説明

半導体集積回路

【課題】電源起動時のリーク電流によるトランジスタの誤作動を防止することが可能な半導体集積回路を提供すること。
【解決手段】発明にかかる半導体集積回路は、第1の制御信号を駆動回路120を介して出力する論理回路209と、コレクタが高電位側の電源電圧VCCに接続され、エミッタが出力端子VOUTに接続され、ベースに入力される第1の制御信号に応じてオンオフが制御されるNPN型バイポーラトランジスタ201をそなえる。また、一方の端子がベースと駆動回路210との間のノードに接続され、他方の端子が電源電圧及び接地電圧のいずれか一方に接続されたトランジスタスイッチ203と、第1のトランジスタスイッチに並列に接続された抵抗素子205とを備える。このような回路構成により、電源起動時のリーク電流によるトランジスタの誤作動を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速化のためにバイポーラ回路とCMOS(Complementary Metal Oxide Semicオンductor)回路とを組み合わせたBiCMOS(Bipolar Complementary Metal Oxide Semicオンductor)を用いた負荷駆動用出力回路等の半導体集積装置が数々提案されている。このような回路において、高速なスイッチング動作を行うとともに、論理制御により駆動負荷の誤動作を防止するためには、電源電圧の変動に対しても安定した出力信号の制御が必要となる。
【0003】
図12に、特許文献1に記載された従来技術の半導体集積回路を示す。図12に示す回路は、BiCMOSによって構成される出力負荷駆動用回路であり、出力トランジスタとしてトーテムポール構成のNPNトランジスタ102、108を備える。また、NPNトランジスタ102、108の接続点に出力端子VOUT114が接続される。NPNトランジスタ102のベースはNPNトランジスタ101のエミッタにダーリントン接続される。また、NPNトランジスタ101のベースはNOR回路105の出力端子に接続され、NPNトランジスタ101、102を駆動している。NPNトランジスタ102のベースは、さらにプルダウン用に備えられたPchMOSトランジスタ104のソースに接続される。PchMOSトランジスタ104のドレインはGND(接地電圧端子)に接続される。PchMOSトランジスタ104のゲートは、NOR回路106の出力端子に接続される。なお、NOR回路105、106の入出力信号は互いに同位相である。
【0004】
NPNトランジスタ108のベースは、駆動用に備えられたNchMOSトランジスタ109のソースと、抵抗素子111を介してGND(接地電圧端子)に接続される。NchMOSトランジスタ109のドレインは、抵抗素子112を介してVCC(電源電圧端子)に接続される。NchMOSトランジスタ109のゲートは、NOR回路113の出力端子が接続される。入力端子Din115はINV回路107の入力端子と、NOR回路113の一方の入力端子に接続される。入力端子/OEはNOR回路113の他方の入力端子と、NOR回路105の一方の入力端子と、NOR回路106の一方の入力端子に接続される。また、INV回路107の出力端子は、NOR回路105の他方の入力端子と、NOR回路106の他方の入力端子に接続される。なお、NOR回路113の入出力信号と、NOR回路105、106の入出力信号とは、互いに逆位相である。
【0005】
このような出力回路において、入力端子Dinがハイレベル、入力端子/OEがロウレベルの場合、NPNトランジスタ101、102のベースにハイレベルの信号が入力されるため、それぞれコレクタ−エミッタ間の接続状態がオンする。一方NPNトランジスタ108のベースには、ロウレベルの信号が入力されるため、コレクタ−エミッタ間の接続状態がオフする。したがって、出力端子VOUT114はハイレベルを示す。
【0006】
次に、入力端子Dinがロウレベル、入力端子/OEがロウレベルの場合、NPNトランジスタ101、102のベースにハイレベルの信号が入力されるため、それぞれコレクタ−エミッタ間の接続状態がオフする。一方NPNトランジスタ108のベースには、ハイレベルの信号が入力されるため、コレクタ−エミッタ間の接続状態がオンする。したがって、出力端子VOUT114はロウレベルを示す。なおこの時、PchMOSトランジスタ104のゲートには、ロウレベルの信号が入力されるため、ソース−ドレイン間の接続状態がオンする。それにより、NPNトランジスタ102のゲート電位をプルダウンさせている。
【0007】
しかし、図12に示す従来技術の回路では、以下に説明するように、電源電圧の起動時において、出力負荷に電流が流れて負荷を駆動してしまい、誤動作を招く恐れがある。図13〜図16は、入力端子Dinにロウレベルの信号を入力した場合、VCC(電源電圧)起動時における入力端子Dinの電圧、入力端子/OEの電圧、INV回路107の出力電圧、NOR回路105の出力電圧を示したものである。図13、図14に示すように、入力端子Din及び入力端子/OEの電圧値はいずれもロウレベルに保たれている。ここで、電源電圧起動時の低い電圧(VCC=1V付近以下)の場合において、INV回路107を構成するPchMOSトランジスタのVgs(ゲート−ソース間電圧)は、Vgs=VCCであるため閾値電圧VTよりも低い。つまり、INV回路107を構成するPchMOSトランジスタは、弱反転領域内の動作を示す。
【0008】
弱反転領域(非飽和領域)においては、PchMOSトランジスタのソース−ドレイン間に流れる電流が微小である。したがって、図15に示すようにINV回路107から出力される信号は、電源電圧に応じた電圧レベルまで電位が到達せず中間電位を示す。そのため、図16に示すようにNOR回路105は、INV回路107の出力信号(中間電位を示す)をハイレベルと認識できない可能性がある。つまり、NOR回路105から出力される信号はハイレベルを示す可能性がある。あるいは、NOR回路105に備えられたPchMOSトランジスタもINV回路107と同様に弱反転領域(非飽和領域)内の動作を示す。したがって、たとえNOR回路105がINV回路107の出力信号をハイレベルと認識できたとしても、NOR回路105から出力される信号は中間電位を示す可能性も考えられる。
【0009】
また、図8に、電源電圧起動時における出力端子VOUTの電圧値の変化を示す。なお、図8は、電源電圧(VCC)を一定の割合で増加させ(例えば3V/us)、VCCがある電圧レベル(例えば3V)に到達して一定期間経過後、再びVCCを一定の割合で減少させた場合(例えば−3V/us)における出力端子VOUTの電圧の変化を示す。図8に示すように、電源電圧が一定の割合で増加している状態において、出力端子VOUTの電圧が一時的に上昇することがわかる。
【0010】
このように電源電圧の起動時には、負荷への出力信号をオフに制御しても、論理回路の動作によりNPNトランジスタ102がオンしてしまう可能性がある。それにより、出力負荷に電流が流れて負荷を駆動してしまい、誤動作を招くという問題があった。また、図12に示す回路では、プルダウン用にPchMOSトランジスタ104を備えているが、電源起動時は、PchMOSトランジスタ104も弱反転領域(非飽和領域)内の動作を示すため、ソース−ドレイン間を流れる電流が少なくなる。したがって、電源電圧の起動時には、PchMOSトランジスタ104によるプルダウンの効果を期待できない。
【0011】
次に、図17に特許文献2に記載された従来技術の半導体集積装置を示す。この半導体集積回路装置は、BiCMOSドライバであり、高電源電位Vccと低電源電位Vssとの間にトーテムポールに接続されたNPN型バイポーラトランジスタ11、12を有し、その接続点に出力端子OUT1が接続されている。バイポーラトランジスタ11のベースは、ゲートが入力端子IN1に接続されたプルアップ用のPchMOSトランジスタ13を介して、高電源電位Vccに接続されている。さらに、バイポーラトランジスタ11のベースと低電源電位Vssとの間には、該バイポーラトランジスタ11を制御するNchMOSトランジスタ14が接続されている。NchMOSトランジスタ14のゲートと出力端子OUT1との間には、該NchMOSトランジスタ14をゲート制御する論理回路(例えば、ラッチ回路)15が接続されている。ラッチ回路15は、逆並列接続された2個のインバータ15a、15bで構成され、所定の閾値電位(スレッショルド電位)を有し、その閾値電位と出力端子OUT1の電位との大きさを比較してその比較結果に基づき、NchMOSトランジスタ14をゲート制御する機能を有する。バイポーラトランジスタ12のベースには、入力端子IN1からの入力信号に基づき該バイポーラトランジスタ12のベースを制御するアクティブプルダウン回路が接続されている。このアクティブプルダウン回路は、ゲートが入力端子IN1に接続されたNchMOSトランジスタ16と、ゲートが、出力端子OUT1に接続されたNchMOSトランジスタ17とを有し、そのNchMOSトランジスタ16、17が、該出力端子OUT1と低電源電位Vssとの間に接続され、そのNchMOSトランジスタ16、17の接続点が、バイポーラトランジスタ12のベースに接続されている。NchMOSトランジスタ17は、出力端子OUT1を介してラッチ回路15でゲート制御されるようになっている。
【0012】
ここで図17に示す回路は、プルダウン用にNchMOSトランジスタ14、17を備える。しかし、図12の場合と同様に、電源起動時の低い電圧値では、NchMOSトランジスタ14、17は弱反転領域(非飽和領域)内の動作を示すため、ソース−ドレイン間を流れる電流が少なくなる。したがって、電源電圧の起動時等にはプルダウンの効果を期待できない。
【0013】
次に、図18に特許文献3に記載された従来技術の半導体集積回路を示す。Q1はPchMOSトランジスタを示す。Q4、Q5はNchMOSトランジスタを示す。T1〜T4はバイポーラトランジスタ、Dはダイオード、R1〜R5は抵抗素子を示す。PchMOSトランジスタQ1と、NchMOSトランジスタQ4とによってインバータ回路が構成される。トランジスタT1と抵抗素子R2、R3によって、位相分割回路が構成される。また、トランジスタT2、T3とトランジスタT4とによってトーテムポール構造の出力回路が構成される。また、Inは前段の出力信号が入力される入力端子、Outは次段の入力端子に接続される出力端子である。さらに、PchMOSトランジスタQ2およびNchMOSトランジスタQ6から構成され、それぞれのゲートが出力端子Outに接続される帰還用インバータ回路を備える。また、PchMOSトランジスタQ1のドレインとトランジスタT1のベースとの間に挿入され、ゲートが帰還用インバータ回路の出力部に接続されたPchMOSトランジスタQ3と抵抗素子R6とからなる直列接続体を備える。
【0014】
ここで図18に示す回路は、プルダウン用にNchMOSトランジスタQ5及び抵抗素子R3を備える。しかし、図18の回路は、電源電圧Vccから出力端子Outへ流れる電流を制御するトランジスタT2、T3については考慮されていない。つまり、電源電圧の起動時にT2のベースに入力される信号が中間電位を示した場合でも、プルダウンにより電荷を放電することができない。したがって、出力負荷に電流が流れて負荷を駆動してしまい、誤動作を招く可能性がある。また、特許文献3によると、トランジスタT2のベースの電位が約1.0Vの状態でT2がオフに制御されると記載されている。この電位によってT2、T3のコレクタ−エミッタ間に電流が流れ、出力負荷に電流が流れて負荷を駆動してしまい、誤動作を招く可能性もある。
【0015】
【特許文献1】特開平8−265132号公報
【特許文献2】特開平6−268494号公報
【特許文献3】特開平3−235416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のように、従来技術の半導体集積回路では、電源起動時のリーク電流によってトランジスタに誤作動が発生するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明にかかる半導体集積回路は、第1の制御信号を出力する出力信号制御部(例えば、本発明の実施の形態1における論理回路209)と、第1の端子が高電位側の電源(例えば、本発明の実施の形態1における電源電圧VCC)に接続され、第2の端子が外部出力端子(例えば、本発明の実施の形態1における出力端子VOUT)に接続され、第3の端子に入力される前記第1の制御信号に応じてオンオフが制御される第1のトランジスタ(例えば、本発明の実施の形態1におけるNPN型バイポーラトランジスタ201)と、一方の端子が前記第3の端子と前記出力信号制御部との間のノードに接続され、他方の端子が前記高電位側の電源及び低電位側の電源のいずれか一方に接続された第1のトランジスタスイッチ(例えば、本発明の実施の形態1におけるトランジスタスイッチ203)と、前記第1のトランジスタスイッチに並列に接続された第1の抵抗素子(例えば、本発明の実施の形態1における抵抗素子205)と、を備える。
【0018】
上述のような構成により、電源起動時のリーク電流によるトランジスタの誤作動を防止することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、電源起動時のリーク電流によるトランジスタの誤作動を防止することが可能な半導体集積回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0021】
発明の実施の形態1
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1に本発明の実施の形態1にかかる出力回路(半導体集積回路)500の図を示す。図1に示すように、出力回路500は、各機能ブロックに電源を供給する電源供給回路208と、論理回路209と、出力段のトランジスタを駆動する駆動回路210と、NPN型バイポーラトランジスタ201(第1のトランジスタ)と、NPN型バイポーラトランジスタ202(第2のトランジスタ)と、トランジスタスイッチ203(第1のトランジスタスイッチ)と、トランジスタスイッチ204(第2のトランジスタスイッチ)と、抵抗素子205(第1の抵抗素子)と、を備える。
【0022】
電源電圧端子VCCは、電源供給回路208の高電位側の端子と、NPN型バイポーラトランジスタ201のコレクタに接続される。接地電圧端子GNDは、電源供給回路208の低電位側の端子と、論理回路209の低電位側の端子と、駆動回路210の低電位側の端子(不図示)と、駆動回路211の低電位側の端子(不図示)と、NPN型バイポーラトランジスタ202のエミッタ(第2の端子)と、トランジスタスイッチ203のソースと、トランジスタスイッチ204のソースと、抵抗素子205の一方の端子と、に接続される。電源供給回路208の出力端子は、論理回路209の高電位側の端子と、駆動回路210の高電位側の端子(不図示)と、駆動回路211の高電位側の端子(不図示)と、に接続される。
【0023】
入力端子VINは、論理回路209の入力端子に接続される。論理回路209の出力端子は、ノード206を介して駆動回路210の入力端子に接続される。また、論理回路209の他の出力端子は、それぞれ駆動回路211の入力端子と、トランジスタスイッチ203のゲートと、トランジスタスイッチ204のゲートと、出力端子VOUTと、に接続される。駆動回路210の出力端子は、ノード207を介してNPN型バイポーラトランジスタ201のベース(第3の端子)と、トランジスタスイッチ203のドレインと、抵抗素子205の他方の端子と、に接続される。駆動回路211の出力端子は、NPN型バイポーラトランジスタ202のベース(第3の端子)と、トランジスタスイッチ204のドレインと、に接続される。NPN型バイポーラトランジスタ201のエミッタ(第2の端子)と、NPN型バイポーラトランジスタ202のコレクタ(第1の端子)は、出力端子VOUTに接続される。
【0024】
次に、出力回路500の動作の一例について説明する。外部からの入力信号が、出力回路500の入力端子VINに入力される。出力回路500において、この信号は、論理回路209に入力される。論理回路209から出力された信号は、ノード206を介して駆動回路210に入力される。論理回路209から出力された他の信号は、それぞれ駆動回路211と、トランジスタスイッチ203のゲートと、トランジスタスイッチ204のゲートと、出力端子VOUTに入力される。
【0025】
ここで、入力端子VINにハイレベルの信号が入力された場合、論理回路209から出力されたロウレベルの信号が、ノード206を介して駆動回路210に入力される。そして、駆動回路210からハイレベルの信号が出力される。このとき、駆動回路210から出力されたハイレベルの信号が、NPN型バイポーラトランジスタ201のベースに入力されることにより、コレクタ−エミッタ間の接続状態がオンし、電源電圧端子VCCから出力端子VOUTへ電源が供給される。一方、論理回路209から出力されたハイレベルの信号が駆動回路211に入力される。そして、駆動回路211からロウレベルの信号が出力される。このとき、駆動回路211から出力されたロウレベルの信号が、NPN型バイポーラトランジスタ202のベースに入力されることにより、コレクタ−エミッタ間の接続状態がオフする。したがって、出力端子VOUTの電圧値はハイレベルを示す。
【0026】
次に、入力端子VINにロウレベルの信号が入力された場合、論理回路209から出力されたハイレベルの信号が、ノード206を介して駆動回路210に入力される。そして、駆動回路210からロウレベルの信号が出力される。このとき、駆動回路210から出力されたロウレベルの信号が、NPN型バイポーラトランジスタ201のベースに入力されることにより、コレクタ−エミッタ間の接続状態がオフする。一方、論理回路209から出力されたロウレベルの信号が駆動回路211に入力される。そして、駆動回路211からハイレベルの信号が出力される。このとき、駆動回路211から出力されたハイレベルの信号が、NPN型バイポーラトランジスタ202のベースに入力されることにより、コレクタ−エミッタ間の接続状態がオンし、出力端子VOUTから接地電圧端子へ電荷が放電される。したがって、出力端子VOUTの電圧値はロウレベルを示す。
【0027】
次に、入力端子VINの信号がロウレベルからハイレベルに遷移する場合について考える。この場合、NPN型バイポーラトランジスタ202のコレクタ−エミッタ間の接続状態がオンからオフに遷移し、NPN型バイポーラトランジスタ201のコレクタ−エミッタ間の接続状態がオフからオンに遷移する。このとき、NPN型バイポーラトランジスタ202の接続状態を安定的にオフに制御するために、駆動回路211の出力信号(第2の制御信号)をロウレベルに固定する必要がある。ここで、トランジスタスイッチ204のソース−ドレイン間の接続状態をオンしてプルダウン制御することにより、NPN型バイポーラトランジスタ202のベースに入力される信号の電圧値を安定的にロウレベルにすることが可能である。
【0028】
一方、入力端子VINの信号がハイレベルからロウレベルに遷移する場合について考える。この場合、NPN型バイポーラトランジスタ201のコレクタ−エミッタ間の接続状態がオンからオフに遷移し、NPN型バイポーラトランジスタ202のコレクタ−エミッタ間の接続状態がオフからオンに遷移する。このとき、NPN型バイポーラトランジスタ201の接続状態を安定的にオフに制御するために、駆動回路210の出力信号(第1の制御信号)をロウレベルに固定する必要がある。ここで、トランジスタスイッチ203のソース−ドレイン間の接続状態をオンしてプルダウン制御することにより、NPN型バイポーラトランジスタ201のベースに入力される信号の電圧値を安定的にロウレベルにすることが可能である。このような回路動作により、安定したスイッチング動作を可能にしている。
【0029】
次に、電源電圧起動時の低い電圧(例えばVCC=1V付近以下)の場合において、論理回路209や駆動回路210、211を構成するトランジスタ(例えばPchMOSトランジスタ)のVgs(ゲート−ソース間電圧)は、Vgs=VCCであるため閾値電圧VTよりも低い。したがって、トランジスタは弱反転領域内の動作を示す。
【0030】
PchMOSトランジスタの場合を例に説明する。弱反転領域(非飽和領域)においては、PchMOSトランジスタのソース−ドレイン間に流れる電流が微小である。したがって、電源電圧が上昇してVgsが閾値電圧VTに達するまでは所望の論理信号は得られず、ロウレベルでもハイレベルでもない中間電位をもつ可能性がある。そのため、NPN型バイポーラトランジスタ201のコレクタ−エミッタ間の接続状態をオフに制御したい場合でも、ベースに中間電位が入力されてオンしてしまう可能性がある。なお、このように閾値電圧以下で流れ込む電流をリーク電流と呼ぶことにする。
【0031】
このように電源電圧の起動時には、負荷への出力信号をオフに制御しても、リーク電流の影響によりNPN型バイポーラトランジスタ201がオンしてしまう可能性がある。それにより、出力負荷に電流が流れて負荷を駆動してしまい、誤動作を招くという問題があった。また、プルダウン用に備えられたトランジスタスイッチ203においても、電源起動時にはゲートに入力される信号の電位が中間電位である可能性が高く、ソース−ドレイン間を流れる電流が少なくなる。したがって、電源電圧の起動時には、トランジスタスイッチ203によるプルダウンの効果を期待できない。そこで、プルダウン用に抵抗素子205を備えることにより、これらのリーク電流を除去することが可能である。つまり、電源起動時において、トランジスタのように弱反転領域による影響を受けることなくリーク電流を除去することが可能である。
【0032】
図2〜図5は、入力端子VINにロウレベルの信号が入力された場合の、電源電圧起動時における入力端子VINの電圧、ノード206の電圧、ノード207の電圧、出力端子VOUTの電圧を示した図である。図2に示すように、入力端子VINの電圧はロウレベルに保持されている。ここで、電源電圧起動時の低い電圧(VCC=1V付近以下)の場合において、論理回路209に備えられたトランジスタ(例えばPchMOSトランジスタ)のVgs(ゲート−ソース間電圧)は、Vgs=VCCであるため閾値電圧VTよりも低い。つまり、論理回路209を構成するPchMOSトランジスタは、弱反転領域内の動作を示す。
【0033】
弱反転領域(非飽和領域)においては、PchMOSトランジスタのソース−ドレイン間に流れる電流が微小である。したがって、図3に示すように論理回路209から出力される信号は、電源電圧に応じた電圧レベルまで電位が到達せず中間電位を示す。しかし、プルダウン用の抵抗素子205が接続されたノード207の電圧は、図4に示すように、ノード206の中間電位の影響を受けることなく常にロウレベルに保持される。
【0034】
したがって、電源源起動時においても、NPN型バイポーラトランジスタ201を安定的にオフに制御することができるため、図5に示すように出力端子VOUTの電圧もロウレベルに保持することができる。なお、プルダウン用の抵抗素子205は、NPN型バイポーラトランジスタ201のベースに入力される信号がハイレベルの場合は、実質的にハイインピーダンス状態を示すとともに、NPN型バイポーラトランジスタ201のベースに入力される信号がロウレベルの場合は、プルダウン制御が可能な抵抗値に設定しておく必要がある。
【0035】
また、図6及び図7に、直流電流における電源電圧VCCと出力端子VOUTの電圧との関係を示す。図6は従来技術の回路を用いた場合の例(プルダウン用の抵抗素子を有しない)を示し、図7は本発明の実施形態の回路を用いた場合の例(プルダウン用の抵抗素子を有する)を示す。図6の場合は、低VCCにおいてVOUTの電圧が一時的に上昇している。一方、図7の場合は、VOUTの電圧が常にロウレベルに保持されている。
【0036】
また、図8及び図9に、電源電圧起動時における出力端子VOUTの電圧値の変化を示す。なお、図8及び図9は、電源電圧(VCC)を一定の割合で増加させ(例えば3V/us)、VCCがある電圧レベル(例えば3V)に到達して一定期間経過後、再びVCCを一定の割合で減少させた場合(例えば−3V/us)における出力端子VOUTの電圧の変化を示す。なお、図8は従来技術の回路を用いた場合の例(プルダウン用の抵抗素子を有しない)を示し、図9は本発明の実施形態の回路を用いた場合の例(プルダウン用の抵抗素子を有する)を示す。図8に示すように、電源電圧が一定の割合で増加している状態において、出力端子VOUTの電圧が一時的に上昇している。一方、図9の場合は、そのような現象は改善されている。
【0037】
このように、プルダウン用の抵抗素子205を備えることにより、電源電圧起動時において発生するリーク電流を放電することができ、NPN型バイポーラトランジスタ201の誤作動を防止することが可能である。その結果、電源電圧起動時の突発的な出力負荷の誤動作の防止が可能である。また、抵抗素子205の抵抗値を予め調整しておくことによりNPN型バイポーラトランジスタ201のスイッチング動作に影響を与えることなく、高速な動作が可能である。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、NPN型バイポーラトランジスタ201、202のベースに制御信号を供給する論理回路の構成は上記実施の形態の形式に限られるものではなく、例えば、フォトダイオード等を備えた回路構成も可能である。図10に、フォトダイオードを備えた出力回路500aの例を示す。図1に示す回路と比較して、さらにフォトダイオード217と、アンプ回路212、213と、抵抗素子214、215、216と、コンパレータ218と、を備える。
【0039】
図10に示すように、アンプ回路213の一方の入力端子にフォトダイオード217の出力端子が接続され、フォトダイオード217の光入力の状態に応じて、コンパレータ回路218から出力される信号(VIN)が制御される。このような回路構成においても、図1の場合と同様に、プルダウン用の抵抗素子205を備えることにより、電源電圧起動時において発生するリーク電流を放電することができる。したがって、NPN型バイポーラトランジスタ201の誤作動を防ぐことが可能である
【0040】
発明の実施の形態2
図11に本発明の実施の形態2にかかる出力回路500bの図を示す。図11に示す回路は、図1に示す回路と比較して、さらにNPN型バイポーラトランジスタ303、304と、トランジスタスイッチ305、306と、抵抗素子310、311と、を備える。NPN型バイポーラトランジスタ303のコレクタは電源電圧端子VCCに接続される。NPN型バイポーラトランジスタ303のエミッタは、NPN型バイポーラトランジスタ201のベースと、トランジスタスイッチ305のドレインと、抵抗素子310の一方の端子と、抵抗素子311の一方の端子に接続される。抵抗素子310の他方の端子は出力端子VOUTに接続される。抵抗素子311の他方の端子とNPN型バイポーラトランジスタ303のベースは、駆動回路210の出力端子に接続される。つまり、NPN型バイポーラトランジスタ201と303はダーリントン接続されている。トランジスタスイッチ305のゲートは、トランジスタスイッチ203のゲートに接続される。トランジスタスイッチ305のソースは、接地電圧端子GNDに接続される。
【0041】
NPN型バイポーラトランジスタ304のコレクタは電源電圧端子VCCに接続される。NPN型バイポーラトランジスタ304のエミッタは、NPN型バイポーラトランジスタ202のベースと、トランジスタスイッチ306のドレインに接続される。NPN型バイポーラトランジスタ304のベースは、駆動回路211の出力端子に接続される。つまり、NPN型バイポーラトランジスタ202と304はダーリントン接続されている。トランジスタスイッチ306のゲートは、トランジスタスイッチ204のゲートに接続される。トランジスタスイッチ306のソースは、接地電圧端子GNDに接続される。その他の回路構成は、図1の回路と同様であるため省略する。
【0042】
ここで、出力トランジスタであるNPN型バイポーラトランジスタ201と303はダーリントン構成であるため、出力端子負荷への駆動力が増す。しかし、それと同時にリーク電流による出力負荷の誤動作を招き易い。この解決策として図11は、本発明の実施の形態1で提案されたプルダウン用の抵抗素子205だけでなく、さらに抵抗素子310、311を備える。このように抵抗素子310、311を備えることにより、オンしているNPN型バイポーラトランジスタ202を介して電源電圧端子GNDへリーク電流を放電することができ、NPN型バイポーラトランジスタ201の誤動作を防ぐことが可能である。
【0043】
以上のように、電源電圧起動時(例えばVCC=1V付近以下)に、駆動回路210から発生するリーク電流をプルダウン用の抵抗素子205や、トランジスタスイッチ203で放電し切れない場合、リーク電流によってNPN型バイポーラトランジスタ201、303はオンする。その結果、リーク電流はhFE1、hFE2をそれぞれのトランジスタの電流増幅率とすると、hFE1×hFE2の増幅率で増幅されて負荷に供給されるため誤動作を招く可能性がある。このような場合、図11の回路に示すように抵抗素子310、311を備えることにより、オンしているNPN型バイポーラトランジスタ202を介して電源電圧端子GNDへリーク電流を放電することができ、NPN型バイポーラトランジスタ201の誤動作を防ぐことが可能である。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本発明の実施の形態では、出力トランジスタとしてNPN型バイポーラトランジスタを使用した例について説明したが、これに限られず、MOSトランジスタ等も使用可能である。
【0045】
また本発明の実施の形態では、ロウレベルの制御信号によって出力トランジスタをオフに制御する場合の例について説明したが、これに限られず、ハイレベルの制御信号によって出力トランジスタをオフに制御する場合の回路構成も可能である。なおその場合は、プルダウン用のスイッチトランジスタ、抵抗素子は電源電圧端子に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる半導体集積回路を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる半導体集積回路の電源電圧と入力端子電圧との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる半導体集積回路の電源電圧とノード206の電圧との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる半導体集積回路の電源電圧とノード207の電圧との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる半導体集積回路の電源電圧と出力端子電圧との関係を示す図である。
【図6】従来の半導体集積回路の電源電圧と出力端子電圧との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1にかかる半導体集積回路の電源電圧と出力端子電圧との関係を示す図である。
【図8】従来の半導体集積回路の電源電圧と出力端子電圧との関係を示すタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施の形態1にかかる半導体集積回路の電源電圧と出力端子電圧との関係を示すタイミングチャートである。
【図10】本発明の実施の形態1にかかる半導体集積回路を示す回路図である。
【図11】本発明の実施の形態2にかかる半導体集積回路を示す回路図である。
【図12】従来(特許文献1)の半導体集積回路を示す回路図である。
【図13】従来の半導体集積回路の電源電圧と入力端子電圧との関係を示す図である。
【図14】従来の半導体集積回路の電源電圧と入力端子電圧との関係を示す図である。
【図15】従来の半導体集積回路の電源電圧とINV回路107の出力電圧との関係を示す図である。
【図16】従来の半導体集積回路の電源電圧とNOR回路105の出力電圧との関係を示す図である。
【図17】従来(特許文献2)の半導体集積回路を示す回路図である。
【図18】従来(特許文献3)の半導体集積回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0047】
201 NPN型バイポーラトランジスタ
202 NPN型バイポーラトランジスタ
203 トランジスタスイッチ
204 トランジスタスイッチ
205 抵抗素子
206 ノード
207 ノード
208 電源供給回路
209 論理回路
210 駆動回路
211 駆動回路
212 アンプ回路
213 アンプ回路
214 抵抗素子
215 抵抗素子
216 抵抗素子
217 フォトダイオード
218 コンパレータ回路
303 NPN型バイポーラトランジスタ
304 NPN型バイポーラトランジスタ
305 トランジスタスイッチ
306 トランジスタスイッチ
310 抵抗素子
311 抵抗素子
500 出力回路
500a 出力回路
500b 出力回路
VCC 電源電圧端子
GND 接地電圧端子
VIN 入力端子
VOUT 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御信号を出力する出力信号制御部と、
第1の端子が高電位側電源に接続され、第2の端子が外部出力端子に接続され、第3の端子に入力される前記第1の制御信号に応じてオンオフが制御される第1のトランジスタと、
一方の端子が前記第3の端子と前記出力信号制御部との間のノードに接続され、他方の端子が前記高電位側電源及び低電位側電源のいずれか一方に接続された第1のトランジスタスイッチと、
前記第1のトランジスタスイッチに並列に接続された第1の抵抗素子と、を備えた半導体集積回路。
【請求項2】
第1の端子が前記外部出力端子に接続され、第2の端子が前記低電位側電源に接続され、前記出力信号制御部から第3の端子に入力される第2の制御信号に応じてオンオフが制御される第2のトランジスタをさらに備え、
前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとはインバータを構成することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
一方の端子が前記第2のトランジスタの第3の端子と前記出力信号制御部との間のノードに接続され、他方の端子が前記高電位側電源及び前記低電位側電源のいずれか一方に接続された第2のトランジスタスイッチと、
前記第2のトランジスタスイッチに並列に接続された第2の抵抗素子と、を備えた請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第1及び第2のトランジスタは、NPN型バイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1のトランジスタスイッチと前記第1の抵抗素子の他方の端子は、それぞれ前記低電位側電源に接続されることを特徴とする請求項4に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記第2のトランジスタスイッチと前記第2の抵抗素子の他方の端子は、それぞれ前記低電位側電源に接続されることを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記第1のトランジスタの第3の端子と前記出力端子との間に接続された第3の抵抗素子をさらに備えた請求項4〜7のいずれか一項に記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−118719(P2010−118719A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288369(P2008−288369)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】