反応器表面の選択的エッチング
組成物、方法、およびシステムは、反応器の金属部(チタンおよび/またはチタン合金など)における金属酸化物を選択的にエッチングできる。エッチング組成物はアルカリ金属水酸化物および没食子酸を含む。この方法は酸化アルミニウムなどの金属酸化膜の堆積に用いられる反応チャンバの洗浄に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は概ね薄膜製造に関し、より具体的には、薄膜堆積に用いられる反応器の洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
集積デバイスの製造では、化学気相堆積(CVD)または原子層堆積(ALD)などにより、反応チャンバまたは反応器内の基板に薄膜が堆積または形成される。これらの堆積過程では、反応チャンバの壁および他の露出面などの他の面にも膜材料が堆積して、これらの表面を汚染する。これらの物質は長い間に蓄積して積み重なり、最終的には 反応チャンバの表面の粒子をはがし、流し、かつ/または剥離させる。例えば表面に落下するか、またはガス流により運ばれて基板の表面に落ちる粒子を原因として、製造過程における歩留まりおよび/または再現性の低下などの問題が生じる。反応チャンバ内の汚染物質を定期的に洗浄することにより、これらの問題が生じ難くなる。
【0003】
反応チャンバを洗浄する方法の一つに、適切なエッチング液による1つ以上の洗浄サイクルを用いたin situでのエッチングサイクルがある。in situでの洗浄は汚染された反応チャンバを除去、交換、および/または修正する必要性を減少させる。エッチング速度が速い場合には、ツールのスループットに著しく影響を与えることなく、必要な頻度でin situでのエッチングが実行され得る。しかしながら、エッチング速度が遅いとスループットを低下させる可能性がある。さらに一部の例では、in situでのエッチングは、反応チャンバにおける1つ以上の構成要素の著しいエッチング、基板の汚染、および/または環境、衛生および安全(EHS)に関する問題の発生などの1つ以上の欠点がある。この結果、一部の例では、in situでの洗浄の実現は難しい。
【0004】
反応チャンバを洗浄するための別の選択肢には、ex situでの洗浄があるが、この場合は、汚染された構成要素は洗浄のために運転から除かれる。「ビードブラスティング」は、アルミナ、ジルコニア、ガラス、シリカ、炭化ケイ素、または他の適切な物質などによる連続的な研磨グリットを例えば高圧の流体の流れを利用して洗浄面に衝突させるという機械摩耗に基づいたex situでの洗浄の一形態である。ビードブラスティングにはいくつか短所がある。例えば、洗浄過程中に反応チャンバの構成要素に損傷を与えることがあり、これにより耐用年数を短くする。ビードブラスティングは「視線」による処理であり、高いアスペクト比の構成要素の洗浄が困難になる。1つ以上の汚染物質の除去を視覚的に監視できず、エンドポイントがはっきりと見えないことに起因して、汚染物質を除去し、基礎をなす物質に到達する際に、汚染領域を外れる可能性がある。さらにビードブラスティングは研削材により洗浄された部分を汚染することがある。研削材と同じか、それ以上に硬い汚染物質は、ビードブラスティングにより容易には除去されない。ビードブラスティングはさらにコスト高と再現性の低さとが伴う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
組成物、方法、およびシステムは、金属チャンバの表面における金属酸化物を選択的にエッチングできる。この方法は金属酸化膜の堆積に用いられる反応チャンバの洗浄に有用である。
【0006】
一実施形態では、半導体反応器の金属部における金属酸化物を選択的にエッチングする方法が提供される。この方法は金属部の表面にアルカリ性エッチング液を接触させる工程を含む。金属部の表面には金属酸化物が存在する。金属酸化物のエッチングにはアルカリ性エッチング液が効果的に用いられる。金属部はアルカリ性エッチング液による化学攻撃の影響を受けるが、金属部の表面はまた、アルカリ性エッチング液による金属部の化学攻撃の抑制に効果的な阻害剤に一部は接触する。
【0007】
別の実施形態では、ex situにおいて、酸化アルミニウムの堆積に用いられる堆積反応器のチタンまたはチタン合金面における酸化アルミニウムを湿式洗浄する方法を提供する。この方法は酸化アルミニウム層が堆積する、堆積反応器のチタンまたはチタン合金面にエッチング液を接触させることを含む。このエッチング液は水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくともいずれかを含む。この方法はチタンまたはチタン合金面にポリヒドロキシベンゼン化合物を含む阻害剤を接触させる工程をさらに含む。チタンまたはチタン合金面は、ホウ酸塩種を含む安定剤にも接触する。
【0008】
別の実施形態では、金属部における金属酸化物を選択的に洗浄するためのエッチング組成物が提供される。この組成物は金属部全体から金属酸化物をエッチングするのに効果的な量のアルカリ性エッチング液を含む。この組成物はアルカリ性エッチング液による金属部のエッチングの抑制に効果的な量の阻害剤をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】金属チャンバ部における金属酸化物を選択的にエッチングする方法における実施形態を説明するフローチャートである。
【図2】チタンからの酸化アルミニウムのエッチングの評価に有用な試験サンプルの実施形態を概略的に示す図である。
【図3A】没食子酸が存在しない場合のエッチング済の試験サンプルの領域1におけるFESEMを示す図である。
【図3B】同一の試験サンプルの領域2におけるFESEMを示す図である。
【図4A】没食子酸が存在する場合のエッチング済の試験サンプルの領域1におけるFESEMを示す図である。
【図4B】同一の試験サンプルの領域2におけるFESEMを示す図である。
【図5A】没食子酸が存在する場合のエッチング済の試験サンプルの平面におけるFESEM画像を示す図である。
【図5B】没食子酸が存在する場合のエッチング済の試験サンプルの平面におけるFESEM画像を示す図である。
【図6】EDSが実行された領域を特定する没食子酸が存在する場合のエッチング済の試験サンプルの平面におけるFESEM画像を示す図である。
【図7A】図6で特定された領域におけるEDSスペクトルを示す図である。
【図7B】図6で特定された領域におけるEDSスペクトルを示す図である。
【図7C】図6で特定された領域におけるEDSスペクトルを示す図である。
【図8A】異なる濃度のエッチング液を用いた酸化アルミニウムのエッチング速度を示すグラフである。
【図8B】異なる濃度のエッチング液を用いた酸化アルミニウムのエッチング速度を示すグラフである。
【図9】異なるエッチング液濃度および温度を用いた酸化アルミニウムのエッチング速度を示すグラフである。
【図10A】没食子酸が存在しない場合のエッチング済の試験サンプルにおけるFESEM画像を示す図である。
【図10B】没食子酸が存在しない場合のエッチング済の試験サンプルにおけるFESEM画像を示す図である。
【図10C】没食子酸が存在しない場合のエッチング済の試験サンプルにおけるFESEM画像を示す図である。
【図11】没食子酸が存在する場合のエッチング済の試験サンプルにおけるFESEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
半導体反応器の金属部または構成要素、特に堆積チャンバにおける塩基エッチング可能な汚染物質を洗浄するための組成物、方法、およびシステムが本明細書に記載される。CVDおよび/またはALD反応チャンバは、多くの場合にチタンおよび/またはチタン合金構成要素を含み、例えばパルサー(登録商標)ALD反応チャンバ(オランダBilthovenのASM International)である。多くの堆積チャンバ内の他の影響を受けやすい金属面には、ステンレス鋼(例えば、316Lおよび304)、ニッケル、およびニッケル合金が含まれる。例えば、反応チャンバ内の酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)などの金属酸化物のALD堆積は、反応チャンバの一部にも酸化アルミニウム層を堆積させる。これらの層は多くの場合に不均一であり、反応チャンバ内における面の位置、反応チャンバの設計、堆積サイクルの回数、加工された基板の数、および反応チャンバ内で実行される他の処理を含む要因に応じて、例えば約150nm〜何千ナノメートルにもなる。これらの膜は、はがれ、流れ、砕けまたは剥離して、汚染粒子を形成する場合がある。特に、酸化アルミニウムは反応器表面から洗浄することが困難である。というのは、これは極端に堅く、かつ多くの化学エッチングに耐性を示すからである。半導体加工のために、このようなALDまたはCVDチャンバに堆積する他の金属酸化物は、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、およびハフニウムジルコニウム酸化物(HfxZryOz)を含む。基礎をなす金属面を損傷することなく、このような金属酸化物を除去することもまた困難を伴う場合がある。
【0011】
したがって、本開示は典型的には複数の堆積サイクル後にex situにおいて、反応器の壁に堆積した金属酸化物を定期的に除去するための方法を提供する。金属酸化物は基板に堆積する過程中の堆積チャンバ部への付随的な堆積に加えて、反応器のチャンバ面における保護用の層またはリフトオフ層としても用いられる。このような層はまた、リフレッシュのために定期的に除去する必要がある。本明細書に記載する方法は、反応器(堆積反応器または他の反応器にかかわらず)の金属部におけるこのような保護層またはリフトオフ層を定期的に除去するためにも用いられ得る。
【0012】
エッチング組成物は、選択された汚染物質のエッチングに適したエッチング液および汚染物質と洗浄面の物質との間のエッチング選択比を増大するような調整剤を含む。好ましい実施形態では、選択された汚染物質は酸化アルミニウムを含み、エッチング組成物は塩基またはアルカリを含む水溶性組成物を含み、そして洗浄面はチタンおよび/またはチタン合金を含む。一部の実施形態では、調整剤は、本明細書にて「阻害剤」と称する、チタンおよび/またはチタン合金のエッチングを抑制する化合物を含む。他の実施形態では、除去される汚染物質は酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、またはそれらの混合物である。洗浄面はステンレス鋼(例えば、316Lおよび304)、ニッケルおよび/またはニッケル合金でもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、塩基エッチング液は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびそれらの組み合わせなどのアルカリ金属の水酸化物を含む。好ましい実施形態では、塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはそれらの組み合わせである。塩基は水酸化カリウムであることがより好ましい。塩基濃度は約0.1M〜約10Mであり、約0.2M〜約5Mであることが好ましく、約0.5M〜約1Mであることがより好ましい。一部の好ましい実施形態では、濃度は約0.5M、約1M、または約5Mである。通常、塩基濃度がより高くなると、酸化アルミニウムまたは他の金属酸化物のエッチングがより迅速になる。通常、所定のエッチング速度において、Al2O3と比較してZrO2、HfO2、および/またはHfxZryOzのエッチングにはより高濃度のエッチング液が望ましい。
【0014】
いくつかの好ましい実施形態では、高選択性をもたらす調整剤は、没食子酸(下記の化学式1を参照)、没食子酸の類似体、それらの塩、他のポリヒドロキシベンゼン化合物(ポリフェノール、ピロガロール、カテコールなど)、それらの組み合わせなどから選択された阻害剤を含む。没食子酸が塩基性条件下で没食子酸アニオンの塩を形成することを当業者は理解する。用語「没食子酸」および「没食子酸塩」は共に、本明細書ではエッチング組成物内に存在する種を意味する。塩基とのモル比が約1対50〜約1対1の没食子酸が追加されることが好ましく、このモル比は約1対20〜約1対5であることがより好ましく、約1対10であることが最も好ましい。
【化1】
【0015】
組成物は例えばホウ酸塩(BO33−)、メタホウ酸塩(BO2−)、テトラホウ酸塩(B4O72−)などの1つ以上のホウ酸アニオン種をさらに含むことが好ましい。これらは、例えばホウ酸塩、ホウ酸、ホウ酸エステル、それらの組み合わせなどの任意の適切な化合物源を利用して追加される。ホウ酸塩源はホウ砂(テトラホウ酸ナトリウム・10水和物、Na2B4O7・10H2O)であることが好ましい。ホウ酸塩、ジホウ酸塩、トリホウ酸塩、テトラホウ酸塩、およびより高次のホウ酸塩などのホウ酸塩種の複合混合物が、塩基性条件下で生成されることを当業者は理解する。したがって、本明細書に用いられる用語「ホウ酸塩」は、組成物内に存在する全てのホウ酸アニオンを意味する。ホウ酸塩種の濃度は、溶液中の種の実際の濃度よりはむしろ加えられたホウ酸塩前駆体の分量に関連する。ホウ酸塩は酸化に対して没食子酸を安定させると考えられている。ホウ酸塩に対する没食子酸のモル比は、約1対10〜約10対1であることが好ましく、約1対2〜約2対1であることがより好ましく、約1対1であることが最も好ましい。
【0016】
いくつかの実施形態のエッチング組成物は、例えば界面活性剤、分散剤、キレート剤、粘度調整剤、研磨剤、それらの組み合わせなどの当業界で公知の他の添加剤を含む。適切な界面活性剤は、例えばスルホン酸塩、アンモニウム塩、ポリエトキシレート、化合物などの、当業界で公知の陰イオン性、陽イオン性および非イオン性界面活性剤を含む。適切な分散剤は、アンモニア、アミン、アルカノールアミン、塩基、それらの組み合わせなど、例えばトリエタノールアミンから生じたものを含む。界面活性剤、分散剤、および/またはキレート剤は、洗浄面の湿潤を改善するだけでなく、汚染物質を可溶化および/または懸濁化し、副産物をエッチングすることにより洗浄を改善する。粘度調整剤、チキソトロープ剤、および/またはレオロジ調整剤は、エッチング調合剤を例えば非水平面に粘着可能にするゲルおよび/またはペーストの調合に有用である。例えば機械的作用、超音波、かき混ぜ、それらの組み合わせなどにより、研磨剤は適切に動き物理的洗浄効果をもたらす。
【0017】
図1は酸化アルミニウムを含む物質により汚染されたチタンおよび/またはチタン合金面を洗浄するための方法100の実施形態を説明するフローチャートである。前述のように、エッチング組成物はステンレス鋼、ニッケルもしくはニッケル合金からの酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、またはそれらの混合物のエッチングにも有用である。
【0018】
工程110において、洗浄面はエッチングのために任意で調整される。例えば一部の実施形態では、反応チャンバにおける1つ以上の構成要素は、例えば洗浄面へのアクセスを提供するために分解される。いくつかの実施形態は、当業界で任意の公知の手段により、例えば滑剤、封止剤、および/またはグリースを除去するための前洗浄工程を含む。除去される特定の物質に応じて特定の前洗浄条件が決定されることを当業者は理解する。いくつかの実施形態は、例えばマスク面とエッチング組成物との接触を防止するためのマスキング工程を含む。
【0019】
工程120において、例えば浸透、ブラッシング、噴霧、ディッピング、それらの組み合わせなどの当業界で公知の任意の方法により、本明細書に記載されたようなエッチング組成物を洗浄面に接触させる。いくつかの実施形態は洗浄面においてエッチング組成物の高圧ジェットを用いる。前述のように、酸化アルミニウムのエッチング速度は、通常、塩基濃度に伴い増大する。高温になってもエッチング速度は増大する。適切な温度は約0℃〜約100℃の範囲内であり、約20℃〜約90℃が好ましく、約50℃〜約80℃がより好ましい。いくつかの実施形態では、酸化アルミニウムのエッチング速度は少なくとも約2μm/hrであり、少なくとも約8μm/hrが好ましく、少なくとも約17μm/hrがより好ましい。いくつかの実施形態では、基礎をなすチタン表面は約1μm/hr未満で酸化され、この速度は約0.3μm/hr未満であることが好ましく、約0.1μm/hrであることがより好ましい。酸化アルミニウムとチタンとの選択性は、少なくとも約20対1であり、少なくとも約30対1が好ましく、少なくとも約40対1がより好ましい。エッチング液にさらされた異なる物質に関するエッチング速度の比率をエッチング選択性が表すことを当業者は理解する。
【0020】
エッチング時間はエッチング速度だけでなく、さらに1つ以上の酸化アルミニウム膜の厚さおよび性質により決定される。前述のように、膜厚は単一の構成要素においても異なり得る。いくつかの実施形態では、エッチング組成物の選択性が高いため、エッチング組成物はチタン表面を著しく酸化させることなく、酸化アルミニウムのエッチングに必要な時間よりもかなり長い間洗浄面に接触してもよい。適切なエッチング時間は除去する金属酸化物の厚さに応じて、約1時間、約5時間または約10時間より長くてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、例えば超音波により、かつ/または研磨パッドおよび/もしくはブラシなどを用いた洗浄面の機械的な研磨により、エッチングが機械的に促進される。撹拌装置および/または流体ポンプなどを用いて組成物を撹拌するか、循環させることにより、新鮮なエッチング組成物を洗浄面に補充できる。
【0022】
前述のように、いくつかの実施形態におけるエッチング組成物は研磨粒子を含む。これらの実施形態では、例えば高圧洗浄、超音波、かき混ぜ、それらの組み合わせなどにより、機械的洗浄が開始される。
【0023】
工程130において、例えば脱イオン水、蒸留水、アルコール、アンモニア、有機溶媒、それらの組み合わせなどの任意の適切な剤を用いたすすぎなどにより、エッチングは完了する。選択性のための阻害剤は金属部に化学吸着されている可能性があり、これはその表面における未加工のチタンのパッシベーション層を修復するために、そして反応器の汚染を回避するために除去されるべきである。この汚染はチャンバ表面におけるその後の堆積の付着に影響を与える、または層が堆積する基板を汚染する可能性がある。化学吸着した阻害剤(没食子酸など)の除去は、オゾン処理され、脱イオン化されたすすぎ、プラズマ処理、過酸化物、モノペルオキシ硫酸塩もしくはジペルオキシ硫酸塩、またはペルオキシ無機酸化剤などの酸化処理にさらすことにより援助できる。
【0024】
いくつかの実施形態では、洗浄された面は、例えば研磨によりさらに処理される。洗浄された面は構成要素の条件に加えて、洗浄の有効性を評価するために検査される。構成要素は必要に応じて磨き直され、例えば表面が新しくされる。検査に合格した構成要素は次に必要に応じて再び評価され、運転に戻される。
【0025】
阻害剤が存在しない塩基性のエッチング液との接触によりチタンは酸化し、二酸化チタン(TiO2、チタニア)の表層に多孔質を形成する傾向がある。二酸化チタンのこの層はそれ自体を保護しない、つまり、金属のさらなる酸化を防止しない。この結果、塩基のエッチング液への継続的な暴露により、厚い層の二酸化チタンが形成される。さらに、孔は時間が経つと成長する傾向がある。熱い、高濃度の塩基との接触により、酸化速度が速まる。
【0026】
この多孔性酸化物層は、反応器表面に存在すると処理スループットおよび再現性に悪影響を与える。放散によるプロセスガスの除去が制限されるため、このガスは酸化物の孔内に留まり、浄化時間を長くする。多孔質表面はまた、類似の未酸化のチタン表面よりも大きい表面領域を有し、表面に吸収されるプロセスガスの量を増大する。これにより、プロセスガスの消費量が増大し、処理時間が長くなる。これらの問題は、ALD堆積過程において特に顕著になる。二酸化チタンはチタンよりも密度が小さいため、構成要素の外形寸法が変化し、限界寸法を変えうる。二酸化チタン層はさらに、はがれかつ/または砕け易いため、汚染粒子を生成する。仮に酸化物層が除去されたとしても、チタンの酸化は構成要素の外形寸法を変更して、重要な特性を変化させるため、構成要素の耐用年数が短くなる。
【0027】
没食子酸などの阻害剤は、エッチング液による酸化に耐性を有する層をチタンまたはチタン合金面に形成すると考えられている。
【0028】
同様に、適当な選択性がないと、他の金属(ステンレス鋼、ニッケル、またはニッケル合金など)の全面における金属酸化物をエッチングする際に、他の金属反応器の一部もまた損傷することがある。
【実施例】
【0029】
実施例1
没食子酸のエッチング速度への効果
図2はチタン薄板210(2.3cm×2.8cm×1mm)およびアルミナストリップ220を備えた試験サンプル200を示す。2組の試験サンプルを形成した。各組の一方のサンプルは厚いアルミナ層(約49μm)を有し、他方のサンプルは薄いアルミナ層(〜7μm)を有した。試験サンプルをイソプロパノールを用いて洗浄し、蒸留水ですすぎ、そしてエッチング前に窒素を用いて乾燥した。温度制御された水浴内の二重壁のビーカー内でエッチングした。一方の組の試験サンプルは、80℃で40分間、0.5MのKOHの水溶液中でエッチングした。他方の組の試験サンプルは、80℃で40分間、0.5MのKOH、0.05Mの没食子酸、0.05Mのテトラホウ酸ナトリウム(Na2B4O7)の水溶液中でエッチングした。特別な定めのない限り、全ての試薬はAldrich Chemical社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から購入し、浄化せずに用いた。エッチング後、試験サンプルを蒸留水ですすぎ、窒素気流で乾燥させた。エッチングの前後に、表面形状測定法(カリフォルニア州サンノゼのKLA−Tencor)を用いてアルミナ工程における高さを測定した。結果を表1にまとめた。
【表1】
【0030】
没食子酸が存在しない場合の酸化アルミニウムのエッチング速度は、12.9μm/hrであった。没食子酸が存在する場合は11.8μm/hrであった。没食子酸は酸化アルミニウムのエッチング速度に顕著には影響を与えなかった。
【0031】
実施例2
電界放出形走査電子顕微鏡法
表面モルホロジーにおけるエッチング効果を確かめるために、実施例1のエッチングされた試験サンプルにおいて、電界放出形走査電子顕微鏡法(FESEM)を実行した。撮像前に、各サンプルの端部を280、その後1200グリットのエメリー研磨紙を用いて研磨した。図2に示す領域1(エッチング前にAl2O3に覆われていないチタン)および領域2(エッチング前にAl2O3に覆われているチタン)における画像を得た。
【0032】
図3Aは没食子酸塩が存在しない場合のエッチングされたサンプルの領域1を撮像した図である。チタン表面に酸化物層が形成された。酸化物層は非常に薄く、端部から視認できなかった。それ故、視認性を改善するためにサンプルを傾けた。サンプルの上部と側面との間の端部を暗線により示す。40分のみの暴露により、酸化物層は薄く、かつ断続的に形成される。加速電圧は5kVであり、倍率は4万倍であった。図3Bは同一サンプルの領域2を撮像した図である。エッチングによりさらされたチタン表面には、ひと続きの隆起部が示され、アルミナの除去後の、この領域に基礎をなすチタンのエッチングを示唆する。加速電圧は5kVであり、倍率は6万倍であった。
【0033】
図4Aは没食子酸塩が存在する場合のエッチングされたサンプルの領域1を撮像した図である。多孔質二酸化チタンではないように見えるサンプル表面に膜が形成された。加速電圧は5kVであり、倍率は4万倍であった。図4Bは同一サンプルの領域2を撮像した図である。多孔質二酸化チタンではないように見える図4Aの膜に類似するように見えるチタン表面に膜が形成された。加速電圧は5kVであり、倍率は6万倍であった。
【0034】
没食子酸塩が存在せずにエッチングしたサンプルにチタン酸化物が形成された。没食子酸塩が存在する場合のエッチングされたサンプルに非多孔質表面が残った。したがって、没食子酸は、KOH溶液内でのアルミナのエッチング速度に影響を与えずに、多孔質層の形成を抑制する。
【0035】
実施例3
エッチング後のチタン表面の特性解析
厚さが7μmの酸化アルミニウム層を用いた試験サンプルを、実施例1に記載されたように調整し、80℃で1時間、0.5MのKOH、0.05Mの没食子酸、0.05MのNa2B4O7のエッチング液中でエッチングした。サンプルは蒸留水ですすぎ、実施例2に記載するように端部を研磨した。表面形状測定法により、酸化アルミニウムの完全なエッチングが示された。
【0036】
以前には酸化アルミニウムの下にあったエッチングされた領域における平面のFESEM画像を図5Aおよび図5Bに示す。加速電圧は5.0kVであり、倍率は1千倍であった。
【0037】
図6において1、2、および3と指定した、酸化アルミニウムに以前に覆われていた3つの位置において、エネルギー分散分光法(EDS)X線微量分析をさらに実行した。図6の1、2、および3におけるEDSスペクトルを、それぞれ、対応する図7A〜図7Cに示す。これらのスペクトルは、サンプルにアルミニウムが実質的に残っていないことを明らかにし、エッチングが酸化アルミニウム層を完全に除去したことを示唆する。
【0038】
実施例4
酸化アルミニウムエッチング速度
2つの試験サンプルを調整し、実施例1に記載するようにエッチングした。エッチングは65℃で実行した。一方の実験はエッチング組成物中に0.5MのKOHを用いて、他方は1MのKOHを用いた。サンプルの上部および底部における酸化アルミニウム層の厚さを、表面形状測定法により監視した。結果を表2に一覧で示し、図8Aおよび図8Bにグラフで図示する。これらの両方の実験において、エッチング速度はKOHの濃度によらず類似した。
【表2】
【0039】
別の組の実験では、50℃、65℃、および80℃で、0.5Mおよび1MのKOHにおいてエッチング速度を測定した。結果を表3に一覧で示し、図9にグラフで図示する。
【表3】
【0040】
より高いKOH濃度およびより高温の条件下ではより早いエッチング速度が得られることをこれらの結果は示している。
【0041】
実施例5
チタンにおける水酸化物の効果
チタンサンプルを蒸留水、イソプロパノール、そして再度蒸留水ですすぎ、蒸留水中で超音波処理し、蒸留水、イソプロパノール、そして再度蒸留水ですすぎ、1分間、10パーセントのHNO3中に浸し、そして蒸留水ですすぐことによって洗浄した。次に、実施例1に記載するようにサンプルを2時間または4時間、0.5MのKOH(没食子酸塩を含まない)中でエッチングした。次に蒸留水中ですすぎ、窒素を用いて乾燥させた。FESEM分析のために、実施例2に記載されたように端部を研磨した。
【0042】
図10Aは2時間エッチングしたサンプルの端部におけるFESEM画像であり、厚さが約3μmの二酸化チタン層および基礎をなすチタンを示す。二酸化チタン層は多孔質ハニカム構造を有する。二酸化チタンは約1.5μm/hr(250Å/分)で形成した。加速電圧は5kVであり、倍率は2万倍であった。
【0043】
図10Bは2時間エッチングした別のサンプルの端部におけるFESEM画像である。このサンプルではチタン酸化物層の厚さは均一ではないが、約1μm〜約3μmの範囲にある。この場合も多孔質ハニカム構造である。加速電圧は5kVであり、倍率は2万倍であった。
【0044】
図10Cは4時間エッチングしたサンプルの端部におけるFESEM画像である。このサンプルではチタン酸化物層の厚さは、約5μm〜約6μmの範囲にある。このサンプルの孔は、2時間エッチングしたサンプルの孔よりも大きいように見える。加速電圧は5kVであり、倍率は1.5万倍であった。
【0045】
実施例6
チタンにおける没食子酸塩を伴う水酸化物の効果
実施例5に記載するように、80℃で1時間、0.5MのKOH、0.05Mの没食子酸、0.05MのNa2B4O7を用いてチタンサンプルを洗浄かつエッチングし、次にすすぎ、乾燥し、そして端部を研磨した。図11はサンプルの端部におけるFESEM画像であり、表層および基礎をなすチタンを示す。実験例5の酸化物層よりも、この表層は比較的薄くかつ平坦である。この表層は多孔質でもない。この層は基礎をなすチタン層を化学攻撃から保護する、没食子酸または没食子酸塩層であると考えられる。
【0046】
図示および記載した前述の実施形態は、特定の好ましい例示的な実施形態としてのみ提供される。添付の請求項のみにより限定される、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に提示された実施形態の種々の変更および変形が当業者によりなされうる。
【技術分野】
【0001】
本明細書は概ね薄膜製造に関し、より具体的には、薄膜堆積に用いられる反応器の洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
集積デバイスの製造では、化学気相堆積(CVD)または原子層堆積(ALD)などにより、反応チャンバまたは反応器内の基板に薄膜が堆積または形成される。これらの堆積過程では、反応チャンバの壁および他の露出面などの他の面にも膜材料が堆積して、これらの表面を汚染する。これらの物質は長い間に蓄積して積み重なり、最終的には 反応チャンバの表面の粒子をはがし、流し、かつ/または剥離させる。例えば表面に落下するか、またはガス流により運ばれて基板の表面に落ちる粒子を原因として、製造過程における歩留まりおよび/または再現性の低下などの問題が生じる。反応チャンバ内の汚染物質を定期的に洗浄することにより、これらの問題が生じ難くなる。
【0003】
反応チャンバを洗浄する方法の一つに、適切なエッチング液による1つ以上の洗浄サイクルを用いたin situでのエッチングサイクルがある。in situでの洗浄は汚染された反応チャンバを除去、交換、および/または修正する必要性を減少させる。エッチング速度が速い場合には、ツールのスループットに著しく影響を与えることなく、必要な頻度でin situでのエッチングが実行され得る。しかしながら、エッチング速度が遅いとスループットを低下させる可能性がある。さらに一部の例では、in situでのエッチングは、反応チャンバにおける1つ以上の構成要素の著しいエッチング、基板の汚染、および/または環境、衛生および安全(EHS)に関する問題の発生などの1つ以上の欠点がある。この結果、一部の例では、in situでの洗浄の実現は難しい。
【0004】
反応チャンバを洗浄するための別の選択肢には、ex situでの洗浄があるが、この場合は、汚染された構成要素は洗浄のために運転から除かれる。「ビードブラスティング」は、アルミナ、ジルコニア、ガラス、シリカ、炭化ケイ素、または他の適切な物質などによる連続的な研磨グリットを例えば高圧の流体の流れを利用して洗浄面に衝突させるという機械摩耗に基づいたex situでの洗浄の一形態である。ビードブラスティングにはいくつか短所がある。例えば、洗浄過程中に反応チャンバの構成要素に損傷を与えることがあり、これにより耐用年数を短くする。ビードブラスティングは「視線」による処理であり、高いアスペクト比の構成要素の洗浄が困難になる。1つ以上の汚染物質の除去を視覚的に監視できず、エンドポイントがはっきりと見えないことに起因して、汚染物質を除去し、基礎をなす物質に到達する際に、汚染領域を外れる可能性がある。さらにビードブラスティングは研削材により洗浄された部分を汚染することがある。研削材と同じか、それ以上に硬い汚染物質は、ビードブラスティングにより容易には除去されない。ビードブラスティングはさらにコスト高と再現性の低さとが伴う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
組成物、方法、およびシステムは、金属チャンバの表面における金属酸化物を選択的にエッチングできる。この方法は金属酸化膜の堆積に用いられる反応チャンバの洗浄に有用である。
【0006】
一実施形態では、半導体反応器の金属部における金属酸化物を選択的にエッチングする方法が提供される。この方法は金属部の表面にアルカリ性エッチング液を接触させる工程を含む。金属部の表面には金属酸化物が存在する。金属酸化物のエッチングにはアルカリ性エッチング液が効果的に用いられる。金属部はアルカリ性エッチング液による化学攻撃の影響を受けるが、金属部の表面はまた、アルカリ性エッチング液による金属部の化学攻撃の抑制に効果的な阻害剤に一部は接触する。
【0007】
別の実施形態では、ex situにおいて、酸化アルミニウムの堆積に用いられる堆積反応器のチタンまたはチタン合金面における酸化アルミニウムを湿式洗浄する方法を提供する。この方法は酸化アルミニウム層が堆積する、堆積反応器のチタンまたはチタン合金面にエッチング液を接触させることを含む。このエッチング液は水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくともいずれかを含む。この方法はチタンまたはチタン合金面にポリヒドロキシベンゼン化合物を含む阻害剤を接触させる工程をさらに含む。チタンまたはチタン合金面は、ホウ酸塩種を含む安定剤にも接触する。
【0008】
別の実施形態では、金属部における金属酸化物を選択的に洗浄するためのエッチング組成物が提供される。この組成物は金属部全体から金属酸化物をエッチングするのに効果的な量のアルカリ性エッチング液を含む。この組成物はアルカリ性エッチング液による金属部のエッチングの抑制に効果的な量の阻害剤をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】金属チャンバ部における金属酸化物を選択的にエッチングする方法における実施形態を説明するフローチャートである。
【図2】チタンからの酸化アルミニウムのエッチングの評価に有用な試験サンプルの実施形態を概略的に示す図である。
【図3A】没食子酸が存在しない場合のエッチング済の試験サンプルの領域1におけるFESEMを示す図である。
【図3B】同一の試験サンプルの領域2におけるFESEMを示す図である。
【図4A】没食子酸が存在する場合のエッチング済の試験サンプルの領域1におけるFESEMを示す図である。
【図4B】同一の試験サンプルの領域2におけるFESEMを示す図である。
【図5A】没食子酸が存在する場合のエッチング済の試験サンプルの平面におけるFESEM画像を示す図である。
【図5B】没食子酸が存在する場合のエッチング済の試験サンプルの平面におけるFESEM画像を示す図である。
【図6】EDSが実行された領域を特定する没食子酸が存在する場合のエッチング済の試験サンプルの平面におけるFESEM画像を示す図である。
【図7A】図6で特定された領域におけるEDSスペクトルを示す図である。
【図7B】図6で特定された領域におけるEDSスペクトルを示す図である。
【図7C】図6で特定された領域におけるEDSスペクトルを示す図である。
【図8A】異なる濃度のエッチング液を用いた酸化アルミニウムのエッチング速度を示すグラフである。
【図8B】異なる濃度のエッチング液を用いた酸化アルミニウムのエッチング速度を示すグラフである。
【図9】異なるエッチング液濃度および温度を用いた酸化アルミニウムのエッチング速度を示すグラフである。
【図10A】没食子酸が存在しない場合のエッチング済の試験サンプルにおけるFESEM画像を示す図である。
【図10B】没食子酸が存在しない場合のエッチング済の試験サンプルにおけるFESEM画像を示す図である。
【図10C】没食子酸が存在しない場合のエッチング済の試験サンプルにおけるFESEM画像を示す図である。
【図11】没食子酸が存在する場合のエッチング済の試験サンプルにおけるFESEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
半導体反応器の金属部または構成要素、特に堆積チャンバにおける塩基エッチング可能な汚染物質を洗浄するための組成物、方法、およびシステムが本明細書に記載される。CVDおよび/またはALD反応チャンバは、多くの場合にチタンおよび/またはチタン合金構成要素を含み、例えばパルサー(登録商標)ALD反応チャンバ(オランダBilthovenのASM International)である。多くの堆積チャンバ内の他の影響を受けやすい金属面には、ステンレス鋼(例えば、316Lおよび304)、ニッケル、およびニッケル合金が含まれる。例えば、反応チャンバ内の酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)などの金属酸化物のALD堆積は、反応チャンバの一部にも酸化アルミニウム層を堆積させる。これらの層は多くの場合に不均一であり、反応チャンバ内における面の位置、反応チャンバの設計、堆積サイクルの回数、加工された基板の数、および反応チャンバ内で実行される他の処理を含む要因に応じて、例えば約150nm〜何千ナノメートルにもなる。これらの膜は、はがれ、流れ、砕けまたは剥離して、汚染粒子を形成する場合がある。特に、酸化アルミニウムは反応器表面から洗浄することが困難である。というのは、これは極端に堅く、かつ多くの化学エッチングに耐性を示すからである。半導体加工のために、このようなALDまたはCVDチャンバに堆積する他の金属酸化物は、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、およびハフニウムジルコニウム酸化物(HfxZryOz)を含む。基礎をなす金属面を損傷することなく、このような金属酸化物を除去することもまた困難を伴う場合がある。
【0011】
したがって、本開示は典型的には複数の堆積サイクル後にex situにおいて、反応器の壁に堆積した金属酸化物を定期的に除去するための方法を提供する。金属酸化物は基板に堆積する過程中の堆積チャンバ部への付随的な堆積に加えて、反応器のチャンバ面における保護用の層またはリフトオフ層としても用いられる。このような層はまた、リフレッシュのために定期的に除去する必要がある。本明細書に記載する方法は、反応器(堆積反応器または他の反応器にかかわらず)の金属部におけるこのような保護層またはリフトオフ層を定期的に除去するためにも用いられ得る。
【0012】
エッチング組成物は、選択された汚染物質のエッチングに適したエッチング液および汚染物質と洗浄面の物質との間のエッチング選択比を増大するような調整剤を含む。好ましい実施形態では、選択された汚染物質は酸化アルミニウムを含み、エッチング組成物は塩基またはアルカリを含む水溶性組成物を含み、そして洗浄面はチタンおよび/またはチタン合金を含む。一部の実施形態では、調整剤は、本明細書にて「阻害剤」と称する、チタンおよび/またはチタン合金のエッチングを抑制する化合物を含む。他の実施形態では、除去される汚染物質は酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、またはそれらの混合物である。洗浄面はステンレス鋼(例えば、316Lおよび304)、ニッケルおよび/またはニッケル合金でもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、塩基エッチング液は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびそれらの組み合わせなどのアルカリ金属の水酸化物を含む。好ましい実施形態では、塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはそれらの組み合わせである。塩基は水酸化カリウムであることがより好ましい。塩基濃度は約0.1M〜約10Mであり、約0.2M〜約5Mであることが好ましく、約0.5M〜約1Mであることがより好ましい。一部の好ましい実施形態では、濃度は約0.5M、約1M、または約5Mである。通常、塩基濃度がより高くなると、酸化アルミニウムまたは他の金属酸化物のエッチングがより迅速になる。通常、所定のエッチング速度において、Al2O3と比較してZrO2、HfO2、および/またはHfxZryOzのエッチングにはより高濃度のエッチング液が望ましい。
【0014】
いくつかの好ましい実施形態では、高選択性をもたらす調整剤は、没食子酸(下記の化学式1を参照)、没食子酸の類似体、それらの塩、他のポリヒドロキシベンゼン化合物(ポリフェノール、ピロガロール、カテコールなど)、それらの組み合わせなどから選択された阻害剤を含む。没食子酸が塩基性条件下で没食子酸アニオンの塩を形成することを当業者は理解する。用語「没食子酸」および「没食子酸塩」は共に、本明細書ではエッチング組成物内に存在する種を意味する。塩基とのモル比が約1対50〜約1対1の没食子酸が追加されることが好ましく、このモル比は約1対20〜約1対5であることがより好ましく、約1対10であることが最も好ましい。
【化1】
【0015】
組成物は例えばホウ酸塩(BO33−)、メタホウ酸塩(BO2−)、テトラホウ酸塩(B4O72−)などの1つ以上のホウ酸アニオン種をさらに含むことが好ましい。これらは、例えばホウ酸塩、ホウ酸、ホウ酸エステル、それらの組み合わせなどの任意の適切な化合物源を利用して追加される。ホウ酸塩源はホウ砂(テトラホウ酸ナトリウム・10水和物、Na2B4O7・10H2O)であることが好ましい。ホウ酸塩、ジホウ酸塩、トリホウ酸塩、テトラホウ酸塩、およびより高次のホウ酸塩などのホウ酸塩種の複合混合物が、塩基性条件下で生成されることを当業者は理解する。したがって、本明細書に用いられる用語「ホウ酸塩」は、組成物内に存在する全てのホウ酸アニオンを意味する。ホウ酸塩種の濃度は、溶液中の種の実際の濃度よりはむしろ加えられたホウ酸塩前駆体の分量に関連する。ホウ酸塩は酸化に対して没食子酸を安定させると考えられている。ホウ酸塩に対する没食子酸のモル比は、約1対10〜約10対1であることが好ましく、約1対2〜約2対1であることがより好ましく、約1対1であることが最も好ましい。
【0016】
いくつかの実施形態のエッチング組成物は、例えば界面活性剤、分散剤、キレート剤、粘度調整剤、研磨剤、それらの組み合わせなどの当業界で公知の他の添加剤を含む。適切な界面活性剤は、例えばスルホン酸塩、アンモニウム塩、ポリエトキシレート、化合物などの、当業界で公知の陰イオン性、陽イオン性および非イオン性界面活性剤を含む。適切な分散剤は、アンモニア、アミン、アルカノールアミン、塩基、それらの組み合わせなど、例えばトリエタノールアミンから生じたものを含む。界面活性剤、分散剤、および/またはキレート剤は、洗浄面の湿潤を改善するだけでなく、汚染物質を可溶化および/または懸濁化し、副産物をエッチングすることにより洗浄を改善する。粘度調整剤、チキソトロープ剤、および/またはレオロジ調整剤は、エッチング調合剤を例えば非水平面に粘着可能にするゲルおよび/またはペーストの調合に有用である。例えば機械的作用、超音波、かき混ぜ、それらの組み合わせなどにより、研磨剤は適切に動き物理的洗浄効果をもたらす。
【0017】
図1は酸化アルミニウムを含む物質により汚染されたチタンおよび/またはチタン合金面を洗浄するための方法100の実施形態を説明するフローチャートである。前述のように、エッチング組成物はステンレス鋼、ニッケルもしくはニッケル合金からの酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、またはそれらの混合物のエッチングにも有用である。
【0018】
工程110において、洗浄面はエッチングのために任意で調整される。例えば一部の実施形態では、反応チャンバにおける1つ以上の構成要素は、例えば洗浄面へのアクセスを提供するために分解される。いくつかの実施形態は、当業界で任意の公知の手段により、例えば滑剤、封止剤、および/またはグリースを除去するための前洗浄工程を含む。除去される特定の物質に応じて特定の前洗浄条件が決定されることを当業者は理解する。いくつかの実施形態は、例えばマスク面とエッチング組成物との接触を防止するためのマスキング工程を含む。
【0019】
工程120において、例えば浸透、ブラッシング、噴霧、ディッピング、それらの組み合わせなどの当業界で公知の任意の方法により、本明細書に記載されたようなエッチング組成物を洗浄面に接触させる。いくつかの実施形態は洗浄面においてエッチング組成物の高圧ジェットを用いる。前述のように、酸化アルミニウムのエッチング速度は、通常、塩基濃度に伴い増大する。高温になってもエッチング速度は増大する。適切な温度は約0℃〜約100℃の範囲内であり、約20℃〜約90℃が好ましく、約50℃〜約80℃がより好ましい。いくつかの実施形態では、酸化アルミニウムのエッチング速度は少なくとも約2μm/hrであり、少なくとも約8μm/hrが好ましく、少なくとも約17μm/hrがより好ましい。いくつかの実施形態では、基礎をなすチタン表面は約1μm/hr未満で酸化され、この速度は約0.3μm/hr未満であることが好ましく、約0.1μm/hrであることがより好ましい。酸化アルミニウムとチタンとの選択性は、少なくとも約20対1であり、少なくとも約30対1が好ましく、少なくとも約40対1がより好ましい。エッチング液にさらされた異なる物質に関するエッチング速度の比率をエッチング選択性が表すことを当業者は理解する。
【0020】
エッチング時間はエッチング速度だけでなく、さらに1つ以上の酸化アルミニウム膜の厚さおよび性質により決定される。前述のように、膜厚は単一の構成要素においても異なり得る。いくつかの実施形態では、エッチング組成物の選択性が高いため、エッチング組成物はチタン表面を著しく酸化させることなく、酸化アルミニウムのエッチングに必要な時間よりもかなり長い間洗浄面に接触してもよい。適切なエッチング時間は除去する金属酸化物の厚さに応じて、約1時間、約5時間または約10時間より長くてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、例えば超音波により、かつ/または研磨パッドおよび/もしくはブラシなどを用いた洗浄面の機械的な研磨により、エッチングが機械的に促進される。撹拌装置および/または流体ポンプなどを用いて組成物を撹拌するか、循環させることにより、新鮮なエッチング組成物を洗浄面に補充できる。
【0022】
前述のように、いくつかの実施形態におけるエッチング組成物は研磨粒子を含む。これらの実施形態では、例えば高圧洗浄、超音波、かき混ぜ、それらの組み合わせなどにより、機械的洗浄が開始される。
【0023】
工程130において、例えば脱イオン水、蒸留水、アルコール、アンモニア、有機溶媒、それらの組み合わせなどの任意の適切な剤を用いたすすぎなどにより、エッチングは完了する。選択性のための阻害剤は金属部に化学吸着されている可能性があり、これはその表面における未加工のチタンのパッシベーション層を修復するために、そして反応器の汚染を回避するために除去されるべきである。この汚染はチャンバ表面におけるその後の堆積の付着に影響を与える、または層が堆積する基板を汚染する可能性がある。化学吸着した阻害剤(没食子酸など)の除去は、オゾン処理され、脱イオン化されたすすぎ、プラズマ処理、過酸化物、モノペルオキシ硫酸塩もしくはジペルオキシ硫酸塩、またはペルオキシ無機酸化剤などの酸化処理にさらすことにより援助できる。
【0024】
いくつかの実施形態では、洗浄された面は、例えば研磨によりさらに処理される。洗浄された面は構成要素の条件に加えて、洗浄の有効性を評価するために検査される。構成要素は必要に応じて磨き直され、例えば表面が新しくされる。検査に合格した構成要素は次に必要に応じて再び評価され、運転に戻される。
【0025】
阻害剤が存在しない塩基性のエッチング液との接触によりチタンは酸化し、二酸化チタン(TiO2、チタニア)の表層に多孔質を形成する傾向がある。二酸化チタンのこの層はそれ自体を保護しない、つまり、金属のさらなる酸化を防止しない。この結果、塩基のエッチング液への継続的な暴露により、厚い層の二酸化チタンが形成される。さらに、孔は時間が経つと成長する傾向がある。熱い、高濃度の塩基との接触により、酸化速度が速まる。
【0026】
この多孔性酸化物層は、反応器表面に存在すると処理スループットおよび再現性に悪影響を与える。放散によるプロセスガスの除去が制限されるため、このガスは酸化物の孔内に留まり、浄化時間を長くする。多孔質表面はまた、類似の未酸化のチタン表面よりも大きい表面領域を有し、表面に吸収されるプロセスガスの量を増大する。これにより、プロセスガスの消費量が増大し、処理時間が長くなる。これらの問題は、ALD堆積過程において特に顕著になる。二酸化チタンはチタンよりも密度が小さいため、構成要素の外形寸法が変化し、限界寸法を変えうる。二酸化チタン層はさらに、はがれかつ/または砕け易いため、汚染粒子を生成する。仮に酸化物層が除去されたとしても、チタンの酸化は構成要素の外形寸法を変更して、重要な特性を変化させるため、構成要素の耐用年数が短くなる。
【0027】
没食子酸などの阻害剤は、エッチング液による酸化に耐性を有する層をチタンまたはチタン合金面に形成すると考えられている。
【0028】
同様に、適当な選択性がないと、他の金属(ステンレス鋼、ニッケル、またはニッケル合金など)の全面における金属酸化物をエッチングする際に、他の金属反応器の一部もまた損傷することがある。
【実施例】
【0029】
実施例1
没食子酸のエッチング速度への効果
図2はチタン薄板210(2.3cm×2.8cm×1mm)およびアルミナストリップ220を備えた試験サンプル200を示す。2組の試験サンプルを形成した。各組の一方のサンプルは厚いアルミナ層(約49μm)を有し、他方のサンプルは薄いアルミナ層(〜7μm)を有した。試験サンプルをイソプロパノールを用いて洗浄し、蒸留水ですすぎ、そしてエッチング前に窒素を用いて乾燥した。温度制御された水浴内の二重壁のビーカー内でエッチングした。一方の組の試験サンプルは、80℃で40分間、0.5MのKOHの水溶液中でエッチングした。他方の組の試験サンプルは、80℃で40分間、0.5MのKOH、0.05Mの没食子酸、0.05Mのテトラホウ酸ナトリウム(Na2B4O7)の水溶液中でエッチングした。特別な定めのない限り、全ての試薬はAldrich Chemical社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から購入し、浄化せずに用いた。エッチング後、試験サンプルを蒸留水ですすぎ、窒素気流で乾燥させた。エッチングの前後に、表面形状測定法(カリフォルニア州サンノゼのKLA−Tencor)を用いてアルミナ工程における高さを測定した。結果を表1にまとめた。
【表1】
【0030】
没食子酸が存在しない場合の酸化アルミニウムのエッチング速度は、12.9μm/hrであった。没食子酸が存在する場合は11.8μm/hrであった。没食子酸は酸化アルミニウムのエッチング速度に顕著には影響を与えなかった。
【0031】
実施例2
電界放出形走査電子顕微鏡法
表面モルホロジーにおけるエッチング効果を確かめるために、実施例1のエッチングされた試験サンプルにおいて、電界放出形走査電子顕微鏡法(FESEM)を実行した。撮像前に、各サンプルの端部を280、その後1200グリットのエメリー研磨紙を用いて研磨した。図2に示す領域1(エッチング前にAl2O3に覆われていないチタン)および領域2(エッチング前にAl2O3に覆われているチタン)における画像を得た。
【0032】
図3Aは没食子酸塩が存在しない場合のエッチングされたサンプルの領域1を撮像した図である。チタン表面に酸化物層が形成された。酸化物層は非常に薄く、端部から視認できなかった。それ故、視認性を改善するためにサンプルを傾けた。サンプルの上部と側面との間の端部を暗線により示す。40分のみの暴露により、酸化物層は薄く、かつ断続的に形成される。加速電圧は5kVであり、倍率は4万倍であった。図3Bは同一サンプルの領域2を撮像した図である。エッチングによりさらされたチタン表面には、ひと続きの隆起部が示され、アルミナの除去後の、この領域に基礎をなすチタンのエッチングを示唆する。加速電圧は5kVであり、倍率は6万倍であった。
【0033】
図4Aは没食子酸塩が存在する場合のエッチングされたサンプルの領域1を撮像した図である。多孔質二酸化チタンではないように見えるサンプル表面に膜が形成された。加速電圧は5kVであり、倍率は4万倍であった。図4Bは同一サンプルの領域2を撮像した図である。多孔質二酸化チタンではないように見える図4Aの膜に類似するように見えるチタン表面に膜が形成された。加速電圧は5kVであり、倍率は6万倍であった。
【0034】
没食子酸塩が存在せずにエッチングしたサンプルにチタン酸化物が形成された。没食子酸塩が存在する場合のエッチングされたサンプルに非多孔質表面が残った。したがって、没食子酸は、KOH溶液内でのアルミナのエッチング速度に影響を与えずに、多孔質層の形成を抑制する。
【0035】
実施例3
エッチング後のチタン表面の特性解析
厚さが7μmの酸化アルミニウム層を用いた試験サンプルを、実施例1に記載されたように調整し、80℃で1時間、0.5MのKOH、0.05Mの没食子酸、0.05MのNa2B4O7のエッチング液中でエッチングした。サンプルは蒸留水ですすぎ、実施例2に記載するように端部を研磨した。表面形状測定法により、酸化アルミニウムの完全なエッチングが示された。
【0036】
以前には酸化アルミニウムの下にあったエッチングされた領域における平面のFESEM画像を図5Aおよび図5Bに示す。加速電圧は5.0kVであり、倍率は1千倍であった。
【0037】
図6において1、2、および3と指定した、酸化アルミニウムに以前に覆われていた3つの位置において、エネルギー分散分光法(EDS)X線微量分析をさらに実行した。図6の1、2、および3におけるEDSスペクトルを、それぞれ、対応する図7A〜図7Cに示す。これらのスペクトルは、サンプルにアルミニウムが実質的に残っていないことを明らかにし、エッチングが酸化アルミニウム層を完全に除去したことを示唆する。
【0038】
実施例4
酸化アルミニウムエッチング速度
2つの試験サンプルを調整し、実施例1に記載するようにエッチングした。エッチングは65℃で実行した。一方の実験はエッチング組成物中に0.5MのKOHを用いて、他方は1MのKOHを用いた。サンプルの上部および底部における酸化アルミニウム層の厚さを、表面形状測定法により監視した。結果を表2に一覧で示し、図8Aおよび図8Bにグラフで図示する。これらの両方の実験において、エッチング速度はKOHの濃度によらず類似した。
【表2】
【0039】
別の組の実験では、50℃、65℃、および80℃で、0.5Mおよび1MのKOHにおいてエッチング速度を測定した。結果を表3に一覧で示し、図9にグラフで図示する。
【表3】
【0040】
より高いKOH濃度およびより高温の条件下ではより早いエッチング速度が得られることをこれらの結果は示している。
【0041】
実施例5
チタンにおける水酸化物の効果
チタンサンプルを蒸留水、イソプロパノール、そして再度蒸留水ですすぎ、蒸留水中で超音波処理し、蒸留水、イソプロパノール、そして再度蒸留水ですすぎ、1分間、10パーセントのHNO3中に浸し、そして蒸留水ですすぐことによって洗浄した。次に、実施例1に記載するようにサンプルを2時間または4時間、0.5MのKOH(没食子酸塩を含まない)中でエッチングした。次に蒸留水中ですすぎ、窒素を用いて乾燥させた。FESEM分析のために、実施例2に記載されたように端部を研磨した。
【0042】
図10Aは2時間エッチングしたサンプルの端部におけるFESEM画像であり、厚さが約3μmの二酸化チタン層および基礎をなすチタンを示す。二酸化チタン層は多孔質ハニカム構造を有する。二酸化チタンは約1.5μm/hr(250Å/分)で形成した。加速電圧は5kVであり、倍率は2万倍であった。
【0043】
図10Bは2時間エッチングした別のサンプルの端部におけるFESEM画像である。このサンプルではチタン酸化物層の厚さは均一ではないが、約1μm〜約3μmの範囲にある。この場合も多孔質ハニカム構造である。加速電圧は5kVであり、倍率は2万倍であった。
【0044】
図10Cは4時間エッチングしたサンプルの端部におけるFESEM画像である。このサンプルではチタン酸化物層の厚さは、約5μm〜約6μmの範囲にある。このサンプルの孔は、2時間エッチングしたサンプルの孔よりも大きいように見える。加速電圧は5kVであり、倍率は1.5万倍であった。
【0045】
実施例6
チタンにおける没食子酸塩を伴う水酸化物の効果
実施例5に記載するように、80℃で1時間、0.5MのKOH、0.05Mの没食子酸、0.05MのNa2B4O7を用いてチタンサンプルを洗浄かつエッチングし、次にすすぎ、乾燥し、そして端部を研磨した。図11はサンプルの端部におけるFESEM画像であり、表層および基礎をなすチタンを示す。実験例5の酸化物層よりも、この表層は比較的薄くかつ平坦である。この表層は多孔質でもない。この層は基礎をなすチタン層を化学攻撃から保護する、没食子酸または没食子酸塩層であると考えられる。
【0046】
図示および記載した前述の実施形態は、特定の好ましい例示的な実施形態としてのみ提供される。添付の請求項のみにより限定される、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に提示された実施形態の種々の変更および変形が当業者によりなされうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体反応器の金属部における金属酸化物を選択的にエッチングする方法であって、
金属部の表面にアルカリ性エッチング液を接触させることであって、ここで、前記金属部の前記表面には金属酸化物が存在し、前記アルカリ性エッチング液は前記金属酸化物のエッチングに効果的であり、前記金属部は前記アルカリ性エッチング液による化学攻撃の影響を受けやすい、接触させることと、
前記金属部の前記表面に、前記アルカリ性エッチング液による前記金属部の化学攻撃の抑制に効果的な阻害剤を接触させることと、を含む方法。
【請求項2】
前記金属酸化物は酸化ハフニウムおよび酸化ジルコニウムの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属部はステンレス鋼、ニッケル、およびニッケル合金の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属部はチタンおよびチタン合金の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ性エッチング液はアルカリ金属水酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記阻害剤はポリヒドロキシベンゼン化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記阻害剤は没食子酸を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
金属基板の表面に、前記阻害剤の安定に効果的な安定剤を接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記安定剤はホウ酸塩種を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
接触工程の少なくとも一部は約0℃〜約100℃で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属酸化物は酸化アルミニウムであり、前記金属部の前記表面に前記アルカリ性エッチング液と前記阻害剤とを接触させることは、少なくとも約2μm/hrのエッチング速度で前記酸化アルミニウムをエッチングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化アルミニウムの前記エッチング速度は、少なくとも約8μm/hrである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属部の前記表面に前記アルカリ性エッチング液と前記阻害剤とを接触させることは、1μm/hr未満のエッチング速度で前記金属部をエッチングすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記金属部の前記表面に前記アルカリ性エッチング液と前記阻害剤とを接触させることは、少なくとも20対1のエッチング選択性により、前記金属部全体から前記金属酸化物を選択的にエッチングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記エッチング選択性は少なくとも30対1である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記金属部は酸化アルミニウムの堆積に用いられる化学気相堆積または原子層堆積反応チャンバの構成要素の内面である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記阻害剤を酸化処理により前記金属部から除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
酸化アルミニウムの堆積に用いられる堆積反応器のチタンまたはチタン合金面における酸化アルミニウムをex situで湿式洗浄する方法であって、
酸化アルミニウム層が堆積する堆積反応器のチタンまたはチタン合金面に、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくとも1つを含むエッチング液を接触させることと、
前記チタンまたはチタン合金面にポリヒドロキシベンゼン化合物を含む阻害剤を接触させることと、
前記チタンまたはチタン合金面にホウ酸塩種を含む安定剤を接触させることと、を含む方法。
【請求項20】
前記阻害剤は没食子酸を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
金属部における金属酸化物を選択的に洗浄するためのエッチング組成物であって、
金属部全体から金属酸化物をエッチングするのに効果的な量のアルカリ性エッチング液と、
前記アルカリ性エッチング液による前記金属部のエッチングの抑制に効果的な量の阻害剤と、を含むエッチング組成物。
【請求項22】
前記金属酸化物は酸化アルミニウムである、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項23】
前記金属酸化物は酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項24】
前記アルカリ性エッチング液はアルカリ金属水酸化物を含む、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項25】
前記アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくとも1つである、請求項24に記載のエッチング組成物。
【請求項26】
前記アルカリ性エッチング液の濃度は約0.1M〜約10Mである、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項27】
前記アルカリ性エッチング液の濃度は約0.5M〜約1Mである、請求項26に記載のエッチング組成物。
【請求項28】
前記阻害剤はポリヒドロキシベンゼン化合物を含む、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項29】
前記阻害剤とアルカリ性エッチング液とのモル比は、少なくとも約1対10である、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項30】
前記金属部はチタンおよびチタン合金の少なくとも1つを含む、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項31】
前記金属部はステンレス鋼、ニッケル、およびニッケル合金の少なくとも1つを含む、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項32】
前記阻害剤の安定に効果的な量の安定剤をさらに含む、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項33】
前記安定剤はホウ酸塩種を含む、請求項32に記載のエッチング組成物。
【請求項34】
水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくともいずれかを含む約0.5M〜約1Mのアルカリ性エッチング液と、
前記アルカリ性エッチング液とのモル比が少なくとも1対10である、没食子酸を含む阻害剤と、
前記阻害剤とのモル比が約1対10〜約10対1であるホウ酸塩種を含む安定剤と、を含む、請求項32に記載のエッチング組成物。
【請求項1】
半導体反応器の金属部における金属酸化物を選択的にエッチングする方法であって、
金属部の表面にアルカリ性エッチング液を接触させることであって、ここで、前記金属部の前記表面には金属酸化物が存在し、前記アルカリ性エッチング液は前記金属酸化物のエッチングに効果的であり、前記金属部は前記アルカリ性エッチング液による化学攻撃の影響を受けやすい、接触させることと、
前記金属部の前記表面に、前記アルカリ性エッチング液による前記金属部の化学攻撃の抑制に効果的な阻害剤を接触させることと、を含む方法。
【請求項2】
前記金属酸化物は酸化ハフニウムおよび酸化ジルコニウムの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属部はステンレス鋼、ニッケル、およびニッケル合金の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属部はチタンおよびチタン合金の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ性エッチング液はアルカリ金属水酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記阻害剤はポリヒドロキシベンゼン化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記阻害剤は没食子酸を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
金属基板の表面に、前記阻害剤の安定に効果的な安定剤を接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記安定剤はホウ酸塩種を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
接触工程の少なくとも一部は約0℃〜約100℃で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属酸化物は酸化アルミニウムであり、前記金属部の前記表面に前記アルカリ性エッチング液と前記阻害剤とを接触させることは、少なくとも約2μm/hrのエッチング速度で前記酸化アルミニウムをエッチングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化アルミニウムの前記エッチング速度は、少なくとも約8μm/hrである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属部の前記表面に前記アルカリ性エッチング液と前記阻害剤とを接触させることは、1μm/hr未満のエッチング速度で前記金属部をエッチングすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記金属部の前記表面に前記アルカリ性エッチング液と前記阻害剤とを接触させることは、少なくとも20対1のエッチング選択性により、前記金属部全体から前記金属酸化物を選択的にエッチングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記エッチング選択性は少なくとも30対1である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記金属部は酸化アルミニウムの堆積に用いられる化学気相堆積または原子層堆積反応チャンバの構成要素の内面である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記阻害剤を酸化処理により前記金属部から除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
酸化アルミニウムの堆積に用いられる堆積反応器のチタンまたはチタン合金面における酸化アルミニウムをex situで湿式洗浄する方法であって、
酸化アルミニウム層が堆積する堆積反応器のチタンまたはチタン合金面に、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくとも1つを含むエッチング液を接触させることと、
前記チタンまたはチタン合金面にポリヒドロキシベンゼン化合物を含む阻害剤を接触させることと、
前記チタンまたはチタン合金面にホウ酸塩種を含む安定剤を接触させることと、を含む方法。
【請求項20】
前記阻害剤は没食子酸を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
金属部における金属酸化物を選択的に洗浄するためのエッチング組成物であって、
金属部全体から金属酸化物をエッチングするのに効果的な量のアルカリ性エッチング液と、
前記アルカリ性エッチング液による前記金属部のエッチングの抑制に効果的な量の阻害剤と、を含むエッチング組成物。
【請求項22】
前記金属酸化物は酸化アルミニウムである、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項23】
前記金属酸化物は酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項24】
前記アルカリ性エッチング液はアルカリ金属水酸化物を含む、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項25】
前記アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくとも1つである、請求項24に記載のエッチング組成物。
【請求項26】
前記アルカリ性エッチング液の濃度は約0.1M〜約10Mである、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項27】
前記アルカリ性エッチング液の濃度は約0.5M〜約1Mである、請求項26に記載のエッチング組成物。
【請求項28】
前記阻害剤はポリヒドロキシベンゼン化合物を含む、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項29】
前記阻害剤とアルカリ性エッチング液とのモル比は、少なくとも約1対10である、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項30】
前記金属部はチタンおよびチタン合金の少なくとも1つを含む、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項31】
前記金属部はステンレス鋼、ニッケル、およびニッケル合金の少なくとも1つを含む、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項32】
前記阻害剤の安定に効果的な量の安定剤をさらに含む、請求項21に記載のエッチング組成物。
【請求項33】
前記安定剤はホウ酸塩種を含む、請求項32に記載のエッチング組成物。
【請求項34】
水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくともいずれかを含む約0.5M〜約1Mのアルカリ性エッチング液と、
前記アルカリ性エッチング液とのモル比が少なくとも1対10である、没食子酸を含む阻害剤と、
前記阻害剤とのモル比が約1対10〜約10対1であるホウ酸塩種を含む安定剤と、を含む、請求項32に記載のエッチング組成物。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【公表番号】特表2012−525705(P2012−525705A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508502(P2012−508502)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/029562
【国際公開番号】WO2010/126675
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(500019890)エーエスエム アメリカ インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/029562
【国際公開番号】WO2010/126675
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(500019890)エーエスエム アメリカ インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】
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