説明

光学式やタッチプローブ型の測定機構部及び軸体支持機構部を有する軸体測定装置及び該装置による軸体の諸元及び精度の測定方法

【課題】 一体構造の装置で任意の形状の軸体の各部の諸元,精度等を効率的に、かつ高精度に測定できる軸体測定装置及びそれによる軸体の諸元及び精度の測定方法を提供する。
【解決手段】 軸体測定装置100は軸体200の外径,真円度,振れ,偏芯,キズ等を測定する光学式測定機構部1と、軸体200の幅寸法や振れ等を測定するタッチプローブ型測定機構部2と、軸体200を支持する軸体支持機構部3と、これ等の制御部4等を一体構造に配置したものからなる。また、タッチプローブ型測定機構部2の接触子2a等の位置調整等を行う接触子補正具7が設けられている。また、測定方法の1つとして外径寸法は軸体200に光学式測定機構部1の投光部1aから光線を当てて通過光線を受光部1bで測定することにより容易に求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレートの軸部や直径の異なる段付部等を有する各種形状軸体の各部の諸元を前記軸体をセットしたまますべて測定できる測定装置に係り、全体が一体的構造にまとめられコンパクトの構造からなる軸体測定装置及び該装置により軸体のすべての諸元や精度を前記軸体を軸体支持機構部にセットした状態で効率的にかつ高精度に測定する軸体の諸元及び精度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸体の測定装置や手段としては従来より各種のものが採用されている。この中で比較的本発明に似ているものとして、例えば、「特許文献1」や「特許文献2」及び「特許文献3」等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−108415号(図1)
【特許文献2】特開平8−61907号(図1)
【特許文献3】特開平5−288699号(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
「特許文献1」の「特開2001−108415号」の「光学的寸法測定装置」は、対峙して配置されるレーザ発光部(8)とレーザ受光部(9)とを有するもので、この部位に被測定物を配置してその外径寸法の測定を効率的に行うものであるが、前記以外の別装置を併設するものではなく、また、その諸元の測定方法は画一的のものであり、被測定物の各部の諸元や精度やキズ等を測定検出する方法等は全く開示されていない。
また、「特許文献2」の「特開平8−61907号」の「タッチプローブ」は、所謂タッチプローブに関するものであり、軸体等の測定部と併用するものでなく、また、前記の外径等の測定装置と併用する構造のものではなく、軸体の各諸元や精度をすべて測定し得る測定方法については全く開示されていない。
また、「特許文献3」の「特開平5−288699号」の赤外線探傷装置は、被部材(1)の外面の「キズ」を検出するものであり、赤外線を使用するものであると共に、「キズ」測定の専用機であり、本発明のように各機構部を併設するものではなく、被検体の他の諸元や精度を測定できるものではない。
【0005】
以上のように、従来存在している測定装置は夫々単一機能を有するものであり、その機能の測定装置としては夫々特徴を有するものであるが、あくまで軸体の特定の諸元のみを測定する単一機能の測定装置である。
一方、軸体としては各種の形状があり、例えば、ストレートの軸部や外径の相異する段付部等から形成されるものがあり、このような軸体のすべての諸元を該軸体をセットしたまま単一構造の装置で測定することが要請される。また、各種機能を有する単一構造の測定装置による測定の方が効率的であり、装置スペースも小さくて済む。また、従来開示されている測定装置や測定方法は、被測定物の画一的な諸元や精度を集中的に測定及び検出するものであり、一度セットした軸体のすべての諸元や精度を測定し検出できるものはなくその他の従来技術もそのような機能を有するものは開示されていない。
軸体の諸元や精度の測定及び検出は単一の測定装置によって軸体をセットした状態ですべて可能になることが測定精度や測定効率等の点で要請されているにも拘らず、この要請を満足できる測定装置及びそれによる測定方法は開示されていない。
【0006】
本発明は、以上の要請に鑑みて発明されたものであり、各種形状の軸体のすべての諸元の測定ができ、これ等の測定機構部が全体として一体的構造にまとめられ、コンパクト化と省スペース化ができ、かつ効率的高精度の測定のできる軸体測定装置及びこの装置による軸体の諸元及び精度の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上の目的を達成するために発明されたものであり、その請求項1の発明は、軸体の径,真円度,振れ,中心位置,偏芯,キズ,長さ寸法,側面触れ等の諸元や精度を測定する各種機構部を一体的構造に配置してなる軸体測定装置であって、該装置は、投光器からの光を前記軸体に照射し通過光線を受光器で受光して軸体の測定を行う光学式測定機構部及び/又は前記軸体に当接する接触子とこの接触子の動きを基にして前記軸体の測定を行うタッチプローブ型測定機構部と、前記軸体を中心支持する軸体支持機構部と、前記各機構部の制御部とを一体的に配設したものからなることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記軸体支持機構部は、前記軸体の中心線に沿う方向(X軸方向と言う)に移動可能の構造からなり、タッチプローブ型測定機構部は前記X軸と交差する方向に移動可能に形成されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、前記タッチプローブ型測定機構部の前記接触子が複数のものからなり、その先端部が同一位置又は異なる位置に配置されるものからなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、前記タッチプローブ型測定機構部には、前記接触子の外的原因によって生ずる位置ずれ補正及び位置合わせを容易にする接触子補正具が設けられることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明は、前記制御部が、前記各機構部を載置するベース台上に立設する柱部の頂部に固定されるものからなることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6の発明は、投光部と受光部とを有する光学式測定機構部及び/又は接触子を有するタッチプローブ型測定機構部と被測定物の軸体を回転及び軸線方向に移動自在に支持する軸体支持機構部とこれ等の機構部の制御部とをベース台上に一体的構造に配設してなる軸体測定装置による前記軸体の各諸元や精度の測定する測定方法であって、該方法は、前記光学式測定機構部の投光部からの通過光線を基にして外径寸法,中心位置,真円度,振れ,偏心,キズ等を測定する第1の測定方法と、前記タッチプローブ型測定機構部の接触子の動きから軸体の長さ寸法振れ及び各諸元や精度等を測定する第2の測定方法とからなることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7の発明は、前記第1の測定方法における偏芯の測定方法が、前記軸体の2個所の円筒部の中心位置を結ぶ基準中心線を求め、他の円筒部の中心位置と前記基準中心線との差を検出して行うことを特徴とする。
【0014】
また、請求項8の発明は、前記第1の測定方法によるキズの測定方法が、前記軸体を軸線方法に移動しながら回転させ、前記軸体の各部における外径寸法を夫々求めて他の部位より大きく変化する外径寸法に基づき前記キズの位置や大きさを検出するものからなることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9の発明は、前記第2の測定方法による方法が、前記接触子を軸体の側面や外面に当接せしめてその動きにより測定を行うものからなり、前記接触子が単一又は複数のものからなることを特徴とする。
【0016】
また、請求項10の発明は、前記第1及び第2の測定方法が、前記軸体を前記軸体支持機構部にセットした状態で行うことができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1の軸体測定装置によれば、本発明の装置は軸体の外径や振れ偏芯やキズ等を測定し得る光学的測定機構部及び/又は軸体の段付部等の中や側面の振れ等を測定するタッチプローブ型測定機構部と、軸体そのものを測定位置に位置決め支持する軸体支持機構部と、これ等の各機構部の制御部とを一体的構造にまとめて設置するため軸体の各諸元を軸体をセットしたままこの装置のみで効率的に、かつ高精度に測定できる効果を上げることができる。
【0018】
また、本発明の請求項2の軸体測定装置によれば、各機構部がX軸やこれと交差する方向に沿って移動可能であり、各種形状の軸体のすべての場所の測定を正確に行うことができる。
【0019】
また、本発明の請求項3の軸体測定装置によれば、タッチプローブ型測定機構部の接触子が複数のものからるなり、長さ寸法の測定や段付部の左右面の振れ等の測定を効率的に行うことができる。また、接触子の先端位置に差をつけることにより軸体との不必要な干渉をなくすことができる。
【0020】
また、本発明の請求項4の軸体測定装置によれば、タッチプローブ型測定機構部の接触子の部分は外的条件により変形することがあるが、接触子補正具を設けることによって測定に先立って接触子を正確の位置に位置補正することができると共に位置合わせの容易化を図ることができる。
【0021】
また、本発明の請求項5の軸体測定装置によれば、制御部が装置の上部に一体的に配置され、全体としてのコンパクト化と省スペース化が図れる。
【0022】
本発明の請求項6の軸体の諸元及び精度の測定方法によれば、軸体を装置の軸体支持機構部に一度セットした後、この軸体を回転及び軸方法に移動する動作を行いながら一体的に配置されている光学式測定機構部の投光及び受光により軸体の外径,真円度,振れ,中心位置,偏芯やキズ等の諸元や精度を簡単に高精度に検出することが可能であり、更にセットした状態でタッチプローブ型測定機構部の接触子を用いて軸体の長さ寸法,振れや各諸元や精度を簡単に、かつ高精度に検出することができ、測定の効率化と高精度化を図ることができる。
【0023】
また、本発明の請求項7の軸体の諸元及び精度の測定方法によれば、円筒部の偏芯の測定が極めて高精度に行うことができる。
【0024】
また、本発明の請求項8の軸体の諸元及び精度の測定方法によれば、他の手段、例えば、赤外線等を用いることなく一体的に配置されている光学式測定機構部により、キズを正確に検出でき、キズ発見の効率化と高精度化を図ることができる。
【0025】
また、本発明の請求項9の軸体の諸元及び精度の測定方法によれば接触子を軸体に当接することにより各部の測定を正確に行うことができる。
【0026】
また、本発明の請求項10の軸体の諸元及び精度の測定方法によれば、本発明の測定方法は、軸体を一度セットした状態で行われ、他の測定方法とは効率及び精度の点において大きく相違できる効果を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の軸体測定装置の平面図。
【図2】本発明の別の軸体測定装置の平面図。
【図3】本発明の別の軸体測定装置の平面図。
【図4】本発明の軸体測定装置の正面図。
【図5】本発明の軸体測定装置における光学式測定機構部の概要構造を示す側面構成図。
【図6】本発明の軸体測定装置のタッチプローブ型測定機構部の概要構造を示す側面構成図(a)及び(a)の上面図(b)。
【図7】本発明の軸体測定装置の軸体支持機構部の概要構造を示す正面構成図。
【図8】本発明の軸体測定装置で測定される軸体の一実施例を示す正面図。
【図9】本発明の軸体測定装置による軸体の外径寸法や中心位置の測定方法を説明するための模式図。
【図10】本発明の軸体測定装置による軸体の真円度や振れの測定方法を説明するための模式図。
【図11】本発明の軸体測定装置による軸体の偏芯の測定方法を説明するための模式図。
【図12】本発明の軸体測定装置による軸体の「キズ」の測定方法を説明するための模式図(a),(b),(c)。
【図13】本発明の軸体測定装置による軸体の幅寸法の測定方法を説明するための模式図(a),(b)。
【図14】本発明の軸体測定装置による軸体の振れの測定方法を説明するための模式図。
【図15】接触子による外径等の測定を行う方法を示す模式図。
【図16】長さの異なる接触子の必要性を説明するための部分平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の軸体測定装置及び軸体の諸元及び精度の測定方法の実施例を図面を参照して詳述する。
【実施例1】
【0029】
図1は図8に示す軸体200の各諸元や精度を測定する軸体測定装置100の一例を示す。この軸体測定装置100は、後にその詳細構造を説明するすべての機構部を配設したものからなる。即ち、この軸体測定装置100は、大別して光学式測定機構部1と、タッチプローブ型測定機構部2と、軸体支持機構部3及び図4に示す制御部4等とからなる。 図1に示すように、軸体200を支持する軸体支持機構部3は軸体200の軸線方向(X軸方向)に沿って配置され、光学式測定機構部1及びタッチプローブ型測定機構部2は、本実施例ではX軸に直交するY軸方向に沿い軸体支持機構部3を挾んで及びその一端側に配置される。なお、これ等はX軸に直交するY軸方向にのみ配置されることは限らない。特に、タッチプローブ型測定機構部2としてはX軸と直交するY軸方向に移動する形式のみならずX軸と交差する方向に移動する形成のものもあるが本実施例ではこの件については構造説明を省略する。
また、制御部4は図4に示すように光学式測定機構部1やタッチプローブ型測定機構部2及び軸体支持機構部3を載置するベース台5上に立設する柱部6の上部に配置され一体的構造のものからなる。なお、制御部4の構造については図4の画面に示すのみでその内容説明は省略する。
次に、各機構部の構造を説明する。次に、本実施例における各機構部1,2,3の構造や機能を説明する。
【0030】
図1及び図5に示すように、光学式測定機構部1は光を投光する投光部1aと投光を受光する投光部1b及びこれ等の制御部材1c等とからなり、投光された光の解折は図略の解折部によって行われる。被測定物の軸体200は投光部1aと受光部1bとの間に配置される。投光部1aからは一定の幅をもった平板状の光が投光され、この投光が軸体200に当ると軸体200に当らない部分の投光のみが受光部1bに入光し軸体200の各部の諸元測定や精度測定が行われる。
【0031】
図1及び図6に示すように、タッチプローブ型測定機構部2は本実施例では長さの異なる接触子2a,2a′と、接触子2a,2a′による動きを検出して数値変換するためのエレメトロン検出器2bと、これ等をY軸方向に移動させるためのY軸移動機構部2c等とからなる。なお、図6の(a),(b)にはY軸移動機構部2cの構造が示されているが一般的技術のためその構造説明は省略する。
【0032】
軸体支持機構部3は、図1,図4及び図7に示す構造からなり、軸体200をX軸方向両端支持する支持部3aと、その回転機構部3bと、支持部3aや回転機構部3bをX軸方向に移動させるX軸移動機構部3c等からなる。なお、これ等の構造説明は一般的技術のため省略する。
【0033】
タッチプローブ型測定機構部2の接触子2a,2a′の外的原因による狂いの補正を行う接触子補正具7は図1に示すように軸体支持機構部3側に配置される駒状のものからなり、その概略説明はここでは省略するが接触子2a,2a′を強制的に接触させることによりその狂いを是正と位置合わせを容易にする機能を有する。
【0034】
図8は本発明の軸体測定装置100によって各部の測定が行われる軸体200の一実施例を示すものである。このものは図示のように膨出している大円筒部200aと、円筒部200aに連結して縮径されてる2つの中円筒部200b,200b′と、これから更に縮径している小円筒部200cと、先端のねじ部200d等からなる。
【0035】
ここで大円筒部200aは光学式測定機構部1やタッチプローブ型測定機構部2により外径や幅寸法端面の振れやキズ等を測定することができ、中円筒部200b,200b′も光学式測定機構部1により外径,振れ,キズ等の測定ができ、更に小円筒部200cは外径,振れ,キズ等の測定の他、中円筒部200bに対する偏芯量や芯ズレ等の測定を光学式測定機構部1により行うことができる。
勿論、軸体200は図8に示すものに限定するものではない。これ等の測定方法については同時出願を予定している別の特許出願の書類により詳細に説明することとし、ここでの説明は省略する。
【0036】
以上のように、本発明の軸体測定装置100によれば、任意の形状の軸体200を軸体支持機構部3にセットするだけでその各部の諸元のすべてを測定することができ、極めて効率的で高精度の測定を行うことができる。
【実施例2】
【0037】
「実施例2」の軸体測定装置100Aは図2に示す基本的構造は「実施例1」と同一のものであるが、本実施例ではタッチプローブ型測定機構部2が省略されている。軸体200の形状やその諸元及び精度の測定項目としては必ずしもタッチプローブ型測定機構部2を必要としない場合もあり、本実施例の如き軸体測定装置100Aを採用する場合もある。なお、図示されている光学式測定機構部1や軸体支持機構部3の構造は「実施例1」において説明した内容と同一であり、その重複説明は省略する。
【実施例3】
【0038】
この「実施例3」における軸体測定装置100Bは光学式測定機構部1が省略され、タッチプローブ型測定機構部2と軸体支持機構部3とから形成されるものからなる。軸体200の形状とその諸元や精度の測定の目的によってはこの構成で十分の場合もあり、装置は単純化を図るためのものである。なお、タッチプローブ型測定機構部2によっても測定方法や装置構造を工夫することにより軸体200の外径やキズ等の諸元や精度を測定することも可能であるが、ここではその説明を省略する。
【0039】
以上のように、本発明の軸体測定装置100及び100A,100Bによれば、任意の形状の軸体200を軸体支持機構部3にセットするだけでその各部の諸元のすべてを測定することができ、極めて効率的で高精度の測定を行うことができる。
【0040】
次に、図9により軸体200の外径寸法の測定方法を説明する。軸体200を投光部1aと受光部1bとの間にセットする。投光部1aから軸体200に光線8を軸体200に照射する。この光線8は軸体200に邪魔されて軸体200に当たらない部分の光線8a,8aが軸体200の上下かを通過し受光部1b側に入光する。従って、軸体200の外周の上下には光線8a,8aと軸体200との接点A,Bが求められ、受光部1bはこの接点A,Bの位置を検出する。よって、受光部1b側で接点Aと接点Bとの差を求めることにより軸体200の外径を求めることができる。
【0041】
また、接点Aと接点Bの差の1/2の点Oを求めることにより、この点Oが軸体200のその部分の中心点となる。
【0042】
次に、軸体200の真円度と振れを求める測定方法を図10により説明する。この場合透過する光線は8aのみとする。前記した接点Aは軸体200を回転させることにより軸体200の外周のすべての位置において接点Aに相当するものが求められる。この値が常に一定ならばその位置における軸体200は真円であり、もし軸体の外周の夫々の位置における接点Aが異なる場合には、それに相当するだけ真円でなく、振れが生じていることがわかる。以上により、軸体200の真円度,振れを求めることができる。
【0043】
なお、前記の測定方法は軸体200の軸線方向のすべての位置においても軸体200をX軸方向に移動させることによって求められ、軸体200の全位置における外径寸法,中心位置,真円度,振れが求められ、これを統計的処理することにより、軸体200の代表的な外径寸法等を求めることができる。
【0044】
図11は大円筒部200aと200bを基にして小円筒部200cの偏芯を求める測定方法を示すものである。まず、前記した方法により大円筒部200aと200bとの中心位置の点O1,O2を求め、この点O1と点O2とを結ぶ仮想中心線C1を求める。一方、同一の方法で小円筒部200cにおける中心位置を求め、小円筒部200cにおける仮想中心線C2を求める。この両中心線C1,C2との差を求めることにより偏芯を求めることができる。
【0045】
次に、軸体200の「キズ」の求め方を図12(a),(b),(c)により説明する。
図10に示した場合と同様に「キズ」9のある軸体200に光線8を投光し、軸体200を回転させる。互いに軸体200をその軸線方向に移動させて軸体200の軸方向の全体の外径の測定を行う。図12(c)は軸体200の外径はその軸線方向のすべての点の外径寸法を表示するが、「キズ」9のある部分は他の部分に較べて外径の変動が大きい。この変動の度合を予め「キズ」サンプル等を用いて求めておくことにより、許容できない「キズ」9のある場所が特定される。
【0046】
次に、軸体200の長さ寸法の測定方法を図13により説明する。この場合は、タッチプローブ型測定機構部2が採用されるが軸体200そのものは軸体支持機構部3に支持されたままでよい。
図13に示すように軸体200の例えば、大円筒部200b′の端面10に接触子2aを当接し、その位置を確認した後、大円筒部200b′を軸線方向に移動して大円筒部200b′他の端面11に接触子2aを当接してその位置を確認することにより大円筒部200b′の長さ幅寸法を正確に測定することができる。この場合、軸体200の中心線をベースとして測定値を補正することが必要である。なお、図13(a)は1本の接触子2aによる測定方法が示されているが、図13(b)のように2本の接触子2a,2a′によって測定してもよい。
【0047】
図14は大円筒部200b′の側面10の振れを測定する方法を示すものである。側面10に接触子2aを当接し、その状態で大円筒部200b′を回転することにより、この側面10の振れを正確に測定することができる。なお、この場合も軸体200の中心線をベースとする必要がある。
【0048】
図15は接触子2a等により軸体200の外径寸法等の諸元を測定する応用例を示したものである。前記のように外径等の測定は光学式測定機構部1によって行うことがやりやすいが、タッチプローブ型測定機構部2しかない場合でもその接触子2aを大円筒部200a等の外径に斜めに当てることにより測定が可能となる。
【0049】
図16は、2本の接触子2a,2a′の使用方法を説明するものである。この接触子2a,2a′はその先端の位置が異なっている。この理由は、(イ)に示すように例えば、比較的外径の小さな中円筒部200b′の側面に接触子2aのみを当接して中円筒部200b′の幅寸法や振れを測定しようとする場合、接触子2a′が中円筒部200b′の外径に当接することを防ぐためである。また、図16の(ロ)に示すように外径の大きい、かつ幅狭の大円筒部200aの場合には接触子2a′が大円筒部200aに接触しないため前記のような問題は発生しないと共にこの接触子2a′によって大円筒部200aの他の側面11の測定を行うことができ測定効率の向上を図ることができる。
【0050】
以上の説明のように、軸体測定装置100を用いることにより、軸体200のすべての場所の諸元や精度を効率的に行うことができるが、勿論、その測定内容は前記のものに限定するものではなく、同一技術的範疇のものが適用されることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の軸体測定装置は、前記のようにあらゆる形状の軸体に対応でき、その軸体のすべての諸元を軸体に一度セットするだけで測定することができ、効率的で高精度の測定を必要とする軸体状の被測定物のすべてに適用され、その利用範囲は極めて広い。また、一体構造のものからなるため省スペース化ができ、省スペース化を希望するすべての部分に適用可能である。また、本発明の光学式やタッチプローブ型測定機構部を一体的に有する軸体測定装置による軸体の諸元及び精度の測定方法は任意の形状のすべての軸体の諸元や精度を効率的に、かつ高精度に測定でき、かつコンパクトにまとめられる省スペース的の装置であるため、その利用範囲は極めて広い。
【符号の説明】
【0052】
1 光学式測定機構部
1a 投光部
1b 受光部
1c 制御部材
2 タッチプローブ型測定機構部
2a 接触子
2a′ 接触子
2b エレメトロン検出器
2c Y軸移動機構部
3 軸体支持機構部
3a 支持部
3b 回転機構部
3c X軸移動機構部
4 制御部
5 ベース台
6 柱部
7 接触子補正具
8 光線
8a 光線
8b 光線
9 キズ
10 側面
11 他の側面
100 軸体測定装置
200 軸体
200a 大円筒部
200b 中円筒部
200b′ 中円筒部
200c 小円筒部
200d ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の径,真円度,振れ,中心位置,偏芯,キズ,長さ寸法,側面触れ等の諸元や精度を測定する各種機構部を一体的構造に配置してなる軸体測定装置であって、該装置は、投光器からの光を前記軸体に照射し通過光線を受光器で受光して軸体の測定を行う光学式測定機構部及び/又は前記軸体に当接する接触子とこの接触子の動きを基にして前記軸体の測定を行うタッチプローブ型測定機構部と、前記軸体を中心支持する軸体支持機構部と、前記各機構部の制御部とを一体的に配設したものからなることを特徴とする軸体測定装置。
【請求項2】
前記軸体支持機構部は、前記軸体の中心線に沿う方向(X軸方向と言う)に移動可能の構造からなり、タッチプローブ型測定機構部は前記X軸と交差する方向に移動可能に形成されることを特徴とする請求項1に記載の軸体測定装置。
【請求項3】
前記タッチプローブ型測定機構部の前記接触子が複数のものからなり、その先端部が同一位置又は異なる位置に配置されるものからなることを特徴とする請求項1に記載の軸体測定装置。
【請求項4】
前記タッチプローブ型測定機構部には、前記接触子の外的原因によって生ずる位置ずれ補正及び位置合わせを容易にする接触子補正具が設けられることを特徴とする請求項1又は3に記載の軸体測定装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記各機構部を載置するベース台上に立設する柱部の頂部に固定されるものからなることを特徴とする請求項1に記載の軸体測定装置。
【請求項6】
投光部と受光部とを有する光学式測定機構部及び/又は接触子を有するタッチプローブ型測定機構部と被測定物の軸体を回転及び軸線方向に移動自在に支持する軸体支持機構部とこれ等の機構部の制御部とをベース台上に一体的構造に配設してなる軸体測定装置による前記軸体の各諸元や精度の測定する測定方法であって、該方法は、前記光学式測定機構部の投光部からの通過光線を基にして外径寸法,中心位置,真円度,振れ,偏心,キズ等を測定する第1の測定方法と、前記タッチプローブ型測定機構部の接触子の動きから軸体の長さ寸法振れ及び各諸元や精度等を測定する第2の測定方法とからなることを特徴とする光学式やタッチプローブ型の測定機構部を一体的に有する軸体測定装置による軸体の諸元及び精度の測定方法。
【請求項7】
前記第1の測定方法における偏芯の測定方法が、前記軸体の2個所の円筒部の中心位置を結ぶ基準中心線を求め、他の円筒部の中心位置と前記基準中心線との差を検出して行うことを特徴とする請求項6に記載の光学式やタッチプローブ型の測定機構部を一体的に有する軸体測定装置による軸体の諸元及び精度の測定方法。
【請求項8】
前記第1の測定方法によるキズの測定方法が、前記軸体を軸線方法に移動しながら回転させ、前記軸体の各部における外径寸法を夫々求めて他の部位より大きく変化する外径寸法に基づき前記キズの位置や大きさを検出するものからなることを特徴とする請求項6に記載の光学式やタッチプローブ型の測定機構部を一体的に有する軸体測定装置による軸体の諸元及び精度の測定方法。
【請求項9】
前記第2の測定方法による方法が、前記接触子を軸体の側面や外面に当接せしめてその動きにより測定を行うものからなり、前記接触子が単一又は複数のものからなることを特徴とする請求項6に記載の光学式やタッチプローブ型の測定機構部を一体的に有する軸体測定装置による軸体の諸元及び精度の測定方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の測定方法が、前記軸体を前記軸体支持機構部にセットした状態で行うことができることを特徴とする請求項6に記載の光学式やタッチプローブ型の測定機構部を一体的に有する軸体測定装置による軸体の諸元及び精度の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−271047(P2010−271047A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120523(P2009−120523)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(593190098)有限会社ピー・エム・シーサービス (8)
【出願人】(501476247)
【Fターム(参考)】