説明

フイルムの欠陥検査装置及び方法

【課題】光学補償フイルム等の僅かな厚みムラや塗工ムラまでを検出できるようにする。
【解決手段】連続的に搬送されるフイルム7の下側の面に光源部15を配してあり、フイルム7に光を照射する。フイルム7からの透過光を受光する受光器16は、フイルム7を俯瞰するように配置されており、その光軸Pとフイルム7に垂直な基準線(法線)Lnと交差角度θ1が30°≦θ1≦50°となっている。また、受光器16は、基準線Lnを回転中心として搬送方向Sを基準に回転角度θ2だけ回転してあり、−60°≦θ2≦+60°を満たすようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フイルムに光を照射し、その透過光に基づいてフイルムの欠陥を検出するフイルムの欠陥検査装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学異方性のある液晶層を透明なフイルム上に形成することにより、液晶表示装置の視野角を改善することができる光学補償フイルム(位相差フイルム)が知られている。この光学補償フイルムは、長尺な透明フイルムに配向膜を形成し、その上に液晶を塗布し乾燥して液晶層を形成する各種工程を経て製造される(例えば、特許文献1参照)。このような製造工程は、厳格な管理下に置かれるが、製造工程での各種要因によって異物の混入,付着による分子配向ムラ、支持体となる透明フイルムの厚みムラ,液晶層の塗工ムラ等の欠陥を完全になくすことは困難である。このため、製造ライン上で検査を行ういわゆるオンライン検査を実施し、上記のような欠陥が発生した光学補償フイルム上の位置を把握する必要があった。
【0003】
光学補償フイルム等のフイルムの欠陥を検査する方法は、例えば特許文献2〜5等により各種のものが知られている。例えば特許文献2は、検査対象となる搬送中の透明フイルムに光源から検査光を照射し、その反射光、または透過光をラインセンサで受光することによって、フイルム表面に生じた微小な凹凸や、フイルム内部の異物混入、気泡欠陥さらにフイルム表面に施した反射防止膜部に生じる突起等を自動的に、そして高速に検出できるようにした検査方法を提案している。
【0004】
また、特許文献3は、連続的に移送される透明シートの一方の面に高輝度、高指向性の光を5°〜15°の角度で照射し、その透明シートを透過してきた光をカメラで受光し、カメラからの出力信号に画像処理を施したものに基づいて欠陥検出を行うようにしたものであり、微細な厚みムラ(深さ:0.1μm〜5μm、幅0.1〜10μm)を検出可能にしている。
【0005】
特許文献4は、検査対象となるフイルムを挟んで光源とカメラとを対向して配置するとともに、光源の前面に第1の偏光板を、カメラの前面に第2の偏光板をそれぞれ配置し、カメラからの出力信号に画像処理を施して欠陥検出を行うようにしたものである。この特許文献4の検査方法では、各偏光板の偏光方向を直交状態から20°程度ずらしており、フイルムの内部あるいは外部に異物が存在する部分で生じる偏光状態の変化による増光をカメラで捕えるものである。
【0006】
特許文献5は、特許文献4と同様に、光源,カメラ,第1の偏光板,第2の偏光板をそれぞれ配置するが、各偏光板の偏光方向のずれを±20°以内になるように配置することで、フイルムの分子配向ムラや若干の小さな歪みによる直角偏光成分を低減することで地合信号やフイルムの場所による透過光量変化を減少させ、欠陥部による偏光状態の変化を暗部信号として顕在化させるものである。
【特許文献1】特開平9−73081号公報
【特許文献2】特開平6−235624号公報
【特許文献3】特開平8−54351号公報
【特許文献4】特開平6−148095号公報
【特許文献5】特開平11−30591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、光学補償フイルム等に生じる非常に僅かな厚みムラや塗工ムラが生じた欠陥、例えば厚み差が1nm〜100nm程度の極僅かな欠陥に関しては、上記のような検出方法でその欠陥を検出することが難しかった。例えば特許文献2や特許文献3の検査方法で低反射タイプの光学用途フイルムや、光学補償フイルムの塗工ムラの検出を試みたが、十分な検出ができなかった。また、その塗工ムラを特許文献4の検査方法で捕えようと試みたが、やはり十分な検出結果を得ることができなかった。特に、分子配向ムラや厚みムラによる偏光状態の変化をフイルムに対し垂直方向から捕えようとしても、地合と欠陥とを検出しているときのカメラの出力信号の信号振幅レベルの比であるS/N比が低くなり、正常部分と欠陥部分とを分離できないという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献5の検査方法を用い、各偏光板の偏光方向のずれの角度を±20°以内になるように配置してフイルムの塗工ムラの検出を試みたが、偏光方向のずれの角度が0度以外ではS/N比は悪化し、しかも0度でも検出が難しいことがわかった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、僅かな厚みムラ,塗工ムラ,分子配向ムラ等の欠陥の検出をすることができるフイルムの欠陥検査装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するにあたり、請求項1記載のフイルムの欠陥検査装置では受光器を、その光軸とフイルム面に垂直な基準線との交差角度をθ1とし、基準線を回転中心にしたフイルムの搬送方向からの回転角度をθ2としたときに、「30°≦θ1≦50°」、「−60°≦θ2≦+60°」の条件を満たす位置に配置したものである。
【0011】
請求項2記載のフイルムの欠陥検査装置では、受光器を、撮影レンズと、ライン状に並べた多数の受光素子からなるラインセンサとから構成し、ライン状の受光エリアをフイルムの幅方向に対して傾けたものである。また、請求項3記載のフイルムの欠陥検査装置では、撮影レンズのピント合致位置を検査対象のフイルム面からずらしたものである。
【0012】
請求項4記載のフイルムの欠陥検査装置では検査対象のフイルムを、位相差フイルムとしたものであり、請求項5記載のフイルムの欠陥検査装置では、光源とフイルムとの間に第1の偏光板を配し、受光器とフイルムとの間に偏光方向が第1の偏光板と直交する第2の偏光板と配したものである。請求項6記載のフイルムの欠陥検査装置では、検査対象のフイルムを、反射防止膜フイルムとしたものである。
【0013】
請求項7記載のフイルムの欠陥検査方法では、受光器の光軸とフイルム面に垂直な基準線との交差角度をθ1とし、基準線を回転中心にしたフイルムの搬送方向からの回転角度をθ2としたときに、「30°≦θ1≦50°」、「−60°≦θ2≦+60°」の条件を満たす位置に受光器を配してフイルムを透過した光を受光するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フイルム面に垂直な基準線と光軸とが30°〜50°の範囲で交差し、基準線を回転中心にしてフイルムの搬送方向から−60°〜+60°の範囲で回転させた位置に受光器を配して搬送中のフイルムの欠陥を検査するようにしたから、極僅かなフイルム厚みのムラや塗工物の厚みムラを鋭敏に検出することができ、フイルム厚みや塗工物の厚みに非常に高精度な検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施した欠陥検査装置を図1に示す。フィルムロール3から送り出された長尺の透明樹脂フイルム3aは、配向膜を形成する装置4に送られ、その表面に配向膜形成用樹脂を含む塗布液が塗布・加熱乾燥されて、配向膜形成用樹脂層が形成される。そして、透明樹脂フイルム3aの配向膜形成用樹脂層を、ラビング処理を施して配向膜とした後に、液晶層を形成する装置5に送られる。
【0016】
装置5では、透明樹脂フイルム3aの配向膜上に、液晶性化合物を含む塗布液を塗布し、溶剤を蒸発させた後に液晶相形成温度に加熱して液晶層を形成する。この後に、液晶層に紫外線を照射して、液晶層を架橋する。このようにして液晶層が形成された透明樹脂フイルム、すなわち透明な位相差フイルムが製造される。この位相差フイルムは、視野角を改善するための透過型の光学補償フイルムとして利用される。欠陥検査装置10は、このようにして製造される位相差フイルムを検査対象のフイルム7として検査する。なお、検査対象のフイルムとしては、位相差フイルムに限られるものではなく、反射防止フイルムであってもよく、その他の透明あるいは半透明のフイルムであってもよい。
【0017】
欠陥検査装置10は、厚みムラ,塗工ムラ,分子配向ムラ等の欠陥を検出できるようにしており、厚みムラ,塗工ムラについては厚み差が1nm〜1μm,幅0.1mm〜50mm程度の欠陥を検出できるようにしている。
【0018】
欠陥検査装置10では、搬送機構11によってフイルム7を一方向に搬送する。フイルム7の搬送路には、所定の間隔で2本のガイドローラ12,13が配してあり、各ガイドローラ11,12にフイルム7が掛けられる。ガイドローラ12,13は、回動自在とされており、フイルム7の搬送に従動して回転する。各ガイドローラ11,12にフイルム7を掛けることにより、各ガイドローラ11,12の間の検査ステージでフイルム7を平面状に保持する。なお、フイルム7は、検査ステージでは液晶層を下にした姿勢で搬送される。
【0019】
検査ステージには、光源部15,受光器16を配してある。光源部15は、搬送路の下側、すなわちフイルム7の下面側(液層層側)に配してあり、搬送中のフイルム7の下面に向けて光を照射する。この光源部15は、例えば100〜200W程度のハロゲンランプからの光を石英やプラスチック製のライトガイドを用いてライン状の光に変換して出力するものとなっている。光源部15は、後述するようにフイルム7の幅方向に対して傾けた検査エリア17を照明するように、フイルム7の幅方向に対して傾けて配してある。
【0020】
受光器16は、搬送路の上側、すなわちフイルム7の上面側に配してある。この受光器16は、リニアアレイカメラから構成されており、撮影レンズ16aと、ライン状に並べた多数の受光素子からなるラインセンサ(図示省略)とを有し、フイルム7が一定長搬送されるごとにライン状の検査エリア17内のフイルム7を1ラインずつ撮影し電気的な光電信号に変換して出力する。すなわち、受光器16は、光源部15からの光のうち検査エリア17内のフイルム7の部分を透過した1ライン分の光を受光し、その受光した光を電気的な光電信号に変換して出力する。なお、この例では、光源部15をフイルム7の下面側、すなわち液晶層側に配置してあるが、受光器16を液晶層側に配置し、光源部15を液晶層側と反対の面側に配置する構成であってもよい。
【0021】
撮影レンズ16aとしては、ズームタイプのものを用いており、受光器16とフイルム7との距離を調整しながら検査エリア17を所定の長さ(この例では250mm)となるように調整してある。また、検査対象のフイルム7として視野角依存性のある位相差フイルムであるため、受光器16とフイルム7との距離を大きくすることで、視野角依存性の影響を排除し、欠陥の検出をより容易なものとしている。この例では受光器16とフイルム7との距離を1.5mとしてある。さらに、撮影レンズ16aのピント位置は、フイルム7の上面から僅かに前あるいは後にずらしてある。このピント位置のずらし量は、実験等により最適値を決めている。
【0022】
光源部15とフイルム7との間に第1偏光板18を配してあり、フイルム7と受光器16との間に第2偏光板19を配してある。これにより、光源部15からの光は第1偏光板18を介してフイルム7に照射され、受光器16は、第2偏光板19を透過する光を受光する。
【0023】
この例では、位相差フイルムの欠陥を検出するために、第1偏光板18と第2偏光板19とがクロスニコルとなるように偏光方向を決めてあるが、フイルム7に対する第1偏光板15,第2偏光板16の偏光方向を検査するフイルムに応じて適宜に変更することができる。また、第1偏光板18と第2偏光板19との相互の偏光方向の関係は、検査するフイルムに応じて適宜に変更することができる。さらに、検査するフイルムに応じて第1偏光板18,第2偏光板19のうちのいずれか一方の偏光板だけを配置してもよく、両方を配置しない構成としてもよい。反射防止フイルムを検査対象のフイルム7とする場合に、各偏光板18,19の両方を配置しないのも好ましい態様である。
【0024】
受光器16からの光電信号は、画像強調回路21に送られる。画像強調回路21は、光電信号に対して、フイルム7の欠陥の信号を強調する強調処理を行う。なお、低周波及び高周波ノイズ成分を除去する処理や、輝度変化を強調させる空間フィルタ処理を施したり、撮影レンズの周辺光量低下を補正するシェーディング補正を行ってもよい。
【0025】
ゲイン補正回路22は、画像強調回路21からの光電信号にゲイン補正を行い、光電信号が適切な信号レベルとなるように自動的に調節する。ゲイン補正回路22からの光電信号は、判定処理部24に送られる。
【0026】
前述のガイドローラ13には、エンコーダ25を取り付けてある。エンコーダ25は、ガイドローラ13が一定角度回転するごとに、すなわちフイルム7が一定長搬送されるごとに1個エンコードパルス信号を発生する。このエンコードパルス信号は、判定処理部24に送られる。
【0027】
判定処理部24は、所定のしきい値により光電信号を二値化する二値化回路25を備えており、二値化された光電信号に基づいて欠陥の有無を判定する。この判定で厚みムラ欠陥を検出すると、判定処理部24は、フイルム7の長手方向と幅方向における欠陥の各位置情報を位置メモリ26に記憶し、またその欠陥を含む1ライン分の光電信号とその前後の数ラインの光電信号を画像メモリ27に記憶する。フイルム7の長手方向と幅方向の各位置情報は、エンコーダ25からのエンコードパルス信号と、1ライン分の光電信号の欠陥箇所に対応する信号位置とから算出される。モニタ28には、位置メモリ26に記憶された位置情報と、画像メモリ27に記憶された数ライン分の光電信号に基づいて作成された画像とが表示される。
【0028】
図2,図3はフイルム7に対する受光器16の撮影位置を模式的に示している。図2にように、受光器16は、フイルム7を俯瞰するように配置されており、その光軸Pとフイルム7に垂直な基準線(法線)Lnとの角度(以下、交差角度という)がθ1となっている。交差角度θ1を持たせることは、地合を検出しているときの光電信号の信号振幅レベルに対する欠陥を検出した際の信号振幅レベルの比率であるS/N比を高くする効果があるが、交差角度θ1を大きくしすぎると、逆にS/N比が低下するため、「30°≦θ1≦50°」を満たすようにするのがよい。
【0029】
また、図3に上方から見た状態を示すように、受光器16は、基準線Lnを回転中心として搬送方向Sを基準に回転角度θ2だけ回転させた位置に配してある。回転角度θ2を持たせることは、上記の交差角度θ1程ではないが、やはりS/N比を高くする効果があるが、回転角度θ2を大きくしすぎると逆にS/N比が低下する。このため、「−60°≦θ2≦+60°」を満たすようにするのが好ましい。なお、回転角度θ2は、搬送方向を基準(0°)として、液晶層と反対の面側すなわち上方から見て、時計方向を正とし、反時計方向を負としてある。また、図3では、各偏光板を省略して描いてある。
【0030】
受光器16を回転角度θ2だけ回転した位置に配置したことにより、受光器16によるフイルム7上のライン状の検査エリア17が幅方向Mから回転角度θ2だけ傾いたものとなっている。検査エリア17は、このように傾いた状態で検査に必要な範囲をカバーするように、その長さを決めてある。
【0031】
上記のような交差角度θ1、回転角度θ2で受光器16を配置して、検査を行うことにより、深さが1nm程度の極僅かな厚みムラまでを検出可能としている。
【0032】
上記欠陥検査装置の作用について説明する。装置4,5によって製造された位相差フイルムが検査対象のフイルム7として検査装置10に送り込まれ、検査ステージを通って、さらに下流へと搬送される。この搬送中には、光源部15からの光が第1偏光板18を介してフイルム7に照射され、フイルム7が一定長送られるごとに受光器16で1ライン分の撮影が行われる。
【0033】
1ライン分の撮影を行うごとに受光器16からは1ライン分の光電信号が出力され、その光電信号が画像強調回路21,ゲイン補正回路22を介して判定処理部24に送られる。そして、判定処理部24は、二値化した光電信号に基づいて1ラインごとに厚みムラ,塗工ムラ,分子配向ムラ等の欠陥箇所の有無を判定する。
【0034】
例えば、フイルム7の厚みムラの欠陥がある部分では、正常部分よりも光電信号が高くなり、それが欠陥として判定され、その欠陥のフイルム7の長手方向と幅方向の各位置情報が位置メモリ26に、またその欠陥を含む1ライン分の光電信号とその前後の数ラインの光電信号が画像メモリ27にそれぞれ書き込まれるとともに、各位置情報及び厚みムラ欠陥の画像がモニタ28に表示される。
【0035】
上記のように交差角度θ1、回転角度θ2を持たせて配置した受光器16によってフイルム7を撮影して得られる光電信号に基づいて欠陥の判定を行っているので厚みムラ,塗工ムラ,分子配向ムラ等の欠陥を精度良く検出することが可能であり、極僅かな厚み差の厚みムラ,塗工ムラをも検出することができる。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
上記のように構成される欠陥検査装置10を用いて欠陥の検出を行った。検出の際には、前述のような装置で作成され、透過型の光学補償フイルムとして利用される位相差フイルムのうち液晶層の塗工ムラを有する部分を取り出してサンプルとした。このサンプルの塗工ムラは、図4に示すように、幅が約5mm、正常部分との厚みの差が約20nmで僅かに凸状となったものである。
【0037】
この実施例1では、交差角度θ1,回転角度θ2をそれぞれ変化させて欠陥(塗工ムラ)の検出を試み、画像強調回路21による強調処理後の光電信号のS/N比によって評価した。S/N比は、地合を検出しているときの信号振幅レベルに対する欠陥を検出した際の信号振幅レベルの比率である。各交差角度θ1、各回転角度θ2におけるS/N比は表1の通りであった。なお、回転角度θ2の符号は、搬送方向を基準(0°)として、位相差フイルムの液晶層と反対の面側すなわち上方から見て、時計方向を正、反時計方向を負としてある。
【0038】
【表1】

【0039】
交差角度θ1を大きくするにしたがいS/N比が高くなり、40°を越えるとS/N比が低下した。40°を越えた時点で直ちに実用性のないレベルにまでS/N比が低下するわけではないので、交差角度θ1は40°付近が特に好ましいことがわかる。また、回転角度θ2は、その大きさ(絶対値)を大きくすると交差角度θ1ほどではないがS/N比が高くなり、−45°付近及び+60°付近で特に高い値を示した。
【0040】
そして、この実施例1において30°〜50°範囲の交差角度θ1、−60°〜+60°の範囲の回転角度θ2で良好なS/N比が得られ、オンライン検査では、十分なレベルの精度で塗工ムラを検出可能であった。
【0041】
図5は、上記の塗工ムラを検出したときの画像強調回路21による強調処理後の光電信号の波形を示すものである。符号30で示す部分が塗工ムラを検出した際の波形であり、その前後は正常部分を検出しているときの波形である。塗工ムラを検出した際の波形30は、正常部分を検出しているときに比べて明確に信号レベルが上昇しており、また地合による光電信号の信号振幅レベルが小さい。このことからも、塗工ムラ等を確実に検出することができることがわかる。
【0042】
一方、比較例として、同じサンプルを用いて同一の塗工ムラに対して、交差角度θ1を0°,回転角度θ2を0°として検出を行ったところ、図6に示すような光電信号の波形となり、符号31で示す部分が塗工ムラを検出した波形となった。この比較例では、塗工ムラの光電信号レベルが他の部分の信号レベルと比較してあまり差がなく、また地合による光電信号の信号振幅レベルが大きく、正しく検出できないことが非常に多かった。
【0043】
[実施例2]
実施例2では、同じく上記のように構成される欠陥検査装置10を用いて、異なる塗工ムラの検出を行った。サンプルは、実施例1と同様に透過型の光学補償フイルムとして利用される位相差フイルムから塗工ムラを有する部分を取り出しものである。実施例2の塗工ムラは、図7に示すように、幅が約30mm、正常部分との厚みの差が約800nmで凸状となったものである。
【0044】
実施例1と同様の構成で同様に交差角度θ1,回転角度θ2を変えて、検出を行った所、交差角度θ1,回転角度θ2に対して実施例1と同様なS/N比の変化を示し、厚みの差が約800nmと実施例1に比べてかなり大きいものであるが、やはり30°〜50°範囲の交差角度θ1、−60°〜+60°の範囲の回転角度θ2で良好なS/N比が得られ、十分なレベルの精度で塗工ムラを検出することが可能であった。
【0045】
[実施例3]
実施例3では、正常部に対して厚みが極端に薄くなっている塗工ムラについて検出を行った。サンプルは、実施例1と同様に透過型の光学補償フイルムとして利用される位相差フイルムから塗工ムラを有する部分を取り出しものである。この実施例3の検出対象とした塗工ムラは、配向膜上に液晶性化合物を含む塗布液を塗布した際に、その塗布液が弾かれることによって正常部に対して厚みが極端に薄くなった、いわゆるハジキ状欠陥である。この塗工ムラは、図8に示すように、正常部に対する厚み差が1000nm程度、幅が0.2mm程度のものであった。
【0046】
実施例1と同様の構成で同様に交差角度θ1,回転角度θ2を変えて、検出を行った所、交差角度θ1,回転角度θ2に対して実施例1と同様なS/N比の変化を示した。そして、急峻な厚み変化のあるこのような塗工ムラに関しても、十分なレベルの精度で検出可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を実施した欠陥検査装置を示す概略図である。
【図2】受光器の交差角度θ1を説明する説明図である。
【図3】受光器の回転角度θ2を説明する説明図である。
【図4】厚みムラ欠陥の一例を示す厚みのグラフである。
【図5】本発明の欠陥検査装置で厚みムラ欠陥を検出したときの光電信号の波形を示すグラフである。
【図6】従来の検査方法で厚みムラ欠陥を検出したときの光電信号の波形を示すグラフである。
【図7】比較的に大きな厚みムラ欠陥の一例を示す厚みのグラフである。
【図8】液晶層が極薄くなった厚みムラ欠陥の一例を示す厚みのグラフである。
【符号の説明】
【0048】
7 フイルム
10 欠陥検査装置
15 光源部
16 受光器
16a 撮影レンズ
18,19 偏光板
21 画像強調回路
24 判定処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送される検査対象のフイルムの一方の面側に配置され、前記フイルムに光を照射する光源と、前記フイルムの他方の面側に配置され、フイルムを透過した前記光源からの光を受光する受光器とを有し、受光器からの出力信号に基づいてフイルムの欠陥を検出するフイルムの欠陥検査装置において、
前記受光器は、その光軸と、フイルム面に垂直な基準線との交差角度をθ1とし、基準線を回転中心にしたフイルムの搬送方向からの回転角度をθ2としたときに、「30°≦θ1≦50°」、「−60°≦θ2≦+60°」の条件を満たす位置に配されていることを特徴とするフイルムの欠陥検査装置。
【請求項2】
前記受光器は、撮影レンズと、ライン状に並べた多数の受光素子からなるラインセンサとから構成され、ライン状の受光エリアがフイルムの幅方向に対して傾けられていることを特徴とする請求項1記載のフイルムの欠陥検査装置。
【請求項3】
前記撮影レンズのピント合致位置が検査対象のフイルム面からずらしてあることを特徴とする請求項2記載のフイルムの欠陥検査装置。
【請求項4】
検査対象のフイルムは、位相差フイルムであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフイルムの欠陥検査装置。
【請求項5】
前記光源とフイルムとの間に配された第1の偏光板と、前記受光器とフイルムとの間に配され、偏光方向が前記第1の偏光板の偏光方向と直交する第2の偏光板とを備えたことを特徴とする請求項4記載のフイルムの欠陥検査装置。
【請求項6】
検査対象のフイルムは、反射防止膜フイルムであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフイルムの欠陥検査装置。
【請求項7】
連続的に搬送される検査対象のフイルムの一方の面側から光を照射し、そのフイルムを透過した光を受光器で受光した結果に基づいて、フイルムの欠陥を検出するフイルムの欠陥検査方法において、
前記受光器の光軸とフイルム面に垂直な基準線との交差角度をθ1とし、基準線を回転中心にしたフイルムの搬送方向からの回転角度をθ2としたときに、「30°≦θ1≦50°」、「−60°≦θ2≦+60°」の条件を満たす位置に前記受光器を配し
フイルムを透過した光を受光することを特徴とするフイルムの欠陥検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−250715(P2006−250715A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67747(P2005−67747)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】