説明

三輪電気自動車

【課題】カーブを曲がるとき等においても転倒が生じ難く安定した走行が可能な三輪電気自動車を提供する。
【解決手段】車両本体1内にバッテリBが搭載され、当該バッテリBの電力によりモータを駆動させて推進力を得る三輪電気自動車において、ハンドル5により操舵可能な左右一対の前輪2と、バッテリBの電力で回転駆動する単輪から成る後輪3とを有するとともに、モータは、後輪3のホイール3aに形成されて当該後輪3を回転駆動させるインホイールモータ12から成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体内にバッテリが搭載され、当該バッテリの電力によりモータを駆動させて推進力を得る三輪電気自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時において、環境対策に対する関心が高まりつつあり、特に電気自動車が注目されるに至っている。この電気自動車は、通常、バッテリ(蓄電池)の電力により車輪を駆動させて推進力を得るよう構成されているが、搭載するバッテリの電力に限界があり、十分な駆動力を得ることができなかった。従来、例えば特許文献1にて開示されているように、左右一対の前輪と単輪から成る後輪とを有した三輪電気自動車が提案されており、かかる三輪電気自動車によれば、後輪が1つであることから軽量化が図れることから、バッテリの電力である程度良好な推進力を得ることができる。
【特許文献1】特開平10−45080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の三輪電気自動車においては、電動機(モータ)に加え、当該モータの駆動力を後輪に伝達するためのパワーユニット(伝動機構や減速機構など)が車両本体の後輪側に必要となることから、車両全体の重心が後輪側となってしまい転倒し易くなってしまうという問題があった。即ち、カーブを曲がるときなど、減速が不十分なまま前輪を操舵すると、車両の重心が後輪側にあると遠心力により転倒し易くなってしまうのである。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、カーブを曲がるとき等においても転倒が生じ難く安定した走行が可能な三輪電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、車両本体内にバッテリが搭載され、当該バッテリの電力によりモータを駆動させて推進力を得る三輪電気自動車において、ハンドルにより操舵可能な左右一対の前輪と、前記バッテリの電力で回転駆動する単輪から成る後輪とを有するとともに、前記モータは、後輪のホイールに形成されて当該後輪を回転駆動させるインホイールモータから成ることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の三輪電気自動車において、前記インホイールモータは、バッテリの電圧が付与されるコアと、該コアを内部に収容しつつ当該コアとの間で生じる磁力で回転し得るとともにホイールと一体形成されたハウジングとから成り、車軸を中心として前記ハウジングがコアに対して回転するよう構成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の三輪電気自動車において、前記車両本体は、サスペンションを介して前記前輪及び後輪を支持する金属製フレームと、該金属製フレームを覆う樹脂製ボディとから構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、モータが後輪のホイールに形成されて当該後輪を回転駆動させるインホイールモータから成るので、モータの駆動力を後輪に伝達するためのパワーユニット(伝動機構や減速機構など)を不要とすることができ、従来のものに比べ、車両本体の前輪側に重心を移動させることができる。従って、カーブを曲がるとき等においても三輪電気自動車の転倒を生じ難くすることができ、安定した走行が可能となる。
【0009】
請求項2の発明によれば、インホイールモータは、バッテリの電圧が付与されるコアと、該コアを内部に収容しつつ当該コアとの間で生じる磁力で回転し得るとともにホイールと一体形成されたハウジングとから成り、車軸を中心として前記ハウジングがコアに対して回転するよう構成されたので、モータを別個配設したものに比べて駆動に関わる部分の小型化を図ることができるとともに、左右略対称な駆動機構となる故、車両本体の左右方向に対する重量バランスを維持することができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、車両本体は、サスペンションを介して前輪及び後輪を支持する金属製フレームと、該金属製フレームを覆う樹脂製ボディとから構成されたので、三輪電気自動車の強度を維持しつつ軽量化を図ることができ、バッテリの電力を有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る三輪電気自動車は、車両本体内にバッテリが搭載され、当該バッテリの電力によりモータを駆動させて推進力を得るものであり、図1〜3に示すように、車両本体1と、バッテリBと、左右一対の前輪2と、単輪から成る後輪3と、インホイールモータ12とから主に構成されている。
【0012】
車両本体1は、サスペンション(前輪用サスペンション10及び後輪用サスペンション14)を介して前輪2及び後輪3を支持する金属製フレーム1b(図5参照)と、該金属製フレーム1bを覆う樹脂製ボディ1aとから構成されている。金属製フレーム1bには、フロント側(前輪2側)に固定されたバッテリBや運転者が着座し得るシート4等が設置されているとともに、樹脂製ボディ1aには、風防6、ライト7等が配設されている。
【0013】
バッテリBとして、車両用として汎用的な鉛蓄電池を使用することができるが、リチウムイオンバッテリを用いることもできる。かかるリチウムイオンバッテリを用いれば、バッテリ重量を著しく低減させることができるとともに、駆動のための電力を略倍増することができる。樹脂製ボディ1aとして、FRPなどの合成樹脂複合材料を用いるのが好ましい。
【0014】
また、左右の前輪2は、サスペンションアーム11及び前輪用サスペンション10を介して金属製フレーム1bと連結されて支持されるとともに、図4に示すように、ハンドル5と連結されて操舵が可能とされている。即ち、ハンドル5と連動するシャフト5aには、左右方向に延びるタイロッド8が連結されているとともに、各タイロッド8の先端がキングピン9と連結されており、ハンドル5の操作により前輪2の操舵が可能とされている。尚、同図中符号2aは、前輪2のホイールを示している。
【0015】
更に、後輪3は、図5に示すように、インホイールモータ12により車軸L1を中心として回転駆動されるとともに、スイングアーム13及び後輪用サスペンション14を介して金属製フレーム1bと連結して支持されている。スイングアーム13は、軸L2を中心として上下に揺動可能とされており、揺動端側に車軸L1が設けられて後輪3と連結されている。
【0016】
インホイールモータ12は、後輪3のホイール3aに形成されて当該後輪3を回転駆動させるためのもので、図6に示すように、バッテリBの電圧が付与されるコア15(ステータコア)と、該コア15を内部に収容しつつ当該コア15との間で生じる磁力で回転し得るとともにホイール3aと一体形成されたハウジング16とから成り、車軸L1を中心としてハウジング16がコア15に対して回転するよう構成されている。
【0017】
即ち、バッテリBからの電圧がコア15に付与されると、当該コア15内を流れる電流により磁界が生じ、ハウジング16を車軸L1周りに回転させることとなり、ホイール3aと共に後輪3のタイヤが回転駆動されて車両本体1が前進又は後退するようになっているのである。因みに、コア15を流れるバッテリBからの電流の向きを変更することにより、車両本体1が前進又は後退し得る。
【0018】
このように、本実施形態においては、上記の如くインホイールモータ12を後輪3のホイール3a内に形成し、当該後輪3を回転駆動させることにより、車両本体1の推進力を得るようになっているので、モータを別個配設したものに比べて駆動に関わる部分の小型化を図ることができるとともに、後輪3に対して左右略対称な駆動機構とすることができることから、車両本体1の左右方向に対する重量バランスを維持することができる。
【0019】
上記実施形態によれば、モータが後輪のホイールに形成されて当該後輪を回転駆動させるインホイールモータ12から成るので、モータの駆動力を後輪に伝達するためのパワーユニット(伝動機構や減速機構など)を不要とすることができ、従来のものに比べ、車両本体1の前輪2側(フロント側)に重心を移動させることができる。従って、カーブを曲がるとき等においても三輪電気自動車の転倒を生じ難くすることができ、安定した走行が可能となる。
【0020】
また、車両本体1は、サスペンションを介して前輪2及び後輪3を支持する金属製フレーム1bと、該金属製フレーム1bを覆う樹脂製ボディ1aとから構成されたので、三輪電気自動車の強度を維持しつつ軽量化を図ることができ、バッテリBの電力を有効に利用することができる。言い換えれば、軽量化によって電力が小さなバッテリを用いても三輪電気自動車の推進力を十分に得ることができる。
【0021】
更に、本実施形態の如き三輪電気自動車によれば、四輪電気自動車に比べ、車輪が1つ少ない分だけ部品点数を低減させて軽量化を図ることができるとともに、構造が簡単となることから、故障の可能性が低くなり維持費の低減を図ることができる。また、エンジンを搭載した自動車に比べ、排ガスや騒音を生じることがなく、環境を配慮した将来性の高い乗り物となっている。
【0022】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば公共的目的で使用されるタウンカーや福祉的目的で使用されるシニアカーなどに適用することができる。また、本実施形態においては、シート4が1つ形成された1人乗り用となっているが、シートを複数形成して複数人で搭乗可能としてもよい。
【0023】
更に、インホイールモータを別の形態のものとして後輪を回転駆動させるよう構成してもよい。例えば、コアを回転させるコア回転型のインホイールモータにて後輪を回転駆動させたり、或いは同軸の変速ギア(遊星ギア等から成る変速ギア)を後輪のホイール内に内蔵させたものとしてもよい。また、本実施形態においては、車両本体が金属製フレームと樹脂製ボディとから構成されているが、金属やカーボン製のボディを用いたり、或いはモノコック構造のボディとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
ハンドルにより操舵可能な左右一対の前輪と、バッテリの電力で回転駆動する単輪から成る後輪とを有するとともに、モータが、後輪のホイールに形成されて当該後輪を回転駆動させるインホイールモータから成る三輪電気自動車であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る三輪電気自動車を示す側面図
【図2】同三輪電気自動車を示す正面図
【図3】同三輪電気自動車を示す平面図
【図4】同三輪電気自動車における前輪とハンドルとの連結構成を示す模式図
【図5】同三輪電気自動車における金属製フレーム全体(樹脂製ボディを取り除いた状態)を示す模式図
【図6】同三輪電気自動車におけるインホイールモータを示す断面模式図
【符号の説明】
【0026】
1 車両本体
1a 樹脂製ボディ
1b 金属製フレーム
2 前輪
3 後輪
4 シート
5 ハンドル
6 風防
7 ライト
8 タイロッド
9 キングピン
10 前輪用サスペンション
11 サスペンションアーム
12 インホイールモータ
13 スイングアーム
14 後輪用サスペンション
15 コア
16 ハウジング
B バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体内にバッテリが搭載され、当該バッテリの電力によりモータを駆動させて推進力を得る三輪電気自動車において、
ハンドルにより操舵可能な左右一対の前輪と、
前記バッテリの電力で回転駆動する単輪から成る後輪と、
を有するとともに、前記モータは、後輪のホイールに形成されて当該後輪を回転駆動させるインホイールモータから成ることを特徴とする三輪電気自動車。
【請求項2】
前記インホイールモータは、バッテリの電圧が付与されるコアと、該コアを内部に収容しつつ当該コアとの間で生じる磁力で回転し得るとともにホイールと一体形成されたハウジングとから成り、車軸を中心として前記ハウジングがコアに対して回転するよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の三輪電気自動車。
【請求項3】
前記車両本体は、サスペンションを介して前記前輪及び後輪を支持する金属製フレームと、該金属製フレームを覆う樹脂製ボディとから構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の三輪電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−68808(P2008−68808A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251078(P2006−251078)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年3月29日 「中日新聞」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年3月29日 「静岡新聞」に発表
【出願人】(502260694)学校法人静岡文化芸術大学 (3)
【Fターム(参考)】