不揮発性メモリ消去オペレーションにおけるワード・ライン補正
【課題】NANDストリング内のメモリ・セル毎に消去速度を一様とする消去技術を提供する。
【解決手段】複数のメモリ・セルの消去オペレーションを等化するために、消去オペレーション中に補正電圧を不揮発性メモリ・システムに印加する。補正電圧は、他のメモリ・セル及び/又は選択ゲートからNANDストリングのメモリ・セルに静電容量カップルされた電圧を補正する。補正電圧を1又は複数のメモリ・セルに印加して、メモリ・セルの消去オペレーションを実質的に好適化できる。補正電圧をNANDストリングの端部メモリ・セルに印加することで、その消去オペレーションをNANDストリングの内部メモリ・セルと等しくすることができる。
【解決手段】複数のメモリ・セルの消去オペレーションを等化するために、消去オペレーション中に補正電圧を不揮発性メモリ・システムに印加する。補正電圧は、他のメモリ・セル及び/又は選択ゲートからNANDストリングのメモリ・セルに静電容量カップルされた電圧を補正する。補正電圧を1又は複数のメモリ・セルに印加して、メモリ・セルの消去オペレーションを実質的に好適化できる。補正電圧をNANDストリングの端部メモリ・セルに印加することで、その消去オペレーションをNANDストリングの内部メモリ・セルと等しくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、不揮発性メモリ装置を消去するための半導体技術に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
半導体メモリ装置は、様々な電子装置に使用されてポピュラーになっている。例えば、不揮発性半導体メモリは、携帯電話、デジタル・カメラ、パーソナル・デジタル・アシスタント、モバイル・コンピュータ装置、非モバイル・コンピュータ装置、及びその他の装置に使用されている。最も普及している不揮発性半導体メモリは、Electrical Erasable Programmable Read Only Memory(EEPROM)とフラッシュ・メモリである。
【0003】
一例のフラッシュ・メモリ・システムは、2個の選択ゲートの間で直列に配置された複数のトランジスタを内蔵したNAND構造を使用する。直列したトランジスタと選択ゲートはNANDストリングと呼ばれる。図1は、1個のNANDストリングを示す平面図である。図2はその等価回路である。図1、図2に示すNANDストリングは、第1選択ゲート120と第2選択ゲート122の間で直列配置された4個のトランジスタ100、102、104、106を備えている。選択ゲート120はNANDストリングをビット・ライン126に接続する。選択ゲート122はNANDストリングをソース・ライン128に接続する。選択ゲート120は、制御ゲート120CGに適切な電圧が印加されることで制御される。選択ゲート122は、制御ゲート122CGに適切な電圧が印加されることで制御される。各トランジスタ100、102、104、106は、メモリ・セルのゲート要素を形成する制御ゲートとフローティング・ゲートを有している。例えば、トランジスタ100は、制御ゲート100CGとフローティング・ゲート100FGを有している。トランジスタ102は、制御ゲート102CGとフローティング・ゲート102FGを有している。トランジスタ104は、制御ゲート104CGとフローティング・ゲート104FGを有している。トランジスタ106は、制御ゲート106CGとフローティング・ゲート106FGを有している。制御ゲート100CGはワード・ラインWL3に接続されており、制御ゲート102CGはワード・ラインWL2に接続されており、制御ゲート104CGはワード・ラインWL1に接続されており、制御ゲート106CGはワード・ラインWL0に接続されている。
【0004】
図1、図2はNANDストリング内の4個のメモリ・セルを示すが、この4個のトランジスタの使用態様は、単に一例として提供されるものである。NANDストリングは、4個未満または4個より多いメモリ・セルを有していてもよい。例えば、NANDストリングが、8個、16個、32個、その他の個数のメモリ・セルを有していてもよい。ここでの説明は、NANDストリング内のメモリ・セルの数を何ら限定するものではない。
【0005】
NAND構造を使用したフラッシュ・メモリ・システムの一般的な構造は、複数のNANDストリングを有している。例えば、図3は、より多くのNANDストリングを有するメモリ・アレイのうちの3つのNANDストリング202、204、206を示している。図3の各NANDストリングは、2個の選択トランジスタと4個のメモリ・セルを有している。例えば、NANDストリング202は、選択トランジスタ220、230と、メモリ・セル222、224、226、228を有している。NANDストリング204は、選択トランジスタ240、250と、メモリ・セル242、244、246、248を有している。各ストリングは、選択トランジスタ(例えば選択トランジスタ230、250)によってソース・ラインに接続されている。選択ラインSGSは、ソース側選択ゲートの制御に使用される。いくつかのNANDストリングは、選択ラインSGDによって制御される選択トランジスタ220、240等によって、各ビット・ラインに接続されている。他の実施形態においては、選択ラインは必ずしも共通化されている必要はない。ワード・ラインWL3は、メモリ・セル222、242の制御ゲートに接続されている。ワード・ラインWL2は、メモリ・セル224、244の制御ゲートに接続されている。ワード・ラインWL1は、メモリ・セル226、246の制御ゲートに接続されている。ワード・ラインWL0は、メモリ・セル228、248の制御ゲートに接続されている。図に見られるように、ビット・ラインと各NANDストリングはメモリ・セル・アレイの列群を備えている。ワード・ライン(WL3,WL2,WL1,WL0)はアレイの行群を備えている。各ワード・ラインは、行内の各メモリ・セルの制御ゲートを接続している。例えば、ワード・ラインWL2はメモリ・セル224、244、252の制御ゲートに接続されている。
【0006】
各メモリ・セルはデータ(アナログ又はデジタル)を記憶できる。1ビットのデジタル・データを記憶する場合、メモリ・セルの使用可能な閾電圧の範囲が、論理データ「1」と「0」に割り当てられた2つの範囲に分割される。NAND型フラッシュ・メモリの一例では、メモリ・セルの消去後に閾電圧が負になり、論理値「1」と定義される。プログラム・オペレーション後の閾電圧は正になり、論理値「0」と定義される。閾電圧が負であるときに制御ゲートに0ボルトが印加されて読み出しが試みられた場合、メモリ・セルがターン・オンされて、論理値1が記憶されていることが示される。閾電圧が正であるときに制御ゲートに0ボルトが印加されて読み出し動作が試みられた場合は、メモリ・セルがターン・オンされず、このことは論理値0が記憶されたことを示す。メモリ・セルは、例えば、複数ビットのデジタル・データのような複数レベルの情報を記憶することもできる。複数レベルのデータを記憶する場合には、使用可能な閾電圧の範囲が多数のデータのレベルに分割される。例えば、4つのレベルの情報を記憶する場合には、データ値「11」,「10」,「01」,「00」の4つの閾電圧範囲が割り当てられる。NAND型メモリの一例では、消去オペレーション後の閾電圧は負であり、「11」と定義される。異なる3個の正の閾電圧が、「10」,「01」,「00」に使用される。
【0007】
NAND型フラッシュ・メモリとそのオペレーションに関する例が、以下の米国特許/特許出願によって提供されている。米国特許第5,570,315号、米国特許第5,774,397号、米国特許第6,046,935号、米国特許第6,456,528号、米国特許出願番号第09/893277号(公報第US2003/0002348号):これら出願の全体は、参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【0008】
フラッシュ・メモリ・セルをプログラミングする場合、プログラム電圧が制御ゲートに(選択したワード・ラインを介して)印加され、ビット・ラインが接地される。p−ウェルからの電子がフローティング・ゲートに注入される。電子がフローティング・ゲートに蓄積されると、フローティング・ゲートは負にチャージされ、セルの閾電圧が上昇する。フローティング・ゲートのチャージとセルの閾電圧は、記憶されたデータに関する特定の状態を示すことができる。
【0009】
NAND型フラッシュ・メモリのセルを消去するために、電子は、各メモリ・セルのフローティング・ゲートからウェル領域及び基板に移される。一般に、電子を各メモリ・セルのフローティング・ゲートから離してウェル領域に引き寄せるために、1又は複数の高圧(例えば−16〜20V)の消去パルスがウェル領域に印加される。各メモリ・セルのワード・ラインは接地されるか、又は0Vを供給され、これによって、電子を引き付けるための高電位がトンネル酸化物領域にかけて生成される。消去電圧パルスの印加後にNANDストリングの各メモリ・セルが消去されなかった場合には、全てのメモリ・セルが消去されるまでパルスのサイズが増加され、NANDストリングに再度、印加される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術を使用した一般的な消去オペレーションでは、NANDストリング内のメモリ・セル毎に消去速度が異なってしまう。いくつかのメモリ・セルは、他のメモリ・セルよりも高速又は低速で、消去状態のターゲット閾電圧レベルに達する可能性がある。このことにより、高速で消去されるメモリ・セルは、NANDストリングのセルの消去に時間がかかるメモリ・セルが十分に消去されるまで消去電圧にさらされるので、過剰消去となる場合がある。さらに、一般的な消去オペレーションでは、NANDストリングの複数のメモリ・セルの間で閾電圧が一致しなくなる場合がある。即ち、1又は複数の消去電圧パルスの印加後に、NANDストリングの1又は複数のメモリ・セルが、そのストリング又は装置の他のメモリ・セルと異なる閾電圧を有することになりかねない。この影響を克服するために、消去後に、ソフト−プログラミングを用いて、1又は複数のメモリ・セルの閾電圧が調整される。例えば、消去されたメモリ・セルの集団の閾電圧分布を狭める及び/又は上昇させるために、低いプログラム電圧が1又は複数のメモリ・セルに印加され、それらの閾電圧が上昇される。しかしながら、ソフト−プログラミングよれば、プログラム数と消去回数が増加する。さらに、消去速度が一様でないので、メモリ−ストリングの繰り返し寿命が短くなる可能性がある。
【0011】
したがって、従来技術の前述の問題を解決する不揮発性メモリ・システムとこれに関連する消去技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の概要)
本発明は、概略的には、より効率的かつ確実にメモリ・セルを消去する態様で、メモリ装置を消去する技術に関する。一実施形態によれば、消去オペレーション中に、NANDストリングの1又は複数のメモリ・セルのそれぞれの特徴と消去動作を考慮するシステム及び方法が得られる。
【0013】
一実施形態によれば、NANDストリングの1又は複数の部分に1又は複数の補正電圧を印加することによって、消去オペレーション中にNANDストリングの1又は複数のメモリ・セルの消去動作を少なくとも部分的に好適化することができる。補正電圧によって、1又は複数の消去電圧パルスの印加後に、メモリ・セルを消去する消去速度及び/又は消去量が、NANDストリング内の他のメモリ・セルと略等しくなる。
【0014】
消去電圧パルスの印加後に、メモリ・セルのフローティング・ゲートから転送される電荷の量、さらにこのメモリ・セルの消去に要する時間は、NANDストリング内に静電容量カップルされた電圧の影響を受ける。例えば、NANDストリングの端部メモリ・セル(例えば、図3、NANDストリング202のメモリ・セル222と228)は、そのフローティング・ゲートにおける実際の電荷が、隣接する選択ゲートからカップルされた電圧によって上昇される。この電圧の上昇のために、ストリングのウェル領域に高電位の消去電圧パルスが印加されるときに、メモリ・セルのトンネル酸化物層における有効電位が低下する。端部メモリ・セルのトンネル酸化物層における電位は他のメモリ・セルよりも低いので、端部メモリ・セルは、ストリングの他のメモリ・セルよりもその消去速度が遅く、又は消去量が少なくなる。他のメモリ・セル間で静電容量カップルされる追加的な電圧によっても、NANDストリング内の他のメモリ・セル間における消去動作と時間は不均一となる。NANDストリングの様々な部分に種々の補正電圧を印加することで、消去オペレーション中に、これらの静電容量カップルされた電圧の1又は複数を補正することができる。
【0015】
一実施形態では、不揮発性記憶要素のストリングの一部に少なくとも1つの補正電圧を印加して、ストリングの少なくとも1つのトランジスタから、ストリングの1又は複数の不揮発性記憶要素にカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するステップと、ストリングの少なくとも1つのサブ・セットの不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから電荷を転送し、不揮発性記憶要素のストリングを消去するステップを備えた不揮発性記憶装置の消去方法が提供される。補正電圧によって、消去速度がより早い又はより遅いメモリ・セルを補正することができる。一実施形態では、補正電圧を印加する前記ステップが、ストリングの第1不揮発性記憶要素の制御ゲートに第1電圧を印加するステップと、ストリングの第2不揮発性記憶要素の制御ゲートに第2電圧を印加するステップを備えていてもよい。第1及び第2不揮発性記憶要素に補正電圧を印加すると、消去電圧パルスの印加中に、各記憶要素のトンネル酸化物層における電位を等しくすることができる。
【0016】
一実施形態では、隣接する選択ゲートからセルにカップルされる正の電圧を少なくとも部分的に補正するために、NANDストリングの1又は複数の端部メモリ・セルに負の補正電圧が印加される。負の電圧は、選択ゲートから静電容量カップルされる正の電圧を打ち消し、消去電圧の印加時にセルのトンネル酸化物層において高い電位が生じることを可能とし、影響を受けたメモリ・セルの消去速度を増加させる。
【0017】
他の実施形態では、ストリングの1又は複数のメモリ・セルにカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するために、NANDストリングの1又は複数の内部メモリ・セルに正の補正電圧を印加する。内部メモリ・セルに印加された正の補正電圧によって、消去電圧が印加される時にセルのトンネル酸化物層における電位が低下し、その結果、セルの消去速度が低下してNANDストリングの他のメモリ・セルの消去速度とほぼ一致する。
【0018】
一実施形態では、1又は複数の隣接するトランジスタから各メモリ・セルにカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するために、補正電圧を印加するステップが、NANDストリングの各メモリ・セルに1又は複数の補正電圧を印加するステップを備えている。一実施形態では、メモリ・セルに印加される補正電圧の値を、選択したメモリ・セルの消去動作を基準メモリ・セルと比較することで選択することができる。
【0019】
一実施形態では、選択ゲートから隣接するメモリ・セルにカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するために、NANDストリングの1又は複数の選択ゲートに補正電圧を印加する。消去電圧パルスよりも低い電圧を選択ゲートに印加することができ、印加されたこの低い電圧の一部は、高い消去電圧の代わりに隣接するメモリ・セルにカップルされる。
【0020】
一実施形態によれば、不揮発性記憶要素のストリングを備えた不揮発性メモリ・システムが提供される。このシステムは、不揮発性記憶装置のストリングと通信するマネージング回路を備えている。不揮発性記憶装置のストリング内のセルの消去中に、マネージング回路がストリングの一部に少なくとも1つの補正電圧を印加することによって、複数の不揮発性記憶要素のうちの少なくとも1つのサブ・セットのフローティング・ゲートから電荷が転送されている間に、ストリングの少なくとも1つのトランジスタから1又は複数の不揮発性記憶要素にカップルされた電圧が少なくとも部分的に補正される。
【0021】
一実施形態によるシステムは、記憶要素のアレイとマネージング回路を備えている。マネージング回路は、専用のハードウェアを備え、及び/又は、1又は複数の記憶装置に記憶されたソフトウェアによってプログラミングされたハードウェアを備えていてもよい。記憶装置には、例えば不揮発性メモリ(例えばフラッシュ・メモリ、EEPROM、その他)、又はその他のメモリ装置を用いることができる。一実施形態では、マネージング回路は、制御装置と状態マシンを備えている。他の実施形態では、マネージング回路は状態マシンのみを備えており、制御装置を備えていない。マネージング回路は、様々な実施形態に関して上述した技術を実行することができる。いくつかの実施形態による方法は、状態マシンによって実行される。いくつかの実現においては、状態マシンは、記憶要素のアレイと共に1つの集積回路チップ上に搭載される。
【0022】
本発明のその他の特徴、態様、構成は、明細書、図面及び特許請求の範囲から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】NANDストリングの平面図である。
【図2】図1に示すNANDストリングの等価回路図である。
【図3】3個のNANDストリングを示す回路図である。
【図4】本発明の種々の実施形態うちの一実施形態の不揮発性メモリ・システムのブロック図である。
【図5】メモリ・アレイの構成例である。
【図6】実施形態に従って選択されたワード・ラインに印加できるプログラミング/ベリファイの電圧信号の例である。
【図7】プログラム・オペレーションを実行するフローチャートの例である。
【図8】1グループのメモリ・セルの閾分布の例である。
【図9】2ビットのデータを記憶する1グループのメモリ・セルの閾分布の例である。
【図10】従来技術による消去オペレーションを実行するためのバイアス条件の例を示す表である。
【図11】NANDストリングにおいて静電容量カップルされた種々の電圧を示すNANDストリングの断面図である。
【図12】従来技術による消去電圧パルスを受けた後のNANDストリングの選択メモリ・セルの、閾電圧分布の例である。
【図13】NANDストリングの選択メモリ・セルの平均閾電圧を、印加された消去電圧パルスの大きさの関数として示すグラフである。
【図14】一実施形態による、不揮発性記憶装置を消去する方法を示すフローチャートである。
【図15】図15aは、一実施形態による、消去バイアス条件と、1又は複数の補正電圧を印加する方法を示すフローチャートである。図15bは、一実施形態による、消去バイアス条件と補正電圧を示す表である。
【図16】消去オペレーション中において、一実施形態による種々の補正電圧が印加された場合における、消去後のNANDストリングの選択メモリ・セルの平均閾電圧の例を示すグラフである。
【図17】図17aは、一実施形態による、消去バイアス条件と、1又は複数の補正電圧を印加する方法を示すフローチャートである。図17bは、一実施形態による、消去バイアス条件と補正電圧を示す表である。
【図18】図18aは、一実施形態による、消去バイアス条件と、1又は複数の補正電圧を印加する方法を示すフローチャートである。図18bは、一実施形態による、消去バイアス条件と補正電圧を示す表である。
【図19】図19aは、一実施形態による、消去バイアス条件と、1又は複数の補正電圧を印加する方法を示すフローチャートである。図19bは、一実施形態による、消去バイアス条件と補正電圧を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図4は、本発明に使用できるフラッシュ・メモリ・システムの一実施形態のブロック図である。メモリ・セル・アレイ302は列制御回路304、行制御回路306、c−ソース制御回路310、p−ウェル制御回路308によって制御される。列制御回路304は、メモリ・セルに記憶されたデータを読み出すため、プログラム・オペレーション中におけるメモリ・セルの状態を決定するため、及び、プログラミング及び消去を促進又は禁止するビット・ラインの電位レベルを制御するために、メモリ・セル・アレイ302のビット・ラインに接続されている。行制御回路306は、ワード・ラインから1つを選択するため、読み出し電圧を印加するため、列制御回路304により制御されたビット・ライン電位レベルと組み合わせたプログラム電圧を印加するため、及び、消去電圧を印加するために、ワード・ラインに接続されている。c−ソース制御回路310は、メモリ・セルに接続されている共有ソース・ライン(図5中に「c−ソース」として示す)を制御する。p−ウェル制御回路308はp−ウェル電圧を制御する。
【0025】
メモリ・セルに記憶されたデータは、列制御回路304によって読み出され、データ入力/出力バッファ312を介して外部I/Oラインへ出力される。メモリ・セルに記憶されるべきプログラム・データは、外部I/Oラインを介してデータ入力/出力バッファ312に入力され、列制御回路304へ転送される。外部I/Oラインはコントローラ318に接続されている。
【0026】
フラッシュ・メモリ装置を制御するためのコマンド・データは、コントローラ318に入力される。コマンド・データは、どのオペレーションが要求されたかをフラッシュ・メモリに通知する。入力されたコマンドは、列制御回路304、行制御回路306、c−ソース制御回路310、p−ウェル制御回路308及びデータ入力/出力バッファ312を制御する状態マシン316に転送される。状態マシン316は、READY/BUSYまたはPASS/FAILといったフラッシュ・メモリの状態データを出力することができる。
【0027】
コントローラ318は、パーソナル・コンピュータ、デジタル・カメラ、パーソナル・デジタル・アシスタント等のホスト・システムに接続されているか、又は接続可能となっている。コントローラ318は、メモリ・アレイ302に対するデータの保存又は読み出しを行ったり、このようなデータの提供又は受信を行うコマンドを開始するホストと通信する。コントローラ318は、このようなコマンドを、状態マシン316と通信するコマンド回路314で読み取り及び実行可能なコマンド信号に変換する。一般的に、コントローラ318は、メモリ・アレイに対する書き込み又は読み出しが行われるユーザ・データのためのバッファ・メモリを内蔵している。
【0028】
1つの例示的なメモリ・システムは、コントローラ318を備えた1つの集積回路と、メモリ・アレイと関連する制御をそれぞれ備えた一又は複数の集積回路チップと、入力/出力状態マシン回路とを備えている。メモリ・アレイとシステムのコントローラ回路は、一又は複数の集積回路チップ上に一緒に搭載されることが多い。メモリ・システムはホスト・システムの一部として組み込まれてもよいし、ホスト・システム内に取り外し可能に挿入されるメモリ・カード(若しくは他のパッケージ)内に内蔵されていてもよい。このようなカードは、メモリ・システム全体(例えば、コントローラを含む)や、関連する周辺回路を備えた(1または複数の)メモリ・アレイ(ホスト内にコントローラ又は制御機能が組み込まれたもの)を備えていてもよい。したがって、コントローラは、ホスト内に組み込んだり、取り外し可能なメモリ・システム内に搭載することが可能である。
【0029】
図5には、メモリ・セル・アレイ302の構造の一例が示されている。一例として、1024個のブロックに区分されたNANDフラッシュEEPROMについて説明する。各ブロックに記憶されたデータは、同時に消去することができる。一実施形態では、ブロックが、同時に消去されるセルの最小単位である。この例では、各ブロック内に、8512個の列が存在する。ビット・ラインは偶数ビット・ライン(BLe)と奇数ビット・ライン(BLo)に区分されている。図5は、直列接続されることによってNANDストリングを形成している4つのメモリ・セルを示している。4つのセルは各NANDストリングに内蔵された状態で示されているが、4つ以上または4つ以下のセルを用いることもできる(例えば16個、32個、またはその他の個数)。NANDストリングの1端は、第1選択トランジスタ(選択ゲートとも呼ばれる)SGDを介して対応するビット・ラインに接続されており、他端は、第2選択トランジスタSGSを介してc−ソースに接続されている。
【0030】
一実施形態では、読み出し及びプログラミング・オペレーションの間に、4,256個のメモリ・セルが同時に選択される。選択されたメモリ・セルは同一のワード・ライン(例えばWL2−i)と同型のビット・ライン(例えば偶数ビット・ライン)を有している。したがって、532バイトのデータを同時に読み出し又はプログラミングすることができる。同時に読み出し又はプログラミングできるこれらの532バイトのデータによって論理ページが形成される。したがって、この例では、1つのブロックが少なくとも8ページを記憶できる。各メモリ・セルが2ビットのデータを記憶する場合には(例えばマルチ−レベル・セル)、1つのブロックに16ページが記憶される。
【0031】
読み出し及びベリファイ・オペレーションでは、選択されたブロックの選択ゲート(SGD及びSGS)が1又は複数の選択電圧にまで上昇される一方で、選択されたブロックの選択されていないワード・ライン(例えばWL0,WL1,WL3)は読み出しパス電圧(例えば4.5ボルト)にまで上昇されて、トランジスタをパス・ゲートとして動作させる。選択されたブロックの選択されたワード・ライン(例えばWL2)は基準電圧に接続される。この基準電圧のレベルは、対応するメモリ・セルの閾電圧がこのレベルよりも高いか低いかを判定するために、各読み出し及びベリファイ・オペレーションに対して指定されている。例えば、1ビットのメモリ・セルの読み出しオペレーションでは、閾電圧が0Vよりも高いかどうかを検出できるように、選択されたワード・ラインWL2は接地される。1ビットのメモリ・セルのベリファイ・オペレーションでは、プログラミングの進行に伴って、閾電圧が2.4Vに達したか否かが検出できるように、選択されたワード・ラインWL2が、例えば2.4Vに接続される。ソースとp−ウェルは、読み出し及びベリファイの間は0Vとされる。選択されたビット・ライン(BLe)は、例えば0.7Vのレベルにプレ−チャージされる。閾電圧が読み出し又はベリファイのレベルよりも高い場合には、関連する非伝導性メモリ・セルのために、対応するビット・ライン(BLe)の電位レベルは高レベルに維持される。これに対し、閾電圧が読み出し又はベリファイのレベルよりも低い場合には、伝導性メモリ・セルのために、対応するビット・ライン(BLe)の電位レベルが、例えば0.5V以下の低レベルにまで低下される。メモリ・セルの状態は、センス増幅器によって検出される。このセンス増幅器はビット・ラインに接続されており、発生したビット・ライン電圧を感知する。メモリ・セルがプログラミングされたか消去されたかの差は、フローティング・ゲートに最終的に負の電荷が保持されているか否かによって決まる。例えば、負の電荷がフローティング・ゲートに保持されていれば、閾電圧はより高くなり、トランジスタはオペレーションの拡張モードにあると考えられる。
【0032】
一例では、メモリ・セルをプログラミングする場合に、ドレインとp−ウェルが0ボルトの入力を受ける一方で、制御ゲートは上昇する一連のプログラミング・パルスの入力を受ける。一実施形態では、一連のパルスの大きさは、7〜20ボルトである。他の実施形態では、一連のパルスの範囲は異なっていてもよく、例えば、7ボルトよりも高い開始レベルを持っていてもよい。メモリ・セルのプログラミングの実施中においては、ベリファイ・オペレーションは、プログラミング・パルス同士の間の期間内に実行される。即ち、並列してプログラミングされる1グループ内の各セルのプログラミング・レベルが、各プログラミング・パルスの間に読み出され、プログラミング・レベルがプログラムミングされたベリファイ・レベルに達したか、または、越えたか否かが特定される。プログラミングをベリファイする1つの手段に、特定の比較点において伝導性を検査するものがある。例えばNANDセルにおいては、十分にプログラムミングできるようにベリファイされたセルは、後続の全てのプログラミング・パルスについてビット・ライン電圧を0からVdd(例えば2.5ボルト)に上昇させ、これらのセルのプログラミング工程を終了することによって、ロック・アウトされる。いくつかのケースでは、パルスの個数が限定される(例えば20個)。また、特定のメモリ・セルが直前のパルスによって完全にプログラミングされなかった場合には、エラーの可能性がある。いくつかの実現では、メモリ・セルはプログラミングの前に(ブロック単位又はその他の単位で)消去される。
【0033】
図6は、一実施形態におけるプログラム電圧信号を示している。この信号は、上昇する1セットのパルスを有する。パルスの大きさは、各パルスと共に所定のステップ・サイズずつ上昇する。複数ビットのデータを記憶するメモリ・セルを備えた一実施形態では、例えば、ステップ・サイズは0.2ボルト(又は0.4ボルト)である。各プログラム・パルスの間にはベリファイ・パルスが存在する。図6の信号は、4つの状態のメモリ・セルを想定しているため、3つのベリファイ・パルスを有している。例えば、プログラミング・パルス330とプログラミング・パルス332の間には、3つの連続したベリファイ・パルスが存在する。第1ベリファイ・パルス334は、0ボルトのベリファイ電圧レベルとして示されている。第1ベリファイ・パルスの後には、第2ベリファイ電圧レベルにある第2ベリファイ・パルス336が出力される。第2ベリファイ・パルス336の後には、第3ベリファイ電圧レベルにある第3ベリファイ・パルス338が出力される。データを8個の状態に記憶することができるマルチ状態メモリ・セルは、7個の比較点についてベリファイ・オペレーションを実行する必要がある。そのため、2つの連続するプログラミング・パルスの間で、7個のベリファイ・パルスが連続して出力されて、7個のベリファイ・オペレーションが7個のベリファイ・レベルで実行される。7個のベリファイ・オペレーションによれば、システムはメモリ・セルの状態を決定することができる。ベリファイに要する時間的負担を軽減する1つの方法は、より効率的なベリファイ工程を利用することである。このことは、例えば、2002年12月5日出願の米国特許出願第10/314,055号の「Smart Verify for Multi-State Memories」に開示されており、その全体は本願明細書に組み込まれる。
【0034】
上述した読み出し及びベリファイ・オペレーションは公知の技術に応じて実施される。そのため、説明した詳細の多くは、当業者が変更することが可能である。
【0035】
図7は、不揮発性メモリ・システムのプログラミング方法を説明するフローチャートである。当業者には明らかなように、本開示の範囲及び概念から逸脱しない限り、用途又は実施に応じて、各種ステップの改良、追加、又は削除を行うことが可能である。様々な実施においては、メモリ・セルはプログラミングの前に(ブロック単位又はその他の単位で)消去される。図7のステップ350では(さらに図4を参照)、コントローラ318によって、データ・ロード・コマンドが出力され、コマンド回路314に入力されることで、データ入力/出力バッファ312にデータを入力することが可能になる。入力されたデータはコマンドとして認識され、図示されないコマンド・ラッチ信号を介して、状態マシン316によってラッチされ、コマンド回路314に入力される。ステップ352では、ページ・アドレスを指定するアドレス・データが、コントローラ318から行制御装置306に入力される。入力されたデータはページ・アドレスとして認識され、状態マシン316によってラッチされ、コマンド回路314に入力されたアドレス・ラッチ信号によって有効化される。ステップ354では、532バイトのプログラム・データがデータ入力/出力バッファ312に入力される。532バイトのプログラム・データはここで説明する特定の実施に用いるものであり、これ以外の実施においては異なるサイズのプログラム・データを利用することができる。このデータは、選択されたビット・ラインのために、レジスタ内でラッチされる。いくつかの実施形態では、このデータは、ベリファイ・オペレーションに使用するための選択されたビット・ラインのために、第2レジスタ内でもラッチされる。ステップ356では、プログラム・コマンドが、コントローラ318によって出力され、データ入力/出力バッファ312に入力される。このコマンドは、コマンド回路314に入力されたコマンド・ラッチ信号を介して、状態マシン316によって、ラッチされる。
【0036】
ステップ358では、選択されたワード・ラインに印加されたプログラミング・パルス電圧レベルVpgmが、初期値として開始パルス(例えば12ボルト)にセットされ、状態マシン316に管理されるプログラム・カウンタPCが、初期値として0にセットされる。ステップ360では、プログラム電圧(Vpgm)パルスが、選択されたワード・ライン(例えば図3のWL2)に印加される。プログラミングされるメモリ・セルを含んだビット・ラインが、プログラミングを可能にするために接地され、一方で、他のビット・ラインは、プログラミング・パルスの印加中におけるプログラミングを禁止するために、Vddに接続される。
【0037】
ステップ362では、選択されたメモリ・セルの状態がベリファイされる。選択されたセルのターゲット閾電圧が適切なレベル(例えば論理0にプログラミングされたレベル、又はマルチ状態セルの特定の状態)に達したことが検出されると、その選択されたセルが、そのターゲット状態にプログラムされたとしてベリファイされる。閾電圧が適切なレベルに達していないことが検出された場合には、その選択されたセルは、ターゲット状態にプログラミングされたとベリファイされない。ステップ362でターゲット状態にプログラミングされたとベリファイされたセルは、それ以降のプログラミングから除外される。ステップ364では、プログラムされるべき全てのセルが、ベリファイされることによって対応する状態にプログラミングされたか否かが判定される。これは、例えば上述の状態を検出し発信するように設計された適切なデータ記憶レジスタをチェックすることによって行われる。選択された全てのセルが各ターゲット状態にプログラミング及びベリファイされていれば、プログラミング・プロセスは問題なく終了する。ステップ366で成功の状態が報告される。ステップ364にて、全てのメモリ・セルが上記のとおりベリファイされていないと判定された場合には、プログラミング・プロセスは継続される。ステップ368では、プログラム制限値について、プログラム・カウンタPCがチェックされる。プログラム制限値の一例は20である。プログラム・カウンタPCが20以上である場合には、ステップ370にて、プログラム・プロセスの失敗のフラグが立てられ、失敗の状態が報告される。プログラム・カウンタPCが20未満の場合には、ステップ372にて、Vpgmレベルがステップ・サイズだけ上昇し、プログラム・カウンタPCがインクリメントされる。ステップ372の後に、プロセスはステップ360へ戻り、次のVpgmプログラム・パルスが印加される。
【0038】
図7のフローチャートは、バイナリ記憶に適用できるシングル−パス・プログラミング方法を示している。例えば、マルチ−レベル記憶に適用できるツー−パス・プログラミング方法では、複数のプログラミング・ステップ又はベリファイ・ステップを、一連のフローチャートにおいて利用することができる。ステップ360〜372は、プログラミング・オペレーションの各パスに実行できる。第1パスでは、1又は複数のプログラム・パルスを印加でき、その結果がベリファイされて、セルが適切な中間状態にあるか否かが特定される。第2パスでは、1又は複数のプログラム・パルスを印加でき、その結果がベリファイされて、セルが適切な最終状態にあるか否かが特定される。
【0039】
成功したプログラム・プロセスの最後に、メモリ・セルの閾電圧は、プログラミングされたメモリ・セルの1または複数の閾電圧分の分布範囲内、あるいは、消去されたメモリ・セルの閾電圧の分布範囲内にあるはずである。図8は、各メモリ・セルが1ビットのデータを記憶する場合における、メモリ・セル・アレイの閾電圧分布を示している。図8は、消去されたメモリ・セルの閾電圧の第1分布380と、プログラムされたメモリ・セルの閾電圧の第2分布382を示している。一実施形態では、第1分布380内にある閾電圧レベルは負であって論理値「1」に対応しており、第2分布382内にある閾電圧レベルは正であって論理値「0」に対応している。
【0040】
図9は、各メモリ・セルが2ビットのデータを4つの物理状態に記憶する場合における、メモリ・セル・アレイの閾電圧分布を例示している。分布384は負の閾電圧レベルを有し、消去状態(「11」を記憶している状態)にあるセルの閾電圧の分布を示している。分布386は、第1プログラム状態にあり、「10」を記憶しているセルの閾電圧の分布を示している。分布388は、第2プログラム状態にあり、「00」を記憶しているセルの閾電圧の分布を示している。分布390は、第3プログラム状態にあり、「01」を記憶しているセルの閾電圧の分布を示している。この例では、単一のメモリ・セルに記憶されている2ビットのそれぞれが、異なる論理ページを形成している。即ち、各メモリ・セルに記憶された2ビットの各ビットは、異なる論理ページ・アドレスを有している。四角形で示したビットは、下位ページに対応している。円形で示したビットは、上位ページに対応している。一実施形態では、論理状態は、グレー・コード・シーケンスを利用して連続するメモリ・セルの物理状態に指定されているため、フローティング・ゲートの閾電圧が、誤って最近傍の閾電圧状態範囲にシフトした場合に、影響を受けるのは1ビットだけである。信頼性を改善するためには、各分布を縮小化(分布を狭める)ことが好ましい。これは、分布が縮小すると、読み出しマージンが拡大する(隣接する状態閾値分布の間の距離が拡大する)ためである。
【0041】
無論、4つよりも多い物理状態でメモリを動作させる場合には、メモリ・セルの定義された電圧閾ウインドウ内に、状態数と等しい数の閾電圧分布が存在する。さらに、特定のビットパターンが、各分布又は各物理状態に指定されているが、異なるビットパターンが指定されていてもよい。この場合には、プログラミングにより生じる状態は、図8、図9に示したものと異なっていてもよい。
【0042】
通常、並列してプログラミングされているセルは、ワード・ラインに沿った1つおきのセルである。例えば、図3は、1つのワード・ラインWL2に沿った非常に多くのセルのうちの3つのメモリ・セル224,244,252を示している。セル224,252を含む1セットの交互のセルは、論理ページ0,2(「偶数ページ」)のビットを記憶し、セル244を含む他のセットの交互のセルは論理ページ1、3(「奇数ページ」)のビットを記憶する。
【0043】
一実施形態では、消去オペレーションを実行するためのバイアス条件を例示した図10の表で説明しているように、ソース・ラインとビット・ラインが浮遊している間に、p−ウェルを消去電圧(例えば20ボルト)にまで上昇させるとともに、選択されたブロックのワード・ラインを設置するか、そのワード・ラインに0ボルトを印加することによってメモリ・セルを消去する。静電容量カップリングにより、未選択のワード・ライン(例えば、未選択であって消去すべきでないブロック内のワード・ライン)、ビット・ライン、選択ライン及びc−ソースも高い正電位(例えば20ボルト)にまで上昇される。これにより、強い電場が、選択されたブロックのメモリ・セルのトンネル酸化物層に印加され、フローティング・ゲートの電子が基板に放出されると、選択されたメモリ・セルのデータが消去される。十分な電子が、フローティング・ゲートからp−ウェル領域へ転送されると、選択されたセルの閾電圧が負になる。消去は、メモリ・アレイ全体、アレイの1又は複数のブロック、あるいは他のユニットのセルに対して実行することができる。
【0044】
図11は、8個のメモリ・セルを有するNANDストリングの断面図を示している。実施形態は、図11と及び8個のセルのNAND構造として示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、8個よりも少ないあるいは多いメモリ・セル(例えば4、12、16個又はそれ以上)を有する種々のNAND構造に用いることが可能である。図11に示すように、NANDストリングのトランジスタ(セル又はメモリ・セルとも呼ばれる)がp−ウェル領域440内に形成されている。各トランジスタ(402,404,406,408,410,412,414)は、制御ゲート(402c,404c,406c,408c,410,412c,414c)とフローティング・ゲート(402f,404f,406f,410f,412f,414f)から成る積層ゲート構造を備えている。フローティング・ゲートは酸化物又はその他の誘電性の化合膜の頂部にあるp−ウェルの表面に形成されている。制御ゲートは、フローティング・ゲートの上にあり、制御ゲートとフローティング・ゲートは、酸化層又はその他の分離誘電層によって分離されている。メモリ・セルの制御ゲートはワード・ラインWL0,WL1,WL2,WL3,WL4,WL5,WL6,WL7に接続されている。
N+拡散領域442は隣接する複数のセルにより共有されており、これによって、セルどうしが直列に接続されてNANDストリングを形成している。これらのN+拡散領域は、各セルのソースとドレインを形成している。N+拡散領域426はNANDストリングのビット・ラインに接続されており、N+拡散領域428は複数のNANDストリングの共通ソース・ラインに接続されている。
【0045】
静電容量カップリングのために、消去オペレーション中に高い消去電圧がp−ウェルに印加されると、選択ゲートSGDとSGSは高い正の電位にまで上昇される。p−ウェル、あるいはその一部に印加された消去電圧は、ウェル領域から各選択ゲートにカップルされる。例えば、NAND構造を有する多くの不揮発性メモリ・システムでは、約100%のp−ウェル電圧が、各選択ゲートにカップルされる。そのため、20Vの消去電圧パルスがp−ウェルに印加されると、約19〜20Vが各選択ゲートの制御ゲートにカップルされる。図11では、p−ウェルから選択ゲートへの電圧のカップリングを矢印430で表している。これよりも低い数値でも、同様のカップリング効果が、ストリングの各メモリ・セルで起こる。p−ウェル電圧の約50%が、一般的なNANDストリング内の各メモリ・セルにカップルされる。そのため、各メモリ・セルのフローティング・ゲートは、静電容量カップリングによって20Vの消去電圧パルスを印加された場合に、約10Vの電位にまで上昇される。このカップリング効果を矢印432で示す。トンネル酸化物における電位は、印加された消去電圧とフローティング・ゲートの電圧との間の電位差に等しいため、各メモリ・セルにカップルされた電圧によって、トンネル酸化物層で生成された電場の電位が低下する。例えば、20Vの消去電圧パルスを印加された場合における約10V(=20V−10V)の電位は、メモリ・セルのトンネル酸化物層内に存在し、各フローティング・ゲートから基板へ電子が引き付けられる。
【0046】
先に説明したp−ウェルに印加される消去電圧の静電容量カップリングに加えて、ストリングの各メモリ・セルでは、隣接するメモリ・セル及び/又はトランジスタからの何らかの静電容量カップリングが起こる。NANDストリングの最終メモリ・セル(例えば図11中のメモリ・セル402、416)、即ち、NANDストリングの最初と最後のワード・ライン(端部ワード・ライン)に接続されたメモリ・セルと、NANDストリングの選択ゲートに隣接したメモリ・セルでは、隣接する選択ゲートから電位の静電容量カップリングが起こる。図11では、この静電容量カップリングは、WL7の、メモリ・セルの選択ゲート420からフローティング・ゲート402fへの矢印434と、WL0の、メモリ・セルの選択ゲート422からフローティング・ゲート416fへのカップリングを示す矢印438で示されている。メモリ・セル402及び416にカップルされた電圧によって、これらのセルのトンネル誘電体(例えばトンネル酸化物)で生じた電場が、各選択ゲートの電圧量に比例して減少する。多くのNANDの実施では、選択ゲートからNANDストリングの最後のメモリ・セルへの静電容量カップリングは約5〜10%である。したがって、20ボルトの消去電圧がp−ウェル領域に印加され、この電圧の約50%が選択ゲートにカップルされた場合には(その結果、選択ゲートに約10ボルトの電荷が与えられる)、約0.5〜1ボルトが隣接するメモリ・セルのフローティング・ゲート(例えば416f、402f)にカップルされる。これにより、ストリングの端部のメモリ・セルのトンネル酸化物における電場が、ストリングの他のメモリ・セルよりも約0.5〜1ボルト低くなる。選択ゲートに隣接していないNANDストリングのメモリ・セル(即ち、NANDストリングの端部メモリ・セル以外の全てのメモリ・セル)のことを、ここではストリングの内部メモリ・セルという。図11では、NANDストリングの内部メモリ・セルは、メモリ・セル404,406,408,410,412,414である。
【0047】
ストリングの端部ワード・ラインのメモリ・セルのトンネル酸化物にかかる電場は、内部メモリ・セルの電場よりも小さいので、端部メモリ・セルの消去速度は内部メモリ・セルよりも遅い(あるいは、消去電圧パルスを印加したときに消去量が少なくなる)。先述したように、20ボルトの消去電圧を印加し、ウェル領域からフローティング・ゲートに50%の静電容量カップリングが生じるとした場合には、約10ボルトの電位がストリングの内部メモリ・セルのトンネル酸化物層に存在する。隣接する選択ゲートからの0.5〜1ボルトのカップリングにより、ワード・ライン0及び7のメモリ・セルは、実際には、約9〜9.5ボルトの(20ボルトから10.5〜11ボルトを減じたもの)対応するトンネル酸化物層における電位を有する。
【0048】
ストリングの端部メモリ・セルのトンネル酸化物層が低電位となるために、端部メモリ・セルは、1又は複数の消去電圧パルスの印加後の内部メモリ・セルのように消去されることはない(フローティング・ゲートからの電子の転送も少ない)。
【0049】
フローティング・ゲートに記憶された実際の電荷が所定レベルよりも低い場合には、NANDストリングのメモリ・セルは、消去されたとしてベリファイされる。NANDストリングの端部メモリ・セルのフローティング・ゲートへの追加的カップリングによって、消去オペレーションに要する総時間は、これら端部メモリ・セルを完全に消去するために増加する。例えば、NANDストリングの内部メモリ・セルは、N回の消去電圧パルスの印加により完全に消去することができるが、NANDストリングの端部メモリ・セルは、N+1回又はそれ以上の消去電圧パルスを印加しないと完全に消去することができない。端部メモリ・セルと比較した内部メモリ・セルの消去オペレーションの違いを図12に示す。
【0050】
図12は、単一の消去電圧パルスの印加後における閾電圧の分布を示している(低い全体VT値の類似する分布が、複数の消去電圧パルスの印加後に現れる)。分布502は、NANDストリングの内部メモリ・セル(例えば、図11のWL1〜WL6に接続されたメモリ・セル)の閾電圧分布を示している。分布504は、端部メモリ・セル(例えば、図11のWL0、WL7に接続されたメモリ・セル)の閾電圧分布を示している。図示するように、消去電圧パルスを1つだけ印加した後においては、内部ワード・ラインに接続されているメモリ・セルは、NANDストリングの端部ワード・ラインのメモリ・セルよりも消去され易い。図示の例では、平均すると、内部メモリ・セルの方が、端部メモリ・セルよりも約0.6ボルト多く消去されている。内部メモリ・セルの平均閾電圧は、端部ワード・ラインよりも低い。これは、それらのメモリ・セルのフローティング・ゲートから転送される電子数が、端部ワード・ラインに接続されたメモリ・セルよりも多いためである。
【0051】
図13は、NANDストリング(例えば、図10のNANDストリング)のメモリ・セルの平均閾電圧を、印加された消去電圧の関数として示したグラフである。16ボルトの消去電圧パルスの印加後における、WL0又はWL7に接続されたメモリ・セルの平均閾電圧は約−1ボルトである。NANDストリングの内部メモリ・セル(WL1〜WL6に接続されているメモリ・セル)の平均閾電圧は約−1.5ボルトである。第2消去電圧パルスの印加後では、WL0とWL7の平均閾電圧は約−1.5ボルトに低下するのに対し、WL1〜WL6に接続されたメモリ・セルの平均閾電圧は約−2.8ボルトである。さらに消去電圧パルスを印加した後には、内部メモリ・セルと端部メモリ・セルとの平均閾電圧の差が拡大する。この効果を、図13の、各消去電圧パルス印加後における内部メモリ・セルと端部メモリ・セルの平均閾電圧の差を表す第3ラインに示す。
【0052】
多数のメモリ・セルの消去のベリフィケーションが、NANDストリング・レベル又はそれより高いレベル(例えばブロック単位、あるいはストリングの他の単位で)で実行される場合には、メモリ・セル間における消去時間の違い又は動作の違いによって、特定のメモリ・セルに過剰ストレスや過剰消去が生じることがある。例えば、ストリングの端部メモリ・セルを十分に消去しようとすると、NANDストリングの内部メモリ・セルが過剰消去されてしまう。先述したように、内部メモリ・セルは端部メモリ・セルよりも速く消去される(1又は複数の消去電圧パルスを印加した状態では、フローティング・ゲートからより多くの電子が転送される)。NANDストリング・レベルでベリフィケーションが実行されると、ストリングの各メモリ・セルが消去されるまで、NANDストリングがp−ウェルにおける消去電圧パルスを受け続けることとなる。そのため、端部メモリ・セルよりも少ない消去電圧パルスの印加後に内部メモリ・セルを十分に消去できたとしても、ストリングの各メモリ・セルが消去されたとベリファイされるまでは、内部メモリ・セルはさらなる消去電圧パルスを受け続ける。
【0053】
過剰消去によって、内部メモリ・セルには必要以上のストレスがかかる。端部メモリ・セルの遅い消去時間によって生じる内部メモリ・セルの過剰消去は、内部メモリ・セルと不揮発性メモリ・システム全体の寿命を短縮させる。知られているように、トランジスタのトンネル酸化物層への高電位が加わると、酸化物材料にストレスがかかる。十分に高い電位をトンネル酸化物層に印加したり、低い電位を多数回にわたって印加することで、最終的に酸化物層の破壊に至る可能性がある。
【0054】
メモリ・セル間の消去オペレーションの違いも、消去オペレーション回数を増加させる。これは、消去後のメモリ・セルの閾電圧を変更するために、オペレーションが追加して実行されるためである。フラッシュ・メモリ・セルを消去する場合、消去すべき全てのセルが、予め決められている負の閾電圧範囲内の負の閾電圧を有する状態とすることが目標である。しかし、図示するように、消去オペレーションによって、負の閾電圧を有するいくつかのセルが、予め決められている負の閾電圧範囲を下回る場合がある。閾電圧が低すぎるメモリ・セルは、それ以降、正確にプログラミングされない。そのため、過剰消去された装置は、多くの場合、いわゆるソフト・プログラミングを受ける。予め決められた範囲の中でも著しく低い値の閾電圧を有するメモリ・セルは、閾電圧が予め決められた範囲内で上昇できるように、少量のプログラミングを受ける。ソフト・プログラム・プロセスは、追加のオペレーションの実行が必要であり、消去時間の増加によりメモリ・パフォーマンスが低下する。以下に説明する1又は複数の補正電圧を利用した実施形態では、消去プロセスにおいて、ソフト・プログラミングを少なくし、または、無くすことができる。ソフト・プログラミングの排除又は低減によってメモリ・パフォーマンスが向上する。
【0055】
一実施形態によれば、消去オペレーション中に、ストリングの1又は複数のメモリ・セルのフローティング・ゲートに静電容量カップルされた電圧を補正する目的で、1又は複数の補正電圧が、NANDストリングの1又は複数の箇所または部分に印加される。例えば、隣接する選択ゲートからNANDストリングの端部メモリ・セルにカップルされる追加の電圧を補正するために、1又は複数の補正電圧を、NANDストリングの一部に印加する。
【0056】
図14は、1又は複数のNANDストリングを有する1ユニットのメモリ・セルに対して消去オペレーションを実行する1実施形態を示すフローチャートである。図14は1つのNANDストリングに関して説明するものであるが、当業者は、1又は複数のブロックのように、より大きい単位でメモリ・セルを消去するために、複数のNANDストリングに対してフローチャートのオペレーションを並行的に実行できる。図14のフローチャートのオペレーションを、例示的に図11に示すNANDストリングと対応させて説明するが、このフローチャートは図11のNANDストリングに限定されるものではなく、他のNANDストリングや、あるいは任意の数のメモリ・セルを内蔵した直列接続型セル構造に利用することができる。
【0057】
ステップ552では、NANDストリングのビット・ラインとソース・ラインが浮遊する。ステップ554では、NANDストリングに対して消去バイアス条件が印加される。ステップ556では、1又は複数の補正電圧が、NANDストリングに対して印加され、隣接するトランジスタからNANDストリングの1又は複数のメモリ・セルにカップルされた電圧が補正される。ステップ554で印加されるバイアス条件は、ステップ556で印加される補正電圧によって決まるので、ステップ554と556は相関関係にある。そのため、いくつかの実施形態では、1又は複数の補正電圧を含むことが可能なNANDストリングに対して1セットのバイアス条件を印加するために、上記の2つのステップを同時に実行できる(しかし必須ではない)。
【0058】
バイアス条件と1又は複数の補正電圧をNANDストリングに印加した後に、ステップ558にて消去電圧パルスが印加される。消去電圧パルスを印加した後に、ステップ560にてベリフィケーションが実行され、これによってNANDストリングが十分に消去されたか否かが特定される。実施形態によっては、消去オペレーションの結果をベリファイするために、種々の手段用いることができる。例えば、ストリングの各メモリ・セルの閾電圧が既定の値より低いか否かを特定するために、NANDストリングを読み出してもよい。一実施形態においては、各メモリ・セルのゲートに対して、消去されたメモリ・セルをまでターン・オンさせるのに十分な電圧を印加するステップと、ソース・ラインからビット・ラインへ向かう方向におけるNANDストリングの伝導性を検査するステップとを含んでいてもよい。消去と消去ベリフィケーションについての詳細は、同時係属の米国特許出願番号第10/857,245号の「COMPREHENSIVE ERASE VERIFICATION FOR NON-VOLATILE MEMORY」に記載されている。この出願は、消去ベリフィケーション技術についてより広範囲に説明しており、この出願の全体は、本願明細書に組み込まれる。ステップ560でのベリフィケーションの結果が、ステップ562で決定されたとおりに得られた場合には、ステップ564においてNANDストリングに成功の状態が通知される。しかし、ステップ562にてNANDストリングを十分に消去さできなかったことが特定された場合には、ステップ566にてベリファイ・カウンタが所定値に対してチェックされる。ベリファイ・カウンタが所定値未満、例えば20である場合には、ステップ570にて、消去電圧パルス(Verase)が所定値だけインクリメントされ、ベリファイ・カウンタの値が1だけ増加される。次に、フローチャートのオペレーションは、ステップ552へ進む。ここで、バイアスと補正電圧が、再度、NANDストリングに印加され、その後追加の消去電圧パルスが印加される。ベリファイ・カウンタが所定値よりも大きい場合には、ステップ568で失敗の状態が報告される。
【0059】
様々な補正電圧をNANDストリングの様々な部分に印加することで、隣接するトランジスタから選択メモリ・セルのフローティング・ゲートにカップルされた電圧を補正できる。したがって、ステップ556では、これらの静電容量カップルされた電圧を補正するために、様々な補正電圧を印加することができる。図15a、図15bは、一実施形態のステップ554、556において印加できる1セットの補正電圧を示している。ステップ554で印加されるバイアス条件は、ステップ556で印加される補正電圧に若干依存するため、図15aは図14のステップ554と556を示している。図15aは、ステップ602にて、ソース側選択ゲートとドレイン側選択ゲートを浮遊させることで始まる。ステップ604では、NANDストリングの最初と最後のワード・ラインに0ボルトが印加される。ステップ606では、例えばNANDストリングの内部ワード・ラインといった、NANDストリングの残りのワード・ラインに1又は複数の補正電圧が印加される。一実施形態では、ステップ602〜606が同時に実行される。
【0060】
一実施形態では、ステップ606で印加される補正電圧は正の電圧である。NANDストリングの内部メモリ・セルのワード・ラインに正の電圧を印加することで、内部メモリ・セルのトンネル酸化物における電場が減少する。印加された補正電圧の一部は、内部メモリ・セルの制御ゲートからフローティング・ゲートにカップルされる。例えば図11では、ワード・ライン1〜6への補正電圧の印加によって、各制御ゲート404c〜414cからそれぞれ対応するフローティング・ゲート404f〜414fへの電圧のカップリングが起こる。
【0061】
内部メモリ・セルの酸化物における電場を、NANDストリングの端部メモリ・セルの電場と等しくするために、内部メモリ・セルの制御ゲートに印加された電圧を選択することができる。先述したように、隣接する選択ゲートからのカップリングによって、端部メモリ・セルの電荷を内部メモリ・セルの電荷よりも高くすることができる。例えば、多くの実施においては、約1ボルトの増加が予想される。したがって、内部メモリ・セルのワード・ラインに電圧を印加することで、このセルの電場を低下させ、選択ゲートからの静電容量カップリングによる低い電場を有する端部メモリ・セルのワード・ラインと一致させることができる。
【0062】
ワード・ラインに印加された電圧の一部のみが、制御ゲートからフローティング・ゲートにカップルされるので、ワード・ラインに印加された電圧を、カップル値がストリングの選択ゲートから端部メモリ・セルへのカップル値と等しくなるように選択することができる。使用しているパラメータ、動作条件、実電圧の変化のために、一様な電圧は実質的に一様な電圧を含むことができる。非限定的な例の方法によれば、一様な電圧は、いくつかの実施形態では0.1ボルト以下の値、別の実施形態では0.5ボルト以下の値を有する実質的に一様な電圧を含んでいてよい。選択ゲートから端部メモリ・セルに1ボルトの電圧がカップルされるとすると、ワード・ラインへの印加電圧を、内部メモリ・セルの制御ゲートからフローティング・ゲートに1ボルトがカップルされるように選択できる。多くのNANDストリングの実施においては、制御ゲートに印加された電圧の約50%が、対応するフローティング・ゲートにカップルされると予測できる。したがって、例にあるように、1ボルトを内部メモリ・セルのフローティング・ゲートにカップルさせる場合には、ワード・ラインを介して制御ゲートに約2ボルトを印加して、フローティング・ゲートにおける実際の電荷を1ボルト増加する。内部メモリ・セルのフローティング・ゲートにおける実際の電荷を増加してNANDストリングの端部メモリ・セルの実際の電荷とほぼ等しくすると、NANDストリングの全てのメモリ・セルのトンネル酸化物層において生成される電場が、p−ウェル消去電圧パルスを印加された状態でほぼ等しくなる。
【0063】
図16は、図15a、図15bのような補正電圧を印加する場合における、図11のようなNANDストリングのメモリ・セルの平均閾電圧を示すグラフである。図16に示した値は単なる例であり、必ずしも先述した例に対応していない。このグラフは、Y軸の閾電圧を、X軸に示す種々の補正電圧の関数として示している。WL0及びWL7のメモリ・セルは補正電圧を受けないため、内部メモリ・セルに補正電圧を印加した状態ではほぼ一定の電圧を有する。消去電圧パルスを印加すると、WL0及びWL7のメモリ・セルの平均閾電圧は約−1.5ボルトになる。内部メモリ・セルに補正電圧を印加しないと、シングル消去電圧パルスの印加後における内部メモリ・セルの平均閾電圧は約−2.6ボルトになる。内部メモリ・セルに約0.5ボルトの補正電圧を印加した場合には、WL1〜WL6のメモリ・セルの平均閾電圧が、消去電圧パルスの印加後に約−2ボルトに上昇する。WL1〜WL6のメモリ・セルの平均閾電圧は、これらのメモリ・セルに増加した補正電圧を印加することで減少する。内部メモリ・セルに1ボルトの補正電圧を印加する場合には、平均閾電圧が約−1.5ボルトまで減少する。これは、NANDストリングの端部メモリ・セルと同じ値である。したがって、内部メモリ・セルに1ボルトの補正電圧を印加する場合、これらのセルは、NANDストリングの端部メモリ・セルと略同じ速度で消去される。
【0064】
このように、内部メモリ・セルの消去速度を、NANDストリングの端部メモリ・セルの消去速度と一致するように低速化することで、内部メモリ・セルに対する過剰消去を回避することができる。これにより、NANDストリングの端部メモリ・セルと内部メモリ・セルの閾電圧分布を標準化する効果、又は、略一致させる効果が得られる。図15a、15bに示す補正電圧の印加によって、内部メモリ・セルの消去された閾電圧分布が正の方向に効果的にシフトされる。例えば、NANDストリングの消去時に、図15a、図15bの補正電圧が印加されると、図12の分布502が、分布504と実質的に一致するように右へシフトする。選択メモリ・セルの過剰消去の抑制又は防止に加え、補正を加えることで、ソフト・プログラミングをより少なくし、または、無くすことができる。消去中に印加される補正電圧によって各メモリ・セルの分布が標準化されるため、閾電圧がストリングの大半又は残りのメモリ・セルの範囲内に収まるように、選択メモリ・セルを、ソフト・プログラミングする必要はない。これによって消去時間が短縮され、メモリ・システムがプログラムされる。
【0065】
図17aと図17bは、隣接するトランジスタから静電容量カップルされる1又は複数の電圧を補正するために、消去オペレーション中にNANDストリングに印加可能な他の実施形態におけるバイアス条件と補正電圧のセットを示している。ステップ612では、NANDストリングのソース側選択ゲートとドレイン側選択ゲートが浮遊される。ステップ614では、NANDストリングの端部ワード・ラインに補正電圧が印加される。ステップ616では、NANDストリングの残りのワード・ラインに0ボルトが印加される。図17a、図17bに示す実施形態では、端部ワード・ラインのメモリ・セルにカップルされた電圧を直接補正するために、NANDストリングの内部ワード・ラインではなく端部ワード・ラインに補正電圧が印可される。
【0066】
一実施形態では、最初と最後のワード・ラインのメモリ・セルのトンネル酸化物における電場を増加させるために、NANDストリングの最初と最後のワード・ラインに負の補正電圧が印加される。先述したように、選択ゲートからの静電容量カップリングのために、最初と最後のメモリ・セルのトンネル酸化物における電場は、NANDストリングの残りのワード・ラインよりも低くなる。そのため、これらのメモリ・セルのワード・ラインに電圧を印加し、メモリ・セルの制御ゲートからフローティング・ゲートへカップルすることによって、隣接する選択ゲートからカップルされる電圧を補正することができる。先述したように、制御ゲートに印加される電圧の一部のみが、フローティング・ゲートにカップルされる。したがって、ワード・ラインに印加する電圧には、フローティング・ゲートにカップルされる電圧量が隣接する選択ゲートからカップルされる電圧量と等しくなり、極性が逆になるものを選択する必要がある。
【0067】
例えば、端部メモリ・セルの選択ゲートからフローティング・ゲートに+1ボルトがカップルされる場合は、端部メモリ・セルのワード・ラインに−2ボルトの電圧を印加して、約−1ボルトの電圧をフローティング・ゲートにカップルさせることができる。制御ゲートからカップルされた−1ボルトは、隣接する選択ゲートからカップルされた+1ボルトを補正する。これにより、端部メモリ・セルのトンネル酸化物における電場が、NANDストリングの他のメモリ・セルの電場と等しくなるように上昇する。これにより、ストリングの各メモリ・セルの複数のトンネル酸化物層における電位が等しくなり、各メモリ・セルで一様に消去が行われ、速度消去がほぼ等しくなる。パラメータ、動作条件、実電圧が異なるため、ここでいう等しい電位には、ほぼ等しい電位を含む。このほぼ等しい電位には、例えばいくつかの実施形態では0.1ボルト以内の電位、他の実施形態では0.5ボルト以内の電位が含まれる。図17a及び図17bの補正電圧を印加することにより、消去電圧印加後に、端部ワード・ラインのメモリ・セルの閾電圧分布が負の方向へシフトする。再び図12を参照すると、端部ワード・ラインへの負の補正電圧が印加により、分布504が、分布502と一致するように、効果的に左(負の方向)へシフトしている。
【0068】
NANDストリングの選択ゲートから端部ワード・ラインに静電容量カップルされた電圧に加えて、又は、この代わりに、隣接するトランジスタからカップルされた電圧をより精密に補正する静電容量カップルされた追加的な電圧が考えられる。図11は、矢印436によって、NANDストリングの個々のメモリ・セルのフローティング・ゲート間における追加的な静電容量カップリング効果を示している。例えば、WL0に接続されているメモリ・セル416のフローティング・ゲートにおける電圧の一部は、WL1に接続されているメモリ・セル414のフローティング・ゲートに静電容量カップルされる。メモリ・セル414のフローティング・ゲートにおける電圧の一部は、WL2に接続されているメモリ・セル412等のフローティング・ゲートにカップルされる。このカップリングは、追加して又はその代わりとして、矢印436で示すように、例えばメモリ・セル412からメモリ・セル414に向かう反対方向においても発生することができる。こうしたカップリング効果は、NANDストリングの全てのメモリ・セル間で様々なレベルにおいて発生する。隣接するフローティング・ゲートにカップルできる各フローティングにおける実際の電荷は、選択ゲートにおける実際の電荷未満である。したがって、各メモリ・セルのフローティング・ゲートの間でカップルされる電圧量は、隣接する選択ゲートから端部メモリ・セルにカップルされる電圧量よりも少ない。しかし、NANDストリングの各メモリ・セルは、フローティング・ゲートに若干異なる電荷を有していたり、このようなカップリングによって生じる異なる消去動作を有していてもよい。
【0069】
一実施形態によれば、各静電容量カップリング電圧を補正するために、補正電圧が、NANDストリングの1又は複数のメモリ・セルに印加される。例えば、NANDストリングの各メモリ・セルは、補正電圧を受けながら、消去電圧パルスを印加してNANDストリングの各メモリ・セルのトンネル酸化物にかかる電場を好適化することができる。こうすることで、各メモリ・セルを同じ速度によって同程度に消去するために、各メモリ・セルのトンネル酸化物層における電場電位を一様に生成することができる。一実施形態では、例えば、端部ワード・ラインに補正電圧を印加して、隣接する選択ゲートからのカップリング電圧を補正することができる。また、内部メモリ・セルに別の補正電圧を印加して、隣接したメモリ・セルからカップルされる電圧を補正することもできる。図11を参照すると、例えば、補正電圧をWL1に印加して、メモリ・セル416、412からメモリ・セル414にカップルされる電圧を補正できる。一実施形態では、この電圧は、先述の分析に基づいて、隣接するメモリ・セルからのカップリング割合が50%であると仮定して選択できる。
【0070】
他の実施形態では、選択されたワード・ラインに接続されているメモリ・セルの消去動作を、ストリングの他のメモリ・セルと比較することによって、NANDストリングの各ワード・ラインに印加される電圧を選択してもよい。例えば、ストリングの1つのメモリ・セルを基準メモリ・セルとして選択し、テスト中にその消去動作を決定することができる。残りのメモリ・セルは、増加した消去電圧パルスを印加した状態にてテストし、これを基準メモリ・セルと比較する。メモリ・セルの消去速度が基準メモリ・セルよりも遅い場合は、例えば負の補正電圧のように、適切な補正電圧を選択して、そのメモリ・セルのトンネル酸化物における電場を増加させることができる。メモリ・セルの消去速度が基準メモリ・セルよりも速い場合は、そのワード・ラインに対して正の補正電圧を選択して、メモリ・セルの消去速度を遅くし、基準メモリ・セルの消去速度と一致させることができる。当業者は、実施形態及び特定の実施におけるメモリ・セルの消去動作に従って、補正電圧を選択するための様々な技術を用いることができる。
【0071】
図18a、図18bは、NANDストリングの各メモリ・セルが、各ワード・ラインとメモリ・セルに対して個々に選択された補正電圧を受ける場合における、1セットの印加電圧と補正電圧を示している。補正電圧の選択には、メモリ・セルを基準セルと比較する、または、隣接するトランジスタとウェル領域の間で種々のカップリング速度を予測する計算を行う等、これまでに説明した種々の手段を用いることができる。ステップ622では、ソース側選択ゲートとドレイン側選択ゲートが浮遊される。ステップ624では、NANDストリングの各ワード・ラインにそれぞれの補正電圧が印加される。補正電圧を印加し、ソース側選択ゲートとドレイン側選択ゲートを浮遊させた後に、消去電圧パルスが印加される。各ワード・ラインにそれぞれの補正電圧を印加することで、各メモリ・セルの電圧分布がほぼ等しくなる。補正電圧の選択方法によって、図12に示す閾電圧分布は、種々の態様でシフトする。例えば、高速で消去されるメモリ・セルが基準メモリ・セルとして選択された場合は、NANDストリングの端部ワード・ラインの分布504は、左へシフトすると考えられる。これは、適切な補正電圧(例えば、トンネル酸化物における電位を増加させ、消去速度を増加させる負の補正電圧)を印加された場合に、これらのメモリ・セルがより速い速度で消去されるためである。しかし、基準の記憶要素として消去が遅いセルが選択された場合には、内部メモリ・セルの分布502が右へシフトすると考えられる。これは、適切な補正電圧(例えば、トンネル酸化物における電位を低下させ、消去速度を遅くする正の補正電圧)を印加された場合に、メモリ・セルの消去が遅くなるためである。一実施形態では、各補正電圧を選択することにより、分布502が右へシフトし、分布504が左へシフトして、その間の値で一致する。
【0072】
一実施形態では、図19a及び19bに示すように、1又は複数の静電容量カップルされた電圧を補正するために、NANDストリングの1又は複数の選択ゲートに補正電圧が印加される。補正電圧を選択ゲートに印加して、p−ウェル領域から選択ゲートにカップルされている電圧を補正することができる。選択ゲートに直接印加された電圧はその選択ゲートの制御ゲートに現れ、この電圧の一部がNANDストリングの隣接するメモリ・セルにカップルされる。選択ゲートに電圧が印加されるため、p−ウェル消去電圧は選択ゲートとカップルされない。そのため、消去電圧ではなく、印加された電圧の一部が、選択ゲートから隣接するメモリ・セルにカップルされる。
【0073】
図19aのステップ632では、NANDストリングの各ワード・ラインに0ボルトが印加される。ステップ634では、1又は複数の補正電圧がNANDストリングの選択ゲートに印加される。消去オペレーションのためにNANDストリングにバイアスし、補正電圧を印加した後に、NANDストリングに消去電圧パルスが印加される。様々な実施形態によれば、ステップ634において選択ゲートに種々の補正電圧を印加することができる。消去電圧パルスよりも低い正の補正電圧を印加することで、選択ゲートに隣接するメモリ・セルにカップルされる電圧量を少なくすることができる。値が0ボルトに近づくほど、隣接する選択ゲートにカップルされる電圧量が少なくなる。
【0074】
選択ゲートに0ボルトを印加した場合、選択ゲートには、隣接したメモリ・セルにカップルされる電圧は現れない。これは、様々なメモリ・セルの消去動作の好適化に代わる最良の代替方法であるかのように最初は思われる。しかし、選択ゲートのトンネル酸化物層における電位が高くなり過ぎないように、選択ゲートに印加する電圧の選択時には十分な注意が必要である。したがって、隣接したメモリ・セルへの全てのカップリングを防止するためには選択ゲートに0ボルトを印加することが望ましいと考えられるかもしれないが、こうした低電圧の印加により、トンネル酸化物層において高い電位が生じ、ダメージが生じて選択ゲートが損傷する可能性がある。例えば、80オングストロームのトンネル酸化物層を有する一実施形態では、選択ゲートのトンネル酸化物層において生じる電位は、最大で約4〜5ボルトに制限しなければならない。選択ゲートに印加する電圧が、層における電位(消去電圧パルス−補正電圧)が限度を超えて上昇するほど低い場合には、トランジスタが損傷する可能性がある。選択ゲートのトンネル酸化物層において生じる電位が約4〜5ボルトに制限され、約20ボルトの消去電圧パルスが印加される場合には、最小の補正電圧を約15〜16ボルトにする必要がある。補正電圧の一部は隣接するメモリ・セルにカップルされる。先述したように、選択ゲートに存在する約5〜10%の電圧が隣接するメモリ・セルにカップルされる。隣接するメモリ・セルにはまだいくらかの電圧がカップルされるが、15〜16ボルトのうちカップルされる部分は、補正電圧を印加しなかった場合に印加される消去電圧(20V)のカップルされる部分よりも小さい。そのため、端部メモリ・セルの消去動作を、NANDストリングの残りのメモリ・セルと共に十分な大きさにまで好適化することができる。
【0075】
種々の実施形態によれば、図15〜図19に関連して説明した1又は複数の方法を相互に組み合わせて用いることができる。例えば、NANDストリングの端部ワード・ラインと、NANDストリングの内部ワード・ラインの両方に、補正電圧を印加することができる。正の補正電圧を内部メモリ・セルに印加して、そのトンネル酸化物層における電場を低減する一方で、負の補正電圧をNANDストリングの端部ワード・ラインに印加して、そのトンネル酸化物層における電場を増加させ、これによって、各メモリ・セルの全ての電場を等しくすることができる。他の実施形態では、別個の補正電圧を、NANDストリングの選択ゲートに印加されている補正電圧と共に、NANDストリングの各ワード・ラインに印加することによって、各メモリ・セルの消去動作を好適化することができる。補正電圧(例えば15ボルト)を選択ゲートに印加することによって、隣接するメモリ・セルにカップルされる電圧をより低くすることができる。NANDストリングの端部ワード・ラインへの全てのカップリングを排除することはできないため、これらのワード・ラインは、以前として、残りのワード・ラインよりも少し遅い速度で消去を行うことになる。この消去動作の差を補正するには、NANDストリングの内部メモリ・セルにも補正電圧を印加して、NANDストリングの電場及び/又は端部ワード・ラインを減少させて、それらの電場を増加させる。
【0076】
上述の例は、NAND型フラッシュ・メモリに関するものである。しかし、本発明の原理は、現存の技術や開発中の新技術を含む、直列構造を利用した他のタイプの不揮発性メモリに適用することができる。
【0077】
先述の本発明の詳細な説明は、例証及び説明の目的で提示されたものである。上記に開示された形態に本発明を制限することを意図するものではない。上記の示唆を考慮した多くの改良及び応用が可能である。上記の実施形態は、当業者が、本発明を種々の実施形態において、及び、用途に応じて改良を加えて利用できるように、本発明の原理とその実用的な用途を最良に説明するために選択したものである。本発明の技術的範囲は、添付された特許請求の範囲によって定義される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、不揮発性メモリ装置を消去するための半導体技術に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
半導体メモリ装置は、様々な電子装置に使用されてポピュラーになっている。例えば、不揮発性半導体メモリは、携帯電話、デジタル・カメラ、パーソナル・デジタル・アシスタント、モバイル・コンピュータ装置、非モバイル・コンピュータ装置、及びその他の装置に使用されている。最も普及している不揮発性半導体メモリは、Electrical Erasable Programmable Read Only Memory(EEPROM)とフラッシュ・メモリである。
【0003】
一例のフラッシュ・メモリ・システムは、2個の選択ゲートの間で直列に配置された複数のトランジスタを内蔵したNAND構造を使用する。直列したトランジスタと選択ゲートはNANDストリングと呼ばれる。図1は、1個のNANDストリングを示す平面図である。図2はその等価回路である。図1、図2に示すNANDストリングは、第1選択ゲート120と第2選択ゲート122の間で直列配置された4個のトランジスタ100、102、104、106を備えている。選択ゲート120はNANDストリングをビット・ライン126に接続する。選択ゲート122はNANDストリングをソース・ライン128に接続する。選択ゲート120は、制御ゲート120CGに適切な電圧が印加されることで制御される。選択ゲート122は、制御ゲート122CGに適切な電圧が印加されることで制御される。各トランジスタ100、102、104、106は、メモリ・セルのゲート要素を形成する制御ゲートとフローティング・ゲートを有している。例えば、トランジスタ100は、制御ゲート100CGとフローティング・ゲート100FGを有している。トランジスタ102は、制御ゲート102CGとフローティング・ゲート102FGを有している。トランジスタ104は、制御ゲート104CGとフローティング・ゲート104FGを有している。トランジスタ106は、制御ゲート106CGとフローティング・ゲート106FGを有している。制御ゲート100CGはワード・ラインWL3に接続されており、制御ゲート102CGはワード・ラインWL2に接続されており、制御ゲート104CGはワード・ラインWL1に接続されており、制御ゲート106CGはワード・ラインWL0に接続されている。
【0004】
図1、図2はNANDストリング内の4個のメモリ・セルを示すが、この4個のトランジスタの使用態様は、単に一例として提供されるものである。NANDストリングは、4個未満または4個より多いメモリ・セルを有していてもよい。例えば、NANDストリングが、8個、16個、32個、その他の個数のメモリ・セルを有していてもよい。ここでの説明は、NANDストリング内のメモリ・セルの数を何ら限定するものではない。
【0005】
NAND構造を使用したフラッシュ・メモリ・システムの一般的な構造は、複数のNANDストリングを有している。例えば、図3は、より多くのNANDストリングを有するメモリ・アレイのうちの3つのNANDストリング202、204、206を示している。図3の各NANDストリングは、2個の選択トランジスタと4個のメモリ・セルを有している。例えば、NANDストリング202は、選択トランジスタ220、230と、メモリ・セル222、224、226、228を有している。NANDストリング204は、選択トランジスタ240、250と、メモリ・セル242、244、246、248を有している。各ストリングは、選択トランジスタ(例えば選択トランジスタ230、250)によってソース・ラインに接続されている。選択ラインSGSは、ソース側選択ゲートの制御に使用される。いくつかのNANDストリングは、選択ラインSGDによって制御される選択トランジスタ220、240等によって、各ビット・ラインに接続されている。他の実施形態においては、選択ラインは必ずしも共通化されている必要はない。ワード・ラインWL3は、メモリ・セル222、242の制御ゲートに接続されている。ワード・ラインWL2は、メモリ・セル224、244の制御ゲートに接続されている。ワード・ラインWL1は、メモリ・セル226、246の制御ゲートに接続されている。ワード・ラインWL0は、メモリ・セル228、248の制御ゲートに接続されている。図に見られるように、ビット・ラインと各NANDストリングはメモリ・セル・アレイの列群を備えている。ワード・ライン(WL3,WL2,WL1,WL0)はアレイの行群を備えている。各ワード・ラインは、行内の各メモリ・セルの制御ゲートを接続している。例えば、ワード・ラインWL2はメモリ・セル224、244、252の制御ゲートに接続されている。
【0006】
各メモリ・セルはデータ(アナログ又はデジタル)を記憶できる。1ビットのデジタル・データを記憶する場合、メモリ・セルの使用可能な閾電圧の範囲が、論理データ「1」と「0」に割り当てられた2つの範囲に分割される。NAND型フラッシュ・メモリの一例では、メモリ・セルの消去後に閾電圧が負になり、論理値「1」と定義される。プログラム・オペレーション後の閾電圧は正になり、論理値「0」と定義される。閾電圧が負であるときに制御ゲートに0ボルトが印加されて読み出しが試みられた場合、メモリ・セルがターン・オンされて、論理値1が記憶されていることが示される。閾電圧が正であるときに制御ゲートに0ボルトが印加されて読み出し動作が試みられた場合は、メモリ・セルがターン・オンされず、このことは論理値0が記憶されたことを示す。メモリ・セルは、例えば、複数ビットのデジタル・データのような複数レベルの情報を記憶することもできる。複数レベルのデータを記憶する場合には、使用可能な閾電圧の範囲が多数のデータのレベルに分割される。例えば、4つのレベルの情報を記憶する場合には、データ値「11」,「10」,「01」,「00」の4つの閾電圧範囲が割り当てられる。NAND型メモリの一例では、消去オペレーション後の閾電圧は負であり、「11」と定義される。異なる3個の正の閾電圧が、「10」,「01」,「00」に使用される。
【0007】
NAND型フラッシュ・メモリとそのオペレーションに関する例が、以下の米国特許/特許出願によって提供されている。米国特許第5,570,315号、米国特許第5,774,397号、米国特許第6,046,935号、米国特許第6,456,528号、米国特許出願番号第09/893277号(公報第US2003/0002348号):これら出願の全体は、参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【0008】
フラッシュ・メモリ・セルをプログラミングする場合、プログラム電圧が制御ゲートに(選択したワード・ラインを介して)印加され、ビット・ラインが接地される。p−ウェルからの電子がフローティング・ゲートに注入される。電子がフローティング・ゲートに蓄積されると、フローティング・ゲートは負にチャージされ、セルの閾電圧が上昇する。フローティング・ゲートのチャージとセルの閾電圧は、記憶されたデータに関する特定の状態を示すことができる。
【0009】
NAND型フラッシュ・メモリのセルを消去するために、電子は、各メモリ・セルのフローティング・ゲートからウェル領域及び基板に移される。一般に、電子を各メモリ・セルのフローティング・ゲートから離してウェル領域に引き寄せるために、1又は複数の高圧(例えば−16〜20V)の消去パルスがウェル領域に印加される。各メモリ・セルのワード・ラインは接地されるか、又は0Vを供給され、これによって、電子を引き付けるための高電位がトンネル酸化物領域にかけて生成される。消去電圧パルスの印加後にNANDストリングの各メモリ・セルが消去されなかった場合には、全てのメモリ・セルが消去されるまでパルスのサイズが増加され、NANDストリングに再度、印加される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術を使用した一般的な消去オペレーションでは、NANDストリング内のメモリ・セル毎に消去速度が異なってしまう。いくつかのメモリ・セルは、他のメモリ・セルよりも高速又は低速で、消去状態のターゲット閾電圧レベルに達する可能性がある。このことにより、高速で消去されるメモリ・セルは、NANDストリングのセルの消去に時間がかかるメモリ・セルが十分に消去されるまで消去電圧にさらされるので、過剰消去となる場合がある。さらに、一般的な消去オペレーションでは、NANDストリングの複数のメモリ・セルの間で閾電圧が一致しなくなる場合がある。即ち、1又は複数の消去電圧パルスの印加後に、NANDストリングの1又は複数のメモリ・セルが、そのストリング又は装置の他のメモリ・セルと異なる閾電圧を有することになりかねない。この影響を克服するために、消去後に、ソフト−プログラミングを用いて、1又は複数のメモリ・セルの閾電圧が調整される。例えば、消去されたメモリ・セルの集団の閾電圧分布を狭める及び/又は上昇させるために、低いプログラム電圧が1又は複数のメモリ・セルに印加され、それらの閾電圧が上昇される。しかしながら、ソフト−プログラミングよれば、プログラム数と消去回数が増加する。さらに、消去速度が一様でないので、メモリ−ストリングの繰り返し寿命が短くなる可能性がある。
【0011】
したがって、従来技術の前述の問題を解決する不揮発性メモリ・システムとこれに関連する消去技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の概要)
本発明は、概略的には、より効率的かつ確実にメモリ・セルを消去する態様で、メモリ装置を消去する技術に関する。一実施形態によれば、消去オペレーション中に、NANDストリングの1又は複数のメモリ・セルのそれぞれの特徴と消去動作を考慮するシステム及び方法が得られる。
【0013】
一実施形態によれば、NANDストリングの1又は複数の部分に1又は複数の補正電圧を印加することによって、消去オペレーション中にNANDストリングの1又は複数のメモリ・セルの消去動作を少なくとも部分的に好適化することができる。補正電圧によって、1又は複数の消去電圧パルスの印加後に、メモリ・セルを消去する消去速度及び/又は消去量が、NANDストリング内の他のメモリ・セルと略等しくなる。
【0014】
消去電圧パルスの印加後に、メモリ・セルのフローティング・ゲートから転送される電荷の量、さらにこのメモリ・セルの消去に要する時間は、NANDストリング内に静電容量カップルされた電圧の影響を受ける。例えば、NANDストリングの端部メモリ・セル(例えば、図3、NANDストリング202のメモリ・セル222と228)は、そのフローティング・ゲートにおける実際の電荷が、隣接する選択ゲートからカップルされた電圧によって上昇される。この電圧の上昇のために、ストリングのウェル領域に高電位の消去電圧パルスが印加されるときに、メモリ・セルのトンネル酸化物層における有効電位が低下する。端部メモリ・セルのトンネル酸化物層における電位は他のメモリ・セルよりも低いので、端部メモリ・セルは、ストリングの他のメモリ・セルよりもその消去速度が遅く、又は消去量が少なくなる。他のメモリ・セル間で静電容量カップルされる追加的な電圧によっても、NANDストリング内の他のメモリ・セル間における消去動作と時間は不均一となる。NANDストリングの様々な部分に種々の補正電圧を印加することで、消去オペレーション中に、これらの静電容量カップルされた電圧の1又は複数を補正することができる。
【0015】
一実施形態では、不揮発性記憶要素のストリングの一部に少なくとも1つの補正電圧を印加して、ストリングの少なくとも1つのトランジスタから、ストリングの1又は複数の不揮発性記憶要素にカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するステップと、ストリングの少なくとも1つのサブ・セットの不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから電荷を転送し、不揮発性記憶要素のストリングを消去するステップを備えた不揮発性記憶装置の消去方法が提供される。補正電圧によって、消去速度がより早い又はより遅いメモリ・セルを補正することができる。一実施形態では、補正電圧を印加する前記ステップが、ストリングの第1不揮発性記憶要素の制御ゲートに第1電圧を印加するステップと、ストリングの第2不揮発性記憶要素の制御ゲートに第2電圧を印加するステップを備えていてもよい。第1及び第2不揮発性記憶要素に補正電圧を印加すると、消去電圧パルスの印加中に、各記憶要素のトンネル酸化物層における電位を等しくすることができる。
【0016】
一実施形態では、隣接する選択ゲートからセルにカップルされる正の電圧を少なくとも部分的に補正するために、NANDストリングの1又は複数の端部メモリ・セルに負の補正電圧が印加される。負の電圧は、選択ゲートから静電容量カップルされる正の電圧を打ち消し、消去電圧の印加時にセルのトンネル酸化物層において高い電位が生じることを可能とし、影響を受けたメモリ・セルの消去速度を増加させる。
【0017】
他の実施形態では、ストリングの1又は複数のメモリ・セルにカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するために、NANDストリングの1又は複数の内部メモリ・セルに正の補正電圧を印加する。内部メモリ・セルに印加された正の補正電圧によって、消去電圧が印加される時にセルのトンネル酸化物層における電位が低下し、その結果、セルの消去速度が低下してNANDストリングの他のメモリ・セルの消去速度とほぼ一致する。
【0018】
一実施形態では、1又は複数の隣接するトランジスタから各メモリ・セルにカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するために、補正電圧を印加するステップが、NANDストリングの各メモリ・セルに1又は複数の補正電圧を印加するステップを備えている。一実施形態では、メモリ・セルに印加される補正電圧の値を、選択したメモリ・セルの消去動作を基準メモリ・セルと比較することで選択することができる。
【0019】
一実施形態では、選択ゲートから隣接するメモリ・セルにカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するために、NANDストリングの1又は複数の選択ゲートに補正電圧を印加する。消去電圧パルスよりも低い電圧を選択ゲートに印加することができ、印加されたこの低い電圧の一部は、高い消去電圧の代わりに隣接するメモリ・セルにカップルされる。
【0020】
一実施形態によれば、不揮発性記憶要素のストリングを備えた不揮発性メモリ・システムが提供される。このシステムは、不揮発性記憶装置のストリングと通信するマネージング回路を備えている。不揮発性記憶装置のストリング内のセルの消去中に、マネージング回路がストリングの一部に少なくとも1つの補正電圧を印加することによって、複数の不揮発性記憶要素のうちの少なくとも1つのサブ・セットのフローティング・ゲートから電荷が転送されている間に、ストリングの少なくとも1つのトランジスタから1又は複数の不揮発性記憶要素にカップルされた電圧が少なくとも部分的に補正される。
【0021】
一実施形態によるシステムは、記憶要素のアレイとマネージング回路を備えている。マネージング回路は、専用のハードウェアを備え、及び/又は、1又は複数の記憶装置に記憶されたソフトウェアによってプログラミングされたハードウェアを備えていてもよい。記憶装置には、例えば不揮発性メモリ(例えばフラッシュ・メモリ、EEPROM、その他)、又はその他のメモリ装置を用いることができる。一実施形態では、マネージング回路は、制御装置と状態マシンを備えている。他の実施形態では、マネージング回路は状態マシンのみを備えており、制御装置を備えていない。マネージング回路は、様々な実施形態に関して上述した技術を実行することができる。いくつかの実施形態による方法は、状態マシンによって実行される。いくつかの実現においては、状態マシンは、記憶要素のアレイと共に1つの集積回路チップ上に搭載される。
【0022】
本発明のその他の特徴、態様、構成は、明細書、図面及び特許請求の範囲から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】NANDストリングの平面図である。
【図2】図1に示すNANDストリングの等価回路図である。
【図3】3個のNANDストリングを示す回路図である。
【図4】本発明の種々の実施形態うちの一実施形態の不揮発性メモリ・システムのブロック図である。
【図5】メモリ・アレイの構成例である。
【図6】実施形態に従って選択されたワード・ラインに印加できるプログラミング/ベリファイの電圧信号の例である。
【図7】プログラム・オペレーションを実行するフローチャートの例である。
【図8】1グループのメモリ・セルの閾分布の例である。
【図9】2ビットのデータを記憶する1グループのメモリ・セルの閾分布の例である。
【図10】従来技術による消去オペレーションを実行するためのバイアス条件の例を示す表である。
【図11】NANDストリングにおいて静電容量カップルされた種々の電圧を示すNANDストリングの断面図である。
【図12】従来技術による消去電圧パルスを受けた後のNANDストリングの選択メモリ・セルの、閾電圧分布の例である。
【図13】NANDストリングの選択メモリ・セルの平均閾電圧を、印加された消去電圧パルスの大きさの関数として示すグラフである。
【図14】一実施形態による、不揮発性記憶装置を消去する方法を示すフローチャートである。
【図15】図15aは、一実施形態による、消去バイアス条件と、1又は複数の補正電圧を印加する方法を示すフローチャートである。図15bは、一実施形態による、消去バイアス条件と補正電圧を示す表である。
【図16】消去オペレーション中において、一実施形態による種々の補正電圧が印加された場合における、消去後のNANDストリングの選択メモリ・セルの平均閾電圧の例を示すグラフである。
【図17】図17aは、一実施形態による、消去バイアス条件と、1又は複数の補正電圧を印加する方法を示すフローチャートである。図17bは、一実施形態による、消去バイアス条件と補正電圧を示す表である。
【図18】図18aは、一実施形態による、消去バイアス条件と、1又は複数の補正電圧を印加する方法を示すフローチャートである。図18bは、一実施形態による、消去バイアス条件と補正電圧を示す表である。
【図19】図19aは、一実施形態による、消去バイアス条件と、1又は複数の補正電圧を印加する方法を示すフローチャートである。図19bは、一実施形態による、消去バイアス条件と補正電圧を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図4は、本発明に使用できるフラッシュ・メモリ・システムの一実施形態のブロック図である。メモリ・セル・アレイ302は列制御回路304、行制御回路306、c−ソース制御回路310、p−ウェル制御回路308によって制御される。列制御回路304は、メモリ・セルに記憶されたデータを読み出すため、プログラム・オペレーション中におけるメモリ・セルの状態を決定するため、及び、プログラミング及び消去を促進又は禁止するビット・ラインの電位レベルを制御するために、メモリ・セル・アレイ302のビット・ラインに接続されている。行制御回路306は、ワード・ラインから1つを選択するため、読み出し電圧を印加するため、列制御回路304により制御されたビット・ライン電位レベルと組み合わせたプログラム電圧を印加するため、及び、消去電圧を印加するために、ワード・ラインに接続されている。c−ソース制御回路310は、メモリ・セルに接続されている共有ソース・ライン(図5中に「c−ソース」として示す)を制御する。p−ウェル制御回路308はp−ウェル電圧を制御する。
【0025】
メモリ・セルに記憶されたデータは、列制御回路304によって読み出され、データ入力/出力バッファ312を介して外部I/Oラインへ出力される。メモリ・セルに記憶されるべきプログラム・データは、外部I/Oラインを介してデータ入力/出力バッファ312に入力され、列制御回路304へ転送される。外部I/Oラインはコントローラ318に接続されている。
【0026】
フラッシュ・メモリ装置を制御するためのコマンド・データは、コントローラ318に入力される。コマンド・データは、どのオペレーションが要求されたかをフラッシュ・メモリに通知する。入力されたコマンドは、列制御回路304、行制御回路306、c−ソース制御回路310、p−ウェル制御回路308及びデータ入力/出力バッファ312を制御する状態マシン316に転送される。状態マシン316は、READY/BUSYまたはPASS/FAILといったフラッシュ・メモリの状態データを出力することができる。
【0027】
コントローラ318は、パーソナル・コンピュータ、デジタル・カメラ、パーソナル・デジタル・アシスタント等のホスト・システムに接続されているか、又は接続可能となっている。コントローラ318は、メモリ・アレイ302に対するデータの保存又は読み出しを行ったり、このようなデータの提供又は受信を行うコマンドを開始するホストと通信する。コントローラ318は、このようなコマンドを、状態マシン316と通信するコマンド回路314で読み取り及び実行可能なコマンド信号に変換する。一般的に、コントローラ318は、メモリ・アレイに対する書き込み又は読み出しが行われるユーザ・データのためのバッファ・メモリを内蔵している。
【0028】
1つの例示的なメモリ・システムは、コントローラ318を備えた1つの集積回路と、メモリ・アレイと関連する制御をそれぞれ備えた一又は複数の集積回路チップと、入力/出力状態マシン回路とを備えている。メモリ・アレイとシステムのコントローラ回路は、一又は複数の集積回路チップ上に一緒に搭載されることが多い。メモリ・システムはホスト・システムの一部として組み込まれてもよいし、ホスト・システム内に取り外し可能に挿入されるメモリ・カード(若しくは他のパッケージ)内に内蔵されていてもよい。このようなカードは、メモリ・システム全体(例えば、コントローラを含む)や、関連する周辺回路を備えた(1または複数の)メモリ・アレイ(ホスト内にコントローラ又は制御機能が組み込まれたもの)を備えていてもよい。したがって、コントローラは、ホスト内に組み込んだり、取り外し可能なメモリ・システム内に搭載することが可能である。
【0029】
図5には、メモリ・セル・アレイ302の構造の一例が示されている。一例として、1024個のブロックに区分されたNANDフラッシュEEPROMについて説明する。各ブロックに記憶されたデータは、同時に消去することができる。一実施形態では、ブロックが、同時に消去されるセルの最小単位である。この例では、各ブロック内に、8512個の列が存在する。ビット・ラインは偶数ビット・ライン(BLe)と奇数ビット・ライン(BLo)に区分されている。図5は、直列接続されることによってNANDストリングを形成している4つのメモリ・セルを示している。4つのセルは各NANDストリングに内蔵された状態で示されているが、4つ以上または4つ以下のセルを用いることもできる(例えば16個、32個、またはその他の個数)。NANDストリングの1端は、第1選択トランジスタ(選択ゲートとも呼ばれる)SGDを介して対応するビット・ラインに接続されており、他端は、第2選択トランジスタSGSを介してc−ソースに接続されている。
【0030】
一実施形態では、読み出し及びプログラミング・オペレーションの間に、4,256個のメモリ・セルが同時に選択される。選択されたメモリ・セルは同一のワード・ライン(例えばWL2−i)と同型のビット・ライン(例えば偶数ビット・ライン)を有している。したがって、532バイトのデータを同時に読み出し又はプログラミングすることができる。同時に読み出し又はプログラミングできるこれらの532バイトのデータによって論理ページが形成される。したがって、この例では、1つのブロックが少なくとも8ページを記憶できる。各メモリ・セルが2ビットのデータを記憶する場合には(例えばマルチ−レベル・セル)、1つのブロックに16ページが記憶される。
【0031】
読み出し及びベリファイ・オペレーションでは、選択されたブロックの選択ゲート(SGD及びSGS)が1又は複数の選択電圧にまで上昇される一方で、選択されたブロックの選択されていないワード・ライン(例えばWL0,WL1,WL3)は読み出しパス電圧(例えば4.5ボルト)にまで上昇されて、トランジスタをパス・ゲートとして動作させる。選択されたブロックの選択されたワード・ライン(例えばWL2)は基準電圧に接続される。この基準電圧のレベルは、対応するメモリ・セルの閾電圧がこのレベルよりも高いか低いかを判定するために、各読み出し及びベリファイ・オペレーションに対して指定されている。例えば、1ビットのメモリ・セルの読み出しオペレーションでは、閾電圧が0Vよりも高いかどうかを検出できるように、選択されたワード・ラインWL2は接地される。1ビットのメモリ・セルのベリファイ・オペレーションでは、プログラミングの進行に伴って、閾電圧が2.4Vに達したか否かが検出できるように、選択されたワード・ラインWL2が、例えば2.4Vに接続される。ソースとp−ウェルは、読み出し及びベリファイの間は0Vとされる。選択されたビット・ライン(BLe)は、例えば0.7Vのレベルにプレ−チャージされる。閾電圧が読み出し又はベリファイのレベルよりも高い場合には、関連する非伝導性メモリ・セルのために、対応するビット・ライン(BLe)の電位レベルは高レベルに維持される。これに対し、閾電圧が読み出し又はベリファイのレベルよりも低い場合には、伝導性メモリ・セルのために、対応するビット・ライン(BLe)の電位レベルが、例えば0.5V以下の低レベルにまで低下される。メモリ・セルの状態は、センス増幅器によって検出される。このセンス増幅器はビット・ラインに接続されており、発生したビット・ライン電圧を感知する。メモリ・セルがプログラミングされたか消去されたかの差は、フローティング・ゲートに最終的に負の電荷が保持されているか否かによって決まる。例えば、負の電荷がフローティング・ゲートに保持されていれば、閾電圧はより高くなり、トランジスタはオペレーションの拡張モードにあると考えられる。
【0032】
一例では、メモリ・セルをプログラミングする場合に、ドレインとp−ウェルが0ボルトの入力を受ける一方で、制御ゲートは上昇する一連のプログラミング・パルスの入力を受ける。一実施形態では、一連のパルスの大きさは、7〜20ボルトである。他の実施形態では、一連のパルスの範囲は異なっていてもよく、例えば、7ボルトよりも高い開始レベルを持っていてもよい。メモリ・セルのプログラミングの実施中においては、ベリファイ・オペレーションは、プログラミング・パルス同士の間の期間内に実行される。即ち、並列してプログラミングされる1グループ内の各セルのプログラミング・レベルが、各プログラミング・パルスの間に読み出され、プログラミング・レベルがプログラムミングされたベリファイ・レベルに達したか、または、越えたか否かが特定される。プログラミングをベリファイする1つの手段に、特定の比較点において伝導性を検査するものがある。例えばNANDセルにおいては、十分にプログラムミングできるようにベリファイされたセルは、後続の全てのプログラミング・パルスについてビット・ライン電圧を0からVdd(例えば2.5ボルト)に上昇させ、これらのセルのプログラミング工程を終了することによって、ロック・アウトされる。いくつかのケースでは、パルスの個数が限定される(例えば20個)。また、特定のメモリ・セルが直前のパルスによって完全にプログラミングされなかった場合には、エラーの可能性がある。いくつかの実現では、メモリ・セルはプログラミングの前に(ブロック単位又はその他の単位で)消去される。
【0033】
図6は、一実施形態におけるプログラム電圧信号を示している。この信号は、上昇する1セットのパルスを有する。パルスの大きさは、各パルスと共に所定のステップ・サイズずつ上昇する。複数ビットのデータを記憶するメモリ・セルを備えた一実施形態では、例えば、ステップ・サイズは0.2ボルト(又は0.4ボルト)である。各プログラム・パルスの間にはベリファイ・パルスが存在する。図6の信号は、4つの状態のメモリ・セルを想定しているため、3つのベリファイ・パルスを有している。例えば、プログラミング・パルス330とプログラミング・パルス332の間には、3つの連続したベリファイ・パルスが存在する。第1ベリファイ・パルス334は、0ボルトのベリファイ電圧レベルとして示されている。第1ベリファイ・パルスの後には、第2ベリファイ電圧レベルにある第2ベリファイ・パルス336が出力される。第2ベリファイ・パルス336の後には、第3ベリファイ電圧レベルにある第3ベリファイ・パルス338が出力される。データを8個の状態に記憶することができるマルチ状態メモリ・セルは、7個の比較点についてベリファイ・オペレーションを実行する必要がある。そのため、2つの連続するプログラミング・パルスの間で、7個のベリファイ・パルスが連続して出力されて、7個のベリファイ・オペレーションが7個のベリファイ・レベルで実行される。7個のベリファイ・オペレーションによれば、システムはメモリ・セルの状態を決定することができる。ベリファイに要する時間的負担を軽減する1つの方法は、より効率的なベリファイ工程を利用することである。このことは、例えば、2002年12月5日出願の米国特許出願第10/314,055号の「Smart Verify for Multi-State Memories」に開示されており、その全体は本願明細書に組み込まれる。
【0034】
上述した読み出し及びベリファイ・オペレーションは公知の技術に応じて実施される。そのため、説明した詳細の多くは、当業者が変更することが可能である。
【0035】
図7は、不揮発性メモリ・システムのプログラミング方法を説明するフローチャートである。当業者には明らかなように、本開示の範囲及び概念から逸脱しない限り、用途又は実施に応じて、各種ステップの改良、追加、又は削除を行うことが可能である。様々な実施においては、メモリ・セルはプログラミングの前に(ブロック単位又はその他の単位で)消去される。図7のステップ350では(さらに図4を参照)、コントローラ318によって、データ・ロード・コマンドが出力され、コマンド回路314に入力されることで、データ入力/出力バッファ312にデータを入力することが可能になる。入力されたデータはコマンドとして認識され、図示されないコマンド・ラッチ信号を介して、状態マシン316によってラッチされ、コマンド回路314に入力される。ステップ352では、ページ・アドレスを指定するアドレス・データが、コントローラ318から行制御装置306に入力される。入力されたデータはページ・アドレスとして認識され、状態マシン316によってラッチされ、コマンド回路314に入力されたアドレス・ラッチ信号によって有効化される。ステップ354では、532バイトのプログラム・データがデータ入力/出力バッファ312に入力される。532バイトのプログラム・データはここで説明する特定の実施に用いるものであり、これ以外の実施においては異なるサイズのプログラム・データを利用することができる。このデータは、選択されたビット・ラインのために、レジスタ内でラッチされる。いくつかの実施形態では、このデータは、ベリファイ・オペレーションに使用するための選択されたビット・ラインのために、第2レジスタ内でもラッチされる。ステップ356では、プログラム・コマンドが、コントローラ318によって出力され、データ入力/出力バッファ312に入力される。このコマンドは、コマンド回路314に入力されたコマンド・ラッチ信号を介して、状態マシン316によって、ラッチされる。
【0036】
ステップ358では、選択されたワード・ラインに印加されたプログラミング・パルス電圧レベルVpgmが、初期値として開始パルス(例えば12ボルト)にセットされ、状態マシン316に管理されるプログラム・カウンタPCが、初期値として0にセットされる。ステップ360では、プログラム電圧(Vpgm)パルスが、選択されたワード・ライン(例えば図3のWL2)に印加される。プログラミングされるメモリ・セルを含んだビット・ラインが、プログラミングを可能にするために接地され、一方で、他のビット・ラインは、プログラミング・パルスの印加中におけるプログラミングを禁止するために、Vddに接続される。
【0037】
ステップ362では、選択されたメモリ・セルの状態がベリファイされる。選択されたセルのターゲット閾電圧が適切なレベル(例えば論理0にプログラミングされたレベル、又はマルチ状態セルの特定の状態)に達したことが検出されると、その選択されたセルが、そのターゲット状態にプログラムされたとしてベリファイされる。閾電圧が適切なレベルに達していないことが検出された場合には、その選択されたセルは、ターゲット状態にプログラミングされたとベリファイされない。ステップ362でターゲット状態にプログラミングされたとベリファイされたセルは、それ以降のプログラミングから除外される。ステップ364では、プログラムされるべき全てのセルが、ベリファイされることによって対応する状態にプログラミングされたか否かが判定される。これは、例えば上述の状態を検出し発信するように設計された適切なデータ記憶レジスタをチェックすることによって行われる。選択された全てのセルが各ターゲット状態にプログラミング及びベリファイされていれば、プログラミング・プロセスは問題なく終了する。ステップ366で成功の状態が報告される。ステップ364にて、全てのメモリ・セルが上記のとおりベリファイされていないと判定された場合には、プログラミング・プロセスは継続される。ステップ368では、プログラム制限値について、プログラム・カウンタPCがチェックされる。プログラム制限値の一例は20である。プログラム・カウンタPCが20以上である場合には、ステップ370にて、プログラム・プロセスの失敗のフラグが立てられ、失敗の状態が報告される。プログラム・カウンタPCが20未満の場合には、ステップ372にて、Vpgmレベルがステップ・サイズだけ上昇し、プログラム・カウンタPCがインクリメントされる。ステップ372の後に、プロセスはステップ360へ戻り、次のVpgmプログラム・パルスが印加される。
【0038】
図7のフローチャートは、バイナリ記憶に適用できるシングル−パス・プログラミング方法を示している。例えば、マルチ−レベル記憶に適用できるツー−パス・プログラミング方法では、複数のプログラミング・ステップ又はベリファイ・ステップを、一連のフローチャートにおいて利用することができる。ステップ360〜372は、プログラミング・オペレーションの各パスに実行できる。第1パスでは、1又は複数のプログラム・パルスを印加でき、その結果がベリファイされて、セルが適切な中間状態にあるか否かが特定される。第2パスでは、1又は複数のプログラム・パルスを印加でき、その結果がベリファイされて、セルが適切な最終状態にあるか否かが特定される。
【0039】
成功したプログラム・プロセスの最後に、メモリ・セルの閾電圧は、プログラミングされたメモリ・セルの1または複数の閾電圧分の分布範囲内、あるいは、消去されたメモリ・セルの閾電圧の分布範囲内にあるはずである。図8は、各メモリ・セルが1ビットのデータを記憶する場合における、メモリ・セル・アレイの閾電圧分布を示している。図8は、消去されたメモリ・セルの閾電圧の第1分布380と、プログラムされたメモリ・セルの閾電圧の第2分布382を示している。一実施形態では、第1分布380内にある閾電圧レベルは負であって論理値「1」に対応しており、第2分布382内にある閾電圧レベルは正であって論理値「0」に対応している。
【0040】
図9は、各メモリ・セルが2ビットのデータを4つの物理状態に記憶する場合における、メモリ・セル・アレイの閾電圧分布を例示している。分布384は負の閾電圧レベルを有し、消去状態(「11」を記憶している状態)にあるセルの閾電圧の分布を示している。分布386は、第1プログラム状態にあり、「10」を記憶しているセルの閾電圧の分布を示している。分布388は、第2プログラム状態にあり、「00」を記憶しているセルの閾電圧の分布を示している。分布390は、第3プログラム状態にあり、「01」を記憶しているセルの閾電圧の分布を示している。この例では、単一のメモリ・セルに記憶されている2ビットのそれぞれが、異なる論理ページを形成している。即ち、各メモリ・セルに記憶された2ビットの各ビットは、異なる論理ページ・アドレスを有している。四角形で示したビットは、下位ページに対応している。円形で示したビットは、上位ページに対応している。一実施形態では、論理状態は、グレー・コード・シーケンスを利用して連続するメモリ・セルの物理状態に指定されているため、フローティング・ゲートの閾電圧が、誤って最近傍の閾電圧状態範囲にシフトした場合に、影響を受けるのは1ビットだけである。信頼性を改善するためには、各分布を縮小化(分布を狭める)ことが好ましい。これは、分布が縮小すると、読み出しマージンが拡大する(隣接する状態閾値分布の間の距離が拡大する)ためである。
【0041】
無論、4つよりも多い物理状態でメモリを動作させる場合には、メモリ・セルの定義された電圧閾ウインドウ内に、状態数と等しい数の閾電圧分布が存在する。さらに、特定のビットパターンが、各分布又は各物理状態に指定されているが、異なるビットパターンが指定されていてもよい。この場合には、プログラミングにより生じる状態は、図8、図9に示したものと異なっていてもよい。
【0042】
通常、並列してプログラミングされているセルは、ワード・ラインに沿った1つおきのセルである。例えば、図3は、1つのワード・ラインWL2に沿った非常に多くのセルのうちの3つのメモリ・セル224,244,252を示している。セル224,252を含む1セットの交互のセルは、論理ページ0,2(「偶数ページ」)のビットを記憶し、セル244を含む他のセットの交互のセルは論理ページ1、3(「奇数ページ」)のビットを記憶する。
【0043】
一実施形態では、消去オペレーションを実行するためのバイアス条件を例示した図10の表で説明しているように、ソース・ラインとビット・ラインが浮遊している間に、p−ウェルを消去電圧(例えば20ボルト)にまで上昇させるとともに、選択されたブロックのワード・ラインを設置するか、そのワード・ラインに0ボルトを印加することによってメモリ・セルを消去する。静電容量カップリングにより、未選択のワード・ライン(例えば、未選択であって消去すべきでないブロック内のワード・ライン)、ビット・ライン、選択ライン及びc−ソースも高い正電位(例えば20ボルト)にまで上昇される。これにより、強い電場が、選択されたブロックのメモリ・セルのトンネル酸化物層に印加され、フローティング・ゲートの電子が基板に放出されると、選択されたメモリ・セルのデータが消去される。十分な電子が、フローティング・ゲートからp−ウェル領域へ転送されると、選択されたセルの閾電圧が負になる。消去は、メモリ・アレイ全体、アレイの1又は複数のブロック、あるいは他のユニットのセルに対して実行することができる。
【0044】
図11は、8個のメモリ・セルを有するNANDストリングの断面図を示している。実施形態は、図11と及び8個のセルのNAND構造として示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、8個よりも少ないあるいは多いメモリ・セル(例えば4、12、16個又はそれ以上)を有する種々のNAND構造に用いることが可能である。図11に示すように、NANDストリングのトランジスタ(セル又はメモリ・セルとも呼ばれる)がp−ウェル領域440内に形成されている。各トランジスタ(402,404,406,408,410,412,414)は、制御ゲート(402c,404c,406c,408c,410,412c,414c)とフローティング・ゲート(402f,404f,406f,410f,412f,414f)から成る積層ゲート構造を備えている。フローティング・ゲートは酸化物又はその他の誘電性の化合膜の頂部にあるp−ウェルの表面に形成されている。制御ゲートは、フローティング・ゲートの上にあり、制御ゲートとフローティング・ゲートは、酸化層又はその他の分離誘電層によって分離されている。メモリ・セルの制御ゲートはワード・ラインWL0,WL1,WL2,WL3,WL4,WL5,WL6,WL7に接続されている。
N+拡散領域442は隣接する複数のセルにより共有されており、これによって、セルどうしが直列に接続されてNANDストリングを形成している。これらのN+拡散領域は、各セルのソースとドレインを形成している。N+拡散領域426はNANDストリングのビット・ラインに接続されており、N+拡散領域428は複数のNANDストリングの共通ソース・ラインに接続されている。
【0045】
静電容量カップリングのために、消去オペレーション中に高い消去電圧がp−ウェルに印加されると、選択ゲートSGDとSGSは高い正の電位にまで上昇される。p−ウェル、あるいはその一部に印加された消去電圧は、ウェル領域から各選択ゲートにカップルされる。例えば、NAND構造を有する多くの不揮発性メモリ・システムでは、約100%のp−ウェル電圧が、各選択ゲートにカップルされる。そのため、20Vの消去電圧パルスがp−ウェルに印加されると、約19〜20Vが各選択ゲートの制御ゲートにカップルされる。図11では、p−ウェルから選択ゲートへの電圧のカップリングを矢印430で表している。これよりも低い数値でも、同様のカップリング効果が、ストリングの各メモリ・セルで起こる。p−ウェル電圧の約50%が、一般的なNANDストリング内の各メモリ・セルにカップルされる。そのため、各メモリ・セルのフローティング・ゲートは、静電容量カップリングによって20Vの消去電圧パルスを印加された場合に、約10Vの電位にまで上昇される。このカップリング効果を矢印432で示す。トンネル酸化物における電位は、印加された消去電圧とフローティング・ゲートの電圧との間の電位差に等しいため、各メモリ・セルにカップルされた電圧によって、トンネル酸化物層で生成された電場の電位が低下する。例えば、20Vの消去電圧パルスを印加された場合における約10V(=20V−10V)の電位は、メモリ・セルのトンネル酸化物層内に存在し、各フローティング・ゲートから基板へ電子が引き付けられる。
【0046】
先に説明したp−ウェルに印加される消去電圧の静電容量カップリングに加えて、ストリングの各メモリ・セルでは、隣接するメモリ・セル及び/又はトランジスタからの何らかの静電容量カップリングが起こる。NANDストリングの最終メモリ・セル(例えば図11中のメモリ・セル402、416)、即ち、NANDストリングの最初と最後のワード・ライン(端部ワード・ライン)に接続されたメモリ・セルと、NANDストリングの選択ゲートに隣接したメモリ・セルでは、隣接する選択ゲートから電位の静電容量カップリングが起こる。図11では、この静電容量カップリングは、WL7の、メモリ・セルの選択ゲート420からフローティング・ゲート402fへの矢印434と、WL0の、メモリ・セルの選択ゲート422からフローティング・ゲート416fへのカップリングを示す矢印438で示されている。メモリ・セル402及び416にカップルされた電圧によって、これらのセルのトンネル誘電体(例えばトンネル酸化物)で生じた電場が、各選択ゲートの電圧量に比例して減少する。多くのNANDの実施では、選択ゲートからNANDストリングの最後のメモリ・セルへの静電容量カップリングは約5〜10%である。したがって、20ボルトの消去電圧がp−ウェル領域に印加され、この電圧の約50%が選択ゲートにカップルされた場合には(その結果、選択ゲートに約10ボルトの電荷が与えられる)、約0.5〜1ボルトが隣接するメモリ・セルのフローティング・ゲート(例えば416f、402f)にカップルされる。これにより、ストリングの端部のメモリ・セルのトンネル酸化物における電場が、ストリングの他のメモリ・セルよりも約0.5〜1ボルト低くなる。選択ゲートに隣接していないNANDストリングのメモリ・セル(即ち、NANDストリングの端部メモリ・セル以外の全てのメモリ・セル)のことを、ここではストリングの内部メモリ・セルという。図11では、NANDストリングの内部メモリ・セルは、メモリ・セル404,406,408,410,412,414である。
【0047】
ストリングの端部ワード・ラインのメモリ・セルのトンネル酸化物にかかる電場は、内部メモリ・セルの電場よりも小さいので、端部メモリ・セルの消去速度は内部メモリ・セルよりも遅い(あるいは、消去電圧パルスを印加したときに消去量が少なくなる)。先述したように、20ボルトの消去電圧を印加し、ウェル領域からフローティング・ゲートに50%の静電容量カップリングが生じるとした場合には、約10ボルトの電位がストリングの内部メモリ・セルのトンネル酸化物層に存在する。隣接する選択ゲートからの0.5〜1ボルトのカップリングにより、ワード・ライン0及び7のメモリ・セルは、実際には、約9〜9.5ボルトの(20ボルトから10.5〜11ボルトを減じたもの)対応するトンネル酸化物層における電位を有する。
【0048】
ストリングの端部メモリ・セルのトンネル酸化物層が低電位となるために、端部メモリ・セルは、1又は複数の消去電圧パルスの印加後の内部メモリ・セルのように消去されることはない(フローティング・ゲートからの電子の転送も少ない)。
【0049】
フローティング・ゲートに記憶された実際の電荷が所定レベルよりも低い場合には、NANDストリングのメモリ・セルは、消去されたとしてベリファイされる。NANDストリングの端部メモリ・セルのフローティング・ゲートへの追加的カップリングによって、消去オペレーションに要する総時間は、これら端部メモリ・セルを完全に消去するために増加する。例えば、NANDストリングの内部メモリ・セルは、N回の消去電圧パルスの印加により完全に消去することができるが、NANDストリングの端部メモリ・セルは、N+1回又はそれ以上の消去電圧パルスを印加しないと完全に消去することができない。端部メモリ・セルと比較した内部メモリ・セルの消去オペレーションの違いを図12に示す。
【0050】
図12は、単一の消去電圧パルスの印加後における閾電圧の分布を示している(低い全体VT値の類似する分布が、複数の消去電圧パルスの印加後に現れる)。分布502は、NANDストリングの内部メモリ・セル(例えば、図11のWL1〜WL6に接続されたメモリ・セル)の閾電圧分布を示している。分布504は、端部メモリ・セル(例えば、図11のWL0、WL7に接続されたメモリ・セル)の閾電圧分布を示している。図示するように、消去電圧パルスを1つだけ印加した後においては、内部ワード・ラインに接続されているメモリ・セルは、NANDストリングの端部ワード・ラインのメモリ・セルよりも消去され易い。図示の例では、平均すると、内部メモリ・セルの方が、端部メモリ・セルよりも約0.6ボルト多く消去されている。内部メモリ・セルの平均閾電圧は、端部ワード・ラインよりも低い。これは、それらのメモリ・セルのフローティング・ゲートから転送される電子数が、端部ワード・ラインに接続されたメモリ・セルよりも多いためである。
【0051】
図13は、NANDストリング(例えば、図10のNANDストリング)のメモリ・セルの平均閾電圧を、印加された消去電圧の関数として示したグラフである。16ボルトの消去電圧パルスの印加後における、WL0又はWL7に接続されたメモリ・セルの平均閾電圧は約−1ボルトである。NANDストリングの内部メモリ・セル(WL1〜WL6に接続されているメモリ・セル)の平均閾電圧は約−1.5ボルトである。第2消去電圧パルスの印加後では、WL0とWL7の平均閾電圧は約−1.5ボルトに低下するのに対し、WL1〜WL6に接続されたメモリ・セルの平均閾電圧は約−2.8ボルトである。さらに消去電圧パルスを印加した後には、内部メモリ・セルと端部メモリ・セルとの平均閾電圧の差が拡大する。この効果を、図13の、各消去電圧パルス印加後における内部メモリ・セルと端部メモリ・セルの平均閾電圧の差を表す第3ラインに示す。
【0052】
多数のメモリ・セルの消去のベリフィケーションが、NANDストリング・レベル又はそれより高いレベル(例えばブロック単位、あるいはストリングの他の単位で)で実行される場合には、メモリ・セル間における消去時間の違い又は動作の違いによって、特定のメモリ・セルに過剰ストレスや過剰消去が生じることがある。例えば、ストリングの端部メモリ・セルを十分に消去しようとすると、NANDストリングの内部メモリ・セルが過剰消去されてしまう。先述したように、内部メモリ・セルは端部メモリ・セルよりも速く消去される(1又は複数の消去電圧パルスを印加した状態では、フローティング・ゲートからより多くの電子が転送される)。NANDストリング・レベルでベリフィケーションが実行されると、ストリングの各メモリ・セルが消去されるまで、NANDストリングがp−ウェルにおける消去電圧パルスを受け続けることとなる。そのため、端部メモリ・セルよりも少ない消去電圧パルスの印加後に内部メモリ・セルを十分に消去できたとしても、ストリングの各メモリ・セルが消去されたとベリファイされるまでは、内部メモリ・セルはさらなる消去電圧パルスを受け続ける。
【0053】
過剰消去によって、内部メモリ・セルには必要以上のストレスがかかる。端部メモリ・セルの遅い消去時間によって生じる内部メモリ・セルの過剰消去は、内部メモリ・セルと不揮発性メモリ・システム全体の寿命を短縮させる。知られているように、トランジスタのトンネル酸化物層への高電位が加わると、酸化物材料にストレスがかかる。十分に高い電位をトンネル酸化物層に印加したり、低い電位を多数回にわたって印加することで、最終的に酸化物層の破壊に至る可能性がある。
【0054】
メモリ・セル間の消去オペレーションの違いも、消去オペレーション回数を増加させる。これは、消去後のメモリ・セルの閾電圧を変更するために、オペレーションが追加して実行されるためである。フラッシュ・メモリ・セルを消去する場合、消去すべき全てのセルが、予め決められている負の閾電圧範囲内の負の閾電圧を有する状態とすることが目標である。しかし、図示するように、消去オペレーションによって、負の閾電圧を有するいくつかのセルが、予め決められている負の閾電圧範囲を下回る場合がある。閾電圧が低すぎるメモリ・セルは、それ以降、正確にプログラミングされない。そのため、過剰消去された装置は、多くの場合、いわゆるソフト・プログラミングを受ける。予め決められた範囲の中でも著しく低い値の閾電圧を有するメモリ・セルは、閾電圧が予め決められた範囲内で上昇できるように、少量のプログラミングを受ける。ソフト・プログラム・プロセスは、追加のオペレーションの実行が必要であり、消去時間の増加によりメモリ・パフォーマンスが低下する。以下に説明する1又は複数の補正電圧を利用した実施形態では、消去プロセスにおいて、ソフト・プログラミングを少なくし、または、無くすことができる。ソフト・プログラミングの排除又は低減によってメモリ・パフォーマンスが向上する。
【0055】
一実施形態によれば、消去オペレーション中に、ストリングの1又は複数のメモリ・セルのフローティング・ゲートに静電容量カップルされた電圧を補正する目的で、1又は複数の補正電圧が、NANDストリングの1又は複数の箇所または部分に印加される。例えば、隣接する選択ゲートからNANDストリングの端部メモリ・セルにカップルされる追加の電圧を補正するために、1又は複数の補正電圧を、NANDストリングの一部に印加する。
【0056】
図14は、1又は複数のNANDストリングを有する1ユニットのメモリ・セルに対して消去オペレーションを実行する1実施形態を示すフローチャートである。図14は1つのNANDストリングに関して説明するものであるが、当業者は、1又は複数のブロックのように、より大きい単位でメモリ・セルを消去するために、複数のNANDストリングに対してフローチャートのオペレーションを並行的に実行できる。図14のフローチャートのオペレーションを、例示的に図11に示すNANDストリングと対応させて説明するが、このフローチャートは図11のNANDストリングに限定されるものではなく、他のNANDストリングや、あるいは任意の数のメモリ・セルを内蔵した直列接続型セル構造に利用することができる。
【0057】
ステップ552では、NANDストリングのビット・ラインとソース・ラインが浮遊する。ステップ554では、NANDストリングに対して消去バイアス条件が印加される。ステップ556では、1又は複数の補正電圧が、NANDストリングに対して印加され、隣接するトランジスタからNANDストリングの1又は複数のメモリ・セルにカップルされた電圧が補正される。ステップ554で印加されるバイアス条件は、ステップ556で印加される補正電圧によって決まるので、ステップ554と556は相関関係にある。そのため、いくつかの実施形態では、1又は複数の補正電圧を含むことが可能なNANDストリングに対して1セットのバイアス条件を印加するために、上記の2つのステップを同時に実行できる(しかし必須ではない)。
【0058】
バイアス条件と1又は複数の補正電圧をNANDストリングに印加した後に、ステップ558にて消去電圧パルスが印加される。消去電圧パルスを印加した後に、ステップ560にてベリフィケーションが実行され、これによってNANDストリングが十分に消去されたか否かが特定される。実施形態によっては、消去オペレーションの結果をベリファイするために、種々の手段用いることができる。例えば、ストリングの各メモリ・セルの閾電圧が既定の値より低いか否かを特定するために、NANDストリングを読み出してもよい。一実施形態においては、各メモリ・セルのゲートに対して、消去されたメモリ・セルをまでターン・オンさせるのに十分な電圧を印加するステップと、ソース・ラインからビット・ラインへ向かう方向におけるNANDストリングの伝導性を検査するステップとを含んでいてもよい。消去と消去ベリフィケーションについての詳細は、同時係属の米国特許出願番号第10/857,245号の「COMPREHENSIVE ERASE VERIFICATION FOR NON-VOLATILE MEMORY」に記載されている。この出願は、消去ベリフィケーション技術についてより広範囲に説明しており、この出願の全体は、本願明細書に組み込まれる。ステップ560でのベリフィケーションの結果が、ステップ562で決定されたとおりに得られた場合には、ステップ564においてNANDストリングに成功の状態が通知される。しかし、ステップ562にてNANDストリングを十分に消去さできなかったことが特定された場合には、ステップ566にてベリファイ・カウンタが所定値に対してチェックされる。ベリファイ・カウンタが所定値未満、例えば20である場合には、ステップ570にて、消去電圧パルス(Verase)が所定値だけインクリメントされ、ベリファイ・カウンタの値が1だけ増加される。次に、フローチャートのオペレーションは、ステップ552へ進む。ここで、バイアスと補正電圧が、再度、NANDストリングに印加され、その後追加の消去電圧パルスが印加される。ベリファイ・カウンタが所定値よりも大きい場合には、ステップ568で失敗の状態が報告される。
【0059】
様々な補正電圧をNANDストリングの様々な部分に印加することで、隣接するトランジスタから選択メモリ・セルのフローティング・ゲートにカップルされた電圧を補正できる。したがって、ステップ556では、これらの静電容量カップルされた電圧を補正するために、様々な補正電圧を印加することができる。図15a、図15bは、一実施形態のステップ554、556において印加できる1セットの補正電圧を示している。ステップ554で印加されるバイアス条件は、ステップ556で印加される補正電圧に若干依存するため、図15aは図14のステップ554と556を示している。図15aは、ステップ602にて、ソース側選択ゲートとドレイン側選択ゲートを浮遊させることで始まる。ステップ604では、NANDストリングの最初と最後のワード・ラインに0ボルトが印加される。ステップ606では、例えばNANDストリングの内部ワード・ラインといった、NANDストリングの残りのワード・ラインに1又は複数の補正電圧が印加される。一実施形態では、ステップ602〜606が同時に実行される。
【0060】
一実施形態では、ステップ606で印加される補正電圧は正の電圧である。NANDストリングの内部メモリ・セルのワード・ラインに正の電圧を印加することで、内部メモリ・セルのトンネル酸化物における電場が減少する。印加された補正電圧の一部は、内部メモリ・セルの制御ゲートからフローティング・ゲートにカップルされる。例えば図11では、ワード・ライン1〜6への補正電圧の印加によって、各制御ゲート404c〜414cからそれぞれ対応するフローティング・ゲート404f〜414fへの電圧のカップリングが起こる。
【0061】
内部メモリ・セルの酸化物における電場を、NANDストリングの端部メモリ・セルの電場と等しくするために、内部メモリ・セルの制御ゲートに印加された電圧を選択することができる。先述したように、隣接する選択ゲートからのカップリングによって、端部メモリ・セルの電荷を内部メモリ・セルの電荷よりも高くすることができる。例えば、多くの実施においては、約1ボルトの増加が予想される。したがって、内部メモリ・セルのワード・ラインに電圧を印加することで、このセルの電場を低下させ、選択ゲートからの静電容量カップリングによる低い電場を有する端部メモリ・セルのワード・ラインと一致させることができる。
【0062】
ワード・ラインに印加された電圧の一部のみが、制御ゲートからフローティング・ゲートにカップルされるので、ワード・ラインに印加された電圧を、カップル値がストリングの選択ゲートから端部メモリ・セルへのカップル値と等しくなるように選択することができる。使用しているパラメータ、動作条件、実電圧の変化のために、一様な電圧は実質的に一様な電圧を含むことができる。非限定的な例の方法によれば、一様な電圧は、いくつかの実施形態では0.1ボルト以下の値、別の実施形態では0.5ボルト以下の値を有する実質的に一様な電圧を含んでいてよい。選択ゲートから端部メモリ・セルに1ボルトの電圧がカップルされるとすると、ワード・ラインへの印加電圧を、内部メモリ・セルの制御ゲートからフローティング・ゲートに1ボルトがカップルされるように選択できる。多くのNANDストリングの実施においては、制御ゲートに印加された電圧の約50%が、対応するフローティング・ゲートにカップルされると予測できる。したがって、例にあるように、1ボルトを内部メモリ・セルのフローティング・ゲートにカップルさせる場合には、ワード・ラインを介して制御ゲートに約2ボルトを印加して、フローティング・ゲートにおける実際の電荷を1ボルト増加する。内部メモリ・セルのフローティング・ゲートにおける実際の電荷を増加してNANDストリングの端部メモリ・セルの実際の電荷とほぼ等しくすると、NANDストリングの全てのメモリ・セルのトンネル酸化物層において生成される電場が、p−ウェル消去電圧パルスを印加された状態でほぼ等しくなる。
【0063】
図16は、図15a、図15bのような補正電圧を印加する場合における、図11のようなNANDストリングのメモリ・セルの平均閾電圧を示すグラフである。図16に示した値は単なる例であり、必ずしも先述した例に対応していない。このグラフは、Y軸の閾電圧を、X軸に示す種々の補正電圧の関数として示している。WL0及びWL7のメモリ・セルは補正電圧を受けないため、内部メモリ・セルに補正電圧を印加した状態ではほぼ一定の電圧を有する。消去電圧パルスを印加すると、WL0及びWL7のメモリ・セルの平均閾電圧は約−1.5ボルトになる。内部メモリ・セルに補正電圧を印加しないと、シングル消去電圧パルスの印加後における内部メモリ・セルの平均閾電圧は約−2.6ボルトになる。内部メモリ・セルに約0.5ボルトの補正電圧を印加した場合には、WL1〜WL6のメモリ・セルの平均閾電圧が、消去電圧パルスの印加後に約−2ボルトに上昇する。WL1〜WL6のメモリ・セルの平均閾電圧は、これらのメモリ・セルに増加した補正電圧を印加することで減少する。内部メモリ・セルに1ボルトの補正電圧を印加する場合には、平均閾電圧が約−1.5ボルトまで減少する。これは、NANDストリングの端部メモリ・セルと同じ値である。したがって、内部メモリ・セルに1ボルトの補正電圧を印加する場合、これらのセルは、NANDストリングの端部メモリ・セルと略同じ速度で消去される。
【0064】
このように、内部メモリ・セルの消去速度を、NANDストリングの端部メモリ・セルの消去速度と一致するように低速化することで、内部メモリ・セルに対する過剰消去を回避することができる。これにより、NANDストリングの端部メモリ・セルと内部メモリ・セルの閾電圧分布を標準化する効果、又は、略一致させる効果が得られる。図15a、15bに示す補正電圧の印加によって、内部メモリ・セルの消去された閾電圧分布が正の方向に効果的にシフトされる。例えば、NANDストリングの消去時に、図15a、図15bの補正電圧が印加されると、図12の分布502が、分布504と実質的に一致するように右へシフトする。選択メモリ・セルの過剰消去の抑制又は防止に加え、補正を加えることで、ソフト・プログラミングをより少なくし、または、無くすことができる。消去中に印加される補正電圧によって各メモリ・セルの分布が標準化されるため、閾電圧がストリングの大半又は残りのメモリ・セルの範囲内に収まるように、選択メモリ・セルを、ソフト・プログラミングする必要はない。これによって消去時間が短縮され、メモリ・システムがプログラムされる。
【0065】
図17aと図17bは、隣接するトランジスタから静電容量カップルされる1又は複数の電圧を補正するために、消去オペレーション中にNANDストリングに印加可能な他の実施形態におけるバイアス条件と補正電圧のセットを示している。ステップ612では、NANDストリングのソース側選択ゲートとドレイン側選択ゲートが浮遊される。ステップ614では、NANDストリングの端部ワード・ラインに補正電圧が印加される。ステップ616では、NANDストリングの残りのワード・ラインに0ボルトが印加される。図17a、図17bに示す実施形態では、端部ワード・ラインのメモリ・セルにカップルされた電圧を直接補正するために、NANDストリングの内部ワード・ラインではなく端部ワード・ラインに補正電圧が印可される。
【0066】
一実施形態では、最初と最後のワード・ラインのメモリ・セルのトンネル酸化物における電場を増加させるために、NANDストリングの最初と最後のワード・ラインに負の補正電圧が印加される。先述したように、選択ゲートからの静電容量カップリングのために、最初と最後のメモリ・セルのトンネル酸化物における電場は、NANDストリングの残りのワード・ラインよりも低くなる。そのため、これらのメモリ・セルのワード・ラインに電圧を印加し、メモリ・セルの制御ゲートからフローティング・ゲートへカップルすることによって、隣接する選択ゲートからカップルされる電圧を補正することができる。先述したように、制御ゲートに印加される電圧の一部のみが、フローティング・ゲートにカップルされる。したがって、ワード・ラインに印加する電圧には、フローティング・ゲートにカップルされる電圧量が隣接する選択ゲートからカップルされる電圧量と等しくなり、極性が逆になるものを選択する必要がある。
【0067】
例えば、端部メモリ・セルの選択ゲートからフローティング・ゲートに+1ボルトがカップルされる場合は、端部メモリ・セルのワード・ラインに−2ボルトの電圧を印加して、約−1ボルトの電圧をフローティング・ゲートにカップルさせることができる。制御ゲートからカップルされた−1ボルトは、隣接する選択ゲートからカップルされた+1ボルトを補正する。これにより、端部メモリ・セルのトンネル酸化物における電場が、NANDストリングの他のメモリ・セルの電場と等しくなるように上昇する。これにより、ストリングの各メモリ・セルの複数のトンネル酸化物層における電位が等しくなり、各メモリ・セルで一様に消去が行われ、速度消去がほぼ等しくなる。パラメータ、動作条件、実電圧が異なるため、ここでいう等しい電位には、ほぼ等しい電位を含む。このほぼ等しい電位には、例えばいくつかの実施形態では0.1ボルト以内の電位、他の実施形態では0.5ボルト以内の電位が含まれる。図17a及び図17bの補正電圧を印加することにより、消去電圧印加後に、端部ワード・ラインのメモリ・セルの閾電圧分布が負の方向へシフトする。再び図12を参照すると、端部ワード・ラインへの負の補正電圧が印加により、分布504が、分布502と一致するように、効果的に左(負の方向)へシフトしている。
【0068】
NANDストリングの選択ゲートから端部ワード・ラインに静電容量カップルされた電圧に加えて、又は、この代わりに、隣接するトランジスタからカップルされた電圧をより精密に補正する静電容量カップルされた追加的な電圧が考えられる。図11は、矢印436によって、NANDストリングの個々のメモリ・セルのフローティング・ゲート間における追加的な静電容量カップリング効果を示している。例えば、WL0に接続されているメモリ・セル416のフローティング・ゲートにおける電圧の一部は、WL1に接続されているメモリ・セル414のフローティング・ゲートに静電容量カップルされる。メモリ・セル414のフローティング・ゲートにおける電圧の一部は、WL2に接続されているメモリ・セル412等のフローティング・ゲートにカップルされる。このカップリングは、追加して又はその代わりとして、矢印436で示すように、例えばメモリ・セル412からメモリ・セル414に向かう反対方向においても発生することができる。こうしたカップリング効果は、NANDストリングの全てのメモリ・セル間で様々なレベルにおいて発生する。隣接するフローティング・ゲートにカップルできる各フローティングにおける実際の電荷は、選択ゲートにおける実際の電荷未満である。したがって、各メモリ・セルのフローティング・ゲートの間でカップルされる電圧量は、隣接する選択ゲートから端部メモリ・セルにカップルされる電圧量よりも少ない。しかし、NANDストリングの各メモリ・セルは、フローティング・ゲートに若干異なる電荷を有していたり、このようなカップリングによって生じる異なる消去動作を有していてもよい。
【0069】
一実施形態によれば、各静電容量カップリング電圧を補正するために、補正電圧が、NANDストリングの1又は複数のメモリ・セルに印加される。例えば、NANDストリングの各メモリ・セルは、補正電圧を受けながら、消去電圧パルスを印加してNANDストリングの各メモリ・セルのトンネル酸化物にかかる電場を好適化することができる。こうすることで、各メモリ・セルを同じ速度によって同程度に消去するために、各メモリ・セルのトンネル酸化物層における電場電位を一様に生成することができる。一実施形態では、例えば、端部ワード・ラインに補正電圧を印加して、隣接する選択ゲートからのカップリング電圧を補正することができる。また、内部メモリ・セルに別の補正電圧を印加して、隣接したメモリ・セルからカップルされる電圧を補正することもできる。図11を参照すると、例えば、補正電圧をWL1に印加して、メモリ・セル416、412からメモリ・セル414にカップルされる電圧を補正できる。一実施形態では、この電圧は、先述の分析に基づいて、隣接するメモリ・セルからのカップリング割合が50%であると仮定して選択できる。
【0070】
他の実施形態では、選択されたワード・ラインに接続されているメモリ・セルの消去動作を、ストリングの他のメモリ・セルと比較することによって、NANDストリングの各ワード・ラインに印加される電圧を選択してもよい。例えば、ストリングの1つのメモリ・セルを基準メモリ・セルとして選択し、テスト中にその消去動作を決定することができる。残りのメモリ・セルは、増加した消去電圧パルスを印加した状態にてテストし、これを基準メモリ・セルと比較する。メモリ・セルの消去速度が基準メモリ・セルよりも遅い場合は、例えば負の補正電圧のように、適切な補正電圧を選択して、そのメモリ・セルのトンネル酸化物における電場を増加させることができる。メモリ・セルの消去速度が基準メモリ・セルよりも速い場合は、そのワード・ラインに対して正の補正電圧を選択して、メモリ・セルの消去速度を遅くし、基準メモリ・セルの消去速度と一致させることができる。当業者は、実施形態及び特定の実施におけるメモリ・セルの消去動作に従って、補正電圧を選択するための様々な技術を用いることができる。
【0071】
図18a、図18bは、NANDストリングの各メモリ・セルが、各ワード・ラインとメモリ・セルに対して個々に選択された補正電圧を受ける場合における、1セットの印加電圧と補正電圧を示している。補正電圧の選択には、メモリ・セルを基準セルと比較する、または、隣接するトランジスタとウェル領域の間で種々のカップリング速度を予測する計算を行う等、これまでに説明した種々の手段を用いることができる。ステップ622では、ソース側選択ゲートとドレイン側選択ゲートが浮遊される。ステップ624では、NANDストリングの各ワード・ラインにそれぞれの補正電圧が印加される。補正電圧を印加し、ソース側選択ゲートとドレイン側選択ゲートを浮遊させた後に、消去電圧パルスが印加される。各ワード・ラインにそれぞれの補正電圧を印加することで、各メモリ・セルの電圧分布がほぼ等しくなる。補正電圧の選択方法によって、図12に示す閾電圧分布は、種々の態様でシフトする。例えば、高速で消去されるメモリ・セルが基準メモリ・セルとして選択された場合は、NANDストリングの端部ワード・ラインの分布504は、左へシフトすると考えられる。これは、適切な補正電圧(例えば、トンネル酸化物における電位を増加させ、消去速度を増加させる負の補正電圧)を印加された場合に、これらのメモリ・セルがより速い速度で消去されるためである。しかし、基準の記憶要素として消去が遅いセルが選択された場合には、内部メモリ・セルの分布502が右へシフトすると考えられる。これは、適切な補正電圧(例えば、トンネル酸化物における電位を低下させ、消去速度を遅くする正の補正電圧)を印加された場合に、メモリ・セルの消去が遅くなるためである。一実施形態では、各補正電圧を選択することにより、分布502が右へシフトし、分布504が左へシフトして、その間の値で一致する。
【0072】
一実施形態では、図19a及び19bに示すように、1又は複数の静電容量カップルされた電圧を補正するために、NANDストリングの1又は複数の選択ゲートに補正電圧が印加される。補正電圧を選択ゲートに印加して、p−ウェル領域から選択ゲートにカップルされている電圧を補正することができる。選択ゲートに直接印加された電圧はその選択ゲートの制御ゲートに現れ、この電圧の一部がNANDストリングの隣接するメモリ・セルにカップルされる。選択ゲートに電圧が印加されるため、p−ウェル消去電圧は選択ゲートとカップルされない。そのため、消去電圧ではなく、印加された電圧の一部が、選択ゲートから隣接するメモリ・セルにカップルされる。
【0073】
図19aのステップ632では、NANDストリングの各ワード・ラインに0ボルトが印加される。ステップ634では、1又は複数の補正電圧がNANDストリングの選択ゲートに印加される。消去オペレーションのためにNANDストリングにバイアスし、補正電圧を印加した後に、NANDストリングに消去電圧パルスが印加される。様々な実施形態によれば、ステップ634において選択ゲートに種々の補正電圧を印加することができる。消去電圧パルスよりも低い正の補正電圧を印加することで、選択ゲートに隣接するメモリ・セルにカップルされる電圧量を少なくすることができる。値が0ボルトに近づくほど、隣接する選択ゲートにカップルされる電圧量が少なくなる。
【0074】
選択ゲートに0ボルトを印加した場合、選択ゲートには、隣接したメモリ・セルにカップルされる電圧は現れない。これは、様々なメモリ・セルの消去動作の好適化に代わる最良の代替方法であるかのように最初は思われる。しかし、選択ゲートのトンネル酸化物層における電位が高くなり過ぎないように、選択ゲートに印加する電圧の選択時には十分な注意が必要である。したがって、隣接したメモリ・セルへの全てのカップリングを防止するためには選択ゲートに0ボルトを印加することが望ましいと考えられるかもしれないが、こうした低電圧の印加により、トンネル酸化物層において高い電位が生じ、ダメージが生じて選択ゲートが損傷する可能性がある。例えば、80オングストロームのトンネル酸化物層を有する一実施形態では、選択ゲートのトンネル酸化物層において生じる電位は、最大で約4〜5ボルトに制限しなければならない。選択ゲートに印加する電圧が、層における電位(消去電圧パルス−補正電圧)が限度を超えて上昇するほど低い場合には、トランジスタが損傷する可能性がある。選択ゲートのトンネル酸化物層において生じる電位が約4〜5ボルトに制限され、約20ボルトの消去電圧パルスが印加される場合には、最小の補正電圧を約15〜16ボルトにする必要がある。補正電圧の一部は隣接するメモリ・セルにカップルされる。先述したように、選択ゲートに存在する約5〜10%の電圧が隣接するメモリ・セルにカップルされる。隣接するメモリ・セルにはまだいくらかの電圧がカップルされるが、15〜16ボルトのうちカップルされる部分は、補正電圧を印加しなかった場合に印加される消去電圧(20V)のカップルされる部分よりも小さい。そのため、端部メモリ・セルの消去動作を、NANDストリングの残りのメモリ・セルと共に十分な大きさにまで好適化することができる。
【0075】
種々の実施形態によれば、図15〜図19に関連して説明した1又は複数の方法を相互に組み合わせて用いることができる。例えば、NANDストリングの端部ワード・ラインと、NANDストリングの内部ワード・ラインの両方に、補正電圧を印加することができる。正の補正電圧を内部メモリ・セルに印加して、そのトンネル酸化物層における電場を低減する一方で、負の補正電圧をNANDストリングの端部ワード・ラインに印加して、そのトンネル酸化物層における電場を増加させ、これによって、各メモリ・セルの全ての電場を等しくすることができる。他の実施形態では、別個の補正電圧を、NANDストリングの選択ゲートに印加されている補正電圧と共に、NANDストリングの各ワード・ラインに印加することによって、各メモリ・セルの消去動作を好適化することができる。補正電圧(例えば15ボルト)を選択ゲートに印加することによって、隣接するメモリ・セルにカップルされる電圧をより低くすることができる。NANDストリングの端部ワード・ラインへの全てのカップリングを排除することはできないため、これらのワード・ラインは、以前として、残りのワード・ラインよりも少し遅い速度で消去を行うことになる。この消去動作の差を補正するには、NANDストリングの内部メモリ・セルにも補正電圧を印加して、NANDストリングの電場及び/又は端部ワード・ラインを減少させて、それらの電場を増加させる。
【0076】
上述の例は、NAND型フラッシュ・メモリに関するものである。しかし、本発明の原理は、現存の技術や開発中の新技術を含む、直列構造を利用した他のタイプの不揮発性メモリに適用することができる。
【0077】
先述の本発明の詳細な説明は、例証及び説明の目的で提示されたものである。上記に開示された形態に本発明を制限することを意図するものではない。上記の示唆を考慮した多くの改良及び応用が可能である。上記の実施形態は、当業者が、本発明を種々の実施形態において、及び、用途に応じて改良を加えて利用できるように、本発明の原理とその実用的な用途を最良に説明するために選択したものである。本発明の技術的範囲は、添付された特許請求の範囲によって定義される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性記憶装置の消去方法であって、
不揮発性記憶要素のストリングの一部に少なくとも1つの補正電圧を印加して、前記ストリングの少なくとも1つのトランジスタから、前記ストリングの1又は複数の不揮発性記憶要素にカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するステップと、
不揮発性記憶要素の前記ストリングを消去するために前記少なくとも1つの補正電圧を印加する間に、前記ストリングの少なくとも1つのサブ・セットの不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから電荷を転送するステップ、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つの補正電圧を印加する前記ステップは、
前記ストリングの第1不揮発性記憶要素の制御ゲートに第1電圧を印加するステップと、
前記ストリングの第2不揮発性記憶要素の制御ゲートに第2電圧を印加するステップ、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、不揮発性記憶要素の前記ストリングのウェルへ消去電圧を印加するステップをさらに備えており、
電荷を転送する前記ステップは、前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートと前記第2不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから、前記ウェルへ、電荷を転送するステップを備えている、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記消去電圧を印加する前記ステップによって、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートと前記ウェルの間に第1電位が生じ、前記第2不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートと前記ウェルの間に第2電位が生じることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1電圧を印加する前記ステップと、前記第2電圧を印加するステップにおいて、前記第1電位と第2電位が等しくなることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのトランジスタは、前記ストリングの選択ゲートを備えており、
前記第1不揮発性記憶要素は、前記選択ゲートに隣接しており、
前記第2不揮発性記憶要素は、前記ストリングの内部記憶要素であり、
前記第1電圧は、前記第2電圧よりも低い、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1電圧は負であり、
前記第2電圧はゼロ以上である、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1電圧はゼロ以下であり、
前記第2電圧は正である、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1電圧を印加する前記ステップでは、前記選択ゲートから前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートにカップルされるカップル電圧を少なくとも部分的に補正することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第1電圧を印加するステップでは、前記第1電圧の一部を前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルし、前記第1電圧の前記一部は、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされる前記カップル電圧と大きさが同じで、極性が反対であすることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2不揮発性記憶要素の前記制御ゲートに前記第2電圧を印加する前記ステップでは、前記選択ゲートから前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートにカップルされるカップル電圧を少なくとも部分的に補正することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記第2電圧を印加する前記ステップでは、前記第2電圧の一部を前記第2不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートにカップルし、前記第2電圧の前記一部は、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされる前記カップル電圧と同じ大きさで、極性が反対であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの補正電圧は、第1補正電圧であり、
前記一部は、第1不揮発性記憶要素の制御ゲートであり、
前記1又は複数の不揮発性記憶要素は、前記第1不揮発性記憶要素を備えており、
前記方法は、少なくとも1つの異なる補正電圧を前記ストリングの残りの不揮発性記憶要素の制御ゲートに印加して、少なくとも1つの隣接するトランジスタから前記残りの不揮発性記憶要素のそれぞれにカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの異なる補正電圧は、前記残りの不揮発性記憶要素のうちの少なくとも2つに対して異なる大きさを有していることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの異なる補正電圧を印加する前記ステップは、基準不揮発性記憶要素と比較した前記残りの不揮発性記憶要素のそれぞれの消去動作に基づいて前記第2補正電圧の大きさと極性を選択するステップを、前記残りの不揮発性記憶要素のそれぞれについて、備えていることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記基準不揮発性記憶要素は、前記ストリングの選択された不揮発性記憶要素であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのトランジスタは、前記ストリングの選択ゲートを備えており、
前記少なくとも1つの補正電圧を前記ストリングの一部に印加するステップは、前記選択ゲートに第1補正電圧を印加するステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、不揮発性記憶要素の前記ストリングのウェルに消去電圧を印加するステップをさらに備えており、
前記第1補正電圧は前記消去電圧よりも低く、
電荷を転送する前記ステップは、前記少なくとも1つのサブ・セットの前記不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートから前記ウェルへ電荷を転送するステップを備えていることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
不揮発性記憶要素の前記ストリングは、前記選択ゲートに隣接する第1不揮発性記憶要素を備えており、
前記第1補正電圧の一部は、前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートにカップルされ、前記第1補正電圧が前記選択ゲートに印加されなかった場合には、前記第1補正電圧の前記一部は、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされる電圧よりも低いことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記消去電圧と前記第1補正電圧の差が約5ボルトであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記不揮発性記憶要素のストリングは、前記選択ゲートに隣接する第1不揮発性記憶要素と、前記ストリングの内部不揮発性記憶要素である第2不揮発性記憶要素とを備えており、
前記消去電圧を印加するステップによって、前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートと前記ウェルの間に第1電位が生じ、前記第2不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートと前記ウェルの間に第2電位が生じ、
前記第1補正電圧を印加する前記ステップによって、前記選択ゲートが浮遊している場合よりも前記第1電位が高くなることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第1補正電圧を印加する前記ステップによって、前記第1補正電圧の一部が前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされ、
前記第1補正電圧の前記一部は、前記選択ゲートが浮遊している場合に前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされる電圧よりも低いことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記補正電圧は、0ボルトであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記不揮発性記憶要素のストリングは、NANDストリングであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記不揮発性記憶要素のストリングは、マルチ状態フラッシュ・メモリ装置のストリングであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記不揮発性記憶要素のストリングは、不揮発性記憶要素のアレイの一部であり、
前記アレイは、ホスト・システムと通信し、
前記アレイは、前記ホスト・システムから取り外すことができることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
不揮発性メモリ・システムであり、
少なくとも1つの選択ゲートを備えている不揮発性記憶要素のストリングと、
不揮発性記憶要素のストリングと通信し、前記ストリングの一部に少なくとも1つの補正電圧を印加することによって前記不揮発性記憶要素のストリングを消去することによって、前記不揮発性記憶要素の少なくとも1つのサブ・セットのフローティング・ゲートから電荷が転送される間に、前記ストリングの少なくとも一つのトランジスタから前記ストリングの1又は複数の不揮発性記憶要素にカップルされる電圧の少なくとも一部を補正するマネージング回路、
を備えていることを特徴とする不揮発性メモリ・システム。
【請求項28】
前記第1不揮発性記憶要素は、前記少なくとも1つの選択ゲートに隣接しており、
前記第2不揮発性記憶要素は、前記ストリングの内部記憶要素であり、
前記マネージング回路は、第1不揮発性記憶要素の制御ゲートに第1電圧を印加するとともに第2不揮発性記憶要素の制御ゲートに第2電圧を印加することによって、前記少なくとも1つの補正電圧を印加することを特徴とする請求項27に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項29】
前記マネージング回路は、不揮発性記憶要素の前記ストリングのウェルに消去電圧を印加することによって、前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから前記ウェルへ、及び、前記第2不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから前記ウェルへ電荷を転送し、
前記消去電圧の印加によって、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートと前記ウェルの間に第1電位が生じ、前記第2不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートと前記ウェルの間に第2電位が生じ、
前記第1電圧、前記第2電圧及び前記消去電圧が印加された状態においては、前記第1電位と前記第2電位が等しくなることを特徴とする請求項28に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項30】
前記少なくとも1つのトランジスタは、前記少なくとも1つの選択ゲートを備えており、
前記第1電圧を印加する前記マネージング回路は、前記少なくとも1つの選択ゲートから、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされるカップル電圧を少なくとも部分的に補正し、
前記第1電圧の一部は、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされ、
前記マネージング回路は、前記第1電圧の前記一部が前記カップル電圧と同じ大きさで反対極性を有するように、前記第1電圧を印加することを特徴とする請求項28に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項31】
前記少なくとも1つのトランジスタは、前記少なくとも1つの選択ゲートを備えており、
前記第2電圧を印加する前記マネージング回路は、前記少なくとも1つの選択ゲートから前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされるカップル電圧を少なくとも部分的に補正し、
前記第2電圧の一部は、前記第2不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされ、
前記マネージング回路は、前記第2電圧の前記一部が前記カップル電圧と同じ大きさで同一極性を有するように、前記第2電圧を印加することを特徴とする請求項28に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項32】
前記少なくとも1つのトランジスタは前記少なくとも1つの選択ゲートを備えており、
前記マネージング回路は、前記複数の不揮発性記憶要素の少なくとも1つのサブ・セットの前記フローティング・ゲートから電荷が転送される間に、第1補正電圧を前記少なくとも1つの選択ゲートに印加することによって、前記少なくとも1つの補正電圧を印加し、
前記マネージング回路は、前記不揮発性記憶装置の前記ストリングのウェルに消去電圧を印加することによって、前記少なくとも1つのサブ・セットの前記不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートから前記ウェルへ電荷を転送し、
前記第1補正電圧は、前記消去で電圧よりも低いことを特徴とする請求項27に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項33】
前記不揮発性記憶要素のストリングは、マルチ状態フラッシュ・メモリ装置を含むNANDストリングであることを特徴とする請求項27に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項34】
前記不揮発性記憶要素のストリングは不揮発性記憶要素のアレイの一部であり、
前記アレイは、ホスト・システムと通信し、
前記アレイは、前記ホスト・システムから取り外すことができることを特徴とする請求項27に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項35】
前記マネージング回路は、制御装置と状態マシンの少なくとも一方を備えていることを特徴とする請求項27に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項36】
不揮発性記憶装置を消去する方法であり、
1セットの不揮発性記憶要素の第1不揮発性記憶要素の制御ゲートに第1電圧を印加するステップであって、前記セットは少なくとも1つの選択ゲートを備えていることを特徴とするステップと、
前記セットの不揮発性記憶要素の第2不揮発性記憶要素の制御ゲートに補正電圧を印加することによって、前記セットのトランジスタから、前記第1不揮発性記憶要素と前記第2不揮発性記憶要素の少なくとも一方にカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するステップであって、前記補正電圧は前記第1電圧と異なることを特徴とするステップと、
前記第1電圧と前記補正電圧を印加することによって前記第1不揮発性記憶要素と前記第2不揮発性記憶要素を消去する間に、前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートと前記第2不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから電荷を転送するステップ、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項37】
前記セットの不揮発性記憶要素は、NANDストリングであり、
前記第1不揮発性記憶要素は、前記少なくとも1つの選択ゲートに隣接しており、
前記第2不揮発性記憶要素は、前記NANDストリングの内部記憶要素であり、前記補正電圧は正であり、前記補正電圧は、前記少なくとも1つの選択ゲートから前記第1不揮発性記憶要素にカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正することによって、前記第1不揮発性記憶要素と前記第2不揮発性記憶要素の消去動作を少なくとも部分的に一致させる、
ことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記セットの不揮発性記憶要素は、NANDストリングであり、
前記第1不揮発性記憶装置は、前記NANDストリングの内部記憶要素であり、
前記第2不揮発性記憶要素は、前記選択ゲートに隣接しており、前記補正電圧は負であり、前記補正電圧は、前記選択ゲートから前記第2不揮発性記憶要素にカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正することによって、前記第1不揮発性記憶要素と前記第2不揮発性記憶要素の消去動作を少なくとも部分的に一致させる、
ことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項1】
不揮発性記憶装置の消去方法であって、
不揮発性記憶要素のストリングの一部に少なくとも1つの補正電圧を印加して、前記ストリングの少なくとも1つのトランジスタから、前記ストリングの1又は複数の不揮発性記憶要素にカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するステップと、
不揮発性記憶要素の前記ストリングを消去するために前記少なくとも1つの補正電圧を印加する間に、前記ストリングの少なくとも1つのサブ・セットの不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから電荷を転送するステップ、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つの補正電圧を印加する前記ステップは、
前記ストリングの第1不揮発性記憶要素の制御ゲートに第1電圧を印加するステップと、
前記ストリングの第2不揮発性記憶要素の制御ゲートに第2電圧を印加するステップ、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、不揮発性記憶要素の前記ストリングのウェルへ消去電圧を印加するステップをさらに備えており、
電荷を転送する前記ステップは、前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートと前記第2不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから、前記ウェルへ、電荷を転送するステップを備えている、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記消去電圧を印加する前記ステップによって、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートと前記ウェルの間に第1電位が生じ、前記第2不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートと前記ウェルの間に第2電位が生じることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1電圧を印加する前記ステップと、前記第2電圧を印加するステップにおいて、前記第1電位と第2電位が等しくなることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのトランジスタは、前記ストリングの選択ゲートを備えており、
前記第1不揮発性記憶要素は、前記選択ゲートに隣接しており、
前記第2不揮発性記憶要素は、前記ストリングの内部記憶要素であり、
前記第1電圧は、前記第2電圧よりも低い、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1電圧は負であり、
前記第2電圧はゼロ以上である、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1電圧はゼロ以下であり、
前記第2電圧は正である、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1電圧を印加する前記ステップでは、前記選択ゲートから前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートにカップルされるカップル電圧を少なくとも部分的に補正することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第1電圧を印加するステップでは、前記第1電圧の一部を前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルし、前記第1電圧の前記一部は、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされる前記カップル電圧と大きさが同じで、極性が反対であすることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2不揮発性記憶要素の前記制御ゲートに前記第2電圧を印加する前記ステップでは、前記選択ゲートから前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートにカップルされるカップル電圧を少なくとも部分的に補正することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記第2電圧を印加する前記ステップでは、前記第2電圧の一部を前記第2不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートにカップルし、前記第2電圧の前記一部は、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされる前記カップル電圧と同じ大きさで、極性が反対であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの補正電圧は、第1補正電圧であり、
前記一部は、第1不揮発性記憶要素の制御ゲートであり、
前記1又は複数の不揮発性記憶要素は、前記第1不揮発性記憶要素を備えており、
前記方法は、少なくとも1つの異なる補正電圧を前記ストリングの残りの不揮発性記憶要素の制御ゲートに印加して、少なくとも1つの隣接するトランジスタから前記残りの不揮発性記憶要素のそれぞれにカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの異なる補正電圧は、前記残りの不揮発性記憶要素のうちの少なくとも2つに対して異なる大きさを有していることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの異なる補正電圧を印加する前記ステップは、基準不揮発性記憶要素と比較した前記残りの不揮発性記憶要素のそれぞれの消去動作に基づいて前記第2補正電圧の大きさと極性を選択するステップを、前記残りの不揮発性記憶要素のそれぞれについて、備えていることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記基準不揮発性記憶要素は、前記ストリングの選択された不揮発性記憶要素であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのトランジスタは、前記ストリングの選択ゲートを備えており、
前記少なくとも1つの補正電圧を前記ストリングの一部に印加するステップは、前記選択ゲートに第1補正電圧を印加するステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、不揮発性記憶要素の前記ストリングのウェルに消去電圧を印加するステップをさらに備えており、
前記第1補正電圧は前記消去電圧よりも低く、
電荷を転送する前記ステップは、前記少なくとも1つのサブ・セットの前記不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートから前記ウェルへ電荷を転送するステップを備えていることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
不揮発性記憶要素の前記ストリングは、前記選択ゲートに隣接する第1不揮発性記憶要素を備えており、
前記第1補正電圧の一部は、前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートにカップルされ、前記第1補正電圧が前記選択ゲートに印加されなかった場合には、前記第1補正電圧の前記一部は、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされる電圧よりも低いことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記消去電圧と前記第1補正電圧の差が約5ボルトであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記不揮発性記憶要素のストリングは、前記選択ゲートに隣接する第1不揮発性記憶要素と、前記ストリングの内部不揮発性記憶要素である第2不揮発性記憶要素とを備えており、
前記消去電圧を印加するステップによって、前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートと前記ウェルの間に第1電位が生じ、前記第2不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートと前記ウェルの間に第2電位が生じ、
前記第1補正電圧を印加する前記ステップによって、前記選択ゲートが浮遊している場合よりも前記第1電位が高くなることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第1補正電圧を印加する前記ステップによって、前記第1補正電圧の一部が前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされ、
前記第1補正電圧の前記一部は、前記選択ゲートが浮遊している場合に前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされる電圧よりも低いことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記補正電圧は、0ボルトであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記不揮発性記憶要素のストリングは、NANDストリングであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記不揮発性記憶要素のストリングは、マルチ状態フラッシュ・メモリ装置のストリングであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記不揮発性記憶要素のストリングは、不揮発性記憶要素のアレイの一部であり、
前記アレイは、ホスト・システムと通信し、
前記アレイは、前記ホスト・システムから取り外すことができることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
不揮発性メモリ・システムであり、
少なくとも1つの選択ゲートを備えている不揮発性記憶要素のストリングと、
不揮発性記憶要素のストリングと通信し、前記ストリングの一部に少なくとも1つの補正電圧を印加することによって前記不揮発性記憶要素のストリングを消去することによって、前記不揮発性記憶要素の少なくとも1つのサブ・セットのフローティング・ゲートから電荷が転送される間に、前記ストリングの少なくとも一つのトランジスタから前記ストリングの1又は複数の不揮発性記憶要素にカップルされる電圧の少なくとも一部を補正するマネージング回路、
を備えていることを特徴とする不揮発性メモリ・システム。
【請求項28】
前記第1不揮発性記憶要素は、前記少なくとも1つの選択ゲートに隣接しており、
前記第2不揮発性記憶要素は、前記ストリングの内部記憶要素であり、
前記マネージング回路は、第1不揮発性記憶要素の制御ゲートに第1電圧を印加するとともに第2不揮発性記憶要素の制御ゲートに第2電圧を印加することによって、前記少なくとも1つの補正電圧を印加することを特徴とする請求項27に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項29】
前記マネージング回路は、不揮発性記憶要素の前記ストリングのウェルに消去電圧を印加することによって、前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから前記ウェルへ、及び、前記第2不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから前記ウェルへ電荷を転送し、
前記消去電圧の印加によって、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートと前記ウェルの間に第1電位が生じ、前記第2不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートと前記ウェルの間に第2電位が生じ、
前記第1電圧、前記第2電圧及び前記消去電圧が印加された状態においては、前記第1電位と前記第2電位が等しくなることを特徴とする請求項28に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項30】
前記少なくとも1つのトランジスタは、前記少なくとも1つの選択ゲートを備えており、
前記第1電圧を印加する前記マネージング回路は、前記少なくとも1つの選択ゲートから、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされるカップル電圧を少なくとも部分的に補正し、
前記第1電圧の一部は、前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされ、
前記マネージング回路は、前記第1電圧の前記一部が前記カップル電圧と同じ大きさで反対極性を有するように、前記第1電圧を印加することを特徴とする請求項28に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項31】
前記少なくとも1つのトランジスタは、前記少なくとも1つの選択ゲートを備えており、
前記第2電圧を印加する前記マネージング回路は、前記少なくとも1つの選択ゲートから前記第1不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされるカップル電圧を少なくとも部分的に補正し、
前記第2電圧の一部は、前記第2不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートにカップルされ、
前記マネージング回路は、前記第2電圧の前記一部が前記カップル電圧と同じ大きさで同一極性を有するように、前記第2電圧を印加することを特徴とする請求項28に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項32】
前記少なくとも1つのトランジスタは前記少なくとも1つの選択ゲートを備えており、
前記マネージング回路は、前記複数の不揮発性記憶要素の少なくとも1つのサブ・セットの前記フローティング・ゲートから電荷が転送される間に、第1補正電圧を前記少なくとも1つの選択ゲートに印加することによって、前記少なくとも1つの補正電圧を印加し、
前記マネージング回路は、前記不揮発性記憶装置の前記ストリングのウェルに消去電圧を印加することによって、前記少なくとも1つのサブ・セットの前記不揮発性記憶要素の前記フローティング・ゲートから前記ウェルへ電荷を転送し、
前記第1補正電圧は、前記消去で電圧よりも低いことを特徴とする請求項27に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項33】
前記不揮発性記憶要素のストリングは、マルチ状態フラッシュ・メモリ装置を含むNANDストリングであることを特徴とする請求項27に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項34】
前記不揮発性記憶要素のストリングは不揮発性記憶要素のアレイの一部であり、
前記アレイは、ホスト・システムと通信し、
前記アレイは、前記ホスト・システムから取り外すことができることを特徴とする請求項27に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項35】
前記マネージング回路は、制御装置と状態マシンの少なくとも一方を備えていることを特徴とする請求項27に記載の不揮発性メモリ・システム。
【請求項36】
不揮発性記憶装置を消去する方法であり、
1セットの不揮発性記憶要素の第1不揮発性記憶要素の制御ゲートに第1電圧を印加するステップであって、前記セットは少なくとも1つの選択ゲートを備えていることを特徴とするステップと、
前記セットの不揮発性記憶要素の第2不揮発性記憶要素の制御ゲートに補正電圧を印加することによって、前記セットのトランジスタから、前記第1不揮発性記憶要素と前記第2不揮発性記憶要素の少なくとも一方にカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正するステップであって、前記補正電圧は前記第1電圧と異なることを特徴とするステップと、
前記第1電圧と前記補正電圧を印加することによって前記第1不揮発性記憶要素と前記第2不揮発性記憶要素を消去する間に、前記第1不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートと前記第2不揮発性記憶要素のフローティング・ゲートから電荷を転送するステップ、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項37】
前記セットの不揮発性記憶要素は、NANDストリングであり、
前記第1不揮発性記憶要素は、前記少なくとも1つの選択ゲートに隣接しており、
前記第2不揮発性記憶要素は、前記NANDストリングの内部記憶要素であり、前記補正電圧は正であり、前記補正電圧は、前記少なくとも1つの選択ゲートから前記第1不揮発性記憶要素にカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正することによって、前記第1不揮発性記憶要素と前記第2不揮発性記憶要素の消去動作を少なくとも部分的に一致させる、
ことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記セットの不揮発性記憶要素は、NANDストリングであり、
前記第1不揮発性記憶装置は、前記NANDストリングの内部記憶要素であり、
前記第2不揮発性記憶要素は、前記選択ゲートに隣接しており、前記補正電圧は負であり、前記補正電圧は、前記選択ゲートから前記第2不揮発性記憶要素にカップルされる電圧を少なくとも部分的に補正することによって、前記第1不揮発性記憶要素と前記第2不揮発性記憶要素の消去動作を少なくとも部分的に一致させる、
ことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図18a】
【図18b】
【図19a】
【図19b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図18a】
【図18b】
【図19a】
【図19b】
【公開番号】特開2011−170964(P2011−170964A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−91569(P2011−91569)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【分割の表示】特願2007−549433(P2007−549433)の分割
【原出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(592012513)サンディスク コーポレイション (173)
【氏名又は名称原語表記】SanDisk Corporation
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91569(P2011−91569)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【分割の表示】特願2007−549433(P2007−549433)の分割
【原出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(592012513)サンディスク コーポレイション (173)
【氏名又は名称原語表記】SanDisk Corporation
【Fターム(参考)】
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