説明

プラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法

【課題】VHF帯の高周波電力の供給を行って大面積の被処理基板を処理した場合でも均一なプラズマを得ること。
【解決手段】プラズマ成膜装置において、第1の電極における第2の主面は複数の第1の給電点と複数の第2の給電点と少なくとも1つの第3の給電点と少なくとも1つの第4の給電点とを有し、前記複数の第1の給電点と前記複数の第2の給電点とは、対称点に関して対称な位置であって対称軸に関して対称な位置に配されるとともに、給電される高周波電力の位相差が互いに180度であり、前記少なくとも1つの第3の給電点と前記少なくとも1つの第4の給電点とは、それぞれ、前記対称点から等距離であり前記対称軸上となる位置に配される、あるいは前記対称点から等距離であり前記対称軸に関して対称な位置に配された1組の給電点を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ成膜装置は、アモルファスシリコン薄膜や微結晶シリコン薄膜等の薄膜を基板上に成膜するための装置として広く用いられている。今日では、例えば薄膜シリコン太陽電池の発電層やフラットディスプレイパネルに用いられる薄膜トランジスタのような大面積薄膜を高速で一時に成膜することができるプラズマ成膜装置も開発されている。大面積のシリコン薄膜を成膜するには、平行平板型プラズマ成膜装置を使用するのが一般的である。
【0003】
平行平板型プラズマ成膜装置は、真空チャンバ内において数mmから数十mmの距離を隔てて対向している2つの電極を有する。これら2つの電極は、水平面内に設置され、一方の電極に高周波電力を供給し、他方の電極が接地されている。シリコン薄膜を成膜する場合、シラン(SiH)や水素(H)等の成膜ガスを、一方の電極に設けられた多数のガス穴を通して放電空間となる電極間のギャップ領域に供給する。放電空間に供給されたガスは高周波電力によってプラズマ化する。成膜ガスはプラズマ中で分解され、ラジカルやイオンとなって被成膜基板へと入射し、基板上にシリコン膜を形成する。一般に、接地されている側となる他方の電極がステージとして用いられ、他方の電極の上に被成膜基板が載置される。
【0004】
特許文献2には、電極と基板ホルダーとの間にプラズマを発生させるプラズマ処理装置において、電極の2つの部位に、10MHz〜30MHzの高周波電力を供給することが記載されている。具体的には、電極の左右の2つの部位に供給される高周波電力が、互いに干渉しないように時間分割された2種類のパルス変調出力となるように発生されるとされている。これにより、特許文献2によれば、2つの部位の一方のみに高周波電力を供給したときの電界強度分布と他方のみに高周波電力を供給したときの電界強度分布とを重ね合わせて時間平均された電界強度分布を得ることができるので、(縦横の長さが1m×1m以上の)大面積基板全面のプラズマの均一性を高めることができるとされている。
【0005】
一方、近年、成膜品質や成膜速度向上といったニーズに応えるため、従来一般的であった13.56MHzよりも周波数の高いVHF(Very High Frequency)帯の高周波電力を用いて生成したVHFプラズマを成膜に用いることが盛んに研究されている。VHFプラズマは高密度、低電子温度であるという特徴を備えるため、上記のニーズに対する解として期待が持たれている。
【0006】
しかしながら、高周波電力の周波数が増加すると、高周波電力の「波」としての性質が顕著に表れ、成膜特性が電極面内で不均一になる傾向にある。すなわち、高周波電力の周波数が増加すると、電極面内で高周波電力が干渉を起こし、定在波を形成することで電界強度分布が不均一になり、その結果プラズマ密度が不均一となり、最終的に成膜速度や膜質そのものが不均一になってしまう傾向にある。近年における被成膜基板の大型化はこの傾向を顕著なものとさせる要因となっており、実用化の上で大きな課題となっている。
【0007】
一般に電極サイズは使用する高周波電力の波長λの1/10以下であることが望ましいとされている。これは目安として、電極サイズがλ/10以下であれば定在波が形成しても電界強度の面内ばらつきがおおむね±10%以下に収まるためである。例えば高周波電力の周波数が13.56MHzである場合、電極サイズは2m強まで、高周波電力の周波数がVHF帯例えば60MHzである場合、電極サイズは50cm程度が限界となる。
【0008】
ここで、成膜特性、例えば膜厚分布のばらつきは、フラットパネルディスプレイ用薄膜トランジスタなどにおいて再現性を確保するために±5%程度の範囲に収まること、太陽電池分野において再現性を確保するために±10%程度の範囲に収まることが、実用化の一つの指標となっている。従来のVHFプラズマ技術では、例えばアモルファスシリコン膜の成膜速度の場合、基板面積50cm×50cm程度で±10〜15%程度と、小面積基板でかろうじて満たしている状況である。
【0009】
特許文献1には、電極体と基板ホルダーとの間にプラズマを発生させる表面処理装置において、60〜150MHz程度のVHF帯の高周波電力を分岐器により4つに分岐して電極体における4つの電力供給箇所へ供給することが記載されている。また、4つの電力供給箇所を電極体の裏面の中心に対して対称に設定して電極体の前面への電力供給経路を等しくすることが記載されている。これにより、特許文献1によれば、4つの電力供給箇所が均等な位置に設定されるので、電極体の全面に供給される高周波電力の分布が均一になり、均一なプラズマが生成されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3425009号公報
【特許文献2】特開2006−216679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一方、上記の指標は、近年のメーターサイズ(1.1m×1.4m)の基板においては±20〜40%程度とクリアできない傾向にある。
【0012】
特許文献1に記載の表面処理装置では、4つの電力供給箇所が均等な位置に設定されれば、電極体における4つの電力供給箇所から電極体へ同時に高周波電力を供給することにより、定在波の発生が抑えられるとされている。
【0013】
しかし、特許文献1には、処理される基板が、550mm×650mm程度の大きさのガラス基板であることが記載されている。特許文献1に記載の技術では、メーターサイズの基板を処理することが想定されていないと考えられる。仮に、特許文献1に記載の技術をメーターサイズの基板に適用した場合、各電力供給箇所から供給された高周波電力の合成された定在波が形成されるためプラズマ分布の不均一性が生じると考えられる。
【0014】
実際に本発明者が検討したところ、1.1m×1.4mの大型基板に対して電極の周囲4点から同時に給電を行ってプラズマの生成を試みたが、電極中央にプラズマが局在して生成し、均一なプラズマは得られなかった。定在波の形成は波の干渉という基本的な物理現象に起因しているため根本的な解決(定在波そのものを抑えること)は非常に困難であると考えられる。
【0015】
このように、特許文献1に記載の表面処理装置を用いてメーターサイズの基板(大面積の被処理基板)を処理した場合、均一なプラズマを得ることは困難である。
【0016】
また、特許文献2には、上述のように、10MHz〜30MHzの高周波電力を供給することが記載されている。特許文献2に記載の技術では、VHF帯の高周波電力を供給することが想定されていないと考えられる。
【0017】
すなわち、特許文献2に記載の技術では、電極面上で対向する位置に接続された電源同士が互いに干渉を起こさないよう、交互にオン/オフすることで均一化を図っている。しかし、周波数がVHF帯になると定在波の形成がより顕著になり、結果、電界分布は節点をともなった曲線的な形状になる。このVHF帯においても、2つの定在波を重ね合わせることで均一化は可能であるが、腹と節の位置がちょうどπ/4ずれる条件(例えば電極のサイズがλ/4の奇数倍など)を満たす場合に限定される。しかも実際の成膜やエッチングプロセスなどにおいては、プロセス条件によってプラズマパラメータが変化し、それにともないλも変化する。したがって実用的な観点でもプロセスマージンが非常に小さくなる傾向にあり、特許文献2に記載の技術の、VHF帯の周波数領域への適用は難しい。
【0018】
加えて、複数の部位を交互にオン/オフして電力供給を行う特許文献2に記載された方法では、オン状態の電力供給条件が、オフ状態の電力供給部位に接続されているマッチャー(整合器)のインピーダンス(回路定数)に依存するため、マッチャーの整合調整が困難となる傾向にある。この観点からも、特許文献2に記載の技術の、VHF帯の周波数領域への適用は難しい。
【0019】
このように、特許文献2に記載されたプラズマ処理装置を用いてVHF帯の高周波電力の供給を行った場合、均一なプラズマを得ることは困難である。
【0020】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、VHF帯の高周波電力の供給を行って大面積の被処理基板を処理した場合でも均一なプラズマを得ることができるプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかるプラズマ成膜装置は、真空チャンバと第1の電極とで成膜室が形成され、前記成膜室内に前記第1の電極に対向して配置された第2の電極上に被成膜基板が載置され、前記第1の電極と前記第2の電極との間に発生させたプラズマを用いて成膜をおこなうプラズマ成膜装置であって、前記第1の電極は、方形の形状を有し、前記第1の電極における前記第2の電極に対向する第1の主面の反対側の第2の主面は、前記方形における相対する2辺の一方の側に配された複数の第1の給電点と、前記相対する2辺の他方の側に配された複数の第2の給電点と、前記方形における相対する他の2辺の一方の側に配された少なくとも1つの第3の給電点と、前記相対する他の2辺の他方の側に配された少なくとも1つの第4の給電点とを有し、前記複数の第1の給電点と前記複数の第2の給電点とは、対称点に関して対称な位置であって対称軸に関して対称な位置に配されるとともに、給電される高周波電力の位相差が互いに180度であり、前記少なくとも1つの第3の給電点と前記少なくとも1つの第4の給電点とは、それぞれ、前記対称点から等距離であり前記対称軸上となる位置に配される、あるいは前記対称点から等距離であり前記対称軸に関して対称な位置に配された1組の給電点を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、(等価的に)対称軸上にある第3の給電点及び第4の給電点に接続される高周波電源は、相対する2辺側の複数の第1の給電点及び複数の第2の給電点に接続された高周波電源からの影響を受けにくい。また、相対する2辺側の複数の第1の給電点及び複数の第2の給電点に接続された高周波電源は、(等価的に)対称軸上にある第3の給電点及び第4の給電点に接続された高周波電源の整合状態に影響されないで整合をとることが容易である。この結果、複数の第1の給電点及び複数の第2の給電点によるV字型の電界強度分布と第3の給電点及び第4の給電点による尾根型の電界強度分布とをそれぞれ独立に(安定して)形成して重ね合わせることができるので、VHF帯の高周波電力の供給を行って大面積の被処理基板を処理した場合でも均一なプラズマを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施の形態1にかかるプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図2】図2は、実施の形態1における高周波電力の給電系統図である。
【図3】図3は、第1の電極の大気側で計測した電界分布図である。
【図4】図4は、第1の電極とステージとの間に形成される電界分布図である。
【図5】図5は、第1の電極とステージとの間に形成される電界分布図である。
【図6】図6は、第1の電極とステージとの間に形成される電界分布図である。
【図7】図7は、実施の形態3における高周波電源の動作図である。
【図8】図8は、実施の形態4における高周波電力の給電系統図である。
【図9】図9は、実施の形態5における高周波電力の給電系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかるプラズマ成膜装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
実施の形態1.
実施の形態1にかかるプラズマ成膜装置100の構成について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1にかかるプラズマ成膜装置100の構成を概略的に示す断面図である。
【0026】
プラズマ成膜装置100は、図1に示すように、真空チャンバ1、排気口3、成膜室8、絶縁フランジ4、電極(第1の電極)5、ガス供給口6、シャワープレート7、ステージ(第2の電極)2、及び複数の高周波電源10a〜10fを備える。
【0027】
真空チャンバ1は、プラズマ成膜装置100の外壁における側部及び底部を形成するとともに、成膜室8の側部及び底部を覆うように延びている。
【0028】
排気口3は、真空チャンバ1に連通されているとともに、排気管(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)に接続されており、真空チャンバ1を真空ポンプで排気するために設けられている。
【0029】
成膜室8は、電極5と真空チャンバ1とで覆われて形成された空間である。成膜室8では、後述のように、プラズマが生成される。
【0030】
絶縁フランジ4は、電極5と真空チャンバ1とを高周波電力的に絶縁するとともに、電極5と真空チャンバ1との間を真空封止している。これにより、成膜室8は、真空排気可能な空間となっている。
【0031】
電極5は、プラズマ成膜装置100の外壁における上部を形成するとともに、成膜室8の上部を覆うように延びている。また、電極5は、例えば、成膜室8の上部及び側部を覆うように延びている。電極5には、複数の高周波電源10a〜10fが接続されている。
【0032】
ガス供給口6は、ガス供給管(図示せず)を介してガス供給源(図示せず)に接続されており、電極5とシャワープレート7との間の空間11にガス供給源から成膜ガスを供給するために設けられている。
【0033】
シャワープレート7は、空間11の下部を覆うように延びているとともに、複数のガス穴を有している。これにより、シャワープレート7は、複数のガス穴を介して、成膜ガスを空間11から成膜室8に導入する。
【0034】
ステージ2は、成膜室8内において電極5の第1の主面5aと対向するように配置されているとともに例えば接地されており、電極5に対する対向電極(第2の電極)として機能する。また、ステージ2上には、被成膜基板9が載置されている。
【0035】
複数の高周波電源10a〜10fは、電極5の第2の主面5bにおける後述する位置に接続されており、電極5へ高周波電力を供給する。第2の主面5bは、電極5におけるステージ2に対向する第1の主面5aの反対側の面である。
【0036】
プラズマ成膜装置100では、ガス供給口6から供給された成膜ガスが、シャワープレート7の複数のガス穴を介して成膜室8に導入され、成膜室8の圧力が真空ポンプ(図示せず)で適切な値に設定される。この状態で電極5に複数の高周波電源10a、10bから高周波を印加すると、電極5とステージ2との間にプラズマが生成されて被成膜基板9上に薄膜が堆積する。
【0037】
次に、プラズマ成膜装置100に適用した電極5への高周波電力の給電方法について図2を用いて説明する。図2は、プラズマ成膜装置における電極5へ高周波電力を給電するための複数の高周波電源10a〜10fにおける系統・構成を示す図である。
【0038】
図2では、一例として、電極5が長方形で、ステージ2と対向するシャワープレート7の大きさは1.2m×1.5mとし、成膜室8側の反対面である大気側から高周波を給電する場合の構成が示されている。給電する電力の周波数は高速成膜を実現するために例えば60MHzのVHF帯を用いる。
【0039】
まず、電極5の第2の主面5bにおける相対する2辺として両短辺5b1、5b2を考え、第2の主面5bにおける相対する他の2辺として両長辺5b3、5b4を考える。そして、両短辺5b1、5b2側から電極5へVHF帯の高周波電力を給電する方法について説明する。
【0040】
電極5の短辺5b1側には、高周波電力の給電点27a、27bが設けられ、電極5の短辺5b2側には、高周波電力の給電点27c、27dが設けられている。すなわち、電極5は、方形の形状を有しており、第2の主面5bは、その方形における相対する2辺の一方(短辺5b1)の側に配された複数の給電点(複数の第1の給電点)27a、27bと、相対する2辺の他方(短辺5b2)の側に配された複数の給電点(複数の第2の給電点)27c、27dとを有する。複数の給電点(複数の第1の給電点)27a、27bと複数の給電点(複数の第2の給電点)27c、27dとは、対称軸28に関して線対称の位置に配されている。また、給電点27aと給電点27dとは、対称点Cに関して点対称の位置に配されている。給電点27bと給電点27cとは、対称点Cに関して点対称の位置に配されている。
【0041】
給電点27a、27b、27c、27dには、それぞれ、高周波電力の整合状態を調整するマッチャー(整合器)26a、26b、26c、26dが接続される。マッチャー26a〜26dから給電点27a〜27dへの接続は図示しない導電性の良い金属の板、棒あるいは、高周波同軸ケーブルが用いられる。この4つの給電点27a〜27dは矩形を形成し、それぞれが電極周縁から近い領域に設定される。
【0042】
マッチャー26a、26b、26c、26dには、それぞれ、高周波アンプ25a、25b、25c、25dで増幅された高周波電力が給電される。
【0043】
信号発生器21は、VHFの電力信号(例えば、60MHzの正弦波)を発生させ分配器22へ供給する。分配器22は、VHFの電力信号(例えば、60MHzの正弦波)を例えば6つの電力信号に分配し位相器23へ供給する。
【0044】
位相器23は、6つの電力信号のそれぞれの位相を調整する。すなわち、位相器23は、6つの電力信号に対応した6つの位相調整部23a〜23fを有する。6つの位相調整部23a〜23fは、6つの電力信号を受けて位相を調整する。各位相調整部23a〜23fは、調整後の電力信号を、対応するオン/オフ切り替え器24a〜24fへ供給する。
【0045】
オン/オフ切り替え器24a、24b、24c、24d、24e、24fは、位相器23からの出力信号(電力信号)をパルス化し、対応する高周波アンプ25a、25b、25c、25d、25e、25fに高周波電力として入力する。
【0046】
なお、位相器23における位相制御(位相調整)は、図示しない制御器により制御されてもよい。あるいは、オン/オフ切り替え器24a〜24fには高周波出力をオン/オフするため、図示しない制御器からオン/オフ信号が入力されて制御されてもよい。あるいは、場合によっては、オン/オフ切り替え器24a〜24fがオン/オフ動作をせず、連続出力とし使用することも可能である。
【0047】
上記の構成において、信号発生器21でVHFの電力信号(例えば、60MHzの正弦波)を発生させ、位相器23により給電点27a、27bに供給すべき高周波電力(電力信号)の位相を同位相に設定し、給電点27c、27dに供給すべき高周波電力(電力信号)の位相を給電点27a、27bの高周波電力の位相に対して180度逆相に設定する。この状態で高周波アンプ25a、25b、25c、25dからVHF帯の高周波電力を給電する。
【0048】
すなわち、各高周波電源10a〜10dは、等価的に、信号発生器21、分配器22、位相器23、対応するオン/オフ切り替え器24a〜24d、対応する高周波アンプ25a〜25d、及び対応するマッチャー26a〜26dを有する電源回路として機能する。複数の高周波電源10a〜10dは、複数の給電点27a〜27dにVHF帯の高周波電力を給電する。
【0049】
本発明者は、以上の状態で電極5の大気側(第2の主面5b側)において、電極表面(第2の主面5b)における電界分布を高電圧プローブにより測定した。その結果を図3に示す。グラフは電極表面(第2の主面5b)上の電界強度を三次元で表示しており、電界強度は高周波振幅の最大値で規格化している。
【0050】
図3に示すグラフから電界強度は両短辺5b1、5b2側に強く、短辺5b1、5b2側からVHF帯の高周波電力を給電している給電点がつくる対称軸31上が谷となるV字型分布となった。尚、電極上の高周波電界分布は、給電点27a、27b、27c、27dの位置を中央寄り、あるいは長辺5b3、5b4寄りに移動させた場合でも、4つの給電点27a〜27dで矩形を形成すれば同様の山と谷のV字型パターンが形成された。すなわち、4つの給電点27a〜27dで矩形を形成すれば、複数の給電点(複数の第1の給電点)27a、27bと複数の給電点(複数の第2の給電点)27c、27dとの対称軸31上に高周波電界が最小値となる谷(高周波電界の節)が形成されることが確認された。
【0051】
ここで、高周波電界が最小値となる谷(高周波電界の節)の部分が給電点27a、27bと給電点27c、27dとの対称軸31上に形成されるのは以下の理由によると考えられる。給電点27a及び給電点27bに対して、給電点27c及び給電点27dを逆位相(180度)で給電するため、対称軸31上では高周波電界が打ち消しあうので高周波電界が最小値(例えばほぼ零)となる。
【0052】
次に、実際のプラズマ生成に寄与する電極5とステージ2との間で形成される高周波電界分布を知るため、電磁界シミュレーションによる高周波電界分布の見積もりを行った。シミュレーションでは、絶縁フランジ4はアルミナセラミクス、電極(第1の電極)5とステージ(第2の電極)2との間隔は10mm、その電極間で生成されるプラズマは均質とし、60MHzでのεr=0.95、tanδ=3.57の媒質とした。
【0053】
電磁界シミュレーションの解析から得られた電界の三次元分布を図4に示す。図4に示すグラフにおいて、Xは電極5の長辺方向(長辺5b3、5b4に沿った方向)、Yは短辺方向(短辺5b1、5b2に沿った方向)を示し、電界強度を最大値で規格化している。図4に示されるように、電界強度は、両短辺5b1、5b2側に強く、中央部(対称軸上)が谷となるV字型分布を示した。
【0054】
次に、電極5の両長辺5b3、5b4側からVHF帯の高周波電力を給電する方法について図2を用いて説明する。
【0055】
電極5の(第2の主面5bにおける)長辺5b3側には、高周波電力の給電点27eが設けられ、電極5の長辺5b4側には、高周波電力の給電点27fが設けられている。すなわち、電極5は、方形の形状を有しており、第2の主面5bは、上記の4つの給電点27a〜27dに加えて、その方形における相対する他の2辺の一方(長辺5b3)の側に配された1つの給電点(第3の給電点)27eと、相対する他の2辺の他方(長辺5b4)の側に配された1つの給電点(第4の給電点)27fとを有する。給電点27eと給電点27fとは、対称軸28上に配されている。給電点27eと給電点27fとは、給電点27a〜27dの対称点Cから互いに等距離の位置に配されている。
【0056】
給電点27e、27fには、それぞれ、高周波電力の整合状態を調整するマッチャー(整合器)26e、26fが接続されている。給電点27e、27fの位置は、前述した対称軸31(図3参照)に対応した対称軸28上で且つ、4つの給電点27a〜27dの対称中心Cから等距離に設定されている。前述した短辺5b1、5b2側からの給電と同様に、長辺5b3、5b4側から給電した場合の電極5とステージ2との間で形成される高周波電界分布を知るため、電磁界シミュレーションによる高周波電界分布の見積もりを行った。シミュレーションの条件は図3と同様とし、給電点27eの高周波電力と給電点27fの高周波電力との位相を同相に設定した。
【0057】
電磁界シミュレーションの解析から得られた電界の三次元分布を図5に示す。図5に示すグラフにおいて、Xは電極の長辺方向(長辺5b3、5b4に沿った方向)、Yは短辺方向(短辺5b1、5b2に沿った方向)を示し、電界強度を最大値で規格化している。図5に示されるように、電界強度は、両短辺5b1、5b2側に弱く、中央部(対称軸上)が強い尾根状分布を示した。
【0058】
すなわち、各高周波電源10e、10fは、等価的に、信号発生器21、分配器22、位相器23、対応するオン/オフ切り替え器24e、24f、対応する高周波アンプ25e、25f、及び対応するマッチャー26e、26fを有する電源回路として機能する。複数の高周波電源10e、10fは、複数の給電点27e、27fにVHF帯の高周波電力を給電する。
【0059】
以上で述べた2つの高周波電力の給電方法を用いて、電極5とステージ2との間で均一な電界分布を形成する方法を以下に説明する。
【0060】
電界を均一化するために、上記の2つの給電方法で得られたそれぞれの電磁界シミュレーション結果の電界分布を組み合わせて合成する。電磁界シミュレーションの解析では、給電点27a、27bの高周波電力の位相を同位相に設定し、給電点27c、27dの高周波電力の位相を給電点27a、27bの高周波電力の位相に対して180度逆相に設定した。次に電極5の対称軸28上に接続した高周波電力の給電点27e、27fには、給電点27a、27bと同位相の高周波電力を給電する。高周波電力の大きさは、短辺5b1、5b2側の4点(27a、27b,27c,27d)のそれぞれに給電する電力を同じとし、長辺5b3、5b4側の2点(27e、27f)のそれぞれに給電する電力は、それらの2倍とした。つまり、短辺5b1、5b2側の4点の給電点27a〜27dに給電する高周波電力の総和と長辺5b3、5b4側の2点の給電点27e、27fに給電する高周波電力の総和とを均等とした。
【0061】
その結果、図6に示す電界分布が得られ、短辺5b1、5b2側からの給電で得られたV字型分布と、長辺5b3、5b4側からの給電で得られた尾根状分布とが合成されたパターンは、ほぼ平坦な分布となった。すなわち、図6に示す電界分布では、電極面内での電界均一性が平均値に対して±10.8%が得られた。
【0062】
なお、実際にプラズマを生成した場合は、上記の電磁界シミュレーションで得られた電界分布に対応したプラズマ分布が形成され、均一な成膜が可能となると考えられる。
【0063】
次に、プラズマ成膜装置100に上記の給電方法を適用して、VHF帯の高周波電力によりシランガス(SiH)と水素ガス(H)との混合ガスで高周波プラズマを発生させ、大面積のガラス基板上に微結晶シリコン膜を堆積させた実験例について説明する。
【0064】
図1において、ステージ2上には被成膜基板9として1400mm×1100mmのガラス基板(厚み:4mm)を設置した。被成膜基板9はステージ2に内蔵されている図示されないシースヒータを用いて200℃に加熱した。次に、シャワープレート7と被成膜基板9との間隔が10mmになるようステージ2の高さ位置を調節した。この状態でガス供給口6にシランガス(SiH)及び水素ガス(H)をそれぞれ1slm及び50slmの流量で供給し、成膜室8のガス圧力が1000Paとなるよう調節した。ガス圧力が安定した後、電極5に図2に示した高周波電力供給系(高周波電源10a〜10f)からVHF帯の高周波電力を供給して、シラン(SiH)/水素(H)混合プラズマを発生させた。高周波アンプ25a〜25fの出力は、短辺5b1、5b2側の25a、25b、25c、25dを各々2000Wとし、長辺5b3、5b4側の25e、25fを各々4000Wとした。すなわち、短辺5b1、5b2側の4点(給電点25a、25b、25c、25d)に給電する総電力量を8000W、長辺5b3、5b4側の2点(給電点25e、25f)に給電する総電力量を8000Wとして、両者を均等にした。以上の条件で実施の形態1で説明した給電方法により高周波電力を給電して20分間成膜を行った。
【0065】
この場合、前述したように対称軸28上では、給電点27a、27b、27c、27dから給電されるVHFの高周波電界の節(谷)となる。したがって、給電点27e、27fに接続されているマッチャー26e、26fは、給電点27a、27b、27c、27dから給電されるVHFの高周波電界の影響をほとんど受けない。また、相対する短辺5b1、5b2側に接続されたマッチャー26a、26b、26c、26dは、対称軸28上に接続されたマッチャー26e、26fの整合状態に影響されないで整合をとれるので、複数給電によるプラズマの均一化が容易になる。
【0066】
加えて、相対する短辺5b1、5b2の一方(短辺5b1)側に接続されたマッチャー26a、26bと他方(短辺5b2)側に接続されたマッチャー26c、26dとは、逆相で給電しているので、4つのマッチャー26a〜26dの整合条件(マッチャー回路定数)がほぼ同一となる。その結果、対称軸28上の給電点27e、27fから見たインピーダンスの対称性が得られるのでマッチャー26e、26fによる整合が容易となる。
【0067】
このような実験の結果、ガラス基板上にシリコン系薄膜が2μm堆積され、面内の膜厚分布は平均値に対して±12%の範囲内であった。成膜した薄膜を太陽電池に利用することを想定して、ラマン分光法により見積もった膜の結晶化率はIc/Ia=7.2であり、微結晶シリコンを用いた薄膜太陽電池に適する微結晶シリコン薄膜が得られた。
【0068】
なお、高周波アンプ25a〜25fの出力は前述の値に限ることなく、それぞれの出力値をかえることによりプラズマ分布を変えることが可能である。また、相対する短辺5b1、5b2側へ接続する高周波電源は2台×2(高周波電源10a〜10d)としたが、原理的には電極中心Cから等距離の位置に1台ずつ配置しても、あるいは2台以上×2としても同等の結果が得られる。
【0069】
以上のように、実施の形態1では、プラズマ成膜装置100において、電極5のステージ2と対向しない(大気側の)第2の主面5bに、電極5の相対する2辺(短辺5b1、5b2)の側に各々2つの高周波電源を接続する給電点を設け、4つの給電点27a〜27dにより形成される形状を方形とする。また、相対する2辺5b1、5b2のうち一方(短辺5b1)の給電点27a、27bと他方(短辺5b2)の給電点27c、27dとの対称軸28上で且つ、4つの給電点27a〜27dにより形成される方形の中心、すなわち4つの給電点27a〜27dの対称点Cから等距離の位置に、2つの高周波電源を接続するための給電点27e、27fを設けている。
【0070】
この構成において、相対する2辺のうち一方(短辺5b1)の給電点27a、27bの高周波電力と他方(短辺5b2)の給電点27c、27dの高周波電力との位相差を180度で給電するので、電極5の(大気側の)第2の主面5bに形成される高周波電界分布の節が給電点27a、27bと給電点27c、27dとの対称軸28上に形成される。そして、この対称軸28上から給電点27e、27fにより別途高周波電力を給電するので、対称軸28上に接続される高周波電源10e、10fは、相対する2辺(短辺5b1、5b2)に接続された高周波電源10a〜10dからの影響を受けにくい。また、相対する2辺(短辺5b1、5b2)に接続された高周波電源10a〜10dは、対称軸28上に接続された高周波電源10e、10fの整合状態に影響されないで整合をとることが容易である。この結果、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布と給電点27e、27fによる尾根型の電界強度分布とをそれぞれ独立に(安定して)形成して重ね合わせることができるので、複数の給電点によるプラズマの均一化が容易になり、大面積基板への均一成膜が可能となる。すなわち、VHF帯の高周波電力の供給を行って大面積の被処理基板を処理した場合でも均一なプラズマを得ることができる。
【0071】
また、相対する2辺(短辺5b1、5b2)の側に配された4つの給電点27a〜27dは、対称点Cに関して点対称であるとともに、対称軸28に関して線対称であるような位置に配されている。また、相対する他の2辺(短辺5b3、5b4)の側に配された2つの給電点27e、27fは、4つの給電点27a〜27dの対称点Cから互いに等距離であるとともに、それぞれ対称軸28上となるような位置に配されている。
【0072】
この構成において、相対する2辺の一方(短辺5b1)側に接続されたマッチャー26a、26bと他方(短辺5b2)側に接続されたマッチャー26c、26dとは、逆相で給電しているので、4つのマッチャー26a〜26dの整合条件(マッチャー回路定数)がほぼ同一となる。その結果、対称軸28上の給電点27e、27fから見たインピーダンスの対称性が得られるのでマッチャー26e、26fによる整合が容易となる。
【0073】
また、実施の形態1では、相対する2辺(短辺5b1、5b2)の側の給電点27a〜27dへ給電される高周波電力の総和と、相対する他の2辺(短辺5b3、5b4)の側の給電点27e、27fへ給電される高周波電力の総和とは、互いに均等になっている。これにより、重ね合わせるべき、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布と給電点27e、27fによる尾根型の電界強度分布とのバランスを向上できるので、複数の給電点によるプラズマの均一化がさらに容易になり、大面積基板への均一成膜が容易となる。
【0074】
実施の形態2.
実施の形態2にかかるプラズマ成膜装置100について説明する。以下では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0075】
実施の形態2にかかるプラズマ成膜装置100は、その動作が実施の形態1と異なる。
【0076】
実施の形態1では、図2に示す電極5に対して、対称軸上28の給電点27e、27fに給電するそれぞれのVHF帯の高周波電力の位相を、給電点27a、27bの高周波電力と同位相に設定している。
【0077】
それに対して、実施の形態2では、給電点27e、27fに給電するそれぞれのVHF帯の高周波電力に位相差を設ける。具体的には、位相器23における位相調整部23e、23fが、給電点27e、27fに給電すべき高周波電力(電力信号)に位相差を発生させ、その位相差を時間的に変化(変調)させる。このとき、電極間間隔、ガス圧力などのプロセス条件を変化させた場合でも、その変化に応じて、より急峻な尾根を有する尾根型の電界強度分布が得られるように変調条件を調節する。
【0078】
このように、実施の形態2では、プロセス条件の変化に応じて、より急峻な尾根を有する尾根型の電界強度分布が得られるように、対称軸28上に接続された高周波電源10e、10fの位相を時間的に変調し、そのように位相差の時間変調された高周波電力を対称軸28上の給電点27e、27fに給電する。ことにより、給電点27e、27fによる尾根型の電界強度分布を、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布を適切に打ち消すようなものとすることができる。この結果、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布と給電点27e、27fによる尾根型の電界強度分布とを重ね合わせて得られる電界強度分布をより平坦なものとすることができ、得られるプラズマの均一性をさらに向上できる。
【0079】
実施の形態3.
実施の形態3にかかるプラズマ成膜装置100について説明する。以下では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0080】
実施の形態3にかかるプラズマ成膜装置100は、その動作が実施の形態1と異なる。
【0081】
実施の形態1では、相対する短辺5b1、5b2側へ接続する4台の高周波電源10a〜10dと、対称軸28上へ接続される2台の高周波電源10e、10fとから出力される各々の高周波電力を定常的に動作させて給電している。
【0082】
それに対して、実施の形態3では、図2に示す電極5に対して、相対する短辺5b1、5b2側へ接続される4台の高周波電源10a〜10dと、対称軸28上へ接続される2台の高周波電源10e、10fとから高周波電力を時間的に交互に給電する。
【0083】
例えば、図7に示すように給電を行う。図7は、時間軸71に対して高周波電力のon/off状態を軸72に示している。図7では、相対する短辺5b1、5b2側へ接続された4台の高周波電源10a〜10dの動作を波形73で示し、対称軸28上へ接続された2台の高周波電源10e、10fの動作を波形74で示している。波形73は、波形74がオフ状態の期間にオン状態になり、波形74がオン状態の期間にオフ状態になっている。また、波形74は、波形73がオフ状態の期間にオン状態になり、波形73がオン状態の期間にオフ状態になっている。高周波電源10a〜10dと高周波電源10e、10fとをお互いを交互に動作させる。
【0084】
このように、実施の形態3では、電極5に対して、相対する2辺(短辺5b1、5b2)側へ接続された4台の高周波電源10a〜10dと、相対する他の2辺(短辺5b3、5b4)側へ接続された2台の高周波電源10e、10fとから高周波電力を時間的に交互に印加する。すなわち、相対する短辺5b1、5b2側の給電点27a〜27dと、相対する長辺5b3、5b4側の給電点とは、高周波電力が時間的に交互に給電される。これにより、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布と給電点27e、27fによる尾根型の電界強度分布との間での干渉を低減できる。例えば、図7に示した期間75において、相対する2辺(短辺5b1、5b2)側へ接続された4台の高周波電源10a〜10dは、相対する他の2辺(短辺5b3、5b4)側へ接続された2台の高周波電源10e、10fにおけるマッチャーの整合状態によらず整合が容易にとれる。これにより、重ね合わせるべきV字型の電界強度分布と尾根型の電界強度分布とをそれぞれ独立に安定して形成することがさらに容易になる。
【0085】
また、実施の形態3では、図7に示すように、波形73におけるオン状態の期間と波形74におけるオン状態の期間とが均等になっている。これにより、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布と給電点27e、27fによる尾根型の電界強度分布とが交互に均等な期間で形成されるので、時間平均した電界強度分布において、重ね合わせるべき、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布と給電点27e、27fによる尾根型の電界強度分布とのバランスを向上できる。この結果、複数の給電点によるプラズマの均一化がさらに容易になり、大面積基板への均一成膜が容易となる。すなわち、時間平均で面内均一化が可能となる。
【0086】
実施の形態4.
実施の形態4にかかるプラズマ成膜装置200について図8を用いて説明する。図8は、実施の形態4にかかるプラズマ成膜装置200における高周波電力の給電系統図である。以下では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0087】
実施の形態4にかかるプラズマ成膜装置200は、電極5の第2の主面5bにおける、相対する長辺5b3、5b4側の給電点287e、287f、287g、287hの配置構成が実施の形態1と異なる。
【0088】
実施の形態1では、図2に示す電極5の第2の主面5bに対して、相対する短辺5b1、5b2側(給電点27a〜27d)へ4台の高周波電源10a〜10dを接続し、対称軸28上(給電点27e、27f)へ2台の高周波電源10e、10fを接続している。
【0089】
それに対して、実施の形態4では、図8に示すように、電極5に対して、対称点Cから等距離であり且つ対称軸28から等距離である位置に設けた給電点287e、287f、287g、287hから高周波を給電する。すなわち、電極5の第2の主面5bは、相対する長辺5b3、5b4のうち一方(長辺5b3)に配された1組の給電点(複数の第3の給電点)287e、287fと、他方(長辺5b4)に配された1組の給電点(複数の第4の給電点)287g、287hとを有する。1組の給電点287e、287fは、対称点Cから等距離であり対称軸28に関して対称な位置に配されている。1組の給電点287g、287hは、対称点Cから等距離であり対称軸28に関して対称な位置に配されている。
【0090】
この場合、長辺5b3、5b4側に配されたそれぞれの給電点287e、287f、287g、287hは、対称軸28上に無いので電界が発生することになる。しかしながら、1組の給電点287e、287fから分岐点288iまでの距離289e、289fを等距離に設定している。1組の給電点287e、287fは、1組の給電点287e、287fから等距離でかつ互いを電気的に接続する分岐点288iを介して高周波電源10eに接続されている。これにより、分岐点288iの位置において1組の給電点287e、287fによる電界が相殺されて電界強度がほぼ零となる。すなわち、等価的に、1組の給電点287e、287fの中点に位置する、対称軸28上の給電点227eから電極5へ給電しているものとみなすことができる。
【0091】
同様に、1組の給電点287g、287hから分岐点288jまでの距離289g、289hを等距離に設定している。1組の給電点287g、287hは、1組の給電点287g、287hから等距離でかつ互いを電気的に接続する分岐点288jを介して高周波電源10fに接続されている。これにより、分岐点288jの位置において1組の給電点287g、287hによる電界が相殺されて電界強度がほぼ零となる。すなわち、等価的に、1組の給電点287g、287hの中点に位置する、対称軸28上の給電点227fから電極5へ給電しているものとみなすことができる。
【0092】
このように、実施の形態4では、実施の形態1の場合と同様に、等価的な給電点227e、227fに接続されているマッチャー26e、26fは、給電点27a、27b、27c、27dから給電されるVHF帯の高周波電力の影響をほとんど受けない。また、相対する短辺5b1、5b2側に接続されたマッチャー26a、26b、26c、26dは、等価的な給電点227e、227fに接続されたマッチャー26e、26fの整合状態に影響されないで整合をとれる。したがって、実施の形態4によっても、複数の給電点によるプラズマの均一化が容易になる。
【0093】
また、実施の形態4では、対称軸28を挟んだ1組の給電点287e、287fと1組の給電点287g、287hとから高周波を給電するので、1組の給電点287e、287fと1組の給電点287g、287hとにより、実施の形態1に比べて、より急峻な尾根を有する尾根型の電界強度分布を形成することができる。これにより、1組の給電点287e、287fと1組の給電点287g、287hとによる尾根型の電界強度分布を、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布を適切に打ち消すようなものとすることができる。この結果、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布と給電点287e〜287hによる尾根型の電界強度分布とを重ね合わせて得られる電界強度分布をより平坦なものとすることができ、得られるプラズマの均一性をさらに向上できる。
【0094】
この点に関して、本発明者が電磁界シミュレーションを行ったところ、得られた電界分布では、電極面内での電界均一性が平均値に対して±7.8%が得られた。すなわち、実施の形態1(±10.8%)に比べて、得られるプラズマの均一性(±7.8%)をさらに向上できることが確認された。
【0095】
実施の形態5.
実施の形態5にかかるプラズマ成膜装置300について図9を用いて説明する。図9は、実施の形態5にかかるプラズマ成膜装置300における高周波電力の給電系統図である。以下では、実施の形態4と異なる部分を中心に説明する。
【0096】
実施の形態5にかかるプラズマ成膜装置300は、電極5の第2の主面5bにおける、相対する長辺5b3、5b4側の給電点397e、397f、397g、397hの配置構成が実施の形態4と異なる。
【0097】
実施の形態4では、図8に示す対称軸28から等距離に設けた給電点397e、397f、397g、397hから高周波を給電している。また、電極5の第2の主面5bにおいて、相対する長辺5b3、5b4側の給電点397e、397f、397g、397hから対称軸28までの距離は、相対する短辺5b1、5b2側の給電点27a、27b、27c、27dから対称軸28までの距離より小さくなっている。
【0098】
それに対して、実施の形態5では、図9に示すように、相対する長辺5b3、5b4側の給電点397e、397f、397g、397hを短辺5b1、5b2側にも近い位置に設ける。すなわち、電極5は、方形の形状を有しており、1組の給電点397e、397fと1組の給電点397g、397hとは、その方形の角部に配されている。また、電極5の第2の主面5bにおいて、相対する長辺5b3、5b4側(かつ短辺5b1、5b2側)の給電点397e、397f、397g、397hから対称軸28までの距離は、相対する短辺5b1、5b2側の給電点27a、27b、27c、27dから対称軸28までの距離と均等である。
【0099】
この場合、長辺5b3、5b4側に配されたそれぞれの給電点397e、397f、397g、397hは、対称軸28上に無いので電界が発生することになる。しかしながら、1組の給電点397e、397fから分岐点398iまでの距離399e、399fを等距離に設定している。1組の給電点397e、397fは、1組の給電点397e、397fから等距離でかつ互いを電気的に接続する分岐点398iを介して高周波電源10eに接続されている。これにより、分岐点398iの位置において1組の給電点397e、397fによる電界が相殺されて電界強度がほぼ零となる。すなわち、等価的に、1組の給電点397e、397fの中点に位置する、対称軸28上の給電点327eから電極5へ給電しているものとみなすことができる。
【0100】
同様に、1組の給電点397g、397hから分岐点398jまでの距離399g、399hを等距離に設定している。1組の給電点397g、397hは、1組の給電点397g、397hから等距離でかつ互いを電気的に接続する分岐点398jを介して高周波電源10fに接続されている。これにより、分岐点398jの位置において1組の給電点397g、397hによる電界が相殺されて電界強度がほぼ零となる。すなわち、等価的に、1組の給電点397g、397hの中点に位置する、対称軸28上の給電点327fから電極5へ給電しているものとみなすことができる。
【0101】
このように、実施の形態5では、実施の形態1の場合と同様に、等価的な給電点327e、327fに接続されているマッチャー26e、26fは、給電点27a、27b、27c、27dから給電されるVHF帯の高周波電力の影響をほとんど受けない。また、相対する短辺5b1、5b2側に接続されたマッチャー26a、26b、26c、26dは、等価的な給電点327e、327fに接続されたマッチャー26e、26fの整合状態に影響されないで整合をとれる。したがって、実施の形態5によっても、複数の給電点によるプラズマの均一化が容易になる。
【0102】
また、実施の形態5では、1組の給電点397e、397fと1組の給電点397g、397hとが方形の角部に配されている。これにより、実施の形態4に比べて、対称軸28からさらに離れた1組の給電点397e、397fと1組の給電点397g、397hとから高周波を給電する。このため、1組の給電点397e、397fと1組の給電点397g、397hとにより、実施の形態4に比べて、より急峻な尾根を有する尾根型の電界強度分布を形成することができる。これにより、1組の給電点397e、397fと1組の給電点397g、397hとによる尾根型の電界強度分布を、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布を適切に打ち消すようなものとすることができる。この結果、給電点27a〜27dによるV字型の電界強度分布と給電点397e〜397hによる尾根型の電界強度分布とを重ね合わせて得られる電界強度分布をより平坦なものとすることができ、得られるプラズマの均一性をさらに向上できる。
【0103】
この点に関して、本発明者が電磁界シミュレーションを行ったところ、得られた電界分布では、電極面内での電界均一性が平均値に対して±6.4%が得られた。すなわち、実施の形態4(±7.8%)に比べて、得られるプラズマの均一性(±6.4%)をさらに向上できることが確認された。
【0104】
なお、上記の実施の形態1〜実施の形態5では、ガス流量、圧力、高周波電力等のパラメータに関して数値を示しているが、これらの数値は適宜変更可能である。また、シリコン薄膜形成のための成膜ガスとしてシラン(SiH)と水素(H)との混合ガスの場合について説明したが、さらに、Ar、Ne等の希ガスを添加させてもよい。その他、プロセスの目的に応じて適切なガス種が選択される。
【0105】
また、上記の実施の形態1〜実施の形態5にかかるプラズマ成膜装置では、真空チャンバ1と電極5とで成膜室8が形成される構成を例示しているが、成膜室8内に電極5とステージ2とを配置する構成に、上記の実施の形態1〜実施の形態5で説明したような給電方法を適用しても同様の効果が得られる。
【0106】
また、上記の実施の形態1〜実施の形態5にかかるプラズマ成膜装置は、例えば、プラズマエッチング装置、アッシング装置、スパッタリング装置などにも適用することが出来る。
【0107】
また、上記では横型の成膜室8について説明を行ったが、上記の実施の形態1〜実施の形態5にかかるプラズマ成膜装置は縦型の成膜室にも適用可能である。どちらの型の成膜室を採用するかは当該プラズマ装置の用途等に応じて適宜選択が可能である。この発明については、上述した以外にも種々の変形、修飾、組み合わせ等が可能である。例えば、実施の形態2は、実施の形態3〜5の少なくとも1つと組み合わせても良い。あるいは、例えば、実施の形態3は、実施の形態2、4、5の少なくとも1つと組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本発明にかかるプラズマ成膜装置は、アモルファスシリコン薄膜や微結晶シリコン薄膜等の薄膜を基板上に成膜するための装置に有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 真空チャンバ
2 ステージ
3 排気口
4 絶縁フランジ
5 電極
5a 第1の主面
5b 第2の主面
5b1、5b2 短辺
5b3、5b4 長辺
6 ガス供給口
7 シャワープレート
8 成膜室
9 被成膜基板
10a、10b、10c、10d、10e、10f 高周波電源
11 空間
21 信号発生器
22 分配器
23 位相器
23a、23b、23c、23d、23e、23f 位相調整部
24a、24b、24c、24d、24e、24f オンオフ切り替え器
25a、25b、25c、25d、25e、25f 高周波アンプ
26a、26b、26c、26d、26e、26f マッチャー
27a、27b、27c、27d、27e、27f 給電点
28、31 対称軸
100、200、300 プラズマ成膜装置
227f、227e 給電点
287e、287f、287g、287h 給電点
288i、288j 分岐点
289e、289f、289g、289h 距離
327f、327e 給電点
397e、397f、397g、397h 給電点
398i、398j 分岐点
399e、399f、399g、399h 距離
C 対称点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと第1の電極とで成膜室が形成され、前記成膜室内に前記第1の電極に対向して配置された第2の電極上に被成膜基板が載置され、前記第1の電極と前記第2の電極との間に発生させたプラズマを用いて成膜をおこなうプラズマ成膜装置であって、
前記第1の電極は、方形の形状を有し、
前記第1の電極における前記第2の電極に対向する第1の主面の反対側の第2の主面は、
前記方形における相対する2辺の一方の側に配された複数の第1の給電点と、
前記相対する2辺の他方の側に配された複数の第2の給電点と、
前記方形における相対する他の2辺の一方の側に配された少なくとも1つの第3の給電点と、
前記相対する他の2辺の他方の側に配された少なくとも1つの第4の給電点と、
を有し、
前記複数の第1の給電点と前記複数の第2の給電点とは、対称点に関して対称な位置であって対称軸に関して対称な位置に配されるとともに、給電される高周波電力の位相差が互いに180度であり、
前記少なくとも1つの第3の給電点と前記少なくとも1つの第4の給電点とは、それぞれ、前記対称点から等距離であり前記対称軸上となる位置に配される、あるいは前記対称点から等距離であり前記対称軸に関して対称な位置に配された1組の給電点を含む
ことを特徴とするプラズマ成膜装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第3の給電点と前記少なくとも1つの第4の給電点とは、給電される高周波電力の位相差が時間的に変調される
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ成膜装置。
【請求項3】
前記複数の第1の給電点及び前記複数の第2の給電点と、前記少なくとも1つの第3の給電点及び前記少なくとも1つの第4の給電点とは、高周波電力が時間的に交互に給電される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ成膜装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第3の給電点と前記少なくとも1つの第4の給電点とは、それぞれ、前記対称軸に関して対称に配された1組の給電点を含み、
前記1組の給電点は、前記1組の給電点から等距離でかつ互いを電気的に接続する分岐点を介して高周波電源に接続されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ成膜装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第3の給電点と前記少なくとも1つの第4の給電点とは、それぞれ、前記方形の角部に配されている
ことを特徴とする請求項4に記載のプラズマ成膜装置。
【請求項6】
前記複数の第1の給電点及び前記複数の第2の給電点へ給電される高周波電力の総和と、前記少なくとも1つの第3の給電点及び前記少なくとも1つの第4の給電点へ給電される高周波電力の総和とは、互いに均等である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプラズマ成膜装置。
【請求項7】
真空チャンバと第1の電極とで成膜室が形成され、前記成膜室内に前記第1の電極に対向して配置された第2の電極上に被成膜基板が載置され、前記第1の電極と前記第2の電極との間に発生させたプラズマを用いて成膜をおこなうプラズマ成膜方法であって、
前記第1の電極は、方形の形状を有し、
前記第1の電極における前記第2の電極に対向する第1の主面の反対側の第2の主面は、
前記方形における相対する2辺の一方の側に配された複数の第1の給電点と、
前記相対する2辺の他方の側に配された複数の第2の給電点と、
前記方形における相対する他の2辺の一方の側に配された少なくとも1つの第3の給電点と、
前記相対する他の2辺の他方の側に配された少なくとも1つの第4の給電点と、
を有し、
前記複数の第1の給電点と前記複数の第2の給電点とは、対称点に関して対称な位置であって対称軸に関して対称な位置に配され、
前記少なくとも1つの第3の給電点と前記少なくとも1つの第4の給電点とは、それぞれ、前記対称点から等距離であり前記対称軸上となる位置に配される、あるいは前記対称点から等距離であり前記対称軸に関して対称な位置に配された1組の給電点を含み、
前記プラズマ成膜方法は、
前記複数の第1の給電点と前記複数の第2の給電点とに、互いに180度の位相差で高周波電力が給電される第1の工程と、
前記少なくとも1つの第3の給電点と前記少なくとも1つの第4の給電点とに、高周波電力が給電される第2の工程と、
を含む
ことを特徴とするプラズマ成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−104559(P2012−104559A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249908(P2010−249908)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】