説明

半導体装置及び半導体装置の作製方法

【課題】フレキシブルな基板を用いていることを十分に活かした、より薄く湾曲しやすい半導体装置及びその作製方法を提案する。
【解決手段】少なくとも片面を保護用の基板として機能する絶縁層により覆われており、アンテナとして機能する導電層の膜厚に対する該導電層を覆わない部分の該絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、該導電層の膜厚に対する該導電層上の該絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であるように、該導電層上に該絶縁層を形成する。また、半導体装置の側面において導電膜が露出せず、TFTや導電膜を覆う絶縁膜が露出するように形成する。また、素子形成層側を覆う基板として、作製工程において表面に支持体を有する基板を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路素子を有する半導体装置及びその作製方法に関する。また本発明は、無線通信によりデータの交信を行うことのできる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、無線チップ、センサー等、各種装置の薄型化が製品小型化の上で重要な要素となっており、その技術や使用範囲が急速に広まっている。これらの薄型化された各種装置はある程度フレキシブルなため湾曲したものに設置して使用することが可能である。また、フレキシブル基板上に集積回路が形成されたICチップなども提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−19717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術では、装置を保護するためにある程度固い基板によって装置表面を覆う必要があった。該基板は、フレキシブルであるものの、膜厚がある程度厚く固いため、装置自体が厚くなり、装置の湾曲が妨げられる要因となっていた。従って、例えば、該装置を物品に設けた場合には違和感を感じるものであり、従来はフレキシブルな基板を用いていることを十分に活かした装置は提供されていない状況であった。そこで、本発明において、より薄く湾曲しやすい半導体装置及びその作製方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の半導体装置は、少なくとも片面を保護用の基板として機能する絶縁層(保護膜)により覆われており、アンテナとして機能する導電層の膜厚に対する前記導電層を覆わない部分の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、前記導電層の膜厚に対する前記導電層上の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であるように、前記導電層上に前記絶縁層を形成する。つまり、アンテナとして機能する導電膜の膜厚と前記導電膜を覆わない部分の前記絶縁層の膜厚との比は1:1.2であり、前記導電層の膜厚と前記導電層上の前記絶縁層の膜厚との比は少なくとも1:0.2であるように、前記導電層上に前記絶縁層を形成する。また、半導体装置の側面において導電膜が露出せず、TFTや導電膜を覆う絶縁膜が露出するように形成することを特徴とする。また、本発明の半導体装置において素子形成層側を覆う基板として、作製工程において表面に支持体を有する基板を用いることを特徴とする。
【0005】
本発明の半導体装置は、基板上に形成された素子形成層と、前記素子形成層上に形成された記憶素子部と、前記素子形成層上に形成されたアンテナとして機能する導電層と、前記素子形成層、前記記憶素子部及び前記アンテナとして機能する導電層上に形成された樹脂層と、を有し、前記導電層の膜厚に対する前記導電層を覆わない部分の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、前記導電層の膜厚に対する前記導電層上の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であることを特徴とする。
【0006】
本発明の半導体装置は、基板上に形成された素子形成層と、前記素子形成層上に形成された記憶素子部と、前記素子形成層上に形成されたアンテナとして機能する導電層と、前記素子形成層、前記記憶素子部及び前記アンテナとして機能する導電層上に形成された保護膜と、を有し、前記導電層の膜厚に対する前記導電層を覆わない部分の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、前記導電層の膜厚に対する前記導電層上の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であることを特徴とする。
【0007】
本発明の半導体装置は、基板上に形成された素子形成層と、前記素子形成層上に形成された記憶素子部と、前記素子形成層上に形成されたアンテナとして機能する導電層と、前記素子形成層、前記記憶素子部及び前記アンテナとして機能する導電層上に形成された樹脂層と、を有し、前記素子形成層は、前記記憶素子部にデータを書き込み、かつ前記記憶素子部からデータを読み出すための回路と、接合したn型不純物領域とp型不純物領域を有する第1の半導体膜と、を有し、前記回路は、複数の薄膜トランジスタを有し、前記第1の半導体膜は、前記薄膜トランジスタの第2の半導体膜と同じ絶縁表面上に形成され、前記導電層の膜厚に対する前記導電層を覆わない部分の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、前記導電層の膜厚に対する前記導電層上の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明の半導体装置は、基板上に形成された素子形成層と、前記素子形成層上に形成された記憶素子部と、前記素子形成層上に形成されたアンテナとして機能する導電層と、前記素子形成層、前記記憶素子部及び前記アンテナとして機能する導電層上に形成された保護膜と、を有し、前記素子形成層は、前記記憶素子部にデータを書き込み、かつ前記記憶素子部からデータを読み出すための回路と、接合したn型不純物領域とp型不純物領域を有する第1の半導体膜と、を有し、前記回路は、複数の薄膜トランジスタを有し、前記第1の半導体膜は、前記薄膜トランジスタの第2の半導体膜と同じ絶縁表面上に形成され、前記導電層の膜厚に対する前記導電層を覆わない部分の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、前記導電層の膜厚に対する前記導電層上の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の半導体装置において、前記樹脂層は、エポキシ樹脂からなることを特徴とする。
【0010】
本発明の半導体装置おいて、前記保護膜は、エポキシ樹脂からなることを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体装置において、前記基板は、膜厚が2μm以上20μm以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の半導体装置において、前記素子形成層は、接着層を介して前記基板上に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の半導体装置の作製方法は、第1の基板上に剥離層を形成し、前記剥離層上に素子形成層を形成し、前記素子形成層上に記憶素子部及びアンテナとして機能する導電層を形成し、前記素子形成層、前記記憶素子部及び前記アンテナとして機能する導電層上に保護膜を形成し、前記保護膜上に第2の基板を設けて、前記第2の基板を利用して前記第1の基板と前記素子形成層とを分離し、前記素子形成層を接着層を介して支持体を有する第3の基板と接するように形成し、前記第2の基板及び前記支持体を除去することを特徴とする。
【0014】
本発明の半導体装置おいて、前記第2の基板は、膜厚が2μm以上20μm以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の半導体装置において、前記樹脂層は、エポキシ樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の半導体装置は、少なくとも片面を樹脂により覆われているため、樹脂層の下層の記憶素子部や素子形成層をほこり等から保護し、かつ半導体装置の機械的強度を保つことが可能である。また、本発明の半導体装置において、少なくとも片面を覆う基板として樹脂層を用いるため、薄く湾曲しやすい半導体装置を提供することが可能となる。
【0017】
本発明の半導体装置において、アンテナとして機能する導電層の膜厚に対する該導電層を覆わない部分の絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、該導電層の膜厚に対する該導電層上の該絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であるように、該導電層上に該絶縁層を形成するため、該絶縁層の表面は半導体装置の作製工程において素子形成層への損傷を低減するのに十分な平坦性を有し、また、記憶素子部や素子形成層を保護するために十分な機械的強度を有する半導体装置を得ることが可能となる。
【0018】
また、本発明の半導体装置は、半導体装置の側面において導電膜が露出せず、TFTや導電膜を覆う絶縁膜が露出するように形成するため、アンテナとして機能する導電膜を覆う絶縁層のみでTFT等の素子やアンテナをほこり等から保護することができ、劣化しずらい半導体装置を提供することが可能となる。
【0019】
また、本発明の半導体装置において素子形成層側を覆う基板として、作製工程において表面に支持体を有する基板を用いるため、2μm以上20μm以下程度の基板を容易に取り扱うことができる。よって、薄く湾曲しやすい半導体装置を容易に作製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、以下に示す実施の形態1〜4は自由に組み合わせて用いることができる。つまり、実施の形態1〜4に示した材料や形成方法は自由に組み合わせて利用することができる。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態において、本発明の半導体装置の一例に関して図面を参照して説明する。
【0022】
本実施の形態で示す半導体装置を図1に示す。なお、図1(A)は本実施の形態で示す半導体装置の上面構造の一例を示し、図1(A)の断面構造の一部を図1(B)に示している。
【0023】
本実施の形態において、半導体装置200は集積回路部201、メモリ部202、アンテナ203を有している(図1(A))。なお、図1(B)において、領域204は図1(A)の集積回路部201の断面構造の一部に対応し、領域205は図1(A)のメモリ部202の断面構造の一部に対応し、領域206は図1(A)のアンテナ203の断面構造の一部に対応している。
【0024】
本実施の形態の半導体装置は、図1(B)に示すように基板778上に絶縁層703を介して設けられた薄膜トランジスタ(TFT)744〜748と、薄膜トランジスタ744〜748上に設けられた絶縁膜750と、当該絶縁膜750上に設けられたソース電極又はドレイン電極として機能する導電膜752〜761とを有する。なお、本実施の形態において、絶縁層703は、接着層を介して基板778上に設けられている。また、本実施の形態において、基板778の材料は特に限定されるものではないが、膜厚が2μm〜20μm程度の基板を用いる。
【0025】
また、本実施の形態の半導体装置は、絶縁膜750及び導電膜752〜761上に設けられた絶縁膜762と、絶縁膜762上に設けられた導電膜763〜765と、絶縁膜762及び導電膜763〜765の一部を覆うように設けられた絶縁膜766と、絶縁膜766上に設けられた記憶素子部789、790と、導電膜765上に設けられたアンテナとして機能する導電層786と、絶縁膜766、導電膜771及びアンテナとして機能する導電層786を覆うように設けられた絶縁膜772とを有している。
【0026】
本実施の形態において絶縁膜772は、好ましくは樹脂(より好ましくはエポキシ樹脂)により形成する。絶縁層772としてエポキシ樹脂を用いることにより、絶縁層772表面の平坦性が向上し、かつ絶縁層772の下層の記憶素子部や素子形成層をほこり等から保護し、かつ半導体装置の機械的強度を保つことが可能である。また、本実施の形態の半導体装置において、アンテナとして機能する導電層を覆う基板として絶縁層772を用いることが可能となるため、薄く湾曲しやすい半導体装置を提供することが可能となる。また、本実施の形態において、アンテナとして機能する導電層786の膜厚に対する該導電層786を覆わない部分の該絶縁層772の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、該導電層786の膜厚に対する該導電層786上の該絶縁層772の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であるように、絶縁層772を形成するとよい。そうすることにより、絶縁層772の表面は半導体装置の作製工程において素子形成層への損傷を低減するのに十分な平坦性を有し、また、記憶素子部や素子形成層を保護するために十分な機械的強度を有する半導体装置を得ることが可能となる。なお、図1においてメモリ部および集積回路部はTFTやコンデンサ等の素子を複数有することはいうまでもない。
【0027】
なお、本実施の形態において、半導体装置の側面において導電膜が露出しないように形成するとよい。つまり、半導体装置の側面は、TFTや導電膜を覆う絶縁膜が露出するようにする。そのような構造とすることで、絶縁膜772のみでTFT等の素子やアンテナをほこり等から保護することができ、劣化しずらい半導体装置を提供することが可能となる。
【0028】
次に、図1に示す半導体装置の作製工程の一例について説明する。
【0029】
まず、第1の基板701の一表面に、剥離層702を形成する(図2(A)参照)。第1の基板701は、絶縁表面を有する。第1の基板701がガラスからなる場合は、その面積や形状に大きな制限はない。そのため、第1の基板701として、例えば、1辺が1メートル以上であって、矩形状のものを用いれば、生産性を格段に向上させることができる。このような利点は、円形の単結晶シリコン基板を用いる場合と比較すると、大きな優位点である。また、基板701がプラスチックからなる場合、作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性のプラスチックを用いる必要がある。なお、後述するが、好適には、ガラスからなる第1の基板701上に薄膜トランジスタを設けた後、当該薄膜トランジスタを剥離して、プラスチックからなる基板上に設けてもよい。
【0030】
なお、本工程では、剥離層702は、第1の基板701の全面に設けているが、必要に応じて、基板701の全面に剥離層を設けた後に、フォトリソグラフィ法によりパターニングして選択的に設けてもよい。また、第1の基板701に接するように剥離層702を形成しているが、必要に応じて、第1の基板701に接するように下地となる絶縁層を形成し、当該絶縁層に接するように剥離層702を形成してもよい。
【0031】
剥離層702は、スパッタリング法やプラズマCVD法等により、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)等から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる層を、単層又は積層して形成する。珪素を含む層の結晶構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれの場合でもよい。
【0032】
次に、剥離層702を覆うように、下地となる絶縁層703を形成する。絶縁層703は、スパッタリング法やプラズマCVD法等により、珪素の酸化物又は珪素の窒化物を含む層を、単層又は積層で形成する。珪素の酸化物材料とは、珪素(Si)と酸素(O)を含む物質であり、酸化珪素、窒素を含む酸化珪素等が該当する。珪素の窒化物材料とは、珪素と窒素(N)を含む物質であり、窒化珪素、酸素を含む窒化珪素等が該当する。下地となる絶縁層は、第1の基板701からの不純物の侵入を防止するブロッキング膜として機能する。
【0033】
次に、絶縁層703上に、非晶質半導体層704を形成する。非晶質半導体層704は、スパッタリング法、LPCVD法、プラズマCVD法等により形成する。続いて、非晶質半導体層704を結晶化法(レーザ結晶化法、RTA又はファーネスアニール炉を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法とレーザ結晶化法を組み合わせた方法等)により結晶化して、結晶質半導体層を形成する。その後、得られた結晶質半導体層を所望の形状にパターニングして、結晶質半導体層706〜710を形成する(図2(B)参照)。
【0034】
結晶質半導体層706〜710の作成工程の一例について、以下に説明する。まず、プラズマCVD法を用いて、非晶質半導体層を形成する。次に、結晶化を助長する金属元素であるニッケルを含む溶液を非晶質半導体層上に保持させた後、非晶質半導体層に脱水素化の処理(500℃、1時間)と、熱結晶化の処理(550℃、4時間)を行って結晶質半導体層を形成する。その後、必要に応じてレーザ光を照射し、フォトリソグラフィ法を用いたパターニング処理によって結晶質半導体層706〜710を形成する。
【0035】
レーザ結晶化法で結晶質半導体層を形成する場合、気体レーザ又は固体レーザを用いる。気体レーザと固体レーザは、連続発振又はパルス発振のどちらでもよい。例えば、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち一種または複数種から発振されたレーザビームを用いることができる。このようなレーザビームの基本波、及びこれらの基本波の第2高調波から第4高調波のレーザビームを照射することで、大粒径の結晶を得ることができる。
【0036】
なお、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、Arイオンレーザ、またはTi:サファイアレーザは、連続発振をさせることが可能であり、Qスイッチ動作やモード同期などを行うことによって10MHz以上の発振周波数でパルス発振をさせることも可能である。連続発振レーザ若しくは10MHz以上の周波数で発振するレーザビームを照射することで、結晶化された半導体膜の表面を平坦なものとすることができる。それにより、後の工程で形成するゲート絶縁膜を薄膜化することが可能であり、より薄型の半導体装置を作製することができる。また、ゲート絶縁膜の耐圧を向上させることに寄与することができる。
【0037】
なお、結晶化を助長する金属元素を用いて非晶質半導体層の結晶化を行うと、低温で短時間の結晶化が可能となるうえ、結晶の方向が揃うという利点がある一方、金属元素が結晶質半導体層に残存するためにオフ電流が上昇し、特性が安定しないという欠点がある。そこで、結晶質半導体層上に、ゲッタリングサイトとして機能する非晶質半導体層を形成するとよい。ゲッタリングサイトとなる非晶質半導体層には、リンやアルゴンの不純物元素を含有させる必要があるため、好適には、アルゴンを高濃度に含有させることが可能なスパッタリング法で形成するとよい。その後、加熱処理(RTA法やファーネスアニール炉を用いた熱アニール等)を行って、非晶質半導体層中に金属元素を拡散させ、続いて、当該金属元素を含む非晶質半導体層を除去する。そうすると、結晶質半導体層中の金属元素の含有量を低減又は除去することができる。
【0038】
次に、結晶質半導体層706〜710を覆うゲート絶縁層705を形成する。ゲート絶縁層705は、プラズマCVD法やスパッタリング法により、珪素の酸化物又は珪素の窒化物を含む層を、単層又は積層して形成する。なお、ゲート絶縁層は、半導体膜706〜710に対し高密度プラズマ処理を行い、表面を酸化又は窒化することで形成しても良い。例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと、酸素、酸化窒素(NO)、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを導入したプラズマ処理で形成する。この場合のプラズマの励起は、マイクロ波の導入により行うと、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。この高密度プラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化又は窒化することができる。
【0039】
このような高密度プラズマを用いた処理により、1〜20nm、代表的には5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に形成される。この場合の反応は、固相反応であるため、当該絶縁膜と半導体膜との界面準位密度はきわめて低くすることができる。このような、高密度プラズマ処理は、半導体膜(結晶性シリコン、或いは多結晶シリコン)を直接酸化(若しくは窒化)するため、形成される絶縁膜の厚さは理想的には、ばらつきをきわめて小さくすることができる。加えて、結晶性シリコンの結晶粒界でも酸化が強くされることがないため、非常に好ましい状態となる。すなわち、ここで示す高密度プラズマ処理で半導体膜の表面を固相酸化することにより、結晶粒界において異常に酸化反応をさせることなく、均一性が良く、界面準位密度が低い絶縁膜を形成することができる。よって、より薄く特性のよい半導体装置を作製することが可能である。
【0040】
ゲート絶縁層は、高密度プラズマ処理によって形成される絶縁膜のみを用いても良いし、それにプラズマや熱反応を利用したCVD法で酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコンなどの絶縁膜を堆積し、積層させても良い。いずれにしても、高密度プラズマで形成した絶縁膜をゲート絶縁層の一部又は全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを小さくすることができる。よって、より薄く特性のよい半導体装置を作製することが可能である。
【0041】
また、半導体膜の結晶化の際に半導体膜に対し、連続発振レーザ若しくは10MHz以上の周波数で発振するレーザビームを照射しながら一方向に走査して結晶化させて得られた半導体膜706〜710は、そのビームの走査方向に結晶が成長する特性がある。その走査方向をチャネル長方向(チャネル形成領域が形成されたときにキャリアが流れる方向)に合わせてトランジスタを配置し、上記ゲート絶縁層を組み合わせることで、特性ばらつきが小さく、しかも電界効果移動度が高いトランジスタ(TFT)を得ることができる。
【0042】
次に、ゲート絶縁層705上に、第1の導電層と第2の導電層を積層して形成する。第1の導電層は、プラズマCVD法やスパッタリング法により、20〜100nmの厚さで形成する。第2の導電層は、公知の手段により、100nm〜400nmの厚さで形成する。第1の導電層と第2の導電層は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、等から選択された元素又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成する。または、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素に代表される半導体材料により形成する。第1の導電層と第2の導電層の組み合わせの例を挙げると、窒化タンタルからなる層とタングステンからなる層、窒化タングステンからなる層とタングステンからなる層、窒化モリブデンからなる層とモリブデンからなる層等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、第1の導電層と第2の導電層を形成した後に、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層構造ではなく、3層構造の場合は、モリブデンからなる層とアルミニウムからなる層とモリブデンからなる層の積層構造を採用するとよい。
【0043】
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成し、ゲート電極とゲート線を形成するためのエッチング処理を行って、ゲート電極として機能する導電層716〜725を形成する。
【0044】
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成し、結晶質半導体層706、708〜710に、イオンドープ法又はイオン注入法により、N型を付与する不純物元素を低濃度に添加して、不純物領域711、713〜715とチャネル形成領域780、782〜784を形成する。N型を付与する不純物元素は、15族に属する元素を用いれば良く、例えばリン(P)、砒素(As)を用いる。
【0045】
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成し、結晶質半導体層707に、P型を付与する不純物元素を添加して、不純物領域712とチャネル形成領域781を形成する。P型を付与する不純物元素は、例えばボロン(B)を用いる。
【0046】
次に、ゲート絶縁層705と導電層716〜725を覆うように、絶縁層を形成する。絶縁層は、プラズマCVD法やスパッタリング法により、珪素、珪素の酸化物又は珪素の窒化物の無機材料を含む層や、有機樹脂などの有機材料を含む層を、単層又は積層して形成する。次に、絶縁層を垂直方向を主体とした異方性エッチングにより選択的にエッチングして、導電層716〜725の側面に接する絶縁層(サイドウォールともよぶ)739〜743を形成する(図2(C)参照)。また、絶縁層739〜743の作成と同時に、絶縁層705をエッチングして、絶縁層734〜738を形成する。絶縁層739〜743は、後にLDD(Lightly Doped drain)領域を形成する際のドーピング用のマスクとして用いる。
【0047】
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成し、そのレジストマスクと絶縁層739〜743をマスクとして用いて、結晶質半導体層706、708〜710にN型を付与する不純物元素を添加して、第1の不純物領域(LDD領域ともよぶ)727、729、731、733と、第2の不純物領域726、728、730、732とを形成する。第1の不純物領域727、729、731、733の不純物元素の濃度は、第2の不純物領域726、728、730、732の不純物元素の濃度よりも低い。上記工程を経て、Nチャネル型の薄膜トランジスタ744、746〜748と、Pチャネル型の薄膜トランジスタ745が完成する。
【0048】
続いて、薄膜トランジスタ744〜748を覆うように、絶縁層を単層又は積層で形成する(図3(A)参照)。薄膜トランジスタ744〜748を覆う絶縁層は、SOG法、液滴吐出法等により、珪素の酸化物や珪素の窒化物等の無機材料、ポリイミド、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ、シロキサン等の有機材料等により、単層又は積層で形成する。シロキサンとは、Si−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。また、置換基として、フルオロ基を用いてもよい。
【0049】
例えば、薄膜トランジスタ744〜748を覆う絶縁層が3層構造の場合、1層目の絶縁層749として酸化珪素を含む層を形成し、2層目の絶縁層750として樹脂を含む層を形成し、3層目の絶縁層751として窒化珪素を含む層を形成するとよい。
【0050】
なお、絶縁層749〜751を形成する前、又は絶縁層749〜751のうちの1つ又は複数を形成した後に、半導体層の結晶性の回復や半導体層に添加された不純物元素の活性化、半導体層の水素化を目的とした加熱処理を行うとよい。加熱処理には、熱アニール、レーザアニール法又はRTA法などを適用するとよい。
【0051】
次に、フォトリソグラフィ法により、絶縁層749〜751をエッチングして、第2の不純物領域726、728、730、732、不純物領域785を露出させる開口部を形成し、図3(A)に示すように開口部を充填するように、導電層を形成し、当該導電層をパターン加工して、ソース配線又はドレイン配線等として機能する導電層752〜761を形成する。
【0052】
導電層752〜761は、プラズマCVD法やスパッタリング法により、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ネオジウム(Nd)等から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムを主成分としニッケルを含む材料、アルミニウムを主成分とし珪素を含む材料、アルミニウムを主成分とし、ニッケル、炭素及び珪素から選択された1種又は複数種とを含む材料に相当する。導電層752〜761は、例えば、バリア層と珪素を含むアルミニウム層とバリア層の積層構造、バリア層と珪素を含むアルミニウム層と窒化チタン層とバリア層の積層構造を採用するとよい。なお、アルミニウムシリコンが含むシリコンは、0.1wt%〜5wt%とする。また、バリア層とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデン、又はモリブデンの窒化物からなる薄膜に相当する。アルミニウムや珪素を含むアルミニウムは、抵抗値が低く、安価であるため、導電層752〜761を形成する材料として最適である。また、上層と下層のバリア層を設けると、アルミニウムや珪素を含むアルミニウムのヒロックの発生を防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンからなるバリア層を形成すると、結晶質半導体層上に薄い自然酸化膜ができていたとしても、この自然酸化膜を還元するため、結晶質半導体層とバリア層の接続不良の発生を抑制することができる。
【0053】
次に、導電層752〜761を覆うように、保護膜として機能する絶縁層762を形成する(図3(B)参照)。絶縁膜762は、SOG法、液滴吐出法等を用いて、無機材料又は有機材料(好ましくはエポキシ樹脂)により、単層又は積層で形成する。絶縁層762は、好適には、0.75μm〜3μmの厚さで形成する。
【0054】
続いて、フォトリソグラフィ法により、絶縁層762をエッチングして、導電層757、759、761を露出させる開口部を形成する。続いて、該開口部を充填するように、導電層を形成する。導電層は、プラズマCVD法やスパッタリング法を用いて、導電性材料により形成する。次に、導電層をパターン加工して、導電層757、759、761とそれぞれ電気的に接続する導電層763〜765を形成する。なお、導電層763、764は、記憶素子部が含む一対の導電層のうちの一方の導電層となる。従って、好適には、導電層763〜765は、チタン、又はチタンを主成分とする合金材料若しくは化合物材料により、単層又は積層で形成するとよい。チタンは、抵抗値が低いため、記憶素子部のサイズの縮小につながり、高集積化を実現することができる。また、導電層763〜765を形成するためのフォトリソグラフィ工程においては、下層の薄膜トランジスタ744〜748にダメージを与えないために、ウエットエッチング加工を行うとよく、エッチング剤にはフッ化水素又はアンモニア過水を用いるとよい。
【0055】
次に、導電層763〜765を覆うように、絶縁層766を形成する。絶縁層766は、SOG法、液滴吐出法等を用いて、無機材料又は有機材料により、単層又は積層で形成する。また、絶縁層766は、好適には、0.75μm〜3μmの厚さで形成する。続いて、フォトリソグラフィ法により、絶縁層766をエッチングして、導電層763〜765を露出させる開口部767〜769を形成する。
【0056】
次に、導電層765に接し、アンテナとして機能する導電層786を形成する(図4(A)参照)。導電層786は、プラズマCVD法、スパッタリング法、印刷法、液滴吐出法を用いて、導電性材料により形成する。好ましくは、導電層786は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銀(Ag)、銅(Cu)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。具体的には、導電層786は、スパッタリング法によりアルミニウム層を形成し、当該アルミニウム層をパターン加工することにより形成する。アルミニウム層のパターン加工は、ウエットエッチング加工を用いるとよく、ウエットエッチング加工後は200〜300℃の加熱処理を行うとよい。
【0057】
次に、導電層763、764に接するように有機化合物を含む層787を形成する(図4(B)参照)。有機化合物を含む層787は、液滴吐出法や蒸着法等により形成する。続いて、有機化合物を含む層787に接するように、導電層771を形成する。導電層771は、スパッタリング法や蒸着法等により形成する。
【0058】
有機化合物を含む層に用いる有機材料としては、例えば、4、4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:α−NPD)や4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:TPD)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)や4,4’−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物、ポリビニルカルバゾール(略称:PVK)やフタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物等を用いることができる。これら材料は、正孔輸送性の高い物質である。
【0059】
また、他にも有機材料として、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる材料や、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。これら材料は、電子輸送性が高い物質である。
【0060】
さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等の化合物等を用いることができる。
【0061】
またメモリ材料層は単層構造であっても、積層構造であってもよい。積層構造の場合、上記材料から選び、積層構造することができる。また上記有機材料と、発光材料とを積層してもよい。発光材料として、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、ペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)等がある。
【0062】
また、上記発光材料を分散してなる層を用いてもよい。発光材料分散してなる層において、母体となる材料としては、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)などの金属錯体等を用いることができる。また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等を用いることができる。
【0063】
このような有機材料は、熱的作用等によりその性質を変化させるため、ガラス転移温度(Tg)が50℃から300℃、好ましくは80℃から120℃であるとよい。
【0064】
また、有機材料や発光材料に金属酸化物を混在させた材料を用いてもよい。なお金属酸化物を混在させた材料とは、上記有機材料又は発酵材料と、金属酸化物とが混合した状態、又は積層された状態を含む。具体的には複数の蒸着源を用いた共蒸着法により形成された状態を指す。このような材料を有機無機複合材料と呼ぶことができる。
【0065】
例えば正孔輸送性の高い物質と、金属酸化物を混在させる場合、当該金属酸化物にはバナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物を用いると好ましい。
【0066】
また電子輸送性の高い物質と、金属酸化物を混在させる場合、当該金属酸化物にはリチウム酸化物、カルシウム酸化物、ナトリウム酸化物、カリウム酸化物、マグネシウム酸化物を用いると好ましい。
【0067】
メモリ材料層には、電気的作用、光学的作用又は熱的作用により、その性質が変化する材料を用いればよいため、例えば光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸発生剤)をドープした共役高分子を用いることもできる。共役高分子として、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンエチニレン類等を用いることができる。また、光酸発生剤としては、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、o−ニトロベンジルトシレート、アリールスルホン酸p−ニトロベンジルエステル、スルホニルアセトフェノン類、Fe−アレン錯体PF6塩等を用いることができる。
【0068】
なお、ここでは、記憶素子部789、790として、有機化合物材料を用いた例を示したが、これに限られない。例えば、結晶状態と非晶質状態の間で可逆的に変化する材料や第1の結晶状態と第2の結晶状態の間で可逆的に変化する材料等の相変化材料を用いることができる。また、非晶質状態から結晶状態にのみ変化する材料を用いることも可能である。
【0069】
結晶状態と非晶質状態の間で可逆的に変化する材料とは、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、アンチモン(Sb)、硫黄(S)、酸化テルル(TeOx)、Sn(スズ)、金(Au)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、Co(コバルト)及び銀(Ag)から選択された複数を有する材料であり、例えば、Ge−Te−Sb−S、Te−TeO−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Ge−Te−Sn、Sn−Se−Te、Sb−Se−Te、Sb−Se、Ga−Se−Te、Ga−Se−Te−Ge、In−Se、In−Se−Tl−Co、Ge−Sb−Te、In−Se−Te、Ag−In−Sb−Te系材料が挙げられる。また、第1の結晶状態と第2の結晶状態の間で可逆的に変化する材料とは、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、セレン(Se)及びテルル(Te)から選択された複数を有する材料であり、例えば、Te−TeO、Te−TeO−Pd、SbSe/BiTeが挙げられる。この材料の場合、相変化は2つの異なる結晶状態の間で行われる。また、非晶質状態から結晶状態にのみ変化する材料とは、テルル(Te)、酸化テルル(TeOx)、アンチモン(Sb)、セレン(Se)及びビスマス(Bi)から選択された複数を有する材料であり、例えば、Ag−Zn、Cu−Al−Ni、In−Sb、In−Sb−Se、In−Sb−Teが挙げられる。
【0070】
以上の工程を経て、導電層763、有機化合物を含む層787及び導電層771の積層体からなる記憶素子部789と、導電層764、有機化合物を含む層787及び導電層771の積層体からなる記憶素子部790が完成する(図4(B))。
【0071】
次に、記憶素子部789、790、アンテナとして機能する導電層786を覆うように、保護用の基板として機能する絶縁層772を形成する(図4(B))。絶縁層772は、後に記載する剥離工程においてTFTを含む層への損傷を抑える機能を有する材料であれば特に制限されるものではないが、好ましくは樹脂(より好ましくはエポキシ樹脂)により形成する。絶縁層772としてエポキシ樹脂を用いることにより、絶縁層772表面の平坦性が向上し、後の剥離工程においてTFTを含む層への損傷を低減し、かつ絶縁層772の下層の記憶素子部や素子形成層をほこり等から保護し、半導体装置の機械的強度を保つことが可能である。また、本実施の形態の半導体装置において、アンテナとして機能する導電層786を覆う基板として絶縁層772を用いることができるため、薄く湾曲しやすい半導体装置を提供することが可能となる。なお、本実施の形態において、アンテナとして機能する導電層786の膜厚に対する該導電層786を覆わない部分の該絶縁層772の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、該導電層786の膜厚に対する該導電層786上の該絶縁層772の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であるように、絶縁層772を形成するとよい。そうすることにより、絶縁層772の表面は半導体装置の作製工程において素子形成層への損傷を低減するのに十分な平坦性を有し、また、記憶素子部や素子形成層を保護するために十分な機械的強度を有する半導体装置を得ることが可能となる。
【0072】
なお、本実施の形態では、薄膜トランジスタ744〜748、導電層752〜761を含む層を素子形成層791、記憶素子部789、790、アンテナとして機能する導電層786を含む層を領域792とよぶ。また、基板701を除くアンテナとして機能する導電膜786の下層部分の厚さは、5μm以下、好ましくは0.1μm〜3μmの厚さを有するように形成するとよい。なお、ここでは図示しないが、素子形成層791には、メモリ部202、集積回路部201を構成するダイオード、TFT、コンデンサ、抵抗素子などが形成される。
【0073】
次に、剥離層702の表面の一部が露出するように、ダイサー、レーザー、ワイヤソーなどにより、絶縁層703、749、750、751、772をエッチングして開口部773、774を形成する(図5(A)参照)。
【0074】
次に、開口部773、774にエッチング剤を導入して、剥離層702を除去する(図5(A)参照)。エッチング剤は、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を使用する。例えば、三フッ化塩素(ClF)、三フッ化窒素(NF)、三フッ化臭素(BrF)、フッ化水素(HF)がある。なお、エッチング剤として、フッ化水素を使用する場合は、剥離層702として、酸化珪素からなる層を用いる。そして、薄膜トランジスタ744〜748を含む層を第1の基板701から剥離する。
【0075】
なお、薄膜トランジスタ744〜748を含む素子形成層791が剥離された第1の基板701は、コストの削減のために、再利用するとよい。また、絶縁層772は、剥離層702を除去した後に、素子形成層791が飛散しないように設けたものである。素子形成層791は小さく薄く軽いために、剥離層702を除去した後は、第1の基板701に密着していないために飛散しやすい。しかしながら、素子形成層791上に絶縁層772を形成することで、素子形成層791に重みが付き、第1の基板701からの飛散を防止することができる。また、素子形成層791単体では薄くて軽いが、絶縁層772を形成することで、巻かれた形状になることがなく、ある程度の強度を確保することができる。
【0076】
次に、絶縁層772をシート材776に接着させて、第1の基板701から完全に剥離する(図4(B)参照)。ここで、シート材776は、通常の状態ではその接着力が強く、熱を加えたり、光を照射することによりその接着力が弱くなる性質を有するものを用いるとよい。例えば、加熱することにより接着力が弱くなる熱剥離テープや、紫外光を照射することにより接着力が弱くなるUV剥離テープ等を用いるとよい。また、通常の状態で接着力が弱い弱粘性テープ等を用いてもよい。
【0077】
次に、絶縁層703上に第2の基板778を固定する。ここで、第2の基板778は、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなるフィルム、繊維質な材料からなる紙、基材フィルム(ポリエステル、ポリアミド、無機蒸着フィルム、紙類等)と接着性合成樹脂フィルム(アクリル系合成樹脂、エポキシ系合成樹脂等)との積層フィルムなどを用いることができる。なお、第2の基板778は膜厚が2μm以上20μ以下程度であることが好ましい。第2の基板778がプラスチックからなる場合、薄型、軽量で、曲げることが可能であるためデザイン性に優れ、フレキシブルな形状への加工が容易である。また、耐衝撃性に優れ、様々な物品に貼り付けたり、埋め込んだりすることが容易であり、多種多様な分野で活用することができる。
【0078】
また、本実施の形態において、第2の基板778の絶縁層703側の表面には接着層が設けられている。接着層は、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、酢酸ビニル樹脂系接着剤、ビニル共重合樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ゴム系接着剤、アクリル樹脂系接着剤等の接着剤を含む層に相当する。
【0079】
また、本実施の形態において、第2の基板778の絶縁層703側ではない表面に第2の基板778よりも膜厚が厚い支持体779を有する。本実施の形態において、第2の基板778は、2μm〜20μm程度と薄いため取り扱いが困難であるが、支持体779を有することにより第2の基板778の取り扱いが容易となる。なお、支持体779は工程の最後に除去される。本実施の形態において、第2の基板778が支持体779を有することによって、第2の基板778として非常に膜厚の薄いものを用いることが可能となった。
【0080】
なお、第2の基板778の表面は、二酸化珪素(シリカ)の粉末により、コーティングされていてもよい。コーティングにより、高温で高湿度の環境下においても防水性を保つことができる。また、その表面は、インジウム錫酸化物等の導電性材料によりコーティングされていてもよい。コーティングした材料が静電気をチャージし、薄膜集積回路を静電気から保護することができる。また、その表面は、炭素を主成分とする材料(例えば、ダイヤモンドライクカーボン)によりコーティングされていてもよい。コーティングにより強度が増し、半導体装置の劣化や破壊を抑制することができる。
【0081】
次に、素子形成層791を有する基板778とシート材776とを分離する。ここでは、シート材776としてUV剥離テープを用いる場合を説明する。まず、シート材776と絶縁層772との接着力を弱めるためにシート材776に紫外光を照射する(図6(A))。次に、シート材776を絶縁層772から分離する。続いて、第2の基板778に設けられた支持体779を第2の基板778から分離する。
【0082】
以上の工程により、図1(B)に示すような半導体装置を作製することができる。
【0083】
なお、図1においてアンテナ203は、メモリ部202に対して、重なるように設けてもよいし、重ならずに周囲に設ける構造でもよい。また重なる場合も全面が重なってもよいし、一部が重なっている構造でもよい。
【0084】
半導体装置200の無線による信号の伝送方式は、電磁結合方式、電磁誘導方式またはマイクロ波方式等を用いることができる。伝送方式は、実施者が使用用途を考慮して適宜選択すればよく、伝送方式に伴って最適なアンテナを設ければよい。
【0085】
電磁結合方式または電磁誘導方式(例えば13.56MHz帯)を用いる場合には、磁界密度の変化による電磁誘導を利用するため、アンテナとして機能する導電層を輪状(例えば、ループアンテナ)、らせん状(例えば、スパイラルアンテナ)に形成する。
【0086】
また、マイクロ波方式(例えば、UHF帯(860〜960MHz帯)、2.45GHz帯等)を用いる場合には、信号の伝送に用いる電磁波の波長を考慮してアンテナとして機能する導電層の長さ等の形状を適宜設定すればよい。例えば、アンテナとして機能する導電層を線状(例えば、ダイポールアンテナ)、平坦な形状(例えば、パッチアンテナ)またはリボン型の形状に形成することができる。アンテナとして機能する導電層の形状は線状に限られず、電磁波の波長を考慮して曲線状や蛇行形状またはこれらを組み合わせた形状で設けてもよい。
【0087】
また、TFTはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でもよいし、二つ形成されるダブルゲート構造または三つ形成されるトリプルゲート構造であってもよい。つまり、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のTFTにも適用することができる。また、周辺駆動回路領域の薄膜トランジスタも、シングルゲート構造、ダブルゲート構造またはトリプルゲート構造などのマルチゲート構造であってもよい。
【0088】
また、本実施の形態で示したTFTの作製方法に限らず、トップゲート型(プレーナー型)、ボトムゲート型(逆スタガ型)、あるいはチャネル領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極を有する、デュアルゲート型やその他の構造においても本発明を適用することができる。
【0089】
本発明の半導体装置は、少なくとも片面を樹脂により覆われているため、樹脂層の下層の記憶素子部や素子形成層をほこり等から保護し、かつ半導体装置の機械的強度を保つことが可能である。また、本発明の半導体装置において、少なくとも片面を覆う基板として樹脂層を用いるため、薄く湾曲しやすい半導体装置を提供することが可能となる。また、アンテナとして機能する導電層の膜厚に対する該導電層を覆わない部分の該絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、該導電層の膜厚に対する該導電層上の該絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であるように、該導電層上に該絶縁層を形成するため、該絶縁層の表面は半導体装置の作製工程において素子形成層への損傷を低減するのに十分な平坦性を有し、また、記憶素子部や素子形成層を保護するために十分な機械的強度を有する半導体装置を得ることが可能となる。また、本発明の半導体装置は、半導体装置の側面において導電膜が露出せず、TFTや導電膜を覆う絶縁膜が露出するように形成してもよい。それにより、アンテナとして機能する導電膜を覆う絶縁層のみでTFT等の素子やアンテナをほこり等から保護することができ、劣化しずらい半導体装置を提供することが可能となる。また、本発明の半導体装置において素子形成層側を覆う基板として、作製工程において表面に支持体を有する基板を用いるため、2μm以上20μm以下程度の基板を容易に取り扱うことができる。よって、薄く湾曲しやすい半導体装置を容易に作製することが可能となる。
【0090】
(実施の形態2)
本実施の形態において、実施の形態1と異なる半導体装置の作製工程について説明する。具体的には、メモリセルのpn接合と該メモリセルを制御するロジック部の薄膜トランジスタとを同時に形成する工程について説明する。
【0091】
図7に、本実施の形態の半導体装置の模式的な断面構造を示す。本実施の形態の半導体装置は、アンテナ、メモリ部、集積回路部を有している。図7において、図面の真ん中の領域にメモリ部の一部としてダイオード上に記憶素子部が積層されたメモリセルの断面を示す。また、図面の左側の領域にメモリ部のロジック回路の断面の一部として、pチャネル型TFT(「pch−TFT」とも表記する。)、nチャネル型TFT(「Nch−TFT」とも表記する。)の断面を示す。また、図面の右側の領域にアンテナの一部の断面と共に、集積回路部の断面の一部として、共振回路212のコンデンサ、電源回路213の高耐圧型のnチャネル型TFTを示す。なお、集積回路部にも、高耐圧型のTFTの他、図面の左側のロジック回路と同様のpチャネル型TFTおよびnチャネル型TFTが形成されることはいうまでもない。また、メモリ部および集積回路部は、図7に図示されたTFTやコンデンサを複数有することはいうまでもない。
【0092】
次に、基板260は素子形成層250を製造するときに使用される基板である。本実施例ではガラス基板を用いる。基板260上には、素子形成層250から基板260を除去するために用いる剥離層261が形成されている。基板260上に剥離層261を形成してから、下地絶縁層249を形成し、下地絶縁層249上にTFTななどでなる素子形成層250を形成する。以下、図7〜図11を用いて本実施の形態の半導体装置の形成方法を説明する。
【0093】
基板260にガラス基板260を用いる。図8(S1)に示すように、基板260上に3層261a〜261cでなる剥離層261を形成する。第1層261aは、平行平板型プラズマCVD装置により、原料ガスにSiH、NOを用いて酸化窒化シリコン膜(SiO、x>y)を厚さ100nm形成する。第2層261bとして、厚さ30nmのタングステン膜をスパッタリング装置で成膜する。第3層261cとして、厚さ200nmの酸化シリコン膜をスパッタリング装置で成膜する。
【0094】
第3層261c(酸化シリコン)を成膜することで、第2層261b(タングステン)の表面が酸化され、界面にタングステン酸化物が形成される。タングステン酸化物が形成されることで、のちに素子形成層250を他の基板に転載するときに、基板260を分離しやすくなる。第1層261aは、素子形成層250を作製している間、第2層261bの密着性を維持するための層である。
【0095】
第2層261bには、タングステン(W)他、モリブデン(MO)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(CO)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(ZN)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の金属膜や、これらの金属の化合物が好ましい。また、第2層261bの厚さは20nm以上40nm以下とすることができる。
【0096】
図8(S2)に示すように、剥離層261上に、2層構造の下地絶縁層249を形成する。第1層249aとして、プラズマCVD装置により原料ガスにSiH、NO、NH、Hを用いて酸化窒化シリコン(SiO、x<y)を厚さ50nm形成する。第1層249aの窒素の組成比が40%以上となるようにしてバリア性を高めた。第2層249bは、プラズマCVD装置によりSiH、NOを原料ガスに用いて、酸化窒化シリコン(SiO、x>y)を厚さ100nm成膜する。第2層249bの窒素の組成比は0.5%以下とする。
【0097】
図8(S3)に示すように、下地絶縁層249上に、結晶性シリコン膜271を形成する。結晶性シリコン膜271は次の方法で作製する。プラズマCVD装置により、原料ガスにSiHおよびHを用い、厚さ66nmの非晶質シリコン膜を形成する。非晶質シリコン膜にレーザを照射して結晶化させることで、結晶性シリコン膜271とする。レーザ照射方法の一例を示す。LD励起のYVO4レーザの第2高調波(波長532nm)を照射する。特に第2高調波に限定する必要はないが、第2高調波はエネルギー効率の点で3次以上の高次の高調波より優れている。照射面において、光学系によりビームの形状が長さ500μm、幅20μm程度の線状となるように、またその強度が10〜20Wとなるようにする。またビームを基板に対して相対的に10〜50cm/secの速度で移動する。
【0098】
図8(S4)に示すように、結晶性シリコン膜271にp型不純物を添加する。ここでは、イオンドーピング装置において、ドーピングガスに水素で希釈したジボラン(B)を用い、ボロンを結晶性シリコン膜271の全体に添加する。非晶質シリコンを結晶化した結晶性シリコンは不対結合を有するため、理想的な真性シリコンではなく、弱いn型の導電性を示す。そのため、p型不純物を微量添加することにより、結晶性シリコン膜271が真性シリコンとなるようにする効果がある。図8(S4)の工程は必要に応じて行えばよい。
【0099】
図8(S5)に示すように、結晶性シリコン膜271を素子ごとに分割し、半導体層272〜276を形成する。半導体層272にメモリセルのダイオードが形成される。半導体層273〜275は、それぞれ、TFTのチャネル形成領域、ソース領域およびドレイン領域が形成される。半導体層276はMIS型コンデンサの電極を構成する。結晶性シリコン膜271を加工する方法の一例を示す。フォトリソグラフィ工程によりレジストを結晶性シリコン膜271上に形成し、レジストをマスクにして、ドライエッチング装置により、エッチング剤にSF、Oを用いて結晶性シリコン膜271をエッチングすることで、所定の形状の半導体層272〜276を形成する。
【0100】
図9(S6)に示すように、フォトリソグラフィ工程によりレジスRト31を形成し、nチャネル型TFTの半導体層274および275にp型不純物を微量添加する。ここでは、ドーピングガスに水素で希釈したジボラン(B)を用い、イオンドーピング装置により半導体層274、275にボロンをドーピングする。ドーピングが終了したらレジストR31を除去する。
【0101】
図9(S6)の工程は、nチャネル型TFTのしきい値電圧が負の電圧にならないようすることを目的とする。nチャネル型TFTの半導体層274、275に5×1015atoms/cm以上1×1017atoms/cm以下の濃度でボロンを添加すればよい。図9(S6)の工程は必要に応じて行えばよい。また、メモリセルの半導体層272にp型不純物を添加してもよい。
【0102】
図9(S7)に示すように、基板260全体に絶縁膜277を形成する。絶縁膜277はTFTのゲート絶縁膜、コンデンサの誘電体となる。ここでは、プラズマCVD装置により、プラズマCVD装置により原料ガスSiH、NOを用いて酸化窒化シリコン膜(SiO、x>y)を厚さ20〜40nm程度で形成する。
【0103】
図9(S8)に示すように、フォトリソグラフィ工程によりレジストR32を形成し、メモリセルの半導体層272およびコンデンサの半導体層276にn型不純物を添加する。この工程により、半導体層272のn型不純物領域とコンデンサの一方の電極として機能するn型不純物領域のn型不純物の濃度が決定される。ドーピングガスに水素で希釈したホスフィン(PH)を用いて、イオンドーピング装置により半導体層272、276にリンをドーピングする。よって、半導体層272全体がn型不純物領域278となり、半導体層276全体がn型不純物領域279となる。ドーピング工程が終了したら、レジストR32を除去する。
【0104】
図9(S9)に示すように、絶縁膜277上に導電膜281を形成する。導電膜281は、TFTのゲート電極などを構成する。ここでは、導電膜281を2層の多層構造とする。1層目は厚さ30nmのタンタル窒化物(TaN)、2層目は厚さ370nmのタングステン(W)とする。タンタル窒化物、タングステンはそれぞれスパッタリング装置で成膜する。
【0105】
導電膜281上にフォトリソグラフィ工程によりレジストを形成し、エッチング装置により導電膜281をエッチングして、図10(S10)に示すように、第1導電膜283〜285を半導体層273〜275上に形成する。第1導電膜283〜285はTFTのゲート電極またはゲート配線となる。高耐圧型のnチャネル型TFTでは、他のTFTよりもゲート幅(チャネル長)が広くなるように、導電膜285を形成している。第1導電膜286はコンデンサの一方の電極を構成する。
【0106】
導電膜281はドライエッチング法によりエッチングする。エッチング装置にICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング装置法を用いる。エッチング剤としては、はじめにタングステンをエッチングするためCl、SF、Oの混合ガスを用い、つぎに、処理室に導入するエッチング剤をCl2ガスのみに変更し、タンタル窒化物をエッチングする。
【0107】
図10(S11)に示すように、フォトリソグラフィ工程によりレジストR33を形成する。nチャネル型TFTの半導体層274と275にn型不純物を添加する。第1導電膜284がマスクとなり半導体層274にn型低濃度不純物領域288、289が自己整合的に形成され、第1導電膜285がマスクとなり半導体層275にn型低濃度不純物領域290、291が自己整合的に形成される。本実施例では、水素で希釈したホスフィン(PH)をドーピングガスに用い、イオンドーピング装置により半導体層274、275にリンを添加する。図10(S11)の工程は、nチャネル型TFTにLDD領域を形成するための工程である。n型低濃度不純物領域288、289のn型不純物が、1×1016atoms/cm以上5×1018atoms/cm以下の範囲で含まれるようにする。
【0108】
図10(S12)に示すように、フォトリソグラフィ工程によりレジストR34を形成する。メモリセルの半導体層272、およびpチャネル型TFTの半導体層273にp型不純物を添加する。半導体層272は、n型不純物領域272nとして残す部分がレジストR34に覆われているため、露出している領域272pがp型不純物領域となる。この不純物添加工程により、半導体層272には、pn接合を構成するn型不純物領域272nとp型不純物領域272pが形成される。半導体層272は予めn型不純物領域278とされているため、領域272pがp型の導電性を示すように、予め添加されているn型不純物よりも高濃度にp型不純物を添加する。
【0109】
第1導電膜283がマスクとなり半導体層273にp型高濃度不純物領域273a、273bが自己整合的に形成される。また第1導電膜283で覆われている領域273cがチャネル形成領域として自己整合的に形成される。
【0110】
p型不純物領域の添加は、ドーピングガスに水素で希釈したジボラン(B)を用いて、イオンドーピング装置により半導体層274、275にボロンをドーピングする。ドーピングが終了したらレジストR34を除去する。
【0111】
図10(S13)に示すように、第1導電膜283〜285の周囲に絶縁層293〜296を形成する。絶縁層293〜295はサイドウォール、側壁と呼ばれるものである。まず、原料ガスにSiH、NOを用いて、プラズマCVD装置により酸化窒化シリコン膜(SiO、x>y)を100nmの厚さに形成する。次に、原料ガスにSiH、NOを用いて、LPCVD装置により酸化シリコン膜を200nmの厚さに形成する。フォトリソグラフィ工程によりレジスト形成する。このレジストを用いて、まず、上層の酸化シリコン膜をバッファードフッ酸でウェットエッチング処理する。次に、レジストを除去し、下層の窒化酸化シリコン膜ドライエッチング処理をすることで、絶縁層293〜296が形成される。この一連の工程で、酸化窒化シリコンでなる絶縁膜277もエッチングされ、絶縁膜277は第1導電膜283〜285と絶縁層293〜296の下部のみ残る。
【0112】
図11(S14)に示すように、フォトリソグラフィ工程によりレジストR35を形成する。nチャネル型TFTの半導体層274、275とコンデンサの半導体層にn型不純物を添加し、n型高濃度不純物領域を形成する。半導体層274は、第1導電膜284、絶縁層294がマスクとなり、n型低濃度不純物領域288、299(図10(S11)参照)にさらにn型不純物が添加され、n型高濃度不純物領域274a、274bが自己整合的に形成される。第1導電膜284と重なる領域274cがチャネル形成領域として自己整合的に確定する。また、n型低濃度不純物領域288、299において絶縁層294と重なる領域274e、274dは、そのままn型低濃度不純物領域として確定する。
【0113】
半導体層275も半導体層274と同様、n型高濃度不純物領域275a、275b、チャネル形成領域275c、n型低濃度不純物領域275e、275dが形成される。
【0114】
このとき、半導体層276全体はn型不純物領域279が形成されている(図9(S8)参照)。第1導電膜286および絶縁層296がマスクとなり、n型不純物領域279にさらにn型不純物が添加され、n型高濃度不純物領域276a、276bが自己整合的に形成される。半導体層276の第1導電膜286および絶縁層296と重なる領域がn型不純物領域276cとして確定する。
【0115】
n型不純物の添加工程は、上述したとおり、イオンドーピング装置を使用し、ドーピングガスに水素で希釈したホスフィン(PH)を用いればよい。nチャネル型TFTのn型高濃度不純物領域274a、274b、275a、275bには、リンの濃度が1×1020atoms/cm以上2×1021atoms/cm以下の範囲になるように、リンがドーピングされる。
【0116】
上述したように、本実施形態では、薄膜トランジスタおよびコンデンサの半導体膜に不純物を添加する一連の工程において、メモリセルのn型不純物領域272n、p型不純物領域272pが形成される。本実施形態では、n型不純物領域272nとコンデンサのn型不純物領域276cとは、n型不純物およびp型不純物の濃度が同じになる。よって、同じシート抵抗を示すこととなる。p型不純物領域272pは、pチャネル型薄膜トランジスタのp型高濃度不純物領域273a、273bとp型不純物の濃度が同じになるが、n型不純物の濃度は高い。また、p型不純物領域272pは、コンデンサのn型不純物領域276cとn型不純物の濃度が同じになる。
【0117】
レジストR35を除去し、図11(S15)に示すように、キャップ絶縁膜298を形成する。キャップ絶縁膜298として、プラズマCVD装置により、プラズマCVD装置により酸化窒化シリコン膜(SiO、x>y)を50nmの厚さに形成する。酸化窒化シリコン膜の原料ガスには、SiH、NOを用いる。キャップ絶縁膜298を成膜した後、窒素雰囲気中で550℃の加熱処理を行い、半導体層272〜276に添加したn型不純物およびp型不純物を活性化する。
【0118】
図11(S16)に示すように、第1層間絶縁膜299、300を形成する。1層目の第1層間絶縁膜299として、プラズマCVD装置により原料ガスにSiH、NOを用いて、酸化窒化シリコン(SiO、x<y)を100nmの厚さに形成する。2層目の第1層間絶縁膜300には、プラズマCVD装置により原料ガスにSiH、NO、NH、Hを用いて、酸化窒化シリコン(SiO、x>y)を600nmの厚さに形成する。
【0119】
フォトリソグラフィ工程とドライエッチング工程により、第1層間絶縁膜299、300およびキャップ絶縁膜298を除去し、コンタクトホールを形成する。第1層間絶縁膜300上に導電膜を形成する。ここでは、導電膜を4層構造とする。下から、厚さ60nmのTi、40nmのTiN、500nmの純アルミニウム、100nmのTiNの順に積層する。それぞれの層はスパッタリング装置で成膜する。フォトリソグラフィ工程とドライエッチング工程により導電膜を所定の形状に加工し、第2導電膜301〜314を形成する。
【0120】
なお、第2導電膜と第1導電膜が接続されることを説明するため、図面では、第2導電膜と第1導電膜が半導体層上で接続するように示しているが、実際には、第2導電膜と第1導電膜とのコンタクト部分は半導体層上をさけて形成されている。
【0121】
メモリセルの第2導電膜301はワード線を形成する。第2導電膜302はダイオードと記憶素子を接続するための電極であり、メモリセルごとに分割されている。第2導電膜312によりn型高濃度不純物領域276aと276bが接続されている。よって、n型不純物領域276c、絶縁膜277、第1導電膜296でなる積層構造のMIS型コンデンサが形成される。第2導電膜314は集積回路部240の端子であり、アンテナ210が接続される。
【0122】
続いて、実施の形態1と同様の工程を経ることにより、図7に示すような半導体装置を得ることができる。つまり、第2の導電膜301〜314上に絶縁層762が形成され、絶縁膜762上にコンタクトホールを介して導電層764、765が形成され導電層764、765上に絶縁層762が形成され、絶縁層762及び導電層764の一部を覆うように有機化合物を含む層787が形成され、有機化合物を含む層787上に導電層771が形成され、導電層765上にアンテナとして機能する導電層786が形成され、導電層771及び導電層786上に絶縁層772が形成された構造を得ることができる。
【0123】
なお、コンデンサの半導体層276の不純物領域をn型としたが、p型とすることもできる。この場合、図9(S8)の工程でp型の不純物領域を添加する。図9(S8)の工程でメモリセルの半導体層272全体がp型不純物領域とされる。そのため、図10(S12)の工程で、半導体層272にp型不純物を添加しない。そして図11(S14)の工程で半導体層272の所定の領域にn型不純物を添加する。
【0124】
本発明の半導体装置は、少なくとも片面を樹脂により覆われているため、樹脂層の下層の記憶素子部や素子形成層をほこり等から保護し、かつ半導体装置の機械的強度を保つことが可能である。また、本発明の半導体装置において、少なくとも片面を覆う基板として樹脂層を用いるため、薄く湾曲しやすい半導体装置を提供することが可能となる。また、アンテナとして機能する導電層の膜厚に対する該導電層を覆わない部分の絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、該導電層の膜厚に対する該導電層上の該絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であるように、該導電層上に該絶縁層を形成するため、該絶縁層の表面は半導体装置の作製工程において素子形成層への損傷を低減するのに十分な平坦性を有し、また、記憶素子部や素子形成層を保護するために十分な機械的強度を有する半導体装置を得ることが可能となる。また、本発明の半導体装置は、半導体装置の側面において導電膜が露出せず、TFTや導電膜を覆う絶縁膜が露出するように形成してもよい。それにより、アンテナとして機能する導電膜を覆う絶縁層のみでTFT等の素子やアンテナをほこり等から保護することができ、劣化しずらい半導体装置を提供することが可能となる。また、本発明の半導体装置において素子形成層側を覆う基板として、作製工程において表面に支持体を有する基板を用いるため、2μm以上20μm以下程度の基板を容易に取り扱うことができる。よって、薄く湾曲しやすい半導体装置を容易に作製することが可能となる。
【0125】
さらに、本実施の形態の半導体装置は、メモリセルにpn接合を設けたことで、有機材料を用いた記憶素子部に製造時以外にもデータを書き込むことが可能になる。よって、本実施の形態に示した半導体装置を無線チップのような高付加価値の半導体装置に適用した場合に低価格化が可能になる。
【0126】
また、本実施の形態で示したメモリセルのpn接合は、メモリセルを制御するロジック回路の薄膜トランジスタと同時に形成できるだけでなく、薄膜トランジスタの製造工程に特殊な工程を追加することなく、製造できる。よって、薄膜トランジスタを製造するための従来の資産をそのまま使用できるため、工業上、非常に有用である。
【0127】
(実施の形態3)
本実施例では、本発明の半導体装置を非接触でデータの入出力が可能である半導体装置に適用した例に関して図面を参照して説明する。なお、非接触でデータの入出力が可能である半導体装置は利用の形態によっては、RFID(Radio Frequency Identification)、IDタグ、ICタグ、ICチップ、RFタグ(Radio Frequency)、無線タグ、電子タグまたは無線チップともよばれる。
【0128】
図12は、本実施の形態における半導体装置の構成例を示すブロック図である。半導体装置200は、非接触でデータを交信するためのアンテナ210を有する。さらに、アンテナにより受信された信号を処理して、送信するための信号をアンテナ供給する信号処理回路として、共振回路212、電源回路213、リセット回路214、クロック発生回路215、データ復調回路216、データ変調回路217、他の回路の制御を行う制御回路220、およびメモリ部230を有している。
【0129】
共振回路212はコンデンサとコイルが並列接続された回路であり、アンテナ210より信号を受信して、データ変調回路217より受信した信号をアンテナ210から出力する回路である。電源回路213は受信信号から電源電位を生成する回路である。リセット回路214はリセット信号を生成する回路である。クロック発生回路215はアンテナ210から入力された受信信号を基に各種クロック信号を生成する回路である。データ復調回路216は受信信号を復調して制御回路220に出力する回路である。データ変調回路217は制御回路220から受信した信号を変調する回路である。
【0130】
メモリ部230は、例えば図13(A)に示すような構成をとることができる。本実施の形態で示すメモリ部230は、基板10上に、メモリセルがマトリクス状に配置されたメモリセルアレイ11、デコーダ12、13、セレクタ14、読み出し/書き込み回路15を有する。メモリセルアレイ11は、n行×m列のメモリセルが配置されている、デコーダ13はN本のワード線Wh(h=1、2、...、n)により、メモリセルアレイ11と接続され、セレクタ14はm本のビット線Bk(k=1、2、...、m)によりメモリセルアレイ11に接続されている。なお、図13(A)に示したメモリ部の構成はあくまで一例であり、基板10上にセンスアンプ、出力回路、バッファ等の他の回路を有していてもよい。
【0131】
図13(B)に、メモリセルアレイ11に配置されたメモリセルMCの等価回路図の一例を示す。図13(B)には、3行×3列のメモリセルMCが記載されている。本実施の形態において、各メモリセルMCは、記憶素子部MDと、記憶素子部MDに直列に接続されたダイオードDIを有する構成とする。記憶素子部MDはビット線Bkに接続され、ダイオードDIはワード線Wに接続されている。なお、ダイオードDIの接続する向き、図13(B)に示す端子と逆側の端子で記憶素子部MDに接続することができる。また、ビット線Bとワード線Wの関係を入れ替えてもよい。なお、メモリ部230の構成は図13に示すものに限定されるものではない。
【0132】
制御回路220としては、例えばコード抽出回路221、コード判定回路222、CRC判定回路223および出力ユニット回路224が設けられている。なお、コード抽出回路221は制御回路220に送られてきた命令に含まれる複数のコードをそれぞれ抽出する回路であり、コード判定回路222は抽出されたコードとリファレンスに相当するコードとを比較して命令の内容を判定する回路であり、CRC判定回路223は判定されたコードに基づいて送信エラー等の有無を検出する回路である。
【0133】
次に、半導体装置200の動作の一例について説明する。アンテナ210により無線信号が受信されると、無線信号は共振回路212を介して電源回路213に送られ、高電源電位(以下、VDDと記す)が生成される。VDDは半導体装置200が有する各回路に供給される。また、共振回路212を介してデータ復調回路216に送られた信号は復調される(以下、復調信号)。さらに、共振回路212を介してリセット回路214およびクロック発生回路215を通った信号および復調信号は制御回路220に送られる。制御回路220に送られた信号は、コード抽出回路221、コード判定回路222およびCRC判定回路223等によって解析される。そして、解析された信号にしたがって、メモリ部230内に記憶されている半導体装置の情報が出力される。出力された半導体装置の情報は出力ユニット回路224を通って符号化される。さらに、符号化された半導体装置200の情報はデータ変調回路217を通って、アンテナ210により無線信号に載せて送信される。なお、半導体装置200を構成する複数の回路においては、低電源電位(以下、VSS)は共通であり、VSSはGNDとすることができる。
【0134】
このように、リーダ/ライタから半導体装置200に信号を送り、当該半導体装置200から送られてきた信号をリーダ/ライタで受信することによって、半導体装置のデータを読み取ることが可能となる。
【0135】
半導体装置200は、電源(バッテリー)を搭載せず、電磁波により各回路への電源電圧の供給を行う構造とすることができる。電源(バッテリー)を搭載して、電磁波と電源(バッテリー)により各回路に電源電圧を供給する構造とすることもできる。
【0136】
次に、非接触でデータの入出力が可能である半導体装置の使用形態の一例について図14を用いて説明する。表示部321を含む携帯端末の側面には、リーダ/ライタ320が設けられ、品物322の側面にはRFIDタグ323が設けられる(図14(B))。品物322が含むRFIDタグ323にリーダ/ライタ320をかざすと、表示部321に品物の原材料や原産地、生産工程ごとの検査結果や流通過程の履歴等、更に商品の説明等の商品に関する情報が表示される。また、商品326をベルトコンベアにより搬送する際に、リーダ/ライタ320と、商品326に設けられたRFIDタグ325を用いて、該商品326の検品を行うことができる(図14(C))。このように、システムにRFIDタグを活用することで、情報の取得を簡単に行うことができ、高機能化と高付加価値化を実現する。
【0137】
上記実施の形態で示した半導体装置を非接触でデータの入出力が可能である半導体装置に用いることで、より薄型の非接触でデータの入出力が可能である半導体装置を容易に作製することが可能である。
【0138】
(実施の形態4)
【0139】
本発明の半導体装置は、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類、包装用容器類、書籍類、記録媒体、身の回り品、乗物類、食品類、衣類、保健用品類、生活用品類、薬品類及び電子機器等に設けて使用することができる。これらの例に関して図15、図16を用いて説明する。
【0140】
図15(A)は、本発明に係るIDラベルの完成品の状態の一例である。ラベル台紙(セパレート紙)118上に、ICチップ110を内蔵した複数のIDラベル20が形成されている。IDラベル20は、ボックス119内に収納されている。また、IDラベル上には、その商品や役務に関する情報(商品名、ブランド、商標、商標権者、販売者、製造者等)が記されており、一方、内蔵されているICチップには、その商品(又は商品の種類)固有のIDナンバーが付されており、偽造や、商標権、特許権等の知的財産権侵害、不正競争等の不法行為を容易に把握することができる。また、ICチップ内には、商品の容器やラベルに明記しきれない多大な情報、例えば、商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格、生産方法、使用方法、生産時期、使用時期、賞味期限、取扱説明、商品に関する知的財産情報等を入力しておくことができ、取引者や消費者は、簡易なリーダによって、それらの情報にアクセスすることができる。また、生産者側からは容易に書換え、消去等も可能であるが、取引者、消費者側からは書換え、消去等ができない仕組みになっている。
【0141】
図15(B)は、ICチップを内蔵したIDタグ120を示している。IDタグを商品に備え付けることにより、商品管理が容易になる。例えば、商品が盗難された場合に、商品の経路を辿ることによって、その犯人を迅速に把握することができる。このように、IDタグを備えることにより、所謂トレーサビリティ(traceablity;複雑化した製造、流通の各段階で問題が生じた場合に、経路を遡ることによって、その原因を迅速に把握できる態勢を整えること。)に優れた商品を流通させることができる。
【0142】
図15(C)は、本発明に係るIDカード41の完成品の状態の一例である。上記IDカードとしては、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード、電子乗車券、電子マネー、テレフォンカード、会員カード等のあらゆるカード類が含まれる。
【0143】
図15(D)は、本発明に係る無記名債券122の完成品の状態の一例である。上記無記名債券類には、切手、切符、チケット、入場券、商品券、図書券、文具券、ビール券、おこめ券、各種ギフト券、各種サービス券等が含まれるが、勿論これらに限定されるものではない。また、無記名債権に限らず小切手、証券、約束手形等の有価証券類、運転免許証、住民票等の証書類等に設けることもできる。
【0144】
図15(E)は、ICチップ110を内蔵した商品を包装するための包装用フィルム類127を示している。包装用フィルム類127は、例えば、下層フィルム上に、ICチップを任意にばらまき、上層フィルムで覆うことによって作製することができる。包装用フィルム類127は、ボックス129に収納されており、所望の量だけカッター128で切り離して利用することができる。なお、包装用フィルム類127としての素材は特に制限されない。例えば、薄膜樹脂、アルミ箔、紙等を用いることができる。
【0145】
図16(A)、(B)は、本発明に係るIDラベル20を貼付した書籍123、ペットボトル124を示している。なお、もちろんこれらに限定されず、お弁当等の包装紙等の包装用容器類、DVDソフト、ビデオテープ等の記録媒体、自転車等の車両、船舶等の乗物類、鞄、眼鏡等の身の回り品、食料品、飲料等の食品類、衣服、履物等の衣類、医療器具、健康器具等の保健用品類、家具、照明器具等の生活用品類、医薬品、農薬等の薬品類、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(テレビ受像機、薄型テレビ受像機)、携帯電話等の電子機器等様々な物品に設けることができる。本発明に用いられるICチップは非常に薄いため、上記書籍等の物品に薄膜集積回路を搭載しても、機能、デザイン性を損ねることがない。更に、非接触型薄膜集積回路装置の場合、アンテナをチップとを一体形成でき、曲面を有する商品に直接転写することが容易になる。
【0146】
図16(C)は、果物類131の生鮮食品に、直接IDラベル20を貼り付けた状態を示している。また、図16(D)は、包装用フィルム類によって、野菜類130の生鮮食品を包装した一例を示している。また、なお、IDラベルを商品に貼り付けた場合、剥がされる可能性があるが、包装用フィルム類によって商品をくるんだ場合、包装用フィルム類を剥がすのは困難であるため、防犯対策上多少のメリットはある。
【0147】
紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類等にRFIDを設けることにより、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、書籍類、記録媒体等、身の回り品、食品類、生活用品類、電子機器等にRFIDを設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。乗物類、保健用品類、薬品類等にRFIDを設けることにより、偽造や盗難の防止、薬品類ならば、薬の服用の間違いを防止することができる。RFIDの設け方としては、物品の表面に貼ったり、物品に埋め込んだりして設ける。例えば、本ならば紙に埋め込んだり、有機樹脂からなるパッケージなら当該有機樹脂に埋め込んだりするとよい。
【0148】
このように、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等にRFIDを設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。また乗物類にRFIDを設けることにより、偽造や盗難を防止することができる。また、本発明の半導体装置は薄いため、動物等の生き物に容易に埋め込むことが可能であり、個々の生き物の識別を容易に行うことができる。例えば、家畜等の生き物にRFIDを埋め込むことによって、生まれた年や性別または種類等を容易に識別することが可能となる。
【0149】
以上のように、本発明の半導体装置は物品あればどのようなものにでも設けて使用することができる。本発明の半導体装置は、より薄く湾曲しやすいため、物品に貼り付けた際に違和感を感じることなく用いることができる。なお、本実施の形態は、他の実施の形態、実施例と自由に組み合わせて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図2】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図3】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図4】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図5】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図6】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図7】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図8】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図9】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図10】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図11】本発明の半導体装置の作製工程を説明する図。
【図12】本発明の半導体装置を説明する図。
【図13】本発明の半導体装置を説明する図。
【図14】本発明の半導体装置の使用形態を説明する図。
【図15】本発明の半導体装置の使用形態を説明する図。
【図16】本発明の半導体装置の使用形態を説明する図。
【符号の説明】
【0151】
701 基板
703 絶縁層
705 ゲート絶縁層
716 導電層
734 絶縁層
739 絶縁層
744 薄膜トランジスタ
745 薄膜トランジスタ
749 絶縁層
750 絶縁膜
751 絶縁層
752 導電膜
757 導電層
762 絶縁膜
763 導電膜
764 導電層
765 導電膜
766 絶縁膜
771 導電膜
772 絶縁膜
778 基板
786 導電層
787 層
789 記憶素子部
790 記憶素子部
791 素子形成層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された素子形成層と、
前記素子形成層上に形成された記憶素子部と、
前記素子形成層上に形成されたアンテナとして機能する導電層と、
前記素子形成層、前記記憶素子部及び前記アンテナとして機能する導電層上に形成された樹脂層と、を有し、
前記導電層の膜厚に対する前記導電層を覆わない部分の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、前記導電層の膜厚に対する前記導電層上の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
基板上に形成された素子形成層と、
前記素子形成層上に形成された記憶素子部と、
前記素子形成層上に形成されたアンテナとして機能する導電層と、
前記素子形成層、前記記憶素子部及び前記アンテナとして機能する導電層上に形成された保護膜と、を有し、
前記導電層の膜厚に対する前記導電層を覆わない部分の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、前記導電層の膜厚に対する前記導電層上の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
基板上に形成された素子形成層と、
前記素子形成層上に形成された記憶素子部と、
前記素子形成層上に形成されたアンテナとして機能する導電層と、
前記素子形成層、前記記憶素子部及び前記アンテナとして機能する導電層上に形成された樹脂層と、を有し、
前記素子形成層は、前記記憶素子部にデータを書き込み、かつ前記記憶素子部からデータを読み出すための回路と、接合したn型不純物領域とp型不純物領域を有する第1の半導体膜と、を有し、
前記回路は、複数の薄膜トランジスタを有し、
前記第1の半導体膜は、前記薄膜トランジスタの第2の半導体膜と同じ絶縁表面上に形成され、
前記導電層の膜厚に対する前記導電層を覆わない部分の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、前記導電層の膜厚に対する前記導電層上の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
基板上に形成された素子形成層と、
前記素子形成層上に形成された記憶素子部と、
前記素子形成層上に形成されたアンテナとして機能する導電層と、
前記素子形成層、前記記憶素子部及び前記アンテナとして機能する導電層上に形成された保護膜と、を有し、
前記素子形成層は、前記記憶素子部にデータを書き込み、かつ前記記憶素子部からデータを読み出すための回路と、接合したn型不純物領域とp型不純物領域を有する第1の半導体膜と、を有し、
前記回路は、複数の薄膜トランジスタを有し、
前記第1の半導体膜は、前記薄膜トランジスタの第2の半導体膜と同じ絶縁表面上に形成され、
前記導電層の膜厚に対する前記導電層を覆わない部分の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも1.2以上であり、前記導電層の膜厚に対する前記導電層上の前記絶縁層の膜厚の比の値は少なくとも0.2以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項3において、
前記樹脂層は、エポキシ樹脂からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項4において、
前記保護膜は、エポキシ樹脂からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記基板は、膜厚が2μm以上20μm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、
前記素子形成層は、接着層を介して前記基板上に設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
第1の基板上に剥離層を形成し、
前記剥離層上に素子形成層を形成し、
前記素子形成層上に記憶素子部及びアンテナとして機能する導電層を形成し、
前記素子形成層、前記記憶素子部及び前記アンテナとして機能する導電層上に保護膜を形成し、
前記保護膜上に第2の基板を設けて、前記第2の基板を利用して前記第1の基板と前記素子形成層とを分離し、
前記素子形成層を接着層を介して支持体を有する第3の基板と接するように形成し、
前記第2の基板及び前記支持体を除去することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記第2の基板は、膜厚が2μm以上20μm以下であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10において、
前記樹脂層は、エポキシ樹脂であることを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−4893(P2008−4893A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175611(P2006−175611)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】