説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】デュアルメタルゲートプロセスを用いることなく、p型MISトランジスタ及びn型MISトランジスタ双方の特性を向上した半導体装置を実現できるようにする。
【解決手段】半導体装置は、p型半導体領域10Aの上に順次形成された第1の界面シリコン酸化膜105、アルミニウムを含む第1のゲート絶縁膜106A及び第1のゲート電極119Aと、n型半導体領域10Bの上に順次形成された第2の界面シリコン酸化膜105、実効仕事関数を低下させる効果を有する元素を含む第2のゲート絶縁膜106B及び第2のゲート電極119Aとを備えている。第1のゲート絶縁膜106Aの上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1020/cm3以上である。第2のゲート絶縁膜106Bの上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1019/cm3以下である。第1の界面シリコン酸化膜105の膜厚と第2の界面シリコン酸化膜105の膜厚との差は0.2nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に相補型トランジスタを備えた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
32nm世代の相補型金属絶縁膜半導体(CMIS)における消費電力の低減及び性能の向上のため、ゲート絶縁膜をさらに薄膜化することが求められている。従来のシリコン酸化膜系材料からなるゲート絶縁膜をさらに薄膜化すると、リーク電流の増大が許容範囲を超えてしまう。そのため、従来のシリコン酸化膜系材料と比べて高い比誘電率を有する高誘電率膜(high−k膜)をゲート絶縁膜に用いることが検討されている。ハフニウム(Hf)系の絶縁膜は、1000℃以上の熱的安定性を有すると共に13以上の比誘電率を有するため、高誘電率膜の候補として有望視されている。しかしながら、ゲート絶縁膜にハフニウムシリケート(HfSiOx)膜又はハフニウムオキサイド(HfOx)膜を用い且つゲート電極にポリシリコンを用いた構造の場合、空乏化による酸化膜換算膜厚(EOT)の増加及びフェルミレベルピニングによるしきい値電圧の上昇が無視できない。これは、特にp型MISトランジスタにおいて顕著な問題となる。
【0003】
このため、ゲート電極としてポリシリコンの代わりに金属を用いたメタルゲート電極の利用が検討されている。バルクCMIS向けに、メタルゲートを適用する場合、n型MISトランジスタにはシリコン(Si)の伝導帯近傍の実効仕事関数(eWF)を有する金属を用い、p型MISトランジスタにはSiの価電子帯近傍のeWFを有する金属を用いればよい。具体的には、p型MISトランジスタにはeWFが4.8eV以上となる金属を用い、n型MISトランジスタにはeWFが4.3eV以下となる金属を用いることが好ましい。
【0004】
金属材料とeWFとの関係から、n型MISトランジスタの場合にはチタン(Ti)、モリブデン(Mo)又はタンタル(Ta)といった金属材料が有望であり、p型MISトランジスタの場合には白金(Pt)、酸化ルテニウム(RuO2)又は窒化チタン(TiN)といった金属材料が有望である。従って、CMISトランジスタを形成する場合には、これらの材料を用いてデュアルメタルゲートプロセスを構築すればよい。しかし、p型MISトランジスタのゲート電極として有望なPt及びRuO2等は、非常に加工が困難である。n型MISトランジスタ用のゲート電極として有望なTi、Mo及びTa等の材料も加工が容易ではなく且つ高熱負荷時の不安定性等の問題も有している。このため、デュアルメタルゲートプロセスの構築は容易ではない。
【0005】
そこで、窒化チタン(TiN)等からなるメタルゲート電極をp型MISトランジスタ及びn型MISトランジスタの双方に用いる方法が提案されている。例えば、ランタン(La)、イットリウム(Y)又はマグネシウム(Mg)等の金属からなるキャップ膜をメタルゲート電極とゲート絶縁膜との間に挿入することによりn型MISトランジスタに適したeWFを実現することができる。また、酸化アルミニウム(AlOx)からなるキャップ膜をメタルゲート電極とゲート絶縁膜との間に挿入することによりp型MISトランジスタに適したeWFを実現することができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−329237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、AlOx膜をキャップ膜としてp型MISトランジスタに適したeWFを実現しようとすると、以下のような問題が生じることを本願発明者らは見出した。
【0008】
まず、ゲート電極とゲート絶縁膜との間にAlOx膜を挿入すると、EOTが増大し、ゲート容量が低下してしまうという問題があることを見出した。比誘電率が低いAlOx膜を高誘電率膜の上に形成すると、高誘電率膜は相対的に低誘電率化する。また、AlOx膜中の余剰酸素成分が高誘電率膜中に拡散するため、後工程の熱処理において界面層の再酸化増膜が生じ、EOTが増大するということが明らかとなった。
【0009】
EOTの増大を抑えるために、AlOxを挿入する分だけ高誘電率膜の物理膜厚を薄くすることが考えられる。しかし、p型MISトランジスタの形成領域とn型MISトランジスタの形成領域とに互いに膜厚が異なる高誘電率膜を形成しようとすると、工程が増加し、製造コストが上昇する。
【0010】
さらに、AlOx膜をキャップ膜として用いた場合には、n型MISトランジスタの特性を悪化させるおそれがあることが本願発明者らにより明らかとなった。AlOx膜をp型MISトランジスタのキャップ膜として用いる場合には、通常はn型MISトランジスタの形成領域において、高誘電率膜の上に形成されたAlOx膜を選択的に除去する必要がある。高誘電率膜にダメージを与えることなく、選択的にAlOx膜を除去する方法として、塩酸−過酸化水素系の洗浄が知られている。しかし、高誘電率膜の上にAlOx膜を形成すると、塩酸又は塩酸−過酸化水素系の薬剤では十分に除去することができない。
その理由は、AlOx膜が化学的に安定であり、これらの薬剤に対して除去耐性を持つためであると考えられる。また、AlOxと高誘電率膜との反応及び化合による化学的な安定性の向上による薬剤除去性の低下も考えられる。高誘電率膜上のAlOxが容易に高誘電率膜と反応すること及び高誘電率膜中にAlが拡散することによりHfとAlとの結合が形成されることが、物理分析により明らかとなっている。このことからHfと結合したAlは化学的に安定となり、これらの薬剤により除去することができなくなると考えられる。
【0011】
このため、n型MISトランジスタの形成領域にAlが残存してしまい、n型MISトランジスタのeWFがシフトし、しきい値電圧が上昇してしまう。また、残存するAlの影響を抑えるためにLaOxの導入量を多くすると、過剰なLaによるNチャネル側の移動度低下及びゲート容量の低下等が生じる。もちろんLaOx膜を先に形成することは可能であるが、その場合にはPチャネル上のLaOx膜の除去性がAlの除去性と同様に問題となる。これにより、p型MISトランジスタの特性が悪化するため、根本的な解決策とはならない。
【0012】
本願は、前記の問題を解決し、デュアルメタルゲートプロセスを用いることなく、p型MISトランジスタ及びn型MISトランジスタ双方の特性を向上した半導体装置を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明は半導体装置をアルミニウムからなるキャップ膜と、窒化アルミニウムからなる拡散防止膜を用いてp型MISトランジスタの実効仕事関数を調整する構成とする。
【0014】
具体的に、本発明に係る半導体装置は、p型半導体領域及びn型半導体領域を有する半導体基板と、p型半導体領域の上に形成された第1の界面層と、第1の界面層の上に形成され、アルミニウムを含む第1のゲート絶縁膜と、第1のゲート絶縁膜の上に形成された第1のゲート電極と、n型半導体領域の上に形成された第2の界面層と、第2の界面層の上に形成され、実効仕事関数を低下させる効果を有する元素を含む第2のゲート絶縁膜と、第2のゲート絶縁膜の上に形成された第2のゲート電極とを備え、第1のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1020/cm3以上であり、第2のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1019/cm3以下であり、第1の界面シリコン酸化膜の膜厚と第2の界面シリコン酸化膜の膜厚との差は0.2nm以下である。
【0015】
本発明の半導体装置は、1×1020/cm3以上であり、第2のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1019/cm3以下であり、第1の界面シリコン酸化膜の膜厚と第2の界面シリコン酸化膜の膜厚との差は0.2nm以下である。このため、p型MISトランジスタに適したeWFを実現すると共に、EOTを小さく抑えることができる。また、n型MISトランジスタのゲート絶縁膜にAlがほとんど含まれていないため、第2のゲート絶縁膜中における実効仕事関数を低下させる効果を有する元素の濃度を低く抑えることができる。従って、n型MISトランジスタの移動度及び駆動力を向上させることができる。
【0016】
本発明の半導体装置において、第1のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、第1のゲート絶縁膜の下部におけるアルミニウムの濃度よりも高くてもよい。
【0017】
本発明の半導体装置は、戦記第1のゲート絶縁膜と第1のゲート電極との間に形成されたアルミニウムからなる第1のキャップ膜をさらに備えていてもよい。
【0018】
本発明の半導体装置は、第1のゲート絶縁膜と第1のゲート電極との間に形成された窒化アルミニウムからなる拡散防止膜をさらに備えていてもよい。このような構成とすることにより、Alを高誘電率膜中に効率よく拡散させることが可能となる。
第1のゲート電極及び第2のゲート電極には、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タンタルシリコン、窒化チタンアルミニウム又は窒化ハフニウムからなる膜を用いることができる。
【0019】
本発明の半導体装置において、第2のゲート絶縁膜には、ランタン、イットリウム、マグネシウム又はガドリニウムを含む膜を用いることができる。
【0020】
本発明の半導体装置において、第2のゲート絶縁膜は、ランタンを含み、第2の界面シリコン酸化膜と半導体基板との界面におけるランタンの濃度は1.5原子%以下としてもよい。
【0021】
本発明の半導体装置において、高誘電率膜には、ハフニウムを含む膜又はジルコニウムを含む膜を用いることができる。
【0022】
本発明の半導体装置は、半導体基板の上に形成された層間絶縁膜をさらに備え、層間絶縁膜は、p型半導体領域を露出する第1の開口部と、n型半導体領域を露出する第2の開口部とを有し、第1のゲート絶縁膜は、第1の開口部の側面及びp型半導体領域の第1の開口部から露出した部分を覆うように形成され、第2のゲート絶縁膜は、第2の開口部の側面及びn型半導体領域の第2の開口部から露出した部分を覆うように形成されている構成とすればよい。このような構成とすることにより、ソースドレインをゲート絶縁膜よりも先に形成できるため、ゲート絶縁膜を形成した後の熱処理工程を低減できる。
【0023】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、p型半導体領域及びn型半導体領域を有する半導体基板の上に、界面シリコン酸化膜、高誘電率膜、アルミニウムからなる第1のキャップ膜、窒化アルミニウムからなる拡散防止膜及びハードマスクを順次形成する工程(a)と、工程(a)よりも後に、第1のキャップ膜、拡散防止膜及びハードマスクにおけるn型半導体領域の上に形成された部分を除去する工程(b)と、工程(b)よりも後に、半導体基板上に実効仕事関数を低下させる効果を有する元素を含む第2のキャップ膜を形成する工程(c)と、工程(c)よりも後に、熱処理を行う工程(d)と、工程(d)よりも後に、半導体基板上に電極膜を形成する工程(e)と、工程(e)よりも後に、電極膜、高誘電率膜及び界面シリコン酸化膜をパターニングすることにより、n型半導体領域の上に第1の界面シリコン酸化膜、第1のゲート絶縁膜及び第1のゲート電極を形成し、p型半導体領域の上に第2の界面シリコン酸化膜、第1のゲート絶縁膜及び第2のゲート電極を形成する工程(f)とを備えていることを特徴とする。
【0024】
本発明の半導体装置の製造方法は、Alからなる第1のキャップ膜の上にAlNからなる拡散防止膜を形成する。このため、ハードマスクへのAlの拡散を抑えることができ、高誘電率膜中に効率よくAlを拡散させることが可能となる。また、第1のキャップ膜がAlであるため、界面シリコン酸化膜の増膜を抑えることができ、EOTを小さく保つことが可能となる。さらに、Alは除去し易いためn型半導体領域に残存するAlを低減することができる。これにより、第2のゲート絶縁膜中における実効仕事関数を低下させる効果を有する元素の濃度を低く抑えることが可能となる。従って、n型MISトランジスタの移動度及び駆動力を向上させる効果も得られる。
【0025】
本発明の半導体装置の製造方法において、第1のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1020/cm3以上であり、第2のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1019/cm3以下であり、第1の界面シリコン酸化膜の膜厚と第2の界面シリコン酸化膜の膜厚との差は0.2m以下とすればよい。
【0026】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(b)よりも後で且つ工程(e)よりも前に、第1のキャップ膜に含まれるアルミニウムを拡散させるアルミニウム拡散工程(f)をさらに備えていてもよい。
【0027】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程(d)よりも後で且つ工程(e)よりも前に、第2のキャップ膜を除去する工程(h)をさらに備えていてもよい。
【0028】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(h)よりも後で且つ工程(e)よりも前に、p型半導体領域においてハードマスクを除去する工程(i)をさらに備えていてもよい。
【0029】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(i)よりも後で且つ工程(e)よりも前に、p型半導体領域において、拡散防止膜を除去する工程(j)をさらに備えていてもよい。
【0030】
本発明の半導体装置の製造方法において、第2のキャップ膜には、ランタン、イットリウム、マグネシウム又はガドリニウムを含む膜を用いることができる。
【0031】
本発明の半導体装置の製造方法において、第2のキャップ膜は、ランタンを含み、工程(d)では、800℃以下の温度で熱処理を行えばよい。
【0032】
本発明の半導体装置の製造方法において、高誘電率膜には、ハフニウムを含む膜又はジルコニウムを含む膜を用いることができる。
【0033】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(a)よりも前に、p型半導体領域にp型ソースドレイン拡散層を形成し、n型半導体領域にn型ソースドレイン拡散層を形成する工程(i)と、工程(i)よりも後で且つ工程(a)よりも前に、p型半導体領域を露出する第1の開口部及びn型半導体領域を露出する第2の開口部を有する層間絶縁膜を形成する工程(j)とをさらに備え、工程(a)では、高誘電率膜を第1の開口部及び第2の開口部の側面並びにp型半導体領域の第1の開口部から露出した部分及びn型半導体領域の第2の開口部から露出した部分を覆うように形成してもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る半導体装置及びその半導体装置の製造方法によれば、デュアルメタルゲートプロセスを用いることなく、p型MISトランジスタ及びn型MISトランジスタ双方の特性を向上した半導体装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】評価用半導体装置を示す断面図である。
【図2】評価用半導体装置の容量と電圧との関係を示す特性図である。
【図3】キャップ膜の膜厚とEOTとの関係を示す特性図である。
【図4】(a)〜(c)は評価用半導体装置の断面であり、(a)はキャップ膜がAlOx膜の場合におけるPチャネル側の断面を示し、(b)はキャップ膜がAl膜の場合のPチャネル側の断面を示し、(c)はNチャネル側の断面を示す。
【図5】塩酸による処理時間とキャップ膜の残存量との関係を示す特性図である。
【図6】キャップ膜を除去した後に高誘電率膜に含まれるアルミニウム濃度を測定した結果を示す特性図である。
【図7】キャップ膜の膜厚とn型MISトランジスタのeWFとの関係を示す特性図である。
【図8】(a)〜(c)はTiN膜中へのAl拡散を測定した結果であり、(a)は熱処理前の分布を示し、(b)は800℃で熱処理した後の分布を示し、(c)はAlNからなる拡散防止膜を形成した場合に800℃で熱処理した後の分布を示す。
【図9】第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図10】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図11】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図12】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図13】p型MISトランジスタにおけるAlの垂直方向の分布を示す特性図である。
【図14】p型MISトランジスタにおけるEOT及びeWFの分布を示す特性図である。
【図15】n型MISトランジスタにおける熱処理温度とeWF及びEOTとの関係を示す特性図である。
【図16】n型MISトランジスタにおけるLaの深さ方向の分布を示す特性図である。
【図17】p型MISトランジスタにおける熱処理温度とeWF及びEOTとの関係を示す特性図である。
【図18】第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図19】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図20】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図21】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
まず、p型MISトランジスタの酸化膜換算膜厚(EOT)の増大を抑えつつ、p型MISトランジスタに適した実効仕事関数(eWF)を実現できるようにする原理を説明する。
【0037】
図1は、評価用半導体装置の断面構成を示している。評価用半導体装置は、シリコン基板である半導体基板301の上に順次形成された、金属−絶縁膜−半導体(MIS)キャパシタであり、界面シリコン酸化膜302、高誘電率膜303、キャップ膜304及び電極膜305を有している。界面シリコン酸化膜302は、膜厚が1.2nm程度のSiO2膜である。高誘電率膜303は、膜厚が1.5nmの窒素含有ハフニウムシリケート(HfSiON)膜である。電極膜305は、膜厚が15nmのTiN膜である。
【0038】
図2は、評価用半導体装置の容量−電圧(CV)特性を示している。図2において、印加する電圧の周波数は100kHzとした。キャップ膜304として膜厚が0.5nmのAlOx膜又はAl膜を設けた場合には、キャップ膜を形成していない場合よりもフラットバンド電圧(Vfb)が正方向にシフトした。これは、AlOx膜又はAl膜からなるキャップ膜304を設けることによりeWFが増加したことを示している。また、膜厚が同じ場合、eWFの増加量はAlOx膜の方がAl膜よりも大きくなった。
【0039】
一方、図2に示すようにキャップ膜304をAlOx膜とした場合には、キャップ膜を形成していない場合と比べて蓄積容量が低下した。これは、EOTが増大していることを示している。一方、キャップ膜304をAl膜とした場合には、蓄積容量はキャップ膜を形成していない場合とほぼ同じであった。
【0040】
図3は、キャップ膜の膜厚とEOTの増加量との関係を示している。AlOx膜の場合には、膜厚が厚くなるに従いEOTの増加量が大きくなった。しかし、Al膜の場合には、膜厚が厚くなってもEOTの値はほぼ一定であった。
【0041】
図4(a)〜(c)は、評価用半導体装置の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した結果を模式的に示している。(a)はキャップ膜に膜厚が0.5nmのAlOx膜を用いた場合を示し、(b)はキャップ膜に膜厚が0.5nmのAl膜を用いた場合を示している。また、(c)はNチャネル側の断面を示している。図4に示すように、キャップ膜がAl膜である場合の方がAlOx膜である場合よりも界面シリコン酸化膜の膜厚が薄くなっていることが明らかとなった。これは、キャップ膜がAlOx膜である場合には、余剰の酸素がキャップ膜の堆積直後又は堆積後の熱処理工程において、高誘電率膜及び界面シリコン酸化膜中に拡散し、界面シリコン酸化膜を増膜させていることを示している。一方、Al膜の場合には、余剰の酸素が拡散することがないため、界面シリコン酸化膜の増膜を抑えることができる。図4(c)に示したNチャネルの断面と比較すると、Nチャネル側の界面シリコン酸化膜の膜厚はキャップ膜がAlの場合の膜厚とほぼ同等になることが分かる。一方、キャップ膜にAlOxを用いた場合には、界面シリコン酸化膜の膜厚がNチャネル側の界面シリコン酸化膜と比較して0.2nm以上厚くなることが分かった。
【0042】
金属膜であるAl膜は、酸化膜であるAlOx膜と異なり希塩酸により容易に溶解除去することができる。図5は希塩酸による処理時間と高誘電率膜の上に形成したAl系キャップ膜の残存量との関係を示している。キャップ膜の膜厚はX線光電子分光(XPS)測定により求めた値である。図5に示すようにAl膜の場合には、数十秒の処理を行うことによりほぼ完全にキャップ膜を除去することができる。しかし、AlOx膜の場合には、1000秒程度処理を続けても0.1nm程度のAlOx膜が残存した状態で飽和するという結果となった。
【0043】
図6は、Nチャネル領域においてAl又はAlOxからなるキャップ膜を除去した後に、高誘電率膜に残存するAl量の深さ方向の分布を図示している。まず、Si基板の上に、SiO2からなる界面シリコン酸化膜、HfSiONからなる高誘電率膜及びキャップ膜を形成した後、希塩酸によりキャップ膜を除去し、TiNからなる電極膜を形成した。図6において、キャップ膜を膜厚が0.5nmのAlOx膜とした場合を破線で示し、キャップ膜を膜厚が1.0nmのAl膜とした場合を実線で示している。Al残存量の測定にはバックサイドからの二次イオン質量分析(SIMS)法を用いた。図6に示すように、キャップ膜をAlOx膜とした場合には、塩酸系のAl除去洗浄を行っても、高誘電率膜とTiN膜との界面において2×1020原子/cm3程度のAlが残留している。一方、キャップ膜をAl膜とした場合には、塩酸系のAl除去洗浄を行った後の高誘電率膜バルク中におけるAlの残留量は、1×1019原子/cm3以下となった。
【0044】
n型MISトランジスタのゲート絶縁膜にAlが拡散してしまうと、eWFを低い側にシフトさせるLa等の効果が阻害されるおそれがある。図7はキャップ膜を除去した後に、高誘電率膜の上にLaOx膜を堆積し、TiNからなる電極膜を形成した場合のLaOx膜の膜厚とeWFとの関係を示している。キャップ膜がAlOx膜である場合においても、Al膜である場合においても、LaOx膜の膜厚が厚くなるに従い、eWFが小さくなる傾向が認められた。しかし、これは、LaOx膜を厚くすることにより高誘電率膜中に拡散するLaの量が増大するためである。キャップ膜がAlOx膜である場合には、Al膜である場合よりもeWFが0.15eVから0.2eV程度高くなった。従って、キャップ膜がAl膜である場合の方がAlOx膜の場合よりも、同じeWFを実現するために必要なLaの濃度を低くすることができる。ゲート絶縁膜中におけるLa濃度を低くすることができれば、Nチャネル側のキャリアの移動度が上昇し、トランジスタの電流駆動力を向上させることが可能となるという利点が得られる。
【0045】
AlOx膜に代えてAl膜を用いることによりp型MISトランジスタのEOTの増加を抑えることができ且つn型MISトランジスタの電流駆動力を向上できるという利点が得られる。しかし、AlOx膜と同等のeWFを実現するためには、Al膜の膜厚をAlOx膜よりも厚くする必要がある。Al膜の膜厚を厚くしなければならない理由は、Al膜の場合にはAlOx膜よりもTiN膜中に拡散し易いためであると考えられる。つまり、Al膜を用いた場合には、Alが高誘電率膜中だけでなくTiN膜中にも拡散する。このため、高誘電率膜中のAl濃度が低下し、eWFのシフト量が小さくなると考えられる。
【0046】
Al膜の膜厚を厚くしてもEOTにはほとんど影響が生じない。このため、EOTに関しては、AlのTiN膜への拡散が生じても大きな問題はない。しかし、AlのTiN膜への拡散はアニール特性に起因して、面内において常に一定となるとは限らない。このため、ハードマスク除去後のAlの残留膜厚にばらつきが生じ、eWFにばらつきが生じるおそれがある。従って、AlのTiN膜への拡散を抑える必要がある。
【0047】
AlのTiN膜への拡散を抑えるためには、Al膜とTiN膜との間に、拡散防止膜を形成すればよい。拡散防止膜は、化学的に安定な膜であればよいが、相補型トランジスタを形成するためには、除去が容易な膜である必要がある。このため、拡散防止膜として窒化アルミニウム(AlN)膜を用いることが好ましい。
【0048】
図8(a)〜(c)は、TiN膜とAl膜との界面におけるTi及びAlのプロファイルを示している。(a)は、TiN膜の上にAl膜を積層した直後のプロファイルを示し、(b)は800℃の熱処理を行った後のプロファイルを示し、(c)はTiN膜とAl膜との間にAlN膜を挿入した場合における、800℃の熱処理を行った後のプロファイルを示している。図8(b)に示すようにAlN膜がない場合には、熱処理を行った後AlはTiN膜中に深く拡散している。しかし、図8(c)に示すようにAlN膜を挿入した場合には熱処理をした後においてもTiN膜中へのAlの拡散が抑えられている。
【0049】
p型MISトランジスタとn型MISトランジスタとを形成し相補型MISトランジスタを形成する場合には、p型MISトランジスタのeWFを増大させる効果を有する第1のキャップ膜を形成した後、TiN等からなるハードマスクを形成することが一般的である。ハードマスクは、n型MISトランジスタのeWFを低下させる効果を有する第2のキャップ膜中に含まれるLa等が、p型MISトランジスタのゲート絶縁膜中に拡散することを防止するために形成する。このため、第2のキャップ膜を拡散させた後、ハードマスクの少なくとも一部を除去することが一般的である。また、ハードマスクをすべて除去することも行われる。Al膜とAlN膜とはエッチレートが異なるため、Al膜とAlN膜との界面においてエッチングを容易に停止させることができる。従って、AlNからなる拡散防止膜を、Alからなる第1のキャップ膜とTiNからなるハードマスクとの間に形成した場合には、ハードマスクの除去が容易となるという利点も得られる。
【0050】
このように、p型MISトランジスタのキャップ膜としてAlOx膜に代えてAl膜を用い、さらにAlNからなる拡散防止膜を設けることにより、p型MISトランジスタのEOTを増大させることなくeWFを増大させることができる。また、AlのTiNへの拡散を阻止することにより、Alの拡散量及びハードマスク除去後のAl残留量のばらつきを抑制できる。これにより、eWFシフト量のばらつきを抑えることができる。さらに、n型MISトランジスタの高誘電率膜中のAl残存量を従来のキャップ膜としてAlOxを用いた場合と比べて大幅に減らすことができる。その結果、n型MISトランジスタ特性の劣化を抑制することが可能となる。以下に、実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
【0051】
(第1の実施形態)
図9は、第1の実施形態に係る半導体装置の断面構成を示している。シリコン(Si)基板等の半導体基板101には、p型MISトランジスタが形成されたp型半導体領域10A及びn型MISトランジスタが形成されたn型半導体領域10Bが形成されている。p型半導体領域10Aは、素子分離領域102により分離されたnウェル103を有し、n型半導体領域10Bは、素子分離領域102により分離されたpウェル104を有している。素子分離領域102は、LOCOS(local oxidation of silicon)法又はSTI(shallow trench isolation)法等とすればよい。
【0052】
nウェル103の上には、p型ゲートスタックが形成されている。p型ゲートスタックは順次形成された、シリコン酸膜(SiO2膜)又は酸窒化シリコン膜(SiON膜)等からなる界面シリコン酸化膜105と、高誘電率膜である第1のゲート絶縁膜106Aと、Al膜である第1のキャップ膜107と、AlN膜である拡散防止膜117と、第1のゲート電極119Aとを有している。pウェル104の上には、n型ゲートスタックが形成されている。n型ゲートスタックは順次形成された、界面シリコン酸化膜105と、La等の元素を含む高誘電率膜である第2のゲート絶縁膜106Bと、第2のゲート電極119Bとを有している。
【0053】
高誘電率膜は、ハフニウムシリケート(HfSiO)膜、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)膜、酸化ハフニウム(HfO)膜又はジルコン酸ハフニウム(HfZrO)膜等のHf及びOを含む絶縁膜又は酸化ジルコニウム(ZrO)等のジルコニウムを含む絶縁膜であればよい。第1のゲート絶縁膜106AにはeWFを増大させる効果を有するAlが含まれ、第1のゲート絶縁膜106Aの上部におけるAlの面密度は、1×1015cm-2以上である。第2のゲート絶縁膜106Bには、Alは実質的に含まれておらず、第2のゲート絶縁膜106Bの上部におけるAlの面密度は1×1012cm-2以下である。また、第2のゲート絶縁膜106BにはeWFを低下させる効果を有するLaが含まれている。一方、第1のゲート絶縁膜106AにはLaは実質的に含まれていない。なお、第2のゲート絶縁膜106Bは、Laに代えてマグネシウム(Mg)、イットリウム(Y)、マグネシウム(Mg)若しくはガドリニウム(Gd)等を含んでいてもよい。
【0054】
第1のゲート電極119Aは、TiNからなるハードマスク108と、TiNからなる第1の電極膜110と、ポリシリコンからなる第2の電極膜111との積層膜である、第2のゲート電極119Bは、TiNからなる第1の電極膜110と、ポリシリコンからなる第2の電極膜111との積層膜である。第1のゲート電極119Aはハードマスク108を含むため、第2のゲート電極119Bよりも厚い。このため、eWFをより大きくすることができる。但し、第1のゲート電極119Aはハードマスク108を含まない構成であってもよい。また、ハードマスク108及び第1の電極膜110は、TiNに代えて窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タンタルシリコン(TaSiN)、炭化タンタル(TaC)又は窒化ハフニウム(HfN)等であってもよい。
【0055】
p型ゲートスタックが、拡散防止膜117及び第1のキャップ膜107を有している構成を示した。しかし、拡散防止膜117は除去されていてもよい。また、第1のキャップ膜107は拡散して第1のゲート絶縁膜106Aと一体となっていてもよい。n型ゲートスタックは、eWFを低下させる効果を有する元素を含む第2のキャップ膜を有していてもよい。
【0056】
p型ゲートスタック及びn型ゲートスタックの側面には、サイドウォール113が形成されている。nウェル103におけるp型ゲートスタックの両側方にはp型エクステンション拡散層115Aが形成され、p型エクステンション拡散層115Aの外側方にはp型ソースドレイン拡散層116Aが形成されている。pウェル104におけるn型ゲートスタックの両側方にはn型エクステンション拡散層115Bが形成されn型エクステンション拡散層115Bの外側方にはn型ソースドレイン拡散層116Bが形成されている。第1のゲート電極119A、第2のゲート電極119B、p型ソースドレイン拡散層116A及びn型ソースドレイン拡散層116Bの上部にはシリサイド層114が形成されている。p型ゲートスタック及びn型ゲートスタックを覆うように層間絶縁膜121が形成され、層間絶縁膜121には、シリサイド層114と接続されたコンタクトプラグ122が形成されている。
【0057】
図10〜図12は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示している。まず、図10(a)に示すように、半導体基板101に素子分離領域102により互いに分離されたp型MISトランジスタを形成するp型半導体領域10A及びn型MISトランジスタを形成するn型半導体領域10Bを形成する。半導体基板101は例えばSi基板とすればよい。p型半導体領域10Aにはnウェル103が形成され、n型半導体領域10Bにはpウェル104が形成されている。素子分離領域102は、LOCOS(local oxidation of silicon)法又はSTI(shallow trench isolation)法等により形成すればよい。
【0058】
次に、図10(b)に示すように、半導体基板101上の全面に、界面シリコン酸化膜105を形成する。界面シリコン酸化膜105は、シリコン酸化膜(SiO2膜)又は酸窒化シリコン膜(SiON膜)等とすればよい。詳細には、光学膜厚が0.5nm程度のケミカル酸化膜と、膜厚が0.5nm〜1.5nm程度のラジカル酸化膜とすればよい。ケミカル酸化膜は、塩酸及び過酸化水素混合溶液により半導体基板101を処理することにより形成すればよい。ラジカル酸化膜は、H2及びN2O混合ガス雰囲気で600℃〜850℃程度の熱処理を行うことにより形成すればよい。
【0059】
続いて、界面シリコン酸化膜105の上に、高誘電率膜106を形成する。高誘電率膜106は、HfSiO膜、HfSiON膜、HfO膜又はHfZrO等のHf系の絶縁膜とすればよい。高誘電率膜106は例えば原子層堆積法(ALD法)により形成すればよい。この場合、HfCl4(四塩化ハフニウム)等の無機系原料又はHf[N(C2H5)CH3]4(テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム)等のHfを含む有機系材料と、SiH4等のSiを含むガス又はSiH[N(CH3)2]3(トリス(ジメチルアミノ)シラン)等のSiを含む有機系材料とを原料として形成すればよい。300℃〜600℃程度の成膜温度において、短時間交互に堆積を行い、余剰原料のパージを行いながら、酸素(O2)、オゾン(O3)又は水蒸気(H2O)等を用いて酸化すればよい。
【0060】
高誘電率膜106の膜厚は、EOTが1.0nm〜1.5nm程度の範囲を実現しようとする場合には、ラジカル酸化膜と合わせた物理膜厚を2nm〜3.5nm程度とすればよい。なお、高誘電率膜106はHf系以外に酸化ジルコニウム(ZrO)等のジルコニウム系の膜としてもよい。Zr系の膜とする場合には、無機系原料であるZrCl4(四塩化ジルコニウム)又は有機系原料であるZr[N(C2H5)CH3]4(テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム)等を用いてHf系の膜と同様の成膜方法により形成したり、Zrの導入を行ったりすればよい。
【0061】
続いて、高誘電率膜106の結晶化を防止するために、高誘電率膜106に対してプラズマ窒化処理を行うことも可能である。プラズマ窒化処理における窒素の導入量が多すぎる場合には、トランジスタ界面特性の劣化と共にBTI特性を劣化させるおそれがある。また、高誘電率膜中において窒素元素が正の固定電荷を持ち、窒素導入量を増加させると仕事関数が低下するため、窒素の導入量は10原子%程度以下とすることが好ましい。
【0062】
この後、高誘電率膜106に対して、酸素又は窒素雰囲気において熱処理を行うことも可能である。これにより高誘電率膜106中の不純物の除去及び欠陥の修復ができる。また、界面シリコン酸化膜105との密着性を向上させることができる。
【0063】
続いて、高誘電率膜106の上に、アルミニウム(Al)からなる第1のキャップ膜107を形成する。第1のキャップ膜107は物理気相堆積(PVD)法により形成すればよい。詳細には、アルミニウムターゲットを用いて、希ガス雰囲気におけるスパッタ放電にて、物理膜厚が0.3nm〜2nm程度となるように成膜を行う。続いて、窒化アルミニウム(AlN)からなる拡散防止膜117を形成する。拡散防止膜117の膜厚は1nm〜5nm程度とすればよい。拡散防止膜117を形成する際には、窒素雰囲気においてAlターゲットを用いたPVD法により形成することが可能である。その後、TiNからなるハードマスク108を形成する。形成したハードマスク108の膜厚は第2のキャップ膜拡散侵入深さに応じて決定すればよい。第2のキャップ膜をLaOxとする場合には、Laの拡散侵入深さが4nm程度となるため、6nm〜15nm程度とすればよい。
【0064】
第1のキャップ膜107、拡散防止膜117及びハードマスク108は、PVD法により連続して成膜することが好ましい。ハードマスク108を形成する前に大気開放を行った場合、Alの酸化が進行し、p型MISトランジスタのEOT及びeWFがばらつくおそれがある。また、Alの除去性が低下しn型MISトランジスタの特性が劣化するおそれがある。なお、PVD法に代えて、ALD法又は化学気相堆積(CVD)法等により形成してもよい。ALD法を用いることにより、膜厚及び不純物含有量の制御性を向上できるのみならず、プロセスの低温化が可能となる等の利点が得られる。
【0065】
次に、図10(c)に示すように、ハードマスク108、拡散防止膜117及び第1のキャップ膜107におけるn型半導体領域10Bに形成された部分を、リソグラフィ及びエッチング技術を用いて選択的に除去する。エッチングの条件は、高誘電率膜106がダメージを受けないように設定する。具体的には、塩酸、塩酸と過酸化水素水との混合溶液(HPM)又は硫酸と過酸化水素水との混合溶液(SPM)を用いればよい。塩酸の場合、濃度を1/100〜1/1000程度とすればよい。HPM又はSPMの場合、濃度を、1/100〜1/1000程度とすればよい。Al膜は、AlOx膜よりも除去性に優れており洗浄負荷を低減できるため、高誘電率膜106へのダメージをより低減できるという利点も有する。
【0066】
なお、先に述べた高誘電率膜106へのプラズマ窒化処理をこの段階において、行うことも可能である。Pチャネル側に窒素が混入すると、界面特性及びBIT特性の劣化が誘引される。しかしこの段階においては、Pチャネル側がTiN/AlNによりマスクされているため、Pチャネル側への窒素の混入を阻止し、Nチャネルのみ選択的に窒化させることが可能となる。
【0067】
次に、図10(d)に示すように、Laを含む第2のキャップ膜109を形成する。第2のキャップ膜はスパッタ法又はALD法を用いて形成すればよい。スパッタ法を用いる場合には、ランタンからなるターゲットを用い、Arガスを用いた直流放電により形成すれば、La膜が形成できる。また、酸素ガスを用いた反応性スパッタによって酸化ランタン(LaOx)膜を形成することができる。LaOxからなるターゲットを用いたRFスパッタによってLaOx膜を形成してもよい。また、Laを含む有機材料を気化させ、堆積した後、パージ処理、酸化処理及び有機物除去処理を順に行って、いわゆるALD法によりLaOx膜を形成してもよい。
【0068】
以下に、RFスパッタを用いて第2のキャップ膜109としてLaOx膜を形成する場合の具体的な条件を説明する。高誘電率膜へのダメージを抑制するため、RFパワーを300W〜800W程度、放電圧力を0.1Torr程度、自己バイアス電圧を100V程度とすることが好ましい。これにより成膜レートを1nmあたり40秒〜100秒程度に制御することができる。このようにして、膜厚が0.1nm〜2nm程度の第2のキャップ膜109を形成する。
【0069】
この後、熱処理を行うことにより、n型半導体領域10Bには、第2のキャップ膜109に含まれるLaが拡散したLa拡散高誘電率膜106bが形成される。また、p型半導体領域10Aにおいては、Laがハードマスク108中に拡散し、La拡散領域108aが形成される。熱処理は窒素雰囲気において600℃〜850℃程度の温度で行えばよい。熱処理時間は雰囲気の圧力、熱処理方法に依存するが、常圧で急速熱処理法を用いた場合は5秒〜120秒程度、減圧下で抵抗加熱ヒータを用いた場合は1分〜10分程度であれば特性を劣化させないことを確認している。
【0070】
図11(a)に示すように、高誘電率膜106及びハードマスク108の上に残存する未反応の第2のキャップ膜109を除去する。未反応の第2のキャップ膜109の除去は行わなくてもよいが、未反応の第2のキャップ膜109を除去することにより、n型MISトランジスタにおいて過剰なLaによる耐圧及び信頼性の低下を抑えることができる。また、p型トランジスタにおいてゲートエッチング時のエッチストップ及び界面抵抗の上昇によるデバイスの遅延を抑えることができる。
【0071】
未反応の第2のキャップ膜109を洗浄除去する際は、n型半導体領域10Bにおける高誘電率膜106にダメージを与えないような条件で行う。具体的には、塩酸、塩酸過酸化水素(HPM)又は硫酸過酸化水素(SPM)を用いればよい。塩酸の場合、濃度を1/100〜1/1000程度とすればよい。HPM又はSPMの場合、濃度を、1/100〜1/1000程度とすればよい。
【0072】
また、ハードマスク108の上部に形成されたLa拡散領域108aも除去することが好ましい。第2のキャップ膜109をLaOxとした場合には、La拡散領域108aは、酸素を吸収している。このため、第2のキャップ膜109を残存させた場合には酸素の供給源となり、後の工程において界面増膜等の原因となるおそれがある。ハードマスク108中へのLaの拡散長は熱処理温度に依存し、800℃の場合には3nm程度となることが明らかとなっている。従って、第2のキャップ膜109を除去する際に、ハードマスク108の表面を3nm以上除去することが好ましく、オーバーエッチを含め5nm程度除去することがさらに好ましい。また、ハードマスク108を完全に除去してもよい。但し、ハードマスク108を残存させ、p型MISトランジスタのゲート電極の一部とすれば、p型MISトランジスタのゲート電極の膜厚とn型MISトランジスタのゲート電極の膜厚とに差を設けることができ、eWFを制御することが可能となる。
【0073】
また、ハードマスク108を完全に除去する場合に、拡散防止膜117の一部が除去されても問題ない。また、拡散防止膜117を完全に除去してもよい。但し、拡散防止膜117を完全に除去する場合には、拡散防止膜117を除去する前に第1のキャップ膜107を高誘電率膜中に十分拡散させることが好ましい。
【0074】
次に、図11(b)に示すように、半導体基板101の全面に、TiNからなる第1の電極膜110を形成する。第1の電極膜110は、PVD法、CVD法又はALD法により形成すればよい。第1の電極膜110の膜厚は、ゲート電極の仕事関数に影響を与える。従って、第1の電極膜110の膜厚は4nm〜20nm程度とすればよい。
【0075】
次に、図11(b)に示すように、膜厚が80nm〜150nmのリンがドーピングされたポリシリコンからなる第2の電極膜111を堆積する。リンの濃度は1×1014〜2×1015/cm2程度とすればよい。また、ノンドープのポリシリコン膜を形成した後、砒素等を注入してもよい。
【0076】
次に、図12(a)に示すように、リソグラフィ及びエッチング技術を用いて、p型半導体領域10Aにおいて、第2の電極膜111、第1の電極膜110、ハードマスク108、高誘電率膜106及び界面シリコン酸化膜105をエッチングしてp型ゲートスタックを形成する。p型ゲートスタックは、第2の電極膜111、第1の電極膜110及びハードマスク108を含む第1のゲート電極119Aと、Alが拡散した高誘電率膜からなる第1のゲート絶縁膜106Aとを有する。また、n型半導体領域10Bにおいて、第2の電極膜111、第1の電極膜110、La拡散高誘電率膜106b及び界面シリコン酸化膜105をエッチングしてn型ゲートスタックを形成する。n型ゲートスタックは、第2の電極膜111及び第1の電極膜110を含む第2のゲート電極119Bと、Laが拡散した高誘電率膜からなる第2のゲート絶縁膜106Bとを有する。
【0077】
次に、図12(b)に示すように、公知の方法により、nウェル103及びpウェル104に接合深さが比較的浅いp型エクステンション拡散層115A及びn型エクステンション拡散層115Bをそれぞれ形成する。続いて、p型ゲートスタック及びn型ゲートスタックの側面にサイドウォール113を形成する。この後、nウェル103及びpウェル104に接合深さがエクステンション拡散層よりも深いp型ソースドレイン拡散層116A及びn型ソースドレイン拡散層116Bをそれぞれ形成する。さらに、シリサイド層114を形成する。
【0078】
次に、図12(c)に示すように、公知の方法により、半導体基板101の上に、p型ゲートスタック及びn型ゲートスタックを覆うように、例えばSiO2膜からなる層間絶縁膜121を形成する。続いて、層間絶縁膜121を貫通してシリサイド層114に到達するタングステン等からなるコンタクトプラグ122を形成する。その後、必要に応じて配線等(図示せず)を形成する。
【0079】
本実施形態においては、Alからなる第1のキャップ膜107を拡散させるための熱処理工程は特に設けなかった。しかし、第2のキャップ膜109を拡散させる熱処理工程及びその後の熱処理工程において、第1のキャップ膜107の拡散が生じる。また、これらの熱処理工程とは別に、Al拡散工程を設けてもよい。Al拡散工程を行わない場合には、図13において破線で示すように、高誘電率膜の上部にAl濃度が高い部分が生じる。一方、Al拡散工程を行うことにより、図13において実線で示すように、高誘電率膜中へのAlの拡散が促進され、高誘電率膜中のAl濃度はさらに均一となる。Alを高誘電率膜中に十分拡散させ、AlとHfとの強固な結合を形成することにより、eWFを増大させる効果がより大きくなり、ゲートリーク電流(Jg)を低減させたり、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)等の信頼性を向上させたりする効果が得られる。
【0080】
Al拡散工程である熱処理は、第1のキャップ膜107を形成した後で且つゲートスタックを形成する前であればいつ行ってもよい。しかし、熱処理によりn型半導体領域10Bにおいて第1のキャップ膜107の除去性が低下するおそれがある。このため、n型半導体領域10Bにおいて第1のキャップ膜107を除去した後にAl拡散工程を行うことが好ましい。また、第2のキャップ膜109を拡散するための熱処理を行った後、又はその後のハードマスク108の除去後に、Al拡散工程を実施してもよい。但し、拡散防止膜117を除去した後にAl拡散工程を行うと、TiNからなる第1の電極膜中にAlが拡散するおそれがある。従って、拡散防止膜117を除去する前にAl拡散工程を行うことが好ましい。
【0081】
第1のキャップ膜中のAlが高誘電率膜中に拡散しHfとAlとが結合した後は、AlのTiN膜中への拡散はほとんど生じない。従って、第2のキャップ膜109を拡散するための熱処理を行った後であれば、拡散防止膜117を除去しても問題ない。
【0082】
また、Al拡散工程は、Alの酸化を抑えるため不活性ガス雰囲気において行うことが好ましい。処理温度は800℃以上で行えばよいが、温度が高すぎると高誘電率膜の酸化及び結晶化が進行するため1000℃以下とすることが好ましい。
【0083】
図14は、第1のキャップ膜を膜厚が1nmのAl膜とした場合と、膜厚が0.5nmのAlOx膜とした場合のEOT及びeWFの分布を示している。第1のキャップ膜に膜厚が1nmのAl膜を用いた場合には、膜厚が0.5nmのAlOx膜を用いた場合と比べてp型MISトランジスタのeWFを低下させることなく、EOTを0.2nm程度小さくすることができる。また、キャップ膜を形成していない場合のEOTとの差は0.2nm以下となる。従って、n型MISトランジスタの第2のゲート絶縁膜のEOTと、p型MISトランジスタの第1のゲート絶縁膜とEOTとの差は0.2nm以下となる。
【0084】
また、第1のキャップ膜をAl膜とすることにより、第2のキャップ膜の材料であるLaOxをゲート絶縁膜中に熱拡散するための熱処理の温度を低くすることが可能となる。図15は、第2のキャップ膜を拡散するための熱処理の温度と、n型MISトランジスタのeWF及びEOTの関係を示している。図15に示すように、熱処理温度が高いほどeWFの値を低くすることができる。n型MISトランジスタのeWFの値は、4.1eV程度であればよい。第1のキャップ膜をAlOx膜とした場合には、塩酸系の溶液による除去性が劣るため、高誘電率膜中にAlが残存する。このため、残存したAlがeWFへ及ぼす影響を打ち消し且つ必要なeWFを得るためには、850℃程度の高温で熱処理を行い、La拡散量を増加させる必要がある。しかし、第1のキャップ膜をAl膜とした場合には、図15に示すように熱処理温度を700℃〜750℃と低温化することができる。図15に示すように、第1のキャップ膜がAl膜の場合には、AlOx膜の場合と異なり、熱処理温度が低い方がEOTを小さくできるという効果も得られる。また、熱処理温度を低くすることにより、図16に示すように熱処理温度を低くした場合には、半導体基板との界面近傍におけるLaの濃度を低くすることができ、界面特性を向上させることができる。界面特性の向上に伴い、n型MISトランジスタの移動度及び電流駆動力をさらに向上させることも可能となる。n型MISトランジスタにおいて界面シリコン酸化膜と半導体基板との界面におけるLaの濃度は1.5原子%以下程度とすることが好ましい。
【0085】
また、第2のキャップ膜を拡散するための熱処理の温度を低くすることによりp型MISトランジスタの特性をさらに向上させることも可能となる。図17は第2のキャップ膜を拡散するための熱処理の温度と、p型MISトランジスタのeWF及びEOTとの関係を示している。第1のキャップ膜がAl膜である場合には、第2のキャップ膜を拡散するための熱処理の温度を低くしてもp型MISトランジスタのeWFを劣化させることなくEOTを小さくすることができる。
【0086】
第2のキャップ膜は、nMISトランジスタのeWFを低下させる効果を有する元素を含んでいればよく、Laに代えてガドリニウム(Gd)等の他のランタノイド又はその酸化膜としてもよい。また、イットリウム(Y)若しくはマグネシウム(Mg)又はこれらの酸化膜等としてもよい。
【0087】
第1の電極膜は、TiNに代えて窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タンタルシリコン(TaSiN)、炭化タンタル(TaC)又は窒化ハフニウム(HfN)等としてもよい。
【0088】
(第2の実施形態)
図18は第2の実施形態に係る半導体装置の断面構成を示している。図18において図9と同一の構成要素には同一の符号を附すことにより説明を省略する。
【0089】
本実施形態の半導体装置は、層間絶縁膜に形成された開口部に埋め込まれた立体型の第1のゲート絶縁膜106A及び第1のゲート電極119Aを有するp型MISトランジスタと、立体型の第2のゲート絶縁膜106B及び第2のゲート電極119Bを有するn型MISトランジスタとを備えている。
【0090】
このような構成とすることにより、ソースドレイン拡散層等の不純物拡散層を形成した後に、ゲート絶縁膜を形成することが可能となる。従って、ゲート絶縁膜に熱が加わる工程を低減することができるので、後の熱工程による高誘電率膜及びゲート電極材料のミキシング、界面層の増膜並びに高誘電率膜中のAlプロファイル及びLaプロファイルのブロード化による特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0091】
なお、図18において、サイドウォール113と半導体基板101との間には、SiO2からなる表面保護膜131が形成されている。SiNからなる層間絶縁膜136とサイドウォール113及び半導体基板101との間にはSiO2からなるエッチングストッパー膜135が形成されている。
【0092】
図19〜図21は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示している。まず、図19(a)に示すように、p型MISトランジスタを形成するp型半導体領域10Aとn型MISトランジスタを形成するn型半導体領域10Bを有する半導体基板101に、素子分離領域102により互いに分離されたnウェル103及びpウェル104を形成する。
【0093】
続いて、半導体基板101上の全面に膜厚が5nm程度のSiO2膜からなる表面保護膜131を形成する。表面保護膜131の上に、膜厚が100nm程度のポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜からなるダミーゲート132を形成する。ダミーゲート132の膜厚は、後で形成するp型ゲート電極及びn型ゲート電極の高さを考慮して決定すればよい。ダミーゲート132をマスクとしたセルフアラインプロセスにより、nウェル103にp型エクステンション拡散層115Aを形成し、pウェル104にn型エクステンション拡散層115Bを形成する。なお、ダミーゲート132に対してセルフアラインに、それぞれカウンター(逆極性)方向のイオン注入を行う、いわゆるハロー層の形成を行ってもよい。
【0094】
次に、図19(b)に示すように、半導体基板101上の全面に膜厚が8nm〜20nm程度の低温成膜シリコン窒化膜(SiN膜)を形成する。続いて、エッチバックを行いp型ゲート電極のサイドウォール113及びn型ゲート電極のサイドウォール113を形成する。続いて、nウェル103にダミーゲート132及びサイドウォール113をマスクとしたセルフアラインプロセスによりイオン注入を行い、さらに熱処理を行うことによりp型ソースドレイン拡散層116Aを形成する。同様に、pウェル104にダミーゲート132及びサイドウォール113をマスクとしたセルフアラインプロセスによりイオン注入を行い、さらに熱処理を行うことによりn型ソースドレイン拡散層116Bを形成する。続いて、表面保護膜131におけるp型ソースドレイン拡散層116A及びn型ソースドレイン拡散層116Bの上に形成された部分を除去した後、SiO2膜等からなるエッチングストッパー膜135を形成する。さらに、SiN膜からなる層間絶縁膜136を形成する。
【0095】
次に、図19(c)に示すように、化学的機械的研磨(CMP)法を用いて、エッチングストッパー膜135が露出するまで層間絶縁膜136を研磨する。この後、エッチングストッパー膜135及びダミーゲート132を反応性イオンエッチング(RIE)等により除去し、開口部136aを形成する。この際に、表面保護膜131も除去し、nウェル103及びpウェル104を露出させる。
【0096】
次に、図20(a)に示すように、低温酸化にて半導体基板101の開口部136aから露出した部分に界面シリコン酸化膜105を形成し、続いてALD法等により高誘電率膜106を形成する。この後、第1の実施形態と同様に高誘電率膜106に対してプラズマ窒化処理を行ってもよい。続いて、高誘電率膜106の上にAlからなる第1のキャップ膜107を形成し、第1のキャップ膜107の上にAlNからなる拡散防止膜117を形成する。さらに、拡散防止膜117の上にTiNからなるハードマスク108を形成する。
【0097】
次に、図20(b)に示すように公知のリソグラフィ技術を用いて、p型半導体領域10Aを覆うレジストマスク138を形成する。続いて、レジストマスク138をエッチングマスクとして、ハードマスク108、拡散防止膜117及び第1のキャップ膜107を選択的にエッチング除去する。エッチングの条件は高誘電率膜106にダメージが生じないように設定する。希塩酸、塩酸過酸化水素(HPM)又は硫酸過酸化水素(SPM)等を用いたウエットエッチングが好ましい。
【0098】
次に、図20(c)に示すようにレジストマスク138の除去を行う。この後、第1の実施形態において説明したようにしてプラズマ窒化処理を行うことも可能である。続いて、LaO膜等のeWFを低下させる効果を有する元素を含む第2のキャップ膜109を形成する。続いて、第2のキャップ膜109を拡散させるための熱処理を行う。熱処理は600℃〜850℃程度の温度で行えばよい。但し、第1の実施形態において説明したように熱処理温度は低い方が好ましい。これにより、高誘電率膜106におけるn型半導体領域10Bに形成された部分は、La拡散高誘電率膜106bとなる。また、ハードマスク108の上部にはLaを含むLa拡散領域108aが形成される。
【0099】
次に、図21(a)に示すように、未反応の第2のキャップ膜109及びLa拡散領域108aのエッチング除去を行う。第2のキャップ膜109及びLa拡散領域108aの除去は、高誘電率膜106にダメージを与えないように条件を設定する。希塩酸、HPM又はSPM等を用いたウエットエッチングが好ましい。
【0100】
La拡散領域108aを除去する際に、La拡散領域108a以外のハードマスク108の少なくとも一部を除去してもよい。また、ハードマスク108を完全に除去する場合には、拡散防止膜117の少なくとも一部を除去してもよい。但し、拡散防止膜117を完全に除去する場合には、拡散防止膜117を除去する前に第1のキャップ膜107を高誘電率膜106中に十分拡散させることが好ましい。
【0101】
次に、図21(b)に示すように、膜厚が10nm〜20nm程度のTiN膜からなる第1の電極膜110を形成する。第1の電極膜110の形成は、塩化チタン(TiCl4)及びアンモニア(NH3)を用いたALD法により形成すればよい。成膜温度は400℃〜600℃程度とすればよい。第1の電極膜110はゲート電極の側壁に対する金属バリア膜としても機能する。このため、一般的に段差被覆性が高いALD法により成膜することが好ましい。しかし、アスペクト比が大きくないため、スパッタ法により形成することも可能である。
【0102】
次に、開口部を埋めるように、タングステン(W)若しくは銅(Cu)又はこれらを含む合金等からなる第2の電極膜139を形成する。第2の電極膜139の形成には、ALD法、CVD法、PVD法又はめっき法等を用いればよい。続いて、水素雰囲気において350℃〜500℃程度の温度でシンタリングを行ってもよい。その後、CMP法等を用いて、層間絶縁膜121をストッパーとして用いて、第2の電極膜139、第1の電極膜110、拡散防止膜117、第1のキャップ膜107及び高誘電率膜106等における、開口部の外側に形成された部分を除去する。これにより、p型半導体領域10Aには、Alが拡散した高誘電率膜からなる第1のゲート絶縁膜106A及び第1のゲート電極119Aを有するp型MISトランジスタが形成される。n型半導体領域10Bには、Laが拡散した高誘電率膜からなる第2のゲート絶縁膜106B及び第2のゲート電極119Bを有するn型MISトランジスタが形成される。この後、必要に応じてコンタクト及び配線等の形成を行えばよい。
【0103】
第2のキャップ膜は、nMISトランジスタのeWFを低下させる効果を有する元素を含んでいればよく、Laに代えてガドリニウム(Gd)等の他のランタノイド又はその酸化膜としてもよい。また、イットリウム(Y)若しくはマグネシウム(Mg)又はこれらの酸化膜等としてもよい。
【0104】
第1の電極膜は、TiNに代えて窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タンタルシリコン(TaSiN)、炭化タンタル(TaC)又は窒化ハフニウム(HfN)等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る半導体装置及びその半導体装置の製造方法は、p型MISトランジスタ及びn型MISトランジスタ双方の特性を向上することができ、相補型MISトランジスタを備えた半導体装置及びその製造方法等として有用である。
【符号の説明】
【0106】
10A p型半導体領域
10B n型半導体領域
101 半導体基板
102 素子分離領域
103 nウェル
104 pウェル
105 界面シリコン酸化膜
106 高誘電率膜
106A 第1のゲート絶縁膜
106B 第2のゲート絶縁膜
106b La拡散高誘電率膜
107 第1のキャップ膜
108 ハードマスク
108a La拡散領域
109 第2のキャップ膜
110 第1の電極膜
111 第2の電極膜
113 サイドウォール
114 シリサイド層
115A p型エクステンション拡散層
115B n型エクステンション拡散層
116A p型ソースドレイン拡散層
116B n型ソースドレイン拡散層
117 拡散防止膜
119A 第1のゲート電極
119B 第2のゲート電極
121 層間絶縁膜
122 コンタクトプラグ
131 表面保護膜
132 ダミーゲート
135 エッチングストッパー膜
136 層間絶縁膜
136a 開口部
138 レジストマスク
139 第2の電極膜
301 半導体基板
302 界面シリコン酸化膜
303 高誘電率膜
304 キャップ膜
305 電極膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型半導体領域及びn型半導体領域を有する半導体基板と、
前記p型半導体領域の上に形成された第1の界面シリコン酸化膜と、
前記第1の界面シリコン酸化膜の上に形成され、アルミニウムを含む第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜の上に形成された第1のゲート電極と、
前記n型半導体領域の上に形成された第2の界面シリコン酸化膜と、
前記第2の界面シリコン酸化膜の上に形成され、実効仕事関数を低下させる効果を有する元素を含む第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜の上に形成された第2のゲート電極とを備え、
前記第1のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1020/cm3以上であり、
前記第2のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1019/cm3以下であり、
前記第1の界面シリコン酸化膜の膜厚と前記第2の界面シリコン酸化膜の膜厚との差は0.2nm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、前記第1のゲート絶縁膜の下部におけるアルミニウムの濃度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1のゲート絶縁膜と前記第1のゲート電極との間に形成されたアルミニウムからなる第1のキャップ膜をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のゲート絶縁膜と前記第1のゲート電極との間に形成された窒化アルミニウムからなる拡散防止膜をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1のゲート電極及び第2のゲート電極は、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タンタルシリコン、窒化チタンアルミニウム又は窒化ハフニウムからなる膜を有している特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2のゲート絶縁膜は、ランタン、イットリウム、マグネシウム又はガドリニウムを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2のゲート絶縁膜は、ランタンを含み、
前記第2の界面シリコン酸化膜と前記半導体基板との界面におけるランタンの濃度は1.5原子%以下であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記高誘電率膜は、ハフニウムを含む膜又はジルコニウムを含む膜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体基板の上に形成された層間絶縁膜をさらに備え、
前記層間絶縁膜は、前記p型半導体領域を露出する第1の開口部と、前記n型半導体領域を露出する第2の開口部とを有し、
前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1の開口部の側面及び前記p型半導体領域の前記第1の開口部から露出した部分を覆うように形成され、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記第2の開口部の側面及び前記n型半導体領域の前記第2の開口部から露出した部分を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
p型半導体領域及びn型半導体領域を有する半導体基板の上に、界面シリコン酸化膜、高誘電率膜、アルミニウムからなる第1のキャップ膜、窒化アルミニウムからなる拡散防止膜及びハードマスクを順次形成する工程(a)と、
前記工程(a)よりも後に、前記第1のキャップ膜、拡散防止膜及びハードマスクにおける前記n型半導体領域の上に形成された部分を除去する工程(b)と、
前記工程(b)よりも後に、実効仕事関数を低下させる効果を有する元素を含む第2のキャップ膜を前記半導体基板上に形成する工程(c)と、
前記工程(c)よりも後に、熱処理を行う工程(d)と、
前記工程(d)よりも後に、前記半導体基板上に電極膜を形成する工程(e)と、
前記工程(e)よりも後に、前記電極膜、高誘電率膜及び前記界面シリコン酸化膜をパターニングすることにより、前記n型半導体領域の上に第1の界面シリコン酸化膜、第1のゲート絶縁膜及び第1のゲート電極を形成し、前記p型半導体領域の上に第2の界面シリコン酸化膜、第1のゲート絶縁膜及び第2のゲート電極を形成する工程(f)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1020/cm3以上であり、
前記第2のゲート絶縁膜の上部におけるアルミニウムの濃度は、1×1019/cm3以下であり、
前記第1の界面シリコン酸化膜の膜厚と前記第2の界面シリコン酸化膜の膜厚との差は0.2nm以下であることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記工程(b)よりも後で且つ前記工程(e)よりも前に、前記第1のキャップ膜に含まれるアルミニウムを拡散させるアルミニウム拡散工程(f)をさらに備えていることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記工程(d)よりも後で且つ前記工程(e)よりも前に、前記第2のキャップ膜を除去する工程(h)をさらに備えていることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程(h)よりも後で且つ前記工程(e)よりも前に、前記p型半導体領域において前記ハードマスクを除去する工程(i)をさらに備えていることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記工程(i)よりも後で且つ前記工程(e)よりも前に、前記p型半導体領域において、前記拡散防止膜を除去する工程(j)をさらに備えていることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第2のキャップ膜は、ランタン、イットリウム、マグネシウム又はガドリニウムを含むことを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2のキャップ膜は、ランタンを含み、
前記工程(d)では、800℃以下の温度で熱処理を行うことを特徴とする請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記高誘電率膜は、ハフニウムを含む膜又はジルコニウムを含む膜であることを特徴とする請求項10〜17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記工程(a)よりも前に、前記p型半導体領域にp型ソースドレイン拡散層を形成し、前記n型半導体領域にn型ソースドレイン拡散層を形成する工程(i)と、
前記工程(i)よりも後で且つ工程(a)よりも前に、前記p型半導体領域を露出する第1の開口部及び前記n型半導体領域を露出する第2の開口部を有する層間絶縁膜を形成する工程(j)とをさらに備え、
前記工程(a)では、前記高誘電率膜を前記第1の開口部及び第2の開口部の側面並びに前記p型半導体領域の前記第1の開口部から露出した部分及び前記n型半導体領域の前記第2の開口部から露出した部分を覆うように形成することを特徴とする請求項10〜18のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−103329(P2011−103329A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257040(P2009−257040)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】