説明

圧電体膜、圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、薄膜圧電共振子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、および電子機器

【課題】 良好な圧電特性を有する圧電体膜を提供する。
【解決手段】 本発明に係る圧電体膜は,
ペロブスカイト型の圧電体膜であって、
擬立方晶(100)に優先配向しており、
モノクリニック構造(図のMで示される領域)を有し、
分極軸方向は、擬立方晶<111>方向と,擬立方晶<100>方向との間である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体膜、圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、薄膜圧電共振子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
高画質、高速印刷を可能にするプリンターとして、インクジェットプリンターが知られている。インクジェットプリンターは、内容積が変化するキャビティーを備えたインクジェット式記録ヘッドを備え、このヘッドを走査させつつそのノズルからインク滴を吐出することにより、印刷を行うものである。このようなインクジェットプリンター用のインクジェット式記録ヘッドにおけるヘッドアクチュエーターとしては、従来、PZT(Pb(Zr,Ti)O)に代表される圧電体膜を用いた圧電素子が用いられている(例えば、特開2001−223404号公報参照)。
【0003】
また、圧電体膜を有するその他のデバイスにおいても、その特性向上が望まれていることから、良好な圧電特性を有する圧電体膜の提供が望まれている。
【特許文献1】特開2001−223404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、良好な圧電特性を有する圧電体膜を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記圧電体膜を用いた圧電素子、該圧電素子を用いた圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、薄膜圧電共振子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る圧電体膜は、
ペロブスカイト型の圧電体膜であって、
擬立方晶(100)に優先配向しており、
モノクリニック構造を有し、
分極軸方向は、擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間である。
【0006】
本発明において、「擬立方晶」とは、結晶構造を立方晶とみなした状態をいう。
【0007】
本発明において、「優先配向」とは、100%の結晶が所望の(100)配向になっている場合と、所望の(100)配向にほとんどの結晶(例えば90%以上)が配向し、残りの結晶が他の配向(例えば(111)配向)となっている場合と、を含む。
【0008】
この圧電体膜によれば、分極軸方向が擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間であるモノクリニック構造を有する。これにより、この圧電体膜は良好な圧電特性を有する。
【0009】
本発明に係る圧電体膜において、
分極軸方向と、擬立方晶<111>方向との成す角δは、0.0°<δ≦10.0°の範囲であることができる。
【0010】
本発明に係る圧電体膜において、
Pb(Zr1−xTi)Oからなり、
xは、0.43≦x≦0.53の範囲であることができる。
【0011】
本発明に係る圧電素子は、上述の圧電体膜を有することができる。
【0012】
本発明に係る圧電素子は、
ペロブスカイト型の圧電体膜を有する圧電素子であって、
基板と、
前記基板の上方に形成された下部電極と、
前記下部電極の上方に形成された圧電体膜と、
前記圧電体膜の上方に形成された上部電極と、を含み、
前記圧電体膜は、擬立方晶(100)に優先配向しており、
前記圧電体膜内に、擬立方晶<100>方向の電界が生じている状態において、
前記圧電体膜は、モノクリニック構造を有し、かつ、前記圧電体膜の分極軸方向は、擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間である。
【0013】
本発明において、特定のもの(以下、「A」という)の上方に形成された他の特定のもの(以下、「B」という)とは、A上に直接形成されたBと、A上に、A上の他のものを介して形成されたBと、を含む。また、本発明において、Aの上方にBを形成するとは、A上に直接Bを形成する場合と、A上に、A上の他のものを介してBを形成する場合と、を含む。
【0014】
この圧電素子によれば、前記圧電体膜は、分極軸方向が擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間であるモノクリニック構造を有する。これにより、前記圧電体膜は良好な圧電特性を有する。従って、圧電素子としても高性能なものとなる。特に、前記圧電体膜の絶縁性が良好であることから、圧電素子の繰り返し耐久性が飛躍的に向上する。
【0015】
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体膜の分極軸方向と、擬立方晶<111>方向との成す角δは、0.0°<δ≦10.0°の範囲であることができる。
【0016】
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体膜は、Pb(Zr1−xTi)Oからなり、
xは、0.43≦x≦0.53の範囲であることができる。
【0017】
本発明に係る圧電アクチュエーターは、上述の圧電素子を有することができる。
【0018】
本発明に係る圧電ポンプは、上述の圧電素子を有することができる。
【0019】
本発明に係るインクジェット式記録ヘッドは、上述の圧電素子を有することができる。
【0020】
本発明に係るインクジェットプリンターは、上述のインクジェット式記録ヘッドを有することができる。
【0021】
本発明に係る表面弾性波素子は、上述の圧電素子を有することができる。
【0022】
本発明に係る薄膜圧電共振子は、上述の圧電素子を有することができる。
【0023】
本発明に係る周波数フィルタは、上述の表面弾性波素子および上述の薄膜圧電共振子のうちの少なくとも一方を有することができる。
【0024】
本発明に係る発振器は、上述の表面弾性波素子および上述の薄膜圧電共振子のうちの少なくとも一方を有することができる。
【0025】
本発明に係る電子回路は、上述の周波数フィルタおよび上述の発振器のうちの少なくとも一方を有することができる。
【0026】
本発明に係る電子機器は、上述の圧電ポンプおよび上述の電子回路のうちの少なくとも一方を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
1.第1の実施形態
1−1.圧電体膜および圧電素子
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る圧電素子1を示す断面図である。この圧電素子1は、基板2と、基板2の上に形成された弾性膜3と、弾性膜3の上に形成された下部電極4と、下部電極4の上に形成された圧電体膜5と、圧電体膜5の上に形成された上部電極6と、を含む。下部電極4と上部電極6との間には、例えば100kV/cm〜400kV/cmの電界が印加されることによって、圧電変形を圧電体膜5に生じさせることができる。
【0029】
基板2は、例えばシリコン基板を用いることができる。本実施形態において、基板2には、(110)配向の単結晶シリコン基板を用いている。なお、基板2としては、(100)配向の単結晶シリコン基板または(111)配向の単結晶シリコン基板なども用いることができる。また、基板2としては、シリコン基板の表面に、熱酸化膜または自然酸化膜などのアモルファスの酸化シリコン膜を形成したものも用いることができる。基板2は加工されることにより、後述するようにインクジェット式記録ヘッド50においてインクキャビティー521を形成するものとなる(図9参照)。
【0030】
弾性膜3は、後述するように、インクジェット式記録ヘッド50において弾性膜55として機能する。弾性膜3の膜厚は、例えば1μm程度に形成される。なお、後述するインクジェット式記録ヘッド50に複数の圧電素子1が形成される場合、各圧電素子1は、基板2および弾性膜3を共用することができる。
【0031】
下部電極4は、圧電体膜5に電圧を印加するための一方の電極である。下部電極4は、例えば、圧電体膜5と同じ平面形状に形成されることができる。なお、後述するインクジェット式記録ヘッド50に複数の圧電素子1が形成される場合、下部電極4は、各圧電素子1に共通の電極として機能するよう、共通の弾性膜3と同じ平面形状に形成されることもできる。下部電極4の膜厚は、例えば50nm〜200nm程度に形成されている。
【0032】
圧電体膜5は、ペロブスカイト型構造を有する。本実施形態では、圧電体膜5は、ペロブスカイト型のPb(Zr1−xTi)O(以下、「PZT」ともいう)からなる場合について説明する。圧電体膜5は、擬立方晶(100)に優先配向している。圧電体膜5は、モノクリニック構造を有し、かつ、分極軸方向は、擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間である。言い換えるならば、圧電体膜5は、分極軸方向が擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間であるモノクリニック構造を有する。
【0033】
モノクリニック構造で擬立方晶(100)に優先配向している圧電体膜5は、特に温度等の成膜条件や下部電極4からのエピタキシャル応力などを調整することで得られる。このように、圧電体膜5は、ペロブスカイト型でモノクリニック構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向している。従って、圧電体膜5は、高い圧電定数(d31)を有する。具体的な理由は、以下の通りである。
【0034】
擬立方晶を基本とするペロブスカイト型構造のうちの1つであるモノクリニック構造は、他の構造に比べ、シェアモード変形に対するコンプライアンス(skj)が大きい。圧電定数(dij)は、コンプライアンス(skj)およびピエゾ圧電定数(eik)により、
ij=eik・skj
で与えられる。ピエゾ圧電定数(eik)に関しては、テトラゴナル構造、モノクリニック構造、およびロンボヘドラル構造において、それほど大きな差はない。コンプライアンス(skj)に関しては、モノクリニック構造が他の構造に比べて、有意に大きい。従って、モノクリニック構造を有する圧電体膜5は、高い圧電定数(d31)を有すると考えられる。
【0035】
さらに、分極軸方向が擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間であるモノクリニック構造は、ロンボヘドラル構造に比べ、安定な構造と考えられる。この理由は、以下の通りである。
【0036】
図2は、シェアモードの変形度合に対する、PbTiOのユニットセル当たりの全エネルギーを、第一原理電子状態シミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。計算は、局所密度近似の範囲での密度汎関数法に基づいて行った。一電子波動関数は、擬ポテンシャル法によって解かれた。グラフの縦軸は、シェアモードの変形度合が0%のときのエネルギーを基準(0.0Hartree)とした相対値で示してある。1Hartreeは、27.2eVである。
【0037】
図3は、シミュレーションに用いた格子モデルを模式的に示す図である。基準構造のユニットセルは、a=b=c=397.06pm、α=β=γ=90°とした。シミュレーションは、まず、基準構造について内部原子を緩和させて、擬立方晶<111>方向(図3に示す矢印Pの方向)に分極させた(ロンボヘドラル構造の状態)。そして、擬立方晶<111>方向と直交する面内で、擬立方晶<001>方向(図3に示す矢印Sの方向)に格子を歪ませた(シェアモードの変形)。なお、シェアモードの変形ごとに、内部原子を緩和させた。図4は、結晶の分極軸方向の変化を模式的に示す図である。シェアモードの変形度合が増加するにつれて、結晶の分極軸方向Pは、図4に示すように、擬立方晶<111>方向から擬立方晶<100>方向に向かう(図4に示す矢印a)。図2に示すように、シェアモードの変形度合がゼロから増加するにつれて、系の全エネルギーは低くなる。系の全エネルギーは、低い方が系としては安定である。従って、分極軸方向が擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間であるモノクリニック構造は、ロンボヘドラル構造に比べ、安定であると予測される。なお、系の全エネルギーが最小値となるシェアモードの変形度合は、約9%である。このときの分極軸方向Pと、<111>方向との成す角δは、約5.7°である。
【0038】
圧電体膜5の分極軸方向Pと、擬立方晶<111>方向との成す角δは、
0.0°<δ≦10.0°
の範囲であることが好ましい。δが、10.0°より大きくなると、コンプライアンスが低下し、圧電性が低下してしまうからである。
【0039】
なお、便宜上、PbTiOについてのシミュレーションを行ったが、PZTの場合も、結果は同様であると予測される。これは、モノクリニック構造を示す組成域のPZTは、a=b=c=400pm、α=β=γ=90°とすることができ、今回のシミュレーションと同一の条件を満たしているからである。
【0040】
また、上述したシミュレーションの結果は、実際の印加電界(例えば、100kV/cm〜400kV/cm)においても変わることはない。
【0041】
上述したように、圧電体膜5は、Pb(Zr1−xTi)O[PZT]からなることができる。図5は、PZTの相図の一例である。図5において、Rは、ロンボヘドラル構造の領域、Mは、モノクリニック構造の領域、Tは、テトラゴナル構造の領域、Cは、キュービック構造の領域を示している。Pb(Zr1−xTi)Oにおけるxは、ある範囲を有する。xの下限値としては、圧電体膜5のロンボヘドラル構造とモノクリニック構造との相境界(以下、「MPB」とも言う。)におけるxの値(以下、「xMPB1」ともいう。)となる。MPBにおけるxの値(xMPB1)とは、ロンボヘドラル構造とモノクリニック構造とが相転移するときのTiの組成比を示す値である。xの上限値としては、圧電体膜5のモノクリニック構造とテトラゴナル構造との相境界(以下、「MPB」とも言う。)におけるxの値(以下、「xMPB2」ともいう。)となる。MPBにおけるxの値(xMPB2)とは、モノクリニック構造とテトラゴナル構造とが相転移するときのTiの組成比を示す値である。すなわち、xは、
MPB1≦x≦xMPB2
の範囲となる。xがこの範囲であれば、圧電体膜5は、モノクリニック構造を有する。図5に示す例では、xは、
0.43≦x≦0.53
である。xが0.53より大きいと、系はテトラゴナル構造になり、xが0.43より小さいと、系はロンボヘドラルになる。これらの場合、系のコンプライアンスが低下してしまう。なお、図5に示す相図は一例であり、膜中応力および格子欠陥などの因子によって変わり得る。
【0042】
xが上述の範囲内であれば、圧電体膜5を容易にモノクリニック構造にコントロールすることができ、高い圧電特性を発現できる。
【0043】
圧電体膜5の膜厚は、例えば300nm〜1500nm程度である。この厚みの上限値に関しては、薄膜としての緻密さ、結晶配向性を維持する範囲で厚くすることができ、10μm程度まで許容できる。
【0044】
上部電極6は、圧電体膜5に電圧を印加するための他方の電極である。上部電極6の厚さは、例えば50〜200nm程度である。
【0045】
本実施形態において組成の決定には、ICP法、XPS法、およびSIMS法のうちの少なくとも一つを用いることができる。結晶の配向性の決定には、XRD(X−Ray Diffraction)法を用いることができる。結晶構造の決定には、XRD法およびラマン散乱法のうちの少なくとも一つを用いることができる。
【0046】
1−2.圧電体膜および圧電素子の製造方法
次に、本実施形態における圧電体膜5および圧電素子1の製造方法について説明する。
【0047】
(1)まず、表面が(110)面であるシリコン基板からなる基板2を用意する。次に、図6に示すように、基板2上に弾性膜3を形成する。弾性膜3は、後述するように、基板2をエッチングしてキャビティーを形成する際に、弾性膜3がエッチングストッパ層として機能するべく、基板2との間で十分なエッチング選択比がとれる材料で形成するのが好ましい。基板2としてシリコンを用いた場合には、このような材料としては、例えばSiOまたはZrOなどが挙げられる。弾性膜3は、例えばCVD法、スパッタ法、または、蒸着法などにより形成することができる。
【0048】
(2)次に、図7に示すように、弾性膜3の上に下部電極4を形成する。下部電極4は、例えばスパッタ法あるいは真空蒸着法などによって形成することができる。下部電極4は、例えばPt(白金)からなる。Ptは、比較的容易に(111)に優先配向するものである。従って、例えばスパッタ法等の比較的簡易な方法を採用して、弾性膜3の上にPtを容易に配向成長させることができる。なお、下部電極4の材料は、Ptに限定されることなく、例えば、Ir(イリジウム)、IrO(酸化イリジウム)、SrRuO、Nb−SrTiO、La−SrTiO、Nb−(La,Sr)CoO、LaNiO、または、PbBaOなどを用いることができる。ここで、Nb−SrTiOはSrTiOにNbをドープしたものであり、La−SrTiOはSrTiOにLaをドープしたものであり、Nb−(La,Sr)CoOは(La,Sr)CoOにNbをドープしたものである。下部電極4として、例えばSrRuOのようなペロブスカイト型構造を有する電極(以下、「ペロブスカイト型電極」ともいう。)を用いることにより、製造工程において、下部電極4の上に形成される圧電体膜5をより容易に擬立方晶(100)に優先配向させることができる。特に、ペロブスカイト型電極の形成は、その厚み方向に対して、例えば45度傾いた方向から、不活性原子からなるイオンを加速して、ペロブスカイト型電極の形成面に照射しながら行うことができる。これにより、ペロブスカイト型電極に不活性原子が取り込まれ、ペロブスカイト型電極の格子定数が、本来の値よりも減少する。このことによるエピタキシャル応力が、下部電極4の上に形成される圧電体膜5に影響し、圧電体膜5が容易にモノクリニック構造に転移しやすくなると考えられる。不活性原子としては、例えば、Ar、Kr、およびXeのうちの少なくとも一つを用いることができる。また、イオンは、例えば100kV程度の電圧により加速させることができる。
【0049】
(3)次に、図8に示すように、下部電極4上に圧電体膜5を形成する。まず、Pb、Zr、およびTiのうちの少なくとも一つを含む第1および第2の原料溶液を用いて、圧電体膜5が所望の組成比となるように、第1および第2の原料溶液を所望の比で混合する。この混合溶液(前駆体溶液)をスピンコート法や液滴吐出法等の塗布法で下部電極4上に配する。次に、焼成等の熱処理を行うことにより、前駆体溶液に含まれる酸化物を結晶化させて、圧電体膜5を得る。
【0050】
より具体的には、まず、前駆体溶液の塗布工程、乾燥熱処理工程、および脱脂熱処理工程の一連の工程を所望の回数行う。次に、結晶化アニールを行うことで圧電体膜5を形成する。
【0051】
前駆体溶液の形成材料である原料溶液については、PZTの構成金属をそれぞれ含んでなる有機金属を各金属が所望のモル比となるように混合し、さらにアルコールなどの有機溶媒を用いてこれらを溶解、または分散させることにより作製する。PZTの構成金属をそれぞれ含んでなる有機金属としては、金属アルコキシドや有機酸塩といった有機金属を用いることができる。具体的には、PZTの構成金属を含むカルボン酸塩またはアセチルアセトナート錯体として、例えば、以下のものが挙げられる。
【0052】
鉛(Pb)を含む有機金属としては、例えば酢酸鉛などが挙げられる。ジルコニウム(Zr)を含む有機金属としては、例えばジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。チタン(Ti)を含む有機金属としては、例えばチタンイソプロポキシドなどが挙げられる。なお、PZTの構成金属を含んでなる有機金属としては、これらに限定されるわけではない。
【0053】
第1の原料溶液としては、PZTの構成金属元素のうち、PbおよびZrによるPbZrOペロブスカイト結晶を形成するための縮重合体を、n−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液が例示できる。
【0054】
第2の原料溶液としては、PZTの構成金属元素のうち、PbおよびTiによるPbTiOペロブスカイト結晶を形成するための縮重合体を、n−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液が例示できる。
【0055】
原料溶液には、必要に応じて安定化剤等の各種添加剤を添加することができる。さらに、原料溶液に加水分解・重縮合を起こさせる場合には、原料溶液に適当な量の水とともに、触媒として酸あるいは塩基を添加することができる。
【0056】
前駆体溶液の塗布工程では、混合液の塗布をスピンコートなどの塗布法で行う。まず、下部電極4上に混合溶液を滴下する。滴下された溶液を下部電極4全面に行き渡らせる目的でスピンを行う。スピンの回転数は、例えば初期では500rpm程度とし、続いて塗布ムラが起こらないように回転数を2000rpm程度に上げることができる。このようにして、塗布を完了させることができる。
【0057】
乾燥熱処理工程では、大気雰囲気下でホットプレート等を用い、前駆体溶液に用いた溶媒の沸点より例えば10℃程度高い温度で熱処理(乾燥処理)を行う。乾燥熱処理工程は、例えば150℃〜180℃で行う。
【0058】
脱脂熱処理工程では、前駆体溶液に用いた有機金属の配位子を分解/除去するべく、大気雰囲気下でホットプレートを用い、350℃〜400℃程度で熱処理を行う。
【0059】
結晶化アニール、すなわち結晶化のための焼成工程では、酸素雰囲気中で、例えば600℃程度で熱処理を行う。この熱処理は、例えばラピッドサーマルアニーリング(RTA)などにより行うことができる。
【0060】
焼結後の圧電体膜5の膜厚は300〜1500nm程度とすることができる。なお、上述した例では、圧電体膜5を液相法で形成する例について述べたが、スパッタ法、分子線エピタキシー法、またはレーザーアブレーション法等の気相法を用いて、圧電体膜5を形成することもできる。
【0061】
(7)次に、図1に示すように、圧電体膜5上に上部電極6を形成する。上部電極6は、例えばスパッタ法あるいは真空蒸着法などによって形成することができる。上部電極6は、例えばPt(白金)からなる。なお、上部電極6の材料は、Ptに限定されることなく、例えば、上述した下部電極4の材料として使用可能なものを用いることができる。
【0062】
(8)次に、必要に応じて、ポストアニールを酸素雰囲気中でRTA等により行うことができる。これにより、上部電極6と圧電体膜5との良好な界面を形成することができ、かつ圧電体膜5の結晶性を改善することができる。
【0063】
以上の工程によって、本実施形態に係る圧電体膜5および圧電素子1を製造することができる。
【0064】
1−3.作用・効果
本実施形態における圧電素子1によれば、圧電体膜5は、分極軸方向が擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間であるモノクリニック構造を有する。これにより、圧電体膜5は良好な圧電特性を有する。従って、圧電素子1としても高性能なものとなる。
【0065】
本実施形態に係る圧電体膜5の圧電定数(d31)は、例えば絶対値で200pC/N程度であることができる。本実施形態に係る圧電素子1のリーク電流は、例えば印加電圧が100kV/cmのときに、10−5A/cm未満であることができる。本実施形態に係る圧電素子1の繰り返し耐久性は、印加電圧が300kV/cmのときに、1×10回を保証することができる。
【0066】
なお、圧電定数(d31)の測定方法は以下のように行うことができる。まず、実際のインクジェット式記録ヘッド50(図9参照)における電圧印加時の圧電体膜5の変位量S1を、レーザー変位計を用いて実測する。この値S1と、有限要素法による圧電変位のシミュレーションで得られた変位量S2とを比較することで、圧電体膜5の実際の圧電定数(d31)と、有限要素法で仮定した圧電体膜5の圧電定数(d'31)との差分を求めることができる。その結果、圧電体膜5の圧電定数(d31)を測定することができる。なお、有限要素法による圧電変位のシミュレーションで必要になる物理量は、各膜のヤング率、膜応力、および仮定した圧電体膜5の圧電定数(d'31)である。本実施形態では、S1は、400nm程度である。また、シミュレーションは、例えば圧電体膜5のヤング率を65GPaとし、面内圧縮応力を110MPaとした。
【0067】
2.第2の実施形態
2−1.インクジェット式記録ヘッド
次に、第1の実施形態に係る圧電素子1を有するインクジェット式記録ヘッドの一実施形態について説明する。図9は、本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す側断面図であり、図10は、このインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。なお、図10は、通常使用される状態とは上下逆に示したものである。
【0068】
インクジェット式記録ヘッド(以下、「ヘッド」ともいう)50は、図9に示すように、ヘッド本体57と、ヘッド本体57の上に設けられた圧電部54と、を含む。なお、図9に示す圧電部54は、図1に示す圧電素子1における弾性膜3、下部電極4、圧電体膜5、および上部電極6に相当する。本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドおいて、圧電素子1は、圧電アクチュエーターとして機能することができる。圧電アクチュエーターとは、ある物質を動かす機能を有する素子である。
【0069】
また、図1に示す圧電素子1における弾性膜3は、図9において弾性膜55に相当する。基板2(図1参照)は、ヘッド本体57の要部を構成するものとなっている。
【0070】
すなわち、ヘッド50は、図10に示すようにノズル板51と、インク室基板52と、弾性膜55と、弾性膜55に接合された圧電部(振動源)54と、を含み、これらが基体56に収納されて構成されている。なお、このヘッド50は、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成している。
【0071】
ノズル板51は、例えばステンレス製の圧延プレート等で構成されたもので、インク滴を吐出するための多数のノズル511を一列に形成したものである。これらノズル511間のピッチは、印刷精度に応じて適宜に設定されている。
【0072】
ノズル板51には、インク室基板52が固着(固定)されている。インク室基板52は、基板2(図1参照)によって形成されたものである。インク室基板52は、ノズル板51、側壁(隔壁)522、および弾性膜55によって、複数のキャビティー(インクキャビティー)521と、リザーバ523と、供給口524と、を区画形成したものである。リザーバ523は、インクカートリッジ631(図13参照)から供給されるインクを一時的に貯留する。供給口524によって、リザーバ523から各キャビティー521にインクが供給される。
【0073】
キャビティー521は、図9および図10に示すように、各ノズル511に対応して配設されている。キャビティー521は、弾性膜55の振動によってそれぞれ容積可変になっている。キャビティー521は、この容積変化によってインクを吐出するよう構成されている。
【0074】
インク室基板52を得るための母材、すなわち基板2(図1参照)としては、(110)配向のシリコン単結晶基板が用いられている。この(110)配向のシリコン単結晶基板は、異方性エッチングに適しているのでインク室基板52を、容易にかつ確実に形成することができる。なお、このようなシリコン単結晶基板は、図1に示す弾性膜3の形成面、すなわち弾性膜55の形成面が(110)面となるようにして用いられている。
【0075】
インク室基板52のノズル板51と反対の側には弾性膜55が配設されている。さらに弾性膜55のインク室基板52と反対の側には複数の圧電部54が設けられている。弾性膜55は、前述したように図1に示す圧電素子1における弾性膜3によって形成されたものである。弾性膜55の所定位置には、図10に示すように、弾性膜55の厚さ方向に貫通して連通孔531が形成されている。連通孔531により、インクカートリッジ631からリザーバ523へのインクの供給がなされる。
【0076】
各圧電部54は、後述する圧電素子駆動回路に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。すなわち、各圧電部54はそれぞれ振動源(ヘッドアクチュエーター)として機能する。弾性膜55は、圧電部54の振動(たわみ)によって振動し(たわみ)、キャビティー521の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。
【0077】
基体56は、例えば各種樹脂材料、各種金属材料等で形成されている。図10に示すように、この基体56にインク室基板52が固定、支持されている。
【0078】
2−2.インクジェット式記録ヘッドの動作
次に、本実施形態におけるインクジェット式記録ヘッド50の動作について説明する。本実施形態におけるヘッド50は、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電部54の下部電極4と上部電極6との間に電圧が印加されていない状態では、図11に示すように圧電体膜5に変形が生じない。このため、弾性膜55にも変形が生じず、キャビティー521には容積変化が生じない。従って、ノズル511からインク滴は吐出されない。
【0079】
一方、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電部54の下部電極4と上部電極6との間に電圧が印加された状態では、図12に示すように、圧電体膜5においてその短軸方向(図12に示す矢印sの方向)にたわみ変形が生じる。これにより、弾性膜55がたわみ、キャビティー521の容積変化が生じる。このとき、キャビティー521内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル511からインク滴58が吐出される。
【0080】
すなわち、電圧を印加すると、圧電体膜5の結晶格子は面方向に対して垂直な方向(図12に示す矢印dの方向)に引き伸ばされるが、同時に面方向には圧縮される。この状態では、圧電体膜5にとっては面内に引っ張り応力fが働いていることになる。従って、この引っ張り応力fによって弾性膜55をそらせ、たわませることになる。キャビティー521の短軸方向での圧電体膜5の変位量(絶対値)が大きければ大きいほど、弾性膜55のたわみ量が大きくなり、より効率的にインク滴を吐出することが可能になる。
【0081】
1回のインクの吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極4と上部電極6との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電部54は図11に示す元の形状に戻り、キャビティー521の容積が増大する。なお、このとき、インクには、インクカートリッジ631からノズル511へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気がノズル511からキャビティー521へと入り込むことが防止され、インクの吐出量に見合った量のインクがインクカートリッジ631からリザーバ523を経てキャビティー521へ供給される。
【0082】
このように、インク滴の吐出を行わせたい位置の圧電部54に対して、圧電素子駆動回路を介して吐出信号を順次入力することにより、任意の(所望の)文字や図形等を印刷することができる。
【0083】
2−3.インクジェット式記録ヘッドの製造方法
次に、本実施形態におけるインクジェット式記録ヘッド50の製造方法の一例について説明する。
【0084】
まず、インク室基板52となる母材、すなわち(110)配向のシリコン単結晶基板からなる基板2を用意する。次に、図1、図6〜図8に示すように、基板2上に弾性膜3、下部電極4、圧電体膜5、および上部電極6を順次形成する。なお、ここで形成した弾性膜3が、弾性膜55となるのは前述した通りである。
【0085】
次に、上部電極6、圧電体膜5、および下部電極4を、図11および図12に示すように、個々のキャビティー521に対応させてパターニングし、図9に示すように、キャビティー521の数に対応した数の圧電部54を形成する。
【0086】
次に、インク室基板52となる母材(基板2)をパターニングし、圧電部54に対応する位置にそれぞれキャビティー521となる凹部を、また、所定位置にリザーバ523および供給口524となる凹部を形成する。
【0087】
本実施形態では、母材(基板2)として(110)配向のシリコン基板を用いているので、高濃度アルカリ水溶液を用いたウェットエッチング(異方性エッチング)が好適に採用される。高濃度アルカリ水溶液によるウェットエッチングの際には、前述したように弾性膜3をエッチングストッパとして機能させることができる。従って、インク室基板52の形成をより容易に行うことができる。
【0088】
このようにして母材(基板2)を、その厚さ方向に弾性膜55が露出するまでエッチング除去することにより、インク室基板52を形成する。このときエッチングされずに残った部分が側壁522となる。露出した弾性膜55は、弾性膜としての機能を発揮し得る状態となる。
【0089】
次に、複数のノズル511が形成されたノズル板51を、各ノズル511が各キャビティー521となる凹部に対応するように位置合わせし、その状態で接合する。これにより、複数のキャビティー521、リザーバ523および複数の供給口524が形成される。ノズル板51の接合については、例えば接着剤による接着法や、融着法などを用いることができる。次に、インク室基板52を基体56に取り付ける。
【0090】
以上の工程によって、本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッド50を製造することができる。
【0091】
2−4.作用・効果
本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッド50によれば、前述したように、圧電部54の圧電体膜5の圧電定数(d31)が高く、印加された電圧に対してより大きな変形をなすものとなっている。すなわち、圧電部54が良好な圧電特性を有する。これにより、弾性膜55のたわみ量が大きくなり、インク滴をより効率的に吐出できる。ここで、効率的とは、より少ない電圧で同じ量のインク滴を飛ばすことができることを意味する。すなわち、駆動回路を簡略化することができ、同時に消費電力を低減することができるため、ノズル511のピッチをより高密度に形成することなどができる。従って、高密度印刷や高速印刷が可能となる。さらには、キャビティー521の長軸の長さを短くすることができるため、ヘッド全体を小型化することができる。
【0092】
3.第3の実施形態
3−1.インクジェットプリンター
次に、第2の実施形態に係るインクジェット式記録ヘッド50を有するインクジェットプリンターの一実施形態について説明する。図13は、本実施形態に係るインクジェットプリンター600を示す概略構成図である。インクジェットプリンター600は、紙などに印刷可能なプリンターとして機能することができる。なお、以下の説明では、図13中の上側を「上部」、下側を「下部」と言う。
【0093】
インクジェットプリンター600は、装置本体620を有し、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ621を有し、下部前方に記録用紙Pを排出する排出口622を有し、上部面に操作パネル670を有する。
【0094】
装置本体620の内部には、主に、往復動するヘッドユニット630を有する印刷装置640と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置640に送り込む給紙装置650と、印刷装置640および給紙装置650を制御する制御部660とが設けられている。
【0095】
印刷装置640は、ヘッドユニット630と、ヘッドユニット630の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット630を往復動させる往復動機構642と、を含む。
【0096】
ヘッドユニット630は、その下部に、上述の多数のノズル511を有するインクジェット式記録ヘッド50と、このインクジェット式記録ヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ631と、インクジェット式記録ヘッド50およびインクカートリッジ631を搭載したキャリッジ632とを有する。
【0097】
往復動機構642は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸643と、キャリッジガイド軸643と平行に延在するタイミングベルト644とを有する。キャリッジ632は、キャリッジガイド軸643に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト644の一部に固定されている。キャリッジモータ641の作動により、プーリを介してタイミングベルト644を正逆走行させると、キャリッジガイド軸643に案内されて、ヘッドユニット630が往復動する。この往復動の際に、インクジェット式記録ヘッド50から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0098】
給紙装置650は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により回転する給紙ローラ652とを有する。給紙ローラ652は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ652aと、駆動ローラ652bとで構成されており、駆動ローラ652bは、給紙モータ651に連結されている。
【0099】
3−2.作用・効果
本実施形態に係るインクジェットプリンター600によれば、前述したように、高性能でノズルの高密度化が可能なインクジェット式記録ヘッド50を有するので、高密度印刷や高速印刷が可能となる。
【0100】
なお、本発明のインクジェットプリンター600は、工業的に用いられる液滴吐出装置として用いることもできる。その場合に、吐出するインク(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整して使用することができる。
【0101】
4.第4の実施形態
4−1.圧電ポンプ
次に、第1の実施形態に係る圧電素子1を有する圧電ポンプの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図14および図15は、本実施形態に係る圧電ポンプ20の概略断面図である。本実施形態に係る圧電ポンプ20において、圧電素子は、圧電アクチュエーターとして機能することができる。図14および図15に示す圧電部22は、図1に示す圧電素子1における下部電極4と、圧電体膜5と、上部電極6とからなるものであり、図1に示す圧電素子1における弾性膜3は、図14および図15において振動板24となっている。また、基板2(図1参照)は、圧電ポンプ20の要部を構成する基体21となっている。圧電ポンプ20は、基体21と、圧電部22と、ポンプ室23と、振動板24と、吸入側逆止弁26aと、吐出側逆止弁26bと、吸入口28aと、吐出口28bとを含む。
【0102】
4−2.圧電ポンプの動作
次に、上述の圧電ポンプの動作について説明する。まず、圧電部22に電圧が供給されると、圧電体膜5(図1参照)の膜厚方向に電圧が印加される。そして、図14に示すように、圧電部22は、ポンプ室23が広がる方向(図14に示す矢印aの方向)にたわむ。また、圧電部22と共に振動板24もポンプ室23が広がる方向にたわむ。このため、ポンプ室23内の圧力が変化し、逆止弁26a、26bの働きによって流体が吸入口28aからポンプ室23内に流れる(図14に示す矢印bの方向)。
【0103】
次に、圧電部22への電圧の供給を停止すると、圧電体膜5(図1参照)の膜厚方向への電圧の印加が停止される。そして、図15に示すように、圧電部22は、ポンプ室23が狭まる方向(図15に示す矢印aの方向)にたわむ。また、圧電部22と共に振動板24もポンプ室23が狭まる方向にたわむ。このため、ポンプ室23内の圧力が変化し、逆止弁26a、26bの働きによって流体が吐出口28bから外部に吐出される(図15に示す矢印bの方向)。
【0104】
圧電ポンプ20は、電子機器、例えばパソコン用、好ましくはノートパソコン用の水冷モジュールとして用いることができる。水冷モジュールは、冷却液の駆動に上述の圧電ポンプ20を用い、圧電ポンプ20と循環水路等とを含む構造を有する。
【0105】
4−3.作用・効果
本実施形態に係る圧電ポンプ20によれば、前述したように、圧電部22の圧電体膜5が良好な圧電特性を有することによって、流体の吸入・吐出を効率的に行うことができる。従って、本実施形態に係る圧電ポンプ20によれば、大きな吐出圧および吐出量を有することができる。また、圧電ポンプ20の高速動作が可能となる。さらには、圧電ポンプ20の全体の小型化を図ることができる。
【0106】
5.第5の実施形態
5−1.表面弾性波素子
次に、本発明を適用した第5の実施形態に係る表面弾性波素子の一例について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の一例である表面弾性波素子30は、図16に示すように、基板11と、弾性膜12と、導電層13と、圧電体膜14と、保護層15と、電極16と、を含む。基板11、弾性膜12、導電層13、圧電体膜14、および保護層15は、基体18を構成する。
【0107】
基板11としては、例えば、(100)単結晶シリコン基板を用いることができる。弾性膜12は、図1に示す圧電素子1における弾性膜3からなることができる。導電層13としては、図1に示す圧電素子1における下部電極4からなることができる。圧電体膜14は、図1に示す圧電素子1における圧電体膜5からなることができる。保護層15は、例えば、酸化物または窒化物などからなることができる。電極16としては、例えば、アルミニウムなどの薄膜を用いることができる。電極16は、インターディジタル型電極(Inter−Digital Transducer:以下、「IDT電極」という)である。電極16は、上部から観察すると、例えば図17および図18に示すインターディジタル型電極141、142、151、152、153のような形状を有する。
【0108】
5−2.作用・効果
本実施形態に係る表面弾性波素子30によれば、図1に示す圧電素子1における圧電体膜5からなる圧電体膜14が良好な圧電特性を有していることにより、表面弾性波素子30自体も高性能なものとなる。
【0109】
6.第6の実施形態
6−1.周波数フィルタ
次に、本発明を適用した第6の実施形態に係る周波数フィルタの一例について、図面を参照しながら説明する。図17は、本実施形態の一例である周波数フィルタを模式的に示す図である。
【0110】
図17に示すように、周波数フィルタは基体140を有する。この基体140としては、図16に示す表面弾性波素子30の基体18を用いることができる。
【0111】
基体140の上面には、IDT電極141、142が形成されている。また、IDT電極141、142を挟むように、基体140の上面には吸音部143、144が形成されている。吸音部143、144は、基体140の表面を伝播する表面弾性波を吸収するものである。基体140上に形成されたIDT電極141には高周波信号源145が接続されており、IDT電極142には信号線が接続されている。
【0112】
6−2.周波数フィルタの動作
次に、上述の周波数フィルタの動作について説明する。前記構成において、高周波信号源145から高周波信号が出力されると、この高周波信号はIDT電極141に印加され、これによって基体140の上面に表面弾性波が発生する。IDT電極141から吸音部143側へ伝播した表面弾性波は、吸音部143で吸収されるが、IDT電極142側へ伝播した表面弾性波のうち、IDT電極142のピッチ等に応じて定まる特定の周波数または特定の帯域の周波数の表面弾性波は電気信号に変換されて、信号線を介して端子146a、146bに取り出される。なお、前記特定の周波数または特定の帯域の周波数以外の周波数成分は、大部分がIDT電極142を通過して吸音部144に吸収される。このようにして、本実施形態の周波数フィルタが有するIDT電極141に供給した電気信号のうち、特定の周波数または特定の帯域の周波数の表面弾性波のみを得る(フィルタリングする)ことができる。
【0113】
7.第7の実施形態
7−1.発振器
次に、本発明を適用した第7の実施形態に係る発振器の一例について、図面を参照しながら説明する。図18は、本実施形態の一例である発振器を模式的に示す図である。
【0114】
図18に示すように、発振器は基体150を有する。この基体150としては、上述した周波数フィルタと同様に、図16に示す表面弾性波素子30の基体18を用いることができる。
【0115】
基体150の上面には、IDT電極151が形成されており、さらに、IDT電極151を挟むように、IDT電極152、153が形成されている。IDT電極151を構成する一方の櫛歯状電極151aには、高周波信号源154が接続されており、他方の櫛歯状電極151bには、信号線が接続されている。なお、IDT電極151は、電気信号印加用電極に相当し、IDT電極152、153は、IDT電極151によって発生される表面弾性波の特定の周波数成分または特定の帯域の周波数成分を共振させる共振用電極に相当する。
【0116】
7−2.発振器の動作
次に、上述の発振器の動作について説明する。前記構成において、高周波信号源154から高周波信号が出力されると、この高周波信号は、IDT電極151の一方の櫛歯状電極151aに印加され、これによって基体150の上面にIDT電極152側に伝播する表面弾性波およびIDT電極153側に伝播する表面弾性波が発生する。これらの表面弾性波のうちの特定の周波数成分の表面弾性波は、IDT電極152およびIDT電極153で反射され、IDT電極152とIDT電極153との間には定在波が発生する。この特定の周波数成分の表面弾性波がIDT電極152、153で反射を繰り返すことにより、特定の周波数成分または特定の帯域の周波数成分が共振して、振幅が増大する。この特定の周波数成分または特定の帯域の周波数成分の表面弾性波の一部は、IDT電極151の他方の櫛歯状電極151bから取り出され、IDT電極152とIDT電極153との共振周波数に応じた周波数(または、ある程度の帯域を有する周波数)の電気信号が端子155aと端子155bに取り出すことができる。
【0117】
7−3.電圧制御SAW発振器
図19および図20は、上述した発振器をVCSO(Voltage Controlled SAW Oscillator:電圧制御SAW発振器)に応用した場合の一例を模式的に示す図であり、図19は側面透視図であり、図20は上面透視図である。
【0118】
VCSOは、金属製(Alまたはステンレススチール製)の筐体60内部に実装されて構成されている。基板61上には、IC(Integrated Circuit)62および発振器63が実装されている。この場合、IC62は、外部の回路(不図示)から入力される電圧値に応じて、発振器63に印加する周波数を制御する発振回路である。
【0119】
発振器63は、基体64上に、IDT電極65a〜65cが形成されており、その構成は、図18に示す発振器とほぼ同様である。基体64としては、上述した図18に示す発振器と同様に、図16に示す表面弾性波素子30の基体18を用いることができる。
【0120】
基板61上には、IC62と発振器63とを電気的に接続するための配線66がパターニングされている。IC62および配線66が、例えば金線等のワイヤー線67によって接続され、発振器63および配線66が金線等のワイヤー線68によって接続されている。これにより、IC62と発振器63とが配線66を介して電気的に接続されている。
【0121】
なお、VCSOは、IC62と発振器63を同一基板上に集積させて形成することも可能である。図21に、IC62と発振器63とを同一基板61上に集積させたVCSOの概略図を示す。なお、図21中において発振器63は、図16に示す表面弾性波素子30において導電層13の形成を省略した構造を有している。
【0122】
図21に示すように、VCSOは、IC62と発振器63とにおいて、基板61を共有させて形成されている。基板61としては、例えば図16に示す表面弾性波素子30の基板11を用いることができる。IC62と、発振器63の有する電極65aとは、図示しないものの電気的に接続されている。電極65aとしては、例えば図16に示す表面弾性波素子30の電極16を用いることができる。IC62を構成するトランジスタとしては、TFT(薄膜トランジスタ)を採用することができる。
【0123】
図19〜図21に示すVCSOは、例えば、図22に示すPLL回路のVCO(Voltage Controlled Oscillator)として用いられる。ここで、PLL回路について簡単に説明する。
【0124】
図22は、PLL回路の基本構成を示すブロック図である。PLL回路は、位相比較器71、低域フィルタ72、増幅器73、およびVCO74から構成されている。位相比較器71は、入力端子70から入力される信号の位相(または周波数)と、VCO74から出力される信号の位相(または周波数)とを比較し、その差に応じて値が設定される誤差電圧信号を出力するものである。低域フィルタ72は、位相比較器71から出力される誤差電圧信号の位置の低周波成分のみを通過させるものである。増幅器73は、低域フィルタ72から出力される信号を増幅するものである。VCO74は、入力された電圧値に応じて発振する周波数が、ある範囲で連続的に変化する発振回路である。
【0125】
このような構成のもとにPLL回路は、入力端子70から入力される位相(または周波数)と、VCO74から出力される信号の位相(または周波数)との差が減少するように動作し、VCO74から出力される信号の周波数を入力端子70から入力される信号の周波数に同期させる。VCO74から出力される信号の周波数が入力端子70から入力される信号の周波数に同期すると、その後は一定の位相差を除いて入力端子70から入力される信号に一致し、また、入力信号の変化に追従するような信号を出力するようになる。
【0126】
8.第8の実施形態
次に、本発明を適用した第8の実施形態に係る電子回路および電子機器の一例について、図面を参照しながら説明する。図23は、本実施形態の一例である電子機器300の電気的構成を示すブロック図である。電子機器300とは、例えば携帯電話機である。
【0127】
電子機器300は、電子回路310、送話部80、受話部91、入力部94、表示部95、およびアンテナ部86を有する。電子回路310は、送信信号処理回路81、送信ミキサ82、送信フィルタ83、送信電力増幅器84、送受分波器85、低雑音増幅器87、受信フィルタ88、受信ミキサ89、受信信号処理回路90、周波数シンセサイザ92、および制御回路93を有する。
【0128】
電子回路310において、送信フィルタ83および受信フィルタ88として、図17に示す周波数フィルタを用いることができる。フィルタリングする周波数(通過させる周波数)は、送信ミキサ82から出力される信号のうちの必要となる周波数、および、受信ミキサ89で必要となる周波数に応じて、送信フィルタ83および受信フィルタ88で個別に設定されている。また、周波数シンセサイザ92内に設けられるPLL回路(図22参照)のVCO74として、図18に示す発振器、または図19〜図21に示すVCSOを用いることができる。
【0129】
送話部80は、例えば音波信号を電気信号に変換するマイクロフォン等で実現されるものである。送信信号処理回路81は、送話部80から出力される電気信号に対して、例えばD/A変換処理、変調処理等の処理を施す回路である。送信ミキサ82は、周波数シンセサイザ92から出力される信号を用いて送信信号処理回路81から出力される信号をミキシングするものである。送信フィルタ83は、中間周波数(以下、「IF」と表記する)の必要となる周波数の信号のみを通過させ、不要となる周波数の信号をカットするものである。送信フィルタ83から出力される信号は、変換回路(図示せず)によってRF信号に変換される。送信電力増幅器84は、送信フィルタ83から出力されるRF信号の電力を増幅し、送受分波器85へ出力するものである。
【0130】
送受分波器85は、送信電力増幅器84から出力されるRF信号をアンテナ部86へ出力し、アンテナ部86から電波の形で送信するものである。また、送受分波器85は、アンテナ部86で受信した受信信号を分波して、低雑音増幅器87へ出力するものである。低雑音増幅器87は、送受分波器85からの受信信号を増幅するものである。低雑音増幅器87から出力される信号は、変換回路(図示せず)によってIFに変換される。
【0131】
受信フィルタ88は、変換回路(図示せず)によって変換されたIFの必要となる周波数の信号のみを通過させ、不要となる周波数の信号をカットするものである。受信ミキサ89は、周波数シンセサイザ92から出力される信号を用いて、受信フィルタ88から出力される信号をミキシングするものである。受信信号処理回路90は、受信ミキサ89から出力される信号に対して、例えばA/D変換処理、復調処理等の処理を施す回路である。受話部91は、例えば電気信号を音波に変換する小型スピーカ等で実現されるものである。
【0132】
周波数シンセサイザ92は、送信ミキサ82へ供給する信号、および、受信ミキサ89へ供給する信号を生成する回路である。周波数シンセサイザ92は、PLL回路を有し、このPLL回路から出力される信号を分周して新たな信号を生成することができる。制御回路93は、送信信号処理回路81、受信信号処理回路90、周波数シンセサイザ92、入力部94、および表示部95を制御する。表示部95は、例えば携帯電話機の使用者に対して機器の状態を表示する。入力部94は、例えば携帯電話機の使用者の指示を入力する。
【0133】
なお、上述した例では、電子機器として携帯電話機を、電子回路として携帯電話機内に設けられる電子回路をその一例として挙げ、説明したが、本発明は携帯電話機に限定されることなく、種々の移動体通信機器およびその内部に設けられる電子回路に適用することができる。
【0134】
さらに、移動体通信機器のみならずBSおよびCS放送を受信するチューナなどの据置状態で使用される通信機器、およびその内部に設けられる電子回路にも適用することができる。さらには、通信キャリアとして空中を伝播する電波を使用する通信機器のみならず、同軸ケーブル中を伝播する高周波信号または光ケーブル中を伝播する光信号を用いるHUBなどの電子機器およびその内部に設けられる電子回路にも適用することができる。
【0135】
9.第9の実施形態
次に、本発明を適用した第9の実施形態に係る薄膜圧電共振子の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0136】
9−1.第1の薄膜圧電共振子
図24は、本実施形態の一例である第1の薄膜圧電共振子700を模式的に示す図である。第1の薄膜圧電共振子700は、ダイアフラム型の薄膜圧電共振子である。
【0137】
第1の薄膜圧電共振子700は、基板701と、弾性膜703と、下部電極704と、圧電体膜705と、上部電極706と、を含む。薄膜圧電共振子700における基板701と、弾性膜703、下部電極704、圧電体膜705、および上部電極706は、それぞれ図1に示す圧電素子1における基板2、弾性膜3、下部電極4、圧電体膜5、および上部電極6に相当する。すなわち、第1の薄膜圧電共振子700は、図1に示す圧電素子1を有する。
【0138】
基板701には、基板701を貫通するビアホール702が形成されている。上部電極706上には、配線708が設けられている。配線708は、弾性膜703上に形成された電極709と、パッド710を介して電気的に接続されている。
【0139】
9−2.作用・効果
本実施形態に係る第1の薄膜圧電共振子700によれば、圧電体膜705の圧電特性が良好であり、従って高い電気機械結合係数を有する。これにより、薄膜圧電共振子700を、高周波数領域で使用することができる。また、薄膜圧電共振子700を、小型(薄型)化し、かつ、良好に動作させることができる。
【0140】
9−3.第2の薄膜圧電共振子
図25は、本実施形態の一例である第2の薄膜圧電共振子800を模式的に示す図である。第2の薄膜圧電共振子800が図24に示す第1の薄膜圧電共振子700と主に異なるところは、ビアホールを形成せず、基板801と弾性膜803との間にエアギャップ802を形成した点にある。
【0141】
第2の薄膜圧電共振子800は、基板801と、弾性膜803と、下部電極804と、圧電体膜805と、上部電極806と、を含む。薄膜圧電共振子800における基板801、弾性膜803、下部電極804、圧電体膜805、および上部電極806は、それぞれ図1に示す圧電素子1における基板2、弾性膜3、下部電極4、圧電体膜5、および上部電極6に相当する。すなわち、第2の薄膜圧電共振子800は、図1に示す圧電素子1を有する。エアギャップ802は、基板801と、弾性膜803との間に形成された空間である。
【0142】
9−4.作用・効果
本実施形態に係る第2の薄膜圧電共振子800によれば、圧電体膜805の圧電特性が良好であり、従って高い電気機械結合係数を有する。これにより、薄膜圧電共振子800を、高周波数領域で使用することができる。また、薄膜圧電共振子800を、小型(薄型)化し、かつ、良好に動作させることができる。
【0143】
9−5.応用例
本実施形態に係る圧電薄膜共振子(例えば、第1の薄膜圧電共振子700および第2の薄膜圧電共振子800)は、共振子、周波数フィルタ、または、発振器として機能することができる。そして、例えば、図23に示す電子回路310において、送信フィルタ83および受信フィルタ88として、周波数フィルタとして機能する本実施形態に係る圧電薄膜共振子を用いることができる。また、周波数シンセサイザ92が有する発振器として、発振器として機能する本実施形態に係る圧電薄膜共振子を用いることができる。
【0144】
上記のように、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、本発明に係る圧電素子は、前述したデバイスに適用されるだけでなく、種々のデバイスに適用可能である。例えば、本発明に係る圧電素子は、カメラ(携帯電話機またはPDA:Personal Digital Assistantなどに搭載されたものを含む。)の光学ズーム機構におけるレンズ駆動用の圧電アクチュエーターとして用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】第1の実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図2】シェアモードの変形度合に対する、PbTiOのユニットセル当たりの全エネルギーを、第一原理電子状態シミュレーションにより求めた結果を示すグラフ。
【図3】シミュレーションに用いた格子モデルを模式的に示す図。
【図4】結晶の分極軸方向の変化を模式的に示す図。
【図5】PZTの相図の一例。
【図6】第1の実施形態に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図7】第1の実施形態に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図8】第1の実施形態に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】第2の実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの概略構成図。
【図10】第2の実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図。
【図11】インクジェット式記録ヘッドの動作を説明するための図。
【図12】インクジェット式記録ヘッドの動作を説明するための図。
【図13】第3の実施形態に係るインクジェットプリンターの概略構成図。
【図14】第4の実施形態に係る圧電ポンプの概略断面図。
【図15】第4の実施形態に係る圧電ポンプの概略断面図。
【図16】第5の実施形態に係る表面弾性波素子を示す側断面図。
【図17】第6の実施形態に係る周波数フィルタを示す斜視図。
【図18】第7の実施形態に係る発振器を示す斜視図。
【図19】第7の実施形態に係る発振器をVCSOに応用した一例を示す概略図。
【図20】第7の実施形態に係る発振器をVCSOに応用した一例を示す概略図。
【図21】第7の実施形態に係る発振器をVCSOに応用した一例を示す概略図。
【図22】PLL回路の基本構成を示すブロック図。
【図23】第8の実施形態に係る電子回路の構成を示すブロック図。
【図24】第9の実施形態に係る薄膜圧電共振子を示す側断面図。
【図25】第9の実施形態に係る薄膜圧電共振子を示す側断面図。
【符号の説明】
【0146】
1 圧電素子、2 基板、3 弾性膜、4 下部電極、5 圧電体膜、6 上部電極、11 基板、12 弾性膜、13 導電層、14 圧電体膜、15 保護層、16 電極、18 基体、20 圧電ポンプ、21 基体、22 圧電部、23 ポンプ室、24 振動板、30 表面弾性波素子、50 インクジェット式記録ヘッド、51 ノズル板、52 インク室基板、54 圧電部、55 弾性膜、56 基体、57 ヘッド本体、58 インク滴、60 筐体、61 基板、63 発振器、64 基体、66 配線、67 ワイヤー線、70 入力端子、71 位相比較器、72 低域フィルタ、73 増幅器、80 送話部、81 送信信号処理回路、82 送信ミキサ、83 送信フィルタ、84 送信電力増幅器、85 送受分波器、86 アンテナ部、87 低雑音増幅器、88 受信フィルタ、89 受信ミキサ、90 受信信号処理回路、91 受話部、92 周波数シンセサイザ、93 制御回路、94 入力部、95 表示部、140 基体、141 電極、142 電極、143 吸音部、144 吸音部、145 高周波信号源、150 基体、151 電極、152 電極、153 電極、154 高周波信号源、300 電子機器、310 電子回路、511 ノズル、521 キャビティー、522 側壁、523 リザーバ、524 供給口、531 連通孔、600 インクジェットプリンター、620 装置本体、621 トレイ、622 排出口、630 ヘッドユニット、631 インクカートリッジ、632 キャリッジ、640 印刷装置、641 キャリッジモータ、642 往復動機構、643 キャリッジガイド軸、644 タイミングベルト、650 給紙装置、651 給紙モータ、652 給紙ローラ、660 制御部、670 操作パネル、700 第1の薄膜圧電共振子、701 基板、702 ビアホール、703 弾性膜、704 下部電極、705 圧電体膜、706 上部電極、708 配線、709 電極、710 パッド、800 第2の薄膜圧電共振子、801 基板、802 エアギャップ、803 弾性膜、804 下部電極、805 圧電体膜、806 上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト型の圧電体膜であって、
擬立方晶(100)に優先配向しており、
モノクリニック構造を有し、
分極軸方向は、擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間である、圧電体膜。
【請求項2】
請求項1において、
分極軸方向と、擬立方晶<111>方向との成す角δは、0.0°<δ≦10.0°の範囲である、圧電体膜。
【請求項3】
請求項1または2において、
Pb(Zr1−xTi)Oからなり、
xは、0.43≦x≦0.53の範囲である、圧電体膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の圧電体膜を有する、圧電素子。
【請求項5】
ペロブスカイト型の圧電体膜を有する圧電素子であって、
基板と、
前記基板の上方に形成された下部電極と、
前記下部電極の上方に形成された圧電体膜と、
前記圧電体膜の上方に形成された上部電極と、を含み、
前記圧電体膜は、擬立方晶(100)に優先配向しており、
前記圧電体膜内に、擬立方晶<100>方向の電界が生じている状態において、
前記圧電体膜は、モノクリニック構造を有し、かつ、前記圧電体膜の分極軸方向は、擬立方晶<111>方向と、擬立方晶<100>方向との間である、圧電素子。
【請求項6】
請求項5において、
前記圧電体膜の分極軸方向と、擬立方晶<111>方向との成す角δは、0.0°<δ≦10.0°の範囲である、圧電素子。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記圧電体膜は、Pb(Zr1−xTi)Oからなり、
xは、0.43≦x≦0.53の範囲である、圧電素子。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の圧電素子を有する、圧電アクチュエーター。
【請求項9】
請求項4〜7のいずれかに記載の圧電素子を有する、圧電ポンプ。
【請求項10】
請求項4〜7のいずれかに記載の圧電素子を有する、インクジェット式記録ヘッド。
【請求項11】
請求項10に記載のインクジェット式記録ヘッドを有する、インクジェットプリンター。
【請求項12】
請求項4に記載の圧電素子を有する、表面弾性波素子。
【請求項13】
請求項4〜7のいずれかに記載の圧電素子を有する、薄膜圧電共振子。
【請求項14】
請求項12に記載の表面弾性波素子および請求項13に記載の薄膜圧電共振子のうちの少なくとも一方を有する、周波数フィルタ。
【請求項15】
請求項12に記載の表面弾性波素子および請求項13に記載の薄膜圧電共振子のうちの少なくとも一方を有する、発振器。
【請求項16】
請求項14に記載の周波数フィルタおよび請求項15に記載の発振器のうちの少なくとも一方を有する、電子回路。
【請求項17】
請求項9に記載の圧電ポンプおよび請求項16に記載の電子回路のうちの少なくとも一方を有する、電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2006−114562(P2006−114562A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297852(P2004−297852)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】