半導体装置及びその製造方法
【課題】製造工程を複雑化することなく、配線の信頼性低下を招かない、配線構造を有する半導体装置及びその製造方法を得る。
【解決手段】接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上にTa/TaN積層バリア層12を介して、NiFe磁性層13をPVD装置のNiFeチャンバを用いたPVD法によって成膜する。次に、同一のPVD装置の同一のNiFeチャンバを用いて、成膜条件を変更することにより、接続孔30及び配線用溝31の底面上及び層間絶縁膜11の表面上におけるNiFe磁性層13を選択的に除去する。さらに、同一のPVD装置のTaチャンバ及びCuチャンバを用いて、接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上にTaバリア層及びCuシード層を順次形成する。
【解決手段】接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上にTa/TaN積層バリア層12を介して、NiFe磁性層13をPVD装置のNiFeチャンバを用いたPVD法によって成膜する。次に、同一のPVD装置の同一のNiFeチャンバを用いて、成膜条件を変更することにより、接続孔30及び配線用溝31の底面上及び層間絶縁膜11の表面上におけるNiFe磁性層13を選択的に除去する。さらに、同一のPVD装置のTaチャンバ及びCuチャンバを用いて、接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上にTaバリア層及びCuシード層を順次形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばMRAM等に用いられ、所定の配線を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子の持つ電荷のみではなくスピンにも注目し、それを制御することで新しいエレクトロニクスデバイスの創製する試みが盛んに行われている。これらは一般に「スピントロニクス」或いは「スピンエレクトロニクス」と呼ばれている。現在、注目を集めているMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory, あるいは Magnetic Random Access Memory)もその一つである。
【0003】
物質の磁性の起源とスピンは非常に密接な関係にあり、このような「スピントロニクス」において、磁性・磁場を制御することは非常に重要なことである。一方、電流と磁場も密接な関係があり、電流が流れる際には磁場が発生する。従って、スピントロニクスでは、配線に電流が流れる際に発生する磁場を遮蔽する、あるいは制御することが大切である。
【0004】
上記したMRAMとして利用されるメモリ素子としてMTJ素子がある。なお、本明細書では、MTJ素子はTMR(Tunneling Magneto Resistance)素子を含む概念として使用する。
【0005】
図15〜図23は多層配線構造を有する従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。これらの図で示す多層配線構造では、MRAM等において適用されており、配線部より発生する磁場を配線下部方向に集中させる配線構造を呈している。これらの図では銅(Cu)を用いたデュアルダマシン構造の配線を例に挙げている。以下、図15〜図23を参照して、従来の半導体装置の製造方法の製造方法を説明する。
【0006】
図15に示すように、Cuダマシン配線の形成工程において、所定の工程を経て、層間絶縁膜1の上層部にTa/TaN積層バリア膜2及び下層Cu配線3からなる下層Cu配線部を形成後、全面直上にSiCからなるライナー膜10及び層間絶縁膜11を形成する。
【0007】
その後、図15に示すように、ライナー膜10及び層間絶縁膜11の下層部にかけて上下配線間を接続するための接続孔30、及び層間絶縁膜11の上層部にCu配線を形成するために配線用溝31をドライエッチング技術等を用いて形成する。この際、接続孔30は平面視して配線用溝31内に含まれ、かつ上部の配線用溝31と連続するように形成される。
【0008】
その後、図16に示すように、接続孔30の底面及び側面並びに配線用溝31の底面及び側面を含む層間絶縁膜11上にTa/TaN積層バリア層12をPVD(Physical Vapor Deposition)法によって形成する。なお、Ta/TaN積層バリア層12の成膜に先立ち、必要に応じて、ウエハからの脱ガス処理(デガス)、H2ガスを用いたアニール処理やプラズマ処理と言った前処理(プリクリーン)行っても良い。
【0009】
さらに、図16に示すように、Ta/TaN積層バリア層12上にNiFe磁性層13(Ni:Fe=4:1)を同じくPVD法によって成膜する。
【0010】
次に、図17に示すように、異方性のケミカルドライエッチング技術を用いたエッチバック処理により、接続孔30及び配線用溝31の底面上及び層間絶縁膜11の表面上におけるNiFe磁性層13を選択的に除去する。この時のエッチング条件は、例えば塩素を含んだハロゲンガスまたはそれと一緒に一酸化炭素(CO)もしくはアンモニア(NH3)を添加したエッチングガス等を用いる。上述したエッチングガスを用いたエッチバック処理は例えば特許文献1に開示されている。
【0011】
その後、図18に示すように、再度、PVD装置を用いて、接続孔30及び配線用溝31の底面及び側面上において、Taバリア層14及びTaバリア層14上にCuシード層15をそれぞれPVD法によって成膜する。
【0012】
次に、図19に示すように、Cuめっき法を用いて接続孔30及び配線用溝31の埋め込み、かつ、層間絶縁膜11の(Ta/TaN積層バリア層12,Taバリア層14を介した)表面上にCuめっき層16を形成する。この際、Cuシード層15及びCuめっき層16は一体化する。以降、Cuめっき層16のみを代表して図示する。
【0013】
続いて、図20に示すように、必要に応じて熱処理を加えた後、CMP処理により余分な層間絶縁膜11の表面上のCuめっき層16を取り除き、上層Cu配線17を完成する。
【0014】
次に、図21に示すように、全面にSiCからなるライナー膜20及び層間絶縁膜21を順次堆積し、その後、写真製版技術、及びドライエッチング技術を用いて、上層Cu配線17上のライナー膜20及び層間絶縁膜21を貫通させて配線用溝32を選択的に形成する。
【0015】
次に、図22に示すように、配線用溝32を含む全面にTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24からなる3層積層膜をPVD法にて形成する。さらに、全面に層間絶縁膜25を形成する。
【0016】
最後に、図23に示すように、CMP処理を施し、層間絶縁膜21の表面上におけるTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24を除去し、配線用溝32内にのみTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24を残す。
【0017】
このような多層配線構造において、MRAMを形成する場合、図23に示すように、上層Cu配線17直下のライナー膜10上に仮想MTJ素子7vが形成されることになる。なお、実際には下層Cu配線3及び上層Cu配線17の形成方向等が異なっている。
【0018】
図23で示す多層配線構造では、仮想MTJ素子7v上に配置される上層Cu配線17の上部をNiFe磁性層23が覆い、側壁部をNiFe磁性層13が覆っている。一方、上層Cu配線17の下部にはNiFe膜がない構造になっている。
【0019】
このため、上層Cu配線17内に電流が流れた際に発生する磁場は配線の上部・側壁部はNiFe磁性層13及び23によって閉じ込められ、外部に広がらず、下部の仮想MTJ素子7vに向かって磁場が集中的に広がる構造となっている。
【0020】
したがって、上層Cu配線17の下部に設置された仮想MTJ素子7v(スピントロニクス素子)をこの磁場により積極的に制御することが出来る。
【0021】
【特許文献1】特開2006−54229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
但し、従来の製造方法では、一旦、トレンチ(接続孔30,配線用溝31)の底面に形成されたNiFe磁性層13を取り除くため、異方性のドライエッチング技術を用いている。通常、NiFe成膜を行うPVD装置とドライエッチングを行う装置とは異なる。
【0023】
このため、NiFe磁性層13の成膜後(図16参照)、NiFe磁性層13が形成されたウエハをPVD装置から取り出す際に一旦大気曝露した後、ウエハをドライエッチング装置に移動してエッチバック処理を行う必要があった。さらに、エッチバック処理が終了後(図17参照)、NiFe磁性層13が選択的に除去されたウエハをドライエッチング装置から取り出し、再度大気曝露して移動し、PVD装置に戻してバリア・シード層であるTaバリア層14及びCuシード層15を順次積層する必要がある(図18参照)。
【0024】
つまり、従来の製造方法では、図16〜図18で示す工程を実現すべく、PVD装置〜ドライエッチング措置〜PVD装置間の装置変更が強いられるため、NiFe磁性層13を含むバリア・シード(Taバリア層14,Cuシード層15)の形成が複雑化するという問題点があった。
【0025】
また、途中で2度大気曝露されるため、NiFe磁性層13及び下層のTa/TaN積層バリア層12が酸化される可能性が高く、配線の信頼性の低下や磁場集中効果の低下につながる問題点があった。
【0026】
このように、図15〜図23に代表される従来の半導体装置の製造方法は、NiFe磁性層13を含むバリア・シードの形成工程が複雑化し、かつ、一旦大気曝露されるため、Ta/TaN積層バリア層12,NiFe磁性層13の表面が酸化され、配線の信頼性低下や磁場集中効果の低下などを引き起こす可能性があるという問題点があった。
【0027】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、製造工程を複雑化することなく、配線の信頼性低下を招かない、配線構造を有する半導体装置及びその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この発明の一実施の形態によれば、下層Cu配線上に形成される配線用溝の側面及び底面上にTa/TaN積層バリア層を形成する。そして、上記配線用溝の側面及び底面上にTa/TaN積層バリア層を介してNiFe磁性層を形成する。さらに、上記配線用溝の底面上に形成されるNiFe磁性層を選択的に除去する。その後、最終的に配線用溝内に上層Cu配線を埋め込む。上述したNiFe磁性層の形成及びNiFe磁性層の選択的除去工程は成膜(エッチング)条件を変えて同一PVDチャンバを用いて行っている。
【発明の効果】
【0029】
この実施の形態によれば、少なくとも上層Cu配線の側面にNiFe磁性層を形成することにより、上部Cu配線に電流が流れるときに発生する磁場を配線下方側に集中させる配線構造を得ることができる。
【0030】
この際、NiFe磁性層の形成及びNiFe磁性層の選択的除去工程は同一PVDチャンバを用いて行うことにより、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0031】
さらに、Ta/TaN積層バリア層及びNiFe磁性層の形成並びにNiFe磁性層の選択的除去工程を複数のPVDチャンバを備えた(例えば、TaチャンバとNiFeチャンバとを備えた)同一のPVD装置を用いて実行することにより、真空一貫での製造処理が容易となり、形成途中での大気曝露を避けることができるため、配線の信頼性向上や磁場集中効果の向上という効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
<実施の形態>
図1〜図9は、この発明の実施の形態である多層配線構造を有する半導体装置の製造方法を示す断面図である。これらの図で示す多層配線構造では、MRAM等において適用されており、配線部より発生する磁場を配線下部方向に集中させる配線部を含む多層配線構造を呈している。なお、これらの図ではCuを用いたデュアルダマシン構造の配線を例に挙げている。以下、図1〜図9を参照して、実施の形態1の半導体装置の製造方法の製造方法を説明する。
【0033】
図1に示すように、Cuダマシン配線の形成工程において、所定の工程を経て、層間絶縁膜1の上層部にTa/TaN積層バリア膜2及び下層Cu配線3からなる下層Cu配線部を形成後、全面直上にSiCからなるライナー膜10及び層間絶縁膜11を形成する。
【0034】
その後、図1に示すように、ライナー膜10及び層間絶縁膜11の下層部にかけて上下配線間を接続するための接続孔30、及び層間絶縁膜11の上層部にCu配線を形成するために配線用溝31をドライエッチング技術等を用いて形成する。配線用溝31が接続孔30と連結する場合、接続孔30は平面視して配線用溝31内に含まれ、かつ上部の配線用溝31と連続するように形成される。また、図1の左側の配線用溝31のように、配線用溝31のみを層間絶縁膜11の上層部に選択的に形成する場合もある。このように、接続孔30及び配線用溝31からなる貫通孔を、広義の意味で層間絶縁膜を構成するライナー膜10及び層間絶縁膜11を貫通して選択的に形成したり、層間絶縁膜11の表面から一部選択的に除去して配線用溝31のみを形成したりする。
【0035】
その後、図2に示すように、接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上を含む層間絶縁膜11上にTa/TaN積層バリア層12(バリア層)をPVD装置を用いたPVD法によって形成する。なお、配線用溝31のみの構造に対しては、配線用溝31の底面及び側面上を含む層間絶縁膜11上にTa/TaN積層バリア層12をPVD装置を用いたPVD法によって形成することになる。以下、説明の都合上、接続孔30及び配線用溝31からなる貫通孔に対する製造工程を中心に説明する。
【0036】
本実施の形態で用いるPVD装置は、複数のPVDチャンバを備えたPVD装置を想定している。このPVD装置は複数のPVDチャンバとして、脱ガスチャンバ、プリスクリーンチャンバ、Ta/TaN(成膜)チャンバ、NiFe(成膜)チャンバ、Ta(成膜)チャンバ、Cu(成膜)チャンバを有している。これら複数の(PVD)チャンバ間は真空搬送系を介してインテグレーションされている。上記したTa/TaN積層バリア層12はTa/TaNチャンバ内で行われる。
【0037】
なお、Ta/TaN積層バリア層12の成膜に先立ち、必要に応じて、ウエハからの脱ガス処理(デガス)、H2ガスを用いたアニール処理やプラズマ処理と言った前処理(プリクリーン)行っても良い。上記脱ガス処理及び上記プリクリーン処理は、PVD装置内の脱ガスチャンバ及びプリクリーンチャンバ内でそれぞれ行われる。
【0038】
さらに、図2に示すように、接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上にTa/TaN積層バリア層12を介して、磁場遮蔽層であるNiFe磁性層13(Ni:Fe=4:1)を同じくPVD装置を用いたPVD法によって成膜する。このNiFe磁性層13の成膜はNiFeチャンバ内で行われる。
【0039】
次に、図3に示すように、このまま同一のPVD装置を用いて同一のNiFe(成膜)チャンバ内にて成膜条件(エッチング条件)を変更することにより、接続孔30及び配線用溝31の(Ta/TaN積層バリア層12を介した)底面上及び層間絶縁膜11の表面上におけるNiFe磁性層13を選択的に除去する。
【0040】
図10はNiFe磁性層13の成膜及びNiFe磁性層13の選択除去に用いられるPVD装置(主としてNiFeチャンバ内)の構成を示す概略説明図である。
【0041】
同図に示すように、チャンバ40内の下部に配置された基板47上にウエハ35(図2,図3で示す構造を有するウエハ)が配置される。ウエハ35の上方にはコイル部43が設けられ、コイル部43はコイル部RF電源44に接続される。また、チャンバ40内の上部にNiFeターゲット41が設けられ、NiFeターゲット41にターゲット部DC電源42が接続され、コイル部RF電源44にコイル部DC電源45が接続される。また、基板47には基板部バイアス電源46が接続される。また、チャンバ40にはAr(アルゴン)等の通気口40iや排気口40oが設けられる。
【0042】
図2で示すNiFe磁性層13の成膜工程時の条件は例えば以下のように設定される。Ar=30sccm、圧力は約0.2Pa、NiFeターゲット41に印加するターゲット部DC電源42のDCパワー:5kW、基板47に印加する基板部バイアス電源46のバイアスパワー:200W、コイル部43に印加するコイル部RF電源44のRFパワー:2kW、コイル部43に印加するコイル部DC電源45のDCパワー:500Wとする。
【0043】
一方、図3で示すNiFe磁性層13の選択除去工程時の条件は例えば以下のように設定される。Ar=15sccm、圧力は約0.1Pa、NiFeターゲット41に印加するDCパワー:0.5kW、基板47に印加する基板部バイアス電源46のパワー:400W、コイル部43に印加するRFパワー:2kW、コイル部43に印加するコイル部DC電源45のパワー:0Wとする。このエッチング条件下では、層間絶縁膜11上の表面の平坦部のNiFe磁性層13を〜0.7nm/secの速度で物理的エッチングを進めることができる。
【0044】
その後、図4に示すように、同一のPVD装置によるPVD法を用いて、接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上を含む層間絶縁膜11上にTaバリア層14を形成する。この際、接続孔30及び配線用溝31の底面上及び層間絶縁膜11上において、Taバリア層14はTa/TaN積層バリア層12を介して形成され、接続孔30及び配線用溝31の側面上において、Taバリア層14はTa/TaN積層バリア層12及びNiFe磁性層13を介して形成される。なお、Taバリア層14はTaチャンバ内で成膜される。
【0045】
さらに、図4に示すように、同一のPVD装置によるPVD法を用いて、接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上を含む層間絶縁膜11上にCuシード層15を形成する。この際、接続孔30及び配線用溝31の底面上及び層間絶縁膜11上において、Cuシード層15はTa/TaN積層バリア層12及びTaバリア層14を介して形成され、接続孔30及び配線用溝31の側面上において、Cuシード層15は、Ta/TaN積層バリア層12、NiFe磁性層13及びTaバリア層14を介して形成される。なお、Cuシード層15はCuチャンバ内で成膜される。
【0046】
その結果、ウエハからの脱ガス処理(デガス)、前処理(プリクリーン)を含む最下層のTa/TaN積層バリア層12の形成工程から、NiFe磁性層13、Taバリア層14及び最上層のCuシード層15それぞれの形成工程に至る、全ての工程に用いる複数のチャンバを同一のPVD装置にインテグレーションすることが容易となる。したがって、真空一貫処理を容易に行うことができる。
【0047】
次に、図5に示すように、Cu(電界)めっき法を用いて接続孔30及び配線用溝31を埋め込み、かつ、層間絶縁膜11の(Ta/TaN積層バリア層12,Taバリア層14を介した)表面上にCuめっき層16を形成する。この際、Cuシード層15及びCuめっき層16は一体化する。以降、Cuめっき層16のみを代表して図示する。
【0048】
続いて、図6に示すように、必要に応じて熱処理を加えた後、CMP処理により余分な層間絶縁膜11の表面上のCuめっき層16を取り除き、貫通孔(接続孔30及び配線用溝31)内及び配線用溝31内に埋め込まれた上層Cu配線17(配線主要部)を完成する。その結果、Ta/TaN積層バリア層12、NiFe磁性層13、Taバリア層14及び上層Cu配線17からなる配線(所定の配線)が完成する。
【0049】
次に、図7に示すように、全面にSiCからなるライナー膜20及び層間絶縁膜21を順次堆積し、その後、写真製版技術、及びドライエッチング技術を用いて、上層Cu配線17上のライナー膜20及び層間絶縁膜21を貫通させて配線用溝32を選択的に形成する。
【0050】
次に、図8に示すように、配線用溝32を含む全面にTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24からなる3層積層膜をPVD法によって形成する。さらに、全面に層間絶縁膜25を形成する。
【0051】
最後に、図9に示すように、CMP処理を施し、層間絶縁膜21の表面上におけるTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24を除去し、配線用溝32内にのみTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24を残す。
【0052】
このような多層配線構造において、MRAMを形成する場合、図9に示すように、上層Cu配線17直下のライナー膜10上に仮想MTJ素子7vが形成されることになる。なお、実際には下層Cu配線3及び上層Cu配線17の形成方向等が異なっている。
【0053】
図11は図9で示した多層配線構造をMRAMに適用した場合の具体的構造例を示す断面図である。
【0054】
同図に示すように、半導体基板50の上層部に選択的に形成された素子分離絶縁膜49,49間にトランジスタ部48a及び48bが形成される。以下、トランジスタ部48a,48bの構成について説明する。
【0055】
半導体基板50の表面内のチャネル領域50c上にゲート絶縁膜51が形成され、ゲート絶縁膜51上にゲート電極52が形成され、ゲート電極52の側面にサイドウォール53が形成される。一方、チャネル領域50cを挟んで半導体基板50の上層部にソース・ドレイン領域54,54が形成され、ソース・ドレイン領域54及びゲート電極52上にそれぞれコバルトシリサイド(CoSi2)よりなるシリサイド領域55が設けられる。これら、ゲート絶縁膜51、ゲート電極52、サイドウォール53、ソース・ドレイン領域54及びシリサイド領域55により、トランジスタ部48a,48bが形成される。なお、図11で図示していないが、トランジスタ部48a,48bの少なくとも一方のソース・ドレイン領域54がMTJ素子7の下部電極に電気的に接続される。
【0056】
トランジスタ部48a,48bを含む半導体基板50上に層間絶縁膜56が形成される。トランジスタ部48bのゲート電極52上のシリサイド領域55はWプラグ57を介してTa/TaNバリア層58及びCu配線59からなる第1配線部L1に電気的に接続される。なお、第1配線部L1において、Ta/TaNバリア層58はCu配線59の底面及び側面に形成される。これら第1配線部L1は半導体基板50上に形成された層間絶縁膜56の上層部に形成される。
【0057】
第1配線部L1を含む層間絶縁膜56上にライナー膜60が形成され、ライナー膜60上に層間絶縁膜61が形成される。層間絶縁膜61の上層部にTa/TaNバリア層62、NiFe磁性層63、Taバリア層64及びCu配線67からなる第2配線部L2が形成される。なお、第2配線部L2において、Ta/TaNバリア層62、NiFe磁性層63及びTaバリア層64はCu配線67の底面及び側面に形成される。この第2配線部L2の一部が第1配線部L1と電気的に接続される。
【0058】
第2配線部L2を含む層間絶縁膜61上にライナー膜70が形成され、ライナー膜70上に層間絶縁膜71が形成される。層間絶縁膜71の上層部にTa/TaNバリア層72、NiFe磁性層73、Taバリア層74及びCu配線77からなる第3配線部L3が形成される。なお。第3配線部L3において、Ta/TaNバリア層72、NiFe磁性層73及びTaバリア層74からなる積層はCu配線77の側面に形成され、Ta/TaNバリア層72及びTaバリア層74からなる積層はCu配線77の底面に形成される。この第3配線部L3の一部が第2配線部L2と電気的に接続される。そして、一部の第3配線部L3の直下のライナー膜70上にMTJ素子7が形成される。
【0059】
第3配線部L3を含む層間絶縁膜71上にライナー膜80が形成され、ライナー膜80上に層間絶縁膜81が形成される。ただし、MTJ素子7上の第3配線部L3は上面にTa/TaNバリア層82、NiFe磁性層83及びTaバリア層84からなる積層構造が形成される。
【0060】
なお、図11で示す構造は、あくまでもMRAMデバイスの全体像を示すための例であり、各部位の配置・材料などを特定するものではない。例えば、MTJ素子7が第2配線部L2と第3配線部L3との間に配置されているが、実際には特にこの部分に限る必要は無く、任意の配線間に配置が可能であり、電気的接続関係も様々対応が考えられる。例えば、第3配線部L3とMTJ素子7の上部電極が直接あるいはプラグ(接続孔33)を介して電気的に接続される対応等が考えられる。また、MTJ素子7の下部電極(引き出し配線)と第2配線部L2のいずれかとが電気的に接続される対応が考えられる。
【0061】
同様に、トランジスタ部48a,48bのゲート電極52の上部、ソース・ドレイン領域54の上部にCoSi2からなるシリサイド領域55を設けているが、他にNiSi,TiSi2等でシリサイド領域を形成しても良い。さらには、シリサイド領域55は無くても構わない。
【0062】
このようなMRAMを有する半導体装置(図11)におけるMTJ素子7と、実施の形態1の半導体装置の製造方法で製造された図9における仮想MTJ素子7vとが対応する。MTJ素子7上のTa/TaNバリア層72、NiFe磁性層73、Taバリア層74及びCu配線77は、仮想MTJ素子7v上のTa/TaN積層バリア層12、NiFe磁性層13、Taバリア層14及び上層Cu配線17が対応する。同様に、MTJ素子7下において、ライナー膜70がライナー膜20に対応し、下層Cu配線3がCu配線67に対応し、Ta/TaN積層バリア膜2がTa/TaNバリア層62に対応する。
【0063】
図11(図9)で示すMRAMの多層配線構造では、MTJ素子7(仮想MTJ素子7v)上に配置されるCu配線77(上層Cu配線17)の上部をNiFe磁性層83(NiFe磁性層23)が覆い、側壁部をNiFe磁性層73(NiFe磁性層13)が覆っている。一方、Cu配線77の下部にはNiFe膜がない構造になっている。
【0064】
このため、Cu配線77内に電流が流れた際に発生する磁場は配線の上部・側壁部はNiFe磁性層73及び83によって閉じ込められ、外部に広がらず、下部のMTJ素子7に向かって磁場が集中的に広がる構造となっている。
【0065】
したがって、実施の形態1の半導体装置における配線構造をMRAMに適用した場合、Cu配線77の下部に設置されたMTJ素子7をこの磁場により積極的に制御することができる。
【0066】
本実施の形態は、図3で示すNiFe磁性層13の除去工程を、図2で示すNiFe磁性層13の成膜時に用いた同一PVD装置の同一のNiFeチャンバ内で物理的エッチング手法を適用することにより、製造工程の簡略化を図っている。
【0067】
その結果、本実施の形態では、NiFe磁性層13の成膜工程及び選択的除去工程を含み、Ta/TaN積層バリア層12、NiFe磁性層13、Taバリア層14、及びCuシード層15の形成を同一のPVD装置を用いて実現することが可能となった。
【0068】
したがって、本実施の形態の製造方法は、バリア・シード構造(Ta/TaN積層バリア層12,NiFe磁性層13及びTaバリア層14)を同一のPVD装置を用いて真空連続で形成できるため、NiFe磁性層13の除去工程をPVD装置と異なるエッチング装置を用いて行う従来の製造方法と比較した場合、より簡単な工程で、行うことができる効果を奏する。
【0069】
さらに、少なくともTa/TaN積層バリア層12及びNiFe磁性層13を含むバリア・シード構造は、同一PVD装置において真空一貫処理にて形成されるため、大気曝露によるNiFe磁性層13の表面、Ta/TaN積層バリア層12の表面の酸化が発生しないため、配線としての信頼性の向上を図ることができる。
【0070】
実際の形状に関して、図15〜図23で示した従来の製造方法では、NiFe磁性層13をケミカルドライエッチング法にて除去するため下地のTa/TaN積層バリア層12との選択比を得やすく、Ta/TaN積層バリア層12上にエッチングを止めることが容易であるため、図12に示すように、底部の底部Ta/TaN積層バリア領域12b上に底部Taバリア領域14bが互いにほぼ均一な膜厚で形成される。
【0071】
一方、本実施の形態では、NiFe磁性層13のエッチングは物理的エッチング法によるため、下地のTa/TaN積層バリア層12との選択比は得にくく、NiFe磁性層13下のTa/TaN積層バリア層12も一部エッチングされる(場合によっては、Ta/TaN積層バリア層12の大半がエッチングされる)。
【0072】
また、トレンチ底両端部の方が、トレンチ底中央部に比べてエッチング速度が速くなるため、図13に示すように、Ta/TaN積層バリア層12における底部Ta/TaN積層バリア領域12bは上に凸の形状を呈する。そして、Taバリア層14における底部Taバリア領域14bは底部Ta/TaN積層バリア領域12b上の形状に反映して上に凸の形状を呈する。
【0073】
図14は、本実施の形態の製造方法による製造後の上層Cu配線17の断面構造の詳細を示す説明図である。同図(a)は断面の全体構造を示し、同図(b)は側面断面の詳細構造を示し、同図(c)底面断面の詳細構造を示している。
【0074】
同図に示すように、配線用溝の底部において、Taバリア層14(Ta/TaN積層バリア層12は図示省略)は上に凸な形状を呈している。また、側面には、Ta/TaN積層バリア層12,NiFe磁性層13、Taバリア層14及びCuシード層15の積層構造が形成されている。
【0075】
したがって、実施の形態1の半導体装置の製造方法で図9で示す構造を製造した場合、後に上層Cu配線17が形成される配線用溝の底部におけるTa/TaN積層バリア層12及びTaバリア層14が必然的に上に凸な形状を有する構造となる。
【0076】
なお、本実施の形態では、最後に上層Cu配線17上にTa/NiFe/Ta構造(Taバリア層22,NiFe磁性層23及びTaバリア層24)のカバーをダマシン法にて作製したが、Ta/NiFe/Ta構造を直接エッチング技術を用いて形成しても構わない。
【0077】
あるいは、Ta/NiFe/Ta構造の形成を省略しても構わない。この場合、Cu配線17内に電流が流れた際に発生する磁場は配線の側壁部に形成されるNiFe磁性層73のみによって閉じ込められることになる。
【0078】
また、NiFe磁性層13を構成するNiFeの組成を「Ni:Fe=4:1」を例に示しているが、高透磁率の材料であれば他のものでも構わない。同様にTa/TaN積層バリア層12あるいはNiFe磁性層13を構成するバリア材としてTa、TaNを例にあげているが、Ti,TiN,W,WNRu等、他のバリア材やそれらの積層を用いても構わない。
【0079】
Cu配線に代えて、Al,Mn,Ti等とのCu合金でも構わない。Cu配線直上に形成したTa/NiFe/Ta構造は、上層Cu配線17上全体ではなく、所望箇所にのみ選択的に形成しても構わない。
【0080】
本実施の形態では、同一PVD装置を用いたNiFeの成膜条件及び物理的エッチング条件の例を具体的に挙げているが、所望の成膜及びエッチング特性が得られるのであれば、上記条件に以外であっても構わない。
【0081】
また、本実施の形態の効果を電流磁場による書き換えを例にとって説明を行ったが、他の手法による書き換えとの組み合わせ、例えば、スピントランスファートルク法(STT)を採用したSTT−MRAMと呼ばれるMTJ素子は自身を流れる電流によってその抵抗値が変化する性質を有する。このようなSTT−MRAMと呼ばれるMTJ素子をMTJ素子7として用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明の適用分野は、半導体装置において、MRAMに代表されるスピントロニクスデバイスを応用した半導体装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】実施の形態による半導体装置の製造方法で用いるPVD装置の一例を示す説明図である。
【図11】図9で示した多層配線構造をMRAMに適用した場合の具体的構造例を示す断面図である。
【図12】従来の半導体装置の製造方法の製造後における上層Cu配線構造を示す断面図である。
【図13】実施の形態の半導体装置の製造方法の製造後における上層Cu配線構造を示す断面図である。
【図14】実施の形態の半導体装置の製造方法の製造後における上層Cu配線構造の詳細を示す断面図である。
【図15】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図16】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図17】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図18】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図19】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図20】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図21】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図22】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図23】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,11,21,25 層間絶縁膜、2,12 Ta/TaN積層バリア膜、3 下層Cu配線、10,20 ライナー膜、13 NiFe磁性層、14,22,24 Taバリア層、15 Cuシード層、16 Cuめっき層、17 上層Cu配線、30 接続孔、31 配線用溝。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばMRAM等に用いられ、所定の配線を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子の持つ電荷のみではなくスピンにも注目し、それを制御することで新しいエレクトロニクスデバイスの創製する試みが盛んに行われている。これらは一般に「スピントロニクス」或いは「スピンエレクトロニクス」と呼ばれている。現在、注目を集めているMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory, あるいは Magnetic Random Access Memory)もその一つである。
【0003】
物質の磁性の起源とスピンは非常に密接な関係にあり、このような「スピントロニクス」において、磁性・磁場を制御することは非常に重要なことである。一方、電流と磁場も密接な関係があり、電流が流れる際には磁場が発生する。従って、スピントロニクスでは、配線に電流が流れる際に発生する磁場を遮蔽する、あるいは制御することが大切である。
【0004】
上記したMRAMとして利用されるメモリ素子としてMTJ素子がある。なお、本明細書では、MTJ素子はTMR(Tunneling Magneto Resistance)素子を含む概念として使用する。
【0005】
図15〜図23は多層配線構造を有する従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。これらの図で示す多層配線構造では、MRAM等において適用されており、配線部より発生する磁場を配線下部方向に集中させる配線構造を呈している。これらの図では銅(Cu)を用いたデュアルダマシン構造の配線を例に挙げている。以下、図15〜図23を参照して、従来の半導体装置の製造方法の製造方法を説明する。
【0006】
図15に示すように、Cuダマシン配線の形成工程において、所定の工程を経て、層間絶縁膜1の上層部にTa/TaN積層バリア膜2及び下層Cu配線3からなる下層Cu配線部を形成後、全面直上にSiCからなるライナー膜10及び層間絶縁膜11を形成する。
【0007】
その後、図15に示すように、ライナー膜10及び層間絶縁膜11の下層部にかけて上下配線間を接続するための接続孔30、及び層間絶縁膜11の上層部にCu配線を形成するために配線用溝31をドライエッチング技術等を用いて形成する。この際、接続孔30は平面視して配線用溝31内に含まれ、かつ上部の配線用溝31と連続するように形成される。
【0008】
その後、図16に示すように、接続孔30の底面及び側面並びに配線用溝31の底面及び側面を含む層間絶縁膜11上にTa/TaN積層バリア層12をPVD(Physical Vapor Deposition)法によって形成する。なお、Ta/TaN積層バリア層12の成膜に先立ち、必要に応じて、ウエハからの脱ガス処理(デガス)、H2ガスを用いたアニール処理やプラズマ処理と言った前処理(プリクリーン)行っても良い。
【0009】
さらに、図16に示すように、Ta/TaN積層バリア層12上にNiFe磁性層13(Ni:Fe=4:1)を同じくPVD法によって成膜する。
【0010】
次に、図17に示すように、異方性のケミカルドライエッチング技術を用いたエッチバック処理により、接続孔30及び配線用溝31の底面上及び層間絶縁膜11の表面上におけるNiFe磁性層13を選択的に除去する。この時のエッチング条件は、例えば塩素を含んだハロゲンガスまたはそれと一緒に一酸化炭素(CO)もしくはアンモニア(NH3)を添加したエッチングガス等を用いる。上述したエッチングガスを用いたエッチバック処理は例えば特許文献1に開示されている。
【0011】
その後、図18に示すように、再度、PVD装置を用いて、接続孔30及び配線用溝31の底面及び側面上において、Taバリア層14及びTaバリア層14上にCuシード層15をそれぞれPVD法によって成膜する。
【0012】
次に、図19に示すように、Cuめっき法を用いて接続孔30及び配線用溝31の埋め込み、かつ、層間絶縁膜11の(Ta/TaN積層バリア層12,Taバリア層14を介した)表面上にCuめっき層16を形成する。この際、Cuシード層15及びCuめっき層16は一体化する。以降、Cuめっき層16のみを代表して図示する。
【0013】
続いて、図20に示すように、必要に応じて熱処理を加えた後、CMP処理により余分な層間絶縁膜11の表面上のCuめっき層16を取り除き、上層Cu配線17を完成する。
【0014】
次に、図21に示すように、全面にSiCからなるライナー膜20及び層間絶縁膜21を順次堆積し、その後、写真製版技術、及びドライエッチング技術を用いて、上層Cu配線17上のライナー膜20及び層間絶縁膜21を貫通させて配線用溝32を選択的に形成する。
【0015】
次に、図22に示すように、配線用溝32を含む全面にTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24からなる3層積層膜をPVD法にて形成する。さらに、全面に層間絶縁膜25を形成する。
【0016】
最後に、図23に示すように、CMP処理を施し、層間絶縁膜21の表面上におけるTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24を除去し、配線用溝32内にのみTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24を残す。
【0017】
このような多層配線構造において、MRAMを形成する場合、図23に示すように、上層Cu配線17直下のライナー膜10上に仮想MTJ素子7vが形成されることになる。なお、実際には下層Cu配線3及び上層Cu配線17の形成方向等が異なっている。
【0018】
図23で示す多層配線構造では、仮想MTJ素子7v上に配置される上層Cu配線17の上部をNiFe磁性層23が覆い、側壁部をNiFe磁性層13が覆っている。一方、上層Cu配線17の下部にはNiFe膜がない構造になっている。
【0019】
このため、上層Cu配線17内に電流が流れた際に発生する磁場は配線の上部・側壁部はNiFe磁性層13及び23によって閉じ込められ、外部に広がらず、下部の仮想MTJ素子7vに向かって磁場が集中的に広がる構造となっている。
【0020】
したがって、上層Cu配線17の下部に設置された仮想MTJ素子7v(スピントロニクス素子)をこの磁場により積極的に制御することが出来る。
【0021】
【特許文献1】特開2006−54229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
但し、従来の製造方法では、一旦、トレンチ(接続孔30,配線用溝31)の底面に形成されたNiFe磁性層13を取り除くため、異方性のドライエッチング技術を用いている。通常、NiFe成膜を行うPVD装置とドライエッチングを行う装置とは異なる。
【0023】
このため、NiFe磁性層13の成膜後(図16参照)、NiFe磁性層13が形成されたウエハをPVD装置から取り出す際に一旦大気曝露した後、ウエハをドライエッチング装置に移動してエッチバック処理を行う必要があった。さらに、エッチバック処理が終了後(図17参照)、NiFe磁性層13が選択的に除去されたウエハをドライエッチング装置から取り出し、再度大気曝露して移動し、PVD装置に戻してバリア・シード層であるTaバリア層14及びCuシード層15を順次積層する必要がある(図18参照)。
【0024】
つまり、従来の製造方法では、図16〜図18で示す工程を実現すべく、PVD装置〜ドライエッチング措置〜PVD装置間の装置変更が強いられるため、NiFe磁性層13を含むバリア・シード(Taバリア層14,Cuシード層15)の形成が複雑化するという問題点があった。
【0025】
また、途中で2度大気曝露されるため、NiFe磁性層13及び下層のTa/TaN積層バリア層12が酸化される可能性が高く、配線の信頼性の低下や磁場集中効果の低下につながる問題点があった。
【0026】
このように、図15〜図23に代表される従来の半導体装置の製造方法は、NiFe磁性層13を含むバリア・シードの形成工程が複雑化し、かつ、一旦大気曝露されるため、Ta/TaN積層バリア層12,NiFe磁性層13の表面が酸化され、配線の信頼性低下や磁場集中効果の低下などを引き起こす可能性があるという問題点があった。
【0027】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、製造工程を複雑化することなく、配線の信頼性低下を招かない、配線構造を有する半導体装置及びその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この発明の一実施の形態によれば、下層Cu配線上に形成される配線用溝の側面及び底面上にTa/TaN積層バリア層を形成する。そして、上記配線用溝の側面及び底面上にTa/TaN積層バリア層を介してNiFe磁性層を形成する。さらに、上記配線用溝の底面上に形成されるNiFe磁性層を選択的に除去する。その後、最終的に配線用溝内に上層Cu配線を埋め込む。上述したNiFe磁性層の形成及びNiFe磁性層の選択的除去工程は成膜(エッチング)条件を変えて同一PVDチャンバを用いて行っている。
【発明の効果】
【0029】
この実施の形態によれば、少なくとも上層Cu配線の側面にNiFe磁性層を形成することにより、上部Cu配線に電流が流れるときに発生する磁場を配線下方側に集中させる配線構造を得ることができる。
【0030】
この際、NiFe磁性層の形成及びNiFe磁性層の選択的除去工程は同一PVDチャンバを用いて行うことにより、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0031】
さらに、Ta/TaN積層バリア層及びNiFe磁性層の形成並びにNiFe磁性層の選択的除去工程を複数のPVDチャンバを備えた(例えば、TaチャンバとNiFeチャンバとを備えた)同一のPVD装置を用いて実行することにより、真空一貫での製造処理が容易となり、形成途中での大気曝露を避けることができるため、配線の信頼性向上や磁場集中効果の向上という効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
<実施の形態>
図1〜図9は、この発明の実施の形態である多層配線構造を有する半導体装置の製造方法を示す断面図である。これらの図で示す多層配線構造では、MRAM等において適用されており、配線部より発生する磁場を配線下部方向に集中させる配線部を含む多層配線構造を呈している。なお、これらの図ではCuを用いたデュアルダマシン構造の配線を例に挙げている。以下、図1〜図9を参照して、実施の形態1の半導体装置の製造方法の製造方法を説明する。
【0033】
図1に示すように、Cuダマシン配線の形成工程において、所定の工程を経て、層間絶縁膜1の上層部にTa/TaN積層バリア膜2及び下層Cu配線3からなる下層Cu配線部を形成後、全面直上にSiCからなるライナー膜10及び層間絶縁膜11を形成する。
【0034】
その後、図1に示すように、ライナー膜10及び層間絶縁膜11の下層部にかけて上下配線間を接続するための接続孔30、及び層間絶縁膜11の上層部にCu配線を形成するために配線用溝31をドライエッチング技術等を用いて形成する。配線用溝31が接続孔30と連結する場合、接続孔30は平面視して配線用溝31内に含まれ、かつ上部の配線用溝31と連続するように形成される。また、図1の左側の配線用溝31のように、配線用溝31のみを層間絶縁膜11の上層部に選択的に形成する場合もある。このように、接続孔30及び配線用溝31からなる貫通孔を、広義の意味で層間絶縁膜を構成するライナー膜10及び層間絶縁膜11を貫通して選択的に形成したり、層間絶縁膜11の表面から一部選択的に除去して配線用溝31のみを形成したりする。
【0035】
その後、図2に示すように、接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上を含む層間絶縁膜11上にTa/TaN積層バリア層12(バリア層)をPVD装置を用いたPVD法によって形成する。なお、配線用溝31のみの構造に対しては、配線用溝31の底面及び側面上を含む層間絶縁膜11上にTa/TaN積層バリア層12をPVD装置を用いたPVD法によって形成することになる。以下、説明の都合上、接続孔30及び配線用溝31からなる貫通孔に対する製造工程を中心に説明する。
【0036】
本実施の形態で用いるPVD装置は、複数のPVDチャンバを備えたPVD装置を想定している。このPVD装置は複数のPVDチャンバとして、脱ガスチャンバ、プリスクリーンチャンバ、Ta/TaN(成膜)チャンバ、NiFe(成膜)チャンバ、Ta(成膜)チャンバ、Cu(成膜)チャンバを有している。これら複数の(PVD)チャンバ間は真空搬送系を介してインテグレーションされている。上記したTa/TaN積層バリア層12はTa/TaNチャンバ内で行われる。
【0037】
なお、Ta/TaN積層バリア層12の成膜に先立ち、必要に応じて、ウエハからの脱ガス処理(デガス)、H2ガスを用いたアニール処理やプラズマ処理と言った前処理(プリクリーン)行っても良い。上記脱ガス処理及び上記プリクリーン処理は、PVD装置内の脱ガスチャンバ及びプリクリーンチャンバ内でそれぞれ行われる。
【0038】
さらに、図2に示すように、接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上にTa/TaN積層バリア層12を介して、磁場遮蔽層であるNiFe磁性層13(Ni:Fe=4:1)を同じくPVD装置を用いたPVD法によって成膜する。このNiFe磁性層13の成膜はNiFeチャンバ内で行われる。
【0039】
次に、図3に示すように、このまま同一のPVD装置を用いて同一のNiFe(成膜)チャンバ内にて成膜条件(エッチング条件)を変更することにより、接続孔30及び配線用溝31の(Ta/TaN積層バリア層12を介した)底面上及び層間絶縁膜11の表面上におけるNiFe磁性層13を選択的に除去する。
【0040】
図10はNiFe磁性層13の成膜及びNiFe磁性層13の選択除去に用いられるPVD装置(主としてNiFeチャンバ内)の構成を示す概略説明図である。
【0041】
同図に示すように、チャンバ40内の下部に配置された基板47上にウエハ35(図2,図3で示す構造を有するウエハ)が配置される。ウエハ35の上方にはコイル部43が設けられ、コイル部43はコイル部RF電源44に接続される。また、チャンバ40内の上部にNiFeターゲット41が設けられ、NiFeターゲット41にターゲット部DC電源42が接続され、コイル部RF電源44にコイル部DC電源45が接続される。また、基板47には基板部バイアス電源46が接続される。また、チャンバ40にはAr(アルゴン)等の通気口40iや排気口40oが設けられる。
【0042】
図2で示すNiFe磁性層13の成膜工程時の条件は例えば以下のように設定される。Ar=30sccm、圧力は約0.2Pa、NiFeターゲット41に印加するターゲット部DC電源42のDCパワー:5kW、基板47に印加する基板部バイアス電源46のバイアスパワー:200W、コイル部43に印加するコイル部RF電源44のRFパワー:2kW、コイル部43に印加するコイル部DC電源45のDCパワー:500Wとする。
【0043】
一方、図3で示すNiFe磁性層13の選択除去工程時の条件は例えば以下のように設定される。Ar=15sccm、圧力は約0.1Pa、NiFeターゲット41に印加するDCパワー:0.5kW、基板47に印加する基板部バイアス電源46のパワー:400W、コイル部43に印加するRFパワー:2kW、コイル部43に印加するコイル部DC電源45のパワー:0Wとする。このエッチング条件下では、層間絶縁膜11上の表面の平坦部のNiFe磁性層13を〜0.7nm/secの速度で物理的エッチングを進めることができる。
【0044】
その後、図4に示すように、同一のPVD装置によるPVD法を用いて、接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上を含む層間絶縁膜11上にTaバリア層14を形成する。この際、接続孔30及び配線用溝31の底面上及び層間絶縁膜11上において、Taバリア層14はTa/TaN積層バリア層12を介して形成され、接続孔30及び配線用溝31の側面上において、Taバリア層14はTa/TaN積層バリア層12及びNiFe磁性層13を介して形成される。なお、Taバリア層14はTaチャンバ内で成膜される。
【0045】
さらに、図4に示すように、同一のPVD装置によるPVD法を用いて、接続孔30の底面及び側面上並びに配線用溝31の底面及び側面上を含む層間絶縁膜11上にCuシード層15を形成する。この際、接続孔30及び配線用溝31の底面上及び層間絶縁膜11上において、Cuシード層15はTa/TaN積層バリア層12及びTaバリア層14を介して形成され、接続孔30及び配線用溝31の側面上において、Cuシード層15は、Ta/TaN積層バリア層12、NiFe磁性層13及びTaバリア層14を介して形成される。なお、Cuシード層15はCuチャンバ内で成膜される。
【0046】
その結果、ウエハからの脱ガス処理(デガス)、前処理(プリクリーン)を含む最下層のTa/TaN積層バリア層12の形成工程から、NiFe磁性層13、Taバリア層14及び最上層のCuシード層15それぞれの形成工程に至る、全ての工程に用いる複数のチャンバを同一のPVD装置にインテグレーションすることが容易となる。したがって、真空一貫処理を容易に行うことができる。
【0047】
次に、図5に示すように、Cu(電界)めっき法を用いて接続孔30及び配線用溝31を埋め込み、かつ、層間絶縁膜11の(Ta/TaN積層バリア層12,Taバリア層14を介した)表面上にCuめっき層16を形成する。この際、Cuシード層15及びCuめっき層16は一体化する。以降、Cuめっき層16のみを代表して図示する。
【0048】
続いて、図6に示すように、必要に応じて熱処理を加えた後、CMP処理により余分な層間絶縁膜11の表面上のCuめっき層16を取り除き、貫通孔(接続孔30及び配線用溝31)内及び配線用溝31内に埋め込まれた上層Cu配線17(配線主要部)を完成する。その結果、Ta/TaN積層バリア層12、NiFe磁性層13、Taバリア層14及び上層Cu配線17からなる配線(所定の配線)が完成する。
【0049】
次に、図7に示すように、全面にSiCからなるライナー膜20及び層間絶縁膜21を順次堆積し、その後、写真製版技術、及びドライエッチング技術を用いて、上層Cu配線17上のライナー膜20及び層間絶縁膜21を貫通させて配線用溝32を選択的に形成する。
【0050】
次に、図8に示すように、配線用溝32を含む全面にTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24からなる3層積層膜をPVD法によって形成する。さらに、全面に層間絶縁膜25を形成する。
【0051】
最後に、図9に示すように、CMP処理を施し、層間絶縁膜21の表面上におけるTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24を除去し、配線用溝32内にのみTaバリア層22、NiFe磁性層23及びTaバリア層24を残す。
【0052】
このような多層配線構造において、MRAMを形成する場合、図9に示すように、上層Cu配線17直下のライナー膜10上に仮想MTJ素子7vが形成されることになる。なお、実際には下層Cu配線3及び上層Cu配線17の形成方向等が異なっている。
【0053】
図11は図9で示した多層配線構造をMRAMに適用した場合の具体的構造例を示す断面図である。
【0054】
同図に示すように、半導体基板50の上層部に選択的に形成された素子分離絶縁膜49,49間にトランジスタ部48a及び48bが形成される。以下、トランジスタ部48a,48bの構成について説明する。
【0055】
半導体基板50の表面内のチャネル領域50c上にゲート絶縁膜51が形成され、ゲート絶縁膜51上にゲート電極52が形成され、ゲート電極52の側面にサイドウォール53が形成される。一方、チャネル領域50cを挟んで半導体基板50の上層部にソース・ドレイン領域54,54が形成され、ソース・ドレイン領域54及びゲート電極52上にそれぞれコバルトシリサイド(CoSi2)よりなるシリサイド領域55が設けられる。これら、ゲート絶縁膜51、ゲート電極52、サイドウォール53、ソース・ドレイン領域54及びシリサイド領域55により、トランジスタ部48a,48bが形成される。なお、図11で図示していないが、トランジスタ部48a,48bの少なくとも一方のソース・ドレイン領域54がMTJ素子7の下部電極に電気的に接続される。
【0056】
トランジスタ部48a,48bを含む半導体基板50上に層間絶縁膜56が形成される。トランジスタ部48bのゲート電極52上のシリサイド領域55はWプラグ57を介してTa/TaNバリア層58及びCu配線59からなる第1配線部L1に電気的に接続される。なお、第1配線部L1において、Ta/TaNバリア層58はCu配線59の底面及び側面に形成される。これら第1配線部L1は半導体基板50上に形成された層間絶縁膜56の上層部に形成される。
【0057】
第1配線部L1を含む層間絶縁膜56上にライナー膜60が形成され、ライナー膜60上に層間絶縁膜61が形成される。層間絶縁膜61の上層部にTa/TaNバリア層62、NiFe磁性層63、Taバリア層64及びCu配線67からなる第2配線部L2が形成される。なお、第2配線部L2において、Ta/TaNバリア層62、NiFe磁性層63及びTaバリア層64はCu配線67の底面及び側面に形成される。この第2配線部L2の一部が第1配線部L1と電気的に接続される。
【0058】
第2配線部L2を含む層間絶縁膜61上にライナー膜70が形成され、ライナー膜70上に層間絶縁膜71が形成される。層間絶縁膜71の上層部にTa/TaNバリア層72、NiFe磁性層73、Taバリア層74及びCu配線77からなる第3配線部L3が形成される。なお。第3配線部L3において、Ta/TaNバリア層72、NiFe磁性層73及びTaバリア層74からなる積層はCu配線77の側面に形成され、Ta/TaNバリア層72及びTaバリア層74からなる積層はCu配線77の底面に形成される。この第3配線部L3の一部が第2配線部L2と電気的に接続される。そして、一部の第3配線部L3の直下のライナー膜70上にMTJ素子7が形成される。
【0059】
第3配線部L3を含む層間絶縁膜71上にライナー膜80が形成され、ライナー膜80上に層間絶縁膜81が形成される。ただし、MTJ素子7上の第3配線部L3は上面にTa/TaNバリア層82、NiFe磁性層83及びTaバリア層84からなる積層構造が形成される。
【0060】
なお、図11で示す構造は、あくまでもMRAMデバイスの全体像を示すための例であり、各部位の配置・材料などを特定するものではない。例えば、MTJ素子7が第2配線部L2と第3配線部L3との間に配置されているが、実際には特にこの部分に限る必要は無く、任意の配線間に配置が可能であり、電気的接続関係も様々対応が考えられる。例えば、第3配線部L3とMTJ素子7の上部電極が直接あるいはプラグ(接続孔33)を介して電気的に接続される対応等が考えられる。また、MTJ素子7の下部電極(引き出し配線)と第2配線部L2のいずれかとが電気的に接続される対応が考えられる。
【0061】
同様に、トランジスタ部48a,48bのゲート電極52の上部、ソース・ドレイン領域54の上部にCoSi2からなるシリサイド領域55を設けているが、他にNiSi,TiSi2等でシリサイド領域を形成しても良い。さらには、シリサイド領域55は無くても構わない。
【0062】
このようなMRAMを有する半導体装置(図11)におけるMTJ素子7と、実施の形態1の半導体装置の製造方法で製造された図9における仮想MTJ素子7vとが対応する。MTJ素子7上のTa/TaNバリア層72、NiFe磁性層73、Taバリア層74及びCu配線77は、仮想MTJ素子7v上のTa/TaN積層バリア層12、NiFe磁性層13、Taバリア層14及び上層Cu配線17が対応する。同様に、MTJ素子7下において、ライナー膜70がライナー膜20に対応し、下層Cu配線3がCu配線67に対応し、Ta/TaN積層バリア膜2がTa/TaNバリア層62に対応する。
【0063】
図11(図9)で示すMRAMの多層配線構造では、MTJ素子7(仮想MTJ素子7v)上に配置されるCu配線77(上層Cu配線17)の上部をNiFe磁性層83(NiFe磁性層23)が覆い、側壁部をNiFe磁性層73(NiFe磁性層13)が覆っている。一方、Cu配線77の下部にはNiFe膜がない構造になっている。
【0064】
このため、Cu配線77内に電流が流れた際に発生する磁場は配線の上部・側壁部はNiFe磁性層73及び83によって閉じ込められ、外部に広がらず、下部のMTJ素子7に向かって磁場が集中的に広がる構造となっている。
【0065】
したがって、実施の形態1の半導体装置における配線構造をMRAMに適用した場合、Cu配線77の下部に設置されたMTJ素子7をこの磁場により積極的に制御することができる。
【0066】
本実施の形態は、図3で示すNiFe磁性層13の除去工程を、図2で示すNiFe磁性層13の成膜時に用いた同一PVD装置の同一のNiFeチャンバ内で物理的エッチング手法を適用することにより、製造工程の簡略化を図っている。
【0067】
その結果、本実施の形態では、NiFe磁性層13の成膜工程及び選択的除去工程を含み、Ta/TaN積層バリア層12、NiFe磁性層13、Taバリア層14、及びCuシード層15の形成を同一のPVD装置を用いて実現することが可能となった。
【0068】
したがって、本実施の形態の製造方法は、バリア・シード構造(Ta/TaN積層バリア層12,NiFe磁性層13及びTaバリア層14)を同一のPVD装置を用いて真空連続で形成できるため、NiFe磁性層13の除去工程をPVD装置と異なるエッチング装置を用いて行う従来の製造方法と比較した場合、より簡単な工程で、行うことができる効果を奏する。
【0069】
さらに、少なくともTa/TaN積層バリア層12及びNiFe磁性層13を含むバリア・シード構造は、同一PVD装置において真空一貫処理にて形成されるため、大気曝露によるNiFe磁性層13の表面、Ta/TaN積層バリア層12の表面の酸化が発生しないため、配線としての信頼性の向上を図ることができる。
【0070】
実際の形状に関して、図15〜図23で示した従来の製造方法では、NiFe磁性層13をケミカルドライエッチング法にて除去するため下地のTa/TaN積層バリア層12との選択比を得やすく、Ta/TaN積層バリア層12上にエッチングを止めることが容易であるため、図12に示すように、底部の底部Ta/TaN積層バリア領域12b上に底部Taバリア領域14bが互いにほぼ均一な膜厚で形成される。
【0071】
一方、本実施の形態では、NiFe磁性層13のエッチングは物理的エッチング法によるため、下地のTa/TaN積層バリア層12との選択比は得にくく、NiFe磁性層13下のTa/TaN積層バリア層12も一部エッチングされる(場合によっては、Ta/TaN積層バリア層12の大半がエッチングされる)。
【0072】
また、トレンチ底両端部の方が、トレンチ底中央部に比べてエッチング速度が速くなるため、図13に示すように、Ta/TaN積層バリア層12における底部Ta/TaN積層バリア領域12bは上に凸の形状を呈する。そして、Taバリア層14における底部Taバリア領域14bは底部Ta/TaN積層バリア領域12b上の形状に反映して上に凸の形状を呈する。
【0073】
図14は、本実施の形態の製造方法による製造後の上層Cu配線17の断面構造の詳細を示す説明図である。同図(a)は断面の全体構造を示し、同図(b)は側面断面の詳細構造を示し、同図(c)底面断面の詳細構造を示している。
【0074】
同図に示すように、配線用溝の底部において、Taバリア層14(Ta/TaN積層バリア層12は図示省略)は上に凸な形状を呈している。また、側面には、Ta/TaN積層バリア層12,NiFe磁性層13、Taバリア層14及びCuシード層15の積層構造が形成されている。
【0075】
したがって、実施の形態1の半導体装置の製造方法で図9で示す構造を製造した場合、後に上層Cu配線17が形成される配線用溝の底部におけるTa/TaN積層バリア層12及びTaバリア層14が必然的に上に凸な形状を有する構造となる。
【0076】
なお、本実施の形態では、最後に上層Cu配線17上にTa/NiFe/Ta構造(Taバリア層22,NiFe磁性層23及びTaバリア層24)のカバーをダマシン法にて作製したが、Ta/NiFe/Ta構造を直接エッチング技術を用いて形成しても構わない。
【0077】
あるいは、Ta/NiFe/Ta構造の形成を省略しても構わない。この場合、Cu配線17内に電流が流れた際に発生する磁場は配線の側壁部に形成されるNiFe磁性層73のみによって閉じ込められることになる。
【0078】
また、NiFe磁性層13を構成するNiFeの組成を「Ni:Fe=4:1」を例に示しているが、高透磁率の材料であれば他のものでも構わない。同様にTa/TaN積層バリア層12あるいはNiFe磁性層13を構成するバリア材としてTa、TaNを例にあげているが、Ti,TiN,W,WNRu等、他のバリア材やそれらの積層を用いても構わない。
【0079】
Cu配線に代えて、Al,Mn,Ti等とのCu合金でも構わない。Cu配線直上に形成したTa/NiFe/Ta構造は、上層Cu配線17上全体ではなく、所望箇所にのみ選択的に形成しても構わない。
【0080】
本実施の形態では、同一PVD装置を用いたNiFeの成膜条件及び物理的エッチング条件の例を具体的に挙げているが、所望の成膜及びエッチング特性が得られるのであれば、上記条件に以外であっても構わない。
【0081】
また、本実施の形態の効果を電流磁場による書き換えを例にとって説明を行ったが、他の手法による書き換えとの組み合わせ、例えば、スピントランスファートルク法(STT)を採用したSTT−MRAMと呼ばれるMTJ素子は自身を流れる電流によってその抵抗値が変化する性質を有する。このようなSTT−MRAMと呼ばれるMTJ素子をMTJ素子7として用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明の適用分野は、半導体装置において、MRAMに代表されるスピントロニクスデバイスを応用した半導体装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】実施の形態による半導体装置の製造方法で用いるPVD装置の一例を示す説明図である。
【図11】図9で示した多層配線構造をMRAMに適用した場合の具体的構造例を示す断面図である。
【図12】従来の半導体装置の製造方法の製造後における上層Cu配線構造を示す断面図である。
【図13】実施の形態の半導体装置の製造方法の製造後における上層Cu配線構造を示す断面図である。
【図14】実施の形態の半導体装置の製造方法の製造後における上層Cu配線構造の詳細を示す断面図である。
【図15】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図16】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図17】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図18】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図19】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図20】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図21】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図22】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図23】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,11,21,25 層間絶縁膜、2,12 Ta/TaN積層バリア膜、3 下層Cu配線、10,20 ライナー膜、13 NiFe磁性層、14,22,24 Taバリア層、15 Cuシード層、16 Cuめっき層、17 上層Cu配線、30 接続孔、31 配線用溝。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配線を有する半導体装置であって、
前記所定の配線は、
配線主要部と、
前記配線主要部の底面及び側面に形成されるバリア層と、
前記配線主要部の底面に形成されず側面に形成され、前記配線主要部に電流が流れる際に発生する磁場を遮蔽する働きを有する磁場遮蔽層とを備え、
前記配線主要部の底面に形成される前記バリア層は上に凸状に形成されることを特徴する、
半導体装置。
【請求項2】
(a)半導体基板の上方に層間絶縁膜を形成するステップと、
(b)前記層間絶縁膜の表面から少なくとも一部を除去して、選択的に配線用溝を形成するステップと、
(c)前記配線用溝の側面及び底面上にバリア層を形成するステップと、
(d)前記配線用溝の側面及び底面上に前記バリア層を介して磁場遮蔽層を形成するステップと、
(e)前記配線用溝の底面上の前記磁場遮蔽層を選択的に除去するステップと、
(f)前記ステップ(c)〜(e)後に実行され、前記配線用溝内に配線主要部を埋め込むステップとを備え、
少なくとも前記ステップ(d),(e)を同一の製造装置を用いて行ったことを特徴とする、
半導体装置の製造方法。
【請求項1】
所定の配線を有する半導体装置であって、
前記所定の配線は、
配線主要部と、
前記配線主要部の底面及び側面に形成されるバリア層と、
前記配線主要部の底面に形成されず側面に形成され、前記配線主要部に電流が流れる際に発生する磁場を遮蔽する働きを有する磁場遮蔽層とを備え、
前記配線主要部の底面に形成される前記バリア層は上に凸状に形成されることを特徴する、
半導体装置。
【請求項2】
(a)半導体基板の上方に層間絶縁膜を形成するステップと、
(b)前記層間絶縁膜の表面から少なくとも一部を除去して、選択的に配線用溝を形成するステップと、
(c)前記配線用溝の側面及び底面上にバリア層を形成するステップと、
(d)前記配線用溝の側面及び底面上に前記バリア層を介して磁場遮蔽層を形成するステップと、
(e)前記配線用溝の底面上の前記磁場遮蔽層を選択的に除去するステップと、
(f)前記ステップ(c)〜(e)後に実行され、前記配線用溝内に配線主要部を埋め込むステップとを備え、
少なくとも前記ステップ(d),(e)を同一の製造装置を用いて行ったことを特徴とする、
半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2009−302298(P2009−302298A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155268(P2008−155268)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
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