説明

作業車両のアーム型作業機

【課題】農用作業車両の複数箇所にロボットアームを装着可能に構成し、ロボットアームにより複数の作業を円滑に実行する。
【解決手段】縦軸(22c)回り及び横軸(22d)回りに回動自在な第一アーム(23)と、この第一アーム(23)の先端部に屈折自在に連結している第二アーム(24)とでロボットアームを構成する。ベース部材(22)に前記第一アーム(23)を前記縦軸(22c)回りに回動自在に支持し、トラクタ(1)の機体前側部と左右側部にベース部材(22)の取付部(21a,21b)を設け、第二アーム(24)の先端部に複数の補助作業装置(26,…)を取り付け可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボットアームを作業車両に備え、多目的な用途に用いられるアーム型の作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農用トラクタ等の作業車両に、多目的な用途に用いられる所謂ロボットアームを備えて各種作業の補助を行なう技術が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005-40127号公報
【特許文献2】特開平11−9008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の構成にあっては、アーム型の作業機は車体後部に定められていて、特定の作業に限定して備えるものであったのでコストも高いものになっていた。またこれらアーム型作業機を車両に装着するときには、同アームの姿勢が変化しても、車両の重量バランスを極力良好に保つ構成が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記問題点を解決するために、この発明は次のような技術的手段を講じた。
即ち、請求項1の発明は、縦軸(22c)及び横軸(22d)回りに回動自在な第一アーム(23)と、該第一アーム(23)の先端部に屈折自在に連結している第二アーム(24)を有する作業車両のアーム型作業機において、車両の複数箇所に共通のベース部材(22)に対する取付部(21a,21b)を構成し、該ベース部材(22)に前記第一アーム(23)の縦軸(22c)を備えたことを特徴とする作業車両のアーム型作業機とする。
(請求項1の作用)
以上のように構成した作業車両では、作業に応じてベース部材(22)の取付箇所を作業車両の機体前側部あるいは左右側部に変更し、作業を行う。
【0005】
前記構成によると、ベース部材(22)に対して第一アーム(23)は縦軸(22c)回りに旋回すると共に横軸(22d)回りに上下回動し、第一アーム(23)に対して第二アーム(24)は上下屈折回動し、補助作業装置(26,…)は移動操作されて補助作業を行なう。また、ベース部材(22)の取付位置を作業車両の機体前側部あるいは左右側部に変更し、複数の補助作業装置(26,…)により補助作業をすることができる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ロボットアームを備えるベース部材(22)の取付位置を作業車両の機体前側部あるいは左右側部に変更することにより、複数の補助作業装置(26,…)を操作し円滑に補助作業をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を図面に基づいて説明する。
最初に作業車両となる農用トラクタ1の全体構成について説明する。
図1には農用トラクタの側面図、図2には正面図が図示されている。農用トラクタ1は、機体フレーム2の前部上方にエンジン3を搭載し、機体フレーム2の前部下方にはフロントアクスルケース4をセンターピポット回りに上下揺動自在に取り付け、フロントアクスルケース4の両端部にキングピンを介して左右前輪ケース5,5を操舵自在に取り付け、左右前輪ケース5,5に左右前輪6,6を取り付けている。エンジン3の後部にはクラッチハウジング7を介してミッションケース8を連結し、ミッションケース8には左右リヤーアクスルケース(図示省略)を介して左右後車軸(図示省略)を軸架し、左右後車軸の両端に左右後輪11,11を取り付けている。
【0008】
エンジン3の外周部をボンネット12で被覆し、ボンネット12の後部上方にステアリングハンドル16を配設し、ミッションケース8の上方には座席17を設けている。また、ミッションケース8の後側上部には油圧ケース(図示省略)を配設し、油圧ケース(図示省略)の両側部にリフトアーム(図示省略)を上下回動自在に軸支し、油圧ケース(図示省略)に内装した昇降シリンダ(図示省略)によりリフトアーム(図示省略)を上下回動可能に構成し、後部作業機(図示省略)を昇降可能に連結している。また、機体フレーム2の前端部及び前側左右両側部を覆うようにフロントバンパ21を取り付け、このフロントバンパ21にはベース部材22取付用の前面取付部21a及び左右側面取付部21b,21bを構成している。
【0009】
次に、図3に基づき作業操作装置について説明する。
上記ベース部材22は側面視L字型に屈折した上部取付部22a及び下部連結部22bにより構成されていて、下部連結部22bをフロントバンパ21の前面取付部21a及び左右側面取付部21b,21bに取り付けることができる。ベース部材22の上部取付部22aにはブラケット25を縦軸22c回りに回動自在に取り付け、ブラケット25には第一アーム23の基部を縦軸22cに直交する横軸22d回りに回動可能に取り付けている。第一アーム23の先端部に横軸23a回りに屈折自在回動に第二アーム24を取り付け、この第二アーム24の先端部には給水用ポンプ等の補助作業装置26,…を取り付け可能に構成している。
【0010】
また、ベース部材22に対してモータ31によりブラケット25を縦軸22c回りに回動可能に構成している。また、第一アーム23と同じ長さに構成されて平行リンクを形成する第一リンク34の基端部をブラケット25にピン連結し、第一アーム23の先端部に中間アーム36を固着し、この中間アーム36の一端に第一リンク34の先端部をピン連結し、第一昇降シリンダ32により第一アーム23を昇降回動可能に構成している。また、中間アーム36の他端に第二アーム24と同じ長さで平行リンクを形成する第二リンク37の一端をピン連結し、第二リンク37の他端を第二アーム24の先端部にピン連結し、第一アーム23に対して第二アーム24を第二昇降シリンダ33により昇降回動可能に構成している。
【0011】
前記実施例では第一アーム23及び第二アーム24によりロボットアームを構成している。なお、図面は省略したが第二アーム24の先端部に前記と同様に第三アーム、第三リンク及び第三昇降シリンダを接続してロボットアームを構成してもよい。また、平行リンク構成として説明したが第一リンク34や第二リンク37の長さを調整可能に設けて寸法の異なるリンク構成としてもよい。
【0012】
また、これらのモータ31、第一昇降シリンダ32駆動用制御弁(図示省略)のソレノイド及び第二昇降シリンダ33駆動用の制御弁(図示省略)のソレノイドを制御部(図示省略)の出力側に接続し、制御部(図示省略)の指令により作動可能に構成している。また、ベース部材22には視覚センサ38を取り付け、図外制御部に検出出力できるよう構成し補助作業装置26の操作状態を検出するように構成している。
【0013】
次に、図4により補助作業装置の他の実施例について説明する。
第二アーム24の先端部に水噴射ノズル67を取り付けている。この噴射ノズル67に給水ホース61の終端側を接続し、給水ホース61を第一アーム23及び第二アーム24に沿わせて配索し、給水ホース61の始端側を水道の蛇口(図示省略)に接続している。
【0014】
前記構成によると、水噴射スイッチ(図示省略)をONすると、制御部(図示省略)からの指令出力によりモータ31、ベース部材22、第一アーム23及び第二アーム24があらかじめプログラムされた順序に作動されながら水噴射ノズル67から水が噴射され、ボンネット12、キャビン13、左右フェンダ14,14、左右前輪6,6及び左右後輪11,11の泥を順次洗い流し自動的に清掃される。
【0015】
また、トラクタ1を水噴射ノズル67で洗車するにあたり、左右前輪6,6、左右後輪11,11及び左右フェンダ14,14の泥の多くついている部分を初めに洗車し、次いで、トラクタ1のボンネット12、フロア15等のガラスでない部分を洗車し、最後にキャビン(図示省略)のガラス部分を洗車するようにしてもよい。このようにすると、短時間できれいに洗車できる。
【0016】
次に、図5〜図7に基づき補助作業装置の他の実施例について説明する。
トラクタ1の機体後部には、昇降リンク機構56を介して散水作業機57を取り付け、この散水作業機57には起伏回動、伸縮及び折り曲げ可能な散水ブーム58を取り付け、この実施形態では散水ブーム58を機体右側に延出している。また、散水作業機57の左側部にはベース部材22を取り付け、ベース部材22から前記実施例と同様に第一アーム23及び第二アーム24を延出し、第二アーム24の先端部に給水用ポンプ59を取り付け、給水用ポンプ59から延設した給水ホース61を第一アーム23及び第二アーム24に沿わせて配索し、給水ホース61の終端側を給水作業機57の給水部57aに接続している。
【0017】
前記構成によると、トラクタ1を水路62に沿う位置に移動し、操作スイッチ(図示省略)を操作して、第一アーム23を縦軸22c回りに旋回、横軸22d回りに昇降及び第二アーム24を昇降作動し、給水用ポンプ59を水路62の底面に接地させる。次いで、給水用ポンプ59及び散水作業機57を駆動しながらトラクタ1を水路62に沿って走行させる。すると、給水用ポンプ59により水路62の水が散水作業機57に供給され、散水ブーム58から圃場に散水される。従って、トラクタ1に大きなタンクを設置する必要もなく、水路62に沿った圃場に散水することができる。
【0018】
また、給水用ポンプ59を図8のように構成してもよい。
即ち、給水用ポンプ59の本体には上側面及び一側面を覆うように取付板63を取り付け、取付板63の上面部63aを第二アーム24への取付部とし、取付板63の側面部63bには縦軸回りに回転する左右方向感知ローラ64を取り付けている。また、側面部63bの下端部から左右方向外側に延出するように下面部63cを設け、この下面部63cに左右方向横軸回りに回転する上下方向感知ローラ66を取り付けて、左右方向及び上下方向の圧接度合いを検出し、制御部(図示省略)に入力するように構成している。
【0019】
前記構成によると、左右方向感知ローラ64により圧力の増減が検出されると、制御部(図示省略)の指令により第一アーム23及び第二アーム24が調節作動され、左右方向感知ローラ64が所定圧力に復帰するように調整される。また、上下方向感知ローラ66により圧力の増減が検出されると、同様に上下方向感知ローラ66が所定圧力に復帰するように調整される。従って、オペレータはトラクタ1を水路62に沿うように操舵操作に専念すればよく、運転操作を簡単にしながら給水用ポンプ59を水路62の所定位置に沿わせて移動し円滑に給水作業をすることができる。
【0020】
次に、図9により補助作業装置の他の実施例について説明する。第二アーム24の先端部には開閉用ハンド41を取り付けている。この開閉用ハンド41は側面視L型のフック状に構成されていて、制御部(図示省略)の指令により車庫(図示省略)等のシャッタの開閉をするものである。
【0021】
即ち、シャッタスイッチ(図示省略)をONすると、トラクタ1は視覚センサ38の検出値により車庫のシャッタの所定距離前方で停止し、制御部の指令により第一アーム23及び第二アーム24を作動して開閉用ハンド41をシャッタ(図示省略)の凹部に挿入し、上昇あるいは下降することにより、シャッタ(図示省略)を開閉するものである。
【0022】
次に、図10により補助作業装置の他の実施例について説明する。第二アーム24の先端部には挟持用ハンド42を取り付けている。この挟持用ハンド42は例えば一対の挟持体42a,42aの基部を枢支して開閉可能に構成し、基部に設けた開閉モータ42bにより制御部(図示省略)の指令により開閉作動するように構成している。
【0023】
しかして、自動スイッチ(図示省略)をONすると、視覚センサ38は検出を開始し、検出値が所定値になると被挟持物の所定距離前方でトラクタ1は停止し、制御部の指令により第一アーム23、第二アーム24及び開閉モータ42bを作動し、挟持体42a,42aを挟持物の挟持位置に移動させ、次いで、開閉モータ42bにより挟持体42a,42aを閉鎖回動し被挟持物を挟持収集するものである。
【0024】
次に、図11に基づき補助作業装置の他の実施例について説明する。
第二アーム24の先端部には噴射ノズル43を取り付け、機体フレーム2の前側部左右一側にコンプレッサ44を配設し、コンプレッサ44からエアホース46を延設して第一アーム23及び第二アーム24に沿わせて配索し、先端部を噴射ノズル43に接続している。
【0025】
前記構成によると、噴射スイッチ(図示省略)をONすると、制御部(図示省略)からの指令出力によりコンプレッサ44が駆動され、モータ31、第一昇降シリンダ32及び第二昇降シリンダ33があらかじめプログラムされた順序に従って作動されて噴射ノズル43からエアが噴射され、左右前輪6,6及び左右後輪11,11の泥を順次吹き飛ばして清掃し、道路への泥の落下を防止するものである。
【0026】
次に、図12及び図13に基づき補助作業装置の他の実施例について説明する。
フロントバンパ21の右側面取付部21bにベース部材22を取り付け、第二アーム24の先端部に燃料給油用ポンプ47を取り付けている。燃料給油用ポンプ47の吸入口47aの側方には受皿51を設け、第二アーム24に対して反転モータ50により燃料給油用ポンプ47を上下反転可能に構成し、燃料注入後には燃料給油用ポンプ47の注入口47aを上側に反転させることにより、燃料の落下を防止するように構成している。
【0027】
また、燃料給油用ポンプ47から延設した燃料ホース48を第一アーム23及び第二アーム24に沿って配索し、燃料ホース48の終端側をボンネット12内に設けた燃料タンク(図示省略)の給油口に接続可能に構成している。
【0028】
前記構成によると、給油スイッチ(図示省略)をONすると、図13(A)に示すように、制御部(図示省略)の指令により、トラクタ1は視覚センサ38で検出しながら走行し、燃料補給用タンク52が燃料給油用ポンプ47の到達できる所定半径53内に到達すると停止する。次いで、制御部(図示省略)からの指令出力によりベース部材22、第一アーム23及び第二アーム24があらかじめプログラムされた順序に従って作動し、燃料給油用ポンプ47の注入口47aを補給用タンク52の開口部に挿入し、次いで、燃料給油用ポンプ47を駆動し補給用タンク52の燃料をトラクタ1の燃料タンク(図示省略)に自動的に補給する。
【0029】
また、図14と図15のように構成してもよい。
第二アーム24の先端部に調節操作部73を取り付け、水路62脇の畦道をトラクタ1で走行しながら、前記図12及び図13の実施例と同様に、制御部(図示省略)の指令によりベース部材22、第一アーム23及び第二アーム24を操作して調節操作部73を作動し、水路62と圃場との間に設けている取水調節板74の調節ハンドル75を増減調節するように構成する。
【0030】
次に、図16に基づき補助作業装置の他の実施例について説明する。
トラクタ1の機体後部には、昇降リンク機構56を介して施肥機71を取り付け、施肥機71には散布量調節手段71aとしての繰出しバルブを設け、制御部(図示省略)の指令により散布量調節手段71aを増減調節可能に構成している。また、機体前側部のフロントバンパ21の前側取付部21aにはベース部材22を取り付け、第二アーム24の先端部に土壌採取分析手段72を取り付けて、土壌採取分析手段72により土壌を採取分析し採取土壌の酸性度、肥料成分の多少等の検出値を制御部(図示省略)に入力するように構成している。
【0031】
前記構成によると、施肥スイッチ(図示省略)をONしてトラクタ1が走行を開始すると、施肥機71から標準量の肥料を散布する施肥作業を開始する。次いで、所定時間あるいは所定走行距離毎にあらかじめ決められた順序に従って第一アーム23及び第二アーム24を作動し、土壌採取分析手段72によりサンプル土壌を採取分析しその検出値を制御部(図示省略)に入力する。しかして、肥料の残存量が基準値より大のときには、施肥機71の散布量調節手段71aを所定量減少側に調節し、また、肥料の残存量が基準値より小のときには、施肥機71の散布量調節手段71aを所定量増加側に調節し、また、肥料の残存量が基準値の範囲内のときには標準散布を維持する制御をしながら施肥作業を実行する。従って、土壌の養分状態を均等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】トラクタの側面図。
【図2】トラクタの正面図。
【図3】ロボットアームの側面図。
【図4】ロボットアームの側面図。
【図5】トラクタの斜視図。
【図6】散水作業機の斜視図。
【図7】トラクタの作業状態を示す平面図。
【図8】給水用ポンプの斜視図。
【図9】開閉用ハンドの側面図。
【図10】挟持用ハンドの側面図。
【図11】トラクタの側面図。
【図12】ロボットアームの側面図。
【図13】作業状態のトラクタを示す平面図。
【図14】トラクタの側面図。
【図15】取水調節板の斜視図。
【図16】トラクタの側面図。
【符号の説明】
【0033】
1 トラクタ
21 フロントバンパ
21a 前面取付部
21b 左右側面取付部
22 ベース部材
22c 縦軸
22d 横軸
23 第一アーム
24 第二アーム
26 補助作業装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸(22c)及び横軸(22d)回りに回動自在な第一アーム(23)と、該第一アーム(23)の先端部に屈折自在に連結している第二アーム(24)とからなるロボットアームを備える作業車両(1)において、ベース部材(22)に前記第一アーム(23)を前記縦軸(22c)回りに回動自在に支持し、前記作業車両(1)の機体前側部と左右側部に前記ベース部材(22)の取付部(21a,21b)を設け、前記第二アーム(24)の先端部には複数の補助作業装置(26,…)を取り付け可能に構成したことを特徴とする作業車両の作業操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−89465(P2007−89465A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282550(P2005−282550)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】