説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】ディーゼルエンジンにおいて、始動直後等の低温時にNOxの大気への放出を抑制しつつ、堆積したPMを燃焼除去する。
【解決手段】低温時NOxトラップ機能、酸化触媒機能及びPM捕集機能を有するフィルタ触媒を備えた構成において、フィルタ触媒の温度がNOx脱離温度近傍の第1所定温度となったとき又はNOxトラップ量が許容上限値となったときに急速昇温制御を実行してフィルタ触媒の温度をNOからNOへの転換率が高い第2所定温度へと上昇させ、NOを用いてPMを燃焼除去する(S1〜S5)。フィルタ触媒の温度が第2所定温度よりも高い第3所定温度まで上昇した場合には、フィルタ触媒の温度を更に昇温させてPMを燃焼除去するフィルタ強制再生処理を実行する(S6〜S11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関し、詳しくは、ディーゼルエンジンにおいて排気中の微粒子物質(パティキュレート:PM)及び窒素酸化物(NOx)を除去する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気浄化装置として連続再生式DPFが知られている。例えば、特許文献1に記載の装置では、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)の上流側に酸化触媒を配置し、この酸化触媒にて排気中のNOをNOに転換し、このNOによってDPFに堆積したPMを燃焼除去することによってフィルタ機能を再生している。
【特許文献1】特許第3012249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術によれば、排気中のNOxを除去しつつ、DPFに堆積したPMを除去することが可能になる。
しかし、酸化触媒が活性化している必要があり、排気温度が低く酸化触媒が活性化していない状態が継続した場合には、DPFにPMが堆積し続けてしまい、また、排気中のNOxを除去することが難しい。このため、始動直後等の低温時におけるNOx及びDPFに堆積したPMの除去について課題が残る。
【0004】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、特に始動後の低温時にNOx及びPMを効果的に除去することのできる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、低温時に排気中のNOxトラップし、所定の脱離温度になるとトラップしたNOxを脱離するNOxトラップ機能と、NOをNOに転換する酸化触媒機能と、排気中の微粒子物質(パティキュレート:PM)を捕集するPM捕集機能とを有する排気浄化フィルタを備えた構成において、排気浄化フィルタの温度が前記脱離温度近傍の第1所定温度となったとき又は排気浄化フィルタのNOxトラップ量が許容上限値となったときに該排気浄化フィルタを急速昇温させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、始動直後等の低温時にNOxの大気への放出を抑制しつつ、堆積したPMを燃焼除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関(ディーゼルエンジン)の全体構成図である。図1において、エンジン1の吸気通路2には、エアクリーナ3の下流側にターボ過給機4の吸気コンプセッサ41が設けられている。この吸気コンプレッサ41は、排気通路5に設けられ排気のエネルギーによって回転駆動される排気タービン42に同軸結合される。ターボ過給機4は、吸気コンプレッサ41、排気タービン42及び可変ノズル43を含んで構成され、排気タービン42の回転に伴って吸気コンプレッサ41が回転することで空気を圧縮して送り込む。可変ノズル43は、エンジンコントロールユニット(ECU)10からの制御信号によりアクチュエータ44を介して駆動され、タービン容積を可変する。
【0008】
吸気コンプレッサ41の下流側にはインタークーラー6が設けられている。このインタークーラー6は、吸気コンプレッサ41によって圧縮された空気(過給空気)を冷却する。インタークーラー6によって冷却された過給空気は、さらに下流側の吸気絞り弁7、コレクタ部8及び吸気マニホールド9を経てエンジン1の各気筒の燃焼室に供給される。吸気絞り弁7は、ECU10からの制御信号によってアクチュエータ71を介して駆動される。
【0009】
排気通路5には、排気タービン42よりも下流側にフィルタ触媒(本発明の「排気浄化フィルタ」に相当する)11及びNOxトラップ触媒12が介装されている。
フィルタ触媒11は、例えば、セラミック製の目封じタイプのハニカム体(PMフィルタ)にゼオライトをコーティングし、さらに貴金属(白金Pt、パラジウムPd、ロジウムRh等)を担持したアルミナをコーティングして形成される。
【0010】
フィルタ触媒11は、低温時に排気中のNOxをトラップし、ある程度温度が高くなるとトラップしたNOxを脱離するNOxトラップ機能(低温時NOxトラップ機能)と、NOをNOに転換する酸化触媒機能と、排気中の微粒子物質(パティキュレート:PM)を捕集するPM捕集機能とを有する。ここで、本実施形態におけるフィルタ触媒11は、始動後の低温時においては排気中のNOxをトラップし、所定のNOx脱離温度(およそ170℃)になるとトラップしたNOxの脱離を開始する。また、NOをNOに転換するだけでなく、他の排気成分であるHCやCOの酸化処理も可能である。さらに、フィルタ触媒11の温度を600℃以上に昇温させることにより、堆積したPMを燃焼除去してPM捕集機能を再生することが可能である(強制再生)。
【0011】
NOxトラップ触媒12は、例えば、アルミナを担体とし、この担体上に、アルカリ金属(K,Na,Li,Cs等)、アルカリ土類(Ba,Ca等)、希土類(La,Y等)から選ばれた少なくとも1つの元素と、貴金属とが担持されて形成される。
【0012】
NOxトラップ触媒12は、活性状態において、排気の空燃比がリーンの時にNOxをトラップし、理論空燃比又はリッチのときにそれまでトラップしていたNOxを放出する(高温時NOxトラップ機能)。
【0013】
従って、排気中のNOxは始動後の低温時においてはフィルタ触媒11にトラップされ、始動からある程度時間が経過して排気温度が十分に高くなると、フィルタ触媒11から脱離したNOx及び排気中のNOxはNOxトラップ触媒12にトラップされることになる。
【0014】
排気通路5の排気タービン42よりも上流側と、吸気通路2のコレクタ部8とを結ぶEGR通路13には、EGRクーラー14及びEGR弁15が設けられている。EGRクーラー14はEGR通路13を介して再循環する排気を冷却し、EGR弁15はECU10からの制御信号によって開閉駆動されて運転状態に応じた所定のEGR率となるように再循環する排気量を調整する。
【0015】
また、エンジン1は、コモンレール式の燃焼噴射装置16を備えている。燃料噴射装置16は、サプライポンプ17と、コモンレール18と、燃料噴射弁19とを含んで構成される。サプライポンプ17から圧送された燃料はコモンレール18に蓄えられる。燃料噴射弁19はECU10によって開弁駆動され、コモンレール18を介して供給される加圧燃料を各気筒のシリンダ内に噴射する。燃焼噴射装置16(燃料噴射弁19)は、フィルタ触媒11を昇温させるためにメイン噴射の後にさらに所定量の燃料を噴射するポスト噴射を行うことが可能である。
【0016】
ECU10は、各種センサから出力される検出信号を入力し、これら検出信号に基づいて各種エンジン制御を実行する。特に、機関の始動時等においては、フィルタ触媒11の温度及びNOxトラップ量をモニタし、所定条件のときにフィルタ触媒11を昇温させる。
【0017】
上記各種センサとしては、アクセル開度(踏込量)を検出するアクセルセンサ21、クランク角センサ(エンジン回転速度センサとしても機能する)22、エンジン冷却水温度を検出する水温センサ23、吸入空気量を検出するエアフローメータ24、フィルタ触媒11の入口排気温度を検出する上流側温度センサ25、フィルタ触媒11の出口排気温度を検出する下流側温度センサ26、フィルタ触媒11をバイパスする差圧検出通路27に設けられてフィルタ触媒11の上流側と下流側との圧力差(圧力損失)を検出する差圧センサ28、排気空燃比を検出する空燃比センサ29などがある。
【0018】
次に、始動時にECU10が実行する制御について説明する。
図2は、本実施形態に係る始動時制御のフローチャートであり、始動開始(例えば、スタートキーの操作による電源ON)と共に起動する。
【0019】
図2において、ステップS1では、フィルタ触媒11の温度を検出する。具体的には、上流側温度センサ25及び下流側温度センサ26の検出温度に基づいてフィルタ触媒11の温度を算出する。但し、これらに限るものではなく、各種運転パラメータ(吸入空気量、アクセル開度、エンジン回転速度等)に基づいてマップ等を検索してフィルタ触媒11を算出(推定)してもよい。なお、ここでは上流側温度センサ25の検出温度をフィルタ触媒11の温度として検出してもよい。
【0020】
ステップS2では、フィルタ触媒11のNOxトラップ量を算出する。NOxトラップ量の算出方法は従来から各種知られており、そのいずれを用いてもよい。例えば、エンジン1から排出されるNOx量(例えば、単位回転数当たりに排出されるNOx量の積算値)、フィルタ触媒11のNOxトラップ性能(例えば、フィルタ触媒11の温度に応じたトラップ効率)及びフィルタ触媒11からのNOx脱離量(例えば、フィルタ触媒11が脱離温度以上となったときに単位時間当たりに脱離するNOx量の積算値)に基づいてNOxトラップ量を算出することができる。
【0021】
ステップS3では、フィルタ触媒11の温度が第1所定温度となったか否かを判定する。この第1所定温度は、フィルタ触媒11においてトラップしたNOxが脱離を開始するNOx脱離温度又はその近傍(より好ましくはやや低め)の温度に設定される。本実施形態では第1所定温度を170℃に設定する。そして、フィルタ触媒11の温度が第1所定温度よりも低い場合はステップS4に進み、フィルタ触媒11の温度が第1所定温度となっていればステップS5に進む。
【0022】
ステップS4では、フィルタ触媒11のNOxトラップ量が所定の上限許容値となったか否かを判定する。この上限許容値は、フィルタ触媒11の許容NOxトラップ量又はこれに近づいてNOxトラップ性能(効率)が急激に落ちるNOxトラップ量としてあらかじめ設定される。フィルタ触媒11のNOxトラップ量が上限許容値となっていればステップS5に進み、上限許容値よりも少なければステップS1に戻る。
【0023】
ステップS5では、フィルタ触媒11の温度が第1所定温度となっている又はフィルタ触媒11のNOxトラップ量が上限許容値となっているので、排気中のNOxがフィルタ触媒11にトラップされない(トラップしたNOxが脱離する)状態であると判断し、フィルタ触媒11の急速昇温制御を実行する。この急速昇温制御は、具体的には、メイン噴射の後に所定量の燃料を噴射するポスト噴射を行い、排気温度を上昇させることでフィルタ触媒11の温度を該フィルタ触媒11におけるNOからNOへの転換率が高い第2所定温度(>第1所定温度)へと上昇させるものである。そして、第2所定温度となった後は、この第2所定温度を維持するようにポスト噴射が調整される。なお、フィルタ触媒11の昇温にあたり、ポスト噴射と共に吸気絞り弁7を閉方向に制御して吸入空気量を減少させるようにしてもよい。
【0024】
図3に示すように、フィルタ触媒11におけるNOからNOへの転換率はフィルタ触媒11の温度に応じて変化する。そして、本実施形態におけるフィルタ触媒11では、およそ300〜350℃にてNOからNOへの転換率が最大となることが確認されている。そこで、本実施形態においては、上記第2所定温度をNOからNOへの転換率が所定値(例えば50%)以上となる温度領域、具体的には、250〜400℃(より好ましくは300〜350℃)に設定している。
【0025】
ここで、ポスト噴射量は、基本的には排気温度に応じて調整されるものであるが、排気温度は機関の運転状態から推定できるため、本実施形態では、メイン噴射量(アクセル開度及びエンジン回転速度に基づいて設定される)及びエンジン回転速度に基づき、図4に示すようなマップを検索することで算出する。
【0026】
かかる急速昇温制御によりフィルタ触媒11ではNOの生成が積極的、効果的に行われるようになり、このときのフィルタ触媒11の温度はPMとNOとが反応できる温度となっているので、このNOによってフィルタ触媒11に堆積したPMを燃焼させることができる。これにより、始動直後の低温時におけるNOxの放出を抑制しつつ、フィルタ触媒11に堆積しているPMを除去することができる。
【0027】
ステップS6では、上記ステップS2と同様、フィルタ触媒11の温度を再び検出する。なお、上記ステップS2で上流側温度センサ25の検出温度をフィルタ触媒11の温度とした場合には、ここでは下流側温度センサ26の検出温度をフィルタ触媒11の温度として検出するのが好ましい。酸化反応熱を含めたフィルタ触媒11の温度をより効果的に検出するためである。
【0028】
ステップS7では、フィルタ触媒11の温度が第3所定温度以上となったか否かを判定する。この第3所定温度は上記第2所定温度よりも高い温度であり、本実施形態では450〜500℃に設定する。上記急速昇温制御により、基本的にはフィルタ触媒11の温度は第2所定温度を維持するのであるが、フィルタ触媒11の温度が上昇し過ぎてしまう場合がある。本ステップでは、かかるフィルタ触媒11の温度が上昇し過ぎた状態を検出する。第3所定温度以上であればステップS8に進み、フィルタ触媒11の温度が第3所定温度よりも低ければステップS12に進む。
【0029】
ステップS8では、フィルタ触媒11の温度が第2所定温度を超えて上昇し過ぎた状態にあると判断し、フィルタ強制再生制御を実行する。このフィルタ強制再生制御は、具体的には、ポスト噴射によってフィルタ触媒11を更に昇温させてフィルタ触媒11の温度をPM燃焼温度(>第3所定温度)まで上昇させるものである。なお、PM燃焼温度は、フィルタ触媒11に堆積しているPMが燃焼する温度であり、例えば600℃に設定される。ポスト噴射量は、上記ステップS5と同様、メイン噴射量及びエンジン回転速度に基づき図4に示すマップを検索することで算出する。急速昇温制御中にフィルタ触媒11の温度が第3所定温度以上となるのは、ポスト噴射を伴わない通常噴射時の排気温度が高くなったため、すなわち、運転状態が急変して図4のC領域になったためと考えられる。このため、図4のマップを検索してポスト噴射量を設定する。
【0030】
ステップS9では、フィルタ触媒11のPM堆積量を算出する。PM堆積量の算出方法も従来から各種知られており、そのいずれを用いてもよい。例えば、フィルタ触媒11の上下流の圧力差とPM堆積量との関係を予めマップ化して格納しておき、このマップを差圧センサ28により検出された圧力差に基づいて検索してPM堆積量を算出する。また、前回のPM燃焼除去から現在までの運転履歴(走行距離等)に基づいてPM堆積量を推定するようにしてもよい。なお、ここで算出されるPM堆積量は、フィルタ強制再生制御によって燃焼除去されたPMを除いたフィルタ触媒11に残っているPM量(PM残量)である。
【0031】
ステップS10では、フィルタ触媒11のPM堆積量が所定の強制再生終了閾値まで減少したか否かを判定する。この強制再生終了閾値は、フィルタ強制再生制御を終了させるPM堆積量であり、採用するフィルタ触媒等に応じて任意に設定することができる。そして、PM堆積量が強制再生終了閾値まで減少するとステップS11に進む。
【0032】
ステップS11では、ポスト噴射を停止してフィルタ強制再生制御を終了する。
一方、ステップS12では、急速昇温制御中フィルタ触媒11の温度が適正に維持されていたので、フィルタ触媒11の急速昇温制御の開始から所定時間が経過したか否かを判定する。この所定時間は、NOx脱離温度以上の状態においてフィルタ触媒11にトラップされているNOxがすべて放出される程度の時間とするのが好ましい。例えば、フィルタ触媒11の最大NOxトラップ量又はステップS1で算出されたNOxトラップ量に応じて上記所定時間を設定すればよい。
【0033】
ステップS13では、ポスト噴射を停止して急速昇温制御を停止する。
本実施形態において、ECU10が本発明の「NOxトラップ量算出手段」、「温度検出手段」及び「昇温手段」としての機能を備えており、特に、図2のステップS1の処理が「温度検出手段」に相当し、ステップS2の処理が「NOxトラップ量算出手段」に相当し、ステップS3〜S13の処理が「昇温手段」に相当する。
【0034】
本実施形態では、機関の始動からフィルタ触媒11の温度及びNOxトラップ量をモニタし、フィルタ触媒11の温度がNOx脱離温度近傍の第1所定温度(170℃)となったとき又はNOxトラップ量が許容上限値となったときに、フィルタ触媒11の急速昇温制御を実行する(ステップS1〜S5)。この急速昇温制御は、ポスト噴射によってフィルタ触媒11の温度をNOからNOへの転換率が高い第2所定温度(250〜400℃、好ましくは、300〜350℃)へと上昇させるものであり、急速昇温制御の実行中は、この第2所定温度を維持するようにポスト噴射量が調整される。
【0035】
これにより、機関の始動から排気中のNOxをトラップして大気への放出を抑制してきたフィルタ触媒11が、NOxをトラップすることができない状態及び/又はトラップしたNOxを脱離する状態になると、排気中及び脱離したNOを積極的かつ効果的にNOへと転換し、このNOを利用して堆積している(捕集された)PMを燃焼除去する。
【0036】
従って、低温時におけるNOxの大気への放出を抑制できると共に、これと併せてフィルタ触媒11に堆積しているPMを燃焼除去することができる。また、堆積したPMの燃焼除去を定期的に行えるため、フィルタ触媒11の目詰まり等がより確実に防止されてPM捕集性能の低下を抑制できるとともに、フィルタ触媒11内で大量のPMが燃焼することも防止できるため耐久性の面で有利である。さらに、急速昇温制御によりフィルタ触媒11の下流側に設けたNOxトラップ触媒12の早期活性化も図ることができ、これにより、NOxの大気への放出が更に効果的に抑制できる。
【0037】
ここで、急速昇温制御は、フィルタ触媒11の温度をNOからNOへの転換率が高い第2所定温度へと上昇させると共にこの第2所定温度を維持するように行うものであるが、急加速等によって排気温度が急激に上昇し、フィルタ触媒11の温度が第2所定温度を超えてしまう場合がある。フィルタ触媒11の温度が第2所定温度を超えてしまうと、NOからNOへの転換率が低下するため、排気中のNOxをPMの燃焼除去に利用することができなくなる。
【0038】
この場合、ポスト噴射を停止したり、吸入空気量を増加したりすることによって、フィルタ触媒11の温度を第2所定温度まで低下させるようにしてもよいが、それではポスト噴射した燃料が無駄になってしまうことになる。一方、従来のフィルタ強制再生のように、通常の運転状態からPM燃焼温度までフィルタ触媒11を昇温させるには、PM燃焼温度が高温であることからポスト噴射する燃料量が多く必要になる。
【0039】
そこで、本実施形態では、フィルタ触媒11の温度が第2所定温度を超えて第3所定温度(450〜500℃)となったら、これを利用して、フィルタ触媒11をさらに昇温させてフィルタ強制再生制御を実行する(ステップS6〜S11)。このフィルタ強制再生制御は、ポスト噴射によってフィルタ触媒11の温度をPM燃焼温度(600℃以上)へと上昇させて該フィルタ触媒11に堆積しているPMを燃焼除去するものであり、PM堆積量が強制再生終了閾値に減少するまで行われる。この結果、本実施形態では、すでにフィルタ触媒11の温度が高くなっている状態からフィルタ強制再生制御に移行することになるので、従来のフィルタ強制再生制御に比べて、ポスト噴射量を抑えることができる。
【0040】
なお、以上では、低温時NOxトラップ機能、酸化触媒機能及びPM捕集機能を備えたフィルタ触媒11について説明したが、これに限るものではなく、フィルタ触媒11に代えて、図5に示すような、低温時NOxトラップ機能及び酸化触媒機能を備えた低温用NOxトラップ触媒111と、その下流側に設けられたPMフィルタ112とを一体化したものを備えるようにしてもよい。この場合には、機関の始動から低温用NOxトラップ触媒111の温度(例えば、上流側温度センサの検出温度)及びNOxトラップ量をモニタし、低温用NOxトラップ触媒111の温度が第1所定温度となったとき又はNOxトラップ量が許容上限値となったときに急速昇温制御を実行し、PMフィルタ112の温度(例えば、下流側温度センサの検出温度)が第3所定温度となったらフィルタ強制再生制御を実行するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関の全体構成図である。
【図2】実施形態に係る始動時制御のフローチャートである。
【図3】フィルタ触媒温度とNOからNOへの転換率との関係を示す図である。
【図4】ポスト噴射量設定用のマップの一例を示す図である。
【図5】フィルタ触媒に代わる他の排気浄化フィルタの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1…内燃機関、5…排気通路、7…吸気絞り弁、10…ECU、11…フィルタ触媒(排気浄化フィルタ)、12…NOxトラップ触媒、16…燃料噴射装置、17…サプライポンプ、18…コモンレール、19…燃料噴射弁、21…アクセルセンサ、22…クランク角センサ、23…水温センサ、24…エアフローメータ、25…上流側温度センサ、26…下流側温度センサ、28…差圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温時に排気中のNOxをトラップし、所定の脱離温度になるとトラップしたNOxを脱離するNOxトラップ機能と、NOをNOに転換する酸化触媒機能と、排気中のパティキュレート(PM)を捕集するPM捕集機能とを有する排気浄化フィルタと、
前記排気浄化フィルタのNOxトラップ量を算出するNOxトラップ量算出手段と、
前記排気浄化フィルタの温度を検出する温度検出手段と、
前記排気浄化フィルタの温度が前記脱離温度近傍の第1所定温度となったとき又は前記排気浄化フィルタのNOxトラップ量が所定の許容上限値となったときに前記排気浄化フィルタを急速昇温させる昇温手段と、
を含んで構成されることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記昇温手段は、前記排気浄化フィルタの温度を該排気浄化フィルタにおけるNOからNOへの転換率が高い前記第1所定温度よりも高温の第2所定温度へと急速昇温させることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記昇温手段は、メイン噴射の後に燃料を噴射するポスト噴射によって前記排気浄化フィルタを昇温させるものであって、
前記排気浄化フィルタの温度が前記第2所定温度を維持するようにポスト噴射量を調整することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記昇温手段は、前記排気浄化フィルタの温度が前記第2所定温度よりも高温の第3所定温度を超えた場合には、該排気浄化フィルタの温度を前記捕集されたPMが燃焼する前記第3所定温度よりも高温のPM燃焼温度へと更に昇温させることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
低温時に排気中のNOxトラップし、所定の脱離温度になるとトラップしたNOxを脱離するNOxトラップ機能と、NOをNOに転換する酸化触媒機能と有するNOxトラップ触媒と、
該NOxトラップ触媒の下流側に配置され、排気中のパティキュレート(PM)を捕集するPMフィルタと、
前記NOxトラップ触媒のNOxトラップ量を算出するNOxトラップ量算出手段と、
前記NOxトラップ触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、
前記NOxトラップ触媒の温度が前記脱離温度近傍の第1所定温度となったとき又は前記NOxトラップ触媒のNOxトラップ量が所定の許容上限値となったときに、前記NOxトラップ触媒を急速昇温させる昇温手段と、
を含んで構成されることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記昇温手段は、前記NOxトラップ触媒の温度を該NOxトラップ触媒におけるNOからNOへの転換率が高い前記第1所定温度よりも高温の第2所定温度へと急速昇温させることを特徴とする請求項5記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記PMフィルタの温度を検出するフィルタ温度検出手段を備え、
前記昇温手段は、前記PMフィルタの温度が前記第2所定温度よりも高温の第3所定温度を超えた場合には、前記PMフィルタの温度を該PMフィルタに捕集されたPMが燃焼する前記第3所定温度よりも高温のPM燃焼温度へと昇温させることを特徴とする請求項6記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−185659(P2009−185659A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25165(P2008−25165)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】