説明

半導体装置、高周波回路、および高周波電力増幅装置

【課題】マルチバンド又はマルチモードに適した半導体装置、高周波回路を提供する。
【解決手段】半導体基板301上に電界効果型トランジスタを形成してなる半導体装置であって、電界効果型トランジスタのソース電極およびドレイン電極としてのオーミック電極501a、501bと、前記オーミック電極501a、501bに挟まれた位置に設けられた、前記電界効果型トランジスタのゲート電極としてのショットキー電極601a、601cと、ショットキー電極601a、601cに挟まれた位置に設けられたショットキー電極601bとを備え、ショットキー電極601bが接地されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信機器等に用いられる信号の切り替えを行うスイッチ回路及び高周波電力増幅装置の技術、さらに詳しくは半導体装置、高周波回路、高周波電力増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話のマルチバンド化、マルチモード化が進み、電界効果トランジスタ(FET)を用いた高周波スイッチの更なる高性能化(低損失)が求められている。しかし、FETを用いた高周波スイッチは大電力入力時にアイソレーション(素子間分離)特性が劣化するという短所を有しており、これを改善するために複数のFETを直列に接続する方法が用いられている。そこで、マルチゲート構造により、アイソレーション特性を向上させたスイッチ回路が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
図14は、特許文献1に記載されたスイッチ回路の構成を示した図である。
図14に示す従来のスイッチ回路は、送信側端子Txとコモン端子COMとの間に接続されたスイッチトランジスタQ1と、コモン端子COMと受信側端子Rxとの間に接続されたスイッチトランジスタQ2とからなる。ここで、送信側端子Txは図外のパワーアンプの出力端子に接続され、コモン端子COMは図外のアンテナに接続され、受信側端子Rxは図外の受信系回路の入力端子に接続される。
【0004】
スイッチトランジスタQ1、Q2としてはディプレッション型のHEMTが用いられ、それぞれ1つのチャネルに対応して3つのゲート電極が形成されたトリプルゲートの素子として構成されている。
【0005】
このトリプルゲート構造により、隣接するゲート領域間にソース電極やドレイン電極を設ける領域がない分だけチャネルが短くなり、またソース抵抗とドレイン抵抗がない分だけオン抵抗Ronを小さくすることができ、挿入損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4202852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術のスイッチ回路を構成するスイッチトランジスタQ1、Q2をオフにする場合は、マルチゲート直下の空乏層容量が直列に接続される構造である。このため、オフ経路のインピーダンスを小さくすることができず、オフ経路の両端のアイソレーションが不十分であるという問題がある。
【0008】
また、従来技術のスイッチ回路を、マルチバンド、マルチモード電力増幅器の負荷回路において、バンドまたはモードに応じて伝送線路を選択する伝送線路選択用回路として用いた場合、従来のスイッチ回路は、負荷インピーダンスを変換することができないため、電力増幅器の効率特性が劣化してしまう問題がある。よって、従来のスイッチ回路は、マルチバンド化、マルチモード化に適してないと言える。
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、空乏層容量が直列接続のみでありアイソレーションが不十分であること、および負荷インピーダンス変換を施すことができないことを解決するものである。
【0010】
すなわち、マルチゲートFETを用いて構成され、良好なアイソレーション特性を実現することができると共に、電力増幅器の負荷回路における伝送線路選択回路として用いた場合にも負荷インピーダンスを適切に変換することができる半導体装置、および前記半導体装置を用いた高周波回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した問題を解決するために、本発明の半導体装置は、半導体基板上に電界効果型トランジスタを形成してなる半導体装置であって、前記電界効果型トランジスタのソース電極およびドレイン電極としての第1オーミック電極および第2オーミック電極と、前記第1オーミック電極および第2オーミック電極に挟まれた位置に設けられた、前記電界効果型トランジスタのゲート電極としての第1ショットキー電極および第2ショットキー電極と、前記第1ショットキー電極および第2ショットキー電極に挟まれた位置に設けられた第3ショットキー電極とを備え、前記第3ショットキー電極が接地されている。
【0012】
また、前記第1ショットキー電極と第2ショットキー電極とが接続されていてもよい。
また、前記第3ショットキー電極直下に注入ドープ層が形成されていてもよい。
【0013】
本発明の高周波回路は、高周波信号を増幅することにより増幅信号を出力する増幅回路と、前記増幅回路の出力に第1端が接続された容量と、複数の前記半導体装置とを備え、複数の前記半導体装置それぞれの第1オーミック電極が前記容量の第2端に接続されている。
【0014】
前記高周波回路は、さらに、前記増幅信号の所定の特性量を検出する検出部と、複数の前記半導体装置に形成された前記電界効果型トランジスタのうち、前記検出部にて検出された特性量に応じた1つを導通させ、他を遮断させる制御部とを備えてもよい。
【0015】
前記検出部は、前記所定の特性量として、前記増幅信号の周波数、平均電力、およびピーク電力のいずれかを検出してもよい。
【0016】
前記高周波回路は、さらに、前記検出部で検出された前記増幅信号の平均電力またはピーク電力に応じたバイアス電流またはバイアス電圧を表すバイアス出力を前記増幅回路に供給するバイアス回路を備えてもよく、さらに前記検出部で検出された前記増幅信号の平均電力またはピーク電力に応じた電源電圧を前記増幅回路に供給する電源回路を備えてもよい。
【0017】
また、本発明は、前記高周波回路における、前記電界効果型トランジスタと、前記増幅回路の少なくとも一部とが、1つの半導体基板上に形成された高周波電力増幅装置として実現することもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来の課題である、オフ容量が直列接続のみでありアイソレーションが不十分であること、および負荷インピーダンス変換を施すことができないことを解決することができ、マルチバンド、マルチモードに適した半導体装置、及び高周波電力増幅器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の等価回路図
【図3】(a)本発明の実施の形態1、従来技術におけるスイッチ回路の入力インピーダンスを比較した図、(b)本発明の実施の形態1、従来技術におけるスイッチ回路のアイソレーションを比較した図
【図4】本発明の実施の形態2に係る高周波回路の構成例を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態3に係る半導体装置の断面図
【図6】本発明の実施の形態4に係る高周波回路の構成例を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態4、従来技術における増幅回路10のPAEを比較した図
【図8】本発明の実施の形態5に係る高周波回路の構成例を示すブロック図
【図9】本発明の実施の形態6に係る高周波回路の構成例を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態7に係る高周波回路の構成例を示すブロック図
【図11】(a)増幅回路10より出力される増幅信号の電力の時間経過を示す波形図、(b)増幅回路10より出力される増幅信号の電力の時間経過を示す波形図
【図12】(a)図11(b)に示す増幅信号を生成する場合の電力効率を表す特性図、(b)図11(a)に示す増幅信号を生成する場合の電力効率を表す特性図、(c)線形動作範囲RLNをピーク電力PB以下からピーク電力PA以下に低下させた場合の電力効率を表す特性図
【図13】本発明の実施の形態8に係る高周波回路の構成例を示すブロック図
【図14】特許文献1に開示されたスイッチ回路の構成を示した図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明に係る各実施の形態について説明する。なお、図面において、実質的に同一の構成、動作、および効果を表す要素については、同一の符号を付すものとする。また、以下に記述される数字は、すべて本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は以下に記述される数字に限定されるものではない。さらに、以下の各実施の形態における構成要素間の接続関係は、本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0021】
また、以下の各実施の形態における各構成要素は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを用いて構成されるが、ハードウェアを用いる構成要素は、ソフトウェアを用いても構成可能であり、ソフトウェアを用いる構成要素は、ハードウェアを用いても構成可能である。
【0022】
[実施の形態1]
実施の形態1では、アイソレーション向上に適した半導体装置を例に挙げて説明する。
【0023】
図1は本発明の実施の形態1に係る半導体装置としてのMESFET(MEtal−Semiconductor Field Effect Transistor)を示す図である。図1において、本実施の形態に係る半導体装置は、キャップ層101、チャネル層201、半導体基板301、空乏層401a〜401c、オーミック電極501a〜501b、ショットキー電極601a〜601c、バイアス端子701、801、802、ゲート端子抵抗901a、901cを含む。
【0024】
図1に示すように半導体基板301の上にチャネル層201、キャップ層101が形成された構造である。また、キャップ層101の上にはソースおよびドレイン用のオーミック電極501a、501b、ゲート用のショットキー電極601a〜601cが形成されている。
【0025】
図1に示すマルチゲート構造のFETは、従来技術においてはショットキー電極601a〜601cに同じ電位を与えて使用されるが、本発明においては2つのショットキー電極601a、601cに挟まれたショットキー電極601bを接地して動作させる。
【0026】
実際に使用する場合にはバイアス端子801から高周波信号を入力し、バイアス端子802から高周波信号を取り出す。
【0027】
スイッチをオン動作(バイアス端子801、802間を導通)させる場合は、ソースおよびドレインとして使用するバイアス端子801、802に直流電圧0Vを印加し、かつゲートとして使用するショットキー電極601a、601cにバイアス端子701から直流電圧0.5Vを印加し、空乏層401a、空乏層401cを小さくし、高周波信号を通過させる。
【0028】
それに対して、スイッチをオフ動作(バイアス端子801、802間を遮断)させる場合は、ソースおよびドレインとして使用するバイアス端子801、802に直流電圧0Vを印加し、かつゲートとして使用するショットキー電極601a、601cに直流電圧−3Vを印加し、空乏層401a、空乏層401cの幅を大きくし高周波信号を通過させないようにする。また、接地させているショットキー電極601bの下部には拡散電位により維持される空乏層401bが形成されている。
【0029】
図2を用いて、図1の半導体装置のアイソレーション特性が、従来技術の使い方をした場合と比べて改善する原理を説明する。ここで、従来技術の使い方とは、ショットキー電極601bを接地せず、ショットキー電極601a〜601cに同じ電位を与える使い方を言う。
【0030】
図2は、図1の半導体装置の等価回路図としての、入力端子20、出力端子21−1、伝送線路40−1を有する一入力一出力型スイッチ(Single Pole Single Throw)回路である。これに対して、従来技術による等価回路は、たとえば図14のQ1またはQ2で表される。
【0031】
図1のショットキー電極601a、601cをゲートとして使用するため、スイッチトランジスタTr1−1、Tr2−1による2段構成となり、スイッチトランジスタTr1−1、Tr2−1のゲートにゲート抵抗Rg1−1、Rg2−1を接続し、バイアス端子701と接続される。
【0032】
ショットキー電極601bを接地しているためショットキー電極601bの直下に空乏層が形成される。この空乏層を容量で表現すると、図2に示すようにTr1−1、Tr2−1の間に空乏層容量81−1が配置された等価回路となる。
【0033】
スイッチトランジスタTr1−1、Tr2−1は、オンの場合は抵抗成分、オフの場合は容量成分として表現される。アイソレーションはスイッチオフ時の特性であるため、スイッチトランジスタTr1−1、Tr2−1を容量として考える。なお、オフ時の容量成分(オフ容量)は、使用するスイッチトランジスタのデバイスサイズに依存した定数である。ここでは、一例としてスイッチトランジスタ一つあたりオフ容量0.5pF程度とするがこれに限定されるものではない。
【0034】
図3(a)、図3(b)に、従来技術によるアイソレーションと本発明によるアイソレーションとを計算し比較した結果を示す。計算条件としては、オフ容量0.5pFとし、高周波信号の周波数は100MHzから10GHzである。
【0035】
図3(a)は、本発明(図2の等価回路)および従来技術のそれぞれのインピーダンス特性を示すチャートであり、図3(b)は、本発明(図2の等価回路)および従来技術のそれぞれのアイソレーション特性を示すグラフである。
【0036】
図3(a)において、入力信号の周波数が2MHzのとき、従来技術の入力インピーダンスm3は50.0−j453.9Ω、本発明の入力インピーダンスm4は5.8−j200.3Ωとなる。この差は、本発明においては接地容量が存在する分だけ、インピーダンスが低い方へ回るためである。
【0037】
また、図3(b)において、入力信号の周波数が2MHzのとき、従来技術のアイソレーションm2は13.3dB、本発明のアイソレーションm1は15.6dBとなり2dB以上改善する。
【0038】
また、図2における空乏層容量81−1(図1における空乏層401bの容量)は、バイアス端子701に印加されるバイアス電圧の値によって、変化させることができる。これはショットキー障壁における空乏層幅はバイアス電圧によって変化するためである。
【0039】
以上のように、実施の形態1によれば、ショットキー電極601bを接地することにより、接地電位に応じて形成される可変の空乏層容量により、入力インピーダンスを小さくすることができ、アイソレーションを改善することができる。したがって、実施の形態1によればマルチバンド化、マルチモード化に適した半導体装置を提供することができる。
【0040】
[実施の形態2]
図4は、本発明の実施の形態2に係る高周波回路の構成例を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波回路は、図2に示した実施の形態1に係る高周波回路に対し、2つ以上の経路をもつ点で異なる。具体的にはバイアス端子701が制御部70に置き換えられる点、伝送線路40−2〜40−n(nは2以上の整数)、空乏層容量81−2〜81−n、及び出力端子21−2〜21−nがさらに設けられる点が異なる。
【0041】
また、図4における点線で囲んでいる部分(例えば、Tr1−1、Tr2−1、及び81−1からなるトランジスタ回路51−1)は半導体基板上に形成される。以下、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。実施の形態1と同等の構成、および当該構成の効果については説明を省略する。
【0042】
本実施の形態に係る高周波回路は1入力n出力のSPDT(Single Pole Dual Throw)動作を行うスイッチ回路である。各スイッチトランジスタ回路Tr1−1〜Tr1−n、Tr2−1〜Tr2−nは制御部70からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行うことによって、第1〜第n経路の中からいずれか1つの経路を導通(オン)させるとともに他の経路を遮断(オフ)させ、伝送線路40−1〜40−nの中からいずれか1つの伝送線路を選択する。
【0043】
以上のような実施の形態2によれば、伝送線路の数が増加するので、伝送される信号の種類数を増やすことができる。このため、実施の形態2に係る高周波回路は、用いられる高周波信号の種類数が多いマルチバンド対応の携帯電話等に関して、特に有益である。
【0044】
[実施の形態3]
実施の形態3では、アイソレーション向上に適した半導体装置を例に挙げて説明する。
【0045】
図5は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置(MESFET)を示す図である。本実施の形態に係る半導体装置は、図1に示した実施の形態1に係る半導体装置に対し、注入ドープ層を持つ点で異なる。具体的には注入ドープ層1001がショットキー電極601bの下部に形成されている。以下、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。実施の形態1と同等の構成、および当該構成の効果については説明を省略する。
【0046】
注入ドープ層1001を形成することにより、ショットキー電極601b下部に形成される空乏層401bの幅が実施の形態1の場合とは異なる。つまり、注入ドープ層1001を形成する幅によって空乏層401bの幅を制御することで、実施の形態1における図2の空乏層容量81−1(空乏層401bの容量)を変化させることができるので、アイソレーション特性設計の自由度が向上する。
【0047】
以上のような実施の形態3によれば、アイソレーション特性の自由度が向上し、マルチバンド化、マルチモード化に適した半導体装置を提供できる。
【0048】
[実施の形態4]
実施の形態4では、マルチバンド化に適した高周波回路を例に挙げて説明する。
【0049】
図6は、本発明の実施の形態4に関わる。本実施の形態4に係わる高周波回路は、図4に示した実施の形態2に係る高周波回路に対し、増幅回路を有することが異なる。
【0050】
具体的には、周波数検出部60が制御部70と接続される点、伝送線路40−1、40−2とスイッチトランジスタTr1−1、Tr1−2とに電位固定用抵抗R1−1〜R1−2、R2−1〜R2−2が接続される点、入力端子20の後ろに増幅回路10および電源回路92が接続される点、増幅回路10の後ろにスイッチ入力側DCカット容量30、伝送線路40−1、40−2に各々出力側DCカット容量90−1、90−2が配置さている点が異なる。以下、実施の形態2と異なる点を中心に説明する。実施の形態2と同等の構成、および当該構成の効果については説明を省略する。
【0051】
図6の例では、高周波信号の周波数は2種類あるとし、周波数f1の高周波信号をS1とし、周波数f2の高周波信号をS2としている。なお、周波数f1と周波数f2は典型的には異なっており、例えばf1<f2とする。具体例として、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)バンドIIIを包含する1710〜1785MHzをf1とし、UMTSバンドIを包含する1910〜1980MHzをf2とすることが挙げられるが、これに限定されるものではない。また図6の例では、高周波信号の周波数に応じて伝送線路を選択するものとし、高周波信号S1が通過する伝送線路を40−1とし、高周波信号S2が通過する伝送線路を40−2としている。
【0052】
また図6の例では、伝送線路40−1が選択された場合に増幅回路10から増幅回路10の出力側をみた負荷インピーダンスをZ1とし、伝送線路40−2が選択された場合に増幅回路10から増幅回路10の出力側をみた負荷インピーダンスをZ2としている。
【0053】
増幅回路10は、増幅素子を含む最終段の増幅回路であり、入力端子20に入力された高周波信号を電力増幅し、増幅信号を出力する。スイッチ入力側DCカット容量30は、増幅回路10の出力と接続される。スイッチ入力側DCカット容量30の出力は、スイッチ回路と接続される。
【0054】
スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1は、各々のゲート端子に入力される制御部70からの共通の制御信号によって、オン又はオフする。同様に、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2は、各々のゲート端子に入力される制御部70からの共通の制御信号によって、オン又はオフする。
【0055】
周波数検出部60は、増幅回路10から出力される増幅信号の周波数を検出する。ここでは一例として、周波数検出部60は、高周波信号S1に基づく増幅信号が出力された場合に周波数f1を検出し、高周波信号S2に基づく増幅信号が出力された場合に周波数f2を検出する。
【0056】
制御部70は、周波数検出部60で検出された周波数に基づいて、伝送線路の選択情報を表す制御信号を生成し、各スイッチトランジスタのゲートへ出力する。
【0057】
具体的には、周波数f1が検出された場合、制御部70は、スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1のゲートにオン信号を出力し、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2のゲートにオフ信号を出力する。この場合、高周波信号S1に基づく増幅信号は、スイッチ入力側DCカット容量を介して第1経路(スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1、伝送線路40−1)を通過し、出力端子21−1から出力される。
【0058】
同様に周波数f2が検出された場合、制御部70は、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2のゲートにオン信号を出力し、スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1のゲートにオフ信号を出力する。この場合、高周波信号S2に基づく増幅信号は、スイッチ入力側DCカット容量を介して第2経路(スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2、伝送線路40−2)を通過し、出力端子21−2から出力される。
【0059】
空乏層容量81−1は先述したようにショットキー電極下部の空乏層により形成され、オフ経路のアイソレーション向上に寄与する。オフ経路のアイソレーション向上はオン経路における信号損失を小さくするため、増幅回路の良好な効率を得ることができる。
【0060】
また、さらに高周波回路におけるキャパシタンスはインピーダンス変換に寄与できるため、周波数f1において、負荷インピーダンスZ1を増幅回路10より最大の効率かつ最大の出力を取り出すことのできる負荷インピーダンスに変換する。同様に空乏層容量81−2は、周波数f2において、負荷インピーダンスZ2を、増幅回路より最大の効率かつ最大の出力を取り出すことのできる負荷インピーダンスに変換する。
【0061】
以下、本発明のインピーダンス変換に係る動作原理を説明する。よく知られているように、増幅回路10の効率を最適化するためには、増幅信号の周波数や平均電力等の各条件において入力および出力のインピーダンス整合をそれぞれ合わせ込むことが必要である。このため、最適負荷インピーダンス(Target Impedance)は一意に決定される。このため、マルチバンド化に適した高周波回路を実現するためには、負荷インピーダンスを、増幅信号の周波数バンド毎に最適化して最適負荷インピーダンスに近づけることが必要となる。
【0062】
よって、本実施の形態では、各伝送線路に一つずつインピーダンス変換用の空乏層容量81−1、81−2を導入し、増幅信号の周波数バンド毎に負荷インピーダンスを最適化する。
【0063】
初めに、伝送線路40−1が選択された場合の負荷インピーダンスZ1について論じる。スイッチトランジスタTr1−1、Tr2−1、Tr1−2、Tr2−2は、オンの場合は抵抗成分、オフの場合は容量成分として表現される。伝送線路40−1が選択された場合(スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1がオン、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2がオフの場合)、スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1は抵抗成分で表現され、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2は容量成分で表現される。なお、オン時の抵抗成分(オン抵抗)、オフ時の容量成分(オフ容量)は、使用するスイッチトランジスタのデバイスサイズに依存した定数である。ここでは一例として、スイッチトランジスタ一つあたり、オン抵抗0.8Ω、オフ容量0.5pF程度とするがこれに限定されるものではない。
【0064】
負荷インピーダンスZ1は、空乏層容量81−1により、周波数f1において増幅回路10より最大の効率かつ最大の出力を取り出すことのできる負荷インピーダンスに変換される。
【0065】
次に、伝送線路40−2が選択された場合の負荷インピーダンスZ2について論じる。伝送線路40−2が選択された場合(スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1がオフ、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2がオンの場合)、スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1は容量成分で表現され、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2は抵抗成分で表現される。そして、このような状態において、負荷インピーダンスZ2は、空乏層容量81−2により、周波数f2において増幅回路10より最大の効率かつ最大の出力を取り出すことのできる負荷インピーダンスに変換される。
【0066】
次に、実施の形態4における増幅回路10(図6)の電力付加効率(PAE:Power Added Efficiency)と従来技術による増幅回路10のPAEとを比較してみる。ここで比較する従来技術とは、図6のトランジスタ回路51−1、51−2を構成するMESFETを従来の使い方で、センタのショットキー電極を接地せず、全てのショットキー電極に同じ電位を与えて使う場合を言う。
【0067】
図7は、実施の形態4、従来技術における増幅回路10のPAEを比較した図である。図7においては、空乏層容量により、増幅回路10からの出力電力(Pout)が12dBmの際に最大の効率かつ最大の出力を取り出すことのできる負荷インピーダンスに変換できるものとする。また、図7における周波数バンドは2GHzである。
【0068】
図7から分かるように、実施の形態4でのPAEは、従来技術でのPAE(ここでは仮の値として47%と仮定)と比較して、Pout=12dBm、26dBm両方において改善する。Pout=12dBmにおけるPAEは負荷インピーダンスのチューニングを行っているため、3%と大きく改善する。また、空乏層容量によるアイソレーション改善の効果により、Pout=12、26dBmにおいてPAEが各々1%ずつ改善する。
【0069】
以上のように、実施の形態4によれば、空乏層容量81−1及び81−2によって、オフ経路アイソレーションが改善できると共に増幅信号の周波数毎(つまり選択された伝送線路毎)に、負荷インピーダンスを最適化する。
【0070】
したがって、異なる無線周波数帯に対応するマルチバンド携帯電話等に実施の形態4に係る高周波回路を用いた場合でも、変化する使用周波数帯に応じて最適なインピーダンス整合を行うことができ、増幅回路10を周波数毎に個別に最適化することができる。このように、実施の形態4によれば、マルチバンド化に適した高周波回路を提供することができる。
【0071】
[実施の形態5]
図8は本実施の形態5に係る高周波回路の構成例を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波回路は、図6に示した実施の形態4に係る高周波回路に対し、3つ以上の経路をもつ点で異なる。具体的には、伝送線路40−1〜40−n、空乏層容量81−1〜81−n、及び出力端子21−1〜21−n(nはいずれも3以上の整数)が設けられる点、高周波信号の周波数がn種類あるとし、周波数fnの高周波信号をSnとしている点、伝送線路40−nが選択された場合に増幅回路10から増幅回路10の出力側をみた負荷インピーダンスをZnとしている点が異なる。以下、実施の形態4と異なる点を中心に説明する。実施の形態4と同等の構成、および当該構成の効果については説明を省略する。
【0072】
本実施の形態に係る高周波回路は1入力n出力のSPnT(Single Pole n Throw)動作を行うスイッチ回路である。制御部70からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行うことによって、伝送線路40−1〜40−nの中からいずれか1つの経路を導通(オン)させるとともに他の経路を遮断(オフ)させ、伝送線路40−1〜40−nの中からいずれか1つの伝送線路を選択する。スイッチトランジスタTr1−n及びTr2−nは、各々のゲート端子に入力される制御部70からの共通の制御信号によって、オン又はオフする。
【0073】
制御部70は、周波数検出部60で検出された周波数に基づいて、伝送線路の選択情報を表す制御信号を生成し、スイッチトランジスタへ出力する。例えば、周波数検出部60で周波数f1が検出された場合、制御部70は、スイッチトランジスタTr1−1〜Tr2−1にオン信号を出力し、その他のスイッチトランジスタオフ信号を出力する。空乏層容量81−nは、周波数fnにおいて、負荷インピーダンスZnを、増幅回路10より最大の効率かつ最大の出力を取り出すことのできるインピーダンスに変換する。
【0074】
以上のような実施の形態5によれば、経路(伝送線路)の数が増加するので、負荷インピーダンスの最適化が可能な増幅信号の周波数の種類数を増やすことができる。このため、実施の形態5に係る高周波回路は、高周波信号の種類数が多いマルチバンド対応の携帯電話等に対し、特に有益である。
【0075】
[実施の形態6]
図9は本発明の実施の形態6に係る高周波回路の構成例を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波回路は、図6に示した実施の形態4に係る高周波回路に対し、周波数検出部60が電力検出部61に置き換えられ、伝送線路が増幅信号の平均電力に応じて選択される点で異なる。以下、実施の形態4と異なる点を中心に説明する。実施の形態4と同等の構成、および当該構成の効果については説明を省略する。
【0076】
電力検出部61は、増幅回路10から出力される増幅信号の平均電力を検出する。図9の例では、高周波信号の平均電力は2種類あるとし、平均電力P1の高周波信号をS1とし、平均電力P2の高周波信号をS2としている。なお、平均電力P1と平均電力P2は典型的には異なっており、例えばP1<P2とする。また図9の例では、制御部70は、高周波信号の平均電力に応じて伝送線路を選択するものとし、高周波信号S1が通過する伝送線路を40−1とし、高周波信号S2が通過する伝送線路を40−2としている。
【0077】
電力検出部61は、増幅回路10が出力する増幅信号の平均電力を検出する。ここでは一例として、電力検出部61は、高周波信号S1が出力された場合に平均電力P1を検出し、高周波信号S2が出力された場合に平均電力P2を検出する。
【0078】
制御部70は、電力検出部61で検出された平均電力に基づいて、伝送線路の選択情報を表す制御信号を生成し、各スイッチトランジスタのゲートへ出力する。
【0079】
具体的には、電力検出部61で平均電力P1が検出された場合、制御部70は、スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1のゲートにオン信号を出力し、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2のゲートにオフ信号を出力する。これにより、第1経路上のスイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1はオンし、第2経路上のスイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2はオフする。
【0080】
この場合、増幅回路10で増幅された高周波信号S1は、スイッチ入力側DCカット容量30を介して第1経路(スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1、伝送線路40−1)を通過し、出力端子21−1から出力される。
【0081】
同様に、電力検出部61で平均電力P2が検出された場合、制御部70は、スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1のゲートにオフ信号を出力し、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2のゲートにオン信号を出力する。これにより、第1経路上のスイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1はオフし、第2経路上のスイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2はオンする。
【0082】
この場合、増幅回路10で増幅された高周波信号S2は、スイッチ入力側DCカット容量30を介して第2経路(スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2、伝送線路40−2)を通過し、出力端子21−2から出力される。
【0083】
空乏層容量81−1は、平均電力P1において、負荷インピーダンスZ1を、増幅回路10より最大の効率かつ最大の出力を取り出すことのできるインピーダンスに変換する。同様に、空乏層容量81−2は、平均電力P2において、負荷インピーダンスZ2を、増幅回路10より最大の効率かつ最大の出力を取り出すことのできるインピーダンスに変換する。
【0084】
以上のように、実施の形態6によれば、空乏層容量81−1及び81−2によって、増幅信号の平均電力毎に、負荷インピーダンスを最適化する。したがって、複数種類の通信モードに対応するマルチモード携帯電話等に実施の形態6に係る高周波回路を用いた場合でも、異なる通信モードにおける増幅信号の平均電力に応じて最適なインピーダンス整合を行うことができ、増幅回路10を平均電力毎に個別に最適化することができる。
【0085】
このように、実施の形態6によれば、マルチモード化に適した高周波回路を提供することができる。
【0086】
[実施の形態7]
図10は、本発明の実施の形態7に係る高周波回路の構成例を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波回路は、図6に示した実施の形態4に係る高周波回路に対し、周波数検出部60が電力検出部61に置き換えられ、伝送線路が増幅信号のピーク電力に応じて選択される点で異なる。以下、実施の形態4と異なる点を中心に説明する。実施の形態4と同等の構成、および当該構成の効果については説明を省略する。
【0087】
図10の例では、高周波信号のピーク電力は2種類あるとし、ピーク電力PAの高周波信号をS1とし、ピーク電力PBの高周波信号をS2としている。なお、ピーク電力PAとピーク電力PBは典型的には異なっており、例えばPA<PBとする。また図10の例では、高周波信号のピーク電力に応じて伝送線路を選択するものとし、高周波信号S1を通過させるための伝送線路を40−1とし、高周波信号S2を通過させるための伝送線路を40−2としている。
【0088】
電力検出部61は、増幅回路10が出力する増幅信号のピーク電力を検出する。ここでは一例として、電力検出部61は、高周波信号S1が出力された場合にピーク電力PAを検出し、高周波信号S2が出力された場合にピーク電力PBを検出する。
【0089】
制御部70は、電力検出部61で検出されたピーク電力に基づいて、伝送線路の選択情報を表す制御信号を生成し、各スイッチトランジスタのゲートへ出力する。
【0090】
具体的には、電力検出部61でピーク電力PAが検出された場合、制御部70は、スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1のゲートにオン信号を出力し、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2にオフ信号を出力する。これにより、第1経路上のスイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1はオンし、第2経路上のスイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2はオフする。
【0091】
この場合、増幅回路10で増幅された高周波信号S1は、スイッチ入力側DCカット容量30を介して第1経路(スイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1、伝送線路40−1)を通過し、出力端子21−1から出力される。
【0092】
同様に、電力検出部61でピーク電力PBが検出された場合、制御部70はスイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1のゲートにオフ信号を出力し、スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2にオン信号を出力する。これにより、第1経路上のスイッチトランジスタTr1−1及びTr2−1はオフし、第2経路上のスイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2はオンする。
【0093】
この場合、増幅回路10で増幅された高周波信号S2は、スイッチ入力側DCカット容量30を介して第2経路(スイッチトランジスタTr1−2及びTr2−2、伝送線路40−2)を通過し、出力端子21−2から出力される。
【0094】
空乏層容量81−1は、ピーク電力PAにおいて、負荷インピーダンスZ1を、増幅回路10より最大の効率かつ最大の出力を取り出すことのできるインピーダンスに変換する。同様に、空乏層容量81−2は、ピーク電力PBにおいて、負荷インピーダンスZ2を、増幅回路10より最大の効率かつ最大の出力を取り出すことのできるインピーダンスに変換する。
【0095】
以下、各インピーダンス変換回路におけるインピーダンス変換について具体例を挙げて説明する。
【0096】
図11(a)及び図11(b)は、増幅回路10より出力される増幅信号の電力の時間経過を示す波形図である。増幅回路10から出力される増幅信号が、例えば符号分割多重接続(CDMA:Code Division Multiple Access)または直交波周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)のような変調方式で変調された変調信号を表す場合、増幅信号の振幅は、時間とともに変動する。図11(a)では、増幅信号のピーク電力PAは平均電力P1よりも2dB程度高く、図11(b)では、増幅信号のピーク電力PBは平均電力P1よりも4d程度高い。
【0097】
このような振幅変動型の変調信号にとって、増幅信号の歪み率を低減することができれば、周波数バンド外への妨害信号も低減する。このためには、増幅回路10において入力信号をピーク電力まで線形に増幅する必要がある。しかしながら、例えば図11(b)のように、増幅回路10をピーク電力PBまで線形増幅できるように構成し、図11(a)のように、ピーク電力PBまでしか使用しなければ、増幅回路10の電力効率は低下する。
【0098】
図12(a)及び図12(b)は、同一の増幅回路10を用いて、それぞれ図11(b)および図11(a)に示す増幅信号を生成する場合の電力効率を表す特性図である。
【0099】
図12(a)において、太い実線で表される動作曲線LBは、平均電力P1と、増幅回路10における線形動作範囲RLNの最大限界電力に対応するピーク電力PBとで特徴付けられる。平均電力P1における平均電力効率は、E1であり、ピーク電力PBにおけるピーク電力効率は、EBである。
【0100】
図12(b)において、太い実線で表される動作曲線LAは、平均電力P1と、ピーク電力PBよりも低いピーク電力PAとで特徴付けられる。平均電力P1における平均電力効率は、E1であり、ピーク電力PAにおけるピーク電力効率は、EBよりも低いEAである。増幅回路10が動作曲線LBの状態の場合、高ピーク電力モードと呼び、動作曲線LAの状態の場合、低ピーク電力モードと呼ぶ。
【0101】
このように、動作曲線LAでは、ピーク電力効率EAがEBよりも低いため、増幅信号のピーク電力PAが低いにもかかわらず、平均電力効率E1は動作曲線LBの場合と同等である。
【0102】
そこで、図12(c)において太い実線で表される動作曲線LCのように、線形動作範囲RLNを、ピーク電力PB以下からピーク電力PA以下に低下させ、ピーク電力PAにおけるピーク電力効率をEBにすれば、平均電力P1におけるピーク電力効率はE1よりも高いE2となり、増幅回路10において電力の高効率化が達成できる。
【0103】
このように、上記具体例の場合、空乏層容量81−1が、線形動作範囲RLNをピーク電力PB以下からピーク電力PA以下に低下させて、ピーク電力PAにおけるピーク電力効率をEBにすることが可能な負荷インピーダンスに負荷インピーダンスZ1を変換すれば、増幅回路10において電力の高効率化が達成できる。
【0104】
以上のように、実施の形態7によれば、空乏層容量81−1、81−2によって、増幅信号のピーク電力毎に、負荷インピーダンスを最適化する。したがって、複数種類の変調方式に対応するマルチモード携帯電話等に実施の形態7に係る高周波回路を用いた場合でも、異なる変調方式における増幅信号のピーク電力に応じて最適なインピーダンス整合を行うことができ、増幅回路10を変調方式毎に個別に最適化することができる。このように、実施の形態7によれば、マルチモード化に適した高周波回路を提供することができる。
【0105】
[実施の形態8]
図13は、本発明の実施の形態8に係る高周波回路の構成例を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波回路は、図9に示した実施の形態6に係る高周波回路に対し、バイアス回路91及び電源回路92がさらに設けられる点で異なる。以下、実施の形態6と異なる点を中心に説明する。実施の形態6と同等の構成、および当該構成の効果については説明を省略する。
【0106】
制御部70は、電力検出部61で検出された平均電力を表す制御信号を生成し、バイアス回路91及び電源回路92へ出力する。
【0107】
バイアス回路91は、制御部70からの制御信号が表す平均電力に応じたバイアス出力S91を、増幅回路10に供給する。バイアス出力S91は、増幅回路10における入力端子のバイアス電流、または入力端子と共通端子間のバイアス電圧のいずれかを表す出力である。また、バイアス出力S91は、例えば、制御部70からの制御信号が表す平均電力に比例した出力である。
【0108】
電源回路92は、制御部70からの制御信号が表す平均電力に応じた電源電圧S92を、増幅回路10に供給する。電源電圧S92は、例えば、制御部70からの制御信号が表す平均電力に比例した電圧である。
【0109】
以上のように、実施の形態8によれば、負荷インピーダンスを増幅信号の平均電力毎に最適化すると同時に、増幅回路10に供給するバイアス出力S91および電源電圧S92も平均電力に応じて最適化する。これにより、増幅回路10の電力効率はさらに向上し、増幅回路10の歪みがさらに低減される。
【0110】
[実施の形態9]
実施の形態9では、実施の形態4〜実施の形態8に係る高周波回路が半導体装置として構成される場合において、半導体チップで構成される回路の範囲を説明する。なお、以下では、実施の形態5に係る高周波回路を例に挙げて説明する。
【0111】
図8に示した実施の形態5において、スイッチトランジスタの少なくとも一部が、1つの半導体チップで構成される。各スイッチトランジスタ(Tr1−1など)は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)で形成される。特に、各スイッチトランジスタが高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)で形成される場合、チップ面積当たりのオン抵抗がFETよりも小さいため、信号通過時の信号損失が少なく、かつチップ面積の縮小化が可能となる。
【0112】
さらに、実施の形態5の半導体チップ上に、インピーダンス変換回路80−1〜80−nに使用する容量素子やインダクタ素子を形成すれば、より集積化された小面積の半導体チップ内に、多機能かつ高性能の高周波回路を形成することができ、高周波回路の小型化および高機能化に効果が大きい。さらに、高周波回路の簡素化のために、制御部70を半導体チップ内に取り込むことが望ましい。
【0113】
以上のように、実施の形態9によれば、スイッチトランジスタのうちの少なくとも一部を1つの半導体チップで構成することにより、高周波回路及び、当該高周波回路からなる高周波電力増幅装置の小型化および低コスト化が可能となる。
【0114】
なお、実施の形態9による半導体チップ、増幅回路10、スイッチ入力側DCカット容量30が樹脂またはセラミックで形成された基板に実装されてもよい。
【0115】
また、上述した全ての実施の形態において、各選択回路内のスイッチトランジスタはFETで構成されるが、HEMT、PINダイオード(Positive−Intrinsic−Negative Diode)、またはメムス(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)など他のスイッチで構成されてもよい。さらに、各選択回路、及び各トランジスタ回路に含まれるスイッチトランジスタは、1個で構成してもよいし、複数個により構成してもよい。
【0116】
また、上述した全ての実施の形態において、増幅回路10の増幅素子は、バイポーラトランジスタで構成されるが、異種接合バイポーラトランジスタ、シリコンゲルマニウムトランジスタ、FET、および絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)など他のトランジスタで構成してもよい。さらに、増幅回路10に含まれるこれらのトランジスタは、1個で構成してもよいし、複数個により構成してもよい。さらに、増幅回路10は多段構成であってもよい。これらのトランジスタを用いて増幅回路10を構成する場合、代表的には、エミッタ接地またはソース接地が使用される。この場合、入力端子はベース端子またはゲート端子であり、出力端子はコレクタ端子またはドレイン端子であり、共通端子はエミッタ端子またはソース端子である。
【0117】
以上、実施の形態におけるこれまでの説明は、すべて本発明を具体化した一例であって、本発明はこれらの例に限定されず、本発明の技術を用いて当業者が容易に構成可能な種々の例に展開可能である。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明に係る半導体装置、当該半導体装置からなる高周波回路は、マルチバンド化又はマルチモード化に適しており、移動端末装置等に適用される。
【符号の説明】
【0119】
10 増幅回路
20 入力端子
21−1〜21−n 出力端子
30 スイッチ入力側DCカット容量
40−1〜40−n 伝送線路
51−1〜51−n トランジスタ回路
60 周波数検出部
61 電力検出部
70 制御部
81−1〜81−n 空乏層容量
90−1〜90−n 出力側DCカット容量
91 バイアス回路
92 電源回路
101 キャップ層
201 チャネル層
301 半導体基板
401a〜401c 空乏層
501a、501b オーミック電極
601a〜601c ショットキー電極
701、801、802 バイアス端子
901a、901c ゲート端子抵抗
1001 注入ドープ層
Tr1−1〜Tr1−n、Tr2−1〜Tr2−n、Q1、Q2 スイッチトランジスタ
Rg1−1〜Rg1−n、Rg2−1〜Rg2−n ゲート抵抗
R1−1〜R1−n、R2−1〜R2−n 電位固定用抵抗
COM コモン端子
Tx 送信側端子
Rx 受信側端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に電界効果型トランジスタを形成してなる半導体装置であって、
前記電界効果型トランジスタのソース電極およびドレイン電極としての第1オーミック電極および第2オーミック電極と、
前記第1オーミック電極および第2オーミック電極に挟まれた位置に設けられた、前記電界効果型トランジスタのゲート電極としての第1ショットキー電極および第2ショットキー電極と、
前記第1ショットキー電極および第2ショットキー電極に挟まれた位置に設けられた第3ショットキー電極と
を備え、
前記第3ショットキー電極が接地されている半導体装置。
【請求項2】
前記第1ショットキー電極と第2ショットキー電極とが接続されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第3ショットキー電極直下に注入ドープ層が形成されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
高周波信号を増幅することにより増幅信号を出力する増幅回路と、
前記増幅回路の出力に第1端が接続された容量と、
第1オーミック電極が前記容量の第2端に接続されている請求項1に記載の半導体装置と
を備える高周波回路。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置を複数個備え、
前記各半導体装置の第1のオーミック電極が前記容量の第2端に接続されている
請求項4に記載の高周波回路。
【請求項6】
さらに、
前記増幅信号の所定の特性量を検出する検出部と、
複数の前記半導体装置に形成された前記電界効果型トランジスタのうち、前記検出部にて検出された特性量に応じた1つを導通させ、他を遮断させる制御部と
を備える請求項5に記載の高周波回路。
【請求項7】
前記検出部は、前記所定の特性量として、前記増幅信号の周波数を検出する
請求項6に記載の高周波回路。
【請求項8】
前記検出部は、前記所定の特性量として、前記増幅信号の平均電力を検出する
請求項6に記載の高周波回路。
【請求項9】
さらに、前記検出部で検出された前記増幅信号の平均電力に応じたバイアス電流またはバイアス電圧を表すバイアス出力を前記増幅回路に供給するバイアス回路を備える
請求項8に記載の高周波回路。
【請求項10】
さらに、前記検出部で検出された前記増幅信号の平均電力に応じた電源電圧を前記増幅回路に供給する電源回路を備える
請求項9に記載の高周波回路。
【請求項11】
前記検出部は、前記所定の特性量として、前記増幅信号のピーク電力を検出する
請求項6に記載の高周波回路。
【請求項12】
さらに、前記検出部で検出された前記増幅信号のピーク電力に応じたバイアス電流またはバイアス電圧を表すバイアス出力を前記増幅回路に供給するバイアス回路を備える
請求項11に記載の高周波回路。
【請求項13】
さらに、前記検出部で検出された前記増幅信号のピーク電力に応じた電源電圧を前記増幅回路に供給する電源回路を備える
請求項12に記載の高周波回路。
【請求項14】
請求項6に記載の高周波回路における、前記電界効果型トランジスタと、前記増幅回路の少なくとも一部とが、1つの半導体基板上に形成されている
高周波電力増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−24094(P2011−24094A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168865(P2009−168865)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】