説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板上の液膜を短時間で凍結させる。
【解決手段】リンス液供給部62は温度調整部623を備える。温度調整部623は、DIWを常温より低い温度に冷却する。この温度調整部623は、例えば10℃以下にDIWを冷却しており、さらに5℃以下に冷却する方が好ましい。なお、温度調整部623は、DIWを0℃以上に保っており、これによってDIWが凝固しないようにしている。そして、リンス液供給管96に供給された冷却されているDIWは、リンス液吐出ノズル97から基板の表面に向けて吐出されて液膜を形成する。また、液供給管25を介して液吐出ノズル27から基板の裏面に向けて冷却されたDIWが吐出されて、裏面に液膜が形成される。液膜が冷却されているため、冷却ガスが基板の表面および裏面に向けて吐出されると、短時間で凍結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板(以下、単に「基板」という)の表面に形成された液膜を凍結させる基板処理装置および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に対する処理のひとつとして基板表面に液膜を付着させた状態で基板を冷却することにより液膜を凍結させる技術が用いられている。特に、このような凍結技術は基板に対する洗浄処理の一環として用いられている。すなわち、半導体装置に代表されるデバイスの微細化、高機能化、高精度化に伴って基板表面に形成されたパターンを倒壊させずに基板表面に付着しているパーティクル等の微小な汚染物質を除去することが益々困難になっている。そこで、上記した凍結技術を用いて次のようにして基板表面に付着しているパーティクルを除去している。
【0003】
先ず、基板表面に液体を供給して基板表面に液膜を形成する。続いて、基板を冷却することにより液膜を凍結させる。これにより、パーティクルが付着している基板表面に凍結膜が生成される。そして、最後に基板表面から凍結膜を除去することにより基板表面からパーティクルを凍結膜とともに除去している。例えば特許文献1に記載の装置では、純水を基板表面に供給して液膜を形成し、その液膜を凍結するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−31673号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の装置では、液膜を凍結させるまでに比較的長時間を要していた。そのため、単位時間当たりに処理可能な基板の枚数が減少してしまい、スループットが低下するという問題が生じていた。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板上の液膜を短時間で凍結させることができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するため、冷却された液体を基板に供給して該基板上に液膜を形成する液膜形成手段と、基板上の液膜を凍結させる凍結手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる基板処理方法は、上記目的を達成するため、冷却された液体を基板に供給して該基板上に液膜を形成する液膜形成工程と、基板上の液膜を凍結させる凍結工程とを備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(基板処理装置および基板処理方法)によれば、冷却された液体が基板に供給されて該基板上に液膜が形成され、その基板上の液膜が凍結される。ところで、発明者らが種々の実験を行ったところ、液膜の凍結に要する時間の大部分は、液膜を構成する液体の温度を凝固点付近まで低下させるのに費やされていることが明らかとなった。そこで、この発明は、基板に供給される液体を冷却している。このため、液膜の温度を凝固点付近まで低下させるのに要する時間が短縮される。したがって、液膜の凍結に要する時間を短縮することができ、基板処理のスループットを向上することができる。なお、基板に供給する液体は例えば常温より低い温度に冷却しておけばよい。
【0010】
また、凍結手段は、液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを基板の表面に向けて局部的に吐出する冷却ガス吐出手段と、冷却ガス吐出手段を基板の表面に沿って基板に対して相対移動させる相対移動機構とを備え、冷却ガス吐出手段から冷却ガスを吐出させながら相対移動機構により冷却ガス吐出手段を基板に対して相対移動させて液膜を凍結させるとしてもよい。
【0011】
このように構成された発明によれば、基板上に形成された液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスが冷却ガス吐出手段から基板の表面に向けて局部的に吐出される。そして、冷却ガス吐出手段から冷却ガスを吐出させながら相対移動機構により冷却ガス吐出手段が基板の表面に沿って基板に対して相対移動されて液膜が凍結される。すなわち、相対移動に伴って基板上に形成された液膜のうち該液膜が凍結した領域が広がって、基板の全面に凍結膜が生成されることとなる。このように、冷却ガスの供給部位が基板の表面の一部領域に限定されているため、例えば基板を保持するための部材など、基板の周辺に設けられている部材の温度低下を必要最小限に止めることができる。したがって、それらの部材が劣化するのを抑制することができる。
【0012】
また、液膜形成手段は、冷却された液体を供給する液供給管と、該液供給管内の液体を基板に向けて吐出する液吐出ノズルとを備え、凍結手段は、冷却ガス吐出手段に冷却ガスを導くガス供給管をさらに備え、液供給管の少なくとも一部とガス供給管の少なくとも一部とが近傍に並んで配設されるとしてもよい。
【0013】
このように構成された発明によれば、冷却された液体を供給する液供給管の少なくとも一部と冷却ガスを供給するガス供給管の少なくとも一部とが近傍に並んで配設されているため、基板に供給される液体は、該液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスの近傍を通ることとなる。したがって、基板に供給される液体は冷却された状態に保持されるため、液膜の凍結時間をより確実に短縮することができる。ここで、冷却ガスの温度が例えば−100℃程度の非常に低い温度であれば、その近傍を通る液体に対する冷却効果は高いものとなる。
【0014】
また、相対移動機構は、液吐出ノズルと冷却ガス吐出手段とを一体的に基板に対して相対移動させるとすると、液吐出ノズルと冷却ガス吐出手段との距離が常に一定に保たれることから、冷却ガス吐出手段から冷却ガスが吐出されると、その冷却ガスの冷気により液吐出ノズルが冷却されることになるため、基板に供給される液体の冷却が促進されるという利点がある。
【0015】
また、液膜形成手段は、基板に供給する液体の温度を常温より低い温度に調整する温度調整部を備えてもよい。このように構成された発明によれば、液膜を形成する液体が常温より低い温度に調整されるため、液膜の凍結に要する時間をその分だけ短縮することができる。ここで、液体は純水または脱イオン水からなり、温度調整部は液体の温度を0〜10℃に冷却するようにしてもよい。このように構成された発明によれば、0℃以上であるため凝固することがなく、しかも10℃以下であるため凍結時間を好適に短縮することができ、好ましい。
【0016】
また、凍結手段により凍結された液膜を基板から除去する除去手段をさらに備えるようにすると、例えば基板上にパーティクルが付着している場合であっても、該パーティクルを基板から効果的に除去することができる。すなわち、基板上に形成された液膜を凍結させることで液膜が体積膨張し、その体積膨張によって生じる圧力がパーティクルに作用して、パーティクルと基板との間の付着力が弱められ、あるいはパーティクルが基板から脱離する。そのため、凍結した液膜を基板から除去することで、基板上からパーティクルを容易に除去することができる。
【0017】
ここで、液膜形成手段は、基板に供給する液体中における気体の溶解量を調整する溶解量調整部をさらに備えるようにすると、液膜を形成する液体中における気体の溶解量が調整されるため、パーティクルの除去率を制御することが可能になる。すなわち、液膜を形成する液体中における気体の溶解量が増減すると、液膜が凍結したときの体積膨張の度合いが増減する。したがって、その体積膨張によって生じ、パーティクルに作用される圧力が増減する。その結果、パーティクルの除去率を制御することが可能になる。なお、一般に液体の温度が低下すると気体の溶解度が増大する。したがって、溶解量調整部による気体の溶解量調整を冷却された状態の液体に対して行うと、その調整幅が大きくなるため好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、冷却された液体を基板に供給し該基板上に液膜を形成し、この基板上の液膜を凍結しているため、液膜を構成する液体の温度を凝固点付近まで低下させるのに要する時間を短縮することができる。したがって、液膜の凍結に要する時間を短縮することができ、基板処理のスループットを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、この基板処理装置は、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに液膜を形成し、各液膜を凍結させて凍結膜を生成し、それらの凍結膜を基板Wの表面Wfおよび裏面Wbから除去することにより、基板Wに対して洗浄処理を施す装置である。
【0020】
この基板処理装置は、基板Wに対して洗浄処理を施す処理空間をその内部に有する処理チャンバー1と、装置全体を制御する制御ユニット4とを備えている。この処理チャンバー1内には、スピンチャック2と冷却ガス吐出ノズル3と遮断部材9とが設けられている。スピンチャック2は、基板Wの表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持した状態で、基板Wを回転させるものである。冷却ガス吐出ノズル3は、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜を凍結させるための冷却ガスを吐出するものである。遮断部材9は、スピンチャック2の上方に、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向して配置されている。
【0021】
上記スピンチャック2の中心軸21の上端部には、円板状のスピンベース23がネジなどの締結部品によって固定されている。この中心軸21はモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転機構22が駆動されると、中心軸21に固定されたスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0022】
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0023】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、各チャックピン24を押圧状態とする。各チャックピン24を押圧状態とすると、各チャックピン24は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。なお、この実施形態では、基板Wの表面Wfに微細パターンが形成されており、表面Wfがパターン形成面となっている。
【0024】
上記遮断部材9は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。遮断部材9の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられている。この支持軸91は、水平方向に延びるアーム92により、基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94とが接続されている。
【0025】
遮断部材回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、制御ユニット4は、遮断部材回転機構93の動作を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させる。
【0026】
遮断部材昇降機構94は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接させたり、逆に離間させる。具体的には、制御ユニット4は、遮断部材昇降機構94の動作を制御して、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には、遮断部材9をスピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に上昇させる一方、基板Wに対して所定の処理を施す際には、遮断部材9をスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0027】
支持軸91は中空になっており、その内部に、遮断部材9の開口に延設されるガス供給管95が挿通されている。このガス供給管95は乾燥ガス供給部65に接続されている。この乾燥ガス供給部65は、窒素ガスを供給するもので、基板Wに対する洗浄処理後の乾燥処理時に、遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に形成される空間に向けてガス供給管95から窒素ガスを供給する。なお、この実施形態では、乾燥ガス供給部65から乾燥ガスとして窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを供給するようにしてもよい。
【0028】
ガス供給管95の内部には、リンス液供給管96が挿通されている。このリンス液供給管96の下方端部は遮断部材9の開口に延設されるとともに、その先端にリンス液吐出ノズル97が設けられている。一方、リンス液供給管96の上方端部は、リンス液供給部62に接続されている。このリンス液供給部62は、リンス液を供給するものである。そして、リンス液としては、この実施形態では例えば、脱イオン水(deionized
water、以下「DIW」という)が用いられている。
【0029】
図3はリンス液供給部の構成を示す模式図である。タンク621はDIWを貯留するもので、バルブV1が介装されている供給管62Aを介して、例えば工場内に既設のDIW供給源(図示省略)に接続されている。供給管62Bは、DIWをタンク621から外部に供給するためのもので、ポンプ622および温度調整部623が介装されている。供給管62Bの下端はタンク621に貯留されているDIWに達するように設けられ、上端は供給管62C,62Dに分岐している。供給管62CにはバルブV2が介装され、その下端はタンク621の内部に達するように設けられている。また、供給管62Dは、上記リンス液供給管96および後述する液供給管25に接続されており、供給管62Dには、フィルタF1およびバルブV3が介装されている。温度調整部623は、DIWを常温より低い温度に冷却するものである。この温度調整部623は、この実施形態では例えば10℃以下にDIWを冷却しており、さらに5℃以下に冷却する方が好ましい。なお、温度調整部623は、DIWを0℃以上に保っており、これによってDIWが凝固しないようにしている。
【0030】
このような構成において、各バルブV1,V2,V3が閉じられた状態から、バルブV1が開かれると、DIW供給源からタンク621に常温のDIWが供給される。また、バルブV3が閉じられた状態でバルブV2が開かれ、ポンプ622および温度調整部623が作動すると、DIWは、タンク621および供給管62B,62Cを循環しつつ、温度調整部623により冷却される。そして、バルブV2が閉じられるとともにバルブV3が開かれると、冷却されたDIWが、フィルタF1で濾過された後、リンス液供給管96および液供給管25に向けて供給される。リンス液供給管96に供給された冷却されているDIWは、リンス液吐出ノズル97から基板Wの表面Wfに向けて吐出されて、表面Wfに液膜11f(図5)を形成する。
【0031】
図1に戻って、説明を続ける。スピンチャック2の中心軸21は円筒状の空洞を有する中空になっており、中心軸21の内部には、基板Wの裏面Wbに液体を供給するための円筒状の液供給管25が挿通されている。液供給管25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面側である裏面Wbに近接する位置まで延びており、その先端に基板Wの下面の中央部に向けて液体を吐出する液吐出ノズル27が設けられている。液供給管25は、上記リンス液供給部62に接続されている。そして、リンス液供給部62から冷却されたDIWが供給されると、液供給管25を介して液吐出ノズル27から基板Wの裏面Wbに向けて冷却されたDIWが吐出されて、裏面Wbに液膜11b(図5)が形成される。このように、この実施形態では、リンス液供給部62、リンス液供給管96、リンス液吐出ノズル97、液供給管25および液吐出ノズル27が、本発明の「液膜形成手段」に相当する。
【0032】
中心軸21の内壁面と液供給管25の外壁面との隙間は、横断面リング状のガス供給路29になっている。このガス供給路29は上記乾燥ガス供給部65に接続されており、乾燥ガス供給部65からガス供給路29を介してスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に形成される空間に窒素ガスが供給される。
【0033】
スピンチャック2の周方向外側には、回動モータ31が設けられている。この回動モータ31には回動軸33が接続され、この回動軸33にはアーム35が水平方向に延びるように接続されており、このアーム35の先端に上記冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて回動モータ31が駆動されると、アーム35が回動軸33回りに揺動することとなる。
【0034】
図4は冷却ガス吐出ノズルの動きを示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図である。制御ユニット4からの動作指令に基づき回動モータ31が駆動されてアーム35が揺動すると、冷却ガス吐出ノズル3は、基板Wの表面Wfに対向した状態で、図4(b)に示すように、移動軌跡Tに沿って移動する。この移動軌跡Tは、回転中心位置Pcから端縁位置Peに向かう軌跡である。ここで、回転中心位置Pcは基板Wの上方で、かつ基板Wの回転中心A0の上に位置し、端縁位置Peは基板Wの外周端の上方に位置する。すなわち、回動モータ31は、冷却ガス吐出ノズル3を基板Wの表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる。また、冷却ガス吐出ノズル3は、移動軌跡Tの延長線上であって基板Wの対向位置から側方に退避した待機位置Psに移動可能となっている。
【0035】
冷却ガス吐出ノズル3は冷却ガス供給部64に接続されている。この冷却ガス供給部64は、制御ユニット4からの動作指令に応じて冷却ガスを冷却ガス吐出ノズル3に供給するものである。冷却ガス吐出ノズル3が基板Wの表面Wfの対向位置に配置され、冷却ガス供給部64から冷却ガスが冷却ガス吐出ノズル3に供給されると、冷却ガス吐出ノズル3から基板Wの表面Wfに向けて局部的に冷却ガスが吐出される。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて、冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスが吐出している状態で、スピンチャック2が基板Wを回転させながら、回動モータ31が冷却ガス吐出ノズル3を移動軌跡Tに沿って移動させると、冷却ガスが基板Wの表面Wfの全体にわたって供給されることとなる。
【0036】
したがって、リンス液吐出ノズル97からのDIW吐出により基板Wの表面Wfに形成されている液膜11fの全体が凍結し、基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fが生成される。このとき、基板Wの表面Wf側に供給された冷却ガスが有する冷熱が基板Wを介して裏面Wbの液膜11bに伝導する。特に基板Wがシリコンで形成されている場合には、比較的熱伝導率が大きいため、基板Wを介して冷熱が裏面Wbの液膜11bに効率良く伝導する。これにより、基板Wの裏面Wbのうち液膜11bが凍結した領域が、基板Wの表面Wfの凍結領域と同時に広げられることとなる。
【0037】
基板Wの表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さは、冷却ガスの供給量によっても異なるが、例えば50mm以下、好ましくは数mm程度に設定される。このような基板Wの表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さおよび冷却ガスの供給量は、(1)冷却ガスが有する冷熱を液膜11fに効率的に付与する観点、(2)冷却ガスにより液膜11fの液面が乱れることがないように液膜11fを安定して凍結する観点などから実験的に定められる。
【0038】
冷却ガスは、基板Wの表面Wfに形成された液膜11fを構成する液体の凝固点、すなわちこの実施形態ではDIWの凝固点より低い温度を有する。この冷却ガスは、例えば、タンクに貯留されている液体窒素内を通るパイプに窒素ガスを流すことにより生成され、この実施形態では例えば−100℃に冷却されている。なお、窒素ガスに代えて、酸素ガスや清浄なエア等を用いてもよい。このように冷却ガスを用いているため、基板Wの表面Wfへのガス供給前にフィルタ等を通すことによって、冷却ガスに含まれる汚染物質を容易に除去することができ、液膜11fを凍結させる際に基板Wの表面Wfが汚染されるのを防止できる。このように、この実施形態では、冷却ガス吐出ノズル3が本発明の「冷却ガス吐出手段」に相当し、回動モータ31が本発明の「相対移動機構」に相当する。
【0039】
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図5、図6を参照しつつ説明する。図5は基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに対する処理を示す図で、(a)は液膜形成処理を示し、(b)は液膜凍結処理を示し、(c)は凍結膜除去処理を示している。また、図6は図1の基板処理装置の動作手順を示すフローチャートである。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の洗浄処理、すなわち液膜形成処理、液膜凍結処理および凍結膜除去処理が実行される。まず、基板Wの表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバー1内に搬入され、スピンチャック2に保持される(ステップS1)。このとき、遮断部材9は離間位置にあり、基板Wと干渉しないようにしている。
【0040】
スピンチャック2が未処理の基板Wを保持すると、遮断部材9が対向位置まで下降し、基板Wの表面Wfに近接した位置に位置決めされる。これにより、基板Wの表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4は、チャック回転機構22を作動してスピンチャック2を回転させるとともに、リンス液供給部62を作動してリンス液吐出ノズル97および液吐出ノズル27から冷却されたDIWをそれぞれ吐出させて、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに冷却されたDIWをそれぞれ供給する。基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、図5(a)に示すように、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの全面にわたって液膜の厚みがそれぞれ均一にされ、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの全体に、それぞれ所定の厚みを有する液膜11f,11bが形成される(ステップS2)。ここで、制御ユニット4は、スピンチャック2の回転数を調整することにより、所望の厚さの液膜11f,11bを形成することができる。
【0041】
なお、この液膜形成処理において、上記のように基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに供給されたDIWの一部を振り切ることは必須の要件ではない。例えば、基板Wの回転を停止させた状態あるいは基板Wを比較的低速で回転させた状態で基板WからDIWを振り切ることなく基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに液膜を形成してもよい。
【0042】
こうして、液膜形成処理が終了すると、制御ユニット4は遮断部材9を離間位置に配置するとともに、冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psから回転中心位置Pcに移動させる。そして、回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら、冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置Peに向けて移動させていく。これによって、図5(b)に示すように、基板Wの表面Wfのうち液膜11fが凍結した領域が基板Wの表面Wfの中央部から周縁部へと広げられるとともに、裏面Wbのうち液膜11bが凍結した領域が基板Wの裏面Wbの中央部から周縁部へと広げられ、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの全体に凍結膜13f,13bが生成される(ステップS3)。ここで、液膜11b,11fを構成するDIWが、温度調整部623によって常温より低い温度に冷却されているため、凍結膜13f,13bを短時間で生成することができる。
【0043】
なお、冷却ガス吐出ノズル3を移動させながら基板Wを回転させることによって、液膜の厚み分布に偏りが生じるのを抑制しつつ、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの全面に凍結膜13f,13bを生成させることができる。しかし、基板Wをあまりに高速で回転させると、基板Wの回転によって生じる気流により、冷却ガス吐出ノズル3から吐出される冷却ガスが拡散し、液膜の凍結の効率が低下する可能性がある。このため、液膜凍結処理を実行するときの基板Wの回転速度は、この実施形態では例えば1〜300rpmに設定されている。さらに、冷却ガス吐出ノズル3の移動速度、吐出ガスの温度および流量、液膜の厚みも考慮して、基板Wの回転速度を設定するようにすると、より好ましい。
【0044】
このようにして液膜凍結処理を実行すると、基板Wの表面Wfとパーティクルの間に入り込んだ液体の凝固により体積膨張が生じる。例えば、0℃の純水が0℃の氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する。そして、この体積増加によって生じる圧力がパーティクルに作用し、パーティクルが微小距離だけ基板Wの表面Wfから離れる。その結果、基板Wの表面Wfとパーティクルとの間の付着力が低減し、さらにはパーティクルが基板Wの表面Wfから脱離することとなる。このとき、基板Wの表面Wfに微細パターンが形成されている場合であっても、体積膨張によってパターンに加わる圧力はあらゆる方向に等しいため、互いに相殺されることになる。その結果、パターンが剥離したり倒壊するなどのダメージを基板Wに与えることなく、パーティクルを好適に基板Wの表面Wfから除去することができる。
【0045】
また、この実施形態では、基板Wの裏面Wbにも液膜11bを形成し、その液膜11bを凍結して凍結膜13bを生成しているため、基板Wの裏面Wbについても、基板Wの表面Wfと同様に、基板Wとパーティクルとの間の付着力を弱めることができ、パーティクルを好適に基板Wの裏面Wbから除去することができる。
【0046】
液膜の凍結が完了すると、制御ユニット4は冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psに移動させるとともに遮断部材9を対向位置に配置させる。そして、凍結膜13f,13bが融解しないうちにリンス液吐出ノズル97および液吐出ノズル27からDIWを基板Wの表面Wfおよび裏面Wbにそれぞれ供給する。このとき、制御ユニット4は温度調整部623の動作を停止しており、基板Wには常温のDIWが供給される。これによって、図5(c)に示すように、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの凍結膜がそれぞれ融解する。また、凍結膜13f,13bと、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに供給されたDIWとに、基板Wの回転による遠心力が作用する。その結果、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbからパーティクルを含む凍結膜13f,13bが除去され、基板外に排出される(ステップS4)。
【0047】
なお、この凍結膜除去処理では、基板Wの回転とともに遮断部材9を回転させるのが好ましい。これにより、遮断部材9に付着する液体成分が振り切られるとともに、遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に形成される空間に基板周辺からミスト状の液体が侵入するのを防止することができる。このように、この実施形態では、リンス液供給部62、リンス液供給管96、リンス液吐出ノズル97、液供給管25および液吐出ノズル27が、本発明の「除去手段」に相当する。
【0048】
こうして、凍結膜除去処理が終了すると、基板Wの洗浄処理、すなわち液膜形成処理、液膜凍結処理および凍結膜除去処理が完了したか否かが判断される(ステップS5)。そして、完了したと判断されると(ステップS5でYES)、続いて基板Wの乾燥処理が実行される(ステップS6)。一方、洗浄処理が完了していないと判断されると(ステップS5でNO)、ステップS2に戻って冷却されたDIWが供給されて液膜が形成され、以下、ステップS2〜S4が繰り返し実行される。すなわち、被処理面である基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの表面状態あるいは除去対象であるパーティクルの粒径、種類によっては、一度の洗浄処理では基板Wの表面Wfおよび裏面Wbから十分にパーティクルを除去しきれない場合があり、このような場合には、完了していないと判断される。こうして、液膜形成処理、液膜凍結処理および凍結膜除去処理が所定回数だけ繰り返し実行されることにより、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbからパーティクルが除去されていく。なお、このような繰り返し実行回数を予め処理レシピとして規定しておき、適宜選択した処理レシピで規定される実行回数だけ洗浄処理を繰り返すようにしてもよい。
【0049】
ステップS6では、制御ユニット4は、チャック回転機構22および遮断部材回転機構93のモータの回転速度を高めて基板Wおよび遮断部材9を高速回転させて、基板Wの乾燥処理を実行する。さらに、この乾燥処理においては、乾燥ガス供給部65からガス供給管95,29を介して窒素ガスが供給されて、遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に挟まれた空間およびスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に挟まれた空間が窒素ガス雰囲気とされる。これによって、基板Wの乾燥が促進され、乾燥時間を短縮することができる。乾燥処理後は基板Wの回転が停止され、処理チャンバー1から処理済の基板Wが搬出される(ステップS7)。このように、この実施形態では、ステップS2が本発明の「液膜形成工程」に相当し、ステップS3が本発明の「凍結工程」に相当する。
【0050】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに液膜11f,11bを形成するために基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに供給するDIWを温度調整部623により常温より低い温度に冷却しているため、凍結膜13f,13bを生成するのに要する時間を短縮することができる。すなわち、上述したように、液膜の凍結に要する時間の大部分は、液膜を構成する液体の温度を凝固点付近まで低下させるのに費やされている。そこで、この実施形態では、基板Wに供給されるDIWを予め冷却している。したがって、液膜11f,11bの温度を凝固点付近まで低下させるのに要する時間が短縮されるため、液膜の凍結に要する時間を短縮することができる。その結果、洗浄処理に要する時間を短縮でき、基板処理のスループットを向上することができる。
【0051】
また、この実施形態によれば、基板Wの表面Wfから凍結膜13fを除去するとともに基板Wの裏面Wbから凍結膜13bを除去している。このため、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに付着しているパーティクルを効果的に除去できる。これにより、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの全体を良好に洗浄できる。しかも、表面Wf側の液膜11fの凍結と同時に裏面Wb側の液膜11bを凍結しているので、スループットを低下させることなく、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbを洗浄できる。すなわち、基板Wの反転等を行うことなく、基板Wの表面Wfのみならず、基板Wの裏面Wbに対しても洗浄処理を施すことができるため、基板Wの表面Wf側の洗浄処理に要する処理時間とほぼ同等の処理時間で基板Wの表面Wfおよび裏面Wbを洗浄できる。
【0052】
また、この実施形態によれば、基板Wの表面Wfに形成された液膜11fを構成する液体の凝固点よりも低い温度を有する冷却ガスを冷却ガス吐出ノズル3から基板Wの表面Wfに向けて局部的に吐出している。そして、基板Wを回転させながら冷却ガス吐出ノズル3を基板Wの回転中心位置Pcと基板Wの端縁位置Peとの間で移動させて、基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fを生成している。このため、冷却ガスの供給部位が基板Wの表面Wf上の微小領域に限定されることとなり、スピンチャック2などの基板周辺部材の温度低下を最小限に止めることができる。したがって、基板周辺部材が劣化するのを抑制しながら基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fを生成することができる。その結果、基板周辺部材を耐冷熱性の確保が困難な、耐薬品性を備えた樹脂材料で形成しても、冷熱による基板周辺部材の材質劣化を抑制できる。
【0053】
また、この実施形態によれば、液膜形成処理と液膜凍結処理と凍結膜除去処理とを同一の処理チャンバー1内で所定回数だけ繰り返し実行可能となっている。したがって、液膜凍結処理と凍結膜除去処理とを1回だけ実行するのみでは基板Wの表面Wfから除去しきれないパーティクルについても確実に基板Wの表面Wfから除去できる。
【0054】
また、この実施形態によれば、凍結膜が融解しないうちに凍結膜除去処理を実行開始している。このため、液膜凍結処理において基板Wの表面Wfから脱離したパーティクルが、凍結膜の融解とともに基板Wの表面Wfに再付着するのを回避できる。その結果、凍結膜除去処理の実行により凍結膜とともにパーティクルを基板Wの表面Wfから効率良く除去することができ、パーティクル除去率を向上させる点で有利となっている。
【0055】
<第2実施形態>
図7はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態の制御構成を示すブロック図、図8は第2実施形態のリンス液供給部の構成を示す模式図、図9は脱気溶解モジュールの構成を示す模式図である。この第2実施形態は、基板Wの表面Wfのみに凍結膜を生成している点と、リンス液供給部62に代えてリンス液供給部620を備えている点とで、第1実施形態と大きく相違している。なお、第2実施形態の処理チャンバーの構成は図1に示す処理チャンバー1と同様であり、以下では、第1実施形態と同一物には同一符号を付している。また、第2実施形態の動作は、基板Wの表面Wfのみに凍結膜を生成している点を除いて、第1実施形態と全く同様に行われる。
【0056】
第2実施形態のリンス液供給部620は、バルブV3に代えて、リンス液供給管96および液供給管25にそれぞれバルブV31,V32が介装されている点と、脱気溶解モジュール624が供給管62Bに介装されている点とで、第1実施形態のリンス液供給部62と相違している。リンス液供給管96および液供給管25にそれぞれバルブV31,V32が介装されているため、液膜形成の際に、リンス液吐出ノズル97のみにDIWを供給可能になっている。
【0057】
脱気溶解モジュール624は、DIW中の気体の溶解量を調整するもので、二重管構造になっている。すなわち、例えば円筒状の中空の管体625の内部に、例えば円筒状の中空の管体626が配置されている。管体626は、気体分子のみを通過させ、液体の通過を阻止する材質で形成されている。そして、管体625の内周面と管体626の外周面との間に形成される流路627は供給管62Bに接続されている。また、管体626の内部に形成される流路628の一端は閉じられ、他端は分岐して供給管62E,62Fに接続されている。供給管62Eの先端はタンク629に接続され、このタンク629と分岐点との間にポンプ630およびバルブV4が介装されている。タンク629には、この実施形態では例えば窒素ガスが貯留されている。また、供給管62FにはバルブV5が介装され、先端は外気に開放されてドレン管となっている。
【0058】
そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて、バルブV4が開かれ、バルブV5が閉じられた状態でポンプ630が作動すると、流路628内の圧力が増大する。これによって、流路628内の窒素ガスが管体626を通って流路627に流出し、DIW中の窒素ガスの溶解量が増大する。一方、制御ユニット4からの動作指令に応じて、バルブV5が開かれ、バルブV4が閉じられた状態でポンプ630の動作が停止すると、流路628内の圧力が低減する。これによって、DIW中の窒素ガスが管体626を通って流路628に戻り、DIW中の窒素ガスの溶解量が低下する。このように、この実施形態では、脱気溶解モジュール624が本発明の「溶解量調整部」に相当する。
【0059】
以上のように、この実施形態によれば、液膜11fを構成するDIWに溶解する窒素ガスの溶解量を脱気溶解モジュール624により調整しているため、液膜11fを凍結したときの体積増加率を調整することができる。すなわち、液体を凍結したときの体積増加率は、その液体に溶解している気体の溶解量と正の相関を有することが知られている。そして、体積増加率が増減すると、体積増加によって生じパーティクルに作用する圧力が増減する。その結果、パーティクルの除去率が増減し、基板Wへのダメージ発生の可能性も増減することとなる。したがって、この実施形態によれば、DIWに溶解する窒素ガスの溶解量を脱気溶解モジュール624により調整することによって、パーティクルの除去率や基板Wへのダメージ発生の可能性を調整することができる。すなわち、基板Wに対して直前に実行された基板処理の種類や、パーティクルの粒径、種類などに応じて、パーティクル除去を優先したい場合には、脱気溶解モジュール624によりDIWに溶解する窒素ガスの溶解量を増大することによって、パーティクルの除去率を増大できる。一方、基板Wへのダメージ発生の阻止を優先したい場合には、脱気溶解モジュール624によりDIWに溶解する窒素ガスの溶解量を低減すればよい。
【0060】
また、この実施形態によれば、温度調整部623によりDIWの温度を常温より低い温度に冷却しているため、上記した液膜11fを凍結したときの体積増加率の調整幅を増大することができる。すなわち、図10に示すように、液体に溶解する気体の溶解度は、液体の温度が低下するにしたがって増大することが知られている。図10は純水に対する空気、酸素および窒素の溶解度と温度の関係を示す図である。DIWの場合も純水の場合とほぼ同様と考えると、DIWが常温T1の場合には、溶解量Uは、0≦U≦U1の範囲内で調整できる。これに対して、この実施形態のようにDIWが常温T1より低い温度T2に冷却されている場合には、溶解量Uは、0≦U≦U2の範囲内で調整できる。すなわち、U1<U2であり、溶解量Uの調整幅が増大し、その結果、液膜11fを凍結したときの体積増加率の調整幅も増大することとなる。したがって、この実施形態によれば、上記したパーティクルの除去率や基板Wへのダメージ発生の可能性の調整を行う際に、その調整幅を増大することができるという利点がある。
【0061】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記第1、第2実施形態では、遮断部材9の下面に設けられたリンス液吐出ノズル97から吐出されるDIWにより、基板Wの表面Wfに液膜11fを形成しているが、これに限られない。図11はリンス液吐出の変形形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC矢視図である。
【0062】
図11の変形形態では、アーム35の先端に吐出部30が設けられており、アーム35から吐出部30までの上面に供給チューブ60Pが配設されている。この供給チューブ60Pの内部には、リンス液供給部62に連通する液供給管62Pと、冷却ガス供給部64に連通するガス供給管64Pとが設けられている。すなわち、液供給管62Pとガス供給管64Pとが近傍に並んで配設されている。そして、冷却ガスは、吐出部30に穿設され、ガス供給管64Pに連通するガス吐出口3Aから吐出し、DIWは、冷却ガス吐出ノズル3のガス吐出口3Aの近傍に穿設され、液供給管62Pに連通する液吐出口3Bから吐出するように構成されている。
【0063】
この変形形態によれば、例えば−100℃という非常に低温の冷却ガスが流れるガス供給管64Pの近傍に、DIWが流れる液供給管62Pが配設されているため、冷却ガスからの冷熱による影響を受けることによって、温度調整部623により常温より低い温度に冷却されたDIWの温度が上昇してしまうのを防止できるという利点がある。また、冷却ガスが吐出されるガス吐出口3Aの近傍にDIWが吐出される液吐出口3Bを配設しているため、DIWに対する冷却ガスからの冷却効果を高めることができる。このように、この変形形態では、ガス吐出口3Aが本発明の「冷却ガス吐出手段」に相当し、液吐出口3Bが本発明の「液吐出ノズル」に相当する。
【0064】
また、上記第1実施形態では、リンス液供給部62から供給されるDIWにより、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに生成された凍結膜13f,13bを除去しているが、これに限られず、化学洗浄を施して凍結膜を除去するようにしてもよい。図12は第1実施形態の変形形態を示す図、図13は図12の装置における凍結膜除去処理を示す図である。この変形形態では、液供給管25は、リンス液供給部62に加えて、薬液供給部61にも接続されている。この薬液供給部61は、例えばSC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)等の薬液を供給するものである。そして、薬液およびDIWのいずれか一方が選択的に液供給管25を介して液吐出ノズル27に供給されるように構成されている。
【0065】
また、スピンチャック2の周方向外側には、回動モータ67が設けられている。この回動モータ67には回動軸68が接続され、この回動軸68にはアーム69が水平方向に延びるように接続されており、このアーム69の先端に薬液吐出ノズル6が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて回動モータ67が駆動されると、薬液吐出ノズル6は、基板Wの回転中心A0の上方の吐出位置と吐出位置から側方に退避した待機位置との間で往復移動する。薬液吐出ノズル6は、上記薬液供給部61に接続されており、薬液供給部61から供給される薬液をスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて吐出するものである。
【0066】
この変形形態において、液膜を凍結させた後、制御ユニット4は、薬液吐出ノズル6を吐出位置に配置し、SC1溶液を薬液吐出ノズル6に圧送するとともに、液吐出ノズル27に供給する。これによって、SC1溶液が、薬液吐出ノズル6から基板Wの表面Wfに供給されるとともに、液吐出ノズル27から基板Wの裏面Wbに供給される。ここで、SC1溶液中の固体表面のゼータ電位(界面動電位)は比較的大きな値を有することから、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbと該基板Wの表面Wfおよび裏面Wb上のパーティクルとの間がそれぞれSC1溶液で満たされることにより、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbと各パーティクルとの間にそれぞれ大きな反発力が作用する。したがって、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbからのパーティクルの脱離をさらに容易にして、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbからパーティクルを効果的に除去することができる。また、この変形形態では、SC1溶液による洗浄後、基板Wの表面Wfおよび裏面WbにDIWが供給され、DIWによるリンス処理が行われる。このように、この変形形態では、薬液供給部61および薬液吐出ノズル6が本発明の「除去手段」として機能する。なお、この変形形態では、基板Wの表面Wfに対して主に化学的な洗浄作用を有する化学洗浄としてSC1溶液による洗浄を実行しているが、化学洗浄としては、SC1溶液による洗浄に限定されない。例えば、化学洗浄としてSC1溶液以外のアルカリ性溶液、酸性溶液、有機溶剤、界面活性剤などを処理液として使用したり、それらを適宜に組合わせたものを処理液として使用する湿式洗浄が挙げられる。なお、前述の第1実施形態では温度調整部623の動作を停止することにより、本発明の「除去手段」として液吐出ノズル27から常温のDIWを吐出しているが、「除去手段」として常温のDIWを基板に供給するための供給機構が別に設けられていてもよい。たとえば、薬液供給部61および薬液吐出ノズル6と同様な供給機構から常温のDIWを吐出することにより凍結膜が除去されてもよい。
【0067】
また、上記第1実施形態では、リンス液供給部62から供給されるDIWにより、基板Wの表面Wfに生成された凍結膜13fを除去しているが、これに限られず、物理洗浄を施して凍結膜を除去するようにしてもよい。図14は第1実施形態の変形形態を示す図、図15は二流体ノズルの構成を示す図である。
【0068】
スピンチャック2の周方向外側には、回動モータ51が設けられている。この回動モータ51には回動軸53が接続され、この回動軸53にはアーム55が水平方向に延びるように接続されており、このアーム55の先端に二流体ノズル5が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて回動モータ51が駆動されると、二流体ノズル5は回動軸53回りに揺動する。
【0069】
この二流体ノズル5は、処理液と窒素ガス(N2)とを空中(ノズル外部)で衝突させて処理液の液滴を生成する混合させる、いわゆる外部混合型の二流体ノズルである。この変形形態では例えば、処理液はリンス液供給部62から供給されるDIWが用いられ、窒素ガスは乾燥ガス供給部65から供給される窒素ガスが用いられる。二流体ノズル5は中空の胴部501を有し、この胴部501の内部に処理液吐出口521を有する処理液吐出ノズル502が挿通される。この処理液吐出口521は、二流体ノズル5の傘部511の上面部512に配置されている。このため、処理液が処理液吐出ノズル502に供給されると、処理液が処理液吐出口521から基板Wに向けて吐出される。
【0070】
また、ガス吐出ノズル503が処理液吐出ノズル502に近接して設けられており、該処理液吐出ノズル502を囲んだリング状のガス通路を規定している。ガス吐出ノズル503の先端部は先細にテーパ状とされており、このノズル開口は基板Wの表面に対向している。このため、ガス吐出ノズル503に窒素ガスが供給されると、窒素ガスがガス吐出ノズル503のガス吐出口531から基板Wに向けて吐出される。
【0071】
このように吐出される窒素ガスの吐出軌跡は、処理液吐出口521からのDIWの吐出軌跡に交わっている。すなわち、処理液吐出口521からの液体流は、混合領域内の衝突部位Gにおいて気体流と衝突する。気体流はこの衝突部位Gに収束するように吐出される。この混合領域は、胴部501の下端部の空間である。このため、処理液吐出口521からのDIWの吐出方向の直近においてDIWはそれに衝突する窒素ガスによって速やかに液滴化される。こうして、洗浄用液滴が生成される。
【0072】
そして、液膜の凍結後、制御ユニット4は、遮断部材9を離間位置に配置した状態で二流体ノズル5を基板Wの上方で揺動させながらDIWの液滴を基板Wの表面Wfに供給する。これにより、液滴が基板Wの表面Wfに付着するパーティクルに衝突して、液滴が有する運動エネルギーによってパーティクルが物理的に除去される。したがって、基板Wの表面Wfからのパーティクル除去を容易にして、基板Wの表面Wfを良好に洗浄することができる。このように、この変形形態では、リンス液供給部62、乾燥ガス供給部65および二流体ノズル5が本発明の「除去手段」として機能する。
【0073】
なお、この変形形態では、二流体ノズルからの液滴吐出による物理洗浄を行う際に、いわゆる外部混合型の二流体ノズルを用いて液滴洗浄を実行しているが、これに限定されず、いわゆる内部混合型の二流体ノズルを用いて液滴洗浄を実行してもよい。すなわち、二流体ノズルの内部で処理液とガスとを混合させて洗浄用液滴を生成するとともにノズル吐出口から基板Wに向けて吐出してもよい。また、この変形形態では、基板Wの表面Wfに対して主に物理的な洗浄作用を有する物理洗浄として、二流体ノズルを用いた液滴洗浄を実行しているが、物理洗浄としては、液滴洗浄に限定されない。例えば、物理洗浄として、基板Wの表面Wfに対してブラシやスポンジ等を接触させることで基板Wを洗浄するスクラブ洗浄、超音波振動によって基板Wの表面Wfに付着するパーティクルを振動させて脱離させたり、処理液中に発生したキャビテーションや気泡を基板Wの表面Wfに作用させて基板Wを洗浄する超音波洗浄などが挙げられる。さらに、基板Wの表面Wfに対して物理洗浄と化学洗浄とを必要に応じて組合わせた洗浄を施して基板Wの表面Wfから凍結後の液膜を除去してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では液膜を形成するリンス液としてDIWを用いているが、これに限られず、例えば、純水、炭酸水、水素水などを液膜を形成するリンス液として用いてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、本発明にかかる基板表面に形成された液膜を凍結させる機能を有する基板処理装置を基板Wの表面Wfに付着するパーティクル等の汚染物質を除去する洗浄処理に適用した場合について説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、本発明にかかる基板処理装置および方法を用いて凍結させた液膜を基板表面を保護するための保護膜として利用してもよい。すなわち、基板Wの表面Wfに液膜を形成し、該液膜を凍結させることで凍結膜が基板Wの表面Wfに対する保護膜として作用して基板Wの表面Wfを周囲雰囲気からの汚染より保護することができる。したがって、凍結膜を保護膜として基板Wの表面Wfの汚染を防止しつつ基板Wを保存したり待機させておくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に形成された液膜を凍結させる基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】リンス液供給部の構成を示す模式図である。
【図4】冷却ガス吐出ノズルの動きを示す図である。
【図5】基板Wの表面および裏面に対する処理を示す図である。
【図6】図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態の制御構成を示すブロック図である。
【図8】第2実施形態のリンス液供給部の構成を示す模式図である。
【図9】脱気溶解モジュールの構成を示す模式図である。
【図10】純水に対する空気、酸素および窒素の溶解度と温度の関係を示す図である。
【図11】リンス液吐出の変形形態を示す図である。
【図12】第1実施形態の変形形態を示す図である。
【図13】図12の装置における凍結膜除去処理を示す図である。
【図14】第1実施形態の変形形態を示す図である。
【図15】二流体ノズルの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
3…冷却ガス吐出ノズル(冷却ガス吐出手段、凍結手段)、3A…ガス吐出口(冷却ガス吐出手段)、3B…液吐出口(液吐出ノズル)、5…二流体ノズル(除去手段)、6…薬液吐出ノズル(除去手段)、11b…裏面側の液膜、11f…表面側の液膜、13b…裏面側の凍結膜、13f…表面側の凍結膜、27…液吐出ノズル(液膜形成手段、除去手段)、31…回動モータ(相対移動機構)、62…リンス液供給部(液膜形成手段、除去手段)、623…温度調整部(液膜形成手段)、624…脱気溶解モジュール(溶解量調整部、液膜形成手段)、62P…液供給管、64…冷却ガス供給部(凍結手段)、64P…ガス供給管(凍結手段)、97…リンス液吐出ノズル(液膜形成手段、除去手段)、W…基板、Wb…基板の裏面、Wf…基板の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却された液体を基板に供給して該基板上に液膜を形成する液膜形成手段と、
前記基板上の前記液膜を凍結させる凍結手段と
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記凍結手段は、
前記液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを前記基板の表面に向けて局部的に吐出する冷却ガス吐出手段と、
前記冷却ガス吐出手段を前記基板の表面に沿って前記基板に対して相対移動させる相対移動機構とを備え、
前記冷却ガス吐出手段から冷却ガスを吐出させながら前記相対移動機構により前記冷却ガス吐出手段を前記基板に対して相対移動させて前記液膜を凍結させる請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記液膜形成手段は、前記冷却された液体を供給する液供給管と、該液供給管内の液体を前記基板に向けて吐出する液吐出ノズルとを備え、
前記凍結手段は、前記冷却ガス吐出手段に前記冷却ガスを導くガス供給管をさらに備え、
前記液供給管の少なくとも一部と前記ガス供給管の少なくとも一部とが近傍に並んで配設される請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記相対移動機構は、前記液吐出ノズルと前記冷却ガス吐出手段とを一体的に前記基板に対して相対移動させる請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記液膜形成手段は、前記基板に供給する液体の温度を常温より低い温度に調整する温度調整部を備える請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記液体は純水または脱イオン水からなり、前記温度調整部は前記液体の温度を0〜10℃に冷却する請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記凍結手段により凍結された前記液膜を前記基板から除去する除去手段をさらに備える請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記液膜形成手段は、前記基板に供給する液体中における気体の溶解量を調整する溶解量調整部をさらに備える請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
冷却された液体を基板に供給して該基板上に液膜を形成する液膜形成工程と、
前記基板上の前記液膜を凍結させる凍結工程と
を備えたことを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−130952(P2008−130952A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316541(P2006−316541)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】