説明

内燃機関の制御装置

【課題】内燃機関の制御装置において、フューエルカット状態を維持したまま、車両速度を調節可能とする(その時の内燃機関のポンピングロスを調節可能とする)こと、その際の燃料消費量を抑制すること、排ガス浄化性能を確保することにある。
【解決手段】制御手段67は、変速制御装置76の勾配検知手段76aにより検知された下り勾配が所定値以上であり且つフューエルカット実施条件の成立中である場合に、内燃機関1の内部EGR(シリンダ内に残留する燃焼ガス)を増加するように可変動弁装置49を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に係り、可変動弁装置が備えられた内燃機関を制御する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内燃機関においては、減速時や降板時に、スロットル開度や車速等の所定のフューエルカット実施条件が成立すると、このフューエルカット実施条件の成立に基づいて、フューエルカット制御を実施している。そして、アクセルペダルの踏み込み操作入力といった、それら所定のフューエルカット実施条件が不成立になると、このフューエルカット実施条件の不成立に基づいて、フューエルカット状態から通常の燃料噴射状態への復帰制御を実施している。それらによって、内燃機関の不要な駆動を減らして、無駄な燃料消費量を減らしたり、また、降坂時では、燃料消費量の低減だけでなく、内燃機関のポンピングロス(ポンプ損失)によって車両速度が上がり過ぎないように制限する効果も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−85188号公報
【0004】
特許文献1に係るエンジンの制御装置は、ナビゲーションシステムから取得した情報に応じて、吸・排気弁のうち少なくとも一方のリフト量を制御し、つまり、道路勾配に応じて吸・排気弁の動作を変更して、道路環境に応じた制動力を車両に付与している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来、上記の特許文献1においては、単純にエンジンブレーキが働くリフト量にするものであり、オーバラップ量を変更するものではなく、内部EGRの量を制御しつつ緩加速させることができず、降坂中に加速する際の燃料噴射量が多くなるという不具合があった。
また、減速時や降坂時の途中で、周囲の交通(流れ、疎密)や道路状態(勾配等)に応じて、車両速度を調節することがある。
とりわけ、降坂時においては、有段自動変速機の変速段(無段自動変速機の固定変速比も同様)と勾配と関係によっては、一口にフューエルカット制御を実施すると言っても、車両は加速したり、減速したり、定速状態となったり、様々な状態を採り得る。
そして、フューエルカット状態から速度調節を行おうとしてアクセルペダルを踏み込んだ際に、通常の燃料噴射状態へ復帰してしまい、減速度が小さくなるだけでも車両の走り感を伴うが、大なり小なりの加速状態になることが多い。さらに、アクセルペダルの踏み込み量が大きい場合には、スロットル開度に応じた加速の増量補正が加わってしまうこともある。その操作が運転者の意図する明らかな再加速の場合には全く問題にはならないが、少しの車両速度の調節の場合には、望まない制御(復帰や燃料補正)を行うことになり、このため、燃料を無駄に浪費してしまい、燃料消費量の増加につながるという不都合がある。
あるいは、そのような加速する如き挙動に対して、運転者が変速段の切換操作を併用しても、内燃機関の状態変化(ポンプ損失→駆動)のトルク変動とバランスをとることが難しく、タイミングを合わせることが困難であるので、車両速度の調節が滑らかにできず、ギクシヤクしたり、燃料消費量の増加を招くという不都合がある。
また、そのような一時的な燃料消費量の低減やドライバビリティの向上に対策した結果、排ガスの浄化性能が低下することは避けたいものである。
【0006】
そこで、この発明は、フューエルカット状態を維持したまま、車両速度を調節可能とする(その時の内燃機関のポンピングロスを調節可能とする)こと、その際の燃料消費量を抑制すること、排ガス浄化性能を確保することを目的とする内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、吸・排気弁のいずれか一方又はその両方の開閉時期を変更可能な可変動弁装置と、内燃機関に燃料の供給及び停止をする燃料供給装置と、減速時を含む所定のフューエルカット実施条件の成立時にフューエルカット制御を実施する制御手段とを備えた内燃機関の制御装置において、道路の勾配状態を検知する勾配検知手段を設け、前記制御手段は、前記勾配検知手段により検知された下り勾配が所定値以上であり且つフューエルカット実施条件の成立中である場合に、前記内燃機関の内部EGRを増加するように前記可変動弁装置を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の内燃機関の制御装置は、車両速度を調節可能とし、その際の燃料消費量を抑制し、排ガス浄化性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は内燃機関の制御のフローチャートである。(実施例1)
【図2】図2は降坂率と内部EGRとの関係を示す図である。(実施例1)
【図3】図3は登降坂変速制御を説明する図である。(実施例1)
【図4】図4は内燃機関の制御装置のブロック図である。(実施例1)
【図5】図5は内燃機関の制御装置のシステム構成図である。(実施例1)
【図6】図6は内燃機関の制御のフローチャートである。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、車両速度を調節可能とし(その時の内燃機関のポンピングロスを調節可能とする)、その際の燃料消費量を抑制し、排ガス浄化性能を確保する目的を、減速時のフューエルカット制御であって、特に、降坂時の燃料噴射制御(フューエルカット制御を含む)及び可変動弁装置の駆動制御を行って実現するものである。
【実施例1】
【0011】
図1〜図5は、この発明の実施例1を示すものである。
図5において、1は車両に搭載される内燃機関である。この内燃機関1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3とシリンダヘッドカバー4とが一体的になって構成されている。シリンダブロック2には、気筒毎に各シリンダ5が形成されているとともにこのシリンダ5にピストン6が摺動可能に設けられている。また、ピストン6の上面とシリンダヘッド3との間には、燃焼室7が形成される。
シリンダヘッド3には、吸気側において、吸気ポート8が形成され、また、吸気カム軸9が設置され、さらに、吸気タペット10を介して吸気カム軸9で駆動されて吸気ポート8を開閉する吸気弁11が設けられている。
また、シリンダヘッド3には、排気側において、排気ポート12が形成され、また、排気カム軸13が設置され、さらに、排気タペット14を介して排気カム軸13で駆動されて排気ポート12を開閉する排気弁15が設けられている。
【0012】
内燃機関1は、吸気装置16を備えている。この吸気装置16においては、エアクリーナ17と、このエアクリーナ17から内燃機関1側に吸入空気を導く吸気通路18を形成するように、吸気管19と、電子スロットルシステムのスロットル弁20を備えたスロットルボディ21と、サージタンク22が一体でシリンダヘッド3に取り付けられる吸気マニホルド23とが、順次に接続している。
【0013】
内燃機関1は、排気装置24を備えている。この排気装置24においては、内燃機関1からの排気を導く排気通路25を形成するように、シリンダヘッド3に取り付けられて上流側触媒コンバータ26を備えた排気マニホルド27と、この排気マニホルド27に接続されて下流側触媒コンバータ28を備えた排気管29とが、順次に設けられている。
【0014】
内燃機関1は、内燃機関1に燃料の供給及び停止をする燃料供給装置30を備えている。この燃料供給装置30においては、燃料タンク31内で電磁式の燃料ポンプ32が設けられ、また、この燃料ポンプ32に燃料フィルタ33を介して燃料供給管34の一端が接続している。この燃料供給管34の他端は、燃料デリバリパイプ35を介して燃料噴射弁36に接続している。この燃料噴射弁36は、シリンダヘッド3に取り付けられて燃料を吸気ポート8へ噴射する。
燃料デリバリパイプ35には、燃料圧レギュレータ37が接続している。この燃料圧レギュレータ37には、燃料タンク31内に開口する燃料戻し管38と、サージタンク22内に開口する燃料圧調整用吸気導入管39とが接続している。
【0015】
内燃機関1は、蒸発燃料制御装置40を備えている。この蒸発燃料制御装置40においては、燃料タンク31の上部に二ウェイチェック弁41が設けられ、この二ウェイチェック弁41にはエバポ管42の一端が接続し、このエバポ管42の他端にキャニスタ43が設けられている。
このキャニスタ43には、パージ管44の一端が接続している。このパージ管44の他端は、サージタンク22に接続している。パージ管44の途中には、パージ弁(VSV)45が設けられている。
【0016】
また、内燃機関1は、EGR装置46を備えている。このEGR装置46においては、一端が排気マニホルド27内に連通するとともに他端がサージタンク22内に連通するEGR管47が設けられ、このEGR管47の途中にEGR弁48が設けられている。
【0017】
更に、内燃機関1は、油圧式の可変動弁装置(VVT)49を備えている。この可変動弁装置49は、吸気カム軸9の前端に取り付けられた可変バルブアクチュエータ50と、この可変バルブアクチュエータ50を作動する油圧制御弁(OCV)51とを備え、この油圧制御弁51を制御することによって、吸気弁11と排気弁15とのいずれか一方又はその両方の開閉時期(あるいは開弁期間)を変更可能なものである。なお、この可変動弁装置49においては、この実施例では、吸気弁11の位相を変化する例を示すが、排気弁15の位相を変化したり、吸気弁11と排気弁15との両方の位相を変化することの可能である。
【0018】
シリンダヘッドカバー4には、イグニションコイル52とPCV弁53とが取り付けられている。このPCV弁53には、サージタンク22内に連通するタンク側ブローバイガス管54が接続している。
また、シリンダヘッドカバー4には、エアクリーナ17内に連通するクリーナ側ブローバイガス管55が接続している。
【0019】
シリンダブロック2には、吸気マニホルド23の一部に形成した冷却水通路56内の冷却水温度を検出する水温センサ57と、燃焼室7内のノッキングを検出するノックセンサ58とが取り付けられている。水温センサ57は、検出した冷却水温度を燃料噴射制御や点火時期制御等に利用させる。
【0020】
スロットルボディ21には、スロットル弁20が電子スロットルシステムのものであることから、このスロットル弁20を開閉するスロットルモータ59と、スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段としてのスロットルセンサ60とが内蔵されている。
また、スロットルボディ21には、スロットル弁20よりも下流側に導圧管61の一端が接続している。この導圧管61の他端には、スロットル弁22の下流側の吸気通路18の圧力であるインテークマニホルド圧(吸気管圧力)を検出する圧力センサ62が設けられている。この圧力センサ62は、検出したインテークマニホルド圧を燃料噴射制御や点火時期制御等に利用させる。
エアクリーナ17には、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ63が取り付けられている。この吸気温センサ63は、吸入空気の温度を検出して吸気温補正値の決定等に利用させる。
また、エアクリーナ17付近の吸気管19には、内燃機関1への吸入空気の吸気量を検出するエアフローメータ64が取り付けられている。
排気マニホルド27には、上流側触媒コンバータ26の上流部で、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ(O2センサ)65が取り付けられている。
【0021】
燃料ポンプ32と、燃料噴射弁36と、パージ弁45と、EGR弁48と、油圧制御弁51と、イグニションコイル52と、水温センサ57と、ノックセンサ58と、スロットルモータ59と、スロットルセンサ60と、圧力センサ62と、吸気温センサ63と、エアフローメータ64と、酸素センサ65とは、内燃機関1の制御装置66を構成する制御手段(ECM)67に連絡している。
また、この制御手段67には、カム軸の回転数をカム角として検出するカム角センサ68と、クランク角を検出して機関回転数を検出する機能をも有するクランク角センサ69と、メインスイッチ70及びフューズ71を介したバッテリ72と、空燃比(A/F)センサ73と、アクセルペダルの踏み込み量をアクセル開度として検出するアクセルセンサ74と、ブレーキペダルの踏み込み状態を検知するブレーキスイッチ75と、自動変速機(AT)や連続可変変速機(CVT)等からなる変速機の変速制御装置(TCM)76とが連絡している。
【0022】
上記の変速制御装置(TCM)76においては、アクセル開度等の各入力情報から、内燃機関1及び変速機の状態、走行状態及び運転者の操作状況を判定し、予め設定されている変速線図を基に、各ソレノイドを制御するものであり、道路(地面)の勾配、つまり、登坂率(降坂率)の検知する機能を有し、そして、登坂率(降坂率)を求め、降板率(下り勾配)が所定値よりも大きいことを、便宜上、登坂率が所定値より小さいことによって判断する。
即ち、変速制御装置76では、道路の勾配を検知する勾配検知手段76Aを備え、アクセル開度と車速等の関係から道路勾配を検出し、この道路勾配に応じて変速比を通常よりも低速側へ変更することにより、登坂路では登坂走行に適した駆動力を確保する一方、降坂路では適度なエンジンブレーキを発生させる。
この場合、この勾配検知手段76Aにおいて、図3に示すように、登坂判定条件は、車両の実際の加速度が設定された基準加速度よりも小さい場合に判断され、一方、降坂判定条件は、車両の実際の加速度が設定された基準加速度よりも大きい場合に判定される。
【0023】
図4に示すように、制御装置66において、制御手段67の入力側には、上述した水温センサ57と、ノックセンサ58と、スロットルセンサ60と、吸気温センサ63と、エアフローメータ64と、酸素センサ65と、カム角センサ68と、クランク角センサ69と、バッテリ72と、空燃比センサ73と、アクセルセンサ74と、ブレーキスイッチ75と、変速制御装置(TCM)76との他に、オン・オフ状態のイグニション信号を出力するイグニションスイッチ77と、ジェネレータフィールドモニタ信号を出力するジェネレータフィールドモニタ78と、クルーズコントロールスイッチ79と、ストップランプスイッチ80と、ボディコントロールモジュール(BCM)81と、ESP(電子スタビリティプログラム)コントローラ82と、コンビネーションメータ83とが連絡している。
【0024】
一方、制御手段67の出力側には、上述した燃料噴射弁36と、パージ弁45と、油圧制御弁(OCV)51と、イグニションコイル52と、スロットルモータ59と、変速制御装置(TCM)75と、ボディコントロールモジュール(BCM)81と、ESPコントローラ82と、コンビネーションメータ83との他に、ICV(アイドルコントロールバルブ)アクチュエータ84と、燃料ポンプリレー85と、空燃比センサヒータ86と、酸素センサヒータ87と、ジェネレータ88と、スロットルモータリレー89と、ラジエータファンリレー90と、エアコン(A/C)コンプレッサリレー91と、メインリレー92と、キーレススタートコントローラ93と、オートエアコン(A/C)コントローラ94とが連絡している。
【0025】
また、制御手段67は、大気圧検知部Aと、燃料噴射制御部Bと、点火時期制御部Cと、ICV制御部Dと、可変動弁(VVT)制御部Eと、エバポパージ制御部Fと、燃料ポンプ制御部Gと、空燃比センサヒータ制御部Hと、酸素センサヒータ制御部Iと、ジェネレータ発電制御部Jと、電子スロットル制御部Kと、クルーズコントロール制御部Lと、スロットルリレー制御部Mと、ラジエータファンリレー制御部Nと、エアコンコンプレッサ制御部Oと、メインリレー制御部Pと、CAN通信機能部Qと、フェイルセーフ機能部Rと、セルフダイアグノーシス機能部Sとを備えている。
【0026】
制御手段67の燃料噴射制御部Bでは、燃料噴射弁36から噴射される燃料の噴射時期及び噴射時間(量)を制御して、最適な時期に最適な量の燃料を燃料噴射弁36から噴射させる。ここで、燃料の噴射時期及び噴射時間(量)は、内燃機関1の始動時に実行される始動時噴射制御、通常運転時に実行される始動後噴射制御により決定される。
また、燃料噴射制御部Bでは、HCの抑制及び燃費の向上を図るための減速時カットとして、減速時を含む所定のフューエルカット実施条件(例えば、スロットル開度が規定値以下、車速が規定値以上、機関回転速度が規定値以上である条件)が成立した際に、フューエルカット制御を実施する。
【0027】
制御手段67の点火時期制御部Cでは、上記のフューエルカット実施条件が不成立になった際に、フューエルカット状態からの復帰時の機関回転速度の変動を小さくするように、フューエルカット復帰補正を行う。
【0028】
制御手段67の可変動弁制御部Eでは、油圧制御弁51への油圧を調節して可変バルブアクチュエータ50を作動し、吸気弁11と排気弁15との動きを制御してそのオーバラップ量を変更させる。
【0029】
制御手段67の電子スロットル制御部K及びクルーズコントロール制御部Lでは、アクセルセンサ74からのアクセル開度の情報及び内燃機関1の機関運転状態に応じて目標スロットル開度を算出し、この目標スロットル開度に応じてスロットルモータ59を駆動してスロットル弁20を開閉する。
そして、スロットル弁20の開閉情報は、スロットルセンサ60で検出し、制御手段67にフィードバックされる。また、電子スロットルシステムのスロットル弁20により、アイドル回転速度制御を可能とする。
また、電子スロットル制御部Kでは、減速時制御として、機関回転速度の落ち込みを防止するために、減速時にスロットル弁20を一定量開いて吸気量を増加させる。
更に、制御手段67は、スロットルセンサ60やアクセルセンサ74の異常を検出した場合に、スロットルモータリレー89をオフする。すると、スロットル弁20は、リターンスプリングの不勢力によって全閉状態から所定のデフォルト開度に固定される。
スロットル弁20は、電子制御スロットルを採用し、基本動作として、人為的なアクセルペダル操作量とスロットル開度とを一致させるように、フィードバック制御される。よって、スロットル開度に代えてアクセル開度としても良い。
【0030】
制御手段67は、変速制御装置76の勾配検知手段76Aにより検知された下り勾配(降板率)が予め設定された所定値(例えば−2.5%)以上であり且つフューエルカット実施条件の成立中である場合に、降坂率とスロットル開度に基づいて、内燃機関1の内部EGR(シリンダ5内に残留する燃焼ガス)を増加するように可変動弁装置49を制御する。ここで、降板率と内部EGRとの関係は、図2に示されており、降板率が増大するほど、内部EGRが増加する。
これにより、フューエルカット制御を維持したまま、緩加速させることができ、燃料消費量を低減できる。また、下り勾配が所定値以上の場合のみに制限して実施することにより、下り勾配が小さい時には、ヘジテーション(息つき)の発生を防止できる。更に、ヘジテーションが生じ難い大きな下り勾配では、ポンピングロス(ポンプ損失)を低減して、車両速度を、上げたり、調節したりすることができる。
言い換えると、降坂中(降板判定中)に加速する際に、多少の加速であれば、燃料噴射をせずに、可変動弁装置49を作動して吸気弁11と排気弁15とのオーバラップ量を増やすことにより、同等の加速性能を持たせ、ポンピングロスを低減させて加速させる制御をするとともに、燃料噴射量を低減する一方、降坂率が低いときには、ヘジテーション対策として、オーバラップ量を少なくする。
【0031】
また、制御手段67は、下り勾配(降板率)が大きくなるほど吸気弁11の位相を進角し、吸気弁11と排気弁15とのオーバラップ量を増大するように可変動弁装置49を制御する。
これにより、吸気弁11と排気弁15とのオーバラップ量を増大することにより、内部EGRが高まり、ポンピングロスを低減して緩加速させることができる。また、掃気量の抑制、すなわち、触媒に流れる新気量をできるだけ抑制して、触媒の浄化性能を比較的高く保つことができる。
【0032】
次に、この実施例1に係る内燃機関の制御について、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、内燃機関1が始動して制御手段67のプログラムがスタートすると(ステップA01)、変速制御装置76よりCAN通信の受信を行い(ステップA02)、そして、登坂率が予め設定された所定値(例えば、−2.5%)以下か否かを判断し(ステップA03)、このステップA03がYESの場合には、フィードバック制御中か否かを判断し(ステップA04)、このステップA04がYESの場合には、スロットル開度が零(0)から変動したか否かを判断する(ステップA05)。
このステップA05がYESの場合には、機関回転数によって可変動弁装置49の進角量を決定し、降坂率によって降坂率を補正し(ステップA06)、プログラムをリターンする(ステップA07)。
一方、前記ステップA03がNOの場合、前記ステップA04がNOの場合、そして、前記ステップA05がNOの場合には、前記ステップA02に戻す。
【0033】
即ち、この実施例1では、フューエルカット制御の実施中であり、燃焼が生じておらず、内部EGRを増大させても、いわゆる燃焼後の排ガスが増大する内部EGRの増大とは異なる。むしろ、ポンピングロスを減らしながら、排ガスとして触媒に流れる新気の量を相対的に低減させる(単純に増大させない)ことに、重点をおいている。これは、フューエルカット制御からの加速要求時に、緩加速であれば、ポンピングロスの低減により、フューエルカット状態のまま加速ができるよう、バルブオーバラップ量を増やした可変動弁装置49の進角量に適合する。
【0034】
図6は、この発明の実施例2を示すものである。
この実施例2においては、上述の実施例1と同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
この実施例2の特徴とするところは、以下の点にある。即ち、制御手段67は、スロットル開度が予め設定した所定値以下の範囲でのみ、可変動弁装置49を制御する。
以下に、この実施例2に係る内燃機関の制御について、図6のフローチャートに基づいて説明する。
図6に示すように、内燃機関1が始動して制御手段67のプログラムがスタートすると(ステップB01)、変速制御装置76よりCAN通信の受信を行い(ステップB02)、そして、登坂率が予め設定された所定値(例えば、−2.5%)以下か否かを判断し(ステップB03)、このステップB03がYESの場合には、フィードバック制御中か否かを判断し(ステップB04)、このテップB04がYESの場合には、スロットル開度が、0<スロットル開度≦所定値か否かを判断する(ステップB05)。
このステップB05がYESの場合には、機関回転数によって可変動弁装置49の進角量を決定し、降坂率によって降坂率を補正し(ステップB06)、プログラムをリターンする(ステップB07)。
一方、前記ステップB03がNOの場合、前記ステップB04がNOの場合、そして、前記ステップB05がNOの場合には、前記ステップB02に戻す。
この結果、スロットル開度が予め設定した所定値以下の範囲では、吸気弁11の位相を進角して排気弁15とのオーバラップを増大する一方、スロットル開度が所定値の範囲を越える範囲では、速やかに通常の燃料噴射に復帰させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明に係る内燃機関の制御装置を、各種車両の内燃機関に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 内燃機関
5 シリンダ
7 燃焼室
11 吸気弁
15 排気弁
20 スロットル弁
30 燃料供給装置
36 燃料噴射弁
49 可変動弁装置(VVT)
51 油圧制御弁(OCV)
59 スロットルモータ
60 スロットルセンサ
66 内燃機関の制御装置
67 制御手段(ECM)
68 カム角センサ
69 クランク角センサ
74 アクセルセンサ
75 ブレーキスイッチ
76 変速制御装置(TCM)
76A 勾配検出手段
B 制御手段の燃料噴射制御部
C 制御手段の点火時期制御部
E 制御手段の可変動弁制御部
K 制御手段の電子スロットル制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸・排気弁のいずれか一方又はその両方の開閉時期を変更可能な可変動弁装置と、内燃機関に燃料の供給及び停止をする燃料供給装置と、減速時を含む所定のフューエルカット実施条件の成立時にフューエルカット制御を実施する制御手段とを備えた内燃機関の制御装置において、道路の勾配状態を検知する勾配検知手段を設け、前記制御手段は、前記勾配検知手段により検知された下り勾配が所定値以上であり且つフューエルカット実施条件の成立中である場合に、前記内燃機関の内部EGRを増加するように前記可変動弁装置を制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、下り勾配が大きくなるほど前記吸気弁の位相を進角し、前記吸気弁と前記排気弁とのオーバラップ量を増大するように、前記可変動弁装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−179404(P2011−179404A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44431(P2010−44431)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】