像担持体および画像形成装置
【課題】装置を大型化することなく、安定して像担持体のホームポジションを検出可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】最表面薄膜層3bが、厚みが比較的厚い厚膜領域31および厚みが比較的薄い薄膜領域32を有し、厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が関係式;50nm≦d1−d2≦950nm;20nm≦d2<d1≦1000nm;を満たす像担持体3、および光センサ20を備えた画像形成装置であって、像担持体のd1およびd2が、発光センサからの光に対する像担持体外周面の反射率Rと像担持体の最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表す反射率関数R(d)について、関係式;|R(d1)−R(d2)|≧0.5×{Rmax(d)−Rmin(d)}をさらに満たす画像形成装置。
【解決手段】最表面薄膜層3bが、厚みが比較的厚い厚膜領域31および厚みが比較的薄い薄膜領域32を有し、厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が関係式;50nm≦d1−d2≦950nm;20nm≦d2<d1≦1000nm;を満たす像担持体3、および光センサ20を備えた画像形成装置であって、像担持体のd1およびd2が、発光センサからの光に対する像担持体外周面の反射率Rと像担持体の最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表す反射率関数R(d)について、関係式;|R(d1)−R(d2)|≧0.5×{Rmax(d)−Rmin(d)}をさらに満たす画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写体および感光体等の像担持体、ならびにモノクロ/フルカラーの電子写真複写機、プリンタ、FAXおよびそれらの複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写方式を用いたフルカラー画像形成装置では、色別に感光体上に形成された複数のトナー像を一度、中間転写ベルトに転写させ、重ね合わせた後、紙などの被記録媒体に一括して転写してカラー画像を得ている。感光体から中間転写ベルトへの転写は「一次転写」と呼ばれ、中間転写ベルトから被記録媒体への転写は「二次転写」と呼ばれている。それらの転写工程では、転写ローラ等にバイアスを印加して電界を発生させることにより、トナー像を転写させる。
【0003】
上記のようなフルカラー画像形成装置では4色のトナー像を精度良く重ね合わせる必要があるため、色ずれを防止することが必要である。そのため、あらかじめ中間転写ベルトの厚みムラに起因する各色の色ずれ量を記憶しておき、露光タイミングを補正することが行われている(特許文献1)。そのような色ずれの補正を行なうためにはベルトのどの位置に画像形成されるかを正確に検知する必要があるため、ベルトのホームポジションを検出することが必要になる。ホームポジションの検出方法としては、ベルトの端部に検出用の穴を開け透過型のセンサで検出する方法、ベルト端部に反射材を貼り付け反射型のセンサで検出する方法が一般的に用いられている。
【0004】
しかしながら、ベルトに穴を開ける方法では、ベルトの強度が落ちるという不具合があった。反射材を貼り付ける方法では、反射材が剥がれたり、汚れたりすることで、検出が出来なくなるという不具合があった。また、ベルト端部に検出用の穴や反射材を設けるためにベルトの幅を広くする必要があり、更に検出用に専用のセンサを設ける必要があるため、装置が大型化した。
【0005】
一方、画像形成装置内に配置される各種部材について、使用上の注意書きや製品番号等の表示事項は、紙やフィルム等に印刷したものを、装置内の筐体壁面や部材の側面に貼付することが一般的であった。例えば、中間転写体または感光体等の部材の設置方向や「さわるな」等の注意書きは、紙やフィルム等に印刷したものを、装置内の筐体壁面や当該部材の側面に貼付していた。また例えば、部材の製品番号等は、紙やフィルム等に印刷したものを、当該部材の側面に貼付していた。しかしながら、そのような表示事項の印刷物を貼付することは煩雑であった。またそのような印刷物は耐久時において装置内のトナー粉煙により汚染され、長期にわたって継続して表示するすることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−242674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第1発明は、使用上の注意書きや製品番号等の表示事項を、自己の表面、特に像担持面に長期にわたって継続して表示する像担持体、および該像担持体を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
第2発明は、装置を大型化することなく、安定して像担持体のホームポジションを検出可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明は、外周面に少なくとも1層の薄膜層を有する像担持体であって、
最表面薄膜層が厚膜領域および薄膜領域を有し、該厚膜領域および薄膜領域によって所定の像を形成され、厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が以下の関係式(1)〜(2);
50nm≦d1−d2≦950nm (1)
20nm≦d2<d1≦1000nm (2)
を満たすことを特徴とする像担持体、および該像担持体を備えた画像形成装置に関する。
【0010】
第2発明は、
外周面に少なくとも1層の薄膜層を有する像担持体であって、最表面薄膜層が厚膜領域および薄膜領域を有し、該厚膜領域および薄膜領域によって所定の像を形成され、厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が以下の関係式(1)〜(2);
50nm≦d1−d2≦950nm (1)
20nm≦d2<d1≦1000nm (2)
を満たす像担持体、および
該像担持体外周面に対して光を照射する発光主波長λの光源部と、その反射光を受光する受光部とから構成され、像担持体外周面の反射率を光学的に検知する光センサ;
を備えた画像形成装置であって、
像担持体における厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が、発光主波長λの光源部からの光に対する像担持体外周面の反射率Rと像担持体の最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表す反射率関数R(d)について、以下の関係式(3);
|R(d1)−R(d2)|≧0.5×{Rmax(d)−Rmin(d)} (3)
をさらに満たすことを特徴とする画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
第1発明に係る像担持体は、最表面薄膜層における厚膜領域と薄膜領域との間で、トナー像の転写性にほとんど差がなく、トナー画像に悪影響を及ぼすことがないので、外周面に厚膜領域と薄膜領域とを混在させることができる。しかも、厚膜領域と薄膜領域とでは、それらの厚みの差に基づいて自然光に対する反射率に差が生じるので、厚膜領域と薄膜領域とは目視で区別できる。よって、像担持面(最表面薄膜層)において厚膜領域中、薄膜領域で文字や記号等の像(エンボス像)を表したり、または薄膜領域中、厚膜領域でそのような像を表したりしても、紙などの被記録媒体上に形成されるトナー画像に悪影響を及ぼすことがない。そのため、厚膜領域および薄膜領域により、エンボス像として、使用上の注意書きや記号や製品番号等の表示事項を表すと、印刷物を貼付する必要がなくなる。しかも、厚膜領域および薄膜領域は像担持面に形成され、転写残トナーを回収するクリーニング部材によって常に清掃されるため、簡便に長期にわたって継続した表示が可能となる。
【0012】
第2発明に係る画像形成装置は、像担持体が上記第1発明に係る像担持体であって、厚膜領域および薄膜領域の厚みが所定の関係式(関係式(3))をさらに満たす像担持体である。そのため、第2発明は第1発明の効果とともに、以下の効果を得ることができる。
光センサにより周方向における既知の位置の厚膜領域または薄膜領域を検知することにより、装置を大型化することなく、安定して、像担持体のホームポジションを検出したり、像担持体の回転速度を検出したりすることができる。しかも光センサとしては、トナー濃度を補正するために従来から使用されている光センサが使用できるので、新たに専用のセンサを設ける必要がない。さらに厚膜領域および薄膜領域は像担持面に形成され、転写残トナーを回収するクリーニング部材によって常に清掃されるため、トナー粉煙によって検出精度が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1発明の画像形成装置の一例の概略構成図。
【図2】第1発明(第2発明)の中間転写ベルトの一例の概略構成図。
【図3】第1発明に係る中間転写ベルトの外周面の一例の概略見取り図。
【図4】第2発明の画像形成装置の一例の概略構成図。
【図5】第2発明において光センサと中間転写ベルトとの配置関係を説明するための概略模式図。
【図6】第2発明に係る中間転写ベルトの外周面の一例の概略見取り図。
【図7】図6に示す中間転写ベルトにおけるベルト周方向の膜厚変化の一例を示すグラフ。
【図8】図6に示す中間転写ベルトにおけるベルト周方向のセンサ出力変化の一例を示すグラフ。
【図9A】第2発明に係る中間転写ベルトの外周面の一例の概略見取り図。
【図9B】図9Aに示す中間転写ベルトにおけるベルト周方向の膜厚変化の一例を示すグラフ。
【図9C】図9Aに示す中間転写ベルトにおけるベルト周方向のセンサ出力変化の一例を示すグラフ。
【図10】第2発明において中間転写ベルトに対して光センサの光源部から光(主波長λ)を照射したときの光学的干渉を模式的に表した図。
【図11】第2発明において中間転写ベルト外周面の発光主波長λの光に対する反射率Rと、中間転写ベルトの最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表す反射率関数R(d)を説明するためのグラフ。
【図12】無機酸化物層を製造する製造装置の説明図。
【図13】実験例Aにおいて中間転写ベルトにおける転写率と最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表すグラフ。
【図14】実験例Bにおいて求めた反射率関数R(d)のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1発明および第2発明)
第1発明および第2発明に係る画像形成装置は像担持体を備えたものである。第1発明および第2発明において像担持体は、外周面に少なくとも1層の薄膜層を有するものであり、該外周面にトナー(像)を担持して搬送するものが好適である。像担持体の具体例として、例えばいわゆる中間転写体および感光体等が挙げられる。像担持体はベルト形状を有していても、またはドラム形状を有していてもよい。以下、像担持体が中間転写ベルトである場合について詳しく説明するが、ドラム形状を有していても、他の像担持体であっても、以下の説明に準じて本発明の目的を達成できることは明らかである。
【0015】
(第1発明)
第1発明に係る画像形成装置について詳しく説明する。
図1は、第1発明の画像形成装置の一例の概略構成図である。図1の画像形成装置は、感光体上にトナー像を形成する各色の現像部ごとに感光体を有するタンデム型フルカラー画像形成装置であるが、後で詳述する中間転写ベルトを有する限り、他の構造のものであってよく、例えば、1つの感光体に対して各色の現像部を有する4サイクル型フルカラー画像形成装置であってもよい。
【0016】
図1のタンデム型フルカラー画像形成装置において、各現像部(1a、1b、1c、1d)では通常、感光体(2a、2b、2c、2d)の周りに、少なくとも帯電装置、露光装置、現像装置およびクリーニング装置(いずれの装置も図示せず)等が配置されている。そのような現像部(1a、1b、1c、1d)は、少なくとも2つの張架ローラ(10,11)によって張架された中間転写ベルト3に並列して配置されている。各現像部で感光体(2a、2b、2c、2d)の表面に形成されたトナー像はそれぞれ、一次転写ローラ(4a、4b、4c、4d)を用いて中間転写ベルト3に一次転写され、当該中間転写ベルト上で重ねられてフルカラー画像が形成される。中間転写ベルト3の表面に転写されたフルカラー画像は二次転写ローラ5を用いて一括して紙等の被記録媒体6に二次転写された後、定着装置(図示せず)を通過させて、被記録媒体上にフルカラー画像を得る。一方、中間転写ベルト上に残留した転写残トナーはクリーニング装置7によって除去されるようになっている。
【0017】
中間転写ベルト3は、各現像部において感光体上に形成されたトナー像を一次転写により自己の表面に担持し、当該トナー像を二次転写のために搬送するものである。
【0018】
第1発明において中間転写ベルト3は外周面に少なくとも1層の薄膜層を有するものであり、例えば図2に示すように基材3a上に1層の薄膜層3bが形成された単層型であってもよいし、基材3aと薄膜層3bとの間に1層以上の他の層が形成された多層型であってもよい。本明細書中、単層型中間転写ベルトの薄膜層、および多層型中間転写ベルトの最表面の薄膜層をまとめて最表面薄膜層と呼ぶものとする。
【0019】
基材3aは、特に限定されないが、体積抵抗率が106〜1012Ω・cmの範囲のものが好ましく、通常はシームレスベルト形状を有する。例えば、ポリカーボネート(PC);ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料に、カーボン等の導電性フィラーを分散させたり、イオン性の導電材料を含有させたりしたものが用いられる。基材の厚みは通常、50〜500μm程度に設定される。
【0020】
最表面薄膜層3bは、トナーに対して離型性を示すものであり、例えば、無機酸化物層等の無機系薄膜層が使用される。
無機酸化物層は、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物および亜鉛酸化物から選ばれる1種類以上の酸化物を含むものが好ましく、特に珪素酸化物が好ましい。
【0021】
そのような最表面薄膜層3bは、厚みが比較的厚い厚膜領域および厚みが比較的薄い薄膜領域を有し、当該厚膜領域および薄膜領域によって所定の像(エンボス像)を形成する。本明細書中、エンボス像とは、厚膜領域と薄膜領域との差に基づく最表面薄膜層表面の凹凸によって表される像のことであり、例えば、薄膜領域中において厚膜領域で表される浮き出し像であってもよいし、厚膜領域中において薄膜領域で表されるくぼみ像であってもよい。
【0022】
厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)は以下の関係式(1)〜(2);
50nm≦d1−d2≦950nm (1)
20nm≦d2<d1≦1000nm (2)
を満たす。そのような厚膜領域と薄膜領域とでは、トナー像の転写性にほとんど差がないので、被記録媒体上のトナー画像に悪影響を及ぼすことがなく、中間転写ベルトの外周面に厚膜領域と薄膜領域とを混在させることができる。しかも、厚膜領域と薄膜領域とでは、それらの厚みに差が存在し、当該厚み差に基づいて自然光に対する反射率にも差が生じるので、厚膜領域と薄膜領域とは目視で容易に区別できる。よって、最表面薄膜層において、厚みの差および当該厚み差に伴う自然光反射率の差を利用して、厚膜領域および薄膜領域により所定の像(エンボス像)を形成しても、被記録媒体上のトナー画像に悪影響を及ぼすことがない。しかも、厚膜領域および薄膜領域は像担持面に形成され、転写残トナーを回収するクリーニング部材によって常に清掃されるため、トナー粉煙等によって読み取り困難になることはない。そのため、厚膜領域と薄膜領域とで形成されるエンボス像として、例えば、装置内に配置される各種部材の使用上の注意書きや記号や製品番号等の像を表すと、印刷物を貼付する必要がなくなり、簡便に長期にわたって継続した表示が可能となる。d1−d2が小さすぎると、厚膜領域と薄膜領域との間で自然光反射率に有意な差が生じないので、エンボス像が不明瞭になり、表示が困難になる。d1−d2が大きすぎると、耐久時において厚膜領域と薄膜領域との境界で最表面薄膜層の割れや剥離が生じる。d2が小さすぎると、耐久時において薄膜領域で摩擦により割れや剥離が生じる。d1が大きすぎると、耐久時において厚膜領域で屈曲により割れや剥離が生じる。
【0023】
第1発明においてエンボス像として表される像は、特に制限されず、例えば、文字像、幾何学的像、記号、模様等の像が挙げられる。具体的には、例えば、ユーザーに対して中間転写ベルトの外周面に手で触れないように注意を喚起する場合、図3に示すように、最表面薄膜層3bにおいて、薄膜領域32中、厚膜領域31で「さわるな」等の文字像を浮き出し像として表すことができる。図3は、厚膜領域31および薄膜領域32の配置等の構成を説明するための中間転写ベルト外周面の一例の概略見取り図である。図3中、Wは中間転写ベルトの幅方向を示す。厚膜領域中、薄膜領域で所定の像をくぼみ像として表してもよい。
【0024】
前記関係式(1)は、厚膜領域と薄膜領域とでより一層明瞭なエンボス像を表示・形成する観点から好ましくは以下の関係式(1');
80nm≦d1−d2≦500nm (1')
である。
前記関係式(2)は、厚膜領域または/および薄膜領域の割れや剥離をより一層有効に防止する観点から好ましくは以下の関係式(2');
50nm≦d2≦500nm,130nm≦d1≦600nm (2')
である。
【0025】
厚膜領域31と薄膜領域32とは上記のように厚みの差および自然光に対する反射率の差に基づいて目視で容易に区別できるので、厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)はそれぞれ、目視で区別された所定の領域において測定することによって求めることができる。詳しくは厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)はそれぞれ所定の領域において薄膜膜厚計(マミヤオーピー社製)によって測定された任意の20点の厚みの平均値を用いている。
【0026】
厚膜領域31および薄膜領域32それぞれにおいて厚みは均一である。
厚膜領域31における上記任意の20点の厚みは、それらの平均値±5nmの範囲内にある。
薄膜領域32における上記任意の20点の厚みは、それらの平均値±5nmの範囲内にある。
【0027】
感光体(2a、2b、2c、2d)は、表面に形成された静電潜像に基づいてトナー像が形成されるものである。感光体は従来の電子写真方式の画像形成装置に搭載され得るものであれば、特に制限されるものではなく、通常は感光層が有機系のものが使用される。
【0028】
一次転写ローラ4(4a、4b、4c、4d)は、中間転写ベルト3について感光体2に対して逆側に配置される。一次転写ローラ4(4a、4b、4c、4d)により中間転写ベルト3を押圧するとともに、所望により一次転写ローラ4にバイアスを印加することによって、感光体2(2a、2b、2c、2d)表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト3に一次転写させる。
【0029】
一次転写ローラにバイアスが印加される場合、例えばトナーの帯電極性に対して逆極性であって、その絶対値が300〜3000V、特に600〜1500Vの範囲内のDC成分が印加される。トナーの帯電極性に対して逆極性とは、例えばトナーが負帯電性の場合は+極性を、トナーが正帯電性の場合は−極性を意味する。一次転写ローラには上記DC成分とともにAC成分が重畳されてもよい。
【0030】
一次転写ローラの構造は特に制限されるものではなく、例えば、EPDM、NBR等に導電材としてカーボン等を分散させたコート層を金属の芯金表面に有するもの、又は金属ローラ等が使用可能である。
【0031】
二次転写ローラ5は、中間転写ベルト3について張架ローラ11に対して逆側に配置される。二次転写ローラ5により、トナー像を担持した中間転写ベルト3に対して、被記録媒体6を介して押圧することにより、トナー像を被記録媒体6に二次転写させる。二次転写ローラには、所望によりバイアスが印加され、二次転写を促進させることができる。
【0032】
二次転写ローラの構造は特に制限されるものではないが、弾性層を有することが好ましい。被記録媒体との密着性を確保するためである。
【0033】
弾性層を有する二次転写ローラの構造として、例えば、芯金表面に弾性層を有してなる構造が挙げられる。芯金として、鉄、ステンレス等の金属からなるものが使用可能である。
【0034】
弾性層はアスカーC硬度が20°〜60°、特に30°〜50°の層である。
本明細書中、アスカーC硬度はアスカーゴム硬度計C型によって測定された値を用いている。
【0035】
弾性層は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM);ニトリル−ブタジエンゴム(NBR);クロロプレンゴム(CR);シリコンゴム;ウレタンゴム等の弾性材料を用いて形成され、通常はさらに導電材が含有される。導電材として、例えば、カーボン等が使用可能である。
弾性層の厚みは通常、1〜20mmであり、好ましくは3〜10mmである。
【0036】
二次転写ローラの抵抗は、転写性確保の観点から、105〜1010Ω、特に106〜108Ωが好ましい。
【0037】
二次転写ローラにバイアスが印加される場合、例えばトナーの帯電極性に対して逆極性であって、その絶対値が300〜5000V、特に600〜3000Vの範囲内のDC成分が印加される。二次転写ローラには上記DC成分とともにAC成分が重畳されてもよい。
【0038】
張架ローラ(10,11)は特に制限されず、例えば、アルミや鉄などの金属ローラを用いることができる。また芯金の外周面にコート層を設けたローラであって、コート層がEPDM、NBR、ウレタンゴム、シリコンゴムなどの弾性材料に導電粉体やカーボンを分散させたものであり、抵抗値が1×109Ω・cm以下に調整されたローラを用いることもできる。
【0039】
第1発明の画像形成装置が有する他の部材・装置、例えばクリーニング装置7、帯電装置、露光装置、現像装置および感光体用クリーニング装置は特に制限されず、従来より画像形成装置に使用されている公知のものが使用可能である。
【0040】
例えば現像装置は、トナーのみを用いる一成分現像方式を採用したものであってもよいし、またはトナーとキャリアを用いる二成分現像方式を採用したものであってもよい。
トナーは、重合法等の湿式法で製造されたトナー粒子を含むものであってもよいし、または粉砕法(乾式法)で製造されたトナー粒子を含むものであってもよい。
トナーの平均粒径は特に制限されるものではなく、7μm以下、特に4.5μm〜6.5μmが好ましい。
トナーの帯電性は特に制限されるものではなく、負帯電性または正帯電性を有していてよい。
【0041】
(第2発明)
第2発明に係る画像形成装置について説明する。図4は、第2発明の画像形成装置の一例の概略構成図である。図4における図1と同様の符号は、特記しない限り図1と同様の意味内容を示すものとする。
【0042】
第2発明の画像形成装置は、光センサ20を有すること、および中間転写ベルト3が前記第1発明の中間転写ベルトであって、エンボス像を形成する厚膜領域および薄膜領域の厚みが後述する関係式(3)または(3')をさらに満たす中間転写ベルトであること以外、第1発明の画像形成装置と同様であるので、特記しない限り、第2発明において第1発明と同様の説明は省略するものとする。
【0043】
第2発明の画像形成装置は、詳しくは、光センサ20を備え、かつ中間転写ベルト3の最表面薄膜層における厚膜領域31の厚みd1(nm)および薄膜領域32の厚みd2(nm)が、前記第1発明で規定された関係式を満たすだけでなく、光センサからの光に対する中間転写ベルト外周面の反射率Rと像担持体の最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表す反射率関数R(d)について、以下の関係式(3);
|R(d1)−R(d2)|≧0.5×{Rmax(d)−Rmin(d)} (3)
好ましくは以下の関係式(3');
|R(d1)−R(d2)|≧0.7×{Rmax(d)−Rmin(d)} (3')
をさらに満たす。
【0044】
第2発明においては、第1発明の効果とともに、以下に示す効果が得られる。
第2発明では、厚膜領域31と薄膜領域32との間において光センサ20の照射光の反射率に十分な差が生じるので、当該反射率の差を利用して、厚膜領域および薄膜領域を検知できる。すなわち、上記関係式(3)または(3')で規定するように厚膜領域31と薄膜領域32との反射率の差が所定の値以上になるように、d1およびd2を選択するので、光センサによる厚膜領域31および薄膜領域32の検知が可能となる。そのため、予め厚膜領域31および薄膜領域32の位置を認識しておくことにより、装置を大型化することなく、安定して、中間転写ベルトのホームポジションを検出したり、中間転写ベルトの回転速度を検出したりすることができる。d1およびd2が上記関係式(3)および(3')を満たさない場合、厚膜領域31と薄膜領域32との反射率の差が十分でないために、光センサによって厚膜領域31および薄膜領域32を十分に検知できない。
【0045】
光センサ20は、例えば図5に示すように、中間転写ベルト3外周面に対して光を照射する発光主波長λの光源部21と、その反射光を受光する受光部22とから構成され、光源部21および受光部22のそれぞれの入射角および受光角が同じ値θになるように設置される。図5は光センサと中間転写ベルトとの配置関係を説明するための概略模式図であり、図4における中間転写ベルトの回転方向(駆動方向)Dに対して垂直な断面構成図である。
【0046】
光センサ20は、例えば定期的に行われる色ずれ補正時において、中間転写ベルト外周面の反射率を光学的に検出する。詳しくは、中間転写ベルト外周面にトナーが担持されていない清浄状態において、中間転写ベルトを回転駆動させながら、光源部21により光を中間転写ベルト外周面に対して照射し、受光部22によりその反射光の受光量を測定する。受光部22では通常、反射光の受光量はその大きさに応じて出力される電圧値として得られるので、反射率の変化は光センサ出力値の変化として検出される。
【0047】
第2発明において最表面薄膜層3bは中間転写ベルトの周方向に厚膜領域および薄膜領域を有するものである。最表面薄膜層3bが中間転写ベルトの周方向に厚膜領域および薄膜領域を有するとは、図6に示すように、最表面薄膜層3bの表面において光センサ20からの光照射ポイントPが中間転写ベルト3の周方向Dの回転・駆動によって描く軌跡(破線33)が1以上の厚膜領域31と1以上の薄膜領域32とを通ることを意味する。光センサ20は、例えば図4〜図6に示すように、装置内において固定配置され、中間転写ベルト3の周方向Dの回転・駆動によって厚膜領域および薄膜領域を検知する。そのため、たとえ最表面薄膜層が1以上の厚膜領域と1以上の薄膜領域とを有していても、光照射ポイントPの軌跡(破線33)が厚膜領域または薄膜領域の一方しか通らない場合、光センサは反射率の変化を検知できず、厚膜領域および薄膜領域を検知できないので、ホームポジションを検出できない。図6は、光センサと中間転写ベルトとの全体的な配置関係を説明するとともに、厚膜領域31および薄膜領域32の大きさおよび配置等の構成を説明するための中間転写ベルト外周面の一例の概略見取り図である。
【0048】
第2発明において厚膜領域31および薄膜領域32によりエンボス像として表される像は、中間転写ベルトの周方向に厚膜領域および薄膜領域を有する限り特に制限されず、例えば、第1発明においてエンボス像が表す像として例示した同様の像が挙げられる。膜形成の簡易性の観点から好ましい像は、図6および図9Aで示されるような巾方向の全長にわたって形成される形態である。
【0049】
図6において光センサ20は中間転写ベルト3の幅方向Wの比較的端部に配置されているが、光センサ20の配置は光照射ポイントPの軌跡(破線33)が1以上の厚膜領域31と1以上の薄膜領域32とを通る限り特に制限されない。例えば、図6において、厚膜領域31および薄膜領域32は幅方向Wの全長にわたって形成されているので、光センサ20は中間転写ベルト3の幅方向Wのいずれの任意の位置に配置されてもよい。
【0050】
図6において厚膜領域31および薄膜領域32は幅方向Wの全長にわたって形成されているが、厚膜領域31および薄膜領域32の大きさは、光照射ポイントPの軌跡(破線33)が1以上の厚膜領域31と1以上の薄膜領域32とを通る限り特に制限されない。例えば、厚膜領域および薄膜領域は幅方向Wの一端部または中央部のみに形成されてよい。そのような場合、光照射ポイントPの軌跡(破線33)が当該厚膜領域および薄膜領域を通るように光センサ20を配置すればよい。厚膜領域31および薄膜領域32の周方向Dの長さはそれぞれ独立して5mm以上であればよく、好ましくは8〜20mmである。
【0051】
図6において、薄膜領域32中に厚膜領域31が形成されているが、厚膜領域31および薄膜領域32の配置は、光照射ポイントPの軌跡(破線33)が1以上の厚膜領域31と1以上の薄膜領域32とを通る限り特に制限されない。例えば、厚膜領域31中に薄膜領域32が形成されていてもよい。
【0052】
第2発明においては、予め厚膜領域31および薄膜領域32の位置を認識しておき、周方向における既知の位置の厚膜領域31および薄膜領域32をそれらの反射率の差に基づいて光センサ20により検知する。詳しくは、中間転写ベルトを回転駆動させながら、光センサ20により反射率としてセンサ出力を検知するので、厚膜領域31と薄膜領域32との境界においてセンサ出力が十分に変化する。例えば、図6に示す中間転写ベルト3におけるベルト周方向の膜厚変化の一例を図7に示し、ベルト周方向のセンサ出力変化の一例を図8に示す。厚膜領域31および薄膜領域32の周方向の位置は既知であるので、センサ出力の変化から厚膜領域と薄膜領域との境界を容易に検知でき、その結果、中間転写ベルトのホームポジションを正確に検出できる。
【0053】
図9Aに中間転写ベルト外周面の別の一例の概略模式図を示す。図9Aに示す中間転写ベルトは、厚膜領域31を幅方向Wに離間して3本形成したこと以外、図6に示す中間転写ベルトと同様である。図9Aに示す中間転写ベルトにおけるベルト周方向の膜厚変化の一例を図9Bに示し、ベルト周方向のセンサ出力変化の一例を図9Cに示す。このように、周方向Dにおいて2以上の厚膜領域31および1以上の薄膜領域32、または1以上の厚膜領域31および2以上の薄膜領域32を形成し、それらの領域を光学センサで検知することにより、中間転写ベルトの厚みムラに起因する回転速度の変動を正確に検出できる。例えば図9Cに示すセンサ出力変化の計測時に、異なる2つの厚膜領域間の通過時間を測定すると、当該通過時間とそれらの既知の距離とから、中間転写ベルトの回転速度を正確に検出できる。
【0054】
第2発明において厚膜領域31および薄膜領域32は、d1およびd2が前記関係式(3)または(3')をさらに満たすこと以外、第1発明における厚膜領域31および薄膜領域32と同様である。例えば、d1およびd2は第1発明と同様の方法によって測定できる。また例えば、第2発明において厚膜領域31および薄膜領域32の厚み均一性はそれぞれ第1発明においてと同様の範囲内にある。
【0055】
前記関係式(3)および(3')において、dは最表面薄膜層の厚みである。
R(d1)は厚みd1のときの反射率である。
R(d2)は厚みd2のときの反射率である。
Rmax(d)は反射率関数R(d)の取り得る最大値である。
Rmin(d)は反射率関数R(d)の取り得る最小値である。
【0056】
反射率関数R(d)について詳しく説明する。
最表面薄膜層を有する中間転写ベルト外周面に対して光を照射すると、反射光に光学的干渉が生じることが一般に知られており、そのため反射率は最表面薄膜層の厚みに依存して周期的に変動し、反射率関数R(d)を示す。光学的干渉の発生メカニズムを説明するための模式図を図10に示す。図10は中間転写ベルト3に対して光センサの光源部から光(主波長λ)を照射したときの光学的干渉を模式的に表したものであり、少なくとも空気層(屈折率n1)と最表面薄膜層2b(屈折率n2)との界面、および最表面薄膜層3b(屈折率n2)と基材3a(屈折率n3)との界面において反射光に干渉が生じることを示している。図10の紙面上、表裏方向が中間転写ベルトの駆動方向である。
【0057】
反射率関数R(d)は、トナーが担持されていない状態における中間転写ベルト外周面の発光主波長λの光に対する反射率Rと、中間転写ベルトの最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表すものであり、図11に示すような周期性を有する波形を示す。第2発明においては、そのような反射率関数R(d)について、前記関係式(3)または(3')を満たすように、最表面薄膜層の厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が選択される。例えば、図11において、R(dx)=Rmax(d)、R(dy)=Rmin(d)、R(dz)=0.8×{Rmax(d)−Rmin(d)}+Rmin(d)であるとき、d1としてdyを選択し、d2としてdxを選択すると、R(d1)=Rmin(d)およびR(d2)=Rmax(d)であるので、下記式;
|R(d1)−R(d2)|=1.0×{Rmax(d)−Rmin(d)}
が表され、d1およびd2は前記関係式(3)および(3')を満たすものである。また例えば、図11において、d1としてdzを選択し、d2としてdyを選択すると、R(d1)=0.8×{Rmax(d)−Rmin(d)}+Rmin(d)およびR(d2)=Rmin(d)であるので、下記式;
|R(d1)−R(d2)|=0.8×{Rmax(d)−Rmin(d)}
が表され、d1およびd2は前記関係式(3)および(3')を満たすものである。
【0058】
反射率関数R(d)はマトリクス法を用いたマトリクス計算により容易に得ることができる。
例えば、中間転写ベルトが基材2a上に1層の最表面薄膜層2bが形成された単層型構造を有する場合における反射率関数R(d)は以下の式によって表すことができる。
【0059】
【数1】
【0060】
式中、λは光センサの光源部から照射される光の主波長である。例えば、730nmとすることができる。
n1は空気の屈折率であり、通常は真空とほぼ同じ1.00である。
θ1は光センサの光源部からの照射光が空気側から最表面薄膜層2bとの界面に入射するときの入射角であり、通常は0〜90°の範囲内である。
n2は最表面薄膜層2bの屈折率であり、通常は1〜4の範囲内である。
θ2は光センサの光源部からの照射光が最表面薄膜層2b側から基材2aとの界面に入射するときの入射角であり、通常は0〜90°の範囲内である。
n3は基材2aの屈折率であり、通常は1〜4の範囲内である
θ3は光センサの光源部からの照射光が基材2a側から空気との界面に入射するときの入射角であり、通常は0〜90°の範囲内である。
dは前記と同様に最表面薄膜層2bの厚みである。
【0061】
また例えば、中間転写ベルトが基材2a上に特定の薄膜層2cおよび最表面薄膜層2bが順次形成された多層型構造を有する場合にも、公知のマトリックス法を用いた計算により反射率関数(R)を得ることができる。この場合、薄膜層2cの厚みを固定値として考えて、R(d)が前記条件式を満たすように最表面薄膜層2bの厚みdを設定すればよい。薄膜層2cは2以上の層からなっていてもよい。
【0062】
第1発明および第2発明において厚膜領域31および薄膜領域32を有する最表面薄膜層3bは、少なくとも放電ガスと無機酸化物層の原料ガスとの混合ガスをプラズマ化して原料ガスに応じた膜を堆積・形成するプラズマCVD法、特に大気圧または大気圧近傍下において行われる大気圧プラズマCVD法において、堆積途中にロール電極の回転を停止させたり、所定の薄膜領域をマスクすることにより、形成できる。マスクとしては、PET等の樹脂フィルムが使用可能である。プラズマCVD法は、例えば、特開2007−17666号公報に記載の方法と同様の方法に従って実施すればよい。
【0063】
以下に、珪素酸化物(SiO2)を含む無機酸化物層を大気圧プラズマCVD法により形成する場合を例に取り、その製造装置及び製造方法について説明する。大気圧またはその近傍の圧力とは20kPa〜110kPa程度であり、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0064】
図12は、無機酸化物層を製造する製造装置の説明図である。無機酸化物層の製造装置40は、放電空間と薄膜堆積領域が略同一部で、プラズマを基材に晒して堆積・形成するダイレクト方式によって、基材上に無機酸化物層を形成するものであり、エンドレスベルト状の基材3aを巻架して矢印方向に回転するロール電極50と従動ローラ60、及び、基材表面に無機酸化物層を形成する成膜装置である大気圧プラズマCVD装置70より構成されている。
【0065】
大気圧プラズマCVD装置70は、ロール電極50の外周に沿って配列された少なくとも1式の固定電極71と、固定電極71とロール電極50との対向領域で且つ放電が行われる放電空間73と、少なくとも原料ガスと放電ガスとの混合ガスGを生成して放電空間73に混合ガスGを供給する混合ガス供給装置74と、放電空間73等に空気の流入することを軽減する放電容器79と、固定電極71に接続された第1の電源75と、ロール電極50に接続された第2の電源76と、使用済みの排ガスG’を排気する排気部78とを有している。固定電極71に第2の電源76、ロール電極50に第1の電源75を接続しても良い。
【0066】
混合ガス供給装置74は珪素酸化物を含む膜を形成する原料ガスと、窒素ガス或いはアルゴンガス等の希ガスを混合した混合ガスを放電空間73に供給する。
従動ローラ60は張力付勢手段61により矢印方向に付勢され、基材3aに所定の張力を掛けている。張力付勢手段61は基材3aの掛け替え時等は張力の付勢を解除し、容易に基材3aの掛け替え等を可能としている。
【0067】
第1の電源75は周波数ω1の電圧を出力し、第2の電源76は周波数ω1より高い周波数ω2の電圧を出力し、これらの電圧により放電空間73に周波数ω1とω2とが重畳された電界Vを発生する。そして、電界Vにより混合ガスGをプラズマ化して混合ガスGに含まれる原料ガスに応じた膜(無機酸化物層)が基材3aの表面に堆積される。
【0068】
そのような無機酸化物層の形成時において薄膜領域の所定厚みが達成されたら、所定の薄膜領域をマスクし、厚膜領域の所定厚みが達成されるまで無機酸化物の堆積を継続すればよい。
【0069】
原料ガスとしては、珪素酸化物層を形成する場合は、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラクロロシラン等が使用できる。アルミニウム酸化物層を形成する場合は、塩化アルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリメトキシアルミニウム等が使用できる。チタン酸化物層を形成する場合は、塩化チタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン等が使用できる。亜鉛酸化物層を形成する場合は、ジエトキシ亜鉛、塩化亜鉛等が使用できる。
【実施例】
【0070】
[実験例A]
(中間転写ベルトの製造)
押出成形によって、PPS樹脂中にカーボンが分散されてなる表面抵抗率1.30×109Ω/□、厚み120μmおよび周長700mmのシームレス形状基材を得た。
基材の外周表面に、大気圧プラズマCVD法に基づいて図12に示す装置によって、所定膜厚のSiO2薄膜層(硬度4GPa、表面粗さRa31nm)を形成し、中間転写ベルトを得た。
【0071】
(評価)
上記した方法で製造した中間転写ベルトをプリンター(Bizhub C353;コニカミノルタ製)に搭載し、コニカミノルタ製Jペーパー(A4サイズ)にベタ画像を印字した。中間転写ベルトから上記ペーパーへの二次転写率(%)を求めた。二次転写率は、中間転写ベルト上のベタ画像のトナー重量に対する、二次転写されたベタ画像のトナー重量の割合である。印字条件は、上記中間転写ベルトを用いたこと以外、上記プリンターの標準条件と同様であった。トナーは平均粒径6.5μmの重合トナーであった。
比較として、シームレス形状基材を中間転写ベルトとして用いて評価を行った。
【0072】
転写率と膜厚の関係を図13に示した。図に示すように無機酸化物薄膜層を基材上に設けることで転写率が向上し、膜厚に対して転写率はほとんど変化しなかった。そのため薄膜層の膜厚は転写品質に影響すること無く任意の膜厚に設定することができる。
【0073】
[実験例B]
中間転写ベルトが基材上に1層の最表面薄膜層(SiO2)を形成してなる単層型構造を有する場合における前記反射率関数R(d)に以下の算出条件を代入し、図14にグラフ化した。図より、上記中間転写ベルトにおいて、厚膜領域の厚みd1(nm)を390nmとし、薄膜領域の厚みd2(nm)を260nmとすると、それらの領域における反射率の差は最大となることがわかった。
【0074】
(算出条件)
基材屈折率(n3):1.65(ポリフェニルサルファイド:PPS)
基材厚さ:150μm
薄膜層屈折率(n2):1.45(SiO2)
薄膜層入射角(θ1):20°
発光主波長(λ):730nm
空気層屈折率(n1):1
基材入射角(θ2):13.6°
入射角(θ3):12.0°
【0075】
[実験例C;]
基材上に1層の最表面薄膜層(SiO2)を形成してなる単層型構造を有し、最表面薄膜層が周方向において厚膜領域31および薄膜領域32を有してなる中間転写ベルトを製造した。最表面薄膜層における厚膜領域31および薄膜領域32の詳しい配置は、図6に示すように、薄膜領域32中に厚膜領域31を幅方向Wの全長にわたって形成した。厚膜領域31の厚みd1は390nm、厚膜領域31の周方向長さは10mm、薄膜領域の厚みd2は260nmであった。
そのような中間転写ベルトの製造方法は、SiO2層の形成時において薄膜領域の所定厚みが達成されたら、製膜機のロール電極の回転を停止し、厚膜領域の所定厚みが達成されるまでSiO2の堆積を継続させたこと以外、実験例Aにおける中間転写ベルトの製造方法と同様であった。
得られた中間転写ベルトにおけるベルト周方向の膜厚変化を図7に示した。
【0076】
(評価)
得られた中間転写ベルトおよび光センサをプリンターに搭載した。プリンターはBizhub C353(コニカミノルタ製)を改造したもので、図4に示す概略構成を有していた。光センサ20は、図6に示すように、中間転写ベルト3の幅方向Wの一端部に配置した。
光センサの照射条件を以下に示す。
薄膜層入射角θ1:20°
発光主波長:730nm
【0077】
発光センサを駆動させながら、中間転写ベルトを回転駆動させ、ベルト周方向のセンサ出力変化を測定した。結果を図8に示した。そのようなセンサ出力変化を測定することにより、中間転写ベルトの周方向におけるホームポジションを検出できた。
【0078】
[実験例D;]
基材上に1層の最表面薄膜層(SiO2)を形成してなる単層型構造を有し、最表面薄膜層が厚膜領域31および薄膜領域32を有してなる中間転写ベルトを製造した。最表面薄膜層における厚膜領域31および薄膜領域32の詳しい配置は、図3に示すように、薄膜領域32中に厚膜領域31で文字像「さわるな」を形成した。厚膜領域31の厚みd1は390nm、薄膜領域の厚みd2は260nmであった。
そのような中間転写ベルトの製造方法は、SiO2層の形成時において薄膜領域の所定厚みが達成されたら、所定の薄膜領域をマスクし、厚膜領域の所定厚みが達成されるまでSiO2の堆積を継続させたこと以外、実験例Aにおける中間転写ベルトの製造方法と同様であった。
得られた中間転写ベルトの外周面を自然光の下、目視で観察したところ、所定の文字像を認識できた。
【0079】
(評価)
得られた中間転写ベルトをプリンター(Bizhub C353;コニカミノルタ製)に搭載し、コニカミノルタ製Jペーパー(A4サイズ)の全面にハーフトーン画像を印字した。印字条件は、上記中間転写ベルトを用いたこと以外、上記プリンターの標準条件と同様であった。トナーは平均粒径6.5μmの重合トナーであった。
印字画像を目視で観察したところ、中抜けや画像ムラのないハーフトーン画像が得られた。
【符号の説明】
【0080】
1:1a:1b:1c:1d:現像部
2:2a:2b:2c:2d:感光体
3:中間転写ベルト
3a:基材
3b:最表面薄膜層
4:4a:4b:4c:4d:一次転写ローラ
5:二次転写ローラ
6:被記録媒体
7:クリーニング装置
10:11:張架ローラ
20:光センサ
21:発光部
22:受光部
31:厚膜領域
32:薄膜領域
33:光照射ポイントPが描く軌跡
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写体および感光体等の像担持体、ならびにモノクロ/フルカラーの電子写真複写機、プリンタ、FAXおよびそれらの複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写方式を用いたフルカラー画像形成装置では、色別に感光体上に形成された複数のトナー像を一度、中間転写ベルトに転写させ、重ね合わせた後、紙などの被記録媒体に一括して転写してカラー画像を得ている。感光体から中間転写ベルトへの転写は「一次転写」と呼ばれ、中間転写ベルトから被記録媒体への転写は「二次転写」と呼ばれている。それらの転写工程では、転写ローラ等にバイアスを印加して電界を発生させることにより、トナー像を転写させる。
【0003】
上記のようなフルカラー画像形成装置では4色のトナー像を精度良く重ね合わせる必要があるため、色ずれを防止することが必要である。そのため、あらかじめ中間転写ベルトの厚みムラに起因する各色の色ずれ量を記憶しておき、露光タイミングを補正することが行われている(特許文献1)。そのような色ずれの補正を行なうためにはベルトのどの位置に画像形成されるかを正確に検知する必要があるため、ベルトのホームポジションを検出することが必要になる。ホームポジションの検出方法としては、ベルトの端部に検出用の穴を開け透過型のセンサで検出する方法、ベルト端部に反射材を貼り付け反射型のセンサで検出する方法が一般的に用いられている。
【0004】
しかしながら、ベルトに穴を開ける方法では、ベルトの強度が落ちるという不具合があった。反射材を貼り付ける方法では、反射材が剥がれたり、汚れたりすることで、検出が出来なくなるという不具合があった。また、ベルト端部に検出用の穴や反射材を設けるためにベルトの幅を広くする必要があり、更に検出用に専用のセンサを設ける必要があるため、装置が大型化した。
【0005】
一方、画像形成装置内に配置される各種部材について、使用上の注意書きや製品番号等の表示事項は、紙やフィルム等に印刷したものを、装置内の筐体壁面や部材の側面に貼付することが一般的であった。例えば、中間転写体または感光体等の部材の設置方向や「さわるな」等の注意書きは、紙やフィルム等に印刷したものを、装置内の筐体壁面や当該部材の側面に貼付していた。また例えば、部材の製品番号等は、紙やフィルム等に印刷したものを、当該部材の側面に貼付していた。しかしながら、そのような表示事項の印刷物を貼付することは煩雑であった。またそのような印刷物は耐久時において装置内のトナー粉煙により汚染され、長期にわたって継続して表示するすることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−242674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第1発明は、使用上の注意書きや製品番号等の表示事項を、自己の表面、特に像担持面に長期にわたって継続して表示する像担持体、および該像担持体を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
第2発明は、装置を大型化することなく、安定して像担持体のホームポジションを検出可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明は、外周面に少なくとも1層の薄膜層を有する像担持体であって、
最表面薄膜層が厚膜領域および薄膜領域を有し、該厚膜領域および薄膜領域によって所定の像を形成され、厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が以下の関係式(1)〜(2);
50nm≦d1−d2≦950nm (1)
20nm≦d2<d1≦1000nm (2)
を満たすことを特徴とする像担持体、および該像担持体を備えた画像形成装置に関する。
【0010】
第2発明は、
外周面に少なくとも1層の薄膜層を有する像担持体であって、最表面薄膜層が厚膜領域および薄膜領域を有し、該厚膜領域および薄膜領域によって所定の像を形成され、厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が以下の関係式(1)〜(2);
50nm≦d1−d2≦950nm (1)
20nm≦d2<d1≦1000nm (2)
を満たす像担持体、および
該像担持体外周面に対して光を照射する発光主波長λの光源部と、その反射光を受光する受光部とから構成され、像担持体外周面の反射率を光学的に検知する光センサ;
を備えた画像形成装置であって、
像担持体における厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が、発光主波長λの光源部からの光に対する像担持体外周面の反射率Rと像担持体の最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表す反射率関数R(d)について、以下の関係式(3);
|R(d1)−R(d2)|≧0.5×{Rmax(d)−Rmin(d)} (3)
をさらに満たすことを特徴とする画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
第1発明に係る像担持体は、最表面薄膜層における厚膜領域と薄膜領域との間で、トナー像の転写性にほとんど差がなく、トナー画像に悪影響を及ぼすことがないので、外周面に厚膜領域と薄膜領域とを混在させることができる。しかも、厚膜領域と薄膜領域とでは、それらの厚みの差に基づいて自然光に対する反射率に差が生じるので、厚膜領域と薄膜領域とは目視で区別できる。よって、像担持面(最表面薄膜層)において厚膜領域中、薄膜領域で文字や記号等の像(エンボス像)を表したり、または薄膜領域中、厚膜領域でそのような像を表したりしても、紙などの被記録媒体上に形成されるトナー画像に悪影響を及ぼすことがない。そのため、厚膜領域および薄膜領域により、エンボス像として、使用上の注意書きや記号や製品番号等の表示事項を表すと、印刷物を貼付する必要がなくなる。しかも、厚膜領域および薄膜領域は像担持面に形成され、転写残トナーを回収するクリーニング部材によって常に清掃されるため、簡便に長期にわたって継続した表示が可能となる。
【0012】
第2発明に係る画像形成装置は、像担持体が上記第1発明に係る像担持体であって、厚膜領域および薄膜領域の厚みが所定の関係式(関係式(3))をさらに満たす像担持体である。そのため、第2発明は第1発明の効果とともに、以下の効果を得ることができる。
光センサにより周方向における既知の位置の厚膜領域または薄膜領域を検知することにより、装置を大型化することなく、安定して、像担持体のホームポジションを検出したり、像担持体の回転速度を検出したりすることができる。しかも光センサとしては、トナー濃度を補正するために従来から使用されている光センサが使用できるので、新たに専用のセンサを設ける必要がない。さらに厚膜領域および薄膜領域は像担持面に形成され、転写残トナーを回収するクリーニング部材によって常に清掃されるため、トナー粉煙によって検出精度が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1発明の画像形成装置の一例の概略構成図。
【図2】第1発明(第2発明)の中間転写ベルトの一例の概略構成図。
【図3】第1発明に係る中間転写ベルトの外周面の一例の概略見取り図。
【図4】第2発明の画像形成装置の一例の概略構成図。
【図5】第2発明において光センサと中間転写ベルトとの配置関係を説明するための概略模式図。
【図6】第2発明に係る中間転写ベルトの外周面の一例の概略見取り図。
【図7】図6に示す中間転写ベルトにおけるベルト周方向の膜厚変化の一例を示すグラフ。
【図8】図6に示す中間転写ベルトにおけるベルト周方向のセンサ出力変化の一例を示すグラフ。
【図9A】第2発明に係る中間転写ベルトの外周面の一例の概略見取り図。
【図9B】図9Aに示す中間転写ベルトにおけるベルト周方向の膜厚変化の一例を示すグラフ。
【図9C】図9Aに示す中間転写ベルトにおけるベルト周方向のセンサ出力変化の一例を示すグラフ。
【図10】第2発明において中間転写ベルトに対して光センサの光源部から光(主波長λ)を照射したときの光学的干渉を模式的に表した図。
【図11】第2発明において中間転写ベルト外周面の発光主波長λの光に対する反射率Rと、中間転写ベルトの最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表す反射率関数R(d)を説明するためのグラフ。
【図12】無機酸化物層を製造する製造装置の説明図。
【図13】実験例Aにおいて中間転写ベルトにおける転写率と最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表すグラフ。
【図14】実験例Bにおいて求めた反射率関数R(d)のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1発明および第2発明)
第1発明および第2発明に係る画像形成装置は像担持体を備えたものである。第1発明および第2発明において像担持体は、外周面に少なくとも1層の薄膜層を有するものであり、該外周面にトナー(像)を担持して搬送するものが好適である。像担持体の具体例として、例えばいわゆる中間転写体および感光体等が挙げられる。像担持体はベルト形状を有していても、またはドラム形状を有していてもよい。以下、像担持体が中間転写ベルトである場合について詳しく説明するが、ドラム形状を有していても、他の像担持体であっても、以下の説明に準じて本発明の目的を達成できることは明らかである。
【0015】
(第1発明)
第1発明に係る画像形成装置について詳しく説明する。
図1は、第1発明の画像形成装置の一例の概略構成図である。図1の画像形成装置は、感光体上にトナー像を形成する各色の現像部ごとに感光体を有するタンデム型フルカラー画像形成装置であるが、後で詳述する中間転写ベルトを有する限り、他の構造のものであってよく、例えば、1つの感光体に対して各色の現像部を有する4サイクル型フルカラー画像形成装置であってもよい。
【0016】
図1のタンデム型フルカラー画像形成装置において、各現像部(1a、1b、1c、1d)では通常、感光体(2a、2b、2c、2d)の周りに、少なくとも帯電装置、露光装置、現像装置およびクリーニング装置(いずれの装置も図示せず)等が配置されている。そのような現像部(1a、1b、1c、1d)は、少なくとも2つの張架ローラ(10,11)によって張架された中間転写ベルト3に並列して配置されている。各現像部で感光体(2a、2b、2c、2d)の表面に形成されたトナー像はそれぞれ、一次転写ローラ(4a、4b、4c、4d)を用いて中間転写ベルト3に一次転写され、当該中間転写ベルト上で重ねられてフルカラー画像が形成される。中間転写ベルト3の表面に転写されたフルカラー画像は二次転写ローラ5を用いて一括して紙等の被記録媒体6に二次転写された後、定着装置(図示せず)を通過させて、被記録媒体上にフルカラー画像を得る。一方、中間転写ベルト上に残留した転写残トナーはクリーニング装置7によって除去されるようになっている。
【0017】
中間転写ベルト3は、各現像部において感光体上に形成されたトナー像を一次転写により自己の表面に担持し、当該トナー像を二次転写のために搬送するものである。
【0018】
第1発明において中間転写ベルト3は外周面に少なくとも1層の薄膜層を有するものであり、例えば図2に示すように基材3a上に1層の薄膜層3bが形成された単層型であってもよいし、基材3aと薄膜層3bとの間に1層以上の他の層が形成された多層型であってもよい。本明細書中、単層型中間転写ベルトの薄膜層、および多層型中間転写ベルトの最表面の薄膜層をまとめて最表面薄膜層と呼ぶものとする。
【0019】
基材3aは、特に限定されないが、体積抵抗率が106〜1012Ω・cmの範囲のものが好ましく、通常はシームレスベルト形状を有する。例えば、ポリカーボネート(PC);ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料に、カーボン等の導電性フィラーを分散させたり、イオン性の導電材料を含有させたりしたものが用いられる。基材の厚みは通常、50〜500μm程度に設定される。
【0020】
最表面薄膜層3bは、トナーに対して離型性を示すものであり、例えば、無機酸化物層等の無機系薄膜層が使用される。
無機酸化物層は、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物および亜鉛酸化物から選ばれる1種類以上の酸化物を含むものが好ましく、特に珪素酸化物が好ましい。
【0021】
そのような最表面薄膜層3bは、厚みが比較的厚い厚膜領域および厚みが比較的薄い薄膜領域を有し、当該厚膜領域および薄膜領域によって所定の像(エンボス像)を形成する。本明細書中、エンボス像とは、厚膜領域と薄膜領域との差に基づく最表面薄膜層表面の凹凸によって表される像のことであり、例えば、薄膜領域中において厚膜領域で表される浮き出し像であってもよいし、厚膜領域中において薄膜領域で表されるくぼみ像であってもよい。
【0022】
厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)は以下の関係式(1)〜(2);
50nm≦d1−d2≦950nm (1)
20nm≦d2<d1≦1000nm (2)
を満たす。そのような厚膜領域と薄膜領域とでは、トナー像の転写性にほとんど差がないので、被記録媒体上のトナー画像に悪影響を及ぼすことがなく、中間転写ベルトの外周面に厚膜領域と薄膜領域とを混在させることができる。しかも、厚膜領域と薄膜領域とでは、それらの厚みに差が存在し、当該厚み差に基づいて自然光に対する反射率にも差が生じるので、厚膜領域と薄膜領域とは目視で容易に区別できる。よって、最表面薄膜層において、厚みの差および当該厚み差に伴う自然光反射率の差を利用して、厚膜領域および薄膜領域により所定の像(エンボス像)を形成しても、被記録媒体上のトナー画像に悪影響を及ぼすことがない。しかも、厚膜領域および薄膜領域は像担持面に形成され、転写残トナーを回収するクリーニング部材によって常に清掃されるため、トナー粉煙等によって読み取り困難になることはない。そのため、厚膜領域と薄膜領域とで形成されるエンボス像として、例えば、装置内に配置される各種部材の使用上の注意書きや記号や製品番号等の像を表すと、印刷物を貼付する必要がなくなり、簡便に長期にわたって継続した表示が可能となる。d1−d2が小さすぎると、厚膜領域と薄膜領域との間で自然光反射率に有意な差が生じないので、エンボス像が不明瞭になり、表示が困難になる。d1−d2が大きすぎると、耐久時において厚膜領域と薄膜領域との境界で最表面薄膜層の割れや剥離が生じる。d2が小さすぎると、耐久時において薄膜領域で摩擦により割れや剥離が生じる。d1が大きすぎると、耐久時において厚膜領域で屈曲により割れや剥離が生じる。
【0023】
第1発明においてエンボス像として表される像は、特に制限されず、例えば、文字像、幾何学的像、記号、模様等の像が挙げられる。具体的には、例えば、ユーザーに対して中間転写ベルトの外周面に手で触れないように注意を喚起する場合、図3に示すように、最表面薄膜層3bにおいて、薄膜領域32中、厚膜領域31で「さわるな」等の文字像を浮き出し像として表すことができる。図3は、厚膜領域31および薄膜領域32の配置等の構成を説明するための中間転写ベルト外周面の一例の概略見取り図である。図3中、Wは中間転写ベルトの幅方向を示す。厚膜領域中、薄膜領域で所定の像をくぼみ像として表してもよい。
【0024】
前記関係式(1)は、厚膜領域と薄膜領域とでより一層明瞭なエンボス像を表示・形成する観点から好ましくは以下の関係式(1');
80nm≦d1−d2≦500nm (1')
である。
前記関係式(2)は、厚膜領域または/および薄膜領域の割れや剥離をより一層有効に防止する観点から好ましくは以下の関係式(2');
50nm≦d2≦500nm,130nm≦d1≦600nm (2')
である。
【0025】
厚膜領域31と薄膜領域32とは上記のように厚みの差および自然光に対する反射率の差に基づいて目視で容易に区別できるので、厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)はそれぞれ、目視で区別された所定の領域において測定することによって求めることができる。詳しくは厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)はそれぞれ所定の領域において薄膜膜厚計(マミヤオーピー社製)によって測定された任意の20点の厚みの平均値を用いている。
【0026】
厚膜領域31および薄膜領域32それぞれにおいて厚みは均一である。
厚膜領域31における上記任意の20点の厚みは、それらの平均値±5nmの範囲内にある。
薄膜領域32における上記任意の20点の厚みは、それらの平均値±5nmの範囲内にある。
【0027】
感光体(2a、2b、2c、2d)は、表面に形成された静電潜像に基づいてトナー像が形成されるものである。感光体は従来の電子写真方式の画像形成装置に搭載され得るものであれば、特に制限されるものではなく、通常は感光層が有機系のものが使用される。
【0028】
一次転写ローラ4(4a、4b、4c、4d)は、中間転写ベルト3について感光体2に対して逆側に配置される。一次転写ローラ4(4a、4b、4c、4d)により中間転写ベルト3を押圧するとともに、所望により一次転写ローラ4にバイアスを印加することによって、感光体2(2a、2b、2c、2d)表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト3に一次転写させる。
【0029】
一次転写ローラにバイアスが印加される場合、例えばトナーの帯電極性に対して逆極性であって、その絶対値が300〜3000V、特に600〜1500Vの範囲内のDC成分が印加される。トナーの帯電極性に対して逆極性とは、例えばトナーが負帯電性の場合は+極性を、トナーが正帯電性の場合は−極性を意味する。一次転写ローラには上記DC成分とともにAC成分が重畳されてもよい。
【0030】
一次転写ローラの構造は特に制限されるものではなく、例えば、EPDM、NBR等に導電材としてカーボン等を分散させたコート層を金属の芯金表面に有するもの、又は金属ローラ等が使用可能である。
【0031】
二次転写ローラ5は、中間転写ベルト3について張架ローラ11に対して逆側に配置される。二次転写ローラ5により、トナー像を担持した中間転写ベルト3に対して、被記録媒体6を介して押圧することにより、トナー像を被記録媒体6に二次転写させる。二次転写ローラには、所望によりバイアスが印加され、二次転写を促進させることができる。
【0032】
二次転写ローラの構造は特に制限されるものではないが、弾性層を有することが好ましい。被記録媒体との密着性を確保するためである。
【0033】
弾性層を有する二次転写ローラの構造として、例えば、芯金表面に弾性層を有してなる構造が挙げられる。芯金として、鉄、ステンレス等の金属からなるものが使用可能である。
【0034】
弾性層はアスカーC硬度が20°〜60°、特に30°〜50°の層である。
本明細書中、アスカーC硬度はアスカーゴム硬度計C型によって測定された値を用いている。
【0035】
弾性層は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM);ニトリル−ブタジエンゴム(NBR);クロロプレンゴム(CR);シリコンゴム;ウレタンゴム等の弾性材料を用いて形成され、通常はさらに導電材が含有される。導電材として、例えば、カーボン等が使用可能である。
弾性層の厚みは通常、1〜20mmであり、好ましくは3〜10mmである。
【0036】
二次転写ローラの抵抗は、転写性確保の観点から、105〜1010Ω、特に106〜108Ωが好ましい。
【0037】
二次転写ローラにバイアスが印加される場合、例えばトナーの帯電極性に対して逆極性であって、その絶対値が300〜5000V、特に600〜3000Vの範囲内のDC成分が印加される。二次転写ローラには上記DC成分とともにAC成分が重畳されてもよい。
【0038】
張架ローラ(10,11)は特に制限されず、例えば、アルミや鉄などの金属ローラを用いることができる。また芯金の外周面にコート層を設けたローラであって、コート層がEPDM、NBR、ウレタンゴム、シリコンゴムなどの弾性材料に導電粉体やカーボンを分散させたものであり、抵抗値が1×109Ω・cm以下に調整されたローラを用いることもできる。
【0039】
第1発明の画像形成装置が有する他の部材・装置、例えばクリーニング装置7、帯電装置、露光装置、現像装置および感光体用クリーニング装置は特に制限されず、従来より画像形成装置に使用されている公知のものが使用可能である。
【0040】
例えば現像装置は、トナーのみを用いる一成分現像方式を採用したものであってもよいし、またはトナーとキャリアを用いる二成分現像方式を採用したものであってもよい。
トナーは、重合法等の湿式法で製造されたトナー粒子を含むものであってもよいし、または粉砕法(乾式法)で製造されたトナー粒子を含むものであってもよい。
トナーの平均粒径は特に制限されるものではなく、7μm以下、特に4.5μm〜6.5μmが好ましい。
トナーの帯電性は特に制限されるものではなく、負帯電性または正帯電性を有していてよい。
【0041】
(第2発明)
第2発明に係る画像形成装置について説明する。図4は、第2発明の画像形成装置の一例の概略構成図である。図4における図1と同様の符号は、特記しない限り図1と同様の意味内容を示すものとする。
【0042】
第2発明の画像形成装置は、光センサ20を有すること、および中間転写ベルト3が前記第1発明の中間転写ベルトであって、エンボス像を形成する厚膜領域および薄膜領域の厚みが後述する関係式(3)または(3')をさらに満たす中間転写ベルトであること以外、第1発明の画像形成装置と同様であるので、特記しない限り、第2発明において第1発明と同様の説明は省略するものとする。
【0043】
第2発明の画像形成装置は、詳しくは、光センサ20を備え、かつ中間転写ベルト3の最表面薄膜層における厚膜領域31の厚みd1(nm)および薄膜領域32の厚みd2(nm)が、前記第1発明で規定された関係式を満たすだけでなく、光センサからの光に対する中間転写ベルト外周面の反射率Rと像担持体の最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表す反射率関数R(d)について、以下の関係式(3);
|R(d1)−R(d2)|≧0.5×{Rmax(d)−Rmin(d)} (3)
好ましくは以下の関係式(3');
|R(d1)−R(d2)|≧0.7×{Rmax(d)−Rmin(d)} (3')
をさらに満たす。
【0044】
第2発明においては、第1発明の効果とともに、以下に示す効果が得られる。
第2発明では、厚膜領域31と薄膜領域32との間において光センサ20の照射光の反射率に十分な差が生じるので、当該反射率の差を利用して、厚膜領域および薄膜領域を検知できる。すなわち、上記関係式(3)または(3')で規定するように厚膜領域31と薄膜領域32との反射率の差が所定の値以上になるように、d1およびd2を選択するので、光センサによる厚膜領域31および薄膜領域32の検知が可能となる。そのため、予め厚膜領域31および薄膜領域32の位置を認識しておくことにより、装置を大型化することなく、安定して、中間転写ベルトのホームポジションを検出したり、中間転写ベルトの回転速度を検出したりすることができる。d1およびd2が上記関係式(3)および(3')を満たさない場合、厚膜領域31と薄膜領域32との反射率の差が十分でないために、光センサによって厚膜領域31および薄膜領域32を十分に検知できない。
【0045】
光センサ20は、例えば図5に示すように、中間転写ベルト3外周面に対して光を照射する発光主波長λの光源部21と、その反射光を受光する受光部22とから構成され、光源部21および受光部22のそれぞれの入射角および受光角が同じ値θになるように設置される。図5は光センサと中間転写ベルトとの配置関係を説明するための概略模式図であり、図4における中間転写ベルトの回転方向(駆動方向)Dに対して垂直な断面構成図である。
【0046】
光センサ20は、例えば定期的に行われる色ずれ補正時において、中間転写ベルト外周面の反射率を光学的に検出する。詳しくは、中間転写ベルト外周面にトナーが担持されていない清浄状態において、中間転写ベルトを回転駆動させながら、光源部21により光を中間転写ベルト外周面に対して照射し、受光部22によりその反射光の受光量を測定する。受光部22では通常、反射光の受光量はその大きさに応じて出力される電圧値として得られるので、反射率の変化は光センサ出力値の変化として検出される。
【0047】
第2発明において最表面薄膜層3bは中間転写ベルトの周方向に厚膜領域および薄膜領域を有するものである。最表面薄膜層3bが中間転写ベルトの周方向に厚膜領域および薄膜領域を有するとは、図6に示すように、最表面薄膜層3bの表面において光センサ20からの光照射ポイントPが中間転写ベルト3の周方向Dの回転・駆動によって描く軌跡(破線33)が1以上の厚膜領域31と1以上の薄膜領域32とを通ることを意味する。光センサ20は、例えば図4〜図6に示すように、装置内において固定配置され、中間転写ベルト3の周方向Dの回転・駆動によって厚膜領域および薄膜領域を検知する。そのため、たとえ最表面薄膜層が1以上の厚膜領域と1以上の薄膜領域とを有していても、光照射ポイントPの軌跡(破線33)が厚膜領域または薄膜領域の一方しか通らない場合、光センサは反射率の変化を検知できず、厚膜領域および薄膜領域を検知できないので、ホームポジションを検出できない。図6は、光センサと中間転写ベルトとの全体的な配置関係を説明するとともに、厚膜領域31および薄膜領域32の大きさおよび配置等の構成を説明するための中間転写ベルト外周面の一例の概略見取り図である。
【0048】
第2発明において厚膜領域31および薄膜領域32によりエンボス像として表される像は、中間転写ベルトの周方向に厚膜領域および薄膜領域を有する限り特に制限されず、例えば、第1発明においてエンボス像が表す像として例示した同様の像が挙げられる。膜形成の簡易性の観点から好ましい像は、図6および図9Aで示されるような巾方向の全長にわたって形成される形態である。
【0049】
図6において光センサ20は中間転写ベルト3の幅方向Wの比較的端部に配置されているが、光センサ20の配置は光照射ポイントPの軌跡(破線33)が1以上の厚膜領域31と1以上の薄膜領域32とを通る限り特に制限されない。例えば、図6において、厚膜領域31および薄膜領域32は幅方向Wの全長にわたって形成されているので、光センサ20は中間転写ベルト3の幅方向Wのいずれの任意の位置に配置されてもよい。
【0050】
図6において厚膜領域31および薄膜領域32は幅方向Wの全長にわたって形成されているが、厚膜領域31および薄膜領域32の大きさは、光照射ポイントPの軌跡(破線33)が1以上の厚膜領域31と1以上の薄膜領域32とを通る限り特に制限されない。例えば、厚膜領域および薄膜領域は幅方向Wの一端部または中央部のみに形成されてよい。そのような場合、光照射ポイントPの軌跡(破線33)が当該厚膜領域および薄膜領域を通るように光センサ20を配置すればよい。厚膜領域31および薄膜領域32の周方向Dの長さはそれぞれ独立して5mm以上であればよく、好ましくは8〜20mmである。
【0051】
図6において、薄膜領域32中に厚膜領域31が形成されているが、厚膜領域31および薄膜領域32の配置は、光照射ポイントPの軌跡(破線33)が1以上の厚膜領域31と1以上の薄膜領域32とを通る限り特に制限されない。例えば、厚膜領域31中に薄膜領域32が形成されていてもよい。
【0052】
第2発明においては、予め厚膜領域31および薄膜領域32の位置を認識しておき、周方向における既知の位置の厚膜領域31および薄膜領域32をそれらの反射率の差に基づいて光センサ20により検知する。詳しくは、中間転写ベルトを回転駆動させながら、光センサ20により反射率としてセンサ出力を検知するので、厚膜領域31と薄膜領域32との境界においてセンサ出力が十分に変化する。例えば、図6に示す中間転写ベルト3におけるベルト周方向の膜厚変化の一例を図7に示し、ベルト周方向のセンサ出力変化の一例を図8に示す。厚膜領域31および薄膜領域32の周方向の位置は既知であるので、センサ出力の変化から厚膜領域と薄膜領域との境界を容易に検知でき、その結果、中間転写ベルトのホームポジションを正確に検出できる。
【0053】
図9Aに中間転写ベルト外周面の別の一例の概略模式図を示す。図9Aに示す中間転写ベルトは、厚膜領域31を幅方向Wに離間して3本形成したこと以外、図6に示す中間転写ベルトと同様である。図9Aに示す中間転写ベルトにおけるベルト周方向の膜厚変化の一例を図9Bに示し、ベルト周方向のセンサ出力変化の一例を図9Cに示す。このように、周方向Dにおいて2以上の厚膜領域31および1以上の薄膜領域32、または1以上の厚膜領域31および2以上の薄膜領域32を形成し、それらの領域を光学センサで検知することにより、中間転写ベルトの厚みムラに起因する回転速度の変動を正確に検出できる。例えば図9Cに示すセンサ出力変化の計測時に、異なる2つの厚膜領域間の通過時間を測定すると、当該通過時間とそれらの既知の距離とから、中間転写ベルトの回転速度を正確に検出できる。
【0054】
第2発明において厚膜領域31および薄膜領域32は、d1およびd2が前記関係式(3)または(3')をさらに満たすこと以外、第1発明における厚膜領域31および薄膜領域32と同様である。例えば、d1およびd2は第1発明と同様の方法によって測定できる。また例えば、第2発明において厚膜領域31および薄膜領域32の厚み均一性はそれぞれ第1発明においてと同様の範囲内にある。
【0055】
前記関係式(3)および(3')において、dは最表面薄膜層の厚みである。
R(d1)は厚みd1のときの反射率である。
R(d2)は厚みd2のときの反射率である。
Rmax(d)は反射率関数R(d)の取り得る最大値である。
Rmin(d)は反射率関数R(d)の取り得る最小値である。
【0056】
反射率関数R(d)について詳しく説明する。
最表面薄膜層を有する中間転写ベルト外周面に対して光を照射すると、反射光に光学的干渉が生じることが一般に知られており、そのため反射率は最表面薄膜層の厚みに依存して周期的に変動し、反射率関数R(d)を示す。光学的干渉の発生メカニズムを説明するための模式図を図10に示す。図10は中間転写ベルト3に対して光センサの光源部から光(主波長λ)を照射したときの光学的干渉を模式的に表したものであり、少なくとも空気層(屈折率n1)と最表面薄膜層2b(屈折率n2)との界面、および最表面薄膜層3b(屈折率n2)と基材3a(屈折率n3)との界面において反射光に干渉が生じることを示している。図10の紙面上、表裏方向が中間転写ベルトの駆動方向である。
【0057】
反射率関数R(d)は、トナーが担持されていない状態における中間転写ベルト外周面の発光主波長λの光に対する反射率Rと、中間転写ベルトの最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表すものであり、図11に示すような周期性を有する波形を示す。第2発明においては、そのような反射率関数R(d)について、前記関係式(3)または(3')を満たすように、最表面薄膜層の厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が選択される。例えば、図11において、R(dx)=Rmax(d)、R(dy)=Rmin(d)、R(dz)=0.8×{Rmax(d)−Rmin(d)}+Rmin(d)であるとき、d1としてdyを選択し、d2としてdxを選択すると、R(d1)=Rmin(d)およびR(d2)=Rmax(d)であるので、下記式;
|R(d1)−R(d2)|=1.0×{Rmax(d)−Rmin(d)}
が表され、d1およびd2は前記関係式(3)および(3')を満たすものである。また例えば、図11において、d1としてdzを選択し、d2としてdyを選択すると、R(d1)=0.8×{Rmax(d)−Rmin(d)}+Rmin(d)およびR(d2)=Rmin(d)であるので、下記式;
|R(d1)−R(d2)|=0.8×{Rmax(d)−Rmin(d)}
が表され、d1およびd2は前記関係式(3)および(3')を満たすものである。
【0058】
反射率関数R(d)はマトリクス法を用いたマトリクス計算により容易に得ることができる。
例えば、中間転写ベルトが基材2a上に1層の最表面薄膜層2bが形成された単層型構造を有する場合における反射率関数R(d)は以下の式によって表すことができる。
【0059】
【数1】
【0060】
式中、λは光センサの光源部から照射される光の主波長である。例えば、730nmとすることができる。
n1は空気の屈折率であり、通常は真空とほぼ同じ1.00である。
θ1は光センサの光源部からの照射光が空気側から最表面薄膜層2bとの界面に入射するときの入射角であり、通常は0〜90°の範囲内である。
n2は最表面薄膜層2bの屈折率であり、通常は1〜4の範囲内である。
θ2は光センサの光源部からの照射光が最表面薄膜層2b側から基材2aとの界面に入射するときの入射角であり、通常は0〜90°の範囲内である。
n3は基材2aの屈折率であり、通常は1〜4の範囲内である
θ3は光センサの光源部からの照射光が基材2a側から空気との界面に入射するときの入射角であり、通常は0〜90°の範囲内である。
dは前記と同様に最表面薄膜層2bの厚みである。
【0061】
また例えば、中間転写ベルトが基材2a上に特定の薄膜層2cおよび最表面薄膜層2bが順次形成された多層型構造を有する場合にも、公知のマトリックス法を用いた計算により反射率関数(R)を得ることができる。この場合、薄膜層2cの厚みを固定値として考えて、R(d)が前記条件式を満たすように最表面薄膜層2bの厚みdを設定すればよい。薄膜層2cは2以上の層からなっていてもよい。
【0062】
第1発明および第2発明において厚膜領域31および薄膜領域32を有する最表面薄膜層3bは、少なくとも放電ガスと無機酸化物層の原料ガスとの混合ガスをプラズマ化して原料ガスに応じた膜を堆積・形成するプラズマCVD法、特に大気圧または大気圧近傍下において行われる大気圧プラズマCVD法において、堆積途中にロール電極の回転を停止させたり、所定の薄膜領域をマスクすることにより、形成できる。マスクとしては、PET等の樹脂フィルムが使用可能である。プラズマCVD法は、例えば、特開2007−17666号公報に記載の方法と同様の方法に従って実施すればよい。
【0063】
以下に、珪素酸化物(SiO2)を含む無機酸化物層を大気圧プラズマCVD法により形成する場合を例に取り、その製造装置及び製造方法について説明する。大気圧またはその近傍の圧力とは20kPa〜110kPa程度であり、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0064】
図12は、無機酸化物層を製造する製造装置の説明図である。無機酸化物層の製造装置40は、放電空間と薄膜堆積領域が略同一部で、プラズマを基材に晒して堆積・形成するダイレクト方式によって、基材上に無機酸化物層を形成するものであり、エンドレスベルト状の基材3aを巻架して矢印方向に回転するロール電極50と従動ローラ60、及び、基材表面に無機酸化物層を形成する成膜装置である大気圧プラズマCVD装置70より構成されている。
【0065】
大気圧プラズマCVD装置70は、ロール電極50の外周に沿って配列された少なくとも1式の固定電極71と、固定電極71とロール電極50との対向領域で且つ放電が行われる放電空間73と、少なくとも原料ガスと放電ガスとの混合ガスGを生成して放電空間73に混合ガスGを供給する混合ガス供給装置74と、放電空間73等に空気の流入することを軽減する放電容器79と、固定電極71に接続された第1の電源75と、ロール電極50に接続された第2の電源76と、使用済みの排ガスG’を排気する排気部78とを有している。固定電極71に第2の電源76、ロール電極50に第1の電源75を接続しても良い。
【0066】
混合ガス供給装置74は珪素酸化物を含む膜を形成する原料ガスと、窒素ガス或いはアルゴンガス等の希ガスを混合した混合ガスを放電空間73に供給する。
従動ローラ60は張力付勢手段61により矢印方向に付勢され、基材3aに所定の張力を掛けている。張力付勢手段61は基材3aの掛け替え時等は張力の付勢を解除し、容易に基材3aの掛け替え等を可能としている。
【0067】
第1の電源75は周波数ω1の電圧を出力し、第2の電源76は周波数ω1より高い周波数ω2の電圧を出力し、これらの電圧により放電空間73に周波数ω1とω2とが重畳された電界Vを発生する。そして、電界Vにより混合ガスGをプラズマ化して混合ガスGに含まれる原料ガスに応じた膜(無機酸化物層)が基材3aの表面に堆積される。
【0068】
そのような無機酸化物層の形成時において薄膜領域の所定厚みが達成されたら、所定の薄膜領域をマスクし、厚膜領域の所定厚みが達成されるまで無機酸化物の堆積を継続すればよい。
【0069】
原料ガスとしては、珪素酸化物層を形成する場合は、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラクロロシラン等が使用できる。アルミニウム酸化物層を形成する場合は、塩化アルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリメトキシアルミニウム等が使用できる。チタン酸化物層を形成する場合は、塩化チタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン等が使用できる。亜鉛酸化物層を形成する場合は、ジエトキシ亜鉛、塩化亜鉛等が使用できる。
【実施例】
【0070】
[実験例A]
(中間転写ベルトの製造)
押出成形によって、PPS樹脂中にカーボンが分散されてなる表面抵抗率1.30×109Ω/□、厚み120μmおよび周長700mmのシームレス形状基材を得た。
基材の外周表面に、大気圧プラズマCVD法に基づいて図12に示す装置によって、所定膜厚のSiO2薄膜層(硬度4GPa、表面粗さRa31nm)を形成し、中間転写ベルトを得た。
【0071】
(評価)
上記した方法で製造した中間転写ベルトをプリンター(Bizhub C353;コニカミノルタ製)に搭載し、コニカミノルタ製Jペーパー(A4サイズ)にベタ画像を印字した。中間転写ベルトから上記ペーパーへの二次転写率(%)を求めた。二次転写率は、中間転写ベルト上のベタ画像のトナー重量に対する、二次転写されたベタ画像のトナー重量の割合である。印字条件は、上記中間転写ベルトを用いたこと以外、上記プリンターの標準条件と同様であった。トナーは平均粒径6.5μmの重合トナーであった。
比較として、シームレス形状基材を中間転写ベルトとして用いて評価を行った。
【0072】
転写率と膜厚の関係を図13に示した。図に示すように無機酸化物薄膜層を基材上に設けることで転写率が向上し、膜厚に対して転写率はほとんど変化しなかった。そのため薄膜層の膜厚は転写品質に影響すること無く任意の膜厚に設定することができる。
【0073】
[実験例B]
中間転写ベルトが基材上に1層の最表面薄膜層(SiO2)を形成してなる単層型構造を有する場合における前記反射率関数R(d)に以下の算出条件を代入し、図14にグラフ化した。図より、上記中間転写ベルトにおいて、厚膜領域の厚みd1(nm)を390nmとし、薄膜領域の厚みd2(nm)を260nmとすると、それらの領域における反射率の差は最大となることがわかった。
【0074】
(算出条件)
基材屈折率(n3):1.65(ポリフェニルサルファイド:PPS)
基材厚さ:150μm
薄膜層屈折率(n2):1.45(SiO2)
薄膜層入射角(θ1):20°
発光主波長(λ):730nm
空気層屈折率(n1):1
基材入射角(θ2):13.6°
入射角(θ3):12.0°
【0075】
[実験例C;]
基材上に1層の最表面薄膜層(SiO2)を形成してなる単層型構造を有し、最表面薄膜層が周方向において厚膜領域31および薄膜領域32を有してなる中間転写ベルトを製造した。最表面薄膜層における厚膜領域31および薄膜領域32の詳しい配置は、図6に示すように、薄膜領域32中に厚膜領域31を幅方向Wの全長にわたって形成した。厚膜領域31の厚みd1は390nm、厚膜領域31の周方向長さは10mm、薄膜領域の厚みd2は260nmであった。
そのような中間転写ベルトの製造方法は、SiO2層の形成時において薄膜領域の所定厚みが達成されたら、製膜機のロール電極の回転を停止し、厚膜領域の所定厚みが達成されるまでSiO2の堆積を継続させたこと以外、実験例Aにおける中間転写ベルトの製造方法と同様であった。
得られた中間転写ベルトにおけるベルト周方向の膜厚変化を図7に示した。
【0076】
(評価)
得られた中間転写ベルトおよび光センサをプリンターに搭載した。プリンターはBizhub C353(コニカミノルタ製)を改造したもので、図4に示す概略構成を有していた。光センサ20は、図6に示すように、中間転写ベルト3の幅方向Wの一端部に配置した。
光センサの照射条件を以下に示す。
薄膜層入射角θ1:20°
発光主波長:730nm
【0077】
発光センサを駆動させながら、中間転写ベルトを回転駆動させ、ベルト周方向のセンサ出力変化を測定した。結果を図8に示した。そのようなセンサ出力変化を測定することにより、中間転写ベルトの周方向におけるホームポジションを検出できた。
【0078】
[実験例D;]
基材上に1層の最表面薄膜層(SiO2)を形成してなる単層型構造を有し、最表面薄膜層が厚膜領域31および薄膜領域32を有してなる中間転写ベルトを製造した。最表面薄膜層における厚膜領域31および薄膜領域32の詳しい配置は、図3に示すように、薄膜領域32中に厚膜領域31で文字像「さわるな」を形成した。厚膜領域31の厚みd1は390nm、薄膜領域の厚みd2は260nmであった。
そのような中間転写ベルトの製造方法は、SiO2層の形成時において薄膜領域の所定厚みが達成されたら、所定の薄膜領域をマスクし、厚膜領域の所定厚みが達成されるまでSiO2の堆積を継続させたこと以外、実験例Aにおける中間転写ベルトの製造方法と同様であった。
得られた中間転写ベルトの外周面を自然光の下、目視で観察したところ、所定の文字像を認識できた。
【0079】
(評価)
得られた中間転写ベルトをプリンター(Bizhub C353;コニカミノルタ製)に搭載し、コニカミノルタ製Jペーパー(A4サイズ)の全面にハーフトーン画像を印字した。印字条件は、上記中間転写ベルトを用いたこと以外、上記プリンターの標準条件と同様であった。トナーは平均粒径6.5μmの重合トナーであった。
印字画像を目視で観察したところ、中抜けや画像ムラのないハーフトーン画像が得られた。
【符号の説明】
【0080】
1:1a:1b:1c:1d:現像部
2:2a:2b:2c:2d:感光体
3:中間転写ベルト
3a:基材
3b:最表面薄膜層
4:4a:4b:4c:4d:一次転写ローラ
5:二次転写ローラ
6:被記録媒体
7:クリーニング装置
10:11:張架ローラ
20:光センサ
21:発光部
22:受光部
31:厚膜領域
32:薄膜領域
33:光照射ポイントPが描く軌跡
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に少なくとも1層の薄膜層を有する像担持体であって、
最表面薄膜層が厚膜領域および薄膜領域を有し、該厚膜領域および薄膜領域によって所定の像を形成され、厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が以下の関係式(1)〜(2);
50nm≦d1−d2≦950nm (1)
20nm≦d2<d1≦1000nm (2)
を満たすことを特徴とする像担持体。
【請求項2】
最表面薄膜層が無機酸化物層である請求項1に記載の像担持体。
【請求項3】
無機酸化物層が珪素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物および亜鉛酸化物から選ばれる1種類以上の酸化物を含む層である請求項2に記載の像担持体。
【請求項4】
像担持体がベルト形状またはドラム形状を有する中間転写体、または感光体である請求項1〜3のいずれかに記載の像担持体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の像担持体を備えた画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の像担持体;および
該像担持体外周面に対して光を照射する発光主波長λの光源部と、その反射光を受光する受光部とから構成され、像担持体外周面の反射率を光学的に検知する光センサ;
を備えた画像形成装置であって、
像担持体における厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が、発光主波長λの光源部からの光に対する像担持体外周面の反射率Rと像担持体の最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表す反射率関数R(d)について、以下の関係式(3);
|R(d1)−R(d2)|≧0.5×{Rmax(d)−Rmin(d)} (3)
をさらに満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
像担持体の最表面薄膜層が像担持体の周方向に厚膜領域および薄膜領域を有し、該周方向における既知の位置の厚膜領域および薄膜領域をそれらの反射率の差に基づいて光センサにより検知する請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項1】
外周面に少なくとも1層の薄膜層を有する像担持体であって、
最表面薄膜層が厚膜領域および薄膜領域を有し、該厚膜領域および薄膜領域によって所定の像を形成され、厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が以下の関係式(1)〜(2);
50nm≦d1−d2≦950nm (1)
20nm≦d2<d1≦1000nm (2)
を満たすことを特徴とする像担持体。
【請求項2】
最表面薄膜層が無機酸化物層である請求項1に記載の像担持体。
【請求項3】
無機酸化物層が珪素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物および亜鉛酸化物から選ばれる1種類以上の酸化物を含む層である請求項2に記載の像担持体。
【請求項4】
像担持体がベルト形状またはドラム形状を有する中間転写体、または感光体である請求項1〜3のいずれかに記載の像担持体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の像担持体を備えた画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の像担持体;および
該像担持体外周面に対して光を照射する発光主波長λの光源部と、その反射光を受光する受光部とから構成され、像担持体外周面の反射率を光学的に検知する光センサ;
を備えた画像形成装置であって、
像担持体における厚膜領域の厚みd1(nm)および薄膜領域の厚みd2(nm)が、発光主波長λの光源部からの光に対する像担持体外周面の反射率Rと像担持体の最表面薄膜層の厚みd(nm)との関係を表す反射率関数R(d)について、以下の関係式(3);
|R(d1)−R(d2)|≧0.5×{Rmax(d)−Rmin(d)} (3)
をさらに満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
像担持体の最表面薄膜層が像担持体の周方向に厚膜領域および薄膜領域を有し、該周方向における既知の位置の厚膜領域および薄膜領域をそれらの反射率の差に基づいて光センサにより検知する請求項6に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−2498(P2011−2498A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143243(P2009−143243)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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