説明

モリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法および薄膜トランジスタパネルの製造方法

【課題】モリブデン系金属膜上の絶縁膜をドライエッチングする際に、選択比を比較的大きくする事ができる方法を提供する。
【解決手段】ドライエッチングにより、レジスト膜45の開口部46に対応する部分つまりソース電極9上におけるオーバーコート膜13にコンタクトホール14を形成し、また同時に、レジスト膜45の開口部47に対応する部分つまり金属膜21a上におけるオーバーコート膜13およびゲート絶縁膜4にコンタクトホール22を形成し、さらに同時に、レジスト膜45の開口部48に対応する部分つまり金属膜31a上におけるオーバーコート膜13にコンタクトホール32も形成する場合、エッチングガスとしてフッ素系ガス(SF、CF)、酸素ガスおよび窒素ガスからなる混合ガスを用いる事で窒化シリコン等からなるオーバーコート膜13とモリブデン系金属からなる金属膜31aとの選択比を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法および薄膜トランジスタパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイス、特に薄膜トランジスタの技術分野では、ゲート電極等の配線の材料としてモリブデンを用いることがある(例えば、特許文献1の第45、第46段落参照)。この場合、基板上に形成されたモリブデンからなるゲート電極等の配線を含む基板上に窒化シリコンからなる絶縁膜を成膜し、ゲート電極上における絶縁膜にコンタクトホールを形成している。
【0003】
コンタクトホールの形成方法としては、まず、成膜された絶縁膜上にレジスト膜を形成している。次に、フォトリソグラフィ法により、ゲート電極上におけるレジスト膜に開口部を形成している。次に、レジスト膜をマスクとして四フッ化メタン(CF)ガスと水素ガスとからなる混合ガスを用いた反応性イオンエッチングによるドライエッチングを行うことにより、レジスト膜の開口部に対応する部分つまりゲート電極上における絶縁膜にコンタクトホールを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−172958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のドライエッチング方法では、絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介してゲート電極が露出され、この露出されたゲート電極がオーバーエッチングされることになるが、その際の窒化シリコンからなる絶縁膜とモリブデンからなるゲート電極との選択比が7程度(特許文献1の第46段落参照)と比較的小さいという問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、選択比を比較的大きくすることができるモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法および薄膜トランジスタパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係るモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法は、フッ素系ガス、酸素ガスおよび窒素ガスからなる混合ガスを用いてモリブデン系金属膜上の絶縁膜をドライエッチングすることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明に係るモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法は、請求項1に記載の発明において、前記フッ素系ガスは六フッ化硫黄ガスまたは四フッ化メタンガスであることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明に係るモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法は、請求項1に記載の発明において、前記絶縁膜は窒化シリコン(SiN)または酸窒化シリコン(SiON)からなることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明に係るモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法は、請求項1に記載の発明において、前記モリブデン系金属膜は配線用外部接続端子の一部を構成し、ドライエッチングにより前記モリブデン系金属膜上における前記絶縁膜にコンタクトホールを形成することを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明に係るモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法は、請求項4に記載の発明において、前記モリブデン系金属膜は下層絶縁膜上に形成され、前記下層絶縁膜下に別の配線用外部接続端子の一部を構成するモリブデン系金属以外の金属からなる金属膜が形成され、ドライエッチングにより前記モリブデン系金属膜上における前記絶縁膜に前記コンタクトホールを形成すると同時に、前記金属膜上における前記絶縁膜および前記下層絶縁膜に別のコンタクトホールを形成することを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明に係るモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法は、請求項5に記載の発明において、前記絶縁膜上に前記配線用外部接続端子の上層を構成するITO膜を前記コンタクトホールを介して前記モリブデン系金属膜に接続させて形成し、且つ、前記絶縁膜上に前記別の配線用外部接続端子の上層を構成する別のITO(酸化インジウムスズ)膜を前記別のコンタクトホールを介して前記金属膜に接続させて形成することを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明に係るモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法は、請求項6に記載の発明において、前記配線用外部接続端子は薄膜トランジスタパネルにおけるドレイン配線用外部接続端子であり、前記別の配線用外部接続端子は前記薄膜トランジスタパネルにおけるゲート配線用外部接続端子であることを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明に係るモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法は、請求項1から7に記載の発明において、前記フッ素系ガス、前記酸素ガスおよび前記窒素ガスの流量比は1:1〜2:0.3〜0.5であることを特徴とするものである。
請求項9に記載の発明に係る薄膜トランジスタパネルの製造方法は、ゲート配線を含む第1の金属層を形成する工程と、前記第1の金属層を覆うように窒化シリコンからなるゲート絶縁膜を成膜する工程と、前記ゲート絶縁膜の上層側に、少なくとも最上層がモリブデン系金属からなり、ドレイン配線を含む第2の金属層を形成する工程と、前記第2の金属層を覆うように窒化シリコン(SiN)または酸窒化シリコン(SiON)からなるオーバーコート膜を成膜する工程と、前記第1の金属層の少なくとも一部が露出するように前記ゲート絶縁膜および前記オーバーコート膜に第一のコンタクトホールを形成すると同時に、前記第2の金属層の少なくとも一部が露出するように前記第一のコンタクトホールとは異なる位置の前記オーバーコート膜に第二のコンタクトホールを形成する工程と、
を有し、前記第一のコンタクトホールおよび前記第二のコンタクトホールは、酸素ガスおよび窒素ガスに六フッ化硫黄ガスまたは四フッ化メタンガスが混合された混合ガスを用いたドライエッチングにより形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、フッ素系ガス、酸素ガスおよび窒素ガスからなる混合ガスを用いてモリブデン系金属膜上の絶縁膜をドライエッチングすることにより、選択比を比較的大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明のドライエッチング方法を含む製造方法により製造された薄膜トランジスタパネルの一例の要部の断面図。
【図2】図1に示す薄膜トランジスタパネルの製造に際し、当初の工程の断面図。
【図3】図2に続く工程の断面図。
【図4】図3に続く工程の断面図。
【図5】図4に続く工程の断面図。
【図6】図5に続く工程の断面図。
【図7】図6に続く工程の断面図。
【図8】図7に続く工程の断面図。
【図9】図8に続く工程の断面図。
【図10】図9に続く工程の断面図。
【図11】ドライエッチング装置の一例の概略構成図。
【図12】ドライエッチング時の選択比を説明するために示す図。
【図13】ドライエッチング装置の他の例の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1はこの発明のドライエッチング方法を含む製造方法により製造された薄膜トランジスタパネルの一例の要部の断面図を示す。この場合、図1の左側から右側に向かって、画素電極15を含む薄膜トランジスタ11の部分の断面図、ゲート配線用外部接続端子21の部分の断面図、ドレイン配線用外部接続端子31の部分の断面図を示す。
【0011】
まず、画素電極15を含む薄膜トランジスタ11について説明する。ガラス基板1の上面の所定の箇所にはゲート電極2および該ゲート電極2に接続されたゲート配線3が設けられている。この場合、ゲート電極2およびゲート配線3は、モリブデンやその合金からなるモリブデン系金属以外の金属、例えばアルミニウムやその合金からなるアルミニウム系金属によって形成されている。
【0012】
ゲート電極2およびゲート配線3を含むガラス基板1の上面には窒化シリコン(SiN)や酸窒化シリコン(SiON)等からなるゲート絶縁膜4が設けられている。ゲート電極2上におけるゲート絶縁膜4の上面の所定の箇所には真性アモルファスシリコンからなる半導体薄膜5が設けられている。半導体薄膜5の上面ほぼ中央部には窒化シリコンからなるチャネル保護膜6が設けられている。
【0013】
チャネル保護膜6の上面両側およびその両側における半導体薄膜5の上面にはn型アモルファスシリコンからなるオーミックコンタクト層7、8が設けられている。オーミックコンタクト層7、8の各上面にはソース電極9およびドレイン電極10が設けられている。この場合、ソース電極9およびドレイン電極10はモリブデンやその合金からなるモリブデン系金属によって形成されている。モリブデン合金としては、モリブデンタングステン、モリブデンニオブ等が挙げられる。
【0014】
ここで、ゲート電極2、ゲート絶縁膜4、半導体薄膜5、チャネル保護膜6、オーミックコンタクト層7、8、ソース電極9およびドレイン電極10により、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ11が構成されている。ゲート絶縁膜4の上面の所定の箇所にはドレイン配線12がドレイン電極10に接続されて設けられている。ドレイン配線12はドレイン電極9と同一の金属によって形成されている。
【0015】
薄膜トランジスタ11およびドレイン配線12を含むゲート絶縁膜4の上面には窒化シリコンや酸窒化シリコンからなるオーバーコート膜13が設けられている。ソース電極9の所定の箇所に対応する部分におけるオーバーコート膜13にはコンタクトホール14が設けられている。オーバーコート膜13の上面の所定の箇所には、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)からなる画素電極15がコンタクトホール14を介してソース電極9に接続されて設けられている。
【0016】
次に、ゲート配線用外部接続端子21について説明する。ゲート配線用外部接続端子21は、下から順に、金属膜21aおよびITO膜21bの2層構造となっている。このうち、金属膜21aは、ゲート電極2およびゲート配線3と同一の金属からなり、ガラス基板1の上面に設けられ、ゲート配線3の一端部に接続されている。ITO膜21bは、画素電極15と同一の金属からなり、オーバーコート膜13の上面に設けられ、オーバーコート膜13およびゲート絶縁膜4に連続して設けられたコンタクトホール22を介して金属膜21aに接続されている。
【0017】
次に、ドレイン配線用外部接続端子31について説明する。ドレイン配線用外部接続端子31は、下から順に、金属膜31aおよびITO膜31bの2層構造となっている。このうち、金属膜31aは、ドレイン配線12と同一の金属からなり、ゲート絶縁膜4の上面に設けられ、ドレイン配線12の他端部に接続されている。ITO膜31bは、画素電極15と同一の金属からなり、オーバーコート膜13の上面に設けられ、オーバーコート膜13に設けられたコンタクトホール32を介して金属膜31aに接続されている。
【0018】
次に、この薄膜トランジスタバネルの製造方法の一例について説明する。まず、図2に示すように、ガラス基板1の上面に、スパッタ法により成膜されたアルミニウム系金属等からなる金属膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングすることにより、ゲート電極2、ゲート配線3および金属膜21aを形成する。
【0019】
次に、図3に示すように、ゲート電極2、ゲート配線3および金属膜21aを含むガラス基板1の上面に、プラズマCVD法により、窒化シリコン等からなるゲート絶縁膜4、真性アモルファスシリコン膜41および窒化シリコンからなるチャネル保護膜形成用膜42を連続して成膜する。次に、チャネル保護膜形成用膜42をフォトリソグラフィ法によりパターニングすることにより、チャネル保護膜6を形成する。
【0020】
次に、図4に示すように、チャネル保護膜6を含む真性アモルファスシリコン膜41の上面に、プラズマCVD法により、n型アモルファスシリコン膜43を成膜する。次に、n型アモルファスシリコン膜43および真性アモルファスシリコン膜41をフォトリソグラフィ法により連続してパターニングすると、図5に示すようになる。すなわち、薄膜トランジスタ11形成領域において、ゲート絶縁膜4の上面に半導体薄膜5が形成され、チャネル保護膜6の上面両側およびその両側における半導体薄膜5の上面にオーミックコンタクト層7、8が形成される。
【0021】
次に、図6に示すように、チャネル保護膜6およびオーミックコンタクト層7、8を含むゲート絶縁膜4の上面に、スパッタ法によりモリブデン系金属からなる金属膜44を成膜する。次に、金属膜44をフォトリソグラフィ法によりパターニングすると、図7に示すようになる。すなわち、各オーミックコンタクト層7、8の上面にソース電極9およびドレイン電極10が形成される。また、ゲート絶縁膜4の上面にドレイン配線12および金属膜31aが形成される。
【0022】
次に、図8に示すように、チャネル保護膜6、ソース電極9、ドレイン電極10、ドレイン配線12および金属膜31aを含むゲート絶縁膜4の上面に、プラズマCVD法により、窒化シリコン等からなるオーバーコート膜13を成膜する。次に、図9に示すように、オーバーコート膜13の上面にレジスト膜45を形成し、次いで、フォトリソグラフィ法により、ソース電極9、金属膜21aおよび金属膜31aに対応する部分におけるレジスト膜45に開口部46、47、48を形成する。
【0023】
次に、図10に示すように、後述するドライエッチング方法により、レジスト膜45の開口部46に対応する部分つまりソース電極9上におけるオーバーコート膜13にコンタクトホール14を形成し、またレジスト膜45の開口部47に対応する部分つまり金属膜21a上におけるオーバーコート膜13およびゲート絶縁膜4にコンタクトホール22を連続して形成し、さらにレジスト膜45の開口部48に対応する部分つまり金属膜31a上におけるオーバーコート膜13にコンタクトホール32を形成する。次に、レジスト膜45を剥離する。
【0024】
次に、図1に示すように、オーバーコート膜13の上面の各所定の箇所に、スパッタ法により成膜されたITO膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングすることにより、画素電極15をコンタクトホール14を介してソース電極9に接続させて形成し、またITO膜21bをコンタクトホール22を介して金属膜21aに接続させて形成し、さらにITO膜31bをコンタクトホール32を介して金属膜31aに接続させて形成する。かくして、図1に示す薄膜トランジスタパネルが得られる。
【0025】
次に、上記製造方法において、図10に示すコンタクトホール14、22、32を形成するためのドライエッチング装置の一例について、図11に示す概略構成図を参照して説明する。このドライエッチング装置は、平行平板型であり、反応容器41を備えている。反応容器41内の下部には下部電極42が設けられ、上部には上部電極43が設けられている。この場合、下部電極42は高周波電源44に接続され、上部電極43は接地されている。下部電極42の上面には被加工物45が載置されるようになっている。反応容器41の下部の所定の箇所は配管46を介して真空ポンプ47に接続されている。
【0026】
反応容器41の上部中央部にはガス導入管48が上部電極43の中央部を貫通して設けられている。ガス導入管36は共通配管49に接続されている。共通配管49には第1〜第3の配管50〜52が接続されている。第1〜第3の配管50〜52には第1〜第3の電磁弁53〜55および第1〜第3のマスフローコントローラ56〜58が介在されている。第1〜第3の配管50〜52の各先端部にはボンベ等からなるフッ素系ガス供給源59、酸素ガス供給源60および窒素ガス供給源61が接続されている。フッ素系ガス供給源59は六フッ化硫黄(SF)ガスや四フッ化メタン(CF)ガス等のフッ素系ガスを供給するようになっている。
【0027】
次に、上記構成のドライエッチング装置を用いて、下部電極42の上面に載置された被加工物45が図9に示す状態にあり、ドライエッチングにより、図10に示すように、コンタクトホール14、22、32を形成する場合について説明する。まず、真空ポンプ47の駆動により、反応容器41内のガスを排出し、反応容器41内の圧力を10〜30Paとした。反応容器41内の温度は20〜30℃の常温とした。
【0028】
次に、第1〜第3の電磁弁53〜55を開弁し、フッ素系ガス供給源59、酸素ガス供給源60および窒素ガス供給源61から供給されるフッ素系ガス、酸素ガスおよび窒素ガスの混合ガスをガス導入管48から反応容器41内に導入する。この場合、第1〜第3のマスフローコントローラ56〜58によりフッ素系ガス、酸素ガスおよび窒素ガスの各流量を後述の如く調整した。また、高周波電源44から13.56MHzの高周波電力500〜1000Wを印加した。
【0029】
すると、図10に示すように、レジスト膜45の開口部46に対応する部分つまりソース電極9上におけるオーバーコート膜13にコンタクトホール14が形成され、またレジスト膜45の開口部47に対応する部分つまり金属膜21a上におけるオーバーコート膜13およびゲート絶縁膜4にコンタクトホール22が連続して形成され、さらにレジスト膜45の開口部48に対応する部分つまり金属膜31a上におけるオーバーコート膜13にコンタクトホール32が形成される。
【0030】
ここで、フッ素系ガス(SF)、酸素ガスおよび窒素ガスの流量比を1:2:0.5、1:1:0.3、1:0.5:0.3および1:0.2:0.2とし、窒化シリコン等からなるオーバーコート膜13およびゲート絶縁膜4とモリブデン系金属からなる金属膜31aとの選択比を調べたところ、図12に示す結果が得られた。
【0031】
図12から明らかなように、流量比が1:2:0.5の場合には選択比が約32であり、流量比が1:1:0.3の場合には選択比が約40であり、流量比が1:0.5:0.3の場合には選択比が約23であり、流量比が1:0.2:0.2の場合には選択比が約9である。したがって、いずれの場合も選択比が約9以上であるが、そのうち、流量比が1:2:0.5、1:1:0.3および1:0.5:0.3の場合には選択比を比較的大きくすることができ、特に、流量比が1:2:0.5および、1:1:0.3の場合には選択比を30〜40とかなり大きくすることができる。このことから、流量比は1:1〜2:0.3〜0.5が特に好ましい。
【0032】
ところで、図10に示すように、コンタクトホール22はオーバーコート膜13およびゲート絶縁膜4に連続して形成するため、オーミックコンタクト層13のみに形成されたコンタクトホール32を介して露出された金属膜31aの露出面のオーバーエッチング時間が長くなってしまう。したがって、選択比が比較的小さい場合には、金属膜31aの当初の厚さを比較的厚くしなければならない。これに対し、選択比が比較的大きい場合には、金属膜31aの当初の厚さを可及的に薄くすることができる。
【0033】
なお、ドレイン配線用外部接続端子31のITO膜31b下の金属膜は最上層がモリブデン系金属膜であれば複数層としてもよい。例えば、下層モリブデン系金属膜、アルミニウム系金属膜および上層モリブデン系金属膜の3層構造としてもよい。この場合、下層モリブデン系金属膜は窒化シリコン等からなるゲート絶縁膜13とのコンタクトを取るためのものであり、アルミニウム系金属膜はシート抵抗を低くするためのものであり、上層モリブデン系金属膜はITO膜31bとのコンタクトを取るためのものである。この場合、ソース電極9、ドレイン電極10およびドレイン配線12もドレイン配線用外部接続端子31のITO膜31b下の金属膜と同様に3層構造となる。
【0034】
次に、図13はドライエッチング装置の他の例の概略構成図を示す。このドライエッチング装置において、図11に示すドライエッチング装置と異なる点は、下部電極42を接地し、上部電極43を高周波電源44に接続した点である。ここで、図11に示すドライエッチング装置では、上部電極43を接地してカソードとしたものであり、カソードカップリングによるドライエッチングが行なわれる。これに対し、図13に示すドライエッチング装置では、下部電極42を接地してアノードとしたものであり、アノードカップリングによるドライエッチングが行なわれる。
【符号の説明】
【0035】
1 ガラス基板
2 ゲート電極
3 ゲート配線
4 ゲート絶縁膜
5 半導体薄膜
6 チャネル保護膜
7、8 オーミックコンタクト層
9 ソース電極
10 ドレイン電極
11 薄膜トランジスタ
12 ドレイン配線
13 オーバーコート膜
14 コンタクトホール
15 画素電極
21 ゲート配線用外部接続端子
21a 金属膜
21b ITO膜
22 コンタクトホール
31 ドレイン配線用外部接続端子
31a 金属膜
31b ITO膜
32 コンタクトホール
41 真性アモルファスシリコン膜
42 チャネル保護膜形成用膜
43 n型アモルファスシリコン膜
44 金属膜
45 レジスト膜
46、47、48 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系ガス、酸素ガスおよび窒素ガスからなる混合ガスを用いてモリブデン系金属膜上の絶縁膜をドライエッチングすることを特徴とするモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、前記フッ素系ガスは六フッ化硫黄ガスまたは四フッ化メタンガスであることを特徴とするモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法。
【請求項3】
請求項1に記載の発明において、前記絶縁膜は窒化シリコン(SiN)または酸窒化シリコン(SiON)からなることを特徴とするモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法。
【請求項4】
請求項1に記載の発明において、前記モリブデン系金属膜は配線用外部接続端子の一部を構成し、ドライエッチングにより前記モリブデン系金属膜上における前記絶縁膜にコンタクトホールを形成することを特徴とするモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法。
【請求項5】
請求項4に記載の発明において、前記モリブデン系金属膜は下層絶縁膜上に形成され、前記下層絶縁膜下に別の配線用外部接続端子の一部を構成するモリブデン系金属以外の金属からなる金属膜が形成され、ドライエッチングにより前記モリブデン系金属膜上における前記絶縁膜に前記コンタクトホールを形成すると同時に、前記金属膜上における前記絶縁膜および前記下層絶縁膜に別のコンタクトホールを形成することを特徴とするモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法。
【請求項6】
請求項5に記載の発明において、前記絶縁膜上に前記配線用外部接続端子の上層を構成するITO膜を前記コンタクトホールを介して前記モリブデン系金属膜に接続させて形成し、且つ、前記絶縁膜上に前記別の配線用外部接続端子の上層を構成する別のITO(酸化インジウムスズ)膜を前記別のコンタクトホールを介して前記金属膜に接続させて形成することを特徴とするモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法。
【請求項7】
請求項6に記載の発明において、前記配線用外部接続端子は薄膜トランジスタパネルにおけるドレイン配線用外部接続端子であり、前記別の配線用外部接続端子は前記薄膜トランジスタパネルにおけるゲート配線用外部接続端子であることを特徴とするモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法。
【請求項8】
請求項1から7に記載の発明において、前記フッ素系ガス、前記酸素ガスおよび前記窒素ガスの流量比は1:1〜2:0.3〜0.5であることを特徴とするモリブデン系金属膜上の絶縁膜のドライエッチング方法。
【請求項9】
ゲート配線を含む第1の金属層を形成する工程と、
前記第1の金属層を覆うように窒化シリコンからなるゲート絶縁膜を成膜する工程と、
前記ゲート絶縁膜の上層側に、少なくとも最上層がモリブデン系金属からなり、ドレイン配線を含む第2の金属層を形成する工程と、
前記第2の金属層を覆うように窒化シリコン(SiN)または酸窒化シリコン(SiON)からなるオーバーコート膜を成膜する工程と、
前記第1の金属層の少なくとも一部が露出するように前記ゲート絶縁膜および前記オーバーコート膜に第一のコンタクトホールを形成すると同時に、前記第2の金属層の少なくとも一部が露出するように前記第一のコンタクトホールとは異なる位置の前記オーバーコート膜に第二のコンタクトホールを形成する工程と、
を有し、
前記第一のコンタクトホールおよび前記第二のコンタクトホールは、酸素ガスおよび窒素ガスに六フッ化硫黄ガスまたは四フッ化メタンガスが混合された混合ガスを用いたドライエッチングにより形成することを特徴とする薄膜トランジスタパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−119437(P2011−119437A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275284(P2009−275284)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】