半導体装置の製造方法
【課題】レジスト膜をアッシングにより除去する際に、イオン注入による変質層のポッピングを防止できるとともに、半導体基板の酸化や掘れを抑制できる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】表面に変質層が形成されたレジスト膜を有する半導体基板を、処理チャンバ内に搬入するステップと、半導体基板を加熱するとともに、処理チャンバ内に不活性ガスを導入して処理チャンバ内の圧力を上げるステップと、次いで、処理チャンバ内に酸素ガスを導入し、酸素ガスのプラズマによってレジスト膜をアッシングするステップとを有する。
【解決手段】表面に変質層が形成されたレジスト膜を有する半導体基板を、処理チャンバ内に搬入するステップと、半導体基板を加熱するとともに、処理チャンバ内に不活性ガスを導入して処理チャンバ内の圧力を上げるステップと、次いで、処理チャンバ内に酸素ガスを導入し、酸素ガスのプラズマによってレジスト膜をアッシングするステップとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係り、特に、半導体基板上に形成されたレジスト膜をアッシングにより除去する工程を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスでは、微細加工やイオン注入のマスクとして、有機高分子材料よりなるフォトレジスト膜が多用されている。微細加工の際のエッチングマスクやイオン注入の際のイオン注入マスクとして用いられたフォトレジスト膜は、その後に半導体基板上から除去する必要がある。フォトレジスト膜を除去する工程としては、ウェットプロセスとドライプロセスとがあるが、最近ではドライプロセスが多用されるようになっている。
【0003】
フォトレジスト膜を除去するためのドライプロセスには、通常、アッシングと呼ばれる方法が用いられている。アッシングとは、フォトレジスト膜を気相中でオゾンや酸素プラズマに曝すことにより酸化(灰化)して除去する方法である。アッシングによりフォトレジスト膜を除去する方法については、例えば特許文献1〜4等に記載されている。
【0004】
一方、半導体装置の微細化に伴い、フォトレジスト材料には、KrFなどの短波長光に対応した有機高分子材料が採用されている。しかしながら、KrFレジストなどの微細加工用のフォトレジスト材料は、耐熱性が低く、イオン注入、特にMISFETのソース/ドレイン領域等を形成するための高注入量のイオン注入などの際に、熱や注入ダメージによって表面が変質することが知られている。
【0005】
フォトレジスト膜の表面に変質層が形成された状態でアッシング処理を減圧下で行うと、変質していないフォトレジスト膜内部の溶剤がガス化しようとして内部圧力が高くなる。この内部圧力に変質層が耐えきれなくなると、変質層の剥がれ(ポッピング)が生じ、剥がれた変質層はダストの原因となる。
【0006】
ポッピングを防止する方法として、例えば特許文献1には、フォトレジスト膜中の溶剤が気化しない所定の圧力に加圧した状態でアッシングを行う方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、フォトレジスト膜がポッピングを起こしにくい温度でアッシングを行うことが開示されている。
【特許文献1】特開昭63−265428号公報
【特許文献2】特開平05−160021号公報
【特許文献3】特開2005−064062号公報
【特許文献4】特開2006−513586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のように、アッシングの際の酸素プラズマ処理時にチャンバ内圧力を上げることにより、フォトレジスト膜内部の溶剤のガス化圧力と外部の圧力とを平衡させることができる。これにより、フォトレジスト膜のポッピングを抑制することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、チャンバ内圧力を上げることによって酸素分圧も上がるため、半導体基板の酸化が促進されることになる。例えばMISFETのソース/ドレイン領域の形成工程への適用を考慮した場合、酸素分圧の増加によってソース/ドレイン領域のシリコン基板やゲート電極を構成するポリシリコンの酸化量が増加することになる。近年のMISFETではソース/ドレイン領域が極めて浅いため、酸化膜に取り込まれる不純物の量が無視できなくなり、ソース/ドレイン抵抗やコンタクト抵抗の増大等を引き起こすことになる。
【0010】
酸化を抑える手法としては、例えば特許文献4に記載されているように、水素を用いてアッシングすることも考えられる。しかしながら、近年のMISFETの製造プロセスでは、ソース/ドレイン領域のイオン注入を、シリコン基板表面がシリコン酸化膜によって覆われていない状態で行うことがある。この場合、水素によってシリコン基板がエッチングされてしまい、基板の掘れという新たな問題が生じてしまう。
【0011】
本発明の目的は、フォトレジスト膜をアッシングにより除去する際に、変質層のポッピングを抑制しうるとともに、半導体基板の酸化や掘れを防止しうる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、表面に変質層が形成されたレジスト膜を有する半導体基板を、処理チャンバ内に搬入するステップと、前記処理チャンバ内に搬入した前記半導体基板を加熱するとともに、前記処理チャンバ内に不活性ガスを導入して前記処理チャンバ内の圧力を上げるステップと、次いで、前記処理チャンバ内に酸素ガスを導入し、前記酸素ガスのプラズマによって前記レジスト膜をアッシングするステップとを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レジスト膜のアッシングの際に、処理チャンバ内に不活性ガスを導入することにより、酸素分圧を高くすることなく処理チャンバ内の圧力を高めるので、アッシングの際に半導体基板を加熱した場合でも、レジスト膜の内部から変質層に加わる圧力を、処理チャンバ内の圧力によって抑えることができ、レジスト膜の変質層のポッピングを効果的に防止することができる。
【0014】
また、処理チャンバ内の酸素分圧を高くする必要がないので、半導体基板が酸化されるのを抑制することができる。また、アッシングには水素を用いる必要がないので、シリコンが露出した処理基板をアッシング処理する場合にも、基板がダメージを受けることはない。また、不活性ガスをプラズマ化せずに、酸素ラジカルだけを用いてアッシング処理を行うことにより、処理基板に与えるダメージを抑制することができる。
【0015】
したがって、KrF用レジストのように微細化に向くが耐熱性の弱いレジスト材料を用いるような場合でも、レジスト膜の変質層のポッピングを効果的に防止しつつアッシングによる除去が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法について図1乃至図6を用いて説明する。
【0017】
図1乃至図3は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図、図4は本実施形態によるアッシング装置の構造を示す概略図、図5は本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャート、図6は処理チャンバ内の酸素分圧を変化したときの処理基板の酸化量と酸素分圧との関係を示すグラフである。
【0018】
はじめに、本発明の適用が考えられる半導体装置の製造プロセスの一例について図1乃至図3を用いて説明する。
【0019】
まず、シリコン基板10の表面に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法により、活性領域を画定する素子分離膜12を形成する。なお、図において、中央の素子分離膜12と右側の素子分離膜12との間の活性領域はN型MISFET形成領域であり、他の活性領域はP型MISFET形成領域であるものとする。
【0020】
次いで、素子分離膜12により画定されたシリコン基板10の活性領域上に、例えば熱酸化法により、シリコン酸化膜よりなる犠牲酸化膜14を形成する。犠牲酸化膜14は、ウェル注入を行う際にシリコン基板10の表面が汚染されるのを防止するための膜である。
【0021】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、N型MISFET形成領域のシリコン基板10内にPウェル16を、P型MISFET形成領域のシリコン基板10内にNウェル18を、それぞれ形成する(図1(a))。
【0022】
次いで、例えば弗酸水溶液を用いたウェットエッチングにより、犠牲酸化膜14を除去する。
【0023】
次いで、犠牲酸化膜14を除去することにより露出したシリコン基板10の活性領域上に、例えば熱酸化法により、シリコン酸化膜よりなるゲート絶縁膜20を形成する。
【0024】
次いで、全面に、例えばCVD法により、多結晶シリコン膜22を堆積する(図1(b))。
【0025】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、多結晶シリコン膜22をパターニングし、ゲート絶縁膜20上に、多結晶シリコン膜22よりなるゲート電極24を形成する。
【0026】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、N型MISFET形成領域に形成されたゲート電極24をマスクとして砒素や燐等のドナー不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極24の両側のシリコン基板10内に、LDD領域或いはエクステンション領域としての不純物拡散領域26を形成する。同様に、P型MISFET形成領域に形成されたゲート電極24をマスクとして硼素等のアクセプタ不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極24の両側のシリコン基板10内に、LDD領域或いはエクステンション領域としての不純物拡散領域28を形成する(図1(c))。
【0027】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えばシリコン酸化膜を堆積した後、このシリコン酸化膜をエッチバックし、ゲート電極24の側壁部分に、シリコン酸化膜よりなる側壁絶縁膜30を形成する(図2(a))。
【0028】
次いで、フォトリソグラフィにより、N型MISFET形成領域を露出し、P型MISFET形成領域を覆うフォトレジスト膜32を形成する(図2(b))。
【0029】
次いで、フォトレジスト膜32、ゲート電極24及び側壁絶縁膜30をマスクとして砒素や燐等のドナー不純物イオンをイオン注入し、N型MISFET形成領域に形成されたゲート電極24の両側のシリコン基板10内に、ソース/ドレイン領域の高濃度領域となる不純物拡散領域34を形成する。不純物拡散領域34は、例えば、燐イオンを、加速エネルギー10keV、注入量5×1015cm−2の条件でイオン注入を行うことにより、形成する。
【0030】
このとき、不純物拡散領域34を形成する際のイオン注入条件(例えば、1×1015cm−2程度以上の高注入量の場合)によっては、イオン注入に伴う発熱や注入ダメージによって、フォトレジスト膜32の表面領域に変質層32aが形成される(図3(a))。なお、変質層32aとは、イオン注入に伴う発熱や注入ダメージによって硬化した部分であり、アッシング処理上の観点からは、変質していない他の領域よりもアッシングレートが遅いという特徴を有している。
【0031】
次いで、フォトレジスト膜32を、アッシングにより除去する。
【0032】
次いで、例えば130℃に加熱した硫酸・過酸化水素水によるウェット処理を行い、シリコン基板10を洗浄する。
【0033】
次いで、N型MISFETの不純物拡散領域34の形成と同様にして、P型MISFET形成領域に形成されたゲート電極22の両側のシリコン基板10内に、ソース/ドレイン領域の高濃度領域となる不純物拡散領域36を形成する。この場合にも、不純物拡散領域36を形成する際のイオン注入条件によっては、フォトレジスト膜の表面領域に変質層が形成される。
【0034】
次いで、例えば窒素雰囲気中で熱処理を行い、注入した不純物イオンを活性化し、不純物拡散領域26,34よりなるN型MISFETのソース/ドレイン領域38と、不純物拡散領域28,36よりなるP型MISFETのソース/ドレイン領域40とを形成する(図3(b))。
【0035】
こうして、シリコン基板10上に、ゲート電極22及びソース/ドレイン領域38を有するN型MISFETと、ゲート電極22及びソース/ドレイン領域40を有するP型MISFETとを完成する。
【0036】
この後、必要に応じてサリサイドプロセスや他の素子の形成等を行った後、バックエンドプロセス等を経て、半導体装置が完成する。
【0037】
次に、本発明の主たる特徴であるフォトレジスト膜のアッシング方法について説明する。本発明のアッシング方法は、表面領域にイオン注入による変質層が形成されたフォトレジスト膜の除去に好適である。例えば上述のMISFETの形成プロセスでは、フォトレジスト膜32の除去工程に適用することができる。本工程のみならず、不純物拡散領域26,28,36を形成する際のイオン注入工程、その他のイオン注入工程において、フォトレジスト膜に変質層が形成されるような場合には、本発明のアッシング方法が有効である。
【0038】
次に、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法について図4及び図5を用いて説明する。
【0039】
図4は本実施形態によるアッシング装置の構造を示す概略図である。図4に示すアッシング装置は、予備排気や処理基板の予備加熱等を行うためのロードロックチャンバ50と、アッシング処理を行う処理チャンバ60とを有している。ロードロックチャンバ50と処理チャンバ60とは、真空搬送路70によって接続されており、ロードロックチャンバ50と処理チャンバ60との間で処理基板80を受け渡しできるようになっている。ロードロックチャンバ50と真空搬送路70との間、真空搬送路70と処理チャンバ60との間には、それぞれバルブ72,74が設けられている。
【0040】
ロードロックチャンバ50には、ロードロックチャンバ50に処理基板80を出し入れするための処理基板搬送口52と、ロードロックチャンバ50内に所定のガスを導入するガス導入配管54と、ロードロックチャンバ50内の排気や圧力制御を行うための圧力制御装置56とが設けられている。ロードロックチャンバ50内には、ロードロックチャンバ50に搬送した処理基板80を予備加熱するためのヒータ58と、処理基板80に紫外線(UV)を照射する紫外線光源76が設けられている。
【0041】
処理チャンバ60は、プラズマを発生するプラズマ発生室60aと、プラズマ発生室60aで生成したプラズマを用いてアッシング処理を行うプラズマ処理室60bとを有している。
【0042】
プラズマ発生室60aには、アッシング用のガスを導入するガス導入配管62と、ガス導入配管62から導入されたガスをプラズマ化するためのプラズマ発生装置64が設けられている。プラズマ発生装置64は、マイクロ波励起型のプラズマ発生装置や、平衡平板型のRFプラズマ発生装置である。
【0043】
プラズマ処理室60bには、プラズマ処理室60b内の排気や圧力制御を行うための圧力制御装置66が設けられている。プラズマ処理室60b内には、処理チャンバ60に搬送した処理基板80を加熱するためのヒータ68が設けられている。
【0044】
図5は本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。縦軸はチャンバ内圧力であり、横軸は時間である。
【0045】
まず、処理基板搬送口52から、処理基板80をロードロックチャンバ50内に搬入する(図5中、時間T0)。処理基板80は、例えば図3(a)に示すように、表面に変質層32aが形成されたフォトレジスト膜32を有するシリコン基板10である。
【0046】
次いで、圧力制御装置56により、ロードロックチャンバ50内を真空引きする。この際、必要に応じて、ヒータ58によって処理基板80を予備加熱してもよい。
【0047】
次いで、ロードロックチャンバ50内が所定の圧力になった後(図5中、時間T1)、バルブ72を開き、真空に引いた真空搬送路70内へ処理基板80を搬送する。
【0048】
次いで、バルブ72を閉じ、バルブ74を開き、真空に引いた処理チャンバ60内へ処理基板80を搬送する(図5中、時間T1〜時間T2)。
【0049】
次いで、プラズマ処理室60b内に、窒素ガスやアルゴン等の不活性ガス、例えば窒素ガスを、例えば5000sccmの流量で供給し、プラズマ処理室60b内の圧力を760Torr程度まで上げる(図5中、時間T2)。また、不活性ガスの導入と同時に、ヒータ68によって、処理基板80を150〜300℃程度の温度まで加温する。
【0050】
処理基板80の温度が上がると、フォトレジスト膜32の内部の変質していない領域中の溶剤がガス化しようとして、フォトレジスト膜32内部のガス圧が上がる。しかしながら、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、処理基板80の加温と同時にプラズマ処理室60b内に不活性ガスを導入し、プラズマ処理室60b内の圧力を100〜760Torr程度の高い圧力に設定している。このため、フォトレジスト膜32の内部から変質層32aに加わる圧力を、プラズマ処理室60b内の圧力によって抑えることができる。これにより、フォトレジスト膜32内部から変質層32aに加わる圧力が、フォトレジスト膜32の変質層32aが破れるほどに大きくなることを防止することができ、フォトレジスト膜32のポッピングを防止することができる。
【0051】
なお、プラズマ処理室60b内の圧力は、フォトレジスト膜32のポッピングの防止の観点からは10気圧程度まで上げてもよいが、その場合には安全のために高圧対応の処理装置を用いる必要がある。通常の減圧処理装置を用いる場合には、プラズマ処理室60b内の圧力は、100〜760Torr程度に制御することが望ましい。
【0052】
次いで、プラズマ処理室60b内の圧力が所定の圧力に、処理基板80の温度が所定の温度に落ち着くまで、例えば数十秒〜数分程度、プラズマ処理室60b内の圧力を上げた状態且つ処理基板80を加温した状態で放置する(図5中、時間T2〜時間T3)。
【0053】
次いで、プラズマ処理室60b内の圧力及び処理基板80の温度が落ち着いた後、ガス導入配管62からプラズマ発生室60a内に、酸素ガスを、例えば200〜1000sccmの流量で供給する(図5中、時間T3)。
【0054】
次いで、処理チャンバ60内の酸素分圧が安定した後、プラズマ発生装置64によって、プラズマ発生室60a内に導入した酸素ガスをプラズマ化する(図5中、時間T4)。そして、ダウンフローによって、プラズマ中の酸素ラジカル(O*)を、プラズマ処理室60b内に導入する。
【0055】
ダウンフロー型のアッシング装置を適用することにより、プラズマの生成効率を低下することなく処理チャンバ60内の圧力を高めることができる。また、不活性ガスをプラズマ化しないことで、処理基板80へのダメージを抑えることができる。
【0056】
本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、不活性ガスを導入することにより、処理チャンバ60内の酸素分圧を高くすることなくプラズマ処理室60b内の圧力を高めている。これにより、処理基板80が酸化されるのを抑制することができる。
【0057】
次いで、プラズマ処理室60b内の酸素ラジカルによって、処理基板80上に形成されたフォトレジスト膜を灰化し、除去する(図5中、時間T4〜時間T5)。
【0058】
次いで、プラズマ発生装置64を停止してプラズマをオフにした後(図5中、時間T5)、ガス導入配管62からの酸素ガスの供給を停止する(図5中、時間T6)。
【0059】
次いで、圧力制御装置66により処理チャンバ60内を真空引きするとともに、ヒータ68をオフにして処理基板80を降温する(図5中、時間時間T6〜時間T7)。
【0060】
次いで、処理チャンバ60内の圧力が所定の圧力になった後(図5中、時間T7)、バルブ74を開き、真空に引いた真空搬送路70内へ処理基板80を搬送する。
【0061】
次いで、バルブ74を閉じ、バルブ72を開き、真空に引いたロードロックチャンバ50内へ処理基板80を搬送する。
【0062】
次いで、ガス導入配管52から処理チャンバ50内に不活性ガス、例えば窒素ガスを導入し、ロードロックチャンバ50内を大気圧に戻す。
【0063】
次いで、処理基板搬送口52を介してロードロックチャンバ50内から処理基板80を取り出し、一連のアッシング処理を完了する。
【0064】
図6は、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法において処理チャンバ60内の酸素分圧を変化したときの、処理基板の酸化量と酸素分圧との関係を示すグラフである。
【0065】
図6に示すように、酸素分圧が1200mTorrを超えると、処理基板の酸化量が増加することが判る。酸素分圧が1200mTorrのときのデータ及び酸素分圧が1440mTorrの時のデータからグラフの傾きを求めると、0.015nm/200mTorrの関係が得られる。この結果から、酸素分圧を20Torr程度に設定した場合には、約1.5nm程度の酸化量が見込まれる。
【0066】
一方、MISFETのエクステンション領域(不純物拡散領域26,28に相当)のイオン注入直後の深さは、1×1018cm−3の濃度で見て約15nm程度である。基板の酸化により消費される基板の厚さが酸化膜厚の半分程度であることを考慮すると、1.5nmの酸化膜が形成された場合、エクステンション領域の約5%が酸化によって消費されることになる。エクステンション領域の消費を1%以下に抑えるためには、酸素分圧を4Torr以下に設定する必要がある。
【0067】
このように、本実施形態によれば、フォトレジスト膜のアッシングの際に、プラズマ処理室内に不活性ガスを導入することにより、酸素分圧を高くすることなくプラズマ処理室内の圧力を高めるので、アッシングの際に処理基板を加熱した場合でも、フォトレジスト膜の内部から変質層に加わる圧力を、プラズマ処理室内の圧力によって抑えることができ、フォトレジスト膜のポッピングを効果的に防止することができる。また、処理基板が酸化されるのを抑制することができる。また、アッシングには水素を用いる必要がないので、シリコンが露出した処理基板をアッシング処理する場合にも、基板がダメージを受けることはない。また、不活性ガスをプラズマ化しないことにより、処理基板に与えるダメージを抑制することができる。したがって、KrF用レジストのように微細化に向くが耐熱性の弱いフォトレジスト材料を用いるような場合でも、フォトレジスト膜のポッピングを効果的に防止しつつアッシングによる除去が可能となる。
【0068】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法について図7を用いて説明する。
【0069】
なお、図1乃至図6に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0070】
図7は本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。
【0071】
本実施形態では、図1乃至図3に示す半導体装置の製造方法に適用可能な他のフォトレジスト膜のアッシング方法について図7を用いて説明する。縦軸はチャンバ内圧力であり、横軸は時間である。
【0072】
まず、処理基板搬送口52から、処理基板80をロードロックチャンバ50内に搬送する(図7中、時間T0)。処理基板80は、例えば図3(a)に示すように、表面に変質層32aが形成されたフォトレジスト膜32を有するシリコン基板10である。
【0073】
次いで、圧力制御装置56により、ロードロックチャンバ50内を真空引きする。この際、必要に応じて、ヒータ58によって処理基板80を予備加熱してもよい。
【0074】
次いで、ロードロックチャンバ50内が所定の圧力になった後(図7中、時間T1)、紫外線光源76を駆動し、処理基板80に紫外線を照射する(図7中、時間T1〜時間T2)。この紫外線照射により、変質していないフォトレジスト膜32の内部の領域が架橋して硬化され、後の加温の際にガス化する溶剤の量を低減することができる。
【0075】
次いで、紫外線光源76からの紫外線の照射を停止した後(図7中、時間T2)、バルブ72を開き、真空に引いた真空搬送路70内へ処理基板80を搬送する。
【0076】
次いで、バルブ72を閉じ、バルブ74を開き、真空に引いた処理チャンバ60内へ処理基板80を搬送する(図7中、時間T2〜時間T3)。
【0077】
なお、処理基板80への紫外線照射は、処理基板80の加温前(時間T3よりも前)に行えばよく、ロードロックチャンバ50内ではなく、処理チャンバ60へ搬送した後に行ってもよい。
【0078】
次いで、プラズマ処理室60b内に不活性ガス、例えば窒素ガスを、例えば5000sccmの流量で供給し、プラズマ処理室60b内の圧力を760Torr程度まで上げる(図7中、時間T3)。また、不活性ガスの導入と同時に、ヒータ68によって、処理基板80を150〜300℃程度の温度まで加温する。
【0079】
処理基板80の温度が上がると、フォトレジスト膜32の内部の変質していない領域中の溶剤がガス化しようとして、フォトレジスト膜32内部のガス圧が上がる。しかしながら、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、処理基板80の加温と同時にプラズマ処理室60b内に不活性ガスを導入し、プラズマ処理室60b内の圧力を100〜760Torr程度の高い圧力に設定している。このため、フォトレジスト膜32の内部から変質層32aに加わる圧力を、プラズマ処理室60b内の圧力によって抑えることができる。また、紫外線照射により、発生するガスの総量も減少している。これにより、フォトレジスト膜32内部から変質層32aに加わる圧力が、フォトレジスト膜32の変質層32aが破れるほどに大きくなることを防止することができ、フォトレジスト膜32のポッピングを防止することができる。
【0080】
なお、プラズマ処理室60b内の圧力は、フォトレジスト膜32のポッピングの防止の観点からは10気圧程度まで上げてもよいが、その場合には安全のために高圧対応の処理装置を用いる必要がある。通常の減圧処理装置を用いる場合には、プラズマ処理室60b内の圧力は、100〜760Torr程度に制御することが望ましい。
【0081】
次いで、プラズマ処理室60b内の圧力が所定の圧力に、処理基板80の温度が所定の温度に落ち着くまで、例えば数十秒〜数分程度、プラズマ処理室60b内の圧力を上げた状態且つ処理基板80を加温した状態で放置する(図7中、時間T3〜時間T4)。
【0082】
次いで、プラズマ処理室60b内の圧力及び処理基板80の温度が落ち着いた後、ガス導入配管62からプラズマ発生室60a内に、酸素ガスを、例えば200〜1000sccmの流量で供給する(図7中、時間T4)。
【0083】
次いで、処理チャンバ60内の酸素分圧が安定した後、プラズマ発生装置64によって、プラズマ発生室60a内に導入した酸素ガスをプラズマ化する(図5中、時間T5)。そして、ダウンフローによって、プラズマ中の酸素ラジカル(O*)を、プラズマ処理室60b内に導入する。
【0084】
本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、不活性ガスを導入することにより、プラズマ処理室60b内の酸素分圧を高くすることなくプラズマ処理室60b内の圧力を高めている。これにより、処理基板80が酸化されるのを抑制することができる。
【0085】
次いで、プラズマ処理室60b内の酸素ラジカルによって、処理基板80上に形成されたフォトレジスト膜を灰化し、除去する(図7中、時間T5〜時間T6)。
【0086】
次いで、プラズマ発生装置64を停止してプラズマをオフにした後(図7中、時間T6)、ガス導入配管62からの酸素ガスの供給を停止する(図7中、時間T7)。
【0087】
次いで、圧力制御装置66により処理チャンバ60内を真空引きするとともに、ヒータ68をオフにして処理基板80を降温する(図7中、時間時間T7〜時間T8)。
【0088】
次いで、処理チャンバ60内の圧力が所定の圧力になった後(図5中、時間T7)、バルブ74を開き、真空に引いた真空搬送路70内へ処理基板80を搬送する。
【0089】
次いで、バルブ74を閉じ、バルブ72を開き、真空に引いたロードロックチャンバ50内へ処理基板80を搬送する。
【0090】
次いで、ガス導入配管52から処理チャンバ50内に不活性ガス、例えば窒素ガスを導入し、ロードロックチャンバ50内を大気圧に戻す。
【0091】
次いで、処理基板搬送口52を介してロードロックチャンバ50内から処理基板80を取り出し、一連のアッシング処理を完了する。
【0092】
このように、本実施形態によれば、フォトレジスト膜のアッシングの際に、処理基板の加温前に、フォトレジスト膜に紫外線を照射して硬化させるので、処理基板の加熱した際にフォトレジスト膜内部から変質層に加わる圧力を低減することができる。これにより、フォトレジスト膜のポッピングを更に効果的に防止することができる。
【0093】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法について図8を用いて説明する。
【0094】
なお、図1乃至図7に示す第1及び第2実施形態による半導体装置の製造方法と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0095】
図8は本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。
【0096】
本実施形態では、図1乃至図3に示す半導体装置の製造方法に適用可能な他のフォトレジスト膜のアッシング方法について図8を用いて説明する。縦軸はチャンバ内圧力であり、横軸は時間である。
【0097】
本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法は、図8に示すように、基本的には図5に示す第1実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法と同様である。本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法の主たる特徴は、時間T2〜時間T3のステップにおける不活性ガスの導入方法にある。
【0098】
第1実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、図5に示すように、時間T2〜時間T3のステップにおいて、プラズマ処理室60b内の圧力が連続的に変化するように、プラズマ処理室60b内に不活性ガスを導入している。
【0099】
一方、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、図8に示すように、時間T2〜時間T3のステップにおいて、プラズマ処理室60b内の圧力が段階的に変化するように、プラズマ処理室60b内に不活性ガスを導入している。
【0100】
フォトレジスト膜32のポッピングは、処理基板80の温度が高くなるほどに生じやすくなる。このため、プラズマ処理室60b内の圧力は、処理基板80の温度に応じて適宜制御することが望ましい。そこで、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、処理基板80の温度を逐次測定し、測定した処理基板80の温度においてフォトレジスト膜32内部の圧力と処理チャンバ内の圧力とが平衡するように、不活性ガスのガス流量を段階的に増加していく。これにより、フォトレジスト膜32のポッピングを効果的に防止することができる。
【0101】
このように、本実施形態によれば、プラズマ処理室内に不活性ガスを導入する際に、処理基板の温度に応じて、フォトレジスト膜内部の圧力と処理チャンバ内の圧力とが平衡するように、不活性ガスのガス流量を段階的に増加するので、フォトレジスト膜のポッピングを効果的に防止することができる。
【0102】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による半導体装置の製造方法について図9及び図10を用いて説明する。
【0103】
図9は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図、図10はN型MISFETのソース/ドレイン領域を形成する際のイオン注入に用いられるフォトレジスト膜のパターンの一例を示す図である。
【0104】
イオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制するための処理として、フォトレジスト膜のパターニング後、イオン注入の前に、紫外線照射を行うことがある。例えば、図1乃至図3に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法では、図2(b)に示す工程の後、図3(a)に示す工程の前に、この紫外線照射工程が行われる(図9(a)を参照)。この紫外線照射工程では、処理基板を加熱した状態で、紫外線を照射する。
【0105】
しかしながら、KrF用レジストなどの微細加工用フォトレジスト材料は、耐熱性に劣るため、イオン注入時の変質抑制のためのこの紫外線照射の際にシュリンクしてしまい(図9(b)を参照)、最悪の場合、設計通りの場所にイオン注入できないことがある。
【0106】
そこで、本実施形態では、紫外線照射の際の加熱に伴うフォトレジスト膜のシュリンクによる不具合を抑制しうる半導体装置の製造方法を示す。
【0107】
本願発明者等が検討したところ、フォトレジスト膜のシュリンク量は、紫外線照射の際の基板の加熱温度に大きく依存することが判明した。表1は、線幅が0.25μm及び0.50μmのKrF用レジストよりなるレジストパターンに紫外線照射工程を施したときの線幅変化量をまとめたものである。紫外線照射の際には、50℃、110℃、150℃又は190℃の温度で基板を加熱した。
【0108】
【表1】
表1に示すように、レジストパターンの線幅変化量は、基板の加熱温度が高くなるほどに増加する。また、線幅が太いほどにその変化量も大きくなる。例えば、線幅が0.25μmのレジストパターンの場合には、190℃で加熱した場合の線幅変化量は−49.9nmであったのに対し、50℃で加熱した場合の線幅変化量は−19.9nmであった。また、線幅が0.5μmのレジストパターンの場合には、190℃で加熱した場合の線幅変化量は−72.9nmであったのに対し、50℃で加熱した場合の線幅変化量は−38.1nmであった。
【0109】
また、本願発明者等が検討したところ、レジストパターンの線幅変化量は、レジストパターンの線幅及び加熱温度が一定であれば、ほぼ一定であることが判明した。換言すれば、紫外線照射の際の加熱温度を適宜設定することにより、レジストパターンの線幅変化量を制御することができる。
【0110】
図10はN型MISFETのソース/ドレイン領域を形成する際のイオン注入に用いられるフォトレジスト膜のパターンの一例を示す平面図及びその平面図に対応する回路図である。図10(a)が平面図であり、図10(b)が回路図である。
【0111】
図10(a)に示すように、フォトレジスト膜32が矩形状の点線で示す2つの開口部32bを有しており、これら開口部32bが間隔dで隣接している場合を考える。また、この2つの開口部32bの間には、活性領域12aが設けられているものとする。この場合、N型MISFETのソース/ドレイン領域を形成する際のイオン注入は、フォトレジスト膜32によりマスクされ、活性領域12a内には行われないようにする必要がある。この目的のもと、フォトレジスト膜32の開口部32bと活性領域12aとの間には、所定の被り量を設ける必要がある。
【0112】
フォトレジスト膜32のシュリンクを考慮した場合、フォトレジスト膜32のシュリンク量は、
シュリンク量≦(被り量)−(位置ずれ/線幅ばらつきマージン)
の関係を満たす必要がある。
【0113】
例えば、被り量が100nm、位置ずれ/線幅ばらつきマージンが50nmであると仮定すると、シュリンク許容量は、
シュリンク量≦100−50=50nm
となる。したがって、この場合には、紫外線照射によるレジストパターンの線幅変化量が50nm以下となるように、紫外線照射の際の加熱温度を設定すればよい。パターニング直後のレジストパターンの線幅が250nmの場合、表1に示すように、紫外線照射の際の加熱温度が190℃のときのレジストパターンの線幅変化量が−49.9nmである。したがって、紫外線照射の際の加熱温度を約190℃以下に設定することにより、上述の関係を満たすシュリンク量を実現することができる。
【0114】
また、例えば、被り量が90nm、位置ずれ/線幅ばらつきマージンが50nmであると仮定すると、シュリンク許容量は、
シュリンク量≦100−50=40nm
となる。したがって、この場合には、紫外線照射によるレジストパターンの線幅変化量が40nm以下となるように、紫外線照射の際の加熱温度を設定すればよい。パターニング直後のレジストパターンの線幅が500nmの場合、表1に示すように、紫外線照射の際の加熱温度が50℃のときのレジストパターンの線幅変化量が−38.1nmである。したがって、紫外線照射の際の加熱温度を約50℃以下に設定することにより、上述の関係を満たすシュリンク量を実現することができる。
【0115】
上述のように、紫外線照射時の加熱温度を下げれば、レジストパターンのシュリンク量を小さくすることができる。ただし、加熱温度を0℃以下に下げるとフォトレジスト膜中の水分が凍ってフォトレジスト材料が変質してしまう。また、加熱温度が190℃を超えるとシュリンク量が大きくなって素子の設計が困難となる。したがって、紫外線照射時の加熱温度は、0℃から190℃の範囲で所望のシュリンク量を実現できる温度に設定することが望ましい。
【0116】
また、紫外線照射工程における温度の制御性を向上する観点から、紫外線照射に用いる光源には、赤外線や可視光を抑えたものを適用することが望ましい。
【0117】
このようにしてフォトレジスト膜のパターニング後に紫外線照射を行うことにより、その後のイオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制できるとともに、レジストパターンのシュリンクによる不具合を防止することができる。また、その後のアッシングの際におけるフォトレジスト膜のポッピングを抑制することができる。
【0118】
イオン注入後のフォトレジスト膜の除去には、例えば第1乃至第3実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を適用することができる。これにより、本実施形態の効果と相俟って、フォトレジスト膜のポッピングを更に抑制することができる。
【0119】
このように、本実施形態によれば、フォトレジスト膜のパターニング後、イオン注入前に、紫外線照射によりフォトレジスト膜を改質する工程を有する半導体装置の製造方法において、紫外線照射の際の加熱によるレジストパターンのシュリンク量を考慮して処理基板の加熱温度を制御するので、その後のイオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制できるとともに、レジストパターンのシュリンクによる不具合を防止することができる。また、その後のアッシングの際におけるフォトレジスト膜のポッピングを抑制することができる。
【0120】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による半導体装置の製造方法について図11を用いて説明する。なお、図1乃至図10に示す第1乃至第4実施形態による半導体装置の製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0121】
図11は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0122】
第4実施形態で示したように、紫外線照射工程で生じるレジストパターンの線幅変化量は、レジストパターンの線幅及び加熱温度が一定であれば、ほぼ一定である。上記第4実施形態では、フォトレジスト膜のパターニング後に行う紫外線照射の際の加熱温度によってレジストパターンのシュリンク量を制御したが、レジストパターンの設計段階においてシュリンク量を考慮することも考えられる。
【0123】
すなわち、紫外線照射の際の加熱温度を予め設定しておき、形成しようとするレジストパターンの線幅に応じて、その線幅に対応するシュリンク量を上乗せして、パターン設計を行う。
【0124】
すなわち、フォトレジスト膜32の形成過程では、紫外線照射工程におけるレジストパターンのシュリンクを加味して、レジストパターンの線幅を太めに形成する(図11(a)参照)。
【0125】
次いで、紫外線照射工程を行い、その際のレジストパターンのシュリンクによって、レジストパターンの線幅が所望の値になるようにする(図11(b)参照)。
【0126】
例えば、紫外線照射の際の加熱温度を150℃で行う場合において、紫外線照射後のレジストパターンの線幅が250nm狙いのときには、150℃におけるシュリンク量、26.3nm(表1を参照)を考慮して、パターニング直後のレジストパターンの線幅が276.3nmとなるように、マスクパターンや露光条件の設定を行う。
【0127】
また、例えば、紫外線照射の際の加熱温度を150℃で行う場合において、紫外線照射後のレジストパターンの線幅が500nm狙いのときには、150℃におけるシュリンク量、62.1nm(表1を参照)を考慮して、パターニング直後のレジストパターンの線幅が562.1nmとなるように、マスクパターンや露光条件の設定を行う。
【0128】
このようなマスクパターンを設計するために、フォトレジスト材料、紫外線照射工程における加熱温度、線幅変化量の関係を表すテーブルを、データベース化して予め用意しておくことが望ましい。
【0129】
このようにしてフォトレジスト膜のパターニング後に紫外線照射を行うことにより、その後のイオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制できるとともに、レジストパターンのシュリンクによる不具合を防止することができる。また、その後のアッシングの際におけるフォトレジスト膜のポッピングを抑制することができる。
【0130】
イオン注入後のフォトレジスト膜の除去には、例えば第1乃至第3実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を適用することができる。これにより、本実施形態の効果と相俟って、フォトレジスト膜のポッピングを更に抑制することができる。
【0131】
このように、本実施形態によれば、フォトレジスト膜のパターニング後、イオン注入前に、紫外線照射によりフォトレジスト膜を改質する工程を有する半導体装置の製造方法において、紫外線照射の際の加熱によるレジストパターンのシュリンク量を考慮して、レジストパターンの線幅を設計するので、その後のイオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制できるとともに、レジストパターンのシュリンクによる不具合を防止することができる。また、その後のアッシングの際におけるフォトレジスト膜のポッピングを抑制することができる。
【0132】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0133】
例えば、上記実施形態では、主としてKrF用のフォトレジストを例にして説明したが、本発明を適用可能なレジスト材料は、これに限定されるものではない。例えば、ArF用のフォトレジストや電子ビーム露光用レジストなど、酸素ガスによりアッシングを行う種々のレジスト材料に適用可能である。
【0134】
また、上記実施形態では、不活性ガスをプラズマ化しないため基板ダメージを低減できること、処理チャンバ内の圧力を高めつつプラズマの生成効率を高めることができること等の観点から、図4に示すようなダウンフロー型のアッシング装置を適用したが、必ずしもダウンフロー型のアッシング装置でなくてもよい。
【0135】
また、上記第3実施形態では、第1実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法においてプラズマ処理室60b内の圧力が段階的に変化する場合を示したが、図7に示す第2実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法における時間T3〜時間T4のステップで処理チャンバ60内の圧力を段階的に変化するようにしてもよい。また、処理チャンバ60内の圧力を段階的に上げた後、第1及び第2実施形態の場合と同様に、温度及び圧力が安定するまで放置するようにしてもよい。
【0136】
また、上記第4及び第5実施形態では、イオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制するための処理として、フォトレジスト膜のパターニング後、イオン注入の前に、紫外線照射を行う方法を示したが、紫外線照射の代わりに電子線を照射してもよい。電子線の照射条件は、例えば加速エネルギーを500eV、照射量を0.6mC/cm2とすることができる。
【0137】
また、異なる加速エネルギーで複数回の電子線照射を行ってもよい。これにより、深さ方向の改質の制御を行うことができる。例えば、加速エネルギー500eV、照射量0.6mC/cm2の条件の電子線照射に加えて、加速エネルギー1000eV、照射量0.7mC/cm2の条件の電子線照射を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図2】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図3】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図4】本発明の第1実施形態によるアッシング装置の構造を示す概略図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。
【図6】プラズマ処理室内の酸素分圧を変化したときの処理基板の酸化量と酸素分圧との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の第3実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の第4実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図10】N型MISFETのソース/ドレイン領域を形成する際のイオン注入に用いられるフォトレジスト膜のパターンの一例を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0139】
10…シリコン基板
12…素子分離膜
12a…活性領域
14…犠牲酸化膜
16…Pウェル
18…Nウェル
20…ゲート絶縁膜
22…ポリシリコン膜
24…ゲート電極
26,28,34,36…不純物拡散領域
30…側壁絶縁膜
32…フォトレジスト膜
32a…変質層
32b…開口部
38,40…ソース/ドレイン領域
50…ロードロックチャンバ
52…処理基板搬送口
54,62…ガス導入配管
56,66…圧力制御装置
58,68…ヒータ
70…真空搬送路
72,74…バルブ
60…処理チャンバ
60a…プラズマ発生室
60b…プラズマ処理室
64…プラズマ発生装置
76…紫外線光源
80…処理基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係り、特に、半導体基板上に形成されたレジスト膜をアッシングにより除去する工程を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスでは、微細加工やイオン注入のマスクとして、有機高分子材料よりなるフォトレジスト膜が多用されている。微細加工の際のエッチングマスクやイオン注入の際のイオン注入マスクとして用いられたフォトレジスト膜は、その後に半導体基板上から除去する必要がある。フォトレジスト膜を除去する工程としては、ウェットプロセスとドライプロセスとがあるが、最近ではドライプロセスが多用されるようになっている。
【0003】
フォトレジスト膜を除去するためのドライプロセスには、通常、アッシングと呼ばれる方法が用いられている。アッシングとは、フォトレジスト膜を気相中でオゾンや酸素プラズマに曝すことにより酸化(灰化)して除去する方法である。アッシングによりフォトレジスト膜を除去する方法については、例えば特許文献1〜4等に記載されている。
【0004】
一方、半導体装置の微細化に伴い、フォトレジスト材料には、KrFなどの短波長光に対応した有機高分子材料が採用されている。しかしながら、KrFレジストなどの微細加工用のフォトレジスト材料は、耐熱性が低く、イオン注入、特にMISFETのソース/ドレイン領域等を形成するための高注入量のイオン注入などの際に、熱や注入ダメージによって表面が変質することが知られている。
【0005】
フォトレジスト膜の表面に変質層が形成された状態でアッシング処理を減圧下で行うと、変質していないフォトレジスト膜内部の溶剤がガス化しようとして内部圧力が高くなる。この内部圧力に変質層が耐えきれなくなると、変質層の剥がれ(ポッピング)が生じ、剥がれた変質層はダストの原因となる。
【0006】
ポッピングを防止する方法として、例えば特許文献1には、フォトレジスト膜中の溶剤が気化しない所定の圧力に加圧した状態でアッシングを行う方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、フォトレジスト膜がポッピングを起こしにくい温度でアッシングを行うことが開示されている。
【特許文献1】特開昭63−265428号公報
【特許文献2】特開平05−160021号公報
【特許文献3】特開2005−064062号公報
【特許文献4】特開2006−513586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のように、アッシングの際の酸素プラズマ処理時にチャンバ内圧力を上げることにより、フォトレジスト膜内部の溶剤のガス化圧力と外部の圧力とを平衡させることができる。これにより、フォトレジスト膜のポッピングを抑制することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、チャンバ内圧力を上げることによって酸素分圧も上がるため、半導体基板の酸化が促進されることになる。例えばMISFETのソース/ドレイン領域の形成工程への適用を考慮した場合、酸素分圧の増加によってソース/ドレイン領域のシリコン基板やゲート電極を構成するポリシリコンの酸化量が増加することになる。近年のMISFETではソース/ドレイン領域が極めて浅いため、酸化膜に取り込まれる不純物の量が無視できなくなり、ソース/ドレイン抵抗やコンタクト抵抗の増大等を引き起こすことになる。
【0010】
酸化を抑える手法としては、例えば特許文献4に記載されているように、水素を用いてアッシングすることも考えられる。しかしながら、近年のMISFETの製造プロセスでは、ソース/ドレイン領域のイオン注入を、シリコン基板表面がシリコン酸化膜によって覆われていない状態で行うことがある。この場合、水素によってシリコン基板がエッチングされてしまい、基板の掘れという新たな問題が生じてしまう。
【0011】
本発明の目的は、フォトレジスト膜をアッシングにより除去する際に、変質層のポッピングを抑制しうるとともに、半導体基板の酸化や掘れを防止しうる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、表面に変質層が形成されたレジスト膜を有する半導体基板を、処理チャンバ内に搬入するステップと、前記処理チャンバ内に搬入した前記半導体基板を加熱するとともに、前記処理チャンバ内に不活性ガスを導入して前記処理チャンバ内の圧力を上げるステップと、次いで、前記処理チャンバ内に酸素ガスを導入し、前記酸素ガスのプラズマによって前記レジスト膜をアッシングするステップとを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レジスト膜のアッシングの際に、処理チャンバ内に不活性ガスを導入することにより、酸素分圧を高くすることなく処理チャンバ内の圧力を高めるので、アッシングの際に半導体基板を加熱した場合でも、レジスト膜の内部から変質層に加わる圧力を、処理チャンバ内の圧力によって抑えることができ、レジスト膜の変質層のポッピングを効果的に防止することができる。
【0014】
また、処理チャンバ内の酸素分圧を高くする必要がないので、半導体基板が酸化されるのを抑制することができる。また、アッシングには水素を用いる必要がないので、シリコンが露出した処理基板をアッシング処理する場合にも、基板がダメージを受けることはない。また、不活性ガスをプラズマ化せずに、酸素ラジカルだけを用いてアッシング処理を行うことにより、処理基板に与えるダメージを抑制することができる。
【0015】
したがって、KrF用レジストのように微細化に向くが耐熱性の弱いレジスト材料を用いるような場合でも、レジスト膜の変質層のポッピングを効果的に防止しつつアッシングによる除去が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法について図1乃至図6を用いて説明する。
【0017】
図1乃至図3は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図、図4は本実施形態によるアッシング装置の構造を示す概略図、図5は本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャート、図6は処理チャンバ内の酸素分圧を変化したときの処理基板の酸化量と酸素分圧との関係を示すグラフである。
【0018】
はじめに、本発明の適用が考えられる半導体装置の製造プロセスの一例について図1乃至図3を用いて説明する。
【0019】
まず、シリコン基板10の表面に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法により、活性領域を画定する素子分離膜12を形成する。なお、図において、中央の素子分離膜12と右側の素子分離膜12との間の活性領域はN型MISFET形成領域であり、他の活性領域はP型MISFET形成領域であるものとする。
【0020】
次いで、素子分離膜12により画定されたシリコン基板10の活性領域上に、例えば熱酸化法により、シリコン酸化膜よりなる犠牲酸化膜14を形成する。犠牲酸化膜14は、ウェル注入を行う際にシリコン基板10の表面が汚染されるのを防止するための膜である。
【0021】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、N型MISFET形成領域のシリコン基板10内にPウェル16を、P型MISFET形成領域のシリコン基板10内にNウェル18を、それぞれ形成する(図1(a))。
【0022】
次いで、例えば弗酸水溶液を用いたウェットエッチングにより、犠牲酸化膜14を除去する。
【0023】
次いで、犠牲酸化膜14を除去することにより露出したシリコン基板10の活性領域上に、例えば熱酸化法により、シリコン酸化膜よりなるゲート絶縁膜20を形成する。
【0024】
次いで、全面に、例えばCVD法により、多結晶シリコン膜22を堆積する(図1(b))。
【0025】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、多結晶シリコン膜22をパターニングし、ゲート絶縁膜20上に、多結晶シリコン膜22よりなるゲート電極24を形成する。
【0026】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、N型MISFET形成領域に形成されたゲート電極24をマスクとして砒素や燐等のドナー不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極24の両側のシリコン基板10内に、LDD領域或いはエクステンション領域としての不純物拡散領域26を形成する。同様に、P型MISFET形成領域に形成されたゲート電極24をマスクとして硼素等のアクセプタ不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極24の両側のシリコン基板10内に、LDD領域或いはエクステンション領域としての不純物拡散領域28を形成する(図1(c))。
【0027】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えばシリコン酸化膜を堆積した後、このシリコン酸化膜をエッチバックし、ゲート電極24の側壁部分に、シリコン酸化膜よりなる側壁絶縁膜30を形成する(図2(a))。
【0028】
次いで、フォトリソグラフィにより、N型MISFET形成領域を露出し、P型MISFET形成領域を覆うフォトレジスト膜32を形成する(図2(b))。
【0029】
次いで、フォトレジスト膜32、ゲート電極24及び側壁絶縁膜30をマスクとして砒素や燐等のドナー不純物イオンをイオン注入し、N型MISFET形成領域に形成されたゲート電極24の両側のシリコン基板10内に、ソース/ドレイン領域の高濃度領域となる不純物拡散領域34を形成する。不純物拡散領域34は、例えば、燐イオンを、加速エネルギー10keV、注入量5×1015cm−2の条件でイオン注入を行うことにより、形成する。
【0030】
このとき、不純物拡散領域34を形成する際のイオン注入条件(例えば、1×1015cm−2程度以上の高注入量の場合)によっては、イオン注入に伴う発熱や注入ダメージによって、フォトレジスト膜32の表面領域に変質層32aが形成される(図3(a))。なお、変質層32aとは、イオン注入に伴う発熱や注入ダメージによって硬化した部分であり、アッシング処理上の観点からは、変質していない他の領域よりもアッシングレートが遅いという特徴を有している。
【0031】
次いで、フォトレジスト膜32を、アッシングにより除去する。
【0032】
次いで、例えば130℃に加熱した硫酸・過酸化水素水によるウェット処理を行い、シリコン基板10を洗浄する。
【0033】
次いで、N型MISFETの不純物拡散領域34の形成と同様にして、P型MISFET形成領域に形成されたゲート電極22の両側のシリコン基板10内に、ソース/ドレイン領域の高濃度領域となる不純物拡散領域36を形成する。この場合にも、不純物拡散領域36を形成する際のイオン注入条件によっては、フォトレジスト膜の表面領域に変質層が形成される。
【0034】
次いで、例えば窒素雰囲気中で熱処理を行い、注入した不純物イオンを活性化し、不純物拡散領域26,34よりなるN型MISFETのソース/ドレイン領域38と、不純物拡散領域28,36よりなるP型MISFETのソース/ドレイン領域40とを形成する(図3(b))。
【0035】
こうして、シリコン基板10上に、ゲート電極22及びソース/ドレイン領域38を有するN型MISFETと、ゲート電極22及びソース/ドレイン領域40を有するP型MISFETとを完成する。
【0036】
この後、必要に応じてサリサイドプロセスや他の素子の形成等を行った後、バックエンドプロセス等を経て、半導体装置が完成する。
【0037】
次に、本発明の主たる特徴であるフォトレジスト膜のアッシング方法について説明する。本発明のアッシング方法は、表面領域にイオン注入による変質層が形成されたフォトレジスト膜の除去に好適である。例えば上述のMISFETの形成プロセスでは、フォトレジスト膜32の除去工程に適用することができる。本工程のみならず、不純物拡散領域26,28,36を形成する際のイオン注入工程、その他のイオン注入工程において、フォトレジスト膜に変質層が形成されるような場合には、本発明のアッシング方法が有効である。
【0038】
次に、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法について図4及び図5を用いて説明する。
【0039】
図4は本実施形態によるアッシング装置の構造を示す概略図である。図4に示すアッシング装置は、予備排気や処理基板の予備加熱等を行うためのロードロックチャンバ50と、アッシング処理を行う処理チャンバ60とを有している。ロードロックチャンバ50と処理チャンバ60とは、真空搬送路70によって接続されており、ロードロックチャンバ50と処理チャンバ60との間で処理基板80を受け渡しできるようになっている。ロードロックチャンバ50と真空搬送路70との間、真空搬送路70と処理チャンバ60との間には、それぞれバルブ72,74が設けられている。
【0040】
ロードロックチャンバ50には、ロードロックチャンバ50に処理基板80を出し入れするための処理基板搬送口52と、ロードロックチャンバ50内に所定のガスを導入するガス導入配管54と、ロードロックチャンバ50内の排気や圧力制御を行うための圧力制御装置56とが設けられている。ロードロックチャンバ50内には、ロードロックチャンバ50に搬送した処理基板80を予備加熱するためのヒータ58と、処理基板80に紫外線(UV)を照射する紫外線光源76が設けられている。
【0041】
処理チャンバ60は、プラズマを発生するプラズマ発生室60aと、プラズマ発生室60aで生成したプラズマを用いてアッシング処理を行うプラズマ処理室60bとを有している。
【0042】
プラズマ発生室60aには、アッシング用のガスを導入するガス導入配管62と、ガス導入配管62から導入されたガスをプラズマ化するためのプラズマ発生装置64が設けられている。プラズマ発生装置64は、マイクロ波励起型のプラズマ発生装置や、平衡平板型のRFプラズマ発生装置である。
【0043】
プラズマ処理室60bには、プラズマ処理室60b内の排気や圧力制御を行うための圧力制御装置66が設けられている。プラズマ処理室60b内には、処理チャンバ60に搬送した処理基板80を加熱するためのヒータ68が設けられている。
【0044】
図5は本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。縦軸はチャンバ内圧力であり、横軸は時間である。
【0045】
まず、処理基板搬送口52から、処理基板80をロードロックチャンバ50内に搬入する(図5中、時間T0)。処理基板80は、例えば図3(a)に示すように、表面に変質層32aが形成されたフォトレジスト膜32を有するシリコン基板10である。
【0046】
次いで、圧力制御装置56により、ロードロックチャンバ50内を真空引きする。この際、必要に応じて、ヒータ58によって処理基板80を予備加熱してもよい。
【0047】
次いで、ロードロックチャンバ50内が所定の圧力になった後(図5中、時間T1)、バルブ72を開き、真空に引いた真空搬送路70内へ処理基板80を搬送する。
【0048】
次いで、バルブ72を閉じ、バルブ74を開き、真空に引いた処理チャンバ60内へ処理基板80を搬送する(図5中、時間T1〜時間T2)。
【0049】
次いで、プラズマ処理室60b内に、窒素ガスやアルゴン等の不活性ガス、例えば窒素ガスを、例えば5000sccmの流量で供給し、プラズマ処理室60b内の圧力を760Torr程度まで上げる(図5中、時間T2)。また、不活性ガスの導入と同時に、ヒータ68によって、処理基板80を150〜300℃程度の温度まで加温する。
【0050】
処理基板80の温度が上がると、フォトレジスト膜32の内部の変質していない領域中の溶剤がガス化しようとして、フォトレジスト膜32内部のガス圧が上がる。しかしながら、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、処理基板80の加温と同時にプラズマ処理室60b内に不活性ガスを導入し、プラズマ処理室60b内の圧力を100〜760Torr程度の高い圧力に設定している。このため、フォトレジスト膜32の内部から変質層32aに加わる圧力を、プラズマ処理室60b内の圧力によって抑えることができる。これにより、フォトレジスト膜32内部から変質層32aに加わる圧力が、フォトレジスト膜32の変質層32aが破れるほどに大きくなることを防止することができ、フォトレジスト膜32のポッピングを防止することができる。
【0051】
なお、プラズマ処理室60b内の圧力は、フォトレジスト膜32のポッピングの防止の観点からは10気圧程度まで上げてもよいが、その場合には安全のために高圧対応の処理装置を用いる必要がある。通常の減圧処理装置を用いる場合には、プラズマ処理室60b内の圧力は、100〜760Torr程度に制御することが望ましい。
【0052】
次いで、プラズマ処理室60b内の圧力が所定の圧力に、処理基板80の温度が所定の温度に落ち着くまで、例えば数十秒〜数分程度、プラズマ処理室60b内の圧力を上げた状態且つ処理基板80を加温した状態で放置する(図5中、時間T2〜時間T3)。
【0053】
次いで、プラズマ処理室60b内の圧力及び処理基板80の温度が落ち着いた後、ガス導入配管62からプラズマ発生室60a内に、酸素ガスを、例えば200〜1000sccmの流量で供給する(図5中、時間T3)。
【0054】
次いで、処理チャンバ60内の酸素分圧が安定した後、プラズマ発生装置64によって、プラズマ発生室60a内に導入した酸素ガスをプラズマ化する(図5中、時間T4)。そして、ダウンフローによって、プラズマ中の酸素ラジカル(O*)を、プラズマ処理室60b内に導入する。
【0055】
ダウンフロー型のアッシング装置を適用することにより、プラズマの生成効率を低下することなく処理チャンバ60内の圧力を高めることができる。また、不活性ガスをプラズマ化しないことで、処理基板80へのダメージを抑えることができる。
【0056】
本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、不活性ガスを導入することにより、処理チャンバ60内の酸素分圧を高くすることなくプラズマ処理室60b内の圧力を高めている。これにより、処理基板80が酸化されるのを抑制することができる。
【0057】
次いで、プラズマ処理室60b内の酸素ラジカルによって、処理基板80上に形成されたフォトレジスト膜を灰化し、除去する(図5中、時間T4〜時間T5)。
【0058】
次いで、プラズマ発生装置64を停止してプラズマをオフにした後(図5中、時間T5)、ガス導入配管62からの酸素ガスの供給を停止する(図5中、時間T6)。
【0059】
次いで、圧力制御装置66により処理チャンバ60内を真空引きするとともに、ヒータ68をオフにして処理基板80を降温する(図5中、時間時間T6〜時間T7)。
【0060】
次いで、処理チャンバ60内の圧力が所定の圧力になった後(図5中、時間T7)、バルブ74を開き、真空に引いた真空搬送路70内へ処理基板80を搬送する。
【0061】
次いで、バルブ74を閉じ、バルブ72を開き、真空に引いたロードロックチャンバ50内へ処理基板80を搬送する。
【0062】
次いで、ガス導入配管52から処理チャンバ50内に不活性ガス、例えば窒素ガスを導入し、ロードロックチャンバ50内を大気圧に戻す。
【0063】
次いで、処理基板搬送口52を介してロードロックチャンバ50内から処理基板80を取り出し、一連のアッシング処理を完了する。
【0064】
図6は、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法において処理チャンバ60内の酸素分圧を変化したときの、処理基板の酸化量と酸素分圧との関係を示すグラフである。
【0065】
図6に示すように、酸素分圧が1200mTorrを超えると、処理基板の酸化量が増加することが判る。酸素分圧が1200mTorrのときのデータ及び酸素分圧が1440mTorrの時のデータからグラフの傾きを求めると、0.015nm/200mTorrの関係が得られる。この結果から、酸素分圧を20Torr程度に設定した場合には、約1.5nm程度の酸化量が見込まれる。
【0066】
一方、MISFETのエクステンション領域(不純物拡散領域26,28に相当)のイオン注入直後の深さは、1×1018cm−3の濃度で見て約15nm程度である。基板の酸化により消費される基板の厚さが酸化膜厚の半分程度であることを考慮すると、1.5nmの酸化膜が形成された場合、エクステンション領域の約5%が酸化によって消費されることになる。エクステンション領域の消費を1%以下に抑えるためには、酸素分圧を4Torr以下に設定する必要がある。
【0067】
このように、本実施形態によれば、フォトレジスト膜のアッシングの際に、プラズマ処理室内に不活性ガスを導入することにより、酸素分圧を高くすることなくプラズマ処理室内の圧力を高めるので、アッシングの際に処理基板を加熱した場合でも、フォトレジスト膜の内部から変質層に加わる圧力を、プラズマ処理室内の圧力によって抑えることができ、フォトレジスト膜のポッピングを効果的に防止することができる。また、処理基板が酸化されるのを抑制することができる。また、アッシングには水素を用いる必要がないので、シリコンが露出した処理基板をアッシング処理する場合にも、基板がダメージを受けることはない。また、不活性ガスをプラズマ化しないことにより、処理基板に与えるダメージを抑制することができる。したがって、KrF用レジストのように微細化に向くが耐熱性の弱いフォトレジスト材料を用いるような場合でも、フォトレジスト膜のポッピングを効果的に防止しつつアッシングによる除去が可能となる。
【0068】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法について図7を用いて説明する。
【0069】
なお、図1乃至図6に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0070】
図7は本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。
【0071】
本実施形態では、図1乃至図3に示す半導体装置の製造方法に適用可能な他のフォトレジスト膜のアッシング方法について図7を用いて説明する。縦軸はチャンバ内圧力であり、横軸は時間である。
【0072】
まず、処理基板搬送口52から、処理基板80をロードロックチャンバ50内に搬送する(図7中、時間T0)。処理基板80は、例えば図3(a)に示すように、表面に変質層32aが形成されたフォトレジスト膜32を有するシリコン基板10である。
【0073】
次いで、圧力制御装置56により、ロードロックチャンバ50内を真空引きする。この際、必要に応じて、ヒータ58によって処理基板80を予備加熱してもよい。
【0074】
次いで、ロードロックチャンバ50内が所定の圧力になった後(図7中、時間T1)、紫外線光源76を駆動し、処理基板80に紫外線を照射する(図7中、時間T1〜時間T2)。この紫外線照射により、変質していないフォトレジスト膜32の内部の領域が架橋して硬化され、後の加温の際にガス化する溶剤の量を低減することができる。
【0075】
次いで、紫外線光源76からの紫外線の照射を停止した後(図7中、時間T2)、バルブ72を開き、真空に引いた真空搬送路70内へ処理基板80を搬送する。
【0076】
次いで、バルブ72を閉じ、バルブ74を開き、真空に引いた処理チャンバ60内へ処理基板80を搬送する(図7中、時間T2〜時間T3)。
【0077】
なお、処理基板80への紫外線照射は、処理基板80の加温前(時間T3よりも前)に行えばよく、ロードロックチャンバ50内ではなく、処理チャンバ60へ搬送した後に行ってもよい。
【0078】
次いで、プラズマ処理室60b内に不活性ガス、例えば窒素ガスを、例えば5000sccmの流量で供給し、プラズマ処理室60b内の圧力を760Torr程度まで上げる(図7中、時間T3)。また、不活性ガスの導入と同時に、ヒータ68によって、処理基板80を150〜300℃程度の温度まで加温する。
【0079】
処理基板80の温度が上がると、フォトレジスト膜32の内部の変質していない領域中の溶剤がガス化しようとして、フォトレジスト膜32内部のガス圧が上がる。しかしながら、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、処理基板80の加温と同時にプラズマ処理室60b内に不活性ガスを導入し、プラズマ処理室60b内の圧力を100〜760Torr程度の高い圧力に設定している。このため、フォトレジスト膜32の内部から変質層32aに加わる圧力を、プラズマ処理室60b内の圧力によって抑えることができる。また、紫外線照射により、発生するガスの総量も減少している。これにより、フォトレジスト膜32内部から変質層32aに加わる圧力が、フォトレジスト膜32の変質層32aが破れるほどに大きくなることを防止することができ、フォトレジスト膜32のポッピングを防止することができる。
【0080】
なお、プラズマ処理室60b内の圧力は、フォトレジスト膜32のポッピングの防止の観点からは10気圧程度まで上げてもよいが、その場合には安全のために高圧対応の処理装置を用いる必要がある。通常の減圧処理装置を用いる場合には、プラズマ処理室60b内の圧力は、100〜760Torr程度に制御することが望ましい。
【0081】
次いで、プラズマ処理室60b内の圧力が所定の圧力に、処理基板80の温度が所定の温度に落ち着くまで、例えば数十秒〜数分程度、プラズマ処理室60b内の圧力を上げた状態且つ処理基板80を加温した状態で放置する(図7中、時間T3〜時間T4)。
【0082】
次いで、プラズマ処理室60b内の圧力及び処理基板80の温度が落ち着いた後、ガス導入配管62からプラズマ発生室60a内に、酸素ガスを、例えば200〜1000sccmの流量で供給する(図7中、時間T4)。
【0083】
次いで、処理チャンバ60内の酸素分圧が安定した後、プラズマ発生装置64によって、プラズマ発生室60a内に導入した酸素ガスをプラズマ化する(図5中、時間T5)。そして、ダウンフローによって、プラズマ中の酸素ラジカル(O*)を、プラズマ処理室60b内に導入する。
【0084】
本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、不活性ガスを導入することにより、プラズマ処理室60b内の酸素分圧を高くすることなくプラズマ処理室60b内の圧力を高めている。これにより、処理基板80が酸化されるのを抑制することができる。
【0085】
次いで、プラズマ処理室60b内の酸素ラジカルによって、処理基板80上に形成されたフォトレジスト膜を灰化し、除去する(図7中、時間T5〜時間T6)。
【0086】
次いで、プラズマ発生装置64を停止してプラズマをオフにした後(図7中、時間T6)、ガス導入配管62からの酸素ガスの供給を停止する(図7中、時間T7)。
【0087】
次いで、圧力制御装置66により処理チャンバ60内を真空引きするとともに、ヒータ68をオフにして処理基板80を降温する(図7中、時間時間T7〜時間T8)。
【0088】
次いで、処理チャンバ60内の圧力が所定の圧力になった後(図5中、時間T7)、バルブ74を開き、真空に引いた真空搬送路70内へ処理基板80を搬送する。
【0089】
次いで、バルブ74を閉じ、バルブ72を開き、真空に引いたロードロックチャンバ50内へ処理基板80を搬送する。
【0090】
次いで、ガス導入配管52から処理チャンバ50内に不活性ガス、例えば窒素ガスを導入し、ロードロックチャンバ50内を大気圧に戻す。
【0091】
次いで、処理基板搬送口52を介してロードロックチャンバ50内から処理基板80を取り出し、一連のアッシング処理を完了する。
【0092】
このように、本実施形態によれば、フォトレジスト膜のアッシングの際に、処理基板の加温前に、フォトレジスト膜に紫外線を照射して硬化させるので、処理基板の加熱した際にフォトレジスト膜内部から変質層に加わる圧力を低減することができる。これにより、フォトレジスト膜のポッピングを更に効果的に防止することができる。
【0093】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法について図8を用いて説明する。
【0094】
なお、図1乃至図7に示す第1及び第2実施形態による半導体装置の製造方法と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0095】
図8は本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。
【0096】
本実施形態では、図1乃至図3に示す半導体装置の製造方法に適用可能な他のフォトレジスト膜のアッシング方法について図8を用いて説明する。縦軸はチャンバ内圧力であり、横軸は時間である。
【0097】
本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法は、図8に示すように、基本的には図5に示す第1実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法と同様である。本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法の主たる特徴は、時間T2〜時間T3のステップにおける不活性ガスの導入方法にある。
【0098】
第1実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、図5に示すように、時間T2〜時間T3のステップにおいて、プラズマ処理室60b内の圧力が連続的に変化するように、プラズマ処理室60b内に不活性ガスを導入している。
【0099】
一方、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、図8に示すように、時間T2〜時間T3のステップにおいて、プラズマ処理室60b内の圧力が段階的に変化するように、プラズマ処理室60b内に不活性ガスを導入している。
【0100】
フォトレジスト膜32のポッピングは、処理基板80の温度が高くなるほどに生じやすくなる。このため、プラズマ処理室60b内の圧力は、処理基板80の温度に応じて適宜制御することが望ましい。そこで、本実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法では、処理基板80の温度を逐次測定し、測定した処理基板80の温度においてフォトレジスト膜32内部の圧力と処理チャンバ内の圧力とが平衡するように、不活性ガスのガス流量を段階的に増加していく。これにより、フォトレジスト膜32のポッピングを効果的に防止することができる。
【0101】
このように、本実施形態によれば、プラズマ処理室内に不活性ガスを導入する際に、処理基板の温度に応じて、フォトレジスト膜内部の圧力と処理チャンバ内の圧力とが平衡するように、不活性ガスのガス流量を段階的に増加するので、フォトレジスト膜のポッピングを効果的に防止することができる。
【0102】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による半導体装置の製造方法について図9及び図10を用いて説明する。
【0103】
図9は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図、図10はN型MISFETのソース/ドレイン領域を形成する際のイオン注入に用いられるフォトレジスト膜のパターンの一例を示す図である。
【0104】
イオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制するための処理として、フォトレジスト膜のパターニング後、イオン注入の前に、紫外線照射を行うことがある。例えば、図1乃至図3に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法では、図2(b)に示す工程の後、図3(a)に示す工程の前に、この紫外線照射工程が行われる(図9(a)を参照)。この紫外線照射工程では、処理基板を加熱した状態で、紫外線を照射する。
【0105】
しかしながら、KrF用レジストなどの微細加工用フォトレジスト材料は、耐熱性に劣るため、イオン注入時の変質抑制のためのこの紫外線照射の際にシュリンクしてしまい(図9(b)を参照)、最悪の場合、設計通りの場所にイオン注入できないことがある。
【0106】
そこで、本実施形態では、紫外線照射の際の加熱に伴うフォトレジスト膜のシュリンクによる不具合を抑制しうる半導体装置の製造方法を示す。
【0107】
本願発明者等が検討したところ、フォトレジスト膜のシュリンク量は、紫外線照射の際の基板の加熱温度に大きく依存することが判明した。表1は、線幅が0.25μm及び0.50μmのKrF用レジストよりなるレジストパターンに紫外線照射工程を施したときの線幅変化量をまとめたものである。紫外線照射の際には、50℃、110℃、150℃又は190℃の温度で基板を加熱した。
【0108】
【表1】
表1に示すように、レジストパターンの線幅変化量は、基板の加熱温度が高くなるほどに増加する。また、線幅が太いほどにその変化量も大きくなる。例えば、線幅が0.25μmのレジストパターンの場合には、190℃で加熱した場合の線幅変化量は−49.9nmであったのに対し、50℃で加熱した場合の線幅変化量は−19.9nmであった。また、線幅が0.5μmのレジストパターンの場合には、190℃で加熱した場合の線幅変化量は−72.9nmであったのに対し、50℃で加熱した場合の線幅変化量は−38.1nmであった。
【0109】
また、本願発明者等が検討したところ、レジストパターンの線幅変化量は、レジストパターンの線幅及び加熱温度が一定であれば、ほぼ一定であることが判明した。換言すれば、紫外線照射の際の加熱温度を適宜設定することにより、レジストパターンの線幅変化量を制御することができる。
【0110】
図10はN型MISFETのソース/ドレイン領域を形成する際のイオン注入に用いられるフォトレジスト膜のパターンの一例を示す平面図及びその平面図に対応する回路図である。図10(a)が平面図であり、図10(b)が回路図である。
【0111】
図10(a)に示すように、フォトレジスト膜32が矩形状の点線で示す2つの開口部32bを有しており、これら開口部32bが間隔dで隣接している場合を考える。また、この2つの開口部32bの間には、活性領域12aが設けられているものとする。この場合、N型MISFETのソース/ドレイン領域を形成する際のイオン注入は、フォトレジスト膜32によりマスクされ、活性領域12a内には行われないようにする必要がある。この目的のもと、フォトレジスト膜32の開口部32bと活性領域12aとの間には、所定の被り量を設ける必要がある。
【0112】
フォトレジスト膜32のシュリンクを考慮した場合、フォトレジスト膜32のシュリンク量は、
シュリンク量≦(被り量)−(位置ずれ/線幅ばらつきマージン)
の関係を満たす必要がある。
【0113】
例えば、被り量が100nm、位置ずれ/線幅ばらつきマージンが50nmであると仮定すると、シュリンク許容量は、
シュリンク量≦100−50=50nm
となる。したがって、この場合には、紫外線照射によるレジストパターンの線幅変化量が50nm以下となるように、紫外線照射の際の加熱温度を設定すればよい。パターニング直後のレジストパターンの線幅が250nmの場合、表1に示すように、紫外線照射の際の加熱温度が190℃のときのレジストパターンの線幅変化量が−49.9nmである。したがって、紫外線照射の際の加熱温度を約190℃以下に設定することにより、上述の関係を満たすシュリンク量を実現することができる。
【0114】
また、例えば、被り量が90nm、位置ずれ/線幅ばらつきマージンが50nmであると仮定すると、シュリンク許容量は、
シュリンク量≦100−50=40nm
となる。したがって、この場合には、紫外線照射によるレジストパターンの線幅変化量が40nm以下となるように、紫外線照射の際の加熱温度を設定すればよい。パターニング直後のレジストパターンの線幅が500nmの場合、表1に示すように、紫外線照射の際の加熱温度が50℃のときのレジストパターンの線幅変化量が−38.1nmである。したがって、紫外線照射の際の加熱温度を約50℃以下に設定することにより、上述の関係を満たすシュリンク量を実現することができる。
【0115】
上述のように、紫外線照射時の加熱温度を下げれば、レジストパターンのシュリンク量を小さくすることができる。ただし、加熱温度を0℃以下に下げるとフォトレジスト膜中の水分が凍ってフォトレジスト材料が変質してしまう。また、加熱温度が190℃を超えるとシュリンク量が大きくなって素子の設計が困難となる。したがって、紫外線照射時の加熱温度は、0℃から190℃の範囲で所望のシュリンク量を実現できる温度に設定することが望ましい。
【0116】
また、紫外線照射工程における温度の制御性を向上する観点から、紫外線照射に用いる光源には、赤外線や可視光を抑えたものを適用することが望ましい。
【0117】
このようにしてフォトレジスト膜のパターニング後に紫外線照射を行うことにより、その後のイオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制できるとともに、レジストパターンのシュリンクによる不具合を防止することができる。また、その後のアッシングの際におけるフォトレジスト膜のポッピングを抑制することができる。
【0118】
イオン注入後のフォトレジスト膜の除去には、例えば第1乃至第3実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を適用することができる。これにより、本実施形態の効果と相俟って、フォトレジスト膜のポッピングを更に抑制することができる。
【0119】
このように、本実施形態によれば、フォトレジスト膜のパターニング後、イオン注入前に、紫外線照射によりフォトレジスト膜を改質する工程を有する半導体装置の製造方法において、紫外線照射の際の加熱によるレジストパターンのシュリンク量を考慮して処理基板の加熱温度を制御するので、その後のイオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制できるとともに、レジストパターンのシュリンクによる不具合を防止することができる。また、その後のアッシングの際におけるフォトレジスト膜のポッピングを抑制することができる。
【0120】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による半導体装置の製造方法について図11を用いて説明する。なお、図1乃至図10に示す第1乃至第4実施形態による半導体装置の製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0121】
図11は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0122】
第4実施形態で示したように、紫外線照射工程で生じるレジストパターンの線幅変化量は、レジストパターンの線幅及び加熱温度が一定であれば、ほぼ一定である。上記第4実施形態では、フォトレジスト膜のパターニング後に行う紫外線照射の際の加熱温度によってレジストパターンのシュリンク量を制御したが、レジストパターンの設計段階においてシュリンク量を考慮することも考えられる。
【0123】
すなわち、紫外線照射の際の加熱温度を予め設定しておき、形成しようとするレジストパターンの線幅に応じて、その線幅に対応するシュリンク量を上乗せして、パターン設計を行う。
【0124】
すなわち、フォトレジスト膜32の形成過程では、紫外線照射工程におけるレジストパターンのシュリンクを加味して、レジストパターンの線幅を太めに形成する(図11(a)参照)。
【0125】
次いで、紫外線照射工程を行い、その際のレジストパターンのシュリンクによって、レジストパターンの線幅が所望の値になるようにする(図11(b)参照)。
【0126】
例えば、紫外線照射の際の加熱温度を150℃で行う場合において、紫外線照射後のレジストパターンの線幅が250nm狙いのときには、150℃におけるシュリンク量、26.3nm(表1を参照)を考慮して、パターニング直後のレジストパターンの線幅が276.3nmとなるように、マスクパターンや露光条件の設定を行う。
【0127】
また、例えば、紫外線照射の際の加熱温度を150℃で行う場合において、紫外線照射後のレジストパターンの線幅が500nm狙いのときには、150℃におけるシュリンク量、62.1nm(表1を参照)を考慮して、パターニング直後のレジストパターンの線幅が562.1nmとなるように、マスクパターンや露光条件の設定を行う。
【0128】
このようなマスクパターンを設計するために、フォトレジスト材料、紫外線照射工程における加熱温度、線幅変化量の関係を表すテーブルを、データベース化して予め用意しておくことが望ましい。
【0129】
このようにしてフォトレジスト膜のパターニング後に紫外線照射を行うことにより、その後のイオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制できるとともに、レジストパターンのシュリンクによる不具合を防止することができる。また、その後のアッシングの際におけるフォトレジスト膜のポッピングを抑制することができる。
【0130】
イオン注入後のフォトレジスト膜の除去には、例えば第1乃至第3実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を適用することができる。これにより、本実施形態の効果と相俟って、フォトレジスト膜のポッピングを更に抑制することができる。
【0131】
このように、本実施形態によれば、フォトレジスト膜のパターニング後、イオン注入前に、紫外線照射によりフォトレジスト膜を改質する工程を有する半導体装置の製造方法において、紫外線照射の際の加熱によるレジストパターンのシュリンク量を考慮して、レジストパターンの線幅を設計するので、その後のイオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制できるとともに、レジストパターンのシュリンクによる不具合を防止することができる。また、その後のアッシングの際におけるフォトレジスト膜のポッピングを抑制することができる。
【0132】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0133】
例えば、上記実施形態では、主としてKrF用のフォトレジストを例にして説明したが、本発明を適用可能なレジスト材料は、これに限定されるものではない。例えば、ArF用のフォトレジストや電子ビーム露光用レジストなど、酸素ガスによりアッシングを行う種々のレジスト材料に適用可能である。
【0134】
また、上記実施形態では、不活性ガスをプラズマ化しないため基板ダメージを低減できること、処理チャンバ内の圧力を高めつつプラズマの生成効率を高めることができること等の観点から、図4に示すようなダウンフロー型のアッシング装置を適用したが、必ずしもダウンフロー型のアッシング装置でなくてもよい。
【0135】
また、上記第3実施形態では、第1実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法においてプラズマ処理室60b内の圧力が段階的に変化する場合を示したが、図7に示す第2実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法における時間T3〜時間T4のステップで処理チャンバ60内の圧力を段階的に変化するようにしてもよい。また、処理チャンバ60内の圧力を段階的に上げた後、第1及び第2実施形態の場合と同様に、温度及び圧力が安定するまで放置するようにしてもよい。
【0136】
また、上記第4及び第5実施形態では、イオン注入によるフォトレジスト膜の変質を抑制するための処理として、フォトレジスト膜のパターニング後、イオン注入の前に、紫外線照射を行う方法を示したが、紫外線照射の代わりに電子線を照射してもよい。電子線の照射条件は、例えば加速エネルギーを500eV、照射量を0.6mC/cm2とすることができる。
【0137】
また、異なる加速エネルギーで複数回の電子線照射を行ってもよい。これにより、深さ方向の改質の制御を行うことができる。例えば、加速エネルギー500eV、照射量0.6mC/cm2の条件の電子線照射に加えて、加速エネルギー1000eV、照射量0.7mC/cm2の条件の電子線照射を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図2】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図3】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図4】本発明の第1実施形態によるアッシング装置の構造を示す概略図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。
【図6】プラズマ処理室内の酸素分圧を変化したときの処理基板の酸化量と酸素分圧との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の第3実施形態によるフォトレジスト膜のアッシング方法を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の第4実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図10】N型MISFETのソース/ドレイン領域を形成する際のイオン注入に用いられるフォトレジスト膜のパターンの一例を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0139】
10…シリコン基板
12…素子分離膜
12a…活性領域
14…犠牲酸化膜
16…Pウェル
18…Nウェル
20…ゲート絶縁膜
22…ポリシリコン膜
24…ゲート電極
26,28,34,36…不純物拡散領域
30…側壁絶縁膜
32…フォトレジスト膜
32a…変質層
32b…開口部
38,40…ソース/ドレイン領域
50…ロードロックチャンバ
52…処理基板搬送口
54,62…ガス導入配管
56,66…圧力制御装置
58,68…ヒータ
70…真空搬送路
72,74…バルブ
60…処理チャンバ
60a…プラズマ発生室
60b…プラズマ処理室
64…プラズマ発生装置
76…紫外線光源
80…処理基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に変質層が形成されたレジスト膜を有する半導体基板を、処理チャンバ内に搬入するステップと、
前記処理チャンバ内に搬入した前記半導体基板を加熱するとともに、前記処理チャンバ内に不活性ガスを導入して前記処理チャンバ内の圧力を上げるステップと、
次いで、前記処理チャンバ内に酸素ガスを導入し、前記酸素ガスのプラズマによって前記レジスト膜をアッシングするステップと
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板を加熱し前記処理チャンバ内の圧力を上げるステップよりも前に、前記変質層が形成された前記レジスト膜に紫外線を照射し、前記レジスト膜の前記変質層よりも内部の領域を硬化させるステップを更に有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板を前記処理チャンバ内に搬入するステップよりも前に、前記半導体基板上に前記レジスト膜を形成するステップと、前記レジスト膜が形成された前記半導体基板にイオン注入を行うステップとを更に有し、
前記変質層は、前記半導体基板に前記イオン注入を行うステップにより形成される
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板を加熱し前記処理チャンバ内の圧力を上げるステップでは、前記半導体基板の温度に応じて段階的に前記処理チャンバ内の圧力を上げる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記レジスト膜をアッシングするステップでは、前記不活性ガスをプラズマ化せずに、前記酸素ガスの前記プラズマ中の酸素ラジカルを前記処理チャンバ内に選択的に導入することにより、前記レジスト膜をアッシングする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
表面に変質層が形成されたレジスト膜を有する半導体基板を、処理チャンバ内に搬入するステップと、
前記処理チャンバ内に搬入した前記半導体基板を加熱するとともに、前記処理チャンバ内に不活性ガスを導入して前記処理チャンバ内の圧力を上げるステップと、
次いで、前記処理チャンバ内に酸素ガスを導入し、前記酸素ガスのプラズマによって前記レジスト膜をアッシングするステップと
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板を加熱し前記処理チャンバ内の圧力を上げるステップよりも前に、前記変質層が形成された前記レジスト膜に紫外線を照射し、前記レジスト膜の前記変質層よりも内部の領域を硬化させるステップを更に有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板を前記処理チャンバ内に搬入するステップよりも前に、前記半導体基板上に前記レジスト膜を形成するステップと、前記レジスト膜が形成された前記半導体基板にイオン注入を行うステップとを更に有し、
前記変質層は、前記半導体基板に前記イオン注入を行うステップにより形成される
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板を加熱し前記処理チャンバ内の圧力を上げるステップでは、前記半導体基板の温度に応じて段階的に前記処理チャンバ内の圧力を上げる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記レジスト膜をアッシングするステップでは、前記不活性ガスをプラズマ化せずに、前記酸素ガスの前記プラズマ中の酸素ラジカルを前記処理チャンバ内に選択的に導入することにより、前記レジスト膜をアッシングする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−200317(P2009−200317A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41462(P2008−41462)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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