説明

半導体装置および基準電圧生成回路

【課題】所望の温度特性を有することによって回路規模を小さくできるMOSトランジスタを提供する。
【解決手段】ゲート絶縁膜30は、ソース領域51とドレイン領域52との間の領域の上に設けられる。ゲート電極40は、ゲート絶縁膜30の上に設けられる。空乏層42は、P型半導体層41とP型半導体層41の下層(ゲート絶縁膜30)との接合面に生じる。温度が変化すると、ゲート電極40内部の空乏層42の領域が変化し、チャネル形成に対するゲート電圧の影響が変化するので、閾値電圧は通常のMOSトランジスタの場合よりも変化する。このことを利用し、MOSトランジスタが所望の温度特性を有するよう制御されるので、温度補正回路が不要になる。よって、回路規模が小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート電極内に空乏層を有するMOSトランジスタからなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を構成しているトランジスタは、一般に温度によってその特性が変化し、いわゆる温度特性を有している。従って、トランジスタを用いた様々な装置も温度特性を有することになる。半導体の温度センサは温度特性が大きいことを積極的に利用した半導体装置である。一方、温度が変化した場合に特性ができるだけ変化しないことを求められる半導体装置もあり、その実現のためにはトランジスタと回路の双方における工夫を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−134051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、基準電圧生成回路の場合、温度が変化すると、基準電圧生成回路の出力電圧である基準電圧も変化する。特許文献1によって開示された技術では、基準電圧を温度補正するために温度補正回路が存在する。よって、その分、規模の大きな回路となってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、MOSトランジスタに所望の温度特性を与えることによって、補正のための回路の規模を小さくできる、あるいは補正のための回路を必要としない半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、MOSトランジスタを有する半導体装置において、MOSトランジスタは、第一導電型の半導体基板に設けられたソース領域およびドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の領域の上に設けられるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上に設けられるゲート電極と、を備え、前記ゲート電極は、半導体基板の垂直方向に、第二導電型半導体層、及び、前記第二導電型半導体層と前記第二導電型半導体層の下層との接合面に生じる空乏層を備える、ことを特徴とするMOSトランジスタを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明における半導体装置では、温度が変化すると、ゲート電極内部の空乏層の厚さが変化し、チャネル形成に対するゲート電圧の影響が変化するので、通常のMOSトランジスタの場合よりも閾値電圧を制御する因子が増えることになる。このことを利用し、MOSトランジスタに所望の温度特性を与えることができので、温度補正回路が小さくて済む。よって、回路規模を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施例を示す断面図である。
【図2】第2の実施例を示す断面図である。
【図3】第3の実施例である基準電圧生成回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、MOSトランジスタの構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施例であるMOSトランジスタを示す断面図である。
【0011】
MOSトランジスタは、第1導電型の半導体基板10、フィールド絶縁膜20、ゲート絶縁膜30、ゲート電極40、ソース領域51、及び、ドレイン領域52を備える。ゲート電極40は、半導体基板10の垂直方向に、第2導電型の半導体層41、及び、第2導電型の半導体層が空乏化した空乏層42を備える。ゲート絶縁膜30は、ソース領域51とドレイン領域52との間の領域の上に設けられる。ゲート電極40は、ゲート絶縁膜30の上に設けられる。空乏層42は、第2導電型の半導体層41と第2導電型の半導体層41の下層(ゲート絶縁膜30)との接合面に生じる。第1導電型をN型とすると第2導電型はP型とある。
【0012】
ここで、ゲート電極の下側が空乏化するためには、ゲート電極の導電型とゲート電極の下となる半導体基板の導電型が異なっている必要がある。
【0013】
MOSトランジスタが形成される第1導電型の半導体基板の領域は、LOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)法による膜厚約100〜500nmのフィールド絶縁膜20により、または、深さ約50〜300nmの酸化膜を埋め込むSTI(Sharrow Trench Isolation)(図示せず)により、周りの領域と半導体基板の表面近傍においては電気的に分離される。次に、膜厚約5〜100nmのゲート絶縁膜30を設ける。次に、ゲート絶縁膜30の上に、膜厚約200〜300nmのゲート電極40を設ける。ゲート電極40へは、不純物をイオン注入し、第2導電型の半導体層41とする。この時、注入する不純物の濃度は、半導体基板との電位差によりゲート電極の下部が空乏化するように設定しなければならない。そして、ソース領域51及びドレイン領域52が、不純物のイオン注入により形成される。
【0014】
次に、本実施例のMOSトランジスタの動作について説明する。
通常のMOSトランジスタにおいては、温度が変化しても、ゲート絶縁膜の厚さが変化したり、ゲート電極が空乏化したりすることはないので、ゲート絶縁膜容量はほとんど変化しない。しかし、本実施例のMOSトランジスタにおいて、温度が変化すると、ゲート電極40下部の空乏層42の厚さが変化する。空乏層は容量を持つので、空乏層の厚さの変化は、ゲート絶縁膜の厚さが変化したのと同様の効果があり、ゲート絶縁膜容量が変化する。
【0015】
一般にMOSトランジスタでは、閾値電圧はもともと温度特性を有するので、温度が変化すると、閾値電圧は変化する。ここで、本実施例のMOSトランジスタにおいては、空乏層の厚さが変化することによるゲート絶縁膜容量の変化により、チャネル形成に対するゲート電圧の影響が変化するので、温度が変化すると、閾値電圧はさらに変化したり、変化が打ち消しあって、ほとんど変化しないようにさせたりすることが可能である。これによりMOSトランジスタに所望の温度特性を与えることができる。
【0016】
このように、MOSトランジスタが所望の温度特性を有するように作り込むことで、温度補正回路が簡単に構成できたり、回路規模を小さくしたりすえることが可能になる。MOSトランジスタが有する温度特性によっては温度補正回路を必要としない場合もある。
【0017】
[変形例1]図1では、導電型がP型の半導体層41を用いたが、N型の半導体層を用いても良い。この場合、半導体基板の導電型はP型となる。
【実施例2】
【0018】
図2は第2の実施例である。図2に示すように、ゲート電極40は、P型の半導体基板10の垂直方向に、N型の半導体層43をさらに備えている。この時、空乏層42は、P型半導体層41とP型半導体層41の下層(N型半導体層43)との接合面に生じる。
【0019】
通常のMOSトランジスタにおいては、温度が変化しても、ゲート電圧のうちのチャネルに対する印加電圧は変化しない。しかし、図2に示す第2の実施例のMOSトランジスタにおいては、P型半導体層41及びN型半導体層43によるダイオードが逆バイアス状態となり、空乏層が存在するので、温度が変化すると、空乏層42の厚さが変化し、P型半導体層41とN型半導体層43との間の容量カップリングも変化する。よって、ゲート電圧(P型半導体層41の電圧)のうちのチャネル形成のため半導体基板10に印加される電圧も変化する。
【0020】
MOSトランジスタでは、閾値電圧はもともと温度特性を有するので、温度が変化すると、閾値電圧は変化する。図2のMOSトランジスタにおいては、ゲート電圧のうちのチャネルに対する印加電圧の変化により、チャネル形成に対するゲート電圧の影響が変化するので、温度が変化すると、閾値電圧はさらに変化するようにできる。
【0021】
[変形例2]N型半導体層43は、図2では、P型半導体層41の下に設けられている。半導体基板がN型の場合、図示しないが、N型半導体層43は、P型半導体層41の上に設けるのが良い。
【実施例3】
【0022】
図3は第3の実施例を説明するための回路図であり、基準電圧生成回路を示している。図1あるいは図2に示されるMOSトランジスタを、図3に示される基準電圧生成回路に適用することも可能である。基準電圧生成回路は、ディプレッション型のMOSトランジスタ41、及び、エンハンスメント型のMOSトランジスタ42を備える。MOSトランジスタ41は、ゲートとソースとが接続され出力端子となり、ドレインは電源端子に接続される。MOSトランジスタ42は、MOSトランジスタ41のソースと接地端子との間に設けられ、ダイオード接続される。MOSトランジスタ41は定電流を流す電流源として機能し、この定電流によって基準電圧VREFがダイオード接続されるMOSトランジスタ42のドレインに発生する。本回路においては、MOSトランジスタ41〜42が所望の温度特性を有するよう制御されるので、基準電圧VREFに所望の温度係数を与えることが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
10 N型半導体基板
20 フィールド絶縁膜
30 ゲート絶縁膜
40 ゲート
41 P型半導体層
42 空乏層
43 N型半導体層
51 ソース領域
52 ドレイン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の表面に設けられたソース領域、およびドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の領域の上に設けられるゲート電極と、
を備え、
前記ゲート電極は、前記半導体基板の垂直方向に、第二導電型の半導体層、及び、前記第二導電型の半導体層と前記第二導電型半導体層の下層との接合面に生じる空乏層を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極は、前記半導体基板の垂直方向に、第一導電型の半導体層をさらに備え、
前記空乏層は、前記第一導電型の半導体層と前記第二導電型の半導体層との接合面に生じることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記空乏層は、前記第二導電型の半導体層と前記ゲート絶縁膜との接合面に生じることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
ゲートとソースとが接続され、ドレインが電源端子に接続されたディプレッション型のMOSトランジスタと、
前記ソースと接地端子との間にダイオード接続されたエンハンスメント型のMOSトランジスタと、からなる基準電圧生成回路であって、
前記ディプレッション型のMOSトランジスタおよび前記エンハンスメント型のMOSトランジスタは、それぞれ請求項1ないし3のいずれか1項に記載された半導体装置から構成される基準電圧生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−191089(P2012−191089A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54898(P2011−54898)
【出願日】平成23年3月13日(2011.3.13)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】