説明

半導体装置の製造方法及び基板処理装置

【課題】プラズマ処理を促進させる方向を制御する。
【解決手段】インピーダンス調整部のインピーダンスを制御することで、基板の処理面に加わる電界の少なくとも垂直成分の強度を調整しつつ、プラズマ生成部による電力を制御することで、基板の処理面に加わる電界の少なくとも水平成分の強度を調整して、プラズマ処理を促進させる方向の電界を強くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリ等の半導体装置の製造工程の一工程として、プラズマを用いて基板に酸化処理や窒化処理等の所定の処理を行う工程が実施される場合がある。係る工程では、例えば基板が搬入される処理室と、処理室内に反応ガスを供給する反応ガス供給部と、処理室内に電界を形成するプラズマ生成部と、を有する基板処理装置を用い、基板を搬入した処理室内に反応ガスを供給し、プラズマ生成部により形成した電界でプラズマ放電を起こして反応ガスを励起し、基板をプラズマ処理する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記プラズマ処理では、等方的な処理のみならず、例えば異方性処理が要求される場合があった。具体的には、トレンチ(溝)等の凹凸部が予め形成された基板に酸化処理を施す際、基板の処理面に対して垂直方向の処理、つまり、凹凸面の底部に対する酸化処理を促進させ、底部に優先的に酸化層を形成することが要求される場合があった。
【0004】
しかしながら、上記異方性処理等を行うに際して、プラズマ処理を促進させる方向を制御することは困難であった。このため、例えば上記の例では、処理を促進させたい凹凸面の底部で所定厚さの酸化層が得られなかったり、側部の酸化層のほうが厚く形成されてしまったりする場合があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、プラズマ処理を促進させる方向を制御可能な半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板を処理室内に搬入して基板支持部により支持する工程と、前記基板支持部により前記基板を加熱する工程と、排気部により前記処理室内を排気しつつ、反応ガス供給部により前記処理室内に反応ガスを供給する工程と、プラズマ生成部により前記処理室内に形成した電界で、プラズマ放電を起こして反応ガスを励起し、励起した反応ガスを前記基板に供給して前記基板をプラズマ処理する工程と、プラズマ処理した前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、を有し、前記基板をプラズマ処理する工程では、前記基板支持部の内部に設けられたインピーダンス調整電極に接続されるインピーダンス調整部のインピーダンスを制御することで、前記基板の処理面に加わる前記電界の少なくとも垂直成分の強度を調整しつつ、前記プラズマ生成部による電力を制御することで、前記基板の前記処理面に加わる前記電界の少なくとも水平成分の強度を調整して、前記プラズマ処理を促進させる方向の前記電界を強くする半導体装置の製造方法が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、基板が搬入される処理室と、前記処理室内に設けられ、前記基板を支持して加熱する基板支持部と、前記処理室内に反応ガスを供給する反応ガス供給部と、前記処理室内を排気する排気部と、前記処理室内に電界を形成するプラズマ生成部と、前記基板支持部の内部に設けられたインピーダンス調整電極に接続されるインピーダンス調整部と、前記処理室内に搬入した前記基板を加熱させ、前記処理室内を排気させつつ、前記処理室内に反応ガスを供給させ、前記処理室内に形成させた電界でプラズマ放電を起こさせて反応ガスを励起させ、励起させた反応ガスを前記基板に供給させて前記基
板をプラズマ処理させるよう前記基板支持部、前記反応ガス供給部、前記排気部、前記プラズマ生成部及び前記インピーダンス調整部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記インピーダンス調整部のインピーダンスを制御させることで、前記基板の処理面に加わる前記電界の少なくとも垂直成分の強度を調整させつつ、前記プラズマ生成部による電力を制御させることで、前記基板の前記処理面に加わる前記電界の少なくとも水平成分の強度を調整させて、前記プラズマ処理を促進させる方向の前記電界を強くさせるよう制御する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラズマ処理を促進させる方向を制御可能な半導体装置の製造方法及び基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置としての変形マグネトロン型プラズマ処理装置の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の処理室内に形成される電界の様子を示す模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る基板処理工程で処理されるトレンチが形成された基板の部分拡大図であって、(a)は垂直方向の電界を強めたときの処理の様子を示し、(b)は水平方向の電界を強めた時の処理の様子を示している。
【図5】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置としてのICP型プラズマ処理装置の断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置としてのECR型プラズマ処理装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の第1実施形態>
(1)基板処理装置の構成
本発明の第1実施形態に係る基板処理装置について、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態に係る基板処理装置としての変形マグネトロン型プラズマ処理装置の断面図である。
【0011】
本実施形態に係る基板処理装置は、電界と磁界とにより高密度プラズマを生成できる変形マグネトロン型プラズマ源(Modified Magnetron Typed Plasma Source)を用いて、シリコン(Si)基板等のウェハ10をプラズマ処理する変形マグネトロン型プラズマ処理装置(以下、MMT装置200と記載)である。MMT装置200は、気密性を保持した処理室201内にウェハ10を載置し、処理室201内で一定の圧力下で高周波電圧をかけてマグネトロン放電を起こすように構成されている。MMT装置200によれば、係る機構により、処理室201内に供給した反応ガスを励起させ、励起させた反応ガスをウェハ10に供給して、ウェハ10に酸化、窒化等の処理を行なったり、薄膜を形成したり、またはウェハ10表面をエッチングしたり等の各種プラズマ処理を施すことができる。
【0012】
(処理室)
MMT装置200は、ウェハ10をプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成する処理容器203が設けられている。処理容器203は、第1の容器であるドーム型の上側容器210と、第2の容器である碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。上側容器210は、例えば酸化アルミニウム(Al)また
は石英(SiO)等の非金属材料で形成されており、下側容器211は、例えばアルミニウム(Al)で形成されている。
【0013】
また、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているときには、搬送機構(図示せず)を用いて処理室201内へウェハ10を搬入でき、または処理室201外へとウェハ10を搬出することができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときには、処理室201内の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0014】
(サセプタ)
処理室201の底側中央には、ウェハ10を支持するサセプタ217が配置されている。サセプタ217は例えば窒化アルミニウム(AlN)、セラミックス、石英等の非金属材料から形成されており、ウェハ10上に形成される膜等の金属汚染を低減することができるように構成されている。
【0015】
サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217bは、電力が供給されると、ウェハ10表面を例えば25℃〜500℃程度まで加熱することができるように構成されている。
【0016】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。サセプタ217内部にはインピーダンス調整電極217cが装備されている。インピーダンス調整電極217cは、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構274を介して接地されている。インピーダンス調整電極217cは、後述する第1の電極としての筒状電極215に対する第2の電極として機能する。インピーダンス可変機構274はコイルや可変コンデンサから構成されており、コイルのインダクタンス及び抵抗並びに可変コンデンサの容量値を制御することにより、インピーダンスを約0Ω〜処理室201の寄生インピーダンス値の範囲内で変化させることができるように構成されている。寄生インピーダンスは装置によって異なるが、例えば約68Ωとなっている。これによって、インピーダンス調整電極217c及びサセプタ217を介して、ウェハ10の電位(バイアス電圧)を制御できる。
【0017】
サセプタ217には、サセプタを昇降させるサセプタ昇降機構268が設けられている。そしてサセプタ217には貫通孔217aが設けられ、一方、下側容器211の底面にはウェハ突上げピン266が設けられている。貫通孔217aとウェハ突上げピン266とは互いに対向する位置に、少なくとも各3箇所ずつ設けられている。サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、ウェハ突上げピン266がサセプタ217とは非接触な状態で、貫通孔217aを突き抜けるように構成されている。
【0018】
主に、サセプタ217及びヒータ217bにより、本実施形態に係る基板支持部が構成されている。
【0019】
(ランプ加熱ユニット)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上面には、光透過窓278が設けられ、光透過窓278上の反応容器203外側には、ランプ加熱ユニット280が設置されている。ランプ加熱ユニット280は、サセプタ217と対向する位置に設けられ、ウェハ10の上部からウェハ10を加熱するよう構成されている。ランプ加熱ユニット280を点灯することで、ウェハ10表面を500℃〜900℃に調整することができる。また、ヒータ217bと比較してより短時間でウェハ10を加熱することができる。
【0020】
(反応ガス供給部)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、シャワーヘッド236が設けられている。シャワーヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、反応ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入される反応ガスを分散する分散空間としての機能を持つ。
【0021】
ガス導入口234には、酸素含有ガスとしての酸素(O)ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aの下流端と、水素含有ガスとしての水素(H)ガスを供給する水素含有ガス供給管232bの下流端と、不活性ガスとしてのArガスを供給する不活性ガス供給管232cと、が合流するように接続されている。酸素含有ガス供給管232aには、上流側から順に、Oガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。水素含有ガス供給管232bには、上流側から順に、Hガス供給源250b、流量制御装置としてのマスフローコントローラ252b、開閉弁としてのバルブ253bが設けられている。不活性ガス供給管232cには、上流側から順に、Arガス供給源250c、流量制御装置としてのマスフローコントローラ252c、開閉バルブとしての253cが設けられている。酸素含有ガス供給管232aと水素含有ガス供給管232bと不活性ガス供給管232cとが合流した下流側には、バルブ243aが設けられ、ガスケット203bを介してガス導入口234の上流端に接続されている。バルブ253a、253b、253c、243aを開閉させることによって、マスフローコントローラ252a、252b、252cによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、ガス供給管232a、232b、232cを介して、酸素含有ガス、水素ガス含有ガス、不活性ガス等の反応ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0022】
主に、シャワーヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239)、酸素含有ガス供給管232a、水素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232c、Oガス供給源250a、Hガス供給源250b、Arガス供給源250c、マスフローコントローラ252a,252b,252c、バルブ253a,253b,253c,243aにより、本実施形態に係る反応ガス供給部が構成されている。
【0023】
(排気部)
下側容器211の側壁には、処理室201内から反応ガスを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、上流側から順に圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)242、開閉弁としてのバルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。
【0024】
主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APC242、バルブ243b、真空ポンプ246により、本実施形態に係る排気部が構成されている。
【0025】
(プラズマ生成部)
処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外側には、処理室201を囲うように、第1の電極としての筒状電極215が設けられている。筒状電極215は、筒状、例えば円筒状に形成されている。筒状電極215は、インピーダンスの整合を行なう整合器272を介して、高周波電力を出力する高周波電源273に接続されている。
【0026】
筒状電極215の外側表面の上下端部には、上側磁石216a及び下側磁石216bがそれぞれ取り付けられている。上側磁石216aおよび下側磁石216bは、ともに筒状、例えば円筒状に形成された永久磁石により構成されている。上側磁石216aおよび下
側磁石216bは、処理室201に向いた面側とその反対の面側に磁極を有している。上側磁石216aおよび下側磁石216bの磁極の向きは、逆向きになるよう配置されている。すなわち、上側磁石216aおよび下側磁石216bの処理室201に向いた面側の磁極同士は互いに異極となっている。これにより、筒状電極215の内側表面に沿って円筒軸方向の磁力線が形成される。
【0027】
上側磁石216aおよび下側磁石216bにより磁界を発生させ、さらに処理室201内に反応ガスを導入した後、筒状電極215に高周波電力を供給して電界を形成することで、処理室201内のプラズマ生成領域224にマグネトロン放電プラズマが生成されるように構成されている。放出された電子を上述の電磁界が周回運動させることによって、プラズマの電離生成率が高まり、長寿命かつ高密度のプラズマを生成させることができる。
【0028】
なお、筒状電極215、上側磁石216aおよび下側磁石216bの周囲には、これらが形成する電磁界が他の装置や外部環境に悪影響を及ぼさないように、電磁界を有効に遮蔽する金属製の遮蔽板223が設けられている。
【0029】
主に、筒状電極215、整合器272、高周波電源273、上側磁石216aおよび下側磁石216bにより、本実施形態に係るプラズマ生成部が構成されている。
【0030】
(制御部)
制御部としてのコントローラ221は、信号線Aを通じてAPC242、バルブ243b及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を、信号線Cを通じてヒータ217b及びインピーダンス可変機構274を、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じて整合器272及び高周波電源273を、信号線Fを通じてマスフローコントローラ252a,252b,252c及びバルブ253a,253b,253c,243aを、信号線Gを通じてランプ加熱ユニット280を、それぞれ制御するように構成されている。
【0031】
(2)基板処理工程
次に、本実施形態に係る基板処理工程について、主に図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。本実施形態に係る基板処理工程は、例えばフラッシュメモリ等の半導体デバイスの製造工程の一工程として、上述のMMT装置200により実施される。なお以下の説明において、MMT装置200を構成する各部の動作は、コントローラ221により制御される。
【0032】
なお、本実施形態に係る基板処理工程で処理されるウェハ10の表面には、例えば図4に示す凹凸部としてのトレンチ11が予め形成されている。トレンチ11は、例えばウェハ10上に所定のパターンを施したマスク層12を形成し、ウェハ10表面を所定深さまでエッチングすることで形成される。以下、トレンチ11の内壁に対して酸化処理を行う。その際、処理室201内に形成される電界を調整して、例えばウェハ10の処理面に対して垂直方向の処理、つまり、トレンチ11の底部11aに対するプラズマ処理を促進させる場合について説明する。
【0033】
(基板搬入工程S10)
まずは、上記のウェハ10を処理室201内に搬入する。具体的には、ウェハ10の搬送位置までサセプタ217を下降させて、サセプタ217の貫通孔217aにウェハ突上げピン266を貫通させる。その結果、ウェハ突き上げピン266が、サセプタ217表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。
【0034】
続いて、ゲートバルブ244を開き、図中省略の搬送機構を用いて処理室201に隣接する真空搬送室(図示せず)から処理室201内にウェハ10を搬入する。その結果、ウェハ10は、サセプタ217の表面から突出したウェハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。処理室201内にウェハ10を搬入したら、搬送機構を処理室201外へ退避させ、ゲートバルブ244を閉じて処理室201内を密閉する。そして、サセプタ昇降機構268を用いてサセプタ217を上昇させる。その結果、ウェハ10はサセプタ217の上面に支持される。その後、ウェハ10を所定の処理位置まで上昇させる。なお、基板搬入工程S10は、処理室201内を不活性ガス等でパージしながら行ってもよい。
【0035】
(昇温・真空排気工程S20)
続いて、処理室201内に搬入されたウェハ10の昇温を行う。ヒータ217bは予め加熱されており、ヒータ217bが埋め込まれたサセプタ217上に、搬入されたウェハ10を保持することで、例えば150℃以上500℃以下の範囲内の所定値にウェハ10を加熱する。このとき、ランプ加熱ユニット280を点灯し、ランプ加熱ユニット280を補助的に用いれば、より迅速にウェハ10を昇温することができる。また、ウェハ10の昇温を行う間、真空ポンプ246によりガス排気管231を介して処理室201内を真空排気し、処理室201内の圧力を0.1Pa以上1000Pa以下の範囲内の所定値とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程S60が終了するまで作動させておく。
【0036】
(反応ガス供給工程S30)
次に、反応ガスとしてのOガスの供給を開始する。具体的には、バルブ253aを開け、マスフローコントローラ252aにて流量制御しながら、バッファ室237を介して処理室201内へのOガスの供給を開始する。このとき、Oガスの流量を、例えば100sccm以上1000sccm以下の範囲内の所定値とする。また、処理室201内の圧力が、例えば1Pa以上1000Pa以下の範囲内の所定圧力となるように、APC242の開度を調整して処理室201内を排気する。このように、処理室201内を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程S40の終了時までOガスの供給を継続する。
【0037】
(プラズマ処理工程S40)
処理室201内の圧力が安定したら、筒状電極215に対して高周波電源273から整合器272を介して、例えば150W以上3000W以下の範囲内の所定の出力値の高周波電力の印加を開始する。
【0038】
これにより、処理室201内に高周波電界が形成され、係る電界でウェハ10の上方のプラズマ生成領域224内にプラズマ放電を起こしてOガスを励起する。Oガスは例えばプラズマ化されて解離し、酸素(O)を含む酸素活性種等の反応種を生成する。反応ガスが励起して生じた酸素活性種により、トレンチ11の底部11a及び側部11bのそれぞれの表面に酸化処理が施される。
【0039】
またこのとき、インピーダンス可変機構217は予め所定のインピーダンス値に制御され、処理室201内の電界は、プラズマ処理を促進させる方向、ここではウェハ10の処理面に対して垂直方向に強められている。これによって、電界が強められた垂直方向の処理、つまりトレンチ11の底部11aに対する酸化処理がより促進され、図4(a)に示すように、トレンチ11の側部11bには酸化層13bが、底部11aには側部11bよりも厚い酸化層13aが、それぞれ形成される。
【0040】
その後、所定の処理時間、例えば10秒〜300秒が経過したら、高周波電源273からの電力の出力を停止して、処理室201内におけるプラズマ放電を停止する。また、バルブ253aを閉めて、Oガスの処理室201内への供給を停止する。以上により、プ
ラズマ処理工程S40が終了する。
【0041】
なお、プラズマ処理工程S40においては、高周波電源273及びインピーダンス可変機構274を用いて処理室201内の電界を調整する。以下、その具体的な手法について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、本実施形態に係るMMT装置200の処理室201内に形成される電界の様子を示す模式図である。図4は、本実施形態に係る基板処理工程で処理されるトレンチ11が形成されたウェハ10の部分拡大図であって、(a)は垂直方向の電界E11を強めたときの処理の様子を示し、(b)は水平方向の電界E22を強めた時の処理の様子を示している。
【0042】
上述のように、高周波電源273から高周波電力が出力されると、処理室201内には、例えば図3に示すような高周波電界が形成される。図3は、ある瞬間の処理室201内の電界Eの様子を例示したものである。筒状電極215側壁の内側面から処理室201の中央方向に向かう電界Eは、反対側から向かってくる電界Eとの相互作用により処理室201中央部で反発を受ける。このため電界Eは処理室201を横断することなく、処理室201の半径の範囲内で上方と下方に向かう。上方に向かう電界Eは、処理室201中央部で緩い弧を描いて上昇し、シャワーヘッド236を構成する遮蔽プレート240を通って接地電位にある蓋体233に向かう。下方に向かう電界Eは、処理室201中央部で緩い弧を描いて下降し、ウェハ10を通過して、インピーダンス可変機構274を介して接地されるサセプタ217に向かう。
【0043】
このような電界Eの強度や向きは、特にウェハ10の近傍において、主にインピーダンス可変機構274と高周波電源273とで調整することができる。すなわち、インピーダンス可変機構217のインピーダンスを予め制御しておくことで、ウェハ10に加わる電界Eの少なくとも垂直成分の強度を調整しつつ、高周波電源273による電力を制御することで、少なくとも水平成分の強度を調整する。これによって、プラズマ処理を促進させる方向の電界を強めることができる。
【0044】
例えば、ウェハ10の処理面に対して垂直方向のプラズマ処理を促進させる場合、予めインピーダンス可変機構274のインピーダンス値をゼロに近づけて、サセプタ217の電位、ひいてはウェハ10の電位(バイアス電圧)を接地電位に近づけておき、高周波電源273によって所定の高周波電力を出力すれば、図4(a)に示すように、垂直方向の電界E11を水平方向の電界E21より強めることができる。これによって、ウェハ10の処理面に対して垂直に入射する反応種(ここでは主にイオン)の数やエネルギーが増して酸化反応が促進され、例えば処理速度が向上する。よって、垂直方向の処理、すなわち、トレンチ11の底部11aに対する酸化処理が促進され、側部11bの酸化層13bよりも厚い酸化層13aが底部11aに形成される。
【0045】
また、ウェハ10の処理面に対して水平方向のプラズマ処理を促進させる場合、予めインピーダンス可変機構274のインピーダンス値を増大させ、処理室201の寄生インピーダンスに近づけて、サセプタ217の電位、ひいてはウェハ10の電位(バイアス電圧)を処理室201内の電位に近づけておき、高周波電源273によって同様に高周波電力を出力すれば、図4(b)に示すように、垂直方向の電界E12が弱まり、相対的に水平方向の電界E22を強めることができる。これによって、ウェハ10の処理面に対して水平に入射する反応種(イオン)の数やエネルギーが増して酸化反応が促進され、例えば処理速度が向上する。よって、水平方向の処理、すなわち、トレンチ11の側部11bに対する酸化処理が促進され、底部11aの酸化層13aよりも厚い酸化層13bが側部11bに形成される。
【0046】
なお、インピーダンス可変機構274と高周波電源273との調整により強められた垂
直方向の電界E11には、ウェハ10の処理面に対して完全に垂直な電界でなくとも、垂直方向におけるプラズマ処理の促進に寄与する電界を全て含むものとする。
【0047】
また、インピーダンス可変機構274と高周波電源273との調整により強められた水平方向の電界E22には、ウェハ10の処理面に対して完全に水平な電界でなくとも、水平方向におけるプラズマ処理の促進に寄与する電界を全て含むものとする。
【0048】
また、電界の上記調整手法により、上記のような異方性処理のみならず、等方性処理を行うことも可能である。すなわち、例えば特定方向の処理が進行し難く、形成される酸化層13a、13bの厚さに偏りがある場合、係る方向の処理を促進させて、垂直方向の処理と水平方向の処理との進行具合が略同等となるよう電界を調整することができる。この場合、予めインピーダンス可変機構274のインピーダンス値をゼロから処理室201の寄生インピーダンス値の間の所定値に制御しておき、高周波電源273によって高周波電力を出力する。これによって、形成される酸化層13a、13bの厚さの均一性を向上させることができる。
【0049】
上述の通り、本実施形態では、図4(a)に示すように、例えばインピーダンス値をゼロに近づけて垂直方向の電界E11がより強くなるように制御し、より厚い酸化層13aをトレンチ11の底部11aに形成する異方性処理を行う。本実施形態では特に、反応種が到達し難いトレンチ11の底部11aに、より確実に反応種を到達させて、所定深さまで酸化層13aを形成することができる。具体的には、垂直方向に入射する反応種の数やエネルギーを増大させ、処理速度のみならず、反応種の到達距離、つまり、トレンチ11内部への到達深さや、ウェハ10表面からの侵入深さ等も増大させることができる。このように、プラズマ処理の促進には、処理速度を向上させたり、反応種の到達距離を増大させたりすること等が含まれる。
【0050】
本実施形態の電界は、高周波電源273を用いて形成した高周波電界である。したがって、高密度のプラズマが得られ、トレンチ11の底部11aへの反応種の到達率を、いっそう高めることができる。また、トレンチ11のアスペクト比(=トレンチ深さ/トレンチ開口幅)に応じた周波数を用いれば、トレンチ11内部での処理効率がより高まり、微細加工性を向上させることができる。
【0051】
また上述のように、本実施形態においては、プラズマを生成する電界を、ウェハ10の所定方向の処理を促進させる電界としても用いる。例えば、係る電界をプラズマ生成の電界とは別に形成して処理の促進方向を制御しようとすると、プラズマ生成の電界よりも強い電界を形成する必要が生じてしまうところ、本実施形態で形成する電界はプラズマ生成に必要な強さを有していればよい。よって、電界強度を低く抑えることができるため、ウェハ10に入射する反応種が必要以上に加速されて、トレンチの底部11aやトレンチ11上に形成されたマスク層12が反応種の衝突等によりエッチングされ、変形するようなことが起こり難い。
【0052】
なお、特に垂直方向のプラズマ処理を促進させる場合において、インピーダンス可変機構274によるウェハ10の電位(バイアス電圧)の更なる調整により、トレンチの底部11aやトレンチ11上に形成されたマスク層12のエッチングをより一層、抑制することが可能である。
【0053】
(真空排気工程S50)
所定の処理時間が経過してOガスの供給を停止したら、ガス排気管231を用いて処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内のOガスや、Oガスが反応した排ガス等を処理室201外へと排気する。その後、APC242の開度を調整し、
処理室201内の圧力を処理室201に隣接する真空搬送室(ウェハ10の搬出先。図示せず)と同じ圧力(例えば100Pa)に調整する。
【0054】
(基板搬出工程S60)
処理室201内が所定の圧力となったら、サセプタ217をウェハ10の搬送位置まで下降させ、ウェハ突上げピン266上にウェハ10を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、図中省略の搬送機構を用いてウェハ10を処理室201外へ搬出する。このとき、処理室201内を不活性ガス等でパージしながらウェハ10の搬出を行ってもよい。以上により、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0055】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0056】
(a)本実施形態によれば、インピーダンス可変機構217のインピーダンスを制御することで、ウェハ10の処理面に加わる電界の少なくとも垂直成分の強度を調整しつつ、高周波電源273による電力を制御することで、ウェハ10の処理面に加わる電界の少なくとも水平成分の強度を調整して、プラズマ処理を促進させる方向の電界を強くする。
【0057】
これによって、ウェハ10の処理を促進させる方向を高精度に制御可能である。本実施形態では特に、垂直方向の電界E11を強めてトレンチ11の底部11aに対する酸化処理を促進させる。したがって、より厚い酸化層13aをトレンチ11の底部11aに形成する異方性処理が可能となる。
【0058】
なお、上記構成により、水平方向に酸化処理を促進させ、より厚い酸化層13bをトレンチ11の側部11bに形成する異方性処理や、垂直方向の処理と水平方向の処理との進行具合が略同等となるよう電界を調整する等方性処理も可能である。
【0059】
(b)また、本実施形態によれば、プラズマ放電を起こしてOガスを励起する電界を、ウェハ10の所定方向のプラズマ処理を促進させる電界としても用いている。これによって、形成される電界の強度を抑えることができる。
【0060】
すなわち、処理の促進方向を制御する電界を別に形成する場合は、係る電界をプラズマ生成の電界よりも強くしなければならないが、本実施形態においては、プラズマ生成に必要な強さの電界を形成すればよく、トレンチ11やマスク層12の形状が変形し難い。したがって、所望のトレンチの形状を保つことができ、処理特性や歩留まりを向上させることができる。
【0061】
(c)また、本実施形態によれば、プラズマ処理の促進方向を制御する電界を別途形成する必要がないので、装置を簡便な構成とすることができ、コストの低減を図ることができる。
【0062】
(d)また、本実施形態によれば、インピーダンス可変機構274によるウェハ10の電位(バイアス電圧)の更なる調整により、トレンチの底部11aやトレンチ11上に形成されたマスク層12のエッチングをより一層、抑制することが可能である。
【0063】
(e)また、本実施形態によれば、処理室201内に形成される電界は、トレンチ11のアスペクト比に応じた周波数を有する高周波電界である。よって、高密度のプラズマが得られ、トレンチ11の底部11aへ反応種の到達率が高まるほか、トレンチ11内部の処理効率が向上して、より微細で高速な処理が可能となる。
【0064】
<本発明の第2実施形態>
上述した実施形態ではMMT装置200を用いる場合について説明したが、本発明は係る形態に限らず、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)方式プラズマ処理装置(以下、ICP装置300と記載)を用いて実施することも可能である。
【0065】
以下に、本実施形態に係るICP装置300について、図5を用いて説明する。ICP装置300は、主にプラズマ生成部の構成が上述の実施形態に係るMMT装置200と異なる。それ以外の構成についてはMMT装置200と同様である。なお、図5では、反応ガス供給部等、一部の構成を簡略化して図示した。
【0066】
ICP装置300は、プラズマ生成部の構成の一部として、電力を供給することでプラズマを生成する誘電コイル315a、315bを備えている。誘電コイル315aは上側容器210の天井壁の外側に敷設されている。誘電コイル315bは上側容器210の外周壁の外側に敷設されている。ICP装置300においても、ガス導入口234を経由して反応ガスを処理室201内へ供給するように構成されている。反応ガスを供給して誘電コイル315a、315bへ高周波電力を印加すると、電磁誘導により、ウェハ10の処理面に対して略水平の電界が生じるように構成されている。この電界をエネルギーとしてプラズマ放電を起こし、供給された反応ガスを励起して反応種を生成することができる。
【0067】
上記構成において、誘電コイル315a、315bに印加する高周波電力と、インピーダンス可変機構274のインピーダンスとを制御することによって、ウェハ10に加わる電界の垂直成分及び水平成分の強度を調整可能に構成されている。特に、誘電コイル315bにより、水平方向の電界を強めることがより容易となる。また、誘電コイル315bの替わりに、例えば円筒状の筒状電極や、平行平板型の電極等を用いてもよい。
【0068】
主に、誘電コイル315a、315b、整合器272a、272b、高周波電源273a、273bにより、本実施形態に係るプラズマ生成部が構成されている。
【0069】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0070】
<本発明の第3実施形態>
また、上述した実施形態ではMMT装置200やICP装置300を用いる場合について説明したが、本発明は係る形態に限らず、例えばECR(Electron Cyclotron Resonance)方式プラズマ処理装置(以下、ECR装置400と記載)を用いて実施することも可能である。
【0071】
以下に、本実施形態に係るECR装置400について、図6を用いて説明する。ECR装置400は、主にプラズマ生成部の構成が上述の実施形態に係るMMT装置200と異なる。それ以外の構成についてはMMT装置200と同様である。なお、図6では、反応ガス供給部等、一部の構成を簡略化して図示した。
【0072】
ECR装置400は、プラズマ生成部の構成の一部として、マイクロ波導入管415a及び誘電コイル415bを備えている。マイクロ波導入管415aは上側容器210の天井壁の外側に敷設され、マイクロ波418aを供給してプラズマを生成するように構成されている。誘電コイル415bは上側容器210の外周壁の外側に敷設され、電力を供給してプラズマを生成するように構成されている。ECR装置400においても、ガス導入口234を経由して反応ガスを処理室201内へ供給するように構成されている。反応ガスを供給してマイクロ波導入管415aへマイクロ波418aを導入すると、マイクロ波418aが処理室201へ放射され、マイクロ波418aの進行方向に対して略垂直、つ
まり、ウェハ10の処理面に対して略水平の電界が形成されるように構成されている。また、誘電コイル415bへ高周波電力を印加すると、電磁誘導により、ウェハ10の処理面に対して略水平の電界が生じるように構成されている。これにより、マイクロ波418a及び誘電コイル415bにより形成された電界をエネルギーとしてプラズマ放電を起こし、供給された反応ガスを励起して反応種を生成することができる。
【0073】
上記構成において、導入するマイクロ波418aの強度及び誘電コイル415bに印加する高周波電力と、インピーダンス可変機構274のインピーダンスとを制御することによって、ウェハ10に加わる電界の垂直成分及び水平成分の強度を調整可能に構成されている。特に、誘電コイル415bにより、ウェハ10の処理面に対して水平方向の電界を強めることがより容易となる。また、誘電コイル415bの替わりに、例えば円筒状の筒状電極や、平行平板型の電極等を用いてもよい。
【0074】
なお、マイクロ波導入管415aを上側容器210の側壁部に設け、マイクロ波418aをウェハ10の表面に対して略水平に放射することとしてもよい。係る構成により、ウェハ10の処理面に対してより一層、電界の向きを垂直に制御し易くなる。
【0075】
主に、マイクロ波導入管415a、誘電コイル415b、整合器272b、高周波電源273b、磁石216により、本実施形態に係るプラズマ生成部が構成されている。
【0076】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0077】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0078】
例えば、上述の実施形態において、MMT装置200はプラズマ生成部の一部として筒状電極215を有するものとしたが、筒状電極215に加えて、例えば上側容器210の天井壁に平板状の上部電極を有するものとしてもよい。このように、平行平板型の電極構造をとることで、電界の向きをウェハ10の処理面に対してより一層、垂直に制御し易くなる。
【0079】
また、上述の実施形態においては、トレンチ11に対する処理について説明したが、平面状のウェハ10表面や、ウェハ10上に形成されたゲート絶縁膜や金属膜等、種々の膜を処理対象とすることができる。
【0080】
また、上述の実施形態においては、Oガスを用いた酸化処理について説明したが、Oガス等の酸素含有ガスに、水素(H)ガスや希ガス等を添加することも可能である。希ガスには、例えばヘリウム(He)ガスやアルゴン(Ar)ガス等を用いることができる。
【0081】
また、酸化処理のみならず、窒化処理や、酸化と窒化とを一緒に行う酸窒化処理、拡散処理、成膜(膜の堆積)処理、エッチング処理等にも本発明が適用可能である。例えば窒化処理には、窒素(N)ガス等の窒素(N)含有ガス単体や、窒素含有ガスにHガスや希ガス等を添加した混合ガスを用い、酸窒化処理には、酸素(O)ガス等の酸素含有ガス単体や、酸素含有ガスに窒素含有ガス、水素(H)ガス等の水素含有ガスや希ガス等を添加した混合ガスを用い、成膜処理にはモノシラン(SiH)ガスやジシラン(Si)ガス等のシリコン(Si)含有ガスを酸素含有ガスや窒素含有ガス等と組み合わせて用いるなど、使用する反応ガスは各処理内容に応じて適宜選択することができる。これにより、上記の異方性・等方性の酸化処理のように異方性・等方性の窒化処理や酸窒
化処理、拡散処理、成膜処理、エッチング処理を行うことができる。
【0082】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様を付記する。
【0083】
本発明の一態様は、
基板を処理室内に搬入して基板支持部により支持する工程と、
前記基板支持部により前記基板を加熱する工程と、
排気部により前記処理室内を排気しつつ、反応ガス供給部により前記処理室内に反応ガスを供給する工程と、
プラズマ生成部により前記処理室内に形成した電界で、プラズマ放電を起こして反応ガスを励起し、励起した反応ガスを前記基板に供給して前記基板をプラズマ処理する工程と、
プラズマ処理した前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、を有し、
前記基板をプラズマ処理する工程では、
前記基板支持部の内部に設けられたインピーダンス調整電極に接続されるインピーダンス調整部のインピーダンスを制御することで、前記基板の処理面に加わる前記電界の少なくとも垂直成分の強度を調整しつつ、前記プラズマ生成部による電力を制御することで、前記基板の前記処理面に加わる前記電界の少なくとも水平成分の強度を調整して、前記プラズマ処理を促進させる方向の前記電界を強くする
半導体装置の製造方法である。
【0084】
好ましくは、
前記反応ガスは、窒素含有ガス、酸素含有ガス、水素含有ガス又はシリコン含有ガスの少なくともいずれかを含む。
【0085】
また、好ましくは、
前記基板の前記処理面には、凹凸部が形成されている。
【0086】
また、好ましくは、
前記基板の前記処理面には、マスク層が形成されている。
【0087】
また、好ましくは、
前記電界は、前記凹凸部のアスペクト比に応じた周波数を有する高周波電界である。
【0088】
好ましくは、
前記基板をプラズマ処理する工程において前記基板の前記処理面に対して垂直方向に前記プラズマ処理を促進させるときは、
前記電界の前記垂直成分の強度を前記水平成分の強度よりも高くする。
【0089】
好ましくは、
前記基板をプラズマ処理する工程において前記基板の前記処理面に対して水平方向に前記プラズマ処理を促進させるときは、
前記電界の前記垂直成分の強度を前記水平成分の強度よりも低くする。
【0090】
本発明の他の態様は、
基板が搬入される処理室と、
前記処理室内に設けられ、前記基板を支持して加熱する基板支持部と、
前記処理室内に反応ガスを供給する反応ガス供給部と、
前記処理室内を排気する排気部と、
前記処理室内に電界を形成するプラズマ生成部と、
前記基板支持部の内部に設けられたインピーダンス調整電極に接続されるインピーダンス調整部と、
前記処理室内に搬入した前記基板を加熱させ、前記処理室内を排気させつつ、前記処理室内に反応ガスを供給させ、前記処理室内に形成させた電界でプラズマ放電を起こさせて反応ガスを励起させ、励起させた反応ガスを前記基板に供給させて前記基板をプラズマ処理させるよう前記基板支持部、前記反応ガス供給部、前記排気部、前記プラズマ生成部及び前記インピーダンス調整部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記インピーダンス調整部のインピーダンスを制御させることで、前記基板の処理面に加わる前記電界の少なくとも垂直成分の強度を調整させつつ、前記プラズマ生成部による電力を制御させることで、前記基板の前記処理面に加わる前記電界の少なくとも水平成分の強度を調整させて、前記プラズマ処理を促進させる方向の前記電界を強くさせるよう制御する
基板処理装置である。
【0091】
好ましくは、
前記制御部は、
前記基板の前記処理面に対して垂直方向に前記プラズマ処理を促進させるときは、
前記電界の前記垂直成分の強度が前記水平成分の強度よりも高くなるよう、前記インピーダンス調整部と前記プラズマ生成部とを制御する。
【符号の説明】
【0092】
10 ウェハ(基板)
200 MMT装置(基板処理装置)
201 処理室
217c インピーダンス調整電極
274 インピーダンス可変機構(インピーダンス調整部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理室内に搬入して基板支持部により支持する工程と、
前記基板支持部により前記基板を加熱する工程と、
排気部により前記処理室内を排気しつつ、反応ガス供給部により前記処理室内に反応ガスを供給する工程と、
プラズマ生成部により前記処理室内に形成した電界で、プラズマ放電を起こして反応ガスを励起し、励起した反応ガスを前記基板に供給して前記基板をプラズマ処理する工程と、
プラズマ処理した前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、を有し、
前記基板をプラズマ処理する工程では、
前記基板支持部の内部に設けられたインピーダンス調整電極に接続されるインピーダンス調整部のインピーダンスを制御することで、前記基板の処理面に加わる前記電界の少なくとも垂直成分の強度を調整しつつ、前記プラズマ生成部による電力を制御することで、前記基板の前記処理面に加わる前記電界の少なくとも水平成分の強度を調整して、前記プラズマ処理を促進させる方向の前記電界を強くする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記基板の前記処理面には、凹凸部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板が搬入される処理室と、
前記処理室内に設けられ、前記基板を支持して加熱する基板支持部と、
前記処理室内に反応ガスを供給する反応ガス供給部と、
前記処理室内を排気する排気部と、
前記処理室内に電界を形成するプラズマ生成部と、
前記基板支持部の内部に設けられたインピーダンス調整電極に接続されるインピーダンス調整部と、
前記処理室内に搬入した前記基板を加熱させ、前記処理室内を排気させつつ、前記処理室内に反応ガスを供給させ、前記処理室内に形成させた電界でプラズマ放電を起こさせて反応ガスを励起させ、励起させた反応ガスを前記基板に供給させて前記基板をプラズマ処理させるよう前記基板支持部、前記反応ガス供給部、前記排気部、前記プラズマ生成部及び前記インピーダンス調整部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記インピーダンス調整部のインピーダンスを制御させることで、前記基板の処理面に加わる前記電界の少なくとも垂直成分の強度を調整させつつ、前記プラズマ生成部による電力を制御させることで、前記基板の前記処理面に加わる前記電界の少なくとも水平成分の強度を調整させて、前記プラズマ処理を促進させる方向の前記電界を強くさせるよう制御する
ことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−114267(P2012−114267A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262375(P2010−262375)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】