説明

作業用車両

【課題】簡単な構造で小回り旋回をすることができ、比較的安価な作業用車両を提供する。
【解決手段】作業機が搭載される機体2の前後左右に配され、該機体2を支持している二つの走行輪3,3a及び二つの遊動輪4,4aと、走行輪3,3aを駆動するエンジン5と、該エンジン5及び走行輪3,3aを連動連結している動力伝達機構6と、機体2の操向を行う操向ハンドル7とを備え、走行輪3,3a、エンジン5及び動力伝達機構6を機体2に対して旋回させることが可能なユニットAに形成し、該ユニットAを機体2に上下方向の枢軸8を中心として旋回を可能に枢支し、小回り旋回が行えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運搬用台車、防除機、耕地管理機等として使用される作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
耕地は主として四角形に区画整理され、一辺に沿って複数の畝が並設され、畝の夫々に作物が植えられるため、畝間の離隔する二つの溝上を畝に沿って安定性よく走行する作業用車両に防除機器、耕地管理機器、荷台等を搭載することにより、畝に植えられている作物への散布、畝の中耕、肥料等の運搬、移植用苗の運搬、収穫物の運搬、資材運搬等の農作業が行われている。
【0003】
作業用車両は、エンジン及び該エンジンの出力軸に繋がる動力伝達機構が搭載され、操向ハンドルを有する機体と、該機体の前後方向に対して両側で、且つ前後方向の一方に配され、前記動力伝達機構に連動連結されている二つの走行輪と、前後方向の他方に配され、前記走行輪とともに前記機体を支持する二つの遊動輪とを備え、防除機器等が前記機体に搭載される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図12は耕地の枕地で作業用車両を旋回させ、農作業を行う際の模式的説明図である。作業用車両Bによる農作業は、操向ハンドルを把持する作業者が操向し、畝の長手方向一方側から畝間の離隔する二つの溝上へ走行輪及び遊動輪を入れ、二つの溝上を畝に沿って往走行した後、畝の長手方向他方側で180°旋回し、複数畝隣りの二つの溝上へ走行輪及び遊動輪を入れ、二つの溝上を畝に沿って復走行した後、畝の長手方向一方側で作業用車両全体が180°旋回し、往走行及び復走行を繰返すことにより耕地全体の農作業が行われる。このように作業用車両Bは耕地内における畝の長手方向一方側及び他方側で作業用車両全体が180°旋回されるため、耕地内における畝の長手方向一方側及び他方側には作業用車両全体の旋回を許容する旋回用の枕地(非畝地)が必要であり、この枕地には畝を設けることができなかった。
【特許文献1】特開2001−286801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、畝間の離隔する二つの溝上を走行する作業用車両Bは、畝に植えられている作物の損傷を防ぐために機体が高床に形成され、また、機体の前後左右の安定性を高めるべく前後の車軸間距離、及び左右の輪間距離が比較的長くなっているため、畝の端部を崩すことなく旋回するには、畝の長手方向両側に比較的広幅の枕地を設け、該枕地で大回りで旋回する必要があり、一区画当たりの非植付面積が多くなり、改善策が要望されていた。また、作業用車両全体が走行しつつ枕地で旋回するため、例えば機体の左右両側へ展開されるノズル杆を有する防除機器が搭載されている場合、旋回地点でノズル杆を格納/展開させる作業が必要であり、また、貯液される液タンクが搭載され、比較的重量があるため、旋回がより一対層困難であり、旋回に要する時間が長くなり、これらの点でも改善策が要望されていた。
【0006】
旋回用の枕地を狭幅にするには例えば電動モータの出力軸に走行輪を取付け、前記電動モータを、前記出力軸と直交する枢軸を介して機体の左右両側に枢支することが考えられる。
【0007】
図13は電動モータ付走行輪の構成を示す断面図、図14の(a) は電動モータ付走行輪の構成を示す平面図、図14の(b) は電動モータ付走行輪が90°旋回した状態を示す平面図である。図13の電動モータ付走行輪100は、電動モータ101の出力軸102に走行輪103を取付けてあり、電動モータ101に、出力軸102と直交する枢軸104の一端が取付けられている。このように構成された電動モータ付走行輪100は、機体105の左右両側に設けられる軸受部106に枢軸104の他端が回動を可能に取付けられる。
【0008】
電動モータ付走行輪100を備える作業用車両にあっては、操向ハンドルを把持する作業者が旋回操作することにより、二つの電動モータ付走行輪100,100が枢軸104,104を中心として機体105に対し90°旋回し、この旋回状態で畝の並設方向へ走行した後、電動モータ付走行輪100,100を、枢軸104,104を中心として機体105に対しさらに90°旋回させることにより、走行方向を転換することができ、小回り旋回をすることができる。
【0009】
しかし、電動モータ付走行輪100は、走行輪103とは別個に比較的高価な二つの電動モータ101が必要であるため、作業用車両に採用することはコストが高くなる点で難しい。
【0010】
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、主たる目的は走行輪夫々と、該走行輪夫々を駆動する駆動源及び動力伝達機構とを機体に対し枢軸を中心に一体的に旋回させることが可能とすることにより、機体及び作業機の姿勢を変えることなく旋回することができ、しかも、比較的安価なコストで小回り旋回をすることができる作業用車両を提供することにある。
【0011】
また、他の目的は遊動輪夫々を連動して旋回させる連動部材を着脱自在に設けることにより、遊動輪夫々の追従性を高め、旋回時の機体安定性を高めることができる作業用車両を提供することにある。
【0012】
また、他の目的は走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構の旋回をロックするロック機構を設けることにより、往走行/復走行時および枕地走行時の機体安定性を高めることができる作業用車両を提供することにある。
【0013】
また、他の目的は、走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構の旋回操向及び機体の操向を行う操向ハンドルを設けることにより、操向ハンドルを把持して操向することにより走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構を旋回させることができる作業用車両を提供することにある。
【0014】
また、他の目的は走行輪夫々への動力伝達を入/切に制御するクラッチを動力伝達機構に設け、該クラッチの操作を行う二つのクラッチレバーを操向ハンドルに設けることにより、操向ハンドルを把持し、クラッチレバーの一方又は他方を操作することにより、小回り旋回をより一層容易にすることができる作業用車両を提供することにある。
【0015】
また、他の目的は走行輪夫々を正/逆回転させる変速機を動力伝達機構に設けることにより、クラッチレバーによるクラッチの入/切操作と、変速機による走行輪の正/逆回転操作とを交互に行うことにより、より一層軽い操作力で楽に旋回をすることができる作業用車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1発明に係る作業用車両は、作業機が搭載される機体と、該機体の前後左右に配され、該機体を支持している二つの走行輪及び二つの遊動輪と、前記走行輪夫々を駆動する駆動源と、該駆動源及び前記走行輪夫々を連動連結している動力伝達機構とを備える作業用車両において、前記走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構を前記機体に対し枢軸を中心に一体的に旋回させることが可能としてあることを特徴とする。
【0017】
第1発明にあっては、走行輪夫々と、駆動源及び動力伝達機構とを機体に対し一体的に旋回させることができるため、畝に沿って往走行した後、枕地で走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構を機体に対して90°旋回させることにより、機体は非旋回の状態で往走行の方向と直交する横方向へ走行することができ、また、横方向へ走行した後、走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構を機体に対して90°旋回させることにより、畝に沿って復走行することができるため、枕地で小回り旋回をすることができる。
【0018】
第2発明に係る作業用車両は、前記遊動輪夫々は上下方向の軸を中心として旋回を可能としてあり、該遊動輪夫々を連動して旋回させる連動部材を着脱自在に備えることを特徴とする。
第2発明にあっては、枕地で走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構が旋回する際、機体側の遊動輪夫々を連動部材により連動して旋回させることができるため、遊動輪夫々の車輪の追従性を高めることができ、旋回時の機体安定性を高めることができる。また、倉庫内への格納など細かい動きが要求される場合は、遊動輪の連結を外すことで左右への微少移動が可能になる。
【0019】
第3発明に係る作業用車両は、前記走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構の旋回をロックするロック機構を有することを特徴とする。
第3発明にあっては、走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構の機体に対する旋回をロック機構がロックするため、畝に沿う往走行/復走行時および枕地走行時の機体安定性を高めることができる。
【0020】
第4発明に係る作業用車両は、前記走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構の旋回操向及び前記機体の操向を行う操向ハンドルを備えることを特徴とする。
第4発明にあっては、操向ハンドルを把持している姿勢で、該操向ハンドルを旋回操作することにより走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構を旋回させることができるため、走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構の旋回操作を楽に行うことができる。
【0021】
第5発明に係る作業用車両は、前記動力伝達機構は前記走行輪夫々への動力伝達を入/切に制御するクラッチを有し、該クラッチの操作を行う二つのクラッチレバーを前記操向ハンドルに設けてあることを特徴とする。
第5発明にあっては、操向ハンドルを把持し、クラッチレバーの一方又は他方を操作することにより、クラッチを入/切に制御して走行輪の一方を駆動し、他方を駆動停止することができるため、駆動停止した走行輪を支点として走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構を旋回させることができ、小回り旋回をより一層容易にすることができる。
【0022】
第6発明に係る作業用車両は、前記動力伝達機構は前記走行輪夫々を正/逆回転させる変速機を有することを特徴とする。
第6発明にあっては、クラッチレバーの一方を切操作し、走行輪の他方を若干正回転させた後、クラッチレバーの他方を切操作し、走行輪の一方を若干逆回転させる操作を繰返すことが可能であるため、この繰返し操作により、より一層小回り旋回をすることができる。また、一つの操作体の操作で同時に正/逆回転させることが可能な変速機を用いることにより、さらに楽に、容易に旋回することができる。
【発明の効果】
【0023】
第1発明によれば、走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構を機体に対して旋回させることにより走行方向を逆転換することができるため、機体を含む作業用車両全体を旋回させるものに比べて枕地で小回り旋回をすることができるとともに、枕地に畝を設けることが可能であり、一区画当たりの植付面積を多くすることが可能である。しかも、走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構が機体に対し旋回が可能に構成されているため、比較的安価にできる。また、機体及び該機体に搭載されている作業機の姿勢を変えることなく旋回することができるため、旋回時に作業機を殊更操作する必要がないし、また、旋回に要する時間を短縮することができ、農作業性を高めることができる。
【0024】
第2発明によれば、旋回用枕地で走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構が旋回する際、二つの遊動輪の追従性を高めることができ、旋回時の機体安定性を高めることができる。
【0025】
第3発明によれば、走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構の機体に対する旋回をロックすることができ、畝に沿う往走行/復走行時および枕地走行時の機体安定性を高めることができる。
【0026】
第4発明によれば、操向ハンドルを把持している姿勢で、該操向ハンドルを旋回操作することにより走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構を旋回させることができ、走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構の旋回操作を楽に行うことができる。
【0027】
第5発明によれば、操向ハンドルを把持している姿勢で、クラッチを入/切に制御して走行輪の一方を駆動し、他方を駆動停止することができ、駆動停止した走行輪を支点として走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構を旋回させることができ、小回り旋回をより一層容易にすることができる。
【0028】
第6発明によれば、クラッチレバーの一方を切操作し、走行輪の他方を若干正回転させた後、クラッチレバーの他方を切操作し、走行輪の一方を若干逆回転させる操作を繰り返すことにより、より一層小回り旋回をすることができる。また、一つの操作体の操作で同時に正/逆回転させることが可能な変速機を用いることにより、さらに旋回は楽に、容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係る作業用車両の構成を示す平面図、図2は作業用車両の構成を示す側面図、図3は作業用車両の構成を示す正面図、図4は作業用車両のユニットを旋回させた状態を示す平面図である。
【0030】
この作業用車両は、液タンク11等の防除機器1が搭載され、上下に貫通する軸受部21を有する機体2と、該機体2の前後左右に配され、該機体2を支持している二つの走行輪3,3a及び二つの遊動輪4,4aと、走行輪3,3aを駆動する駆動源としてのエンジン5と、該エンジン5の出力軸及び走行輪3,3aを連動連結している動力伝達機構6と、機体2を操向する操向ハンドル7とを備え、走行輪3,3a、エンジン5、動力伝達機構6及び操向ハンドル7を機体2に対し一体的に旋回させることができるユニットAとし、該ユニットAを機体2の軸受部21に上下方向の枢軸8を中心として旋回を可能に枢支してある歩行型の作業用車両である。
【0031】
機体2は平面視矩形をなす枠部22と、該枠部22の前側の左右両端から垂下する垂杆23,23と、該垂杆23,23の下端に連結され、左右方向へ配されている支持杆24とを有し、枠部22の後側で左右方向中央部に、上下に貫通する軸受部21が設けられている。枠部22の前側で左右両端部及び垂杆23,23には平行リンク機構25が枢支され、枠部22の前側で左右方向中央部には立上杆26が立設され、該立上杆26の上端部及び平行リング機構25の先端部間に吊下げ索27が掛設される。また、枠部22の両側部には後記するノズル杆14,14を受止める杆受部材28,28が立設されている。
【0032】
支持杆24は固定杆部24aと、該固定杆部24aに対して摺動が可能な可動杆部24bとを有し、固定杆部24a及び可動杆部24bに脚体29,29が垂設され、脚体29,29に遊動輪4,4aが上下方向の枢軸を中心として旋回を可能に取付けてある。
【0033】
遊動輪4,4aは、逆U字形をなすホルダ41,41と、該ホルダ41,41に立設されている枢軸とを有し、ホルダ41,41の対向する部片に回転を自在に支持されている。また、遊動輪4,4aが脚体29,29に対して自由に回動するのをロックするロックレバーが脚体29,29に着脱自在に枢着され、該ロックレバーを操作することにより、遊動輪4,4aのロック及びロック解除ができるように構成されている。
【0034】
平行リンク機構25は、四つのリンク25aと、該リンク25aの先端に連結されている固定杆25bとを有する。
【0035】
ユニットAは、上方へ起立する枢軸8を有し、走行輪3,3a間の上側に配されているベース部材91と、該ベース部材91から後方へ延出されている支持台92と、ベース部材91の左右両端から垂下されているケース部材93,93とを備え、支持台92にエンジン5及び該エンジン5の出力軸に連動連結されているポンプ12とを搭載してあり、ベース部材91の中央部にトランスミッション61が搭載され、支持台92の後端にループ状の操向ハンドル7が連結され、ケース部材93,93の下部に走行輪3,3aの車軸が回転を可能に支持されている。尚、ベース部材91は、左右方向への摺動が可能な可動杆91aを有し、該可動杆91aに一方のケース部材93が取付けられ、一方のケース部材93が支持する走行輪3の左右方向への位置を変更することができるように構成されている。
【0036】
トランスミッション61は、エンジン5の出力軸に連動連結され、走行輪3,3aを正/逆回転させる変速機と、走行輪3,3aへの動力伝達を入/切に制御するクラッチとを有し、ミッションケースに内蔵されている。また、変速機を前進段、後進段及びニュートラル段に操作する変速レバー62が操向ハンドル7側の配置され、クラッチを入側/切側に操作する左右のクラッチレバー63,64が操向ハンドル7に取付けられ、ユニットAの旋回をロックするロック機構10の操作レバー10aが操向ハンドル7に枢着されている。
【0037】
クラッチレバー63,64はロック機構を有し、一度把持することにより把持位置でロックされ、クラッチ切の状態を維持することができ、再度把持することにより、把持位置でのロックが解除され、クラッチ入の状態となるように構成されている。
【0038】
図5はロック機構の構成を示す拡大平面図、図6はロック機構の構成を示す拡大断面図である。ロック機構10は、機体2の軸受部21に固定されている凸部10bと、該凸部10bに対応する凹部10cを有し、ベース部材91に上下方向への揺動を可能に枢支されている可動体10dとを備え、該可動体10dに操作レバー10aが連動連結されており、操作レバー10aを後方へ動作させることにより、可動体10dを約90°揺動させ、凹部10cの凸部10bとの係合を解除し、操作レバー10aを前方へ動作させることにより、可動体10dを復帰揺動させ、凹部10cが凸部10bと係合するように構成してある。
【0039】
防除機器1は、ポンプ12と、該ポンプ12が給液する液体を貯液する液タンク11と、ポンプ12が吐出する圧液を噴霧する複数のノズル13を有する二つのノズル杆14,14とを備え、ノズル杆14,14の基端が固定杆25bの左右両端部に傾斜軸により枢着され、平行リンク機構25に対して斜め後方へ格納、及び平行リンク機構25に対して左右方向へ展開することが可能であり、格納した際、ノズル杆14,14の中間が杆受部材28,28に受止められるように構成されている。尚、固定杆25bの下部にも複数のノズル13が設けられており、また、ポンプ12の吐出路を開閉する開閉弁が設けられている。
【0040】
以上のように構成された作業用車両は、液タンク11に薬剤等の液体が貯液され、エンジン5の駆動によりトランスミッション61等の動力伝達機構6を経て走行輪3,3aが駆動されるとともに、ポンプ12が駆動される。また、操向ハンドル7を把持する姿勢で変速レバー62を前進段へ操作することにより走行輪3,3aを正回転させ、前進することができ、変速レバー62を後進段へ操作することにより走行輪3,3aを逆回転させ、後進することができ、変速レバー62をニュートラル段へ操作することにより走行輪3,3aへの動力伝達を遮断することができる。
【0041】
また、操向ハンドル7を把持する姿勢で、左クラッチレバー63を操作し、左側のクラッチを切動作させることにより、左走行輪3への動力伝達を遮断し、右走行輪3aの正回転又は逆回転方向へユニットAを旋回させることができ、右クラッチレバー64を操作し、右側のクラッチを切動作させることにより、右走行輪3aへの動力伝達を遮断し、左走行輪3の正回転又は逆回転方向へユニットAを旋回させることができる。また、操作レバー10aを操作することによりロック機構10によるユニットAの旋回ロック及びロック解除を行うことができる。尚、非散布作業時、ノズル杆14,14は図1、図2のように斜め上方へ格納され、散布作業時は図3のように機体2の左右両側へ水平状に展開される。
【0042】
図7は耕地で農作業を行う際の作業工程を示す模式的説明図、図8は耕地の枕地で旋回する際の模式的説明図、図9は作業用車両が枕地に至った状態を示す説明図、図10は枕地で作業用車両のユニットAが左旋回する過程を示す説明図である。
【0043】
薬液等の散布作業は、エンジン5の駆動により走行輪3,3aを正回転させ、畝の長手方向一方側の枕地(往側枕地X)でノズル杆14,14を水平状に展開させた状態で(図3参照)、操向ハンドル7を把持する作業者が畝間の離隔する二つの溝上へ走行輪3,3a及び遊動輪4,4aを入れ、二つの溝上を畝に沿って往走行し、畝の長手方向他方側の枕地(復側枕地Y)へ至った際(a地点)、変速レバー62をニュートラル段へ操作し、左クラッチレバー63を操作して左側のクラッチを切動作させ、右走行輪3aの正回転でユニットAを機体2に対して若干左旋回させた後、左クラッチレバー63を操作して左側のクラッチを入動作させ、さらに右クラッチレバー64を操作して右側のクラッチを切動作させるとともに、変速レバー62を後進段へ操作し、左走行輪3を逆回転させ、若干左旋回させる。この右走行輪3aの正回転と左走行輪3の逆回転との繰り返し操作によりユニットAを機体2に対して除々に左旋回させつつ約90°左旋回させることができ、図9の状態から図10の状態になる。この場合、ユニットAの走行輪3,3aは枢軸8を中心として方向転換される。また、機体2及び防除機器1は往走行時の姿勢であり、ノズル杆14,14は復側枕地Yの長手方向に配されている。尚、ユニットAの左旋回時、操向ハンドル7を把持する作業者が操向ハンドル7を左旋回方向へ押圧し、ユニットAに補助旋回力を加えることにより、ユニットAの旋回をより一層スムーズに行わせることができる。
【0044】
このように復側枕地YでユニットAを約90°左旋回させた後、変速レバー62を前進段へ操作し、走行輪3,3aを正回転させることにより復側枕地Yに沿って横方向へ前進させることができる。そして、復走行させる場所(b地点)で変速レバー62をニュートラル段へ操作し、左クラッチレバー63を操作して左側のクラッチを切動作させ、右走行輪3aの正回転でユニットAを若干右旋回させた後、左クラッチレバー63を操作して左側のクラッチを入動作させ、さらに右クラッチレバー64を操作して右側のクラッチを切動作させるとともに、変速レバー62を後進段へ操作し、左走行輪3を逆回転させる。この右走行輪3aの正回転と左走行輪3の逆回転との繰り返し操作によりユニットAを機体2に対して除々に右旋回させつつ約90°右旋回させることができ、図10の状態から図9の状態になる。この場合、ユニットAの走行輪3,3aは枢軸8を中心として方向転換される。また、機体2は往走行時の姿勢であり、ノズル杆14,14は復側枕地Yの長手方向に配されている。尚、ユニットAの右旋回時、操向ハンドル7を把持する作業者が操向ハンドル7を右旋回方向へ押圧し、ユニットAに補助旋回力を加えることにより、ユニットAの旋回をより一層スムーズに行わせることができる。
【0045】
このように復側枕地YでユニットAを約90°右旋回させた後、変速レバー62を後進段へ操作し、走行輪3,3aを逆回転させることにより、操向ハンドル7を把持する作業者が畝間の離隔する二つの溝上へ走行輪3,3a及び遊動輪4,4aを入れ、二つの溝上を畝に沿って復走行し、畝の長手方向他方側の往側枕地Xのc地点へ至った際、変速レバー62をニュートラル段へ操作し、前記した操作でユニットAを機体2に対して左旋回させ、この姿勢で往側枕地Xに沿って横方向へ前進させ、往走行させるd地点で変速レバー62をニュートラル段へ操作し、前記した操作でユニットAを機体2に対して右旋回させ、二つの溝上を畝に沿って往走行する。
【0046】
以上のようにエンジン5、動力伝達機構6、走行輪3,3a及び操向ハンドル7のユニットAを機体2に対して旋回させるため、往側枕地X及び復側枕地Yでは、ユニットAの枢軸を中心として方向転換される走行輪3,3aの転換スペースと、走行輪3,3a及び遊動輪4,4aが通るスペースとを設けるだけで左旋回及び右旋回することができ、換言すると、図8、図10に示すように往側枕地X及び復側枕地Yに畝を設けることができ、一区画当たりの植付面積を多くすることができる。
【0047】
しかも、変速レバー62及びクラッチレバー63,64を操作することにより、枢軸8を中心として走行輪3,3aを方向転換させることができるため、より一層小回り旋回することができるとともに、ユニットAをスムーズに旋回させることができる。
【0048】
また、往走行及び復走行および枕地走行する際、ロック機構10によりユニットAの機体2に対する旋回がロックされ、ユニットAと機体2とが一体化されているため、往走行及び復走行を安定して行わせることができる。尚、往側枕地X及び復側枕地Yで横方向へ走行する際も、ロック機構10が効いた状態である。
尚、図7では復側枕地Yのa地点で左旋回する耕地での作業について説明したが、その他、復側枕地Yのa地点で右旋回する耕地での作業も同様に行うことができる。
【0049】
図11は作業用車両の他の構成を示す平面図である。この作業用車両は、脚体29,29夫々に上下方向の枢軸を中心として旋回を可能に取付けてある遊動輪4,4aを連動して旋回させる杆状の連動部材42を設けてある。遊動輪4,4aのホルダ41,41に着脱自在に係止し、旋回方向と交差する方向へ延出された連動片43,43を設けてあり、該連動片43,43の先端に連動部材42の両端を相対回転を可能に連結してある。
【0050】
この作業用車両にあっては、往側枕地X及び復側枕地YでユニットAとともに機体2が横方向へ移動する際、遊動輪4,4aを連動して前記横方向へ方向転換させることができ、機体2の安定性を高めることができるとともに、安定性よく横方向へ走行させることができる。
その他の構成及び作用は図1〜図10と同様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、その詳細な説明及び作用効果の説明を省略する。
【0051】
尚、以上説明した実施の形態では、変速レバー62及びクラッチレバー63,64を操作することにより、枢軸8を中心として走行輪3,3aを方向転換させるように構成された作業用車両について説明したが、その他、変速機及び変速レバーがなく、クラッチレバー63,64の操作で左走行輪3又は右走行輪3を中心としてユニットAを旋回させる構成としてもよい。この場合、左クラッチレバー63を切り操作し、右走行輪3aの正回転で左旋回し、右クラッチレバー64を切り操作し、左走行輪3の正回転で右旋回する。
【0052】
また、以上説明した実施の形態では、左クラッチレバー63及び右クラッチレバー64を操作することにより旋回するように構成したが、その他、一つの操作体の操作で同時に正/逆回転させることが可能な変速機を備え、一つの操作体を操作することにより、左走行輪3及び右走行輪3を同時に正/逆回転させることができるように構成してもよい。この場合、旋回はさらに楽に、容易に行うことができる。
【0053】
また、以上説明した実施の形態では、防除機器1を備える作業用車両について説明したが、その他、本発明に係る作業用車両は運搬用台車、耕地管理機等として使用することもできる。この場合、機体に搭載してある防除機器1に代えて耕地管理機器、荷台等を機体に搭載してある構成とする。また、本発明に係る作業用車両は歩行形である他、作業者が搭乗して操向する乗車形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る作業用車両の構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る作業用車両の構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る作業用車両の構成を示す正面図である。
【図4】本発明に係る作業用車両のユニットを旋回させた状態を示す平面図である。
【図5】本発明に係る作業用車両のロック機構の構成を示す拡大平面図である。
【図6】本発明に係る作業用車両のロック機構の構成を示す拡大断面図である。
【図7】耕地で農作業を行う際の作業工程を示す模式的説明図である。
【図8】耕地の枕地で旋回する際の模式的説明図である。
【図9】本発明に係る作業用車両が枕地に至った状態を示す説明図である。
【図10】枕地で作業用車両のユニットAが左旋回する過程を示す説明図である。
【図11】本発明に係る作業用車両の他の構成を示す平面図である。
【図12】耕地の枕地で作業用車両を旋回させ、農作業を行う際の模式的説明図である。
【図13】電動モータ付走行輪の構成を示す断面図である。
【図14】電動モータ付走行輪の構成を示すもので、(a) は平面図、(b) は電動モータ付走行輪が90°旋回した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 防除機器(作業機)
2 機体
21 軸受部
3,3a 走行輪
4,4a 遊動輪
42 連動部材
5 エンジン(駆動源)
6 動力伝達機構
61 トランスミッション(変速機、クラッチ)
63,64 クラッチレバー
7 操向ハンドル
8 枢軸
10 ロック機構
A ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機が搭載される機体と、該機体の前後左右に配され、該機体を支持している二つの走行輪及び二つの遊動輪と、前記走行輪夫々を駆動する駆動源と、該駆動源及び前記走行輪夫々を連動連結している動力伝達機構とを備える作業用車両において、前記走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構を前記機体に対し枢軸を中心に一体的に旋回させることが可能としてあることを特徴とする作業用車両。
【請求項2】
前記遊動輪夫々は上下方向の軸を中心として旋回を可能としてあり、該遊動輪夫々を連動して旋回させる連動部材を着脱自在に備える請求項1記載の作業用車両。
【請求項3】
前記走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構の旋回をロックするロック機構を有する請求項1又は2記載の作業用車両。
【請求項4】
前記走行輪夫々、駆動源及び動力伝達機構の旋回操向及び前記機体の操向を行う操向ハンドルを備える請求項1乃至3のいずれか一つに記載の作業用車両。
【請求項5】
前記動力伝達機構は前記走行輪夫々への動力伝達を入/切に制御するクラッチを有し、該クラッチの操作を行う二つのクラッチレバーを前記操向ハンドルに設けてある請求項4記載の作業用車両。
【請求項6】
前記動力伝達機構は前記走行輪夫々を正/逆回転させる変速機を有する請求項5記載の作業用車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−73272(P2009−73272A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242766(P2007−242766)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000250007)有光工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】