説明

パッケージの製造方法、圧電振動子の製造方法、発振器、電子機器および電波時計

【課題】抵抗値が大きい接合材35を採用する場合でも、接合材35とベース基板用ウエハ40との間を確実に陽極接合することが可能な、パッケージの製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁体からなるリッド基板用ウエハ50の内面に予め固着された接合材35と、絶縁体からなるベース基板用ウエハ40の内面とを陽極接合することにより、パッケージを製造する方法であって、リッド基板用ウエハ50の外面に陽極となる接合補助材72を配置し、ベース基板用ウエハ40の外面に陰極71を配置して電圧を印加する陽極接合工程を有し、接合補助材72は、前記陽極接合工程において前記接合補助材と前記第1基板との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、圧電振動子の製造方法、圧電振動子を有する発振器、電子機器および電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末には、時刻源や制御信号などのタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その一つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子として、圧電振動片が形成された圧電基板をベース基板とリッド基板とで上下から挟み込むように接合した3層構造タイプのものが知られている。この場合、圧電振動子は、ベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ(密閉室)内に収納されている。
【0003】
また近年では、上述した3層構造タイプのものではなく、2層構造タイプのものも開発されている。このタイプの圧電振動子は、ベース基板とリッド基板とが直接接合されることでパッケージ化された2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が収納されている。このパッケージ化された2層構造タイプの圧電振動子は、3層構造のものに比べて薄型化を図ることができるなどの点において優れており、好適に使用されている。
【0004】
ガラス材料からなるベース基板とリッド基板とを直接接合させる方法として、陽極接合が提案されている。陽極接合は、一方の基板の内面に接合材を固着した上で、その接合材にプローブを接続して陽極とし、他方の基板の外面に陰極を配置して電圧を印加することにより、接合材と他方の基板の内面とを接合するものである(例えば、特許文献1参照)。この接合材の材料として、Alが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−72433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、陽極接合に利用した接合材が接合後のパッケージの外側に露出すると、Alで形成された接合材が腐食して、パッケージの気密性が低下するという問題がある。
そこで近時では、接合材の材料として、Siの採用が検討されている。
ところが、Si膜はシート抵抗が大きいので、厚さが薄い接合材をSiで形成すると抵抗値が大きくなる。そのため、陽極接合時に接合材にプローブを接続すると、プローブ接続点からの距離に比例して電圧降下が大きくなる。これにより、接合材の電位が不均一になり、プローブ接続点の近くでは陽極接合されるものの、プローブ接続点から離れた場所では陽極接合されなくなるという問題がある。
【0007】
なお、プローブ接続点から離れた場所でも陽極接合させるには、高電圧を印加して陽極接合を行う必要があり、エネルギー消費量が大きくなる。
また、抵抗値が低いSi膜を形成するには、スパッタやCVD等によるSi膜の形成を高温(800℃以上)で行う必要がある。ところが、Si膜を形成するガラス基板の軟化点は600℃程度であるため、ガラス基板上に高温でSi膜を形成するのは困難である。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、抵抗値が大きい接合材を採用する場合でも、接合材と基板との間を確実に陽極接合することが可能な、パッケージの製造方法および圧電振動子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するために、本発明に係るパッケージの製造方法は、絶縁体からなる第1基板の内面に予め固着された接合材と、絶縁体からなる第2基板の内面とを陽極接合することにより、パッケージを製造する方法であって、前記第1基板の外面に陽極となる接合補助材を配置し、前記第2基板の外面に陰極を配置して電圧を印加する陽極接合工程を有し、前記接合補助材は、前記陽極接合工程において前記接合補助材と前記第1基板との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、接合補助材と陰極との間に電圧を印加することで、接合補助材と第1基板の外面との間に陽極接合反応が発生し、これに連動して接合材と第2基板の内面との間が陽極接合される。これにより、抵抗値が大きい接合材を採用する場合でも、接合材の全面に対して均一に電圧を印加することが可能になり、接合材と第2基板の内面との間を確実に陽極接合することができる。なお接合補助材の抵抗値は任意に設定できるので、抵抗値が小さい接合補助材を採用することにより、抵抗値が小さい接合材を採用した場合と同様の条件で陽極接合を行うことができる。
【0010】
また前記接合材は、Al、Si膜またはSiバルク材で形成されていることが望ましい。特に前記接合材は、Si膜で形成されていることが望ましい。
Si膜はシート抵抗が大きいので、厚さが薄い接合材をSiで形成すると抵抗値が大きくなるが、本発明によれば接合材と第2基板の内面との間を確実に陽極接合することができる。そして、陽極接合に利用した接合材が接合後のパッケージの外側に露出する場合でも、Siで形成された接合材は腐食しないので、パッケージの気密性の低下を防止することができる。
【0011】
また前記接合補助材は、Al、Siバルク材、CrまたはCで形成されていることが望ましい。
この構成によれば、接合補助材と第1基板の外面との間において確実に陽極接合反応を発生させることができるので、これに連動して接合材と第2基板の内面との間を確実に陽極接合することができる。
【0012】
また前記接合補助材は、アルミ箔等の薄膜であることが望ましい。
接合補助材として、取り扱いが容易で安価なアルミ箔等の薄膜を採用することにより、製造コストの上昇を抑制することができる。またアルミ箔等の薄膜は厚さが薄いので、陽極接合工程の後に簡単に除去することができる。
【0013】
また前記陽極接合工程の後に、前記接合補助材を除去する工程を有することが望ましい。
この構成によれば、接合補助材が残存していない従来と同様のパッケージを製造することができる。
【0014】
本発明に係る圧電振動子の製造方法は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法を使用して製造したパッケージの内部に、圧電振動片を真空封止することにより、圧電振動子を製造することを特徴とする。
この構成によれば、接合材と基板との間が確実に陽極接合されて気密性に優れたパッケージを備えているので、圧電振動片の真空封止の信頼性を向上させることができる。これにより、圧電振動子の直列共振抵抗値(R1)が低い状態に維持されるので、低電力で圧電振動片を振動させることが可能になり、エネルギー効率に優れた圧電振動子を製造することができる。
【0015】
本発明に係る発振器は、上述した圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明に係る電子機器は、上述した圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明に係る電波時計は、上述した圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
この発明によれば、エネルギー効率に優れた圧電振動子を備えているので、エネルギー効率に優れた発振器、電子機器および電波時計を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパッケージの製造方法によれば、接合補助材と陰極との間に電圧を印加することで、接合補助材と第1基板の外面との間に陽極接合反応が発生し、これに連動して接合材と第2基板の内面との間が陽極接合される。これにより、抵抗値が大きい接合材を採用する場合でも、接合材の全面に対して均一に電圧を印加することが可能になり、接合材と第2基板の内面との間を確実に陽極接合することができる。なお接合補助材の抵抗値は任意に設定できるので、抵抗値が小さい接合補助材を採用することにより、抵抗値が小さい接合材を採用した場合と同様の条件で陽極接合を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】圧電振動子のリッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う側面断面図である。
【図4】圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動片の平面図である。
【図6】圧電振動片の底面図である。
【図7】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図8】実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図9】ウエハ体の分解斜視図である。
【図10】接合工程の説明図であり、図9のC−C線に沿う断面の部分拡大図である。
【図11】接合反応の説明図である。
【図12】接合補助材除去工程の説明図であり、図9のC−C線に沿う断面の部分拡大図である。
【図13】実施形態に係る発振器の構成図である。
【図14】実施形態に係る電子機器の構成図である。
【図15】実施形態に係る電波時計の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(圧電振動子)
次に、本発明の実施形態に係る圧電振動子を、図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図である。図2は、圧電振動子のリッド基板を取り外した状態の平面図である。図3は、図2のA−A線に沿う側面断面図である。図4は、圧電振動子の分解斜視図である。なお図4では、図面を見易くするために、後述する圧電振動片4の励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17及び重り金属膜21の図示を省略している。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2およびリッド基板3が接合材35を介して陽極接合されたパッケージ9と、パッケージ9のキャビティCに収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0019】
図5は圧電振動片の平面図であり、図6は底面図であり、図7は図5のB−B線に沿う断面図である。
図5〜図7に示すように、圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、該一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の両主面上に形成された溝部18とを備えている。この溝部18は、該振動腕部10,11の長手方向に沿って振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0020】
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10,11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10,11を振動させる第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16,17とを有している。励振電極15、マウント電極16,17及び引き出し電極19,20は、例えば、クロム(Cr)やニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)などの導電性材料の被膜により形成されている。
【0021】
励振電極15は、一対の振動腕部10,11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極である。励振電極15を構成する第1の励振電極13および第2の励振電極14は、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極16,17に電気的に接続されている。
【0022】
また、一対の振動腕部10,11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。
【0023】
図1、図3及び図4に示すように、リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティC用の凹部3aが形成されている。
リッド基板3におけるベース基板2との接合面側の全体に、陽極接合用の接合材35が形成されている。すなわち接合材35は、凹部3aの内面全体に加えて、凹部3aの周囲の額縁領域に形成されている。本実施形態の接合材35はSi膜で形成されているが、接合材35をAlで形成することも可能である。なお接合材として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材を可能することも可能である。そして後述するように、この接合材35とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0024】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる基板であり、図1〜図4に示すように、リッド基板3と同等の外形で略板状に形成されている。
ベース基板2の上面2a側(リッド基板3との接合面側)には、図1〜図4に示すように、一対の引き回し電極36,37がパターニングされている。各引き回し電極36,37は、例えば下層のCr膜及び上層のAu膜の積層体によって形成されている。
そして図3、図4に示すように、引き回し電極36,37の表面に、金などのバンプBを介して、上述した圧電振動片4のマウント電極16,17がバンプ接合されている。圧電振動片4は、ベース基板2の上面2aから振動腕部10,11を浮かせた状態で接合されている。
【0025】
またベース基板2には、該ベース基板2を貫通する一対の貫通電極32,33が形成されている。各貫通電極32,33は、ステンレスやAg、Al等の導電性を有する金属材料によって形成されている。一方の貫通電極32は、一方の引き回し電極36の直下に形成されている。他方の貫通電極33は、振動腕部11の先端付近に形成され、引き回し配線を介して他方の引き回し電極37に接続されている。
またベース基板2の下面2bには、図1、図3及び図4に示すように、一対の外部電極38,39が形成されている。一対の外部電極38,39は、ベース基板2の長手方向の両端部に形成され、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0026】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。すると、一方の外部電極38から、一方の貫通電極32及び一方の引き回し電極36を介して、圧電振動片4の第1の励振電極13に通電される。また他方の外部電極39から、他方の貫通電極33及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極14に通電される。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電流を流すことができ、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源などとして利用することができる。
【0027】
(圧電振動子の製造方法)
次に、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法について説明する。図8は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図9は、ウエハ体の分解斜視図である。以下には、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片4を封入してウエハ体60を形成し、ウエハ体60を切断することにより複数の圧電振動子を同時に製造する方法について説明する。なお、図9以下の各図に示す点線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
【0028】
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)を有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)およびベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。また本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、リッド基板およびベース基板が接合材を介して陽極接合されてなるパッケージの製造方法を含んでいる。パッケージの製造方法は、主に、接合材形成工程(S24)と、接合工程(S60)と、接合補助材除去工程(S65)とを有している。
【0029】
圧電振動片作製工程(S10)では、図5〜図7に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄などの適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状にパターニングするとともに、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17、重り金属膜21を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。次に、圧電振動片4の共振周波数の粗調を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、振動腕部の重量を変化させることで行う。
【0030】
リッド基板用ウエハ作製工程(S20)では、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のリッド基板用ウエハ50を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50におけるベース基板用ウエハ40との接合面に、キャビティ用の凹部3aを複数形成する(S22)。凹部3aの形成は、加熱プレス成形やエッチング加工などによって行う。次に、ベース基板用ウエハ40との接合面を研磨する(S23)。
【0031】
次に、ベース基板用ウエハ40との接合面に接合材35を形成する(S24)。接合材35は、ベース基板用ウエハ40との接合面に加えて、凹部3aの内面全体に形成してもよい。これにより、接合材35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。接合材35の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。なお、接合材形成工程(S24)の前に研磨工程(S23)を行っているので、接合材35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
【0032】
ベース基板用ウエハ作製工程(S30)では、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のベース基板用ウエハ40を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S31)。次いで、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程を行う(S32)。貫通電極32,33は、例えば、ベース基板用ウエハ40にスルーホール30,31を形成し、スルーホール30,31内に銀ペーストなどの導電材を充填した後、焼成することで形成する。次に、一対の貫通電極32,33に電気的接続された引き回し電極36,37を形成する引き回し電極形成工程を行う(S33)。
【0033】
ところで、ベース基板用ウエハ40の表面に、引き回し電極36,37とともに接合材35を形成することも考えられる。しかしながら、この場合には、引き回し電極36,37の形成後に接合材35を形成することになり、製造時間が長くなる。また両者間の拡散を防止するため、引き回し電極36,37をマスクしつつ接合材35を形成する必要があり、製造工程が複雑化する。これに対して、本実施形態では、リッド基板用ウエハ50に接合材35を形成し、ベース基板用ウエハ40に引き回し電極36,37を形成する。これにより、引き回し電極36,37の形成と接合材35の形成とを並行して実施することが可能になり、製造時間を短縮することができる。また両者間の拡散を考慮する必要がないので、製造工程を簡略化することができる。
【0034】
マウント工程(S40)では、作製した複数の圧電振動片4を、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極36,37の上面に接合する。具体的には、まず一対の引き回し電極36,37上にそれぞれ金などのバンプBを形成する。次に、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置し、バンプBを所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプBに押し付ける。これにより、圧電振動片4の振動腕部10,11がベース基板用ウエハ40の上面から浮いた状態で、基部12がバンプBに機械的に固着される。また、マウント電極16,17と引き回し電極36,37とが電気的に接続された状態となる。
【0035】
重ね合わせ工程(S50)では、圧電振動片4のマウントが終了したベース基板用ウエハ40に対して、リッド基板用ウエハ50を重ね合わせる。具体的には、図示しない基準マークなどを指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、ベース基板用ウエハ40にマウントされた圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50の凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。
【0036】
(接合工程)
図10および図11は、接合工程の説明図であって、図9のC−C線に沿った断面の部分拡大図である。
図10(a)に示すように、接合工程(S60)では、リッド基板用ウエハ50の上面に接合補助材72を配置する。接合補助材72は、接合補助材72とリッド基板用ウエハ50との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されている。具体的には、接合補助材とガラスと電極とを重ね合わせ、加熱すると同時に、接合補助材側を陽極とし電極側を陰極として電圧を印加した場合に、ガラスに含まれるナトリウムイオンを陰極に向かって移動させ、ガラスの接合補助材側に負電荷層を発生させる材料である接合材。より具体的には、接合補助材72の材料として、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)バルク材、クロム(Cr)、カーボン(C)等の、薄膜やバルク材を採用することができる。なおバルク材とは、相当な厚さを有する基板状の部材である。図10(a)に示す本実施形態では、接合補助材72としてアルミ箔を採用している。取り扱いが容易で安価なアルミ箔を採用することにより、製造コストの増加を抑制することができる。
【0037】
接合工程(S60)では、リッド基板用ウエハ50の上面に接合補助材72を配置するとともに、ベース基板用ウエハ40の下面に電極71を配置する。電極71は、ステンレスやカーボン(C)等で形成されている。次に、治具(不図示)を用いて接合補助材72と電極71との間を押圧し、ウエハ体60に圧力をかける。次に、治具ごとウエハ体60を陽極接合装置の内部に入れる。次に、陽極接合装置の内部を所定温度に保持して、ウエハ体60を加熱する。同時に、接合補助材72が陽極となり電極71が陰極となるように直流電源70を接続して、ウエハ体60に電圧を印加する。本実施形態の接合補助材72は抵抗値が小さいアルミニウムで形成されているので、接合補助材72の内部で電圧降下が発生することはなく、リッド基板用ウエハ50の全面に対して均一に電圧を印加することができる。
【0038】
これにより、図11に示すように、リッド基板用ウエハ50のガラス材料に含まれるナトリウムイオンが接合材35に向かって移動する。これに連動して、ベース基板用ウエハ40のガラス材料に含まれるナトリウムイオンも電極71に向かって移動し、電流が流れる。そのため、ベース基板用ウエハ40の接合材35側には、ナトリウムイオンが欠乏した負電荷層が形成される。この負電荷層と接合材35との間に静電引力が発生して、ベース基板用ウエハ40と接合材35との界面F2が陽極接合される。なお、リッド基板用ウエハ50の接合補助材72側にも、ナトリウムイオンが欠乏した負電荷層が形成される。そのため、リッド基板用ウエハ50と接合補助材72との界面F1も陽極接合される。
【0039】
一方、図10(b)に示す本実施形態の変形例では、接合補助材76としてSi膜を採用している。なお、ガラス等の絶縁材料からなる接合補助基板77の表面にSi膜を形成することで、Si膜を接合補助材76として取り扱うことができる。この変形例では、治具を用いて接合補助基板77と電極71との間を押圧し、ウエハ体60に圧力をかける。そして、Si膜に直流電源70を接続し、電極71との間に電圧を印加する。なお、Si膜の膜厚を厚く形成すれば、Si膜の抵抗値が小さくなるので、Si膜内部での電圧降下を抑制することができる。この変形例でも同様に、ベース基板用ウエハ40と接合材35との間を陽極接合することができる。ただし変形例では、接合補助基板77に固着した状態の接合補助材76が、リッド基板用ウエハ50に陽極接合されることになる。
【0040】
(接合補助材除去工程)
図12は、接合補助材除去工程の説明図であって、図9のC−C線に沿った断面の部分拡大図である。
図12(a)に示すように、接合補助材除去工程(S65)では、リッド基板用ウエハ50に陽極接合された接合補助材72を除去する。本実施形態では、リッド基板用ウエハ50の上面に接合補助材72としてアルミ箔が陽極接合されているので、このアルミ箔をエッチングによって除去する。アルミ箔は、ハロゲン系のエッチングガスを用いてエッチングすることができる。アルミ箔の厚さは数十μmと薄いので、短時間のエッチングでアルミ箔を除去することができる。
【0041】
一方、図12(b)に示す本実施形態の変形例では、リッド基板用ウエハ50の上面に、接合補助材76であるSi膜に加えて、接合補助基板77が固着されている。そこでこの変形例では、接合補助材76および接合補助基板77を研削によって除去する。具体的には、グラインダ装置等を使用して、破線79で示すリッド基板用ウエハ50の表層まで研削する。研削によれば、厚い接合補助基板77が固着されている場合でも、接合補助材76とともに接合補助基板77を短時間で除去することができる。
なお図12(a)に示す本実施形態でも、研削または研磨によりアルミ箔を除去することができる。
【0042】
外部電極形成工程(S70)では、ベース基板用ウエハの裏面に外部電極38,39を形成する。
ここで、ゲッタリング工程を行うことが望ましい。具体的には、予めキャビティの内面に形成しておいたゲッター材にレーザを照射する。これにより、ゲッター材が蒸発してキャビティ内の酸素と結合するので、キャビティ内の真空度を向上させることができる。ゲッター材として、クロム(Cr)やアルミニウム(Al)等を採用することができる。
【0043】
微調工程(S80)では、個々の圧電振動子1の周波数を微調整する。具体的には、まず外部電極38,39から所定電圧を継続的に印加して、圧電振動片4を振動させつつ周波数を計測する。この状態で、ベース基板用ウエハ40の外部からレーザ光を照射し、重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部10,11の先端側の重量が低下するため、圧電振動片4の周波数が上昇する。これにより、圧電振動子1の周波数を微調整して、公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0044】
切断工程(S90)では、接合されたウエハ体60を切断線Mに沿って切断する。具体的には、まずウエハ体60のベース基板用ウエハ40の表面にUVテープを貼り付ける。次に、リッド基板用ウエハ50側から切断線Mに沿ってレーザを照射する(スクライブ)。次に、UVテープの表面から切断線Mに沿って切断刃を押し当て、ウエハ体60を割断する(ブレーキング)。その後、UVを照射してUVテープを剥離する。これにより、ウエハ体60を複数の圧電振動子に分離することができる。なお、これ以外のダイシング等の方法によりウエハ体60を切断してもよい。
【0045】
電気特性検査工程(S100)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)などを測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性なども併せてチェックする。最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質などを最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0046】
以上に詳述したように、本実施形態に係るパッケージの製造方法は、リッド基板用ウエハ50の内面に接合材35を形成した上で、リッド基板用ウエハ50の外面に陽極となる接合補助材72を配置し、ベース基板用ウエハ40の外面に陰極となる電極71を配置して電圧を印加する陽極接合工程を有し、接合補助材72は、陽極接合工程において接合補助材72とリッド基板用ウエハ50との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されている構成とした。
この構成によれば、接合補助材72と電極71との間に電圧を印加することで、接合補助材72とリッド基板用ウエハ50の外面との間に陽極接合反応が発生し、これに連動して接合材35とベース基板用ウエハ40の内面との間が陽極接合される。これにより、抵抗値が大きい接合材35を採用する場合でも、接合材35の全面に対して均一に電圧を印加することが可能になり、接合材35とベース基板用ウエハ40の内面との間を確実に陽極接合することができる。なお接合補助材72の抵抗値は任意に設定できるので、抵抗値が小さい接合補助材72を採用することにより、抵抗値が小さい接合材を採用した場合と同様の条件で陽極接合を行うことができる。少なくとも接合材35より抵抗値が小さい接合補助材72を採用して接合補助材72に直流電源70を接続すれば、接合材35に直流電源を接続する場合より緩やかな条件(低電圧)で陽極接合を行うことができる。
【0047】
また本実施形態では、接合材35がSi膜で形成されている構成とした。
Si膜はシート抵抗が大きいので、厚さが薄い接合材をSiで形成すると抵抗値が大きくなるが、本実施形態によれば接合材35とベース基板用ウエハ40の内面との間を確実に陽極接合することができる。そして図3に示すように、陽極接合に利用した接合材35が接合後のパッケージ9の外側に露出する場合でも、Siで形成された接合材35は腐食しないので、パッケージ9の気密性の低下を防止することができる。
【0048】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図13を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図13に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0049】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0050】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保され、歩留まりが向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、発振器100自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0051】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図14を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0052】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図14に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0053】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示など、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAMなどとを備えている。
【0054】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報などが表示される。
【0055】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データなどの各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0056】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キーなどを押下することにより、通話先の電話番号などが入力される。
【0057】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112などの各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0058】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0059】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保され、歩留まりが向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、携帯情報機器自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0060】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図15を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図15に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0061】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0062】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。 続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0063】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0064】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保され、歩留まりが向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、電波時計自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0065】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では接合材の材料としてSi膜を採用したが、Alを採用することも可能である。この場合でも、本発明に係るパッケージの製造方法を使用することで、接合材とベース基板用ウエハとの間を確実に陽極接合することができる。なお、接合材の材料としてAlを採用すれば、リッド基板の凹部の底面に配置された接合材をゲッター材として利用することができる。この場合には、接合材とは別にゲッター材を形成する必要がないので、製造コストを低減することができる。
また、上記実施形態では接合補助材としてAlまたはSiを採用したが、Crまたはカーボンを採用してもよい。Crまたはカーボンを採用した場合には、陽極接合工程において接合補助材と第1基板との間に陽極接合反応が発生しても、接合補助材と第1基板とは接合されない。そのため、接合補助材除去工程を省略することができる。
【0067】
また上記実施形態では、リッド基板用ウエハの内面に接合材を形成した上で、リッド基板用ウエハの外面に陽極となる接合補助材を配置し、ベース基板用ウエハの外面に陰極を配置して電圧を印加することにより、接合材とベース基板用ウエハの内面との間を陽極接合したが、これとは逆に、ベース基板用ウエハの内面に接合材を形成した上で、ベース基板用ウエハの外面に陽極となる接合補助材を配置し、リッド基板用ウエハの外面に陰極を配置して電圧を印加することにより、接合材とリッド基板用ウエハの内面との間を陽極接合してもよい。
【0068】
また上記実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の物を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…圧電振動子 2…ベース基板(第2基板) 3…リッド基板(第1基板) 4…圧電振動片 9…パッケージ 35…接合材 40…ベース基板用ウエハ 50…リッド基板用ウエハ 60…ウエハ体 71…電極(陰極) 72…接合補助材 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体からなる第1基板の内面に予め固着された接合材と、絶縁体からなる第2基板の内面とを陽極接合することにより、パッケージを製造する方法であって、
前記第1基板の外面に陽極となる接合補助材を配置し、前記第2基板の外面に陰極を配置して電圧を印加する陽極接合工程を有し、
前記接合補助材は、前記陽極接合工程において前記接合補助材と前記第1基板との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されていることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記接合材は、Al、Si膜またはSiバルク材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記接合材は、Si膜で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記接合補助材は、Al、Siバルク材、CrまたはCで形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記接合補助材は、アルミ箔であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記陽極接合工程の後に、前記接合補助材を除去する工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法を使用して製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片を真空封止することにより、圧電振動子を製造することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法で製造された圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項7に記載の製造方法で製造された圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項7に記載の製造方法で製造された圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−49663(P2011−49663A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194468(P2009−194468)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】