説明

半導体デバイスの製造方法および半導体デバイスの成膜装置

【課題】半導体デバイスの膜の特性をインラインで測定して、定期的なモニタリング作業を不要にした半導体デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上に複数の膜を積層して成膜する。この基板1上に形成され上記基板1上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記複数の膜に、X線をマイクロ化されたスポット径で照射して、X線反射率測定によって、上記各膜の特性を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、蛍光X線膜厚測定法(XRF法)、X線反射率測定法(XRR法)やX線回折測定法(XRD法)のX線解析方法を利用した半導体デバイスの製造方法および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの製造工程において、品質管理上或いは研究開発上、各種蒸着法、メッキ等により基板上に形成された薄膜の膜厚を測定することが要求されている。膜厚測定方法としては、破壊式のもの、非破壊式のものがあり、非破壊式のものとしては、例えば、蛍光X線による方法、β線による方法、渦電流法等が知られている。
【0003】
非破壊式の膜厚測定方法として、蛍光X線による膜厚測定方法(XRF法)は、精度、操作の簡便性等の利点が多く、代表的なものとされている(例えば、特開平10−221047号公報:特許文献1参照)。
【0004】
この蛍光X線による方法は、金属の皮膜試料の一定面積にX線を照射し、発生する蛍光X線の強度が、金属の皮膜の厚さに比例することを原理とするもので、予め厚さが既知の標準膜厚板を用いて、厚みと蛍光X線の強度との関係を検量線として記憶しておき、未知の厚みの試料から得られる蛍光X線の強度と検量線とによって、膜厚測定するものであった。
【0005】
蛍光X線膜厚測定法は、膜厚範囲が数nmから数μmの範囲に有効であるが、標準薄膜が不要な方法として、X線を薄膜試料の一定面積にX線を照射し、X線の表面反射強度から簿膜の膜種区分、膜厚値等が測定できるX線反射率測定法(XRR法)が知られている。
【0006】
更に、X線を皮膜試料の一定面積にX線を照射し、当物質の原子の配列により生ずるX線回折光を利用して、対象物質の結晶性、面指数等を読み取ることができるX線回折測定法(XRD法)も多用されている。
【0007】
蛍光X線膜厚測定法(XRF法)、X線反射率測定法(XRR法)およびX線回折測定法(XRD法)の3種の方法での薄膜分析は、装置が各々別々に区分けされており、同じサンプルで膜種区分、膜質、膜厚、結晶性といった膜特性の分析および解析をするには、解析側として大きな手間がかかる。また、これら測定方法に応じて、膜種、測定膜厚範囲に制限区分があり、このことも測定値の信頼性を揺るがす結果となってきた。
【0008】
これら測定法については、主に半導体デバイスなどの製造工程で用いられる成膜装置やデバイスの管理技術として用いられてきたが、製品出荷を前提としたデバイスそのものを測定するのではなく、デバイスの代用として、回路パターンの無い基板上に単に成膜したモニターウエハを測定して、成膜装置の管理やデバイス管理を行ってきた。
【0009】
しかしながら、このような方法では、製品出荷を前提としたデバイス自体そのものを測定しているわけではないため、モニターウエハからの結果をデバイス製造管理として使うことは、定期的なモニタリング作業を製造工程に挿入することになり、成膜装置の稼働率の低下やモニタリング作業に伴うコスト(人件費や材料費)の増大に繋がってしまう。また、これらモニタリング結果を成膜装置にフィードバックするにあたって、リアルタイムでのフィードバックは不可能であり、成膜装置異常を検知するのにタイムロスがあり、不良デバイスの流出という結果を招いてしまう。
【0010】
また、上記特許文献1に開示されているX線測定装置では、蛍光X線による膜厚測定方法(XRF法)を、広い範囲での膜厚の薄膜測定に対応可能としたものであるが、通常の蛍光X線膜厚測定法(XRF法)のものよりも、膜厚の測定範囲が上限方向(3μm以上)に拡大されたものであり、下限方向への拡大はなされておらず、半導体集積回路などの前半製造工程で要求される薄膜化されたデバイスそのものの測定には、対応が難しいものである。
【0011】
また、基板薄膜へのX線照射スポット径は、10mmであり、デバイス測定を対象とした場合、特定エリアのみにX線を照射できず、その特定エリアのみのX線測定結果を取得することができず、広範囲部分でのX線照射となり、特定エリア以外の不要な情報を含んでしまう結果となる。
【0012】
さらに、このX線測定装置の特性上、デバイス基板に対するパターン認識機能が装着されておらず、基板上の特定エリアにX線照射を自動的に移動させ、正確に位置合わせすることも不可能である。
【0013】
これら性能から考慮して、上記特許文献1に開示されているX線測定装置での運用方法としては、あくまでモニタリング基板を対象とした測定であり、製品出荷を前提としたデバイス自体そのものを測定できず、モニターウエハでのデバイス管理となる。
【特許文献1】特開平10−221047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、この発明の課題は、上記半導体デバイスの膜の特性をインラインで測定して、定期的なモニタリング作業を不要にした半導体デバイスの製造方法および成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、この発明の半導体デバイスの製造方法は、
基板上に複数の膜を積層して成膜する成膜工程と、
上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記複数の膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線反射率測定によって、上記各膜の特性を測定する測定工程と、
上記各膜の特性に基づいて上記成膜工程での上記複数の膜の成膜状態を管理する管理工程と
を備えることを特徴としている。
【0016】
この発明の半導体デバイスの製造方法によれば、上記測定工程では、上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記複数の膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線反射率測定によって、上記各膜の特性を測定するので、半導体デバイスの上記膜の特性をインラインで測定できる。したがって、各半導体デバイスの品質を向上できる。
【0017】
また、インラインで測定された上記各膜の特性に基づいて上記成膜工程での上記複数の膜の成膜状態を管理するので、管理精度が向上する。同時に、定期モニタリング作業が不要になって、半導体デバイスの生産性が向上すると共に、定期モニタリングで必要であった人員コストおよび材料コストも不要になって、コストを大幅に低減できる。
【0018】
また、一実施形態の半導体デバイスの製造方法では、上記膜の特性は、膜種区分、膜厚、膜密度、ラフネス状態および結晶性のうちの少なくとも一つを含む。
【0019】
この実施形態の半導体デバイスの製造方法によれば、上記膜の特性は、膜種区分、膜厚、膜密度、ラフネス状態および結晶性のうちの少なくとも一つを含むので、一回の測定で一度に少なくとも一項目の特性を測定できる。
【0020】
また、一実施形態の半導体デバイスの製造方法では、上記X線のスポット径は、1μm以上から50μm以下である。
【0021】
この実施形態の半導体デバイスの製造方法によれば、上記X線のスポット径は、1μm以上から50μm以下であるので、上記X線を、例えば上記基板のダイシング部のみに、確実に照射できる。したがって、上記X線を平坦な上記ダイシング部に照射して、上記ダイシング部から強い反射信号を得ることができて、上記膜の特性を確実に測定できる。
【0022】
また、一実施形態の半導体デバイスの製造方法では、上記特定エリアは、上記基板のダイシング部に形成されている。
【0023】
この実施形態の半導体デバイスの製造方法によれば、上記特定エリアは、上記基板のダイシング部に形成されているので、上記X線を平坦な上記ダイシング部に照射して、上記ダイシング部から強い反射信号を得ることができて、上記膜の特性を確実に測定できる。
【0024】
また、一実施形態の半導体デバイスの製造方法では、上記管理工程は、上記膜の特性に基づいて上記成膜工程での上記膜の成膜条件を制御することを含む。
【0025】
この実施形態の半導体デバイスの製造方法によれば、上記管理工程は、上記膜の特性に基づいて上記成膜工程での上記膜の成膜条件を制御することを含むので、上記膜の特性の測定を、上記成膜工程に、リアルタイムにフィードバックできて、自動補正等によって、製造プロセスの精度を一層向上できる。
【0026】
また、この発明の半導体デバイスの製造方法は、
基板上に少なくとも一つの膜を成膜してアニール処理する成膜工程と、
上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線回折測定によって、上記膜の結晶性を測定する測定工程と、
上記膜の結晶性に基づいて上記成膜工程での上記膜のアニール状態を管理する管理工程と
を備えることを特徴としている。
【0027】
この発明の半導体デバイスの製造方法によれば、上記測定工程では、上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線回折測定によって、上記膜の結晶性を測定するので、半導体デバイスの上記膜の結晶性をインラインで測定できる。したがって、各半導体デバイスの品質を向上できる。
【0028】
また、インラインで測定された上記膜の結晶性に基づいて上記成膜工程での上記膜のアニール状態を管理するので、管理精度が向上する。同時に、定期モニタリング作業が不要になって、半導体デバイスの生産性が向上すると共に、定期モニタリングで必要であった人員コストおよび材料コストも不要になって、コストを大幅に低減できる。
【0029】
また、この発明の半導体デバイスの製造方法は、
基板上に少なくとも一つの膜を成膜する成膜工程と、
上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線反射率測定によって、上記基板の反り量を測定する測定工程と、
上記基板の反り量に基づいて上記成膜工程での上記膜の成膜状態を管理する管理工程と
を備えることを特徴としている。
【0030】
この発明の半導体デバイスの製造方法によれば、上記測定工程では、上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線反射率測定によって、上記基板の反り量を測定するので、半導体デバイスの上記基板の反り量をインラインで測定できる。したがって、各半導体デバイスの品質を向上できる。
【0031】
また、インラインで測定された上記基板の反り量に基づいて上記成膜工程での上記膜の成膜状態を管理するので、管理精度が向上する。同時に、定期モニタリング作業が不要になって、半導体デバイスの生産性が向上すると共に、定期モニタリングで必要であった人員コストおよび材料コストも不要になって、コストを大幅に低減できる。
【0032】
また、この発明の半導体デバイスの成膜装置は、
基板上に少なくとも一つの膜を成膜する成膜部と、
蛍光X線膜厚測定機能、X線反射率測定機能、および、X線回折測定機能の少なくとも一つの測定機能を有すると共に、上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、上記少なくとも一つの測定機能によって、上記膜の特性を測定する測定部と
を備えることを特徴としている。
【0033】
この発明の半導体デバイスの成膜装置によれば、上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、上記少なくとも一つの測定機能によって、上記膜の特性を測定する測定部を備えるので、半導体デバイスの上記膜の特性をインラインで測定できる。したがって、各半導体デバイスの品質を向上できる。
【0034】
また、上記膜の特性をインラインで測定できるので、定期モニタリング作業が不要になって、半導体デバイスの生産性が向上すると共に、定期モニタリングで必要であった人員コストおよび材料コストも不要になって、コストを大幅に低減できる。
【0035】
また、一実施形態の半導体デバイスの成膜装置では、上記膜の特性に基づいて上記成膜部を制御する制御部を備える。
【0036】
この実施形態の半導体デバイスの成膜装置によれば、上記膜の特性に基づいて上記成膜部を制御する制御部を備えるので、上記膜の特性の測定を、上記成膜部に、リアルタイムにフィードバックできて、自動補正等によって、製造プロセスの精度を一層向上できる。
【0037】
また、一実施形態の半導体デバイスの成膜装置では、上記測定部は、上記蛍光X線膜厚測定機能、上記X線反射率測定機能、および、上記X線回折測定機能の全ての測定機能を有する。
【0038】
この実施形態の半導体デバイスの成膜装置によれば、上記測定部は、上記蛍光X線膜厚測定機能、上記X線反射率測定機能、および、上記X線回折測定機能の全ての測定機能を有するので、測定される上記膜が、単層金属膜、多層金属膜、単層絶縁膜および多層絶縁膜のいずれの膜であっても、フレキシブルに対応して測定できる。
【0039】
また、一実施形態の半導体デバイスの成膜装置では、
上記基板を収納するカセット部と、
上記カセット部から上記成膜部へ上記基板を搬送し、この成膜部で成膜された上記基板を上記測定部へ搬送する搬送部と
を備える。
【0040】
この実施形態の半導体デバイスの成膜装置によれば、上記カセット部と上記搬送部とを備えるので、上記基板を搬送するときに、上記基板への異物等の付着を防止できる。また、上記搬送部を備えるので、上記成膜部と上記測定部との間の搬送距離を短くできて、工程時間も短くなる。
【発明の効果】
【0041】
この発明の半導体デバイスの製造方法によれば、上記測定工程では、上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線反射率測定やX線回折測定によって、上記膜の特性を測定するので、上記半導体デバイスの膜の特性をインラインで測定して、定期的なモニタリング作業を不要にできる。
【0042】
この発明の半導体デバイスの成膜装置によれば、上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、上記少なくとも一つの測定機能によって、上記膜の特性を測定する測定部を備えるので、上記半導体デバイスの膜の特性をインラインで測定して、定期的なモニタリング作業を不要にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0044】
(第1の実施形態)
図1は、この発明の半導体デバイスの製造方法に用いられるX線測定装置の一実施形態である簡略斜視図を示している。このX線測定装置10は、仮想線で囲むクリーンな雰囲気内に、ステージ機構2、X線照射光学系3、撮像部4、X線検出器5および蛍光X線検出器6を有している。
【0045】
上記ステージ機構2は、基板(ウエハ)1を載置する。上記X線照射光学系3は、X線マイクロスポット照射機能を有する。上記撮像部4は、例えば、CCD等であり、X線測定するための特定のデバイスパターンを認識する機能を有する。上記X線検出器5は、X線反射率測定(XRR)機能及びX線回折測定(XRD)機能を有する。上記蛍光X線検出器6は、蛍光X線膜厚測定(XRF)機能を有する。
【0046】
上記ステージ機構2は、上記基板1を水平面内でZ軸を中心に回転する(図示しない)Z軸回転ステージと、XY方向に移動する(図2に示す)XYステージ22と、Z方向に移動する(図2に示す)Zステージ23とを有する。
【0047】
次に、上記X線測定装置10についてさらに具体的に説明する。
【0048】
図2の簡略構成図に示すように、上記ステージ機構2は、上記基板1を載置する試料台21と、この試料台21をベース25に対して、XY方向に移動するXYステージ22およびZ方向に移動するZステージ23を有する。
【0049】
上記ステージ機構2は、さらに、上記基板1の表面のZ軸を中心に回転する(図示しない)Z軸回転ステージと、上記基板1の表面のX軸を中心に回転する(図示しない)X軸回転ステージと、上記基板1の表面のY軸を中心に回転するY軸回転ステージ24とを有する。なお、上記Z軸回転ステージ、上記X軸回転ステージおよび上記Y軸回転ステージ24は、必須の構成ではない。
【0050】
上記X線照射光学系3は、1次X線B1を出射するX線管31と、このX線管31の1次X線B1を上記基板1の表面に収束する集光素子32と、上記基板1の回路パターン部に1次X線B1が照射されるのを防止するシャッタ34とを有する。
【0051】
上記X線管31は、点状の1次X線源31aを有し、上記X線管31のターゲット上の点状焦点で、実効焦点サイズ(上記集光素子32から見込んだ幅)は、1μm以上から100μm以下(好ましくは、1μm以上から50μm以下)の範囲である。
【0052】
上記集光素子32は、上記X線管31と上記基板1との間のX線の経路に配置され、1次X線B1の照射領域を幅1μm以上から100μm以下(好ましくは、1μm以上から50μm以下)の範囲の点状に収束させる。
【0053】
上記集光素子32は、例えば、ミラーまたは分光素子であり、上記集光素子32の反射面32aは、楕円柱面またはその近似としての円柱面である。
【0054】
上記集光素子32がミラーであり、上記X線源31aからのX線の入射角がごく浅くて上記反射面32aでの反射が、全反射となるような場合、上記反射面32aとして、楕円柱面の近似として球面を用いることができる。もちろん、上記集光素子32として、2次元の集光素子を用いることができる。
【0055】
このように、上記X線源31aから上記集光素子32を介した1次X線B1のビーム幅W(線状の照射領域の幅)は、その焦点位置、すなわち上記基板1のダイシング部1bの表面において、上記X線源31aの実効焦点サイズ程度の幅に収束される。さらに、上記集光素子32を、コンフォーカル多層膜ミラーを用いて上記X線源31aから出たX線を単一波長化して高分解能の計測ができるように構成してもよい。
【0056】
上記シャッタ34は、上記X線源31aからのX線の光路に進退自在、つまり開閉自在に構成される。そして、上記シャッタ34の開閉は、制御部70により制御され、1次X線B1が照射される測定位置に、上記基板1のダイシング部1bが移動されて、上記基板1が測定されるときにのみ、上記シャッタ34は、開かれる。もちろん、1チップ測定のために使用するのであれば、このチップに移動されて測定がなされるときにのみ、上記シャッタ34は、開かれる。
【0057】
なお、上記シャッタ34を設ける代わりに、上記X線管31をオン、オフをすることも考えられるが、立ち上がりの度に1次X線B1が不安定になるので、上記シャッタ34を設ける方が好ましい。また、上記シャッタ34は、上記集光素子32と上記基板1との間に設けてもよい。
【0058】
X線反射率測定(XRR)機能およびX線回折測定(XRD)機能を有する上記X線検出器5は、受光スリット52および検出部51を有する。この検出部51は、例えば、アバランシェフォトダイオード(APD)である。上記X線検出器5は、(ゴニオメータを有する)Y軸回転ステージ24の回転軸を中心にして回転する(図示しない)検出器回転台に取り付けられている。
【0059】
蛍光X線膜厚測定(XRF)機能を有する上記蛍光X線検出器6は、検出器61と、(図示しない)ゴニオメータとを有する。
【0060】
次に、デバイス基板(ウエハ)1上のダイシング部1bに形成されたデバイス薄膜を、X線反射率測定(XRR)によって、測定する方法を説明する。
【0061】
上記基板1の表面に対して小さな入射角θでX線B1を入射し、上記基板1の表面で反射するX線B2を、上記基板1の表面に対して出射角θのところにある上記受光スリット52を通して、上記検出部(APD)51で検出する。以下、上記受光スリット52および上記検出部51を合わせて、受光系と称する。
【0062】
入射X線B1に対する反射X線B2のなす角度が、散乱角2θである。散乱角2θをスキャンするためには、上記X線照射光学系3を、ゴニオメータの中心の回りに時計方向にθ回転させると共に、(図示しない)検出器回転台により、上記受光系を上記ゴニオメータの中心の回りに反時計方向にθ回転させる。
【0063】
ところで、上記基板1は、上記試料台21に中心を一致させて載置されている。上記撮像部4は、上記基板1を撮像して、上記基板1の画像を得る。得られた画像は、試料認識部71により画像処理されて、上記基板1のLSIチップ間のダイシング部1bは、X−Y座標上で2次元の画像データとして認識される。さらに、特定のデバイス回路パターンを認識することも可能である。また、制御部70は、高さ測定部12によって測定された上記基板1の高さデータを得る。
【0064】
次に、上記制御部70は、上記試料認識部71で認識された上記基板1のダイシング部1bの2次元画像データ,および,上記基板1の高さデータに基づいて、上記ステージ機構2を制御して、X線照射領域を100μm以下の幅に収束させた1次X線B1が、上記基板1のダイシング部1bの表面に照射される位置に、上記試料台21を移動させる。上記基板1のダイシング部1bの幅は、100μm程度であるため、上記ダイシング部1bのみに照射可能である。
【0065】
次に、上記基板1を所定の初期平行位置に設定する。ここで行う初期設定は、上記基板1の表面をX線ビームB1に対して正確に平行に位置設定するために行うものである。このように、上記基板1の初期平行位置が設定されたのち、X線入射角=X線検出角=θ=0°に戻した後、それらの角度θを決められたステップ角度で正確に同期させて徐々に大きくしていき、上記シャッタ34を開いて単色化されたX線ビームを照射し、個々のθ角度位置において、決められた計数時間だけ、上記検出部(APD)51によりX線を計数する。
【0066】
すなわち、照射された単色化(単一波長化)X線は、上記基板1で反射し、その反射X線は、上記受光スリット52を通過して上記検出部(APD)51に取り込まれて計数される。一連の2θ角度位置において、この反射X線計数作業が行われることにより、2θに対するX線反射率曲線を求めることが可能となる。
【0067】
図3には、X線マイクロスポット照射によるデバイス基板(ウエハ)1の測定箇所の概要を示す。すなわち、X線ビームB1を、例えば、第1の測定チップ131のダイシング部1b、第2の測定チップ132のダイシング部、および、第3の測定チップ133のダイシング部に照射した結果、図5の測定データに示すような2θに対するX線反射率曲線を求めることが可能となる。
【0068】
そして、このようなX線反射率測定(XRR)は、主に膜の各界面で反射したX線が干渉する現象を上記のように観測し、この測定結果に対してシミュレーション演算データを、例えば上記制御部70に含まれるコンピュータまたは上記解析部72のコンピュータによりフィッティングすることによって、各層の密度、膜厚およびラフネスを解析することが可能となる。ここで、フィッティングとは、X線測定した際に、検出されるX線スペクトルについて、スペクトル強度の理論計算値と実測強度との差を補正することである。
【0069】
図5には、上記第1の測定チップ131、上記第2の測定チップ132および上記第3の測定チップ133でのフィッティングを示す。最表面の薄膜の密度は、全反射臨界角度から算出することが可能であり、それ以外の層の密度は、干渉縞の振幅の大きさから算出することができる。
【0070】
また、各層の膜厚は振動の周期から算出することが可能である。さらに、ラフネスについては、例えば特開2001−349849号公報に記載されているように、反射率測定データ全体の減衰率や高角度側における干渉縞の振幅の減衰から算出することができる。
【0071】
フィッティング処理を具体的に説明すると、単層膜または多層膜からなる膜試料の表面に対する臨界角近傍の角度からのX線入射により得られる測定データに対し、少なくとも1個以上の試料の物性に示すパラメータを変化させて行うシミュレーション演算により得られるシミュレーション演算データを、フィッティングすることによって、膜試料の構造を決定する。
【0072】
また、フィッティング処理の手順としては、例えば、最小二乗法による解析が用いられ、X線反射率を求めている因子をパラメータ(変数)として、パラメータの値を少しずつ変化させながら、反射率を計算して、実際の反射率データとの残差二乗和を最小にすることにより、測定データに最もフィッティングするような1組のパラメータを決定する。
【0073】
以上説明したように、X線反射率測定(XRR)機能によれば、成膜されたデバイス薄膜の膜種区分、膜厚、膜密度、および、ラフネス状態を測定することが可能となる。
【0074】
また、X線反射率測定(XRR)機能によれば、成膜された複数層からなるデバイス薄膜(例えばダマシン)の膜特性を一度に測定することができ、その結果、効率よく測定された複数層からなるデバイス薄膜の膜特性に基づいて、デバイス薄膜の成膜状態を管理することが可能となる。
【0075】
スパッタ成膜された複数層からなるデバイス薄膜としては、例えば、上層からTiN/Ti/Al/TiN/Tiといった5層金属膜がある。この場合、スパッタ成膜後は、デバイス基板全面が、5層金属膜に覆われており、上記撮像部4によるデバイスパターン認識機能だけで、ウエハ表面の濃淡を検知して、パターン合わせをするのは、難しい。
【0076】
そこで、図4Aに示すように、上記基板1上の特定エリア付近のパターンチップ境界線(上記スクラブライン43)上の画像認識パターン41にて、パターン合わせを実施し、図4Bに示すように、特定エリアとしてのX線測定ターゲット42ヘオフセット移動させることで、目的とする測定箇所(図3の第1〜第3の測定チップ131,132,133)での測定が可能となる。
【0077】
上記画像認識パターン41は、上記スクラブライン43(上記ダイシング部1b)上にあるアライメントマークである。上記X線測定ターゲット42は、上記スクラブライン43(上記ダイシング部1b)上でアライメントマークの無い平坦な領域部分である。
【0078】
具体的に述べると、図2、図4Aおよび図4Bに示すように、上記撮像部4は、上記スクラブライン43で囲まれた上記ダイシング部1b内の上記画像認識パターン41を、図4Aの仮想線の枠で示すように画像として撮像し、上記試料認識部71で上記画像認識パターン41を認識して、その位置座標を上記制御部70に提供する。
【0079】
上記制御部70は、上記画像認識パターン41の位置座標を基準に、特定エリアとしての上記X線測定ターゲット42に、X線マイクロスポットを、上記ステージ機構2の上記XYステージ22を用いてオフセット(X,Y座標移動)移動する。このとき、上記撮像部4は、上記X線測定ターゲット42を、図4Bの仮想線の枠で示すように画像として撮像する。これによって、X線マイクロスポットを上記X線測定ターゲット42に照射して、上記X線測定ターゲット42での測定が可能になる。
【0080】
そして、目的とする測定箇所(図3の上記第1〜上記第3の測定チップ131,132,133)を、X線反射率測定(XRR)機能を用い、かつ、図2の上記解析部72(または上記制御部70のコンピュータ)でX線解析を行った結果、図5に示すように、X線解析波形図を得る。
【0081】
さらに、この波形データを基に、上記解析部72(または上記制御部70のコンピュータ)によって、図6に示すように、特定エリア(図3の上記第1〜上記第3の測定チップ131,132,133)での5層金属膜の膜種区分、膜厚値、膜密度およびラフネスの4項目についての測定結果を得る。
【0082】
このように、各測定チップ131,132,133に対して、上記X線測定装置10のX線反射率測定(XRR)機能を使用することによって、スパッタ成膜された複数層からなるデバイス薄膜(金属膜)の膜特性(膜種区分、膜厚値、膜密度、ラフネス)を一回の測定で一度に測定することが可能となる。
【0083】
そして、この測定された各層の膜特性(特に膜厚等)に基づいて管理することで、品質管理できると共にモニタリングとしても代用できる。
【0084】
また、X線反射率測定(XRR)機能によれば、成膜されたデバイス基板の反り量も測定することができて、その結果、デバイス基板の反り量に基づいてデバイス薄膜の成膜状態を管理することができる。
【0085】
次に、デバイス基板(ウエハ)1上のダイシング部1bに形成されたデバイス薄膜を、X線回折測定(XRD)によって、測定する方法を説明する。
【0086】
上記基板1の測定部位を、X線反射率測定の場合と同様に、特定のデバイスパターンを認識する機能を用いて位置決めする。そして、平行X線ビームからなるX線B1を、上記基板1の表面に対して入射角αで照射する。上記基板1で反射した回折X線を、上記受光スリット52を通して、上記X線検出器51で検出する。
【0087】
上記受光系(上記受光スリット52および上記検出部51)は、入射X線B1に対して2θの角度位置に配置される。上記基板1の被測定格子面のブラッグ角(入射X線の波長に依存する)は、θである。
【0088】
ここで、ブラッグ角とは、X線をある物質に照射して、物質固有の回折X線が発生する際、その物質表面に対してのX線入射角のことを示す。
【0089】
上記基板1は、上記ステージ機構2に載置されており、入射X線B1は、ゴニオメータの中心の回りに回転し、上記検出部51もゴニオメータの中心の回りに回転する。
【0090】
そして、上記基板1の被測定格子面を決定し、使用するX線の波長が決まれば、上記ブラッグ角θが定まる。そこで、X線の入射角αをθにすれば、回折に寄与する被測定格子面は、上記基板1の表面に平行になる。
【0091】
したがって、上記被測定格子面を有する結晶子からの回折X線が、上記検出部51によって、検出されることになる。一方、X線入射角α(=θ+φ)にすると、被測定格子面がウエハの表面に対して角度φだけ傾斜しているような結晶子だけが回折に寄与することになる。
【0092】
このように、上記検出部51を固定しておいて、入射角αを変えることによりそれぞれの傾斜角φに相当する結晶子からの回折X線強度情報が得られる。回折X線強度の測定においては、ウエハの表面の法線方向の回りに軸対称となる配向密度分布関数ρを仮定しているので、理論ロッキングカーブと測定ロッキングカーブと比較することが可能となる。要するに、上記検出部51を固定し、入射角αを変えて回折X線強度を測定すれば、測定ロッキングカーブが得られることになる。
【0093】
ここで、測定ロッキングカーブとは、X線をある物質に照射して、物質固有の回折X線が発生する際、X線入射角度と回折X線強度との相関関係を表したグラフのことを示す。
【0094】
また、X線回折測定の場合には、上記検出部51として、APDからCCDセンサに切り替えてもよい。
【0095】
このようにCCDセンサに切り替えた場合、上記基板1から得られるX線回折像をCCDセンサで撮像して、上記制御部70または上記解析部72に接続された(図示しない)表示装置に表示して、デバイス薄膜の結晶性を評価できる。
【0096】
その結果、デバイス薄膜の結晶性に基づいて、デバイス薄膜のアニール状態を管理することが可能となる。
【0097】
次に、デバイス基板(ウエハ)1上のダイシング部1bに形成されたデバイス薄膜を、蛍光X線膜厚測定(XRF)によって、測定する方法を説明する。
【0098】
上記基板1の測定部位を、X線反射率測定の場合と同様に、特定のデバイスパターンを認識する機能を用いて位置決めする。そして、上記シャッタ34を開いて、上記基板1のダイシング部1bに、1次X線B1を比較的高い角度から照射し、ダイシング部1bから発生した蛍光X線B3を、上記蛍光X線検出器6で検出する。
【0099】
そして、この検出された蛍光X線の強度に基づいて、上記解析部72は、成膜されたデバイス薄膜の膜種区分(膜組成)および膜厚を測定できて、この測定データを管理システム80に提供できる。
【0100】
ところで、上記管理システム80は、デバイス作製工程を管理し、上記X線測定装置10の解析部72または制御部70との間においてネットワーク73で接続してもよい。また、(図示しない)スパッタ成膜装置の全体制御部は、上記解析部72または上記制御部70との間において上記ネットワーク73で接続してもよい。
【0101】
このように、上記X線測定装置10、上記管理システム80、および、(図示しない)スパッタ成膜装置の間において、上記ネットワーク73で接続することによって、上記X線測定装置10で測定されたデバイス薄膜の膜特性を、上記管理システム80およびスパッタ成膜装置に提供でき、上記管理システム80は、デバイスの品質管理を行うことができ、スパッタ成膜装置は、メンテナンスも含めてスパッタ条件を制御できる。
【0102】
また、上記X線照射光学系3としては、X線反射率測定(XRR)およびX線回折測定(XRD)用の光学系と、蛍光X線膜厚測定(XRF)用の光学系とを、別に設けてもよい。また、本発明に係るインライン用のX線測定装置(X線モニタ装置)10としては、X線反射率測定(XRR)機能と蛍光X線膜厚測定(XRF)機能とが、必ず必要になる。
【0103】
次に、上記構成のX線測定装置10を用いた半導体デバイスの製造方法を説明する。
【0104】
この半導体デバイスの製造方法は、成膜工程と、測定工程と、管理工程とを有する。上記成膜工程では、上記基板1上に複数の膜を積層して成膜する。
【0105】
上記測定工程では、上記基板1上に形成され上記基板1上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記複数の膜に、X線を100μm以下の(マイクロ化された)スポット径で照射して、X線反射率測定によって、上記各膜の特性を(一度に、インラインで)測定する。つまり、上記パターンは、上記画像認識パターン41であり、上記特定エリアは、上記X線測定ターゲット42である。
【0106】
上記管理工程では、上記各膜の特性に基づいて上記成膜工程での上記複数の膜の成膜状態を管理する。
【0107】
したがって、上記測定工程で半導体デバイスの上記膜の特性をインラインで測定できて、各半導体デバイスの品質を向上できる。また、上記管理工程で、インラインで測定された上記各膜の特性に基づいて上記成膜工程での上記複数の膜の成膜状態を管理するので、管理精度が向上する。同時に、定期モニタリング作業が不要になって、半導体デバイスの生産性が向上すると共に、定期モニタリングで必要であった人員コストおよび材料コストも不要になって、コストを大幅に低減できる。
【0108】
なお、上記膜の特性は、膜種区分、膜厚、膜密度、ラフネス状態および結晶性のうちの少なくとも一つを含むようにしてもよく、一回の測定で一度に少なくとも一項目の特性を測定できる。
【0109】
また、上記X線のスポット径は、1μm以上から50μm以下となるようにしてもよく、上記X線を、例えば上記基板1のダイシング部1bのみに、確実に照射できる。したがって、上記X線を平坦な上記ダイシング部1bに照射して、上記ダイシング部1bから強い反射信号を得ることができて、上記膜の特性を確実に測定できる。
【0110】
また、上記特定エリアは、上記基板1のダイシング部1bに形成されるようにしてもよく、上記X線を平坦な上記ダイシング部1bに照射して、上記ダイシング部1bから強い反射信号を得ることができて、上記膜の特性を確実に測定できる。ただし、上記ダイシング部1bでなく、上記素子部へX線を照射して、成膜特性を確認するようにしてもよく、例えば、X線回折測定で上記素子部の結晶性を確認する場合がある。
【0111】
また、上記管理工程は、上記膜の特性に基づいて上記成膜工程での上記膜の成膜条件を制御することを含むようにしてもよく、上記膜の特性の測定を、上記成膜工程に、リアルタイムにフィードバックできて、自動補正等によって、製造プロセスの精度を一層向上できる。
【0112】
なお、上記成膜工程で、上記基板1上に少なくとも一つの膜を成膜してアニール処理し、かつ、上記測定工程で、上記基板1上に形成され上記基板1上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線回折測定によって、上記膜の結晶性を測定し、かつ、上記管理工程で、上記膜の結晶性に基づいて上記成膜工程での上記膜のアニール状態を管理するようにしてもよい。
【0113】
したがって、上記測定工程で半導体デバイスの上記膜の結晶性をインラインで測定できて、各半導体デバイスの品質を向上できる。また、上記管理工程で、インラインで測定された上記膜の結晶性に基づいて上記成膜工程での上記膜のアニール状態を管理するので、管理精度が向上する。同時に、定期モニタリング作業が不要になって、半導体デバイスの生産性が向上すると共に、定期モニタリングで必要であった人員コストおよび材料コストも不要になって、コストを大幅に低減できる。
【0114】
なお、上記成膜工程で、上記基板1上に少なくとも一つの膜を成膜し、かつ、上記測定工程で、上記基板1上に形成され上記基板1上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線反射率測定によって、上記基板1の反り量を測定し、かつ、上記管理工程で、上記基板1の反り量に基づいて上記成膜工程での上記膜の成膜状態を管理するようにしてもよい。
【0115】
したがって、上記測定工程で半導体デバイスの上記基板1の反り量をインラインで測定でて、各半導体デバイスの品質を向上できる。また、上記管理工程で、インラインで測定された上記基板1の反り量に基づいて上記成膜工程での上記膜の成膜状態を管理するので、管理精度が向上する。同時に、定期モニタリング作業が不要になって、半導体デバイスの生産性が向上すると共に、定期モニタリングで必要であった人員コストおよび材料コストも不要になって、コストを大幅に低減できる。
【0116】
(第2の実施形態)
図7は、この発明の半導体デバイスの成膜装置の一実施形態を示している。この成膜装置100は、例えばスパッタ成膜装置であり、成膜部103と、測定部としての上記第1の実施形態のX線測定装置10と、カセット部102と、搬送部101とを有する。上記搬送部101および上記カセット部102は、必須の構成ではない。
【0117】
上記成膜部103は、上記基板1上に少なくとも一つの膜を成膜する。上記成膜部103は、周囲に複数のチャンバ室およびアニール室を有し、中央部にウエハを出し入れするハンドリング室を有する。上記カセット部102は、上記基板1を収納する。
【0118】
上記X線測定装置10は、蛍光X線膜厚測定機能、X線反射率測定機能、および、X線回折測定機能の少なくとも一つの測定機能を有すると共に、上記基板1上に形成され上記基板1上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、上記少なくとも一つの測定機能によって、上記膜の特性を測定する。
【0119】
上記搬送部101は、クリーンな雰囲気で形成され、上記カセット部102から上記成膜部103へ上記基板1を搬送し、この成膜部103で成膜された上記基板1を上記X線測定装置10へ搬送する。なお、わかりやすくするために、上記X線測定装置10および上記搬送部101のケーシングを、透明なケーシングであらわしている。
【0120】
次に、上記成膜装置100の作用を説明する。
【0121】
上記基板1を、上記カセット部102から、上記搬送部101を介して、上記成膜部103へ運び、上記基板1上にスパッタ成膜を行う。上記基板1の成膜終了後、上記基板1は、上記搬送部101を経由してアンロードされ、上記X線測定装置10に運ばれ、上記基板1上の特定エリアの多層金属膜について、少なくとも、膜種区分、膜厚、膜密度およびラフネスの4項目について測定を行う。もちろん、結晶性についても測定しても良い。
【0122】
そして、上記X線測定装置10でX線測定された上記基板1は、上記搬送部101によって搬送されて、上記カセット部102に収納される。
【0123】
したがって、上記X線測定装置10によって半導体デバイスの上記膜の特性をインラインで測定できて、各半導体デバイスの品質を向上できる。
【0124】
また、上記膜の特性をインラインで測定できるので、図8に示すように、デバイス処理毎に膜の特性を測定できて、次の定常メンテナンス作業まで、モニタリングウエハ(基板)を用いた定期モニタリング作業が不要となり、定期モニタリング作業の手間、および、コストが削減され、結果的に稼働率を向上できると共に、半導体デバイスの原価低減を実現することが可能となる。
【0125】
また、上記カセット部102と上記搬送部101とを備えるので、上記基板1を搬送するときに、上記基板1への異物等の付着を防止できる。また、上記搬送部101を備えるので、上記成膜部103と上記X線測定装置10との間の搬送距離を短くできて、工程時間も短くなる。
【0126】
なお、上記膜の特性に基づいて上記成膜部103を制御する制御部(例えば、図2の上記管理システム80)を設けてもよく、上記膜の特性の測定を、上記成膜部に、リアルタイムにフィードバックできて、自動補正等によって、製造プロセスの精度を一層向上できる。例えば、オンラインでのAPC(Advanced Process Control)機能というアプリケーションにも発展できる。
【0127】
また、上記X線測定装置10は、上記蛍光X線膜厚測定機能、上記X線反射率測定機能、および、上記X線回折測定機能の全ての測定機能を有するようにしてもよく、測定される上記膜が、単層金属膜、多層金属膜、単層絶縁膜および多層絶縁膜のいずれの膜であっても、フレキシブルに対応して測定できる。
【0128】
(第3の実施形態)
次に、上記X線測定装置10を用いたインライン測定によるデバイス薄膜の膜特性の品質管理について説明する。
【0129】
図9は、デバイス作製工程の概要を示すフローチャトである。このデバイス作製工程は、概略、絶縁膜成膜工程(S81)と、フォトリソ工程(S82)と、イオン注入工程(S83)と、エッチング工程(S84)と、その後の金属パターン形成工程(S85〜S89)とを有する。
【0130】
この金属パターン形成工程は、レジスト剥離工程(S85)と、金属成膜工程(S86)と、上記X線測定装置10を用いたX線金属膜測定工程(S87)と、フォトリソ工程(S88)と、エッチング工程(S89)とを有する。
【0131】
上述したように、上記金属成膜工程(S86)で、複数の金属膜を順次積層してスパッタ成膜する場合には、複数の金属膜を成膜した後、上記X線金属膜測定工程(S87)を設ければよい。
【0132】
そして、上記X線金属膜測定工程(S87)において上記X線測定装置10で取得された測定データは、管理工程(S90)において、上記管理システム80に提供されてウエハテストと歩留りとの相関にフィードバックされ品質管理に利用され、または、上記成膜装置100に提供されて成膜装置状態のモニタリング管理に利用される。
【0133】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、本発明の半導体デバイスの製造方法を、スパッタ成膜装置以外の製造装置、例えばCVD装置、エッチング装置、イオン注入装置やCMP装置などに、適用してもよい。さらに、本発明の半導体デバイスの製造方法を、半導体集積回路の製造工程に限らず、化合物半導体や液晶パネルの製造工程に、適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の半導体デバイスの製造方法に用いられるX線測定装置の一実施形態を示す簡略斜視図である。
【図2】X線測定装置の簡略構成図である。
【図3】X線測定ポイントを示す平面図である。
【図4A】画像認識パターンを示す拡大図である。
【図4B】X線測定ターゲットを示す拡大図である。
【図5】X線反射率測定(XRR)機能によって取得されたX線解析波形図である。
【図6】X線反射率測定(XRR)機能によって測定された各チップの膜特性の測定結果を示す説明図である。
【図7】本発明の半導体デバイスの成膜装置の一実施形態を示す簡略斜視図である。
【図8】成膜装置の運用方法を示すフローチャトである。
【図9】デバイス作成工程を示すフローチャトである。
【符号の説明】
【0135】
1 基板
1b ダイシング部
2 ステージ機構
3 X線照射光学系
4 撮像部
5 X線検出器
6 蛍光X線検出器
10 X線測定装置
21 試料台
22 XYステージ
23 Zステージ
24 Y軸回転ステージ
25 ベース
31 X線管
31a X線源
32 集光素子
32a 反射面
34 シャッタ
41 画像認識パターン
42 X線測定ターゲット
43 スクラブライン
51 検出部(APD)
52 受光スリット
61 検出部
70 制御部
71 試料認識部
72 解析部
73 ネットワーク
80 管理システム
100 成膜装置
101 搬送部
102 カセット部
103 成膜部
131〜133 第1〜第3の測定チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の膜を積層して成膜する成膜工程と、
上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記複数の膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線反射率測定によって、上記各膜の特性を測定する測定工程と、
上記各膜の特性に基づいて上記成膜工程での上記複数の膜の成膜状態を管理する管理工程と
を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法において、
上記膜の特性は、膜種区分、膜厚、膜密度、ラフネス状態および結晶性のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法において、
上記X線のスポット径は、1μm以上から50μm以下であることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法において、
上記特定エリアは、上記基板のダイシング部に形成されていることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法において、
上記管理工程は、上記膜の特性に基づいて上記成膜工程での上記膜の成膜条件を制御することを含むことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
基板上に少なくとも一つの膜を成膜してアニール処理する成膜工程と、
上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線回折測定によって、上記膜の結晶性を測定する測定工程と、
上記膜の結晶性に基づいて上記成膜工程での上記膜のアニール状態を管理する管理工程と
を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
基板上に少なくとも一つの膜を成膜する成膜工程と、
上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、X線反射率測定によって、上記基板の反り量を測定する測定工程と、
上記基板の反り量に基づいて上記成膜工程での上記膜の成膜状態を管理する管理工程と
を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
基板上に少なくとも一つの膜を成膜する成膜部と、
蛍光X線膜厚測定機能、X線反射率測定機能、および、X線回折測定機能の少なくとも一つの測定機能を有すると共に、上記基板上に形成され上記基板上の特定エリアを示すパターンを認識し、この特定エリアのみの上記膜に、X線を100μm以下のスポット径で照射して、上記少なくとも一つの測定機能によって、上記膜の特性を測定する測定部と
を備えることを特徴とする半導体デバイスの成膜装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体デバイスの成膜装置において、
上記膜の特性に基づいて上記成膜部を制御する制御部を備えることを特徴とする半導体デバイスの成膜装置。
【請求項10】
請求項8に記載の半導体デバイスの成膜装置において、
上記測定部は、上記蛍光X線膜厚測定機能、上記X線反射率測定機能、および、上記X線回折測定機能の全ての測定機能を有することを特徴とする半導体デバイスの成膜装置。
【請求項11】
請求項8に記載の半導体デバイスの成膜装置において、
上記基板を収納するカセット部と、
上記カセット部から上記成膜部へ上記基板を搬送し、この成膜部で成膜された上記基板を上記測定部へ搬送する搬送部と
を備えることを特徴とする半導体デバイスの成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−258359(P2007−258359A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79100(P2006−79100)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】