半導体デバイスの製造方法、半導体デバイスおよび基板処理装置
【課題】
レジスト層あるいはアモルファスカーボン層を表面に有する基板に、低温で良質の膜を形成する。
【解決手段】
レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板にHMDSガスを曝すHMDSガス暴露工程と、基板に酸素含有ガスを曝す酸素含有ガス暴露工程と、を行うことにより、少なくともレジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する。これにより、基板の表面のレジストあるいはACLにダメージを与えることのない低い処理温度で、不純物が少なく、ウェットエッチングレートが低い膜をレジストあるいはACLの上に形成することができる。
レジスト層あるいはアモルファスカーボン層を表面に有する基板に、低温で良質の膜を形成する。
【解決手段】
レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板にHMDSガスを曝すHMDSガス暴露工程と、基板に酸素含有ガスを曝す酸素含有ガス暴露工程と、を行うことにより、少なくともレジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する。これにより、基板の表面のレジストあるいはACLにダメージを与えることのない低い処理温度で、不純物が少なく、ウェットエッチングレートが低い膜をレジストあるいはACLの上に形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイスの製造方法、半導体デバイスおよび基板処理装置に関し、特に低温で処理を行なうために有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリ、DRAM(Dynamic Random Access
Memory)、SRAM(Static Random
Access Memory)等のメモリデバイスや、ロジックデバイス等の半導体デバイスは、近年、高集積化が求められているが、そのためにはパターンの微細化が必須である。狭い面積に多くのデバイスを集積させるためには、個別デバイスのサイズを小さく形成しなくてはならず、このためには、形成しようとするパターンの幅と間隔との和であるピッチを小さくしなければならない。しかし、必要なパターンを形成するためのリソグラフィ工程に解像限界があり、微細ピッチを有するパターンの形成に限界がある。
【0003】
近年、基板の上に微細なパターンを形成し、これをマスクとしてエッチングを行うことによって該パターンの下層を加工する技術(パターン形成技術)は、半導体産業のIC作成等に広く採用され、大きな注目を浴びている。そこで、新しく提案されているリソグラフィ技術の1つとして、パターニングを2回以上行ってレジストパターンを形成するダブルパターニング技術(DPT:Double Patterning Technology)の検討が進められている。基板に所望の膜を形成する場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類の原料等を、処理室内に載置された基板へ同時に供給するCVD(Chemical Vapor Deposition)法や、交互に供給するALD(Atomic Layer Deposition)法などを用いることができる。しかし、一般的な成膜方法では実用的な成長速度を得るためには700℃程度の高温環境で成膜を行う必要があるが、高温で処理を行うと、下地であるレジストやアモルファスカーボン(ACL:Amorphous Carbon Layer)が加熱により変質してしまう等の問題点があり、近年では処理温度の低温化が要求されている。このDPTによれば、1回のパターニングで形成されるパターンよりも微細なパターンが形成できるとされている。低温にてDPTプロセスを行う技術としては、特許文献1、特許文献2および特許文献3に示されるように、四塩化ケイ素(TCS:テトラクロロシラン(SiCl4))や六塩化二ケイ素(HCD:ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6))等のハロゲン系原料、酸化剤および触媒を使用して成膜を行う技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,090,442号公報
【特許文献2】特開2004−40110号公報
【特許文献3】特開2009−272558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DPTプロセスについて図18を用いて説明する。図18は、半導体デバイスを製造する際のリソグラフィ工程で、DPTを適用するデバイスのパターン表面の断面を拡大して示したものである。(a)はDPTプロセスの前に、エッチング対象膜901の上にACL902をリソグラフィ工程でパターニングしたもののパターン断面図である。(b)は(a)のパターン上に低温で酸化膜903を形成した後のパターン断面図である。(c)は酸化膜903をエッチングし、ACL902のパターンの側壁に形成した酸化膜903のみを残して他の箇所に形成された酸化膜903をエッチングした後のパターン断面図である。(d)は、その後露出したACL902を垂直方向に異方性エッチングし、ACL902の微細パターンを形成した状態の断面図である。
【0006】
図18(b)のようなパターン断面図を形成する場合の酸化膜903は、例えばALD法を用いてHCDと、H2Oおよび触媒を交互に供給して形成することができる。しかし、この場合、成膜した酸化膜の中に不純物が多く含まれたり、膜質を評価する目安となるウェットエッチングレート(WER)が大きくなってしまうという問題点があった。また、DPTプロセスでは、被処理基板の表面のレジストあるいはACLにダメージを与えないよう処理温度を200℃以下にする必要があるが、従来の技術では処理温度を400℃程度まで上げるか、成膜後に400℃程度でアニーリング(熱処理)しなければ良質な酸化膜が得られなかった。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、上記問題を解決し、レジスト層あるいはアモルファスカーボン層を表面に有する基板に、200℃以下の低温で良質の膜を形成する半導体デバイスの製造方法、その膜を備えた半導体デバイスおよび基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板にHMDSガスを曝すHMDSガス暴露工程と、基板に酸素含有ガスを曝す酸素含有ガス暴露工程と、を行うことにより、少なくともレジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、基板上の一部の領域に第1レジストパターンを形成する第1レジストパターン形成工程と、基板にHMDSガスと活性化した酸素含有ガスを交互に曝して、第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を堆積するシリコン酸化膜形成工程と、第1レジストパターンが形成されていない領域の一部に第2レジストパターンを形成する第3の工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板が内部に載置された処理室内に、HMDSガスを供給するHMDSガス供給工程と、処理室内の雰囲気を排気する第1の排気工程と、処理室内に活性化した酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給工程と、
処理室内の雰囲気を排気する第2の排気工程と、を1サイクルとして複数サイクル繰り返すことにより、少なくともレジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法であって、処理室内を200℃以下に加熱した状態で、サイクルを繰り返す半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板を収容する処理室と、処理室にHMDSガスを供給する第1のガス供給系と、処理室に酸素含有ガスを供給する第2のガス供給系と、第1のガス供給系および第2のガス供給系を制御する制御部と、を有する基板処理装置であって、制御部は、第1のガス供給系および第2のガス供給系を制御して、処理室にHMDSガスと酸素含有ガスを供給することにより基板にHMDSガスと酸素含有ガスを曝して、少なくともレジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS:(CH3)3SiNHSi(CH3)3)と酸素含有ガス(酸化ガス)を使用して酸化膜を形成することにより、基板の表面のレジストあるいはACLにダメージを与えることのない低い処理温度で、不純物が少なく、ウェットエッチングレートが低い膜をレジストあるいはACLの上に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にて好適に用いられる基板処理装置の概略的な構成を示す斜透視図である。
【図2】本発明の一実施形態にて好適に用いられる処理炉の一例とそれに付随する部材の概略構成図であって、特に処理炉部分を縦断面で示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にて好適に用いられる処理炉部分の横断面を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるリモートプラズマを説明する概略図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるプラズマ発生機構を説明する概略図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるガスの流れを説明する概略図である。
【図7】本発明の一実施形態における基板主面の向きと排気管の位置関係を説明する概略図である。
【図8】本発明の一実施形態において、基板にレジストパターンが形成される様子を概略的に示す模式図である。
【図9】第1の実施形態におけるプロセスを説明するフローチャートを示す図である。
【図10】第1の実施形態におけるシリコン酸化膜の成膜シーケンスを示す図である。
【図11】第2の実施形態にて好適に用いられる処理炉の一例とそれに付随する部材の概略構成図であって、特に処理炉部分を縦断面で示す図である。
【図12】従来技術を用いて成膜されたシリコン酸化膜のSIMS分析結果を示す図である。
【図13】第1の実施形態における成膜方法を用いて成膜されたシリコン酸化膜のSIMS分析結果を示す図である。
【図14】第2の実施形態における成膜方法を用いて成膜されたシリコン酸化膜のSIMS分析結果を示す図である。
【図15】従来技術および本発明によりALD法で成膜したシリコン酸化膜のウェットエッチングレートを示す図である。
【図16】本発明により得られたシリコン酸化膜の被覆性を評価した結果を示す図である。
【図17】第3の実施形態にて好適に用いられる基板処理装置の概略的な構成を示す断面図である。
【図18】半導体デバイスを製造する際のリソグラフィ工程で、DPTを適用するデバイスのパターン表面の断面を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)第1の実施形態
以下に、本発明の一実施形態である第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
[装置全体構成]
本発明を実施するための形態において、基板処理装置は、一例として、IC(Integrated Circuit)等半導体デバイスの製造方法における処理工程を実施する半導体製造装置として構成されている。なお、以下の説明では、基板処理装置として基板に対して酸化、拡散処理やCVD処理などを行うバッチ式縦型装置(以下、単に処理装置という場合もある)を用いた場合について述べる。図1は、本発明の一実施形態にて好適に用いられる基板処理装置の概略的な構成を示す斜透視図である。なお、本発明は、本実施形態にかかる基板処理装置に限らず、枚葉式、Hot Wall型、Cold Wall型の処理炉を有する基板処理装置にも適用できる。
【0016】
図1に示す通り、基板処理装置101では、基板の一例となるウエハ200を収納したカセット110が使用されており、ウエハ200はシリコン等の材料から構成されている。基板処理装置101は筐体111を備えており、筐体111の内部にはカセットステージ114が設置されている。カセット110はカセットステージ114上に工程内搬送装置(図示略)によって搬入されたり、カセットステージ114上から搬出されたりされる。
【0017】
カセットステージ114は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢を保持しかつカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に右回り縦方向90°回転し、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように動作可能となるよう構成されている。
【0018】
筐体111内の前後方向の略中央部にはカセット棚105が設置されており、カセット棚105は複数段複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105にはウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。
【0019】
カセットステージ114の上方には予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0020】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ118aと、搬送機構としてのカセット搬送機構118bとで構成されている。カセット搬送装置118はカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114とカセット棚105と予備カセット棚107との間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0021】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構125が設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ125bとで構成されている。ウエハ移載装置125aにはウエハ200をピックアップするためのツイーザ125cが設けられている。ウエハ移載装置125はウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作により、ツイーザ125cをウエハ200の載置部として、ウエハ200をボート217に対して装填(チャージング)したり、ボート217から脱装(ディスチャージング)したりするように構成されている。
【0022】
筐体111の後部上方には、ウエハ200を熱処理する処理炉202が設けられており、処理炉202の下端部が炉口シャッタ147により開閉されるように構成されている。
【0023】
処理炉202の下方には処理炉202に対しボート217を昇降させるボートエレベータ115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台にはアーム128が連結されており、アーム128にはシールキャップ219が水平に据え付けられている。シールキャップ219はボート217を垂直に支持するとともに、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0024】
ボート217は複数の保持部材を備えており、複数枚(例えば50〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0025】
カセット棚105の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するクリーン系134aが設置されている。クリーン系134aは供給ファンおよび防塵フィルタで構成されており、クリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0026】
筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するクリーン系134bが設置されている。クリーン系134bも供給ファンおよび防塵フィルタで構成されており、クリーンエアをウエハ移載装置125aやボート217等の近傍を流通させるように構成されている。当該クリーンエアは、ウエハ移載装置125aやボート217等の近傍を流通した後に、筐体111の外部に排気されるようになっている。
【0027】
続いて、基板処理装置101の主な動作について説明する。
【0028】
工程内搬送装置(図示略)によってカセット110がカセットステージ114上に搬入されると、カセット110は、ウエハ200がカセットステージ114の上で垂直姿勢を保持し、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように、筐体111の後方に右周り縦方向90°回転させられる。
【0029】
その後、カセット110は、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へカセット搬送装置118によって自動的に搬送され受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107からカセット搬送装置118によって移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0030】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200はカセット110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはカセット110に戻り、後続のウエハ110をボート217に装填する。
【0031】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、処理炉202の下端部を閉じていた炉口シャッタ147が開き、処理炉202の下端部が開放される。その後、ウエハ200群を保持したボート217がボートエレベータ115の上昇動作により処理炉202内に搬入(ローディング)され、処理炉202の下部がシールキャップ219により閉塞される。
【0032】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に対し任意の処理が実施される。その処理後は、上述の逆の手順で、ウエハ200およびカセット110が筐体111の外部に搬出される。
【0033】
[処理炉構成]
次に、処理炉の構成について説明する。図1は、本実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示し、図2は本実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を横断面で示す。
【0034】
図2は、本実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示し、図3は本実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を横断面で示す。
【0035】
図2に示されているように、処理炉202は、加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が設けられる。
【0036】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側にはボートを回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267の回転軸255はシールキャップを貫通して、後述するボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は反応管203の外部に設けられた昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0037】
シールキャップ219には断熱部材としての石英キャップ218を介して基板保持手段(支持具)としてのボート217が立設されている。石英キャップ218は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成され断熱部として機能すると共にボートを保持する保持体となっている。ボート217は例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成され、ボート217はボート支持台218に固定された底板210とその上方に配置された天板211とを有しており、底板210と天板211との間に複数本の支柱212が架設された構成を有している。また、ボート217は複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて管軸方向に多段に支持されるように構成されている。
【0038】
処理室201内であって反応管203の下部には、第1のノズル249aおよび第2のノズル249bが反応管203を貫通するように設けられている。第1のノズル249aには原料供給管232aが接続されている。また第2のノズル249bには反応ガス供給管232bが接続されている。このように反応管203には2本のノズル249aおよび249bと、2本の供給管である原料供給管232aおよび反応ガス供給管232bが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは少なくとも2種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0039】
原料供給管232aには上流方向から順に、開閉弁であるバルブ543、液体原料流量制御器である液体マスフローコントローラ(LMFC) 241a、気化器(気化装置)500、および開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、原料供給管232aには、バルブ243aの下流側に不活性ガス供給管232cが接続されている。この不活性ガス供給管232cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241c、および開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、原料供給管232aの先端部には、上述の第1のノズル249aが接続されている。第1のノズル249aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第1のノズル249aはL字型のロングのノズルとして構成されている。第1のノズル249aの側面にはガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、原料供給管232a、バルブ543、243a、液体マスフローコントローラ241a、気化器500、第1のノズル249aにより、原料を処理室201内へ供給する原料供給系(第1のガス供給系)が構成される。また、主に、不活性ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243cにより第1の不活性ガス供給系が構成される。
【0040】
反応ガス供給管232bには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、および開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、反応ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、不活性ガス供給管232dが接続されている。この不活性ガス供給管232dには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241d、および開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、反応ガス供給管232bの先端部には、上述の第2のノズル249bが接続されている。第2のノズル249bは、ガス分散空間(放電室、放電空間)であるバッファ室237内に設けられている。
【0041】
バッファ室は反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給するガス供給孔250cが設けられている。ガス供給孔250cは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0042】
第2のノズル249bは、バッファ室237のガス供給孔250cが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第2のノズル249bはL字型のロングのノズルとして構成されている。第2のノズル249bの側面にはガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bはバッファ室237の中心を向くように開口している。このガス供給孔250bは、バッファ室237のガス供給孔250cと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。この複数のガス供給孔250bのそれぞれの開口面積は、バッファ室237内とノズル249b内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0043】
本実施形態においては、第2のノズル249bのガス供給孔250bのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔250bのそれぞれから、流速の差はあるもの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこのガス供給孔250bのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内に導入し、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うこととした。
【0044】
すなわち、第2のノズル249bのガス供給孔250bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスはバッファ室237内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室237のガス供給孔250cより処理室201内に噴出する。これにより、第2のノズル249bのガス供給孔250bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、バッファ室237のガス供給孔250cのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0045】
主に、反応ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2のノズル249b、バッファ室237により、反応ガスを処理室201内に供給する反応ガス供給系(第2のガス供給系)が構成される。また、主に、不活性ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243dにより第2の不活性ガス供給系が構成される。
【0046】
原料供給管232aからは、例えば、シリコン原料、すなわち第1の元素としてシリコン(Si)を含む原料(シリコン含有原料)、バルブ543、液体マスフローコントローラ241a、気化器500、バルブ243a、第1のノズル249aを介して処理室201内に供給される。シリコン含有原料としては、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS:(CH3)3SiNHSi(CH3)3)等の液体原料を用いることができる。なお、シリコン含有原料は、常温常圧で固体、液体、および気体のいずれであっても良いが、ここでは液体として説明する。シリコン含有原料が常温常圧で気体の場合は気化器500を設ける必要はない。また、ここで、原料とは、基板等に形成される膜を構成し、基板等に化学吸着する元素を含む。
【0047】
反応ガス供給管232bからは、例えば酸素(O)を含む反応ガス(酸素含有ガス、酸化剤)が、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2のノズル249b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。酸素含有ガスとしては、例えばO2、O3等を用いることができる。ここで、反応ガスとは、基板等に形成される膜を構成し、基板等に吸着した原料もしくは原料の一部と反応するガスのことをいう。
【0048】
不活性ガス供給管232cおよび232dからは、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれマスフローコントローラ241cおよび241d、バルブ243cおよび243d、ガス供給管232aおよび232b、ノズル249a、249b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。
【0049】
なお、例えば各供給管から上述のような原料および反応ガスをそれぞれ流す場合、原料供給系によりシリコン含有原料供給系(シラン系ガス供給系、第1のガス供給系)が構成される。また、反応ガス供給系により酸素含有ガス供給系(第2のガス供給系)が構成される。
【0050】
バッファ室237内には、図2および図3に示すように、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269および第2の電極である第2の棒状電極270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。第1の棒状電極269および第2の棒状電極270のそれぞれは、第2のノズル249bと平行に設けられている。第1の棒状電極269および第2の棒状電極270のそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275により覆われることで保護されている。この第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、第1の棒状電極269および第2の棒状電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、第1の棒状電極269、第2の棒状電極270、電極保護管275、整合器272、高周波(RF:Radio Frequency)電源273によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。なお、プラズマ源は、後述するようにガスをプラズマで活性化させる活性化機構として機能する。
【0051】
電極保護管275は、第1の棒状電極269および第2の棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269および第2の棒状電極270はヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部には窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられている。これらの構成により、プラズマ発生機構が形成される。なお、本実施形態により発生したプラズマをリモートプラズマと呼ぶ。リモートプラズマとは電極間で生成したプラズマをガスの流れ等により被処理物面に輸送してプラズマ処理を行うものである。図3および図4を用いて以下に説明する。図4に、本発明の一実施形態におけるリモートプラズマを説明する概略図である。矢印Aはガスの流れを示す。本実施形態では、バッファ室237内に2本の棒状電極269および270が収容されているため、ウエハ200にダメージを与えるイオンがバッファ室外の処理室内に漏れにくい構造となっている。又、2本の棒状電極269および270を取り囲むように(つまり、2本の棒状電極269および270がそれぞれ収容される電極保護管275を取り囲むように)電場Eが発生し、プラズマBが生成される。処理室201内のウエハ200の外周からみれば、外周接線方向に電場Eが発生しているため、イオン(O+)はバッファ室237外に漏れたとしても電場Eの方向、つまりウエハ00の外周接線方向に移動し、ウエハ200の外周からウエハ200の中心に向かう方向には流れづらい構成となっている。その結果、バッファ室237のガス供給孔250cから酸素ラジカル(O*)がウエハ200の外周からウエハ200の中心方向に供給される。また、本実施形態のようにウエハ200を複数枚、主面を水平面に平行にしてスタック状に積み上げる縦型のバッチ装置であれば、反応管203の内壁面、つまり処理すべきウエハ200に近い位置にバッファ室237が配置されている結果、発生した酸素ラジカルが失活せずにウエハ200の表面に到達しやすいという効果がある。
【0052】
また、他の実施形態として図5に示すように、反応管の外にプラズマ発生機構を設ける例についても適用可能である。以下に説明する。反応管203の側壁を上下方向に沿って所定の幅で削りとることによって上下に細長く形成された開口731をその外側より覆うようにして反応管203の外壁に気密に溶接されたプラズマ区画壁732がある。プラズマ区画壁732は、断面凹部状をなし上下に細長く形成され、例えば石英で形成されている。また、このプラズマ区画壁732の両側壁の外面に上下方向に沿って互いに対向するようにして配置された細長い一対のプラズマ電極769および770と、このプラズマ電極769および770に高周波電力を供給する高周波電源773がある。これらのプラズマ区画壁732、一対のプラズマ電極769および770、高周波電源773により、供給されたガスのプラズマを生成するプラズマ発生機構が形成される。そして、上記プラズマ電極769および770に高周波電源773から例えば13.56MHzの高周波電圧を印加することにより酸素含有ガスのプラズマが発生し得る。なお、この高周波電圧の周波数は13.56MHzに限定されず、他の周波数、例えば400kHz等を用いてもよい。
【0053】
上記のようなプラズマ区画壁732を形成することにより、反応管203の側壁の一部が凹部状に外側へ窪ませた状態となり、プラズマ区画壁732の内部空間が反応管203の内部空間に一体的に連通された状態となる。また、開口731は、に保持されている全てのウエハ200を高さ方向においてカバーできるように上下方向に十分に長く形成されている。
【0054】
また、酸素含有ガスを処理室701内に供給する図示しないガス供給管に接続されたノズル749bは、反応管203内を上方向に延びていく途中で反応管203の半径方向外方へ屈曲されて、上記プラズマ区画壁732内の最も奥の部分(反応管203の中心から最も離れた部分)に沿って上方に向けて起立されている。このため、高周波電源773がオンされて両電極769および770間に電場が形成された際に、ノズル749bのガス供給孔250bから噴射された酸素含有ガスがプラズマ化されて処理室701の中心に向けて拡散しつつ流れる。上記プラズマ区画壁732の外側には、これを覆うようにして例えば石英よりなる絶縁保護カバー736が取り付けられている。また、この絶縁保護カバー736の内側部分には、図示しない冷媒通路が設けられており、例えば冷却されたN2ガスを流すことにより上記プラズマ電極769および770を冷却し得るようになっている。
【0055】
また、処理室701内には、2本のノズル749aが反応管203の内側壁の上記開口731を挟む位置に起立して設けられており、このノズル749aに形成された複数のガス供給口750a処理室701の中心方向に向けて原料ガス等を吐出し得るようになっている。一方、反応管203の開口731の反対側の部分には、反応管203内を真空排気するための排気口737が設けられている。この排気口737は反応管203の側壁を上下方向へ削りとることによって細長く形成されている。
【0056】
上記のような構成を備えたプラズマ生成機構であって、係るプラズマ発生機構と処理室701内を連通してラジカルを処理室701内に供給するようにしたプラズマ発生機構でも類似の効果が得られる。要は、ウエハ200にダメージを与えるイオンや電子が直接ウエハ200に触れる確率を減少するようにプラズマ発生機構と処理室との関係を、所謂、リモートの関係、離間した関係で定めれば良い。プラズマ発生機構と処理室との離間距離は、プラズマ発生機構で発生したラジカルが処理室内に到達するまでに失活せず、かつプラズマ発生機構で発生したイオンが処理室内のウエハ200にダメージを与えるほどには到達できない離間距離である。従って、この離間距離があれば、反応管の外側に反応管と連通するようにプラズマ発生機構を設け、ガスをその発生機構内に供給することによってリモートプラズマを発生され、連通部を経由して処理室内にリモートプラズマを供給するようにしても良い。
【0057】
反応管203には、水平方向の断面的に見た場合、第2のノズル249b、プラズマ発生機構を内部に含んだバッファ室237とは対抗する位置(バッファ室237から見た場合、処理室201の内周部の反対側であればよく、必ずしも180度反対側でなくてもよい)に処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。図6に示すように、この位置に排気管231を配置することにより供給されたガスやリモートプラズマ発生機構により発生したラジカルが、成膜すべきウエハ200の主面上を排気管231の方向に向かって横切るように水平方向に流れ、ウエハ200の主面の全面に均一にガスやラジカルが供給され、ウエハ200上に均一な厚さで成膜を行うことができる効果がある。また、排気管231が処理室201の下部に設置されていることにより、供給されたガスやラジカルが処理室201の下部にある排気管231に向かって流れ、成膜すべきウエハ200の主面を上に向けてスタックしている場合は、ウエハ200の主面に対してガスやラジカルがあたりやすく成膜効率が良いという効果がある。
【0058】
なお、図7に他の実施形態を説明する。反応管603内にボート617を収容し、ボート617に主面を下に向けたウエハ200をスタックし、ガス供給孔650aを介してノズル649aからウエハ200へガスを供給する。ここで、矢印はガスの流れを示す。このように、ウエハ200の主面を下に向けてスタックするような場合は、排気管631を反応管603の上部に設置しても同様の効果がある。
【0059】
また、排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ244は弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。主に、排気管231、APCバルブ244、真空ポンプ246、圧力センサ245により排気系が構成される。
【0060】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249bおよび249b、と同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0061】
制御部(制御手段)であるコントローラ121は、液体マスフローコントローラ241a、マスフローコントローラ241b、241c、241d、バルブ543、243a、243b、243c、243d、気化器500、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、ボート回転機構267、ボートエレベータ115、高周波電源273、整合器272等に接続されている。コントローラ121により、液体マスフローコントローラ241aによる液体原料の流量調整動作、マスフローコントローラ241b、241c、241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ543、243a、243b、243c、243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉および圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、気化器500の制御、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節動作、ボートエレベータ115の昇降動作等の制御や、高周波電源273の電力供給制御、整合器272によるプラズマ生成のための電力制御が行われる。
【0062】
[半導体デバイスの製造方法]
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いた半導体装置(デバイス)の製造工程の一例として、大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)を製造する際に、本発明を適用する例について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0063】
LSIは、シリコンウエハ上に処理を施すウエハプロセスを行なった後、組立工程、試験工程、信頼性試験工程を経て製造される。ウエハプロセスは、シリコンウエハに酸化、拡散などの加工を施す基板工程と、その表面に配線を形成する配線工程とに区分され、リソグラフィ工程を中心に洗浄、熱処理、膜形成などが反復して行なわれる。リソグラフィ工程では、レジストパターンを形成し、該パターンをマスクとしてエッチングを行なうことにより該パターンの下層を加工する。
【0064】
ここで、図8を参照しながら、ウエハ200上にレジストパターンを形成する処理シーケンスの一例について説明する。
【0065】
処理シーケンスでは、ウエハ200上に第1レジストパターン603aを形成する第1レジストパターン形成工程と、第1レジストパターン603a上に第1レジスト保護膜としてシリコン酸化膜604を形成するシリコン酸化膜形成工程と、シリコン酸化膜上に第2レジストパターン603bを形成する第2レジストパターン工程とを、この順に実施する。 以下、各工程について説明する。
【0066】
<第1レジストパターン形成工程>
第1レジストパターン形成工程では、ウエハ200上に形成されたハードマスク601上に第1レジストパターン603aを形成する。最初に、ウエハ200上に形成されたハードマスク601上に、第1レジスト溶剤602aを塗布する(図8a)。次に、ベーキング、ArFエキシマ光源(193nm)やKrFエキシマ光源(248nm)等の光源によるマスクパターン等を用いた選択的露光、現像等を行うことで、第1レジストパターン603aを形成する(図8b)。
【0067】
<シリコン酸化膜形成工程>
シリコン酸化膜形成工程では、第1レジストパターン形成工程にて形成された第1レジストパターン603a上及び第1レジストパターン603aが形成されていない部分に、薄膜を保護材として形成する。これにより、第1レジストパターン603aの形状変化や膜質変化を防止して後述の第2レジスト溶剤602bから保護する。以下では、基板処理装置101を使用して保護膜としてのシリコン酸化膜604を極低温にて成膜する例について説明する。
【0068】
従来のCVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法では、例えば、CVD法の場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガス等を同時に供給し、また、ALD法の場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガス等を交互に供給する。そして、供給時の供給流量、供給時間、プラズマパワーなどの処理条件を制御することによりシリコン酸化膜(SiO膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)を形成する。それらの技術では、例えばSiO膜を形成する場合、膜の組成比が化学量論組成であるO/Si≒2となるように、また例えばSiN膜を形成する場合、膜の組成比が化学量論組成であるN/Si≒1.33となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。
【0069】
一方、形成する膜の組成比が化学量論組成とは異なる所定の組成比となるようにすることを目的として、供給条件を制御することも可能である。すなわち、形成する膜を構成する複数の元素のうち少なくとも一つの元素が他の元素よりも化学量論組成に対し過剰となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。このように形成する膜を構成する複数の元素の比率、すなわち、膜の組成比を制御しつつ成膜を行うことも可能である。以下では、ALD法により、異なる種類の元素を含む複数種類のガスを交互に供給して化学両論組成を有する膜を形成するシーケンス例について説明する。
【0070】
ここでは第1の元素をシリコン(Si)、第2の元素を酸素(O)とし、第1の元素を含む原料としてシリコン含有原料であって液体原料のHMDSを気化したHMDSガスを、第2の元素を含む反応ガスとして酸素含有ガスであるO2ガスを用い、基板上に絶縁膜としてシリコン酸化膜を形成する例について図8及び図9を参照して説明する。図8は、本実施形態におけるプロセスを説明するフローチャートであり、図9は本実施形態におけるシリコン酸化膜の成膜シーケンスを示す図である。尚、この例では、原料供給系によりシリコン含有原料供給系(第1の元素含有ガス供給系)が構成され、反応ガス供給系により酸素含有ガス供給系(第2の元素含有ガス供給系)が構成される。
【0071】
まず、複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図2に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0072】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ244が、フィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構267により、ボート217が回転されることで、ウエハ200が回転される。次に、HMDSガスとO2ガスを処理室202内に供給することによりシリコン酸化膜を成膜する成膜工程を行う。成膜工程では次の4つのステップを順次実行する。
【0073】
<ステップ11>
ステップ11では、まずHMDSガスを流す(第1の工程)。原料供給管232aのバルブ543、バルブ243aを開き、液体原料を液体マスフローコントローラ241aで流量を制御しながら気化器500に供給し気化する。流量調整されたHMDSガスは第1のノズル249aのガス供給孔250aから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。このとき、同時にバルブ243cを開き、不活性ガス供給管232c内にN2ガス等の不活性ガスを流す。不活性ガス供給管232c内を流れたN2ガスは、マスフローコントローラ241cにより流量調整される。流量調整されたN2ガスはHMDSガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0074】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば1〜1×105Paの範囲内の圧力であって、例えば1000Paとする。液体マスフローコントローラ241aで制御するHMDS液体原料の供給流量は、例えば0.1〜5g/minの範囲内の流量であって、例えば0.5g/minとする。HMDSガスをウエハ200に晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.1〜100秒間の範囲内の時間であって、例えば5秒とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、200℃以下、より好ましくは120℃以下の温度であって例えば100℃となるような温度に設定する。
【0075】
HMDSガスの供給により、ウエハ200表面の下地膜上にHMDSが化学吸着する。なお、シリコンは、それ単独で固体となる元素である。ここでシリコン層とはシリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層やこれらが重なってできる薄膜をも含む。なお、シリコンにより構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、HMDSの化学吸着層とはHMDS分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ13での酸化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなることもある。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。
【0076】
<ステップ12>
ステップ12(第2の工程)では、シリコン含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、HMDSガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は全開として、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHMDSガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243cは全開として、N2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHMDSガスを処理室201内から排除する効果を高める。不活性ガスとしては、N2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0077】
<ステップ13>
ステップ13では、処理室201内の残留ガスを除去した後、反応ガス供給管232bのバルブ243bを開き、反応ガス供給管232b内にO2ガスを流す(第3の工程)。反応ガス供給管232b内を流れたO2ガスは、マスフローコントローラ241bにより流量調整される。流量調整されたO2ガスは第2のノズル249bのガス供給孔250bからバッファ室237内に供給される。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたO2ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔250cから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時同時にバルブ243dを開き、不活性ガス供給管232d内にN2ガスを流す。N2ガスはO2ガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0078】
O2ガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば0.1〜100Paの範囲内の圧力であって、例えば40Paとする。マスフローコントローラ241bで制御するO2ガスの供給流量は、例えば100〜10,000sccmの範囲内の流量であって、例えば1,000sccmとする。O2ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.1〜100秒間の範囲内の時間であって、例えば5秒とする。このときヒータ207の温度は、ステップ11と同様、ウエハ200の温度が、200℃以下、より好ましくは120℃以下の温度であって例えば100℃となるような温度に設定する。なお、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば100〜3,000Wの範囲内の電力であって、例えば500Wとなるよう設定する。O2ガスは反応温度が高く、上記のようなウエハ温度、処理室内圧力では反応しづらいので、プラズマ励起することにより活性種としてから流すようにしており、このためウエハ200の温度は上述のように設定した低い温度範囲とすることが可能となる。ただし、温度変更には時間がかかるためHMDSガスを供給する際の温度と同一とすると好ましい。
【0079】
このとき、処理室201内に流しているガスはO2ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種(O2プラズマ)であり、処理室201内にはHMDSガスは流していない。したがって、O2ガスは気相反応を起こすことはなく、活性種となった、もしくは活性化されたO2ガスは、ステップ11でウエハ200上に形成された第1の層としてのシリコン含有層と反応する。これによりシリコン含有層は酸化されて、シリコン(第1の元素)及び酸素(第2の元素)を含む第2の層、すなわち、シリコン酸化層(SiO層)へと改質される。
【0080】
<ステップ14>
ステップ14(第4の工程)では、反応ガス供給管232bのバルブ243bを閉じて、O2ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のO2ガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243dは開いたままとして、N2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは酸化に寄与した後のO2ガスを処理室201内から排除する効果を高める。
【0081】
酸素含有ガスとしては、O2ガスをプラズマで励起したガス以外に、酸素原子を含む他のガスをプラズマで励起したガスを用いてもよく、これらのガスをArガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスで希釈したガスをプラズマで励起して用いてもよい。
【0082】
上述したステップ11〜14を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、第1レジストパターン603a及びハードマスク601上に、第1レジスト保護膜として、所定膜厚のシリコン(第1の元素)および酸素(第2の元素)を含むシリコン酸化膜604が形成される(図8c)。
【0083】
所定膜厚のシリコン酸化膜を形成する成膜処理がなされると、N2ガス等の不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる(ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0084】
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済ウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。これにより1回の成膜処理(バッチ処理)が終了する。
【0085】
なお、シリコン酸化膜604の膜厚として、リソグラフィの限界解像性であるハーフピッチ(Hp)の5%程度が第1レジスト保護膜として必要である。従って、例えばHp30nmに対して、5−25Åの膜厚があればよく、好適には15Åである。また、マスクパターンを形成する際は、Hpの1/2程度の膜厚が必要なため、Hp30nmの場合は、150〜300Åの膜厚があればよく、150Åが好適である。
【0086】
<第2レジストパターン形成工程>
第2レジストパターン形成工程では、第1レジスト保護膜形成工程にて第1レジスト上に形成されたシリコン酸化膜604上であって、第1レジストパターン603aが形成される位置とは異なる位置に、第2レジストパターン603bを形成する。
本工程では、第1レジストパターン形成工程と同様の処理を行う。
最初に、第1レジストの保護膜であるシリコン酸化膜604上に、第2レジスト溶剤602bを塗布する(図8d)。次に、ベーキング、ArFエキシマ光源(193nm)やKrFエキシマ光源(248nm)等による露光、現像等を行うことで、第2レジストパターン603bを形成する(図8e)。
【0087】
上記のように、第1レジストパターン形成工程、シリコン酸化膜形成工程、第2レジストパターン形成工程を実施することにより、微細なレジストパターンを形成することが出来る。
【0088】
尚、上記では、第1レジストパターン603aはウエハ200上に形成されたハードマスク601上に形成することとしているが、ハードマスク601は無くても良い。また、レジストの代わりにACLを用いても良い。ACLを用いる場合は、ACLを保護するためのシリコン酸化膜を形成する際の処理温度はレジストより高い温度であってもよく、200℃以下であればよい。
【0089】
また、第2レジストパターン形成後であって、所定の処理(例えば寸法検査、あわせ検査、リワーク処理等)を実施した後、必要に応じてシリコン酸化膜604を除去するために、次のような第1レジスト保護膜)除去工程を実施しても良い。
【0090】
<第1レジスト保護膜除去工程>
第1レジスト保護膜除去工程では、第1レジスト保護膜形成工程にて形成された第1レジスト保護膜としてのシリコン酸化膜604を除去する。
【0091】
除去方式には、ウエットエッチング方式とドライエッチング方式の2つがある。ウエットエッチングによりシリコン酸化膜604を除去する場合のエッチング液としては、例えば弗化水素酸(HF)液であって、希薄なHF水溶液等が挙げられる。また、ドライエッチング方式によりシリコン酸化膜604を除去する場合には、例えば、酸素プラズマ等を用いることができる。
【0092】
また、上記では、レジストパターンを2回形成する工程について説明したが、レジストパターンは3回以上形成してもよく、その場合は、レジストパターン形成工程とシリコン酸化膜形成工程を所定回数繰り返して行う。
【0093】
またレジストパターンを3回以上形成する場合、必要に応じて、第1レジストパターン形成工程→第1レジスト保護膜(第1シリコン酸化膜)形成工程→第2レジストパターン形成工程→第1レジスト保護膜(第1シリコン酸化膜)除去→第3レジストパターン形成工程→第2レジスト保護膜(第2シリコン酸化膜)形成工程→第4レジストパターン形成工程→第2レジスト保護膜(第2シリコン酸化膜)除去→第5レジストパターン形成工程→・・・というように、保護膜であるシリコン酸化膜を1回ずつ除去しても良い。
【0094】
なお、上述では、シリコン層を酸化するための反応ガスとしてO2ガス等の酸素含有ガスをプラズマ励起して用いる例について説明したが、低温処理が可能であればプラズマ励起を必要としないガスを用いてもよく、例えばO3(オゾン)ガスを用いても良い。O3ガスを用いる場合は、反応ガス供給管232bにO3発生装置であるオゾナイザ(図示せず)を設ける。また、O3ガスを用いる場合は、バッファ室237およびプラズマを発生させるための各機構は不要であり、O3ガスを処理室201内へ供給するための第2のノズル249bは、第1のノズル249aと同様に、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられる。
【0095】
(2)第2の実施形態
本実施形態では、第1の実施形態とは一部が異なる処理炉構造を有し、酸素含有ガスをプラズマ励起するためのプラズマ発生機構として、サセプタ電極を使用する。以下に、図11を用いて説明する。図1、図2および図3と同じ部材は、同一番号で示している。第1の実施形態と同じ点については詳細な説明は省略する。なお、本実施形態により発生したプラズマをダイレクトプラズマと呼ぶことがある。
【0096】
図11は複数の基板200を一括処理する装置の断面図であって、一部の部品を省略して示している。処理室201の内部には、図示しない石英などから成るボートに複数のウエハ200が等間隔で積載されている。また、処理室201の内部には、導電性材料で構成されたサセプタ電極23とサセプタ電極24が交互に対向した状態で多段に重なるようにそれぞれ導電性の電極支柱3と電極支柱4に取り付けられており、この2本の電極支柱は絶縁部材で構成された電極支柱受け18に固定され、さらに電極支柱受け18は回転テーブル13に固定されている。回転テーブル13は回転軸255で回転可能に支持され、さらに回転軸255は磁気シール26で回転可能に気密を保持しながら図示しない回転駆動部に連結されている。
【0097】
反応管203を支持するインレットフランジ20には第1のノズル249aおよび第2のノズル249bが接続されている。処理室201は排気管231を介してポンプ246に接続され、処理室201の内部のガスを排気できる構造となっている。インレットフランジ20には絶縁可動シール部8を介して一対の高周波電力供給用フィードスルー9が設けてあり、該高周波電力供給フィードスルー9が処理室201側に移動することにより電極支柱3、電極支柱4に接触し、高周波電源11の出力する高周波電力を整合器12、絶縁トランス36を介して供給できる構造となっている。処理室201内のサセプタ電極23とサセプタ電極24には交互に180度位相が異なる高周波電力が印加され、第2のノズル249bを介して処理ガスをウエハ200に吹き付けるように供給してプラズマ励起し、サセプタ電極23及びサセプタ電極24に載置されたウエハ200を処理する構造となっている。また、図示しないコントローラ121は、上述の構成部品に接続されており、各動作を制御する。
【0098】
次に、本装置の動作を説明する。複数枚のウエハ200がサセプタ電極23、24に載置されてボート217に装填(ウエハチャージ)されると、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0099】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ244が、フィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、図示しない温度センサが検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構(図示しない)により、ボート217が回転されることで、ウエハ200が回転される。
【0100】
次に、HMDSガスとO2ガスを処理室202内に供給することによりシリコン酸化膜を成膜する成膜工程を行う。成膜工程では次の4つのステップを順次実行する。O2ガスをプラズマ励起するためのプラズマ発生機構が異なる点以外は、第1の実施形態と同じであり、詳細は省略する。
<ステップ11’>
ステップ11’では、まずHMDSガスを処理室201内に供給する(第1’の工程)。
【0101】
<ステップ12’>
ステップ12’(第2’の工程)では、HMDSガスの供給を停止して、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHMDSガスを処理室201内から排除する。
【0102】
<ステップ13’>
ステップ13では、処理室201内の残留ガスを除去した後、反応ガス供給管232bのバルブ(図示せず)を開き、反応ガス供給管232b内にO2ガスを流す(第3’の工程)。反応ガス供給管232b内を流れたO2ガスは、マスフローコントローラ(図示せず)により流量調整される。流量調整されたO2ガスは第2のノズル249bのガス供給孔27から処理室201内に載置されたウエハ200に供給される。処理室201圧力が所定の圧力になったら、高周波電力供給フィードスルー9を処理室201側に移動して電極支柱3、4と接触させた後、発振器11の出力する高周波電力を整合器12、絶縁トランス36を介して供給し、サセプタ電極23とサセプタ電極24の間にプラズマを生成する。電極支柱3、4に供給する高周波電力の周波数は13.56MHzの高周波や400KHz程度の低周波が好適に利用される。ただし、高周波電力の周波数が低い場合、ウエハ200の表面においてスパッタリングの影響が大きくなる為、13.56MHzの方がより利用しやすい。なお、プラズマの生成を短時間行い、フィードスルー9を電極支柱3、4から引き離した後、回転テーブル13を回転させ第2のノズル249bから供給されるO2ガスとウエハ200の位置を逐次変えながら処理するとより均一に処理を行うことができる。
【0103】
<ステップ14’>
ステップ14’(第4’の工程)では、O2ガスの供給を停止して、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン酸化膜形成に寄与した後のO2ガスを処理室201内から排除する。
【0104】
上述したステップ11’〜14’を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、シリコン酸化膜604が形成される(図8c)。
【0105】
所定膜厚のシリコン酸化膜を形成する成膜処理がなされると、N2ガス等の不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる(ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0106】
その後、図示しないボートエレベータによりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済ウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。これにより1回の成膜処理(バッチ処理)が終了する。
【0107】
ここで、図12〜10を用いて、従来技術および本発明によりALD法で成膜したシリコン酸化膜の膜質をSIMS(Secondary Ion−microprobe Mass Spectrometry、二次イオン質量分析法)で分析した結果を考察する。図12がHCDガス、H2Oおよび触媒を用いた場合であり、図13がHMDSガスおよびリモートプラズマにより活性化されたO2ガスを用いた場合であり、図14がHMDSガスおよびダイレクトプラズマにより活性化されたO2ガスを用いた場合のシリコン酸化膜の分析結果の一例である。
【0108】
図12では、シリコン酸化膜中の不純物の密度は、水素(Hydrogen)が5X1021[atoms/cm3]、窒素(Nitrogen)が1X1021[atoms/cm3]、炭素(Carbon)が3X1021[atoms/cm3]となっている。これに対して、図13では、シリコン酸化膜中の不純物の密度は、水素(Hydrogen)が4X1021[atoms/cm3]、窒素(Nitrogen)炭素(Carbon)は検出限界以下となっている。比率であらわすと、HCD、H2O、触媒を用いる方法に対して、HMDSガスとリモートプラズマにより活性化されたO2ガスを用いる方法では、水素は同等、窒素と炭素は1/100以下となっており、第1の実施形態にかかる本発明を用いた場合には、不純物が非常に少ないシリコン酸化膜を形成することができることがわかる。また、図14では、シリコン酸化膜中の不純物の密度は、水素(Hydrogen)が2X1021[atoms/cm3]、窒素(Nitrogen)が6X1020[atoms/cm3]、炭素(Carbon)は検出限界以下となっている。比率であらわすと、HCD、H2O、触媒を用いる方法に対して、HMDSガスとダイレクトプラズマにより活性化されたO2ガスを用いる方法では、水素が2/5、窒素が1/10、炭素が1/100以下となっており、第1の実施形態にかかる本発明を使用した場合と同様に第2の実施形態にかかる本発明を用いた場合には、不純物が非常に少ないシリコン酸化膜を形成することができることがわかる。
【0109】
実際の成膜結果からHMDSガスを用いる方がHCDガスを用いてシリコン酸化膜を形成する場合よりも不純物が少なくなり、より良質な膜を得ることができることが判った。また、HMDSはレジストを塗布するときの界面活性剤等として工業用として大量に使用されており、HCDよりも価格が低いため、HCDに換えてHMDSを用いて成膜することにより、コストを低減することが可能となる。
【0110】
また、図15は、従来技術および第1の実施形態、第2の実施形態にかかる本発明によりALD法で成膜したシリコン酸化膜のウェットエッチングレート比を示したものである。それぞれの膜を1%希フッ酸でウェットエッチングした結果を、同条件でウェットエッチングした熱酸化膜のエッチングレートを「1」としてその比率を比較している。従来技術であるHCD、水および触媒を用いて90℃でALD法にて成膜した酸化膜のウェットエッチングレートが21.3であるのに対して、第1の実施形態にかかる本発明であるHMDSと酸素リモートプラズマを用いて100℃でALD法にて成膜した酸化膜は11.0となっており、第2の実施形態にかかる本発明であるHMDSと酸素ダイレクトプラズマを用いて100℃でALD法にて成膜した酸化膜は3.4となっている。いずれも従来技術と比較してウェットエッチングレートが低くなっており、得られたシリコン酸化膜の膜質がより良好であることを示している。
【0111】
(3)第3の実施形態
上記の第1の実施形態および第2の実施形態では、基板処理装置としてバッチ式縦型装置を用いる例について記載したが、本実施形態では基板処理装置として枚葉装置を適用した場合について、図17を用いて説明する。第1の実施形態および第2の実施形態と同じ点については詳細な説明は省略する。また、シリコン酸化膜形成工程は、ステップ11〜ステップ14と同様に各ガスを処理室内に供給して行う。なお、本実施形態により発生したプラズマをダイレクトプラズマと呼ぶことがある。
【0112】
図17(a)は枚葉CVD装置の処理室の断面を示したもので、処理室30は処理室壁31で気密に構成され、処理室30の内部には導電性のシャワーヘッド32とサセプタ33が対向して設けられており、それぞれに高周波電源34の出力する高周波電力が整合器35および絶縁トランス36を経由して印加されるように構成されている。この構成では、高周波電力の周波数は13.56MHzに設定することが望ましい。シリコン含有原料であるHMDSガスはガス供給口37から供給され、O2ガスはガス供給口38から供給される。HMDSガスとO2ガスは交互に供給される。またそれぞれのガス供給口からN2ガスなどの不活性ガスも供給できるようになっている。
【0113】
図17(b)は、図17(a)と同様に枚葉CVD装置の処理室の断面を示したもので、処理室30は処理室壁31で気密に構成され、処理室30の内部には導電性のシャワーヘッド32とサセプタ33が対向して設けられている。処理室30の外部には誘電体製の放電管53が設けてあり、この放電管53の周囲に設けたコイル52に高周波電源50の出力する高周波電力が整合器51を経由して印加され放電管53内でプラズマ55を生成できるように構成されている。シリコン含有原料であるHMDSガスはガス供給口37から供給され、O2ガスはガス供給口54から供給される。HMDSガスとO2ガスは交互に供給される。ガス供給口54から供給されたO2ガスは放電管53内でプラズマ化され、O2活性種が処理室30に供給される。またそれぞれのガス供給口からN2ガスなどの不活性ガスも供給できるようになっている。
【0114】
(4)第1の実施例
次に第1の実施例について説明する。第1の元素をシリコン(Si)、第2の元素を酸素(O)とし、第1の元素を含む原料としてシリコン含有原料であって液体原料のHMDSを気化したHMDSガスを、第2の元素を含む反応ガスとして酸素含有ガスであるO2ガスを用い、基板に設けられた幅250nm、アスペクト比11の溝にシリコン酸化膜を形成し、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により被覆性(ステップカバレッジ)を評価した。その結果を図16に示す。図16(a)はリモートプラズマにてO2ガスを活性化させた場合であり、図16(b)はイオンスパッタリングを伴うダイレクトプラズマにてO2ガスを活性化させた場合であり、図16(c)はイオンスパッタリングを伴わないダイレクトプラズマにてO2ガスを活性化させた場合に得られたシリコン酸化膜によるものである。ダイレクトプラズマによる評価では、並行平板型電極を有するプラズマ成膜装置を使用し、400kHzの低周波電力を電極間に印加することで生成されたプラズマにより活性化されたO2ガスを用いる。なお、シリコン酸化膜を形成したときの処理条件は次のように設定した。
【0115】
(ステップ11)
処理室内の温度:100℃
処理室内の圧力:900Pa
HMDSガスの供給流量:0.1g/min
HMDSガスの供給時間:1秒
(ステップ12)
ガスの除去時間:2秒
(ステップ13)
処理室内の温度:100℃
処理室内の圧力:40Pa
O2ガスの供給流量:0.2slm
RF電力:150W
放電時間:5秒
(ステップ14)
ガスの除去時間2秒
【0116】
図16(a)より、リモートプラズマで酸化した場合は、溝の上部や中部もほぼ同じ膜厚で膜が形成されており、被覆性が良いことがわかる。一方、イオンスパッタリングを伴うダイレクトプラズマで酸化した場合は、被成膜表面に形成された溝の断面の過度の部分がエッチングされ、図16(b)のように成膜形状がテーパ状になってしまい、さらに溝の内部において膜厚が薄くなってしまい、リモートプラズマによる酸化の場合と比較して被覆性が悪いことがわかる。また、イオンスパッタリングを伴わないダイレクトプラズマで酸化した場合は、図16(c)のように溝の上部のプラズマに曝される部分の膜厚が薄くなり、溝の内部の底に近い部分の膜厚画厚くなってしまい、リモートプラズマによる酸化の場合と比較して被覆性が悪いことがわかる。これらの結果から、処理室内の温度を100℃とした場合では、酸化方法としてリモートプラズマにより活性化されたO2ガスを用いる場合に最も膜の被覆性が良くなることがわかった。したがって、均一な線幅が要求されるDPTには、リモートプラズマを用いる方がより好ましい。
【0117】
(5)第2の実施例
次に第2の実施例について説明する。第1の元素をシリコン(Si)とし、第1の元素を含む原料としてシリコン含有原料であるHMDSおよびOMCTS(オクタメチルシクロテトラシロキサン:Si4C8H24O4)の2種類を用いて別々に成膜を行った。どちらの場合も、第2の元素は酸素(O)とし、第2の元素を含む反応ガスとして酸素含有ガスであるO2ガスをリモートプラズマにより活性化させて用い、基板上にシリコン酸化膜を形成して、1サイクルあたりの平均膜厚を測定した。シリコン酸化膜を形成したときの処理条件は、HMDSの場合もOMCTSの場合も同様の値を用い、次のように設定した。
(ステップ11)
処理室内の温度:100℃
処理室内の圧力:900Pa
HMDSガスもしくはOMCTSガスの供給流量:0.1g/min
HMDSガスもしくはOMCTSガスの供給時間:5秒
(ステップ12)
ガスの除去時間:5秒
(ステップ13)
処理室内の温度:100℃
処理室内の圧力:40Pa
O2ガスの供給流量0.2slm
O2ガスの供給時間:5秒
RF電力:150W
放電時間:5秒
(ステップ14)
ガスの除去時間:5秒
【0118】
ステップ11からステップ14を100サイクル繰り返して処理して得られた各シリコン酸化膜の膜厚を測定し、1サイクル当たりの平均の膜厚増加を求めた。その際、リモートプラズマによるシリコン表面の酸化の効果を排除するため、表面をあらかじめ酸化しておいたウエハを用いた。
【0119】
その結果、HMDSガスを用いた場合の1サイクル当たりの平均膜厚は、0.58Å/サイクルとなった。一方、OMCTSガスを用いた場合の1サイクル当たりの平均膜厚は、0.17Å/サイクルだった。OMCTSガスで1サイクル当たりの膜厚をHMDSガスを用いた場合と同等レベルとするためには、化学吸着を促進させるために少なくとも処理中の処理室内の温度を200℃にする必要がある。
【0120】
この結果から、処理温度が100℃の場合のALD法を用いたシリコン酸化膜形成プロセスでは、シリコン含有原料としてHMDSガスを用いる方がOMCTSガスを用いる場合と比較して成膜速度が速いことがわかった。
【0121】
さらに、HMDS原料の市場価格はOMCTS原料と比べて非常に安価な為、HMDSガスを用いることにより、コストを低減することが可能となる。
【0122】
上述のように、第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を成膜することにより、第1レジストパターンを保護することができ、第2レジスト溶剤を塗布する際に、第2レジスト溶剤が第1レジストパターンへ浸透することを防止できる。
【0123】
また、上記のように第2レジスト溶剤が第1レジストパターンへ浸透することを防止できるため、第1レジストパターンが形成されていない部分に第2レジストパターンを形成することができ、第1のレジストパターンと第2のレジストパターンとの最小間隔が50nm以下である微細なレジストパターンを形成することができる。
【0124】
さらに、第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を成膜することにより、第2レジストパターン形成工程において、第1レジストパターンの機械的強度を向上させることができる。
【0125】
さらに、第1レジスト保護膜として、200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下の極低温にて成膜することが可能な処理ガスによって成膜したシリコン酸化膜を適用することにより、レジストが変質する温度より低温でシリコン酸化膜を形成することができるため、シリコン酸化膜形成工程において第1レジストパターンの変質を防止することができる。
【0126】
さらに、シリコン含有原料としてHMDSガスを用いることにより、不純物の少ないシリコン酸化膜を形成することが可能となる。また、シリコン含有原料としてHMDSガスを用いることにより、ウェットエッチングレートの低いシリコン酸化膜を形成することが可能となる。また、シリコン含有原料としてHMDSガスを用いることにより、よりコストパフォーマンスを向上させることが可能となる。
【0127】
さらに、O2ガスをプラズマ励起するための機構としてリモートプラズマを用いることにより、ステップカバレッジを向上することが可能となる。
【0128】
さらに、HCDガス、H2Oガスおよび触媒を用いてシリコン酸化膜を形成する場合と比較して、ガス種が1種少ないため、触媒供給系が不要となり、装置構成を簡略化することが可能となる。
【0129】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0130】
(付記1)
本発明の一態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板にHMDSガスを曝すHMDSガス暴露工程と、
前記基板に酸素含有ガスを曝す酸素含有ガス暴露工程と、
を行うことにより、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法が提供される。
(付記2)
好ましくは、前記基板を200℃以下で加熱して前記シリコン酸化膜を形成する。
(付記3)
好ましくは、前記基板を100℃以下で加熱して前記シリコン酸化膜を形成する。
(付記4)
好ましくは、前記基板を前記レジスト層もしくは前記アモルファスカーボン層が変質する温度未満の温度に加熱して前記シリコン酸化膜を形成する。
(付記5)
好ましくは、前記酸素含有ガスは、O2ガスもしくはO3ガスである。
(付記6)
好ましくは、前記酸素含有ガスは、活性化されたO2ガスであって、より好ましくはプラズマにより励起されたO2ガスである。
(付記7)
好ましくは、前記O2ガスは、前記基板から離れた位置に設けられた一対の電極に電力が印加されることにより生成されたプラズマにより励起される。
(付記8)
好ましくは、前記O2ガスは、前記基板を挟むように且つ前記基板と接触しないように設けられた電極板に電力が印加されることにより生成されたプラズマにより励起される。
【0131】
(付記9)
本発明の他の態様によれば、基板上の一部の領域に第1レジストパターンを形成する第1レジストパターン形成工程と、
前記基板HMDSガスと酸素含有ガスを交互に曝して、前記第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を堆積するシリコン酸化膜形成工程と、
前記第1レジストパターンが形成されていない領域の一部に第2レジストパターンを形成する第3の工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。。
【0132】
(付記10)
本発明の他の態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板が内部に載置された処理室内に、HMDSガスを供給するHMDSガス供給工程と、
前記処理室内の雰囲気を排気する第1の排気工程と、
前記処理室内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給工程と、
前記処理室内の雰囲気を排気する第2の排気工程と、
を1サイクルとして複数サイクル繰り返すことにより、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法であって、
前記基板を200℃以下に加熱した状態で、前記サイクルを繰り返す半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0133】
(付記11)
本発明の他の態様によれば、付記1〜付記10に記載された半導体デバイスの製造方法によって製造された半導体デバイスが提供される。
【0134】
(付記12)
本発明の他の態様によれば、付記1〜付記10二記載された半導体デバイスの製造方法によって形成されたシリコン酸化膜が提供される。
【0135】
(付記13)
本発明の他の態様によれば、
基板上の一部の領域に第1レジストパターンを形成する第1レジストパターン形成工程と、
前記基板HMDSガスと酸素含有ガスを交互に曝して、前記第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を堆積するシリコン酸化膜形成工程と、
前記第1レジストパターンが形成されていない領域の一部に第2レジストパターンを形成する第3の工程と、
を有することを特徴とするレジストパターン形成方法が提供される。
【0136】
(付記14)
本発明の他の態様によれば、付記13に記載されたレジストパターン形成方法を用いて形成された前記第1レジストパターンおよび前記第2レジストパターンをマスクとしてエッチングを行って製造した半導体デバイスが提供される。
【0137】
(付記15)
本発明の他の態様によれば、付記13に記載されたレジストパターン形成方法を用いて形成された前記第1レジストパターンおよび前記第2レジストパターンの下層を加工して前記基板に処理を行って製造した半導体デバイスであって、前記シリコン酸化膜の少なくとも一部を排気して製造した半導体デバイスが提供される。
【0138】
(付記16)
本発明の他の態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板を収容する処理室と、
前記処理室にHMDSガスを供給する第1のガス供給系と、
前記処理室に酸素含有ガスを供給する第2のガス供給系と、
前記第1のガス供給系および第2のガス供給系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置であって、
前記制御部は、前記第1のガス供給系および前記第2のガス供給系を制御して、
前記処理室にHMDSガスと酸素含有ガスを供給することにより前記基板にHMDSガスと酸素含有ガスを曝して、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する基板処理装置が提供される。
(付記17)
好ましくは、さらに前記制御部により制御され、前記基板を加熱する加熱機構を有し、
前記制御部は前記加熱機構を制御して、前記基板を200℃以下に加熱した状態で少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する。
(付記18)
好ましくは、前記制御部は、前記基板を150℃以下に加熱した状態で少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する。
(付記19)
好ましくは、前記制御部は、前記基板を100℃以下に加熱した状態で少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する。
(付記20)
好ましくは、さらに前記制御部により制御され、電力が印加されることによりプラズマを発生させるプラズマ発生機構を有し、
前記制御部は、前記酸素含有ガスを供給する際は、前記プラズマ発生機構を制御してプラズマを発生させ、該プラズマにより前記酸素含有ガスを励起する。
(付記21)
好ましくは、前記プラズマ発生機構は、前記処理室内であって前記基板から離れた位置に設けられた一対の電極を有する。
(付記22)
好ましくは、前記プラズマ発生機構は、前記処理室内であって前記基板を挟むように且つ前記基板と接触しないように設けられた電極板を有する。
【0139】
(付記23)
本発明の他の態様によれば、
レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板を収容する処理室と、
前記基板を加熱機構と、
前記処理室にHMDSガスを供給する第1のガス供給系と、
前記処理室に酸素含有ガスを供給する第2のガス供給系と、
前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気系と、
前記第1のガス供給系、第2のガス供給系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置であって、
前記制御部は、前記加熱機構、前記第1のガス供給系、前記第2のガス供給系および前記排気系を制御して、
前記基板を200℃以下に加熱した状態で、前記処理室内に前記HMDSガスを供給して少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上に少なくともHMDSガスの一部を吸着させた後、残留するHMDSガスおよびHMDSガスの中間体を前記処理室から除去し、前記処理室内に前記酸素含有ガスを供給して少なくとも前記HMDSガスの一部に前記酸素含有ガスを反応させた後、残留する酸素含有ガスおよび酸素含有ガスの中間体を前記処理室から除去することにより、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0140】
101 基板処理装置
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
243e APCバルブ
246 真空ポンプ
280 コントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイスの製造方法、半導体デバイスおよび基板処理装置に関し、特に低温で処理を行なうために有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリ、DRAM(Dynamic Random Access
Memory)、SRAM(Static Random
Access Memory)等のメモリデバイスや、ロジックデバイス等の半導体デバイスは、近年、高集積化が求められているが、そのためにはパターンの微細化が必須である。狭い面積に多くのデバイスを集積させるためには、個別デバイスのサイズを小さく形成しなくてはならず、このためには、形成しようとするパターンの幅と間隔との和であるピッチを小さくしなければならない。しかし、必要なパターンを形成するためのリソグラフィ工程に解像限界があり、微細ピッチを有するパターンの形成に限界がある。
【0003】
近年、基板の上に微細なパターンを形成し、これをマスクとしてエッチングを行うことによって該パターンの下層を加工する技術(パターン形成技術)は、半導体産業のIC作成等に広く採用され、大きな注目を浴びている。そこで、新しく提案されているリソグラフィ技術の1つとして、パターニングを2回以上行ってレジストパターンを形成するダブルパターニング技術(DPT:Double Patterning Technology)の検討が進められている。基板に所望の膜を形成する場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類の原料等を、処理室内に載置された基板へ同時に供給するCVD(Chemical Vapor Deposition)法や、交互に供給するALD(Atomic Layer Deposition)法などを用いることができる。しかし、一般的な成膜方法では実用的な成長速度を得るためには700℃程度の高温環境で成膜を行う必要があるが、高温で処理を行うと、下地であるレジストやアモルファスカーボン(ACL:Amorphous Carbon Layer)が加熱により変質してしまう等の問題点があり、近年では処理温度の低温化が要求されている。このDPTによれば、1回のパターニングで形成されるパターンよりも微細なパターンが形成できるとされている。低温にてDPTプロセスを行う技術としては、特許文献1、特許文献2および特許文献3に示されるように、四塩化ケイ素(TCS:テトラクロロシラン(SiCl4))や六塩化二ケイ素(HCD:ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6))等のハロゲン系原料、酸化剤および触媒を使用して成膜を行う技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,090,442号公報
【特許文献2】特開2004−40110号公報
【特許文献3】特開2009−272558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DPTプロセスについて図18を用いて説明する。図18は、半導体デバイスを製造する際のリソグラフィ工程で、DPTを適用するデバイスのパターン表面の断面を拡大して示したものである。(a)はDPTプロセスの前に、エッチング対象膜901の上にACL902をリソグラフィ工程でパターニングしたもののパターン断面図である。(b)は(a)のパターン上に低温で酸化膜903を形成した後のパターン断面図である。(c)は酸化膜903をエッチングし、ACL902のパターンの側壁に形成した酸化膜903のみを残して他の箇所に形成された酸化膜903をエッチングした後のパターン断面図である。(d)は、その後露出したACL902を垂直方向に異方性エッチングし、ACL902の微細パターンを形成した状態の断面図である。
【0006】
図18(b)のようなパターン断面図を形成する場合の酸化膜903は、例えばALD法を用いてHCDと、H2Oおよび触媒を交互に供給して形成することができる。しかし、この場合、成膜した酸化膜の中に不純物が多く含まれたり、膜質を評価する目安となるウェットエッチングレート(WER)が大きくなってしまうという問題点があった。また、DPTプロセスでは、被処理基板の表面のレジストあるいはACLにダメージを与えないよう処理温度を200℃以下にする必要があるが、従来の技術では処理温度を400℃程度まで上げるか、成膜後に400℃程度でアニーリング(熱処理)しなければ良質な酸化膜が得られなかった。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、上記問題を解決し、レジスト層あるいはアモルファスカーボン層を表面に有する基板に、200℃以下の低温で良質の膜を形成する半導体デバイスの製造方法、その膜を備えた半導体デバイスおよび基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板にHMDSガスを曝すHMDSガス暴露工程と、基板に酸素含有ガスを曝す酸素含有ガス暴露工程と、を行うことにより、少なくともレジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、基板上の一部の領域に第1レジストパターンを形成する第1レジストパターン形成工程と、基板にHMDSガスと活性化した酸素含有ガスを交互に曝して、第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を堆積するシリコン酸化膜形成工程と、第1レジストパターンが形成されていない領域の一部に第2レジストパターンを形成する第3の工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板が内部に載置された処理室内に、HMDSガスを供給するHMDSガス供給工程と、処理室内の雰囲気を排気する第1の排気工程と、処理室内に活性化した酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給工程と、
処理室内の雰囲気を排気する第2の排気工程と、を1サイクルとして複数サイクル繰り返すことにより、少なくともレジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法であって、処理室内を200℃以下に加熱した状態で、サイクルを繰り返す半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板を収容する処理室と、処理室にHMDSガスを供給する第1のガス供給系と、処理室に酸素含有ガスを供給する第2のガス供給系と、第1のガス供給系および第2のガス供給系を制御する制御部と、を有する基板処理装置であって、制御部は、第1のガス供給系および第2のガス供給系を制御して、処理室にHMDSガスと酸素含有ガスを供給することにより基板にHMDSガスと酸素含有ガスを曝して、少なくともレジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS:(CH3)3SiNHSi(CH3)3)と酸素含有ガス(酸化ガス)を使用して酸化膜を形成することにより、基板の表面のレジストあるいはACLにダメージを与えることのない低い処理温度で、不純物が少なく、ウェットエッチングレートが低い膜をレジストあるいはACLの上に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にて好適に用いられる基板処理装置の概略的な構成を示す斜透視図である。
【図2】本発明の一実施形態にて好適に用いられる処理炉の一例とそれに付随する部材の概略構成図であって、特に処理炉部分を縦断面で示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にて好適に用いられる処理炉部分の横断面を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるリモートプラズマを説明する概略図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるプラズマ発生機構を説明する概略図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるガスの流れを説明する概略図である。
【図7】本発明の一実施形態における基板主面の向きと排気管の位置関係を説明する概略図である。
【図8】本発明の一実施形態において、基板にレジストパターンが形成される様子を概略的に示す模式図である。
【図9】第1の実施形態におけるプロセスを説明するフローチャートを示す図である。
【図10】第1の実施形態におけるシリコン酸化膜の成膜シーケンスを示す図である。
【図11】第2の実施形態にて好適に用いられる処理炉の一例とそれに付随する部材の概略構成図であって、特に処理炉部分を縦断面で示す図である。
【図12】従来技術を用いて成膜されたシリコン酸化膜のSIMS分析結果を示す図である。
【図13】第1の実施形態における成膜方法を用いて成膜されたシリコン酸化膜のSIMS分析結果を示す図である。
【図14】第2の実施形態における成膜方法を用いて成膜されたシリコン酸化膜のSIMS分析結果を示す図である。
【図15】従来技術および本発明によりALD法で成膜したシリコン酸化膜のウェットエッチングレートを示す図である。
【図16】本発明により得られたシリコン酸化膜の被覆性を評価した結果を示す図である。
【図17】第3の実施形態にて好適に用いられる基板処理装置の概略的な構成を示す断面図である。
【図18】半導体デバイスを製造する際のリソグラフィ工程で、DPTを適用するデバイスのパターン表面の断面を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)第1の実施形態
以下に、本発明の一実施形態である第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
[装置全体構成]
本発明を実施するための形態において、基板処理装置は、一例として、IC(Integrated Circuit)等半導体デバイスの製造方法における処理工程を実施する半導体製造装置として構成されている。なお、以下の説明では、基板処理装置として基板に対して酸化、拡散処理やCVD処理などを行うバッチ式縦型装置(以下、単に処理装置という場合もある)を用いた場合について述べる。図1は、本発明の一実施形態にて好適に用いられる基板処理装置の概略的な構成を示す斜透視図である。なお、本発明は、本実施形態にかかる基板処理装置に限らず、枚葉式、Hot Wall型、Cold Wall型の処理炉を有する基板処理装置にも適用できる。
【0016】
図1に示す通り、基板処理装置101では、基板の一例となるウエハ200を収納したカセット110が使用されており、ウエハ200はシリコン等の材料から構成されている。基板処理装置101は筐体111を備えており、筐体111の内部にはカセットステージ114が設置されている。カセット110はカセットステージ114上に工程内搬送装置(図示略)によって搬入されたり、カセットステージ114上から搬出されたりされる。
【0017】
カセットステージ114は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢を保持しかつカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に右回り縦方向90°回転し、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように動作可能となるよう構成されている。
【0018】
筐体111内の前後方向の略中央部にはカセット棚105が設置されており、カセット棚105は複数段複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105にはウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。
【0019】
カセットステージ114の上方には予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0020】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ118aと、搬送機構としてのカセット搬送機構118bとで構成されている。カセット搬送装置118はカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114とカセット棚105と予備カセット棚107との間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0021】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構125が設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ125bとで構成されている。ウエハ移載装置125aにはウエハ200をピックアップするためのツイーザ125cが設けられている。ウエハ移載装置125はウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作により、ツイーザ125cをウエハ200の載置部として、ウエハ200をボート217に対して装填(チャージング)したり、ボート217から脱装(ディスチャージング)したりするように構成されている。
【0022】
筐体111の後部上方には、ウエハ200を熱処理する処理炉202が設けられており、処理炉202の下端部が炉口シャッタ147により開閉されるように構成されている。
【0023】
処理炉202の下方には処理炉202に対しボート217を昇降させるボートエレベータ115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台にはアーム128が連結されており、アーム128にはシールキャップ219が水平に据え付けられている。シールキャップ219はボート217を垂直に支持するとともに、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0024】
ボート217は複数の保持部材を備えており、複数枚(例えば50〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0025】
カセット棚105の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するクリーン系134aが設置されている。クリーン系134aは供給ファンおよび防塵フィルタで構成されており、クリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0026】
筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するクリーン系134bが設置されている。クリーン系134bも供給ファンおよび防塵フィルタで構成されており、クリーンエアをウエハ移載装置125aやボート217等の近傍を流通させるように構成されている。当該クリーンエアは、ウエハ移載装置125aやボート217等の近傍を流通した後に、筐体111の外部に排気されるようになっている。
【0027】
続いて、基板処理装置101の主な動作について説明する。
【0028】
工程内搬送装置(図示略)によってカセット110がカセットステージ114上に搬入されると、カセット110は、ウエハ200がカセットステージ114の上で垂直姿勢を保持し、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように、筐体111の後方に右周り縦方向90°回転させられる。
【0029】
その後、カセット110は、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へカセット搬送装置118によって自動的に搬送され受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107からカセット搬送装置118によって移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0030】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200はカセット110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはカセット110に戻り、後続のウエハ110をボート217に装填する。
【0031】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、処理炉202の下端部を閉じていた炉口シャッタ147が開き、処理炉202の下端部が開放される。その後、ウエハ200群を保持したボート217がボートエレベータ115の上昇動作により処理炉202内に搬入(ローディング)され、処理炉202の下部がシールキャップ219により閉塞される。
【0032】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に対し任意の処理が実施される。その処理後は、上述の逆の手順で、ウエハ200およびカセット110が筐体111の外部に搬出される。
【0033】
[処理炉構成]
次に、処理炉の構成について説明する。図1は、本実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示し、図2は本実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を横断面で示す。
【0034】
図2は、本実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示し、図3は本実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を横断面で示す。
【0035】
図2に示されているように、処理炉202は、加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が設けられる。
【0036】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側にはボートを回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267の回転軸255はシールキャップを貫通して、後述するボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は反応管203の外部に設けられた昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0037】
シールキャップ219には断熱部材としての石英キャップ218を介して基板保持手段(支持具)としてのボート217が立設されている。石英キャップ218は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成され断熱部として機能すると共にボートを保持する保持体となっている。ボート217は例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成され、ボート217はボート支持台218に固定された底板210とその上方に配置された天板211とを有しており、底板210と天板211との間に複数本の支柱212が架設された構成を有している。また、ボート217は複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて管軸方向に多段に支持されるように構成されている。
【0038】
処理室201内であって反応管203の下部には、第1のノズル249aおよび第2のノズル249bが反応管203を貫通するように設けられている。第1のノズル249aには原料供給管232aが接続されている。また第2のノズル249bには反応ガス供給管232bが接続されている。このように反応管203には2本のノズル249aおよび249bと、2本の供給管である原料供給管232aおよび反応ガス供給管232bが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは少なくとも2種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0039】
原料供給管232aには上流方向から順に、開閉弁であるバルブ543、液体原料流量制御器である液体マスフローコントローラ(LMFC) 241a、気化器(気化装置)500、および開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、原料供給管232aには、バルブ243aの下流側に不活性ガス供給管232cが接続されている。この不活性ガス供給管232cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241c、および開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、原料供給管232aの先端部には、上述の第1のノズル249aが接続されている。第1のノズル249aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第1のノズル249aはL字型のロングのノズルとして構成されている。第1のノズル249aの側面にはガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、原料供給管232a、バルブ543、243a、液体マスフローコントローラ241a、気化器500、第1のノズル249aにより、原料を処理室201内へ供給する原料供給系(第1のガス供給系)が構成される。また、主に、不活性ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243cにより第1の不活性ガス供給系が構成される。
【0040】
反応ガス供給管232bには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、および開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、反応ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、不活性ガス供給管232dが接続されている。この不活性ガス供給管232dには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241d、および開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、反応ガス供給管232bの先端部には、上述の第2のノズル249bが接続されている。第2のノズル249bは、ガス分散空間(放電室、放電空間)であるバッファ室237内に設けられている。
【0041】
バッファ室は反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給するガス供給孔250cが設けられている。ガス供給孔250cは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0042】
第2のノズル249bは、バッファ室237のガス供給孔250cが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第2のノズル249bはL字型のロングのノズルとして構成されている。第2のノズル249bの側面にはガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bはバッファ室237の中心を向くように開口している。このガス供給孔250bは、バッファ室237のガス供給孔250cと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。この複数のガス供給孔250bのそれぞれの開口面積は、バッファ室237内とノズル249b内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0043】
本実施形態においては、第2のノズル249bのガス供給孔250bのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔250bのそれぞれから、流速の差はあるもの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこのガス供給孔250bのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内に導入し、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うこととした。
【0044】
すなわち、第2のノズル249bのガス供給孔250bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスはバッファ室237内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室237のガス供給孔250cより処理室201内に噴出する。これにより、第2のノズル249bのガス供給孔250bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、バッファ室237のガス供給孔250cのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0045】
主に、反応ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2のノズル249b、バッファ室237により、反応ガスを処理室201内に供給する反応ガス供給系(第2のガス供給系)が構成される。また、主に、不活性ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243dにより第2の不活性ガス供給系が構成される。
【0046】
原料供給管232aからは、例えば、シリコン原料、すなわち第1の元素としてシリコン(Si)を含む原料(シリコン含有原料)、バルブ543、液体マスフローコントローラ241a、気化器500、バルブ243a、第1のノズル249aを介して処理室201内に供給される。シリコン含有原料としては、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS:(CH3)3SiNHSi(CH3)3)等の液体原料を用いることができる。なお、シリコン含有原料は、常温常圧で固体、液体、および気体のいずれであっても良いが、ここでは液体として説明する。シリコン含有原料が常温常圧で気体の場合は気化器500を設ける必要はない。また、ここで、原料とは、基板等に形成される膜を構成し、基板等に化学吸着する元素を含む。
【0047】
反応ガス供給管232bからは、例えば酸素(O)を含む反応ガス(酸素含有ガス、酸化剤)が、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2のノズル249b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。酸素含有ガスとしては、例えばO2、O3等を用いることができる。ここで、反応ガスとは、基板等に形成される膜を構成し、基板等に吸着した原料もしくは原料の一部と反応するガスのことをいう。
【0048】
不活性ガス供給管232cおよび232dからは、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれマスフローコントローラ241cおよび241d、バルブ243cおよび243d、ガス供給管232aおよび232b、ノズル249a、249b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。
【0049】
なお、例えば各供給管から上述のような原料および反応ガスをそれぞれ流す場合、原料供給系によりシリコン含有原料供給系(シラン系ガス供給系、第1のガス供給系)が構成される。また、反応ガス供給系により酸素含有ガス供給系(第2のガス供給系)が構成される。
【0050】
バッファ室237内には、図2および図3に示すように、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269および第2の電極である第2の棒状電極270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。第1の棒状電極269および第2の棒状電極270のそれぞれは、第2のノズル249bと平行に設けられている。第1の棒状電極269および第2の棒状電極270のそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275により覆われることで保護されている。この第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、第1の棒状電極269および第2の棒状電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、第1の棒状電極269、第2の棒状電極270、電極保護管275、整合器272、高周波(RF:Radio Frequency)電源273によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。なお、プラズマ源は、後述するようにガスをプラズマで活性化させる活性化機構として機能する。
【0051】
電極保護管275は、第1の棒状電極269および第2の棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269および第2の棒状電極270はヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部には窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられている。これらの構成により、プラズマ発生機構が形成される。なお、本実施形態により発生したプラズマをリモートプラズマと呼ぶ。リモートプラズマとは電極間で生成したプラズマをガスの流れ等により被処理物面に輸送してプラズマ処理を行うものである。図3および図4を用いて以下に説明する。図4に、本発明の一実施形態におけるリモートプラズマを説明する概略図である。矢印Aはガスの流れを示す。本実施形態では、バッファ室237内に2本の棒状電極269および270が収容されているため、ウエハ200にダメージを与えるイオンがバッファ室外の処理室内に漏れにくい構造となっている。又、2本の棒状電極269および270を取り囲むように(つまり、2本の棒状電極269および270がそれぞれ収容される電極保護管275を取り囲むように)電場Eが発生し、プラズマBが生成される。処理室201内のウエハ200の外周からみれば、外周接線方向に電場Eが発生しているため、イオン(O+)はバッファ室237外に漏れたとしても電場Eの方向、つまりウエハ00の外周接線方向に移動し、ウエハ200の外周からウエハ200の中心に向かう方向には流れづらい構成となっている。その結果、バッファ室237のガス供給孔250cから酸素ラジカル(O*)がウエハ200の外周からウエハ200の中心方向に供給される。また、本実施形態のようにウエハ200を複数枚、主面を水平面に平行にしてスタック状に積み上げる縦型のバッチ装置であれば、反応管203の内壁面、つまり処理すべきウエハ200に近い位置にバッファ室237が配置されている結果、発生した酸素ラジカルが失活せずにウエハ200の表面に到達しやすいという効果がある。
【0052】
また、他の実施形態として図5に示すように、反応管の外にプラズマ発生機構を設ける例についても適用可能である。以下に説明する。反応管203の側壁を上下方向に沿って所定の幅で削りとることによって上下に細長く形成された開口731をその外側より覆うようにして反応管203の外壁に気密に溶接されたプラズマ区画壁732がある。プラズマ区画壁732は、断面凹部状をなし上下に細長く形成され、例えば石英で形成されている。また、このプラズマ区画壁732の両側壁の外面に上下方向に沿って互いに対向するようにして配置された細長い一対のプラズマ電極769および770と、このプラズマ電極769および770に高周波電力を供給する高周波電源773がある。これらのプラズマ区画壁732、一対のプラズマ電極769および770、高周波電源773により、供給されたガスのプラズマを生成するプラズマ発生機構が形成される。そして、上記プラズマ電極769および770に高周波電源773から例えば13.56MHzの高周波電圧を印加することにより酸素含有ガスのプラズマが発生し得る。なお、この高周波電圧の周波数は13.56MHzに限定されず、他の周波数、例えば400kHz等を用いてもよい。
【0053】
上記のようなプラズマ区画壁732を形成することにより、反応管203の側壁の一部が凹部状に外側へ窪ませた状態となり、プラズマ区画壁732の内部空間が反応管203の内部空間に一体的に連通された状態となる。また、開口731は、に保持されている全てのウエハ200を高さ方向においてカバーできるように上下方向に十分に長く形成されている。
【0054】
また、酸素含有ガスを処理室701内に供給する図示しないガス供給管に接続されたノズル749bは、反応管203内を上方向に延びていく途中で反応管203の半径方向外方へ屈曲されて、上記プラズマ区画壁732内の最も奥の部分(反応管203の中心から最も離れた部分)に沿って上方に向けて起立されている。このため、高周波電源773がオンされて両電極769および770間に電場が形成された際に、ノズル749bのガス供給孔250bから噴射された酸素含有ガスがプラズマ化されて処理室701の中心に向けて拡散しつつ流れる。上記プラズマ区画壁732の外側には、これを覆うようにして例えば石英よりなる絶縁保護カバー736が取り付けられている。また、この絶縁保護カバー736の内側部分には、図示しない冷媒通路が設けられており、例えば冷却されたN2ガスを流すことにより上記プラズマ電極769および770を冷却し得るようになっている。
【0055】
また、処理室701内には、2本のノズル749aが反応管203の内側壁の上記開口731を挟む位置に起立して設けられており、このノズル749aに形成された複数のガス供給口750a処理室701の中心方向に向けて原料ガス等を吐出し得るようになっている。一方、反応管203の開口731の反対側の部分には、反応管203内を真空排気するための排気口737が設けられている。この排気口737は反応管203の側壁を上下方向へ削りとることによって細長く形成されている。
【0056】
上記のような構成を備えたプラズマ生成機構であって、係るプラズマ発生機構と処理室701内を連通してラジカルを処理室701内に供給するようにしたプラズマ発生機構でも類似の効果が得られる。要は、ウエハ200にダメージを与えるイオンや電子が直接ウエハ200に触れる確率を減少するようにプラズマ発生機構と処理室との関係を、所謂、リモートの関係、離間した関係で定めれば良い。プラズマ発生機構と処理室との離間距離は、プラズマ発生機構で発生したラジカルが処理室内に到達するまでに失活せず、かつプラズマ発生機構で発生したイオンが処理室内のウエハ200にダメージを与えるほどには到達できない離間距離である。従って、この離間距離があれば、反応管の外側に反応管と連通するようにプラズマ発生機構を設け、ガスをその発生機構内に供給することによってリモートプラズマを発生され、連通部を経由して処理室内にリモートプラズマを供給するようにしても良い。
【0057】
反応管203には、水平方向の断面的に見た場合、第2のノズル249b、プラズマ発生機構を内部に含んだバッファ室237とは対抗する位置(バッファ室237から見た場合、処理室201の内周部の反対側であればよく、必ずしも180度反対側でなくてもよい)に処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。図6に示すように、この位置に排気管231を配置することにより供給されたガスやリモートプラズマ発生機構により発生したラジカルが、成膜すべきウエハ200の主面上を排気管231の方向に向かって横切るように水平方向に流れ、ウエハ200の主面の全面に均一にガスやラジカルが供給され、ウエハ200上に均一な厚さで成膜を行うことができる効果がある。また、排気管231が処理室201の下部に設置されていることにより、供給されたガスやラジカルが処理室201の下部にある排気管231に向かって流れ、成膜すべきウエハ200の主面を上に向けてスタックしている場合は、ウエハ200の主面に対してガスやラジカルがあたりやすく成膜効率が良いという効果がある。
【0058】
なお、図7に他の実施形態を説明する。反応管603内にボート617を収容し、ボート617に主面を下に向けたウエハ200をスタックし、ガス供給孔650aを介してノズル649aからウエハ200へガスを供給する。ここで、矢印はガスの流れを示す。このように、ウエハ200の主面を下に向けてスタックするような場合は、排気管631を反応管603の上部に設置しても同様の効果がある。
【0059】
また、排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ244は弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。主に、排気管231、APCバルブ244、真空ポンプ246、圧力センサ245により排気系が構成される。
【0060】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249bおよび249b、と同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0061】
制御部(制御手段)であるコントローラ121は、液体マスフローコントローラ241a、マスフローコントローラ241b、241c、241d、バルブ543、243a、243b、243c、243d、気化器500、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、ボート回転機構267、ボートエレベータ115、高周波電源273、整合器272等に接続されている。コントローラ121により、液体マスフローコントローラ241aによる液体原料の流量調整動作、マスフローコントローラ241b、241c、241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ543、243a、243b、243c、243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉および圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、気化器500の制御、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節動作、ボートエレベータ115の昇降動作等の制御や、高周波電源273の電力供給制御、整合器272によるプラズマ生成のための電力制御が行われる。
【0062】
[半導体デバイスの製造方法]
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いた半導体装置(デバイス)の製造工程の一例として、大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)を製造する際に、本発明を適用する例について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0063】
LSIは、シリコンウエハ上に処理を施すウエハプロセスを行なった後、組立工程、試験工程、信頼性試験工程を経て製造される。ウエハプロセスは、シリコンウエハに酸化、拡散などの加工を施す基板工程と、その表面に配線を形成する配線工程とに区分され、リソグラフィ工程を中心に洗浄、熱処理、膜形成などが反復して行なわれる。リソグラフィ工程では、レジストパターンを形成し、該パターンをマスクとしてエッチングを行なうことにより該パターンの下層を加工する。
【0064】
ここで、図8を参照しながら、ウエハ200上にレジストパターンを形成する処理シーケンスの一例について説明する。
【0065】
処理シーケンスでは、ウエハ200上に第1レジストパターン603aを形成する第1レジストパターン形成工程と、第1レジストパターン603a上に第1レジスト保護膜としてシリコン酸化膜604を形成するシリコン酸化膜形成工程と、シリコン酸化膜上に第2レジストパターン603bを形成する第2レジストパターン工程とを、この順に実施する。 以下、各工程について説明する。
【0066】
<第1レジストパターン形成工程>
第1レジストパターン形成工程では、ウエハ200上に形成されたハードマスク601上に第1レジストパターン603aを形成する。最初に、ウエハ200上に形成されたハードマスク601上に、第1レジスト溶剤602aを塗布する(図8a)。次に、ベーキング、ArFエキシマ光源(193nm)やKrFエキシマ光源(248nm)等の光源によるマスクパターン等を用いた選択的露光、現像等を行うことで、第1レジストパターン603aを形成する(図8b)。
【0067】
<シリコン酸化膜形成工程>
シリコン酸化膜形成工程では、第1レジストパターン形成工程にて形成された第1レジストパターン603a上及び第1レジストパターン603aが形成されていない部分に、薄膜を保護材として形成する。これにより、第1レジストパターン603aの形状変化や膜質変化を防止して後述の第2レジスト溶剤602bから保護する。以下では、基板処理装置101を使用して保護膜としてのシリコン酸化膜604を極低温にて成膜する例について説明する。
【0068】
従来のCVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法では、例えば、CVD法の場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガス等を同時に供給し、また、ALD法の場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガス等を交互に供給する。そして、供給時の供給流量、供給時間、プラズマパワーなどの処理条件を制御することによりシリコン酸化膜(SiO膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)を形成する。それらの技術では、例えばSiO膜を形成する場合、膜の組成比が化学量論組成であるO/Si≒2となるように、また例えばSiN膜を形成する場合、膜の組成比が化学量論組成であるN/Si≒1.33となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。
【0069】
一方、形成する膜の組成比が化学量論組成とは異なる所定の組成比となるようにすることを目的として、供給条件を制御することも可能である。すなわち、形成する膜を構成する複数の元素のうち少なくとも一つの元素が他の元素よりも化学量論組成に対し過剰となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。このように形成する膜を構成する複数の元素の比率、すなわち、膜の組成比を制御しつつ成膜を行うことも可能である。以下では、ALD法により、異なる種類の元素を含む複数種類のガスを交互に供給して化学両論組成を有する膜を形成するシーケンス例について説明する。
【0070】
ここでは第1の元素をシリコン(Si)、第2の元素を酸素(O)とし、第1の元素を含む原料としてシリコン含有原料であって液体原料のHMDSを気化したHMDSガスを、第2の元素を含む反応ガスとして酸素含有ガスであるO2ガスを用い、基板上に絶縁膜としてシリコン酸化膜を形成する例について図8及び図9を参照して説明する。図8は、本実施形態におけるプロセスを説明するフローチャートであり、図9は本実施形態におけるシリコン酸化膜の成膜シーケンスを示す図である。尚、この例では、原料供給系によりシリコン含有原料供給系(第1の元素含有ガス供給系)が構成され、反応ガス供給系により酸素含有ガス供給系(第2の元素含有ガス供給系)が構成される。
【0071】
まず、複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図2に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0072】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ244が、フィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構267により、ボート217が回転されることで、ウエハ200が回転される。次に、HMDSガスとO2ガスを処理室202内に供給することによりシリコン酸化膜を成膜する成膜工程を行う。成膜工程では次の4つのステップを順次実行する。
【0073】
<ステップ11>
ステップ11では、まずHMDSガスを流す(第1の工程)。原料供給管232aのバルブ543、バルブ243aを開き、液体原料を液体マスフローコントローラ241aで流量を制御しながら気化器500に供給し気化する。流量調整されたHMDSガスは第1のノズル249aのガス供給孔250aから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。このとき、同時にバルブ243cを開き、不活性ガス供給管232c内にN2ガス等の不活性ガスを流す。不活性ガス供給管232c内を流れたN2ガスは、マスフローコントローラ241cにより流量調整される。流量調整されたN2ガスはHMDSガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0074】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば1〜1×105Paの範囲内の圧力であって、例えば1000Paとする。液体マスフローコントローラ241aで制御するHMDS液体原料の供給流量は、例えば0.1〜5g/minの範囲内の流量であって、例えば0.5g/minとする。HMDSガスをウエハ200に晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.1〜100秒間の範囲内の時間であって、例えば5秒とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、200℃以下、より好ましくは120℃以下の温度であって例えば100℃となるような温度に設定する。
【0075】
HMDSガスの供給により、ウエハ200表面の下地膜上にHMDSが化学吸着する。なお、シリコンは、それ単独で固体となる元素である。ここでシリコン層とはシリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層やこれらが重なってできる薄膜をも含む。なお、シリコンにより構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、HMDSの化学吸着層とはHMDS分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ13での酸化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなることもある。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。
【0076】
<ステップ12>
ステップ12(第2の工程)では、シリコン含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、HMDSガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は全開として、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHMDSガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243cは全開として、N2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHMDSガスを処理室201内から排除する効果を高める。不活性ガスとしては、N2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0077】
<ステップ13>
ステップ13では、処理室201内の残留ガスを除去した後、反応ガス供給管232bのバルブ243bを開き、反応ガス供給管232b内にO2ガスを流す(第3の工程)。反応ガス供給管232b内を流れたO2ガスは、マスフローコントローラ241bにより流量調整される。流量調整されたO2ガスは第2のノズル249bのガス供給孔250bからバッファ室237内に供給される。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたO2ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔250cから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時同時にバルブ243dを開き、不活性ガス供給管232d内にN2ガスを流す。N2ガスはO2ガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0078】
O2ガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば0.1〜100Paの範囲内の圧力であって、例えば40Paとする。マスフローコントローラ241bで制御するO2ガスの供給流量は、例えば100〜10,000sccmの範囲内の流量であって、例えば1,000sccmとする。O2ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.1〜100秒間の範囲内の時間であって、例えば5秒とする。このときヒータ207の温度は、ステップ11と同様、ウエハ200の温度が、200℃以下、より好ましくは120℃以下の温度であって例えば100℃となるような温度に設定する。なお、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば100〜3,000Wの範囲内の電力であって、例えば500Wとなるよう設定する。O2ガスは反応温度が高く、上記のようなウエハ温度、処理室内圧力では反応しづらいので、プラズマ励起することにより活性種としてから流すようにしており、このためウエハ200の温度は上述のように設定した低い温度範囲とすることが可能となる。ただし、温度変更には時間がかかるためHMDSガスを供給する際の温度と同一とすると好ましい。
【0079】
このとき、処理室201内に流しているガスはO2ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種(O2プラズマ)であり、処理室201内にはHMDSガスは流していない。したがって、O2ガスは気相反応を起こすことはなく、活性種となった、もしくは活性化されたO2ガスは、ステップ11でウエハ200上に形成された第1の層としてのシリコン含有層と反応する。これによりシリコン含有層は酸化されて、シリコン(第1の元素)及び酸素(第2の元素)を含む第2の層、すなわち、シリコン酸化層(SiO層)へと改質される。
【0080】
<ステップ14>
ステップ14(第4の工程)では、反応ガス供給管232bのバルブ243bを閉じて、O2ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のO2ガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243dは開いたままとして、N2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは酸化に寄与した後のO2ガスを処理室201内から排除する効果を高める。
【0081】
酸素含有ガスとしては、O2ガスをプラズマで励起したガス以外に、酸素原子を含む他のガスをプラズマで励起したガスを用いてもよく、これらのガスをArガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスで希釈したガスをプラズマで励起して用いてもよい。
【0082】
上述したステップ11〜14を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、第1レジストパターン603a及びハードマスク601上に、第1レジスト保護膜として、所定膜厚のシリコン(第1の元素)および酸素(第2の元素)を含むシリコン酸化膜604が形成される(図8c)。
【0083】
所定膜厚のシリコン酸化膜を形成する成膜処理がなされると、N2ガス等の不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる(ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0084】
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済ウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。これにより1回の成膜処理(バッチ処理)が終了する。
【0085】
なお、シリコン酸化膜604の膜厚として、リソグラフィの限界解像性であるハーフピッチ(Hp)の5%程度が第1レジスト保護膜として必要である。従って、例えばHp30nmに対して、5−25Åの膜厚があればよく、好適には15Åである。また、マスクパターンを形成する際は、Hpの1/2程度の膜厚が必要なため、Hp30nmの場合は、150〜300Åの膜厚があればよく、150Åが好適である。
【0086】
<第2レジストパターン形成工程>
第2レジストパターン形成工程では、第1レジスト保護膜形成工程にて第1レジスト上に形成されたシリコン酸化膜604上であって、第1レジストパターン603aが形成される位置とは異なる位置に、第2レジストパターン603bを形成する。
本工程では、第1レジストパターン形成工程と同様の処理を行う。
最初に、第1レジストの保護膜であるシリコン酸化膜604上に、第2レジスト溶剤602bを塗布する(図8d)。次に、ベーキング、ArFエキシマ光源(193nm)やKrFエキシマ光源(248nm)等による露光、現像等を行うことで、第2レジストパターン603bを形成する(図8e)。
【0087】
上記のように、第1レジストパターン形成工程、シリコン酸化膜形成工程、第2レジストパターン形成工程を実施することにより、微細なレジストパターンを形成することが出来る。
【0088】
尚、上記では、第1レジストパターン603aはウエハ200上に形成されたハードマスク601上に形成することとしているが、ハードマスク601は無くても良い。また、レジストの代わりにACLを用いても良い。ACLを用いる場合は、ACLを保護するためのシリコン酸化膜を形成する際の処理温度はレジストより高い温度であってもよく、200℃以下であればよい。
【0089】
また、第2レジストパターン形成後であって、所定の処理(例えば寸法検査、あわせ検査、リワーク処理等)を実施した後、必要に応じてシリコン酸化膜604を除去するために、次のような第1レジスト保護膜)除去工程を実施しても良い。
【0090】
<第1レジスト保護膜除去工程>
第1レジスト保護膜除去工程では、第1レジスト保護膜形成工程にて形成された第1レジスト保護膜としてのシリコン酸化膜604を除去する。
【0091】
除去方式には、ウエットエッチング方式とドライエッチング方式の2つがある。ウエットエッチングによりシリコン酸化膜604を除去する場合のエッチング液としては、例えば弗化水素酸(HF)液であって、希薄なHF水溶液等が挙げられる。また、ドライエッチング方式によりシリコン酸化膜604を除去する場合には、例えば、酸素プラズマ等を用いることができる。
【0092】
また、上記では、レジストパターンを2回形成する工程について説明したが、レジストパターンは3回以上形成してもよく、その場合は、レジストパターン形成工程とシリコン酸化膜形成工程を所定回数繰り返して行う。
【0093】
またレジストパターンを3回以上形成する場合、必要に応じて、第1レジストパターン形成工程→第1レジスト保護膜(第1シリコン酸化膜)形成工程→第2レジストパターン形成工程→第1レジスト保護膜(第1シリコン酸化膜)除去→第3レジストパターン形成工程→第2レジスト保護膜(第2シリコン酸化膜)形成工程→第4レジストパターン形成工程→第2レジスト保護膜(第2シリコン酸化膜)除去→第5レジストパターン形成工程→・・・というように、保護膜であるシリコン酸化膜を1回ずつ除去しても良い。
【0094】
なお、上述では、シリコン層を酸化するための反応ガスとしてO2ガス等の酸素含有ガスをプラズマ励起して用いる例について説明したが、低温処理が可能であればプラズマ励起を必要としないガスを用いてもよく、例えばO3(オゾン)ガスを用いても良い。O3ガスを用いる場合は、反応ガス供給管232bにO3発生装置であるオゾナイザ(図示せず)を設ける。また、O3ガスを用いる場合は、バッファ室237およびプラズマを発生させるための各機構は不要であり、O3ガスを処理室201内へ供給するための第2のノズル249bは、第1のノズル249aと同様に、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられる。
【0095】
(2)第2の実施形態
本実施形態では、第1の実施形態とは一部が異なる処理炉構造を有し、酸素含有ガスをプラズマ励起するためのプラズマ発生機構として、サセプタ電極を使用する。以下に、図11を用いて説明する。図1、図2および図3と同じ部材は、同一番号で示している。第1の実施形態と同じ点については詳細な説明は省略する。なお、本実施形態により発生したプラズマをダイレクトプラズマと呼ぶことがある。
【0096】
図11は複数の基板200を一括処理する装置の断面図であって、一部の部品を省略して示している。処理室201の内部には、図示しない石英などから成るボートに複数のウエハ200が等間隔で積載されている。また、処理室201の内部には、導電性材料で構成されたサセプタ電極23とサセプタ電極24が交互に対向した状態で多段に重なるようにそれぞれ導電性の電極支柱3と電極支柱4に取り付けられており、この2本の電極支柱は絶縁部材で構成された電極支柱受け18に固定され、さらに電極支柱受け18は回転テーブル13に固定されている。回転テーブル13は回転軸255で回転可能に支持され、さらに回転軸255は磁気シール26で回転可能に気密を保持しながら図示しない回転駆動部に連結されている。
【0097】
反応管203を支持するインレットフランジ20には第1のノズル249aおよび第2のノズル249bが接続されている。処理室201は排気管231を介してポンプ246に接続され、処理室201の内部のガスを排気できる構造となっている。インレットフランジ20には絶縁可動シール部8を介して一対の高周波電力供給用フィードスルー9が設けてあり、該高周波電力供給フィードスルー9が処理室201側に移動することにより電極支柱3、電極支柱4に接触し、高周波電源11の出力する高周波電力を整合器12、絶縁トランス36を介して供給できる構造となっている。処理室201内のサセプタ電極23とサセプタ電極24には交互に180度位相が異なる高周波電力が印加され、第2のノズル249bを介して処理ガスをウエハ200に吹き付けるように供給してプラズマ励起し、サセプタ電極23及びサセプタ電極24に載置されたウエハ200を処理する構造となっている。また、図示しないコントローラ121は、上述の構成部品に接続されており、各動作を制御する。
【0098】
次に、本装置の動作を説明する。複数枚のウエハ200がサセプタ電極23、24に載置されてボート217に装填(ウエハチャージ)されると、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0099】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ244が、フィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、図示しない温度センサが検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構(図示しない)により、ボート217が回転されることで、ウエハ200が回転される。
【0100】
次に、HMDSガスとO2ガスを処理室202内に供給することによりシリコン酸化膜を成膜する成膜工程を行う。成膜工程では次の4つのステップを順次実行する。O2ガスをプラズマ励起するためのプラズマ発生機構が異なる点以外は、第1の実施形態と同じであり、詳細は省略する。
<ステップ11’>
ステップ11’では、まずHMDSガスを処理室201内に供給する(第1’の工程)。
【0101】
<ステップ12’>
ステップ12’(第2’の工程)では、HMDSガスの供給を停止して、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHMDSガスを処理室201内から排除する。
【0102】
<ステップ13’>
ステップ13では、処理室201内の残留ガスを除去した後、反応ガス供給管232bのバルブ(図示せず)を開き、反応ガス供給管232b内にO2ガスを流す(第3’の工程)。反応ガス供給管232b内を流れたO2ガスは、マスフローコントローラ(図示せず)により流量調整される。流量調整されたO2ガスは第2のノズル249bのガス供給孔27から処理室201内に載置されたウエハ200に供給される。処理室201圧力が所定の圧力になったら、高周波電力供給フィードスルー9を処理室201側に移動して電極支柱3、4と接触させた後、発振器11の出力する高周波電力を整合器12、絶縁トランス36を介して供給し、サセプタ電極23とサセプタ電極24の間にプラズマを生成する。電極支柱3、4に供給する高周波電力の周波数は13.56MHzの高周波や400KHz程度の低周波が好適に利用される。ただし、高周波電力の周波数が低い場合、ウエハ200の表面においてスパッタリングの影響が大きくなる為、13.56MHzの方がより利用しやすい。なお、プラズマの生成を短時間行い、フィードスルー9を電極支柱3、4から引き離した後、回転テーブル13を回転させ第2のノズル249bから供給されるO2ガスとウエハ200の位置を逐次変えながら処理するとより均一に処理を行うことができる。
【0103】
<ステップ14’>
ステップ14’(第4’の工程)では、O2ガスの供給を停止して、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン酸化膜形成に寄与した後のO2ガスを処理室201内から排除する。
【0104】
上述したステップ11’〜14’を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、シリコン酸化膜604が形成される(図8c)。
【0105】
所定膜厚のシリコン酸化膜を形成する成膜処理がなされると、N2ガス等の不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる(ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0106】
その後、図示しないボートエレベータによりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済ウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。これにより1回の成膜処理(バッチ処理)が終了する。
【0107】
ここで、図12〜10を用いて、従来技術および本発明によりALD法で成膜したシリコン酸化膜の膜質をSIMS(Secondary Ion−microprobe Mass Spectrometry、二次イオン質量分析法)で分析した結果を考察する。図12がHCDガス、H2Oおよび触媒を用いた場合であり、図13がHMDSガスおよびリモートプラズマにより活性化されたO2ガスを用いた場合であり、図14がHMDSガスおよびダイレクトプラズマにより活性化されたO2ガスを用いた場合のシリコン酸化膜の分析結果の一例である。
【0108】
図12では、シリコン酸化膜中の不純物の密度は、水素(Hydrogen)が5X1021[atoms/cm3]、窒素(Nitrogen)が1X1021[atoms/cm3]、炭素(Carbon)が3X1021[atoms/cm3]となっている。これに対して、図13では、シリコン酸化膜中の不純物の密度は、水素(Hydrogen)が4X1021[atoms/cm3]、窒素(Nitrogen)炭素(Carbon)は検出限界以下となっている。比率であらわすと、HCD、H2O、触媒を用いる方法に対して、HMDSガスとリモートプラズマにより活性化されたO2ガスを用いる方法では、水素は同等、窒素と炭素は1/100以下となっており、第1の実施形態にかかる本発明を用いた場合には、不純物が非常に少ないシリコン酸化膜を形成することができることがわかる。また、図14では、シリコン酸化膜中の不純物の密度は、水素(Hydrogen)が2X1021[atoms/cm3]、窒素(Nitrogen)が6X1020[atoms/cm3]、炭素(Carbon)は検出限界以下となっている。比率であらわすと、HCD、H2O、触媒を用いる方法に対して、HMDSガスとダイレクトプラズマにより活性化されたO2ガスを用いる方法では、水素が2/5、窒素が1/10、炭素が1/100以下となっており、第1の実施形態にかかる本発明を使用した場合と同様に第2の実施形態にかかる本発明を用いた場合には、不純物が非常に少ないシリコン酸化膜を形成することができることがわかる。
【0109】
実際の成膜結果からHMDSガスを用いる方がHCDガスを用いてシリコン酸化膜を形成する場合よりも不純物が少なくなり、より良質な膜を得ることができることが判った。また、HMDSはレジストを塗布するときの界面活性剤等として工業用として大量に使用されており、HCDよりも価格が低いため、HCDに換えてHMDSを用いて成膜することにより、コストを低減することが可能となる。
【0110】
また、図15は、従来技術および第1の実施形態、第2の実施形態にかかる本発明によりALD法で成膜したシリコン酸化膜のウェットエッチングレート比を示したものである。それぞれの膜を1%希フッ酸でウェットエッチングした結果を、同条件でウェットエッチングした熱酸化膜のエッチングレートを「1」としてその比率を比較している。従来技術であるHCD、水および触媒を用いて90℃でALD法にて成膜した酸化膜のウェットエッチングレートが21.3であるのに対して、第1の実施形態にかかる本発明であるHMDSと酸素リモートプラズマを用いて100℃でALD法にて成膜した酸化膜は11.0となっており、第2の実施形態にかかる本発明であるHMDSと酸素ダイレクトプラズマを用いて100℃でALD法にて成膜した酸化膜は3.4となっている。いずれも従来技術と比較してウェットエッチングレートが低くなっており、得られたシリコン酸化膜の膜質がより良好であることを示している。
【0111】
(3)第3の実施形態
上記の第1の実施形態および第2の実施形態では、基板処理装置としてバッチ式縦型装置を用いる例について記載したが、本実施形態では基板処理装置として枚葉装置を適用した場合について、図17を用いて説明する。第1の実施形態および第2の実施形態と同じ点については詳細な説明は省略する。また、シリコン酸化膜形成工程は、ステップ11〜ステップ14と同様に各ガスを処理室内に供給して行う。なお、本実施形態により発生したプラズマをダイレクトプラズマと呼ぶことがある。
【0112】
図17(a)は枚葉CVD装置の処理室の断面を示したもので、処理室30は処理室壁31で気密に構成され、処理室30の内部には導電性のシャワーヘッド32とサセプタ33が対向して設けられており、それぞれに高周波電源34の出力する高周波電力が整合器35および絶縁トランス36を経由して印加されるように構成されている。この構成では、高周波電力の周波数は13.56MHzに設定することが望ましい。シリコン含有原料であるHMDSガスはガス供給口37から供給され、O2ガスはガス供給口38から供給される。HMDSガスとO2ガスは交互に供給される。またそれぞれのガス供給口からN2ガスなどの不活性ガスも供給できるようになっている。
【0113】
図17(b)は、図17(a)と同様に枚葉CVD装置の処理室の断面を示したもので、処理室30は処理室壁31で気密に構成され、処理室30の内部には導電性のシャワーヘッド32とサセプタ33が対向して設けられている。処理室30の外部には誘電体製の放電管53が設けてあり、この放電管53の周囲に設けたコイル52に高周波電源50の出力する高周波電力が整合器51を経由して印加され放電管53内でプラズマ55を生成できるように構成されている。シリコン含有原料であるHMDSガスはガス供給口37から供給され、O2ガスはガス供給口54から供給される。HMDSガスとO2ガスは交互に供給される。ガス供給口54から供給されたO2ガスは放電管53内でプラズマ化され、O2活性種が処理室30に供給される。またそれぞれのガス供給口からN2ガスなどの不活性ガスも供給できるようになっている。
【0114】
(4)第1の実施例
次に第1の実施例について説明する。第1の元素をシリコン(Si)、第2の元素を酸素(O)とし、第1の元素を含む原料としてシリコン含有原料であって液体原料のHMDSを気化したHMDSガスを、第2の元素を含む反応ガスとして酸素含有ガスであるO2ガスを用い、基板に設けられた幅250nm、アスペクト比11の溝にシリコン酸化膜を形成し、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により被覆性(ステップカバレッジ)を評価した。その結果を図16に示す。図16(a)はリモートプラズマにてO2ガスを活性化させた場合であり、図16(b)はイオンスパッタリングを伴うダイレクトプラズマにてO2ガスを活性化させた場合であり、図16(c)はイオンスパッタリングを伴わないダイレクトプラズマにてO2ガスを活性化させた場合に得られたシリコン酸化膜によるものである。ダイレクトプラズマによる評価では、並行平板型電極を有するプラズマ成膜装置を使用し、400kHzの低周波電力を電極間に印加することで生成されたプラズマにより活性化されたO2ガスを用いる。なお、シリコン酸化膜を形成したときの処理条件は次のように設定した。
【0115】
(ステップ11)
処理室内の温度:100℃
処理室内の圧力:900Pa
HMDSガスの供給流量:0.1g/min
HMDSガスの供給時間:1秒
(ステップ12)
ガスの除去時間:2秒
(ステップ13)
処理室内の温度:100℃
処理室内の圧力:40Pa
O2ガスの供給流量:0.2slm
RF電力:150W
放電時間:5秒
(ステップ14)
ガスの除去時間2秒
【0116】
図16(a)より、リモートプラズマで酸化した場合は、溝の上部や中部もほぼ同じ膜厚で膜が形成されており、被覆性が良いことがわかる。一方、イオンスパッタリングを伴うダイレクトプラズマで酸化した場合は、被成膜表面に形成された溝の断面の過度の部分がエッチングされ、図16(b)のように成膜形状がテーパ状になってしまい、さらに溝の内部において膜厚が薄くなってしまい、リモートプラズマによる酸化の場合と比較して被覆性が悪いことがわかる。また、イオンスパッタリングを伴わないダイレクトプラズマで酸化した場合は、図16(c)のように溝の上部のプラズマに曝される部分の膜厚が薄くなり、溝の内部の底に近い部分の膜厚画厚くなってしまい、リモートプラズマによる酸化の場合と比較して被覆性が悪いことがわかる。これらの結果から、処理室内の温度を100℃とした場合では、酸化方法としてリモートプラズマにより活性化されたO2ガスを用いる場合に最も膜の被覆性が良くなることがわかった。したがって、均一な線幅が要求されるDPTには、リモートプラズマを用いる方がより好ましい。
【0117】
(5)第2の実施例
次に第2の実施例について説明する。第1の元素をシリコン(Si)とし、第1の元素を含む原料としてシリコン含有原料であるHMDSおよびOMCTS(オクタメチルシクロテトラシロキサン:Si4C8H24O4)の2種類を用いて別々に成膜を行った。どちらの場合も、第2の元素は酸素(O)とし、第2の元素を含む反応ガスとして酸素含有ガスであるO2ガスをリモートプラズマにより活性化させて用い、基板上にシリコン酸化膜を形成して、1サイクルあたりの平均膜厚を測定した。シリコン酸化膜を形成したときの処理条件は、HMDSの場合もOMCTSの場合も同様の値を用い、次のように設定した。
(ステップ11)
処理室内の温度:100℃
処理室内の圧力:900Pa
HMDSガスもしくはOMCTSガスの供給流量:0.1g/min
HMDSガスもしくはOMCTSガスの供給時間:5秒
(ステップ12)
ガスの除去時間:5秒
(ステップ13)
処理室内の温度:100℃
処理室内の圧力:40Pa
O2ガスの供給流量0.2slm
O2ガスの供給時間:5秒
RF電力:150W
放電時間:5秒
(ステップ14)
ガスの除去時間:5秒
【0118】
ステップ11からステップ14を100サイクル繰り返して処理して得られた各シリコン酸化膜の膜厚を測定し、1サイクル当たりの平均の膜厚増加を求めた。その際、リモートプラズマによるシリコン表面の酸化の効果を排除するため、表面をあらかじめ酸化しておいたウエハを用いた。
【0119】
その結果、HMDSガスを用いた場合の1サイクル当たりの平均膜厚は、0.58Å/サイクルとなった。一方、OMCTSガスを用いた場合の1サイクル当たりの平均膜厚は、0.17Å/サイクルだった。OMCTSガスで1サイクル当たりの膜厚をHMDSガスを用いた場合と同等レベルとするためには、化学吸着を促進させるために少なくとも処理中の処理室内の温度を200℃にする必要がある。
【0120】
この結果から、処理温度が100℃の場合のALD法を用いたシリコン酸化膜形成プロセスでは、シリコン含有原料としてHMDSガスを用いる方がOMCTSガスを用いる場合と比較して成膜速度が速いことがわかった。
【0121】
さらに、HMDS原料の市場価格はOMCTS原料と比べて非常に安価な為、HMDSガスを用いることにより、コストを低減することが可能となる。
【0122】
上述のように、第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を成膜することにより、第1レジストパターンを保護することができ、第2レジスト溶剤を塗布する際に、第2レジスト溶剤が第1レジストパターンへ浸透することを防止できる。
【0123】
また、上記のように第2レジスト溶剤が第1レジストパターンへ浸透することを防止できるため、第1レジストパターンが形成されていない部分に第2レジストパターンを形成することができ、第1のレジストパターンと第2のレジストパターンとの最小間隔が50nm以下である微細なレジストパターンを形成することができる。
【0124】
さらに、第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を成膜することにより、第2レジストパターン形成工程において、第1レジストパターンの機械的強度を向上させることができる。
【0125】
さらに、第1レジスト保護膜として、200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下の極低温にて成膜することが可能な処理ガスによって成膜したシリコン酸化膜を適用することにより、レジストが変質する温度より低温でシリコン酸化膜を形成することができるため、シリコン酸化膜形成工程において第1レジストパターンの変質を防止することができる。
【0126】
さらに、シリコン含有原料としてHMDSガスを用いることにより、不純物の少ないシリコン酸化膜を形成することが可能となる。また、シリコン含有原料としてHMDSガスを用いることにより、ウェットエッチングレートの低いシリコン酸化膜を形成することが可能となる。また、シリコン含有原料としてHMDSガスを用いることにより、よりコストパフォーマンスを向上させることが可能となる。
【0127】
さらに、O2ガスをプラズマ励起するための機構としてリモートプラズマを用いることにより、ステップカバレッジを向上することが可能となる。
【0128】
さらに、HCDガス、H2Oガスおよび触媒を用いてシリコン酸化膜を形成する場合と比較して、ガス種が1種少ないため、触媒供給系が不要となり、装置構成を簡略化することが可能となる。
【0129】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0130】
(付記1)
本発明の一態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板にHMDSガスを曝すHMDSガス暴露工程と、
前記基板に酸素含有ガスを曝す酸素含有ガス暴露工程と、
を行うことにより、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法が提供される。
(付記2)
好ましくは、前記基板を200℃以下で加熱して前記シリコン酸化膜を形成する。
(付記3)
好ましくは、前記基板を100℃以下で加熱して前記シリコン酸化膜を形成する。
(付記4)
好ましくは、前記基板を前記レジスト層もしくは前記アモルファスカーボン層が変質する温度未満の温度に加熱して前記シリコン酸化膜を形成する。
(付記5)
好ましくは、前記酸素含有ガスは、O2ガスもしくはO3ガスである。
(付記6)
好ましくは、前記酸素含有ガスは、活性化されたO2ガスであって、より好ましくはプラズマにより励起されたO2ガスである。
(付記7)
好ましくは、前記O2ガスは、前記基板から離れた位置に設けられた一対の電極に電力が印加されることにより生成されたプラズマにより励起される。
(付記8)
好ましくは、前記O2ガスは、前記基板を挟むように且つ前記基板と接触しないように設けられた電極板に電力が印加されることにより生成されたプラズマにより励起される。
【0131】
(付記9)
本発明の他の態様によれば、基板上の一部の領域に第1レジストパターンを形成する第1レジストパターン形成工程と、
前記基板HMDSガスと酸素含有ガスを交互に曝して、前記第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を堆積するシリコン酸化膜形成工程と、
前記第1レジストパターンが形成されていない領域の一部に第2レジストパターンを形成する第3の工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。。
【0132】
(付記10)
本発明の他の態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板が内部に載置された処理室内に、HMDSガスを供給するHMDSガス供給工程と、
前記処理室内の雰囲気を排気する第1の排気工程と、
前記処理室内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給工程と、
前記処理室内の雰囲気を排気する第2の排気工程と、
を1サイクルとして複数サイクル繰り返すことにより、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法であって、
前記基板を200℃以下に加熱した状態で、前記サイクルを繰り返す半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0133】
(付記11)
本発明の他の態様によれば、付記1〜付記10に記載された半導体デバイスの製造方法によって製造された半導体デバイスが提供される。
【0134】
(付記12)
本発明の他の態様によれば、付記1〜付記10二記載された半導体デバイスの製造方法によって形成されたシリコン酸化膜が提供される。
【0135】
(付記13)
本発明の他の態様によれば、
基板上の一部の領域に第1レジストパターンを形成する第1レジストパターン形成工程と、
前記基板HMDSガスと酸素含有ガスを交互に曝して、前記第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を堆積するシリコン酸化膜形成工程と、
前記第1レジストパターンが形成されていない領域の一部に第2レジストパターンを形成する第3の工程と、
を有することを特徴とするレジストパターン形成方法が提供される。
【0136】
(付記14)
本発明の他の態様によれば、付記13に記載されたレジストパターン形成方法を用いて形成された前記第1レジストパターンおよび前記第2レジストパターンをマスクとしてエッチングを行って製造した半導体デバイスが提供される。
【0137】
(付記15)
本発明の他の態様によれば、付記13に記載されたレジストパターン形成方法を用いて形成された前記第1レジストパターンおよび前記第2レジストパターンの下層を加工して前記基板に処理を行って製造した半導体デバイスであって、前記シリコン酸化膜の少なくとも一部を排気して製造した半導体デバイスが提供される。
【0138】
(付記16)
本発明の他の態様によれば、レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板を収容する処理室と、
前記処理室にHMDSガスを供給する第1のガス供給系と、
前記処理室に酸素含有ガスを供給する第2のガス供給系と、
前記第1のガス供給系および第2のガス供給系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置であって、
前記制御部は、前記第1のガス供給系および前記第2のガス供給系を制御して、
前記処理室にHMDSガスと酸素含有ガスを供給することにより前記基板にHMDSガスと酸素含有ガスを曝して、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する基板処理装置が提供される。
(付記17)
好ましくは、さらに前記制御部により制御され、前記基板を加熱する加熱機構を有し、
前記制御部は前記加熱機構を制御して、前記基板を200℃以下に加熱した状態で少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する。
(付記18)
好ましくは、前記制御部は、前記基板を150℃以下に加熱した状態で少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する。
(付記19)
好ましくは、前記制御部は、前記基板を100℃以下に加熱した状態で少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する。
(付記20)
好ましくは、さらに前記制御部により制御され、電力が印加されることによりプラズマを発生させるプラズマ発生機構を有し、
前記制御部は、前記酸素含有ガスを供給する際は、前記プラズマ発生機構を制御してプラズマを発生させ、該プラズマにより前記酸素含有ガスを励起する。
(付記21)
好ましくは、前記プラズマ発生機構は、前記処理室内であって前記基板から離れた位置に設けられた一対の電極を有する。
(付記22)
好ましくは、前記プラズマ発生機構は、前記処理室内であって前記基板を挟むように且つ前記基板と接触しないように設けられた電極板を有する。
【0139】
(付記23)
本発明の他の態様によれば、
レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板を収容する処理室と、
前記基板を加熱機構と、
前記処理室にHMDSガスを供給する第1のガス供給系と、
前記処理室に酸素含有ガスを供給する第2のガス供給系と、
前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気系と、
前記第1のガス供給系、第2のガス供給系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置であって、
前記制御部は、前記加熱機構、前記第1のガス供給系、前記第2のガス供給系および前記排気系を制御して、
前記基板を200℃以下に加熱した状態で、前記処理室内に前記HMDSガスを供給して少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上に少なくともHMDSガスの一部を吸着させた後、残留するHMDSガスおよびHMDSガスの中間体を前記処理室から除去し、前記処理室内に前記酸素含有ガスを供給して少なくとも前記HMDSガスの一部に前記酸素含有ガスを反応させた後、残留する酸素含有ガスおよび酸素含有ガスの中間体を前記処理室から除去することにより、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0140】
101 基板処理装置
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
243e APCバルブ
246 真空ポンプ
280 コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板にHMDSガスを曝すHMDSガス暴露工程と、
前記基板に酸素含有ガスを曝す酸素含有ガス暴露工程と、
を行うことにより、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記酸素含有ガスは、活性化されたO2ガスである請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
基板上の一部の領域に第1レジストパターンを形成する第1レジストパターン形成工程と、
前記基板HMDSガスと酸素含有ガスを交互に曝して、前記第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を堆積するシリコン酸化膜形成工程と、
前記第1レジストパターンが形成されていない領域の一部に第2レジストパターンを形成する第3の工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板が内部に載置された処理室内に、HMDSガスを供給するHMDSガス供給工程と、
前記処理室内の雰囲気を排気する第1の排気工程と、
前記処理室内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給工程と、
前記処理室内の雰囲気を排気する第2の排気工程と、
を1サイクルとして複数サイクル繰り返すことにより、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法であって、
前記基板を200℃以下に加熱した状態で、前記サイクルを繰り返す半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板を収容する処理室と、
前記処理室にHMDSガスを供給する第1のガス供給系と、
前記処理室に酸素含有ガスを供給する第2のガス供給系と、
前記第1のガス供給系および第2のガス供給系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置であって、
前記制御部は、前記第1のガス供給系および前記第2のガス供給系を制御して、
前記処理室にHMDSガスと酸素含有ガスを供給することにより前記基板にHMDSガスと酸素含有ガスを曝して、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する基板処理装置。
【請求項1】
レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板にHMDSガスを曝すHMDSガス暴露工程と、
前記基板に酸素含有ガスを曝す酸素含有ガス暴露工程と、
を行うことにより、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記酸素含有ガスは、活性化されたO2ガスである請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
基板上の一部の領域に第1レジストパターンを形成する第1レジストパターン形成工程と、
前記基板HMDSガスと酸素含有ガスを交互に曝して、前記第1レジストパターンの表面にシリコン酸化膜を堆積するシリコン酸化膜形成工程と、
前記第1レジストパターンが形成されていない領域の一部に第2レジストパターンを形成する第3の工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板が内部に載置された処理室内に、HMDSガスを供給するHMDSガス供給工程と、
前記処理室内の雰囲気を排気する第1の排気工程と、
前記処理室内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給工程と、
前記処理室内の雰囲気を排気する第2の排気工程と、
を1サイクルとして複数サイクル繰り返すことにより、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する半導体デバイスの製造方法であって、
前記基板を200℃以下に加熱した状態で、前記サイクルを繰り返す半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
レジスト層もしくはアモルファスカーボン層を表面に有する基板を収容する処理室と、
前記処理室にHMDSガスを供給する第1のガス供給系と、
前記処理室に酸素含有ガスを供給する第2のガス供給系と、
前記第1のガス供給系および第2のガス供給系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置であって、
前記制御部は、前記第1のガス供給系および前記第2のガス供給系を制御して、
前記処理室にHMDSガスと酸素含有ガスを供給することにより前記基板にHMDSガスと酸素含有ガスを曝して、少なくとも前記レジスト層もしくはアモルファスカーボン層の上にシリコン酸化膜を形成する基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−176177(P2011−176177A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39844(P2010−39844)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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