説明

プラズマスプレー装置および方法

プラズマスプレーの装置および方法が開示されている。この装置は、カソードと、アノードと、アノードおよび中間電極によって形成されたプラズマチャネルと、1台以上の流動性材料インジェクタとを備える。プラズマチャネルは、プラズマチャネルを、少なくとも1個の中間電極により形成されたカソード付近の高圧部と、アノード付近の低圧部とに分割する絞り部を有する。動作中に、プラズマ生成ガスは、カソードとアノードとの間に保持されたアークによって加熱され、プラズマを形成する。プラズマが絞り部を通過するとき、プラズマの速度は超音速に増加し、同時にプラズマの静圧が減少する。流動性材料は低圧部内のプラズマ流に注入される。流動性材料中の粒子はプラズマによって加熱され、結果として生じる加熱粒子およびプラズマはプラズマチャネルの出口から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマスプレー技術の分野である。特に、流動性材料を噴霧するプラズマ生成装置および方法が開示されている。
【背景技術】
【0002】
プラズマスプレー装置は、例えば、コーティング加工に関連した多くの用途において、粉末材料(または、単に粉末)のような種々の流動性材料を噴霧するために使用される。このような装置は、典型的に、カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に延在しアノードを通過するプラズマチャネルとを備える。動作中に、プラズマ生成ガスはプラズマチャネルに供給される。カソードとアノードとの間に形成される電気アークは、プラズマチャネルの中を流れるガスを加熱し、プラズマ流(プラズマストリームまたはプラズマジェットと呼ばれることもある)を形成する。プラズマ流は、プラズマチャネルの端部でアノードの出口を通って装置から出る。数種のタイプのプラズマスプレー装置が知られている。これらのタイプは、流動性材料がプラズマ流の中に導入(または注入)される位置によって特徴付けられる。以下の検討は粉末スプレー装置に関する。しかし、当業者はその他の材料が噴霧のため使用され得ることを理解するであろう。
【0003】
あるタイプの装置では、粉末はアノード領域でプラズマ流に導入される。このタイプのいくつかの装置では、例えば、米国特許第3,145,287号(特許文献1)、第4,256,779号(特許文献2)および第4,445,021号(特許文献3)に開示されているように、粉末はアノード内の入口を通ってプラズマ流に導入される。このタイプのその他の装置では、例えば、米国特許第4,696,855号(特許文献4)に開示されているように、粉末はプラズマ生成装置の外側に位置しているフィーダによってプラズマ流に導入される。典型的に、粉末はプラズマ流に対し実質的に垂直に注入される。
【0004】
このタイプの装置に関連した1つの利点は、粉末がプラズマ流に注入されるときに、プラズマ流が十分に生み出され、温度、速度、エネルギー等のいくつかの既知特性を有することである。これらの特性は、プラズマチャネルの内部幾何形状と、プラズマを生成するために使用されるガスの性質と、ガスが供給される圧力と、カソードとアノードとの間の電位差などに依存しており、制御することができる。アノード領域で粉末を供給する別の利点はプラズマ流の形成が粉末による影響を受けないことである。
【0005】
しかし、アノード領域で粉末を導入することには欠点がある。典型的な粉末は異なるサイズの粒子を有している。このような粉末がプラズマ流に注入されるとき、より高い運動エネルギーを有する重い方の粒子は、軽い方の粒子より速くプラズマストリームの中心に到達する。したがって、軽い方の粒子はアノードからさらに離れた場所にあるプラズマ流の比較的低温のゾーンでプラズマ流の中心に到達することがあり、または、軽い方の粒子はプラズマ流の周辺にとどまることがあり、プラズマ流の中心に決して到達しない。これは2つの望ましくない効果を生み出す。第一に、重い方の粒子は軽い方の粒子より長い期間に亘ってより高温に晒されるので、プラズマ流における粉末の均一性が低い。軽い方の粒子はコーティング加工のため十分に加熱されない場合がある。第二に、コーティングの分布は均一でなく、一部の粒子は表面を単に被覆し損ねることがあり、材料的に不経済である。換言すると、粉末噴霧コーティングは、供給された粉末の一部だけを使用して生成される。このことは特に高価な粉末が使用されるときに不利である。この問題は等しい質量の粒子をもつ粉末を使用することによりある程度まで緩和される。しかし、このような粉末の製造はより高価となり、このような粉末の使用はすべての用途において現実的な代替案ではない。
【0006】
プラズマチャネルのアノード領域内の粉末の実質的に垂直な注入と関連した問題を回避するために、長手方向に粉末供給チャネルを設けることが試みられている。粉末供給チャネルはプラズマチャネルの内側に配置され、装置の動作中にプラズマ流によって取り囲まれる。粉末供給チャネルの出口はプラズマチャネルのアノード領域にある。プラズマチャネルの内側に配置されたこの内部粉末供給チャネルは、プラズマ流の適切な加熱を阻止し、一般に、プラズマ流特性に望ましくない影響を及ぼす。
【0007】
アノードでの粉末の導入に関連したさらなる欠点は、高度に均一なコーティングが得られるように大量のエネルギーがプラズマの高温および特定のパワー(単位容積当たりのパワー)を維持するために必要とされることである。この問題の原因は、プラズマ流の温度分布および速度分布が、粉末が注入されるプラズマチャネルの出口で実質的に放物線状であることにある、と考えられる。よって、プラズマ流の温度勾配および速度勾配と熱エンタルピーとがプラズマ流の径に反比例する。噴霧コーティングの均一性を高めるため、したがって、プラズマ流の径を増大させることが必要であり、大量のエネルギーもまた必要とする。
【0008】
第2のタイプの装置では、粉末は、カソードでプラズマチャネルの入口に供給される。これらの装置では、電気アークはプラズマ生成ガスと粉末の両方を加熱する。カソード領域は、低温ゾーンであり、粉末がプラズマ流の中心に導入されることを可能にすると考えられる。第2のタイプの装置の例は、例えば、米国特許第5,225,652号(特許文献5)、米国特許第5,332,885号(特許文献6)、および、米国特許第5,406,046号(特許文献7)に開示されている。
【0009】
プラズマが、プラズマ生成ガスをプラズマチャネルに供給し、所定の放電電流の電気アークでガスを加熱することにより生成されるとき、ガスの僅かな一部だけが高温であるプラズマ流の中心を形成する。残りのガスはより低温であるプラズマチャネルの壁のより近くを流れ、プラズマ流の低温層を形成する。低温粉末粒子は、流れの中のプラズマの温度上昇を妨害し、流れの周辺における粉末は決して望ましい温度に達しない。プラズマ流中のこの温度分布のため、プラズマチャネルの入口に供給された粉末の僅かな一部だけがプラズマ流の高温中心に流入し、電気アークによって十分に加熱される。残りの粉末はプラズマ流の低温層に流入する。これは、粉末の一様でない加熱を引き起こし、表面コーティングの品質に影響を与える。さらに、プラズマチャネルが粉末によって詰まる危険性があり、このことは安定したプラズマ流に求められる条件に悪影響がある。
【0010】
ガス流および粉末流の速度を高めることによりチャネルの中心部分への質量の移動を増加させることは、実用的な代替案ではない。ガスおよび粉末の流れが増加し、電流が一定のままであるとき、電気アークの径が減少し、プラズマチャネル壁に沿って低温層に堆積する粉末の問題をまさに悪化させる。さらに、プラズマ流の中心に最終的に達する粒子にとっても、これらの粒子の速度は増加するので、プラズマ流中で経過する時間は減少する。したがって、高温プラズマ流中心における粉末の量は、電流が一定のままである場合、増加し得ない。しかし、動作電流の増大は、プラズマスプレー装置の設計および取り扱いの両方に関連した不利益を生ずる。
【0011】
第3のタイプの装置では、プラズマチャネルの一部分は、アノードおよびカソードから電気的に絶縁された中間電極によって形成される。粉末は、典型的に2個の電極の間で、中間電極によって形成されたプラズマチャネルの部分におけるプラズマ流に導入される。よって、粉末はプラズマチャネルの入口にもプラズマチャネルの出口にも供給されない。第3のタイプの装置の例は、例えば、米国特許出願公開第2006/0091116A1号明細書(特許文献8)に開示されている。
【0012】
米国特許出願第2006/0091116A1号明細書(特許文献8)に開示されている装置は、2個のプラズマチャネルセクションを有する。粉末フィーダから上流に位置しているプラズマチャネルのセクションは、1個以上の中間電極によって形成され、プラズマ流に最適な条件を生じさせるため使用される。特に、動作中に、プラズマは、プラズマチャネルの断面全体に亘って粉末を溶かすために十分な温度まで加熱される。これは、流れの低温層内を進む粉末粒子に関連した問題を取り除き、粒子がプラズマチャネルの壁に張り付いて目詰まりする危険性を低下させる。粉末フィーダから下流に位置しているセクションもまた1個以上の中間電極によって形成され、流れの中の粉末粒子の高水準の均一性および温度を実現し、よって、粉末をアノードに供給することに関連した問題を未然に防ぐために使用される。セクションの長さおよびセクションを形成する中間電極の個数のような下流セクションの特性を制御することにより、粉末の最適条件が実現される。これらの条件は、パワー材料およびコーティング加工の特定の組み合わせのための噴霧コーティングにおける所要の粘着力、構造、多孔性を得るために必要な速度レベルおよび温度レベルを含む。しかし、プラズマ流およびプラズマ流が運ぶ粉末粒子の速度は比較的低いので、粉末粒子は、装置から出るときに低い運動エネルギーを有している。
【0013】
より高速の粉末粒子を実現するため、いくつかのスプレー装置は絞り部を使用する。例えば、いわゆる低温スプレーまたは速度スプレー装置は、粉末を運ぶ比較的低温のガスを加圧し、そして、粉末を運ぶガスを高速まで加速するために絞り部を使用する。このような装置は、コーティングのため粉末粒子の運動エネルギーを使用する。絞り部は以前から公知である。簡単に言えば、絞り部はガス流の圧力を速度に変換するために使用される。絞り部は、初めにジェットエンジンで使用されたが、今ではプラズマ生成装置でも使用されている。絞り部の知られている変形は、プラズマ流を超音速まで加速する能力がある超音速ノズル(ラバルノズルとも呼ばれる)である。米国特許出願第11/482,582号(特許文献9)は、生物学的組織の切断、気化、および、凝固のため使用される多電極プラズマ生成装置における超音波ノズルの使用を開示する。しかし、米国特許出願第11/482,582号(特許文献9)は、粉末の注入を促進するプラズマ流の静圧の低下、および、噴霧のためナノ粒子を使用することなどのスプレー加工のために役立つ絞り部の特徴とは関係がない。
【0014】
絞り部を使用するプラズマスプレー装置は、上述の三つのカテゴリーのうちのいずれかに分類される。しかし、絞り部の使用により、それらを別々に検討する。米国特許出願公開第2006/0108332号明細書(特許文献10)は、プラズマスプレー装置における絞り部の使用を開示する。特に、この刊行物は、カソードに最も近いプラズマチャネルの端部に原則的に位置している絞り部を開示する。この装置の動作中に、プラズマ生成ガスがカソードの近くにある加熱チャンバ内でカソードによって短時間加熱された後、ガスは絞り部を通過する。絞り部は、いくつかの実施形態では音速を超えてガスの速度を増加させ、ガスの静圧を減少させる。粉末は、プラズマがその最高速に到達し最低静圧を有するプラズマチャネル内の点で絞り部を通過した後、プラズマ流に注入される。しかし、絞り部はプラズマチャネルのカソード端部に原則的に配置されているので、プラズマ流は、絞り部を通過する間に限り電気アークによって加熱される。したがって、プラズマは、原則的に低温である間に音速に到達する。音速は温度が高くなるほど高いので、プラズマ生成ガスが実現する絶対速度は比較的低い。比較的低い速度のため、プラズマは高パワー密度を達成しない。さらに、粉末は米国特許出願公開第2006/0108332号明細書(特許文献10)に開示された装置内のアノードの領域に注入されるので、装置は上述の第1のタイプの装置とほぼ関連した制限を示す。
【0015】
米国特許出願公開第2006/0037533号明細書(特許文献11)は、熱スプレー装置における絞り部の使用を開示する。この装置は、(1)ガス(または、いくつかの実施形態ではプラズマ)の流れを加熱するために使用される加熱モジュールと、(2)ガスストリームの静圧を減少させ、速度を増加させるため使用される形成モジュールと、(3)粉末を流れに注入するために使用される粉末送りモジュールと、(4)ストリーム中で粉末を運ぶため使用されるバレルモジュールとを備え、粉末が必要な特性を実現する。この刊行物は、加熱モジュールを実施するいくつかの異なる方法を開示する。例えば、いくつかの実施形態では、加熱モジュールは、アセチレンを燃やすことによりガスを加熱する燃焼タイプの加熱モジュールである。ガスが3100℃まで加熱された後、ガスは形成モジュールへ送り出される。ガス流の速度および圧力が形成モジュールによって変換された後、粉末は粉末送りモジュール内でガス流に注入される。ガス流によって運ばれる粉末粒子は、バレルモジュールにおける特有のスプレー加工に要する特性を実現する。
【0016】
米国特許出願公開第2006/0037533号明細書(特許文献11)は、マルチ電極プラズマトーチとして実施される加熱部の別の実施形態を開示する。このプラズマトーチは、カソードと、アノードと、複数個の中間電極とを有する。アノードと中間電極はプラズマチャネルを形成する。この刊行物は、形成モジュール内の絞り部とは別個の、カソードに最も近いプラズマチャネルの端部に原則として位置している絞り部をさらに開示する。本加熱モジュールの動作中に、プラズマ生成ガスがカソードの近くにある加熱チャンバ内でカソードによって加熱された後、ガスは絞り部を通過する。絞り部は、いくつかの実施形態では音速を超えるまで流れを加速し、ガスの静圧を減少させる。
【0017】
上述の米国特許出願公開第2006/0091116A1号(特許文献8)に開示された装置のようないくつかの装置は、様々な流動性材料を注入する。この機能はいくつかのプラズマスプレー用途のため望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第3,145,287号
【特許文献2】米国特許第4,256,779号
【特許文献3】米国特許第4,445,021号
【特許文献4】米国特許第4,696,855号
【特許文献5】米国特許第5,225,652号
【特許文献6】米国特許第5,332,885号
【特許文献7】米国特許第5,406,046号
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0091116A1号明細書
【特許文献9】米国特許出願第11/482,582号
【特許文献10】米国特許出願公開第2006/0108332号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2006/0037533号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、現在、装置の出口で粉末粒子を運ぶプラズマ流の運動エネルギーと熱エネルギーの両方の制御を可能としつつ、装置のエネルギー密度を最大化することにより、これまでに知られている装置の制限を解決するプラズマスプレー装置の必要性がある。特に、比較的低い圧力を加えることにより、1個以上の流動性材料がプラズマ流に注入されることを可能とし、同時に、プラズマおよび流動性材料がプラズマチャネルから出るときにプラズマおよび流動性材料の特性の制御をさらに可能とする温度および速度を有するプラズマ流を生成するプラズマスプレー装置および方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、アノードと、カソードと、カソードとアノードとの間で長手方向に延在するプラズマチャネルとを備えるプラズマ生成装置を提供する。プラズマチャネルは、装置のアノード端部にある出口開口部と、絞り部とを有する。プラズマチャネルの一部分は、相互に電気的に絶縁された2個以上の中間電極と、アノードとによって形成されている。装置の絞り部は、プラズマチャネルを、カソードの最も近くで絞り部の側に位置付けられている高圧部と、アノードの最も近くで絞り部の側に位置付けられている低圧部とに分割する。絞り部の喉部は、プラズマチャネルの長手方向に対し横断する高圧部の最小断面積および低圧部の最小断面積の両方より小さい断面積を有する。プラズマチャネルの低圧部では、装置は、入口を有する流動性材料チャンバと、流動性材料チャンバをプラズマチャネルに連結する流動性材料フィーダとを含む、1個以上の流動性材料インジェクタをさらに有する。流動性材料フィーダおよび流動性材料チャンバは合わせて流動性材料インジェクタと呼ばれる。
【0021】
プラズマスプレー装置では、プラズマチャネルの高圧部は、少なくとも1個、好ましくは2個以上の中間電極によって形成されている。これは、絞り部に到達するプラズマ流が、プラズマ流に注入される粉末のような、所与の流動性材料の高水準の均一性を達成するために十分に加熱されることを可能とする。プラズマチャネルの低圧部は、少なくとも1個、好ましくは、2個以上の中間電極によって形成されている。これは、流動性材料がプラズマ流に注入された後に所与のスプレー加工のための流動性材料の十分な加熱を可能とする。
【0022】
動作中に、プラズマ生成ガスはプラズマチャネルに供給される。ガスがプラズマチャネルの中を流れるとき、ガスはカソードとアノードとの間に形成された電気アークによって加熱される。電気アークの温度上昇はガスイオン化およびプラズマ形成を生じさせる。プラズマチャネルの高圧部におけるプラズマの静圧は比較的高い。プラズマが絞り部の中を通るとき、プラズマの速度圧は増加し、静圧は減少する。速度圧の増加はプラズマ流を超音速まで加速することがある。アノードに最も近い絞り部の端部で、プラズマの静圧は最小である。流動性材料は、プラズマの低静圧のため最小限の圧力を必要とする低圧部内でプラズマ流に注入される。
【0023】
上記の装置における流動性材料の注入は、プラズマが高圧部を通過する間に十分に加熱されるので、流動性材料の高水準の均一性をもたらす。流動性材料搬送ガスは高温プラズマと混合するので、プラズマの温度は下降し、流動性材料が注入される前のプラズマの温度より低い。いくつかのスプレー加工の場合、流動性材料粒子に高い温度を要求されることがある。流動性材料の粒子を搬送するプラズマの凝集流が低圧部の残りの部分を通過するとき、電気アークはプラズマを加熱し、プラズマが粒子を加熱する。
【0024】
いくつかの実施形態では、装置は、2種類以上の流動性材料の注入を可能とする。2種類の流動性材料の注入を可能とする典型的な実施形態では、装置は第2の流動性材料インジェクタを備える。第2の流動性材料インジェクタは、第2の流動性材料が注入される前に、注入された第1の流動性材料の粒子が十分に加熱されることを可能とするように配置されている。同時に、第2の流動性材料インジェクタは、凝集流が装置から出る前に、両方の流動性材料の粒子が所与のスプレー加工のため十分に加熱されることを可能とするように配置されている。いくつかの実施形態では、装置は、以下の条件、すなわち、(1)プラズマと所与の流動性材料から上流に注入されたすべての流動性材料の粒子とが、所与の流動性材料が流れの中へ注入される前に十分に加熱されるべきであること、および、(2)ある点まで注入されたすべての流動性材料の粒子が、(i)所与のスプレー加工のため装置から出る前に、または、(ii)別の流動性材料を注入する前に、十分に加熱されなければならないこと、が満たされるならば、付加的な流動性材料インジェクタを備えることがある。但し、別の流動性材料を注入する前に、流動性材料は、装置から流れが出るときに要求される温度まで加熱される必要はないかもしれない。何故ならばその第2の流動性材料を注入するには、両方の流動性材料の粒子が加熱されるからである。したがって、本発明は、1個以上の流動性材料をプラズマスプレーする方法であって、少なくとも10,000°Kまで加熱されるプラズマ流を作り出すステップと、その後に、1個以上の流動性材料がプラズマ流に注入されるとすぐに、プラズマ流中の加熱されたプラズマの速度圧を増加させ、同時に、プラズマ流中の加熱されたプラズマの静圧を減少させるステップと、を備える方法をさらに提供する。本発明の方法では、各流動性材料が注入された後、プラズマ流中のすべての流動性材料の粒子は、プラズマ内に出力される前に、プラズマ流内のプラズマを加熱することにより、適切な温度まで加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】単一の流動性材料インジェクタを備える本発明の装置の実施形態の縦断面図を示している。
【図2】単一の流動性材料インジェクタを備える本発明の装置の実施形態の縦断面図を、図1に示された図に対して直交して示している。
【図3】プラズマ流と逆向きに角度が付けられたフィーダを示している。
【図4】プラズマ流の向きに角度が付けられたフィーダを示している。
【図5】複数の流動性材料インジェクタを備える装置の実施形態の縦断面図を示している。
【図6】絞り部を冷却するために使用される冷却システムの分水器を示している。
【図7】アノードおよびその他の中間電極を冷却するために使用される冷却システムの分水器を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1および2は本発明によるプラズマスプレー装置の一実施形態を示している。図1および2に描かれた実施形態は、単一の流動性材料インジェクタを備える粉末スプレー装置である。しかし、本実施形態は例示的な実施形態であり、本発明の範囲を粉末の使用または単一の流動性材料もしくは単一のインジェクタの使用に制限するように意図されていないことが理解されるべきである。本明細書の目的のために、「流動性材料」という表現は、圧力を受けている容器内を流れる材料として定義されている。流動性材料は、流体によって搬送される、液体、ガス、または、固体の粒子を含むが、これらに限定されない。本明細書において「粉末」という用語は、ガスのような流体によって搬送することができる材料の小さい粒子として理解されるべきであり、本明細書の目的のため、「粉末」は流動性材料である。流動性材料の別の変形は、例えば、懸濁液前駆体プラズマスプレー(SPPS)として知られている噴霧技術において、使用される液体前駆体中のナノ粒子のような粉末粒子の溶液である。動作中に、この溶液は噴霧状にされ、流動性材料としてプラズマ流に注入される。
【0027】
図1は装置の縦断面を示している。以下の説明は粉末の使用に言及するが、任意の他のタイプの流動性材料が使用されてもよいことが理解されるであろう。図1の実施形態において、ケーシング2と、流動性材料組立体60と、座金56と、ケーシング48とが、装置の外側を形成する。本実施形態では、装置は円筒状であり、すべての要素は環状であり、同軸上に配置されている。しかし、他の実施形態では、装置は円筒状でなくてもよく、異なる内部または外部幾何形状が使用されることがある。装置は、好ましくは、ランタンを含有するタングステンで作られ、カソードホルダー6に配置されたカソード4と、アノード8とを備える。絶縁体要素10はアノード8から最も遠いカソード4の一部と、カソードホルダー6の一部とを取り囲む。絶縁体要素10は、カソード4の熱的絶縁および電気的絶縁の両方を行う。
【0028】
環状中間電極12、14、16、18、20、22、および24と、アノード8は、プラズマチャネル26を形成する。プラズマチャネル26は、カソード4に最も近い端部に入口32を有し、カソード4から最も遠い端部に出口(または開口部)34を有する。環状絶縁体36、38、40、42、および44は、中間電極12、14、16、18、20、22、および24の間に位置し、隣接した中間電極の間で電気的絶縁を行う。環状絶縁体46は、中間電極24とアノード8との間に位置し、それらの間で電気的絶縁を行う。
【0029】
アノード8から最も遠い中間電極12は、カソード先端部30の周りにプラズマチャンバ28を形成する。プラズマチャンバ28はプラズマチャネル32の入口に接続されている。スペース61はプラズマ生成ガスのためプラズマチャンバ28までの通路を提供する。
【0030】
図2は図1に示された縦断面に対し直交する縦断面を示している。図2は、プラズマチャネルの一部を示している。中間電極18は絞り部80を形成する。絞り部80はプラズマチャネル26を、高圧部82と低圧部84との2個の部分に分割する。高圧部82は1個以上の中間電極によって形成されている。好ましくは、高圧部82は2個以上の中間電極によって形成されている。図1および2に示された実施形態では、プラズマチャネル26の高圧部82は、3個の中間電極12、14、および16によって形成されている。高圧部は、粉末がプラズマに注入されたとき、プラズマがプラズマチャネル26の断面全体に亘って粉末を融解するために十分な温度を有することを保証するため、十分な長さを有するべきである。
【0031】
低圧部84は、少なくとも1個、好ましくは、2個以上の中間電極によって形成されている。図1および2に示された実施形態では、低圧部84は3個の中間電極20、22、および24によって形成されている。低圧部84は、プラズマによって搬送される粉末の粒子が所与のスプレー加工のため求められる温度まで加熱されることを保証するために十分な長さを有するべきである。
【0032】
絞り部80は砂時計形状を有している。絞り部80の最も狭い部分は、絞り部を収束部88と拡散部90とに分割する喉部86である。好ましい実施形態では、絞り部80は超音速ノズルであり、ラバルノズルとも呼ばれている。(明瞭さのため、本明細書中、特に断らない限り、「断面積」という句は「プラズマチャネル26の長手方向を横切る断面積である。」)喉部86の断面積は、(a)高圧部82の断面積、および、(b)低圧部84の断面積の両方より小さい。好ましい実施形態では、高圧部82の断面積は低圧部84の断面積以下である。他の実施形態では、高圧部82の断面積は低圧部84の断面積より大きい。
【0033】
動作中に、装置の初期始動後、カソード4とアノード8との間に電気アークが維持されている。プラズマ生成ガスは、入口32から出口34へプラズマチャネル26中を流れる。電気アークは、プラズマ生成ガスを加熱し、プラズマの生成をもたらすプラズマ生成ガスのイオン化の原因となる。プラズマが入口32から出口34までプラズマチャネル26を通過する向きは、プラズマ流の向きとして表わされる。
【0034】
プラズマ生成ガスは、スペース61を介して、圧力がかけられたプラズマチャネル26の入口32へ供給される。プラズマの全圧力は、速度圧と静圧とにより構成されている。本明細書においては、速度圧はプラズマ流をプラズマチャネルに沿って押す圧力を指し、静圧はプラズマがプラズマチャネルの壁に加える圧力を指している。プラズマの速度圧はプラズマ流の速度の二乗に比例する。逆に、プラズマ流の速度はプラズマの速度圧の平方根に比例する。プラズマが収束部88に入るとき、質量流量(単位時間当たりの質量)は一定であるため、プラズマの速度圧は増加する。プラズマチャネルの断面積が最小限である喉部86において、プラズマ速度は、超音速、マッハ1、すなわち、チョークフローと称される条件になる。断面積は拡散部90で増加するにつれて、プラズマの静圧が減少し、プラズマの速度圧が増加するように、プラズマは膨張し続ける。拡散部90において、プラズマ流の速度は超音速マッハ>1.0まで増加する。同時に、拡散部90において、プラズマの静圧が減少する。プラズマの全圧力は実質的に一定のままである。
【0035】
プラズマの速度圧およびプラズマ流の速度は、アノード8に最も近い絞り部80の端部においてそれぞれの最大値に到達する。逆に、プラズマの静圧はアノード8に最も近い絞り部80の端部でその最小値に達する。プラズマが絞り部80を通過するときにプラズマが受ける物理過程は等エントロピーであり、プラズマのエントロピーが変化しないことを意味している。本質的に、絞り部80は、高圧部82で観測された圧力と相対的に、プラズマの速度圧を増加させ、プラズマの静圧を減少させる。
【0036】
したがって、高圧部82は、(1)好ましくは、5乃至100バールの範囲であるプラズマの高い静圧と、(2)プラズマの低い速度圧と、(3)プラズマ流の低い速度と、によって特徴付けられる。高圧部内のプラズマ流の平均温度は、好ましくは、10,000乃至20,000°Kである。アルゴンがプラズマ生成ガスとして使用される場合、プラズマの電界は、好ましくは、5乃至50V/mmである。高圧部におけるプラズマのパワー密度は、好ましくは、0.5乃至10kW/mmの範囲である。
【0037】
プラズマが絞り部80の収束部88に入るとき、プラズマの温度は、好ましくは、10,000乃至20,000°Kである。プラズマが絞り部80の拡散部90を出るとき、プラズマの温度は、好ましくは、8,000乃至13,000°Kまで低下する。アノード8に最も近い拡散部90の端部でのプラズマの速度は、好ましくは、1乃至10km/sであり、1.2乃至3の範囲であるマッハ数をもつ。拡散部90内のプラズマの圧力は、好ましくは、1乃至5バールの範囲である。
【0038】
低圧部84は、(1)好ましくは、大気圧に近いプラズマの低い静圧と、(2)プラズマの高い速度圧と、(3)好ましくは、400乃至1,000m/sである高い平均粉末流を生じる高いプラズマ流速と、によって特徴付けられる。プラズマ流の平均温度は、好ましくは、10,000乃至15,000°Kの範囲である。平均粉末温度は、粉末の融解温度である。低圧部84におけるプラズマの電界は、好ましくは、1乃至10V/mmである。低圧部84におけるプラズマのパワー密度は、好ましくは、0.2乃至0.8kW/mmの範囲である。
【0039】
図2に示された実施形態では、粉末は2つの粉末入口94および95を介して装置に入る。他の実施形態では、異なる個数の粉末入口が使用されることがある。粉末入口94および95は粉末チャンバ96に接続されている。粉末チャンバ96は中間電極18の周りに配置され、装置の周囲に沿って粉末粒子の均一な分布を促進する。粉末フィーダ98は、粉末チャンバ96をプラズマチャネル26に接続する。好ましい実施形態では、粉末フィーダ98は絞り部80に最も近い低圧部84の端部でプラズマチャネル26に接続する。他の実施形態では、粉末粒子が、温度、速度、および、均一性のような必要とされる特性を実現するためにプラズマチャネル26内で十分な時間を費やすならば、粉末フィーダ98は、プラズマチャネル26を、低圧部84においてプラズマチャネル26に沿った他の点で粉末チャンバ96に接続することが可能である。
【0040】
好ましい実施形態では、フィーダ98はスリットである。他の実施形態では、粉末フィーダ98は、粉末チャンバ96をプラズマチャネル26に接続する複数個のチャネルとして実施されてもよい。さらに他の実施形態では、粉末フィーダ98は、粉末チャンバ96とプラズマチャネル26との間を連通させる任意の開口部または複数個の開口部でもよい。図1および2は、スリット98が装置の軸に垂直である実施形態を示している。しかし、この角度はすべてのタイプの粉末に対しプラズマ内での粉末粒子の最良の分布を生じるものではない。上述のように、高品質コーティングでは、粉末粒子がプラズマ流中で均一に分布していることが望ましい。比較的重い粒子を有する粉末を噴霧するために、図1および2に示された実施形態を使用することは、異なる方向からの粒子がプラズマチャネル26の中心で衝突する結果となり得る。比較的軽い粒子を有する粉末を噴霧するために、図1および2に示された実施形態を使用することは、粒子が流れの中心に到達し得る前にプラズマ流によって粒子をプラズマチャネルの壁に押し付けるかもしれない。粉末粒子のより均一な分布を実現するため、フィーダ98は角度が付けられてもよい。図3は、フィーダ98がプラズマ流と逆向きに角度が付けられている実施形態を示している。本実施形態は、望ましくは、軽い粒子をもつ粉末のため使用される。図4は、スリット98がプラズマ流の向きに角度を付けられている実施形態を示している。本実施形態は、望ましくは、より重い粒子をもつ粉末のため使用される。
【0041】
上述のように、プラズマチャネル26中のプラズマは、カソード4とアノード8との間に設けられた電気アークによって加熱される。好ましい実施形態では、絞り部80に入るプラズマの温度は10,000°K以上である。この温度上昇は、プラズマが高圧部82を通過する間に起こる。絞り部に入るプラズマの温度は、高圧部82の特性、特に、高圧部82を形成するために使用された中間電極の幾何形状および個数に依存するその長さに基づく。
【0042】
粉末がプラズマチャネル26に注入されるとき、粉末は低温搬送ガスによって供給される。低温搬送ガスが加熱プラズマと混合するとき、流れの中のプラズマの温度は著しく低下し、粉末が注入される前のプラズマの温度より低くなる。いくつかのコーティング加工では、プラズマ流中のプラズマは、粉末粒子が出口34で装置を出るとき、必要とされる温度および高水準の均一性を実現するように、粉末が注入された後に低圧部84において加熱されるべきである。カソード4とアノード8との間に設けられた電気アークは、低圧部84に沿って流れる注入された粉末の粒子を搬送するプラズマを加熱する。好ましい実施形態では、出口34で装置から出るプラズマの温度は、10,000°K以上である。粉末粒子の温度は、低圧部84の長さによって制御される粉末粒子がプラズマ流中で経過した時間に依存する。ナノ粒子のようないくつかのタイプの粉末粒子は、加熱されたプラズマの温度に晒され、その後、ある一定の時間に亘ってその温度に維持されるならば、気化するであろう。低圧部84内のプラズマの超音速は、このような粒子が気化することなく所望の粘度まで融解することを可能とする。しかし、粉末の粒子は、プラズマから粉末粒子への理想的でない運動エネルギーの転換のため、流れの中のプラズマより低速で移動することに注意する必要がある。粉末の所与のタイプに対して、粉末の粒子が低圧部84内で加熱される温度と、粒子が低圧部84を通過するために要する時間とは、低圧部84を形成する中間電極の幾何形状と個数とによって制御されることができる。
【0043】
ナノ粒子によるコーティングはさらなる問題をもたらす。特に、ナノ粒子の低質量のため、ナノ粒子は、低圧部84内でのプラズマ流の静圧が比較的低い場合でも、プラズマ流の所望の侵入を実現するために十分なモーメントを得ることができない。このようなナノ粒子に対し、装置の本実施形態およびその他の実施形態はSPPSで使用されることがある。SPPSを用いると、プラズマ流に注入される流動性材料は液体前駆体を含むナノ粒子の噴霧溶液である。噴霧溶液がプラズマ流に注入されるとき、前駆体は急速に気化し、加熱および加速されるプラズマ流中にナノ粒子を残す。
【0044】
もう一度図2を参照すると、動作中に、すべての要素は、特に、アノード8と、絞り部8を形成する中間電極18は、加熱される。中間電極18の冷却のため、冷却剤、好ましくは水が入口64から供給される。冷却剤は、プラズマ流の向きに長手方向冷却剤チャネル65を流れる。長手方向冷却剤チャネル65は、好ましくは喉部86の断面で中間電極18を取り囲む環状冷却剤チャネル66(図1示)に繋がる。冷却剤は、次に、循環チャネル66に接続された別の長手方向冷却剤チャネル67を通るプラズマ流と反対向きに流れる。冷却剤は出口68を介して装置から出る。図6において別に示されている冷却剤分割器15は、他の要素と一緒に、冷却剤チャネル65、66、および67を形成する。アノード8の冷却システムも同様である。冷却剤、好ましくは水は、入口70を介して装置に入る。冷却剤は、次に、長手方向冷却剤チャネル71を通るプラズマ流の向きに流れる。その後、冷却剤は、アノードの周りで循環チャネル72の中を流れる(図1示)。その後、冷却剤は別の長手方向チャネル73を通るプラズマ流の向きと反対向きに流れ、そして、出口74を介して装置から出る。図7において別に示されている冷却剤分割器17は、他の要素と一緒に、冷却剤チャネル71、72、および73を形成する。いくつかの実施形態では、同じ冷却剤がアノード8および中間電極18を冷却するために使用される。他の実施形態では、異なる冷却剤がアノード8および中間電極18を冷却するために使用される。
【0045】
図5は、2台の流動性材料インジェクタを備えた装置の実施形態を示している。本実施形態では、高圧部82は、上述された第1の実施形態と同じ中間電極12、14、および16と、同じ絶縁体36、38、および40とによって形成されている。低圧部84は、中間電極20、22、24、140、142、および144と、アノード8と、絶縁体42、44、46、152、154、および156によって形成されている。フィーダ98とフィーダ128との間のプラズマチャネル160の部分は、少なくとも1個、好ましくは2個以上の中間電極によって形成されている。図5に示された実施形態では、部分160は、3個の中間電極20、22、24によって形成されている。フィーダ128とアノード8内の開口部34との間のプラズマチャネル162の部分もまた、少なくとも1個、好ましくは2個以上の中間電極によって形成されている。図5に示された実施形態では、部分162は3個の中間電極140、142、および144と、アノード8とによって形成されている。一般に、2台以上の流動性材料インジェクタを有する実施形態では、隣接したフィーダは、少なくとも1個の、好ましくは2個以上の中間電極によって分離されている。
【0046】
再び図5を参照すると、部分160および162には、冷却システムが設けられている。描かれているように、各部分は、その固有の冷却システムを有している。入口70と、チャネル71、73、および72(図5に示されていない)と、出口74とを備える冷却システムは、上記の説明に従って、中間電極146を冷却するために使用される。入口130と、チャネル131、132と、アノードを取り囲むチャネル(図5に示されていない)および出口134とを備える類似した冷却システムが、上記の説明に従ってアノード8を冷却するために使用される。2台以上の流動性材料インジェクタを有する実施形態では、フィーダに隣接したペア毎にプラズマチャネルの一部を形成するそれぞれの電極グループに冷却システムを持ってもよい。これらの冷却システムは、異なる冷却剤を使用することがあり、互いに独立に動作することができる。
【0047】
複数の流動性材料インジェクタを備えた実施形態では、対応するフィーダは同様に角度を付けても、付けなくてもよい。例えば、図5の実施形態では、フィーダ98とフィーダ128の両方は、プラズマ流の向きに垂直である。他の実施形態では、一方のフィーダが図4に示されているようにプラズマ流の向きに角度を付けることができるし、もう一方のフィーダは図3に示されているようにプラズマ流と反対向きに角度を付けることができる。いくつかの他の実施形態では、両方のフィーダが同じ方向に、異なる角度で角度を付けることができる。
【0048】
図5に示された実施形態の動作は、上述された図1および2に示された実施形態の動作と類似している。実際上、フィーダ128より上流で起こるプロセスは実質的に同じである。動作中に、第1の流動性材料がフィーダ98を介してプラズマ流に注入された後、プラズマによって搬送される第1の流動性材料の粒子は、プラズマチャネルの低圧部を通過する。第1の流動性材料の粒子が適切な温度まで加熱された点で、第2の流動性材料がフィーダ128を介してプラズマ流に注入される。フィーダ128は第2の流動性材料チャンバ126に接続されている。第2の流動性材料は、入口124および125を介して第2の流動性材料チャンバ126に供給される。プラズマによって搬送される2種類の流動性材料の粒子は、プラズマチャネルの残りを通過し、アノード8の開口部34を介して出る。
【0049】
フィーダ98と128との間の部分160の長さは、第1の流動性材料の特性に依存する。この特性は、部分160を形成するために使用される中間電極の個数および幾何形状によって制御される。第2の流動性材料が流れに注入されるとき、その粒子は、第1の流動性材料の粒子と共に流れの中のプラズマによって加熱される。フィーダ128とアノード8の開口部34との間の部分162の長さは、第2の流動性材料の特性に依存している。この特性は、部分162を形成するために使用される中間電極の個数および幾何形状によって制御される。部分162の長さは、(第1の流動性材料の粒子と共に加熱される)第2の流動性材料の粒子がアノード8の開口部34に到達するときまでに特定のスプレー加工によって必要とされる特性を実現するように、選択される。部分160および162の長さの合計は、第1の流動性材料の粒子がアノード8の開口部34に到着するときまでに特定のスプレー加工によって必要とされる特性を実現するように、選択される。第1の流動性材料の粒子は、部分160で加熱され、次に、フィーダ128がプラズマチャネル26に接続する領域で冷却され、その後、部分162において(第2の流動性材料の粒子と共に)再度加熱されることに注意すべきである。部分160の長さは、部分160および162の長さの総計と、部分162の長さとから決定可能である。3台以上の流動性材料インジェクタを備える実施形態において、様々な部分の長さは同様に決定されることができる。
【0050】
発明の装置は、プラズマスプレーによるコーティング以外の用途に使用されることがある。例えば、1つの可能な用途は、プラズマ増強化学蒸着法(PECVD)である。簡単に言えば、化学蒸着法(CVD)は、粒子が加熱され、被覆されるべき表面に向かって進められ、粒子の高エネルギーの結果として、化学反応が被覆されるべき表面上で起こり、膜が形成される、薄膜の堆積法である。CVDが使用される1つの用途はダイヤモンド膜の堆積である。表面上にダイヤモンド膜の堆積を実現するため、ダイヤモンドの成長のため必要とされる条件が表面上で生成されなければならない。プラズマ生成装置は、このような条件を作り出すため使用され得る。アルゴンプラズマは、例えば、10,000°K以上の温度を維持する。この温度で、水素およびいくつかの炭化水素が原子状水素および原子状炭素に分解される。プラズマ流は表面に向かって原子状水素および原子状炭素を加速し、表面上に原子状炭素が(特定の前駆体の存在下で)ダイヤモンド膜を形成し始める。単一の流動性材料インジェクタを備える実施形態を使用して、カソードから炭素および水素を分離し、それによって、カソード腐食を阻止し、同時に、2つの気体が元素状態の粒子に完全に分解するために加熱されたプラズマ内で十分な時間を経過することを確実にする。
【0051】
CVDにおける重要な因子は、境界層と呼ばれるダイヤモンドが成長する層の厚さである。境界層の厚さはダイヤモンド膜が成長する速度を決定し、理想的には境界層の厚さはできる限り薄くすべきである。層の厚さは、元素状態の粒子を送り出すため使用されるプラズマ流の速度の平方根に反比例する。絞り部を使ってプラズマを超音速に加速することは、したがって、より薄い境界層の形成を促進する。
【0052】
本発明の装置の実施形態は、固体、液体および気体状の有害な材料または廃棄物の破壊のためにも使用されることができる。例えば、プラズマ生成装置の実施形態は、廃棄物管理システムまたは自動車排気システムに統合してもよい。高温で、有機材料は熱分解される。そして、システムのより低温のセクションにおいて、元素状態の粒子およびイオンは、単純な分子を形成するため、急速なアルカリ性反応のクエンチより前に再結合する。結果として生じる最終生成物は、アルゴン、二酸化炭素、および、水蒸気からなる気体と、無機ナトリウム塩の水溶液とを含む。
【0053】
有害な材料および廃棄物の破壊の機能をCVDと組み合わせることも可能である。例えば、装置の実施形態を使用するとき、破壊チャンバは、ダイヤモンドが元素状態の炭素から成長することが可能である基板ホルダーを含むことができる。
【0054】
複数台の流動性材料インジェクタを備える装置の実施形態は、単一の流動性材料を備える装置の実施形態が適していない用途における装置の使用を可能とする。
【0055】
例えば、タービン部品を被覆するために使用される遮熱コーティング(TBC)のようないくつかのコーティング加工の場合、保護膜と接着膜の2層のコーティングを有することが必要である。接着層は、被覆される金属の熱膨張率と、一般的にセラミックである保護層の熱膨張率との不一致のため必要である。接着膜は、最初に、被覆されるべき金属表面に塗布される。接着膜は、保護膜と金属表面との間の粘着層として機能する。より優れた粘着のため、および、より厚いコーティングを生成するため、機能傾斜コーティングとして知られている方法が使用される。機能傾斜コーティングされた2つの粉末がプラズマ流に注入される。しかし、注入される粉末の相対的な量は経時的に変化する。コーティングプロセスの初めに、接着膜を形成するために使用される粉末だけが注入される。徐々に、保護膜を形成するために使用される粉末の分量が増加され、接着膜を形成するために使用される粉末の分量が減少する。最終的に、保護膜を形成するために使用される粉末だけが供給される。2つの膜の形成のために使用された粉末は、粒子サイズ、融点などのような特性が非常に異なるものとなっている。仮に単一の流動性材料インジェクタを備える装置の実施形態を使用することは、2種類の粉末に対し、装置のパラメータの最適化を必要とするであろう。満足できるパラメータが見つかるとしても、このような装置の性能は最適ではない。
【0056】
複数台の流動性材料インジェクタを備える装置を使用することは、両方の粉末を噴霧するための最適条件を実現する装置の作成を可能とする。例えば、図5に示された装置の実施形態を参照すると、保護セラミック層を形成するために使用される粉末は、接着層を形成するために使用される粉末より高い融点をもつ。したがって、保護層を形成するために使用される粉末は入口94および95を介して上流の流動性材料インジェクタに供給される。接着膜を形成するために使用される粉末は、入口124および125を介して下流の流動性材料インジェクタに供給される。それぞれの部分160および162の長さは、両方の粉末が、アノード8の出口34から出る前に、プラズマチャネル26内で最適な時間を経過し、その後、最適温度で出口34から装置を出ることを保証するように構成されることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態の説明は例示と解説のため提示されている。網羅的であること、または、発明を開示されたそのままの形に制限することは意図されていない。多数の変更および変形が当業者には明らかであろう。実施形態は、発明の原理および発明の実際的な用途を最もうまく説明するために選択され記載され、それによって、当業者が発明を理解することを可能とする。特定の使用に適した種々の実施形態および変更が考慮される。発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定められることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.アノードと、
b.カソードと、
c.前記カソードと前記アノードとの間にアノードを通過して長手方向に延在し、アノード端に出口開口を有し、一部分が2個以上の互いに電気的に絶縁された中間電極および前記アノードによって形成され、絞り部を有するプラズマチャネルであって、絞り部がプラズマチャネルを、
i.カソードに最も近い絞り部の側に位置付けられ、少なくとも1個の中間電極によって形成されている高圧部と、
ii.アノードに最も近い絞り部の側に位置付けられている低圧部と、
に分割し、
絞り部の喉部が、(1)プラズマチャネルの長手方向を横断する高圧部の最小断面積、および、(2)プラズマチャネルの長手方向を横断する低圧部の最小断面積より小さいプラズマチャネルの長手方向を横断する断面積を有している、
プラズマチャネルと、
d.1台以上の流動性材料インジェクタであって、各流動性材料インジェクタが、
i.入口を有する流動性材料チャンバと、
ii.プラズマチャネルの低圧部において流動性材料チャンバをプラズマチャネルに接続する流動性材料フィーダと、を備える流動性材料インジェクタと、
を備える、プラズマ生成装置。
【請求項2】
前記高圧部が2個以上の中間電極によって形成されている、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項3】
前記低圧部が1個以上の中間電極によって形成されている、請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項4】
前記低圧部が2個以上の中間電極によって形成されている、請求項2に記載のプラズマ生成装置。
【請求項5】
前記絞り部が超音速ノズルである、請求項3に記載のプラズマ生成装置。
【請求項6】
前記プラズマチャネルの長手方向を横断する前記高圧部の最小断面積が前記プラズマチャネルの長手方向を横断する前記低圧部の最小断面積以下である、請求項3に記載のプラズマ生成装置。
【請求項7】
前記絞り部が中間電極によって形成されている、請求項3に記載のプラズマ生成装置。
【請求項8】
前記アノードを冷却する手段をさらに備える、請求項7に記載のプラズマ生成装置。
【請求項9】
前記アノードを冷却する手段と別個に、前記絞り部を形成する中間電極を冷却する手段をさらに備える、請求項8に記載のプラズマ生成装置。
【請求項10】
各流動性材料フィーダが、(a)前記プラズマチャネルの長手方向に垂直の方向、(b)前記アノードへ向かって角度が付けられた方向、および、(c)前記アノードから遠ざかるように角度が付けられた方向のうちの1つの方向を有している、請求項3に記載のプラズマ生成装置。
【請求項11】
隣接したフィーダのいずれかのペアの間のプラズマチャネルの部分が2個以上の中間電極によって形成されている、請求項3に記載のプラズマ生成装置。
【請求項12】
1個以上の流動性材料をプラズマスプレーする方法であって、
a.プラズマ流を作るステップと、
b.前記プラズマ流中のプラズマを少なくとも10,000°Kまで加熱するステップと、
c.前記プラズマを加熱した後、前記プラズマ流中の加熱されたプラズマの速度圧を増加させ、同時に前記プラズマ流中の加熱されたプラズマの静圧を減少させるステップと、
d.前記プラズマ流中の加熱されたプラズマの静圧を減少させた後、1個以上の流動性材料を前記プラズマ流に注入するステップと、
e.各流動性材料が注入された後、前記プラズマ流中のプラズマを加熱することにより前記プラズマ流中のすべての流動性材料の粒子を加熱するステップと、
f.結果として生じた加熱された粒子およびプラズマを出力するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記速度圧を増加させるのと同時に前記プラズマ流中のプラズマの速度を増加させるステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プラズマ流中のプラズマが増加させられる速度が超音速である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子を加熱するステップが、少なくとも1個の流動性材料の少なくとも一部の粒子が所定の温度に到達するまで実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
注入される少なくとも1個の流動性材料の量が経時的に変えられる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1個の流動性材料がナノ粒子前駆体溶液である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1個の流動性材料が水素と炭化水素との混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1個の流動性材料が(a)廃棄物と(b)有害な材料とのうちの一方である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1個の流動性材料について、流動性材料を炭素を含む2個以上の元素に分解するステップをさらに備える、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−521042(P2010−521042A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547536(P2009−547536)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000919
【国際公開番号】WO2008/092478
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(509217965)プラズマ テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】