説明

内燃機関装置およびその制御方法並びに車両

【課題】燃費の悪化を抑制する。
【解決手段】エンジンがアイドル運転されているときにアイドル制御量の学習を行なうものにおいて、バッテリの充電要求がなされているときにエンジンから過剰な動力が出力される出力過剰状態であるときには(S130)、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときには所定時間t1に亘ってエンジンがアイドル運転されるようエンジンを制御し(S170,S220,S240)、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときには所定時間t1よりも短い所定時間t2に亘ってエンジンがアイドル運転されるようエンジンを制御する(S190,S220,S240)。これにより、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときに、アイドル運転を必要以上に長い時間に亘って継続するのを抑制することができ、燃費の悪化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関装置およびその制御方法並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の内燃機関装置を搭載する車両としては、エンジンと、エンジンの出力軸にキャリアが接続されると共に車軸側の駆動軸にリングギヤが接続されたプラネタリギヤと、プラネタリギヤのサンギヤに動力を入出力するモータMG1と、駆動軸に動力を入出力するモータMG2と、モータMG1およびモータMG2と電力のやりとりを行なうバッテリと、を備えるものにおいて、バッテリを充電している電力がバッテリの入力制限を超えているときには、入力制限を超えてバッテリが充電されないようにエンジンを自立運転すると共にバッテリの入出力制限の範囲内でバッテリからの電力を用いてモータMG2から駆動軸に要求トルクを出力して走行するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−137369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした内燃機関装置において、エンジンを自立運転(アイドル運転)する際に、その制御量を学習すると共にその学習に要する時間を考慮して定められた継続設定時間に亘ってアイドル運転を継続するものでは、過去にその学習が行なわれているか否かに拘わらず一定の時間を継続設定時間として定めると、アイドル運転を必要以上に長い時間に亘って継続することによって燃費が悪化してしまうことがある。
【0005】
本発明の内燃機関装置およびその制御方法並びに車両は、燃費の悪化を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関装置およびその制御方法並びに車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の内燃機関装置は、
内燃機関を有する内燃機関装置であって、
前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、
前記発電機と電力をやりとり可能な二次電池と、
前記二次電池の状態に基づいて該二次電池を充電する際の最大許容電力としての入力制限を設定する入力制限設定手段と、
前記内燃機関がアイドル運転されている条件が成立したとき、該内燃機関をアイドル運転する際の制御量であるアイドル制御量を学習する学習手段と、
前記二次電池を充電するための充電要求に基づいて前記内燃機関を負荷運転すると前記二次電池を充電する電力が前記設定された入力制限を超える程度に前記内燃機関から過剰な動力が出力される所定条件が成立したとき、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれていないときには第1の所定時間に亘って前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御し、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれているときには前記第1の時間よりも短い第2の所定時間に亘って前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の内燃機関装置では、内燃機関がアイドル運転されている条件が成立したときに内燃機関をアイドル運転する際の制御量であるアイドル制御量を学習するものにおいて、二次電池を充電するための充電要求に基づいて内燃機関を負荷運転すると二次電池を充電する電力が二次電池を充電する際の最大許容電力としての入力制限を超える程度に内燃機関から過剰な動力が出力される所定条件が成立したときには、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときには第1の所定時間に亘って内燃機関がアイドル運転されるよう内燃機関を制御し、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときには第1の時間よりも短い第2の所定時間に亘って内燃機関がアイドル運転されるよう内燃機関を制御する。アイドル制御量の学習に要する時間は、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときに、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときに比して短くなり且つバラツキも小さくなると考えられる。したがって、所定条件が成立したときに、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときには、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときに比して短い第2の所定時間に亘って内燃機関をアイドル運転するものとすることにより、第1の所定時間に亘って内燃機関をアイドル運転するものに比してアイドル運転を継続する時間を短くすることができ、燃費の悪化を抑制することができる。
【0009】
こうした本発明の内燃機関装置において、前記制御手段は、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれていないときには前記二次電池に蓄えられた蓄電量の全容量に対する割合である蓄電割合が第1の所定割合以上であることを条件として前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御し、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれているときには前記二次電池の蓄電割合が前記第1の所定割合より大きい第2所定割合以上であることを条件として前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときに、アイドル制御量の学習をより確実に行なうことができる。
【0010】
また、本発明の内燃機関装置において、前記所定条件は、前記内燃機関から出力される動力が前記設定された入力制限に応じて定められる閾値よりも大きいときに成立する条件である、ものとすることもできる。
【0011】
本発明の車両は、上述のいずれかの態様の本発明の内燃機関装置、即ち、基本的には、内燃機関を有する内燃機関装置であって、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、前記発電機と電力をやりとり可能な二次電池と、前記二次電池の状態に基づいて該二次電池を充電する際の最大許容電力としての入力制限を設定する入力制限設定手段と、前記内燃機関がアイドル運転されている条件が成立したとき、該内燃機関をアイドル運転する際の制御量であるアイドル制御量を学習する学習手段と、前記二次電池を充電するための充電要求に基づいて前記内燃機関を負荷運転すると前記二次電池を充電する電力が前記設定された入力制限を超える程度に前記内燃機関から過剰な動力が出力される所定条件が成立したとき、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれていないときには第1の所定時間に亘って前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御し、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれているときには前記第1の時間よりも短い第2の所定時間に亘って前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御する制御手段と、を備える内燃機関装置と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記二次電池と電力をやりとり可能で前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、を備えることを要旨とする。
【0012】
この本発明の車両では、上述のいずれかの態様の本発明の内燃機関装置を搭載するから、本発明の内燃機関装置が奏する効果と同様の効果、例えば、燃費の悪化を抑制することができる効果などを奏することができる。
【0013】
本発明の内燃機関装置の制御方法は、
内燃機関と、該内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、該発電機と電力をやりとり可能な二次電池と、を備え、前記内燃機関がアイドル運転されている条件が成立したとき、該内燃機関をアイドル運転する際の制御量であるアイドル制御量を学習する内燃機関装置の制御方法であって、
前記二次電池を充電するための充電要求に基づいて前記内燃機関を負荷運転すると前記二次電池を充電する電力が前記二次電池を充電する際の最大許容電力としての入力制限を超える程度に前記内燃機関から過剰な動力が出力される所定条件が成立したとき、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれていないときには第1の所定時間に亘って前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御し、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれているときには前記第1の時間よりも短い第2の所定時間に亘って前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御する、
ことを特徴とする。
【0014】
この本発明の内燃機関装置の制御方法では、内燃機関がアイドル運転されている条件が成立したときに内燃機関をアイドル運転する際の制御量であるアイドル制御量を学習するものにおいて、二次電池を充電するための充電要求に基づいて内燃機関を負荷運転すると二次電池を充電する電力が二次電池を充電する際の最大許容電力としての入力制限を超える程度に内燃機関から過剰な動力が出力される所定条件が成立したときには、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときには第1の所定時間に亘って内燃機関がアイドル運転されるよう内燃機関を制御し、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときには第1の時間よりも短い第2の所定時間に亘って内燃機関がアイドル運転されるよう内燃機関を制御する。アイドル制御量の学習に要する時間は、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときに、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときに比して短くなり且つバラツキも小さくなると考えられる。したがって、所定条件が成立したときに、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときには、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときに比して短い第2の所定時間に亘って内燃機関をアイドル運転するものとすることにより、第1の所定時間に亘って内燃機関をアイドル運転するものに比してアイドル運転を継続する時間を短くすることができ、燃費の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例としての内燃機関装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】バッテリ50の蓄電割合SOCと入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図5】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される冷間駐車充電要求時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】駐車充電を行なっているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図7】エンジンECU24により実行されるアイドル学習ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図8】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例としての内燃機関装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。ここで、本発明の内燃機関装置としては、エンジン22やモータMG1,バッテリ50,ハイブリッド用電子制御ユニット70,後述のエンジンECU24などが該当する。
【0018】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
【0019】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室内に取り付けられた図示しない圧力センサからの筒内圧力,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットル開度TH,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温度Ta,空燃比センサ135aからの空燃比,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0020】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0021】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0022】
バッテリ50は、リチウムイオン二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ51aからの端子間電圧Vb,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた電流センサ51bからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてバッテリ50に蓄えられている蓄電量の全容量(蓄電容量)に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の蓄電割合SOCと入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。こうして設定される入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbが低いときに比較的大きく制限される(絶対値が小さくなる)。
【0023】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,車両周辺の温度を検出する外気温センサ89からの外気温Toutなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションセンサ82により検出するシフトポジションSPとしては、駐車ポジション(Pポジション)や中立ポジション(Nポジション),ドライブポジション(Dポジション),リバースポジション(Rポジション)などがある。
【0024】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0025】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、冷間時にシフトポジションSPが駐車ポジション(Pポジション)にある駐車状態でバッテリ50の充電要求に応じてエンジン22を運転する際の動作について説明する。図5は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される冷間駐車充電要求時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、冷間時に駐車状態でバッテリ50の充電要求がなされているときに、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。ここで、冷間時か否かは、外気温センサ89からの外気温Toutが冷間時を示す温度範囲の上限として予め定められた所定温度Toutref(例えば、−10℃や−5℃など)以下であるか否かにより判定するものとした。また、バッテリ50の充電要求がなされているか否かは、電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいて演算されてバッテリECU52から通信により入力されたバッテリ50の蓄電割合SOCがバッテリ50の充電要求がなされる蓄電割合範囲の上限として予め定められた所定蓄電割合Slow(例えば、37%や40%など)以下であるか否かにより判定するものとした。なお、駐車状態では、駆動輪63a,63bをロック可能な図示しないパーキングロック機構によって駆動輪63a,63bがロックされており、駐車状態でバッテリ50の充電要求がなされているときにエンジン22が運転停止されているときには、モータMG1によってエンジン22がモータリングされて始動される。
【0026】
冷間駐車充電要求時制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、エンジン22がアイドル運転されているか否かを示すアイドル運転フラグFや、モータMG1の回転数Nm1や、バッテリ50の蓄電割合SOC,バッテリ50の入力制限Winなど制御に必要なデータを入力する(ステップS100)。ここで、アイドル運転フラグFは、エンジン22がアイドル運転されているときに値1が設定され、アイドル運転されていないときに値0が設定されたものエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1の回転数Nm1は、回転位置検出センサ43により検出されたモータMG1の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の蓄電割合SOCは、電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいて演算されたものを、バッテリ50の入力制限Winは、蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいて設定されたものを、それぞれバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0027】
こうしてデータを入力すると、入力したバッテリ50の入力制限Winに基づいて、バッテリ50を充電するためにエンジン22に要求される要求パワーPe*を設定する(ステップS110)。ここで、要求パワーPe*は、実施例では、値0より大きく値1より小さい補正係数α(例えば、0.6や0.7など)をバッテリ50の入力制限Winの絶対値に乗じたものに、駐車状態においてエンジン22からのパワーを受けてモータMG1で発電した電力でバッテリ50を充電する駐車充電時のロスLchを加えたものを設定するものとした。したがって、バッテリ50が低温のときには、電池温度Tbが低いほど入力制限Winの絶対値が小さくなるため、電池温度Tbが低いほど小さくなる傾向に要求パワーPe*を設定することになる。
【0028】
続いて、アイドル運転フラグFの値を調べ(ステップS120)、アイドル運転フラグFが値0のときには、エンジン22からの出力パワーPeを閾値Prefと比較する(ステップS130)。いま、駐車状態を考えているから、モータMG2によるトルクの入出力を考慮しなければ、エンジン22からの出力パワーPeは、モータMG1による発電パワーPm1にロスLchを加えたものに略等しくなると考えられる。したがって、実施例では、冷間駐車充電要求時制御ルーチンの前回の実行時に設定されたモータMG1のトルク指令(前回Tm1*)とモータMG1の回転数Nm1との積として得られる発電パワーPm1にロスLchを加えたものを出力パワーPeとして計算するものとした。また、閾値Prefは、駐車充電における充電電力が入力制限Winを超える程度に出力パワーPeが要求パワーPe*を超過する出力過剰状態であるか否かを判定するために用いられるものであり、実施例では、入力制限Winの絶対値にロスLchを加えたものを用いるものとした。ステップS130の判定は、外気温Toutやエンジン22の吸気温度Taが低いときに、空気密度が大きくなることによって要求パワーPe*に比して出力パワーPeが大きくなりやすいことを考慮して行なうものである。
【0029】
出力パワーPeが閾値Pref以下のときには、出力過剰状態でないと判断し、要求パワーPe*に基づいてエンジン22を効率よく運転するための運転ポイントとしての目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定してこれらをエンジンECU24に送信する(ステップS140)。目標回転数Ne*および目標トルクTe*を受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されるよう吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御を行なう。
【0030】
続いて、設定したエンジン22の目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(いま、駐車状態を考えているから値0)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算してこのトルク指令Tm1*をモータECU40に送信して(ステップS150)、冷間駐車充電要求時制御ルーチンを終了する。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。駐車充電を行なっているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図6に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。トルク指令Tm1*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されるようインバータ41のスイッチング素子をスイッチング制御する。これにより、駐車充電を行なうことができる。
【0031】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nr/ρ (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0032】
ステップS130でエンジン22からの出力パワーPeが閾値Prefより大きいときには、出力過剰状態であると判断し、エンジン22をアイドル運転すると共にエンジン22をアイドル運転する際の制御量(以下、アイドル制御量という)を学習すると判断する。そして、過去に(学習値がリセットされてから現在までに)アイドル制御量の学習が行なわれている否かを判定する(ステップS160)。このステップS160の処理は、今回のアイドル制御量の学習が学習値がリセットされた後の初回の学習であるか2回目以降の学習であるかを判定する処理である。なお、アイドル制御量の学習値は、システムダウン時にリセットされる。
【0033】
過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないと判定されたときには、今回のアイドル制御量の学習が初回の学習であると判断し、アイドル運転を継続する時間としての継続設定時間trefに所定時間t1を設定すると共に(ステップS170)、アイドル運転の継続を許容するバッテリ50の蓄電割合範囲の下限としての許容下限蓄電割合Srefに所定蓄電割合S1を設定し(ステップS180)、アイドル時間tidをリセットして値0から計時を開始する(ステップS210)。一方、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていると判定されたときには、今回のアイドル制御量の学習が2回目以降の学習であると判断し、継続設定時間trefに所定時間t1より短い所定時間t2を設定すると共に(ステップS190)、許容下限蓄電割合Srefに所定蓄電割合S1よりも大きい所定蓄電割合S2を設定し(ステップS200)、アイドル時間tidをリセットして値0から計時を開始する(ステップS210)。ここで、所定時間t1や所定時間t2は、アイドル制御量の学習に要する時間やそれよりも若干長い時間として予め定められた時間であり、例えば、所定時間t1は15秒や20秒などを用いることができ、所定時間t2は5秒や7秒などを用いることができる。また、所定蓄電割合S1や所定蓄電割合S2は、アイドル制御量の学習をできるだけ許容しつつバッテリ50の過放電を抑制するために前述の所定蓄電割合Slow(例えば、37%や40%など)よりも低い範囲内で予め定められた値であり、例えば、所定蓄電割合S1は27%や30%などを用いることができ、所定蓄電割合S2は33%や35%などを用いることができる。なお、許容下限蓄電割合Srefを設定するのは、エンジン22をアイドル運転している最中に図示しない補機(例えば、乗員室の空調装置のエアコンプレッサなど)による電力消費などによってバッテリ50の蓄電割合SOCが低下する場合があるためである。また、このように今回のアイドル制御量の学習が初回の学習であるか2回目以降の学習であるかに応じて継続設定時間trefや許容下限蓄電割合Srefを設定する理由については後述する。
【0034】
そして、アイドル時間tidを継続設定時間trefと比較すると共に(ステップS220)、蓄電割合SOCを許容下限蓄電割合Srefと比較し(ステップS230)、アイドル時間tidが継続設定時間tref以下であり蓄電割合SOCが許容下限蓄電割合Sref以上のときには、エンジン22をアイドル運転すると判断し、エンジン22の目標回転数Ne*にアイドル回転数Nid(例えば、1000rpmや1300rpmなど)を設定すると共にエンジン22の目標トルクTe*に値0を設定してこれらをエンジンECU24に送信すると共に(ステップS240)、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定してモータECU40に送信して(ステップS250)、冷間駐車充電要求時制御ルーチンを終了する。アイドル回転数Nidが設定された目標回転数Ne*と値0が設定された目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22がアイドル回転数Nidでアイドル運転されるよう吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御を行なう。この場合、具体的には、エンジン22の回転数Neをアイドル回転数Nidにするために、スロットルバルブ124のスロットル開度THのフィードバック制御によって吸入空気量制御を行なうと共にスロットル開度THに対応する燃料噴射量や点火時期による燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、エンジンECU24は、エンジン22の運転制御と並行して、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行する図7に例示するアイドル学習ルーチンにより、アイドル運転フラグFを入力し(ステップS300)、アイドル運転フラグFが値1で今回のアイドル制御量の学習が未だ開始されていないときに(ステップS310,S320)、今回のアイドル制御量(例えば、スロットルバルブ124のスロットル開度THなど)の学習を開始する(ステップS330)。そして、エンジンECU24でアイドル運転フラグFに値1が設定されると、次回に冷間駐車充電要求時制御ルーチンが実行されたときには、ステップS120でアイドル運転フラグFが値1であるから、ステップS220以降の処理を実行する。
【0035】
こうしてエンジン22のアイドル運転が継続されている最中にステップS230でアイドル時間tidが継続設定時間trefより長くなったときには、今回のアイドル制御量の学習(初回の学習であるときにはアイドル制御量の設定、2回目以降の学習であるときにはアイドル制御量の更新)は完了していると判定し(ステップS260)、要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定してエンジンECU24に送信すると共に(ステップS140)、モータMG1のトルク指令Tm1*を設定してモータECU40に送信して(ステップS150)、冷間駐車充電要求時制御ルーチンを終了する。通常、初回のアイドル制御量の学習のときには、エンジン22をアイドル運転するのに使用可能な学習値がない(リセットされている)ことやエンジン22の状態に応じてスロットル開度THに対する吸入空気量Qaやオイルの粘性(フリクション)などが比較的大きく異なることなどの理由により、その学習に要する時間のバラツキが比較的大きいため、学習に要する時間をより確実に確保するために比較的長い時間(実施例では所定時間t1)を継続時間trefに設定することが好ましい。一方、2回目以降のアイドル制御量の学習のときには、前回の学習値に基づいて学習(更新)すればよいため、アイドル制御量の学習に要する時間は、初回に比して短くなり且つそのバラツキも小さくなると考えられる。したがって、今回のアイドル制御量の学習が初回の学習であるか2回目以降の学習であるかに拘わらず比較的長い所定時間t1を継続設定時間trefに設定すると、アイドル運転を必要以上に長い時間に亘って継続することによって燃費が悪化すると考えられる。これに対して、実施例では、今回のアイドル制御量の学習が2回目以降の学習であるときには、所定時間t1よりも短い所定時間t2を継続設定時間trefに設定するから、アイドル運転を必要以上に長い時間に亘って継続するのを抑制することができ、燃費の悪化を抑制することができる。しかも、アイドル運転を必要以上に長い時間に亘って継続するのを抑制することにより、図示しない補機の電力消費などによるバッテリ50の蓄電割合SOCの低下を抑制することができる。そして、エンジンECU24でエンジン22が負荷運転されてアイドル運転フラグFに値0が設定されると、ステップS120でアイドル運転フラグFが値0であるから、ステップS130以降の処理を実行し、その後にステップS130でエンジン22からの出力パワーPeが閾値Prefより大きいときには、ステップS160で過去にアイドル制御量の学習が行なわれていると判定され、ステップS190以降の処理を実行する。
【0036】
一方、エンジン22のアイドル運転が継続されている最中にアイドル時間tidが継続設定時間tref以下であるがバッテリ50の蓄電割合SOCが所定蓄電割合Sref未満に至ったときには、今回のアイドル制御量の学習は完了していない可能性があると判断し、ステップS260の判定を行なわずに、要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定してエンジンECU24に送信すると共に(ステップS140)、モータMG1のトルク指令Tm1*を設定してモータECU40に送信して(ステップS150)、冷間駐車充電要求時制御ルーチンを終了する。ここで、前述したように、今回のアイドル制御量の学習が初回の学習であるときには、2回目以降の学習であるときの所定蓄電割合S2よりも小さい所定蓄電割合S1を許容下限蓄電割合Srefに設定するから、エンジン22のアイドル運転をより継続しやすくすることができ、アイドル制御量をより確実に学習することができる。そして、エンジンECU24でエンジン22が負荷運転されてアイドル運転フラグFに値0が設定されると、ステップS120でアイドル運転フラグFが値0であるから、ステップS130以降の処理を実行する。
【0037】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22がアイドル運転されているときにアイドル制御量の学習を行なうものにおいて、バッテリ50の充電要求がなされているときにエンジン22から過剰な動力が出力される出力過剰状態であるときにエンジン22をアイドル運転する際に、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときには所定時間t1に亘ってエンジン22がアイドル運転されるようエンジン22を制御し、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときには所定時間t1よりも短い所定時間t2に亘ってエンジン22がアイドル運転されるようエンジン22を制御するから、アイドル運転を必要以上に長い時間に亘って継続するのを抑制することができ、燃費の悪化を抑制することができる。しかも、出力過剰状態であるときにエンジン22をアイドル運転する際、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときには、バッテリ50の蓄電割合SOCが過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときに比して低い所定蓄電割合S1以上であることを条件としてエンジン22をアイドル運転するから、エンジン22のアイドル運転をより継続しやすくすることができ、アイドル制御量をより確実に学習することができる。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22をアイドル運転する際に、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないとき(今回のアイドル制御量の学習が初回の学習であるとき)には所定時間t1を継続設定時間trefに設定し、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているとき(今回のアイドル制御量の学習が2回目以降の学習であるとき)には所定時間t1よりも短い所定時間t2を継続設定時間trefに設定するものとしたが、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときには、アイドル制御量の学習値がリセットされてから現在までの学習回数に基づいて(例えば、回数が多いほど短くなる傾向に)継続設定時間trefを設定するものとしてもよい。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22をアイドル運転する際に、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときには所定蓄電割合S1を許容下限蓄電割合Srefに設定し、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときには所定蓄電割合S1よりも大きい所定蓄電割合S2を許容下限蓄電割合Srefに設定するものとしたが、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているか否かに拘わらず一定の蓄電割合(例えば、前述の所定蓄電割合S2など)を許容下限蓄電割合Srefに設定するものとしてもよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、冷間時に駐車状態でバッテリ50の充電要求がなされていてエンジン22からの出力パワーPeが閾値Prefより大きくなるときに出力過剰状態であると判定するものとしたが、これに限られず、例えば、バッテリ50の充電要求がなされていて出力パワーPeが閾値Prefより大きくなるときに、冷間時であるか否かや駐車状態であるか否かに拘わらず出力過剰状態であると判定するものなどとしてもよい。また、バッテリ50の充電要求がなされていて出力パワーPeが閾値Prefより大きくなる条件に加えて、他の条件、例えば、バッテリ50の入力制限Winの絶対値が所定値(例えば、0.5kWや0.8kWなど)以下である条件や、要求パワーPe*が所定パワー(例えば、0.3kWや0.5kWなど)以下である条件などを満たしているときに、出力過剰状態であると判定するものとしてもよい。なお、走行中にバッテリ50の充電要求がなされているときには、例えば、図5の冷間駐車充電要求時制御ルーチンのステップS110の処理に代えて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求される要求トルクTr*とバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とに基づいてエンジン22の要求パワーPe*を設定する点を除いて図5の冷間駐車充電要求時制御ルーチンと同様にエンジン22を制御すると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でリングギヤ軸32aに要求トルクTr*が出力されるようモータMG1,MG2を制御するものとすることができる。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22を負荷運転する際には、ステップS110で設定した要求パワーPe*を用いてエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定してエンジン22を制御するものとしたが、前述したように、外気温Toutや吸気温Taが低いときには空気密度が大きく要求パワーPe*に対して出力パワーPeが大きくなりやすいため、出力パワーPeの要求パワーPe*に対する超過を抑制するために、ステップS110で設定した要求パワーPe*よりも小さいパワー(例えば、出力パワーPeと要求パワーPe*との差を打ち消すためのフィードバック制御によって要求パワーPe*を補正したパワーなど)を用いてエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定してエンジン22を制御するものとしてもよい。こうすれば、エンジン22の運転状態が負荷運転とアイドル運転との間で頻繁に変更されるのを抑制することができ、バッテリ50の充電要求により対応しやすくすることができる。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22と動力分配統合機構30とモータMG1,MG2とバッテリ50とを備え、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、エンジンからのパワーを受けて発電機で発電してバッテリを充電可能な構成であれば如何なるものとしてもよく、例えば、図8の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図8における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力する構成としてもよいし、エンジン22と動力分配統合機構30とモータMG1,MG2とバッテリ50とのうち動力分配統合機構30やモータMG2を備えない構成としてもよい。
【0043】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の車両や船舶,航空機などの移動体に搭載される内燃機関装置の形態や建設設備などの移動しない設備に組み込まれた内燃機関装置の形態としてもよい。また、こうした内燃機関装置の制御方法の形態としてもよい。
【0044】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づくバッテリ50の蓄電割合SOCとバッテリ50の電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入力制限Winを演算するバッテリECU52が「入力制限設定手段」に相当し、エンジン22がアイドル運転されているときにアイドル制御量を学習する図7のアイドル学習ルーチンを実行するエンジンECU24が「学習手段」に相当する。バッテリ50の充電要求がなされているときにエンジン22から過剰な動力が出力される出力過剰状態であるときにエンジン22をアイドル運転する際に、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときにはアイドル時間tidが所定時間t1以下の間に亘ってエンジン22の目標回転数Ne*にアイドル回転数Nidを設定すると共に目標トルクTe*に値0を設定してエンジンECU24に送信し、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときにはアイドル時間tidが所定時間t1よりも短い所定時間t2以下の間に亘ってエンジン22の目標回転数Ne*にアイドル回転数Nidを設定すると共に目標トルクTe*に値0を設定してエンジンECU24に送信する図5の冷間駐車充電要求時制御ルーチンを実行するエンジンECU24と、受信した目標回転数Ne*(アイドル回転数Nid)と目標トルクTe*(値0)とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24と、が「制御手段」に相当する。また、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当する。
【0045】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、内燃機関からの動力を用いて発電可能ものであれば如何なるタイプの発電機であっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池,ニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、発電機と電力をやりとり可能なものであれば種々の二次電池を用いることができる。「入力制限手段」としては、電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づくバッテリ50の蓄電割合SOCとバッテリ50の電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入力制限Winを演算するものに限定されるものではなく、蓄電割合SOCや電池温度Tbの他に例えばバッテリ50の内部抵抗などに基づいて演算するものなど、二次電池の状態に基づいて二次電池を充電する際の最大許容電力としての入力制限を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「学習手段」としては、エンジン22がアイドル運転されているときにアイドル制御量を学習するものに限定されるものではなく、内燃機関がアイドル運転されている条件が成立したとき、内燃機関をアイドル運転する際の制御量であるアイドル制御量を学習するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、バッテリ50の充電要求がなされているときにエンジン22から過剰な動力が出力される出力過剰状態であるときにエンジン22をアイドル運転する際に、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときにはアイドル時間tidが所定時間t1以下の間に亘ってエンジン22がアイドル運転されるようエンジン22を制御し、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときにはアイドル時間tidが所定時間t1よりも短い所定時間t2以下の間に亘ってエンジン22がアイドル運転されるようエンジン22を制御するものに限定されるものではなく、二次電池を充電するための充電要求に基づいて内燃機関を負荷運転すると二次電池を充電する電力が入力制限を超える程度に内燃機関から過剰な動力が出力される所定条件が成立したとき、過去にアイドル制御量の学習が行なわれていないときには第1の所定時間に亘って内燃機関がアイドル運転されるよう内燃機関を制御し、過去にアイドル制御量の学習が行なわれているときには第1の時間よりも短い第2の所定時間に亘って内燃機関がアイドル運転されるよう内燃機関を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0046】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、内燃機関装置や車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 外気温センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を有する内燃機関装置であって、
前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、
前記発電機と電力をやりとり可能な二次電池と、
前記二次電池の状態に基づいて該二次電池を充電する際の最大許容電力としての入力制限を設定する入力制限設定手段と、
前記内燃機関がアイドル運転されている条件が成立したとき、該内燃機関をアイドル運転する際の制御量であるアイドル制御量を学習する学習手段と、
前記二次電池を充電するための充電要求に基づいて前記内燃機関を負荷運転すると前記二次電池を充電する電力が前記設定された入力制限を超える程度に前記内燃機関から過剰な動力が出力される所定条件が成立したとき、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれていないときには第1の所定時間に亘って前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御し、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれているときには前記第1の時間よりも短い第2の所定時間に亘って前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御する制御手段と、
を備える内燃機関装置。
【請求項2】
請求項1記載の内燃機関装置であって、
前記制御手段は、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれていないときには前記二次電池に蓄えられた蓄電量の全容量に対する割合である蓄電割合が第1の所定割合以上であることを条件として前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御し、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれているときには前記二次電池の蓄電割合が前記第1の所定割合より大きい第2所定割合以上であることを条件として前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御する手段である、
内燃機関装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の内燃機関装置であって、
前記所定条件は、前記内燃機関から出力される動力が前記設定された入力制限に応じて定められる閾値よりも大きいときに成立する条件である、
内燃機関装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の内燃機関装置と、
車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、
前記二次電池と電力をやりとり可能で、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、
を備える車両。
【請求項5】
内燃機関と、該内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、該発電機と電力をやりとり可能な二次電池と、を備え、前記内燃機関がアイドル運転されている条件が成立したとき、該内燃機関をアイドル運転する際の制御量であるアイドル制御量を学習する内燃機関装置の制御方法であって、
前記二次電池を充電するための充電要求に基づいて前記内燃機関を負荷運転すると前記二次電池を充電する電力が前記二次電池を充電する際の最大許容電力としての入力制限を超える程度に前記内燃機関から過剰な動力が出力される所定条件が成立したとき、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれていないときには第1の所定時間に亘って前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御し、過去に前記アイドル制御量の学習が行なわれているときには前記第1の時間よりも短い第2の所定時間に亘って前記内燃機関がアイドル運転されるよう該内燃機関を制御する、
ことを特徴とする内燃機関装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−98633(P2011−98633A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254200(P2009−254200)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】