半導体装置の作製方法
【課題】 装置を煩雑にせず、半導体膜の結晶ラテラル成長位置を制御することを課題とする。
【解決手段】 絶縁基板上に半導体膜を形成し、前記半導体膜の一部の上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、前記反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、露出された前記半導体膜を結晶化することを特徴とする。また、上記発明の構成において、前記反射膜は、屈折率の高い絶縁膜と屈折率の低い絶縁膜とが交互に積層された構造であることを特徴とする。具体的には、酸化珪素膜と、前記酸化珪素膜上に接して形成された窒化珪素膜と、からなることを特徴とする。より好ましくは、酸化珪素膜と、窒化珪素膜と、を何層か積層して反射膜を形成する。
【解決手段】 絶縁基板上に半導体膜を形成し、前記半導体膜の一部の上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、前記反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、露出された前記半導体膜を結晶化することを特徴とする。また、上記発明の構成において、前記反射膜は、屈折率の高い絶縁膜と屈折率の低い絶縁膜とが交互に積層された構造であることを特徴とする。具体的には、酸化珪素膜と、前記酸化珪素膜上に接して形成された窒化珪素膜と、からなることを特徴とする。より好ましくは、酸化珪素膜と、窒化珪素膜と、を何層か積層して反射膜を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の作製方法に関する。特に、絶縁基板上に形成された半導体膜をレーザー光の照射によりラテラル結晶成長させ、前記ラテラル結晶成長させた半導体膜を用いて形成された薄膜トランジスタ(以下、本明細書においては、「TFT」と略述する。)を有する半導体装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス等の絶縁基板上に形成された半導体膜(特に、非晶質半導体膜)に対してレーザーアニールすることにより、結晶化、または結晶性を向上させる技術が広く研究されている。上記半導体膜としては、珪素がよく用いられている。
【0003】
ガラス基板は、従来多用されていた合成石英ガラス基板と比較し、安価で加工性に富んでおり、大面積基板を容易に作製できる利点がある。一方、ガラス基板は、合成石英ガラス基板と比較し、融点が低いため、基板の上に形成する半導体膜を結晶化させる工程においてあまり加熱することができないという欠点がある。そこで、ガラス基板上に半導体膜を形成して前記半導体膜を結晶化する方法として、レーザーを使用する方法が多用されている。これは、レーザーが基板の温度を余り上昇させることなく、非晶質半導体膜のみに高いエネルギーを与えることが出来るためである。
【0004】
レーザーアニールにより形成される結晶性半導体膜は、高い移動度を有する。このため、この結晶性半導体膜を用いてTFTを形成し、1枚のガラス基板上に画素部用と駆動回路用のTFTを作製するモノリシック型の液晶電気光学装置等に盛んに利用されている。
【0005】
また、エキシマレーザーの如き出力の大きいパルス発振方式のレーザービームを、被照射面において、数cm角の四角いスポットや、長さ10cm以上の線状となるように光学系にて加工し、被照射面に対してレーザービームを相対的に走査させてレーザーアニールを行う方法は、生産性が高く工業的に優れているため、広く用いられている。
【0006】
特に、線状ビームを用いると、前後左右の走査が必要なスポット状のレーザービームを用いた場合とは異なり、線状ビームの長尺方向に直角な方向のみの走査で被照射面全体にレーザビームを照射することが出来るため、生産性が高い。長尺方向に直角な方向に走査するのは、それが最も効率の良い走査方向であるからである。この高い生産性により、現在レーザーアニール法において、パルス発振のエキシマレーザーのレーザービームを適当な光学系で加工した線状ビームを使用することが、TFTを用いる液晶表示装置等の製造技術の主流になりつつある。また、この技術により、1枚のガラス基板上に画素部を形成するTFT(画素TFT)と、画素部の周辺に設けられる駆動回路のTFTを一体形成したモノリシック型の液晶表示装置を作製することが可能となっている。
【0007】
しかし、レーザーアニール法で作製される結晶性半導体膜は、複数の結晶粒が集合して形成され、その結晶粒の位置と大きさはランダムなものであった。ガラス基板上に作製されるTFTは、素子分離のために前記結晶性半導体膜を島状のパターンに分離して形成している。しかしながら、この場合において、結晶粒の位置や大きさを指定して形成する事はできなかった。結晶粒内と比較して、結晶粒の界面(結晶粒界)には非晶質構造や結晶欠陥などに起因する再結合中心や捕獲中心が無数に存在している。この捕獲中心にキャリアがトラップされると、結晶粒界のポテンシャルが上昇し、キャリアに対して障壁となるため、キャリアの電流輸送特性を低下することが知られている。チャネル形成領域における半導体膜の結晶性は、TFTの電気的特性に重大な影響を及ぼすが、結晶粒界の影響を排除して単結晶の半導体膜で前記チャネル形成領域を形成することはほとんど不可能であった。
【0008】
このような問題を解決するために、レーザーアニール法において、位置制御され、且つ大粒径の結晶粒を形成する様々な試みがなされている。以下に、半導体膜にレーザービームを照射した後の前記半導体膜の固化過程について説明する。
【0009】
レーザービームの照射によって完全溶融した半導体膜中に結晶核が生成するまでにはある程度の時間が掛かり、完全溶融領域において均一(あるいは不均一)に無数の結晶核が生成し、結晶成長することで、完全溶融した前記半導体膜の固化過程は終了する。この場合に得られる結晶粒の位置と大きさはランダムなものとなる。
【0010】
また、レーザービームの照射によって前記半導体膜が完全溶融することなく、固相半導体領域が部分的に残存している場合には、レーザービームの照射後、前記固相半導体領域から結晶成長が直ちに始まる。既に述べたように、完全溶融領域において結晶核が生成するには、ある程度時間が掛かる。そのため、完全溶融領域において結晶核が生成するまでの間に、前記半導体膜の膜面に対して平行方向(以下、「ラテラル方向」という。)に結晶成長の先端である固液界面(固相半導体領域と完全溶融領域との境界を指す。)が移動することで、結晶粒は膜厚の数十倍もの長さに成長する。このような成長は、完全溶融領域において均一(あるいは不均一)に無数の結晶核が生成し、結晶成長することで終了する。以下、この現象をスーパーラテラル成長と言う。
【0011】
非晶質半導体膜や多結晶半導体膜においても、前記スーパーラテラル成長が実現するレーザービームのエネルギー領域は存在する。しかし、前記エネルギー領域は非常に狭く、また、大粒径の結晶粒の得られる位置については制御できなかった。さらに、大粒径の結晶粒以外の領域は結晶核が無数に生成した微結晶領域、もしくは非晶質領域であった。
【0012】
以上に説明したように、半導体膜が完全溶融するレーザービームのエネルギー領域でラテラル方向の温度勾配を制御する(ラテラル方向への熱流を生じさせる)ことが出来れば、結晶粒の成長位置および成長方向を制御することができる。この方法を実現するために様々な試みがなされている。
【0013】
まず、非晶質半導体膜上に反射膜として金属膜(Cr単層、またはCr膜上にAl膜を形成した積層)を形成し、部分的にエッチングを行って、前記非晶質半導体膜上に金属膜のある領域とない領域を形成する。波長308nmでのCrの反射率は約60%であり、Alの反射率は約90%であるため、波長308nmのレーザービームを照射すると、金属膜の下方の非晶質半導体領域は金属膜で覆われていない非晶質半導体領域に比べてレーザービームが照射されないことになる。つまり、金属膜の下方の非晶質半導体領域と、金属膜で覆われていない非晶質半導体領域とで温度勾配が生じる。そのため、金属膜の下方の非晶質半導体領域で生成した結晶核は、まだ溶融状態にある金属膜で覆われていない非晶質半導体領域へとラテラル成長し、1〜2μmの結晶粒が形成されることが知られている。
【0014】
しかしながら、この方法は以下の問題点がある。非晶質半導体膜上に金属膜を部分的に形成し、レーザービームを照射して、結晶化を行う方法は、結晶粒の形成される位置は制御できても、単結晶単位では形成する位置を制御することが困難であった。また、非晶質半導体膜上に直接金属膜を形成しているため、非晶質半導体膜中へ金属元素が拡散し、前記非晶質半導体膜を結晶化して作製した結晶質半導体を用いてTFTを作製すると、前記TFTの電気的特性を低下させる原因となる可能性があった。また、金属膜や非晶質半導体膜にクラックやピーリングを発生させる可能性があった。また、金属膜の成膜は、通常スパッタ法により形成されている。スパッタ法は、CVD法と比較して、成膜した際の面内における膜厚のバラツキが大きい。このため、基板が大型化されると、スパッタ法を使用することは将来的に好ましくないといえる。
【0015】
また、コロンビア大のJames S. Im氏らは、任意の場所にスーパーラテラル成長を実現させることの出来るSequential Lateral Solidification method(以下、「SLS法」という。)を示した(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3204986号公報
【0016】
SLS法は、1ショット毎にスリット状のマスクをスーパーラテラル成長が行なわれる距離程度(約0.75μm)移動させて、結晶化を行うものである。
【0017】
SLS法を使用すると、スリットを透過したエキシマレーザービームを集光した数ミクロン程度の極細ビームを、ガラス基板上に成膜したアモルファスシリコン膜に照射することにより、ラテラル成長を行なうことが可能である。また、ショット毎の基板の送りピッチをラテラル成長の距離とすることにより、逐次的にラテラル成長を繋げていくことができる。しかしながら、SLS法を使用すると、以下のような問題点がある。
【0018】
エキシマレーザーは、そのビーム品質があまり良くないため、SLS法を使用するためには、数μmに集光するためのマスクをレーザー照射装置に用いる必要がある。また、マスクは、定期的な交換が必要となる上、焦点距離の短いレンズは焦点深度も浅いため、基板面内で均一に焦点を維持するためには、焦点深度を一定に保つためのオートフォーカス機能が必須になり、通常のレーザー照射装置と比較して装置が複雑かつ高価なものになってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記問題点を鑑み、装置を煩雑にせず、半導体膜の結晶ラテラル成長位置を制御することを課題とする。
【0020】
また、本発明は、線状ビームを用いたレーザーアニール装置をそのまま使用して、半導体膜の結晶ラテラル成長位置を制御することを課題とする。
【0021】
また、本発明は、結晶粒の位置とその大きさを制御した結晶性半導体膜を作製し、さらに前記結晶性半導体膜をTFTのチャネル形成領域に用いることにより、高速動作が可能なTFTを実現することを課題とする。さらにそのようなTFTを液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス材料を用いた表示装置などのさまざまな半導体装置に適用できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、半導体膜の結晶ラテラル成長の位置を制御するために、半導体膜を形成した上に、パターニングされた反射膜を形成する。そして、反射膜をパターニングすることによって露出された半導体膜に、レーザーを照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化する。
【0023】
本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の構成は、
絶縁基板上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜の一部の上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、露出された前記半導体膜を結晶化することを特徴とする。
【0024】
また、本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の別の構成は、
絶縁基板上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化することを特徴とする。
【0025】
また、本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の別の構成は、
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化し、
前記パターニングされた反射膜を除去し、
前記半導体膜の一部をパターニングし、
前記パターニングされた半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記結晶化された半導体膜を薄膜トランジスタのチャネル形成領域に用いることを特徴とする。
【0026】
また、本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の別の構成は、
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜に第1のレーザー光を照射し、
前記第1のレーザー光が照射された半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとして第2のレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化することを特徴とする。
【0027】
また、本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の別の構成は、
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜に第1のレーザー光を照射して結晶性半導体膜を形成し、
前記結晶性半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記結晶性半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとして第2のレーザー光を照射することにより、前記結晶性半導体膜の配向性を維持しつつ、前記露出された半導体膜の結晶性を向上させることを特徴とする。
【0028】
また、上記発明の構成において、前記反射膜の下に設けられた半導体膜は、前記第2のレーザー光の照射によって溶融しないことを特徴とする。
【0029】
また、上記発明の構成において、前記反射膜は、前記第2のレーザー光を反射することを特徴とする。
【0030】
また、上記発明の構成において、前記反射膜は、屈折率の高い絶縁膜と屈折率の低い絶縁膜とが交互に積層された構造であることを特徴とする。具体的には、酸化珪素膜と、前記酸化珪素膜上に接して形成された窒化珪素膜と、からなることを特徴とする。より好ましくは、酸化珪素膜と、窒化珪素膜と、を何層か積層して反射膜を形成する。
【0031】
また、上記発明の構成において、前記反射膜を、プラズマCVD法や減圧CVD法に代表されるCVD法によって形成することを特徴とする。
【0032】
また、上記発明の構成において、前記反射膜のパターニングを、ドライエッチングによって行うことを特徴とする。
【0033】
また、上記発明の構成において、前記パターニングされた反射膜の除去を、ウエットエッチングによって行うことを特徴とする。
【0034】
また、上記発明の構成において、前記結晶化は、横方向(ラテラル)の結晶成長によりおこり、前記半導体膜は、前記パターニングされた反射膜の下に設けられた半導体膜の領域から前記露出された半導体膜の領域の方向に向けて横方向(ラテラル)に結晶成長していることを特徴とする。
【0035】
また、上記発明の構成において、薄膜トランジスタのチャネル形成領域におけるキャリアの移動する方向と前記横方向(ラテラル)に結晶成長している方向とが平行になるように薄膜トランジスタを形成することを特徴とする。
【0036】
また、上記発明の構成において、前記半導体装置は、液晶表示装置、EL表示装置、集積回路のいずれか一であることを特徴とする。
【0037】
また、上記発明の構成において、前記半導体装置を、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーションシステム、音響再生装置、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末、画像再生装置のいずれか一に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、半導体膜の結晶ラテラル成長位置を制御するために、半導体膜を形成した上に、パターニングされた反射膜を形成する。そして、反射膜をパターニングすることによって露出された半導体膜に、レーザーを照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化する。したがって、数μmに集光するためのマスクをレーザー照射装置に用いることがなく、従来使用しているエキシマレーザーをそのまま使用することができ、基板面内でエピタキシャル成長結晶とラテラル成長結晶を作り分けることも可能となる。
【0039】
また、新規に装置を購入する必要もないため、コストを削減することもできる。
【0040】
また、反射膜を、屈折率の高い絶縁膜と屈折率の低い絶縁膜とを交互に積層する構造とすることにより、以下の効果を得ることができる。すなわち、屈折率の高い絶縁膜と低い絶縁膜との積層パターンを何層も積層すればするほど反射率を上げることができ、所望の反射率を得る構造を容易に形成することができる。また、積層して形成される反射膜全体としての膜厚を、反射膜を単層膜とした場合に比較して小さくすることができるため、反射膜のパターニングや結晶化後に反射膜を除去する際のエッチングの時間を短縮することができる。これは、単層膜で反射膜を形成した場合に膜厚を薄く形成すると、反射率が低い膜、すなわち反射防止膜として機能してしまうためである。
【0041】
また、反射防止膜を用いて半導体膜を結晶化する場合と比べ、本発明は以下の有利な効果を奏する。反射防止膜を用いて半導体膜を結晶化する場合、反射防止膜の膜厚のバラツキに応じて反射防止膜の面内において反射率にバラツキが生じる。反射防止膜の面内において反射率にバラツキが生じると、半導体膜に吸収されるエネルギーにバラツキが生じてしまう。この結果、結晶化された半導体膜の結晶性にバラツキが生じてしまう。一方、本発明を用いて作製する結晶性半導体膜は、他の膜を介さず、半導体膜が露出された領域に直接レーザーを照射することによって形成されている。半導体膜が露出された領域に直接レーザーを照射すると、半導体膜が露出された領域に吸収されるエネルギーは、半導体膜が露出された領域の面内において一定となる。この結果、結晶化された半導体膜の結晶性にバラツキが生じにくい。したがって、本発明で作製した結晶性半導体膜をTFTのチャネル形成領域に用いることにより、個々のTFTにおける特性のバラツキをなくすことができる。
【0042】
また、金属膜を反射膜に用いた場合と比較して、半導体膜に対する汚染がない。また、金属膜をCVD法で形成しようとすると有毒ガスを成膜ガスに用いなければならないなどの理由から、スパッタ法を用いて金属膜は形成されている。しかしながら、スパッタ法は基板が大型化していくと、CVD法に比較して成膜時の面内における膜厚のバラツキが生じやすく、反射膜を除去する際にクラックやピーリングを起こしやすい。
【0043】
本発明で使用する反射膜は、CVD法によって形成することに何の制約も受けないので、反射膜を除去する際のクラックやピーリングを懸念しなくてよい。
【0044】
また、本発明で得られる結晶性半導体膜を用いてTFTを形成することにより、電界効果移動度(キャリアの移動速度の電界に対する係数)やサブスレッショルド係数(S値)などの電気特性の優れたTFTが得られる。さらに、このTFTを用いることによって、応答速度などの特性の高さが要求される集積回路を作製する際にも最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明を実施するための最良の形態を、図1を用いながら説明する。なお、以下に説明する本発明の構成において同じ対象物を指す場合、異なる図面においても同一の符号を用いて説明する。
【0046】
図1(A)〜(D)は、本発明を実施して半導体装置を作製する工程を示す断面図である。
【0047】
まず、図1(A)に示すように、ガラス基板や石英基板等の絶縁基板101の上に下地膜102を形成する。下地膜102の成膜方法は、プラズマCVD法や低圧CVD法に代表されるCVD法、スパッタ法などの公知の方法を用いればよい。
【0048】
次に、下地膜102の上に半導体膜103を形成する。半導体膜103としては、非晶質珪素膜など非晶質半導体膜を形成すればよいが、微結晶半導体膜や結晶性半導体膜を形成してもよい。
【0049】
次に、図1(B)に示すように、半導体膜103の上に反射膜104を形成する。反射膜104としては、屈折率の高い絶縁膜と屈折率の低い絶縁膜とを交互に積層する構成とすればよい。例えば、図16(A)に示すように、基板側から順に酸化窒化珪素膜1651(SiOxNy膜)(x>y)(x、yは正の整数)、窒化酸化珪素膜1652(SiNxOy膜)(x>y)(x、yは正の整数)を積層する構成としたり、図16(B)に示すように、基板側から順に第1の酸化窒化珪素膜1653、第1の窒化酸化珪素膜1654、第2の酸化窒化珪素膜1655、第2の窒化酸化珪素膜を積層する構成1656とすればよい。本発明の作製工程で肝要なことは、上記のように金属膜を用いずに反射膜を形成することである。
【0050】
次に、図1(C)に示すように、反射膜104をパターニングし、半導体膜103の一部を露出させるようにする。なお、半導体膜103において、反射膜104で覆われている領域(第1の領域)を110、露出されている領域(第2の領域)を111とする。パターニングの方法としては、公知のパターニング技術を使用すればよいが、より好ましくは、ドライエッチングによってパターニングするとよい。この理由は、ドライエッチングを使用することによって異方性エッチングを行うことが可能なため、パターニングを制御良く行うことができるためである。
【0051】
次に、図1(D)に示すように、パターニングされた反射膜をマスクとして、レーザー光を照射する。レーザー光を照射することによって半導体膜が結晶化されるまでの過程について説明する。
【0052】
半導体膜103にレーザー光が照射されると、反射膜104がパターニングされて半導体膜103が露出された領域111は、完全溶融領域となる。
【0053】
一方、反射膜で覆われた領域110はレーザー光が反射される。この結果、半導体膜の結晶化に必要なしきい値エネルギーを超えない状態となる。すなわち、反射膜で覆われた領域110は溶融せず、固相半導体領域といえる。なお、図1(D)では、反射膜104の最表面のみでレーザー光が反射されているように便宜上記載しているが、実際にはレーザー光は反射膜中にも入射されており、反射膜を構成している各絶縁膜の境界面で反射されている。また、反射される割合自体は小さいが、反射膜を構成している積層絶縁膜の最下層と半導体膜との界面の間でも、レーザー光は反射されている。反射膜を構成している積層絶縁膜各々の膜厚は、入射側に戻ってくる反射光(より好ましくは、入射側に戻ってくる全ての反射光)の位相が揃うように設計されていることが好ましく、干渉効果により反射光強度が増大する。
【0054】
完全溶融領域と固相半導体領域とでは、温度勾配が生じている。完全溶融領域において結晶核が生成するには、ある程度時間が掛かる。そのため、完全溶融領域において結晶核が生成するまでの間に、前記半導体膜の膜面に対するラテラル方向に結晶成長の先端である固液界面(固相半導体領域と完全溶融領域との境界を指す。)が移動することで、結晶粒が成長する。そして、この成長は、半導体膜が露出された領域111の中心(図1(D)において結晶性半導体膜105中に示した点線部分)で結晶成長してきた結晶粒が互いに接触し、結晶成長は終了する。また同時に、半導体膜が露出された領域の中心付近の表面にリッジが形成される。このようにして、半導体膜103が露出された領域111の結晶化が起こり、結晶粒の成長位置および成長方向が制御された結晶性半導体膜105が形成される。なお、本明細書において「リッジ」とは、レーザー光の照射によって結晶成長してきた結晶粒が接触した際に、半導体膜の表面に形成される突起のことをいう。
【0055】
本工程で使用するレーザー光は、パルス発振方式のレーザー光であり、パルス発振が可能なレーザー光であれば、どのような種類でもよい。例えば、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー、GdVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーのいずれか一を使用することができる。
【0056】
また、照射するレーザービームのエネルギー密度は、半導体膜の膜厚や、照射するレーザービームのパルス幅、波長などにより条件が変わる。例えば、XeClエキシマレーザーを用いて膜厚が50nmの半導体膜を結晶化する場合であれば、400〜1000mJ/cm2で行えばよい。
【0057】
また、照射するレーザービームの形状は、線状に加工したものでもよいし、面状に加工したものでもよい。
【0058】
本発明は、図1(C)に示すように、互いに隣り合う反射膜と反射膜の間の幅(スリットの幅)を1〜10μm(好ましくは2〜3μm)とすることにより、反射膜がパターニングされて半導体膜が露出された領域の全体をラテラル成長させることができる。すなわち、スリットの幅を10μm以上にすると、レーザーが照射されて完全に溶融した領域がラテラル成長する前に固化する領域(種結晶)が一部生成してしまうため、本発明を実施することができなくなってしまう。
【0059】
次に、パターニングされた反射膜を全て除去する。前記パターニングされた反射膜を除去する方法は、公知のエッチング技術を用いればよいが、より好ましくは、ウエットエッチングによって除去するとよい。この理由は、ドライエッチングに比較して、ウエットエッチングを使用する方が、半導体膜と反射膜として用いる酸化珪素膜とのエッチング選択比を大きく取ることが可能なためである。すなわち、ウエットエッチングを使用することにより、結晶化された半導体膜がオーバーエッチングされずに反射膜を除去することができる。
【0060】
以上の工程によって、結晶粒の成長位置および成長方向が制御された結晶性半導体膜105を得ることができる。
【実施例1】
【0061】
本実施例では、結晶性半導体膜を作製し、得られた結晶性半導体膜を用いてTFTを作製する工程を、図1及び図2を用いながら説明する。
【0062】
まず、図1(A)に示すように、ガラス基板や石英基板等の絶縁基板101の上に下地膜102を形成する。下地膜102の成膜方法は、プラズマCVD法や低圧CVD法に代表されるCVD法、スパッタ法などの公知の方法を用いればよい。また、下地膜102としては、酸化珪素膜(SiOx膜)、窒化珪素膜(SiNx膜)、酸化窒化珪素膜(SiOxNy膜)(x>y)(x、yは正の整数)、窒化酸化珪素膜(SiNxOy膜)(x>y)(x、yは正の整数)のいずれか一を用いる単層構造としてもよいし、これらを適宜積層する構造としてもよい。本実施例では、下地膜102として、窒化酸化珪素膜を50nm、酸化窒化珪素膜を100nm積層する構成とする。
【0063】
次に、下地膜102の上に半導体膜103を形成する。半導体膜103としては、非晶質半導体膜を形成すればよいが、微結晶半導体膜や結晶性半導体膜を形成してもよい。また、半導体膜の材料に限定はないが、好ましくはシリコンまたはシリコンゲルマニウム(SiGe)を用いるとよい。本実施例では、非晶質珪素膜を54nm形成する。なお、半導体膜を形成した後に、半導体膜に含まれる水素を除去する工程を行ってもよい。具体的には、500℃で1時間加熱すればよい。
【0064】
また、下地膜102と半導体膜103を形成する際に、下地膜102と半導体膜103との界面が大気に曝されないようにすると、界面の汚染を防ぐことが可能となり、作製されるTFTの特性のバラツキを低減させることができる。本実施例では、下地膜102と半導体膜103を、プラズマCVD法を用いて大気に曝さずに連続して形成する。
【0065】
次に、図1(B)に示すように、半導体膜103の上に反射膜104を形成する。反射膜104としては、絶縁膜を積層した構成とすればよい。
【0066】
ここで、エキシマレーザー(XeCl)の波長である308nmでの反射膜の反射率を図3に示す。図3は、反射膜として、酸化珪素膜と、酸化珪素膜の上に窒化珪素膜を積層した2層構造として、各膜の厚さを変化させたときの反射率をシミュレーションした結果である。図3より、反射膜を設けない(すなわち、酸化珪素膜及び、窒化珪素膜の膜厚をそれぞれ0nmとした)場合の反射率は、約55%であることがわかる。また、酸化珪素膜を45nm、窒化珪素膜を40nm積層して反射膜を構成した場合、反射率は約68%になることがわかる。したがって、エキシマレーザー(XeCl)を照射して結晶化する場合、反射膜は65%以上の反射率を有していることが好ましい。
【0067】
なお、図3では、反射膜として酸化珪素膜と窒化珪素膜とを2層積層する構造としているが、4層、6層とさらに積層することによって、反射膜の反射率を更に向上させることが期待できる。本実施例では、酸化珪素膜を45nm、窒化珪素膜を40nm積層する構成とする。
【0068】
次に、図1(C)に示すように、反射膜104をパターニングして、半導体膜の一部を露出させるようにする。パターニングの方法としては、公知のパターニング技術を使用すればよいが、より好ましくは、ドライエッチングによってパターニングするとよい。ドライエッチングを使用すると、異方性エッチングが可能なため、パターニングを制御良く行うことができる。なお、半導体膜103において、反射膜104で覆われている領域(第1の領域)を110、露出されている領域(第2の領域)を111とする。
【0069】
また、反射膜と反射膜の間の幅(スリットの幅)は、1〜10μmとすればよく、好ましくは2〜3μmとすればよい。
【0070】
次に、図1(D)に示すように、パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することによって半導体膜103が露出された領域111を結晶化し、結晶性半導体膜105を形成する。このとき、半導体膜103が反射膜で覆われた領域110も、反射膜やレーザー光の条件によっては結晶性が向上することがあるが、結晶性半導体膜105に比較して結晶性は劣るものである。なお、本工程の前に、パターニングされた反射膜をマスクとしてNiなどの半導体膜の結晶化を促進する元素を添加し固相成長させた後、レーザー光を照射して半導体膜の露出された領域を結晶化し、結晶性半導体膜105を形成してもよい。なお、結晶化を促進する元素としては、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Auから選ばれた一種または複数種類の元素を用いることができる。
【0071】
本実施例で使用するレーザー光は、パルス発振方式のレーザー光であり、パルス発振が可能なレーザー光であれば、どのような種類でもよい。例えば、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー、GdVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーのいずれか一を使用することができる。本実施例では、エキシマレーザー(XeCl)を使用する。
【0072】
また、照射するレーザービームのエネルギー密度は、半導体膜の膜厚や、照射するレーザービームのパルス幅、波長などにより条件が変わる。例えば、XeClエキシマレーザーを用いて膜厚が50nmの半導体膜を結晶化する場合であれば、400〜1000mJ/cm2で行えばよい。
【0073】
次に、パターニングされた反射膜を全て除去し、半導体膜の全面が露出されるようにする。前記パターニングされた反射膜を除去する方法は、公知のエッチング技術を用いればよいが、より好ましくは、ウエットエッチングによって除去するとよい。これは、ドライエッチングに比較して、ウエットエッチングを使用する方が、半導体膜と反射膜として用いる酸化珪素膜とのエッチング選択比を大きく取ることが可能なためである。すなわち、結晶化された半導体膜がオーバーエッチングされずに反射膜を除去することができる。本実施例では、7.13wt%のフッ化水素アンモニウム(NH4HF2)と15.4wt%のフッ化アンモニウム(NH4F)を含む混合溶液(ステラケミファ社製、商品名:LAL500)をエッチャントとして用い、反射膜を室温にてウエットエッチングする。
【0074】
次に、半導体膜の全面を露出させた後、ボロンなどのp型の導電型を付与する不純物を、露出された半導体膜全面にドーピングする。本工程により、TFTのチャネル形成領域となる領域にチャネルドープし、TFTのしきい値を制御することができる。
【0075】
次に、図2(A)に示すように、半導体膜110をパターニングして、島状の半導体膜を形成する。パターニングの方法としては、公知のパターニング技術を使用すればよい。また、半導体膜110は、全てパターニングしてもよいし、その一部をパターニングしてもよい。本実施例では、結晶性半導体膜105はパターニングせず、半導体膜110の一部のみをパターニングする。
【0076】
次に、図2(B)に示すように半導体膜110をパターニングした後、絶縁膜(ゲート絶縁膜)106を形成する。絶縁膜106は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜のいずれか一を用いる単層構造としてもよいし、これらを適宜積層する構造としてもよい。
【0077】
次に、図2(C)に示すように、絶縁膜106を形成した後に金属膜を成膜し、その一部をパターニングしてゲート電極107を形成する。金属膜は、Al、Mo、またはWなどを使用することができ、これらの金属の単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。例えば、TaN上にWを形成した積層構造とすることができる。また、金属膜の代わりにポリシリコン膜を用いてゲート電極107を形成してもよい。
【0078】
ゲート電極107を形成した段階での断面図を図4(A)、上面図を図4(B)に示す。図4(A)の断面図は、図4(B)の上面図におけるAA’間の断面図に相当する。ゲート電極107を形成する際にあたり、ゲート電極107が形成される領域の下には、島状の半導体膜のうちリッジの存在する領域を含まないようにすることが好ましい。すなわち、ゲート電極107の下に形成されるTFTのチャネル形成領域は、島状の半導体膜のうちリッジのほとんど存在しない結晶性半導体膜105を用いて形成するとよい。ただし、上述したように結晶性半導体膜105
中にもリッジが存在する領域(図1(D)においては、結晶性半導体膜105中に示した点線部分)を含んでいるので、この領域を含まないようにすることが好ましい。図4においては、半導体膜110の一部をエッチングして島状の半導体膜を形成し、当該島状の半導体膜のうちリッジのほとんど存在しない結晶性半導体膜105を用いてTFTのチャネル形成領域が形成されるので、好ましい。
【0079】
また、図5のように結晶性半導体膜105の一部を残すようにパターニングして島状の半導体膜を形成し、リッジのほとんど存在しない結晶性半導体膜105上にゲート電極を形成するようにしてもよい。ゲート電極107を形成した段階での断面図を図5(A)、上面図を図5(B)に示す。図5(A)の断面図は、図5(B)の上面図におけるBB’間の断面図に相当する。結局、パターニングは、リッジのほとんど存在しない結晶性半導体膜105上にゲート電極107を形成することができる条件であれば、図4及び図5以外のパターニングを行ってもよい。
【0080】
次に、ゲート電極107をマスクとして、リンなどのn型の導電型を付与する不純物をドーピングする。本工程により、TFTのソース領域及びドレイン領域が自己整合的に形成される。
【0081】
次に、図2(D)に示すように、絶縁膜106及びゲート電極107上に層間絶縁膜108を形成する。層間絶縁膜108としては、単層構造であってもよいし、多層構造としてもよい。また、層間絶縁膜108の材料としては、自己平坦性を有する材料(例えばアクリル、ポリイミド、シロキサンなどの塗布膜など)を使用することができる。また、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜なども適宜組み合わせることも可能である。本実施例では、無機絶縁膜の上に有機樹脂からなる絶縁膜を積層して形成する。なお、シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)、またはフルオロ基を用いればよい。また、置換基として、少なくとも水素を含む有機基とフルオロ基とを共に用いてもよい。
【0082】
次に、図2(E)に示すように、TFTのソース領域及びドレイン領域に達するように、層間絶縁膜108にコンタクトホールを形成する。コンタクトホールの形状は、テーパー形状にするとよい。
【0083】
次に、コンタクトホール上に、配線(電極)109を形成する。配線109としては、Al、Cu、Ag、Ti、またはMoなどを使用することができ、これらの金属の単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。例えば、Ti、Al、Tiを順に積層した構造や、Mo、Al、Moを順に積層した構造とすることができる。また、その他に、Al及びCを含む合金を用いることもできる。この合金に、Ni、Co、Fe、Si等を含有させても良い。これらの含有率は、例えば、Cを0.1〜3.0原子%、Ni、Co、Feのうち少なくとも一種以上の元素を0.5〜7.0原子%、Siを0.5〜2.0原子%とするのがよい。
【0084】
以上の工程によって、本発明によって作製された結晶性半導体膜をTFTのチャネル形成領域に用いたTFTを作製することができる。
【0085】
本実施例で作製する結晶性半導体膜105は、他の膜を介さず、半導体膜103が露出された領域111に直接レーザーを照射することによって形成されている。他の膜を介してレーザー光を半導体膜103に照射すると、当該膜の膜厚のバラツキに応じて、半導体膜103に吸収されるエネルギーにバラツキが生じてしまう。本実施例に示したように、半導体膜103が露出された領域111に直接レーザーを照射すると、半導体膜103が露出された領域111に吸収されるエネルギーは、半導体膜103が露出された領域111の面内において一定となる。したがって、結晶性半導体膜105を用いてTFTのチャネル形成領域を形成して複数のTFTを作製すると、個々のTFTにおける特性のバラツキをなくすことができる。
【0086】
なお、本実施例ではnチャネル型のTFTを作製する工程について説明したが、本発明を用いればpチャネル型のTFTも作製することができる。
【実施例2】
【0087】
本実施例では、実施例1とは違う方法を用いて結晶性半導体膜を作製する方法を、図6を用いながら示す。
【0088】
まず、図6(A)に示すように、ガラス基板や石英基板等の絶縁基板101の上に下地膜102を形成する。下地膜102の成膜方法は、プラズマCVD法や低圧CVD法に代表されるCVD法、スパッタ法などの公知の方法を用いればよい。また、下地膜102としては、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜のいずれか一を用いる単層構造としてもよいし、これらを適宜積層する構造としてもよい。本実施例では、下地膜102として、窒化酸化珪素膜と酸化窒化珪素膜とを積層した構成とする。
【0089】
次に、下地膜102の上に非晶質半導体膜301を形成する。
【0090】
次に、非晶質半導体膜301を結晶化し、結晶性半導体膜302を形成する。
【0091】
結晶化の方法は、加熱やNiを使用して結晶化する公知の方法を用いればよいが、レーザー照射による結晶化が好ましく、本実施例では、レーザー照射によって結晶化する例を示す。
【0092】
結晶化に使用するレーザーは、パルス発振方式のレーザーでもよいし、連続発振方式のレーザーでもよい。
【0093】
パルス発振が可能なレーザー光としては、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー、GdVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーなどを使用することができる。
【0094】
また、照射するレーザービームのエネルギー密度は、半導体膜の膜厚や、照射するレーザービームのパルス幅、波長などにより条件が変わる。例えば、XeClエキシマレーザーを用いて膜厚が50nmの半導体膜を結晶化する場合であれば、400〜1000mJ/cm2で行えばよい。
【0095】
連続発振が可能なレーザー光としては、気体レーザーまたは固体レーザーを用いることができる。気体レーザーとしては、Arレーザー、Krレーザーなどがある。また、固体レーザーとしては、Cr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti、Yb又はTmがドーピングされたYAG、YVO4、YLF、YAlO3、Y2O3、GdVO4などの結晶を使ったレーザー等も使用可能である。当該固体レーザーの基本波はドーピングする材料によって異なり、1μm前後の基本波を有するレーザー光が得られる。基本波に対する高調波は、非線形光学素子を用いることで得ることができる。代表的には、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)が挙げられる。具体的には、連続発振のYVO4レーザーから射出されたレーザー光を非線形光学素子により高調波に変換し、出力10Wのレーザー光を得る。また、共振器の中にYVO4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法もある。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザー光に成形して、被処理体に照射する。このときのパワー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、10〜2000cm/sec程度の速度でレーザー光に対して相対的に絶縁基板101を移動させて照射する。
【0096】
次に、図6(B)に示すように、結晶性半導体膜302の上に反射膜104を形成する。反射膜104としては、絶縁膜を積層した構成とすればよい。例えば、酸化窒化珪素膜と窒化酸化珪素膜とを積層する構成とすればよい。
【0097】
次に、図6(C)に示すように、反射膜104をパターニングして、結晶性半導体膜302の一部を露出させるようにする。結晶性半導体膜302のうち、反射膜104で覆われた領域を310、露出された領域を311とする。パターニングの方法としては、公知のパターニング技術を使用すればよいが、より好ましくは、ドライエッチングによってパターニングするとよい。ドライエッチングを使用すると、異方性エッチングが可能なため、パターニングを制御良く行うことができる。
【0098】
また、互いに隣り合う反射膜と反射膜の間の幅(スリットの幅)は、1〜10μmとすればよく、好ましくは2〜3μmとすればよい。
【0099】
次に、図6(D)に示すように、パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を再度照射し、結晶性半導体膜302の露出された領域311を再結晶化する。本実施例は、予め非晶質半導体膜301を結晶化しておき、その後本工程でレーザーを照射することにより結晶性を更に向上させている。この結晶性の向上は、非晶質半導体膜301が結晶化された結晶性半導体膜302の配向性の影響を受けてラテラル成長することに起因する。なお、図6(D)では、反射膜104の最表面のみでレーザー光が反射されているように便宜上記載しているが、実際にはレーザー光は反射膜中にも入射されており、反射膜を構成している各絶縁膜の境界面で反射されている。また、反射される割合自体は小さいが、反射膜を構成している積層絶縁膜の最下層と半導体膜との界面の間でも、レーザー光は反射されている。反射膜を構成している積層絶縁膜各々の膜厚は、入射側に戻ってくる反射光(より好ましくは、入射側に戻ってくる全ての反射光)の位相が揃うように設計されていることが好ましく、干渉効果により反射光強度が増大する。
【0100】
本工程で使用するレーザー光は、パルス発振方式のレーザー光であり、パルス発振が可能なレーザー光であれば、どのような種類でもよい。例えば、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー、GdVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーのいずれか一を使用することができる。
【0101】
また、照射するレーザービームのエネルギー密度は、半導体膜の膜厚や、照射するレーザービームのパルス幅、波長などにより条件が変わる。例えば、XeClエキシマレーザーを用いて膜厚が50nmの半導体膜を結晶化する場合であれば、400〜1000mJ/cm2で行えばよい。
【0102】
以上の工程によって、結晶性半導体膜を作製することができる。結晶性半導体膜を用いてTFTを作製するまでの工程については、実施例1で示した方法を適用することができるので、ここでは省略する。
【実施例3】
【0103】
本実施例では、実施例1または実施例2で説明した方法を用いて作製された結晶性半導体膜を、液晶表示装置やEL表示装置に代表される表示装置に適用する一例について説明する。
【0104】
図7(A)に示すように、実施例1または実施例2で説明した方法を用いて基板701上に半導体膜を結晶化して形成された結晶性半導体膜704をパターニングした後、ゲート絶縁膜705を形成する。ゲート絶縁膜705は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜のいずれか一を用いる単層構造としてもよいし、これらを適宜積層する構造としてもよい。本実施例では、ゲート絶縁膜を酸化窒化珪素膜と窒化酸化珪素膜とを順に積層する構成とする。なお、結晶性半導体膜704を形成するまでの工程は、実施例1または実施例2で説明した方法を用いればよいので、ここでは説明を省略する。
【0105】
次に、図7(B)に示すように、ゲート絶縁膜705の上にゲート電極706を形成する。ゲート電極706として用いる導電膜の材料は、Al、Mo、またはWなどを使用することができ、これらの金属の単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。また、導電膜としてポリシリコン膜を用いてもよい。本実施例では、窒化タンタル(TaN)を30nm、タングステン(W)を370nm積層する構成とする。この際、TaNの幅が、Wに比べて0.5〜1.5μm幅が広くなるように形成するとより好ましい。
【0106】
次に、ゲート電極706をマスクとして、ボロン(B)などのp型の導電型を付与する不純物を結晶性半導体膜704にドーピングする。本工程により、TFTのソース領域及びドレイン領域を自己整合的に形成することができる。なお、本実施例では、公知のドーピング方法により、TFTのチャネル形成領域とソース領域及びドレイン領域との間に低濃度不純物領域(LDD領域)を形成しているが、低濃度不純物領域を設けない構成としてもよい。
【0107】
また、ドーピングを行った後、不純物領域にドーピングされた不純物元素を活性化するために、加熱処理、強光の照射、又はレーザー光の照射を行ってもよい。これにより、不純物元素の活性化だけでなく、ゲート絶縁膜705へのプラズマダメージやゲート絶縁膜705と半導体層との界面へのプラズマダメージを回復することができる。
【0108】
次に、図7(C)に示すように、ゲート絶縁膜705及びゲート電極706上に第1の層間絶縁膜707を形成する。第1の層間絶縁膜707は、酸化珪素膜(SiOx膜)、窒化珪素膜(SiNx膜)、酸化窒化珪素膜(SiOxNy膜)(x>y)(x、yは正の整数)、窒化酸化珪素膜(SiNxOy膜)(x>y)(x、yは正の整数)のいずれか一を用いる単層構造としてもよいし、これらを適宜積層する構造としてもよい。本実施例では、窒化酸化珪素膜を100nm、酸化窒化珪素膜を900nm積層する構成とする。
【0109】
第1の層間絶縁膜707を形成した後、窒素雰囲気中で、300〜550℃(より好ましくは400〜500℃)で1〜12時間の熱処理を行い、結晶性半導体膜704(半導体層)を水素化する工程を行うことが好ましい。本工程により、第1の層間絶縁膜707に含まれている水素により半導体層のダングリングボンドを終端することができる。本実施例では、410℃で1時間加熱処理を行う。
【0110】
次に、図7(D)に示すように、TFTのソース領域及びドレイン領域に達するように、第1の層間絶縁膜707にコンタクトホールを形成する。コンタクトホールの形状は、テーパー状にするとよい。
【0111】
次に、コンタクトホールを覆うように、配線708(電極)を形成する。配線708は、ソース電極またはドレイン電極として機能する。配線708としては、Ag、Au、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Rh、W、Al、Ta、Mo、Cd、Zn、Fe、Ti、Si、Ge、Zr、Ba等の金属若しくはその合金、またはその金属窒化物を用いて形成する。また、これらの積層構造としてもよい。本実施例では、チタン(Ti)を100nm形成し、アルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)を700nm形成し、チタン(Ti)を200nm形成し、所望の形状にパターニングする。
【0112】
次に、図7(E)に示すように、第1の層間絶縁膜707及び配線708上に第2の層間絶縁膜709を形成する。第2の層間絶縁膜709は、単層構造であってもよいし、多層構造としてもよい。また、第2の層間絶縁膜709の材料としては、自己平坦性を有する材料(例えばアクリル、ポリイミド、シロキサンなどの塗布膜など)を使用することができる。本実施例では、シロキサンの塗布膜を焼成して第2の層間絶縁膜709を形成する。本実施例においては、第2の層間絶縁膜709としてシロキサンの単層構造について説明するが、シロキサンを最上層に有する積層構造としてもよい。
【0113】
次に、第2の層間絶縁膜709にコンタクトホールを形成した後、該コンタクトホールを介して配線708に電気的に接続するための第1の電極710を形成する。第1の電極710としては、酸化珪素を含む酸化インジウムスズ(酸化珪素を含むインジウム錫酸化物ともいう。以下、「ITSO」という。)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどを用いることができる。また、酸化インジウムに2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したターゲットを用いて形成された酸化インジウム酸化亜鉛合金などの透明導電膜を用いることもできる。また、上記透明導電膜の他に、窒化チタン膜またはチタン膜を用いてもよい。この場合、透明導電膜を成膜した後に、窒化チタン膜またはチタン膜を、光が透過する程度の膜厚(好ましくは5〜30nm程度)で成膜する。本実施例では、電極710としてITSO膜を110nm形成する。
【0114】
また、第1の電極710は、その表面が平坦化されるように、CMP法、ポリビニルアルコール系の多孔質体で拭浄し、研磨してもよい。またCMP法を用いた研磨後に、第1の電極710の表面に紫外線照射、酸素プラズマ処理などを行ってもよい。
【0115】
また、第1の電極710を形成後、加熱処理を行ってもよい。この加熱処理により、透明導電膜の透過率を大きくすることができるため、信頼性の高い表示装置を作製することができる。本実施例では、250℃で1時間加熱処理を行う。
【0116】
本実施例では、pチャネル型のTFTを作製する工程について説明した。しかし、ゲート電極をマスクとして結晶性半導体膜704にn型の導電型を付与する不純物をドーピングすることによりnチャネル型のTFTを作製する際にも本発明は適用することができる。また、同一基板上にpチャネル型のTFTとnチャネル型のTFTを作製する場合についても、本発明を適用することができる。
【0117】
また、TFTはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でもよいし、二つ形成されるダブルゲート構造または三つ形成されるトリプルゲート構造であってもよい。また、周辺駆動回路領域の薄膜トランジスタも、シングルゲート構造、ダブルゲート構造またはトリプルゲート構造であってもよい。
【0118】
また、本実施例で示したTFTの作製方法に限らず、トップゲート型(プレーナー型)、ボトムゲート型(逆スタガ型)、あるいはチャネル形成領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極を有する構造においても本発明を適用することができる。
【0119】
以上の工程によって、本発明を用いて作製された結晶性半導体膜を用いて電気的特性の高い液晶表示装置やEL表示装置に代表される表示装置を作製することができる。
【実施例4】
【0120】
本実施例では、実施例3で作製した表示装置において、第2の層間絶縁膜709を形成せずに第1の電極を形成するまでの工程について説明する。よって、同一部分又は同様な機能を有する部分の繰り返しの説明は省略する。
【0121】
本実施例では、ゲート電極706を形成する工程までは実施例3で説明したものと同様なため、その後の工程について説明する。
【0122】
まず、図11に示すように、ゲート絶縁膜705及びゲート電極706上に第1の層間絶縁膜1107を形成する。本実施例では、窒化酸化珪素膜と、シロキサンとの2層構造として第1の層間絶縁膜1107を形成する。なお、窒化酸化珪素膜の代わりに酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウムや、その他の無機絶縁性材料からなる膜を用いてもよい。
【0123】
次に、TFTのソース領域及びドレイン領域に達するように、第1の層間絶縁膜1107にコンタクトホールを形成する。コンタクトホールの形状は、テーパー状にするとよい。
【0124】
次に、コンタクトホールを覆うように、配線1108(電極)を形成する。配線1108は、ソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0125】
次に、TFTの半導体層のソース領域又はドレイン領域に接続する配線1108を形成した後、配線1108上の一部に重なるように第1の電極1110を形成する。
【0126】
第1の電極1110は画素電極として機能し、実施例3における第1の電極710と同じ材料を用いればよい。本実施例においても実施例3と同様に第1の電極1110を通過して光を取り出すために、透明導電膜であるITSOを第1の電極1110として形成する。
【0127】
次に、第1の電極1110の端部及びTFTを覆うように絶縁膜1111を形成する。絶縁膜1111は、実施例3において説明した絶縁膜709と同じ材料を用いればよいが、本実施例では、絶縁膜1111としてアクリルを用いる。
【0128】
次に、第1の電極1110上に電界発光層1112を形成し、第2の電極1113を積層することによって発光素子を形成する。第2の電極1113を覆うようにパッシベーション膜を形成する。最後に基板701をシール材によって封止基板と貼り合わせる。なお、シール材で囲まれた領域には充填材を充填してもよい。
【0129】
図12における表示装置は、配線1208と第1の電極1210の接続構造が、第1の電極1210上の一部に配線1208が重なる構造となっている。このような接続構造を得るためには、第1の層間絶縁膜1207上に第1の電極1210を形成した後に第1の層間絶縁膜1207にコンタクトホールを形成し、第1の電極1210上の一部に重なるように配線1208を形成すればよい。当該構造にすると、シロキサン上に第1の電極1210を形成することができるため、被覆性がよい。さらに、第1の電極1210に対してCMPなどの研磨処理も十分に行うことができ、第1の電極1210を平坦性よく形成することができる利点がある。
【0130】
以上の工程によって、本発明を用いて作製された結晶性半導体膜を用いて電気的特性の高い液晶表示装置やEL表示装置に代表される表示装置を作製することができる。
【実施例5】
【0131】
本実施例では、実施例1または実施例2で説明した方法を用いて作製された結晶性半導体膜を用いて、エレクトロルミネッセンス素子(以下、「EL素子」という。)を有する表示装置(EL表示装置)を作製する方法について説明する。
【0132】
本実施例では、エレクトロルミネッセンス素子からの光を第1の電極810側から取り出す構造にするため、透光性を有する膜を用いて第1の電極810を形成する。本実施例では、実施例3と同様に、酸化珪素を含む酸化インジウムスズ(ITSO)を第1の電極810として用いる。
【0133】
まず、図8に示すように、第1の電極810の端部及びTFTを覆うように絶縁膜811(バンク、隔壁、障壁、土手などと呼ばれる。)を形成する。
【0134】
絶縁膜811としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウムその他の無機絶縁性材料、又はアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、又はポリイミド(polyimide)、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール(polybenzimidazole)などの耐熱性高分子、又はシロキサンを用いることができる。その他にもアクリル、ポリイミド等の感光性、非感光性の材料を用いて形成してもよい。本実施例では、感光性ポリイミドを用いて、平坦な領域で膜厚が1.5μmとなるように絶縁膜811を形成する。
【0135】
また、絶縁膜811は曲率半径が連続的に変化する形状が好ましく、絶縁膜811上に形成される電界発光層812(有機化合物を含む層)、第2の電極813の被覆性を向上させることができる。
【0136】
また、信頼性をさらに向上させるため、電界発光層812を形成する前に加熱処理を行うとよい。当該加熱処理により、第1の電極810や絶縁膜811に含有、付着している水分を放出させることが好ましい。本実施例では、300℃で1時間加熱処理を行う。
【0137】
次に、第1の電極810上に電界発光層812を形成する。なお、図8では1画素しか図示していないが、本実施例では赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応した電界発光層を作り分けている。本実施例では電界発光層812として、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光を示す材料を、蒸着マスクを用いた蒸着法によって、それぞれ選択的に形成する。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光を示す材料は、蒸着マスクを用いた蒸着法によってそれぞれ選択的に形成する方法や、液滴吐出法により形成することができる。液滴吐出法の場合、マスクを用いずにRGBの塗り分けを行うことができるという利点がある。本実施例では、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光を示す材料を蒸着法によってそれぞれ形成する。
【0138】
次に、電界発光層812の上に導電膜からなる第2の電極813を形成する。第2の電極813としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF2、またはCaN)を用いればよい。こうして第1の電極810、電界発光層812及び第2の電極813からなる発光素子が形成される。
【0139】
図8に示す表示装置において、発光素子から発した光は、基板801と第1の電極810の間に形成された膜を透過して第1の電極810側から矢印の方向に出射される。
【0140】
また、第2の電極813を覆うようにしてパッシベーション膜を設けることは有効である。パッシベーション膜としては、窒化珪素、酸化珪素、酸化窒化珪素(SiON)、窒化酸化珪素(SiNO)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化窒化アルミニウム(AlON)、窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウム(AlNO)または酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素膜(CN)を含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層を用いることができる。
【0141】
この際、パッシベーション膜としてカバレッジの良い膜を用いることが好ましく、炭素膜、特にDLC膜を用いることは有効である。DLC膜は室温から100℃以下の温度範囲で成膜可能であるため、耐熱性の低い電界発光層812の上方にも容易に成膜することができる。また、DLC膜は酸素に対するブロッキング効果が高く、電界発光層812の酸化を抑制することが可能である。そのため、この後に続く封止工程を行う間に電界発光層812が酸化するといった問題を防止することができる。
【0142】
次に、発光素子が形成された基板801と、封止基板とをシール材によって固着し、発光素子を封止する。断面からの水分の侵入がシール材によって遮断されるので、発光素子の劣化が防止でき、表示装置の信頼性が向上する。なお、シール材で囲まれた領域には充填材を充填してもよく、窒素雰囲気下で封止することによって、窒素等を封入してもよい。また充填材は、液状の状態で滴下し、表示装置内に充填することもできる。本実施例では、下面出射型のため、透光性を有する充填材を使用する必要はないが、充填材を透過して光を取り出す構造の場合は、透光性を有す材料を用いて充填材を形成する必要がある。充填材の一例としては、可視光硬化、紫外線硬化または熱硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。以上の工程において、発光素子を有する表示装置が完成する。
【0143】
また、素子の水分による劣化を防ぐためにEL表示パネル内に乾燥剤を設置することが好ましい。本実施例では、画素領域を取り囲むように封止基板に形成された凹部に乾燥剤を設置し、薄型化を妨げない構成とする。また、ゲート配線層に対応する領域にも乾燥剤を設置することにより吸水面積を広く取ることができ、吸水効果が高い。また、直接発光しないゲート配線層上に乾燥剤を形成しているので、光取り出し効率を低下させることもない。
【0144】
なお、本実施例では、ガラス基板で発光素子を封止した場合を説明するが、封止の処理とは、発光素子を水分から保護するための処理であり、カバー材で機械的に封入する方法、熱硬化性樹脂又は紫外光硬化性樹脂で封入する方法、金属酸化物や窒化物等のバリア能力が高い薄膜により封止する方法のいずれかを用いる。カバー材としては、ガラス、セラミックス、プラスチックもしくは金属を用いることができるが、カバー材側に光を放射させる場合は透光性でなければならない。また、カバー材と上記発光素子が形成された基板とは熱硬化性樹脂又は紫外光硬化性樹脂等のシール材を用いて貼り合わせられ、熱処理又は紫外光照射処理によって樹脂を硬化させて密閉空間を形成する。この密閉空間の中に酸化バリウムに代表される吸湿材を設けることも有効である。この吸湿材は、シール材の上に接して設けても良いし、発光素子よりの光を妨げないような、隔壁の上や周辺部に設けても良い。さらに、カバー材と発光素子の形成された基板との空間を熱硬化性樹脂若しくは紫外光硬化性樹脂で充填することも可能である。この場合、熱硬化性樹脂若しくは紫外光硬化性樹脂の中に酸化バリウムに代表される吸湿材を添加しておくことは有効である。
【0145】
本発明を用いると、電気的特性の高い半導体装置が用いられたEL表示装置を作製することが
できる。よって、高精細、高画質な表示装置を低いコストで歩留まり良く製造することができる。
【実施例6】
【0146】
本発明によって作製された結晶性半導体膜を用いてEL表示装置を作製することができるが、EL素子から発せられる光の放射方式としては、下面放射型、上面放射型、両面放射型の3つの方式がある。実施例5では、片面出射型である下面出射型の例を示したが、本実施例では、両面出射型と、片面出射型である上面出射型の例を、図9及び図10を用いて説明する。
【0147】
図9に示す表示装置は、両面出射型であり、矢印の方向に発光素子が設けられた基板側からも、封止基板側からも光を出射する構造である。なお本実施例では、透明導電膜を成膜し、所望の形状にエッチングすることで第1の電極910を形成する。第1の電極910として透明導電膜を用いることができる。また、透明導電膜の代わりに窒化チタン膜またはチタン膜を用いても良い。この場合、窒化チタン膜またはチタン膜を、光が透過する程度の膜厚(好ましくは、5nm〜30nm程度)で成膜すればよい。本実施例では、第1の電極910としてITSOを用いている。
【0148】
次に、電界発光層912の上には導電膜からなる第2の電極913が設けられる。第2の電極913は、陰極として機能させるため、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、若しくはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF2、またはCaN)を用いればよい。図9の表示装置では、光が透過するように、第2の電極913として膜厚を薄くした金属薄膜(MgAg:膜厚10nm)と、透明導電性を有する材料であるITSO(膜厚100nm)との積層膜を用いる。
【0149】
図10に示す表示装置は、片面出射型であり、矢印の方向に上面出射する構造であり、図9で示した両面出射型の表示装置において、第1の電極1010の下に反射膜を設けるような構造とする。すなわち、図10に示すとおり、反射性を有する金属膜1051の上に、陽極として機能する透明導電膜である第1の電極1010を設ける。反射性を有する金属膜としては、Ta、W、Ti、Mo、Al、Cuなどを用いればよい。特に、可視光の領域で反射性が高い物質を用いることが好ましく、本実施例ではTiN膜を用いる。
【0150】
電界発光層1012の上には導電膜からなる第2の電極1013が設けられる。第2の電極1013は、陰極として機能させるため、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、若しくはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF2、またはCaN)を用いればよい。本実施例では、第2の電極1013として、膜厚を薄くした金属薄膜(MgAg:膜厚10nm)とITSO(膜厚110nm)の積層構造を用いて発光が透過するようにする。
【実施例7】
【0151】
本発明に適用できる発光素子(EL発光素子)の形態について説明する。発光素子は、電界発光層を第1の電極と第2の電極で挟んだ構成になっている。第1の電極及び第2の電極は仕事関数を考慮して材料を選択する必要があり、第1の電極及び第2の電極は、画素構成によって陽極、陰極のいずれにもなりうる。
【0152】
TFTの極性がpチャネル型である場合、第1の電極を陽極、第2の電極を陰極とすることが好ましい。また、TFTの極性がNチャネル型である場合、第1の電極を陰極、第2の電極を陽極とすることが好ましい。
【0153】
また、第1の電極を陽極、第2の電極を陰極とする場合、電界発光層は、第1の電極(陽極)側から、HIL(ホール注入層)、HTL(ホール輸送層)、EML(発光層)、ETL(電子輸送層)、EIL(電子注入層)、第2の電極(陰極)の順に積層するのが好ましい。
【0154】
また、第1の電極を陰極、第2の電極を陽極とする場合、電界発光層は、第1の電極(陰極)側からEIL(電子注入層)、ETL(電子輸送層)、EML(発光層)、HTL(ホール輸送層)、HIL(ホール注入層)、第2の電極(陽極)の順に積層するのが好ましい。
【0155】
発光層は、発光波長帯の異なる発光層を画素毎に形成して、カラー表示を行う構成としても良い。典型的には、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層を形成する。この場合、画素の光放射側にその発光波長帯の光を透過するフィルターを設けた構成とすることで、色純度の向上や、画素部の鏡面化(映り込み)の防止を図ることができる。フィルターを設けることで、従来必要であるとされていた円偏光板などを省略することが可能となり、発光層から放射される光の損失を無くすことができる。さらに、斜方から画素部(表示画面)を見た場合に起こる色調の変化を低減することができる。
【0156】
また、発光層として、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光を示す材料は、蒸着マスクを用いた蒸着法によって、それぞれ選択的に形成する。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光を示す材料はカラーフィルタと同様に、液滴吐出法により形成することもでき(低分子または高分子材料など)、この場合マスクを用いずとも、RGBの塗り分けを行うことができるため好ましい。
【0157】
また、発光層は、単色又は白色の発光を呈する構成とすることができる。白色発光材料を用いる場合には、画素の光放射側に特定の波長の光を透過するフィルター(着色層)を設けた構成としてカラー表示を可能にすることができる。
【0158】
また、封止基板にカラーフィルタ(着色層)を形成してもよい。カラーフィルタは、蒸着法や液滴吐出法によって形成することができ、カラーフィルタを用いると、高精細な表示を行うこともできる。カラーフィルタにより、各RGBの発光スペクトルにおいてブロードなピークが鋭くなるように補正できるからである。
【0159】
以上、各RGBの発光を示す材料を形成する場合を説明したが、単色の発光を示す材料を形成し、カラーフィルタや色変換層を組み合わせることによりフルカラー表示を行うことができる。カラーフィルタや色変換層は、例えば第2の基板(封止基板)に形成した後、発光素子が形成された基板と貼り合わせればよい。カラーフィルタは、蒸着法や液滴吐出法によって形成することができる。カラーフィルタを用いると、各RGBの発光スペクトルにおいてブロードなピークを鋭くなるように補正できるため、高精細な表示を行うことができる。
【0160】
また、発光層は、一重項励起発光材料の他、金属錯体などを含む三重項励起発光材料を用いても良い。例えば、赤色の発光性の画素、緑色の発光性の画素及び青色の発光性の画素のうち、輝度半減時間が比較的短い赤色の発光性の画素を三重項励起発光材料で形成し、他を一重項励起発光材料で形成する。三重項励起発光材料は発光効率が良いので、同じ輝度を得るのに消費電力が少なくて済むという特徴がある。すなわち、赤色画素に適用した場合、発光素子に流す電流量が少なくて済むので、信頼性を向上させることができる。低消費電力化として、赤色の発光性の画素と緑色の発光性の画素とを三重項励起発光材料で形成し、青色の発光性の画素を一重項励起発光材料で形成しても良い。人間の視感度が高い緑色の発光素子も三重項励起発光材料で形成することで、より低消費電力化を図ることができる。
【0161】
以上に掲げる発光層を形成する物質は一例であり、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、発光層、電子ブロック層、正孔ブロック層などの機能性の各層を適宜積層することで発光層を形成することができる。また、これらの各層を合わせた混合層又は混合接合を形成しても良い。発光層の層構造は変化しうるものであり、特定の電子注入領域や発光領域を備えていない代わりに、もっぱらこの目的用の電極を備えたり、発光性の材料を分散させて備えたりする変形は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において許容されうるものである。
【0162】
上記の発光素子は、順方向にバイアスすることで発光する。発光素子を用いて形成する表示装置の画素は、単純マトリクス方式、若しくはアクティブマトリクス方式で駆動することができる。いずれにしても、個々の画素は、ある特定のタイミングで順方向バイアスを印加して発光させることとなるが、ある一定期間は非発光状態となっている。この非発光時間に逆方向のバイアスを印加することで発光素子の信頼性を向上させることができる。発光素子では、一定駆動条件下で発光強度が低下する劣化や、画素内で非発光領域が拡大して見かけ上輝度が低下する劣化モードがあるが、順方向及び逆方向にバイアスを印加する交流的な駆動を行うことで、劣化の進行を遅くすることができ、発光装置の信頼性を向上させることができる。また、デジタル駆動、アナログ駆動どちらでも適用可能である。
【0163】
また、上記構成において、陰極としては、仕事関数が小さい材料を用いることが可能であり、例えば、Ca、Al、CaF、MgAg、AlLi等が望ましい。電界発光層は、単層型、積層型、また層の界面がない混合型のいずれでもよい。例えば、電界発光層として、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、発光層、電子輸送層、電子注入層等を適宜組み合わせて積層させた構成とすればよい。また、電界発光層を形成する材料としては、有機化合物のみからなるものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成であってもよく、これらの材料は低分子系化合物、中分子系化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)、高分子系化合物のいずれでもよい。また、電界発光層を形成する方法としては、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等を用いることができる。第1の電極は光を透過する透明導電膜を用いて形成し、例えばITO、ITSOの他、酸化インジウムに2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いて形成する。
【0164】
本発明を用いると、電気的特性の高い半導体装置が用いられたEL表示装置を作製することができる。よって、高精細、高画質な表示装置を低いコストで歩留まり良く製造することができる。
【0165】
本実施例は、実施の形態及び実施例1乃至6と適宜組み合わせて用いることが可能である。
【実施例8】
【0166】
本実施例では、本発明の半導体装置の一形態に相当する液晶表示装置パネルの外観について、図13を用いて説明する。図13(A)は、第1の基板1600と、第2の基板1604との間を第1のシール材1605及び第2のシール材1606によって封止されたパネルの上面図であり、図13(B)は、図13(A)のA−A’、及びB−B’それぞれにおける断面図に相当する。
【0167】
図13(A)において、点線で示された1601は信号線(ソース線)駆動回路、1602は画素部、1603は走査線(ゲート線)駆動回路である。本実施例において、画素部1602、及び走査線駆動回路1603は第1のシール材1605及び第2のシール材1606で封止されている領域内にある。また、信号線(ソース線)駆動回路1601はチップ状であり、第1の基板1600上に設けられている。信号線駆動回路1601、画素部1602、及び走査線駆動回路1603は、TFTを代表とする半導体素子をそれぞれ複数有している。
【0168】
次に、断面構造について図13(B)を用いて説明する。第1の基板1600上には信号線駆動回路1601、画素部1602、及び走査線駆動回路1603が形成されている。また、第2の基板1604の表面には、図示していないがカラーフィルターが設けられている。本断面図では、走査線駆動回路1603と画素部1602が示されている。なお、走査線駆動回路1603はnチャネル型TFT1612とpチャネル型TFT1613とを組み合わせたCMOS回路が形成されていてもよいし、nチャネル型またはpチャネル型の一方のみのTFTによって形成されていてもよい。
【0169】
本実施例においては、同一基板上に走査線駆動回路、及び画素部のTFTが形成されている。このため、表示装置の容積を縮小することができる。
【0170】
画素部1601には、複数の画素が形成されており、各画素には液晶素子1615が形成されている。液晶素子1615は、第1の電極1616、第2の電極1618及びその間に充填されている液晶材料1619が重なっている部分である。液晶素子1615が有する第1の電極1616は、配線1617を介してTFT1611と電気的に接続されている。ここでは、配線1617を形成した後、第1の電極1616を形成しているが、実施例1に示すように第1の電極1616を形成した後、配線1617を形成してもよい。液晶素子1615の第2の電極1618は、第2の基板1604側に形成される。また、各画素電極表面には図示していないが配向膜が形成されている。
【0171】
1622は柱状のスペーサであり、第1の電極1616と第2の電極1618との間の距離(セルギャップ)を制御するために設けられている。絶縁膜を所望の形状にエッチングして形成されている。なお、球状スペーサを用いていても良い。信号線駆動回路1601または画素部1602に与えられる各種信号及び電位は、接続配線1623を介して、FPC1609から供給されている。なお、接続配線1623とFPC1609とは、異方性導電膜又は異方性導電樹脂1627で電気的に接続されている。なお、異方性導電膜又は異方性導電樹脂1627の代わりに半田等の導電性ペーストを用いてもよい。
【0172】
第2の基板1604表面には、接着剤1624によって偏光板1625が固定されている。なお、偏光板1625には位相差板を設けた円偏光板又は楕円偏光板を用いてもよい。さらに、偏光板1625表面には、1/2λ又は1/4λの位相差板1629及び反射防止膜1626が設けられている。また、第1の基板1600表面にも同様に、接着剤により偏光板が設けられている。
【実施例9】
【0173】
本実施例では、本発明の半導体装置の一形態に相当するEL表示パネルの外観について、図14を用いて説明する。図14(A)は、第1の基板1400と、第2の基板1404との間を第1のシール材1405及び第2のシール材1406によって封止されたパネルの上面図であり、図14(B)は、図14(A)のA−A’における断面図に相当する。
【0174】
図14(A)において、点線で示された1402は画素部、1403は走査線(ゲート線)駆動回路である。本実施例において、画素部1402、及び走査線駆動回路1403は、第1のシール材1405及び第2のシール材1406で封止されている領域内にある。また、1401は信号線(ソース線)駆動回路であり、チップ状の信号線駆動回路1401が第1基板1400上に設けられている。第1のシール材1405としては、フィラーを含む粘性の高いエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、第2のシール材1406としては、粘性の低いエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、第1のシール材1405及び第2のシール材1406は、できるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。信号線駆動回路1401、画素部1402及び走査線駆動回路1403は、TFTを代表とする半導体素子をそれぞれ複数有している。
【0175】
また、画素部1402とシール材1405との間に、乾燥剤を設けてもよい。さらには、画素部1402において、走査線又は信号線上に乾燥剤を設けてもよい。乾燥剤としては、酸化カルシウム(CaO)や酸化バリウム(BaO)等のようなアルカリ土類金属の酸化物のような化学吸着によって水(H2O)を吸着する物質を用いるのが好ましい。但し、これらの物質に限定されず、ゼオライトやシリカゲル等の物理吸着によって水を吸着する物質を用いても構わない。
【0176】
また、透湿性の高い樹脂に乾燥剤の粒状の物質を含ませた状態で第2の基板1404に固定することができる。また、透湿性の高い樹脂の代わりに、シロキサン、ポリイミド、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いてもよい。
【0177】
また、走査線と重畳する領域に乾燥剤を設けてもよい。更には、透湿性の高い樹脂に乾燥剤の粒状の物質を含ませた状態で第2の基板に固定してもよい。これらの乾燥剤を設けることにより、開口率を低下せずに表示素子への水分の侵入及びそれに起因する劣化を抑制することができる。このため、画素部1402の周辺部と中央部における発光素子の劣化のバラツキを抑えることが可能である。
【0178】
なお、1410は、信号線駆動回路1401及び走査線駆動回路1403に入力される信号を伝送するための接続領域であり、外部入力端子となるフレキシブルプリント配線1409(FPC)から接続配線1408を介してビデオ信号やクロック信号を受け取る。
【0179】
次に、断面構造について図14(B)を用いて説明する。第1の基板1400上には信号線駆動回路1401、画素部1402及び走査線駆動回路1403が形成されている。本断面図では、信号線駆動回路1401と画素部1402が示されている。なお、信号線駆動回路1401はnチャネル型TFT1421とpチャネル型TFT1422とを組み合わせたCMOS回路が形成される。
【0180】
本実施例においては、同一基板上に走査線駆動回路、及び画素部のTFTが形成されている。このため、発光表示装置の容積を縮小することができる。
【0181】
また、画素部1402はスイッチング用TFT1411と、駆動用TFT1412とそのドレイン(またはソース)に電気的に接続された透光性を有する導電膜からなる第1の画素電極(陽極)1413を含む複数の画素により形成される。なお、スイッチング用TFT1411は、画素に信号を入力するか否かを選択するために設けられたTFTであり、駆動用TFT1412は、発光素子を駆動するために設けられたTFTである。
【0182】
また、第1の画素電極(陽極)1413の両端には絶縁物(バンク、隔壁、障壁、土手などと呼ばれる)1414が形成される。絶縁物1414に形成する膜の被覆率(カバレッジ)を良好なものとするため、絶縁物1414の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。また、絶縁物1414表面を、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜からなる保護膜で覆ってもよい。更には、絶縁物1414として、黒色顔料、色素などの可視光を吸収する材料を溶解又は分散させてなる有機材料を用いることで、後に形成される発光素子からの迷光を吸収することができる。この結果、各画素のコントラストが向上する。
【0183】
また、第1の画素電極(陽極)1413上には、有機化合物材料の蒸着を行い、電界発光層1415を選択的に形成する。さらには、電界発光層1415上に第2の画素電極(陰極)1416を形成する。
【0184】
こうして、第1の画素電極(陽極)1413、電界発光層1415、及び第2の画素電極(陰極)1416からなる発光素子1417が形成される。本実施例では、発光素子1417からの発光は、第1の基板1400側に出射させている。しかし、この構成に限定されず、第2の基板1404側に出射させるようにしてもよいし、第1の基板1400及び第2の基板1404の両側から出射させるようにしてもよい。
【0185】
また、発光素子1417を封止するために保護積層1418を形成する。保護積層1418は、第1の無機絶縁膜と、応力緩和膜と、第2の無機絶縁膜との積層からなっている。次に、保護積層1418と第2の基板1404とを、第1のシール材1405及び第2のシール材1406で接着する。なお、第2のシール材を、シール材を滴下する装置を用いて滴下することが好ましい。シール材をディスペンサから滴下、又は吐出させてシール材をアクティブマトリクス基板上に塗布した後、真空中で、第2の基板とアクティブマトリクス基板とを貼り合わせ、紫外線硬化を行って封止することができる。
【0186】
なお、第2の基板1404表面には、外光が基板表面で反射するのを防止するための反射防止膜1426を設ける。また、第2の基板1404と反射防止膜1426との間に、偏光板1425、及び位相差板1429のいずれか一方又は両方を設けてもよい。位相差板、偏光板を設けることにより、外光が画素電極で反射することを防止することが可能である。なお、第1の画素電極1413及び第2の画素電極1416を、透光性を有する導電膜又は半透光性を有する導電膜で形成し、可視光を吸収する材料、又は可視光を吸収する材料を溶解又は分散させてなる有機材料を用いて絶縁物1414を形成すると、各画素電極で外光が反射しないため、位相差板及び偏光板を用いなくてもよい。
【0187】
接続配線1408とフレキシブルプリント配線1409とは、異方性導電膜又は異方性導電樹脂1427により電気的に接続されている。さらに、各配線層と接続端子との接続部を封止樹脂により封止することが好ましい。この構造により、断面部からの水分が発光素子に侵入し、劣化することを防ぐことができる。
【0188】
なお、第2の基板1404と、保護積層1418との間には、第2のシール材1406の代わりに、不活性ガス、例えば窒素ガスを充填した空間を有してもよい。水分や酸素の侵入の防止を高めることができる。
【0189】
また、第2の基板と偏光板1425との間に着色層を設けることができる。この場合、画素部に白色発光が可能な発光素子を設け、RGBを示す着色層を別途設けることでフルカラー表示することができる。また、画素部に青色発光が可能な発光素子を設け、色変換層などを別途設けることによってフルカラー表示することができる。さらには、画素部に、赤色、緑色、青色の発光を示す発光素子を形成し、且つ着色層を用いることもできる。このような表示モジュールは、各RGBの色純度が高く、高精細な表示が可能となる。
【0190】
また、第1の基板1400又は第2の基板1404の一方、若しくは両方にフィルム又は樹脂等の基板を用いて発光表示モジュールを形成してもよい。このように対向基板を用いず封止すると、表示装置の軽量化、小型化、薄膜化を向上させることができる。
【0191】
更には、外部入力端子となるフレキシブルプリント配線1409(FPC)表面又は端部に、コントローラ、メモリ、画素駆動回路のようなICチップを設け発光表示モジュールを形成してもよい。
【実施例10】
【0192】
本発明により作製した半導体装置を用いた電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話機、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)、その他表示部を有する電化製品などが挙げられる。また、本発明のレーザー照射方法によって形成する結晶性半導体膜を用いれば、CPUやメモリーに代表される、極めて高い特性が要求される集積回路を作製することができる。電子機器の具体例を図15に示す。
【0193】
図15(A)はテレビ受像機であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2003などに用いることによって、テレビ受像機を作製することができる。
【0194】
図15(B)はデジタルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2102やその他回路などに用いることによって、デジタルカメラを作製することができる。
【0195】
図15(C)はコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2203やその他回路などに用いることによって、コンピュータを作製することができる。
【0196】
図15(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2302やその他回路などに用いることによって、モバイルコンピュータを作製することができる。
【0197】
図15(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(DVD再生装置など)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示する。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部A2403や表示部B2404またはその他の回路などに用いることによって、画像再生装置を作製することができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置にはゲーム機器なども含まれる。
【0198】
図15(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2502やその他回路などに用いることによって、ゴーグル型ディスプレイを作製することができる。
【0199】
図15(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2602やその他回路などに用いることによって、ビデオカメラを作製することができる。
【0200】
図15(H)は携帯電話機であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2703やその他回路などに用いることによって、携帯電話機を作製することができる。
【0201】
なお、上述した電子機器の他に、フロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能である。
【0202】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器や集積回路に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】本発明を実施するための最良の形態を示す図。
【図2】本発明の実施例1を示す図。
【図3】反射膜の反射率を示す図。
【図4】本発明の実施例1を示す図。
【図5】本発明の実施例1を示す図。
【図6】本発明の実施例2を示す図。
【図7】本発明の実施例3を示す図。
【図8】本発明の実施例5を示す図。
【図9】本発明の実施例6を示す図。
【図10】本発明の実施例6を示す図。
【図11】本発明の実施例4を示す図。
【図12】本発明の実施例4を示す図。
【図13】本発明の実施例8を示す図。
【図14】本発明の実施例9を示す図。
【図15】本発明の実施例10を示す図。
【図16】反射膜の構成の例を示す図。
【符号の説明】
【0204】
101 絶縁基板
102 下地膜
103 非晶質半導体膜
104 反射膜
105 結晶性半導体膜
110 半導体膜が反射膜で覆われている領域
111 半導体膜が露出された領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の作製方法に関する。特に、絶縁基板上に形成された半導体膜をレーザー光の照射によりラテラル結晶成長させ、前記ラテラル結晶成長させた半導体膜を用いて形成された薄膜トランジスタ(以下、本明細書においては、「TFT」と略述する。)を有する半導体装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス等の絶縁基板上に形成された半導体膜(特に、非晶質半導体膜)に対してレーザーアニールすることにより、結晶化、または結晶性を向上させる技術が広く研究されている。上記半導体膜としては、珪素がよく用いられている。
【0003】
ガラス基板は、従来多用されていた合成石英ガラス基板と比較し、安価で加工性に富んでおり、大面積基板を容易に作製できる利点がある。一方、ガラス基板は、合成石英ガラス基板と比較し、融点が低いため、基板の上に形成する半導体膜を結晶化させる工程においてあまり加熱することができないという欠点がある。そこで、ガラス基板上に半導体膜を形成して前記半導体膜を結晶化する方法として、レーザーを使用する方法が多用されている。これは、レーザーが基板の温度を余り上昇させることなく、非晶質半導体膜のみに高いエネルギーを与えることが出来るためである。
【0004】
レーザーアニールにより形成される結晶性半導体膜は、高い移動度を有する。このため、この結晶性半導体膜を用いてTFTを形成し、1枚のガラス基板上に画素部用と駆動回路用のTFTを作製するモノリシック型の液晶電気光学装置等に盛んに利用されている。
【0005】
また、エキシマレーザーの如き出力の大きいパルス発振方式のレーザービームを、被照射面において、数cm角の四角いスポットや、長さ10cm以上の線状となるように光学系にて加工し、被照射面に対してレーザービームを相対的に走査させてレーザーアニールを行う方法は、生産性が高く工業的に優れているため、広く用いられている。
【0006】
特に、線状ビームを用いると、前後左右の走査が必要なスポット状のレーザービームを用いた場合とは異なり、線状ビームの長尺方向に直角な方向のみの走査で被照射面全体にレーザビームを照射することが出来るため、生産性が高い。長尺方向に直角な方向に走査するのは、それが最も効率の良い走査方向であるからである。この高い生産性により、現在レーザーアニール法において、パルス発振のエキシマレーザーのレーザービームを適当な光学系で加工した線状ビームを使用することが、TFTを用いる液晶表示装置等の製造技術の主流になりつつある。また、この技術により、1枚のガラス基板上に画素部を形成するTFT(画素TFT)と、画素部の周辺に設けられる駆動回路のTFTを一体形成したモノリシック型の液晶表示装置を作製することが可能となっている。
【0007】
しかし、レーザーアニール法で作製される結晶性半導体膜は、複数の結晶粒が集合して形成され、その結晶粒の位置と大きさはランダムなものであった。ガラス基板上に作製されるTFTは、素子分離のために前記結晶性半導体膜を島状のパターンに分離して形成している。しかしながら、この場合において、結晶粒の位置や大きさを指定して形成する事はできなかった。結晶粒内と比較して、結晶粒の界面(結晶粒界)には非晶質構造や結晶欠陥などに起因する再結合中心や捕獲中心が無数に存在している。この捕獲中心にキャリアがトラップされると、結晶粒界のポテンシャルが上昇し、キャリアに対して障壁となるため、キャリアの電流輸送特性を低下することが知られている。チャネル形成領域における半導体膜の結晶性は、TFTの電気的特性に重大な影響を及ぼすが、結晶粒界の影響を排除して単結晶の半導体膜で前記チャネル形成領域を形成することはほとんど不可能であった。
【0008】
このような問題を解決するために、レーザーアニール法において、位置制御され、且つ大粒径の結晶粒を形成する様々な試みがなされている。以下に、半導体膜にレーザービームを照射した後の前記半導体膜の固化過程について説明する。
【0009】
レーザービームの照射によって完全溶融した半導体膜中に結晶核が生成するまでにはある程度の時間が掛かり、完全溶融領域において均一(あるいは不均一)に無数の結晶核が生成し、結晶成長することで、完全溶融した前記半導体膜の固化過程は終了する。この場合に得られる結晶粒の位置と大きさはランダムなものとなる。
【0010】
また、レーザービームの照射によって前記半導体膜が完全溶融することなく、固相半導体領域が部分的に残存している場合には、レーザービームの照射後、前記固相半導体領域から結晶成長が直ちに始まる。既に述べたように、完全溶融領域において結晶核が生成するには、ある程度時間が掛かる。そのため、完全溶融領域において結晶核が生成するまでの間に、前記半導体膜の膜面に対して平行方向(以下、「ラテラル方向」という。)に結晶成長の先端である固液界面(固相半導体領域と完全溶融領域との境界を指す。)が移動することで、結晶粒は膜厚の数十倍もの長さに成長する。このような成長は、完全溶融領域において均一(あるいは不均一)に無数の結晶核が生成し、結晶成長することで終了する。以下、この現象をスーパーラテラル成長と言う。
【0011】
非晶質半導体膜や多結晶半導体膜においても、前記スーパーラテラル成長が実現するレーザービームのエネルギー領域は存在する。しかし、前記エネルギー領域は非常に狭く、また、大粒径の結晶粒の得られる位置については制御できなかった。さらに、大粒径の結晶粒以外の領域は結晶核が無数に生成した微結晶領域、もしくは非晶質領域であった。
【0012】
以上に説明したように、半導体膜が完全溶融するレーザービームのエネルギー領域でラテラル方向の温度勾配を制御する(ラテラル方向への熱流を生じさせる)ことが出来れば、結晶粒の成長位置および成長方向を制御することができる。この方法を実現するために様々な試みがなされている。
【0013】
まず、非晶質半導体膜上に反射膜として金属膜(Cr単層、またはCr膜上にAl膜を形成した積層)を形成し、部分的にエッチングを行って、前記非晶質半導体膜上に金属膜のある領域とない領域を形成する。波長308nmでのCrの反射率は約60%であり、Alの反射率は約90%であるため、波長308nmのレーザービームを照射すると、金属膜の下方の非晶質半導体領域は金属膜で覆われていない非晶質半導体領域に比べてレーザービームが照射されないことになる。つまり、金属膜の下方の非晶質半導体領域と、金属膜で覆われていない非晶質半導体領域とで温度勾配が生じる。そのため、金属膜の下方の非晶質半導体領域で生成した結晶核は、まだ溶融状態にある金属膜で覆われていない非晶質半導体領域へとラテラル成長し、1〜2μmの結晶粒が形成されることが知られている。
【0014】
しかしながら、この方法は以下の問題点がある。非晶質半導体膜上に金属膜を部分的に形成し、レーザービームを照射して、結晶化を行う方法は、結晶粒の形成される位置は制御できても、単結晶単位では形成する位置を制御することが困難であった。また、非晶質半導体膜上に直接金属膜を形成しているため、非晶質半導体膜中へ金属元素が拡散し、前記非晶質半導体膜を結晶化して作製した結晶質半導体を用いてTFTを作製すると、前記TFTの電気的特性を低下させる原因となる可能性があった。また、金属膜や非晶質半導体膜にクラックやピーリングを発生させる可能性があった。また、金属膜の成膜は、通常スパッタ法により形成されている。スパッタ法は、CVD法と比較して、成膜した際の面内における膜厚のバラツキが大きい。このため、基板が大型化されると、スパッタ法を使用することは将来的に好ましくないといえる。
【0015】
また、コロンビア大のJames S. Im氏らは、任意の場所にスーパーラテラル成長を実現させることの出来るSequential Lateral Solidification method(以下、「SLS法」という。)を示した(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3204986号公報
【0016】
SLS法は、1ショット毎にスリット状のマスクをスーパーラテラル成長が行なわれる距離程度(約0.75μm)移動させて、結晶化を行うものである。
【0017】
SLS法を使用すると、スリットを透過したエキシマレーザービームを集光した数ミクロン程度の極細ビームを、ガラス基板上に成膜したアモルファスシリコン膜に照射することにより、ラテラル成長を行なうことが可能である。また、ショット毎の基板の送りピッチをラテラル成長の距離とすることにより、逐次的にラテラル成長を繋げていくことができる。しかしながら、SLS法を使用すると、以下のような問題点がある。
【0018】
エキシマレーザーは、そのビーム品質があまり良くないため、SLS法を使用するためには、数μmに集光するためのマスクをレーザー照射装置に用いる必要がある。また、マスクは、定期的な交換が必要となる上、焦点距離の短いレンズは焦点深度も浅いため、基板面内で均一に焦点を維持するためには、焦点深度を一定に保つためのオートフォーカス機能が必須になり、通常のレーザー照射装置と比較して装置が複雑かつ高価なものになってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記問題点を鑑み、装置を煩雑にせず、半導体膜の結晶ラテラル成長位置を制御することを課題とする。
【0020】
また、本発明は、線状ビームを用いたレーザーアニール装置をそのまま使用して、半導体膜の結晶ラテラル成長位置を制御することを課題とする。
【0021】
また、本発明は、結晶粒の位置とその大きさを制御した結晶性半導体膜を作製し、さらに前記結晶性半導体膜をTFTのチャネル形成領域に用いることにより、高速動作が可能なTFTを実現することを課題とする。さらにそのようなTFTを液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス材料を用いた表示装置などのさまざまな半導体装置に適用できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、半導体膜の結晶ラテラル成長の位置を制御するために、半導体膜を形成した上に、パターニングされた反射膜を形成する。そして、反射膜をパターニングすることによって露出された半導体膜に、レーザーを照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化する。
【0023】
本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の構成は、
絶縁基板上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜の一部の上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、露出された前記半導体膜を結晶化することを特徴とする。
【0024】
また、本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の別の構成は、
絶縁基板上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化することを特徴とする。
【0025】
また、本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の別の構成は、
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化し、
前記パターニングされた反射膜を除去し、
前記半導体膜の一部をパターニングし、
前記パターニングされた半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記結晶化された半導体膜を薄膜トランジスタのチャネル形成領域に用いることを特徴とする。
【0026】
また、本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の別の構成は、
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜に第1のレーザー光を照射し、
前記第1のレーザー光が照射された半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとして第2のレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化することを特徴とする。
【0027】
また、本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の別の構成は、
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜に第1のレーザー光を照射して結晶性半導体膜を形成し、
前記結晶性半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記結晶性半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとして第2のレーザー光を照射することにより、前記結晶性半導体膜の配向性を維持しつつ、前記露出された半導体膜の結晶性を向上させることを特徴とする。
【0028】
また、上記発明の構成において、前記反射膜の下に設けられた半導体膜は、前記第2のレーザー光の照射によって溶融しないことを特徴とする。
【0029】
また、上記発明の構成において、前記反射膜は、前記第2のレーザー光を反射することを特徴とする。
【0030】
また、上記発明の構成において、前記反射膜は、屈折率の高い絶縁膜と屈折率の低い絶縁膜とが交互に積層された構造であることを特徴とする。具体的には、酸化珪素膜と、前記酸化珪素膜上に接して形成された窒化珪素膜と、からなることを特徴とする。より好ましくは、酸化珪素膜と、窒化珪素膜と、を何層か積層して反射膜を形成する。
【0031】
また、上記発明の構成において、前記反射膜を、プラズマCVD法や減圧CVD法に代表されるCVD法によって形成することを特徴とする。
【0032】
また、上記発明の構成において、前記反射膜のパターニングを、ドライエッチングによって行うことを特徴とする。
【0033】
また、上記発明の構成において、前記パターニングされた反射膜の除去を、ウエットエッチングによって行うことを特徴とする。
【0034】
また、上記発明の構成において、前記結晶化は、横方向(ラテラル)の結晶成長によりおこり、前記半導体膜は、前記パターニングされた反射膜の下に設けられた半導体膜の領域から前記露出された半導体膜の領域の方向に向けて横方向(ラテラル)に結晶成長していることを特徴とする。
【0035】
また、上記発明の構成において、薄膜トランジスタのチャネル形成領域におけるキャリアの移動する方向と前記横方向(ラテラル)に結晶成長している方向とが平行になるように薄膜トランジスタを形成することを特徴とする。
【0036】
また、上記発明の構成において、前記半導体装置は、液晶表示装置、EL表示装置、集積回路のいずれか一であることを特徴とする。
【0037】
また、上記発明の構成において、前記半導体装置を、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーションシステム、音響再生装置、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末、画像再生装置のいずれか一に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、半導体膜の結晶ラテラル成長位置を制御するために、半導体膜を形成した上に、パターニングされた反射膜を形成する。そして、反射膜をパターニングすることによって露出された半導体膜に、レーザーを照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化する。したがって、数μmに集光するためのマスクをレーザー照射装置に用いることがなく、従来使用しているエキシマレーザーをそのまま使用することができ、基板面内でエピタキシャル成長結晶とラテラル成長結晶を作り分けることも可能となる。
【0039】
また、新規に装置を購入する必要もないため、コストを削減することもできる。
【0040】
また、反射膜を、屈折率の高い絶縁膜と屈折率の低い絶縁膜とを交互に積層する構造とすることにより、以下の効果を得ることができる。すなわち、屈折率の高い絶縁膜と低い絶縁膜との積層パターンを何層も積層すればするほど反射率を上げることができ、所望の反射率を得る構造を容易に形成することができる。また、積層して形成される反射膜全体としての膜厚を、反射膜を単層膜とした場合に比較して小さくすることができるため、反射膜のパターニングや結晶化後に反射膜を除去する際のエッチングの時間を短縮することができる。これは、単層膜で反射膜を形成した場合に膜厚を薄く形成すると、反射率が低い膜、すなわち反射防止膜として機能してしまうためである。
【0041】
また、反射防止膜を用いて半導体膜を結晶化する場合と比べ、本発明は以下の有利な効果を奏する。反射防止膜を用いて半導体膜を結晶化する場合、反射防止膜の膜厚のバラツキに応じて反射防止膜の面内において反射率にバラツキが生じる。反射防止膜の面内において反射率にバラツキが生じると、半導体膜に吸収されるエネルギーにバラツキが生じてしまう。この結果、結晶化された半導体膜の結晶性にバラツキが生じてしまう。一方、本発明を用いて作製する結晶性半導体膜は、他の膜を介さず、半導体膜が露出された領域に直接レーザーを照射することによって形成されている。半導体膜が露出された領域に直接レーザーを照射すると、半導体膜が露出された領域に吸収されるエネルギーは、半導体膜が露出された領域の面内において一定となる。この結果、結晶化された半導体膜の結晶性にバラツキが生じにくい。したがって、本発明で作製した結晶性半導体膜をTFTのチャネル形成領域に用いることにより、個々のTFTにおける特性のバラツキをなくすことができる。
【0042】
また、金属膜を反射膜に用いた場合と比較して、半導体膜に対する汚染がない。また、金属膜をCVD法で形成しようとすると有毒ガスを成膜ガスに用いなければならないなどの理由から、スパッタ法を用いて金属膜は形成されている。しかしながら、スパッタ法は基板が大型化していくと、CVD法に比較して成膜時の面内における膜厚のバラツキが生じやすく、反射膜を除去する際にクラックやピーリングを起こしやすい。
【0043】
本発明で使用する反射膜は、CVD法によって形成することに何の制約も受けないので、反射膜を除去する際のクラックやピーリングを懸念しなくてよい。
【0044】
また、本発明で得られる結晶性半導体膜を用いてTFTを形成することにより、電界効果移動度(キャリアの移動速度の電界に対する係数)やサブスレッショルド係数(S値)などの電気特性の優れたTFTが得られる。さらに、このTFTを用いることによって、応答速度などの特性の高さが要求される集積回路を作製する際にも最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明を実施するための最良の形態を、図1を用いながら説明する。なお、以下に説明する本発明の構成において同じ対象物を指す場合、異なる図面においても同一の符号を用いて説明する。
【0046】
図1(A)〜(D)は、本発明を実施して半導体装置を作製する工程を示す断面図である。
【0047】
まず、図1(A)に示すように、ガラス基板や石英基板等の絶縁基板101の上に下地膜102を形成する。下地膜102の成膜方法は、プラズマCVD法や低圧CVD法に代表されるCVD法、スパッタ法などの公知の方法を用いればよい。
【0048】
次に、下地膜102の上に半導体膜103を形成する。半導体膜103としては、非晶質珪素膜など非晶質半導体膜を形成すればよいが、微結晶半導体膜や結晶性半導体膜を形成してもよい。
【0049】
次に、図1(B)に示すように、半導体膜103の上に反射膜104を形成する。反射膜104としては、屈折率の高い絶縁膜と屈折率の低い絶縁膜とを交互に積層する構成とすればよい。例えば、図16(A)に示すように、基板側から順に酸化窒化珪素膜1651(SiOxNy膜)(x>y)(x、yは正の整数)、窒化酸化珪素膜1652(SiNxOy膜)(x>y)(x、yは正の整数)を積層する構成としたり、図16(B)に示すように、基板側から順に第1の酸化窒化珪素膜1653、第1の窒化酸化珪素膜1654、第2の酸化窒化珪素膜1655、第2の窒化酸化珪素膜を積層する構成1656とすればよい。本発明の作製工程で肝要なことは、上記のように金属膜を用いずに反射膜を形成することである。
【0050】
次に、図1(C)に示すように、反射膜104をパターニングし、半導体膜103の一部を露出させるようにする。なお、半導体膜103において、反射膜104で覆われている領域(第1の領域)を110、露出されている領域(第2の領域)を111とする。パターニングの方法としては、公知のパターニング技術を使用すればよいが、より好ましくは、ドライエッチングによってパターニングするとよい。この理由は、ドライエッチングを使用することによって異方性エッチングを行うことが可能なため、パターニングを制御良く行うことができるためである。
【0051】
次に、図1(D)に示すように、パターニングされた反射膜をマスクとして、レーザー光を照射する。レーザー光を照射することによって半導体膜が結晶化されるまでの過程について説明する。
【0052】
半導体膜103にレーザー光が照射されると、反射膜104がパターニングされて半導体膜103が露出された領域111は、完全溶融領域となる。
【0053】
一方、反射膜で覆われた領域110はレーザー光が反射される。この結果、半導体膜の結晶化に必要なしきい値エネルギーを超えない状態となる。すなわち、反射膜で覆われた領域110は溶融せず、固相半導体領域といえる。なお、図1(D)では、反射膜104の最表面のみでレーザー光が反射されているように便宜上記載しているが、実際にはレーザー光は反射膜中にも入射されており、反射膜を構成している各絶縁膜の境界面で反射されている。また、反射される割合自体は小さいが、反射膜を構成している積層絶縁膜の最下層と半導体膜との界面の間でも、レーザー光は反射されている。反射膜を構成している積層絶縁膜各々の膜厚は、入射側に戻ってくる反射光(より好ましくは、入射側に戻ってくる全ての反射光)の位相が揃うように設計されていることが好ましく、干渉効果により反射光強度が増大する。
【0054】
完全溶融領域と固相半導体領域とでは、温度勾配が生じている。完全溶融領域において結晶核が生成するには、ある程度時間が掛かる。そのため、完全溶融領域において結晶核が生成するまでの間に、前記半導体膜の膜面に対するラテラル方向に結晶成長の先端である固液界面(固相半導体領域と完全溶融領域との境界を指す。)が移動することで、結晶粒が成長する。そして、この成長は、半導体膜が露出された領域111の中心(図1(D)において結晶性半導体膜105中に示した点線部分)で結晶成長してきた結晶粒が互いに接触し、結晶成長は終了する。また同時に、半導体膜が露出された領域の中心付近の表面にリッジが形成される。このようにして、半導体膜103が露出された領域111の結晶化が起こり、結晶粒の成長位置および成長方向が制御された結晶性半導体膜105が形成される。なお、本明細書において「リッジ」とは、レーザー光の照射によって結晶成長してきた結晶粒が接触した際に、半導体膜の表面に形成される突起のことをいう。
【0055】
本工程で使用するレーザー光は、パルス発振方式のレーザー光であり、パルス発振が可能なレーザー光であれば、どのような種類でもよい。例えば、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー、GdVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーのいずれか一を使用することができる。
【0056】
また、照射するレーザービームのエネルギー密度は、半導体膜の膜厚や、照射するレーザービームのパルス幅、波長などにより条件が変わる。例えば、XeClエキシマレーザーを用いて膜厚が50nmの半導体膜を結晶化する場合であれば、400〜1000mJ/cm2で行えばよい。
【0057】
また、照射するレーザービームの形状は、線状に加工したものでもよいし、面状に加工したものでもよい。
【0058】
本発明は、図1(C)に示すように、互いに隣り合う反射膜と反射膜の間の幅(スリットの幅)を1〜10μm(好ましくは2〜3μm)とすることにより、反射膜がパターニングされて半導体膜が露出された領域の全体をラテラル成長させることができる。すなわち、スリットの幅を10μm以上にすると、レーザーが照射されて完全に溶融した領域がラテラル成長する前に固化する領域(種結晶)が一部生成してしまうため、本発明を実施することができなくなってしまう。
【0059】
次に、パターニングされた反射膜を全て除去する。前記パターニングされた反射膜を除去する方法は、公知のエッチング技術を用いればよいが、より好ましくは、ウエットエッチングによって除去するとよい。この理由は、ドライエッチングに比較して、ウエットエッチングを使用する方が、半導体膜と反射膜として用いる酸化珪素膜とのエッチング選択比を大きく取ることが可能なためである。すなわち、ウエットエッチングを使用することにより、結晶化された半導体膜がオーバーエッチングされずに反射膜を除去することができる。
【0060】
以上の工程によって、結晶粒の成長位置および成長方向が制御された結晶性半導体膜105を得ることができる。
【実施例1】
【0061】
本実施例では、結晶性半導体膜を作製し、得られた結晶性半導体膜を用いてTFTを作製する工程を、図1及び図2を用いながら説明する。
【0062】
まず、図1(A)に示すように、ガラス基板や石英基板等の絶縁基板101の上に下地膜102を形成する。下地膜102の成膜方法は、プラズマCVD法や低圧CVD法に代表されるCVD法、スパッタ法などの公知の方法を用いればよい。また、下地膜102としては、酸化珪素膜(SiOx膜)、窒化珪素膜(SiNx膜)、酸化窒化珪素膜(SiOxNy膜)(x>y)(x、yは正の整数)、窒化酸化珪素膜(SiNxOy膜)(x>y)(x、yは正の整数)のいずれか一を用いる単層構造としてもよいし、これらを適宜積層する構造としてもよい。本実施例では、下地膜102として、窒化酸化珪素膜を50nm、酸化窒化珪素膜を100nm積層する構成とする。
【0063】
次に、下地膜102の上に半導体膜103を形成する。半導体膜103としては、非晶質半導体膜を形成すればよいが、微結晶半導体膜や結晶性半導体膜を形成してもよい。また、半導体膜の材料に限定はないが、好ましくはシリコンまたはシリコンゲルマニウム(SiGe)を用いるとよい。本実施例では、非晶質珪素膜を54nm形成する。なお、半導体膜を形成した後に、半導体膜に含まれる水素を除去する工程を行ってもよい。具体的には、500℃で1時間加熱すればよい。
【0064】
また、下地膜102と半導体膜103を形成する際に、下地膜102と半導体膜103との界面が大気に曝されないようにすると、界面の汚染を防ぐことが可能となり、作製されるTFTの特性のバラツキを低減させることができる。本実施例では、下地膜102と半導体膜103を、プラズマCVD法を用いて大気に曝さずに連続して形成する。
【0065】
次に、図1(B)に示すように、半導体膜103の上に反射膜104を形成する。反射膜104としては、絶縁膜を積層した構成とすればよい。
【0066】
ここで、エキシマレーザー(XeCl)の波長である308nmでの反射膜の反射率を図3に示す。図3は、反射膜として、酸化珪素膜と、酸化珪素膜の上に窒化珪素膜を積層した2層構造として、各膜の厚さを変化させたときの反射率をシミュレーションした結果である。図3より、反射膜を設けない(すなわち、酸化珪素膜及び、窒化珪素膜の膜厚をそれぞれ0nmとした)場合の反射率は、約55%であることがわかる。また、酸化珪素膜を45nm、窒化珪素膜を40nm積層して反射膜を構成した場合、反射率は約68%になることがわかる。したがって、エキシマレーザー(XeCl)を照射して結晶化する場合、反射膜は65%以上の反射率を有していることが好ましい。
【0067】
なお、図3では、反射膜として酸化珪素膜と窒化珪素膜とを2層積層する構造としているが、4層、6層とさらに積層することによって、反射膜の反射率を更に向上させることが期待できる。本実施例では、酸化珪素膜を45nm、窒化珪素膜を40nm積層する構成とする。
【0068】
次に、図1(C)に示すように、反射膜104をパターニングして、半導体膜の一部を露出させるようにする。パターニングの方法としては、公知のパターニング技術を使用すればよいが、より好ましくは、ドライエッチングによってパターニングするとよい。ドライエッチングを使用すると、異方性エッチングが可能なため、パターニングを制御良く行うことができる。なお、半導体膜103において、反射膜104で覆われている領域(第1の領域)を110、露出されている領域(第2の領域)を111とする。
【0069】
また、反射膜と反射膜の間の幅(スリットの幅)は、1〜10μmとすればよく、好ましくは2〜3μmとすればよい。
【0070】
次に、図1(D)に示すように、パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することによって半導体膜103が露出された領域111を結晶化し、結晶性半導体膜105を形成する。このとき、半導体膜103が反射膜で覆われた領域110も、反射膜やレーザー光の条件によっては結晶性が向上することがあるが、結晶性半導体膜105に比較して結晶性は劣るものである。なお、本工程の前に、パターニングされた反射膜をマスクとしてNiなどの半導体膜の結晶化を促進する元素を添加し固相成長させた後、レーザー光を照射して半導体膜の露出された領域を結晶化し、結晶性半導体膜105を形成してもよい。なお、結晶化を促進する元素としては、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Auから選ばれた一種または複数種類の元素を用いることができる。
【0071】
本実施例で使用するレーザー光は、パルス発振方式のレーザー光であり、パルス発振が可能なレーザー光であれば、どのような種類でもよい。例えば、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー、GdVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーのいずれか一を使用することができる。本実施例では、エキシマレーザー(XeCl)を使用する。
【0072】
また、照射するレーザービームのエネルギー密度は、半導体膜の膜厚や、照射するレーザービームのパルス幅、波長などにより条件が変わる。例えば、XeClエキシマレーザーを用いて膜厚が50nmの半導体膜を結晶化する場合であれば、400〜1000mJ/cm2で行えばよい。
【0073】
次に、パターニングされた反射膜を全て除去し、半導体膜の全面が露出されるようにする。前記パターニングされた反射膜を除去する方法は、公知のエッチング技術を用いればよいが、より好ましくは、ウエットエッチングによって除去するとよい。これは、ドライエッチングに比較して、ウエットエッチングを使用する方が、半導体膜と反射膜として用いる酸化珪素膜とのエッチング選択比を大きく取ることが可能なためである。すなわち、結晶化された半導体膜がオーバーエッチングされずに反射膜を除去することができる。本実施例では、7.13wt%のフッ化水素アンモニウム(NH4HF2)と15.4wt%のフッ化アンモニウム(NH4F)を含む混合溶液(ステラケミファ社製、商品名:LAL500)をエッチャントとして用い、反射膜を室温にてウエットエッチングする。
【0074】
次に、半導体膜の全面を露出させた後、ボロンなどのp型の導電型を付与する不純物を、露出された半導体膜全面にドーピングする。本工程により、TFTのチャネル形成領域となる領域にチャネルドープし、TFTのしきい値を制御することができる。
【0075】
次に、図2(A)に示すように、半導体膜110をパターニングして、島状の半導体膜を形成する。パターニングの方法としては、公知のパターニング技術を使用すればよい。また、半導体膜110は、全てパターニングしてもよいし、その一部をパターニングしてもよい。本実施例では、結晶性半導体膜105はパターニングせず、半導体膜110の一部のみをパターニングする。
【0076】
次に、図2(B)に示すように半導体膜110をパターニングした後、絶縁膜(ゲート絶縁膜)106を形成する。絶縁膜106は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜のいずれか一を用いる単層構造としてもよいし、これらを適宜積層する構造としてもよい。
【0077】
次に、図2(C)に示すように、絶縁膜106を形成した後に金属膜を成膜し、その一部をパターニングしてゲート電極107を形成する。金属膜は、Al、Mo、またはWなどを使用することができ、これらの金属の単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。例えば、TaN上にWを形成した積層構造とすることができる。また、金属膜の代わりにポリシリコン膜を用いてゲート電極107を形成してもよい。
【0078】
ゲート電極107を形成した段階での断面図を図4(A)、上面図を図4(B)に示す。図4(A)の断面図は、図4(B)の上面図におけるAA’間の断面図に相当する。ゲート電極107を形成する際にあたり、ゲート電極107が形成される領域の下には、島状の半導体膜のうちリッジの存在する領域を含まないようにすることが好ましい。すなわち、ゲート電極107の下に形成されるTFTのチャネル形成領域は、島状の半導体膜のうちリッジのほとんど存在しない結晶性半導体膜105を用いて形成するとよい。ただし、上述したように結晶性半導体膜105
中にもリッジが存在する領域(図1(D)においては、結晶性半導体膜105中に示した点線部分)を含んでいるので、この領域を含まないようにすることが好ましい。図4においては、半導体膜110の一部をエッチングして島状の半導体膜を形成し、当該島状の半導体膜のうちリッジのほとんど存在しない結晶性半導体膜105を用いてTFTのチャネル形成領域が形成されるので、好ましい。
【0079】
また、図5のように結晶性半導体膜105の一部を残すようにパターニングして島状の半導体膜を形成し、リッジのほとんど存在しない結晶性半導体膜105上にゲート電極を形成するようにしてもよい。ゲート電極107を形成した段階での断面図を図5(A)、上面図を図5(B)に示す。図5(A)の断面図は、図5(B)の上面図におけるBB’間の断面図に相当する。結局、パターニングは、リッジのほとんど存在しない結晶性半導体膜105上にゲート電極107を形成することができる条件であれば、図4及び図5以外のパターニングを行ってもよい。
【0080】
次に、ゲート電極107をマスクとして、リンなどのn型の導電型を付与する不純物をドーピングする。本工程により、TFTのソース領域及びドレイン領域が自己整合的に形成される。
【0081】
次に、図2(D)に示すように、絶縁膜106及びゲート電極107上に層間絶縁膜108を形成する。層間絶縁膜108としては、単層構造であってもよいし、多層構造としてもよい。また、層間絶縁膜108の材料としては、自己平坦性を有する材料(例えばアクリル、ポリイミド、シロキサンなどの塗布膜など)を使用することができる。また、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜なども適宜組み合わせることも可能である。本実施例では、無機絶縁膜の上に有機樹脂からなる絶縁膜を積層して形成する。なお、シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)、またはフルオロ基を用いればよい。また、置換基として、少なくとも水素を含む有機基とフルオロ基とを共に用いてもよい。
【0082】
次に、図2(E)に示すように、TFTのソース領域及びドレイン領域に達するように、層間絶縁膜108にコンタクトホールを形成する。コンタクトホールの形状は、テーパー形状にするとよい。
【0083】
次に、コンタクトホール上に、配線(電極)109を形成する。配線109としては、Al、Cu、Ag、Ti、またはMoなどを使用することができ、これらの金属の単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。例えば、Ti、Al、Tiを順に積層した構造や、Mo、Al、Moを順に積層した構造とすることができる。また、その他に、Al及びCを含む合金を用いることもできる。この合金に、Ni、Co、Fe、Si等を含有させても良い。これらの含有率は、例えば、Cを0.1〜3.0原子%、Ni、Co、Feのうち少なくとも一種以上の元素を0.5〜7.0原子%、Siを0.5〜2.0原子%とするのがよい。
【0084】
以上の工程によって、本発明によって作製された結晶性半導体膜をTFTのチャネル形成領域に用いたTFTを作製することができる。
【0085】
本実施例で作製する結晶性半導体膜105は、他の膜を介さず、半導体膜103が露出された領域111に直接レーザーを照射することによって形成されている。他の膜を介してレーザー光を半導体膜103に照射すると、当該膜の膜厚のバラツキに応じて、半導体膜103に吸収されるエネルギーにバラツキが生じてしまう。本実施例に示したように、半導体膜103が露出された領域111に直接レーザーを照射すると、半導体膜103が露出された領域111に吸収されるエネルギーは、半導体膜103が露出された領域111の面内において一定となる。したがって、結晶性半導体膜105を用いてTFTのチャネル形成領域を形成して複数のTFTを作製すると、個々のTFTにおける特性のバラツキをなくすことができる。
【0086】
なお、本実施例ではnチャネル型のTFTを作製する工程について説明したが、本発明を用いればpチャネル型のTFTも作製することができる。
【実施例2】
【0087】
本実施例では、実施例1とは違う方法を用いて結晶性半導体膜を作製する方法を、図6を用いながら示す。
【0088】
まず、図6(A)に示すように、ガラス基板や石英基板等の絶縁基板101の上に下地膜102を形成する。下地膜102の成膜方法は、プラズマCVD法や低圧CVD法に代表されるCVD法、スパッタ法などの公知の方法を用いればよい。また、下地膜102としては、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜のいずれか一を用いる単層構造としてもよいし、これらを適宜積層する構造としてもよい。本実施例では、下地膜102として、窒化酸化珪素膜と酸化窒化珪素膜とを積層した構成とする。
【0089】
次に、下地膜102の上に非晶質半導体膜301を形成する。
【0090】
次に、非晶質半導体膜301を結晶化し、結晶性半導体膜302を形成する。
【0091】
結晶化の方法は、加熱やNiを使用して結晶化する公知の方法を用いればよいが、レーザー照射による結晶化が好ましく、本実施例では、レーザー照射によって結晶化する例を示す。
【0092】
結晶化に使用するレーザーは、パルス発振方式のレーザーでもよいし、連続発振方式のレーザーでもよい。
【0093】
パルス発振が可能なレーザー光としては、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー、GdVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーなどを使用することができる。
【0094】
また、照射するレーザービームのエネルギー密度は、半導体膜の膜厚や、照射するレーザービームのパルス幅、波長などにより条件が変わる。例えば、XeClエキシマレーザーを用いて膜厚が50nmの半導体膜を結晶化する場合であれば、400〜1000mJ/cm2で行えばよい。
【0095】
連続発振が可能なレーザー光としては、気体レーザーまたは固体レーザーを用いることができる。気体レーザーとしては、Arレーザー、Krレーザーなどがある。また、固体レーザーとしては、Cr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti、Yb又はTmがドーピングされたYAG、YVO4、YLF、YAlO3、Y2O3、GdVO4などの結晶を使ったレーザー等も使用可能である。当該固体レーザーの基本波はドーピングする材料によって異なり、1μm前後の基本波を有するレーザー光が得られる。基本波に対する高調波は、非線形光学素子を用いることで得ることができる。代表的には、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)が挙げられる。具体的には、連続発振のYVO4レーザーから射出されたレーザー光を非線形光学素子により高調波に変換し、出力10Wのレーザー光を得る。また、共振器の中にYVO4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法もある。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザー光に成形して、被処理体に照射する。このときのパワー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、10〜2000cm/sec程度の速度でレーザー光に対して相対的に絶縁基板101を移動させて照射する。
【0096】
次に、図6(B)に示すように、結晶性半導体膜302の上に反射膜104を形成する。反射膜104としては、絶縁膜を積層した構成とすればよい。例えば、酸化窒化珪素膜と窒化酸化珪素膜とを積層する構成とすればよい。
【0097】
次に、図6(C)に示すように、反射膜104をパターニングして、結晶性半導体膜302の一部を露出させるようにする。結晶性半導体膜302のうち、反射膜104で覆われた領域を310、露出された領域を311とする。パターニングの方法としては、公知のパターニング技術を使用すればよいが、より好ましくは、ドライエッチングによってパターニングするとよい。ドライエッチングを使用すると、異方性エッチングが可能なため、パターニングを制御良く行うことができる。
【0098】
また、互いに隣り合う反射膜と反射膜の間の幅(スリットの幅)は、1〜10μmとすればよく、好ましくは2〜3μmとすればよい。
【0099】
次に、図6(D)に示すように、パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を再度照射し、結晶性半導体膜302の露出された領域311を再結晶化する。本実施例は、予め非晶質半導体膜301を結晶化しておき、その後本工程でレーザーを照射することにより結晶性を更に向上させている。この結晶性の向上は、非晶質半導体膜301が結晶化された結晶性半導体膜302の配向性の影響を受けてラテラル成長することに起因する。なお、図6(D)では、反射膜104の最表面のみでレーザー光が反射されているように便宜上記載しているが、実際にはレーザー光は反射膜中にも入射されており、反射膜を構成している各絶縁膜の境界面で反射されている。また、反射される割合自体は小さいが、反射膜を構成している積層絶縁膜の最下層と半導体膜との界面の間でも、レーザー光は反射されている。反射膜を構成している積層絶縁膜各々の膜厚は、入射側に戻ってくる反射光(より好ましくは、入射側に戻ってくる全ての反射光)の位相が揃うように設計されていることが好ましく、干渉効果により反射光強度が増大する。
【0100】
本工程で使用するレーザー光は、パルス発振方式のレーザー光であり、パルス発振が可能なレーザー光であれば、どのような種類でもよい。例えば、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー、GdVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーのいずれか一を使用することができる。
【0101】
また、照射するレーザービームのエネルギー密度は、半導体膜の膜厚や、照射するレーザービームのパルス幅、波長などにより条件が変わる。例えば、XeClエキシマレーザーを用いて膜厚が50nmの半導体膜を結晶化する場合であれば、400〜1000mJ/cm2で行えばよい。
【0102】
以上の工程によって、結晶性半導体膜を作製することができる。結晶性半導体膜を用いてTFTを作製するまでの工程については、実施例1で示した方法を適用することができるので、ここでは省略する。
【実施例3】
【0103】
本実施例では、実施例1または実施例2で説明した方法を用いて作製された結晶性半導体膜を、液晶表示装置やEL表示装置に代表される表示装置に適用する一例について説明する。
【0104】
図7(A)に示すように、実施例1または実施例2で説明した方法を用いて基板701上に半導体膜を結晶化して形成された結晶性半導体膜704をパターニングした後、ゲート絶縁膜705を形成する。ゲート絶縁膜705は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜のいずれか一を用いる単層構造としてもよいし、これらを適宜積層する構造としてもよい。本実施例では、ゲート絶縁膜を酸化窒化珪素膜と窒化酸化珪素膜とを順に積層する構成とする。なお、結晶性半導体膜704を形成するまでの工程は、実施例1または実施例2で説明した方法を用いればよいので、ここでは説明を省略する。
【0105】
次に、図7(B)に示すように、ゲート絶縁膜705の上にゲート電極706を形成する。ゲート電極706として用いる導電膜の材料は、Al、Mo、またはWなどを使用することができ、これらの金属の単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。また、導電膜としてポリシリコン膜を用いてもよい。本実施例では、窒化タンタル(TaN)を30nm、タングステン(W)を370nm積層する構成とする。この際、TaNの幅が、Wに比べて0.5〜1.5μm幅が広くなるように形成するとより好ましい。
【0106】
次に、ゲート電極706をマスクとして、ボロン(B)などのp型の導電型を付与する不純物を結晶性半導体膜704にドーピングする。本工程により、TFTのソース領域及びドレイン領域を自己整合的に形成することができる。なお、本実施例では、公知のドーピング方法により、TFTのチャネル形成領域とソース領域及びドレイン領域との間に低濃度不純物領域(LDD領域)を形成しているが、低濃度不純物領域を設けない構成としてもよい。
【0107】
また、ドーピングを行った後、不純物領域にドーピングされた不純物元素を活性化するために、加熱処理、強光の照射、又はレーザー光の照射を行ってもよい。これにより、不純物元素の活性化だけでなく、ゲート絶縁膜705へのプラズマダメージやゲート絶縁膜705と半導体層との界面へのプラズマダメージを回復することができる。
【0108】
次に、図7(C)に示すように、ゲート絶縁膜705及びゲート電極706上に第1の層間絶縁膜707を形成する。第1の層間絶縁膜707は、酸化珪素膜(SiOx膜)、窒化珪素膜(SiNx膜)、酸化窒化珪素膜(SiOxNy膜)(x>y)(x、yは正の整数)、窒化酸化珪素膜(SiNxOy膜)(x>y)(x、yは正の整数)のいずれか一を用いる単層構造としてもよいし、これらを適宜積層する構造としてもよい。本実施例では、窒化酸化珪素膜を100nm、酸化窒化珪素膜を900nm積層する構成とする。
【0109】
第1の層間絶縁膜707を形成した後、窒素雰囲気中で、300〜550℃(より好ましくは400〜500℃)で1〜12時間の熱処理を行い、結晶性半導体膜704(半導体層)を水素化する工程を行うことが好ましい。本工程により、第1の層間絶縁膜707に含まれている水素により半導体層のダングリングボンドを終端することができる。本実施例では、410℃で1時間加熱処理を行う。
【0110】
次に、図7(D)に示すように、TFTのソース領域及びドレイン領域に達するように、第1の層間絶縁膜707にコンタクトホールを形成する。コンタクトホールの形状は、テーパー状にするとよい。
【0111】
次に、コンタクトホールを覆うように、配線708(電極)を形成する。配線708は、ソース電極またはドレイン電極として機能する。配線708としては、Ag、Au、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Rh、W、Al、Ta、Mo、Cd、Zn、Fe、Ti、Si、Ge、Zr、Ba等の金属若しくはその合金、またはその金属窒化物を用いて形成する。また、これらの積層構造としてもよい。本実施例では、チタン(Ti)を100nm形成し、アルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)を700nm形成し、チタン(Ti)を200nm形成し、所望の形状にパターニングする。
【0112】
次に、図7(E)に示すように、第1の層間絶縁膜707及び配線708上に第2の層間絶縁膜709を形成する。第2の層間絶縁膜709は、単層構造であってもよいし、多層構造としてもよい。また、第2の層間絶縁膜709の材料としては、自己平坦性を有する材料(例えばアクリル、ポリイミド、シロキサンなどの塗布膜など)を使用することができる。本実施例では、シロキサンの塗布膜を焼成して第2の層間絶縁膜709を形成する。本実施例においては、第2の層間絶縁膜709としてシロキサンの単層構造について説明するが、シロキサンを最上層に有する積層構造としてもよい。
【0113】
次に、第2の層間絶縁膜709にコンタクトホールを形成した後、該コンタクトホールを介して配線708に電気的に接続するための第1の電極710を形成する。第1の電極710としては、酸化珪素を含む酸化インジウムスズ(酸化珪素を含むインジウム錫酸化物ともいう。以下、「ITSO」という。)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどを用いることができる。また、酸化インジウムに2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したターゲットを用いて形成された酸化インジウム酸化亜鉛合金などの透明導電膜を用いることもできる。また、上記透明導電膜の他に、窒化チタン膜またはチタン膜を用いてもよい。この場合、透明導電膜を成膜した後に、窒化チタン膜またはチタン膜を、光が透過する程度の膜厚(好ましくは5〜30nm程度)で成膜する。本実施例では、電極710としてITSO膜を110nm形成する。
【0114】
また、第1の電極710は、その表面が平坦化されるように、CMP法、ポリビニルアルコール系の多孔質体で拭浄し、研磨してもよい。またCMP法を用いた研磨後に、第1の電極710の表面に紫外線照射、酸素プラズマ処理などを行ってもよい。
【0115】
また、第1の電極710を形成後、加熱処理を行ってもよい。この加熱処理により、透明導電膜の透過率を大きくすることができるため、信頼性の高い表示装置を作製することができる。本実施例では、250℃で1時間加熱処理を行う。
【0116】
本実施例では、pチャネル型のTFTを作製する工程について説明した。しかし、ゲート電極をマスクとして結晶性半導体膜704にn型の導電型を付与する不純物をドーピングすることによりnチャネル型のTFTを作製する際にも本発明は適用することができる。また、同一基板上にpチャネル型のTFTとnチャネル型のTFTを作製する場合についても、本発明を適用することができる。
【0117】
また、TFTはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でもよいし、二つ形成されるダブルゲート構造または三つ形成されるトリプルゲート構造であってもよい。また、周辺駆動回路領域の薄膜トランジスタも、シングルゲート構造、ダブルゲート構造またはトリプルゲート構造であってもよい。
【0118】
また、本実施例で示したTFTの作製方法に限らず、トップゲート型(プレーナー型)、ボトムゲート型(逆スタガ型)、あるいはチャネル形成領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極を有する構造においても本発明を適用することができる。
【0119】
以上の工程によって、本発明を用いて作製された結晶性半導体膜を用いて電気的特性の高い液晶表示装置やEL表示装置に代表される表示装置を作製することができる。
【実施例4】
【0120】
本実施例では、実施例3で作製した表示装置において、第2の層間絶縁膜709を形成せずに第1の電極を形成するまでの工程について説明する。よって、同一部分又は同様な機能を有する部分の繰り返しの説明は省略する。
【0121】
本実施例では、ゲート電極706を形成する工程までは実施例3で説明したものと同様なため、その後の工程について説明する。
【0122】
まず、図11に示すように、ゲート絶縁膜705及びゲート電極706上に第1の層間絶縁膜1107を形成する。本実施例では、窒化酸化珪素膜と、シロキサンとの2層構造として第1の層間絶縁膜1107を形成する。なお、窒化酸化珪素膜の代わりに酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウムや、その他の無機絶縁性材料からなる膜を用いてもよい。
【0123】
次に、TFTのソース領域及びドレイン領域に達するように、第1の層間絶縁膜1107にコンタクトホールを形成する。コンタクトホールの形状は、テーパー状にするとよい。
【0124】
次に、コンタクトホールを覆うように、配線1108(電極)を形成する。配線1108は、ソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0125】
次に、TFTの半導体層のソース領域又はドレイン領域に接続する配線1108を形成した後、配線1108上の一部に重なるように第1の電極1110を形成する。
【0126】
第1の電極1110は画素電極として機能し、実施例3における第1の電極710と同じ材料を用いればよい。本実施例においても実施例3と同様に第1の電極1110を通過して光を取り出すために、透明導電膜であるITSOを第1の電極1110として形成する。
【0127】
次に、第1の電極1110の端部及びTFTを覆うように絶縁膜1111を形成する。絶縁膜1111は、実施例3において説明した絶縁膜709と同じ材料を用いればよいが、本実施例では、絶縁膜1111としてアクリルを用いる。
【0128】
次に、第1の電極1110上に電界発光層1112を形成し、第2の電極1113を積層することによって発光素子を形成する。第2の電極1113を覆うようにパッシベーション膜を形成する。最後に基板701をシール材によって封止基板と貼り合わせる。なお、シール材で囲まれた領域には充填材を充填してもよい。
【0129】
図12における表示装置は、配線1208と第1の電極1210の接続構造が、第1の電極1210上の一部に配線1208が重なる構造となっている。このような接続構造を得るためには、第1の層間絶縁膜1207上に第1の電極1210を形成した後に第1の層間絶縁膜1207にコンタクトホールを形成し、第1の電極1210上の一部に重なるように配線1208を形成すればよい。当該構造にすると、シロキサン上に第1の電極1210を形成することができるため、被覆性がよい。さらに、第1の電極1210に対してCMPなどの研磨処理も十分に行うことができ、第1の電極1210を平坦性よく形成することができる利点がある。
【0130】
以上の工程によって、本発明を用いて作製された結晶性半導体膜を用いて電気的特性の高い液晶表示装置やEL表示装置に代表される表示装置を作製することができる。
【実施例5】
【0131】
本実施例では、実施例1または実施例2で説明した方法を用いて作製された結晶性半導体膜を用いて、エレクトロルミネッセンス素子(以下、「EL素子」という。)を有する表示装置(EL表示装置)を作製する方法について説明する。
【0132】
本実施例では、エレクトロルミネッセンス素子からの光を第1の電極810側から取り出す構造にするため、透光性を有する膜を用いて第1の電極810を形成する。本実施例では、実施例3と同様に、酸化珪素を含む酸化インジウムスズ(ITSO)を第1の電極810として用いる。
【0133】
まず、図8に示すように、第1の電極810の端部及びTFTを覆うように絶縁膜811(バンク、隔壁、障壁、土手などと呼ばれる。)を形成する。
【0134】
絶縁膜811としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウムその他の無機絶縁性材料、又はアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、又はポリイミド(polyimide)、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール(polybenzimidazole)などの耐熱性高分子、又はシロキサンを用いることができる。その他にもアクリル、ポリイミド等の感光性、非感光性の材料を用いて形成してもよい。本実施例では、感光性ポリイミドを用いて、平坦な領域で膜厚が1.5μmとなるように絶縁膜811を形成する。
【0135】
また、絶縁膜811は曲率半径が連続的に変化する形状が好ましく、絶縁膜811上に形成される電界発光層812(有機化合物を含む層)、第2の電極813の被覆性を向上させることができる。
【0136】
また、信頼性をさらに向上させるため、電界発光層812を形成する前に加熱処理を行うとよい。当該加熱処理により、第1の電極810や絶縁膜811に含有、付着している水分を放出させることが好ましい。本実施例では、300℃で1時間加熱処理を行う。
【0137】
次に、第1の電極810上に電界発光層812を形成する。なお、図8では1画素しか図示していないが、本実施例では赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応した電界発光層を作り分けている。本実施例では電界発光層812として、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光を示す材料を、蒸着マスクを用いた蒸着法によって、それぞれ選択的に形成する。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光を示す材料は、蒸着マスクを用いた蒸着法によってそれぞれ選択的に形成する方法や、液滴吐出法により形成することができる。液滴吐出法の場合、マスクを用いずにRGBの塗り分けを行うことができるという利点がある。本実施例では、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光を示す材料を蒸着法によってそれぞれ形成する。
【0138】
次に、電界発光層812の上に導電膜からなる第2の電極813を形成する。第2の電極813としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF2、またはCaN)を用いればよい。こうして第1の電極810、電界発光層812及び第2の電極813からなる発光素子が形成される。
【0139】
図8に示す表示装置において、発光素子から発した光は、基板801と第1の電極810の間に形成された膜を透過して第1の電極810側から矢印の方向に出射される。
【0140】
また、第2の電極813を覆うようにしてパッシベーション膜を設けることは有効である。パッシベーション膜としては、窒化珪素、酸化珪素、酸化窒化珪素(SiON)、窒化酸化珪素(SiNO)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化窒化アルミニウム(AlON)、窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウム(AlNO)または酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素膜(CN)を含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層を用いることができる。
【0141】
この際、パッシベーション膜としてカバレッジの良い膜を用いることが好ましく、炭素膜、特にDLC膜を用いることは有効である。DLC膜は室温から100℃以下の温度範囲で成膜可能であるため、耐熱性の低い電界発光層812の上方にも容易に成膜することができる。また、DLC膜は酸素に対するブロッキング効果が高く、電界発光層812の酸化を抑制することが可能である。そのため、この後に続く封止工程を行う間に電界発光層812が酸化するといった問題を防止することができる。
【0142】
次に、発光素子が形成された基板801と、封止基板とをシール材によって固着し、発光素子を封止する。断面からの水分の侵入がシール材によって遮断されるので、発光素子の劣化が防止でき、表示装置の信頼性が向上する。なお、シール材で囲まれた領域には充填材を充填してもよく、窒素雰囲気下で封止することによって、窒素等を封入してもよい。また充填材は、液状の状態で滴下し、表示装置内に充填することもできる。本実施例では、下面出射型のため、透光性を有する充填材を使用する必要はないが、充填材を透過して光を取り出す構造の場合は、透光性を有す材料を用いて充填材を形成する必要がある。充填材の一例としては、可視光硬化、紫外線硬化または熱硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。以上の工程において、発光素子を有する表示装置が完成する。
【0143】
また、素子の水分による劣化を防ぐためにEL表示パネル内に乾燥剤を設置することが好ましい。本実施例では、画素領域を取り囲むように封止基板に形成された凹部に乾燥剤を設置し、薄型化を妨げない構成とする。また、ゲート配線層に対応する領域にも乾燥剤を設置することにより吸水面積を広く取ることができ、吸水効果が高い。また、直接発光しないゲート配線層上に乾燥剤を形成しているので、光取り出し効率を低下させることもない。
【0144】
なお、本実施例では、ガラス基板で発光素子を封止した場合を説明するが、封止の処理とは、発光素子を水分から保護するための処理であり、カバー材で機械的に封入する方法、熱硬化性樹脂又は紫外光硬化性樹脂で封入する方法、金属酸化物や窒化物等のバリア能力が高い薄膜により封止する方法のいずれかを用いる。カバー材としては、ガラス、セラミックス、プラスチックもしくは金属を用いることができるが、カバー材側に光を放射させる場合は透光性でなければならない。また、カバー材と上記発光素子が形成された基板とは熱硬化性樹脂又は紫外光硬化性樹脂等のシール材を用いて貼り合わせられ、熱処理又は紫外光照射処理によって樹脂を硬化させて密閉空間を形成する。この密閉空間の中に酸化バリウムに代表される吸湿材を設けることも有効である。この吸湿材は、シール材の上に接して設けても良いし、発光素子よりの光を妨げないような、隔壁の上や周辺部に設けても良い。さらに、カバー材と発光素子の形成された基板との空間を熱硬化性樹脂若しくは紫外光硬化性樹脂で充填することも可能である。この場合、熱硬化性樹脂若しくは紫外光硬化性樹脂の中に酸化バリウムに代表される吸湿材を添加しておくことは有効である。
【0145】
本発明を用いると、電気的特性の高い半導体装置が用いられたEL表示装置を作製することが
できる。よって、高精細、高画質な表示装置を低いコストで歩留まり良く製造することができる。
【実施例6】
【0146】
本発明によって作製された結晶性半導体膜を用いてEL表示装置を作製することができるが、EL素子から発せられる光の放射方式としては、下面放射型、上面放射型、両面放射型の3つの方式がある。実施例5では、片面出射型である下面出射型の例を示したが、本実施例では、両面出射型と、片面出射型である上面出射型の例を、図9及び図10を用いて説明する。
【0147】
図9に示す表示装置は、両面出射型であり、矢印の方向に発光素子が設けられた基板側からも、封止基板側からも光を出射する構造である。なお本実施例では、透明導電膜を成膜し、所望の形状にエッチングすることで第1の電極910を形成する。第1の電極910として透明導電膜を用いることができる。また、透明導電膜の代わりに窒化チタン膜またはチタン膜を用いても良い。この場合、窒化チタン膜またはチタン膜を、光が透過する程度の膜厚(好ましくは、5nm〜30nm程度)で成膜すればよい。本実施例では、第1の電極910としてITSOを用いている。
【0148】
次に、電界発光層912の上には導電膜からなる第2の電極913が設けられる。第2の電極913は、陰極として機能させるため、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、若しくはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF2、またはCaN)を用いればよい。図9の表示装置では、光が透過するように、第2の電極913として膜厚を薄くした金属薄膜(MgAg:膜厚10nm)と、透明導電性を有する材料であるITSO(膜厚100nm)との積層膜を用いる。
【0149】
図10に示す表示装置は、片面出射型であり、矢印の方向に上面出射する構造であり、図9で示した両面出射型の表示装置において、第1の電極1010の下に反射膜を設けるような構造とする。すなわち、図10に示すとおり、反射性を有する金属膜1051の上に、陽極として機能する透明導電膜である第1の電極1010を設ける。反射性を有する金属膜としては、Ta、W、Ti、Mo、Al、Cuなどを用いればよい。特に、可視光の領域で反射性が高い物質を用いることが好ましく、本実施例ではTiN膜を用いる。
【0150】
電界発光層1012の上には導電膜からなる第2の電極1013が設けられる。第2の電極1013は、陰極として機能させるため、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、若しくはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF2、またはCaN)を用いればよい。本実施例では、第2の電極1013として、膜厚を薄くした金属薄膜(MgAg:膜厚10nm)とITSO(膜厚110nm)の積層構造を用いて発光が透過するようにする。
【実施例7】
【0151】
本発明に適用できる発光素子(EL発光素子)の形態について説明する。発光素子は、電界発光層を第1の電極と第2の電極で挟んだ構成になっている。第1の電極及び第2の電極は仕事関数を考慮して材料を選択する必要があり、第1の電極及び第2の電極は、画素構成によって陽極、陰極のいずれにもなりうる。
【0152】
TFTの極性がpチャネル型である場合、第1の電極を陽極、第2の電極を陰極とすることが好ましい。また、TFTの極性がNチャネル型である場合、第1の電極を陰極、第2の電極を陽極とすることが好ましい。
【0153】
また、第1の電極を陽極、第2の電極を陰極とする場合、電界発光層は、第1の電極(陽極)側から、HIL(ホール注入層)、HTL(ホール輸送層)、EML(発光層)、ETL(電子輸送層)、EIL(電子注入層)、第2の電極(陰極)の順に積層するのが好ましい。
【0154】
また、第1の電極を陰極、第2の電極を陽極とする場合、電界発光層は、第1の電極(陰極)側からEIL(電子注入層)、ETL(電子輸送層)、EML(発光層)、HTL(ホール輸送層)、HIL(ホール注入層)、第2の電極(陽極)の順に積層するのが好ましい。
【0155】
発光層は、発光波長帯の異なる発光層を画素毎に形成して、カラー表示を行う構成としても良い。典型的には、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層を形成する。この場合、画素の光放射側にその発光波長帯の光を透過するフィルターを設けた構成とすることで、色純度の向上や、画素部の鏡面化(映り込み)の防止を図ることができる。フィルターを設けることで、従来必要であるとされていた円偏光板などを省略することが可能となり、発光層から放射される光の損失を無くすことができる。さらに、斜方から画素部(表示画面)を見た場合に起こる色調の変化を低減することができる。
【0156】
また、発光層として、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光を示す材料は、蒸着マスクを用いた蒸着法によって、それぞれ選択的に形成する。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光を示す材料はカラーフィルタと同様に、液滴吐出法により形成することもでき(低分子または高分子材料など)、この場合マスクを用いずとも、RGBの塗り分けを行うことができるため好ましい。
【0157】
また、発光層は、単色又は白色の発光を呈する構成とすることができる。白色発光材料を用いる場合には、画素の光放射側に特定の波長の光を透過するフィルター(着色層)を設けた構成としてカラー表示を可能にすることができる。
【0158】
また、封止基板にカラーフィルタ(着色層)を形成してもよい。カラーフィルタは、蒸着法や液滴吐出法によって形成することができ、カラーフィルタを用いると、高精細な表示を行うこともできる。カラーフィルタにより、各RGBの発光スペクトルにおいてブロードなピークが鋭くなるように補正できるからである。
【0159】
以上、各RGBの発光を示す材料を形成する場合を説明したが、単色の発光を示す材料を形成し、カラーフィルタや色変換層を組み合わせることによりフルカラー表示を行うことができる。カラーフィルタや色変換層は、例えば第2の基板(封止基板)に形成した後、発光素子が形成された基板と貼り合わせればよい。カラーフィルタは、蒸着法や液滴吐出法によって形成することができる。カラーフィルタを用いると、各RGBの発光スペクトルにおいてブロードなピークを鋭くなるように補正できるため、高精細な表示を行うことができる。
【0160】
また、発光層は、一重項励起発光材料の他、金属錯体などを含む三重項励起発光材料を用いても良い。例えば、赤色の発光性の画素、緑色の発光性の画素及び青色の発光性の画素のうち、輝度半減時間が比較的短い赤色の発光性の画素を三重項励起発光材料で形成し、他を一重項励起発光材料で形成する。三重項励起発光材料は発光効率が良いので、同じ輝度を得るのに消費電力が少なくて済むという特徴がある。すなわち、赤色画素に適用した場合、発光素子に流す電流量が少なくて済むので、信頼性を向上させることができる。低消費電力化として、赤色の発光性の画素と緑色の発光性の画素とを三重項励起発光材料で形成し、青色の発光性の画素を一重項励起発光材料で形成しても良い。人間の視感度が高い緑色の発光素子も三重項励起発光材料で形成することで、より低消費電力化を図ることができる。
【0161】
以上に掲げる発光層を形成する物質は一例であり、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、発光層、電子ブロック層、正孔ブロック層などの機能性の各層を適宜積層することで発光層を形成することができる。また、これらの各層を合わせた混合層又は混合接合を形成しても良い。発光層の層構造は変化しうるものであり、特定の電子注入領域や発光領域を備えていない代わりに、もっぱらこの目的用の電極を備えたり、発光性の材料を分散させて備えたりする変形は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において許容されうるものである。
【0162】
上記の発光素子は、順方向にバイアスすることで発光する。発光素子を用いて形成する表示装置の画素は、単純マトリクス方式、若しくはアクティブマトリクス方式で駆動することができる。いずれにしても、個々の画素は、ある特定のタイミングで順方向バイアスを印加して発光させることとなるが、ある一定期間は非発光状態となっている。この非発光時間に逆方向のバイアスを印加することで発光素子の信頼性を向上させることができる。発光素子では、一定駆動条件下で発光強度が低下する劣化や、画素内で非発光領域が拡大して見かけ上輝度が低下する劣化モードがあるが、順方向及び逆方向にバイアスを印加する交流的な駆動を行うことで、劣化の進行を遅くすることができ、発光装置の信頼性を向上させることができる。また、デジタル駆動、アナログ駆動どちらでも適用可能である。
【0163】
また、上記構成において、陰極としては、仕事関数が小さい材料を用いることが可能であり、例えば、Ca、Al、CaF、MgAg、AlLi等が望ましい。電界発光層は、単層型、積層型、また層の界面がない混合型のいずれでもよい。例えば、電界発光層として、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、発光層、電子輸送層、電子注入層等を適宜組み合わせて積層させた構成とすればよい。また、電界発光層を形成する材料としては、有機化合物のみからなるものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成であってもよく、これらの材料は低分子系化合物、中分子系化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)、高分子系化合物のいずれでもよい。また、電界発光層を形成する方法としては、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等を用いることができる。第1の電極は光を透過する透明導電膜を用いて形成し、例えばITO、ITSOの他、酸化インジウムに2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いて形成する。
【0164】
本発明を用いると、電気的特性の高い半導体装置が用いられたEL表示装置を作製することができる。よって、高精細、高画質な表示装置を低いコストで歩留まり良く製造することができる。
【0165】
本実施例は、実施の形態及び実施例1乃至6と適宜組み合わせて用いることが可能である。
【実施例8】
【0166】
本実施例では、本発明の半導体装置の一形態に相当する液晶表示装置パネルの外観について、図13を用いて説明する。図13(A)は、第1の基板1600と、第2の基板1604との間を第1のシール材1605及び第2のシール材1606によって封止されたパネルの上面図であり、図13(B)は、図13(A)のA−A’、及びB−B’それぞれにおける断面図に相当する。
【0167】
図13(A)において、点線で示された1601は信号線(ソース線)駆動回路、1602は画素部、1603は走査線(ゲート線)駆動回路である。本実施例において、画素部1602、及び走査線駆動回路1603は第1のシール材1605及び第2のシール材1606で封止されている領域内にある。また、信号線(ソース線)駆動回路1601はチップ状であり、第1の基板1600上に設けられている。信号線駆動回路1601、画素部1602、及び走査線駆動回路1603は、TFTを代表とする半導体素子をそれぞれ複数有している。
【0168】
次に、断面構造について図13(B)を用いて説明する。第1の基板1600上には信号線駆動回路1601、画素部1602、及び走査線駆動回路1603が形成されている。また、第2の基板1604の表面には、図示していないがカラーフィルターが設けられている。本断面図では、走査線駆動回路1603と画素部1602が示されている。なお、走査線駆動回路1603はnチャネル型TFT1612とpチャネル型TFT1613とを組み合わせたCMOS回路が形成されていてもよいし、nチャネル型またはpチャネル型の一方のみのTFTによって形成されていてもよい。
【0169】
本実施例においては、同一基板上に走査線駆動回路、及び画素部のTFTが形成されている。このため、表示装置の容積を縮小することができる。
【0170】
画素部1601には、複数の画素が形成されており、各画素には液晶素子1615が形成されている。液晶素子1615は、第1の電極1616、第2の電極1618及びその間に充填されている液晶材料1619が重なっている部分である。液晶素子1615が有する第1の電極1616は、配線1617を介してTFT1611と電気的に接続されている。ここでは、配線1617を形成した後、第1の電極1616を形成しているが、実施例1に示すように第1の電極1616を形成した後、配線1617を形成してもよい。液晶素子1615の第2の電極1618は、第2の基板1604側に形成される。また、各画素電極表面には図示していないが配向膜が形成されている。
【0171】
1622は柱状のスペーサであり、第1の電極1616と第2の電極1618との間の距離(セルギャップ)を制御するために設けられている。絶縁膜を所望の形状にエッチングして形成されている。なお、球状スペーサを用いていても良い。信号線駆動回路1601または画素部1602に与えられる各種信号及び電位は、接続配線1623を介して、FPC1609から供給されている。なお、接続配線1623とFPC1609とは、異方性導電膜又は異方性導電樹脂1627で電気的に接続されている。なお、異方性導電膜又は異方性導電樹脂1627の代わりに半田等の導電性ペーストを用いてもよい。
【0172】
第2の基板1604表面には、接着剤1624によって偏光板1625が固定されている。なお、偏光板1625には位相差板を設けた円偏光板又は楕円偏光板を用いてもよい。さらに、偏光板1625表面には、1/2λ又は1/4λの位相差板1629及び反射防止膜1626が設けられている。また、第1の基板1600表面にも同様に、接着剤により偏光板が設けられている。
【実施例9】
【0173】
本実施例では、本発明の半導体装置の一形態に相当するEL表示パネルの外観について、図14を用いて説明する。図14(A)は、第1の基板1400と、第2の基板1404との間を第1のシール材1405及び第2のシール材1406によって封止されたパネルの上面図であり、図14(B)は、図14(A)のA−A’における断面図に相当する。
【0174】
図14(A)において、点線で示された1402は画素部、1403は走査線(ゲート線)駆動回路である。本実施例において、画素部1402、及び走査線駆動回路1403は、第1のシール材1405及び第2のシール材1406で封止されている領域内にある。また、1401は信号線(ソース線)駆動回路であり、チップ状の信号線駆動回路1401が第1基板1400上に設けられている。第1のシール材1405としては、フィラーを含む粘性の高いエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、第2のシール材1406としては、粘性の低いエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、第1のシール材1405及び第2のシール材1406は、できるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。信号線駆動回路1401、画素部1402及び走査線駆動回路1403は、TFTを代表とする半導体素子をそれぞれ複数有している。
【0175】
また、画素部1402とシール材1405との間に、乾燥剤を設けてもよい。さらには、画素部1402において、走査線又は信号線上に乾燥剤を設けてもよい。乾燥剤としては、酸化カルシウム(CaO)や酸化バリウム(BaO)等のようなアルカリ土類金属の酸化物のような化学吸着によって水(H2O)を吸着する物質を用いるのが好ましい。但し、これらの物質に限定されず、ゼオライトやシリカゲル等の物理吸着によって水を吸着する物質を用いても構わない。
【0176】
また、透湿性の高い樹脂に乾燥剤の粒状の物質を含ませた状態で第2の基板1404に固定することができる。また、透湿性の高い樹脂の代わりに、シロキサン、ポリイミド、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いてもよい。
【0177】
また、走査線と重畳する領域に乾燥剤を設けてもよい。更には、透湿性の高い樹脂に乾燥剤の粒状の物質を含ませた状態で第2の基板に固定してもよい。これらの乾燥剤を設けることにより、開口率を低下せずに表示素子への水分の侵入及びそれに起因する劣化を抑制することができる。このため、画素部1402の周辺部と中央部における発光素子の劣化のバラツキを抑えることが可能である。
【0178】
なお、1410は、信号線駆動回路1401及び走査線駆動回路1403に入力される信号を伝送するための接続領域であり、外部入力端子となるフレキシブルプリント配線1409(FPC)から接続配線1408を介してビデオ信号やクロック信号を受け取る。
【0179】
次に、断面構造について図14(B)を用いて説明する。第1の基板1400上には信号線駆動回路1401、画素部1402及び走査線駆動回路1403が形成されている。本断面図では、信号線駆動回路1401と画素部1402が示されている。なお、信号線駆動回路1401はnチャネル型TFT1421とpチャネル型TFT1422とを組み合わせたCMOS回路が形成される。
【0180】
本実施例においては、同一基板上に走査線駆動回路、及び画素部のTFTが形成されている。このため、発光表示装置の容積を縮小することができる。
【0181】
また、画素部1402はスイッチング用TFT1411と、駆動用TFT1412とそのドレイン(またはソース)に電気的に接続された透光性を有する導電膜からなる第1の画素電極(陽極)1413を含む複数の画素により形成される。なお、スイッチング用TFT1411は、画素に信号を入力するか否かを選択するために設けられたTFTであり、駆動用TFT1412は、発光素子を駆動するために設けられたTFTである。
【0182】
また、第1の画素電極(陽極)1413の両端には絶縁物(バンク、隔壁、障壁、土手などと呼ばれる)1414が形成される。絶縁物1414に形成する膜の被覆率(カバレッジ)を良好なものとするため、絶縁物1414の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。また、絶縁物1414表面を、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜からなる保護膜で覆ってもよい。更には、絶縁物1414として、黒色顔料、色素などの可視光を吸収する材料を溶解又は分散させてなる有機材料を用いることで、後に形成される発光素子からの迷光を吸収することができる。この結果、各画素のコントラストが向上する。
【0183】
また、第1の画素電極(陽極)1413上には、有機化合物材料の蒸着を行い、電界発光層1415を選択的に形成する。さらには、電界発光層1415上に第2の画素電極(陰極)1416を形成する。
【0184】
こうして、第1の画素電極(陽極)1413、電界発光層1415、及び第2の画素電極(陰極)1416からなる発光素子1417が形成される。本実施例では、発光素子1417からの発光は、第1の基板1400側に出射させている。しかし、この構成に限定されず、第2の基板1404側に出射させるようにしてもよいし、第1の基板1400及び第2の基板1404の両側から出射させるようにしてもよい。
【0185】
また、発光素子1417を封止するために保護積層1418を形成する。保護積層1418は、第1の無機絶縁膜と、応力緩和膜と、第2の無機絶縁膜との積層からなっている。次に、保護積層1418と第2の基板1404とを、第1のシール材1405及び第2のシール材1406で接着する。なお、第2のシール材を、シール材を滴下する装置を用いて滴下することが好ましい。シール材をディスペンサから滴下、又は吐出させてシール材をアクティブマトリクス基板上に塗布した後、真空中で、第2の基板とアクティブマトリクス基板とを貼り合わせ、紫外線硬化を行って封止することができる。
【0186】
なお、第2の基板1404表面には、外光が基板表面で反射するのを防止するための反射防止膜1426を設ける。また、第2の基板1404と反射防止膜1426との間に、偏光板1425、及び位相差板1429のいずれか一方又は両方を設けてもよい。位相差板、偏光板を設けることにより、外光が画素電極で反射することを防止することが可能である。なお、第1の画素電極1413及び第2の画素電極1416を、透光性を有する導電膜又は半透光性を有する導電膜で形成し、可視光を吸収する材料、又は可視光を吸収する材料を溶解又は分散させてなる有機材料を用いて絶縁物1414を形成すると、各画素電極で外光が反射しないため、位相差板及び偏光板を用いなくてもよい。
【0187】
接続配線1408とフレキシブルプリント配線1409とは、異方性導電膜又は異方性導電樹脂1427により電気的に接続されている。さらに、各配線層と接続端子との接続部を封止樹脂により封止することが好ましい。この構造により、断面部からの水分が発光素子に侵入し、劣化することを防ぐことができる。
【0188】
なお、第2の基板1404と、保護積層1418との間には、第2のシール材1406の代わりに、不活性ガス、例えば窒素ガスを充填した空間を有してもよい。水分や酸素の侵入の防止を高めることができる。
【0189】
また、第2の基板と偏光板1425との間に着色層を設けることができる。この場合、画素部に白色発光が可能な発光素子を設け、RGBを示す着色層を別途設けることでフルカラー表示することができる。また、画素部に青色発光が可能な発光素子を設け、色変換層などを別途設けることによってフルカラー表示することができる。さらには、画素部に、赤色、緑色、青色の発光を示す発光素子を形成し、且つ着色層を用いることもできる。このような表示モジュールは、各RGBの色純度が高く、高精細な表示が可能となる。
【0190】
また、第1の基板1400又は第2の基板1404の一方、若しくは両方にフィルム又は樹脂等の基板を用いて発光表示モジュールを形成してもよい。このように対向基板を用いず封止すると、表示装置の軽量化、小型化、薄膜化を向上させることができる。
【0191】
更には、外部入力端子となるフレキシブルプリント配線1409(FPC)表面又は端部に、コントローラ、メモリ、画素駆動回路のようなICチップを設け発光表示モジュールを形成してもよい。
【実施例10】
【0192】
本発明により作製した半導体装置を用いた電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話機、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)、その他表示部を有する電化製品などが挙げられる。また、本発明のレーザー照射方法によって形成する結晶性半導体膜を用いれば、CPUやメモリーに代表される、極めて高い特性が要求される集積回路を作製することができる。電子機器の具体例を図15に示す。
【0193】
図15(A)はテレビ受像機であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2003などに用いることによって、テレビ受像機を作製することができる。
【0194】
図15(B)はデジタルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2102やその他回路などに用いることによって、デジタルカメラを作製することができる。
【0195】
図15(C)はコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2203やその他回路などに用いることによって、コンピュータを作製することができる。
【0196】
図15(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2302やその他回路などに用いることによって、モバイルコンピュータを作製することができる。
【0197】
図15(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(DVD再生装置など)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示する。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部A2403や表示部B2404またはその他の回路などに用いることによって、画像再生装置を作製することができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置にはゲーム機器なども含まれる。
【0198】
図15(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2502やその他回路などに用いることによって、ゴーグル型ディスプレイを作製することができる。
【0199】
図15(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2602やその他回路などに用いることによって、ビデオカメラを作製することができる。
【0200】
図15(H)は携帯電話機であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。実施例に示したように、レーザー光を照射して得られた電気的特性の高い半導体装置を表示部2703やその他回路などに用いることによって、携帯電話機を作製することができる。
【0201】
なお、上述した電子機器の他に、フロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能である。
【0202】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器や集積回路に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】本発明を実施するための最良の形態を示す図。
【図2】本発明の実施例1を示す図。
【図3】反射膜の反射率を示す図。
【図4】本発明の実施例1を示す図。
【図5】本発明の実施例1を示す図。
【図6】本発明の実施例2を示す図。
【図7】本発明の実施例3を示す図。
【図8】本発明の実施例5を示す図。
【図9】本発明の実施例6を示す図。
【図10】本発明の実施例6を示す図。
【図11】本発明の実施例4を示す図。
【図12】本発明の実施例4を示す図。
【図13】本発明の実施例8を示す図。
【図14】本発明の実施例9を示す図。
【図15】本発明の実施例10を示す図。
【図16】反射膜の構成の例を示す図。
【符号の説明】
【0204】
101 絶縁基板
102 下地膜
103 非晶質半導体膜
104 反射膜
105 結晶性半導体膜
110 半導体膜が反射膜で覆われている領域
111 半導体膜が露出された領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜の一部の上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、露出された前記半導体膜を結晶化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
絶縁基板上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化し、
前記パターニングされた反射膜を除去し、
前記半導体膜の一部をパターニングし、
前記パターニングされた半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記結晶化された半導体膜を薄膜トランジスタのチャネル形成領域に用いることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜に第1のレーザー光を照射し、
前記第1のレーザー光が照射された半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとして第2のレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜に第1のレーザー光を照射して結晶性半導体膜を形成し、
前記結晶性半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記結晶性半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとして第2のレーザー光を照射することにより、前記結晶性半導体膜の配向性を維持しつつ、前記露出された半導体膜の結晶性を向上させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項4または5において、前記反射膜の下に設けられた半導体膜は、前記第2のレーザー光の照射によって溶融しないことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一において、前記反射膜は、前記第2のレーザー光を反射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか一において、前記反射膜のパターニングを、ドライエッチングによって行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか一において、前記パターニングされた反射膜の除去を、ウエットエッチングによって行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項2乃至9のいずれか一において、前記半導体膜は、前記パターニングされた反射膜の下に設けられた半導体膜の領域から前記露出された半導体膜の領域の方向に向けて横方向に結晶成長していることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項10において、薄膜トランジスタのチャネル形成領域におけるキャリアの移動する方向と前記横方向に結晶成長している方向とが平行になるように薄膜トランジスタを形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一において、前記反射膜は、酸化珪素膜と、前記酸化珪素膜上に接して形成された窒化珪素膜と、からなることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一において、前記半導体装置は、液晶表示装置、EL表示装置、集積回路のいずれか一であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
請求項13において、前記半導体装置を、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーションシステム、音響再生装置、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末、画像再生装置のいずれか一に用いることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項1】
絶縁基板上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜の一部の上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、露出された前記半導体膜を結晶化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
絶縁基板上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとしてレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化し、
前記パターニングされた反射膜を除去し、
前記半導体膜の一部をパターニングし、
前記パターニングされた半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記結晶化された半導体膜を薄膜トランジスタのチャネル形成領域に用いることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜に第1のレーザー光を照射し、
前記第1のレーザー光が照射された半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとして第2のレーザー光を照射することにより、前記露出された半導体膜を結晶化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
絶縁基板上に下地膜を形成し、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記半導体膜に第1のレーザー光を照射して結晶性半導体膜を形成し、
前記結晶性半導体膜上に絶縁膜でなる反射膜を形成し、
前記反射膜をパターニングして前記結晶性半導体膜の一部を露出させ、
前記パターニングされた反射膜をマスクとして第2のレーザー光を照射することにより、前記結晶性半導体膜の配向性を維持しつつ、前記露出された半導体膜の結晶性を向上させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項4または5において、前記反射膜の下に設けられた半導体膜は、前記第2のレーザー光の照射によって溶融しないことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一において、前記反射膜は、前記第2のレーザー光を反射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか一において、前記反射膜のパターニングを、ドライエッチングによって行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか一において、前記パターニングされた反射膜の除去を、ウエットエッチングによって行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項2乃至9のいずれか一において、前記半導体膜は、前記パターニングされた反射膜の下に設けられた半導体膜の領域から前記露出された半導体膜の領域の方向に向けて横方向に結晶成長していることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項10において、薄膜トランジスタのチャネル形成領域におけるキャリアの移動する方向と前記横方向に結晶成長している方向とが平行になるように薄膜トランジスタを形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一において、前記反射膜は、酸化珪素膜と、前記酸化珪素膜上に接して形成された窒化珪素膜と、からなることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一において、前記半導体装置は、液晶表示装置、EL表示装置、集積回路のいずれか一であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
請求項13において、前記半導体装置を、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーションシステム、音響再生装置、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末、画像再生装置のいずれか一に用いることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−32924(P2006−32924A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172733(P2005−172733)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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