説明

基板処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】 クリーニング後に実施するプリコートにおいて、処理室内壁に形成される薄膜の膜厚を薄くさせ、これによりクリーニング周期を長くでき、生産性を向上させる。
【解決手段】 処理室内を所定の成膜温度に加熱させつつ、処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給させて基板上に窒化シリコン膜を形成する成膜処理と、処理室内を所定のクリーニング温度に加熱させつつ、処理室内にクリーニングガスを供給させて処理室内壁に堆積した窒化シリコン膜を除去するクリーニング処理と、加熱部により処理室内を成膜温度よりも低い所定のプリコート温度に加熱させつつ、処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給させて処理室内壁に所定の厚さの窒化シリコン膜を形成するプリコート処理と、を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する工程を有する基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に窒化シリコン膜(SiN膜)等の薄膜を形成する成膜工程が行われることがある。係る成膜工程は、基板を搬入した処理室内に例えばシリコン含有ガスや窒素含有ガス等の成膜ガスを供給することにより行われる。成膜工程の目的は基板上への薄膜形成であるが、実際には、基板以外、例えば処理室内壁等に対しても薄膜が形成されてしまう場合がある。薄膜が厚く堆積すると加わる応力が増大して割れが生じ、処理室内に異物(パーティクル)を発生させることがある。異物が基板上に載った場合、半導体装置の製造歩留りの悪化を招いてしまう。
【0003】
そこで、薄膜の厚さが一定の厚さに到達する毎に、堆積した薄膜を除去する必要がある。近年、クリーニングガスと呼ばれるガスを処理室内に流すことで薄膜を除去するドライクリーニング法が好んで用いられるようになってきた。係る方法によれば、処理室を解体する必要がなく、クリーニング工数や部品破損の危険性を低減でき、また、成膜工程の再開までの時間を短縮でき、成膜工程を実施する基板処理装置の稼働率を向上させることができる。
【0004】
但し、上述のクリーニングを実施すると、その直後に実施する成膜工程において成膜速度が低下してしまうことがあった。これは、処理室内壁の状態がクリーニングの前後で異なるためと推定される。すなわち、クリーニングを行うことで処理室内壁がエッチングされて微小な石英粉が発生したり、処理室内壁にクラックが発生したりすることにより、処理室内壁の実効的な表面積が増大し、これにより処理室内壁での成膜ガスの消費量が増大して、基板への供給量が減少するためと推定される。
【0005】
成膜速度の低下を防ぐ方法として、例えばクリーニング直後に、基板への成膜条件と同じ処理条件により処理室内壁に窒化シリコン膜等を予め形成するプリコート処理により、処理室内壁の状態をクリーニング前の状態に近づける技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−100743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のプリコートを実施すると、処理室内壁に形成される窒化シリコン膜が厚くなりすぎてしまい、クリーニング周期(メンテナンス周期)が短くなり、基板処理の生産性(装置の稼働率)が低下してしまう場合があった。すなわち、プリコート処理による成膜量もクリーニング周期の目安となる処理室内壁の堆積膜厚に加算されるため、プリコート処理によって処理室内壁に厚く成膜がなされると、クリーニング周期が短くなってしまう場合があった。
【0008】
本発明は、クリーニング後に実施するプリコートにおいて、処理室内壁に形成される薄膜の膜厚を薄くさせ、これによりクリーニング周期を長くさせ、生産性を向上させること
が可能な基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内を加熱する加熱部と、
前記処理室内にシリコン含有ガスを供給するシリコン含有ガス供給系と、
前記処理室内に窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理室内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
少なくとも前記加熱部、前記シリコン含有ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記クリーニングガス供給系をそれぞれ制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記加熱部により前記処理室内を所定の成膜温度に加熱させつつ、前記シリコン含有ガス供給系及び前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給させて前記基板上に窒化シリコン膜を形成する成膜処理と、
前記加熱部により前記処理室内を所定のクリーニング温度に加熱させつつ、前記クリーニングガス供給系から前記処理室内にクリーニングガスを供給させて前記処理室内壁に堆積した窒化シリコン膜を除去するクリーニング処理と、
前記加熱部により前記処理室内を前記成膜温度よりも低い所定のプリコート温度に加熱させつつ、前記シリコン含有ガス供給系及び前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給させて前記処理室内壁に所定の厚さの窒化シリコン膜を形成するプリコート処理と、を実施する基板処理装置が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、
処理室内に基板を搬入する工程と、
加熱部により前記処理室内を所定の成膜温度に加熱しつつ、シリコン含有ガス供給系及び窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給して前記基板上に窒化シリコン膜を形成する成膜工程と、
前記処理室内から処理後の前記基板を搬出する工程と、
前記加熱部により前記処理室内を所定のクリーニング温度に加熱しつつ、クリーニングガス供給系から前記処理室内にクリーニングガスを供給して前記処理室内壁に堆積した窒化シリコン膜を除去するクリーニング工程と、
前記加熱部により前記処理室内を前記成膜温度よりも低い所定のプリコート温度に加熱しつつ、前記シリコン含有ガス供給系及び前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給して前記処理室内壁に所定の厚さの窒化シリコン膜を形成するプリコート処理と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る基板処理装置及び半導体装置の製造方法によれば、クリーニング後に実施するプリコートにおいて、処理室内壁に形成される薄膜の膜厚を薄くさせ、これによりクリーニング周期を長くさせ、生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の斜透視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の側面透視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の処理炉の縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る基板処理工程のフロー図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る基板処理工程における温度、圧力、処理ガス供給のタイミング図である。
【図6】処理室内壁に堆積した窒化シリコン膜の膜厚を示すグラフ図であり、実線が本発明の実施例を、破線が比較例をそれぞれ示している。
【図7】従来の基板処理工程における温度、圧力、処理ガス供給のタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本発明の第1の実施形態>
以下に、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
(1)基板処理装置の構成
本実施形態に係る基板処理装置101の構成について、図1、図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置101の斜透視図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置101の側面透視図である。なお、本実施形態にかかる基板処理装置101は、例えばウエハ等の基板に酸化、拡散処理、CVD(Chemical Vapor Depositon)処理などを行う縦型の装置として構成されている。
【0015】
図1及び図2に示すように、基板処理装置101は、バッチ式縦型熱処理装置として構成されている。基板処理装置101は、内部に処理炉202などの主要部が設けられる筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの下方には、筐体111内をメンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が設けられている。正面メンテナンス口103には、正面メンテナンス口103を開閉する正面メンテナンス扉104が設けられている。筐体111内への基板搬送容器(ウエハキャリア)としては、カセット110が用いられる。カセット110内には、Si又はSiC等により構成された基板としてのウエハ200が、例えば25枚収納されるように構成されている。正面メンテナンス扉104には、カセット110を筐体111内外へ搬送する開口であるカセット搬入搬出口(基板収納容器搬入搬出口)112が、筐体111内外を連通するように設けられている。カセット搬入搬出口112は、フロントシャッタ(基板収納容器搬入搬出口開閉機構)113によって開閉されるように構成されている。カセット搬入搬出口112の筐体111内側には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工程内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0016】
カセット110は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させ、カセット110内のウエハ200を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方を向かせることが可能なように構成されている。
【0017】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105は、複数段、複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105には、ウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0018】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセ
ット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0019】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板保持体)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作により、ウエハ200を装填(ウエハチャージ)及び脱装(ウエハディスチャージ)することが可能に構成されている。
【0020】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部には開口が設けられている。かかる開口は炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0021】
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬入搬出させる昇降機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート217が上昇したときに処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体としてのシールキャップ219が水平姿勢で設けられている。
【0022】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。
【0023】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0024】
また、ウエハ移載装置エレベータ125b及びボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134bが設置されている。クリーンユニット134bから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a、ボート217を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0025】
(2)基板処理装置の動作
次に、本発明の実施例にかかる基板処理装置101の動作について説明する。
【0026】
まず、カセット110がカセットステージ114上に載置されるに先立って、カセット搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放される。その後、カセット110が、図示しない工程内搬送装置によってカセット搬入搬出口112から搬入され、ウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させられる。その結果、
カセット110内のウエハ200は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0027】
次に、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0028】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作によって移載室124の後方にあるボート217に装填(ウエハチャージ)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0029】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、ウエハ200群を保持したボート217が処理炉202内へ搬入(ボートロード)される。ボートロード後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後、ウエハ200及びカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ払出され、他の基板処理工程を実施する基板処理装置へと搬送される。
【0030】
(3)処理炉の構成
次に、本実施形態にかかる処理炉202の構成を図面に基づいて説明する。図3は本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置101の処理炉202の縦断面図である。
【0031】
(処理室)
図3に示されているように、処理炉202は反応管としてのプロセスチューブ203を備えている。プロセスチューブ203は内部反応管としてのインナーチューブ204と、その外側に設けられた外部反応管としてのアウターチューブ205とから構成されている。インナーチューブ204は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料から構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。インナーチューブ204の筒中空部には、基板としてのウエハ200上に薄膜を形成する処理を行う処理室201が形成されている。処理室201は、ウエハ200をボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。アウターチューブ205は、例えば石英または炭化シリコン等の耐熱性材料から構成されている。アウターチューブ205は、内径がインナーチューブ204の外径よりも大きく、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されており、インナーチューブ204と同心円状に設けられている。
【0032】
(ヒータ)
プロセスチューブ203の外側には、プロセスチューブ203の側壁面を囲う同心円状ように、加熱部としてのヒータ206が設けられている。ヒータ206は円筒形状に形成されている。ヒータ206は、保持板としてのヒータベース251に支持されることにより垂直に据え付けられている。インナーチューブ204とアウターチューブ205との間には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。ヒータ206及び温度センサ263には、温度制御部238が電気的に接続されている。温度制御部238は、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように、温度センサ263により検出された
温度情報に基づいてヒータ206への通電具合を所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0033】
(マニホールド)
アウターチューブ205の下方には、アウターチューブ205と同心円状にマニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス等から構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209は、インナーチューブ204とアウターチューブ205とに係合しており、これらを支持するように設けられている。なお、マニホールド209とアウターチューブ205との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。図示しないがマニホールド209がヒータベース251に支持されることにより、プロセスチューブ203は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ203とマニホールド209とにより反応容器が形成される。
【0034】
(シリコン含有ガス供給系)
マニホールド209には、処理室201内にシリコン含有ガス例えばDCS(SiHCl)ガスを処理室201内に供給するノズル230aが、処理室201内に連通するように設けられている。ノズル230aの上流端には、ガス供給管232aの下流端が接続されている。ガス供給管232aには、上流側から順に、シリコン含有ガス供給源としてのSiHClガス供給源271、バルブ262a、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241a、及びバルブ261aが設けられている。主に、ノズル230a、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ261a,262a、SiHClガス供給源271により、シリコン含有ガス供給系が構成される。
【0035】
MFC241a、バルブ261a,262aには、後述するガス供給・流量制御部235が電気的に接続されている。ガス供給・流量制御部235は、処理室201内に供給されるシリコン含有ガスの流量が、それぞれ所定のタイミングで所定の流量となるように、MFC241a、バルブ261a,262aをそれぞれ制御するように構成されている。
【0036】
(窒素含有ガス供給系)
マニホールド209には、処理室201内に窒素含有ガスとして例えばアンモニア(NH)ガスを供給するノズル230bが、処理室201内に連通するように設けられている。ノズル230bの上流端には、ガス供給管232bの下流端が接続されている。ガス供給管232bには、上流側から順に、窒素含有ガス供給源としてのNHガス供給源272、バルブ262b、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241b、及びバルブ261bが設けられている。主に、ノズル230b、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ261b,262b、NHガス供給源272により、窒素含有ガス供給系が構成される。
【0037】
MFC241b、バルブ261b,262bには、後述するガス供給・流量制御部235が電気的に接続されている。ガス供給・流量制御部235は、処理室201内に供給される窒素含有ガスの流量が、それぞれ所定のタイミングで所定の流量となるように、MFC241b、バルブ261b,262bをそれぞれ制御するように構成されている。
【0038】
(クリーニングガス供給系)
ガス供給管232aのバルブ261aよりも下流側には、処理室201内にクリーニングガスとして例えばフッ化窒素(NF)ガスを供給するガス供給管232eが接続されている。ガス供給管232eには、上流側から順に、クリーニングガス供給源としてのNFガス供給源274、バルブ262e、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241e、及びバルブ261eが設けられている。
【0039】
また、ガス供給管232bのバルブ261bよりも下流側には、処理室201内にクリーニングガスとしてフッ化窒素(NF)ガスを供給するガス供給管232fが接続されている。ガス供給管232fの上流端は、ガス供給管232eのバルブ262eよりも上流側に接続されている。ガス供給管232fには、上流側から順に、バルブ262f、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241f、及びバルブ261fが設けられている。
【0040】
主に、ノズル230a,230b、ガス供給管232a,232b,232e,232f、MFC241e,242f、バルブ261e,261f,262e,262f、NFガス供給源274によりクリーニングガス供給系が構成される。
【0041】
MFC241e,241f、バルブ261e,261f,262e,262fには、後述するガス供給・流量制御部235が電気的に接続されている。ガス供給・流量制御部235は、処理室201内に供給されるクリーニングガスの流量が、それぞれ所定のタイミングで所定の流量となるように、MFC241e,241f、バルブ261e,261f,262e,262fをそれぞれ制御するように構成されている。
【0042】
(不活性ガス供給系)
ガス供給管232aのバルブ261aの下流側には、処理室201内に不活性ガスとして窒素(N)ガスを供給するガス供給管232cが接続されている。ガス供給管232cには、上流側から順に、不活性ガス供給源としてのNガス供給源273、バルブ262c、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241c、及びバルブ261cが設けられている。
【0043】
また、ガス供給管232bのバルブ261bの下流側には、処理室201内に不活性ガスとして窒素(N)ガスを供給するガス供給管232dが接続されている。ガス供給管232dの上流端は、ガス供給管232cのバルブ262cよりも上流側に接続されている。ガス供給管232dには、上流側から順に、バルブ262d、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241d、及びバルブ261dが設けられている。
【0044】
主に、ノズル230a,230b、ガス供給管232a,232b,232c,232d、MFC241c,241d、バルブ261c,261d,262c,262d、Nガス供給源273により、不活性ガス供給系が構成される。
【0045】
MFC241c,241d、バルブ261c,261d,262c,262dには、後述するガス供給・流量制御部235が電気的に接続されている。ガス供給・流量制御部235は、処理室201内に供給される不活性ガスの流量が、それぞれ所定のタイミングで所定の流量となるように、MFC241c,241d、バルブ261c,261d,262c,262dをそれぞれ制御するように構成されている。
【0046】
主に、シリコン含有ガス供給系及び窒素含有ガス供給系により、本実施形態に係る成膜ガス(原料ガス)供給系が構成される。また主に、シリコン含有ガス供給系、窒素含有ガス供給系及びクリーニングガス供給系により、本実施形態に係るガス供給系が構成される。
【0047】
(排気系)
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231は、インナーチューブ204とアウターチューブ205との隙間によって形成される筒状空間250の下端部に配置されており、筒状空間250に連通して
いる。排気管231の下流側(マニホールド209との接続側と反対側)には、圧力検出器としての圧力センサ245、及び可変コンダクタンスバルブ、例えばAPC(Auto
Pressure Controller)バルブ等の圧力調整装置242を介して、真空ポンプ等の真空排気装置246が設けられている。真空排気装置246は、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう排気するように構成されている。圧力調整装置242及び圧力センサ245には、後述の圧力制御部236が電気的に接続されている。圧力制御部236は、処理室201内の圧力が所望の圧力となるように、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて圧力調整装置242を所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0048】
上述のように構成されることで、シリコン含有ガス供給系から供給されたシリコン含有ガス、窒素含有ガス供給系から供給された窒素含有ガス、クリーニングガス供給系から供給されたクリーニングガス、及び不活性ガス供給系から供給された不活性ガスは、それぞれインナーチューブ204内(処理室201内)を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250に流出し、筒状空間250を流下した後、排気管231から排気される。主に、排気管231、圧力調整装置242、真空排気装置246により、本実施形態に係る排気系が構成される。
【0049】
(シールキャップ)
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属により構成されている。シールキャップ219は、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。
【0050】
(回転機構)
シールキャップ219の中心部付近であって処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構254が設置されている。回転機構254の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217を下方から支持している。回転機構254は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させることが可能に構成されている。
【0051】
(ボートエレベータ)
シールキャップ219は、プロセスチューブ203の外部に垂直に設備された基板保持具昇降機構としてのボートエレベータ115によって、垂直方向に昇降されるように構成されている。シールキャップ219を昇降させることにより、ボート217を処理室201内外へ搬送することが可能に構成されている。上述したように回転機構254及びボートエレベータ115には、駆動制御部237が電気的に接続されている。駆動制御部237は、回転機構254及びボートエレベータ115が所望の動作をするよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0052】
(シャッタ)
また、マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な第2の炉口蓋体としての炉口シャッタ147が設けられている。シャッタ147は、昇降及び回動することで処理室201内からボート217を搬出した後のマニホールド209の下端に当接され、ボート217を搬出した後の処理室201内を気密に閉塞するように構成されている。シャッタ147の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。
【0053】
(ボート)
上述したように基板保持具としてのボート217は、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。ボート217は、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱性材料により構成されている。ボート217の下部には、断熱部材としての断熱板216が水平姿勢で多段に複数枚配置されている。断熱板216は、円板形状に形成されている。断熱板216は、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱性材料により構成されている。断熱板216は、ヒータ206からの熱をマニホールド209側に伝えにくくするように構成されている。
【0054】
(コントローラ)
ガス供給・流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、及び温度制御部238は、操作部、入出力部をも構成し、基板処理装置全体を制御する主制御部239に電気的に接続されている。これら、ガス供給・流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、温度制御部238、及び主制御部239は、制御部としてのコントローラ240として構成されている。
【0055】
(4)基板処理工程
次に、半導体デバイスの製造工程の一工程として、ウエハ200上に窒化シリコン膜を形成する成膜工程、処理室201内壁に堆積した窒化シリコン膜を除去するクリーニング工程、処理室201内壁に所定の厚さの窒化シリコン膜を形成するプリコート工程を順に実施する基板処理工程について、主に図4及び図5を参照しながら説明する。
【0056】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理工程のフロー図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理工程における温度、圧力、処理ガス供給のタイミング図である。なお、以下の説明において、基板処理装置101を構成する各部の動作はコントローラ240により制御される。
【0057】
(ウエハ搬入工程S10)
複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、図3に示すように、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115によって上昇させて処理室201内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0058】
ウエハ搬入工程S10を実施する際は、処理室201内にNガスを供給して処理室201内をパージする。バルブ262c,261c,262d,261dを開くことでNガス供給源273からガス供給管232c,232d内に供給されたNガスは、MFC241c,241dにて所定の流量となるように制御された後、ガス供給管232a,232bを経由して、ノズル230a、230bから処理室201内に供給される。なお、処理室201内へのNガスの供給は、基板処理工程の全工程が終了するまで継続する。
【0059】
(成膜工程S20)
処理室201内が所定の成膜圧力(真空度)となるように真空排気装置246によって真空排気する。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき圧力調整装置242がフィードバック制御される。また、処理室201内が所定の温度となるようにヒータ206によって加熱する。この際、処理室201内の温度が所定の温度(成膜温度)となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ206への通電具合がフィードバック制御される(S21)。続いて、回転機構254によるボート217及びウエハ200の回転を開始する。
【0060】
処理室201内が所定の成膜温度、所定の成膜圧力に維持された状態で、シリコン含有ガスとしてのSiHClガス及び窒素含有ガスとしてのNHガスの処理室201内への供給を開始する(S22)。バルブ262a,261aを開くことでSiHClガス供給源271からガス供給管232a内に供給されたSiHClガスは、MFC241aにて所定の流量となるように制御された後、ガス供給管232aを通り、ノズル230aから処理室201内に供給される。また、バルブ262b,261bを開くことでNHガス供給源272からガス供給管232b内に供給されたNHガスは、MFC241bにて所定の流量となるように制御された後、ガス供給管232bを通り、ノズル230bから処理室201内に供給される。
【0061】
このとき、処理室201内へ供給されるNガスは、成膜ガス(SiHClガス及びNHガス)を希釈する希釈ガスとして、或いは処理室201内への拡散を促すキャリアガスとして機能する。Nガスの供給流量を制御することで、成膜ガス(SiHClガス及びNHガス)の濃度や拡散速度を制御することができる。
【0062】
処理室201内に供給された成膜ガス(SiHClガス及びNHガス)は、インナーチューブ204内(処理室201内)を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250に流出し、筒状空間250を流下した後、排気管231から排気される。成膜ガス(SiHClガス及びNHガス)は、処理室201内を通過する際にウエハ200の表面と接触する。この際、熱CVD反応によってウエハ200表面上に薄膜、すなわち窒化シリコン膜(Si膜、以下、単にSiN膜とも呼ぶ)が堆積(デポジション)される。予め設定された処理時間が経過し、所定の膜厚の窒化シリコン膜が成膜されたら、バルブ262a,261a,262b,261bを閉じ、処理室201内への成膜ガス(SiHClガス及びNHガス)の供給を停止する。
【0063】
そして、バルブ262c,261c,262d,261dを開いたままの状態とし、処理室201内へのNガスの供給を継続しつつ、処理室201内を排気することで、処理室201内をパージする。処理室201内の雰囲気がNガスに置換されたら、圧力調整装置242の開度を調整して処理室201内の圧力を常圧に復帰させる。また、ヒータ206への通電を停止し、処理室201内の温度を所定の温度(ウエハ搬出温度)に降温させる(S23)。
【0064】
本実施形態に係る成膜工程(S20)の処理条件としては、
成膜温度:650〜800℃(好ましくは750℃近傍)
SiHClガス供給流量:100sccm
NHガス供給流量:2000sccm
成膜圧力:133Pa未満(好ましくは67Pa近傍)
が例示される。それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することで、ウエハ200上に例えば10〜200nmの膜厚の窒化シリコン膜が形成される。
【0065】
(ウエハ搬出工程S30)
その後、回転機構254によるボート217及びウエハ200の回転を停止させ、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降させてマニホールド209の下端を開口させるとともに、処理済のウエハ200を保持したボート217をプロセスチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済のウエハ200をボート217から脱装(ウエハディスチャージ)する。
【0066】
なお、成膜工程(S20)の目的は、ウエハ200上への窒化シリコン膜の形成であるが、実際には、ウエハ200以外、例えばインナーチューブ204内壁やボート217等に対しても窒化シリコン膜が形成されてしまう。窒化シリコン膜が厚く堆積すると、加わ
る応力が増大して割れが生じ、処理室201内に異物(パーティクル)を発生させることがある。そこで、上述の成膜工程(S20)を繰り返すことで、処理室201内に堆積した窒化シリコン膜の厚さが所定の厚さに到達したら、後述するクリーニング工程S50を実施する。なお、クリーニング工程S50は、処理室201内に例えば空のボート217を搬入した状態で行う。
【0067】
(空ボート搬入工程S40)
ウエハ200を装填していない空のボート217、すなわちウエハ200を装填していないボート217を、ボートエレベータ115によって上昇させて処理室201内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0068】
(クリーニング工程S50)
処理室201内が所定のクリーニング圧力(真空度)となるように真空排気装置246によって真空排気すると共に、処理室201内が所定のクリーニング温度となるようにヒータ206によって加熱する(S51)。続いて、回転機構254によるボート217の回転を開始する。なお、ボート217は回転させなくてもよい。
【0069】
処理室201内が所定のクリーニング温度、所定のクリーニング圧力に維持された状態で、クリーニングガスとしてのNFガスの処理室201内への供給を開始する。バルブ262e,261e,262f,261fを開くことでNFガス供給源274からガス供給管232e,232f内に供給されたNFガスは、MFC241e,241fにて所定の流量となるように制御された後、ガス供給管232a,232bを経由して、ノズル230a,230bから処理室201内に供給される(S52)。
【0070】
このとき、処理室201内へ供給されるNガスは、クリーニングガスであるNFガスを希釈する希釈ガスとして、或いは処理室201内への拡散を促すキャリアガスとして機能する。Nガスの供給流量を制御することで、NFガスの濃度や拡散速度を制御するこができる。
【0071】
処理室201内に供給されたNFガスは、インナーチューブ204内(処理室201内)を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250内に流出し、筒状空間250内を流下した後、排気管231から排気される。NFガスは、処理室201内を通過する際に、処理室201内に累積した窒化シリコン膜等と接触し、熱化学反応により窒化シリコン膜等を除去する。すなわち、加熱されて活性化したNFガスはエッチング種となり、処理室201内に累積した窒化シリコン膜等をエッチングして除去する。なお、本実施形態では、処理室201内へNFガスを供給するノズルとして、処理室201内へ成膜ガスを供給するノズル230a,230bを用いている。係る構成によれば、ノズル230a,230b内に堆積した窒化シリコン膜をも効率的に除去することができる。予め設定された処理時間が経過し、窒化シリコン膜等の除去が完了したら、バルブ262c,261c,262d,261dを閉じ、処理室201内へのNFガスの供給を停止する。
【0072】
そして、バルブ262c,261c,262d,261dを開いたままの状態とし、処理室201内へのNガスの供給を継続しつつ、処理室201内を排気することで、処理室201内をパージする(S53)。
【0073】
なお、本実施形態に係るクリーニング工程(S50)の処理条件としては、
クリーニング温度:590〜650℃(好ましくは620℃近傍)
NFガス供給流量:500〜1500sccm
クリーニング圧力:800〜7000Pa(好ましくは5000Pa近傍)
が例示される。
【0074】
(プリコート工程S60)
上述のクリーニング工程S50を実施することで、処理室201内に堆積した窒化シリコン膜等を除去することができ、処理室201内における異物の発生を回避することができる。しかしながら、クリーニング工程S50を実施すると、その直後に実施する成膜工程S20において、成膜速度が低下してしまうことがあった。これは、処理室201内壁の状態がクリーニング工程S50の前後で異なるためと推定される。すなわち、クリーニング工程S50を行うことで処理室201内壁がエッチングされて微小な石英粉が発生したり、処理室201内壁にクラックが発生したりすることにより、処理室201の内壁の実効的な表面積が増大し、これにより処理室201の内壁での成膜ガスの消費量が増大して、ウエハ200への供給量が減少するためと推定される。
【0075】
そこで本実施形態では、クリーニング工程S50直後の処理室201内壁に窒化シリコン膜を予め形成するプリコート工程S60を実施し、クリーニング工程S50直前の処理室201内壁の状態を復元することで、クリーニング工程S50直後の成膜速度の低下を防ぐようにしている。但し、プリコート工程S60による成膜量も、クリーニング周期の目安となる処理室201内壁の堆積膜厚に加算される。そのため、プリコート工程S60によって処理室201内壁に窒化シリコン膜が厚く成膜がなされると、クリーニング周期が短くなってしまう。そこで本実施形態では、プリコート工程S60における処理温度(プリコート温度)を、成膜工程S20における処理温度(成膜温度)よりも低い温度とすることで、プリコート工程S60にて形成する窒化シリコン膜の成膜速度を抑え、膜厚を薄くするようにしている。
【0076】
但し、プリコート工程S60にて形成する窒化シリコン膜の膜厚を薄くする場合であっても、処理室201内壁等が露出しないようにプリコートを確実に行う必要がある。そこで本実施形態では、プリコート工程S60において、処理室201内へシリコン含有ガスを供給して排気する処理と、処理室201内へNHガスを供給して排気する処理と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施するALD(Atomic Layer Deposition)法を用いることで、形成する窒化シリコン膜の段差被覆性(ステップカバレッジ)や膜厚制御性を高めるようにしている。
【0077】
以下に、本実施形態に係るプリコート工程S60について詳しく述べる。
【0078】
クリーニング工程S50の終了直後、ウエハ200を装填していない空のボート217が処理室201内に搬入(ボートロード)されたままの状態で、処理室201内が所定のプリコート圧力(真空度)となるように真空排気装置246によって真空排気すると共に、処理室201内が所定のクリーニング温度となるようにヒータ206によって加熱する(S61)。続いて、回転機構254によるボート217の回転を開始する。なお、プリコート温度は、成膜工程S20における成膜温度より低く設定する。
【0079】
そして、シリコン含有ガスとしてのSiHClガスの処理室201内への供給を開始する(S62)。バルブ262a,261aを開くことでSiHClガス供給源271からガス供給管232a内に供給されたSiHClガスは、MFC241aにて所定の流量となるように制御された後、ノズル230aから処理室201内に供給される。このとき、処理室201内へ供給されるNガスは、SiHClガスを希釈する希釈ガスとして、或いは処理室201内への拡散を促すキャリアガスとして機能する。
【0080】
処理室201内に供給されたSiHClガスは、インナーチューブ204内(処理
室201内)を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250に流出し、筒状空間250を流下した後、排気管231から排気される。SiHClガスは、処理室201内を通過する際に処理室201内壁やボート217表面等と接触し、これらの表面に1原子層未満から数原子層のシリコン含有層であるシリコン層(Si層)を形成する。なお、SiHClガスを供給する際の処理室201内の最大圧力を、成膜工程S20における処理室201内の最大圧力よりも大きくすることで、処理室201内壁やボート217表面へのSiHClガスの供給を促すことができ、処理室201内壁やボート217表面に形成されたクラック等の凹凸構造内にも、シリコン層を切れ目なく(連続的に)形成することができ、プリコート工程S60にて形成する窒化シリコン膜の段差被覆性を向上させることができる。予め設定された処理時間が経過し、シリコン層の形成が完了したら、バルブ262a,261aを閉じ、処理室201内へのSiHClガスの供給を停止する。
【0081】
そして、バルブ262c,261c,262d,261dを開いたままの状態とし、処理室201内へのNガスの供給を継続しつつ、処理室201内を排気することで、処理室201内をパージする(S63)。
【0082】
そして、窒素含有ガスとしてのNHガスの処理室201内への供給を開始する(S64)。バルブ262b,261bを開くことでNHガス供給源272からガス供給管232b内に供給されたNHガスは、MFC241bにて所定の流量となるように制御された後、ノズル230bから処理室201内に供給される。このとき、処理室201内へ供給されるNガスは、NHガスを希釈する希釈ガスとして、或いは処理室201内への拡散を促すキャリアガスとして機能する。
【0083】
処理室201内に供給されたNHガスは、インナーチューブ204内(処理室201内)を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250に流出し、筒状空間250を流下した後、排気管231から排気される。NHガスは、処理室201内を通過する際に処理室201内壁やボート217表面に形成されたシリコン層と接触する。これにより、シリコン層が窒化され、1原子層未満から数原子層の窒化シリコン層(SiN層)が形成される。なお、NHガスを供給する際の処理室201内の最大圧力を、成膜工程S20における処理室201内の最大圧力よりも大きくすることで、処理室201内壁やボート217表面に形成されたシリコン層へのNHガスの供給を促すことができ、シリコン層全体を切れ目なく窒化させることができ、プリコート工程S60にて形成する窒化シリコン膜の膜質均一性を高めることができる。予め設定された処理時間が経過し、窒化シリコン層の窒化が完了したら、バルブ262b,261bを閉じ、処理室201内へのNHガスの供給を停止する。
【0084】
そして、バルブ262c,261c,262d,261dを開いたままの状態とし、処理室201内へのNガスの供給を継続しつつ、処理室201内を排気することで、処理室201内をパージする(S65)。
【0085】
上述したS62〜S65を1サイクルとして、このサイクルを1回以上行うことにより、処理室201内壁やボート217表面に所定の膜厚の窒化シリコン膜(プリコート膜)を形成する(S66)。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0086】
本実施形態に係るプリコート工程(S60)の処理条件としては、
プリコート温度:590〜650℃(好ましくは625℃近傍)
SiHClガス供給流量:100〜200sccm
NHガス供給流量:2500〜6000sccm
SiHClガス供給時の処理圧力:400〜2000Pa
NHガス供給時の処理圧力:67〜2000Pa
サイクル数:100〜1000回
が例示される。それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することで、処理室201内壁やボート217表面に例えば10〜100nmの膜厚の窒化シリコン膜(プリコート膜)が形成される。
【0087】
上述のサイクルを所定回数実施し、所定の膜厚の窒化シリコン膜(プリコート膜)が成膜されたら、バルブ262c,261c,262d,261dを開いたままの状態とし、処理室201内へのNガスの供給を継続しつつ、処理室201内を排気することで、処理室201内をパージする。処理室201内がNガスに置換されたら、圧力調整装置242の開度を調整して処理室201内の圧力を常圧に復帰させる。また、ヒータ206への通電を停止し、処理室201内の温度を所定の温度(ボート搬出温度)に降温させる(S67)
【0088】
(空ボート搬出工程S70)
その後、回転機構254によるボート217の回転を停止させ、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降させてマニホールド209の下端を開口させるとともに、空のボート217をマニホールド209の下端からプロセスチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)させる。以後、カセット110がカセットステージ114上に載置されると、上述のウエハ搬入工程S10、成膜工程S20が順次実施される。
【0089】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)本実施形態では、クリーニング工程S50直後に、処理室201内壁に窒化シリコン膜を形成するプリコート工程S60を実施する。これにより、クリーニング工程S50直前の処理室201内壁の状態を復元することができ、クリーニング工程S50直後の成膜工程S20における成膜速度の低下を防ぐことができる。
【0090】
(b)本実施形態では、プリコート工程S60における処理温度(プリコート温度)を、成膜工程S20における処理温度(成膜温度)よりも低い温度とすることで、プリコート工程S60にて形成する窒化シリコン膜の成膜速度を抑え、形成する窒化シリコン膜(プリコート膜)の膜厚を薄くするようにしている。これにより、クリーニング周期(メンテナンス周期)を長くでき、基板処理の生産性(装置の稼働率)を向上させることができる。
【0091】
参考までに、従来の基板処理工程における温度、圧力、処理ガス供給のタイミングを図7に示す。図7に示すように、従来の基板処理工程では、プリコート工程S60’の成膜条件を成膜工程S20の成膜条件と同じとしていた。すなわち、プリコート工程S60’の処理温度(プリコート温度)を、成膜工程S20の処理温度(成膜温度)と同じ温度としていた。また、プリコート工程S60’では、SiHClガスとNHガスとを処理室内に同時に供給するCVD法により成膜することとしていた。このため、従来の基板処理工程では、プリコート工程S60’にて形成される窒化シリコン膜(プリコート膜)が厚くなりすぎてしまい、クリーニング周期が短くなり、基板処理の生産性が低下してしまう場合があった。
【0092】
図6は、処理室の内壁に堆積した窒化シリコン膜の膜厚を示すグラフ図であり、実線が本発明の基板処理工程を用いた場合(実施例)を、破線が従来の基板処理工程を用いた場合(比較例)をそれぞれ示している。図6の横軸は経過時間を、縦軸は処理室の内壁に堆積した窒化シリコン膜の膜厚を示している。図6の実線に示すように、実施例のプリコート工程S60では、プリコート工程S60にて形成される窒化シリコン膜(プリコート膜
)を薄くすることができ、これにより、クリーニングが必要な膜厚に達するまでの時間、すなわちクリーニング周期を長くできることが分かる。これに対し、図6の破線に示すように、比較例のプリコート工程S60’では、成膜条件を成膜工程S20の成膜条件と同じとしているため、プリコート工程S60’にて形成される窒化シリコン膜(プリコート膜)が厚くなりすぎてしまい、これにより、クリーニングが必要な膜厚に達するまでの時間、すなわちクリーニング周期が短くなっていることが分かる。
【0093】
(c)本実施形態によれば、プリコート工程S60にて窒化シリコン膜(プリコート膜)を形成する際、シリコン含有ガス供給系から処理室201内へシリコン含有ガスを供給して排気する工程と、窒素含有ガス供給系から処理室201内へ窒素含有ガスを供給して排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施するALD(Atomic Layer Deposition)法を用いている。これにより、窒化シリコン膜(プリコート膜)の段差被覆性(ステップカバレッジ)や膜厚制御性を高めることができる。そして、窒化シリコン膜(プリコート膜)の膜厚を薄くする場合であっても、処理室201内壁等が露出しないよう、プリコートを確実に行う行うことが可能となる。これにより、クリーニング工程S50直後の成膜工程S20における成膜速度の低下をより確実に防ぐことができる。
【0094】
(d)本実施形態によれば、プリコート工程S60にてSiHClガスを供給する際の処理室201内の最大圧力を、成膜工程S20における処理室201内の最大圧力よりも大きくするようにしている。これにより、処理室201内壁やボート217表面へのSiHClガスの供給を促すことができ、処理室201内壁やボート217表面に形成されたクラック等の凹凸構造内にも、シリコン層を切れ目なく(連続的に)形成することができ、プリコート工程S60にて形成する窒化シリコン膜の段差被覆性を向上させることができる。これにより、クリーニング工程S50直後の成膜工程S20における成膜速度の低下をより確実に防ぐことができる。
【0095】
(e)本実施形態によれば、プリコート工程S60にてNHガスを供給する際の処理室201内の最大圧力を、成膜工程S20における処理室201内の最大圧力よりも大きくするようにしている。これにより、処理室201内壁やボート217表面に形成されたシリコン層へのNHガスの供給を促すことができ、シリコン層全体を切れ目なく(連続的に)窒化させることができ、プリコート工程S60にて形成する窒化シリコン膜の膜質均一性を高めることができる。これにより、クリーニング工程S50直後の成膜工程S20における成膜速度の低下をより確実に防ぐことができる。
【0096】
<本発明の第2の実施形態>
本実施形態では、プリコート工程にて形成する窒化シリコン膜(プリコート膜)を2層構造とし、プリコート膜の下層(下地層)を段差被覆性や膜厚制御性の高いALD法により形成し、プリコート膜の上層(表面層)を成膜工程S20と同じCVD法で形成するようにしている点が、上述の実施形態と異なる。
【0097】
具体的には、まず、ヒータ206により処理室201内を成膜温度よりも低い所定のプリコート温度に加熱させつつ、シリコン含有ガス供給系から処理室201内へSiHClガスを供給させて排気する工程と、窒素含有ガス供給系から処理室201内へNHガスを供給させて排気する処理と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施する第1プリコート工程を実施することで、プリコート膜の下層(下地層)としてのALD−SiN層を形成する。係る工程は、上述の実施形態の工程S61〜S67と同様に行う。
【0098】
そして、ヒータ206により処理室201内を所定の成膜温度に加熱させつつ、シリコン含有ガス供給系からの処理室201内へのSiHClガスの供給と、窒素含有ガス
供給系からの処理室201内へのNHガスの供給と、を同時に実施する第2プリコート工程を実施することで、プリコート膜の上層(表面層)としてのCVD−SiN層を形成する。係る工程は、上述の実施形態の工程S21〜S23と同様に行う。
【0099】
本実施形態によれば、プリコート膜の上層(表面層)が、成膜工程S20と同じ成膜条件(温度、圧力、ガス供給シーケンス)により形成される。そのため、クリーニング工程S50直前の処理室201内壁の状態を、より正確に復元することができ、クリーニング工程S50直後の成膜工程S20における成膜速度の変化をより確実に防ぐことができる。
【0100】
なお、本実施形態においても、第1プリコート工程におけるサイクル数や第2プリコート工程における処理時間を調整し、プリコート膜の下層(下地層)としてのALD−SiN層と、プリコート膜の上層(表面層)としてのCVD−SiN層との合計膜厚を薄くするようにすることで、クリーニング周期(メンテナンス周期)を長くでき、基板処理の生産性(装置の稼働率)を向上させることができる。
【0101】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0102】
例えば、上述の実施形態では、処理室201内にガスを供給するノズルとしてショートノズルを例示したが、本発明は係る形態に限らず、例えば各ウエハ200の処理領域に直接ガスを供給できるようにガス供給口が複数形成されたロングノズルを用いてもよい。例えばL字型のノズルを1つ以上用いて、ガスを供給する位置をウエハ200の処理領域まで延在させることで、ガスをウエハ200の近傍で供給することができるようにしても良い。
【0103】
また例えば、上述の実施形態に係るクリーニング工程S50及びプリコート工程S60は、ウエハ200を装填していない空のボート217を処理室201内に搬入した状態で実施しているが、本発明は係る形態に限らず、例えばダミー用ウエハを装填したボート217を処理室201内に搬入した状態で実施するようにしても構わない。
【0104】
また例えば、上述の実施形態に係るクリーニング工程では、フッ化窒素(NF)ガスを処理室201内に連続的に供給しているが、本発明は係る形態に限らず、NFガスを断続的に複数回供給するようにしてもよい。
【0105】
また例えば、シリコン含有ガスとしてDCS(SiHCl)ガスを例示したが、本発明は係る形態に限らず、例えば、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCD)、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)等の他のクロロシラン系や、トリシラン(Si、略称:TS)、ジシラン(Si、略称:DS)、モノシラン(SiH、略称:MS)等の無機原料や、アミノシラン系のテトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH]4、略称:4DMAS)、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C、略称:2DEAS)、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)などの有機原料を用いることができる。
【0106】
また例えば、窒素含有ガスとしてアンモニア(NH)ガスを例示したが、これに限らず、例えば、一酸化窒素(NO)ガスや二酸化窒素(NO)ガス等を用いても良く、ま
たこれらの組み合わせて用いてもよい。
【0107】
また、例えば、クリーニングガスとして三フッ化窒素(NF)ガスを例示したが、これに限らず、例えば、フッ化水素(HF)ガス、三フッ化塩素(ClF)ガス、フッ素(F)ガス等のフッ素(F)や塩素(Cl)等のハロゲンを含むハロゲン含有ガスを用いても良く、またこれらを組み合わせて用いても良い。
【0108】
また、例えば不活性ガスとして窒素(N)ガスを例示したが、これに限らず、例えば、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガス等を用いても良く、また窒素ガスとこれらの希ガスとを組み合わせて用いても良い。
【0109】
また、例えば上述したように、本発明に係る処理炉202の構成では、ウエハ200を多数処理するバッチ式装置として構成されているが、これに限らず、ウエハ200を1枚毎に処理する枚様式装置に本発明を適用してもよい。
【0110】
また、例えば上述したように、本発明に係る処理炉202の構成では、熱CVD反応によってウエハ200の表面上に窒化シリコン(SiN膜)を成膜する構成としているが、これに限らず、プラズマを用いてウエハ200の表面上に窒化シリコン(SiN膜)を成膜する構成に本発明を適用してもよい。
【0111】
<本発明の好ましい形態>
以下に、本発明の好ましい形態について付記する。
【0112】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内を加熱する加熱部と、
前記処理室内にシリコン含有ガスを供給するシリコン含有ガス供給系と、
前記処理室内に窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理室内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
少なくとも前記加熱部、前記シリコン含有ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記クリーニングガス供給系をそれぞれ制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記加熱部により前記処理室内を所定の成膜温度に加熱させつつ、前記シリコン含有ガス供給系及び前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給させて前記基板上に窒化シリコン膜を形成する成膜処理と、
前記加熱部により前記処理室内を所定のクリーニング温度に加熱させつつ、前記クリーニングガス供給系から前記処理室内にクリーニングガスを供給させて前記処理室内壁に堆積した窒化シリコン膜を除去するクリーニング処理と、
前記加熱部により前記処理室内を前記成膜温度よりも低い所定のプリコート温度に加熱させつつ、前記シリコン含有ガス供給系及び前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給させて前記処理室内壁に所定の厚さの窒化シリコン膜を形成するプリコート処理と、を実施する基板処理装置が提供される。
【0113】
好ましくは、
前記成膜温度は650℃以上800℃以下、さらに好ましくは750℃である。
【0114】
また好ましくは、
前記プリコート温度は590℃以上650℃未満、さらに好ましくは625℃である。
【0115】
また好ましくは、
前記制御部は、前記成膜処理において、前記シリコン含有ガス供給系からの前記処理室内へのシリコン含有ガスの供給と、前記窒素含有ガス供給系からの前記処理室内への窒素含有ガスの供給とを同時に行う。
【0116】
また好ましくは、
前記制御部は、前記プリコート処理において、前記シリコン含有ガス供給系から前記処理室内へシリコン含有ガスを供給して排気する処理と、前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内へ窒素含有ガスを供給して排気する処理と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施する。
【0117】
また好ましくは、
前記処理室内を排気する排気系を備え、
前記制御部は、前記成膜処理における前記処理室内の最大圧力よりも、前記プリコート処理における前記処理室内の最大圧力のほうが大きくなるように、前記排気系、前記シリコン含有ガス供給系及び前記窒素含有ガス供給系をそれぞれ制御する。
【0118】
また好ましくは、
前記成膜処理における前記処理室内の圧力は133Pa未満、さらに好ましくは67Paである。
【0119】
また好ましくは、
前記プリコート処理における前記シリコン含有ガス供給時の前記処理室内の圧力は400Pa以上2000Pa以下である。
【0120】
また好ましくは、
前記プリコート処理における前記窒素含有ガス供給時の前記処理室内の圧力は67Pa以上2000Pa以下である。
【0121】
また好ましくは、
前記制御部は、前記プリコート処理において、
前記加熱部により前記処理室内を前記成膜温度よりも低い所定のプリコート温度に加熱させつつ、前記シリコン含有ガス供給系から前記処理室内へシリコン含有ガスを供給させて排気する処理と、前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内へ窒素含有ガスを供給させて排気する処理と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施する第1プリコート工程と、
前記加熱部により前記処理室内を所定の成膜温度に加熱させつつ、前記シリコン含有ガス供給系からの前記処理室内へのシリコン含有ガスの供給と、前記窒素含有ガス供給系からの前記処理室内への窒素含有ガスの供給と、を同時に実施する第2プリコート工程と、を実施する。
【0122】
本発明の他の態様によれば、
処理室内に基板を搬入する工程と、
加熱部により前記処理室内を所定の成膜温度に加熱しつつ、シリコン含有ガス供給系及び窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給して前記基板上に窒化シリコン膜を形成する成膜工程と、
前記処理室内から処理後の前記基板を搬出する工程と、
前記加熱部により前記処理室内を所定のクリーニング温度に加熱しつつ、クリーニングガス供給系から前記処理室内にクリーニングガスを供給して前記処理室内壁に堆積した窒化シリコン膜を除去するクリーニング工程と、
前記加熱部により前記処理室内を前記成膜温度よりも低い所定のプリコート温度に加熱
しつつ、前記シリコン含有ガス供給系及び前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給して前記処理室内壁に所定の厚さの窒化シリコン膜を形成するプリコート処理と、を有する
半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0123】
101 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
201 処理室
202 処理炉
206 ヒータ(加熱部)
240 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内を加熱する加熱部と、
前記処理室内にシリコン含有ガスを供給するシリコン含有ガス供給系と、
前記処理室内に窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理室内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
少なくとも前記加熱部、前記シリコン含有ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記クリーニングガス供給系をそれぞれ制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記加熱部により前記処理室内を所定の成膜温度に加熱させつつ、前記シリコン含有ガス供給系及び前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給させて前記基板上に窒化シリコン膜を形成する成膜処理と、
前記加熱部により前記処理室内を所定のクリーニング温度に加熱させつつ、前記クリーニングガス供給系から前記処理室内にクリーニングガスを供給させて前記処理室内壁に堆積した窒化シリコン膜を除去するクリーニング処理と、
前記加熱部により前記処理室内を前記成膜温度よりも低い所定のプリコート温度に加熱させつつ、前記シリコン含有ガス供給系及び前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給させて前記処理室内壁に所定の厚さの窒化シリコン膜を形成するプリコート処理と、を実施することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
処理室内に基板を搬入する工程と、
加熱部により前記処理室内を所定の成膜温度に加熱しつつ、シリコン含有ガス供給系及び窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給して前記基板上に窒化シリコン膜を形成する成膜工程と、
前記処理室内から処理後の前記基板を搬出する工程と、
前記加熱部により前記処理室内を所定のクリーニング温度に加熱しつつ、クリーニングガス供給系から前記処理室内にクリーニングガスを供給して前記処理室内壁に堆積した窒化シリコン膜を除去するクリーニング工程と、
前記加熱部により前記処理室内を前記成膜温度よりも低い所定のプリコート温度に加熱しつつ、前記シリコン含有ガス供給系及び前記窒素含有ガス供給系から前記処理室内にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ供給して前記処理室内壁に所定の厚さの窒化シリコン膜を形成するプリコート処理と、を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−216696(P2012−216696A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81424(P2011−81424)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】