説明

ポジ型感光性組成物及び永久レジスト

【課題】透明性に優れ、アクティブマトリクス基板の絶縁膜としても使用できる高度の耐熱性、高熱履歴後の耐薬品性を有する永久レジストを提供できるポジ型感光性組成物並びに該ポジ型感光性組成物を用いた永久レジスト及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポジ型感光性組成物は、(A)下記一般式(1)で表される基を、1分子中に少なくとも2個有するシリコーン樹脂、(B)グリシジル基を有するシロキサン化合物、(C)ジアゾナフトキノン類及び(D)有機溶剤を含有する。永久レジストは、上記ポジ型感光性組成物を基材上に塗布し、塗布物を露光し、アルカリ現像した後に、120〜350℃の温度でポストベークして製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン化合物を用いたポジ型感光性組成物に関し、更にこのポジ型感光性組成物を用いた永久レジスト及び永久レジストの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進展とマルチメデイアシステムの普及により、液晶表示装置、有機EL表示装置等の重要性はますます増大している。これらの表示装置では、画素ごとに薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子を備えたアクティブマトリクス基板が使用されている。
【0003】
アクティブマトリクス基板上には多数の走査配線と、これらの走査配線に絶縁膜を介して交差する信号配線が形成される。アクティブマトリクス基板の走査配線、信号配線、絶縁膜等は、スパッタリング法、CVD法、塗布法等により形成された導電膜又は絶縁膜を、フォトリソグラフィーにパーターニングすることを繰り返すことのより形成される(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
一般に、フォトリソグラフィーには、フォトレジストが使用され、パターニング後も剥離させずに絶縁膜又は保護膜として使用されるレジスト(永久レジスト)も開発されているが、アクティブマトリクス基板に永久レジストを用いる場合には、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性及び耐溶剤性)だけでなく、高度の耐熱性と、高熱履歴後の耐薬品性が求められる。
【0005】
アクティブマトリクス基板では、絶縁基板であるガラス基板上に、多結晶シリコン薄膜を活性層とするTFTを形成し、多結晶シリコン薄膜を絶縁膜で覆うが、多結晶シリコン内部や、結晶シリコン薄膜と絶縁基板や絶縁膜との界面にシリコン結合の欠陥であるダングリングボンドを生じやすく、トランジスタの特性が低下するという問題がある。
【0006】
ダングリングボンドの問題を解消するには、窒化ケイ素(SiNx)等の水素の拡散を防止する膜が存在する状態で、300〜400℃程度の温度で水素化処理する必要がある(例えば、特許文献3参照)。従来の永久レジストでいう耐熱性とは、プリント配線板におけるハンダ付けに耐えられる耐熱性、即ち260℃に数分間耐えられる程度の耐熱性(例えば、特許文献4参照)であり、アクティブマトリクス基板に要求される耐熱性及び高熱履歴後の耐薬品性とは大きく異なる。
【0007】
一方、シリコーン樹脂は、透明性、絶縁性、耐熱性、耐薬品性等に優れており、シリコーン樹脂を主剤としたフォトレジストも知られているが、従来のシリコーン樹脂系フォトレジストは、耐熱性及び高熱履歴後の耐薬品性が不十分であるため、アクティブマトリクス基板では表面の平坦化膜として応用されているに過ぎない(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2004−281506号公報
【特許文献2】特開2007−225860号公報
【特許文献3】特開平6−77484号公報
【特許文献4】特開2007−304543号公報
【特許文献5】特開2008−116785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、透明性に優れ、アクティブマトリクス基板の絶縁膜としても使用できる高度の耐熱性、高熱履歴後の耐薬品性を有する永久レジストを提供できるポジ型感光性組成物並びに該ポジ型感光性組成物を用いた永久レジスト及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果本発明に到達した。
即ち、本発明は、
(A)成分として、下記の一般式(1)
【化1】

(式中、R1は、置換炭化水素基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R2は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは0又は1〜4の数を表し、bは1〜3の数を表すが、a+bは5を超えない。)
で表される基を、1分子中に少なくとも2個有するシリコーン樹脂、
(B)成分として、グリシジル基を有するシロキサン化合物、
(C)成分として、ジアゾナフトキノン類及び
(D)成分として、有機溶剤を含有するポジ型感光性組成物を提供するものである。
【0011】
また本発明は、上記ポジ型感光性組成物から得られることを特徴とするポジ型永久レジストを提供するものである。
【0012】
また本発明は、上記ポジ型感光性組成物を基材上に塗布し、塗布物を露光し、アルカリ現像した後に、120〜350℃の温度でポストベークすることを特徴とする永久レジストの製造方法を提供するものである。
【0013】
また本発明は、上記ポジ型感光性組成物を用いて得られた永久レジストを絶縁層又は平坦化膜とするアクティブマトリクス基板を有する液晶表示装置を提供するものである。
【0014】
また本発明は、上記ポジ型感光性組成物を用いて得られた永久レジストを絶縁層又は平坦化膜とするアクティブマトリクス基板を有する有機EL表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果は、透明性が高いだけでなく、基板製作時の温度に耐えられる耐熱性、耐溶剤性、更には永久レジストとしての耐経時変化性に優れた絶縁層を与えることの出来るポジ型感光性組成物、並びに該ポジ型感光性組成物を用いた永久レジスト及びその製造方法を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
先ず、本発明の(A)成分であるシリコーン樹脂について説明する。
【0017】
本発明の(A)成分であるシリコーン樹脂は、上記一般式(1)で表される基を、1分子中に少なくとも2個有する。
【0018】
上記一般式(1)において、R1は、置換炭化水素基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン及びデセンが挙げられ、耐熱性からは炭素数が少ないことが好ましいが、工業的な入手の容易さから、エチレン、プロピレン及びブチレンが好ましく、エチレン及びブチレンが更に好ましく、エチレンが最も好ましい。R1において有してもよい置換炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、フェニル等が挙げられるが、耐熱性からは、置換炭化水素基を有しないことが好ましい。
【0019】
2は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、t−ブチル等が挙げられる。R2としては、耐熱性から炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0020】
aは0又は1〜4の数を表し、bは1〜3の数を表すが、a+bは5を超えない。aが2〜4の数の場合には、R2は、同一のアルキル基でもよいし、異なるアルキル基でもよい。耐熱性から、aは0又は1の数が好ましく、0が更に好ましい。bは工業的な入手の容易さから、1又は2の数が好ましく、1が更に好ましい。
【0021】
上記一般式(1)で表される基のカルボキシル基の位置は、特に限定されないが、耐熱性が向上することから、カルボキシル基の1つが、R2に対してパラ位にあることが好ましい。
【0022】
本発明の一般式(1)で表される基を1分子中に少なくとも2個有するシリコーン樹脂は、例えば、一般式(1)で表される基を有するアルコキシシラン化合物(以下、化合物1ASとする)又はクロロシラン化合物(以下、化合物1CSとする)を加水分解・縮合反応させる方法、或いは、Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物に、Si−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合及び芳香族カルボキシル基を有する化合物(以下、化合物DACとする)をヒドロシリル化反応させる方法等により製造することができる。
【0023】
先ず、化合物1AS又は化合物1CSを加水分解・縮合反応させる方法について説明する。
化合物1AS又は化合物1CSの加水分解・縮合反応は、いわゆるゾル・ゲル反応を行えばよく、具体的には、溶媒中で、酸又は塩基等の触媒を使用して加水分解・縮合反応を行う方法が挙げられる。
【0024】
この場合に用いられる溶媒は特に限定されず、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、これらの1種を用いることも、2種以上を混合して用いることも出来る。
【0025】
アルコキシシランやクロロシランの加水分解・縮合反応は、アルコキシシランやクロロシランが水によって加水分解してシラノール基(Si−OH基)を生成し、この生成したシラノール基同士、シラノール基とアルコキシシリル基、又はシラノール基とクロロシラン基が縮合することにより進行する。
【0026】
加水分解・縮合反応では、アルコキシシラン化合物とクロロシラン化合物のどちらを使用してもよく、それぞれを混合して使用してもよいが、反応の制御や副生成物の除去が用意であることから、アルコキシシラン化合物である化合物1ASを用いることが好ましい。
【0027】
この加水分解反応を速やかに進ませるためには、適量の水を加えることが好ましく、触媒を水に溶解して加えてもよい。また、空気中の水分、又は、水以外の溶媒中にも含まれる微量の水によってもこの加水分解反応は進行する。
【0028】
この加水分解・縮合反応で用いられる酸、塩基等の触媒は、加水分解・縮合反応を促進するものであればよく、具体的には、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸類;ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸モノイソプロピル等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等の無機塩基類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン化合物(有機塩基)類等が挙げられ、これらの1種を用いることも、2種以上を併用することも出来る。
【0029】
加水分解・縮合反応の温度は、溶媒の種類、触媒の種類及び量等により変わるが、0〜80℃が好ましく、5〜50℃が更に好ましく、8〜30℃が最も好ましい。
【0030】
化合物1ASのうち、R1がエチレン、a=0、b=1でパラ位にカルボキシル基がある化合物としては、例えば、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジエトキシメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシエチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジエトキシエチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシプロピルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジエトキシプロピルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジエトキシブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシイソブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジエトキシイソブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシシクロヘキシルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジエトキシシクロヘキシルシラン等のジアルコキシシラン類;2−(4−カルボキシフェニル)エチルメトキシジメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルエトキシジメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルメトキシジエチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルエトキシジエチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルメトキシジプロピルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルエトキシジプロピルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルメトキシジブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルエトキシジブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルメトキシジイソブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルエトキシジイソブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルメトキシジシクロヘキシルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルエトキシジシクロヘキシルシラン等のモノアルコキシシラン類が挙げられる。
【0031】
これらの化合物の中でも、反応性が良好で、耐熱性も良好になることから、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジエトキシメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシエチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジエトキシエチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリエトキシシランが好ましく、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシエチルシランが更に好ましく、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシメチルシランが最も好ましい。化合物1ASは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
化合物1CSのうち、R1がエチレン、a=0、b=1でパラ位にカルボキシル基がある化合物としては、例えば、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリクロロシラン等のトリクロロシラン類;2−(4−カルボキシフェニル)エチルジクロロメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジクロロエチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジクロロプロピルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジクロロブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジクロロイソブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジクロロシクロヘキシルシラン等のジクロロシラン類;2−(4−カルボキシフェニル)エチルクロロジメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルクロロジエチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルクロロジプロピルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルクロロジブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルクロロジイソブチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルクロロジシクロヘキシルシラン等のモノクロロシラン類が挙げられる。
【0033】
これらの化合物の中でも、反応性が良好で、耐熱性も良好になることから、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリクロロシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジクロロメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジクロロエチルシランが好ましく、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリクロロシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジクロロメチルシランが更に好ましい。化合物1CSは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記の化合物1AS及び化合物1CSのカルボキシル基は、t−ブチル基等の保護基でマスクされていてもよい。例えば、化合物1AS及び化合物1CSの一般式(1)で表される基は、下記一般式(1a)
【化2】

(式中、R1、R2、a及びbは上記一般式(1)と同義である。)
のように、カルボキシル基がt−ブチルエステル基でマスクされていてもよい。
【0035】
このようなマスクされた化合物は、マスクされていない化合物と同様に加水分解・縮合反応を行うことができる。保護基がt−ブチル基である場合には、上記加水分解・縮合反応の後、溶媒中で、必要に応じて触媒を使用し、t−ブチル基を脱離させることができる。
【0036】
この場合の触媒としては、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体が好ましい。
【0037】
また溶媒としては、25℃において水を1質量%以上溶解することができる有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;1−メトキシ−エタノール、1−エトキシ−エタノール、1−プロポキシ−エタノール、1−イソプロポキシ−エタノール、1−ブトキシ−エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のエーテルアルコール類;1−メトキシ−エチルアセテート、1−エトキシ−エチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等のエーテルアルコールの酢酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−3メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)等のケトアルコール類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類等が挙げられる。これらの溶剤の中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランが好ましい。
【0038】
上記(A)成分の原料として、マスクされた化合物を使用した場合には、保護基を脱離する工程が必要となり製造工程が煩雑になるが、副反応が起こりにくくなり、本発明の永久レジストの耐熱性、耐薬品性等が向上するという利点がある。
【0039】
次に、Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物に、Si−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合及び芳香族カルボキシル基を有する化合物(化合物DAC)をヒドロシリル化反応させる方法について説明する。
【0040】
Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物としては、例えば、下記一般式(5)
【化3】

(式中、Xは水素原子又はメチル基を表し、R14は同一でも異なっていてもよいメチル基又はフェニル基を表し、R15、R16及びR17は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、qは0〜1000の数を表し、rは0〜1000の数を表す。但し、qが0又は1の場合には、Xは水素原子を表す。)
で表される直線状化合物、
下記一般式(6)
【化4】

(式中、R18、R19及びR20は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、sは2〜6の数を表し、tはs+tが3〜6となる0〜4の数を表す。)
で表される環状化合物等が挙げられるが、耐熱性が向上することから、上記一般式(6)で表される環状化合物が好ましい。
【0041】
上記一般式(5)において、Xは水素原子又はメチル基を表し、R14は同一でも異なっていてもよいメチル基又はフェニル基を表し、R15、R16及びR17は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基を表す。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、2級ペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、2級ヘキシル等が挙げられ、炭素数5〜6のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチルメチル、メチルシクロペンチル等が挙げられる。
【0042】
14は、工業的に入手が容易であることから、メチルであることが好ましい。R15は、ヒドロシリル化反応への影響が少ないことから、メチル及びエチルが好ましく、メチルが更に好ましい。R16及びR17は本発明の永久レジストの耐熱性の面からは、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。Xは水素原子又はメチル基を表し、qは0〜1000の数を表し、rは0〜1000の数を表すが、rが0の場合には、Xは、水素原子を表す。
【0043】
上記一般式(6)において、R18、R19及びR20は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基を表す。炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数5〜6のシクロアルキル基としては、R15、R16及びR17で例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。
【0044】
18は、ヒドロシリル化の反応性が良好であることから、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。また、R19及びR20は、本発明の永久レジストの耐熱性の点から、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。sは2〜6の数を表し、tはs+tが3〜6となる0〜4の数を表す。工業的に入手が容易であることから、s+tは4〜6が好ましく、4〜5が更に好ましく、4が最も好ましい。また、tは、0であることが好ましい。
【0045】
上記一般式(6)で表される環状シロキサン化合物の具体例としては、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリエチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリフェニルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,6,8−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、2,2,2,4,4,6,8−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8−テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、2−エチル−4,6,8−トリメチルシクロテトラシロキサン、2−フェニル−4,6,8−トリメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタエチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサエチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサフェニルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、工業的に入手が容易であることから、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサンが好ましく、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが更に好ましい。
【0046】
次に、化合物DACについて説明する。化合物DACとしては、例えば、2−ビニル安息香酸、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、4−(1−フェニルビニル)安息香酸、2−メチル−4−ビニル安息香酸、2−アリル安息香酸、3−アリル安息香酸、4−アリル安息香酸、2−イソプロペニル安息香酸、3−イソプロペニル安息香酸、4−イソプロペニル安息香酸、4−(3−ブテニル)安息香酸、4−(4−ペンテニル)安息香酸、4−(5−ヘキセニル)安息香酸、4−(6−ヘプテニル)安息香酸、4−(7−オクテニル)安息香酸、4−(8−ノネニル)安息香酸、4−(9−デセニル)安息香酸、2−ビニル−1,4−ベンゼンジカルボン酸、5−ビニル−1,3−ベンゼンジカルボン酸等が挙げられる
【0047】
これらの化合物DACの中でも、工業的に入手が容易で、本発明の永久レジストの耐熱性の面からは、2−ビニル安息香酸、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、2−アリル安息香酸、4−アリル安息香酸、2−イソプロペニル安息香酸、4−イソプロペニル安息香酸が好ましく、2−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸が更に好ましく、4−ビニル安息香酸が最も好ましい。化合物DACは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0048】
化合物DACの、芳香族カルボキシル基は、必要に応じて、t−ブチル基等の保護基でマスクされていてもよい。例えば、芳香族カルボキシル基がt−ブチル基でマスクされた場合にはt−ブチルエステルとなり、ヒドロシリル化反応の後に、上述した方法によりt−ブチル基を脱離することができる。
【0049】
Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物に、化合物DACをヒドロシリル化反応させる条件は、公知の条件で行うことができる。例えば、トルエン、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート等の溶媒中で、必要に応じて、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体(Ossko触媒)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)等の白金系触媒を触媒として、反応温度20〜130℃、好ましくは50〜80℃で反応を行い、反応終了後反応液から、溶媒を減圧留去することで、目的物を得ることができる。
【0050】
化合物DACのカルボキシル基は、化合物1AS及び化合物1CSの場合と同様に、上記一般式(1a)のように、t−ブチル基等の保護基でマスクされていてもよい。また、保護基でマスクされた化合物は、マスクされていない化合物と同様にヒドロシリル化反応を行うことができ、化合物1AS及び化合物1CSの場合と同様の方法により保護基を脱離することができる。
【0051】
本発明の(A)成分の質量平均分子量は、あまりに小さい場合には、ポジ型感光性組成物を用いて永久レジストを形成する際の成膜性が不良となる場合があり、あまりに大きい場合には、アルカリ現像液への溶解性又は分散性が低下しアルカリ現像後の基板表面のレジスト残渣が増加する場合があり、また取扱い性や効率等の工業化適性の観点から、本発明の(A)成分の質量平均分子量が600〜50000であることが好ましく、800〜20000であることが更に好ましく、1000〜10000であることが最も好ましい。尚、本発明において、質量平均分子量とは、テトラヒドロフラン(以下、THFという)を溶媒としてGPC分析を行った場合のポリスチレン換算の質量平均分子量をいう。
【0052】
本発明の(A)成分に含まれる一般式(1)で表される基の個数は、1分子あたり2〜300であることが好ましく、4〜250であることが更に好ましく、6〜200であることが最も好ましい。
【0053】
また、本発明の(A)成分に含まれる一般式(1)で表される基の量は、1〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることが更に好ましく、5〜50質量%であることが最も好ましい。
【0054】
本発明の(A)成分は、本発明の永久レジストの密着性が向上することから、更に、下記一般式(2)
【化5】

(式中、R3は、置換炭化水素基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R4は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、cは0又は1〜4の数を表し、dは1〜3の数を表すが、c+dは5を超えない。)
で表される基を、1分子中に少なくとも1個有することが好ましい。
【0055】
上記一般式(2)において、R3は、置換炭化水素基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。炭素数1〜10のアルキレン基としては、R1で例示したアルキレン基が挙げられ、工業的な入手の容易さから、エチレン、プロピレン及びブチレンが好ましく、エチレン及びブチレンが更に好ましく、エチレンが最も好ましい。R3において有してもよい置換炭化水素基としては、R1で例示した炭化水素基等が挙げられるが、耐熱性からは、置換炭化水素基を有しないことが好ましい。R1とR3とは、同一でも異なっていてもよい。
【0056】
4は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、R2で例示したアルキル基等が挙げられる。R4としては、耐熱性から炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。R2とR4とは、同一でも異なっていてもよい。
【0057】
cは0又は1〜4の数を表し、dは1〜3の数を表すが、c+dは5を超えない。cが2〜4の数の場合には、R4は、同一のアルキル基でもよいし、異なるアルキル基でもよい。耐熱性から、cは0又は1の数が好ましく、0が更に好ましい。dは工業的な入手の容易さから、1又は2の数が好ましく、1が更に好ましい。
【0058】
上記一般式(2)で表される基のフェノール性水酸基の位置は、特に限定されないが、耐熱性が向上することから、フェノール性水酸基の1つが、R4に対してパラ位にあることが好ましい。
【0059】
上記一般式(2)で表される基を有する(A)成分は、化合物1AS又は化合物1CSと、上記一般式(2)で表される基を有するアルコキシシラン化合物(以下、化合物2ASとする)又はクロロシラン化合物(以下、化合物2CSとする)とを加水分解・縮合反応させる方法、或いは、Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物に、化合物DACと、Si−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合及びフェノール性水酸基を有する化合物(以下、化合物DAHとする)とをヒドロシリル化反応させる方法等により製造できる。
【0060】
先ず、化合物1AS又は化合物1CSと、化合物2AS又は化合物2CSとを加水分解・縮合反応させる方法について説明する。
【0061】
化合物2ASのうち、R3がエチレン、c=0、d=1でパラ位に水酸基があるものとしては、例えば、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジエトキシメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシエチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジエトキシエチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシプロピルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジエトキシプロピルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジエトキシブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシイソブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジエトキシイソブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシシクロヘキシルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジエトキシシクロヘキシルシラン等のジアルコキシシラン類;2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメトキシジメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルエトキシジメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメトキシジエチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルエトキシジエチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメトキシジプロピルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルエトキシジプロピルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメトキシジブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルエトキシジブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメトキシジイソブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルエトキシジイソブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメトキシジシクロヘキシルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルエトキシジシクロヘキシルシラン等のモノアルコキシシラン類が挙げられる
【0062】
これらの化合物の中でも、反応性が良好で、耐熱性も良好になることから、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジエトキシメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシエチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジエトキシエチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリエトキシシランが好ましく、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシエチルシランが更に好ましく、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシメチルシランが最も好ましい。化合物2ASは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0063】
化合物2CSのうち、R3がエチレン、c=0、d=1でパラ位に水酸基があるものとしては、例えば、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリクロロシラン等のトリクロロシラン類;2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジクロロメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジクロロエチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジクロロプロピルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジクロロブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジクロロイソブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジクロロシクロヘキシルシラン等のジクロロシラン類;2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルクロロジメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルクロロジエチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルクロロジプロピルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルクロロジブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルクロロジイソブチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルクロロジシクロヘキシルシラン等のモノクロロシラン類が挙げられる。
【0064】
これらの化合物の中でも、反応性が良好で、耐熱性も良好になることから、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリクロロシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジクロロメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジクロロエチルシランが好ましく、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリクロロシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジクロロメチルシランが更に好ましい。化合物2CSは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0065】
化合物2AS又は化合物2CSの加水分解・縮合反応では、反応の制御や副生成物の除去が用意であることから、アルコキシシラン化合物である化合物2ASを用いることが好ましい。化合物2AS又は化合物2CSの反応の順番は、特に限定されず、化合物1AS又は化合物1CSを反応させてから、化合物2AS又は化合物2CSを反応させてもよいし、この逆の順番でもよいし、また、化合物1AS又は化合物1CSと化合物2AS又は化合物2CSとを混合してから反応させてもよい。
【0066】
化合物2AS又は化合物2CSの、フェノール性水酸基は、必要に応じて、下記一般式(2a)
【化6】

(式中、R3、R4、c及びdは上記一般式(2)と同義である。)
のように保護基であるt−ブチルエーテル基でマスクされていてもよい。保護基でマスクされた化合物は、マスクされていない化合物と同様にヒドロシリル化反応を行うことができ、化合物1AS及び化合物1CSの場合と同様の方法により保護基を脱離することができる。
【0067】
次に、Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物に、化合物DACと化合物DAHとをヒドロシリル化反応させる方法について説明する。
【0068】
化合物DAHとしては、例えば、2−ビニルフェノール、3−ビニルフェノール、4−ビニルフェノール、4−(1−フェニルビニル)フェノール、2−メチル−4−ビニルフェノール、2−アリルフェノール、3−アリルフェノール、4−アリルフェノール、2−イソプロペニルフェノール、3−イソプロペニルフェノール、4−イソプロペニルフェノール、4−(3−ブテニル)フェノール、4−(4−ペンテニル)フェノール、4−(5−ヘキセニル)フェノール、4−(6−ヘプテニル)フェノール、4−(7−オクテニル)フェノール、4−(8−ノネニル)フェノール、4−(9−デセニル)フェノール、2−ビニル−1,4−ジヒドロキシベンゼン、5−ビニル−1,3−ジヒロロキシベンゼン等が挙げられる。
【0069】
これらの化合物の中でも、工業的に入手が容易で、本発明の永久レジストの耐熱性の面からは、2−ビニルフェノール、3−ビニルフェノール、4−ビニルフェノール、2−アリルフェノール、4−アリルフェノール、2−イソプロペニルフェノール、4−イソプロペニルフェノールが好ましく、2−ビニルフェノール、4−ビニルフェノールが更に好ましく、4−ビニルフェノールが最も好ましい。化合物DAHは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0070】
またSi−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物に、化合物DACと化合物DAHとをヒドロシリル化反応させる順番は特に、限定されず、化合物DAC−化合物DAHの順番で反応させてもよいし、この逆の順番でもよいし、また、化合物DACと化合物DAHとを混合してから反応させてもよい。尚、化合物DAHのフェノール性水酸基は、必要に応じて、上記一般式(2a)のように保護基であるt−ブチルエーテル基でマスクされていてもよい。保護基でマスクされた化合物は、マスクされていない化合物と同様にヒドロシリル化反応を行うことができ、化合物1AS及び化合物1CSの場合と同様の方法により保護基を脱離することができる。
【0071】
上記一般式(2)で表される基の含量は、上記一般式(1)で表される基に対するモル比で0〜80であることが好ましく、1〜70であることが更に好ましく、2〜60であることが最も好ましい。
【0072】
本発明の(A)成分は、本発明のポジ型感光性組成物の熱架橋性が向上することから、更に、シラノール基を有することが好ましい。
【0073】
シラノール基を導入する方法としては、例えば、トリアルコキシシリル化合物又はトリクロロシリル化合物を、加水分解・縮合反応させることにより導入する方法が挙げられる。シラノール基は、縮合反応が起こりやすく、取り扱いによりシラノール基の含量が減少する場合があることから、溶媒中で加水分解・縮合反応した場合は、生成物を単離せずに、溶媒を濃縮又は必要に応じて他の溶媒に置換して使用することが好ましい。
【0074】
以下、(A)成分の製造方法ごとに、シラノール基を導入する方法又はシラノール基含量を高める方法について説明する。
【0075】
(A)成分を、化合物1AS又は化合物1CSを加水分解・縮合反応させる方法で製造する場合にシラノール基を導入する方法としては、化合物1ASとしてトリアルコキシシラン、化合物1CSとしてトリクロロシラン化合物を使用することにより、シラノール基を導入することができる。トリアルコキシシラン化合物では、2つのアルコキシシリル基が加水分解・縮合反応してSi−O―Siの結合を形成し、1つのアルコキシシリル基がシラノール基となる。同様にトリクロロシラン化合物では、2つのクロロシリル基が加水分解・縮合反応してSi−O―Siの結合を形成し、1つのクロロシリル基がシラノール基となる。シラノール基含量の多い化合物は、単離するとシラノール基の脱水反応が容易に起こり,Si−O−Siの結合を形成してシラノール基含量が低下することから、反応後に、生成物を単離せずに、溶媒を濃縮又は溶媒を他の溶媒に置換することにより、シラノール基含量を高めることができる。化合物1ASとしてジアルコキシシラン化合物、化合物1CSとしてジクロロシラン化合物を使用しても、シラノール基の数を増やすことはできないが、(A)成分の分子量を増加させることで揮発成分を減少することができる。また化合物1AS又は化合物1CSを加水分解・縮合反応時に、他のトリアルコキシシリル化合物を併用することは、シラノール基の含量が高まるとともに、(A)成分の分子量が上がり、揮発成分が減少することから好ましい。この場合、ジアルコキシシラン化合物は、シラノール基を増加させないが、(A)成分の分子量の増加により揮発成分が減少することから併用してもよい。
【0076】
他のトリアルコキシシラン又はジアルコキシシランとしては、アルキルアルコキシシラン化合物、シクロアルキルアルコキシシラン化合物、アリールアルコキシシラン化合物、アリールアルキルアルコキシシラン化合物が挙げられ、本発明の永久レジストの耐熱性及び密着性が向上することから、アリールアルコキシシラン化合物が好ましく、下記一般式(4)
【化7】

(式中、R11は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はシクロアルキル基を表し、R12は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R13は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、fは2〜3の数を表し、gは0又は1〜5の数を表す。)
で表されるアリールアルコキシシラン化合物が更に好ましい。
【0077】
アルキルアルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン化合物;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ(t−ブチル)ジメトキシシラン、ジ(t−ブチル)ジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン化合物が挙げられ、シクロアルキルアルコキシシラン化合物としては、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン等のシクロアルキルトリアルコキシシラン化合物;ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジエトキシシラン等のシクロアルキルジアルコキシシラン化合物が挙げられ、アリールアルキルアルコキシシラン化合物としては、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン等のアリールアルキルトリアルコキシシラン化合物;ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、ベンジル(メチル)ジメトキシシラン等のアリールアルキルジアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0078】
上記一般式(4)で表されるアリールアルコキシシラン化合物としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トルイルトリメトキシシラン、キシリルトリメトキシシラン、クメニルトリメトキシシラン、t−ブチルフェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トルイルメチルジメトキシシラン、キシリルメチルジメトキシシラン、クメニルメチルジメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルプロピルジメトキシシラン、フェニルブチルジメトキシシラン、フェニルヘキシルジメトキシシラン、フェニルシクロヘキシルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0079】
これらの化合物の中でも、耐熱性と密着性が向上することから、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン及びフェニルメチルジエトキシシランが好ましく、フェニルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランが更に好ましく、フェニルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0080】
また、(A)成分を、Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物に化合物DACをヒドロシリル化反応で製造する場合にシラノール基を導入する方法としては、化合物DACの一部を、Si−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する他のアルコキシシラン化合物(以下、化合物DSとする)に置き換えてヒドロシリル化反応を行い、得られた生成物と上記他のトリアルコキシシラン又はジアルコキシシラン(好ましくは、上記一般式(4)で表されるアリールアルコキシシラン化合物)とを加水分解・縮合反応することにより、シラノール基を有する(A)成分が得られる。シラノール基の含量を挙げるには、加水分解・縮合反応後に、生成物を単離せずに、溶媒を濃縮又は溶媒を他の溶媒に置換すればよい。
【0081】
化合物DSとしては、トリメトキシビニルシラン、トリメトキシアリルシラン、トリメトキシイソプロペニルシラン、トリメトキシ−3−ブテニルシラン、トリメトキシ−4−ペンテニルシラン、トリメトキシ−5−ヘクセニルシラン、トリメトキシ−6−ヘプテニルシラン、トリメトキシ−7−オクテニルシラン、トリメトキシ−8−ノネニルシラン、トリメトキシ−9−デセニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシアリルシラン、トリエトキシイソプロペニルシラン、トリエトキシ−3−ブテニルシラン、トリエトキシ−4−ペンテニルシラン、トリエトキシ−5−ヘクセニルシラン、トリエトキシ−6−ヘプテニルシラン、トリエトキシ−7−オクテニルシラン、トリエトキシ−8−ノネニルシラン、トリエトキシ−9−デセニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジメトキシエチルビニルシラン、ジメトキシプロピルビニルシラン、ジメトキシイソプロピルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、メトキシジエチルビニルシラン等が挙げられる。
【0082】
これらの化合物の中でも、耐熱性と密着性が向上することから、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシアリルシラン及びジメトキシメチルビニルシランが好ましく、トリメトキシビニルシラン及びトリエトキシビニルシランが更に好ましく、トリメトキシビニルシランが最も好ましい。化合物DSは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0083】
(A)成分中のシラノール基の含量は、OHの含量として、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることが更に好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。
【0084】
本発明の(A)成分のシラノール基の定量方法としては、シラノール基をトリメチルクロロシラン等でトリメチルシリル化し反応前後の重量増加量により定量する方法(TMS化法)、近赤外線分光光度計(特開2001−208683号公報、特開2003−35667号公報等を参照)や29Si−NMR(特開2007−217249公報等を参照)を使用した機器分析により定量する方法が挙げられる。
【0085】
本発明の(A)成分として、最も好ましいのは、下記一般式(3)
【化8】

(式中、R1、R3及びR8は同一でも異なっていてもよく、置換炭化水素基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R2及びR4は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、R5、R6及びR7は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を表す。aは0又は1〜4の数を表し、bは1〜3の数を表すが、a+bは5を超えない。cは0又は1〜4の数を表し、dは1〜3の数を表すが、c+dは5を超えない。R9は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はシクロアルキル基を表し、R10は炭素数1〜3のアルキル基を表し、eは1〜3の数を表す。m,n及びpは、m:n:p=1:0〜2:0.5〜3であり、m+n+p=3〜6となる数を表す。)
で表される環状シロキサン化合物と上記一般式(4)であらわされるアリールアルコキシシラン化合物とを反応させて得られるシリコーン樹脂である。
【0086】
上記一般式(3)において、上記一般式(1)及び一般式(2)を由来とする部分、即ち、R1、R2、R3及びR4並びにa、b、c及びdについては、一般式(1)及び一般式(2)の説明が適宜適用される。R8は同一でも異なっていてもよく、置換炭化水素基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R5、R6及びR7は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を表す。R9は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はシクロアルキル基を表し、R10は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0087】
炭素数1〜10のアルキレン基としては、R1で例示したアルキレン基が挙げられ、R8において有してもよい置換炭化水素基としては、R1で例示した炭化水素基等が挙げられ、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、第二ペンチル、第三ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシルが挙げられ、炭素数1〜6のアルキル基としては、R15、R16及びR17で例示したアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロペンチルメチルが挙げられ、炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられる。
【0088】
1、R3及びR8は、工業的な入手の容易さから、エチレン、プロピレン及びブチレンが好ましく、エチレン及びブチレンが更に好ましく、エチレンが最も好ましい。R5、R6及びR7は、工業的な入手の容易さから、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル及びフェニルが好ましく、耐熱性が向上することから、メチル、エチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。R9は耐熱性が向上することから、メチル又はエチルが好ましく、メチルが更に好ましい。R10は耐熱性が向上することから、メチルが好ましい。eは1〜3の数を表しm、n及びpは、m:n:p=1:0〜2:0.5〜3であり、m+n+p=3〜6となる数を表す。一般式(3)で表わされる環状シロキサン化合物は、一種のみを使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用した場合、m、n及びpの数は平均の数である。例えば、m=1、n=0、p=3である化合物と、m=1、n=1、p=2である化合物の等モル混合物は、m:n:p=1:0.5:2.5と表すことができる。mに対するnの比は、高温熱履歴後の耐薬品性が向上することから、0〜1であることが好ましく、0.01〜0.7であることが更に好ましく、0.02〜0.5であることが最も好ましい。また本発明のポジ型感光性組成物の熱架橋性が向上することから、pは、少なくとも2の数であることが好ましい。
【0089】
上記一般式(3)で表される環状シロキサン化合物は、これまで述べたように、上記一般式(6)で表される環状シロキサン化合物と、化合物DS、化合物DAC、化合物DS及び化合物DAHとをヒドロシリル化して製造することができる。一般式(3)で表される環状シロキサン化合物は、同一のものでも、いくつかの混合物でもよい。この場合、シリコーン樹脂の分子中には、一般式(3)で表される環状シロキサン化合物由来の基が複数存在することになることから、一般式(3)のm、n及びpの値は、分子中の平均値となる。
【0090】
上記一般式(3)で表される環状シロキサン化合物(3)の代わりに、カルボキシル基やフェノール性水酸基がt−ブチル基等でマスクされた化合物、例えば、下記一般式(3a)
【化9】

(式中、R1〜R10、a、b、c、d、e、m、n及びpは上記式(3)と同義である。)で表される環状シロキサン化合物を使用してもよく、上記一般式(3a)で表される環状シロキサン化合物と上記一般式(4)で表わされるアリールアルコキシシラン化合物とを、反応させた後、t−ブチル基を脱離することにより、本発明の(A)成分であるシリコーン樹脂とすることができる。
【0091】
次に、本発明の(B)成分であるグリシジル基を有するシロキサン化合物について説明する。
本発明の(B)成分であるグリシジル基を有するシロキサン化合物は、1分子中に少なくとも1個のグリシジル基と少なくとも1個のシロキサン基(Si−O−Siで表される基)を有する。グリシジル基の数は、1分子中に少なくとも2個であることが好ましく、このようなグリシジル基を含有するシロキサン化合物としては、
例えば、下記一般式(7)
【化10】

(式中、Yはグリシジル基を有する基又はメチル基を表し、Gはグリシジル基を有する基を表し、R21は同一でも異なっていてもよいメチル基又はフェニル基を表し、R22、R23及びR24は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、uは0〜1000の数を表し、wは0〜1000の数を表す。但し、uが0又は1の場合には、Yは水素原子を表す。)
で表される直線状シロキサン化合物、
下記一般式(8)
【化11】

(式中、R25、R26及びR27は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、Gはグリシジル基を有する基を表し、xは2〜6の数を表し、yはx+yが3〜6となる0〜4の数を表す。)
で表される環状シロキサン化合物、グリシジル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物等が挙げられる。
【0092】
先ず、上記一般式(7)で表される直線状シロキサン化合物について説明する。
上記一般式(7)において、Yはグリシジル基を有する基又はメチル基を表し、Gはグリシジル基を有する基を表し、R21は同一でも異なっていてもよいメチル基又はフェニル基を表し、R22、R23及びR24は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基を表す。
【0093】
21は、製造が容易であることからメチル基が好ましい。炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基としては、R15、R16及びR17で例示した基が挙げられる。R22は製造が容易であることから、メチル及びエチルが好ましく、メチルが更に好ましい。R23及びR24は本発明の永久レジストの耐熱性の面からは、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。Xは水素原子又はメチル基を表し、uは0〜1000の数を表し、wは0〜1000の数を表すが、uが0又は1の場合には、Xは水素原子を表す。
【0094】
上記一般式(7)で表される直線状シロキサン化合物は、上記一般式(5)で表される直線状化合物に、Si−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合とグリシジル基を有する化合物をヒドロシリル化反応させることにより製造することができる。
【0095】
Si−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合とグリシジル基を有する化合物としては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、5−グリシドキシプルピル−2−ノルボルネン等が挙げられ、工業的な入手の容易さとヒドロシリル化の反応性からアリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0096】
上記一般式(7)で表される直線状シロキサン化合物の分子中のエポキシ基の割合が、あまりに少ない場合には架橋効果が少なくなり、本発明の永久レジストの物性が低下することから、一般式(7)で表される直線状シロキサン化合物のエポキシ当量は、1000以下であることが好ましく、700以下であることが更に好ましく、350以下であることが最も好ましい。尚、エポキシ当量とは、分子量をエポキシ基の数で割った値、即ちエポキシ基1個当たりの分子量をいう。
【0097】
上記一般式(7)で表される直線状シロキサン化合物の分子量は、特に限定されないが、あまりに大きい場合には、アルカリ現像液への溶解性又は分散性が低下しアルカリ現像後の基板表面にレジスト残渣が残留する場合があることから、質量平均分子量が20000以下であることが好ましく、15000以下であることが更に好ましく、10000以下であることが最も好ましい。
【0098】
次に、上記一般式(8)で表される環状シロキサン化合物について説明する。
上記一般式(8)において、R25、R26及びR27は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、Gはグリシジル基を有する基を表す。炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数5〜6のシクロアルキル基としては、R15、R16及びR17で挙げたアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。
【0099】
25は、製造が容易であることから、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。また、R26及びR27は、本発明の永久レジストの耐熱性の点から、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。xは2〜6の数を表し、yはx+yが3〜6となる0〜4の数を表す。工業的に入手が容易であることから、x+yは4〜6が好ましく、4〜5が更に好ましく、4が最も好ましい。また、yは、0であることが好ましい。
【0100】
上記一般式(8)で表される環状シロキサン化合物は、上記一般式(6)で表される環状化合物に、Si−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合とグリシジル基を有する化合物とをヒドロシリル化反応させることにより製造することができる。
【0101】
次に、グリシジル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物について説明する。
グリシジル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物は、グリシジル基を有するアルコキシシランを、公知の方法、例えば、化合物1AS又は化合物1CSの加水分解・縮合反応で説明した方法等により加水分解・縮合反応して得られる化合物である。
【0102】
グリシジル基を有するアルコキシシランとしては、例えば、グリシジルトリメトキシシラン、グリシジルトリエトキシシラン等のグリシジルアルコキシシラン化合物;2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン等のグリシドキシエチルアルコキシシラン化合物;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン等の3−グリシドキシプロピルアルコキシシラン化合物;2−(4−グリシドキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−グリシドキシフェニル)エチルトリエトキシシラン等の2−(4−グリシドキシフェニル)エチルアルコキシシラン化合物;5−(グリシドキシメチル)ノルボニルトリメトキシシラン、6−(グリシドキシメチル)ノルボニルトリメトキシシラン等のグリシドキシメチルノルボニルアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
【0103】
これらの化合物の中でも、加水分解・縮合反応の反応性と工業的な入手の容易さから、3−グリシドキシプロピルアルコキシシラン化合物が好ましい。3−グリシドキシプロピルアルコキシシラン化合物の中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが更に好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが更に好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0104】
グリシジル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物を製造する場合には、グリシジル基を有するアルコキシシランに加えて、グリシジル基を有しない、他のアルコキシシラン化合物を併用しても良い。このような他のアルコキシシラン化合物としては、上記シラノール基を導入する方法又はシラノール基含量を高める方法においで、他のトリアルコキシシラン又はジアルコキシシランとしては例示した化合物が挙げられる。
【0105】
グリシジル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物の分子中のエポキシ基の割合が、あまりに少ない場合には架橋効果が少なく本発明の永久レジストの物性が低下する場合があることから、エポキシ当量が1000以下であることが好ましく、700以下であることが更に好ましく、350以下であることが最も好ましい。
【0106】
グリシジル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物の分子量は、特に限定されないが、あまりに大きい場合には、アルカリ現像液への溶解性又は分散性が低下して、アルカリ現像後の基板表面にレジスト残渣が残留する場合があることから、質量平均分子量が20000以下であることが好ましく、15000以下であることが更に好ましく、10000以下であることが最も好ましい。
【0107】
グリシジル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物は、シラノール基を有していることが好ましい。グリシジル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物中のシラノール基の含量は、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることが更に好ましい。
【0108】
トリアルコキシシラン化合物を反応に使用した、グリシジル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物は、Si−O−Si結合による橋かけ構造を有する場合があり、その橋かけ構造により、例えば、はしご状(ラダー状)、かご状、環状等の構造になる場合もある。グリシジル基を有するトリアルコキシシラン化合物と他のトリアルコキシシラン化合物とを反応に使用した、グリシジル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物は、例えば、下記一般式(9)
【化12】

(式中、Gはグリシジル基を有する基を表し、R28は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を表し、iは2以上の数を表し、kは0又は1以上の数を表し、hは0〜2の数を表し、jは0〜2の数を表す。ただし、h×i+j×kはh+i+2を超えない。)
で表わすことができる。
【0109】
上記一般式(9)において、Gはグリシジル基を有する基を表し、R28は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を表す。R28は、耐熱性の点から、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。iは2以上の数を表し、kは0又は1以上の数を表し、hは0〜2の数を表す。h×i+j×kは分子中のシラノール基の合計を表すが、その数はh+i+2を超えない。
【0110】
上記一般式(9)の前半の部分
【化13】

は、グリシジル基を有するトリアルコキシシラン化合物に由来する部分であり、上記一般式(9)の後半の部分
【化14】

は、他のトリアルコキシシラン化合物に由来する部分である。
【0111】
(B)成分であるグリシジル基を有するシロキサン化合物の含有量は、高温熱履歴後の耐薬品性が向上することから、(A)シリコーン樹脂100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、3〜50質量部であることが更に好ましく、5〜20質量部であることが最も好ましい。
【0112】
次に、本発明の(C)成分であるジアゾナフトキノン類について説明する。
本発明に使用することのできるジアゾナフトキノン類としては、感光性材料に使用するできることが知られているジアゾナフトキノン類化合物であれば、特に限定されないが、中でも、フェノール性水酸基を有する化合物の水素原子が下記式(10)
【化15】

で置換された化合物(4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル)又は
下記式(11)
【化16】

で置換された化合物(5−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル)が好ましい。
【0113】
このようなジアゾナフトキノン類の、好ましい具体例としては、例えば、以下の式(12)〜(17)で表される化合物及びそれらの位置異性体等を例示することができる。
【0114】
【化17】

(式中、Qは上記式(10)若しくは式(11)で表される基又は水素原子であり、全てが水素原子であることはない。)
【0115】
【化18】

(式中、Qは上記式(10)若しくは式(11)で表される基又は水素原子であり、全てが水素原子であることはない。)
【0116】
【化19】

(式中、Qは上記式(10)若しくは式(11)で表される基又は水素原子であり、全てが水素原子であることはない。)
【0117】
【化20】

(式中、Qは上記式(10)若しくは式(11)で表される基又は水素原子であり、全てが水素原子であることはない。)
【0118】
【化21】

(式中、Qは上記式(10)若しくは式(11)で表される基又は水素原子であり、全てが水素原子であることはない。)
【0119】
【化22】

(式中、Qは上記式(10)若しくは式(11)で表される基又は水素原子であり、全てが水素原子であることはない。)
【0120】
式(10)で表される基はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適し、式(11)で表される基は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適していることから、露光する波長によって式(10)で表される基、式(11)で表される基の何れかを選択することが好ましい。
【0121】
(C)成分であるジアゾナフトキノン類の含有量は、(A)シリコーン樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部であることが、本発明の永久レジストの現像性、微細加工性の点から好ましい。
【0122】
次に、本発明の(D)成分である有機溶剤について説明する。
本発明に使用できる(D)有機溶剤は、上記(A)シリコーン樹脂、(B)グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物、及び(C)ジアゾナフトキノン類を溶解又は分散することのできる有機溶剤であれば、特に限定されないが、25℃において水を1質量%以上溶解することができる有機溶剤が好ましく、このような有機溶剤としては、保護基のt−ブチル基の脱離の説明において例示した有機溶剤の他に、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート等が挙げられる。
【0123】
上記一般式(1)で表される基中のカルボキシル基や上記一般式(2)で表される基中のフェノール性水酸基が、マスクされた化合物、例えば、上記一般式(3a)で表される環状シロキサン化合物を使用した場合には、t−ブチル基の脱離反応で使用した有機溶剤を、そのまま、本発明の(D)成分の有機溶剤として利用してもよい。
【0124】
(D)成分である有機溶剤の含有量は、(A)シリコーン樹脂100質量部に対して、10〜10000質量部、より好ましくは100〜1000質量部であることが、本発明のポジ型感光性組成物を用いて永久レジストを形成する際の形成性や得られた永久レジストの物性等の点から好ましい。
【0125】
本発明のポジ型感光性組成物は、(A)シリコーン樹脂、(B)グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物、(C)ジアゾナフトキノン類及び(D)有機溶剤を溶解又は分散させたものであるが、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターで濾過した後、使用に供することもできる。
【0126】
本発明のポジ型感光性組成物は、このほか、必要に応じて、可塑剤、チクソ性付与剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、分散剤、消泡剤、顔料、染料等を配合することができる。
【0127】
次に、本発明の永久レジストについて説明する。本発明の永久レジストは、上記ポジ型感光性組成物を使用して作成される。以下、本発明の永久レジストの好ましい製造方法の一例について工程順に説明する。
【0128】
(第1工程)塗膜形成工程
塗膜形成工程は、調製した本発明のポジ型感光性組成物を、対象とする基材に塗布し、塗膜を形成する工程である。対象とする基材としては、ポジ型感光性組成物中の有機溶剤等に対する耐薬品性、第4工程のアルカリ性溶液による現像や第6工程における処理に対する耐熱性等を有する材料であれば特に限定されるものではなく、ガラス、金属、半導体等が挙げられる。特に、絶縁層としての永久レジストを必要とする液晶ディスプレーのTFT表面等を好ましいものとして挙げることができる。
【0129】
塗布の方法は、特に限定されず、例えばスピンコート法、ディップコート法、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スリットコート法等の各種の方法を利用することができる。
【0130】
この後、上記基材に塗布された塗布物から形成されたポジ型感光性組成物層から(D)有機溶剤を除去するためにプリベークをおこなう。プリベークされたポジ型感光性組成物層は、アルカリ性溶液に対し難溶性であり、次の露光工程で光を照射することにより光が照射された部分(以下、露光部分という場合がある)がアルカリ可溶性となる。
【0131】
プリベークの温度は、使用した有機溶剤の種類によっても異なるが、温度が低すぎると、有機溶剤の残留分が多くなり、露光感度や解像度の低下の原因となる場合があり、また温度が高すぎると、プリベークにより塗膜の全体の硬化が進行し、光が照射された部分のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、結果として露光感度や解像度が低下する場合があることから、60〜140℃が好ましく、70〜120℃が更に好ましい。プリベークの時間は、使用した有機溶剤の種類とプリベークの温度により異なるが、30秒〜10分が好ましく、1〜5分が更に好ましい。
【0132】
プリベークは、本発明のポジ型感光性組成物を対象とする基材に塗布した後、そのまま行ってもよいが、本発明の永久レジストの高熱履歴後の物性、耐薬品性等が向上することから、プリベークの前に、室温〜60℃未満の温度で、常圧又は減圧下に、ポジ型感光性組成物層中の有機溶剤の濃度が5質量%以下になるよう有機溶剤を揮発させた後に、プリベークを行うことが好ましい。
【0133】
プリベーク後のポジ型感光性組成物層の厚さは、本発明の永久レジストが使用される用途により異なり、特に限定されないが、0.1μm〜100μm、好ましくは0.3μm〜10μmであれば良い。
【0134】
(第2工程)露光工程
露光工程は、プリベークされたポジ型感光性組成物層に対して、パターン化された光を照射し、露光部分のアルカリ溶解性を向上させる工程である。プリベークされたポジ型感光性組成物層は、アルカリ性溶液に対し難溶性であるが、光照射により露光部分のジアゾナフトキノン類が分解されて、インデンカルボン酸に変化して、アルカリ性溶液に溶解・分散が可能になる。
【0135】
照射光は、特に限定されず、プリベークされたポジ型感光性組成物層の光照射部のアルカリ溶解性を向上させることのできるエネルギー量の光であればよく、例えば10〜1000mJ/cm2、好ましくは40〜300mJ/cm2がよい。
【0136】
また照射光の波長は可視光でも紫外光でも良く特に限定されないが、(C)ジアゾナフトキノン類として、4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類を使用した場合にはi線(365nm)を主体とする狭い波長の光を、5−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類を使用した場合には、i線(365nm)、h線(405nm)及びg線(436nm)を含むブロードな波長の光を、高圧水銀灯、超高圧水銀灯等を用いて照射すればよい。
【0137】
上記照射光のパターン化の方法は、特に限定されず、従来知られている方法、例えば、フォトマスク等を介した光照射方法であってもよく、レーザー光用いた選択的な光照射方法でもよい。
【0138】
(第3工程)現像工程
現像工程は、露光工程で、光が照射されてアルカリ溶解性が向上した部分を現像液を用いて除去することにより、所定のパターンを形成する工程である。
【0139】
現像方法としては、例えば、液盛り法、浸漬法、シャワー法、スプレー法等のいずれの方法も利用することができる。
【0140】
現像時間は、(A)シリコーン樹脂や(B)グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物の種類や分子量、現像液の温度等によって異なるが、通常30〜180秒間である。
【0141】
現像工程で用いられる現像液は、露光部分を液中に溶解又は分散して除去できるものであれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の1級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の2級アミン類;トリメチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類;ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の3級アルカノールアミン類;ピロール、ピペリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1、5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の環状3級アミン類;ピリジン、コリジン、ルチジン、キノリン等の芳香族3級アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩の水溶液等のアルカリ類の水溶液を用いることができ、その濃度は、従来のポジ型感光性組成物層の除去に用いられる現像液のアルカリ濃度でよい。これらアルカリ類の水溶液は、更に、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒及び/又は界面活性剤を適当量含有してもよい。
【0142】
露光部分を現像液で除去した後、流水又はシャワーにより水でリンスすることが好ましく、必要により50〜120℃の範囲で、脱水乾燥させてもよい。
【0143】
(第4工程)ブリーチング露光工程
ブリーチング露光工程は、アルカリ溶液処理にて残存したポジ型感光性組成物層(以下、レジスト層という場合がある)の全体に光を照射して可視光透過性を向上させる工程である。
【0144】
レジスト層は、ジアゾナフトキノン類を含有していることから、淡黄色乃至淡褐色に着色している。レジスト層に光を照射することにより、残存する未反応の(C)ジアゾナフトキノン類が光分解して、可視光領域で吸収のないインデンカルボン酸に変化して可視光透過性が向上し、液晶表示装置、有機EL表示装置等に用いられるアクティブマトリクス基板用の永久レジストとして用いる場合に都合が良い。
【0145】
ブリーチング露光工程における、照射光は、特に限定されず、例えば10〜1000mJ/cm2、好ましくは40〜600mJ/cm2の光を照射すればよい。また照射光の波長は、可視光でも紫外光でも良く、特に限定されないが、(第2工程)露光工程と同様に、使用した(C)ジアゾナフトキノン類に応じて、照射光の波長を選択することが好ましい。
【0146】
(第5工程)ポストベーク工程
ブリーチング露光されたレジスト層は可視光透過性が向上するが、アルカリ溶解性も向上する。ポストベーク工程は、このようなブリーチング露光されたレジスト層に対して、120℃以上の熱処理を行い、レジスト層中のシリコーン樹脂を熱架橋させ、永久レジストとして要求される耐熱性、耐薬品性、耐経時変化性を付与するものである。
【0147】
本発明では、ポジ型感光性組成物の(B)成分であるグリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物が架橋剤として機能し、これまでにない高熱履歴後の耐薬品性が得られるものと考えられる。ポストベークは、好ましくは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下に、120〜400℃の温度で15分〜2時間行うことが好ましく、200〜350℃の温度で15分〜2時間行うことが更に好ましい。
【0148】
本発明の永久レジストは、透明性、絶縁性、耐熱性、耐薬品性に優れるだけでなく、300〜350℃程度の高温の熱履歴(高熱履歴)後の透明性、絶縁性、耐薬品性にも優れることから、液晶表示装置、有機EL表示装置等に用いられるアクティブマトリクス基板用の層間絶縁膜、中でも、多結晶シリコン薄膜を活性層とするTFTを有するアクティブマトリクス基板用の層間絶縁膜として極めて有用である。
【0149】
本発明の永久レジストは、半導体素子の層間絶縁膜にも使用することができる。また半導体素子のウエハコート材料(表面保護膜、バンプ保護膜、MCM(multi−chip module)層間保護膜、ジャンクションコート)、パッケージ材(封止材、ダイボンディング材)にも使用することができる。
【0150】
本発明の永久レジストは、半導体素子、多層配線板等の絶縁膜としても有用である。半導体素子として、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体素子、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリー等の記憶素子、マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子等が挙げられる。また、多層配線板としては、MCM等の高密度配線板等が挙げられる。
【実施例】
【0151】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、シラノール基の含量は、試料をピリジン溶液中でトリメチルクロロシランと反応させてシラノール基をトリメチルシリルエーテル基に変えた後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド((CH34NOH)水溶液で処理してC−O−Si結合を加水分解し、反応後の重量増加率から逆算して求めた。
【0152】
〔(A)シリコーン樹脂(a)の製造〕
トルエン300質量部に、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン100質量部、4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステル85質量部、4−t−ブトキシスチレン110質量部、トリメトキシビニルシラン93質量部、及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)0.0001質量部を加えて、攪拌しながら60℃で15時間反応させた。
【0153】
この反応液から溶媒を60℃で減圧留去させ、環状シロキサン化合物(a−1)(上記一般式(3a)に相当する化合物)を得た。環状シロキサン化合物(a−1)は、25℃で粘稠な液体であり、1H−NMRによる分析では、Si−H基の水素原子に由来する4.3〜5.0ppmのピークは見られず、GPCによる分析の結果、質量平均分子量は900(理論分子量933.1)であり、未反応の4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステルに由来するピーク面積比が0.5%以下まで消失したことが確認された。
【0154】
次いで、上記環状シロキサン化合物(a−1)の100質量部に、フェニルトリメトキシシラン(上記一般式(4)に相当する化合物)40質量部、トルエン200質量部を加えて、10℃で氷冷攪拌しながら、5%シュウ酸水溶液の50質量部を30分かけて滴下した。系内温度を10℃に保ったまま15時間攪拌の後、50℃、減圧下で還流脱水・脱アルコール処理し、50℃減圧下で溶媒のトルエンを1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(以下PGMEAという)へと溶媒交換を行い、中間生成物(a−2)の25%PGMEA溶液を得た。
【0155】
t−ブチル基を脱離するために、中間生成物(a−2)の25%PGMEA溶液400質量部、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体3質量部を加えて、80℃で3時間攪拌の後、減圧下で100質量部の脱溶媒処理をし、酸性物質の吸着剤(協和化学工業製、商品名:キョーワード500SH)を10質量部加えた後に80℃で1時間攪拌したスラリー溶液について、濾過により固形物を除去し、本発明のシリコーン樹脂(a)の30%PGMEA溶液を得た。シリコーン樹脂(a)のGPC分析による質量平均分子量は6400、シラノール基含量は5.4質量%であった。
【0156】
〔(A)シリコーン樹脂(b)の製造〕
上記環状シロキサン化合物(a−1)の100質量部に、フェニルトリメトキシシラン8質量部、トルエン200質量部を加えて、10℃で氷冷攪拌しながら、5%シュウ酸水溶液の50質量部を30分かけて滴下した。系内温度を10℃に保ったまま15時間攪拌の後、50℃、減圧下で還流脱水・脱アルコール処理し、50℃減圧下でトルエンとPGMEAとの溶媒交換を行い、中間生成物(b−2)の25%PGMEA溶液を得た。
以下、シリコーン樹脂(a)と同様の操作を行い、本発明のシリコーン樹脂(b)の30%PGMEA溶液を得た。シリコーン樹脂(b)のGPC分析による質量平均分子量は9500、シラノール基含量は4.2質量%であった。
【0157】
〔(A)シリコーン樹脂(c)の製造〕
トルエン200質量部に、フェニルトリメトキシシラン40質量部を加えて、10℃で氷冷攪拌しながら、5%シュウ酸水溶液の50質量部を1時間かけて滴下した後、更に10℃で3時間攪拌した。この反応液に、2−(4−t−ブトキシカルボニルフェニル)エチルトリメトキシシラン44質量部と2−(4−t−ブトキシフェニル)エチルトリメトキシシラン56質量部との混合物を、10℃で氷冷攪拌しながら1時間かけて滴下した後、10℃で15時間攪拌の後、50℃、減圧下で還流脱水・脱アルコール処理し、50℃減圧下でトルエンとPGMEAとの溶媒交換を行い、中間生成物(c−2)の25%PGMEA溶液を得た。
以下、シリコーン樹脂(a)と同様の操作を行い、本発明のシリコーン樹脂(c)の30%PGMEA溶液を得た。シリコーン樹脂(c)のGPC分析による質量平均分子量は6800、シラノール基含量は4.1質量%であった。
【0158】
〔(A)シリコーン樹脂(d)の製造〕
4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステル85質量部と4−t−ブトキシスチレン110質量部の代わりに、4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステル212.5質量部を使用した以外は、上記(A)シリコーン樹脂(a)の製造と同様の操作を行い、本発明のシリコーン樹脂(d)の30%PGMEA溶液を得た。シリコーン樹脂(d)のGPC分析による質量平均分子量は6300、シラノール基含量は5.1質量%であった。
【0159】
〔(A)シリコーン樹脂(e)の製造〕
2−(4−t−ブトキシカルボニルフェニル)エチルトリメトキシシラン44質量部と2−(4−t−ブトキシフェニル)エチルトリメトキシシラン56質量部との混合物の代わりに、2−(4−t−ブトキシカルボニルフェニル)エチルトリメトキシシラン100質量部を使用した以外は、上記(A)シリコーン樹脂(c)の製造と同様の操作を行い、本発明のシリコーン樹脂(e)の30%PGMEA溶液を得た。尚、シリコーン樹脂(e)のGPC分析による質量平均分子量は7200、シラノール基含量は10.1質量%であった。
【0160】
〔(A)シリコーン樹脂(f)の製造〕
4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステル85質量部と4−t−ブトキシスチレン110質量部の代わりに、4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステル170質量部とパラ−t−ブトキシスチレン36.7質量部とを使用した以外は、上記(A)シリコーン樹脂(a)の製造と同様の操作を行い、本発明のシリコーン樹脂(d)の30%PGMEA溶液を得た。尚、シリコーン樹脂(f)のGPC分析による質量平均分子量は7800、シラノール基含量は5.1質量%であった。
【0161】
〔比較のシリコーン樹脂(g)の製造〕
4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステル85質量部と4−t−ブトキシスチレン110質量部の代わりに、4−t−ブトキシスチレン184質量部を使用した以外は、上記(A)シリコーン樹脂(a)の製造と同様の操作を行い、上記一般式(1)で表わされる基を有していない、比較のシリコーン樹脂(g)の30%PGMEA溶液を得た。尚、シリコーン樹脂(g)のGPC分析による質量平均分子量は6700、シラノール基含量は4.8質量%であった。
【0162】
〔比較のシリコーン樹脂(h)の製造〕
2−(4−t−ブトキシカルボニルフェニル)エチルトリメトキシシラン44質量部と2−(4−t−ブトキシフェニル)エチルトリメトキシシラン56質量部との混合物の代わりに、2−(4−t−ブトキシフェニル)エチルトリメトキシシラン100質量部を使用した以外は、上記(A)シリコーン樹脂(c)の製造と同様の操作を行い、上記一般式(1)で表わされる基を有していない、比較のシリコーン樹脂(h)の30%PGMEA溶液を得た。尚、シリコーン樹脂(h)のGPC分析による質量平均分子量は7400、シラノール基含量は10.4質量%であった。
【0163】
〔比較のシリコーン樹脂(i)の製造〕
特開2008−116785号公報の実施例の合成例1に準じ、ジアセトンアルコール(以下、DAAという)157質量部に、メチルトリメトキシシラン100質量部、フェニルトリメトキシシラン78質量部を加え、室温で攪拌しながら0.3%リン酸水溶液の61質量部を10分かけて滴下した。その後、40℃で30分攪拌した後、30分かけて105℃まで昇温し、更に105℃で2時間攪拌することにより、シリコーン樹脂(i)のDAA溶液を得た。シリコーン樹脂(i)のDAA溶液の固形分濃度は39質量%、水分率は1.8重量%であり、シリコーン樹脂(i)の質量平均分子量は6000であった。
【0164】
〔(B)グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物(j)の製造〕
トルエン300質量部に、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン100質量部、アリルグリシジルエーテル190質量部、及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)0.0001質量部を加えて、攪拌しながら50〜60℃で15時間反応させた。この反応液から溶媒を60℃で減圧留去させ、グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物(j)を得た。シロキサン化合物(j)は、25℃で粘稠な液体で、エポキシ当量は174、NMR分析では、Si−H基の水素原子に由来するピークは見られなかった。また、GPC分析による質量平均分子量は700であり、未反応のアリルグリシジルエーテルに由来するピークは確認できなかった。
【0165】
〔(B)グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物(k)の製造〕
トルエン50質量部に、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン100質量部、アリルグリシジルエーテル170部、及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)0.0005質量部を加えて、攪拌しながら50〜60℃で15時間反応させた。この反応液から溶媒を60℃で減圧留去させ、グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物(k)を得た。シロキサン化合物(k)のエポキシ当量は182、NMR分析では、Si−H基の水素原子に由来するピークは見られなかった。また、GPC分析による質量平均分子量は360であり、未反応のアリルグリシジルエーテルに由来するピークは確認できなかった。
【0166】
〔(B)グリシジルエーテル基を含有するシロキサン化合物(l)の製造〕
トルエン150質量部に、フェニルトリメトキシシラン100質量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン40質量部を加えて、10℃で氷冷攪拌しながら、5質量%ギ酸の50質量部を30分間かけて滴下した。系内温度を10℃に保ったまま15時間攪拌の後、水を加え、水層が中性になるまで水洗を繰り返した。50℃、減圧下で還流しながら水と反応により生成したメタノールとをした除去した後、50℃減圧下でトルエンとPGMEAを溶媒交換し、グリシジルエーテル基含有シロキサン溶液(l)の40%PGMEA溶液を得た。グリシジルエーテル基含有シロキサン溶液(l)は、FT−IR分析では、3100〜3700cm-1にシラノール基に由来するブロードな吸収が確認され、エポキシ当量は560、GPC分析による質量平均分子量は4000、シラノール基含量は11.2質量%であった。
【0167】
〔比較のエポキシ基を有するシロキサン化合物(m)の製造〕
アリルグリシジルエーテル190質量部の代わりにビニルシクロヘキセンモノオキシド207質量部を使用した以外は、グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物(j)と同様の操作を行い、比較のエポキシ基を有するシロキサン化合物(m)を得た。シロキサン化合物(m)は、25℃で粘稠な液体であり、エポキシ当量は183、NMR分析では、Si−H基の水素原子に由来するピークは見られなかった。また、GPC分析による質量平均分子量は730であり、未反応のビニルシクロヘキセンモノオキシドに由来するピークは確認できなかった。
【0168】
比較のエポキシ基を有する化合物(n)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(ADEKA社製、商品名:アデカレジンEP−4100)
比較のエポキシ基を有する化合物(p)
3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、商品名:セロキサイド2021P)
(C)ジアゾナフトキノン類(DNQ)
上記式(12)において全てのQが式(11)で表される基である化合物(ダイトーケミックス社製、商品名:PA−6)
【0169】
[表1]に示す割合で配合後、孔径0.2μmのフィルターで濾過した後、実施例1〜11及び比較例1〜16のポジ型感光性組成物を調製した。尚、溶剤は、表中の値になるように追加した。
【0170】
【表1】

【0171】
実施例1〜11及び比較例1〜16のポジ型感光性組成物について下記の評価を行った。結果を[表2]に示す。
【0172】
(試験片の調製法)
ポジ型感光性組成物を、縦25mm、横25mmの正方形のガラス基板又はITO蒸着ガラス基板(ITO厚:100nm)上に、厚さ4〜5μmになるようスピンコート法により塗布した後、溶剤を揮発させ、試験片に用いた。尚、ポジ型感光性組成物は、調製後、23℃の恒温槽に1日(24時間)保存してから用いた。このほか、保存安定性試験に用いるため、23℃の恒温槽に7日及び60日間保存したポジ型感光性組成物についても、ガラス基板の試験片を調製した。
【0173】
ガラス基板を用いた試験片の場合には、試験片を80℃で2分間加熱処理した後、ガラス基板上部に線幅5μmが描かれたフォトマスクを設置し、超高圧水銀灯により紫外線を70mJ/cm2(波長365nm露光換算)で照射した。次に、この試験片を液温23℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に、70秒浸漬した後、水洗し、風乾した。風乾した試験片に超高圧水銀灯により紫外線を200mJ/cm2(波長365nm露光換算)で照射した後、大気雰囲気下230℃で60分間の加熱処理、又は窒素雰囲気下350℃で30分間の加熱処理を行い永久レジスト膜を形成させた。
【0174】
ITO蒸着ガラス基板を用いた試験片の場合には、試験片を80℃で2分間加熱処理した後、フォトマスクを使用せずに、超高圧水銀灯により紫外線を200mJ/cm2(波長365nm露光換算)で照射した後、大気雰囲気下230℃で60分間の加熱処理、又は窒素雰囲気下350℃で30分間の加熱処理を行った。永久レジスト膜上部には蒸着法にてAlの配線を形成し、誘電率測定用の試験片を作製した。
【0175】
(保存安定性試験)
230℃で60分間加熱処理したガラス基板の試験片を切断後、アルカリ可溶部が除去されたガラス基板面におけるレジスト残渣の有無を、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、下記の<評価基準>により保存安定性を評価した。レジスト残渣は、ポジ型感光性組成物の一部が高分子量化して、アルカリ現像液への溶解性又は分散性が低下することにより発生するものである。試験には、23℃で、1日、7日及び60日、それぞれ保存したポジ型感光性組成物の各試験片について行った。尚、1日又は7日間保存のポジ型感光性組成物で、レジスト残渣が見られたポジ型感光性組成物の試験片は以降の試験には使用しなかった。
<評価基準>
◎:60日間保存のポジ型感光性組成物でもレジスト残渣が見られず、保存安定性が非常に優れている。
○:7日間保存のポジ型感光性組成物ではレジスト残渣が見られないが、60日間保存後のポジ型感光性組成物ではレジスト残渣が見られ、保存安定性が優れている。
△:1日間保存後のポジ型感光性組成物ではレジスト残渣が見られないが、7日間保存後のポジ型感光性組成物ではレジスト残渣が見られ、保存安定性がやや劣る。
×:1日間保存後のポジ型感光性組成物でもレジスト残渣が見られ、保存安定性が不良。
【0176】
(解像性試験)
上記保存安定性試験で切断した試験片について、走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察し、5μmのラインアンド・スペースパターンを1対1の幅に形成出来るか否かによって下記の<評価基準>にて解像性を評価した。
<評価基準>
○:パターンが1対1の幅に形成できており、解像性に優れる。
×:パターンが1対1の幅に形成できておらず、解像性に劣る。
【0177】
(耐熱パターニング試験)
上記解像性試験で、5μmのラインアンド・スペースパターンを1対1の幅に形成出来た試験片について、さらに窒素雰囲気下350℃で30分間加熱した後、走査型電子顕微鏡を用いて断面観察を行ない、下記の<評価基準>でパターニングの耐熱性を評価した。
<評価基準>
○:1対1の幅のパターニング形状が維持されており、パターニングの耐熱性が優れる。
×:表面荒れ、膜厚減量等により、1対1の幅のパターニング形状が維持されておらず、パターニングの耐熱性が劣る。
【0178】
(透明性試験)
ガラス基板を用いた各試験片について、波長400nmの光の透過率を測定し、下記の<評価基準>にて透明性及び耐熱性を評価した。尚、本試験の光透過率は膜厚4μmあたりの波長400nmの光の透過率をいう。
<評価基準>
○:230℃で加熱処理した試験片の光透過率が96%以上、350℃で加熱処理した試験片の光透過率が90%以上であり、透明性・高熱履歴後の透明性に優れる。
△:230℃で加熱処理した試験片の光透過率は96%以上であるが、350℃で加熱処理した試験片の光透過率は90%未満であり、透明性に優れるが、高熱履歴後の透明性に劣る。
×:230℃で加熱処理した試験片の光透過率が96%未満であり、透明性に劣る。
【0179】
(耐水試験)
ガラス基板を用いた各試験片について、60℃のイオン交換水に24時間浸漬した前後の、波長400nmの光の透過率、及び触針式表面形状測定器を用いてレジストの膜厚を測定し、光透過率の変化率と膜厚の変化率から下記の<評価基準>にて耐水性を評価した。
<評価基準>
○:350℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%未満及び膜厚の変化率が10%未満であり、耐水性及び高熱履歴後の耐水性に優れる。
△:230℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%未満及び膜厚の変化率が10%未満であるが、350℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、耐水性に優れるが、高熱履歴後の耐水性に劣る。
×:230℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、耐水性に劣る。
【0180】
(耐酸性試験)
ガラス基板を用いた各試験片について、40℃の5質量%塩酸水溶液に1時間浸漬した前後の、波長400nmの光の透過率、及び触針式表面形状測定器を用いてレジストの膜厚を測定し、光透過率の変化率と膜厚の変化率から下記の<評価基準>にて耐酸性を評価した。
<評価基準>
○:350℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%未満及び膜厚の変化率が10%未満であり、耐酸性及び高熱履歴後の耐酸性に優れる。
△:230℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%未満及び膜厚の変化率が10%未満であるが、350℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、耐酸性に優れるが、高熱履歴後の耐酸性に劣る。
×:230℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、耐酸性に劣る。
【0181】
(耐アルカリ性試験)
ガラス基板を用いた各試験片について、40℃のアルカリ溶液(モノエタノールアミン:N−メチル−2−ピロリドン:ブチルジグリコール=10:30:60質量比)に30分浸漬した前後の、波長400nmの光の透過率、及び触針式表面形状測定器を用いてレジストの膜厚を測定し、光透過率の変化率と膜厚の変化率から下記の<評価基準>にて耐アルカリ性を評価した。
<評価基準>
○:350℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%未満及び膜厚の変化率が10%未満であり、耐アルカリ性及び高熱履歴後の耐アルカリ性に優れる。
△:230で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%未満及び膜厚の変化率が10%未満であるが、350℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、耐アルカリ性に優れるが、高熱履歴後の耐アルカリ性に劣る。
×:230℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、耐アルカリ性に劣る。
【0182】
(耐溶剤性試験)
ガラス基板を用いた各試験片について、80℃のジメチルスルホキシド(DMSO)に1時間浸漬した前後の、波長400nmの光の透過率、及び触針式表面形状測定器を用いてレジストの膜厚を測定し、光透過率の変化率と膜厚の変化率から下記の<評価基準>にて耐酸性を評価した。
<評価基準>
○:350℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%未満及び膜厚の変化率が10%未満であり、耐溶剤性及び高熱履歴後の耐溶剤性に優れる。
△:230℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%未満及び膜厚の変化率が10%未満であるが、350℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、耐溶剤性に優れるが、高熱履歴後の耐溶剤性に劣る。
×:230℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、耐溶剤性に劣る。
【0183】
(誘電率試験)
ITO蒸着ガラス基板を用いた各試験片について、LCRメーターを用いて誘電率を測定し、下記の<評価基準>にて低誘電率特性を評価した。
<評価基準>
○:230℃で加熱処理した試験片の誘電率が3.2未満で、230℃で加熱処理した試験片と350℃で加熱処理した試験片の誘電率の差が0.2未満であり、低誘電率特性及び高熱履歴後の低誘電率特性に優れる。
△:230℃で加熱処理した試験片の誘電率が3.2未満であるが、230℃で加熱処理した試験片と350℃で加熱処理した試験片の誘電率の差が0.2以上であり、低誘電率特性に優れるが、高熱履歴後の低誘電率特性に劣る。
×:230℃で加熱処理した試験片の誘電率が3.2以上であり低誘電率特性に劣る。
【0184】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は置換炭化水素基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは0又は1〜4の数を表し、bは1〜3の数を表すが、a+bは5を超えない。)
で表される基を、1分子中に少なくとも2個有するシリコーン樹脂、
(B)成分として、グリシジル基を有するシロキサン化合物、
(C)成分として、ジアゾナフトキノン類及び
(D)成分として、有機溶剤を含有するポジ型感光性組成物。
【請求項2】
上記(A)成分であるシリコーン樹脂が、更に下記一般式(2)
【化2】

(式中、R3は、置換炭化水素基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R4は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、cは0又は1〜4の数を表し、dは1〜3の数を表すが、c+dは5を超えない。)
で表される基を1分子中に少なくとも1個有する請求項1に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項3】
上記(A)成分であるシリコーン樹脂が、更にシラノール基を有する請求項1又は2に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項4】
上記(A)成分であるシリコーン樹脂が、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R1、R3及びR8は同一でも異なっていてもよく、置換炭化水素基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R2及びR4は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、R5、R6及びR7は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を表す。aは0又は1〜4の数を表し、bは1〜3の数を表すが、a+bは5を超えない。cは0又は1〜4の数を表し、dは1〜3の数を表すが、c+dは5を超えない。R9は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はシクロアルキル基を表し、R10は炭素数1〜3のアルキル基を表し、eは1〜3の数を表す。m,n及びpは、m:n:p=1:0〜2:0.5〜3であり、m+n+p=3〜6となる数を表す。)
で表される環状シロキサン化合物と、
下記一般式(4)
【化4】

(式中、R11は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はシクロアルキル基を表し、R12は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R13は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、fは2〜3の数を表し、gは0又は1〜5の数を表す。)
で表されるアリールアルコキシシラン化合物とを反応させて得られるシリコーン樹脂である請求項1〜3の何れか1項に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のポジ型感光性組成物から得られることを特徴とする永久レジスト。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載のポジ型感光性組成物を基材上に塗布し、塗布物を、露光し、アルカリ現像した後に、120〜350℃の温度でポストベークすることを特徴とする永久レジストの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか1項に記載のポジ型感光性組成物を用いて得られた永久レジストを絶縁層又は平坦化膜とするアクティブマトリクス基板を有する液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1〜4の何れか1項に記載のポジ型感光性組成物を用いて得られた永久レジストを絶縁層又は平坦化膜とするアクティブマトリクス基板を有する有機EL表示装置。

【公開番号】特開2010−101957(P2010−101957A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270972(P2008−270972)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】