説明

基板洗浄装置

【課題】一方の主面がウェット洗浄に向かない基板の両側の主面を同時に洗浄する。
【解決手段】基板洗浄装置1は、基板9の外縁部を保持する円環状の基板保持部2、基板9の下面にドライ物理洗浄を行う第1洗浄機構3、および、基板9の上面に液体を用いるウェット洗浄を行う第2洗浄機構4を備える。第1洗浄機構3は、基板9の下面に向けて固形の二酸化炭素の微粒子を噴出する外部混合型の2流体ノズルである噴射ノズル31を備える。第2洗浄機構4は、基板9の上面に洗浄液を供給する洗浄液供給部42、洗浄液が供給された基板9の上面を洗浄する洗浄ブラシ41を備える。基板洗浄装置1では、基板保持部2に保持された基板9の下面に対して第1洗浄機構3によりドライ物理洗浄が行われ、上面に対して第2洗浄機構4によりウェット洗浄が行われることにより、一方の主面がウェット洗浄に向かない基板の両側の主面を同時に洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を洗浄する基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程において、基板の表面に付着したパーティクル等の異物を除去する洗浄装置では、基板を外縁部から保持して基板の両側の主面を同時に洗浄する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、外縁部をツメにより固定した半導体ウエハ(基板)の上方および下方から半導体ウエハに向けて窒素(N)ガスを噴射しつつ半導体ウエハの周囲から吸引することにより、半導体ウエハの両面を同時にドライ洗浄して100μm以上の大きさのダスト(ここでは、パーティクルに比べて大きい異物を意味する。)を予め除去し、その後、他の洗浄液に浸漬する等してパーティクルを除去する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2では、ウエハ(基板)を外縁部から保持して回転し、各種洗浄液をウエハに供給しつつブラシにより両面をウェット洗浄する技術が開示されている。また、特許文献3では、中空部を有する誘導回転モータにより基板を外縁部から保持して回転し、両面に処理液を供給して基板の両面を処理(洗浄)する基板処理装置が開示されている。
【0005】
特許文献4では、ウエハ(基板)が保持される処理室内において、基板の表側の面および裏側の面の周囲の雰囲気が混じらないように気密に隔離した状態で、基板の表側の面および裏側の面に異なる処理流体を供給することにより、基板の両面に異なる処理を同時に行う基板処理装置が開示されている。特許文献4の基板洗浄装置では、例えば、基板の表側の面にはフッ酸のベーパ(気体)によるエッチングが行われ、裏側の面にはSC1(NHOH+H+HO)(液体)によるウェット洗浄が行われる。
【特許文献1】特開平7−297161号公報
【特許文献2】特開平6−267918号公報
【特許文献3】特開2000−183009号公報
【特許文献4】特開2004−56006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、表面が疎水性の基板や多孔性の低誘電率膜(Low−K膜)を有する基板等、ウェット洗浄に向かない基板の洗浄を行うために、液体を利用しない洗浄方法(すなわち、ドライ洗浄)が求められているが、特許文献1〜3の洗浄方法は、このようなウェット洗浄に向かない基板の洗浄には不適当である。特許文献4の基板処理装置では、基板表面に処理ガスを供給することにより、化学反応を利用したドライ洗浄を行うことが可能である。しかしながら、特許文献4の基板洗浄装置では、処理ガスが供給される基板の周囲を密閉する必要があるため、装置構成が複雑化してしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、一方の主面がウェット洗浄に向かない基板の両側の主面を同時に洗浄することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板を洗浄する基板洗浄装置であって、基板の外縁部を保持する基板保持部と、前記基板の一方の主面にドライ物理洗浄を行う第1洗浄機構と、前記基板の他方の主面に液体を用いるウェット洗浄を行う第2洗浄機構とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板洗浄装置であって、前記第1洗浄機構が、キャリアガスにて運ばれる固形の二酸化炭素の微粒子を前記基板の前記一方の主面に向けて噴出する微粒子噴出機構を備える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板洗浄装置であって、前記第2洗浄機構が、前記基板の前記他方の主面との間に介在する液体に超音波振動を付与する超音波振動子を備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板洗浄装置であって、前記基板保持部を回転することにより前記基板を前記一方の主面に平行な面内にて回転する基板回転機構をさらに備える。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の基板洗浄装置であって、前記基板回転機構が、前記基板保持部が取り付けられ、前記基板の前記外縁部に沿う環状の回転部と、前記回転部に組み合わされて前記回転部との間でトルクを発生する環状の固定部とを備える。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の基板洗浄装置であって、前記基板回転機構が、前記基板の前記他方の主面の外側において放射状に伸び、前記基板保持部と共に回転する複数のフィンを備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の基板洗浄装置であって、前記基板の前記他方の主面が上方を向き、前記基板洗浄装置が、前記基板保持部、前記第1洗浄機構および前記第2洗浄機構を内部に収納するチャンバと、前記ウェット洗浄における使用済みの前記液体を前記基板の外周から回収する廃液回収部とをさらに備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の基板洗浄装置であって、前記廃液回収部が、開口を前記基板側に向ける凹部を前記基板の前記他方の主面の外周に沿って有する環状の容器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、一方の主面がウェット洗浄に向かない基板の両側の主面を同時に洗浄することができる。請求項2の発明では、効率のよいドライ物理洗浄を行うことができる。
【0017】
請求項3の発明では、ドライ物理洗浄が行われる一方の主面に超音波が透過することを防止しつつ、他方の主面を強力な超音波により洗浄することができる。
【0018】
請求項4の発明では、基板を回転させながら洗浄することができる。請求項5の発明では、装置を小型化することができる。
【0019】
請求項6の発明では、ウェット洗浄後の基板の表面から洗浄液を迅速に除去することができる。請求項7の発明では、チャンバの底部に洗浄廃液が溜まることを防止し、洗浄廃液からのミストの発生を防止することができる。請求項8の発明では、簡単な構造で洗浄廃液を確実に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る基板洗浄装置1の構成を示す図である。基板洗浄装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)の両主面を洗浄し、基板9に付着したパーティクル等の異物を除去する装置である。
【0021】
図1に示すように、基板洗浄装置1は、円板状の基板9の外縁部を保持する基板保持部2、基板保持部2に保持される基板9の一方の主面である下面側に配置され、基板9の下面にドライ物理洗浄を行う第1洗浄機構3、および、基板9を挟んで第1洗浄機構3とは反対側に配置され、基板9の他方の主面である上面に液体を用いるウェット洗浄を行う第2洗浄機構4を備える。ここで、ドライ物理洗浄とは、基板9上に液体(以下、「洗浄液」という。)を供給することなく洗浄するドライ洗浄のうち、化学反応を利用しないものを意味する。基板保持部2は、基板2の外縁部に下から当接する円環状の載置リング21と、載置リング21上にて基板9の側面に向けて僅かに進退可能な保持ピン22とを有する。
【0022】
基板洗浄装置1では、基板保持部2を回転することにより基板9を下面および上面に平行な面内にて回転する略円環状の基板回転機構5が基板保持部2の下側に取り付けられる。基板回転機構5の外周には、第2洗浄機構4によるウェット洗浄における使用済みの洗浄液(基板9の上面の洗浄に使用された後の洗浄液であり、以下、「洗浄廃液」という。)を基板9の外周から回収する廃液回収部6が設けられる。図1中に矩形の線にて簡略化して示すように、基板洗浄装置1は、基板保持部2、第1洗浄機構3、第2洗浄機構4、基板回転機構5および廃液回収部6を内部に収納するチャンバ11を備える。なお、チャンバ11は気密構造とされる必要はない。
【0023】
本実施の形態では、基板9は、微細なパターンが形成された表側の面を下方に向け、裏側の面を上方に向けて保持される。すなわち、以下の説明では、基板9の上面とは基板9の裏側の面を指し、下面とは基板9の表側の面を指す。基板保持部2の基板9と当接する部位にはOリング等が設けられ、基板9と基板保持部2との当接部位は密閉される。第2洗浄機構4は、基板9の上面に洗浄液を供給する洗浄液供給部42、洗浄液が供給された基板9の上面に当接し、これをブラシ洗浄する洗浄ブラシ41を備える。基板洗浄装置1では、基板保持部2により基板9の上面が下面側から隔離されて保持されるため、基板9の上面に供給された洗浄液が基板9の下面に回り込むことが防止される。
【0024】
第1洗浄機構3は、基板9の下面に向けて微粒子を噴出する微粒子噴出機構である噴射ノズル31、並びに、窒素(N)ガスおよび液体の二酸化炭素(CO)を個別に噴射ノズル31に供給する窒素ガス供給管32,二酸化炭素供給管33を備える。
【0025】
図2は、噴射ノズル31の構造を示す断面図である。噴射ノズル31は、内筒311に外筒312が組み合わされた構造を有しており、内筒311の下部(すなわち、噴射ノズル31の基板9側の先端とは反対側)は、二酸化炭素供給管33(図1参照)を介して図示省略の二酸化炭素供給源に接続され、外筒312の側面は、窒素ガス供給管32(図1参照)を介して窒素ガス供給源に接続される。内筒311は管状となっており、内部が液体二酸化炭素の流路313とされ、先端が液体二酸化炭素の吐出口314となる。外筒312の内側面は下部で内筒311の外側面と密着し、噴射ノズル31の中部から先端に向かって内筒311の内側面との間に窒素ガスの流路315となる間隙が設けられる。外筒312の先端は内側に向かって屈曲しつつ内筒311の先端近傍まで伸びており、内筒311との間で、窒素ガスが流路315を経由して噴射される環状の噴射口316が形成される。
【0026】
噴射ノズル31に液体二酸化炭素および窒素ガスが供給されると、吐出口314から液体二酸化炭素が吐出され、吐出口314の周囲の噴射口316から窒素ガスが勢いよく噴射される。そして、吐出時の断熱膨張により凍結した二酸化炭素の微粒子が、キャリアガスである窒素ガスの気流と混合して加速される。このように噴射ノズル31はいわゆる外部混合型の2流体ノズルとなっている。キャリアガスにて運ばれる固形の二酸化炭素の微粒子は、図2中に破線91にて示すように広がりながら基板9に衝突し、その結果、基板9の下面から有機物等の微小なパーティクルが効率良く除去される。噴射ノズル31では、液体二酸化炭素および窒素ガスがそれぞれの流路に沿って上方に導かれるため、二酸化炭素の微粒子の噴射ノズル31からの噴射の指向性が高められ、微粒子が基板9に効率良く導かれる。
【0027】
図1に示す基板回転機構5は、内側に中空部を有する中空モータであり、鉛直方向を向く中心軸50を中心として回転する略円環状の回転部51、および、回転部51に組み合わされて回転部51との間でトルクを発生する略円環状の固定部52を備える。図1に示すように、回転部51の上部には基板保持部2が取り付けられ、回転部51は基板保持部2に保持される基板9の外縁部に沿って設けられる。円板状の基板9は、基板9の上面および下面に垂直な中心軸が基板回転機構5の中心軸50と一致するように基板保持部2により保持される。
【0028】
回転部51は、固定部52の内側面(すなわち、中心軸50側の側面)、上面および下面を覆うように固定部52に組み合わされており、固定部52の上面および下面における外側の部位と上下に対向する2つの環状の導電板511を備える。固定部52は、中心軸50を中心として略円環状に所定の間隙を設けて多数配置される磁気コア521、および、磁気コア521の複数の部位にそれぞれ設けられるコイル522を備える。磁気コア521およびコイル522は、導電板511と対向して配置されて電機子520を構成する。磁気コア521は、板状の珪素鋼板チップを多数重ねて形成され、コイル522は、エナメル線を磁気コア521に巻き付けて形成される。
【0029】
固定部52の内部には、ガス(本実施の形態では、窒素ガス)が流れる円環状のガス流路523、および、冷却水が流れる円環状の冷却水流路524が形成されている。ガス流路523には、固定部52の内側面と回転部51との間の微小な間隙に向けてガスを供給するための多数の微小な開口523aが形成されており、外部のガス供給装置からガス流路523に供給されたガスが開口523aから噴射されることにより、固定部52と回転部51とが互いに離れるように力が作用する。すなわち、回転部51はガスを介して固定部52に支持されて静圧気体軸受機構を構成する。
【0030】
基板回転機構5では、複数のコイル522に多相交流(例えば、2相交流や3相交流)が順に与えられ、電機子520に沿って固定部52の上面側および下面側に進行磁界が発生する。その結果、電機子520の上下に設けられた回転部51の導電板511に渦電流が発生し、リニアモータと同様の原理により回転部51にトルクが与えられる。基板回転機構5では、上述のように、回転部51がガスを介して固定部52に支持されるため、回転部51が基板保持部2および基板9と共に固定部52に沿って滑らかに回転する。固定部52では、外部の冷却水供給装置から冷却水流路524に冷却水が供給されることにより、複数のコイル522にて発生した熱の除去が行われる。
【0031】
図1に示すように、基板回転機構5は、回転部51の上面に略直角三角形の断面を有する複数のフィン53を備える。図3は、回転部51および基板保持部2を示す平面図であり、理解を容易にするために各フィン53については頂部(すなわち、図1中に示す各フィン53の上側の先端)のみを線にて描いている。図3に示すように、基板保持部2の外側に設けられた複数のフィン53は、基板9の上面の外側において放射状かつ渦巻き状に伸び、回転部51が回転することにより、基板9および基板保持部2と共に中心軸50を中心として図3中における反時計回りに回転する。なお、フィン53の断面形状は直線状であってもよく、さらに、細かな多数のフィンが回転部51の上面に放射状に設けられてもよい。
【0032】
図1に示す廃液回収部6は、基板回転機構5の上面および外側面の一部を覆うように設けられた略円環状の容器であり、開口62を基板9側に向ける凹部61を、基板9の上面の外周に沿って有する。廃液回収部6では、開口62を介して回収した洗浄廃液が、凹部61の基板回転機構5の外周側の部位である廃液貯溜部63に貯溜され、廃液貯溜部63に接続されている外部の回収装置により回収される。また、この回収装置により、凹部61の内部の排気が洗浄廃液の回収と同時に行われる。廃液回収部6の外周には、チャンバ11の内壁と廃液回収部6とを接続する円環状の仕切り板111が設けられており、基板保持部2に基板9が保持された状態では、基板9、基板保持部2、基板回転機構5、廃液回収部6および仕切り板111により、チャンバ11の内部空間が基板9の上面側と下面側とに分割される。
【0033】
基板洗浄装置1により基板9が洗浄される際には、まず、基板9がチャンバ11内に搬入されて基板保持部2に保持され、基板回転機構5により基板9の回転が開始される。続いて、第1洗浄機構3において、基板9の下面に対する二酸化炭素の微粒子の噴射、および、噴射ノズル31の移動が開始される。第1洗浄機構3では、噴射ノズル31が微粒子の噴射を継続しつつ基板9の下方にて中心と外周との間で往復移動を繰り返すことにより、基板9の下面(すなわち、基板9の表側の面)に対するドライ物理洗浄が行われる。
【0034】
また、第2洗浄機構4では、第1洗浄機構3による基板9の下面の洗浄開始と同時に、洗浄液供給部42による基板9の上面への洗浄液の供給、および、洗浄ブラシ41による上面の摩擦が開始される。そして、第1洗浄機構3による基板9の下面の洗浄と並行して、洗浄ブラシ41が基板9の上面のブラシ洗浄を継続しつつ基板9の上方で基板9の中心と外周との間で往復移動を繰り返すことにより、基板9の上面(すなわち、基板9の裏側の面)に対するウェット洗浄が行われる。
【0035】
このように、基板洗浄装置1では、基板保持部2により基板9の外縁部を保持することにより、基板9の上面および下面の洗浄を同時に行うことができる。そして、噴射ノズル31からの微粒子を基板9の下面に衝突させることにより、基板9の下面に形成された微細なパターンを破壊することなく、付着したパーティクルを効率良く除去することができる。また、基板9の下面のドライ物理洗浄と並行して、洗浄ブラシ41の摩擦による強力なウェット洗浄を基板9の上面に対して行い、上面に強固に付着した異物を効率良く除去することができる。
【0036】
基板9の上面および下面の洗浄が終了すると、噴射ノズル31による微粒子の噴射、洗浄液供給部42による洗浄液の供給、および、洗浄ブラシ41による基板9の摩擦が停止されるとともに、噴射ノズル31および洗浄ブラシ41が基板9の外側へと退避する。
【0037】
その後、基板回転機構5により継続されている基板9の回転により、基板9の上面から洗浄廃液の除去が行われる。このとき、基板9は洗浄時よりも高速にて回転され、基板9の上面上の洗浄廃液が遠心力により基板9の外周へと移動し、廃液回収部6の開口62を介して凹部61に回収される。凹部61に回収された洗浄廃液は、回転する複数のフィン53に案内されることにより、さらに外周方向(すなわち、中心軸50から離れる方向)へと迅速に移動し、廃液貯溜部63から回収される。
【0038】
基板洗浄装置1では、基板9上の洗浄廃液が回収された後も基板9の回転が継続され、基板9の上面近傍の空気がフィン53の回転により基板9の外側へと吸引されて廃液回収部6から基板洗浄装置1の外部へと排気される。その結果、基板9の上方において、基板9の中心へと吹き下ろした後に基板9の上面に沿って外周へと流れるダウンフローが形成され、基板9の上面の迅速な乾燥が実現される。なお、このダウンフローは、上述の洗浄廃液の除去時にも形成されており、洗浄廃液の迅速な除去にも寄与している。基板洗浄装置1では、チャンバ11に設けられたフィルタを介してチャンバ11内部に清浄な空気が供給されているため、洗浄後の基板9への異物の再付着が防止される。
【0039】
以上に説明したように、基板洗浄装置1では、基板保持部2により外縁部を保持された基板9の下面に対して第1洗浄機構3によりドライ物理洗浄が行われ、上面に対して第2洗浄機構4によりウェット洗浄が行われることにより、一方の主面がウェット洗浄に向かない基板(例えば、表側の面が疎水性の基板や多孔性の低誘電率膜(Low−K膜)を有する基板)の両側の主面を同時に洗浄することができる。また、第1洗浄機構3において、噴射ノズル31から二酸化炭素の微粒子を噴射することにより、基板9の下面に対する効率の良いドライ物理洗浄を行うことができる。
【0040】
基板洗浄装置1では、廃液回収部6を基板9の上面側にのみ設ければよいため、基板9の両側の主面に対してウェット洗浄を行う場合に比べて、洗浄液の回収機構を簡素化することができる。また、洗浄液の使用量も削減することができる。さらには、化学反応を利用するドライ洗浄を行う場合に比べて、基板9の周囲を密閉する必要がなく、装置構成を簡素化することができる。
【0041】
基板洗浄装置1では、基板保持部2を回転する基板回転機構5が設けられるため、基板9を回転させながら洗浄することができる。その結果、基板9の洗浄時における噴射ノズル31および洗浄ブラシ41の移動を簡素化しつつ基板9の両側の主面全体を洗浄することができる。また、基板回転機構5が内側の中空部(の上方)に基板9を保持する略円環状の中空モータであるため、基板洗浄装置1を小型化することができる。さらには、基板回転機構5が基板9の上面の外側において基板保持部2と共に回転する複数のフィン53を備えることにより、ウェット洗浄後の基板9の上面から洗浄廃液を迅速に除去することができ、その上、基板9の上面を迅速に乾燥させることもできる。
【0042】
基板洗浄装置1では、基板9の下面に対して液体を用いないドライ物理洗浄が行われ、基板9の上面の外周に洗浄廃液を回収する廃液回収部6が設けられることにより、チャンバ11の底部に洗浄廃液が溜まることを防止し、洗浄廃液からのミストの発生を防止することができる。その結果、例えば、乾燥時における基板9への洗浄廃液のミストの付着や異物の再付着を防止し、基板9を清浄な状態に維持したまま乾燥することができる。また、廃液回収部6が、開口62を基板9側に向けて基板9の上面の外周に沿って配置される略円環状の容器であるため、簡単な構造で洗浄廃液を確実に回収することができる。
【0043】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る基板洗浄装置1aの構成を示す図である。図4に示す基板洗浄装置1aでは、上面に対してドライ物理洗浄が行われ、下面に対してウェット洗浄が行われ、上面側には第1の実施の形態と同様の第1洗浄機構3が設けられ、下面側には超音波振動子を有する超音波ステージ43が第2洗浄機構4として備えられる。その他の構成は、配置される位置が上下反対になっていることを除いて図1とほぼ同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0044】
図4に示すように、基板洗浄装置1aでは、基板9の外縁部を保持する基板保持部2が基板回転機構5の回転部51の内側面(すなわち、中心軸50側の側面)に設けられており、基板9は、微細なパターンが形成された表側の面を上方に向け、裏側の面を下方に向けて保持される。基板9の下方に設けられた略円板状の超音波ステージ43は上下方向に移動可能とされ、基板9の洗浄時には、外縁部において廃液回収部6と当接する。このとき、基板9と超音波ステージ43との間に形成される間隙92の高さ(すなわち、基板9の下面と超音波ステージ43の上面との間の中心軸50に沿う方向の距離)は約2〜3mmとされる。図5は、超音波ステージ43を示す平面図である。図5に示すように、超音波ステージ43は、中心軸50を中心として等角度間隔に配置される4つの扇形の超音波振動子431を上面に備え、中央に、基板9の下面の洗浄に用いられる液体(以下、「洗浄液」という。)を吐出する吐出口432を有する。
【0045】
図4に示す基板洗浄装置1aにより基板9が洗浄される際には、まず、超音波ステージ43が上昇して廃液回収部6に当接し、基板9と超音波ステージ43との間に吐出口432から洗浄液が供給されて間隙92に充填される。続いて、第1の実施の形態と同様に、基板9の回転が開始され、第1洗浄機構3においては、基板9の上面に対する二酸化炭素の微粒子の噴射、および、噴射ノズル31の移動が開始され、基板9の上面に対するドライ物理洗浄が行われる。
【0046】
また、第2洗浄機構4では、第1洗浄機構3による基板9の上面の洗浄開始と同時に、超音波ステージ43の上面に設けられた超音波振動子431(図5参照)により、基板9と超音波ステージ43との間に介在する洗浄液に超音波振動の付与が開始される。そして、第1洗浄機構3による基板9の上面の洗浄と並行して、洗浄液に対する超音波振動の付与を継続することにより、基板9の下面に対するウェット洗浄が行われる。
【0047】
このように、基板洗浄装置1aでは、第1の実施の形態と同様に、基板9の表側の面に形成された微細なパターンを破壊することなく、第1洗浄機構3によるドライ物理洗浄により、付着したパーティクルを効率良く除去することができる。また、基板9の表側の面のドライ物理洗浄と並行して、超音波振動の付与による強力なウェット洗浄を基板9の裏側の面に対して行うことができる。基板9の上面および下面の洗浄が終了すると、噴射ノズル31による微粒子の噴射、および、超音波振動子431による超音波振動の付与が停止されるとともに、噴射ノズル31が退避する。そして、吐出口432から空気が間隙92に供給され、廃液貯溜部63に接続されている回収装置により、間隙92および廃液回収部6の凹部61に充填された洗浄液が排出される。
【0048】
洗浄液の排出が完了すると、基板回転機構5による継続的な基板9の回転により、ウェット洗浄が施された基板9の下面から洗浄廃液の除去が行われる。基板9は、第1の実施の形態と同様に、洗浄時よりも高速にて回転するため、基板9の下面に付着している洗浄廃液が遠心力により基板9の外周へと移動し、廃液回収部6の開口62を介して凹部61に回収され、回転する複数のフィン53に案内されることにより、さらに外周方向へと迅速に移動して廃液貯溜部63から回収される。
【0049】
その後、超音波ステージ43が下方へと移動し、基板9の下方が開放された状態で基板9の回転が継続され、基板9の下面近傍の空気がフィン53の回転により基板9の外周へと吸引されて基板洗浄装置1aの外部へと排気されることにより、基板9の下面の迅速な乾燥が実現される。なお、基板洗浄装置1aでも基板洗浄装置1と同様に、チャンバ11に設けられたフィルタを介してチャンバ11内部に清浄な空気が供給されているため、洗浄後の基板9への異物の再付着が防止される。
【0050】
以上に説明したように、基板洗浄装置1aでは、基板9の上面に対して液体を用いないドライ物理洗浄が行われるため、基板9の上面(すなわち、表側の面)には液体が付着しない。これにより、基板9の下面に対して洗浄液を介して超音波振動を付与するウェット洗浄が並行して行われる際に、ドライ物理洗浄が行われる基板9の上面に超音波が透過することを防止しつつ、基板9の下面を強力な超音波により洗浄することができる。その結果、基板9の上面に形成された微細なパターンを下面からの超音波振動により破壊することなく、下面に強固に付着した異物を効率良く除去することができる。
【0051】
基板洗浄装置1aでは、第1の実施の形態と同様に、一方の主面がウェット洗浄に向かない基板の両側の主面を同時に洗浄することができるとともに、二酸化炭素の微粒子の噴射により基板9の上面に対する効率の良いドライ物理洗浄を行うことができる。また、基板回転機構5により基板9を回転させながら洗浄することができ、噴射ノズル31の移動を簡素化することができる。さらには、基板回転機構5として中空モータを利用することにより基板洗浄装置1を小型化することができる。また、基板回転機構5に複数のフィン53を設けることによりウェット洗浄後の基板9の下面から洗浄廃液を迅速に除去することができ、さらに、基板9の下面を迅速に乾燥させることもできる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0053】
例えば、第1洗浄機構3では、二酸化炭素以外の他の固形微粒子が噴射ノズル31から噴射されることにより、基板9の表側の面に対するドライ物理洗浄が行われてもよい。また、外部混合型の2流体ノズルに代えて内部混合型の2流体ノズルが噴射ノズル31として用いられてもよい。さらには、基板9に対する微粒子の噴射は2流体ノズル以外の他の方法により行われてもよい。
【0054】
第1洗浄機構3により行われるドライ物理洗浄は、基板9への微粒子の噴射には限定されず、例えば、短パルスレーザの照射によるアブレーション(融解・蒸発)を利用したレーザ洗浄であってもよく、また、いわゆる超音波笛により液体を介在させることなく基板の主面に超音波振動を付与する超音波洗浄であってもよい。第2洗浄機構4により行われるウェット洗浄は、洗浄ブラシ41による摩擦や洗浄液を介しての超音波振動の付与には限定されず、例えば、洗浄液の水流(または、洗浄液の液滴)を高速にて基板9に噴射することにより行われてもよい。第2の実施の形態における超音波振動子431の個数、形状および配置は、図5に示すものには限定されず、様々に変更されてよい。
【0055】
基板回転機構5は、基板洗浄装置の小型化という観点からは中空モータであることが好ましいが、それ以外の他の構成とされてもよい。例えば、回転部51の外周にギアを介して接続される通常のモータが基板回転機構5の駆動源とされてもよい。
【0056】
基板洗浄装置1は、プリント配線基板やフラットパネル表示装置に使用されるガラス基板等、半導体基板以外の様々な基板の洗浄に利用されてよい。なお、基板の種類や大きさ等に合わせて、洗浄時および洗浄後における基板の回転は省略されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施の形態に係る基板洗浄装置の構成を示す図である。
【図2】噴射ノズルの構造を示す断面図である。
【図3】回転部および基板保持部を示す平面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る基板洗浄装置の構成を示す図である。
【図5】超音波ステージを示す平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1a 基板洗浄装置
2 基板保持部
3 第1洗浄機構
4 第2洗浄機構
5 基板回転機構
6 廃液回収部
9 基板
11 チャンバ
31 噴射ノズル
51 回転部
52 固定部
53 フィン
61 凹部
62 開口
431 超音波振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を洗浄する基板洗浄装置であって、
基板の外縁部を保持する基板保持部と、
前記基板の一方の主面にドライ物理洗浄を行う第1洗浄機構と、
前記基板の他方の主面に液体を用いるウェット洗浄を行う第2洗浄機構と、
を備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板洗浄装置であって、
前記第1洗浄機構が、キャリアガスにて運ばれる固形の二酸化炭素の微粒子を前記基板の前記一方の主面に向けて噴出する微粒子噴出機構を備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板洗浄装置であって、
前記第2洗浄機構が、前記基板の前記他方の主面との間に介在する液体に超音波振動を付与する超音波振動子を備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基板洗浄装置であって、
前記基板保持部を回転することにより前記基板を前記一方の主面に平行な面内にて回転する基板回転機構をさらに備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板洗浄装置であって、
前記基板回転機構が、
前記基板保持部が取り付けられ、前記基板の前記外縁部に沿う環状の回転部と、
前記回転部に組み合わされて前記回転部との間でトルクを発生する環状の固定部と、
を備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の基板洗浄装置であって、
前記基板回転機構が、前記基板の前記他方の主面の外側において放射状に伸び、前記基板保持部と共に回転する複数のフィンを備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の基板洗浄装置であって、前記基板の前記他方の主面が上方を向き、
前記基板洗浄装置が、
前記基板保持部、前記第1洗浄機構および前記第2洗浄機構を内部に収納するチャンバと、
前記ウェット洗浄における使用済みの前記液体を前記基板の外周から回収する廃液回収部と、
をさらに備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項8】
請求項7に記載の基板洗浄装置であって、
前記廃液回収部が、開口を前記基板側に向ける凹部を前記基板の前記他方の主面の外周に沿って有する環状の容器であることを特徴とする基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−140201(P2006−140201A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326346(P2004−326346)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】