説明

半導体製造方法及び基板処理装置

【課題】形成される薄膜中に残留する副生成物や中間体の濃度を制御して基板処理することができる半導体製造方法や基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板を処理室内へ搬入する搬入工程と、前記基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給するガス供給工程と、前記ガス供給工程に続けて、前記基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給しつつ、前記供給されたガスに紫外光を照射して励起する第1のガス励起工程とから、半導体製造方法を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光による処理ガス励起機構を用いた基板処理技術に関し、例えば、半導体集積回路装置(半導体装置。以下、ICという。)の製造装置や製造方法において、半導体集積回路が作り込まれる半導体基板(例えば、半導体ウエハ)に、酸化膜等を堆積(デポジション)して成膜等するうえで有効な基板処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造においては、ICの高集積化に伴い、ICを構成する素子の微細化が求められている。例えば、DRAMやNAND型フラッシュメモリにおけるトタンジスタの素子分離法として、寸法の制御性に優れ、かつ占有面積の小さいSTI(Shallow Trench Isolation)法が用いられている。STI法は、トタンジスタ素子を電気的に分離するために、半導体基板に細い溝(トレンチ)を形成した後、絶縁材料である酸化シリコン(SiO)で溝を埋めるものである。STI法には、TEOS(テトラエトキシシラン)とO(オゾン)を用いた常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法や、TEOSを用いたプラズマCVD法等が用いられてきた。
【0003】
しかし、最近ではますますICの高集積化が進み、素子分離溝の幅や孔の開口寸法が0.1μm以下となり、さらに、素子分離溝の深さと幅との比であるアスペクト比(溝の深さ/溝の幅)が5を超えて増大してきている。そのため、従来使用されてきた上記常圧CVD法や、成膜スパッタとエッチングを組み合わせたHDP―CVD(High Density Plasma CVD)法や、SA−CVD(Sub-Atom spare CVD)法では、素子分離溝中に、後述するボイドやシームを作らずに、絶縁膜を埋め込むことが困難となってきている。
ここで、ボイドとは、溝内の奥部へ絶縁膜を十分埋め込む前に、溝内の開口部が絶縁膜で塞がれて形成される空隙であり、シームとは、溝の両側の側壁から成長する成膜の継ぎ目に発生するスリット状の欠陥である。
【0004】
溝内へ絶縁膜を埋め込むことが困難な理由は、熱による材料分解、気相反応、分子吸着、膜形成の順に反応が進むCVD法の原理に起因する。従来の熱CVD法の段差被覆性は、原理的に、平坦部と溝部や突起部上の膜厚比率100%が最高であり、これを上回ることはできない。段差被覆性100%の状態は、表面反応速度に対して膜となる材料の分子供給量が少ない反応律速の場合であり、表面反応速度よりも分子供給量が多くなる供給律速の状態にすると、段差被覆性は100%を下回る。
【0005】
そこで最近、溝部等における段差被覆性を向上させるために、真空紫外光を用いた光励起(Photo Induced)CVD法等が用いられている。真空紫外光を用いた光励起CVD法においては、例えば、基板を載置した処理室内に材料ガスを供給しつつ真空紫外光を照射して、基板上にシリコン酸化膜を形成するものである。
材料ガスに真空紫外光を照射して、基板上にシリコン酸化膜を形成する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−87475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば特許文献1のように、100℃以下の低温域で材料ガスに真空紫外光を照射して、基板上にシリコン酸化膜を形成する技術においては、例えば、TEOS、OMCTS(オクタメチルシクロテトラシロキサン)、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)等のポリシロキサン系材料や、酸素等の酸化剤や、材料が反応、分解して発生する副生成物や中間体が、形成されたシリコン酸化膜である薄膜中に残留する。目的とする膜種や用途により、これらの残留物が形成された薄膜の特性を劣化させ、品質を低下させるという課題がある。なお、中間体とは、材料ガスが分解されて生成されるもので、材料ガス分子よりも分子量が小さく、最終目的物であるシリコン酸化膜(SiO)よりも分子量が大きいものである。
【0008】
本発明の目的は、形成される薄膜中に残留する副生成物や中間体の濃度を制御して基板処理することができる基板処理方法や半導体製造方法、基板処理装置や半導体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明においては、基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給し、所定時間経過後に、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給しつつ、該供給されたガスに紫外光を照射するものである。
本発明に係る半導体製造方法の代表的な構成は、次のとおりである。
基板を処理室内へ搬入する搬入工程と、
前記基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給するガス供給工程と、
前記ガス供給工程に続けて、前記基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給しつつ、前記供給されたガスに紫外光を照射して励起する第1のガス励起工程とを有する半導体製造方法。
【0010】
また、本発明に係る基板処理装置の代表的な構成は、次のとおりである。
基板を処理する処理室と、
メチル基を含む有機シリコンガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、
酸素含有ガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、
処理室内の雰囲気を排気する排気部と、
処理室の外に設けられ処理室内へ紫外光を照射する紫外光発光部と、
処理室の隔壁に設けられた紫外光を透過させるための透過窓と、
制御部とを備え、
該制御部は、前記第1のガス供給部及び第2のガス供給部から前記処理室内へ、それぞれメチル基を含む有機シリコンガスと酸素含有ガスを供給し、所定の時間が経過後、前記第1のガス供給部及び第2のガス供給部から前記処理室内へ、それぞれメチル基を含む有機シリコンガスと酸素含有ガスを供給しつつ、前記供給されたガスに紫外光を照射するよう制御する制御部である基板処理装置。
【発明の効果】
【0011】
上記のように半導体製造方法や基板処理装置を構成すると、有機シリコン分子と酸素分子を基板上に吸着させた後、真空紫外光によって、有機シリコン分子の結合を切り中間体化することができ、ボイドやシームを抑制して溝内に絶縁膜を形成しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る基板処理装置の構成例における垂直断面図である。
【図2】本発明の実施例における処理工程のタイムチャートである。
【図3】本発明の実施例における膜中の元素比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の半導体製造工程や基板処理工程を実施する基板処理装置の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の半導体製造方法や基板処理方法を実施可能な基板処理装置の構成例における垂直断面図である。図1において、1は、その内部で基板を処理する基板処理室である。2は処理対象の基板である。3は、基板2を処理する際に、基板2を載置する基板載置部(サセプタ)である。4は、紫外光を発光する発光部である。5は、前記発光部4から発光された紫外光を、処理室1内に透過させる透過窓であり、本例では石英から構成される。6は、基板2を加熱するためのヒータユニットで、本実施例では、抵抗ヒータで構成されている。7は、基板2の温度を検出するための温度検出器である。9は、処理室1内の圧力等を制御する制御部である。ヒータユニット6と温度検出器7は、制御部9に電気的に接続される。制御部9は、基板2の温度が所望のタイミングにて所望の温度分布となるように、前記温度検出器7により検出された温度情報に基づいてヒータユニット6への通電量を制御する。
【0014】
本基板処理装置においては、発光部4の内部には、エキシマランプを備えるとともに、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の希ガスが封入されている。これらの希ガスを封入することにより、紫外光の波長を設定することができる、例えば、Arを封入した場合は波長126nmの紫外光、Krを封入した場合は波長146nmの紫外光、Xeを封入した場合は波長172nmの紫外光を発生することができる。本実施例では、Xeを封入して紫外光を発生させる。発生した紫外光は、石英製の透過窓5を通して、基板処理室1内に供給される。
基板処理室1と発光部4とは、石英製の透過窓5により、気密に分離されている。したがって、発光部4の内部の希ガスは、基板処理室1に流出せず、また、基板処理室1内の第1のガス等が、発光部4内に流入することもない。
【0015】
次に、処理ガス等のガス供給系について説明する。図1に示すように、処理室1のガス導入管14には、第1のガス供給管15、第2のガス供給管25、不活性ガス供給管35が接続されている。第1のガス供給管15には、上流から順に、第1のガスを供給する第1のガス源13、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)12、及び開閉バルブ11がそれぞれ設けられている。第2のガス供給管25には、上流から順に、第2のガスを供給する第2のガス源23、MFC22、及び開閉バルブ21がそれぞれ設けられている。不活性ガス供給管35には、上流から順に、例えば、N2(窒素)等の不活性ガスを供給する不活性ガス源33、MFC32、及び開閉バルブ31がそれぞれ設けられている。
第1のガス源13、MFC12、開閉バルブ11等から、第1のガス供給部が構成される。また、第2のガス源23、MFC22、開閉バルブ21等から、第2のガス供給部が構成される。
【0016】
第2のガス供給管25と、導入管14との間には、高周波印加部24が設けられている。高周波印加部24は、第2のガス供給管25から導入管14に流れるガスに高周波電力を印加し、該流れるガスをプラズマ化する等により、第2のガスを活性化することができる。
【0017】
MFC12、22、32及び開閉バルブ11、21、31は、制御部9に電気的に接続されている。制御部9は、処理室1内に供給するガスの種類が所望のタイミングにて所望のガス種となるよう、また、供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるよう、MFC12、22、32及び開閉バルブ11、21、31を制御する。
【0018】
第1のガスとしては、溝部への埋め込みを可能とするための流動性に必要なメチル基を含有する、例えばTEOSやTRIES(トリエトキシシラン)などのポリシロキサン原料やOMCTS、DMCPS(デカメチルシクロペンタシロキサン)などの環状シロキサン、または、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのHMDS系非シロキサン原料などの有機シリコン原料のうち、1種類のガスを用いることができる。第2のガスとしては、酸化剤として作用する例えば酸素含有ガス、具体的には酸素ガスやオゾンを用いることができる。
なお、第1のガスを処理室1内に供給する際は、必要に応じ、同時に不活性ガスを供給してもよい。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素ガス等を用いることができる。
【0019】
次に、処理室1のガス排気系について説明する。図1に示すように、処理室1内の雰囲気を排気するガス排気管64には、上流から順に、圧力センサ61、圧力調整バルブとしてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ62、真空排気装置としての真空ポンプ63が設けられている。真空ポンプ63は、処理室1内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう、処理室1内を真空排気するように構成されている。APCバルブ62および圧力センサ61は、制御部9に電気的に接続されている。制御部9は、処理室1内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、圧力センサ61により検出された圧力値に基づいてAPCバルブ62の開度を制御するように構成されている。
真空ポンプ63、ガス排気管64等から、排気部が構成される。
前記制御部9は、図示しない操作部、入出力部等を備えており、レシピ(成膜プロセスの制御シーケンス)に基づく温度制御や圧力制御、流量制御および機械駆動制御等を行う。また、制御部9は、ハードウェア構成として、CPU(中央演算ユニット)とメモリとを備えるものである。
【0020】
次に、本発明に係る基板処理方法の実施例を、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施例における処理工程のタイムチャートである。なお、図2においては、(A)基板搬入工程、(H)基板搬出工程は省略している。
(A)基板搬入工程
まず、基板2が、基板搬入口(不図示)から基板処理室1内の基板載置部3に載置される。続いて、排気管64を介して真空ポンプ63により、基板処理室1の内部が所定の真空度(例えば10Pa以下)に減圧され、ヒータユニット6により、基板2が所定の温度(30℃から100℃の範囲で、例えば50℃)に昇温され、維持される。
【0021】
(B)ガス供給工程
次に、ガス供給工程において、HMDS等の所定の材料ガス(第1のガス)が、第1のガス供給源13からガス導入管14を介して基板処理室1内へ供給され、酸素含有ガス(第2のガス)が、第2のガス供給源23からガス導入管14を介して基板処理室1内へ供給される。本実施例では、第1のガスとしてHMDSを用い、第2のガスとして酸素ガスを用いる。このとき、窒素ガス等の不活性ガスが、不活性ガス供給源33から処理室1に供給されるようにしてもよい。第1のガスと第2のガスが、基板処理室1に供給されている状態において、APC62と真空ポンプ63により基板処理室1内を所定の圧力に調整する。このようにして、基板2の表面に第1のガス分子と第2のガス分子が吸着する。
【0022】
このとき、図2に示すように、発光部4から紫外光を照射しない(励起OFF)ので、紫外光により、HMDS等のメチル基を含む有機シリコンガスが、基板2の表面に吸着する前に、有機シリコン分子の結合が切断されることがない。
仮に、基板2の表面に吸着する前に、紫外光を照射し(励起ON)、有機シリコン分子の結合が切断された場合、基板2に近づくほど分解された有機成分が結合し気化するため、基板上においては有機成分が比較的少ない状態となる。基板上における流動性は有機成分の量に比例するものと考えられるため、基板上においてシリコン成分の十分な流動性を確保することができない。
【0023】
(B)ガス供給工程においては、基板2の温度は、温度が高すぎると、基板以外のところに有機シリコンが吸着してしまうため望ましくない。また、温度が低すぎると、基板表面に有機シリコンガスが吸着した際にガスが液化してしまい、膜として成長しない。また、(B)ガス供給工程は、(C)第1のガス励起工程時の圧力に調整する工程も兼ねる工程となる。したがって、ガス供給工程においては、基板2の温度は、第1のガスと第2のガスが吸着するのに適した30℃以上100℃以下とし、かつ、APCバルブ62により排気量を調整して、基板処理室1内の圧力を10Pa以上100Pa以下とすることが望ましい。
【0024】
(C)第1のガス励起工程
(B)ガス供給工程を所定時間行った後、図2に示すように、第1のガスと第2のガスが基板処理室1に供給されている状態を継続しつつ、発光部4から基板処理室1内へ向けて紫外光を照射する(励起ON)。光源には、基板2表面に吸着したガス分子に対し、該ガス分子の結合を切断したい箇所の結合エネルギよりも大きいフォトンエネルギを有する波長の光を用いる。例えば、真空紫外光である波長172nmのキセノンエキシマ光源の場合、7.2eVのエネルギをもつフォトンが、基板2表面に吸着したガス分子に対し、照射される。したがって、この場合、7.2eVより小さい結合エネルギをもつ結合箇所は、原理的に切断が可能である。この原理を利用すれば、所望の結合箇所を選択的に切断することができる。
【0025】
例えば、有機シリコンガスであるHMDSにキセノンエキシマランプによる真空紫外光を照射すれば、3.03eVのエネルギをもつ、ケイ素(Si)と炭素(C)間の一重結合(Si−C結合)を切断することが可能である。切断できる結合の量は、吸着したガス分子の表面密度と入射フォトンの密度により決まる。
結合が切断されることにより、吸着したガス分子は、シリコン酸化膜(SiO)や材料ガスよりも分子量の小さい単位である中間体や副生成物へ分解される。分解された分子や中間体は、蒸気圧の大きいものから先に、基板2の表面から離脱する。
このように、(B)ガス供給工程で基板2に吸着したガスを、(C)第1のガス励起工程により、1分子から数分子程度の厚さに分解しておくので、(D)第1の排気工程において、基板2に吸着した分解ガスを拡散して、溝内に埋め込むことが容易となる。
【0026】
第1のガスとしてHMDSを用いる場合は、Si原子と結合したメチル基(−CH)が不純物源となるが、このメチル基が基板2の表面から優先的に脱離し、基板処理室1内から排気される。その結果、基板2の表面には、主に、シリコン(Si)を主成分とする蒸気圧の小さい成分が残存する。
第1のガスとしてHMDS以外のガスを用いる場合であっても、第1のガスがメチル基を含む有機シリコンガスであれば、HMDS同様に、メチル基を含む中間体、副生成物が、基板2の表面から優先的に脱離し、基盤2の表面には、主に、シリコン(Si)を主成分とする蒸気圧の小さい成分が残存する。
【0027】
(C)第1のガス励起工程においては、基板処理室1内の圧力が高すぎると、有機シリコンによって成長した膜は流動性が高く、溝への埋め込み性は高くなるが、膜としての強度が保てない。逆に、基板処理室1内の圧力が低すぎると、有機シリコンガスによる膜に流動性が得られず、溝を埋めることができず、パターンをなぞった形(Conformal)に成膜してしまう。従って、第1のガス励起工程においては、基板2の温度を30℃以上100℃以下とし、基板処理室1内の圧力は10Pa以上100Pa以下とすることが望ましい。実施例では、基板2の温度を50℃、基板処理室1内の圧力を30Paとした。
【0028】
(D)第1の排気工程
次に、図2に示すように、発光部4からの紫外光照射を停止(励起OFF)して、開閉バルブ11、21を閉じて第1のガスと第2のガスの供給を停止し、(C)第1のガス励起工程において基板2に過剰に吸着されたガス分子や中間体、および基板2に吸着されずに基板処理室1内に滞留しているガス分子を、基板処理室1内から排気する。このとき、基板処理室1内の圧力が低下するので、(C)第1のガス励起工程において切断された材料ガスのガス分子である中間体が拡散され、溝内に埋め込まれる。なお、(C)第1のガス励起工程においては、基板処理室1内の圧力が高く、切断された材料ガスのガス分子が拡散されにくいので、溝内に埋め込まれにくいが、(D)第1の排気工程においては、基板処理室1内の圧力が(C)第1のガス励起工程より低下するので、中間体が拡散されやすくなり、基板の平坦面よりも溝内に埋め込まれ易くなる。このため、100%を上回る段差被覆性を得ることができる。
【0029】
(D)第1の排気工程においては、基板2の温度を30℃以上100℃以下とし、かつ、APCバルブ62により排気量を調整して、基板処理室1内の圧力を100Pa以下とすることが望ましい。本実施例では、基板2の温度を50℃、基板処理室1内の圧力を1Paとした。
【0030】
(E)第2のガス励起工程
次に、図2に示すように、酸素ガス等の酸素含有ガス(第2のガス)が、第2のガス供給源23からガス導入管14を介して基板処理室1内へ供給され、その状態で、発光部4から基板処理室1内へ向けて紫外光を照射する(励起ON)。本実施例では、第2のガスとして酸素ガスを用いる。このようにして、発光部4からの紫外光により、酸素ガスが励起、分解され、該励起、分解により生じた活性酸素により、(C)第1のガス励起工程において基板2の表面に残存したシリコン(Si)成分の酸化が行われ、厚さ0.5〜10nmのシリコン酸化膜が生成される。
なお、紫外光を照射する代わりに、高周波印加部24により酸素ガスを活性化してもよく、あるいは、両者を併用してもよい。また、オゾンを使用する場合は、励起手段を用いずにそのまま供給してもよい。
【0031】
(D)第1の排気工程において基板2の表面に残存したシリコン(Si)成分は、数原子層で構成されているので、活性酸素は、容易に残存シリコン中に進入し、残存シリコン膜を酸化することができる。このとき、活性酸素は、シリコン膜を酸化するとともに、基板2の表面に微量残存する有機成分であるメチル基も酸化し、一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO)として、炭素成分をシリコン膜から排出する。また、基板2上に形成された膜中の炭素成分が除去される。
第2のガス励起工程においては、基板2の温度を30℃以上100℃以下とし、かつ、APCバルブ62により排気量を調整して、基板処理室1内の圧力を1Pa以上100Pa以下とすることが望ましい。本実施例では、酸素ガスによる酸化力が強い条件とすべく、基板2の温度を50℃、基板処理室内1の圧力を10Paとした。
【0032】
図3に、基板2の温度を50℃、基板処理室内1の圧力を10Paとして、(E)第2のガス励起工程を行った場合の膜中元素成分の変化を示す。図3(a)は、第2のガス励起工程を行わなかった場合であり、図3(b)は、第2のガス励起工程を10分間行った場合である。第2のガス励起工程を行わなかった場合には、図3(a)41に示すように、膜中に炭素が43%も含まれているが、第2のガス励起工程を10分間行うことで、図3(b)45に示すように、膜中炭素濃度が8%まで減少している。同時に、膜中酸素濃度も、図3(a)42に示す33%から、図3(b)46に示す66%に増加している。これは、第2のガス励起工程によって、膜中の炭素成分を除去し、シリコン膜の酸化が進行していることを示している。
【0033】
(F)第2の排気工程
次に、図2に示すように、発光部4からの紫外光照射を停止(励起OFF)して、開閉バルブ21を閉じて第2のガスの供給を停止し、基板処理室1内に滞留している第2のガスと、(E)第2のガス励起工程で基板上の膜中から除去された炭素成分を、基板処理室1内から排気する。
第2の排気工程においては、基板2の温度を30℃以上100℃以下とし、かつ、APCバルブ62により排気量を調整して、基板処理室1内の圧力を100Pa以下とすることが望ましい。本実施例では、基板2の温度を50℃、基板処理室1内の圧力を1Paとした。
【0034】
(G)繰返し工程
以上説明した(B)ガス供給工程、(C)第1のガス励起工程、(D)第1の排気工程、(E)第2のガス励起工程、(F)第2の排気工程から構成される一連の工程を、1回行うか、又は複数回繰り返して行うことにより、所望の膜厚のシリコン酸化膜を形成することができる。
【0035】
(H)基板搬出工程
以上のようにして所望のシリコン酸化膜が形成された後に、窒素ガス等の不活性ガスが、不活性ガス供給源33から処理室1内に供給され、不活性ガスにより、基板処理室1内が置換され、処理室1内が大気圧に復帰した後に、処理済みの基板2が処理室1の外部に搬出される。
【0036】
以上述べたように本実施例の基板処理技術によれば、処理ガスを励起して基板上に薄膜を形成する際に、段差被覆性を向上するとともに、薄膜中に取り込まれる不純物の量を低減し高品質な薄膜を形成することができる。
【0037】
本明細書には、少なくとも次の発明が含まれる。すなわち、第1の発明は、
基板を処理室内へ搬入する搬入工程と、
前記基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給するガス供給工程と、
前記ガス供給工程に続けて、前記基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給しつつ、前記供給されたガスに紫外光を照射して励起する第1のガス励起工程とを有する半導体製造方法。
このようにすると、有機シリコン分子と酸素分子を基板上に吸着させた後、真空紫外光によって、有機シリコン分子の結合を切り中間体化することができ、ボイドやシームを抑制して溝内に絶縁膜を形成しやすくなる。
【0038】
第2の発明は、
前記第1の発明の半導体製造方法であって、
第1のガス励起工程の後、前記処理室内を排気する第1の排気工程を有する半導体製造方法。
このようにすると、基板上の中間体が溝内に埋め込まれ、100%を上回る段差被覆性を得ることができる。
【0039】
第3の発明は、
前記第2の発明の半導体製造方法であって、
前記第1の排気工程の後、前記処理室内へ酸素含有ガスを供給し、前記供給された酸素含有ガスに紫外光を照射して励起する第2のガス励起工程と、
前記第2のガス励起工程の後、前記処理室内を排気する第2の排気工程とを有する半導体製造方法。
このようにすると、絶縁膜中の炭素成分が脱離することで、純度の高いシリコン酸化膜を形成することができる。
【0040】
第4の発明は、
前記第3の発明の半導体製造方法であって、
前記ガス供給工程、前記第1のガス励起工程、前記第1の排気工程、前記第2のガス励起工程、前記第2の排気工程を含む一連の工程を複数回行う半導体製造方法。
このようにすると、薄い絶縁膜を形成する度に炭素成分を除去する工程を繰り返すので、より炭素成分を除去することが可能となり、より純度の高いシリコン酸化膜を形成することができる。
【0041】
第5の発明は、
基板を処理する処理室と、
メチル基を含む有機シリコンガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、
酸素含有ガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、
処理室内の雰囲気を排気する排気部と、
処理室の外に設けられ処理室内へ紫外光を照射する紫外光発光部と、
処理室の隔壁に設けられた紫外光を透過させるための透過窓と、
制御部とを備え、
該制御部は、前記第1のガス供給部及び第2のガス供給部から前記処理室内へ、それぞれメチル基を含む有機シリコンガスと酸素含有ガスを供給し、所定の時間が経過後、前記第1のガス供給部及び第2のガス供給部から前記処理室内へ、それぞれメチル基を含む有機シリコンガスと酸素含有ガスを供給しつつ、前記供給されたガスに紫外光を照射するよう制御する制御部である基板処理装置。
このように基板処理装置を構成すると、有機シリコン分子と酸素分子を基板上に吸着させた後、真空紫外光によって、有機シリコン分子の結合を切り中間体化することができ、ボイドやシームを抑制して溝内に絶縁膜を形成しやすくなる。
【0042】
第6の発明は、
基板を処理室内へ搬入する搬入工程と、
前記基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給するガス供給工程と、
前記ガス供給工程に続けて、前記基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給しつつ、前記供給されたガスに紫外光を照射して励起する第1のガス励起工程とを有する基板処理方法。
このようにすると、有機シリコン分子と酸素分子を基板上に吸着させた後、真空紫外光によって、有機シリコン分子の結合を切り中間体化することができ、ボイドやシームを抑制して溝内に絶縁膜を形成しやすくなる。
【符号の説明】
【0043】
1:基板処理室、2:基板、3:基板載置部(サセプタ)、4:紫外光発光部、5:紫外光透過窓、6:ヒータユニット、7:温度検出器、9:制御部、11:開閉バルブ、12:MFC、13:第1のガス源、14:ガス導入管、15:第1のガス供給管、21:開閉バルブ、22:MFC、23:第2のガス源、25:第2のガス供給管、24:高周波印加部、31:開閉バルブ、32:MFC、33:不活性ガス源、35:不活性ガス供給管、61:圧力センサ、62:APCバルブ、63:真空ポンプ、64:ガス排気管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理室内へ搬入する搬入工程と、
前記基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給するガス供給工程と、
前記ガス供給工程に続けて、前記基板が搬入された処理室内へ、メチル基を含む有機シリコンガス及び酸素含有ガスを供給しつつ、前記供給されたガスに紫外光を照射して励起する第1のガス励起工程とを有する半導体製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体製造方法であって、
第1のガス励起工程の後、前記処理室内を排気する第1の排気工程を有する半導体製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体製造方法であって、
前記第1の排気工程の後、前記処理室内へ酸素含有ガスを供給し、前記供給された酸素含有ガスに紫外光を照射して励起する第2のガス励起工程と、
前記第2のガス励起工程の後、前記処理室内を排気する第2の排気工程とを有する半導体製造方法。
【請求項4】
基板を処理する処理室と、
メチル基を含む有機シリコンガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、
酸素含有ガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、
処理室内の雰囲気を排気する排気部と、
処理室の外に設けられ処理室内へ紫外光を照射する紫外光発光部と、
処理室の隔壁に設けられた紫外光を透過させるための透過窓と、
制御部とを備え、
該制御部は、前記第1のガス供給部及び第2のガス供給部から前記処理室内へ、それぞれメチル基を含む有機シリコンガスと酸素含有ガスを供給し、所定の時間が経過後、前記第1のガス供給部及び第2のガス供給部から前記処理室内へ、それぞれメチル基を含む有機シリコンガスと酸素含有ガスを供給しつつ、前記供給されたガスに紫外光を照射するよう制御する制御部である基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−109456(P2012−109456A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258096(P2010−258096)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】