説明

厚み検出装置および研削機

【課題】保護テープが貼着された被加工物の厚みを正確に検出し、被加工面に傷を付けることがない厚み検出装置および厚み検出装置を装備した研削機を提供する。
【解決手段】チャックテーブルに保持され加工され厚みが減少する被加工物の厚みを検出する厚み検出装置であって、被加工物の上面および下面で反射する反射光を受光したイメージセンサーの検出信号に基づき分光干渉波形を求め、分光干渉波形と理論上の波形関数に基づき波形解析を実行し、被加工物の上面および下面で反射した反射光間の光路長差に基づき被加工物の厚みを求める第1の演算手段と、イメージセンサーの検出信号に基づき特定波長を通過する分光干渉波形の数をカウントする第2の演算手段とを備え、被加工物の厚みが所定の厚みに達するまでは第1の演算手段により被加工物の厚みを求め、被加工物の厚みが所定の厚みに達したならば第2の演算手段により被加工物の厚み減少量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物の厚みを検出するための厚み検出装置および厚み検出装置を装備した研削機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイス製造工程においては、略円板形状であるウエーハの表面に格子状に形成されたストリート(分割予定ライン)によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイスを形成し、該デバイスが形成された各領域を分割予定ラインに沿って分割することにより個々のデバイスを製造している。なお、ウエーハは、一般に個々のデバイスに分割する前に裏面を研削機によって研削して所定の厚みに形成されている。
【0003】
ウエーハの厚みを検出する方法としては、表面高さを検出する計測用の第1の接触針をウエーハを保持するチャックテーブルの保持面に接触させてチャックテーブルの保持面の高さ位置HIを求め、次にチャックテーブルの保持面に保持されたウエーハの被研削面(上面)に第2の接触針を接触させてウエーハの上面の高さ位置H2を検出しつつ、H2−HIを演算してウエーハの厚みTを求めている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2993821号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上述したウエーハの厚みを検出する方法においては、チャックテーブルの保持面に保持されたウエーハの高さ位置とチャックテーブルの保持面の高さ位置の差に基づいてウエーハの厚みを求めるので、ウエーハの表面に形成されたデバイスを保護するために貼着された保護テープの厚みが研削ホイールの押圧力によって変化することによって、ウエーハの表面から保護テープを剥離した後にウエーハの厚みを計測すると、ウエーハが設定された厚みに仕上がっていないという問題がある。
また、上述したウエーハの厚みを検出する方法においては、計測用の接触針をウエーハの被研削面に接触させるために、被研削面にリング状の傷がつきウエーハの品質を低下させるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工面と反対側の面に保護テープが貼着された被加工物であっても被加工物の厚みを正確に検出することができるとともに、被加工物の被加工面に傷を付けることがない厚み検出装置および厚み検出装置を装備した研削機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、チャックテーブルに保持され加工されて厚みが減少する被加工物の厚みを検出するための厚み検出装置において、
被加工物に対して透過性を有する所定の波長領域を備えた光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を該チャックテーブルに保持された被加工物に導く対物レンズと、
該チャックテーブルに保持された被加工物の上面および下面で反射し該対物レンズと該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて被加工物の厚みを求める制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、被加工物の上面で反射した反射光の光路長と被加工物の下面で反射した反射光の光路長との光路長差に基づいて被加工物の厚みを求める第1の演算手段と、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて特定波長を通過する分光干渉波形の数をカウントする第2の演算手段とを備え、被加工物の厚みが所定の切り替え厚みに達するまでは該第1の演算手段によって被加工物の厚みを求め、被加工物の厚みが所定の切り替え厚みに達したならば該第2の演算手段によって被加工物の厚み減少量を求める、
ことを特徴とする厚み検出装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の厚みを検出する厚み検出装置と、を具備する研削機において、
該厚み検出装置は、被加工物に対して透過性を有する所定の波長領域を備えた光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く第1の光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を該チャックテーブルに保持された被加工物に導く対物レンズと、
該チャックテーブルに保持された被加工物の上面および下面で反射し該対物レンズと該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて被加工物の厚みを求める制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、被加工物の上面で反射した反射光の光路長と被加工物の下面で反射した反射光の光路長との光路長差に基づいて被加工物の厚みを求める第1の演算手段と、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて特定波長を通過する分光干渉波形の数をカウントする第2の演算手段とを備え、被加工物の厚みが所定の切り替え厚みに達するまでは該第1の演算手段によって被加工物の厚みを求め、被加工物の厚みが所定の切り替え厚みに達したならば該第2の演算手段によって被加工物の研削量を求める、
ことを特徴とする研削機が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明による厚み検出装置においては、制御手段はイメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、被加工物の上面で反射した反射光の光路長と被加工物の下面で反射した反射光の光路長との光路長差に基づいて被加工物の厚みを求める第1の演算手段と、イメージセンサーからの検出信号に基づいて特定波長を通過する分光干渉波形の数をカウントする第2の演算手段とを備え、被加工物の厚みが所定の切り替え厚みに達するまでは第1の演算手段によって被加工物の厚みを求め、被加工物の厚みが所定の切り替え厚みに達したならば第2の演算手段によって被加工物の厚み減少量(研削量)を求めるようにしたので、被加工物の厚みが薄くなっても被加工物の厚み減少量(研削量)を正確に計測することができ、被加工物を数μmの厚みまで正確に研削することができる。
また、本発明による厚み検出装置は非接触式であるため、被加工物の被研削面に傷がつくことはない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従って構成された研削機の斜視図。
【図2】図1に示す研削機に装備される厚み検出装置のブロック構成図。
【図3】図2に示す厚み検出装置を構成する制御手段によって求められる厚みが10μmのシリコン基板の分光干渉波形を示す説明図。
【図4】図2に示す厚み検出装置を構成する制御手段によって求められる厚みが10μmのシリコン基板の上面から下面までの光路長差を示す光路長差の説明図。
【図5】図2に示す厚み検出装置を構成する制御手段によって求められる厚みが2μmのシリコン基板の分光干渉波形を示す説明図。
【図6】図2に示す厚み検出装置を構成する制御手段によって求められる厚みが2μmのシリコン基板の上面から下面までの光路長差を示す光路長差の説明図。
【図7】図2に示す厚み検出装置を用いて1000nmの波長においてシリコンウエーハの厚みを5μmから0μm近傍まで研削した際の干渉波形発生の様子を示す図。
【図8】図1に示す研削機によって研削されるウエーハの斜視図および要部を拡大して示す断面図。
【図9】図1に示す研削機によって実施する研削工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成された厚み検出装置および厚み検出装置を装備した研削機の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本発明に従って構成された厚み検出装置を装備した研削機の斜視図が示されている。図1に示す研削機1は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。この装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図1において右上端)に設けられ上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に研削手段としての研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0012】
研削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット4を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には前方に突出した支持部313が設けられている。この支持部313に研削手段としてのスピンドルユニット4が取り付けられる。
【0013】
研削手段としてのスピンドルユニット4は、支持部313に装着されたスピンドルハウジング41と、該スピンドルハウジング41に回転自在に配設された回転スピンドル42と、該回転スピンドル42を回転駆動するための駆動源としてのサーボモータ43とを具備している。スピンドルハウジング41に回転可能に支持された回転スピンドル42は、一端部(図1において下端部)がスピンドルハウジング41の下端から突出して配設されており、その一端(図1において下端)にホイールマウント44が設けられている。そして、このホイールマウント44の下面に研削ホイール5が取り付けられる。この研削ホイール5は、環状の砥石基台51と、該砥石基台51の下面に装着された研削砥石52からなる複数のセグメントとによって構成されており、砥石基台51が締結ねじ53によってホイールマウント44に装着される。上記サーボモータ43は、後述する制御手段10によって制御される。
【0014】
図示の研削機1は、上記研削ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる研削ユニット送り機構6を備えている。この研削ユニット送り機構6は、直立壁22の前側に配設され実質上鉛直に延びる雄ねじロッド61を具備している。この雄ねじロッド61は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材62および63によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材62には雄ねじロッド61を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ64が配設されており、このパルスモータ64の出力軸が雄ねじロッド61に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には鉛直方向に延びる貫通雌ねじ穴(図示していない)が形成されており、この雌ねじ穴に上記雄ねじロッド61が螺合せしめられている。従って、パルスモータ64が正転すると移動基台31即ち研磨ユニット3が下降即ち前進せしめられ、パルスモータ64が逆転すると移動基台31即ち研削ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。なお、パルスモータ64は、後述する制御手段10によって制御される。
【0015】
上記ハウジング2の主部21にはチャックテーブル機構7が配設されている。チャックテーブル機構7は、チャックテーブル71と、該チャックテーブル71の周囲を覆うカバー部材72と、該カバー部材72の前後に配設された蛇腹手段73および74を具備している。チャックテーブル71は、図示しない回転駆動手段によって回転せしめられるようになっており、その上面(保持面)に被加工物としてのウエーハ11を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持するように構成されている。なお、ウエーハ11の表面には保護部材としての保護テープ12が貼着され、この保護テープ12側がチャックテーブル71の上面(保持面)に保持される。また、チャックテーブル71は、図示しないチャックテーブル移動手段によって図1に示す被加工物載置域70aと上記スピンドルユニット4を構成する研削ホイール5と対向する研削域70bとの間で移動せしめられる。蛇腹手段73および74はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段73の前端は主部21の前面壁に固定され、後端はカバー部材72の前端面に固定されている。蛇腹手段74の前端はカバー部材72の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。チャックテーブル71が矢印71aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段73が伸張されて蛇腹手段74が収縮され、チャックテーブル71が矢印71bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段73が収縮されて蛇腹手段74が伸張せしめられる。
【0016】
図示の研削機1は、上記チャックテーブル71に保持された被加工物の厚みを検出するための厚み検出装置8を具備している。この厚み検出装置8は、上記カバー部材72に回動可能に配設された支持手段80によって所定の半径を持って旋回できるように支持されている。以下、厚み検出装置8について、図2を参照して説明する。
【0017】
図示の実施形態における厚み検出装置8は、被加工物としてのウエーハ11に対して透過性を有する所定の波長領域を備えた光を発する発光源81と、該発光源81からの光を第1の経路8aに導くとともに該第1の経路8aを逆行する反射光を第2の経路8bに導く光分岐手段82と、第1の経路8aに導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズ83と、該コリメーションレンズ83によって平行光に形成された光をチャックテーブル71に保持された被加工物としてのウエーハ11に導く対物レンズ84とを具備している。
【0018】
発光源81は、例えば波長が900〜1070nm領域の光を発光するLED、SLD、LD、ハロゲン電源、ASE電源、スーパーコンティニアム電源を用いることができる。上記第1の光分岐手段82は、偏波保持ファイバーカプラ、偏波保持ファイバーサーキュレーター、シングルモードファイバーカプラ、シングルモードファイバーカプラサーキュレーターなどを用いることができる。なお、上記発光源81から光分岐手段82までの経路および第1の経路8aは、光ファイバーによって構成されている。
【0019】
上記第2の経路8bには、コリメーションレンズ85と回折格子86およびラインイメージセンサー87が配設されている。コリメーションレンズ85は、チャックテーブル71に保持されたウエーハ11の上面および下面で反射し対物レンズ84とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して光分岐手段82から第2の経路8bに導かれた反射光を平行光に形成する。上記回折格子86は、コリメーションレンズ85によって平行光に形成された上記両反射光の干渉を回折し、各波長に対応する回折信号をラインイメージセンサー87に送る。上記ラインイメージセンサー87は、回折格子86によって回折した反射光の各波長における光強度を検出し、検出信号を制御手段10に送る。
【0020】
制御手段10は、ラインイメージセンサー87による検出信号から分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、チャックテーブル71に保持されたウエーハ11の上面および下面で反射し対物レンズ84とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して光分岐手段82から第2の経路8bに導かれた反射光の光路長差(d)を求め、該光路長差(d)に基づいてウエーハ11の厚み(t)を求める。即ち、制御手段10は、ラインイメージセンサー87からの検出信号に基づいて図3に示すような分光干渉波形を求める。図3は、シリコンウエーハの厚みが10μmにおける分光干渉波形を示しており、横軸は反射光の波長(nm)を示し、縦軸は光強度を示している。
【0021】
以下、制御手段10が上記分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて実行する波形解析の一例について説明する。
制御手段10は、上記分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行する。この波形解析は、例えばフーリエ変換理論やウエーブレット変換理論に基づいて実行することができるが、以下に述べる実施形態においては下記数式1、数式2、数式3に示すフーリエ変換式を用いた例について説明する。
【0022】
【数1】

【0023】
【数2】

【0024】
【数3】

【0025】
上記数式において、λは波長、dは上記光路長差(d)、W(λ)は窓関数である。
上記数式1は、cosの理論波形と上記分光干渉波形(I(λn))との比較で最も波の周期が近い(相関性が高い)、即ち分光干渉波形と理論上の波形関数との相関係数が高い光路長差(d)を求める。また、上記数式2は、sinの理論波形と上記分光干渉波形(I(λn))との比較で最も波の周期が近い(相関性が高い)、即ち分光干渉波形と理論上の波形関数との相関係数が光路長差(d)を求める。そして、上記数式3は、数式1の結果と数式2の結果の平均値を求める。
【0026】
制御手段10は、上記数式1、数式2、数式3に基づく演算を実行することにより、図4に示すように信号強度が光路長差(d)を求める(第1の演算手段)。図4において横軸は光路長差(d)を示し、縦軸は信号強度を示している。図4に示す例においては、光路長差(d)が10μmの位置で信号強度が高いピーク波形が表れている。この光路長差(d)がウエーハ11の厚み(t)に相当する。
【0027】
しかるに、ウエーハ11の厚み(t)が薄くなると、所定波長領域における分光干渉波形の数が減少するため、フーリエ変換理論等による波形解析後のピーク先鋭度が低下して、厚みに換算した後の精度が低下する。図5は、シリコンウエーハの厚みが2μmにおける分光干渉波形を示しており、横軸は反射光の波長(nm)を示し、縦軸は光強度を示している。図5に示すようにシリコンウエーハの厚みが2μmにおける分光干渉波形は、分光干渉波の間隔が伸びて所定波長領域(900〜1070nm)における分光干渉波形の数が減少する。このように所定波長領域(900〜1070nm)における分光干渉波形の数が減少すると、上記数式1、数式2、数式3に基づく演算結果による信号強度によって示される光路長差(d)が図6に示すようにノイズが多くピーク波形を読み取る精度が大幅に悪化する。従って、ウエーハの厚みが所定の切り替え厚み(例えば5μm)以下になると、上記数式1、数式2、数式3に基づく演算を実行することにより光路長差(d)を求めてもウエーハの厚みを正確に検出することができない。そこで、本発明においては、特定波長を通過する干渉波形の数をカウントすることにより、ウエーハの厚みを求める。図7は、1000nmの波長においてシリコンウエーハの厚みを5μmから0μm近傍まで研削した際の干渉波形が通過する様子を示すもので、横軸はシリコンウエーハの厚み(μm)、縦軸は光強度を示している。図7から判るように、シリコンウエーハの場合、厚みが1μm減少する毎に6個の分光干渉波形のピークが通過する。従って、シリコンウエーハの厚みが0.167μm減少する毎に1個の分光干渉波形のピークが通過することになる。
【0028】
ここで、分光干渉波形のピークが表れる条件について説明する。
分光干渉波形のピークは、r(屈折率×2)×2d(光路長差)=λ(波長)×n(整数)の時に発生する。
r(屈折率×2)をシリコンの屈折率(1.5)×2、d(光路長差)をシリコンの厚み(t)、λ(波長)を1μm(1000nm)とすると、シリコンの厚みが5μmで分光干渉波形のピークが表れた場合、(1.5×2)×2×5=1×nで、n=30となる。
よって、次の分光干渉波形のピーク(n=29)が表れるシリコンの厚み(t)即ち光路長差(d)は、(1.5×2)×2×d=1×29で、d=4.833μmとなる。
よって、分光干渉波形のピーク間隔はシリコンウエーハの厚みが0.167μm減少する毎に1個発生することになる。
従って、所定波長(例えば1000nm)において干渉波形のピークが通過した数をカウントすることにより、研削量(即ち厚み減少量)を計測することができる(第2の演算手段)。
【0029】
図示の研削機1は以上のように構成されており、以下、研削機1を用いてウエーハを所定の厚みに研削する研削方法について説明する。
ここで、ウエーハ11について、図8を参照して説明する。図8の(a)にはウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図が示されており、図8の(b)には図8の(a)に示す半導体ウエーハの要部拡大断面図が示されている。図8の(a)および図8の(b)に示す半導体ウエーハ11は、シリコン基板110の表面110aに絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された積層体120によって複数のIC、LSI等のデバイス130がマトリックス状に形成されている。このように構成されたウエーハ11は、図1に示すように表面に保護テープ12が貼着され、研削機1における被加工物載置域70aに位置付けられているチャックテーブル71上に保護テープ12が載置される。そして、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル71上に吸引保持される。従って、チャックテーブル71上に吸引保持されたウエーハ11は、シリコン基板110の裏面110bが上側となる。チャックテーブル71上にウエーハ11を吸引保持したならば、制御手段10は図示しない移動手段を作動して、チャックテーブル71を図1において矢印71aで示す方向に移動して研削域70bに位置付け、図9に示すように研削ホイール5の複数の研削砥石52の外周縁がチャックテーブル71の回転中心を通過するように位置付ける。そして、厚み検出装置8をチャックテーブル71に保持されたウエーハ11の上方である計測位置に位置付ける。
【0030】
このように研削ホイール5とチャックテーブル71に保持されたウエーハ11が所定の位置関係にセットされ、厚み検出装置8を計測位置に位置付けたならば、制御手段10は図示しない回転駆動手段を駆動してチャックテーブル71を図9において矢印71cで示す方向に例えば300rpmの回転速度で回転するとともに、上記サーボモータ43を駆動して研削ホイール5を矢印5aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転する。そして、制御手段10は、研削ユニット送り機構6のパルスモータ64を正転駆動し研削ホイール5を下降(研削送り)して複数の研削砥石52をウエーハ11の上面であるシリコン基板110の裏面110bに所定の圧力で押圧する。この結果、シリコン基板110の裏面110bである被研削面が研削される(研削工程)。
【0031】
上記研削工程においては、ウエーハ11の加工時における厚み(t)が計測されている。即ち、制御手段10は第1の演算手段によって上述したように上記数式1、数式2、数式3に基づいて光路長差(d)を求め、ウエーハ11の加工時における厚み(t)を計測している。なお、この実施形態においてはウエーハ11の厚み(t)は、ウエーハ11を構成するシリコン基板110の裏面110bからシリコン基板110の表面110a(積層体120が積層された面)までの厚みとする。従って、制御手段10はシリコン基板110の裏面110bで反射した反射光とシリコン基板110の表面110aで反射した反射光に基づいて解析する。そして制御手段10は、ウエーハ11の厚み(t)が切り替え厚み(例えば5μm)に達したならば、第2の演算手段によって例えば波長が1000nmを通過する分光干渉波形のピークのカウントを開始する。本実施形態においては、分光干渉波形のピークは上述したようにシリコンウエーハの厚みが0.167μm減少する毎に1個通過するので、分光干渉波形のピークを6個カウントした時点で、ウエーハ11を構成するシリコン基板110の裏面110bが1μm研削されたことになる。従って、シリコン基板110の厚みを2μmにしたい場合には切り替え厚み(例えば5μm)から3μm研削すればよいので、分光干渉波形のピークを18個カウントする時点まで研削工程を継続する。そして、分光干渉波形のピークを18個カウントしたならば、制御手段10は研削ユニット送り機構6のパルスモータ64を逆転駆動し研削ホイール5を上昇せしめる。
【0032】
以上のように、上述した実施形態においてはウエーハの厚み(t)が所定の切り替え厚みに達するまでは上記第1の演算手段によって被加工物の厚みを求め、ウエーハの厚み(t)が所定の切り替え厚みに達したならば第2の演算手段によってウエーハの研削量即ち厚み減少量を求めるようにしたので、ウエーハの厚みが薄くなってもウエーハの研削量を正確に計測することができ、ウエーハを数μmの厚みまで正確に研削することができる。
また、上述した実施形態においては非接触式の厚み検出装置8によってウエーハ1の厚み(t)を計測しているので、ウエーハの被研削面に傷がつくことはない。
【符号の説明】
【0033】
1:研削機
2:装置ハウジング
3:研削ユニット
31:移動基台
4:スピンドルユニット
41:スピンドルハウジング
42:回転スピンドル
43:サーボモータ
44:ホイールマウント
5:研削ホイール
51:砥石基台
52:研削砥石
6:研削ユニット送り機構
64:パルスモータ
7:チャックテーブル機構
71:チャックテーブル
8:厚み検出装置
81:発光源
82:光分岐手段
83:コリメーションレンズ
84:対物レンズ
85:コリメーションレンズ
86:回折格子
87:ラインイメージセンサー
10:制御手段
11:ウエーハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックテーブルに保持され加工されて厚みが減少する被加工物の厚みを検出するための厚み検出装置において、
被加工物に対して透過性を有する所定の波長領域を備えた光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を該チャックテーブルに保持された被加工物に導く対物レンズと、
該チャックテーブルに保持された被加工物の上面および下面で反射し該対物レンズと該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて被加工物の厚みを求める制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、被加工物の上面で反射した反射光の光路長と被加工物の下面で反射した反射光の光路長との光路長差に基づいて被加工物の厚みを求める第1の演算手段と、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて特定波長を通過する干渉波形の数をカウントする第2の演算手段とを備え、被加工物の厚みが所定の切り替え厚みに達するまでは該第1の演算手段によって被加工物の厚みを求め、被加工物の厚みが所定の切り替え厚みに達したならば該第2の演算手段によって被加工物の厚み減少量を求める、
ことを特徴とする厚み検出装置。
【請求項2】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の厚みを検出する厚み検出装置と、を具備する研削機において、
該厚み検出装置は、被加工物に対して透過性を有する所定の波長領域を備えた光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を該チャックテーブルに保持された被加工物に導く対物レンズと、
該チャックテーブルに保持された被加工物の上面および下面で反射し該対物レンズと該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて被加工物の厚みを求める制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、被加工物の上面で反射した反射光の光路長と被加工物の下面で反射した反射光の光路長との光路長差に基づいて被加工物の厚みを求める第1の演算手段と、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて特定波長を通過する干渉波形の数をカウントする第2の演算手段とを備え、被加工物の厚みが所定の切り替え厚みに達するまでは該第1の演算手段によって被加工物の厚みを求め、被加工物の厚みが所定の切り替え厚みに達したならば該第2の演算手段によって被加工物の研削量を求める、
ことを特徴とする研削機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−21916(P2012−21916A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161007(P2010−161007)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】