説明

半導体装置

【課題】半導体装置を高温で動作させても封止樹脂の剥離を抑制することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、半導体素子1と、半導体素子1が実装された回路基板2と、回路基板2が実装された放熱性を有するベース板3と、ベース板3に設置され、かつ回路基板2を囲む空間4を有するケース材5と、ベース板3に設置され、空間4を回路基板2の配置された第1の領域R1とその他の第2の領域とを有するように区画する仕切り板6と、第1の領域R1においては半導体素子1を覆うように、仕切り板6で区画された第1および第2の領域の各々を封止する封止樹脂7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特に、封止樹脂で封止される半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュール半導体装置では、回路基板の回路面にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのスイッチング素子または整流素子として機能する半導体素子が実装されている。この実装された半導体素子が外部端子リード、ワイヤなどの配線部材と接合された後、回路面全体が絶縁性の封止材で封止されている。
【0003】
近年、インバータなどの電力用半導体装置に使用される半導体素子では、電力損失を低減する必要があることから、たとえば、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウムのようなワイドバンドギャップ半導体の電力用半導体装置が開発されている。ワイドバンドギャップ半導体では、素子自体の耐熱性が高いので大電流による高温動作が可能である。しかし、封止体内の半導体素子および配線部材に熱応力がかかるため、従来の半導体素子に比べて接合部分の耐熱性および信頼性を向上させる必要がある。
【0004】
そこで、動作時に半導体素子に生じる熱応力を低減するため、回路面全面にシリコーンゲルなどのゲル状物をバッファーコート材として封入し、さらにその上からエポキシ樹脂を注入する半導体装置が提案されている。また、たとえば、特開2004−95974号公報(特許文献1)には、封止樹脂の線膨張係数を所定範囲に調整する半導体装置の構成が提案されている。さらに、たとえば、特開2001−15682号公報(特許文献2)および特開2006−351737号公報(特許文献3)には、封止体と半導体素子との間に被覆膜を介在させる半導体装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−95974号公報
【特許文献2】特開2001−15682号公報
【特許文献3】特開2006−351737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バッファーコートに用いるシリコーンゲルは高温にさらされると溶解することから、高温動作させる半導体装置には適さない。また、上記の特開2004−95974号公報に記載されたように線膨張係数を調整した樹脂で電子部品が直接封止されるだけでは、樹脂硬化時点から樹脂と半導体装置を構成する部材との間で熱応力が発生する。そのため、樹脂と半導体装置を構成する部材との界面で剥離が発生する。そしてこの剥離から進展する樹脂クラックが生じる。
【0007】
また、上記の特開2001−15682号公報および特開2006−351737号公報に記載されたように半導体素子の表面に封止体と異なる樹脂が被覆された場合は、被覆膜と封止体との界面で亀裂(クラック)および剥離が生じるおそれがある。このため、信頼性の高い半導体装置が得られない。
【0008】
また、ケース型で、液状のポッティング樹脂(封止樹脂)で封止するパワーモジュール半導体装置の信頼性において、ポッティング樹脂とベース板、ケース材、はんだ接合材、回路基板、回路パターン、半導体素子、ワイヤなどとの接着が重要である。熱硬化性のポッティング樹脂は、硬化時に収縮して、各部材との間で引っ張り、圧縮、せん断などの応力を発生している。さらに、ヒートサイクル、パワーサイクルなどの信頼性評価での加熱および冷却時には、封止樹脂と各部材との熱膨張係数差に起因する熱応力が加わる。
【0009】
特に、封止樹脂とケース材との界面および封止樹脂とベース板との界面は、引っ張りおよびせん断の熱応力がかかる。そのため接着強度が低いとこれらの界面で封止樹脂の剥離が発生し、この剥離が進展して他の部材との界面での剥離および樹脂クラックに至る。そこで、この熱応力を低減し、封止樹脂の剥離を抑制することは、パワーモジュールの信頼性向上に必要である。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体装置を高温で動作させても封止樹脂の剥離を抑制することができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体装置は、半導体素子と、半導体素子が実装された回路基板と、回路基板が実装された放熱性を有するベース板と、ベース板に設置され、かつ回路基板を囲む空間を有するケース材と、ベース板に設置され、空間を回路基板の配置された第1の領域とその他の第2の領域とを有するように区画する仕切り板と、第1の領域においては半導体素子を覆うように、仕切り板で区画された第1および第2の領域の各々を封止する封止樹脂とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体装置によれば、ベース板に設置された仕切り板によってケース材の空間が第1および第2の領域に区画されているため、第1および第2の領域の各々を封止する封止樹脂も区画されている。そのため、ベース板と封止樹脂との界面の距離を小さくすることができる。
【0013】
ベース板と封止樹脂との界面に発生するせん断応力は、この界面の距離に依存し、一定の距離で飽和する。そこで、この一定の距離よりもこの界面の距離を小さくすることでせん断応力を低減することができる。
【0014】
本発明の半導体装置では、上述のようにベース板と封止樹脂との界面の距離を小さくすることができるため、ベース板と封止樹脂との界面に発生するせん断応力を低減することができる。このせん断応力を低減することにより、半導体装置を高温で動作させても封止樹脂の剥離を抑制することができる。これにより、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における半導体装置の概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における半導体装置の概略平面図である。
【図4】接合半長と端部せん断応力比率を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における比較例の半導体装置の概略平面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における半導体装置の概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における半導体装置の概略平面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における半導体装置の仕切り板のテーパ形状を示す概略部分断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2における半導体装置の仕切り板のテーパ形状の変形例を示す概略部分断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における半導体装置の概略断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3における変形例の半導体装置の概略断面図である。
【図12】本発明の実施の形態4における半導体装置の概略断面図である。
【図13】本発明の実施の形態4における変形例の半導体装置の概略断面図である。
【図14】本発明の実施の形態5における半導体装置の概略断面図である。
【図15】本発明の実施の形態6における半導体装置の概略断面図である。
【図16】本発明の実施の形態7における半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に本発明の実施の形態1の半導体装置の構成について説明する。なお、図1〜図3ではそれぞれ半導体装置の構成が適宜省略されており、半導体装置が簡略化されて図示されている。
【0017】
図1を参照して、本実施の形態の半導体装置100は、たとえば家電用、産業用、自動車用、電車用などに広く用いられる半導体パワーモジュールである。本実施の形態の半導体装置100では、ケース材5で取り囲まれた空間4は、回路基板2(図2参照)が配置された第1の領域R1とその他の領域R2とに仕切り板6で区画されている。なお、その他の領域R2は、第1の領域R1と仕切り板6で区画された領域であって、回路基板2が配置されていてもよく、また回路基板が配置されていなくてもよい。ケース材5が開口する方向から見て、仕切り板6は格子状に設けられている。第1の領域R1とその他の領域R2とが封止樹脂7で封止されている。
【0018】
図2を参照して、半導体装置100は、半導体素子1と、回路基板2と、ベース板3と、ケース材5と、仕切り板6と、封止樹脂7と、接合材8と、配線部材9と、外部端子10と、接着剤11と、端子12とを主に有している。
【0019】
半導体装置100は、仕切り板6で区画された第1の領域R1を複数有している。それぞれの第1の領域R1には、半導体素子1が実装された回路基板2が配置されている。半導体素子1は、たとえばSiCにより構成されている。回路基板2には、絶縁性の基板の両面に複数の回路2aが形成されている。半導体素子1は、回路基板2の回路2a上に、接合材8により接合されている。半導体素子1はフェイスアップでドレイン電極側が接合材8により接合されている。
【0020】
半導体素子1が接合材8により接合された回路基板2がベース板3に実装されている。回路基板2の回路2aがベース板3に接合材8により接合されている。回路基板2は、たとえばアルミナ(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(SiN)などの絶縁性のセラミックスなどで構成されており、表面に所定の導通の回路2aがたとえばろう付けなどで配置されている。回路基板2の裏面にも回路2aが施されている。
【0021】
接合材8は、たとえばはんだである。このはんだは、Sn−3Ag−0.5Cuなどのいわゆる鉛フリーはんだが使用され得る。還元雰囲気下で回路基板2の所定の回路2aと半導体素子1、回路基板2の裏面の回路2aとベース板3とが接合される。また、接合材8ははんだに限定されず、銀焼結材などの高い導電性と耐熱性とを兼ね備えた接合材8などであってもよい。
【0022】
ベース板3は放熱性を有している。ベース板3の厚みは、たとえば1mm以上5mm以下に形成されている。ベース板3は、たとえば、銅、アルミニウムなどの金属、アルミニウムシリコンカーバイト(AlSiC)などの高熱伝導性のセラミックなどが用いられ得る。また、ベース板3の回路基板2を搭載する面以外は、ディンプル、コーティング、カップリングなどの封止樹脂との接着性を強化するための処理が施されていてもよい。
【0023】
ケース材5は、ベース板3に設置されている。ケース材5の一方端部が接着剤11によりベース板3に固定されている。ケース材5は、回路基板2を囲む空間4をケース材5の内周側に有している。
【0024】
仕切り板6は、仕切り板6は、ベース板3に設置されている。ケース材5の一方端部が接着剤11によりベース板3に固定されている。仕切り板6は、回路基板2を囲む空間4を回路基板2が配置された第1の領域R1とその他の領域R2とを有するように区画している。仕切り板6は半導体素子1、回路基板2および接合材8のいずれにも接触しないように設けられている。本実施の形態では、仕切り板6の他方端部は封止樹脂7の上面より突出している。
【0025】
ケース材5または仕切り板6の材料は、たとえばポリフェニレンサルファイド(PPS)などの熱可塑性樹脂が用いられるが、これに限定されず、封止樹脂7よりも弾性率が低く、封止樹脂7と接着性が良好な材料であればよい。具体的にはケース材および仕切り板の材料は、たとえば、シリコーン変性エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂でもよい。ケース材5の材料と仕切り板6の材料とは同じ材料でもよく、また異なる材料でもよい。ケース材5および仕切り板6は、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂などの接着剤によりベース板3に接着されている。また、ケース材5および仕切り板6は、必要に応じて、ベース板3にねじ止めされていてもよい。
【0026】
封止樹脂7は、回路基板2が配置された第1の領域R1とその他の領域R2とを封止している。封止樹脂7は、第1の領域R1においては半導体素子1を覆うように封止している。封止樹脂7は、ベース板3と接触する部分を有している。封止樹脂7のベース板3と接触する部分と、ベース板3とによって、ベース板3と封止樹脂7との界面が形成されている。
【0027】
封止樹脂7は、液状のエポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。封止樹脂7には、エポキシ主剤および酸無水物系、アミン系、フェノール系などの硬化剤の他、必要に応じて、硬化触媒、カップリング剤、低応力化剤、レベリング剤などが添加されていてもよい。
【0028】
封止樹脂7の線膨張係数は、配線部材9であるアルミニウム、銅、金などの金属、回路基板2、ベース板3などにあわせるため、それに応じた量のフィラが充填されている。フィラとして球状シリカが通常よく用いられる。粘度調整などの必要に応じて、フィラ粒径分布、フィラ粒形などが調整される。封止樹脂7の量は、半導体素子1と配線部材9との接合部分を十分覆う量が必要である。接合材8、回路基板2、半導体素子1の厚みを含んで、ほぼ2〜3mm程度の厚みとなる封止樹脂7の量が必要である。
【0029】
また、半導体素子1の電極と回路基板2の回路2aとがワイヤボンディングにより配線部材9で電気的に接続されている。配線部材9はたとえばアルミニウム製のワイヤである。回路基板2の回路2aが配線部材9によりケース材5に設けられた端子12に電気的に接続されている。外部端子10が端子12に電気的に接続されている。外部端子10を介して回路基板2から外部への給電経路が形成されている。
【0030】
ワイヤは、アルミニウム、銅、金などの金属が用いられ得る。ワイヤは、超音波ボールボンド、熱圧着方式、あるいは両方式を併用するなどして、半導体素子1の電極から回路基板2の回路2a、または図示しないインナーリードへとボンディングされている。これによりワイヤは、図示しない外部回路に電気的に接続されている。ワイヤの代替として、リボンボンディング用のリボン、DLB(Direct Lead Bonding)などの接合が用いられてもよい。半導体素子1、回路2a、端子12などのワイヤによる接合は、仕切り板6に設けられた図示しない電極を介さずに直接行われていてもよく、また仕切り板6に設けられた図示しない電極を介して行われていてもよい。
【0031】
なお、半導体素子1の上面には厳密には、ゲートパッドやソース電極などが区分けされて形成されているが、図2では簡略化して上面全体に電極が形成されているものとして半導体素子1が記載されている。また、半導体素子1の電極の表面には、接続性を良くするための図示しない厚さ数μmの薄いアルミニウムの下地(電極)が形成されている。そして、半導体素子1の電極面は、ボンディングなどの配線工程の後、モジュール全体を覆うようにたとえばエポキシ系の封止樹脂で封止されている。
【0032】
なお、半導体素子1のドレイン電極側(回路基板2側)の接合面にも、図示しない金属層が設けられている。金属層として、たとえばニッケル(Ni)(7μm厚)/金(Au)(0.02μm厚)が施されている。半導体素子1は、上述した炭化ケイ素以外にも、シリコン、またはいわゆるワイドバンドギャップ半導体である窒化ガリウム、ダイヤモンドなどが用いられ得る。また、半導体素子1と対向する回路2aはたとえば銅からなる。回路2aの接合面には1μm厚程度の金、銀、パラジウム、白金などの貴金属めっき層が形成されている。
【0033】
図3を参照して、仕切り板6により空間4が区画された第1の領域R1および第2の領域R2の一辺は、回路基板2の長辺よりも長くなるように形成されている。第1の領域R1では、回路基板2が第1の領域R1の内側に収まるように配置されている。本実施の形態では、第1の領域R1および第2の領域R2の対角線長さDは40mm以下に設定されている。このため、本実施の形態では、ベース板3と封止樹脂7とが接触する最大距離は、図中矢印で示される第2の領域R2の対角線長さDとなる。したがって、ベース板3と封止樹脂7とが接触する最大距離は40mm以下となる。
【0034】
次に、本実施の形態のベース板と封止樹脂との界面に発生するせん断応力について説明する。
【0035】
ベース板3と封止樹脂7との界面に発生するせん断応力は、その界面の距離に依存する。そして、ベース板3と封止樹脂7との物性および寸法で決まる一定の距離で、せん断応力は飽和する。そこで、この一定の距離(せん断応力の最大を示す距離)よりも、ベース板3と封止樹脂7との界面の距離が小さくなると、ベース板3と封止樹脂7との界面に発生するせん断応力は低減される。
【0036】
図4および表1には、界面の中心からの距離と、封止樹脂7の端部に発生するせん断応力との関係を、樹脂種を振って計算した結果が示されている。材料端部の界面に発生するせん断応力は、材料の中心の応力をゼロとして、材料間の熱膨張係数差、弾性率差、温度差と、材料の中心からの距離を要因として計算されている。
【0037】
図4では、ベース板3の厚みを3mm、樹脂厚みを2mmとして計算した封止樹脂の接合半長Lと封止樹脂端部せん断応力比率との関係が示されている。図4では、ベース板3として銅(Cu)が適用されている。図4では、銅に樹脂が接触する場合と、銅にシリコン(Si)が接触する場合とが示されている。縦軸は各々の材料での接合半長L=20mmにおける最大値で正規化している。
【0038】
封止各樹脂種では、熱応力に関連する物性であるガラス転移温度Tg(℃)、熱膨張係数α(ppm/K)、弾性率E(GPa)がそれぞれ振られている。ガラス転移温度Tg(℃)はTMA法およびDSC法で求められた。ガラス転移温度Tgは室温付近〜185℃の範囲で設定され、熱膨張係数αは14〜55ppm/Kの範囲で設定され、弾性率Eは2.5〜11GPaの範囲で設定された。樹脂種のガラス転移温度Tgは、例えばエポキシ樹脂組成物の主剤、硬化剤の選択、軟化化剤の配合比により調整できる。熱膨張係数α、弾性率Eは例えば無機充填剤を含有させ、この含有量により調整できる。
【0039】
【表1】

【0040】
端部せん断応力比率と接合半長Lとの関係は、樹脂種の特性を適当な範囲で振っても、同様の傾向となる。図4に示すとおり、ベース板3と封止樹脂7との界面に発生するせん断応力は、ある一定の距離までは比例的に増加している。また、ベース板3と封止樹脂7との界面に発生するせん断応力界面の中心からの距離(接合半長)が20mmでほぼ飽和している。すなわち、ベース板3と封止樹脂7との界面の距離は全体で40mmの場合に封止樹脂7の端部に発生するせん断応力が最大となり飽和する。したがって、ベース板3と封止樹脂7との界面の距離が40mm以下で短くなるほど、封止樹脂7の端部に発生するせん断応力が低下する。
【0041】
樹脂厚みが計算に用いた2mmを超えると、接合半長Lは短い側にシフトする。したがって、樹脂厚みを変えた場合にもベース板3と封止樹脂7との界面の距離が40mm以下で封止樹脂7の端部に発生するせん断応力が低下する。
【0042】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。
まず、ベース板3の所定に位置に回路基板2が搭載される。続いて、回路基板2の回路2aの所定の位置に半導体素子1が搭載される。続いて、ベース板3にケース材5および仕切り板6が搭載される。半導体素子1間および半導体素子1と回路基板2、ケース材5、仕切り板6の所定の位置とが配線部材9で接合される。続いて、ケース材5内の仕切り区分内ごとに封止樹脂7が封止される。これにより、本実施の形態の半導体装置100が製造される。
【0043】
次に、本実施の形態の半導体装置の作用効果について比較例と比較して説明する。
図5を参照して、本実施の形態の比較例の半導体装置100では、図中矢印で示されるケース材5で取り囲まれた空間4の対角線長さDがベース板3と封止樹脂7との界面の最大距離となる。比較例の半導体装置100は仕切り板6を有していないため、仕切り板6によって空間4が区画されていない。そのため、ベース板3と封止樹脂7との界面の距離を小さくすることはできない。
【0044】
それに対して、本実施の形態の半導体装置100によれば、ベース板3に設置された仕切り板6によってケース材5の空間4が第1の領域R1および第2の領域R2に区画されているため、第1の領域R1および第2の領域R2の各々を封止する封止樹脂7も区画されている。そのため、ベース板3と封止樹脂7との界面の距離を小さくすることができる。
【0045】
ベース板3と封止樹脂7との界面に発生するせん断応力は、この界面の距離に依存し、一定の距離で飽和する。そこで、この一定の距離よりもこの界面の距離を小さくすることでせん断応力を低減することができる。
【0046】
本実施の形態の半導体装置100では、上述のようにベース板3と封止樹脂7との界面の距離を小さくすることができるため、ベース板3と封止樹脂7との界面に発生するせん断応力を低減することができる。このせん断応力を低減することにより、半導体装置100を高温で動作させても封止樹脂7の剥離を抑制することができる。これにより、半導体装置100の信頼性を向上することができる。
【0047】
また、本実施の形態の半導体装置100によれば、ベース板3と封止樹脂7とが接触する最大距離が40mm以下であるため、封止樹脂7の端部に発生するせん断応力が飽和する界面の距離より、ベース板3と封止樹脂7との界面の距離を小さくすることができる。そのため、ベース板3と封止樹脂7との界面に発生するせん断応力を低下させることができる。
【0048】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2では、本発明の実施の形態1と比較して、ケース材および仕切り板の形状が主に異なっている。
【0049】
最初に本発明の実施の形態1の半導体装置の構成について説明する。なお、図6および図7ではそれぞれ半導体装置の構成が適宜省略されており、半導体装置が簡略化されて図示されている。
【0050】
図6および図7を参照して、本実施の形態の半導体装置100では、ケース材5が開口する方向から見て、ケース材5で取り囲まれた空間4は仕切り板6で格子状に区画されている。図6は図7のVI−VI線に沿う概略断面図である。本実施の形態の仕切り板6の他方端部は、封止樹脂7の上面より突出している部分と、封止樹脂7の上面より突出していない部分を有している。
【0051】
ケース材5のベース板3と接着する部分にはテーパのついた凹部が設けられている。つまり、ケース材5のベース板3側の先端部5aは、ベース板に向かって断面積が小さくなるテーパ形状を有している。仕切り板6のベース板3と接着する部分にはテーパのついた凹部が設けられている。つまり、仕切り板6のベース板3側の先端部6aは、ベース板3に向かって断面積が小さくなるテーパ形状を有している。
【0052】
ケース材5のテーパ形状に封止樹脂7が入り込むことによって、ケース材5のテーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されている。また仕切り板6のテーパ形状に封止樹脂7が入り込むことによって、仕切り板6のテーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されている。封止樹脂7のベース板3と接着する端部が裾野のような形状のフィレットを有していることにより、ヒートサイクルまたはパワーサイクル時の端部にかかる熱応力が低減され、ベース板3と封止樹脂7との剥離が抑制される。
【0053】
図8を参照して、テーパ形状では軸方向の長さaが径方向の長さbより小さいことが望ましい。また、図9を参照して、仕切り板6のテーパ形状の変形例に示すように、外形の斜面Cが曲線に形成されて裾が長くひくようにテーパ形状が形成されていることがさらに望ましい。
【0054】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および製造方法は上述した実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
本実施の形態の半導体装置100によれば、ケース材5のベース板3側の先端部5aは、ベース板3に向かって断面積が小さくなるテーパ形状を有しているため、ケース材5のテーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されている。これにより、ヒートサイクルまたはパワーサイクル時の熱応力を低減することができる。このため、ベース板3と封止樹脂7との剥離を抑制することができる。
【0056】
本実施の形態の半導体装置100によれば、仕切り板6のベース板3側の先端部6aは、ベース板3に向かって断面積が小さくなるテーパ形状を有しているため、封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されている。これにより、ヒートサイクルまたはパワーサイクル時の封止樹脂7の端部での熱応力を低減することができる。このため、ベース板3と封止樹脂7との剥離を抑制することができる。
【0057】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3では、本発明の実施の形態1と比較して、ベース板の形状が主に異なっている。
【0058】
図10を参照して、本実施の形態の半導体装置100では、ベース板3は仕切り板用凹部3aを有している。仕切り板用凹部3aは、回路基板2が実装されたベース板3の面と異なる高さに窪むように形成されている。仕切り板用凹部3aに仕切り板6のベース板3側の先端部6aが挿入されている。仕切り板6のベース板3側の先端部6aは、仕切り板用凹部3aの底部3bに接着剤11で固定されている。仕切り板6のベース板3側の先端部6aが挿入された状態で仕切り板用凹部3aが封止樹脂7で封止されることで、仕切り板6のベース板3側の先端部6aが仕切り板用凹部3aに埋め込まれている。
【0059】
仕切り板用凹部3aでの封止樹脂7とベース板3との接着面が、回路基板2とベース板3との接着面と同一面にならないことにより、仕切り板用凹部3aでベース板3と封止樹脂7との界面に剥離が生じても、その剥離が進展して回路基板2と接合材8との界面および封止樹脂7と回路基板2との界面に進展することが抑制される。
【0060】
ケース材5のベース板3側の先端部5aは、ベース板3に向かって断面積が小さくなるテーパ形状を有している。ケース材5のテーパ形状に封止樹脂7が入り込むことによって、ケース材のテーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されている。封止樹脂7のベース板3と接着する端部が裾野のような形状のフィレットを有していることにより、ヒートサイクルまたはパワーサイクル時の端部にかかる熱応力が低減され、ベース板3と封止樹脂7との剥離が抑制される。
【0061】
また、図11を参照して、本実施の形態の半導体装置100の変形例に示すように、仕切り板6のベース板3側の先端部6aは、ベース板3に向かって断面積が小さくなるテーパ形状を有していてもよい。仕切り板6のテーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されている。封止樹脂7のベース板3と接着する端部が裾野のような形状のフィレットを有していることにより、ヒートサイクルまたはパワーサイクル時の端部にかかる熱応力が低減され、ベース板3と封止樹脂7との剥離がさらに抑制される。
【0062】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および製造方法は上述した実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
本実施の形態の半導体装置100によれば、仕切り板用凹部3aに仕切り板6のベース板3側の先端部6aが挿入されているため、仕切り板用凹部3aでの封止樹脂7とベース板3との接着面が回路基板2とベース板3との接着面と同一面にならない。これにより、仕切り板用凹部3aでベース板3と封止樹脂7との界面に剥離が生じても、その剥離が進展して回路基板2と接合材8との界面および封止樹脂7と回路基板2との界面に進展することを抑制することができる。このため、半導体装置100の信頼性を向上することができる。
【0064】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4では、本発明の実施の形態1と比較して、ベース板の形状が主に異なっている。
【0065】
図12を参照して、本実施の形態の半導体装置100では、仕切り板用凹部3aは、仕切り板用凹部3aの底部3bに向かって開口面積が大きくなる逆テーパ形状を有している。仕切り板用凹部3aの逆テーパ形状に封止樹脂7が入り込むことによって、仕切り板用凹部3aの逆テーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されている。これにより、ヒートサイクルまたはパワーサイクル時の仕切り板用凹部3aの逆テーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部にかかる熱応力が低減され、ベース板3と封止樹脂7との剥離が抑制される。
【0066】
また、ベース板3はケース材用凹部3cを有している。ケース材用凹部3cは、回路基板2が実装されたベース板3の面と異なる高さに窪むように形成されている。ケース材用凹部3cにケース材5のベース板3側の先端部5aが挿入されている。ケース材5のベース板3側の先端部5aは、ケース材用凹部3cの底部3dに接着剤11で固定されている。ケース材5のベース板3側の先端部5aが挿入された状態でケース材用凹部3cが封止樹脂7で封止されることで、ケース材5のベース板3側の先端部5aがケース材用凹部3cに埋め込まれている。
【0067】
ケース材用凹部3cでの封止樹脂7とベース板3との接着面が、回路基板2とベース板3との接着面と同一面にならないことにより、ケース材用凹部3cでベース板3と封止樹脂7との界面に剥離が生じても、その剥離が進展して回路基板2と接合材8との界面および封止樹脂7と回路基板2との界面に進展することが抑制される。
【0068】
ケース材用凹部3cは、ケース材用凹部3cの底部3dに向かって開口面積が大きくなる逆テーパ形状を有している。ケース材用凹部3cの逆テーパ形状に封止樹脂7が入り込むことによって、ケース材用凹部3cの逆テーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されている。これにより、ケース材用凹部3cの逆テーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部にかかる熱応力が低減され、ベース板3と封止樹脂7との剥離が抑制される。
【0069】
また、図13を参照して、本実施の形態の半導体装置100の変形例に示すように、ケース材5のベース板3側の先端部5aおよび仕切り板6のベース板3側の先端部6aは、それぞれベース板3に向かって断面積が小さくなるテーパ形状を有していてもよい。これらのテーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されているため、ヒートサイクルまたはパワーサイクル時の端部にかかる熱応力が低減され、ベース板3と封止樹脂7との剥離がさらに抑制される。
【0070】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および製造方法は上述した実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0071】
本実施の形態の半導体装置100によれば、仕切り板用凹部3aは、仕切り板用凹部3aの底部3bに向かって開口面積が大きくなる逆テーパ形状を有しているため、仕切り板用凹部3aの逆テーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されている。これにより、ヒートサイクルまたはパワーサイクル時の熱応力を低減することができる。このため、ベース板3と封止樹脂7との剥離を抑制することができる。
【0072】
また、本実施の形態の半導体装置100によれば、ケース材用凹部3cにケース材5のベース板3側の先端部5aが挿入されているため、ケース材用凹部3cでの封止樹脂7とベース板3との接着面が回路基板2とベース板3との接着面と同一面にならない。これにより、ケース材用凹部3cでベース板3と封止樹脂7との界面に剥離が生じても、その剥離が進展して回路基板2と接合材8との界面および封止樹脂7と回路基板2との界面に進展することを抑制することができる。このため、半導体装置100の信頼性を向上することができる。
【0073】
また、本実施の形態の半導体装置100によれば、ケース材用凹部3cは、ケース材用凹部3cの底部3dに向かって開口面積が大きくなる逆テーパ形状を有しているため、ケース材用凹部3cの逆テーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着する端部がフィレットの形状に形成されている。これにより、ヒートサイクルまたはパワーサイクル時の熱応力を低減することができる。このため、ベース板3と封止樹脂7との剥離を抑制することができる。
【0074】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5では、本発明の実施の形態1と比較して、ベース板の形状が主に異なっている。
【0075】
図14を参照して、本実施の形態の半導体装置100では、ベース板3において、回路基板2、ケース材5および仕切り板6が取り付けられる位置に、それらの底面と同じ形状の凸部が形成されている。回路基板2、ケース材5および仕切り板6は、それぞれ凸部に取り付けられている。
【0076】
この凸部の他の部分において、ベース板3はベース板凹部3eを有している。つまり、ベース板凹部3eは、ベース板3において回路基板2が実装された部分およびケース材5、仕切り板6が設置された部分とは異なる部分に設けられている。ベース板凹部3eは、回路基板2、ケース材5および仕切り板6が実装されたベース板3の面と異なる高さに窪むように形成されている。ベース板凹部3eは、ベース板凹部3eの底部3fに向かって開口面積が大きくなる逆テーパ形状を有している。
【0077】
ベース板凹部3eには封止樹脂7が注入されている。ベース板凹部3eの逆テーパ形状に封止樹脂7が入り込むことによって、ケース材用凹部3cの逆テーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着するすべての端部がフィレットの形状に形成され得る。これにより、ベース板凹部3eの逆テーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着するすべての端部にかかる熱応力が低減される。さらに封止樹脂7とベース板3との応力集中部がなくなる。よって、ベース板3と封止樹脂7との剥離が抑制され得る。
【0078】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および製造方法は上述した実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0079】
本実施の形態の半導体装置100によれば、ベース板凹部3eは、ベース板3において回路基板2が実装された部分およびケース材5、仕切り板6が設置された部分とは異なる部分に設けられており、かつベース板凹部3eは、ベース板凹部3eの底部3fに向かって開口面積が大きくなる逆テーパ形状を有している。そのためベース板凹部3eの逆テーパ形状に封止樹脂7が入り込むことによって、ケース材用凹部3cの逆テーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着するすべての端部をフィレットの形状に形成することができる。これにより、ベース板凹部3eの逆テーパ形状に沿って封止樹脂7のベース板3と接着するすべての端部にかかる熱応力を低減することができる。さらに封止樹脂7とベース板3との応力集中部をなくすことができる。よって、ベース板3と封止樹脂7との剥離を抑制することができる。このため、半導体装置100の信頼性を向上することができる。
【0080】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6では、本発明の実施の形態1と比較して、封止樹脂が主に異なっている。
【0081】
図15を参照して、本実施の形態の半導体装置100では、ベース板3において、回路基板2、ケース材5および仕切り板6が取り付けられる位置に、それらの底面と同じ形状の凸部が形成されている。回路基板2、ケース材5および仕切り板6は、それぞれ凸部に取り付けられている。この凸部の他の部分において、ベース板3はベース板凹部3eを有している。つまり、ベース板凹部3eは、ベース板3において回路基板2が実装された部分およびケース材5、仕切り板6が設置された部分とは異なる部分に設けられている。ベース板凹部3eは、ベース板凹部3eの底部3fに向かって開口面積が大きくなる逆テーパ形状を有している。
【0082】
封止樹脂7は、第1の封止樹脂7aと、第2の封止樹脂7bとを含んでいる。第1の封止樹脂7aは、ガラス転移温度以下の線膨張係数がベース板3と近い値を有している。第1の封止樹脂7aにより回路基板2の下面までが封止されている。回路基板2の下面から下をベース板3と近い熱膨張係数を有する第1の封止樹脂7aで封止することにより、ベース板3と第1の封止樹脂7aとの間の熱応力が低減される。これにより、回路基板2とベース板3とを接合する接合材8にかかるせん断応力による接合材8のクラックが抑制される。
【0083】
第2の封止樹脂7bは第1の封止樹脂7aより低い弾性率を有している。第2の封止樹脂7bにより回路基板2の下面より上方が封止されている。ガラス転移温度以下の弾性率が第1の封止樹脂7aよりも低い第2の封止樹脂7bで回路基板2の下面から上を封止することにより、半導体素子1と回路基板2とを接合している接合材8のクラックと、半導体素子1と配線部材9とのせん断クラックとが抑制される。
【0084】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および製造方法は上述した実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
本実施の形態の半導体装置100によれば、第1の封止樹脂7aにより回路基板2の下面までが封止されており、第1の封止樹脂7aより低い弾性率を有する第2の封止樹脂7bにより回路基板2の下面より上方が封止されている。これにより、回路基板2とベース板3とを接合する接合材8にかかるせん断応力による接合材8のクラックを抑制することができる。また、半導体素子1と回路基板2とを接合している接合材8のクラックと、半導体素子1と配線部材9とのせん断クラックとを抑制することができる。
【0086】
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7では、本発明の実施の形態1と比較して、封止樹脂が主に異なっている。
【0087】
図1および図16を参照して、本実施の形態の半導体装置100では、封止樹脂7は、異なる材質よりなる第1および第2の封止樹脂を含んでいる。第1の領域R1が第1の封止樹脂で封止され、第2の領域R2が第2の封止樹脂で封止されている。第1の領域R1では、仕切り板6で仕切られた第1の領域R1の面積、封止樹脂7の深さ、実装部品の特性によって、第1の領域R1毎に少なくとも一部が異なる物性の封止樹脂7で封止されている。
【0088】
図16において左端に位置する第1の領域R1では、回路基板2の下面までが封止樹脂71で封止されている。封止樹脂71に積層するように半導体素子1と配線部材9との接合部分までが封止樹脂71で封止されている。つまり、封止樹脂71および半導体素子1と配線部材9との接合部分は封止樹脂72により覆われている。封止樹脂72に封止樹脂74が積層されている。これにより、この第1の領域R1が封止樹脂7により封止されている。
【0089】
図16において左端に位置する第1の領域R1に隣接する第1の領域R1では、回路基板2の下面までが封止樹脂71で封止されている。封止樹脂71に積層するように半導体素子1と配線部材9との接合部分までが封止樹脂73で封止されている。つまり、封止樹脂71および半導体素子1と配線部材9との接合部分は封止樹脂73により覆われている。封止樹脂73に封止樹脂74が積層されている。これにより、この第1の領域R1が封止樹脂7により封止されている。
【0090】
図16において右端に位置する第1の領域R1では、回路基板2の下面までが封止樹脂71で封止されている。封止樹脂71に封止樹脂74が積層されている。これにより、この第1の領域R1が封止樹脂7により封止されている。
【0091】
仕切り板6で仕切られた第1の領域R1に搭載されている半導体素子1の大きさ、実装部品、その実装形態などによって、最適な特性の封止樹脂7が適用され得る。たとえば、高耐熱性、低吸湿性、低弾性などの封止樹脂7がそれぞれ使い分けられる。
【0092】
本実施の形態の半導体装置100によれば、封止樹脂7は、異なる材質よりなる第1および第2の封止樹脂を含み、第1の領域R1が第1の封止樹脂で封止され、第2の領域R2が第2の封止樹脂で封止されているため、第1の領域R1および第2の領域R2を異なる材質の封止樹脂7で封止することができる。そのため、第1の領域R1および第2の領域R2をそれぞれ最適な封止樹脂7で封止することができる。そして、第1の領域R1に搭載されている半導体素子1の大きさ、実装されている部品、その実装形態などによって、最適な特性の封止樹脂7を適用することができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、上記と同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない場合がある。
【0094】
実施の形態1〜6に対応する実施例1〜6毎に複数のサンプルを試作した。また仕切り板を有していない比較例を試作した。実施例1〜6および比較例毎に複数のサンプルを試作した。複数のサンプルのそれぞれについて、ヒートサイクル評価、パワーサイクル評価を実施した。
【0095】
ヒートサイクル試験では、−40℃で30分間保持し、125℃で30分間保持することを1サイクルとして300サイクル繰り返す試験をヒートサイクルAとした。同様に−40℃で30分間保持し、150℃で30分間保持することを1サイクルとして300サイクル繰り返す試験をヒートサイクルBとした。また同様に、−40℃で30分間保持し、175℃で30分間保持することを1サイクルとして300サイクル繰り返す試験をヒートサイクルCとした。ヒートサイクルA〜Cのそれぞれについて、100サイクル後に導通試験を行った。導通試験では、電気的にオープンとなるか、または封止樹脂のクラックが発生するか否かで評価した。
【0096】
パワーサイクル試験では、モジュールの発熱によって最高温度で175℃になるように設定し、1000サイクル毎に導通試験を行った。パワーサイクル試験では、半導体素子への電圧の印加と解除が1度ずつ行われることを1サイクルとした。パワーサイクル試験では、電気的にオープンとなるまでのサイクル数を評価した。
【0097】
評価結果を表2に示す。ヒートサイクル試験については、300サイクル後の導通試験での良または不良を示している。ヒートサイクル試験では、実施例および比較例毎に複数サンプルを評価して、全サンプルが、ヒートサイクルA〜Cをクリアしたか否かを示している。表2のAは導通試験での良を示し、Bは導通試験での不良を示している。
【0098】
パワーサイクル試験については、実施例および比較例毎の複数のサンプルの評価結果の平均値を示している。表2の数値は、導通オープン発生サイクル数(kサイクル)を示している。
【0099】
不具合モードについては、不具合の主原因を示している。
【0100】
【表2】

【0101】
表2に示すように、実施例1では、ベース板と封止樹脂とが接触する最大距離が40mm以下になるように仕切り板によって仕切られている。これにより、封止するエリアを制限してベース板と封止樹脂との界面に発生する熱応力を低減することで、ヒートサイクルBで300サイクルまでクリアすることができた。そのため、寿命を延ばすことができた。
【0102】
また、実施例2では、封止するエリアを小さくするだけでなく、ケース材および仕切り板にテーパ形状を設けて、封止樹脂の端部にフィレット形状を形成した。これにより、ベース板と封止樹脂との界面の端部における熱応力が低減でき、ヒートサイクル試験における封止樹脂とベース板との剥離が抑制できた。そのため、ヒートサイクル寿命を延ばすことができた。また、パワーサイクル試験において、半導体素子からの発熱による封止樹脂と半導体素子との剥離がなくなり、樹脂クラックに至るまで寿命が延ばすことができた。
【0103】
実施例3では、ベース板に凹部を設けることにより、実施例2と同様の効果が得られ、寿命を延ばすことができた。
【0104】
実施例4では、ベース板にテーパのついた凹部を設け、その中にケース材および仕切り板を設置することにより、ベース板と封止樹脂との熱応力による剥離が発生しても、ベース板と回路基板との間のはんだの接合面、半導体素子とはんだとの接合面への進展を抑制することができた。
【0105】
実施例5では、封止樹脂とベース板との接着端部をすべてフィレット形状にすることにより、封止樹脂端部の応力が低減でき、封止樹脂とベース板との剥離が抑制できた。
【0106】
実施例6では、ベース板に熱膨張係数を近づけた第1の封止樹脂で回路基板の下面までを封止し、弾性率が第1の封止樹脂よりも低い第2の封止樹脂で回路基板の下面から上を封止することにより、それぞれの封止樹脂層での硬化収縮量や熱膨張係数差による応力を低減することができた。これにより、より信頼性の高い半導体装置を得ることができた。
【0107】
本発明は、家電用、産業用、自動車用、電車用等に広く用いられる半導体パワーモジュールの実装構造に好適に適用され得る。
【0108】
上記の各実施の形態は適宜組み合わせることができる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
1 半導体素子、2 回路基板、2a 回路、3 ベース板、3a ケース材用凹部、3b,3d,3f 底部、3c ケース材用凹部、3e ベース板凹部、4 空間、5 ケース材、5a,6a 先端部、6 仕切り板、7 封止樹脂、7a 第1の封止樹脂、7b 第2の封止樹脂、8 接合材、9 配線部材、10 外部端子、11 接着剤、12 端子、71〜74 封止樹脂、100 半導体装置、R1 第1の領域、R2 第2の領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子が実装された回路基板と、
前記回路基板が実装された放熱性を有するベース板と、
前記ベース板に設置され、かつ前記回路基板を囲む空間を有するケース材と、
前記ベース板に設置され、前記空間を前記回路基板の配置された第1の領域とその他の第2の領域とを有するように区画する仕切り板と、
前記第1の領域においては前記半導体素子を覆うように、前記仕切り板で区画された前記第1および第2の領域の各々を封止する封止樹脂とを備えた、半導体装置。
【請求項2】
前記ベース板と前記封止樹脂とが接触する最大距離が40mm以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ケース材の前記ベース板側の先端部は、前記ベース板に向かって断面積が小さくなるテーパ形状を有している、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記仕切り板の前記ベース板側の先端部は、前記ベース板に向かって断面積が小さくなるテーパ形状を有している、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ベース板は仕切り板用凹部を含み、
前記仕切り板用凹部に前記仕切り板の前記ベース板側の前記先端部が挿入されている、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記仕切り板用凹部は、前記仕切り板用凹部の底部に向かって開口面積が大きくなる逆テーパ形状を有している、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ベース板はケース材用凹部を含み、
前記ケース材用凹部に前記ケース材の前記ベース板側の前記先端部が挿入されている、請求項1〜6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ケース材用凹部は、前記ケース材用凹部の底部に向かって開口面積が大きくなる逆テーパ形状を有している、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ベース板はベース板凹部を含み、
前記ベース板凹部は、前記ベース板において前記回路基板が実装された部分および前記ケース材、前記仕切り板が設置された部分とは異なる部分に設けられており、かつ
前記ベース板凹部は、前記ベース板凹部の底部に向かって開口面積が大きくなる逆テーパ形状を有している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記封止樹脂は、第1の封止樹脂と、前記第1の封止樹脂より低い弾性率を有する第2の封止樹脂とを含み、
前記第1の封止樹脂により前記回路基板の下面までが封止されており、かつ
前記第2の封止樹脂により前記回路基板の下面より上方が封止されている、請求項1〜9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記封止樹脂は、異なる材質よりなる第1および第2の封止樹脂を含み、
前記第1の領域が前記第1の封止樹脂で封止され、前記第2の領域が前記第2の封止樹脂で封止されている、請求項1〜9のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−204366(P2012−204366A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64484(P2011−64484)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】