説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板の表面のデバイス形成領域に処理液による悪影響を与えることなく、基板の周縁部から汚染を良好に除去することができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】ブラシ11に関連して、処理液を吸引するための吸引ノズル70が設けられている。吸引ノズル70の先端部は、第1接触面32と第2接触面33との境界部分34に対向する先端面72と、第1接触面32および第2接触面33と当接する当接面73とを有している。先端面72には、吸引口74が形成されている。吸引ノズル70に接続された吸引管76は、処理室2の外部へ延びており、その先端は、真空発生装置60に接続されている。真空発生装置60が駆動されると、ブラシ11の内部に含まれる処理液は吸引口74に吸引され、ブラシ11の内部に吸引口74に向かう処理液の流れが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の周縁部に対する洗浄処理のための基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)の周縁部の汚染が、ウエハの処理品質に対して無視できない影響を与える場合がある。たとえば、いわゆるバッチ処理工程では、複数枚のウエハが鉛直姿勢で処理液中に浸漬される。そのため、ウエハの周縁部に汚染物質が付着していると、その汚染物質が、処理液中を浮上して、ウエハの表面のデバイス形成領域に付着することにより、デバイス形成領域の汚染を生じるおそれがある。
【0003】
そのため、最近では、ウエハの周縁部の洗浄に対する要求が高まっている。とくに、表面が疎水性を示すウエハや、表面に銅配線などが形成されたウエハに対しては、デバイス形成領域に処理液(純水)が供給されることなく、周縁部のみを選択的に洗浄することが望まれている。
ウエハの周縁部の洗浄に関する先行技術として、たとえば、ウエハを回転させつつ、ウエハの周縁部に円筒状のブラシの外周面を当接させるとともに、ウエハの周縁部とブラシとの接触部分に向けて、処理液ノズルから、純水などの処理液を吐出させることにより、ウエハの周縁部に付着している汚染を除去する構成が提案されている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−45302号公報
【特許文献2】特開2003−197592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この提案にかかる装置では、処理液が基板の周縁部におけるブラシの接触する領域から拡がり、基板のデバイス形成領域に進入するおそれがある。デバイス形成領域に処理液が進入すると、デバイス形成領域に形成されている金属膜の酸化など、デバイス形成領域に処理液による悪影響を与えてしまうことがある。
このような問題を回避するため、ブラシに処理液を供給しないことも考えられるが、そうすると、ブラシにより基板の周縁部から掻き取られた汚染が周縁部上に残り、その汚染が残存したまま基板が乾燥されることにより、汚染の基板へのこびりつきが発生するおそれがある。
【0005】
そこで、この発明の目的は、基板の表面のデバイス形成領域に処理液による悪影響を与えることなく、基板の周縁部から汚染を良好に除去することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、接触面(32,33)を有し、処理液が含浸した状態で、基板(W)の周縁部(40,41,42)に前記接触面が接触されるように配置されるブラシ(11)と、前記ブラシに対向配置される吸引口(74,74A,74B)を介して、前記ブラシに含浸される処理液を吸引するための吸引手段(70,60)とを含むことを特徴とする、基板処理装置である。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、ブラシに対向配置された吸引口を介して、ブラシの内部に含浸された処理液が吸引される。この処理液の吸引により、ブラシの内部に、吸引口に向かう処理液の流れが形成される。処理液を含浸した状態のブラシを基板の周縁部に接触させると、ブラシにおける基板との接触面から処理液が染み出し、その処理液が基板の周縁部に供給される。このとき、ブラシの内部に形成された処理液の流れにより、ブラシにおける基板との接触面に供給される処理液の量が規制される。これにより、その接触面からの処理液の染み出し量を規制することができ、基板の周縁部に適量の処理液を供給することができる。その結果、基板の表面のデバイス形成領域への処理液の進入を防止することができ、デバイス形成領域に処理液による悪影響を与えることなく、基板の周縁部から汚染を良好に除去することができる。
【0008】
また、吸引手段によって、処理液とともに、ブラシに含まれる汚染も吸引される。これにより、ブラシの内部に含まれる汚染を除去することができる。
請求項2に記載のように、前記吸引手段は、前記吸引口(74,74A)を有し、先端部(72,73)が前記ブラシに接触するように配置される吸引ノズル(70,70A)を備えていてもよい。
【0009】
この場合、請求項3に記載のように、前記ブラシは、基板の表面に垂直な垂線方向に延びる中心軸線まわりに回転対称な形状に形成され、前記接触面は、基板の表面に垂直な垂線方向の一方側に向けて狭まる形状の第1接触面(32)と、前記第1接触面の前記一方側の端縁から前記垂線方向の前記一方側に向けて拡がる形状の第2接触面(33)とを含み、前記吸引ノズルは、第1接触面と前記第2接触面との境界部分(34)に対向する先端面(72)と、この先端面に連続し、前記第1接触面および前記第2接触面に当接する当接面(73)とを有していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、吸引ノズルの当接面が第1接触面および第2接触面に当接した状態で、先端面は第1接触面と第2接触面との境界部分に対向する。したがって、吸引ノズルの先端面または当接面に吸引口を設ければ、その吸引口をブラシに対して確実に対向配置させることができる。
請求項4記載のように、前記吸引口(74)が前記先端面に形成されている場合、吸引口を第1接触面と第2接触面との境界部分に対向させることができるので、ブラシの内部に、第1接触面と第2接触面との境界部分に向かう処理液の流れを形成することができる。
【0011】
また、請求項5のように、前記吸引口(74A)が前記当接面に形成されている場合、吸引口を第1接触面または第2接触面に対向させることができ、ブラシの内部に、第1接触面または第2接触面に向かう処理液の流れを形成することができる。したがって、第1接触面および第2接触面における基板との接触位置から離れた位置に吸引ノズルの当接面を当接させることにより、ブラシにおける基板との接触面からの処理液の染み出し量を抑制することができる。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、前記基板の表面に垂直な垂線方向に延び、前記ブラシに挿通された芯材(22B)を備え、前記吸引口(74B)は、前記芯材における前記ブラシとの接触面(80)に形成されており、前記吸引手段は、前記芯材に形成され、前記吸引口に接続された吸引路(82)を備えていることを特徴とする、請求項1記載の基板処理装置である。
【0013】
この発明によれば、ブラシに芯材が挿通されており、この芯材におけるブラシとの接触面に吸引口が形成されている。このため、ブラシの内部に、芯材に向かう処理液の流れを形成することができる、その結果、ブラシにおける基板との接触面からの処理液の染み出し量を確実に抑制することができる。
請求項7記載の発明は、前記ブラシを、前記基板の表面と垂直をなす所定の軸線まわりに回転させる手段(15)をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の基板処理装置である。
【0014】
この発明によれば、回転状態にあるブラシの内部に含浸される処理液が、吸引口から処理液が吸引される。
回転状態にあるブラシでは、ブラシの回転による遠心力により、ブラシから処理液は染み出し易い。しかしながら、ブラシの内部に処理液の流れを形成することができるので、ブラシにおける基板との接触面からの処理液の過剰な染み出しを抑制することができる。
【0015】
請求項8記載の発明は、前記ブラシの内部に処理液が浸透し、その浸透した処理液が前記接触面に供給されるように、前記ブラシに対して処理液を供給する処理液供給機構(24,25,36,37,39)をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の基板処理装置である。
この発明によれば、処理液は、ブラシの内部を浸透し、ブラシの内部から基板との接触面に供給される。これにより、ブラシにおける基板との接触面に処理液が供給されるときに、処理液が周囲に飛散するのを防止することができる。よって、基板のデバイス形成領域に処理液の飛沫が付着するのを防止することができ、デバイス形成領域が処理液による悪影響を受けることを確実に防止することができる。
【0016】
また、吸引手段による吸引により、ブラシの内部への処理液の浸透が補助されるので、ブラシに処理液を良好に浸透させることができる。
請求項9記載の発明は、前記ブラシにおける前記接触面とは異なる上端面(11a)に接して配置されたブロック体(21)をさらに含み、前記処理液供給機構は、前記ブロック体の上面に形成され、液を溜めることができる溝(24)と、前記溝に対し、処理液を供給するための処理液供給手段(36,37,39)と、前記ブロック体を貫通して形成され、前記溝の底面と前記ブラシの前記上端面とを接続する接続路(25,25B)とを含むことを特徴とする、請求項8記載の基板処理装置である。
【0017】
この発明によれば、処理液供給手段から溝に供給された処理液は、溝に溜められるとともに、接続路をブラシの上端面に向けて流れる。そして、ブラシの上端面に達した処理液は、ブラシの内部に浸透し、ブラシの内部を通って接触面に供給される。これにより、ブラシに処理液が供給されるときに、ブラシの周囲に処理液が飛散することを防止することができる。
【0018】
請求項10記載の発明は、前記処理液供給手段は、前記溝よりも上方位置に配置されて、前記溝に向けて処理液を吐出する吐出口(37)を含むことを特徴とする、請求項8または9記載の基板処理装置である。
この発明によれば、吐出口から溝に向けて処理液を吐出させることにより、処理液を溝に供給することができる。
【0019】
請求項11記載の発明は、前記ブラシは、基板の表面に垂直な垂線方向に延びる中心軸線まわりに回転対称な形状に形成され、前記接続路(25)は、前記ブラシに近づくにつれて前記中心軸線に近づくように傾斜していることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の基板処理装置である。
この発明によれば、接続路がブラシに近づくにつれて中心軸線に近づくように傾斜しているので、ブラシの回転軸線近くに処理液が供給される。そして、ブラシに供給された処理液は、回転軸線近くからブラシ全体に拡がっていく。このため、処理液がブラシにおける基板との接触面に集中的に供給されることを防止することができる。その結果、基板の周縁部に供給される処理液の量をより一層抑制することができる。
【0020】
請求項12記載の発明は、処理液が含浸されたブラシ(11)を、その接触面(32,33)が基板(W)の周縁部(40,41,42)に接触するように配置する工程(S4,S6)と、前記ブラシに含浸される処理液を、前記ブラシに対向配置される吸引口を介して吸引する工程(S5)とを含むことを特徴とする、基板処理方法である。
この方法によれば、請求項1に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。また、図2は、図1に示す基板処理装置の内部の図解的な側面図である。
この基板処理装置1は、基板の一例としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ]という。)Wを1枚ずつ処理する枚葉型の装置である。基板処理装置1は、隔壁で区画された処理室2内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるためのスピンチャック3と、ウエハWの周縁部を洗浄するためのブラシ機構4とを備えている。
【0022】
なお、ウエハWの周縁部とは、ウエハWの表面の周縁領域40、ウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42を含む部分をいう。また、周縁領域40,41とは、たとえば、ウエハWの周端縁から幅0.5〜5mmの環状領域をいう。
スピンチャック3は、真空吸着式チャックである。このスピンチャック3は、ほぼ鉛直な方向に延びたスピン軸5と、このスピン軸5の上端に取り付けられて、ウエハWをほぼ水平な姿勢でその裏面(下面)を吸着して保持する吸着ベース6と、スピン軸5と同軸に結合されたブラシ回転軸を有するスピンモータ7とを備えている。これにより、ウエハWの裏面が吸着ベース6に吸着保持された状態で、スピンモータ7が駆動されると、ウエハWがスピン軸5の中心軸線まわりに回転する。
【0023】
ブラシ機構4は、スピンチャック3によるウエハWの保持位置よりも上方で略水平に延びる揺動アーム9と、ウエハWの回転範囲外に設定されて、揺動アーム9を支持するアーム支持軸10と、揺動アーム9の先端に保持されて、ウエハWの周縁部を洗浄するためのブラシ11とを備えている。
アーム支持軸10は、鉛直方向に延びて設けられている。このアーム支持軸10の上端部は、揺動アーム9の一端部(基端部)の下面に結合されている。アーム支持軸10には、揺動駆動機構12の駆動力が入力されるようになっている。揺動駆動機構12の駆動力をアーム支持軸10に入力して、アーム支持軸10を往復回転させることによって、揺動アーム9を、アーム支持軸10を支点に揺動させることができる。具体的には、揺動アーム9の揺動により、ブラシ11が、ウエハWの周縁部と接触して、その周縁部を洗浄する処理位置(図1に、揺動アーム9を二点鎖線で示す。)と、スピンチャック3の側方のホームポジション(図1に、揺動アーム9を実線で示す。)との間を移動するようになっている。
【0024】
また、アーム支持軸10には、昇降駆動機構13が結合されている。昇降駆動機構13により、アーム支持軸10を上下動させて、このアーム支持軸10と一体的に揺動アーム9を上下動させることができる。
揺動アーム9の先端部には、鉛直方向に延びるブラシ回転軸14が回転可能に設けられている。ブラシ回転軸14には、揺動アーム9の内部において、ブラシ回転軸14を回転させるためのブラシ自転機構15が結合されている。一方、ブラシ回転軸14には、ホルダ取付部16(図3参照)を介して、ホルダ20が取り付けられている。ホルダ20の下方に、ブラシ11が取り付けられている。ブラシ11の周囲は、カバー体49により覆われている。
【0025】
図3は、ブラシ周辺の構成を示す断面図である。図4は、図3のホルダを、切断面線IV−IVで切断したときの断面図である。
ブラシ回転軸14の下端部には、ホルダ取付部16が固定されている。ホルダ取付部16は、ブラシ回転軸14が挿通されて、ブラシ回転軸14に固定された円板状の上面部17と、この上面部17の周縁から下方に向けて延びる円筒状の側面部18と、この側面部18の下端縁に固定された円環状の下面部19とを一体的に備えている。下面部19の内周面には、ねじが切られている。このねじとホルダ20の後述するねじ部28に形成されているねじとを螺合させることによって、ホルダ20をホルダ取付部16に取り付けることができる。
【0026】
ホルダ20は、略円柱形状のブロック体21と、ブロック体21の上方において、その中心軸線に沿って配置された支持軸8と、ブロック体21の下方において、その中心軸線に沿って配置され、上端部がブロック体21の下面に挿入されて固定された芯材22と、この芯材22の下端に取り付けられたプレート23とを備えている。
ブロック体21は、ブラシ11の上端面11aに接するように配置されている。ブロック体21は、樹脂により形成されている。ブロック体21の上面には、液を溜めることのできる貯留溝24が形成されている。
【0027】
貯留溝24は、ブロック体21の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。貯留溝24の底面は、ブロック体21の上下方向の途中部に位置している。
ブロック体21には、ブロック体21を貫通して、貯留溝24の底面とブラシ11の上端面11aとを接続する接続路25が、複数(たとえば、4個)形成されている。各接続路25は、貯留溝24の底面において、その外周寄りに開口する上開口26と、ブロック体21の下面において、この上開口26よりもその中心軸線側に開口する下開口27とを連通している。各接続路25は、鉛直方向に対し、下方に向かうにつれて中心軸線に近づくように約30°傾斜している。複数の接続路25の上開口26は、図4に示すように、貯留溝24の底面に、ブロック体21の回転軸線を中心とする円周上にほぼ等角度間隔で形成されている。
【0028】
支持軸8は、ブロック体21と一体的に形成されている。支持軸8の上端部には、周面にねじが切られたねじ部28が一体的に形成されている。
また、芯材22の下端部には、ねじ孔が形成されている。このねじ孔にプレート23の中心を貫通するボルト29がねじ込まれることによって、プレート23が芯材22に着脱可能に取り付けられている。
【0029】
ブラシ11は、芯材22に外嵌されて、ブロック体21とプレート23との間に挟持されている。このブラシ11は、たとえば、PVA(ポリビニルアルコール)などのスポンジ材からなる。このブラシ11は、ウエハWの表面の周縁領域40および周端面42を洗浄するための第1洗浄部30と、ウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42を洗浄するための第2洗浄部31とを上下に一体的に備え、鉛直軸線まわりに回転対称な略鼓状に形成されている。
【0030】
第1洗浄部30は、その上部30aが略円筒状をなし、下部30bが下方に向けて狭まる略円錐台状をなしている。第1洗浄部30の下部30bの側面は、上端縁が上部30aの側面の下端縁に連続し、その中心軸線に対してたとえば45°の傾斜角度を有して、下方ほど中心軸線に近づくように傾斜している。この第1洗浄部30において、下部30bの側面がウエハWの表面の周縁領域40および周端面42に接触する第1接触面32となっている。
【0031】
第2洗浄部31は、第1洗浄部30の下端に一体的に結合されて、第1洗浄部30と中心軸線を共有するように配置されている。この第2洗浄部31は、上部31aが下方に向けて拡がる略円錐台状をなし、下部31bが略円筒状をなしている。第2洗浄部31の上部31aの側面は、上端縁が第1洗浄部30の下部30bの側面の下端縁に連続し、その中心軸線に対して45°の傾斜角度を有して、下方ほど中心軸線から離れるように傾斜している。また、上部31aの側面の下端縁は、下部31bの側面の上端縁に連続している。この第2洗浄部31において、上部31aの側面がウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42に接触する第2接触面33となっている。
【0032】
揺動アーム9のケーシングの下端縁には、処理液供給ブロック35が固定されている。この処理液供給ブロック35の内部には、水平方向に延びる処理液供給管36が埋設されている。処理液供給ブロック35の下面には、貯留溝24の上方に、吐出口37が開口している。処理液供給ブロック35の内部には、処理液供給管36の先端部と吐出口37とを連通する小径(たとえば0.1mm)の吐出路38が形成されている。吐出路38は鉛直方向に対し、下方に向かうにつれて鉛直軸線に近づくように約50°傾斜している。
【0033】
処理液供給管36には、処理液バルブ39を介して、図示しない処理液供給源からの処理液が供給されるようになっている。処理液バルブ39が開かれると、処理液供給源からの処理液が、処理液供給管36および吐出路38を介して吐出口37に供給されて、吐出口37から貯留溝24の内部に向けて吐出される。
吐出口37から吐出された処理液は、貯留溝24に溜められるとともに、接続路25を、ブラシ11の上端面11aに向けて流れる。そして、ブラシ11の上端面11aに達した処理液は、ブラシ11の内部に浸透し、ブラシ11の内部を通って第1接触面32および第2接触面33に供給される。下開口27が上開口26よりもその中心軸線側に開口しているので、ブラシ11の回転軸線近くに処理液が供給される。
【0034】
なお、処理液としては、純水が用いられる。純水に限らず、炭酸水、イオン水、オゾン水、還元水(水素水)または磁気水などの機能水を処理液として用いてもよい。また、処理液として、アンモニア水またはアンモニア水と過酸化水素水との混合液(SC1)などの薬液を用いることもできる。
カバー体49は、その内部にブラシ11を収容するものであり、ブラシ11の回転軸線を中心とする有底四角筒状に形成されている。カバー体49は、ブラシ11の側方を取り囲む側壁51と、この側壁51を下方から閉鎖する底壁52とを有している。側壁51には、ブラシ11におけるウエハWとの接触部分と対向する領域に、ウエハWの周縁部を受け入れるための開口53が形成されている。
【0035】
カバー体49に関連して、処理液を吸引するための吸引ノズル70が取り付けられている。この吸引ノズル70は、開口53側と反対側の側壁51に形成されたノズル用孔44に挿通されて、その先端部がブラシ11に接触するように配置されている。吸引ノズル70には、支持板46が一体的に取り付けられており、この支持板46が、開口53側と反対側の側壁51に設けられた取付板45に固定されることにより、吸引ノズル70は、カバー体49に固定されている。
【0036】
図5は、図3のブラシおよび吸引ノズルを、切断面線V−Vで切断したときの断面図である。図3および図5を参照して、吸引ノズル70について説明する。吸引ノズル70の先端部は円錐台形状に形成されており、第1接触面32と第2接触面33との境界部分34に対向する先端面72と、第1接触面32および第2接触面33と当接する当接面73とを有している。吸引ノズル70は、ブラシ11の中心を通る鉛直軸線に対して、ウエハWの表面領域におけるブラシ接触領域Pと反対側に配置されている。
【0037】
吸引ノズル70は、その内部に形成された吸引路75を有している。吸引路75は一端が先端面72において開放され、先端面72には、その吸引路75が開放されることによる吸引口74が形成されている。吸引路75の他端には、吸引管76が接続されている。吸引管76は、処理室2の外部へ延びており、その先端は、吸引管76内を真空吸引するための真空発生装置60に接続されている。
【0038】
真空発生装置60が駆動されることにより、ブラシ11の内部に含まれる処理液は、吸引口74、吸引路75および吸引管76を介して真空発生装置60に吸引される。真空発生装置60に吸引された処理液は、図示しない廃気液設備により処理される。
図6は、基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御部50を備えている。
【0039】
この制御部50には、スピンモータ7、揺動駆動機構12、昇降駆動機構13、ブラシ自転機構15、処理液バルブ39および真空発生装置60が制御対象として接続されている。
図7は、基板処理装置におけるウエハの処理を説明するための工程図である。以下、その表面の中央部(デバイス形成領域)にLow−k膜(疎水性膜)が形成されたウエハWを洗浄する場合を例にとって説明するが、この洗浄処理は、その表面の中央部に銅配線が形成されたウエハWを洗浄対象とすることもできるし、それ以外のウエハWを洗浄対象とすることもできる。
【0040】
処理対象のウエハWの搬入前は、揺動アーム9がその搬入の妨げにならないように、ブラシ11はホームポジションに配置されている。このブラシ11の貯留溝24には、所定の量の処理液が溜められており、そのため、ブラシ11には、十分な量の処理液が含浸されている。
処理対象のウエハWは、処理室2内に搬入され、スピンチャック3に保持される(ステップS1)。ウエハWがスピンチャック3に保持されると、制御部50によりスピンモータ7が制御されて、スピンチャック3によるウエハWの回転が開始される(ステップS2)。
【0041】
また、制御部50によりブラシ自転機構15が制御されて、ブラシ11が、たとえば、100〜200rpmの回転速度で、ウエハWの回転方向と同方向に回転される。その後、制御部50により揺動駆動機構12および昇降駆動機構13が制御されて、ブラシ11の第2接触面33がウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42に接触される(ステップS3)。
【0042】
具体的には、まず、昇降駆動機構13が制御されて、ブラシ11が予め設定された高さの位置に移動され、ブラシ11の第2接触面33がウエハWの周端面42に対向する。次に、揺動駆動機構12が制御されて、揺動アーム9が旋回し、ブラシ11が水平移動することにより、ブラシ11の第2接触面33がウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42に接触し、押し付けられる。これにより、ブラシ11の第2接触面33にウエハWが食い込み、ブラシ11の内部に含浸されている処理液が染み出し、ウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42に処理液が供給される。そして、ウエハWおよびブラシ11が同方向に回転されることにより、ウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42と第2接触面33とが摺擦し、ウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42が洗浄される。
【0043】
ブラシ11から処理液が染み出し、ブラシ11に含浸された処理液の量が減少すると、ブロック体21の貯留溝24に溜められている処理液がブラシ11へと供給される。したがって、ウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42に対する裏面側洗浄処理の実行に伴って、貯留溝24に溜められている処理液の量が減少する。
ブラシ11がウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42に接触すると同時に、制御部50により処理液バルブ39が開かれる。これにより、吐出口37からブロック体21の貯留溝24に向けて処理液が吐出される(ステップS4)。このときの吐出口37からの処理液の吐出流量は、たとえば30mL/minである。吐出口37からの処理液は、ブロック体21の貯留溝24に溜められる。
【0044】
また、制御部50により真空発生装置60の駆動が開始される(ステップS5)。真空発生装置60の駆動開始に伴い、ブラシ11の内部の処理液が、吸引口74から吸引される。これにより、ブラシ11の内部に、吸引口74に向かう処理液の流れが形成される。
ウエハWの裏面の周縁領域41および周端面42に対する裏面側洗浄処理が所定時間にわたって続けられると、制御部50により昇降駆動機構13が制御されて、ブラシ11が所定の高さまで下降される。これにより、ブラシ11の第2接触面33がウエハWから離れ、第1接触面32にウエハWの周縁部が接触し、押し付けられる(ステップS6)。これにより、ブラシ11の第1接触面32にウエハWが食い込み、ブラシ11の内部に含浸されている処理液が染み出し、ウエハWの表面の周縁領域40および周端面42に処理液が供給される。そして、ウエハWおよびブラシ11が同方向に回転されることにより、ウエハWの表面の周縁領域40および周端面42と第1接触面32とが摺擦し、ウエハWの表面の周縁領域40および周端面42が洗浄される。
【0045】
ウエハWの表面の周縁領域40および周端面42に対する表面側洗浄処理が所定時間にわたって続けられると、制御部50により揺動駆動機構12および昇降駆動機構13が制御されて、ブラシ11が処理開始前のホームポジションに退避される(ステップS7)。また、ブラシ11がホームポジションに戻される間に、ブラシ自転機構15が制御されて、ブラシ11の回転が停止される。さらに、制御部50によって処理液バルブ39が閉じられて、吐出口37からの処理液の吐出が停止される(ステップS8)。また、制御部50によって真空発生装置60の駆動が停止される(ステップS9)。
【0046】
その後は、制御部50によりスピンモータ7が制御されて、ウエハWが高速(たとえば、3000rpm)で回転され(ステップS10)、ウエハWに付着している処理液が振り切られて、ウエハWが乾燥される。ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられた後、スピンチャック3によるウエハWの回転が停止される(ステップS11)。そして、ウエハWが静止した後、その処理済みのウエハWが処理室2から搬出されていく(ステップS12)。
【0047】
この実施形態によれば、ブラシ11に対向配置された吸引口74を介して、ブラシ11の内部に含浸された処理液が吸引される。この処理液の吸引により、ブラシ11の内部に、吸引口74に向かう処理液の流れが形成される。処理液を含浸した状態のブラシ11を、基板の周縁部40,41,42に接触させると、ブラシ11に含まれる処理液がウエハWの周縁部40,41,42に供給される。このとき、ブラシ11の内部に形成された処理液の流れにより、ウエハWの周縁部40,41,42に供給される処理液の量が規制される。これにより、接触面32,33からの処理液の染み出し量を規制することができ、ウエハWの周縁部40,41,42に適量の処理液を供給することができる。その結果、ウエハWの表面のデバイス形成領域への処理液の進入を防止することができ、デバイス形成領域に処理液による悪影響を与えることなく、ウエハWの周縁部40,41,42から汚染を良好に除去することができる。
【0048】
また、吸引ノズル70により、処理液とともに、ブラシ11に含まれる汚染も吸引される。これにより、ブラシ11の内部に含まれる汚染を除去することができる。
さらに、処理液は、ブラシ11の内部を浸透し、ブラシ11の内部からウエハWとの接触面32,33に供給される。これにより、ブラシ11におけるウエハWとの接触面32,33に処理液が供給されるときに、処理液が周囲に飛散するのを防止することができる。よって、ウエハWのデバイス形成領域に処理液の飛沫が付着するのを防止することができる。
【0049】
さらにまた、吸引口74からの吸引により、ブラシ11の内部への処理液の浸透が補助されるので、ブラシ11に処理液を良好に浸透させることができる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
図8は、本発明の他の実施形態を示すブラシの側面図である。
【0050】
図8に示す吸引ノズル70Aは、図3に示す吸引ノズル70に代えて用いることができ、吸引ノズル70とは異なり、吸引口74Aが第2接触面33と当接する当接面73に開口している。吸引ノズル70Aの内部には、吸引路75Aが形成されている。吸引路75Aは、先端部で下方側に屈曲しており、吸引路75Aは、吸引口74Aと連通している。真空発生装置60が駆動されると、ブラシ11の内部の処理液が吸引口74Aから吸引され、ブラシ11の内部に、吸引口74Aに向かう処理液の流れが形成される。
【0051】
この図8の実施形態では、第2接触面33は境界部分34よりも下方に位置するため、ブラシ11の内部全体に処理液を染み込ませることができる。これにより、ウエハWの周縁部40,41,42に供給される処理液の量をより一層抑制することができる。
図9は、本発明のさらに他の実施形態を示す図である。ブラシ11に挿通された芯材22Bの内部には、鉛直方向に延びる吸引路82が形成されている。芯材22Bの下端部(境界部分34よりも下方)には、複数(図9では2つ)の吸引口74Bが形成されている。各吸引口74Bは、芯材22Bにおけるブラシ11との接触面である第3接触面80に形成されている。吸引路82は、その下端で複数の分岐路に分岐し、各分岐路は、吸引口74Bに連通している。また、ホルダ20Bの支持軸8Bの内部には、その中心軸線上に配置する吸引管81が挿通されている。吸引管81の下端は、吸引路82の上端に接続されている。
【0052】
この図9に示す実施形態によれば、吸引口74Bが第3接触面80に対向する。そして、ブラシ11の内部に、芯材22Bに向かう処理液の流れが形成される。したがって、処理液はブラシ11の内側に集められる。これにより、ウエハWの周縁部40,41,42に供給される処理液の量をより一層抑制することができる。
そして、この図9に示す実施形態では、吸引口74Bが芯材22Bの下端部に形成されているので、ブラシ11の内部全体に処理液を染み込ませることができる。
【0053】
また、図3の実施形態では、接続路25は、ブラシ11に近づくにつれてその中心軸線に近づくように傾斜しているものとして説明したが、図9に示す接続路25Bのように、鉛直方向に延びるように形成されていてもよい。
さらに、たとえば、前記の実施形態では、ブラシ11の内部に処理液を浸透させ、その内部からブラシ11の接触面32,33に処理液を供給する構成を例にとって説明したが、たとえば、ブラシ11への処理液の供給のために、ウエハWの裏面に処理液を供給する構成を採用することもできる。
【0054】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の内部の図解的な側面図である。
【図3】ブラシ周辺の構成を示す断面図である。
【図4】図3のホルダを、切断面線IV−IVで切断したときの断面図である。
【図5】図3のブラシおよび吸引ノズルを、切断面線V−Vで切断したときの断面図である。
【図6】基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図7】基板処理装置におけるウエハの処理を説明するための工程図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す側面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 基板処理装置
11 ブラシ
11a 上端面
15 ブラシ自転機構(ブラシ回転手段)
21 ブロック体
22B 芯材
24 貯留溝
25 接続路
32 第1接触面
33 第2接触面
34 境界部分
36 処理液供給管(処理液供給手段)
37 吐出口
39 処理液バルブ(処理液供給手段)
60 真空発生装置
70,70A 吸引ノズル
72 先端面
73 当接面
74,74A,74B 吸引口
80 第3接触面
82 吸引路
P ブラシ接触領域
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触面を有し、処理液が含浸した状態で、基板の周縁部に前記接触面が接触されるように配置されるブラシと、
前記ブラシに対向配置される吸引口を介して、前記ブラシに含浸される処理液を吸引するための吸引手段とを含むことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
前記吸引手段は、前記吸引口を有し、先端部が前記ブラシに接触するように配置される吸引ノズルを備えることを特徴とする、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ブラシは、基板の表面に垂直な垂線方向に延びる中心軸線まわりに回転対称な形状に形成され、
前記接触面は、基板の表面に垂直な垂線方向の一方側に向けて狭まる形状の第1接触面と、前記第1接触面の前記一方側の端縁から前記垂線方向の前記一方側に向けて拡がる形状の第2接触面とを含み、
前記吸引ノズルは、第1接触面と前記第2接触面との境界部分に対向する先端面と、この先端面に連続し、前記第1接触面および前記第2接触面に当接する当接面とを有していることを特徴とする、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記吸引口が、前記先端面に形成されていることを特徴とする、請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記吸引口が、前記当接面に形成されていることを特徴とする、請求項3記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板の表面に垂直な垂線方向に延び、前記ブラシに挿通された芯材を備え、
前記吸引口は、前記芯材における前記ブラシとの接触面に形成されており、
前記吸引手段は、前記芯材に形成され、前記吸引口に接続された吸引路を備えていることを特徴とする、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記ブラシを、前記基板の表面と垂直をなす所定の軸線まわりに回転させる手段をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記ブラシの内部に処理液が浸透し、その浸透した処理液が前記接触面に供給されるように、前記ブラシに対して処理液を供給する処理液供給機構をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記ブラシにおける前記接触面とは異なる上端面に接して配置されたブロック体をさらに含み、
前記処理液供給機構は、
前記ブロック体の上面に形成され、液を溜めることができる溝と、
前記溝に対し、処理液を供給するための処理液供給手段と、
前記ブロック体を貫通して形成され、前記溝の底面と前記ブラシの前記上端面とを接続する接続路とを含むことを特徴とする、請求項8記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記処理液供給手段は、前記溝よりも上方位置に配置されて、前記溝に向けて処理液を吐出する吐出口を含むことを特徴とする、請求項8または9記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記ブラシは、基板の表面に垂直な垂線方向に延びる中心軸線まわりに回転対称な形状に形成され、
前記接続路は、前記ブラシに近づくにつれて前記中心軸線に近づくように傾斜していることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項12】
処理液が含浸されたブラシを、その接触面が基板の周縁部に接触するように配置する工程と、
前記ブラシに含浸される処理液を、前記ブラシに対向配置される吸引口を介して吸引する工程とを含むことを特徴とする、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−140961(P2009−140961A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312570(P2007−312570)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】