説明

ハイブリッド自動車

【課題】電動走行が指示されたときに、車室内に聞こえる車室内音が小さいことにより乗員が違和感を覚えるのを抑制する。
【解決手段】電動走行が指示されたときにはモータが収納されたトランスミッションケースに生じる振動のうちモータの駆動に伴って生じる振動の周波数範囲fcにおけるトランスミッションマウントの動ばね定数が所定値tref以上(マウント特性Bの状態)となるようトランスミッションマウントを制御する。これにより、トランスミッションケースから車体に伝搬する振動のうち周波数範囲fcの振動を大きくして車室内の車室内音を大きくすることができ、車室内に聞こえる車室内音が小さいことにより乗員が違和感を覚えるのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンからの出力とモータジェネレータからの出力とを用いて走行可能であると共にリアクトルを有する昇圧コンバータでバッテリからの電力を昇圧してモータジェネレータに供給するハイブリッド自動車において、モータジェネレータと昇圧コンバータとをケースに収納して、エンジンおよびケースを複数のエンジンマウントによりボディに懸架するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、上述の構成により、エンジンマウントにより昇圧コンバータのリアクトルの振動がボディに伝搬するのを抑制することができ、車室内に発生するリアクトルの振動に基づく騒音を低減して、車室内に聞こえる車室内音をより小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−106256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド自動車では、車両の走行状態に拘わらず車室内音を小さくしているが、走行状態によっては車室内音を大きくすることが望まれる場合がある。例えば、エンジンからの動力とモータジェネレータからの動力とを用いて走行するハイブリッド走行とエンジンの運転を停止してモータジェネレータからの動力を用いて走行する電動走行とを切り替えて走行する際には、電動走行中はエンジンが運転停止されているためハイブリッド走行に比して車室内音が小さく、乗員が却って違和感を覚えることがある。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、内燃機関の運転を停止した状態で電動機からの動力を用いて走行する電動走行が指示されたときに、車室内音が小さいことにより乗員が違和感を覚えるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、走行用の動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、前記内燃機関に取り付けられると共に内部に前記電動機が収納された収納ケースと、前記内燃機関および前記収納ケースを車体に懸架すると共に少なくとも1つが前記収納ケースに取りつけられた複数のマウントと、前記内燃機関からの動力と前記電動機からの動力とを用いて走行するハイブリッド走行が指示されたときには前記ハイブリッド走行により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御すると共に前記内燃機関の運転を停止した状態で前記電動機からの動力を用いて走行する電動走行が指示されたときには前記電動走行により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、を備えるハイブリッド自動車において、
前記複数のマウントのうち前記収納ケースに取りつけられたマウントは、前記収納ケースに取り付けられた収納ケース取付部と前記車体に取り付けられた車体取付部とが連結ゴムにより連結されてなり、壁面の一部が前記連結ゴムで構成された第1オイル室およびオリフィスが形成された隔壁によって前記第1オイル室と隔てられた第2オイル室に作動オイルが封入されており、前記オリフィスの断面積のうち開口している開口断面積を変更することにより前記収納ケースから前記車体に伝搬する振動の程度を変更可能なマウントであり、
前記制御手段は、前記ハイブリッド走行が指示されたときには前記オリフィスの開口断面積が予め定められた所定断面積となるよう前記マウントを制御し、前記電動走行が指示されたときには前記オリフィスの開口断面積が前記所定断面積より大きくなるよう前記マウントを制御する手段である
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、ハイブリッド走行が指示されたときにはオリフィスの開口断面積が予め定められた所定断面積となるようマウントを制御する。これにより、収納ケースから車体に振動が伝搬するのを抑制することができ、車室内に聞こえる車室内音をより小さくすることができる。そして、電動走行が指示されたときにはオリフィスの開口断面積が所定断面積より大きくなるようマウントを制御する。これにより、ハイブリッド走行が指示されたときに比して第1オイル室と第2オイル室との間を作動オイルが移動する際の移動抵抗が小さくなり、マウントを弾性体と考えるとマウントの動ばね定数が大きくなり、収納ケースから車体に振動が伝搬するのを促進することができる。したがって、電動機の駆動に起因する車室内音を大きくすることができ、車室内音が小さいことにより乗員が違和感を覚えるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン32とトランスミッションケース66とエンジンマウント60,62とトランスミッションマウント64との配置の一例を示す説明図である。
【図3】変形例のエンジン32とトランスミッションケース66とエンジンマウント160〜162とトランスミッションマウント164との配置の一例を示す説明図である。
【図4】トランスミッションマウント64の構成の概略を説明するための説明図である。
【図5】トランスミッションケース66に生じる振動の周波数とマウント特性A,Bの状態におけるトランスミッションマウント64の動ばね定数との関係を示す説明図である。
【図6】エンジン32の運転状態に応じてトランスミッションマウント64の特性を切り替える処理の一例を説明するための説明図である。
【図7】車速Vとモータ42の駆動に伴ってトランスミッションケース66に生じる振動の1次成分による車室内音の大きさとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン32と、エンジン32の冷却水の温度を検出する温度センサ33からの冷却水温度Twなどの種々の検出値や制御値を入力してエンジン32を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット36と、エンジン32のクランクシャフト34にキャリアが接続されると共に駆動輪26a,26bにデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸22にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ38と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ38のサンギヤに接続されたモータ41と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸22に接続されたモータ42と、モータ41,42を駆動するためのインバータ43,44と、インバータ43,44の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータ41,42を駆動制御するモータ用電子制御ユニット46と、インバータ43,44を介してモータ41,42と電力をやりとりするバッテリ48と、バッテリ48の温度を検出する温度センサ49からのバッテリ温度Tbやシフトレバーのポジションを検出するシフトポジションセンサ52からのシフトポジション,アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ56からのブレーキポジション,車速センサ58からの車速を入力すると共にエンジン用電子制御ユニット36やモータ用電子制御ユニット46と通信して車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット50と、を備える。
【0012】
エンジン32は、図2に例示するように、エンジン32の両側面に取り付けられたエンジンマウント60,62により車体に懸架されている。また、プラネタリギヤ38とモータ41,42とインバータ43,44とは、エンジン32の前方に取り付けられたトランスミッションケース66内に収納された状態でトランスミッションケース66の前方に取り付けられトランスミッションマウント64により車体に懸架されている。なお、エンジン32とトランスミッションケース66とを車両の横方向に並べて懸架(横置き)する際には、図3に例示するように、エンジン32は、エンジン32の両側面のうち一方の側面と他方の側面の前面側と他方の側面の背面側とに取り付けられたエンジンマウント60〜162により車体に懸架されており、エンジン32の両側面のうち他方の側面にはトランスミッションケース66が取り付けられる。そして、トランスミッションケース66は、トランスミッションケース66の両側面のうちエンジン32が取り付けられている側と反対側の側面に取り付けられたトランスミッションマウント164により車体に懸架されている。
【0013】
エンジンマウント60,62(図3ではエンジンマウント160〜162)は、内部に振動を吸収するためのゴムなどの弾性体を有しており、エンジン32を運転する際に生じると推定される振動の周波数帯のほぼ全域に対して動ばね定数が比較的小さい所定値Krefになるよう構成されている。こうして構成されたエンジンマウント60,62を用いてエンジン32を車体に懸架することにより、エンジン32の運転に伴う振動や騒音が車体に伝達するのを抑制することができ、車室内に聞こえるエンジン32の運転に伴う車室内音を小さくすることができる。
【0014】
図4は、トランスミッションケース66を車体に懸架するトランスミッションマウント64(図3ではトランスミッションマウント164)の構成の概略を説明するための説明図である。トランスミッションマウント64は、内部に液体が封入された液封式マウントとして構成されており、トランスミッションケース66に取り付けられる取付金具70と、車体に取り付けられる取付金具72と、取付金具70と取付金具72とを連結する防振ゴム74と、防振ゴム74とダイヤフラム76との間の空間を防振ゴム74側の受圧室78とダイヤフラム76側の平衡室80とに仕切ると共に受圧室78と平衡室80とを連通するアイドルオリフィス82a,シェイクオリフィス82bが形成された仕切り部材82と、ダイヤフラム76の中央部を押圧する押圧金具84を壁面とする負圧室86と負圧室86に連通する負圧ポート88と負圧室86内に接地され押圧金具84をダイヤフラム76の方向へ付勢するコイルスプリング90と負圧ポート88に空気を供給する空気供給装置92とを有する負圧アクチュエータ94と、を備える。受圧室78内および平衡室80内には、それぞれオイルが封入されている。こうして構成されたトランスミッションマウント64では、負圧アクチュエータ94の空気供給装置92で負圧室86内の気圧を調整することにより、アイドルオリフィス82aとシェイクオリフィス82bとの両方を開口するかアイドルオリフィス82aを閉塞してシェイクオリフィス82bを開口するか、すなわち、アイドルオリフィス82aの開口している部位の断面積とシェイクオリフィス82bの開口している部位の断面積との和である総開口断面積を調整して、トランスミッションマウント64全体を1つの弾性体としたときの動ばね定数(以下、「トランスミッションマウント64の動ばね定数」という)を調整している。つまり、負圧室86内の気圧が大気圧になると、コイルスプリング90の付勢力で押圧金具84がダイヤフラム76の方向へ押圧されてダイヤフラム76がアイドルオリフィス82aを閉塞すると共にシェイクオリフィス82bが開口した状態(総開口断面積がシェイクオリフィス82bの断面積である値S1)となり、封入されているオイルがシェイクオリフィス82bのみを通って受圧室78と平衡室80との間を移動する。この状態では、受圧室78と平衡室80との間を移動するオイルの移動抵抗が比較的大きくなり、トランスミッションマウント64の動ばね定数が比較的小さい値となる(以下、この状態を「マウント特性A」の状態という)。また、負圧室86内の気圧が大気圧より低い負圧になると、押圧金具84とダイヤフラム76とがアイドルオリフィス82aから離間する方向に吸引されてアイドルオリフィス82aとシェイクオリフィス82bとの両方が開口した状態(総開口断面積がシェイクオリフィス82bの断面積である値S1とアイドルオリフィス82aの断面積である値S2との和)になり、封入しているオイルがアイドルオリフィス82aとシェイクオリフィス82bとの両方を通って受圧室78と平衡室80との間を移動する。この状態では、受圧室78と平衡室80との間を移動するオイルの移動抵抗が比較的小さくなり、トランスミッションマウント64の動ばね定数が特定の周波数範囲の振動に対して比較的大きくなる(以下、この状態を「マウント特性B」の状態という」)。トランスミッションマウント64は、マウント特性Aの状態でトランスミッションケース66の振動の周波数範囲のほぼ全域で動ばね定数が所定値Kref未満になり、マウント特性Bの状態でトランスミッションマウント64の振動の周波数範囲のうちモータ42の駆動に伴って生じる振動の周波数範囲frefにおける動ばね定数が所定値Krefより大きくなるよう、アイドルオリフィス82aやシェイクオリフィス82bの断面積などが調整されている。図5は、トランスミッションケース66に生じる振動の周波数とマウント特性A,Bの状態におけるトランスミッションマウント64の動ばね定数との関係を示す説明図である。図中、破線は、マウント特性Aの状態におけるトランスミッションケース66の振動の周波数とトランスミッションマウント64の動ばね定数との関係を示しており、実線は、マウント特性Bの状態におけるトランスミッションケース66の振動の周波数とトランスミッションマウント64の動ばね定数との関係を示している。ここで、所定値Krefは、トランスミッションケース66から車体に伝搬する振動により生じる車室内音の大きさを乗員が比較的静粛性があると感じる程度に小さくすることが可能な動ばね定数として実験や解析などで求めた値を用いるものとした。なお、負圧アクチュエータ94は、ハイブリッド用電子制御ユニット50に制御されている。
【0015】
実施例のハイブリッド自動車20では、基本的には、ハイブリッド用電子制御ユニット50によって実行される以下に説明する駆動制御によりエンジン32の間欠運転を伴って走行する。以下、説明の都合上、エンジン32から出力される動力とモータ42から入出力される動力とを用いた走行をハイブリッド走行といい、モータ42から入出力される動力だけを用いた走行を電動走行という。ハイブリッド用電子制御ユニット50は、まず、アクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度と車速センサ58からの車速Vとに応じて走行のために駆動軸22に要求される要求トルクを設定すると共に設定した要求トルクに駆動軸22の回転数(例えば、モータ42の回転数や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーを計算する。続いて、計算した走行用パワーからバッテリ48に蓄えられている蓄電量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCに応じて得られるバッテリ48を充放電するための補正パワー(バッテリ48から放電するときが正の値)を減じてエンジン32から出力すべきパワーとしてのエンジン指令パワーを設定する。そして、設定したエンジン指令パワーをエンジン32を始動するための始動用閾値やエンジン32の運転を停止するための停止用閾値と比較し、エンジン32の運転を停止しているときにエンジン指令パワーが始動用閾値を超えたときやエンジン32を運転しているときにエンジン指令パワーが停止用閾値以上のとき、すなわち、ハイブリッド走行による走行の指示がなされたときには、エンジン32が運転を停止しているときにはエンジン32を始動し、エンジン32が運転されているときにはエンジン32の運転を継続する。ここで、始動用閾値は、エンジン32を効率よく運転することができるパワー領域の下限近傍のパワーとして予め定められたパワーを用いるものとし、停止用閾値は、始動用閾値より若干小さいパワーとして予め定められたパワーを用いるものとした。エンジン32の運転を継続しているときやエンジン32を始動した後は、エンジン指令パワーを効率よくエンジン32から出力することができるエンジン32の回転数とトルクとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン32の目標回転数と目標トルクとからなる目標運転ポイントを設定し、バッテリ48を充放電することができる最大電力としての入出力制限の範囲内で、エンジン32の回転数が目標回転数となるようにするための回転数フィードバック制御によりモータ41から出力すべきトルクとしてのトルク指令を設定すると共にモータ41をトルク指令で駆動したときにプラネタリギヤ38を介して駆動軸22に作用するトルクを要求トルクから減じて得られるトルクをモータ42のトルク指令として設定する。そして、設定したエンジン32の目標回転数と目標トルクとについてはエンジン用電子制御ユニット36に送信し、モータ41,42のトルク指令についてはモータ用電子制御ユニット46に送信する。目標回転数と目標トルクとを受信したエンジン用電子制御ユニット36は、目標回転数と目標トルクとによってエンジン32が運転されるようエンジン32の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを実行し、モータ41,42のトルク指令を受信したモータ用電子制御ユニット46は、モータ41,42がトルク指令で駆動されるようインバータ43,44のスイッチング素子をスイッチング制御する。こうした制御により、ハイブリッド自動車20をハイブリッド走行により走行させることができる。
【0016】
設定したエンジン指令パワーをエンジン32を始動するための始動用閾値やエンジン32の運転を停止するための停止用閾値と比較し、エンジン32を運転しているときにエンジン指令パワーが停止用閾値を下回ったときやエンジン32の運転を停止しているときにエンジン指令パワーが始動用閾値以下であるとき、即ち、電動走行の指示がなされたときには、エンジン32の運転を停止するようエンジン用電子制御ユニット36にエンジン運転停止指令を送信する。エンジン運転指令を受信したエンジン用電子制御ユニット36は、エンジン32が運転されているときにはエンジン32の運転を停止し、エンジン32の運転が停止しているときにエンジン32の運転の停止を継続する。エンジン32の運転停止を継続しているときやエンジン32の運転を停止した後は、モータ41のトルク指令に値0を設定すると共に要求トルクをモータ42のトルク指令に設定し、設定したモータ41,42のトルク指令をモータ用電子制御ユニット46に送信する。モータ41,42のトルク指令を受信したモータ用電子制御ユニット46は、モータ41,42がトルク指令で駆動されるようインバータ43,44のスイッチング素子をスイッチング制御する。こうした制御により、ハイブリッド自動車20を電動走行により走行させることができる。
【0017】
また、ハイブリッド用電子制御ユニット50は、図6に示すように、エンジン32の運転状態に応じてトランスミッションマウント64の特性を切り替える。すなわち、図示するように、ハイブリッド走行の指示がなされてエンジン32が運転中であるときには(ステップS100)、トランスミッションマウント64がマウント特性Aの状態になるよう負圧アクチュエータ94を制御し(ステップS110)、電動走行の指示がなされてエンジン32が運転を停止しているときには(ステップS100)、トランスミッションマウント64がマウント特性Bの状態になるよう負圧アクチュエータ94を制御する(ステップS120)。図7は、車速Vとモータ42の駆動に伴ってトランスミッションケース66に生じる振動の1次成分により車室内に生じる車室内音の大きさとの関係を示す説明図である。図示するように、エンジン32を停止しているときには、トランスミッションマウント64をマウント特性Bの状態にするから、モータ42の駆動に伴ってトランスミッションケース66から車体に伝搬する振動をマウント特性Aの状態であるときより大きくすることができ、車室内に聞こえるモータ42の音を大きくすることができる。このように、エンジン32を運転しているとき、すなわち、ハイブリッド走行をしているときには、トランスミッションマウント64をマウント特性Aの状態にして動ばね定数をトランスミッションケース66に生じる振動の周波数範囲のほぼ全域に対して所定値Kref未満にすることにより、トランスミッションケース66から車体に伝搬する振動を小さくすることができる。これにより、車室内音を小さくすることができ、乗り心地の向上を図ることができる。また、エンジン32の運転を停止しているとき、すなわち、電動走行をしているときには、トランスミッションマウント64をマウント特性Bの状態にすることにより、トランスミッションケース66に生じる振動のうち周波数範囲Δfの振動についてはトランスミッションケース66から車体に大きく伝搬するようにし、周波数範囲Δf以外の周波数の振動についてはトランスミッションケース66から車体に小さく伝搬させることができる。これにより、モータ42の駆動に伴って車室内に生じる振動や運転者に聞こえる車室内音を大きくすることができ、ハイブリッド走行に比して電動走行時の振動や車室内音が小さいため運転者が違和感を覚えるのを抑制することができる。また。周波数範囲Δf以外の振動については、車体への伝搬を抑制するから、乗り心地の向上を図ることができる。
【0018】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、ハイブリッド走行が指示されたときにはトランスミッションケース66に生じる振動の周波数範囲のほぼ全域に対してトランスミッションマウント64の動ばね定数が所定値tref未満(マウント特性Aの状態、すなわち、総開口断面積が値S1)になるようトランスミッションマウント64の負圧アクチュエータ94を制御することにより、トランスミッションマウント64から車体に伝搬する振動を小さくすることができ、乗り心地の向上を図ることができる。そして、電動走行が指示されたときにはトランスミッションケース66に生じる振動のうちモータ42の駆動に伴って生じる振動の周波数範囲Δfにおけるトランスミッションマウント64の動ばね定数が所定値tref以上(マウント特性Bの状態、すなわち、オリフィスの総開口断面積が値S1より大きい値(S1+S2))となるようトランスミッションマウント64の負圧アクチュエータ94を制御することにより、トランスミッションケース66から車体に伝搬する振動のうち周波数範囲Δfの振動を大きくして車室内音を大きくすることができ、車室内音が小さいことにより乗員が違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0019】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン32が「内燃機関」に相当し、モータ42が「電動機」に相当し、バッテリ48が「二次電池」に相当し、トランスミッションケース66が「収納ケース」に相当し、エンジンマウント60,62とトランスミッションマウント64とが「複数のマウント」に相当し、トランスミッションマウント64が「複数のマウントのうち収納ケースに取りつけられたマウント」に相当し、ハイブリッド走行が指示されたときにハイブリッド走行により走行するようエンジン32の目標回転数と目標トルクとを設定してエンジン用電子制御ユニット36に送信すると共にモータ41,42のトルク指令を設定してモータ用電子制御ユニット46に送信する処理や電動走行が指示されたときに電動走行により走行するようエンジン運転停止指令をエンジン用電子制御ユニット36に送信すると共にモータ41のトルク指令に値0を設定すると共に要求トルクをモータ42のトルク指令に設定して設定したモータ41,42のトルク指令をモータ用電子制御ユニット46に送信する処理,ハイブリッド走行が指示されたときにはトランスミッションケース66に生じる振動の周波数範囲のほぼ全域に対してトランスミッションマウント64の動ばね定数が所定値tref未満(マウント特性Aの状態、すなわち、総開口断面積が値S1)になるようトランスミッションマウント64の負圧アクチュエータ94を制御する処理,電動走行が指示されたときにはトランスミッションケース66に生じる振動のうちモータ42の駆動に伴って生じる振動の周波数範囲Δfにおけるトランスミッションマウント64の動ばね定数が所定値tref以上(マウント特性Bの状態、すなわち、オリフィスの総開口断面積が値S1より大きい値(S1+S2))となるようトランスミッションマウント64の負圧アクチュエータ94を制御する処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット50と目標回転数と目標トルクとによってエンジン32が運転されるようエンジン32の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを実行したりエンジン運転停止指令によってエンジン32の運転を停止する処理を実行するエンジン用電子制御ユニット36とモータ41,42がトルク指令で駆動されるようインバータ43,44のスイッチング素子をスイッチング制御するモータ用電子制御ユニット46とが「制御手段」に相当する。
【0020】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
20 ハイブリッド自動車、22 駆動軸、24 デファレンシャルギヤ、26a,26b 駆動輪、32 エンジン、33 温度センサ、34 クランクシャフト、36 エンジン用電子制御ユニット、38 プラネタリギヤ、41,42 モータ、43,44 インバータ、46 モータ用電子制御ユニット、48 バッテリ、49 温度センサ、50 ハイブリッド用電子制御ユニット、52 シフトポジションセンサ、54 アクセルペダルポジションセンサ、56 ブレーキペダルポジションセンサ、58 車速センサ、60,62,160〜162 エンジンマウント、64,164 トランスミッションマウント、66 トランスミッションケース、70,72 取付金具、74 防振ゴム、76 ダイヤフラム、78 受圧室、80 平衡室、82 仕切り部材、82a アイドルオリフィス、82b シェイクオリフィス、84 押圧金具、86 負圧室、88 負圧ポート、90 コイルスプリング、92 空気供給装置、94 負圧アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、走行用の動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、前記内燃機関に取り付けられると共に内部に前記電動機が収納された収納ケースと、前記内燃機関および前記収納ケースを車体に懸架すると共に少なくとも1つが前記収納ケースに取りつけられた複数のマウントと、前記内燃機関からの動力と前記電動機からの動力とを用いて走行するハイブリッド走行が指示されたときには前記ハイブリッド走行により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御すると共に前記内燃機関の運転を停止した状態で前記電動機からの動力を用いて走行する電動走行が指示されたときには前記電動走行により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、を備えるハイブリッド自動車において、
前記複数のマウントのうち前記収納ケースに取りつけられたマウントは、前記収納ケースに取り付けられた収納ケース取付部と前記車体に取り付けられた車体取付部とが連結ゴムにより連結されてなり、壁面の一部が前記連結ゴムで構成された第1オイル室およびオリフィスが形成された隔壁によって前記第1オイル室と隔てられた第2オイル室に作動オイルが封入されており、前記オリフィスの断面積のうち開口している開口断面積を変更することにより前記収納ケースから前記車体に伝搬する振動の程度を変更可能なマウントであり、
前記複数のマウントのうち前記収納ケースに取りつけられたマウントは、前記収納ケースに取り付けられた収納ケース取付部と、前記車体に取り付けられた車体取付部と、前記収納ケース取付部と前記車体取付部とを連結する連結ゴムと、壁面の一部が前記連結ゴムで構成され作動オイルが封入された第1オイル室と、オリフィスが形成された隔壁によって前記第1オイル室と隔てられ前記作動オイルが封入された第2オイル室と、を有し、前記オリフィスの断面積のうち開口している開口断面積を変更することによって前記収納ケースから前記車体に伝搬する振動の程度を変更可能なマウントであり、
前記制御手段は、前記ハイブリッド走行が指示されたときには前記オリフィスの開口断面積が予め定められた所定断面積となるよう前記マウントを制御し、前記電動走行が指示されたときには前記オリフィスの開口断面積が前記所定断面積より大きくなるよう前記マウントを制御する手段である
ハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218923(P2011−218923A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88875(P2010−88875)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】