状態でエンジン22が自立運転されているときに、アクセル開度Accが所定開度Aref以上になったときには、運転者のシフト操作が誤りである旨の警告情報やシフトポジションSPのDポジションへの変更を要求する旨の警告情報,警告音を運転者に報知するから、運転者はシフトレバー81の誤操作に気づきやすくなり、発進しようとする運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。さらに、停車時にシフトポジションSPがNポジションの状態でエンジン22が自立運転されているときにブレーキオンされているときには、アクセル開度Accが所定開度Aref以上になったか否かに拘わらずに警告情報や警告音の報知を行なわないものとしたから、発進しようとしていない運転者に対して不要な情報が報知されるのを抑制することができる。しかも、運転者のシフト操作が誤りである旨の表示による警告情報とシフトポジションSPのDポジションへの変更を要求する旨の表示による警告情報と警告音とを運転者に出力するから、発進しようとする運転者に違和感を与えるのをより確実に抑制することができる。
【0030】
実施例のハイブリッド自動車20では、停車時にシフトポジションSPがNポジションの状態でエンジン22が自立運転されているときにブレーキオンされているときにはアクセル開度Accが所定開度Aref以上になったか否かに拘わらずに警告情報や警告音の報知を行なわないものとしたが、ブレーキオフやブレーキオンに拘わらず、停車時にシフトポジションSPがNポジションの状態でエンジン22が自立運転されアクセル開度Accが所定開度Aref以上になったときには、警告情報や警告音の報知を行なうものとしてもよい。
【0031】
実施例のハイブリッド自動車20では、運転者のシフト操作が誤りである旨の警告情報とシフトポジションSPのDポジションへの変更を要求する旨の警告情報と警告音との3つを運転者に報知するものとしたが、これら3つのうちいずれか1つまたは2つを運転者に報知するものとしてもよい。また、実施例のハイブリッド自動車20では、警告音を出力するものとしたが、警告音に代えて、運転者のシフト操作が誤りである旨の人工の音声によるメッセージを音声出力する警告情報とシフトポジションSPのDポジションへの変更を要求する旨の人工の音声によるメッセージを音声出力する警告情報とのうち少なくとも一方をスピーカ89から出力するものとしてもよい。
【0032】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図3の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図3における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0033】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、ハイブリッド自動車の報知制御方法の形態としても構わない。
【0034】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「遊星歯車機構」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、シフトポジションセンサ82が「シフトポジション検出手段」に相当し、アクセルペダルポジションセンサ84が「アクセル操作量検出手段」に相当し、ディスプレイ88とスピーカ89およびアンプ89aとが「報知手段」に相当し、シフトポジションSPがNポジションのときにモータMG1,MG2のインバータ41,42のゲート遮断を行なうと共にエンジン22を停止したり自立運転するよう指示信号を送信する図2のNポジション時制御ルーチンのステップS110〜S140の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と指示信号を受信してインバータ41,42のゲート遮断を行なうモータECU40と指示信号を受信してエンジン22を停止したり運転制御するエンジンECU24とが「駆動制御手段」に相当し、停車時にシフトポジションSPがNポジションの状態でエンジン22が自立運転されているときにアクセル開度Accが所定開度Aref以上になったときには運転者のシフト操作が誤りである旨の警告情報とシフトポジションSPのDポジションへの変更を要求する旨の警告情報とが表示出力されると共に警告音が音声出力されるようディスプレイ88とスピーカ89とに信号を出力する図2のNポジション時制御ルーチンのステップS140〜S170の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「報知制御手段」に相当する。
【0035】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「遊星歯車機構」としては、前述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものなど、内燃機関の出力軸と発電機の回転軸と駆動輪に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続されたものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、発電機および電動機と電力のやり取りが可能であれば如何なるものとしても構わない。「シフトポジション検出手段」としては、シフトポジションセンサ82に限定されるものではなく、運転者のシフト操作に基づくシフトポジションを検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「アクセル操作量検出手段」としては、アクセルペダルポジションセンサ84に限定されるものではなく、運転者のアクセル操作量を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「報知手段」としては、ディスプレイ88とスピーカ89およびアンプ89aとに限定されるものではなく、これらのうち一方のみなど、運転者に情報を報知するものであれば如何なるものとしても構わない。「駆動制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「駆動制御手段」としては、シフトポジションSPがNポジションのときにモータMG1,MG2のインバータ41,42のゲート遮断を行なうと共にエンジン22を停止したり自立運転するものに限定されるものではなく、検出されたシフトポジションがニュートラルポジションのときには走行用の動力が駆動軸に出力されないよう内燃機関と発電機と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「報知制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70など単一の電子制御ユニットにより構成されるものに限定されるものではなく、複数の電子制御ユニットの組み合わせにより構成されるなどとしてもよい。また、「報知制御手段」としては、停車時にシフトポジションSPがNポジションの状態でエンジン22が自立運転されているときにアクセル開度Accが所定開度Aref以上になったときには運転者のシフト操作が誤りである旨の警告情報とシフトポジションSPのDポジションへの変更を要求する旨の警告情報とが表示出力されると共に警告音が音声出力されるようディスプレイ88とスピーカ89とに信号を出力するものに限定されるものではなく、停車時に検出されたシフトポジションがニュートラルポジションの状態で内燃機関が自立運転されているときに検出されたアクセル操作量が所定操作量以上になったときには運転者のシフト操作の誤りに関する所定の情報が報知されるよう報知手段を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0036】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0037】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
20,120 ハイブリッド自動車、21 乗員室、22 エンジン、23 浄化装置、23a 温度センサ、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、87 車速センサ、88 ディスプレイ、89 スピーカ、89a アンプ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と駆動輪に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備えるハイブリッド自動車であって、
運転者のシフト操作に基づくシフトポジションを検出するシフトポジション検出手段と、
運転者のアクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、
運転者に情報を報知する報知手段と、
前記検出されたシフトポジションがニュートラルポジションのときには走行用の動力が前記駆動軸に出力されないよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する駆動制御手段と、
停車時に前記検出されたシフトポジションがニュートラルポジションの状態で前記内燃機関が自立運転されているときに前記検出されたアクセル操作量が所定操作量以上になったときには運転者のシフト操作の誤りに関する所定の情報が報知されるよう前記報知手段を制御する報知制御手段と、
を備えるハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記報知制御手段は、停車時に前記検出されたシフトポジションがニュートラルポジションの状態で前記内燃機関が自立運転されているときにブレーキオンのときには、前記検出されたアクセル操作量が前記所定操作量以上になったか否かに拘わらずに前記所定の情報が報知されないよう前記報知手段を制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド自動車であって、
前記所定の情報は、運転者のシフト操作が誤りである旨および/またはシフトポジションの走行用ポジションへの変更を要求する旨の表示および音声の少なくとも一方による情報である、
ハイブリッド自動車。
【請求項4】
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と駆動輪に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、運転者に情報を報知する報知手段と、運転者のシフト操作に基づくシフトポジションがニュートラルポジションのときには走行用の動力が前記駆動軸に出力されないよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する駆動制御手段と、を備えるハイブリッド自動車の報知制御方法であって、
停車時に運転者のシフト操作に基づくシフトポジションがニュートラルポジションの状態で前記内燃機関が自立運転されているときに運転者のアクセル操作量が所定操作量以上になったときには運転者のシフト操作の誤りに関する所定の情報が報知されるよう前記報知手段を制御する、
ことを特徴とするハイブリッド自動車の報知制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−241243(P2010−241243A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91490(P2009−91490)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】