説明

半導体外観検査装置

【課題】 半導体ウエハあるいはペレット上の欠陥を高速で確実に検出することができる半導体外観検査装置を提供する。
【解決手段】 半導体外観検査装置2aは、検査対象面10aで反射した反射光から、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下からなる狭帯域幅のピークを有する透過光を生成するとともに、100nm波長帯域内において、透過光を複数の波長で選択的に出力させるようにした透過特性切替装置16を備える。透過特性切替装置16は、その実効光路長が設定中心透過波長の整数倍からなるように厚みが設定された液晶デバイスを少なくとも1つ有する複数の平行ニコル液晶セルおよび垂直ニコル液晶セルを組み合わせてなる波長可変液晶フィルタ14と、各液晶セルに複数の電位を多段に切り替えて印加する駆動回路15とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程における半導体ウエハあるいはペレットの外観検査を行う半導体外観検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において、半導体ウエハあるいはペレット表面には、レジスト樹脂の残留物の付着、異物の付着、あるいは傷など、種々の欠陥が発生することがある。これらの欠陥は、半導体装置の得率および性能に著しい悪影響を及ぼすことが知られている。このため、半導体製造工程においては、上記のような欠陥の有無を調べるために、半導体ウエハあるいはペレットの外観検査を行うための半導体外観検査装置が用いられている。半導体外観検査装置としては、例えばカラー画像を利用したものが提案されている(特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の半導体外観検査装置100の概略構成を示す図11において、検査ステージ101上に載置された検査すべき半導体ウエハ102は、照射光学系103により斜め上方から光が照射される。照射光学系103は、連続または複数の輝線スペクトルを有するハロゲンランプあるいは水銀ランプなどの光源104、およびこの光源104から照射された光を適宜拡大して半導体ウエハ102の検査対象面102aの全面に照射するためのコリメートレンズ105から構成されている。ここで、図11においては、検査対象面102aたる半導体ウエハ102の全面に光を照射する如く図示されているが、実際には、半導体ウエハ102上に複数形成される各半導体デバイス領域、あるいはその一部の領域が、検査対象面102aとして選択される。したがって、光源104およびコリメートレンズ105は、検査対象面102aのかかる領域の全面に光を照射する光学系(例えば、ファイバー光学系と顕微鏡光学系)が有利に用いられ、さらに、撮像光学系としても、顕微鏡を介して形成された画像を撮像する撮像光学系が有利に用いられる。
【0004】
半導体ウエハ102からの反射光は、集光レンズ106、およびこの集光レンズ106の後方光路に設けられ、ハーフミラーによって構成される第1、第2ビームスプリッタ107、108からなる検出光学系109によって3つの光路に分割され、第1〜第3撮像装置110〜112に入射されて撮像される。これらの撮像装置110〜112の前面には、それぞれ赤(R)、緑(G)、および青(B)の光学フィルタ113〜115が配されている。第1〜第3撮像装置110〜112で撮像されたRGBの分光画像は、各々コンピュータ116に入力される。
【0005】
半導体外観検査装置100で半導体の外観を検査する際には、例えば検査ステージ101に欠陥のない標準(良品)の電子回路パターンを有する標準の半導体ウエハを載置し、これを撮像してコンピュータ116に良品の電子回路パターンの各分光画像情報を記憶しておき、しかる後、標準の半導体ウエハに代えて、検査ステージ101に検査すべき電子回路パターンを有する半導体ウエハ102を載置し、標準の半導体ウエハと同一の検査対象面102aを撮像してコンピュータ116に検査すべき電子回路パターンの各分光画像情報を記憶する。
【0006】
上記のような手順で半導体の外観を検査すれば、例えばRGBの波長毎に標準電子回路パターンの画像、および検査すべき電子回路パターンの画像を比較することができる。これにより、標準電子回路パターンの画像と検査すべき電子回路パターンの画像とを減算するなどの適当な演算処理を行って、RGBの分光画像毎に欠陥情報を検出することが可能となる。なお、符号117はCRTモニタであり、標準電子回路パターンの画像や、検査すべき電子回路パターンの画像、演算処理後の画像などを、RGBの分光画像毎に、あるいはこれらを合成したフルカラー画像として適宜表示するものである。
【0007】
また、特許文献2に記載の半導体外観検査装置も、特許文献1に記載の半導体外観検査装置100と同様に、カラー撮像装置によって半導体ウエハあるいはペレットの検査対象面を撮像し、このカラー撮像装置から出力されるRGBのカラー信号をデジタル信号に変換して画像メモリに記憶する。そして、記憶されたデジタルカラー信号相互の相関係数を求め、この相関係数に応じて欠陥を検出する。さらに、記憶されたデジタルカラー信号から、基準データによって欠陥を強調するように補正して白黒の画像情報を生成し、この生成した画像情報の濃度を検査することにより欠陥を検出する。
【0008】
特許文献1および2に記載の半導体外観検査装置によれば、検査すべき半導体ウエハあるいはペレットの電子回路パターンをRGBの色毎に検出し、これを例えばR、G、およびBの分光色毎に記憶された標準の電子回路パターンと相互に比較することによって、白黒画像によって検査を行う場合に比して検査精度を高めることができる。また、欠陥の種類(例えばレジスト残留物の種類)、欠陥による影響の程度などを検出することもできる。したがって、欠陥の発生原因も推定することができる可能性を秘めた技術であるということができる。
【0009】
半導体外観検査装置の他の例として、特許文献3に記載のものが提案されている。この装置は、標準電子回路パターンを撮像して演算処理装置に記憶する際、半導体ウエハ上に形成された微細な電子回路パターンの各エリアの特性(例えば、線幅、配線方向など)に対し、異物のサイズ、方向などに応じて検査条件を段階的に設定することができる。
【0010】
特許文献3に記載の装置では、設定された検査条件に応じて、例えば図12(a)の場合は、半導体ウエハ150上に形成された電子回路パターン151に対して、欠陥152が電子回路パターン151の幅方向に渡って存在するため、欠陥152が影響を及ぼすものとして検査不合格と認定され、一方、(b)の場合は、電子回路パターン151に対して、欠陥153が電子回路パターン151の長手方向に渡って存在するため、欠陥153が影響を及ぼさないものとして検査合格と認定される。このように、電子回路パターンの各エリアの特性に応じて検査条件を設定するので、検査精度をさらに向上させることができる。
【0011】
半導体外観検査装置のさらに他の例として、特許文献4に記載のものが提案されている。この特許文献4に記載の技術は、特許文献3に記載の技術に加え、同一エリア内において、図13(a)に示す第1の検査条件で設定されたレイヤ200と、(b)に示す第2の検査条件で設定されたレイヤ201とを重ね合わせ、さらに、例えば膨張/収縮などのフィルタ処理を行って、(c)に示す新たなレイヤ202を生成し、電子回路パターンのエリアを設定することができるようにしている。これにより、少ない情報で複雑な検査条件の設定が可能となる。
【0012】
ここで、例えば、特許文献1および2に記載の技術を、エリア毎の電子回路パターン特性に応じた検査条件を設定する特許文献3に記載の技術や、あるいは検査条件を変化させたレイヤ毎の重ね合わせによって検査条件を設定する特許文献4に記載の技術に応用すれば、演算処理する情報量を大きくすることなく、半導体ウエハ上に形成された微細な電子回路パターンの検査をRGBの色毎に行うことができ、さらなる検査精度の向上が期待される。
【特許文献1】特開2000−111484号公報
【特許文献2】特開平6−82377号公報
【特許文献3】特開2004−85543号公報
【特許文献4】特開2004−132950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、半導体ウエハあるいはペレットに発生する欠陥としては、上記したレジスト樹脂の残留物の付着、異物の付着、あるいは傷などに加えて、例えば、金属スパッタ生成膜における膜厚の相違、レジスト樹脂あるいはポリイミド樹脂の塗布ムラ、アルミパット部におけるエッチング後のメタル層表面の荒れ、スクラッチなどの浅い傷、あるいは酸化膜、アルミ表面の変色、汚れなどのように、これを撮像した白黒画像の濃度変化分としても表れにくいのみならず、RGBのカラー画像の色彩の差異としても表れにくい極めて微細な色彩の相違を発生する欠陥がある。
【0014】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の技術において、撮像装置で得られる画像信号は、固定的に白黒画像信号またはRGBの分光画像信号のみであり、白黒画像の濃度変化分としても表れにくく、カラー画像の色彩の差異としても表れにくい極めて微細な色彩の相違を発生する欠陥の成分スペクトラムに対応するものではないため、この種の欠陥を検出することができない。さらに、半導体ウエハなどのマクロ検査を行わせるための外観検査装置においては、ウエハあるいはペレットに形成されるパターンの特定範囲の領域(例えば、27mm×20mm程度の観測領域)を顕微鏡で観察し、これを例えば300mm径のウエハ全体に亙って検査を行うためには、ステッパによるX−Y方向への移動操作に加えて、1つの観測領域で、半値幅が小さく急峻な分光波長域を有する複数の光を繰り替えて撮影するなど、撮影条件を種々変化させて撮影を行う操作の高速性が要求される。
【0015】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、半導体ウエハあるいはペレット上の欠陥を高速で確実に検出することができる半導体外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、白黒画像の濃度変化分としても表れにくく、カラー画像の色彩の差異としても表れにくい極めて微細な色彩の相違の欠陥を検出することができないという従来技術の欠点を補った半導体外観検査装置を提供するものであり、特許文献1における光学フィルタ113〜115に代えて、波長可変液晶フィルタを用いることを特徴としている。
【0017】
波長可変液晶フィルタは、液晶セルに印加する電位に応じて、高速に透過光の波長を変化させることができるデバイスである。この波長可変液晶フィルタを用いて上記目的を達成するためには、検査される半導体ウエハあるいはペレット内の特定検査対象領域に連続した分光波長を有する光を照射し、顕微鏡光学系などを介して撮影を行う撮像装置の前に波長可変液晶フィルタを配置して、液晶セルに印加する電位を順次変化させて、撮像装置に任意の波長を有する分光画像を撮像させる。あるいは、検査される半導体ウエハあるいはペレット内の特定検査対象領域に光を照射する光源の前に波長可変液晶フィルタを配置し、液晶セルに印加する電位を順次変化させて、半導体ウエハあるいはペレットに任意の波長を有する透過光を照射して、その分光画像を顕微鏡光学系などを介して撮像装置に撮像させればよい。
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の半導体外観検査装置は、半導体の検査対象面に光を照射する光源と、前記検査対象面で反射した反射光から、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下からなる狭帯域幅のピークを有する透過光を生成するとともに、前記100nm波長帯域内において、前記透過光を複数の波長で選択的に出力させるようにした透過特性切替装置と、前記透過特性切替装置からの透過光を分光画像として撮像する撮像装置と、前記分光画像を記憶する記憶装置とを備え、前記透過特性切替装置は、その実効光路長が設定中心透過波長の整数倍からなるように厚みが設定された液晶デバイスを少なくとも1つ有する複数の平行ニコル液晶セルおよび垂直ニコル液晶セルを組み合わせてなる波長可変液晶フィルタと、各液晶セルに複数の電位を多段に切り替えて印加する駆動回路とから構成されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の半導体外観検査装置は、光源と、前記光源と半導体の検査対象面との間に設けられ、前記光源からの光から、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下からなる狭帯域幅のピークを有する透過光を生成するとともに、前記100nm波長帯域内において、前記透過光を複数の波長で選択的に出力させて前記検査対象面に照射するようにした透過特性切替装置と、前記検査対象面で反射した前記透過光を分光画像として撮像する撮像装置と、前記分光画像を記憶する記憶装置とを備え、前記透過特性切替装置は、その実効光路長が設定中心透過波長の整数倍からなるように厚みが設定された液晶デバイスを少なくとも1つ有する複数の平行ニコル液晶セルおよび垂直ニコル液晶セルを組み合わせてなる波長可変液晶フィルタと、各液晶セルに複数の電位を多段に切り替えて印加する駆動回路とから構成されることを特徴とする。
【0020】
なお、前記波長可変液晶フィルタは、前記設定中心透過波長の異なる複数の波長可変液晶フィルタが組み合わされ、前記複数の波長可変液晶フィルタに、個別に前記検査対象面で反射した反射光、または前記光源からの光を入射させ、前記透過光を出力させるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の半導体外観検査装置によれば、実効光路長が設定中心透過波長の整数倍からなるように厚みが設定された液晶デバイスを少なくとも1つ有する複数の平行ニコル液晶セルおよび垂直ニコル液晶セルを組み合わせてなる波長可変液晶フィルタと、各液晶セルに複数の電位を多段に切り替えて印加する駆動回路とから構成され、半導体の検査対象面で反射した反射光、あるいは光源からの光から、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下からなる狭帯域幅のピークを有する透過光を生成するとともに、100nm波長帯域内において、透過光を複数の波長で選択的に出力させるようにした透過特性切替装置を備えたので、100nm波長帯域内において、狭帯域幅の複数の波長の分光画像を順次に撮像することが可能となる。しかも、任意の狭帯域幅の光を透過する透過特性切替手段が波長可変液晶フィルタであり、この切替手段は、複数の電位を多段に切り替えて印加する駆動回路によって、高速に複数の狭帯域幅の光を生成することができるから、例えば、顕微鏡光学系を介して、狭い範囲の検査対象面に対して複数の分光画像を生成し、且つこれをウエハの検査対象面の位置を変えながらウエハ全面に亙って撮影を行う場合でも、高速に撮影を行うことができる。したがって、半導体ウエハあるいはペレットの外観検査を行う際に、白黒画像の濃度変化分としても表れにくく、カラー画像の色彩の差異としても表れにくい極めて微細な色彩の相違を、半導体ウエハあるいはペレットの欠陥として高速で確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1および図2において、本発明を適用した半導体外観検査装置2a、2bは、半導体ウエハ10が載置される検査ステージ11と、照射光学系12と、撮像装置13と、波長可変液晶フィルタ14および駆動回路15からなる透過特性切替装置16と、コンピュータ17とから構成される。なお、図1の半導体外観検査装置2aは、撮像装置13の前に波長可変液晶フィルタ14を配置した態様を、図2の半導体外観検査装置2bは、照射光学系12の光源18の前に波長可変液晶フィルタ14を配置した態様をそれぞれ示す。
【0023】
照射光学系12は、連続または複数の輝線スペクトルを有するハロゲンランプあるいは水銀ランプなどの光源18、および光源18から照射された光を適宜拡大して半導体ウエハ10の検査対象面10aの全面に照射するためのコリメートレンズ19から構成されている。ここで、検査対象面10aは、例えば、半導体ウエハ10上に複数形成される各半導体デバイス領域、あるいはその一部の領域が選択される。したがって、光源18およびコリメートレンズ19は、検査対象面10aのかかる領域の全面に光を照射する光学系(例えば、ファイバー光学系と顕微鏡光学系)が有利に用いられ、さらに、撮像光学系としても、顕微鏡光学系が有利に用いられる。照明光学系12は、後述するように波長可変液晶フィルタ14が100nm波長帯域(例えば、R、G、あるいはBの個々の分光帯域)のように限られた波長帯域内の光のみを透過するものを用いるものであれば、これに対応する波長(例えば、R、G、あるいはBの分光帯域)の光のみを発光する光源であってもよい。
【0024】
図1において、半導体ウエハ10の検査対象面10aで反射した反射光は、波長可変液晶フィルタ14の前方に設けられた集光レンズ20により集光され、波長可変液晶フィルタ14を透過して撮像装置13に入射されて撮像される。一方、図2において、光源18から発せられ、波長可変液晶フィルタ14を透過して、半導体ウエハ10の検査対象面10aで反射した特定の波長光からなる反射光は、集光レンズ20を透過して撮像装置13に入射されて撮像される。ここで、半導体ウエハ10が載置される検査ステージ11は、載置された半導体ウエハ10をX−Y方向に移動可能に保持するステッパにより形成されており、半導体ウエハ10の検査対象面10aを順次移動させつつ、光照射および撮像するための、例えばファイバー光学系、顕微鏡光学系に対向し得るように構成されている。
【0025】
撮像装置13は、撮像素子表面に多色カラーフィルタを配した単板カラーカメラ、あるいは三板カラーカメラ、若しくはかかるカラーフィルタを除去した白黒カメラが用いられる。さらには、波長可変液晶フィルタ14が紫外線波長、あるいは赤外線波長の分光波長を選択的に透過するように設定されたものであれば、撮像素子表面から多色カラーフィルタを除去すると共に、赤外線カットフィルタ(IRカットフィルタ)をも除去して、特に赤外領域まで撮像可能なものを撮像装置13として用いてもよい。
【0026】
駆動回路15は、詳しくは後述するように、コンピュータ17の制御の下に、波長可変液晶フィルタ14に多段の電位を順次切り替えて供給する。コンピュータ17は、制御および表示機能を有し、撮像装置13および駆動回路15に接続している。このコンピュータ17は、波長可変液晶フィルタ14に多段の電圧を順次切り替えて供給するように駆動回路15の動作を制御するとともに、撮像装置13からの撮像信号を取り込んで、これによって得られた分光画像と、波長可変液晶フィルタ14に設定された分光波長情報(分光波長情報そのもの、あるいは当該波長を得るために駆動回路15から供給された電位情報)とを対応させてメモリに記憶する。
【0027】
波長可変液晶フィルタ14は、その入射光および出力光が相互にフィルタ面に垂直となるように、光路に対して垂直に配置されており、光源18および撮像装置13は、この垂直光路内に配置されている。波長可変液晶フィルタ14は、例えば、特許第3102012号、および特開2000−267127号公報に記載のものを用いることができる。波長可変液晶フィルタ14は、例えば図3および図4に示すように、複屈折板としてネマティック液晶を用いた電界制御複屈折セル(Electrically Controlled Birefringence Cell)30a〜30cを使用するもので、互いに平行な偏光子31a、31b間に、電界制御複屈折セル30aを光軸と透過軸との角度が45°になるように配置してなる第1平行ニコル液晶セルC1と、互いに平行な偏光子31b、31c間に、電界制御複屈折セル30bを光軸と透過軸との角度が45°になるように配置してなる第2平行ニコル液晶セルC2とを順に重ね、さらに第2平行ニコル液晶セルC2の次に、所望の波長以外の波長の透過光を排除するために、互いに垂直な偏光子31c、32間に、電界制御複屈折セル30cを光軸と透過軸との角度が45°になるように配置してなる垂直ニコル液晶セルC3を付加して構成される。なお、平行ニコル液晶セルの枚数は3以上であってもよい。
【0028】
図3において、電界制御複屈折セル30a〜30cの厚さ(セル厚)dは同じであり、このセル厚dは、その実効光路長が、設定された中心透過波長λ0の整数倍となるように設定されており、例えば、波長可変液晶フィルタ14が緑帯域(500〜600nm)光の透過特性であるならば、その実効光路長が設定中心透過波長λ0=550nmの整数倍となるようなセル厚dが選択される。
【0029】
各電界制御複屈折セル30a〜30cには、個別に電圧源33a〜33cが接続されている。電圧源33a〜33cには、コンピュータ17の制御の下に、駆動回路15から駆動電圧が供給される。この構成によれば、第1、第2平行ニコル液晶セルC1、C2、および垂直ニコル液晶セルC3に印加する電圧をリオフィルタ(Lyot-filter)の複屈折条件に適合するように調整することで、鋭いピークを有する透過光のスペクトルが得られ、また、これらの電圧の組み合わせを変えることで、透過光のピーク波長(スペクトルの主波長)を変化させることができる。
【0030】
図4において、電界制御複屈折セル30a〜30cのセル厚dは順にd、2d、1.5dの比率となっており、各電界制御複屈折セル30a〜30cには、共通の電圧源34が接続されている。この場合においても、図3の場合と同様に、セル厚dは、その実効光路長が、設定中心透過波長λ0の整数倍となるように設定されており、例えば、波長可変液晶フィルタ14が緑帯域(500〜600nm)光の透過特性であるならば、その実効光路長が設定中心透過波長λ0=550nmの整数倍となるようなセル厚dが選択される。この構成によっても、第1、第2平行ニコル液晶セルC1、C2、および垂直ニコル液晶セルC3に印加する電圧をリオフィルタ(Lyot-filter)の複屈折条件に適合するように調整することで、鋭いピークを有する透過光のスペクトルが得られ、また、電圧を変えることで透過光のピーク波長(スペクトルの主波長)を変化させることができる。
【0031】
波長可変液晶フィルタ14に用いられる液晶セルとしては、ベンド配向または中央にねじれを伴うベンド状の配向、すなわち、光学補償ベンド(Optically Compensated Bend)配向を持つものを用いることが好ましい。このような光学補償ベンド配向を持つ液晶セルは、例えば特開平7−84254号公報に記載されている。
【0032】
上記のような光学補償ベンド配向を持つ液晶セルの例を示す図5において、液晶セルC0は、図3および図4における第1、第2平行ニコル液晶セルC1、C2、および垂直ニコル液晶セルC3のうちの1つの詳細を示すものであって、上下に設けた互いに平行な偏光子31、31間、若しくは互いに垂直な偏光子31、32間に、2つのガラス板40、40、透明電極41、41、および配向膜42、42で挟まれた液晶層43を設けてなる。
【0033】
液晶層43は、液晶分子をベンド配向させることにより、液晶部分の光学特性を簡単化している。このようなベンド配向を実現させるために、液晶層43は、上下の基板表面における液晶分子を逆向きに傾斜させたものが用いられる。電圧源33、または34により、透明電極41、41間にある特定の電圧を印加すると、液晶層43はベンド配向をするか、セル中央部にねじれ配向が存在する配向をとる。このいずれの配向でも電気光学的には殆ど等しいため、液晶層43の特性は、ベンドセルで代表することができる。このような配向特性を持つ液晶層43は、電圧の変化に対する液晶の配向変化の応答が速い。このため、この液晶層43を用いることにより、高速な応答速度を実現することができる。
【0034】
波長可変液晶フィルタ14は、液晶の配向応答時間が速く、設定中心透過波長λ0(例えば、赤光透過用波長可変液晶フィルタでは650nm、緑光透過用波長可変液晶フィルタでは550nm、青光透過用波長可変液晶フィルタでは450nm)の整数倍からなるセル厚dを有する電界制御複屈折セル30a〜30cを備えた複数の平行ニコル液晶セルと垂直ニコル液晶セルとを組み合わせ、各液晶セルに印加する電位を多段に変更することによって、100nm波長帯域内において、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下からなる狭帯域幅の透過光を生成することができ、100nm波長帯域内に複数の異なるピークを有する狭帯域幅の透過光を選択的に出力させることができる。
【0035】
本発明者らの実験によれば、RGBの各設定中心透過波長λ0が設定された波長可変液晶フィルタ14に対して、電圧源33、または34の印加電圧を任意に変化させることにより、例えば、半値幅を10nmとしたときには10%程度の透過率を有する透過光が得られ、半値幅を20nmとしたときには25%程度の透過率を有する透過光が得られることが確認されている。
【0036】
さらに、本発明者らの実験によれば、電圧源33、または34の印加電圧を変化させ、波長可変液晶フィルタ14から出力させることにより、ピーク波長を1nm刻みで変化させた透過光の分光特性を得ることも可能であることが確認されている。
【0037】
ここで、透過光の半値幅と透過率とは、トレードオフの関係にある。すなわち、半値幅は、波長可変液晶フィルタ14のセル膜厚が最大のものによって決まると考えられ、膜厚が大きいほど半値幅を小さくすることができ、急峻な分光波長を得ることができるのに対し、膜厚が大きいほど透過率が下がる。この結果、半値幅を小さくしてより狭帯域幅の透過光を得ようとすると透過率が落ち込み、逆に透過率を上げようとすると透過光の半値幅がブロードになる。したがって、透過光の半値幅が100nm波長帯域の1/2以下となるように波長可変液晶フィルタ14のセル膜厚が選択されることが好ましく、さらには、上記透過光の半値幅が100nm波長帯域の1/3以下となるようにセル膜厚が選択されることが好ましい。
【0038】
透過光特性における半値幅と透過率とのトレードオフの関係を考慮して、透過率を20%程度、半値幅を20nm程度とした場合、R、G、およびBの各波長可変液晶フィルタ14への印加電圧を各々微細に変化させることによって、10nm刻み(即ち、400nm、410nm、420nm、・・・690nm、700nm)で、図6に示すような任意の透過光の分光特性を得られることが確認されている。また、波長可変液晶フィルタ14のλ0を変更することにより、電圧源33、または34への印加電圧を変化させて、紫外線領域から赤外線領域までの幅広い分光透過光をも得ることが可能であると考えられる。なお、図6の(a)〜(c)は、それぞれRGBの各設定中心透過波長λ0が設定された波長可変液晶フィルタ14の分光透過特性を表す。
【0039】
上記の説明にあっては、波長可変液晶フィルタ14として、RGBの各波長可変液晶フィルタ14を単独で用いる例を挙げたが、図7に示すように、RGBの各設定中心透過波長λ0が設定された波長可変液晶フィルタ14を組み合わせて、可視光域(400〜700nm)全域、あるいは近紫外および/または近赤外領域を含む幅広い波長帯域で、100nm波長帯域内において複数のピークを有し、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下、好ましくは1/3以下からなる複数の狭帯域幅の透過光を選択的に得ることが可能となる。
【0040】
図7において、RGBの波長可変液晶フィルタ14R、14G、14Bは、クロスプリズム50の3面に取り付けられ、駆動回路15により順次に駆動電圧が供給される。各波長可変液晶フィルタ14R、14G、14Bには、コンデンサレンズ51R、51G、51Bを介して、連続または複数の輝線スペクトルを有する光、例えばハロゲン光源から各色光52R、52G、52Bが順次に入射される。
【0041】
波長可変液晶フィルタ14R、14G、14Bへの駆動電圧の印加と、各色光52R、52G、52Bの入射とは同期して行われる。つまり、波長可変液晶フィルタ14R、14G、14Bの各液晶セルに複数の電圧が多段に印加されたときに、各色光52R、52G、52Bが入射される。これにより、100nm波長帯域内において複数のピークを有し、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下、好ましくは1/3以下からなる複数の各色成分の狭帯域幅の分光透過光53が、コンデンサレンズ54を介して出力される。
【0042】
この例においては、各波長可変液晶フィルタ14R、14G、14Bに入射する各色光52R、52G、52Bは、連続または複数の輝線スペクトルを有する光、例えばハロゲン光源からの光を用いたが、これら入射光52R、52G、52Bは、各々の帯域からなる分光成分のみを入射させてもよい。さらに、分光透過光53のうちの各分光帯域(RGBの分光帯域)以外のサイドピーク光の透過を遮断するためのフィルタを、分光透過光53の出力と連動して挿入してもよい。
【0043】
波長可変液晶フィルタ14を図7に示すような構成とすることにより、可視光域(400〜700nm)全域に渡って、100nm波長帯域内において、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下、好ましくは1/3以下からなる狭帯域幅の分光透過光を複数連続して得ることができ、さらには、紫外線領域から赤外線領域までの幅広い波長帯域の分光透過光を連続して得ることもできる。
【0044】
さらに、図7に示すクロスプリズム50に代えて、各波長可変液晶フィルタ14R、14G、14Bをスライド基板上に配置し、これを自動的にスライドさせて光路内に順次挿入・離脱させてもよく、あるいは回転円板(ターレット円板)に各波長可変液晶フィルタ14R、14G、14Bを配置し、これを自動的に回転させることによって、光路内に順次挿入・離脱させるような機構を設けてもよい。この場合も、光路内に挿入された波長可変液晶フィルタ14に複数の駆動電圧を多段に印加することは、前述した図7に示す態様と同様であることはいうまでもない。上記のようなスライドや回転機構を設けることによっても、可視光域(400〜700nm)全域に渡って、100nm波長帯域内において、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下、好ましくは1/3以下からなる複数の狭帯域幅の分光透過光を連続して複数得ることができ、さらには、紫外線領域から赤外線領域までの幅広い波長帯域の分光透過光を連続して得ることもできる。
【0045】
なお、上記実施形態に、図12に示す従来技術を加えて、標準電子回路パターンを撮像して演算処理装置にメモリする場合、半導体ウエハ10上に形成された微細な電子回路パターンの特性(例えば、線幅、配線方向など)に対し、異物のサイズ、方向などに応じて検査条件を段階的に設定してもよい。これにより、電子回路パターンの特性に対して、欠陥の大きさ、方向性などの諸条件を加味した検査条件を設定することができる。
【0046】
また、同様にして、上記実施形態に、図13に示す従来技術を加えて、同一エリア内において、取得した複数の分光画像毎に、第1の検査条件で設定されたレイヤ200と、第2の条件で設定されたレイヤ201とを重ね合わせ、さらに、例えば膨張/収縮などのフィルタ処理を行って新たなレイヤ202からなるエリア設定を得るようにしてもよい。
【0047】
以上説明したように、半導体ウエハ10の検査対象面10aの撮像に際して、コンピュータ17の制御の下に、駆動装置15を介して波長可変液晶フィルタ14に多段の電位を順次変更して印加し、波長可変液晶フィルタ14から順次狭帯域の分光透過光を出力して、撮像装置13でこの分光透過光の撮像を行えば、理論的には、図8に示す色度図チャートにおける全ての分光波長の透過光による狭帯域幅の分光画像を得ることが可能となる。
【0048】
このように、半導体外観検査装置2a、2bにおいて、波長可変液晶フィルタ14を制御して任意の波長からなる複数の狭帯域幅の分光画像を撮像装置13で撮像して、これをコンピュータ17のメモリに記憶することができるから、白黒画像の濃度変化分としても表れにくく、カラー画像の色彩の差異としても表れにくい極めて微細な色彩の相違を発生する欠陥、例えば、金属スパッタ生成膜における膜厚の相違、レジスト樹脂あるいはポリイミド樹脂の塗布ムラ、アルミパット部におけるエッチング後のメタル層表面の荒れ、スクラッチなどの浅い傷、あるいは酸化膜、アルミ表面の変色、汚れなどの欠陥を確実に検出することができる。
【0049】
また、標準の半導体ウエハ、および検査すべき半導体ウエハの各々における複数の狭帯域幅の分光画像を、その分光波長情報とともにコンピュータ17のメモリに記憶し、任意の波長毎に標準電子回路パターンの画像と検査すべき電子回路パターンの画像とを比較することができる。これにより、標準電子回路パターンの画像と検査すべき電子回路パターンの画像とを減算するなどの適当な演算処理を行うことで、任意の波長の分光画像毎に欠陥情報を検出することも可能となる。同様に、検査すべき半導体ウエハにおいて異なる波長の分光画像同士を比較して欠陥情報を検出することも可能である。
【0050】
図9は、上記のようにして任意の波長毎に標準電子回路パターンの画像あるいは検査すべき電子回路パターンの画像を撮像して得られた分光画像を、コンピュータ17のメモリ内に蓄積した状態を模式的に示す図であり、複数の色味の異なる分光画像(図中ではハッチングの角度で表している。)が、標準電子回路パターンあるいは検査すべき電子回路パターン毎に記憶されている。なお、図中では、一例として、波長460nm〜660nm(20nm刻み)における11枚の分光画像が蓄積された状態を表す。
【0051】
図10(a)は、上記の複数の波長の分光画像のうちの1つの波長の標準電子回路パターンの画像を表している。また、(b)は、同じ波長の検査すべき電子回路パターンの画像を表している。検査すべき電子回路パターンの画像には、欠陥60が観測される。この欠陥60は、ある波長の分光画像では出現しないか、あるいはその出現が目立たないものであり、図10(b)で示すその波長の分光画像でのみ出現するものである。
【0052】
コンピュータ17で(a)、(b)に示す分光画像を減算処理すると、(c)に示す差分画像が得られる。コンピュータ17は、この差分画像を、元の分光画像の分光波長情報を参照して演算処理することにより、欠陥の大きさ、微細な電子回路パターンの特性(例えば、線幅、配線方向など)に対し、異物のサイズ、方向などに応じて検査条件を段階的に設定した場合などに、自動的に検出を行うことができる。さらに、上記の欠陥60が出現した分光画像の波長に基づいて、欠陥60の発生原因の推定を行うこともできる。
【0053】
以下、上記構成を有する半導体外観検査装置2a、2bの動作について説明する。まず、リファレンスとなる標準の半導体ウエハを検査ステージ11上に載置し、照射光学系12の光源18を点灯させて、連続または複数の輝線スペクトルを有する光を発生させる。
【0054】
半導体外観検査装置2aの場合、光源18からの光は、コリメートレンズ19で適宜拡大され、標準の半導体ウエハの検査対象面に照射される。検査対象面で反射した反射光は、波長可変液晶フィルタ14の前方に設けられた集光レンズ20により集光され、波長可変液晶フィルタ14を透過して撮像装置13に入射されて撮像される。一方、半導体外観検査装置2bの場合、光源18からの光は、波長可変液晶フィルタ14を透過して、コリメートレンズ19で適宜拡大され、標準の半導体ウエハの検査対象面に照射される。標準の半導体ウエハの検査対象面で反射した特定の波長光からなる反射光は、集光レンズ20を透過して撮像装置13に入射されて撮像される。
【0055】
波長可変液晶フィルタ14に入射された光は、コンピュータ17の制御の下に、駆動回路15を介して、波長可変液晶フィルタ14の各液晶セルに印加する電位が多段に変更されることによって、100nm波長帯域内において、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下、好ましくは1/3以下からなる狭帯域幅の透過光として生成され、100nm波長帯域内に複数の異なるピークを有する狭帯域幅の透過光として出力される。撮像装置13では、波長可変液晶フィルタ14で出力された複数のピーク波長を有する透過光による複数の波長の分光画像(標準の半導体ウエハの標準電子回路パターンの画像)が撮像される。
【0056】
ここで、波長可変液晶フィルタ14として、図7に示す構造のものを用いた場合は、可視光域(400〜700nm)全域、あるいは近紫外および/または近赤外領域を含む幅広い波長帯域で、100nm波長帯域内において複数のピークを有し、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下、好ましくは1/3以下からなる複数の狭帯域幅の透過光を選択的に得ることが可能となり、この透過光による幅広い波長帯域の分光画像を複数得ることができる。
【0057】
撮像装置13で撮像された標準の半導体ウエハの標準電子回路パターンの画像は、波長可変液晶フィルタ14に設定された分光波長情報が対応付けられて、コンピュータ17のメモリ内に蓄積される。
【0058】
標準電子回路パターンの画像の取得後、標準の半導体ウエハに代えて、検査すべき半導体ウエハ10を検査ステージ11上に載置し、上記と同様の手順にて、検査すべき半導体ウエハ10の電子回路パターンの画像を撮像装置13で撮像し、これをコンピュータ17のメモリに記憶する。
【0059】
検査すべき電子回路パターンの画像の記憶後、コンピュータ17では、標準電子回路パターンの画像と検査すべき電子回路パターンの画像とが複数の波長毎に比較され、欠陥の検出が行われる。
【0060】
以上、本発明の実施例について詳細に説明を行ったが、本発明はさらに種々の応用が可能である。例えば、波長可変液晶フィルタ14を介して半導体ウエハ10の検査対象面10aに狭帯域幅の照射光を照射し、この反射光を撮像装置13で撮像し(図2)、あるいは、半導体ウエハ10の検査対象面10aに照射光を照射して得た反射光を、波長可変液晶フィルタ14を介して狭帯域幅の分光画像として撮像装置13で撮像し(図1)、これにより得た狭帯域幅の分光画像に、例えば、レジスト樹脂あるいはポリイミド樹脂の特定の膜厚に起因する干渉縞の如き紋様が発生している場合には、上記した狭帯域幅の分光画像に加えて、かかる縞を検出することによって半導体ウエハ10の検査対象面10aにおける欠陥を検出することも可能である。同様に、上記した狭帯域幅の分光画像に偏光成分が含まれている場合には、この偏光情報に基づいて、半導体ウエハ10の検査対象面10aにおける欠陥を検出することができる。また、検査対象面10aにおけるスペクトラムデータ(例えば、ウエハ上のアルミ配線と銅配線のスペクトラムデータ)を予め記憶しておき、得られた画像情報から、このスペクトラムデータを差し引くようなアルゴリズムを設定すれば、ごみなどの異物の検出をさらに容易にすることが可能である。さらに、波長可変液晶フィルタ14が温度ドリフト特性を有する場合、本発明の半導体外観検査装置2a、2b、あるいは波長可変液晶フィルタモジュール内に温度センサを設けておき、この温度センサで検出された温度に基づいて、駆動回路15に印加する電圧値を変更するように、コンピュータ17で制御を行うようにしてもよい。
【0061】
以上詳細に説明したように、本発明の半導体外観検査装置は、固定的な波長の透過特性を有する光学フィルタの使用に代えて、波長可変液晶フィルタを用いることを特徴としている。従って、本発明によれば、その実効光路長が、設定された中心透過波長の整数倍となるような厚みを有する液晶デバイスを少なくとも1つ有する複数の平行ニコル液晶セルと垂直ニコル液晶セルとを組み合わせ、各液晶セルに印加する電位を多段に変更することによって、100nm波長帯域内において複数のピークを有し、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下、好ましくは1/3以下からなる複数の狭帯域幅の透過光を生成する波長可変液晶フィルタと、波長可変液晶フィルタの各液晶セルに複数の電位を順次切り替えて印加する駆動回路とからなる透過特性切替装置を備えたので、100nm波長帯域内において複数の波長の分光画像を順次に撮像することが可能となり、半導体ウエハあるいはペレットの外観検査を行う際に、白黒画像の濃度変化分としても表れにくく、カラー画像の色彩の差異としても表れにくい極めて微細な色彩の相違を成分欠陥として確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明を適用した半導体外観検査装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明を適用した半導体外観検査装置の概略構成を示す図である。
【図3】波長可変液晶フィルタの構成例を示す図である。
【図4】波長可変液晶フィルタの構成例を示す図である。
【図5】液晶セルの構成例を示す図である。
【図6】透過光の分光透過特性の一例を示すグラフである。
【図7】波長可変液晶フィルタの構成例を示す図である。
【図8】色度図チャートを示すグラフである。
【図9】撮像装置で撮像した複数の分光画像をコンピュータのメモリ内に蓄積した状態を模式的に示す説明図である。
【図10】複数の波長の分光画像のうちの1つの波長の分光画像の例を示す説明図であり、(a)は標準電子回路パターンの画像、(b)は検査すべき電子回路パターンの画像、(c)はこれらの画像の差分画像をそれぞれ示す。
【図11】従来の半導体外観検査装置の概略構成を示す図である。
【図12】電子回路パターンの各エリアの特性に応じて検査条件を設定する従来の半導体外観検査技術の例を示す図であり、(a)は電子回路パターンに対して欠陥が影響を及ぼすものとして検査不合格と認定される場合、 (b)は電子回路パターンに対して欠陥が影響を及ぼさないものとして検査合格と認定される場合をそれぞれ示す。
【図13】検査条件を変化させたレイヤ毎の重ね合わせによって検査条件を設定する従来の半導体外観検査技術の例を示す図であり、(a)は第1の検査条件で設定されたレイヤ、(b)は第2の検査条件で設定されたレイヤ、(c)は膨張/収縮などのフィルタ処理を行って生成した新たなレイヤをそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0063】
2a、2b 半導体外観検査装置
10 半導体ウエハ
13 撮像装置
14 波長可変液晶フィルタ
15 駆動回路
16 透過特性切替装置
17 コンピュータ
18 光源
30a〜30c 電界制御複屈折セル
31a〜31c、32 偏光子
33a〜33c、34 電圧源
43 液晶層
50 クロスプリズム
53 分光透過光
60 欠陥


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体の検査対象面に光を照射する光源と、
前記検査対象面で反射した反射光から、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下からなる狭帯域幅のピークを有する透過光を生成するとともに、前記100nm波長帯域内において、前記透過光を複数の波長で選択的に出力させるようにした透過特性切替装置と、
前記透過特性切替装置からの透過光を分光画像として撮像する撮像装置と、
前記分光画像を記憶する記憶装置とを備え、
前記透過特性切替装置は、その実効光路長が設定中心透過波長の整数倍からなるように厚みが設定された液晶デバイスを少なくとも1つ有する複数の平行ニコル液晶セルおよび垂直ニコル液晶セルを組み合わせてなる波長可変液晶フィルタと、
各液晶セルに複数の電位を多段に切り替えて印加する駆動回路とから構成されることを特徴とする半導体外観検査装置。
【請求項2】
光源と、
前記光源と半導体の検査対象面との間に設けられ、前記光源からの光から、少なくともその半値幅が100nm波長帯域の1/2以下からなる狭帯域幅のピークを有する透過光を生成するとともに、前記100nm波長帯域内において、前記透過光を複数の波長で選択的に出力させて前記検査対象面に照射するようにした透過特性切替装置と、
前記検査対称面で反射した前記透過光を分光画像として撮像する撮像装置と、
前記分光画像を記憶する記憶装置とを備え、
前記透過特性切替装置は、その実効光路長が設定中心透過波長の整数倍からなるように厚みが設定された液晶デバイスを少なくとも1つ有する複数の平行ニコル液晶セルおよび垂直ニコル液晶セルを組み合わせてなる波長可変液晶フィルタと、
各液晶セルに複数の電位を多段に切り替えて印加する駆動回路とから構成されることを特徴とする半導体外観検査装置。
【請求項3】
前記波長可変液晶フィルタは、前記設定中心透過波長の異なる複数の波長可変液晶フィルタが組み合わされ、
前記複数の波長可変液晶フィルタに、個別に前記検査対象面で反射した反射光、または前記光源からの光を入射させ、前記透過光を出力させるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体外観検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−165352(P2006−165352A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356054(P2004−356054)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【出願人】(593102345)イノテック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】