説明

厚膜テープのためのイオンビームアシスト高温超伝導体(HTS)堆積

コーティングされるべき基板(116)上に照射するイオン源(132)或いは(218)が、MOCVD、PVD或いは超伝導体素材の調整のためのその他の処理を強化するのに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜高温超伝導体(HTS)をコーティングされた、増大された電流性能を持つワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
過去30年において、米国の電力量は最終エネルギー消費の25%から40%に上昇した。この上昇を考慮すると、電力需要は、次第に信頼性の高い、上質な電力の危機的な要求となる。電力需要は成長を続けるにつれ、特に旧都市部の電力システムは性能の限界へと圧迫され、新しい解決法を要求されている。
【0003】
ワイヤは、変圧器、送電及び配電システム、モータを含む世界の電力システムの基本構成要素を形成する。1986年の革命的なHTS合成物の発見は、電力産業の全く新しいタイプのワイヤの発展に導き、この発見は、1世紀以上における、ワイヤ技術の最も基本的な進歩である。
【0004】
HTSをコートされたワイヤは、同じ物理的規模の従来の銅伝導体及びアルミニウム導線の100倍以上の電流を運ぶ、クラスにおける最高の性能を提供する。HTSをコートされたワイヤの優れた電力密度は、新しい世代の電力産業技術を可能にする。それは、重大な寸法、重量、効率の利益を提供する。HTS技術は、種々の方法で、コストを下げ、電力システムの容量と信頼性を増加する。例えば、HTSをコートされたワイヤは、既存の通行路を通って2〜5倍以上の電力を送電することができる。この新しいケーブルは、その環境的足跡を削減すると同時に、電力網の性能を改良する強力なツールを提供する。しかしながら、今日まで、次世代HTSコートワイヤの製造で用いられる前記HTSテープの短いサンプルのみが、高性能レベルで製造されている。HTS技術が、発電および配電産業での使用に向け、商業的に成長するために、HTSテープの連続的な、高スループットの製造のための技術を開発する必要がある。
【0005】
気相堆積は、超伝導材料の蒸気がテープ基板上に堆積されるHTSテープを製造し、これにより、前記テープ基板上にHTSコーティングを形成するプロセスである。HTSテープの高スループットの、コスト効率のよい製造を期待させる公知の気相堆積プロセスは、有機金属化学気相成長法(MOCVD)およびパルスレーザー堆積法(PLD)を含む。MOCVD或いはPLDプロセスの使用に関して、酸化イットリウムバリウム銅(YBa2Cu37或いは“YBCO”)フィルムなどのHTSフィルムは、過熱された緩衝金属基板上に堆積し、HTSコーティングされた導体を形成する。しかしながら、今日まで、短い長さのコートされた導線サンプルのみが、いずれかの上記プロセスを用いて、高性能レベルで組み立てられている。長い(即ち、数キロメートル)HTSをコートされた導体のコスト効果のよい製造を可能にするために、いくつかの試みを克服しなければならない。
【0006】
コートされた導体を特徴付ける一つの方法は、メートルごとのコストによる。さらに、コスト及び性能はキロアンペア・メーターごとのコストとして特徴付けられる。さらに詳細には、コーティングされた導体のメータあたりのコストの電流を増大することによって、前記キロアンペアメーターごとのコストが低減される。これは、前記膜の断面積によって増加した堆積HTS材料の臨界電流(Jc)として述べられる。
【0007】
コートされた導体の規定の臨界電流および幅について、断面積を増加する一つの方法は、前記HTS膜の厚さを増やすことによる。しかしながら、厚さの関数としての臨界電流に関して、HTS膜の単一層の厚さがおおよそ1.5ミクロンを越えて増大したとき、前記臨界電流は少なくなり、飽和状態に達することが、実証されている。これは、およそ1.5ミクロンの膜厚を越えると、前記HTS素材が多孔質となり、空洞をつくり、増大された表面粗度を進め、それら全てが電流の流れを抑制することになるからである。前記HTS膜厚を単純に増やすことは、臨界電流での対応する増加を生じないので、技術的な試みは、1.5ミクロンを超える前記膜厚を増やすことに、また、コスト効果のよい方法で、HTSをコートされた導体の臨界電流における対応する増加に到達することにある。
【0008】
上質のYBCO厚膜に到達する一つのアプローチは、前記厚さが1.5ミクロンを越えたとき、物質の密度および滑らかさを増加するなどによって、前記膜のモホロジーを改善し、これにより、増加した電流容量を生じることである。2000年11月7日付の“Method for Producing Super-conducting Thick Film”というタイトルのTatekawaら(US 6,143,697)は、基板上に超伝導体材料を備える厚層を形成し、前記基板に形成された厚層に火を通し、火を通した厚層を冷間静水圧プレスにかけ、冷間静水圧プレスにかけた前記厚層に再度火を通す、ステップを含む超伝導体厚膜の製造方法を開示している。
【0009】
Tatekawaの欠点は、超伝導体酸化厚層を形成する適切な方法ではあるが、前記膜のモホロジーを改善し、高多孔質、ボイド、及び表面の粗度などの前記膜の欠点を最小化し、これにより、増加した臨界電流を持つ厚いHTS膜を提供するコスト効率のよい方法を提供しないことである。従って、Tatekawaは、高電流HTSコート導体のコスト効率のよい製造に適していない。
【0010】
従って、本発明の目的は、1.5ミクロン以上の厚さで、かつ大電流HTSコーティングのテープの製造に用いる電流容量を増やす、YBCO膜を製造することである。
【特許文献1】米国特許第5,432,151号明細書
【特許文献2】米国特許第6,214,772号明細書
【特許文献3】米国特許第6,190,752号明細書
【特許文献4】米国特許第6,238,537号明細書
【発明の開示】
【0011】
本発明は、1.5ミクロン以上の厚さで、大電流HTSコーティングのテープの製造に用いる電流容量を増加するYBCO膜を製造するイオンアシストのHTS厚膜連続堆積プロセスである。本発明の前記イオンアシストHTS厚膜堆積プロセスは、MOCVD、PLD或いはスパッタリングプロセスなどの公知の堆積プロセス内の前記堆積ゾーンに衝撃を与えるイオン源を含む。
【0012】
このイオン源は、上記1.5ミクロンの膜厚の膜モホロジーを改善する前記堆積プロセスに、付加的なエネルギーを提供する。この改善された膜モホロジーは、例えば、物質密度の増加、表面粗度の改善、及び多孔質の削減を生じる。よって、前記YBCO膜は、本発明の前記堆積プロセスの間に1.5ミクロンを越える厚さに成長し、膜欠点を最小化し、その結果として生まれるYBCO厚膜の電流密度における増大を生じる。
【0013】
イオンビームアシストの電子ビーム蒸着は、例えば、高エネルギーイオンが成長する膜に焦点を当て、よって非常に密度の高い、滑らかな、均一の光学構造を形成する光学応用において公知である。しかしながら、今日までこの技術は、同様の成長増大を達成すべくHTS堆積プロセスに適用されるということはなかった。
【0014】
本発明の新たな側面は、本発明のシステム内で起こる従来のコーティング処理を強化するため、少なくとも2つの区域のコーティング堆積プロセスのうち少なくとも最後の区域にイオン源を含むことである。
【0015】
本発明のプロセスは、1.5ミクロン以上の全体コーティング厚さおよび200A/cm以上の臨界電流密度を持つ高電流密度のHTSテープを製造することができる。好ましい実施形態において、該プロセスは、1.5ミクロン以上の全体コーティング厚さおよび300A/cmの臨界電流密度を持つテープを製造し、また、最も好ましい実施形態においては、該プロセスは、1.5ミクロン以上の全体コーティング厚さおよび400A/cmの臨界電流密度を持つテープを製造する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図の目的として、はじめに、図1に記述されているMOCVDプロセスに関して、次に、図2に記述されているPLDプロセスに関して、本発明の前記イオンアシストHTS厚膜堆積プロセスが、開示されている。しかしながら、本発明の前記イオンアシストHTS厚膜堆積プロセスは、MOCVDおよびPLDプロセスのみに限定されない。例えば、本発明のイオンアシストHTS厚膜堆積プロセスは、蒸発およびスパッタリング過程に適用されてもよい。
【0017】
本発明の第1の実施形態として、図1は、本発明に従って、増加した電流の性能と共にHTS厚膜を堆積することによって、高電流HTSコーティングテープを製造するイオンアシストMOCVDシステム100を図示している。本発明の前記イオンアシストMOCVDシステム100は、例えば1.6Torrの圧力で維持される冷壁反応炉のようなMOCVDプロセスが起こる真空包装の堆積チャンバーである一般的なMOCVD反応炉110を含む。
【0018】
前記MOCVD反応炉110は、基板ヒータ114に近接近して配置されるシャワーヘッド112を内蔵する。基板テープ116は、前記シャワーヘッド112の長さに沿って、つまり、前記基板テープ116が前記前駆体蒸気に触れる場所に形成される堆積ゾーン118内で、前記シャワーヘッド112と前記基板ヒータ114との間に置かれ、移動する。さらに、前記堆積ゾーン118内に複数の区域、例えば、図1に示すようなゾーンA及びゾーンBが作られる。
【0019】
前記基板テープ116は、その上にイットリウムの安定したジルコニア(YSZ)及び/又は酸化セリウム(CeO2)などのバッファ層が予め堆積された、ステンレス鋼や、或いはインコネルなどのニッケル合金など、種々の素材から形成されたフレキシブルな長さの基板である。前記基板テープ116は、950℃までの温度に耐えられることができ、望ましい完成品及びシステムの限定に合うよう変形してもよい大きさを持つ。例えば、前記基板テープ116は、厚さ25μ、幅1cm、長さ100mの大きさを持つ。
【0020】
前記シャワーヘッド112は、前記基板テープ116上に前駆体蒸気を均一に分配する装置である。前記基板テープ116に向けられた前記シャワーヘッド112の表面は、前記前駆体蒸気が前記基板テープ116に向かって通り抜ける、その区域全体に均等に分散された複数の微細な穴を含む。前記シャワーヘッド112の長さ及び前記シャワーヘッド112に送り込まれる前駆体蒸気の特定の組成は、応用に応じてユーザにより定義されるようにしてもよい。
【0021】
前記堆積プロセスの間、前記基板テープ116の温度は前記基板ヒータ114を介して制御される。前記基板ヒータ114は、一般に700から950℃の範囲の熱を、ランプなどの放射加熱要素を介して前記基板テープ116に提供する、公知の単数あるいは複数区域の基板ヒータである。また、前記基板ヒータ114は、Kanthal或いはMoSi2などの加熱要素を持つ抵抗ヒータである。
【0022】
前記イオンアシストMOCVDシステム100はさらに、コートする前駆体を分配するシステムを含む。典型的な前駆体分配システムは、テトラハイドロフランおよびイソプロパノールなどの適当な溶剤の混合と共に、イットリウム(Y)、バリウム(Ba)、及び銅(Cu)のテトラメチルヘプタンニ(THD)合成物などの有機金属の前駆体を含んだ溶剤を含む液体前駆体源(図示せず)を供給されるポンプ120を含む。前記ポンプ120は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ポンプなどの高圧で低流量のポンプで、0.1から10mL/min.の低流量が可能である。前記ポンプ120は、チューブ或いはパイプで形成された液体ライン124を介して、前駆体蒸発器122を供給する。
【0023】
前記前駆体蒸発器122は、前駆体溶液がフラッシュ蒸発され、アルゴン或いは窒素などの不活性搬送ガスと混合されて、前記シャワーヘッド112への配給される公知の装置である。前記不活性搬送ガスは、チューブ或いはパイプで形成されたガスライン126を介して、前記前駆体蒸発器122へ供給される。前記前駆体蒸気は、前記シャワーヘッド112の注入口に接続される前駆体蒸気ライン128を介して、前記前駆体蒸発器122から出る。前記蒸気ライン128は、前記前駆体蒸気及びその不活性搬送ガスが、前記前駆体蒸発器122から前記シャワーヘッド112を通る接続チューブ或いはパイプである。
【0024】
前記MOCVD反応炉110に入る前記蒸気ライン128の前に、酸素ライン130が前記蒸気ライン128に向かって開口する。前記酸素ライン130は、前記蒸気ライン128内部に流入する前記前駆体蒸気およびその不活性搬送ガスへの導入のために、酸素が通るチューブ或いはパイプである。
【0025】
前記イオンアシストMOCVDシステム100は、前記MOCVD反応炉110内で前記基板テープ116に向けられているイオンビーム134を放射するイオン源132を含む。前記イオン源132は、0.5から10KWの一般的な幅の電力レベルで平行或いは非拡散のイオンビームを生成できる、安価なグリッドレスのイオン衝撃源であってもよい。前記グリッドレスイオン源132の例としては、Veeco Instruments[2330 E Prospect Fort Collins, CO 80525]から商業的に利用可能であり、100−1000eVまでの電圧で作動し、6cm×66cmの面積を持つ。前記イオン源132のサイズと方向は、照射される前記基板テープ116の長さおよび前記MOCVD反応炉110の設計に基づいて決定される。前記イオン源132は、イオンビーム134のイオンが長距離を移動できる場合、前記堆積ゾーン118に近接して置かれなくてもよい。
【0026】
また、前記イオン源132は、グリッドつきイオン源であってもよい。しかしながら、典型的に、グリッドつきイオン源は、グリッドレスイオン源よりも費用がかかり、グリッドレスイオン源より厳しい圧力要求、即ち、グリッドレスイオン源が10-2から10-3Torrであるのに比べて、10-4から10-6Torrで作用するので、グリッドつきイオン源は、おそらくグリッドレスイオン源より好ましくない。
【0027】
前記イオン源132と前記MOCVD反応炉110との間にある前記圧力インターフェースは、前記MOCVD反応炉110の外壁内に取り付けられた圧力差動器136を介して遂行される。前記圧力差動器136は、前記イオン源132が、およそ10-4から10-2Torrの範囲での典型的な減圧で保持できると同時に、前記MOCVD反応炉110が、1−50Torrの範囲での減圧で典型的に保持できる装置である。これは、ターボ分子ポンプ或いはクライオポンプを用いて遂行される。前記圧力差動器136はまた、前記イオンビーム134が前記MOCVD反応炉110へ到達できる開口部も含む。
【0028】
図1の前記イオンアシストMOCVDシステム100に関して、前記基礎MOCVDプロセスは当技術分野では周知であり、以下のように要約できる。前記イオンアシストMOCVDシステム100のMOCVD反応炉110内で、YBCOなどのHTS膜は、前記基板テープ116の表面で起こる化学反応を介して、熱した基板テープ116上に、蒸気前駆体によって堆積される。より詳細には、前記堆積ゾーン118を通る前記基板テープ116の線状の移動がゾーンAからゾーンBへ進行する方向へ開始し、(前記基板テープ116を移動させるメカニズムは図示せず)、ポンプ120が作動し、前駆体蒸発器122が作動し、基板ヒータ114が作動する。
【0029】
前記蒸気ライン128は、前記イットリウムバリウム銅の蒸気前駆体を前記シャワーヘッド112へ配給し、前記堆積ゾーン118内で前記基板テープ116に蒸気前駆体を均一に向ける。酸素がイットリウムバリウム銅の蒸気前駆体に反応し、その後その反応化合物が前記堆積ゾーン118内で熱した基板テープ116に接触した結果、前記堆積ゾーン118を通るときに、前記イットリウムバリウム銅の蒸気前駆体が、分解し、前記基板テープ116の上にYBCOの層を形成させる。
【0030】
前記基板テープ116は、前記堆積ゾーン118のゾーンA内で、膜厚が0ミクロンから1.0、1.0から1.5ミクロンに形成される、YBCO膜の最初の蓄積を経験する。前記基板テープ116はその後、前記堆積ゾーン118のゾーンB内で、YBCO膜のさらなる蓄積を経験し、膜厚がおよそ1.5ミクロンから5ミクロンへと成長を続ける。
【0031】
上記のように、前記イオンアシストMOCVDシステム100内で起こる通常の堆積プロセスと同時に、前記イオン源132が作動し、従ってイオンビーム134を放射する。前記イオンビーム134を形成する陽イオンのストリームは、前記堆積ゾーン118内の前記基板テープ116に向かって促進される。さらに詳細には、前記イオン源132から放射する前記イオンビーム134は、それが堆積ゾーン118内のゾーンBを通るときに前記基板テープ116上に集束され、ここで前記YBCO膜はさらに蓄積し、1.5ミクロンの厚さに近づく及び/又は越える。前記プロセスは、2つの堆積ゾーンAおよびBを持つとして示されているが、基板が1.5ミクロン以上の厚さのコーティングを持つそれらの堆積ゾーンは、前記基板がその堆積ゾーンを通るときに、その基板テープ上に集束するイオン源を持つという要求で、複数の堆積ゾーンであってもよい。それは絶対条件ではないが、前記膜が1.5ミクロンの厚さに成長する第1の堆積ゾーンにも、前記基板上に集束するイオン源を持つことが好ましい。このように、密度の高い膜のテンプレートはその後の成長に利用可能であることが保証される。
【0032】
結果として、前記堆積ゾーン118のゾーンB内で起こる前記YBCO堆積プロセスは、前記イオンビーム134によって提供されるイオン衝撃により影響を受ける。このイオン衝撃のために、付加的なエネルギーが、前記堆積ゾーン118のゾーンB内の堆積プロセスに付加され、それは、高多孔質、ボイド、表面の粗度などの膜の欠陥を最小化する効果を持ち、これにより、前記YBCO膜は前記基板テープ116上の堆積により蓄積するように、上質の成長テンプレートを維持する。結果として、本発明のイオンアシストMOCVDシステム100は、物質密度及び滑らかさが増加し、電流容量の増加を生じる1.5ミクロン以上の厚さのYBCO膜を製造することができる。
【0033】
ゾーンBに関して、イオン源132に特定の方向要求はない。むしろ、方向は、前記基板テープ116と前記シャワーヘッド112との間に最適な距離があるため、前記MOCVD反応炉110の設計によって規定される。特に、投射するイオンビーム134の方向は、前記シャワーヘッド112および前記基板ヒータ114の規模によって規定される。
【0034】
前記イオン源132からの前記イオンビーム134は、YBCO膜が、例えば、1.0から1.5ミクロンの以下の厚さで形成される前記堆積ゾーン118のゾーンA内の基板テープ116上に集束されない。これは、上記のように、初めの1.0から1.5ミクロンの成長内の前記YBCO膜モホロジー質は、非常に高く、電流容量は抑制されないからである。
【0035】
本発明の利益を得るのに要求されるものではないが、前記イオンビームは、ゾーンAの基板も同様に打つことが許可されてもよい。イオン衝撃は、YBCO膜の厚さが、膜は高密度であることを保証する、1.0から1.5ミクロン以下である前記堆積ゾーン118のゾーンA内で用いられ、これにより、次の層によいテンプレートを提供する。
【0036】
図2は、本発明の第2の実施形態の、増加した電流量のHTS厚膜を堆積することによって高電流HTSコーティングテープを製造するイオンアシストPLDシステム200を図示する。本発明のイオンアシストPLDシステム200は、一般的な堆積チャンバー210を含み、それは、特にパルスレーザー堆積法の応用のために、考案された真空槽である。このような真空槽の例として、12或いは18インチの真空槽がNeocera[10000 Virginia Manor Road Beltsville, MD 20705]によって商業的に利用可能であるが、当業者は、多くの他のベンダーが種々の形と大きさで真空槽を製造することを評価している。前記堆積チャンバー210は、例えば、200mTorrの圧力で維持される。この例において、前記堆積チャンバー210は、基板ヒータ216に近接して配置される第1ターゲット212及び第2ターゲット214を内蔵する。図1に記述された前記基板テープ116は、ターゲット212及び214と基板ヒータ216との間に、(作動中に)配置され、移動する。ターゲット212及び214はYBCOなどのHTS素材で構成され、Praxair Surface Technologies, Specialty Ceramics[16130 Wood-Red Rd., #7, Woodinville, WA 98072]およびSuperconductive Components, Inc.[1145 Chesapeake Ave., Columbus, OH 43212]により、商業的に利用可能である。
【0037】
前記堆積プロセスの間、前記基板テープ116の温度は、前記基板ヒータ216を介して制御される。図1の前記基板ヒータ114のように、前記基板ヒータ216は、一般に、750から830℃の範囲の熱を、ランプなどの放射加熱要素を介して前記基板テープ116に提供する公知の単一或いは複数の区域基板ヒータである。
【0038】
最後に、前記イオンアシストPLDシステム200は、前記堆積チャンバー210内の基板テープ116に向けられるイオンビーム220を放射するイオン源218を含む。前記イオン源218は、一般的に0.5から10KWの範囲の電力で、平行で非拡散のイオンビームを生成できる安価なグリッドレスのイオン衝撃源である。グリッドレスイオン源218の例は、Veeco Instrumentsにより商業的に利用可能であり、[2330 E Prospect Fort Collins, CO 80525]100−1000eVに上がる電圧で動作し、直径3から6cmの大きさである。前記イオン源218の大きさ、特にイオン源218の長さは、前記膜堆積ゾーンの長さと同じである。
【0039】
前記膜堆積ゾーンに関して、前記イオン源218の特定の方向はない。むしろ、前記基板テープ116と前記ターゲット212及び214との間に最適な距離があるため、前記方向は、堆積チャンバー210の設計によって規定される。特に、前記入射イオンビーム218の方向は、前記ターゲット212及び214と前記基板ヒータ216の規模によって規定される。前記イオン源218は、前記イオンビーム220のイオンが長距離を移動できる場合、前記基板テープ116に近接して配置されなくてよい。また、前記イオン源218はグリッドつきイオン源であってもよい。
【0040】
図2のイオンアシストPLDシステム200に関して、基礎PLDプロセスは当技術において周知であり、以下のように要約される必要がある。前記イオンアシストPLDシステム200の堆積チャンバー210内で、YBCOなどのHTS膜は、HTS素材の蒸発およびその後に熱した基板テープ116がこの蒸発物質にさらされることにより、堆積される。より詳細には、前記堆積チャンバー210を通る基板テープ116の線状の移動は、まずターゲット212を通過し、次に、前記基板テープ116の移動ラインに沿って並べられたターゲット214を通過する方向に始まる(前記基板テープ116を移動する仕組みは図示されない)。前記基板ヒータ216は作動する。
【0041】
第1のレーザー光源(図示せず)が作動し、前記ターゲット212の表面を照射するレーザービーム222を生成し、非常に直接的な型で、前記レーザービーム222によって照射されたターゲット212の部分から前記基板テープ116に向かってプルーム224を形成させる。同様に、第2のレーザー光源(図示せず)が作動し、前記ターゲット214の表面を照射するレーザービーム226を生成し、非常に直接的な型で、前記レーザービーム226によって照射された前記ターゲット214の部分から前記基板テープ116に向かってプルーム228を形成させる。
【0042】
前記プルーム224及び228は、ターゲット212および214それぞれの材料から生じ、前記レーザービーム222及び226それぞれによって衝突されるとき、溶け出してその後爆発的に蒸気化するプラズマ雲である。
【0043】
よって、プルーム224に含まれる前記YBCOの粒子は、前記テープが所定の速さで前記堆積チャンバー210を通るときに、前記基板テープ116の表面に堆積される。
【0044】
前記基板テープ116は、前記基板テープ116が所定の速さで前記堆積チャンバー210を通るときに、前記プルーム224内に含まれる前記YBCO粒子にさらされることを介して、YBCO膜の最初の蓄積を経験する。前記プルーム224の粒子にさらされることのために、前記基板テープ116の表面上の前記膜厚が0ミクロンから1.0、1.0から1.5ミクロンへと成長する。前記基板テープ116は、その後、前記基板テープ116が所定の速さで前記堆積チャンバー210を通るときに、前記プルーム228内に含まれる前記YBCO粒子にさらされることを介してYBCO膜の更なる蓄積を経験する。前記プルーム228の粒子にさらされることのために、前記基板テープ116の表面上の膜厚は、およそ1.5ミクロンから5ミクロンへと成長する。
【0045】
上記の前記イオンアシストPLDシステム200内で起こる通常の堆積過程と同時に、前記イオン源218が作動し、それによってイオンビーム220を放射する。前記イオンビーム220を形成する陽イオンのストリームは、前記基板テープ116に向かって促進され、それが前記プルーム228の粒子を通るときに前記基板テープ116上に集束され、ここで前記YBCO膜がさらに蓄積し、1.5ミクロンの厚さに近づく及び/又はそれを越える。結果として、前記プルーム228の粒子にさらされることを介して起こるYBCO堆積過程は、前記イオンビーム220によって提供される前記イオン衝撃により影響を受ける。該プロセスは2つのプルームを持つと示されているが、前記基板が1.5ミクロン以上の厚さのコーティングを持つそれらの堆積ゾーンは、前記基板テープがその堆積ゾーンを規定するプルームを通るときに、その基板テープ上に集束されるイオン源をもつという要求で、複数のプルームがあってもよい。
【0046】
このイオン衝撃のために、付加的エネルギーが、前記プルーム228の粒子にさらされることによって起こる前記堆積プロセスに付加され、該プロセスは、高多孔質、ボイド、及び表面の粗度などの膜欠陥を最小化する効果を持ち、これにより、前記YBCO膜が、蒸気堆積によって前記基板テープ116上に蓄積すると、上質の成長テンプレートを維持する。結果として、本発明のイオンアシストPLDシステム200は、増大した物質密度および滑らかさを持ち、増大した電流容量を生じる1.5ミクロン以上の厚さのYBCO膜を製造することができる。
【0047】
前記イオン源218からのイオンビーム220は、前記YBCO膜が、例えば、1.0から1.5ミクロン以下の厚さで形成されている前記プルーム224に前記基板テープ116がさらされているときに、そのテープ上に集束される必要はない。これは、上記のように、最初の1.0から1.5ミクロンの成長内での前記YBCO膜モホロジーの質が、非常に高く、よって電流容量が抑制されないからである。
【0048】
しかしながら、また、イオン衝撃は、前記YBCO膜の厚さが1.0から1.5ミクロン以下であるプルーム224に前記基板テープ116がさらされる場所に用いられてもよい。特に、前記基板テープ116が、前記プルーム224にさらされる場所でイオン衝撃を用いることは、前記膜は密度が高いことを保証でき、これによりその後の層によいテンプレートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】増加した電流容量のHTS厚膜を堆積することによって高電流HTSコーティングのテープを製造する、本発明に従った、イオンアシストのMOCVDシステムを図示する。
【図2】増加した電流容量のHTS厚膜を製造することによって高電流HTSコーティングのテープを製造する、本発明に従った、イオンアシストのPLDシステムを図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.5ミクロン以上の厚さのコーティングと幅1センチにつき200A以上の臨界電流とを持つ高電流密度のHTSテープを連続的に製造するプロセスであって、基板が、堆積反応炉で、第1の堆積ゾーンを通るとき、該基板に第1の厚さのコーティングを適用し、前記基板が、前記堆積反応炉で少なくとも一つの付加的な堆積ゾーンを通るとき、その基板に直ちに付加的な厚さのコーティングを適用することを備え、前記第1の堆積ゾーンからの出口でのコーティング厚さは1.5ミクロンより大きくなく、前記基板が少なくとも前記堆積ゾーンの最後のものを通過するとき、前記基板はイオンビームによって照射されることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1のプロセスであって、MOCVDプロセスである。
【請求項3】
請求項1のプロセスであって、PLDプロセスである。
【請求項4】
請求項1のプロセスであって、スパッタリングプロセスである。
【請求項5】
請求項1のプロセスにおいて、2つの堆積ゾーンがある。
【請求項6】
請求項1のプロセスにおいて、イオンビームは第1の堆積ゾーンの前記基板に衝突する。
【請求項7】
請求項1のプロセスにおいて、臨界電流が幅1センチにつき300A以上である。
【請求項8】
請求項1のプロセスにおいて、前記臨界電流が、幅1センチにつき400A以上である。
【請求項9】
請求項1のプロセスの製造物。
【請求項10】
請求項6のプロセスの製造物。
【請求項11】
請求項7のプロセスの製造物。
【請求項12】
請求項8のプロセスの製造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−525788(P2007−525788A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514975(P2006−514975)
【出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/016597
【国際公開番号】WO2005/007918
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(505448796)スーパーパワー インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】