説明

内燃機関のヘッドカバー構造

【課題】カム軸間狭小化によるエンジンのコンパクト化を阻害することなく、カムホルダの肉厚化および大型化を抑制し得る油路構造を備えた動弁機構を提供する。
【解決手段】シリンダ軸線7方向に互いに異なる高さ位置に配置され、ともにVTCアクチュエータ17、18を備えた吸気カムシャフト8及び排気カムシャフト9と、シリンダヘッド4と協働して排気カムシャフト9の第1軸受28を形成する中間カムホルダ31と、中間カムホルダ31と協働して吸気カムシャフト8の第1軸受26を形成するアッパカムホルダ32とを有するエンジン1の動弁機構において、ロア側の排気側VTCアクチュエータ18への排気側進角油路60のうち、中間カムホルダ31およびアッパカムホルダ32に形成するホルダ内油路64を、アッパカムホルダ32に設けたアッパホルダ内油路64Bを含むように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本のカムシャフトがシリンダ軸線方向に異なる位置に配置され、それぞれの一端にカム位相可変機構が設けられた内燃機関の動弁機構に係る。
【背景技術】
【0002】
4サイクルエンジン(以下、単にエンジンと記す)では、出力および燃費の向上や有害排出ガス成分の低減等を図るべく、種々の可変動弁機構を搭載したものが多くなっている。可変動弁機構としては、低速型カムと高速型カムとを切り換えるカム切換型のバルブ特性可変装置(Variable valve Timing and lift Electronic Control:以下、VTECと記す)が従前より存在するが、近年ではカム位相とバルブリフトとを個別に連続可変制御することで過渡特性の更なる向上やスロットルレス化等を実現したものや、VTECと併せて、カム位相可変型のバルブタイミングコントロール装置(Variable Timing Control Device:以下、VTCと記す)を搭載したエンジンなどもある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
VTCは、シリンダヘッドにおけるカムシャフトの端部付近に設置された油圧アクチュエータ(以下、VTCアクチュエータと記す)や、VTCアクチュエータへの作動油(エンジンオイル)の供給制御を行う油圧制御弁等から構成されている。また、カム位相を所定の状態にロックするロックピンをさらに備え、ロックピンによるロックの解除動作を油圧で行うようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、2本のカムシャフトを有するDOHCエンジンにおいて、カム軸間を狭くしてエンジンのコンパクト化を図るために、2本のカムシャフトをシリンダ軸線方向に互いに異なる高さ位置に配置し、上位側のアッパカムシャフトを軸支するカムホルダ下部を下位側のロアカムシャフトの軸線位置で分割し、ロアカムシャフトのカムホルダ上部(カムキャップ)を兼ねるように構成した動弁機構が知られている(例えば、特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3447601号公報
【特許文献2】特許第4160408号公報
【特許文献3】登録実用新案第2553101号公報
【特許文献4】独国特許発明第4215051号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
VTCが搭載されたエンジンでは、VTCアクチュエータの駆動とカムシャフトの潤滑とはともにメインギャラリから供給されたエンジンオイルによって行われ、油圧制御弁から供給される作動油の油路を、シリンダヘッドからカムホルダに至るかたちで複数形成する必要がある。したがって、カムホルダを肉厚化および大型化せざるを得ず、内燃機関の大型化を招来していた。特に、VTECなど、油圧駆動される他の装置の油路を形成する場合や、2本のカムシャフトをシリンダ軸線方向に互いに異なる高さ位置に配置してシリンダヘッドの幅寸法を縮小した場合には、この問題が顕著になる。
【0007】
本発明は、このような従来技術に含まれる課題を解消するべく案出されたものであり、カム軸間狭小化によるエンジンのコンパクト化を阻害することなく、カムホルダ部を分割した構造を活かし、カムホルダの肉厚化および大型化を抑制し得る油路構造を備えた動弁機構を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の一側面によれば、内燃機関(1)のシリンダ軸線(7)方向に互いに異なる高さ位置に互いに平行に配置され、一端にそれぞれカム位相可変機構(17、18)が設けられたアッパカムシャフト(8)及びロアカムシャフト(9)と、前記ロアカムシャフトの軸受下部(28l)を有するシリンダヘッド(4)と、前記シリンダヘッドの前記軸受下部と協働して前記一端側(11)のロアカムシャフト軸受(28)を形成する前記ロアカムシャフトの軸受上部(28u)、および前記アッパカムシャフトの軸受下部(26l)を有する中間カムホルダ(31)と、前記中間カムホルダの前記軸受下部と協働して前記一端側(11)のアッパカムシャフト軸受(26)を形成する前記アッパカムシャフトの軸受上部(26u)を有し、前記ロアカムシャフトの上方に至るように延在するアッパカムホルダ(32)とを有し、油圧制御弁から供給される作動油を、アッパ側油路(50、55)およびロア側油路(60、65)を介して前記両カム位相可変機構に送給する内燃機関の動弁機構であって、前記アッパ側油路および前記ロア側油路は、上下方向に延在するように前記シリンダヘッド内に設けられたヘッド内油路(52、57、62、67)、前記カムホルダに設けられ前記軸受に至るカムホルダ油路(54、59、64、69)及び前記カムシャフト内のシャフト内油路をそれぞれ含み、前記ロア側油路の前記カムホルダ油路(64)が、少なくとも部分的に前記アッパカムホルダに設けられている構成とする。
【0009】
この構成によれば、両カムシャフトの軸受を構成するカムホルダを相互に連結することで、真円度が要求される軸受の加工精度を向上するとともに、部品点数を削減することができる。また、ロアカムシャフト軸受を形成しないアッパカムホルダをロアカムシャフトの上方に至るように構成して、ロア側油路のカムホルダ内油路の一部がアッパカムホルダに設けられる構成としたことにより、アッパカムホルダを可能な限り軽量化しつつ、中間カムホルダのみに油路を形成する構成に比べて中間カムホルダの肉厚化を抑制できる。また、中間カムホルダの加工孔を少なくすることで、中間カムホルダの強度を確保できるため、締結剛性を高めてシール性を向上することができる。
【0010】
また、本発明の一側面によれば、前記ロア側油路は、前記カム位相可変機構を進角側へ駆動するためのロア側進角油路(60)と、前記カム位相可変機構を遅角側へ駆動するためのロア側遅角油路(65)とを有し、前記両ロア側油路の前記カムホルダ油路(64、69)は、前記ロアカムシャフト軸受の内周面にカム軸方向に並設されたロア側溝状油路(63、68)を有し、前記ロア側進角油路および前記ロア側遅角油路の一方(65)の前記カムホルダ油路は、前記中間カムホルダに形成され、一端が前記ヘッド内油路(67)に接続し、他端が前記ロア側溝状油路(68)に接続する中間ホルダ油路(69)を有し、前記ロア側進角油路および前記ロア側遅角油路の他方(60)の前記カムホルダ油路は、前記中間カムホルダに形成され、一端が前記ヘッド内油路に接続し、他端が前記中間カムホルダの上面に開口する中間ホルダ内油路(64A)、および、前記アッパカムホルダに形成され、一端が前記中間ホルダ内油路の他端に接続し、他端が前記ロア側溝状油路に接続するアッパホルダ内油路(64B)を有する構成とすることができる。
【0011】
この構成によれば、2本のロア側カムホルダ油路のうち一方は、中間ホルダ油路によってロア側溝状油路に接続され、他方はアッパホルダ内油路によってロア側溝状油路に接続されるため、中間カムホルダおよびアッパカムホルダの肉厚化および大型化をともに抑制することができる。また、ロア側カムホルダ油路を上下に分割することで、加工を単純化でき、アッパカムホルダを、駄肉を少なくしつつもアッパホルダ内油路によってその剛性を高めることができる。加えて、中間ホルダ油路がアッパカムホルダとの接合面に形成された場合であっても、シール性を確保するだけの接合面積を肉厚化によらずに確保することができる。また、シリンダヘッドと中間カムホルダとの接合面に沿う油路を設ける必要がないため、ロアカムシャフト軸受部の締結剛性を向上できるほか、カム位相可変機構以外の装置に利用する油路の設計自由度が高くなる。
【0012】
また、本発明の一側面によれば、前記アッパ側油路は、前記カム位相可変機構を進角側へ駆動するためのアッパ側進角油路(50)と、前記カム位相可変機構を遅角側へ駆動するためのアッパ側遅角油路(55)とを有し、前記両アッパ側油路の前記ヘッド内油路(52、57)は、カム軸方向に並設され、前記両アッパ側油路の前記カムホルダ油路は、前記アッパカムシャフト軸受の内周面にカム軸方向に並設されたアッパ側溝状油路(53、58)と、前記中間カムホルダに形成され、前記ヘッド内油路と前記アッパ側溝状油路とを接続する中間ホルダ内油路(54、59)とをそれぞれ有し、前記両アッパ側油路はそれぞれ、前記ヘッド内油路と前記アッパ側溝状油路と前記中間ホルダ内油路とがカム軸方向に直交する平面上に位置するように形成された構成とすることができる。
【0013】
この構成によれば、両アッパ油路がカム軸方向に直交する平面上に平行に形成されるため、加工が容易であり、且つ中間カムホルダ油路の構造を簡素化することができる。また、中間カムホルダに集中して油路を形成することで、アッパカムホルダを最小限の大きさに設定することができる。
【0014】
また、本発明の一側面によれば、前記シリンダヘッドに支持され、それぞれ対応するカムシャフトの下方に当該カムシャフトと平行に配置されたアッパロッカシャフト(41)およびロアロッカシャフト(42)をさらに有し、前記両アッパ側油路(50、55)の前記ヘッド内油路(52、57)および前記両ロア側進角油路(60、65)の前記ヘッド内油路(62、67)が、前記アッパロッカシャフトと前記ロアロッカシャフトとの間に位置しており、シリンダヘッド上面視において4つの前記ヘッド内油路によって囲まれる位置に、前記アッパカムホルダおよび前記中間カムホルダを前記シリンダヘッドに共締めする第1締結ボルト(40)が締結された構成とすることができる。
【0015】
この構成によれば、ヘッド内油路を集約して配置することでその加工が容易になる。また、油路に囲まれる位置に第1締結ボルトが配置されることにより、その周囲の油路の、シリンダヘッドと中間カムホルダとの合わせ面、および中間カムホルダとアッパカムホルダとの合わせ面でのシール性を高めることができる。
【0016】
また、本発明の一側面によれば、前記アッパカム位相可変機構(17)は、カム位相を所定の状態にロックする油圧駆動のロックピンを備えるものであり、ロックピンの作動または解除用に前記油圧制御弁から供給されるロックピン用油路(70)をさらに備え、前記ロックピン用油路は、前記アッパカムシャフト軸受(26)の内周面において前記両アッパ側溝状油路(53、58)とカム軸方向に異なる位置に形成されたピン用溝状油路(73)と、前記アッパカムシャフト(8)に対して前記両アッパ側油路(50、55)と相反する側にて前記中間カムホルダ(31)の上面および下面に開口するように形成されたピン用中間ホルダ内油路(74)と、前記中間カムホルダと前記アッパカムホルダ(32)との接合面に形成され、前記ピン用中間ホルダ内油路と前記ピン用溝状油路とを連通するピン用連通油路(75)とを有し、前記ピン用中間ホルダ内油路(74)と前記ピン用溝状油路(73)との間には、前記アッパカムシャフトに対して前記第1締結ボルトと相反する側にて前記アッパカムホルダと前記中間カムホルダとを前記シリンダヘッドに共締めする第2締結ボルトのボルト挿通孔(39)が形成され、前記ピン用連通油路(75)が前記第2ボルトのボルト挿通孔(39)と一体に形成された構成とすることができる。
【0017】
この構成によれば、ピン用中間ホルダ内油路をアッパカムシャフトに対して両アッパ側油路と相反する側に配置することで、アッパカムシャフト軸受近傍の合わせ面の面積を確保してカムホルダの大型化を防止するとともに、合わせ面からのオイル漏れを抑制し、アッパ側カム位相可変機構の応答性低下を防止できる。
【0018】
また、本発明の一側面によれば、前記ロア側進角油路および前記ロア側遅角油路の前記一方(65)の前記中間ホルダ油路(68)は、前記アッパカムホルダとの接合面に形成された溝状部分を含み、前記中間カムホルダの前記シリンダヘッドとの接合面には、前記溝状部分の下方に肉抜き凹部(110)が形成されている構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、中間ホルダ油路が溝状油路を含むようにしたことで、加工が容易になり、且つ肉抜き凹部を形成することで中間カムホルダを軽量化できる。
【0020】
また、本発明の一側面によれば、前記アッパカムホルダ(32)が前記ロアカムシャフト(9)を跨ぐように延在し、前記中間カムホルダおよび前記アッパカムホルダは、前記シリンダヘッドに共締めする締結ボルトのボルト挿通孔(39)を、前記ロアカムシャフトを挟む2箇所と前記アッパカムシャフトを挟む2箇所との合計4箇所に有しており、前記シリンダヘッド(4)、前記中間カムホルダ(31)および前記アッパカムホルダ(32)は、前記締結ボルトの1本に隣接する位置にて前記アッパカムホルダの上面から前記シリンダヘッドの下面に至るオイルレベルゲージ挿入孔(101〜103)を画成する構成とすることができる。
【0021】
この構成によれば、アッパカムホルダの上面にオイルレベルゲージ挿入孔を形成することで、シリンダヘッドの上面に締結されるヘッドカバーに形成されるオイルレベルゲージ取付孔とオイルレベルゲージ挿入孔との離間距離を短くすることができ、オイルレベルゲージの挿入性を向上できる。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明によれば、カム軸間狭小化によるエンジンのコンパクト化を阻害することなく、カムホルダ部を分割した構造を活かし、カムホルダの肉厚化および大型化を抑制し得る油路構造を備えた動弁機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態に係る動弁機構の部分平面図
【図2】図1に示す動弁機構を上方から見た斜視図
【図3】図1に示す動弁機構を上方から見た分解斜視図
【図4】図1に示す動弁機構を下方から見た分解斜視図
【図5】右側から見た油路構成の概略構成図
【図6】後方から見た油路構成の概略構成図
【図7】図1中のVII−VII線に沿うエンジンの断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る動弁機構を、DOHC4バルブ型の4サイクル直列4気筒自動車用ガソリンエンジン(以下、単にエンジン1と記す。)に適用した実施形態について詳細に説明する。なお、以下では、エンジン1が図1に矢印で示す向きで自動車に搭載されているものとし、この方向を基準にして説明する。
【0025】
まず、図7を参照してエンジン1の全体構成を説明する。エンジン1は、シリンダブロック2、シリンダブロック2の下端に締結されたオイルパン3、シリンダブロック2の上端に締結されたシリンダヘッド4、シリンダヘッド4の上端に締結されたシリンダヘッドカバー5などを備えている。シリンダヘッド4とシリンダヘッドカバー5とにより画成される動弁室6には、シリンダ軸線7方向において比較的高い位置(アッパ側)に配置された吸気カムシャフト8、およびシリンダ軸線7方向において比較的低い位置(ロア側)に配置された排気カムシャフト9が互いに平行に配置されている。
【0026】
次に、図1に示すように、シリンダヘッド4の上面には、右方から左方に向けて(すなわち、気筒列方向に)4つの気筒(図示せず)を挟むように、第1〜第5カムホルダ(図中には、第1カムホルダ11および第2カムホルダ12のみを示す)が形成されている。なお、第1カムホルダ11は、シリンダヘッド4の右端壁4Rに一体に形成されている。
【0027】
シリンダヘッド4の右側面には、シリンダヘッド4との間にカムチェーン室13を形成するカムチェーンカバー14が締結されている。吸気カムシャフト8および排気カムシャフト9のカムチェーン室13に突入する右端には、外周にそれぞれ吸気側カムスプロケット15および排気側カムスプロケット16が形成された吸気側VTCアクチュエータ17および排気側VTCアクチュエータ18が固設されている。吸気側カムスプロケット15と排気側カムスプロケット16とにはカムチェーン19が巻き掛けられており、このカムチェーン19を介して図示しないクランクスプロケットによって吸気カムシャフト8および排気カムシャフト9が回転駆動される。VTCアクチュエータの詳細な説明はここでは省略するが、吸気側VTCアクチュエータ17には、カム位相を所定の状態にロックするロックピンが備えられている。このロックピンは、圧縮コイルスプリングにより常時ロック側に付勢されており、油圧によってロックピンを解除方向へ駆動することにより、ロック状態が解除される。
【0028】
吸気カムシャフト8には、2本の吸気バルブに対応する位置に設けられた低バルブリフト用の2つの第1カムローブ21と、両第1カムローブ21の間に設けられた高バルブリフト用の1つの第2カムローブ22とが形成されており、各カムローブ21、22に対応して設けられた2つの第1ロッカアーム23および1つの第2ロッカアーム24を油圧駆動の連結ピンによって連結・分離することで、吸気バルブのバルブリフトを変化させるVTEC機構20が装備されている。一方、排気カムシャフト9には、各気筒に1つのカムローブ25が形成されている。
【0029】
図2および図3に示すように、第1カムホルダ11では、シリンダヘッド4の右端壁4Rの上面側に排気カムシャフト9の軸受下部28l(ジャーナル支持面の下部)が形成されている。シリンダヘッド4の右端壁4Rの上面には、中間カムホルダ31が締結される。中間カムホルダ31には、シリンダヘッド4に形成された軸受下部28lと協働して排気カムシャフト9の第1軸受28を形成する排気カムシャフト9の軸受上部28uがその下面側に形成され、吸気カムシャフト8の軸受下部26lがその上面側に形成されている。中間カムホルダ31の上面には、中間カムホルダ31と略同じ前後方向寸法を有するアッパカムホルダ32が締結される。アッパカムホルダ32には、中間カムホルダ31に形成された軸受下部26lと協働して吸気カムシャフト8の第1軸受26を形成する吸気カムシャフト8の軸受上部26uが下面側に形成されている。
【0030】
アッパカムホルダ32と中間カムホルダ31とは、吸気カムシャフト8の両側近傍と排気カムシャフト9の両側近傍との4箇所に、互いに連続するボルト挿通孔39を有しており、4本の締結ボルト40によってシリンダヘッド4に共締めされる。なお、図1に示すように、シリンダヘッド4の底壁における右端壁4R近傍には、シリンダヘッド4をシリンダブロック2に締結するためのボルト挿通孔46が、排気カムシャフト9の吸気カムシャフト8側の近傍と吸気カムシャフト8の後側近傍に形成されており、ボルトの挿通および工具による締め付けができるように、中間カムホルダ31およびアッパカムホルダ32は、シリンダ軸線7方向から見てボルト挿通孔46に重ならないように当該部分の左右方向の寸法が縮小されている。
【0031】
第2カムホルダ12〜第5カムホルダでは(図2、図3中には、第2カムホルダ12のみを全体的に示す)、吸気側カムホルダと排気側カムホルダは分離してシリンダヘッド4の底壁から突設されている。第2排気側カムホルダ12Bのシリンダヘッド4に一体形成されたロワカムホルダ36は、その上面がシリンダヘッド4の上面と面一とされており、排気カムシャフト9の軸受下部29lがその上面側に形成されている。第2排気側カムホルダ12Bのロワカムホルダ36の上面には、排気カムシャフト9の軸受上部29uがその下面側に形成されたアッパホルダ37が2本の締結ボルト40によって締結されている。
【0032】
第2吸気側カムホルダ12Aのロワカムホルダ33は、排気側と同様にその上面がシリンダヘッド4の上面と面一とされている。第2吸気側カムホルダ12Aのロワカムホルダ33の上面には、吸気カムシャフト8の軸受下部27lがその上面側に形成された中間カムホルダ34が締結されており、その上面には、吸気カムシャフト8の軸受上部27uがその下面側に形成されたアッパカムホルダ35が締結されている。第2吸気側カムホルダ12Aのアッパカムホルダ35と中間カムホルダ34とは、2本の締結ボルト40によってロワカムホルダ33に共締めされている。第3カムホルダ〜第5カムホルダも同様に構成される。
【0033】
第1カムホルダ11〜第5カムホルダには、吸気カムシャフト8の下方に配置された吸気ロッカシャフト41(図7参照)を支持する吸気ロッカシャフト支持孔43と、排気カムシャフト9の下方に配置された排気ロッカシャフト42(図7参照)を支持する排気ロッカシャフト支持孔44とが穿設されている。
【0034】
シリンダヘッド4の右側面には、吸気側VTCアクチュエータ17を進角側へ駆動するための吸気側進角油路50、吸気側VTCアクチュエータ17を遅角側へ駆動するための吸気側遅角油路55、吸気側VTCアクチュエータ17のロックピンを解除側へ駆動するためのロックピン用油路70、排気側VTCアクチュエータ18を進角側へ駆動するための排気側進角油路60、排気側VTCアクチュエータ18を遅角側へ駆動するための排気側遅角油路65、吸気側に設けられたVTEC機構20の連結ピンを連結側へ駆動するための吸気VTEC−ON油路80、VTEC機構20の連結ピンを分離側へ駆動するための吸気VTEC−OFF油路85などが開口している。これらの油路には、図示しないオイルコントロールバルブから作動油(エンジンオイル)が供給される。
【0035】
さらに、本実施形態のエンジン1には設けられないが、シリンダヘッド4は、排気側にもVTEC機構が設けられるエンジンにも適用できるように、排気側VTEC機構の連結ピンを連結側へ駆動するための排気VTEC−ON油路90、および排気側VTEC機構の連結ピンを分離側へ駆動するための排気VTEC−OFF油路95を形成できるようになっている。また、シリンダヘッド4の右側面には、エンジンオイルを動弁室6からオイルパン3へ戻すためのオイル戻し孔45がカムチェーン室13に向けて開口している。
【0036】
なお、これらの油路のうち、吸気側進角油路50、吸気側遅角油路55、排気側進角油路60、排気側遅角油路65、吸気VTEC−OFF油路85、および排気VTEC−ON油路90の6つの油路は、吸気ロッカシャフト41と排気ロッカシャフト42との間に形成された1つの接合面に開口している。本実施形態では、これらの油路には、オイルコントロールバルブからカムチェーン室13を介して給油が行われるため、油路が集約されることによって作動油の受け渡し面におけるシール性が向上している。
【0037】
次に、図3〜図6を参照して第1カムホルダ11に形成された油路の構成について説明する。なお、本実施形態の場合、排気側にはVTEC機構を設けないため、排気側VTEC機構に供される油路は形成する必要がないが、ここではこれらの油路についても説明し、図3および図4にもこれらの油路を示している。図6中、(A)は図5中のA部分の油路構成の概略を、(B)は図5中のB部分の油路構成の概略を、(C)は図5中のC部分の油路構成の概略を、後方から見た状態でそれぞれ模式的に示している。
【0038】
吸気側進角油路50および吸気側遅角油路55はそれぞれ、シリンダヘッド4の右側面の開口端から左方向(シリンダ列方向)に延びるシリンダ列方向油路51、56と、シリンダヘッド4の内部に設けられ、シリンダ列方向油路51、56からシリンダ軸線7方向に沿って上方へ延びるヘッド内油路52、57と、吸気カムシャフト8の第1軸受27の内周面にカム軸方向に並設された吸気側環状溝油路53、58と、中間カムホルダ31に形成され、ヘッド内油路52、57と吸気側環状溝油路53、58とを接続する中間ホルダ内油路54、59とを有している。
【0039】
両吸気側油路50、55の中間ホルダ内油路54、59は、中間カムホルダ31の下面からシリンダ軸線7方向に沿って中間カムホルダ31の上面における吸気カムシャフト8の前側(排気カムシャフト9との間)に至った後に、中間カムホルダ31の上面に沿って後向きに形成された溝状部分を通って吸気側環状溝油路53、58に至っている。両吸気側油路50、55は、ヘッド内油路52、57と吸気側環状溝油路53、58と中間ホルダ内油路54、59とがそれぞれカム軸方向に直交する平面上に位置し、且つ互いの対応する部分がシリンダ列方向に並ぶように形成されている。なお、両吸気側環状溝油路53、58に供給された作動油は、吸気カムシャフト8の外周面の軸方向に異なる位置に形成されたオイル導入孔を介して、吸気カムシャフト8の内部に形成された図示しない吸気シャフト内油路に導入され、それぞれ吸気側VTCアクチュエータ17の進角室および遅角室に供給される。
【0040】
ロックピン用油路70は、シリンダヘッド4の右側面の開口端からシリンダ軸線7と直交する平面上で左方向に延びるシリンダ列方向油路71と、シリンダ列方向油路71から吸気カムシャフト8の後ろ側(吸気カムシャフト8に対して両吸気側油路50、55と相反する側)にてシリンダ軸線7方向に沿って上方へ延びるヘッド内油路72と、吸気カムシャフト8の第1軸受27の内周面において両吸気側環状溝油路53、58よりも右側(カム軸方向に異なる位置)に形成されたピン用環状溝油路73と、中間カムホルダ31の下面から上方へ延び、中間カムホルダ31の上面に開口するピン用中間ホルダ内油路74と、中間カムホルダ31の上面に形成され、ピン用中間ホルダ内油路74とピン用環状溝油路73とを連通するピン用連通溝油路75とを有している。
【0041】
ヘッド内油路72およびピン用中間ホルダ内油路74は、吸気カムシャフト8の後側近傍に配置された締結ボルト40よりも後方に設けられている。つまり、中間カムホルダ31には、ピン用中間ホルダ内油路74とピン用環状溝油路73との間に、締結ボルト40を挿通させるボルト挿通孔39が形成されている。そして、シリンダヘッド4の右端壁4Rおよび中間カムホルダ31の左右方向の厚さを最小限にするために、ピン用連通溝油路75は、締結ボルト40を囲繞するようにボルト挿通孔39と一体に形成されている。
【0042】
なお、ピン用環状溝油路73に供給された作動油は、両吸気側油路50、55と同様に、吸気カムシャフト8の外周面に形成されたオイル導入孔を介して、図示しない吸気シャフト内油路に導入され、吸気側VTCアクチュエータ17のロックピンの一端に供給される。
【0043】
排気側進角油路60は、シリンダヘッド4の右側面の開口端から左方向に延びるシリンダ列方向油路61と、シリンダ列方向油路61からシリンダ軸線7方向に沿って上方へ延び、シリンダヘッド4内に設けられたヘッド内油路62と、排気カムシャフト9の第1軸受28の内周面に形成された排気側環状溝油路63と、中間カムホルダ31とアッパカムホルダ32とにわたって形成され、一端がヘッド内油路62に接続し、他端が排気側環状溝油路63に接続するホルダ内油路64とを有している。
【0044】
排気側進角油路60のホルダ内油路64は、中間カムホルダ31に形成された中間ホルダ内油路64Aと、アッパカムホルダ32に形成されたアッパホルダ内油路64Bとから構成される。中間ホルダ内油路64Aは、シリンダ軸線7方向に延在して中間カムホルダ31の上面および下面に開口している。一方、アッパホルダ内油路64Bは、アッパカムホルダ32の下面からシリンダ軸線7方向に沿って上向きに延びる上向部分と、上向部分から前方へ延びる前向部分と、前向部分から下方へ延びる下向部分とを通って排気側環状溝油路63に至っている。なお、前向部分は、アッパカムホルダ32の前面から穿孔形(ドリル加工)されるが、その前端の開口はプラグにより塞がれる。排気側進角油路60は、ヘッド内油路62とホルダ内油路64と排気側環状溝油路63とがカム軸方向に直交する平面上に位置するように形成される。
【0045】
排気側遅角油路65は、シリンダヘッド4の右側面の開口端から左方向に延びるシリンダ列方向油路66と、シリンダ列方向油路66からシリンダ軸線7方向に沿って上方へ延び、シリンダヘッド4内にて排気側進角油路60のヘッド内油路62の左側に設けられたヘッド内油路67と、排気カムシャフト9の第1軸受28の内周面に形成された排気側環状溝油路68と、中間カムホルダ31に形成され、一端がヘッド内油路67に接続し、他端が排気側環状溝油路68に接続する中間ホルダ油路69とを有している。
【0046】
排気側遅角油路65の中間ホルダ油路69は、中間カムホルダ31の下面からシリンダ軸線7方向に沿って中間カムホルダ31の上面における排気カムシャフト9の後側(吸気カムシャフト8との間)に至る上向部分、中間カムホルダ31の上面に沿って前向きに且つ右側へ突出する湾曲状に延びる溝状部分、および溝状部分の先端から下向きに延びる下向き部分を通って排気側環状溝油路68に至っている。排気側遅角油路65は、ヘッド内油路67と排気側環状溝油路68とがカム軸方向に直交する平面上に位置し、且つヘッド内油路67と排気側環状溝油路68とが排気側進角油路60の対応する部分とシリンダ列方向に並ぶように形成される。
【0047】
両吸気側油路50、55のヘッド内油路52、57および両排気側油路60、65のヘッド内油路62、67は、吸気ロッカシャフト41と排気ロッカシャフト42との間、且つ吸気カムシャフト8の前側近傍に配置される締結ボルト40の近傍にそれぞれ設けられており、この締結ボルト40は、これら4つのヘッド内油路52、57、62、67に囲まれる位置に配置されて中間カムホルダ31およびアッパカムホルダ42をシリンダヘッド4に締結する。
【0048】
なお、両排気側環状溝油路63、68に供給された作動油は、排気カムシャフト9の外周面の軸方向に異なる位置に形成されたオイル導入孔を介して、排気カムシャフト9の内部に形成された図示しない排気シャフト内油路に導入され、それぞれ排気側VTCアクチュエータ18の進角室および遅角室に供給される。
【0049】
吸気VTEC−ON油路80は、シリンダ軸線7方向を基準として吸気ロッカシャフト41の後方にてシリンダヘッド4の右側面に開口しており、この開口から左方向に延びるシリンダ列方向油路81と、シリンダヘッド4の内部に設けられ、シリンダ列方向油路81からシリンダ軸線7方向に沿って上方へ延び、シリンダヘッド4の上面に至るヘッド内油路82と、シリンダヘッド4の上面に沿って形成され、ヘッド内油路82の上端から前方へ延びて吸気ロッカシャフト支持孔43の後側部分に至る溝状油路83とを有している。
【0050】
吸気VTEC−OFF油路85は、シリンダ軸線7方向を基準として吸気ロッカシャフト41の前方であって、両吸気側油路50、55のシリンダ列方向油路51、56の上方に開口しており、この開口から左方向(シリンダ列方向)に延びるシリンダ列方向油路86と、シリンダヘッド4の内部に設けられ、シリンダ列方向油路86からシリンダ軸線7方向に沿って上方へ延び、シリンダヘッド4の上面に至るヘッド内油路87と、シリンダヘッド4の上面に沿って形成され、ヘッド内油路87の上端から後方へ延びて吸気ロッカシャフト支持孔43の前側部分に至る溝状油路88とを有している。
【0051】
排気VTEC−ON油路90は、シリンダ軸線7方向を基準として排気ロッカシャフト42の後方にてシリンダヘッド4の右側面に開口しており、この開口から左方向に延びるシリンダ列方向油路91と、シリンダヘッド4の内部に設けられ、シリンダ列方向油路91からシリンダ軸線7方向に対して前傾して上方へ延びるヘッド内上向油路92と、ヘッド内上向油路92から前方へ延びて排気ロッカシャフト支持孔44の後側部分に至るヘッド内前向油路93とを有している。なお、ヘッド内上向油路92は、シリンダヘッド4の上面からのドリル加工により形成されるが、その上端の開口はプラグにより塞がれる。
【0052】
排気VTEC−OFF油路95は、シリンダ軸線7方向を基準として排気ロッカシャフト42の前方にてシリンダヘッド4の右側面に開口しており、この開口から左方向に延びるシリンダ列方向油路96と、シリンダヘッド4の内部に設けられ、シリンダ列方向油路96からシリンダ軸線7方向に沿って上方へ延びるヘッド内上向油路97と、ヘッド内上向油路97から後方へ延びて排気ロッカシャフト支持孔44の前側部分に至るヘッド内後向油路98とを有している。なお、ヘッド内上向油路97およびヘッド内後向油路98は、それぞれシリンダヘッド4の上面および前面からのドリル加工により形成されるが、上端の開口および前端の開口はそれぞれプラグにより塞がれる。
【0053】
図示はしないが、吸気ロッカシャフト41には、その内部にロッカシャフト内ON油路およびロッカシャフト内OFF油路が形成されるとともに、その外周面における吸気VTEC−ON油路80および吸気VTEC−OFF油路85が接続する部位と、各ロッカシャフト内油路とを連通する油導入孔が穿設される。
【0054】
図3に示すように、中間カムホルダ31は、その上面に排気側遅角油路65の中間ホルダ油路69が形成されている一方、図4に示すように、その下面に中間ホルダ油路69に沿う形状の肉抜き凹部110が形成されており、中間カムホルダ31の軽量化が図られている。
【0055】
図1、図3および図7に示すように、シリンダヘッド4、中間カムホルダ31およびアッパカムホルダ32には、排気カムシャフト9の後側近傍に配置される締結ボルト40のボルト挿通孔39のシリンダヘッド4内方(右方)に隣接した位置に、オイルレベルゲージ100を案内すべくアッパカムホルダ32の上面からシリンダヘッド4の下面に至るように形成されたオイルレベルゲージ挿入孔101〜103がそれぞれ形成されている。
【0056】
このように構成されたエンジン1の動弁機構によれば、運転者がエンジン1を始動させると、クランクシャフトに駆動されたオイルポンプからエンジンオイルが所定の吐出圧をもって吐出され、このエンジンオイルがオイルメインギャラリを介してシリンダヘッド4やクランクシャフトのジャーナル支持面等に供給される。シリンダヘッド4に供給されたエンジンオイルは、一部が作動油として両VTCアクチュエータ17、18用のオイルコントロールバルブやVTEC機構20用のオイルコントロールバルブに供給される。
【0057】
各オイルコントロールバルブに供給された作動油は、図示しないエンジンECUの駆動指令によってオイルコントロールバルブが作動すると、吸気側進角油路50、吸気側遅角油路55、ロックピン用油路70、排気側進角油路60、排気側遅角油路65、吸気VTEC−ON油路80、および吸気VTEC−OFF油路85に流入し、両VTCアクチュエータ17、18やVTEC機構20に供給される。これにより、両VTCアクチュエータ17、18が進角側あるいは遅角側に作動して吸気カムシャフト8または排気カムシャフト9のカム位相を変化させたり、吸気カムシャフト8による吸気バルブのリフト量を変化させたりする。
【0058】
そして、両カムシャフト8、9の第1軸受26、28を構成するカムホルダを相互に連結した中間カムホルダ31とすることで、真円度が要求される第1軸受26、28の加工精度が向上するとともに、部品点数が削減されている。また、排気カムシャフト9の第1軸受28を形成しないアッパカムホルダ32が排気カムシャフト9の上方に至るように延在し、両排気側油路60、65のホルダ内油路64、69が、少なくとも部分的に(アッパホルダ内油路64Bが)アッパカムホルダ32に設けられたことにより、アッパカムホルダ32を可能な限り軽量化しつつ、中間カムホルダ31のみに油路を形成する構成に比べて中間カムホルダ31の左右方向の肉厚化が抑制されている。さらに、中間カムホルダ31の加工孔が少なくなるため、中間カムホルダ31の強度を確保でき、締結剛性が高まって中間ホルダ油路69のシール性も向上する。
【0059】
また、両排気側油路60、65のうち一方は、中間ホルダ油路69によって排気側環状溝油路68に接続され、他方はアッパホルダ内油路64Bによって排気側環状溝油路63に接続されるため、中間カムホルダ31およびアッパカムホルダ32の肉厚化および大型化がともに抑制される。また、両排気側油路60、65が中間ホルダ油路69とアッパホルダ内油路64Bとに上下に分割されたことで、加工が単純化され、アッパカムホルダ32が、駄肉を少なくしつつもアッパホルダ内油路64Bによってその剛性が高められている。加えて、中間ホルダ油路69(溝状部)がアッパカムホルダ32との接合面に形成されていても、シール性を確保するだけの接合面積が肉厚化によらずに確保される。また、シリンダヘッド4と中間カムホルダ31との接合面に沿う油路を設ける必要がないため、排気カムシャフト9の第1軸受11部分の締結剛性が向上するほか、排気側にVTEC機構が設けられるエンジンに適用する場合であっても、排気VTEC−ON油路90および排気VTEC−OFF油路95の形成が容易になっている。
【0060】
本実施形態では、両吸気側油路50、55が、カム軸方向に並設され、それぞれヘッド内油路52、57と吸気側環状溝油路53、58と中間ホルダ内油路54、59とがカム軸方向に直交する平面上に位置するように形成されている。そのため、各油路の加工が容易であり、且つ中間ホルダ内油路54、59の構造が簡素になっている。また、中間カムホルダ31に集中して油路が形成されることで、アッパカムホルダ32が最小限の大きさに設定可能とされている。
【0061】
また、本実施形態では、両吸気側油路50、55のヘッド内油路52、57および両排気側油路60、65のヘッド内油路62、67が、吸気ロッカシャフト41と排気ロッカシャフト42との間に配置、すなわち集約されたことにより、これらの加工が容易になっている。また、締結ボルト40が4つのヘッド内油路52、57、62、67によって囲まれる位置にて締結されたことにより、ヘッド内油路52、57、62、67の、シリンダヘッド4と中間カムホルダ31との合わせ面および中間カムホルダ31とアッパカムホルダ32との合わせ面のシール性が高くなっている。
【0062】
本実施形態では、吸気側VTCアクチュエータ17がカム位相を所定の状態にロックするロックピンを有しているが、ピン用中間ホルダ内油路74が吸気カムシャフト8に対して両吸気側油路50、55と相反する側に配置されたことにより、吸気カムシャフト8の第1軸受26近傍の合わせ面の面積が確保されるため、中間カムホルダ31およびアッパカムホルダ32の大型化が回避されるとともに、合わせ面からのオイル漏れが抑制され、吸気側VTCアクチュエータ17の応答性低下が防止される。
【0063】
また、排気側遅角油路65の中間ホルダ油路69は、溝状部分を含むように構成されたことによって加工が容易になっている。また、中間カムホルダ31の溝状部分が形成された上面の反対側の下面に肉抜き凹部110が形成されたことにより、中間カムホルダ31は剛性を維持されつつ軽量化が実現される。
【0064】
本実施形態では、アッパカムホルダ32が排気カムシャフト9を跨ぐように延在し、アッパカムホルダ32と中間カムホルダ31とが、排気ロアカムシャフトを挟む2箇所と吸気カムシャフト8を挟む2箇所との合計4箇所で締結ボルト40によってシリンダヘッド4に共締めされ、そのうちの1本に隣接する位置にてアッパカムホルダ32の上面からシリンダヘッド4の下面に至るオイルレベルゲージ挿入孔101〜103が画成されている。そのため、シリンダヘッド4の上面に締結されるシリンダヘッドカバー5に形成されるオイルレベルゲージ取付孔とオイルレベルゲージ挿入孔103との離間距離が短くなり、オイルレベルゲージの挿入性が向上する。
【0065】
加えて、アッパカムホルダ32と中間カムホルダ31とをシリンダヘッド4に共締めする比較的長尺な締結ボルト40に隣接する位置にオイルレベルゲージ挿入孔101〜103が形成されることで、オイルレベルゲージ孔101〜103を略直線状に形成することができため、オイルレベルゲージの挿入性が向上する。
【0066】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、本発明の動弁機構を直列4気筒ガソリンエンジンに適用したが、その他の内燃機関に適用することも可能である。また、上記実施形態では、吸気カムシャフト8にVTEC機構20を設けているが、排気カムシャフト9側にもVTEC機構20を設ける構成や、どちらにも設けない構成とすることもできる。この他、各装置や部材の具体的構成や配置、数量など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した本発明に係る動弁機構の各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 エンジン
4 シリンダヘッド
4R 右端壁
7 シリンダ軸線
8 吸気カムシャフト(アッパカムシャフト)
9 排気カムシャフト(ロアカムシャフト)
11 第1カムホルダ
17 吸気側VTCアクチュエータ
18 排気側VTCアクチュエータ
26 第1軸受(アッパカムシャフト軸受)、26l 軸受下部、26u 軸受上部
28 第1軸受(ロアカムシャフト軸受)、28l 軸受下部、28u 軸受上部
31 中間カムホルダ
32 アッパカムホルダ
39 ボルト挿通孔
40 締結ボルト
41 吸気ロッカシャフト(アッパロッカシャフト)
42 排気ロッカシャフト(ロアロッカシャフト)
50 吸気側進角油路(アッパ側進角油路)
55 吸気側遅角油路(アッパ側遅角油路)
60 排気側進角油路(ロア側進角油路)
65 排気側遅角油路(ロア側遅角油路)
52、57、62、67 ヘッド内油路
53、58 吸気側環状溝油路
63、68 排気側環状溝油路
54、59 中間ホルダ内油路
64 ホルダ内油路
64A 中間ホルダ内油路
64B アッパホルダ内油路
69 中間ホルダ油路
70 ロックピン用油路
74 ピン用中間ホルダ内油路
75 ピン用連通溝油路
101〜103 オイルレベルゲージ挿入孔
110 肉抜き凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダ軸線方向に互いに異なる高さ位置に互いに平行に配置され、一端にそれぞれカム位相可変機構が設けられたアッパカムシャフト及びロアカムシャフトと、
前記ロアカムシャフトの軸受下部を有するシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの前記軸受下部と協働して前記一端側のロアカムシャフト軸受を形成する前記ロアカムシャフトの軸受上部、および前記アッパカムシャフトの軸受下部を有する中間カムホルダと、
前記中間カムホルダの前記軸受下部と協働して前記一端側のアッパカムシャフト軸受を形成する前記アッパカムシャフトの軸受上部を有し、前記ロアカムシャフトの上方に至るように延在するアッパカムホルダとを有し、
油圧制御弁から供給される作動油を、アッパ側油路およびロア側油路を介して前記両カム位相可変機構に送給する内燃機関の動弁機構であって、
前記アッパ側油路および前記ロア側油路は、前記シリンダヘッド内に設けられたヘッド内油路、前記カムホルダに設けられ前記軸受に至るカムホルダ油路及び前記カムシャフト内のシャフト内油路をそれぞれ含み、
前記ロア側油路の前記カムホルダ油路が、少なくとも部分的に前記アッパカムホルダに設けられていることを特徴とする内燃機関の動弁機構。
【請求項2】
前記ロア側油路は、前記カム位相可変機構を進角側へ駆動するためのロア側進角油路と、前記カム位相可変機構を遅角側へ駆動するためのロア側遅角油路とを有し、
前記両ロア側油路の前記カムホルダ油路は、前記ロアカムシャフト軸受の内周面にカム軸方向に並設されたロア側溝状油路を有し、
前記ロア側進角油路および前記ロア側遅角油路の一方の前記カムホルダ油路は、前記中間カムホルダに形成され、一端が前記ヘッド内油路に接続し、他端が前記ロア側溝状油路に接続する中間ホルダ油路を有し、
前記ロア側進角油路および前記ロア側遅角油路の他方の前記カムホルダ油路は、前記中間カムホルダに形成され、一端が前記ヘッド内油路に接続し、他端が前記中間カムホルダの上面に開口する中間ホルダ内油路、および、前記アッパカムホルダに形成され、一端が前記中間ホルダ内油路の他端に接続し、他端が前記ロア側溝状油路に接続するアッパホルダ内油路を有することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の動弁機構。
【請求項3】
前記アッパ側油路は、前記カム位相可変機構を進角側へ駆動するためのアッパ側進角油路と、前記カム位相可変機構を遅角側へ駆動するためのアッパ側遅角油路とを有し、
前記両アッパ側油路の前記ヘッド内油路は、カム軸方向に並設され、
前記両アッパ側油路の前記カムホルダ油路は、前記アッパカムシャフト軸受の内周面にカム軸方向に並設されたアッパ側溝状油路と、前記中間カムホルダに形成され、前記ヘッド内油路と前記アッパ側溝状油路とを接続する中間ホルダ内油路とをそれぞれ有し、
前記両アッパ側油路はそれぞれ、前記ヘッド内油路と前記アッパ側溝状油路と前記中間ホルダ内油路とがカム軸方向に直交する平面上に位置するように形成されたことを特徴とする、請求項2に記載の内燃機関の動弁機構。
【請求項4】
前記シリンダヘッドに支持され、それぞれ対応するカムシャフトの下方に当該カムシャフトと平行に配置されたアッパロッカシャフトおよびロアロッカシャフトさらに有し、
前記両アッパ側油路の前記ヘッド内油路および前記両ロア側油路の前記ヘッド内油路が、前記アッパロッカシャフトと前記ロアロッカシャフトとの間に位置しており、
シリンダヘッド上面視において4つの前記ヘッド内油路によって囲まれる位置に、前記アッパカムホルダおよび前記中間カムホルダを前記シリンダヘッドに共締めする第1締結ボルトが締結されたことを特徴とする、請求項3に記載の内燃機関の動弁機構。
【請求項5】
前記アッパカム位相可変機構は、カム位相を所定の状態にロックする油圧駆動のロックピンを備えるものであり、
ロックピンの作動または解除用に前記油圧制御弁から供給されるロックピン用油路をさらに備え、
前記ロックピン用油路は、前記アッパカムシャフト軸受の内周面において前記両アッパ側溝状油路とカム軸方向に異なる位置に形成されたピン用溝状油路と、前記アッパカムシャフトに対して前記両アッパ側油路と相反する側にて前記中間カムホルダの上面および下面に開口するように形成されたピン用中間ホルダ内油路と、前記中間カムホルダと前記アッパカムホルダとの接合面に形成され、前記ピン用中間ホルダ内油路と前記ピン用溝状油路とを連通するピン用連通油路とを有し、
前記ピン用中間ホルダ内油路と前記ピン用溝状油路との間には、前記アッパカムシャフトに対して前記第1締結ボルトと相反する側にて前記アッパカムホルダと前記中間カムホルダとを前記シリンダヘッドに共締めする第2締結ボルトのボルト挿通孔が形成され、
前記ピン用連通油路が前記第2ボルトのボルト挿通孔と一体に形成されたことを特徴とする、請求項4に記載の内燃機関の動弁機構。
【請求項6】
前記ロア側進角油路および前記ロア側遅角油路の前記一方の前記中間ホルダ油路は、前記アッパカムホルダとの接合面に形成された溝状部分を含み、
前記中間カムホルダの前記シリンダヘッドとの接合面には、前記溝状部分の下方に肉抜き凹部が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の内燃機関の動弁機構。
【請求項7】
前記アッパカムホルダが前記ロアカムシャフトを跨ぐように延在し、
前記中間カムホルダおよび前記アッパカムホルダは、前記シリンダヘッドに共締めする締結ボルトの締結孔を、前記ロアカムシャフトを挟む2箇所と前記アッパカムシャフトを挟む2箇所との合計4箇所に有しており、
前記シリンダヘッド、前記中間カムホルダおよび前記アッパカムホルダは、前記締結ボルトの1本に隣接する位置にて前記アッパカムホルダの上面から前記シリンダヘッドの下面に至るオイルレベルゲージ挿入孔を画成することを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の内燃機関の動弁機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−113158(P2013−113158A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258081(P2011−258081)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】