説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】貫通電極を有する半導体装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体基板1は、素子形成面である第1の面1a及びその反対側の第2の面1bを有する。第1の面1aから第2の面1bまで半導体基板1を貫通するように貫通孔20が形成されている。貫通孔20の内壁上に絶縁膜21及びバリア膜22が順次形成されている。絶縁膜21及びバリア膜22が形成された貫通孔20が埋まるように導電部23が形成されている。貫通孔20の周辺に位置する部分の半導体基板1における少なくとも第1の面1a側にゲッタリングサイト30が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通電極を有した半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高集積化や異種半導体装置の集積を目的に、複数の半導体チップを積み重ねて1パッケージ化した積層型半導体装置の開発が行われている。その多くは、積層した半導体装置間をインターポーザなどの中継基板を介してワイヤーボンディングにより電気的に接続したものであった。この構造では、半導体チップ間を接続する引回し配線が長くなるため、配線抵抗が大きくなると共に配線の寄生容量も大きくなり、その結果、RC遅延が大きくなるので、高速動作には限界があった。また、ワイヤーを引き回す分だけ半導体装置全体の大きさが拡大するため、小型化・低背化にも限界があった。
【0003】
その解決策として、半導体装置に形成した貫通孔に金属や導電性樹脂を充填した貫通電極により、積層半導体チップ間を接続する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。この構成を用いることによって、積層した半導体チップ間を最短距離で接続できるため、ワイヤーボンディングによる接続の場合と比べて配線長を短縮できるので、配線抵抗及び寄生容量を低減することが可能となり、その結果、RC遅延を低減することによって高速動作が可能となる。また、ワイヤーを引き回すための領域を削減できるため、半導体装置のみの大きさによって積層型半導体装置全体の大きさが決まる。さらに、積層する各半導体装置を薄化することによって低背化することもできるため、従来構造と比べて、半導体装置全体の大きさを縮小することも可能となる。
【0004】
図13は、貫通電極を有する従来の半導体装置の断面図である。図13に示すように、従来の半導体装置200においては、集積回路形成面である第1の面210aとその反対面である第2の面210bとを有する半導体基板210に、第1の面210aから第2の面210bまで延びた貫通孔211が形成されている。ここで、第1の面210a上には、配線層213を有する層間絶縁膜212が形成されており、貫通孔211は、配線層213に達するように層間絶縁膜212中にも形成されている。貫通孔211の内壁上及び第2の面210b上には絶縁膜214が形成されており、貫通孔211の内壁上には絶縁膜214を挟んでバリア膜215が形成されている。絶縁膜214及びバリア膜215が形成された貫通孔211が埋まるように貫通電極となる導電部216が形成されている。絶縁膜214は、半導体基板210と導電部216とを電気的に絶縁する。バリア膜215は、導電部216を構成する導電材料が半導体基板210中に拡散することを防ぐ。
【0005】
図13に示す半導体装置200の製造方法は以下の通りである。
【0006】
まず、半導体基板210の第1の面210a上に集積回路等(図示省略)を形成した後、第1の面210a上に、前記集積回路と電気的に接続された配線層213を有する層間絶縁膜212を形成する。その後、半導体基板210の裏面(第1の面210aの反対面)に対して機械研磨・研削や化学研磨・研削などを実施して、半導体基板210の薄化を行う。その後、半導体基板210の裏面側の新生面である第2の面210bから貫通孔211を形成し、当該貫通孔211内に配線層213を露出させる。次に、貫通孔211の内壁上及び第2の面210b上に絶縁膜214を形成した後、貫通孔211の内壁上に絶縁膜214を挟んでバリア膜215を形成する。その後、絶縁膜214及びバリア膜215が形成された貫通孔211に金属材料を埋め込んで、貫通電極となる導電部216を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−309221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、貫通電極を有する従来の半導体装置においては、不純物層を有する活性素子(トランジスタ、ダイオード等)に動作不良が生じてしまうという問題がある。
【0009】
前記に鑑み、本発明は、貫通電極を有する半導体装置の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本願発明者が従来の半導体装置を解析検討した結果、貫通電極を構成する金属材料が半導体基板中に拡散することに起因して、意図しない金属汚染が発生し、その結果、活性素子の動作不良が生じていることが判明した。具体的には、以下の通りである。
【0011】
貫通電極を用いてチップ同士又はチップとインターポーザ等とを接続して3次元集積回路を形成する場合、貫通電極を構成する金属材料が基板中に拡散することを防止する必要がある。
【0012】
そこで、従来、貫通電極とその周囲の基板との間にバリア膜を形成することが有効な方法であると考えられてきた。すなわち、従来の半導体装置の製造においては、基板の裏面側つまり第2の面側から、貫通孔及びその内壁を覆う絶縁膜を形成した後、当該絶縁膜上にバリア材料を堆積する。
【0013】
しかしながら、図14に示すように、基板裏面側から物理気相成長(PVD)法などを用いてバリア膜215の堆積を行うと、特に貫通孔211が高アスペクト比(例えば直径5μm、深さ50μmでアスペクト比10)を持つ場合、貫通孔211の基板表面側(図14中の領域C)において十分な厚さを持つバリア膜215を堆積することは困難であり、バリア不良が生じてしまう。その結果、貫通電極(導電部216)を構成する金属材料が半導体基板210中へ拡散してしまい、活性素子の動作不良が生じてしまう。
【0014】
ところで、半導体基板(ウェハ)においては、通常、その表面から深さ30〜50μm程度までの領域に、欠陥の無いデヌーデッドゾーンと呼ばれる層が存在し、デヌーデッドゾーンの下側には、密度108 〜109 /cm3 程度の微小欠陥を有した層が存在している。そして、この微小欠陥は、汚染源となる金属元素を捕獲するゲッタリングサイトとして機能する。しかしながら、貫通電極を有する従来の半導体装置では、基板の厚さを薄くする際に、前記微小欠陥を含むゲッタリング層の大部分又は全てが除去されるため、最終的には、デヌーデッドゾーン層のみが基板として残る。その結果、前述のように、バリア不良に起因して金属材料が僅かでも基板中に拡散すると、活性素子の動作に深刻な悪影響を及ぼしてしまう。
【0015】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであって、具体的には、本発明に係る半導体装置は、素子形成面である第1の面及びその反対側の第2の面を有する半導体基板と、前記第1の面から前記第2の面まで前記半導体基板を貫通するように形成された貫通孔と、前記貫通孔の内壁上に形成された絶縁膜と、前記貫通孔の内壁上に前記絶縁膜を挟んで形成されたバリア膜と、前記絶縁膜及び前記バリア膜が形成された前記貫通孔が埋まるように形成された導電部とを備え、前記貫通孔の周辺に位置する部分の前記半導体基板における少なくとも前記第1の面側にゲッタリングサイトが形成されている。
【0016】
本発明に係る半導体装置によると、貫通孔におけるバリア膜を十分な厚さで形成することが困難な領域の周辺、つまり、半導体基板の第1の面近傍における貫通孔の周辺に、ゲッタリングサイトが形成されている。このため、貫通電極となる導電部を構成する金属材料が半導体基板中に拡散しても、当該金属材料を確実にゲッタリングすることが可能となるので、意図しない金属汚染に起因する活性素子の動作不良を確実に防止することができる。従って、貫通電極を有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0017】
ところで、貫通電極を有する半導体装置においては、貫通電極を構成する金属材料の熱膨張係数と基板材料の熱膨張係数とが大きく異なることに起因して、貫通電極の周囲にストレスが生じる。その結果、貫通電極に近接した領域では、キャリアの移動度がストレスにより変動して活性素子の動作に影響を及ぼすため、貫通電極の直近に、活性素子を配置しない緩衝領域を設けている。すなわち、貫通電極を有する半導体装置には、緩衝領域の配置によって集積回路の面積効率が低下するという弊害がある。
【0018】
しかしながら、本発明に係る半導体装置においては、貫通電極直近の活性素子を配置できない緩衝領域にゲッタリングサイトを形成することによって、第1の面つまり素子形成面の面積を効率的に活用することが可能となる。尚、緩衝領域として必要なサイズは、貫通電極の直径に応じて異なるが、例えば直径1μm程度の貫通電極に対して必要な緩衝領域は、貫通電極を中心とする半径5μm程度の領域である。
【0019】
本発明に係る半導体装置において、前記貫通孔の中心から前記半導体基板における活性素子形成領域までの最短距離よりも、前記貫通孔の中心から前記ゲッタリングサイトまでの最短距離の方が短くてもよい。このようにすると、汚染源となる金属をより効率的にゲッタリングすることが可能となる。
【0020】
尚、本発明に係る半導体装置において、半導体基板の第1の面(つまり素子形成面)側に形成される素子には、不純物層を有する活性素子、例えばダイオードやトランジスタ等が含まれ、このような活性素子が形成される領域を「活性素子形成領域」と称する。また、「貫通孔の中心から活性素子形成領域までの最短距離」とは、「貫通孔の中心から、当該貫通孔に最も近接する活性素子形成領域までの距離」を意味し、「貫通孔の中心からゲッタリングサイトまでの最短距離」とは、「貫通孔の中心から、当該貫通孔に最も近接するゲッタリングサイトまでの距離」を意味する。
【0021】
本発明に係る半導体装置において、前記ゲッタリングサイトは前記貫通孔を取り囲むように形成されていてもよい。このようにすると、汚染源となる金属をより効率的にゲッタリングすることが可能となる。
【0022】
本発明に係る半導体装置において、前記貫通孔の口径は、前記第2の面から前記第1の面へ向けて小さくなっていてもよい。このようにすると、素子形成面において貫通電極の占める面積が小さくなるため、面積効率良く貫通電極が配置された半導体装置を形成することが可能となる。
【0023】
本発明に係る半導体装置において、前記半導体基板の前記第1の面上に配線が形成されており、前記導電部と前記配線とが電気的に接続されていてもよい。この場合、前記導電部と前記配線とは、前記導電部と前記配線との間に介在するコンタクトによって電気的に接続されていてもよい。
【0024】
本発明に係る半導体装置において、前記ゲッタリングサイトは、前記貫通孔が3つ以上二次元的に配列されてなる貫通孔群を取り囲むように形成されていてもよい。すなわち、本発明に係る半導体装置に複数の貫通電極が設けられている場合において、設計上の理由などから、3つ以上の貫通電極が二次元的に集中して配列されることにより貫通電極群が構成されている場合には、当該貫通電極群を取り囲むようにゲッタリングサイトを形成することによって、より一層面積効率良く貫通電極が配置された半導体装置を形成することが可能となる。
【0025】
本発明に係る半導体装置において、前記貫通孔の周辺に位置する部分の前記半導体基板における前記第1の面側の表面部に絶縁領域が形成されており、前記ゲッタリングサイトは前記絶縁領域の下側に形成されていてもよい。このようにすると、半導体基板と貫通電極との間の絶縁分離をより確実に行うことができる。この場合、前記半導体基板における前記第1の面側の表面部に素子分離が形成されており、前記絶縁領域は、前記素子分離と実質的に同じ深さまで形成されていてもよい。
【0026】
本発明に係る積層型半導体装置は、複数の半導体装置を積層させた積層型半導体装置であって、前記複数の半導体装置のうち少なくとも1つは、前述の本発明に係る半導体装置である。
【0027】
本発明に係る積層型半導体装置によると、金属汚染に起因する活性素子の動作不良を確実に防止できるため、安定性及び信頼性に優れた積層型半導体装置を実現することができる。
【0028】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、貫通孔形成領域の周辺に位置する部分の半導体基板における少なくとも素子形成面側にゲッタリングサイトを形成する工程(a)と、前記素子形成面からその反対側の面まで前記半導体基板を貫通するように貫通孔を形成する工程(b)と、前記貫通孔の内壁上に絶縁膜を形成する工程(c)と、前記貫通孔の内壁上に前記絶縁膜を挟んでバリア膜を形成する工程(d)と、前記絶縁膜及び前記バリア膜が形成された前記貫通孔が埋まるように導電部を形成する工程(e)とを備えている。ここで、ゲッタリングサイトを形成する工程(a)を、貫通孔を形成する工程(b)の前に実施してもよいし、又は、貫通孔を形成する工程(b)の後若しくは導電部(つまり貫通電極)を形成する工程(e)の後に実施してもよい。
【0029】
本発明に係る半導体装置の製造方法によると、半導体基板の第1の面(素子形成面)近傍における貫通孔(つまり貫通電極)の周辺にゲッタリングサイトを形成するため、貫通電極となる導電部を構成する金属材料が半導体基板中に拡散しても、当該金属材料を確実にゲッタリングすることが可能となる。従って、意図しない金属汚染に起因する活性素子の動作不良を確実に防止することができるので、貫通電極を有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、半導体基板の素子形成面近傍における貫通電極周辺にゲッタリングサイトが形成されているため、貫通電極を構成する金属材料に起因する金属汚染を防止できるので、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示しており、図1(a)には半導体装置の断面図を、図1(b)には半導体装置の平面図(但し活性素子については図示省略)を示している。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図4】図4(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を2つ積層させた積層型半導体装置の断面図である。
【図6】図6(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置における貫通電極を取り囲むゲッタリングサイトの平面形状のバリエーションを示す図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置における貫通孔の断面形状のバリエーションを示す図である。
【図8】図8は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置における貫通電極と配線との接続部のバリエーションを示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の断面図である。
【図10】図10(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図11】図11(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図12】図12(a)及び(c)は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置における貫通電極と配線との接続部のバリエーションを示す断面図である。
【図13】図13は、貫通電極を有する従来の半導体装置の断面図である。
【図14】図14は、貫通電極と配線との接続部及びその周辺における問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る各実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、各実施形態で使用している材料及び数値等は例示であって、それらに本発明が限定されることはない。また、本発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、各実施形態を適宜変更することは可能であり、さらに、実施形態同士の組み合わせなども可能である。
【0033】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示しており、図1(a)には半導体装置の断面図を、図1(b)には半導体装置の平面図(但し活性素子及び素子分離等については図示省略)を示している。尚、図1(b)におけるB−B’面での断面図が図1(a)であり、図1(a)におけるA−A’面での平面図が図1(b)である。
【0035】
図1(a)に示すように、本実施形態の半導体装置100においては、半導体基板1の第1の面1a側の表面部に、例えばトランジスタやダイオードなどの活性素子の不純物領域3が形成されていると共に、半導体基板1の第1の面1a上に、ゲート絶縁膜4を介してゲート電極5が形成されている。尚、各活性素子は、半導体基板1の第1の面1a側の表面部に形成された素子分離6によって互いに電気的に絶縁されている。半導体基板1の第1の面1a上には、ゲート電極5を覆うように第1層間絶縁膜8aが形成されていると共に、第1層間絶縁膜8a中には、不純物領域3及びゲート電極5とそれぞれ接続する複数のコンタクト7が形成されている。第1層間絶縁膜8a上には第2層間絶縁膜8bが形成されていると共に、第2層間絶縁膜8b中には、コンタクト7と接続し且つ半導体装置100内で信号の伝達や電源電圧の供給などを行う第1配線9a、及び第1配線9aと接続する第1ビア10aが形成されている。第2層間絶縁膜8b上には第3層間絶縁膜8cが形成されていると共に、第3層間絶縁膜8c中には、第1ビア10aと接続し且つ半導体装置100内で信号の伝達や電源電圧の供給などを行う第2配線9b、及び第2配線9bと接続する第2ビア10bが形成されている。第3層間絶縁膜8c上には、第2ビア10bと接続し且つ外部へ信号を取り出すための電極パッド11が形成されている。
【0036】
また、図1(a)に示すように、第1の面1aから第2の面1bまで半導体基板1を貫通するように貫通孔20が形成されている。ここで、貫通孔20は、第1配線9aに達するように第1層間絶縁膜8a中にも形成されている。貫通孔20の内壁上及び第2の面1b上には絶縁膜21が形成されており、貫通孔20の内壁上には絶縁膜21を挟んでバリア膜22が形成されている。バリア膜22は、貫通孔20内の第1配線9a表面(下面)上にも形成されている。絶縁膜21及びバリア膜22が形成された貫通孔20が埋まるように、貫通電極となる導電部23が形成されている。これにより、導電部23と第1配線9aとが電気的に接続される。尚、絶縁膜21は、半導体基板1と導電部23とを電気的に絶縁する。バリア膜22は、導電部23を構成する導電材料が半導体基板1中に拡散することを防ぐ。但し、貫通電極となる導電部23と第1配線9aとの間の接触抵抗を低減するために、貫通孔20内の第1配線9a表面(下面)上のバリア膜22については、例えばリスパッタなどの既知の手法を用いて可能な限り薄くするか又は除去することが好ましい。
【0037】
さらに、本実施形態の半導体装置100においては、図1(a)及び(b)に示すように、貫通孔20つまり貫通電極の周辺に位置する部分の半導体基板1における少なくとも第1の面1a側にゲッタリングサイト30が形成されている。すなわち、貫通孔20におけるバリア膜22を十分な厚さで形成することが困難な第1の面1a近傍部分の周辺に、貫通電極となる導電部23を構成する金属材料に起因する金属汚染への対策として、ゲッタリングサイト30が形成されている。これにより、ゲッタリングサイト30によって汚染金属を確実に捕獲することができるので、当該汚染金属の半導体基板1中への拡散を防止することが可能となる。従って、意図しない金属汚染に起因する活性素子の動作不良を確実に防止することができるので、貫通電極を有する半導体装置100の信頼性を向上させることができる。
【0038】
また、貫通電極を構成する金属材料の熱膨張係数と基板材料の熱膨張係数との差などによって生じる応力が活性素子の動作に影響を及ぼすことを防ぐために、貫通電極の周辺には、活性素子を配置しない緩衝領域を配置する必要がある。それに対して、本実施形態では、当該緩衝領域にゲッタリングサイト30を設けることによって、面積効率良く貫通電極を配置した半導体装置100を提供することが可能となる。ここで、緩衝領域として必要なサイズは、貫通電極の直径に応じて異なるが、例えば直径1μm程度の貫通電極に対して必要な緩衝領域は、貫通電極を中心とする半径5μm程度の領域である。
【0039】
また、本実施形態によると、ゲッタリングサイト30が貫通孔20を取り囲むように形成されているため、汚染源となる金属をより一層効率的にゲッタリングすることが可能となる。
【0040】
尚、本実施形態において、貫通孔20の中心から半導体基板1における活性素子形成領域までの最短距離よりも、貫通孔20の中心からゲッタリングサイト30までの最短距離の方が短いことが好ましい。このようにすると、汚染源となる金属をより一層効率的にゲッタリングすることが可能となる。ここで、「貫通孔20の中心から活性素子形成領域までの最短距離」とは、「貫通孔20の中心から、当該貫通孔20に最も近接する活性素子形成領域までの距離」を意味し、「貫通孔20の中心からゲッタリングサイト30までの最短距離」とは、「貫通孔20の中心から、当該貫通孔20に最も近接するゲッタリングサイト30までの距離」を意味する。
【0041】
また、図1(a)に示す本実施形態の半導体装置100では、2層配線構造の場合を例示しているが、配線層数は必要に応じて変えることができること、つまり、2層配線構造に限定されないことは言うまでもない。
【0042】
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
図2(a)〜(c)、図3(a)〜(c)及び図4(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0044】
まず、図2(a)に示すように、リソグラフィなどの既知の技術を用いて、半導体基板1の第1の面(素子形成面)1a上に、貫通電極形成領域の周辺に例えば幅50〜1000nm程度(好ましくは200〜500nm程度)の開口部を持つレジストパターン(図示省略)を形成した後、当該レジストパターンをマスクとして、半導体基板1の第1の面1aを、例えば1000℃程度の温度でPOCl3 ガス中に30分程度さらすことにより、貫通電極形成領域の周辺に位置する部分の半導体基板1の第1の面1aから、例えば濃度1×1020/cm3 程度のリンを拡散させる。これにより、1×1018/cm3 程度以上のリン濃度を有する領域が、第1の面1aから深さ500nm程度までの範囲に形成され、当該高濃度リン拡散領域がゲッタリングサイト30として機能することになる。
【0045】
尚、本実施形態では、POCl3 ガスを用いて、高濃度リン拡散領域からなるゲッタリングサイト30を形成したが、これに限られず、PBr3 ガス等を用いて、高濃度リン拡散領域からなるゲッタリングサイト30を形成してもよい。また、例えばイオン注入を用いて高濃度リン拡散領域を形成することも可能である。さらに、例えばイオン注入を用いて、半導体基板1の第1の面1a側の表面部に結晶欠陥を形成することにより、ゲッタリングサイトを形成することも可能である。この場合、注入エネルギー及びドーズ量等の調整を行う必要がある。
【0046】
次に、図2(b)に示すように、半導体基板1の第1の面1a側の表面部に、各活性素子を電気的に絶縁する素子分離6、及び、例えばトランジスタやダイオードなどの活性素子の不純物領域3を形成する。次に、半導体基板1の第1の面1a上に、ゲート絶縁膜4を介してゲート電極5を形成した後、半導体基板1の第1の面1a上に、ゲート電極5を覆うように第1層間絶縁膜8aを形成し、その後、第1層間絶縁膜8a中に、不純物領域3及びゲート電極5とそれぞれ接続する複数のコンタクト7を形成する。
【0047】
次に、図2(c)に示すように、第1層間絶縁膜8a上に第2層間絶縁膜8bを形成した後、第2層間絶縁膜8b中に、コンタクト7と接続し且つ半導体装置内で信号伝達や電源電圧供給等を行う第1配線9a、及び第1配線9aと接続する第1ビア10aを形成する。続いて、第2層間絶縁膜8b上に第3層間絶縁膜8cを形成した後、第3層間絶縁膜8c中に、第1ビア10aと接続し且つ半導体装置内で信号伝達や電源電圧供給などを行う第2配線9b、及び第2配線9bと接続する第2ビア10bを形成する。その後、第3層間絶縁膜8c上に、第2ビア10bと接続し且つ外部へ信号を取り出すための電極パッド11を形成する。
【0048】
次に、図3(a)に示すように、半導体基板1における第1の面1aの反対側の面から半導体基板1を、最終的な厚さが例えば5〜100μm程度(望ましくは20〜50μm程度)になるまで薄くする。ここで、半導体基板1における第1の面1aの反対側に現れた新生面を第2の面1bとする。本実施形態では、この基板薄化工程に、例えば、グラインディング等の機械的な研削・研磨、CMP(chemical mechanical polishing )等の化学的な研磨又はドライエッチング若しくはウェットエッチングを用いる。
【0049】
尚、基板薄化工程においては、最終的な基板厚さが薄いほど、基板が脆弱になるので、割れなどの問題が生じやすくなる。そこで、このような問題を避けるために、基板薄化工程及びその後の工程において、基板の上側に接着剤などを介して支持基板を貼り付けることによって、基板を補強しても良い。
【0050】
次に、図3(b)に示すように、半導体基板1の第2の面1b側から、半導体基板1及び第1層間絶縁膜8aを貫通し且つ第1配線9aまで達する貫通孔20を形成する。ここで、貫通孔20の口径は、例えば0.1〜20μm程度(望ましくは0.5〜10μm程度)である。尚、貫通孔20は活性素子形成領域を避けて形成される。また、ゲッタリングサイト30が貫通孔20の周囲を取り囲むように貫通孔20は形成される。ここで、貫通孔20とゲッタリングサイト30とを確実に接触させるために、図2(a)に示す工程で貫通孔形成領域にもゲッタリングサイト30を形成しておいてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、貫通孔20の形成に公知の技術を用いる。例えば、リソグラフィ技術を用いて、第2の面1b上に、貫通孔形成領域に開口部を持つレジストパターン(図示省略)を形成した後、当該レジストパターンをマスクとして、ドライエッチングやウェットエッチングなどのエッチング技術を用いて貫通孔20を形成してもよい。或いは、エッチング技術に代えて、レーザ(例えばCO2 レーザやYAG(yttrium aluminum garnet)レーザ)を用いて貫通孔20を形成してもよい。
【0052】
次に、図3(c)に示すように、半導体基板1の第2の面1b側から、第2の面1b上及び貫通孔20の内壁上に絶縁膜21を形成する。ここで、絶縁膜21の材料としては、例えばSiO2 などを用いる。尚、貫通孔20内の第1配線9aの表面(下面)上に形成された絶縁膜21については、例えばドライエッチングやウェットエッチングなどの方法を用いて除去する。
【0053】
次に、図4(a)に示すように、半導体基板1の第2の面1b側から、貫通孔20の内壁上に絶縁膜21を介してバリア膜22を形成する。ここで、バリア膜22の材料としては、貫通電極を構成する導電材料に対してバリア性を持つ材料が好ましく、例えばTa、TaN、Ti若しくはTiN等、又はこれらを組み合わせた材料等を用いてもよい。
【0054】
尚、バリア膜22は、貫通孔20内の第1配線9a表面(下面)上にも形成される。また、第1の面(素子形成面)1a側の貫通孔20の内壁上においては、バリア膜22の厚さが薄くなりやすい。しかし、本実施形態では、貫通孔20におけるバリア膜22の厚さが薄くなりやすい第1の面1a近傍部分の周辺に、貫通電極を構成する金属材料に起因する金属汚染への対策として、ゲッタリングサイト30が形成されている。これにより、ゲッタリングサイト30によって汚染金属を確実に捕獲することができるので、当該汚染金属の半導体基板1中への拡散を防止することが可能となる。従って、意図しない金属汚染に起因する活性素子の動作不良を確実に防止することができるので、貫通電極を有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0055】
最後に、図4(b)に示すように、絶縁膜21及びバリア膜22が形成された貫通孔20が埋まるように、貫通電極となる導電部23を形成する。ここで、導電部23の材料としては、例えばCu、W、Au、Niなどを用いる。また、導電部23の埋め込み方法としては、使用する導電材料に応じて最適な手段を選ぶものとし、例えば電解メッキや無電解メッキ、化学気相成長法などを用いる。
【0056】
尚、本実施形態では、貫通孔20を形成する前にゲッタリングサイト30を形成したが、これに代えて、貫通孔20を形成した後又は導電部(つまり貫通電極)23を形成した後にゲッタリングサイト30を形成してもよい。
【0057】
以下、前述の本実施形態の半導体装置を少なくとも1つ含む複数の半導体装置を積層させた積層型半導体装置について、図面を参照しながら説明する。
【0058】
図5は、図1(a)に示す本実施形態の半導体装置を2つ積層させた積層型半導体装置の断面図を示している。図5に示すように、積層型半導体装置101においては、インターポーザ26上に、図1(a)に示す本実施形態の半導体装置と同様の構成を持つ半導体装置100A(上側)及び100B(下側)が積層されている。ここで、半導体装置100Aの第2の面1bに露出する導電部23と、半導体装置100Bの電極パッド11とが、例えば半田からなるバンプ24Aを介して電気的に接続されていると共に、半導体装置100Aと半導体装置100Bとがアンダーフィル25Aによって接合されている。また、半導体装置100Bの第2の面1bに露出する導電部23と、インターポーザ26とが、例えば半田からなるバンプ24Bを介して電気的に接続されていると共に、半導体装置100Bとインターポーザ26とがアンダーフィル25Bによって接合されている。ここで、装置間を電気的に接続するために、バンプに代えて、金属同士の直接接合を用いてもよい。
【0059】
図5に示す積層型半導体装置101によると、半導体装置100A及び100Bが最短距離で接続されているため、ワイヤーボンディングを用いた従来の積層型半導体装置と比べて、ワイヤーを引き回すのに必要な面積が削減された、より小型の積層型半導体装置101を実現することが可能となる。
【0060】
尚、本実施形態の半導体装置においては、図1(b)に示すように、貫通電極(導電部23)を取り囲むゲッタリングサイト30の平面形状を円形状(ドーナツ状)に設定したが、これに限られず、例えば図6(a)に示すように、貫通電極の周囲に、四角形などの多角形の平面形状を持つゲッタリングサイト30を形成してもよい。また、ゲッタリングサイト30が十分なゲッタリング能力を持つ場合には、ゲッタリングサイト30が貫通電極の全周囲を囲む必要は無く、例えば図6(b)に示すように、貫通電極から見て特定の方向のみにゲッタリングサイト30を配置してもよい。また、図1(b)には、貫通電極を覆う絶縁膜21に接するようにゲッタリングサイト30が形成されている様子を示したが、これに限られず、アライメントずれなどを考慮して、貫通電極を覆う絶縁膜21とゲッタリングサイト30との間に、例えば1μm程度のスペースを設けてもよい。
【0061】
また、設計上の理由から、貫通電極を複数本(例えば3本以上)密集させた貫通電極群を配置する場合において、貫通電極群を構成する貫通電極同士の間に活性素子を形成しない場合には、例えば図6(c)又は図6(d)に示すように、各貫通電極ではなく貫通電極群全体を取り囲むようにゲッタリングサイト30を形成してもよい。
【0062】
また、本実施形態の半導体装置においては、図1(a)に示すように、貫通孔20の口径を第1の面1a側から第2の面1b側まで同じに設定したが、これに限られず、第1の面1a側での貫通孔20の口径が第2の面1b側での貫通孔20の口径よりも小さくなるように設定してもよい。このようにすると、第1の面1a(素子形成面)側において貫通電極の占める面積が小さくなるため、面積効率良く貫通電極が配置された半導体装置100を形成することが可能となる。具体的には、例えば図7(a)に示すように、貫通孔20の口径が第2の面1bから第1の面1aへ向けて小さくなるように、貫通孔20の内壁全体がテーパー状の断面形状を有していてもよい。或いは、例えば図7(b)に示すように、貫通孔20の内壁の一部分(第2の面1b側)がテーパー状の断面形状を有していると共に貫通孔20の内壁の他の部分(第1の面1a側)が垂直形状の断面形状を有していてもよい。
【0063】
また、本実施形態の半導体装置においては、図1(b)に示すように、貫通孔20の平面形状を円形に設定したが、これに限られず、設計やプロセス上の理由などから他の形が望ましい場合には、貫通孔20の平面形状を円形以外の他の形状、例えば多角形や楕円等に設定してもよい。
【0064】
また、本実施形態の半導体装置においては、図1(a)に示すように、貫通電極(導電部23)と第1配線9aとを直接接続したが、これに限られず、貫通電極を第2配線層9b又は電極パッド11とを直接接続してもよい。或いは、図8に示すように、貫通孔20(貫通電極)を半導体基板1中のみに形成し、言い換えると、貫通孔20(貫通電極)を第1層間絶縁膜8a中には形成せず、貫通電極(導電部23)と第1配線9aとを、第1層間絶縁膜8a中に形成したコンタクト7によって電気的に接続してもよい。
【0065】
(第1の実施形態の変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。
【0066】
図9は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の断面構造を示している。尚、本変形例の半導体装置は、図1(a)及び(b)に示す第1の実施形態の半導体装置を変形させたものであり、図9において、第1の実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0067】
図9に示すように、本変形例の半導体装置102においては、半導体基板1の第1の面1a側の表面部に、例えばトランジスタやダイオードなどの活性素子の不純物領域3が形成されていると共に、半導体基板1の第1の面1a上に、ゲート絶縁膜4を介してゲート電極5が形成されている。尚、各活性素子は、半導体基板1の第1の面1a側の表面部に形成された素子分離6によって互いに電気的に絶縁されている。半導体基板1の第1の面1a上には、ゲート電極5を覆うように第1層間絶縁膜8aが形成されていると共に、第1層間絶縁膜8a中には、不純物領域3及びゲート電極5とそれぞれ接続する複数のコンタクト7が形成されている。第1層間絶縁膜8a上には第2層間絶縁膜8bが形成されていると共に、第2層間絶縁膜8b中には、コンタクト7と接続し且つ半導体装置102内で信号の伝達や電源電圧の供給などを行う第1配線9a、及び第1配線9aと接続する第1ビア10aが形成されている。第2層間絶縁膜8b上には第3層間絶縁膜8cが形成されていると共に、第3層間絶縁膜8c中には、第1ビア10aと接続し且つ半導体装置102内で信号の伝達や電源電圧の供給などを行う第2配線9b、及び第2配線9bと接続する第2ビア10bが形成されている。第3層間絶縁膜8c上には、第2ビア10bと接続し且つ外部へ信号を取り出すための電極パッド11が形成されている。
【0068】
また、図9に示すように、第1の面1aから第2の面1bまで半導体基板1を貫通するように貫通孔20が形成されている。ここで、本変形例においては、貫通孔20の周辺に位置する部分の半導体基板1における第1の面1a側の表面部にも、例えば素子分離6からなる絶縁領域が形成されており、貫通孔20は、第1配線9aに達するように当該絶縁領域及び第1層間絶縁膜8a中にも形成されている。貫通孔20の内壁上及び第2の面1b上には絶縁膜21が形成されており、貫通孔20の内壁上には絶縁膜21を挟んでバリア膜22が形成されている。バリア膜22は、貫通孔20内の第1配線9a表面(下面)上にも形成されている。絶縁膜21及びバリア膜22が形成された貫通孔20が埋まるように、貫通電極となる導電部23が形成されている。これにより、導電部23と第1配線9aとが電気的に接続される。尚、絶縁膜21は、半導体基板1と導電部23とを電気的に絶縁する。バリア膜22は、導電部23を構成する導電材料が半導体基板1中に拡散することを防ぐ。但し、貫通電極となる導電部23と第1配線9aとの間の接触抵抗を低減するために、貫通孔20内の第1配線9a表面(下面)上のバリア膜22については、例えばリスパッタなどの既知の手法を用いて可能な限り薄くするか又は除去することが好ましい。
【0069】
さらに、本変形例の半導体装置102においては、図9に示すように、貫通孔20つまり貫通電極の周辺に位置する部分の半導体基板1における第1の面1a側の表面部に形成された素子分離6からなる絶縁領域の下側にゲッタリングサイト30が形成されていることである。
【0070】
以上に説明した本変形例によると、第1の実施形態と同様の効果に加えて、半導体基板1の第1の面1a側において、貫通電極(導電部23)と半導体基板1との間の絶縁分離を確実に実現できるという効果を得ることができる。すなわち、第1の実施形態では、貫通孔20の内壁上に形成される絶縁膜21の堆積膜厚が、半導体基板1の第1の面1a側において不十分になった場合、貫通電極と半導体基板1との間で絶縁不良が生じ、両者の電位がほぼ同一となる結果、素子の動作に悪影響が生じるという問題が発生する可能性がある。それに対して、本変形例においては、半導体基板1の第1の面1a側の表面部に、予め絶縁領域(素子分離6)を形成しておくことによって、貫通孔20の内壁上に十分な膜厚で絶縁膜21を堆積させることが困難な当該表面部においても、貫通電極と半導体基板1との間の絶縁信頼性を向上させることが可能となる。
【0071】
尚、本変形例においては、貫通孔20の周辺に位置する部分の半導体基板1における第1の面1a側の表面部に素子分離6を形成したが、これに代えて、他の絶縁領域、好ましくは、素子分離6と同等の深さを持つ絶縁領域を形成してもよい。
【0072】
また、本変形例において、貫通孔20の中心から半導体基板1における活性素子形成領域までの最短距離よりも、貫通孔20の中心からゲッタリングサイト30までの最短距離の方が短いことが好ましい。このようにすると、汚染源となる金属をより一層効率的にゲッタリングすることが可能となる。
【0073】
また、図9に示す本変形例の半導体装置102では、2層配線構造の場合を例示しているが、配線層数は必要に応じて変えることができること、つまり、2層配線構造に限定されないことは言うまでもない。
【0074】
以下、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0075】
図10(a)〜(c)及び図11(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。尚、本変形例に係る半導体装置の製造方法は第1の実施形態と共通する部分が多いので、図10(a)〜(c)及び図11(a)〜(c)において、第1の実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、以下、第1の実施形態と異なる工程を中心に説明する。
【0076】
まず、図10(a)に示すように、リソグラフィなどの既知の技術を用いて、半導体基板1の第1の面(素子形成面)1a上に、貫通電極形成領域の周辺に例えば幅50〜1000nm程度(好ましくは200〜500nm程度)の開口部を持つレジストパターン(図示省略)を形成した後、当該レジストパターンをマスクとして、半導体基板1の第1の面1aに対して、例えばHeイオンを注入エネルギー200keV、ドーズ量1×1017 atom/cm2 の条件で注入する。これにより、半導体基板1の第1の面1aから例えば0.5〜1.0μm程度の深さまでの範囲に例えば密度1010/cm3 以上の結晶欠陥が形成され、当該結晶欠陥領域がゲッタリングサイト30として機能することになる。
【0077】
尚、本変形例では、Heイオンを注入してゲッタリングサイト30を形成したが、これに限られず、例えばSi、Ar、As、B、O、F、C若しくはGeなどのイオン、又はこれらのイオンの2つ以上を注入してもよい。また、その際の注入条件は各イオンに応じて最適化すればよい。
【0078】
次に、図10(b)に示すように、半導体基板1の第1の面1a側の表面部に、各活性素子を電気的に絶縁する素子分離6を形成する。本変形例では、活性素子形成領域に加えて、貫通孔形成領域及びその周辺にも素子分離6を形成する。また、貫通孔形成領域及びその周辺においては、ゲッタリングサイト30が素子分離6の下側に位置するように素子分離6を形成する。
【0079】
次に、図10(c)に示すように、半導体基板1の第1の面1a側の表面部に、例えばトランジスタやダイオードなどの活性素子の不純物領域3を形成する。次に、半導体基板1の第1の面1a上に、ゲート絶縁膜4を介してゲート電極5を形成した後、半導体基板1の第1の面1a上に、ゲート電極5を覆うように第1層間絶縁膜8aを形成し、その後、第1層間絶縁膜8a中に、不純物領域3及びゲート電極5とそれぞれ接続する複数のコンタクト7を形成する。
【0080】
次に、図11(a)に示すように、第1層間絶縁膜8a上に第2層間絶縁膜8bを形成した後、第2層間絶縁膜8b中に、コンタクト7と接続し且つ半導体装置内で信号伝達や電源電圧供給等を行う第1配線9a、及び第1配線9aと接続する第1ビア10aを形成する。続いて、第2層間絶縁膜8b上に第3層間絶縁膜8cを形成した後、第3層間絶縁膜8c中に、第1ビア10aと接続し且つ半導体装置内で信号伝達や電源電圧供給などを行う第2配線9b、及び第2配線9bと接続する第2ビア10bを形成する。その後、第3層間絶縁膜8c上に、第2ビア10bと接続し且つ外部へ信号を取り出すための電極パッド11を形成する。
【0081】
次に、図11(b)に示すように、半導体基板1における第1の面1aの反対側の面から半導体基板1を、最終的な厚さが例えば5〜100μm程度(望ましくは20〜50μm程度)になるまで薄くする。ここで、半導体基板1における第1の面1aの反対側に現れた新生面を第2の面1bとする。本変形例では、この基板薄化工程に、例えば、グラインディング等の機械的な研削・研磨、CMP等の化学的な研磨又はドライエッチング若しくはウェットエッチングを用いる。
【0082】
尚、基板薄化工程においては、最終的な基板厚さが薄いほど、基板が脆弱になるので、割れなどの問題が生じやすくなる。そこで、このような問題を避けるために、基板薄化工程及びその後の工程において、基板の上側に接着剤などを介して支持基板を貼り付けることによって、基板を補強しても良い。
【0083】
次に、図11(c)に示すように、半導体基板1の第2の面1b側から、半導体基板1、素子分離6及び第1層間絶縁膜8aを貫通し且つ第1配線9aまで達する貫通孔20を形成する。ここで、貫通孔20の口径は、例えば0.1〜20μm程度(望ましくは0.5〜10μm程度)である。尚、貫通孔20は活性素子形成領域を避けて形成される。また、ゲッタリングサイト30が貫通孔20の周囲を取り囲むように貫通孔20は形成される。貫通孔20の形成方法については、第1の実施形態と同様である。ここで、貫通孔20とゲッタリングサイト30とを接触させるために、図10(a)に示す工程で貫通孔形成領域にもゲッタリングサイト30を形成しておいてもよい。
【0084】
次に、図11(c)に示すように、半導体基板1の第2の面1b側から、第2の面1b上及び貫通孔20の内壁上に絶縁膜21を形成する。ここで、絶縁膜21の材料としては、例えばSiO2 などを用いる。尚、貫通孔20内の第1配線9aの表面(下面)上に形成された絶縁膜21については、例えばドライエッチングやウェットエッチングなどの方法を用いて除去する。
【0085】
次に、図11(c)に示すように、半導体基板1の第2の面1b側から、貫通孔20の内壁上に絶縁膜21を介してバリア膜22を形成する。ここで、バリア膜22の材料としては、貫通電極を構成する導電材料に対してバリア性を持つ材料が好ましく、例えばTa、TaN、Ti若しくはTiN等、又はこれらを組み合わせた材料等を用いてもよい。
【0086】
尚、バリア膜22は、貫通孔20内の第1配線9a表面(下面)上にも形成される。また、第1の面(素子形成面)1a側の貫通孔20の内壁上においては、バリア膜22の厚さが薄くなりやすい。しかし、本実施形態では、貫通孔20におけるバリア膜22の厚さが薄くなりやすい部分の周辺に、貫通電極を構成する金属材料に起因する金属汚染への対策として、ゲッタリングサイト30が形成されている。これにより、ゲッタリングサイト30によって汚染金属を確実に捕獲することができるので、当該汚染金属の半導体基板1中への拡散を防止することが可能となる。従って、意図しない金属汚染に起因する活性素子の動作不良を確実に防止することができるので、貫通電極を有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0087】
最後に、図11(c)に示すように、絶縁膜21及びバリア膜22が形成された貫通孔20が埋まるように、貫通電極となる導電部23を形成する。ここで、導電部23の材料としては、例えばCu、W、Au、Niなどを用いる。また、導電部23の埋め込み方法としては、使用する導電材料に応じて最適な手段を選ぶものとし、例えば電解メッキや無電解メッキ、化学気相成長法などを用いる。
【0088】
尚、本変形例では、貫通孔20を形成する前にゲッタリングサイト30を形成したが、これに代えて、貫通孔20を形成した後又は導電部(つまり貫通電極)23を形成した後にゲッタリングサイト30を形成してもよい。
【0089】
また、前述の本変形例の半導体装置を少なくとも1つ含む複数の半導体装置を積層させた積層型半導体装置を構成することによって、ワイヤーボンディングを用いた従来の積層型半導体装置と比べて、ワイヤーを引き回すのに必要な面積が削減された、より小型の積層型半導体装置を実現することが可能となる。具体的には、例えば図5に示す積層型半導体装置において、図1(a)に示す第1の実施形態の半導体装置に代えて、図9に示す本変形例の半導体装置を積層させてもよい。
【0090】
また、本変形例において、貫通電極(導電部23)を取り囲むゲッタリングサイト30の平面形状については、円形状(ドーナツ状)、又は四角形などの多角形状に設定してもよい。また、ゲッタリングサイト30が十分なゲッタリング能力を持つ場合には、ゲッタリングサイト30が貫通電極の全周囲を囲む必要は無く、貫通電極から見て特定の方向のみにゲッタリングサイト30を配置してもよい。また、図9に示す本変形例の半導体装置においては、貫通電極を覆う絶縁膜21に接するようにゲッタリングサイト30が形成されているが、これに限られず、アライメントずれなどを考慮して、貫通電極を覆う絶縁膜21とゲッタリングサイト30との間に、例えば1μm程度のスペースを設けてもよい。
【0091】
また、設計上の理由から、貫通電極を複数本(例えば3本以上)密集させた貫通電極群を配置する場合において、貫通電極群を構成する貫通電極同士の間に活性素子を形成しない場合には、各貫通電極ではなく貫通電極群全体を取り囲むようにゲッタリングサイト30を形成してもよい。
【0092】
また、本変形例の半導体装置においては、図9に示すように、貫通孔20の口径を第1の面1a側から第2の面1b側まで同じに設定したが、これに限られず、第1の面1a側での貫通孔20の口径が第2の面1b側での貫通孔20の口径よりも小さくなるように設定してもよい。このようにすると、第1の面1a(素子形成面)側において貫通電極の占める面積が小さくなるため、面積効率良く貫通電極が配置された半導体装置100を形成することが可能となる。具体的には、貫通孔20の口径が第2の面1bから第1の面1aへ向けて小さくなるように、貫通孔20の内壁全体がテーパー状の断面形状を有していてもよい。或いは、貫通孔20の内壁の一部分(第2の面1b側)がテーパー状の断面形状を有していると共に貫通孔20の内壁の他の部分(第1の面1a側)が垂直形状の断面形状を有していてもよい。
【0093】
また、本変形例においては、貫通孔20の平面形状を円形に設定してもよいし、又は、設計やプロセス上の理由などから他の形が望ましい場合には、貫通孔20の平面形状を円形以外の他の形状、例えば多角形や楕円等に設定してもよい。
【0094】
また、本変形例の半導体装置においては、図9に示すように、貫通電極(導電部23)と第1配線9aとを直接接続したが、これに限られず、貫通電極を第2配線層9b又は電極パッド11とを直接接続してもよい。或いは、図12(a)に示すように、貫通孔20(貫通電極)を、素子分離6を除く半導体基板1中のみに形成し、言い換えると、貫通孔20(貫通電極)を素子分離6及び第1層間絶縁膜8aには形成せず、貫通電極(導電部23)と第1配線9aとを、素子分離6及び第1層間絶縁膜8aに形成したコンタクト7によって電気的に接続してもよい。或いは、図12(b)に示すように、貫通孔20(貫通電極)を、素子分離6を含む半導体基板1中のみに形成し、言い換えると、貫通孔20(貫通電極)を第1層間絶縁膜8a中には形成せず、貫通電極(導電部23)と第1配線9aとを、第1層間絶縁膜8a中に形成したコンタクト7によって電気的に接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、貫通電極を有する半導体装置及びその製造方法に関し、半導体基板の素子形成面近傍における貫通電極からの金属汚染が活性素子に悪影響を及ぼす事態を阻止でき、非常に有用である。
【符号の説明】
【0096】
1 半導体基板
1a 第1の面
1b 第2の面
3 不純物領域
4 ゲート絶縁膜
5 ゲート電極
6 素子分離
7 コンタクト
8a 第1層間絶縁膜
8b 第2層間絶縁膜
8c 第3層間絶縁膜
9a 第1配線
9b 第2配線
10a 第1ビア
10b 第2ビア
11 電極パッド
20 貫通孔
21 絶縁膜
22 バリア膜
23 導電部
24A、24B バンプ
25A、25B アンダーフィル
26 インターポーザ
30 ゲッタリングサイト
100、100A、100B、102 半導体装置
101 積層型半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子形成面である第1の面及びその反対側の第2の面を有する半導体基板と、
前記第1の面から前記第2の面まで前記半導体基板を貫通するように形成された貫通孔と、
前記貫通孔の内壁上に形成された絶縁膜と、
前記貫通孔の内壁上に前記絶縁膜を挟んで形成されたバリア膜と、
前記絶縁膜及び前記バリア膜が形成された前記貫通孔が埋まるように形成された導電部とを備え、
前記貫通孔の周辺に位置する部分の前記半導体基板における少なくとも前記第1の面側にゲッタリングサイトが形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記貫通孔の中心から前記半導体基板における活性素子形成領域までの最短距離よりも、前記貫通孔の中心から前記ゲッタリングサイトまでの最短距離の方が短いことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記ゲッタリングサイトは前記貫通孔を取り囲むように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記貫通孔の口径は、前記第2の面から前記第1の面へ向けて小さくなっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記半導体基板の前記第1の面上に配線が形成されており、
前記導電部と前記配線とが電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記導電部と前記配線とは、前記導電部と前記配線との間に介在するコンタクトによって電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲッタリングサイトは、前記貫通孔が3つ以上二次元的に配列されてなる貫通孔群を取り囲むように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記貫通孔の周辺に位置する部分の前記半導体基板における前記第1の面側の表面部に絶縁領域が形成されており、
前記ゲッタリングサイトは前記絶縁領域の下側に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記半導体基板における前記第1の面側の表面部に素子分離が形成されており、
前記絶縁領域は、前記素子分離と実質的に同じ深さまで形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
複数の半導体装置を積層させた積層型半導体装置であって、
前記複数の半導体装置のうち少なくとも1つは、請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置であることを特徴とする積層型半導体装置。
【請求項11】
貫通孔形成領域の周辺に位置する部分の半導体基板における少なくとも素子形成面側にゲッタリングサイトを形成する工程(a)と、
前記素子形成面からその反対側の面まで前記半導体基板を貫通するように貫通孔を形成する工程(b)と、
前記貫通孔の内壁上に絶縁膜を形成する工程(c)と、
前記貫通孔の内壁上に前記絶縁膜を挟んでバリア膜を形成する工程(d)と、
前記絶縁膜及び前記バリア膜が形成された前記貫通孔が埋まるように導電部を形成する工程(e)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−176003(P2011−176003A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37132(P2010−37132)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】