説明

大気圧プラズマ処理装置、大気圧プラズマ処理方法

【課題】大気圧プラズマ処理装置、大気圧プラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】処理ガスが流通する流路51(第2の配管50)に介装され、前記流路51
を開閉可能なバルブ52と、前記流路51から前記処理ガスが供給され、前記処理ガスを
大気圧下でプラズマ化するプラズマ発生部16と、前記プラズマ発生部16及び前記バル
ブ52に接続され、前記バルブ52の開放時から一定の遅延時間経過後に前記プラズマ発
生部16を駆動させる制御部60と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大気圧プラズマ処理装置、大気圧プラズマ処理方法に関し、特に被処理物の大
気圧またはその近傍の圧力下において表面処理を安定的に行なうための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の表面を加工する方法の一つとして、高周波電圧を印加した電極間に反応ガスを含
む処理ガスを供給し、反応ガスに基づくラジカルを発生させ、該ラジカルとワークとのラ
ジカル反応によって生成された生成物質を除去することで加工を行なう、いわゆるプラズ
マChemical Vaporation Machining(以下、「プラズマC
VM」と略す。)が知られており、真空下或いは大気圧下で行なわれる(特許文献1乃至
4参照)。
【0003】
このようなプラズマCVMでは、電極をワークに対して2次元的に走査して、電極とワ
ークとを相対的に移動させ、互いの位置関係を変化させながらワークを被処理面に対しプ
ラズマ処理する方法が行なわれている(特許文献5、6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−86772号公報
【特許文献2】特開2006−351480号公報
【特許文献3】特開2000−323567号公報
【特許文献4】特開2009−224614号公報
【特許文献5】特開2009−224517号公報
【特許文献6】特開2007−109478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、いずれの構成においてもボンベ等の処理ガスの供給源から、途中にバルブを有
した流路を通じてプラズマ発生源となる電極に処理ガスを供給することになるので、ワー
クの処理ガスによる処理後にバルブから電極までの流路にプラズマ化されなかった処理ガ
スが残留したり、または残留した処理ガスと流路外から進入した外気とが混ざった状態と
なる。この状態で再びバルブを開いて電極に処理ガスを供給するとともにプラズマ発生源
を駆動させると、しばらくの間電極には新たに供給された処理ガスと残留ガスとが混合し
たガスが通過することになるので、プラズマの発生が不安定となる。このような不安定な
プラズマを被処理物に照射するとワークの表面の処理の制御性が劣化するとともに場合に
よってはワークの表面にダメージを与えることになる。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に着目し、立ち上がり時から安定的なプラズマを発生させる
ことが可能な大気圧プラズマ処理装置、大気圧プラズマ処理方法を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
適用例として実現することが可能である。
[適用例1]処理ガスが流通する流路に介装され、前記流路を開閉可能なバルブと、前
記流路から前記処理ガスが供給され、前記処理ガスを大気圧下でプラズマ化するプラズマ
発生部と、前記プラズマ発生部及び前記バルブに接続され、前記バルブの開放時から一定
の遅延時間経過後に前記プラズマ発生部を駆動させる制御部と、を有することを特徴とす
る大気圧プラズマ処理装置。
【0008】
上記構成により、プラズマ発生部に到達する処理ガスの流量や組成が安定したのちにプ
ラズマ化することになる。また処理対象のワークへの処理の開始はプラズマ発生部の駆動
とほぼ同時に行われることになる。したがってワークへの初期段階からプラズマ化した処
理ガスを安定的に供給することになるので、ワークの表面のダメージ等を抑制して高精度
な処理を行うことが可能な大気圧プラズマ処理装置となる。
【0009】
[適用例2]前記処理ガスは流量調節器により流量が調整されるとともに、前記制御部
は、前記流量調節器で設定された流量の情報に基づいて前記遅延時間を設定することを特
徴とする適用例1に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【0010】
上記構成により、プラズマ発生部に到達する処理ガスの流量や組成が安定する時間は設
定された処理ガスの流量に依存する。よってプラズマ発生部を処理ガスの流量に対応した
遅延時間だけバルブの開放時から遅らせて駆動させることにより、プラズマ化せずに外部
に流出する処理ガスの量を抑制して製造コストを抑制することが可能な大気圧プラズマ処
理装置となる。
【0011】
[適用例3]処理ガスを流通する流路に前記流路を開閉可能なバルブを介装し、前記流
路から供給される前記処理ガスを大気圧下でプラズマ化するプラズマ発生部を設け、前記
バルブを開放して前記処理ガスを流通させるとともに、前記バルブの開放時から一定の遅
延時間経過後に前記プラズマ発生部を駆動させることを特徴とする大気圧プラズマ処理方
法。
【0012】
上記方法により、プラズマ発生部に到達する処理ガスの流量や組成が安定したのちにプ
ラズマ化することになる。また処理対象の被処理物への処理の開始はプラズマ発生部の駆
動とほぼ同時に行われることになる。したがって被処理物への初期段階からプラズマ化し
た処理ガスを安定的に供給することになるので、被処理物の表面のダメージ等を抑制して
高精度な処理を行うことができる。
【0013】
[適用例4]前記遅延時間は、前記処理ガスの流量に対応して設定することを特徴とす
る適用例3に記載の大気圧プラズマ処理方法。
上記方法により、プラズマ発生部に到達する処理ガスの流量や組成が安定する時間は設
定された処理ガスの流量に依存する。よってプラズマ発生部を処理ガスの流量に対応した
遅延時間だけバルブの開放時から遅らせて駆動させることにより、プラズマ化せずに外部
に流出する処理ガスの量を抑制して製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【図2】制御部のタイムチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記
載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限
り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0016】
図1に本実施形態に係る大気圧プラズマ処理装置の模式図を示す。本実施形態の大気圧
プラズマ処理装置10は、処理ガスが流通する流路51に介装され、前記流路51を開閉
可能なバルブ(第2のバルブ52)と、前記流路51から前記処理ガスが供給され、前記
処理ガスを大気圧下でプラズマ化するプラズマ発生部16と、前記プラズマ発生部16及
び前記バルブ(第2のバルブ52)に接続され、前記バルブ(第2のバルブ52)の開放
時から一定の遅延時間経過後に前記プラズマ発生部を駆動させる制御部60と、を有する
ものである。また前記処理ガスは流量調節器40、42、44により流量が調整されると
ともに、前記制御部60は、前記流量調節器40、42、44で設定された流量の情報に
基づいて前記遅延時間を設定するものである。
【0017】
したがって、本実施形態に係るプラズマ処理方法は、処理ガスを流通する流路51に前
記流路51を開閉可能なバルブ(第2のバルブ52)を介装し、前記流路51から供給さ
れる前記処理ガスを大気圧下でプラズマ化するプラズマ発生部16を設け、前記バルブ(
第2のバルブ52)を開放して前記処理ガスを流通させるとともに、前記バルブ(第2の
バルブ52)の開放時から一定の遅延時間経過後に前記プラズマ発生部16を駆動させる
ものである。また前記遅延時間は、前記処理ガスの流量に対応して設定するものである。
【0018】
大気圧プラズマ処理装置10は、大気圧プラズマ処理装置10全体の配置を固定する筐
体(不図示)に固定され処理ガスをプラズマ化するプラズマ発生部16と、処理ガスを供
給するガス供給部30と、筐体(不図示)に固定されるとともに載置したワーク12を平
行移動させ処理ガスのワーク12上の供給位置を移動させるNCステージ56と、プラズ
マ発生部16、ガス供給部30、NCステージ56を制御する制御部60とを備えている

【0019】
この大気圧プラズマ処理装置10は、ワーク12の被処理面14(ワーク12の有効処
理領域)を上向きにして下部電極24にワーク12を載置した状態でガス供給部30から
処理ガスを被処理面14に供給するととともに、上部電極18及び下部電極24に通電す
ることにより処理ガスを活性化させてプラズマを生成させ、このプラズマが発生するプラ
ズマ発生領域S(上部電極18の直下の領域)とワーク12とをNCステージ56により
相対的に移動することにより、前記プラズマにより被処理面14を局所的にかつ連続して
プラズマ処理する装置である。
【0020】
なおプラズマ処理とは、被処理面14の研磨、厚さ方向へ貫通または孔を形成するエッ
チング加工、所望の平面視形状となるように不要な部分を削除するエッチング加工(成型
加工)、被処理面14に所望の特性を付与する表面改質(例えば、撥水性、親水性の付与
、熱処理による改質、酸化膜等の形成)、被処理面14に形成されたレジスト層等を除去
するアッシング処理など、プラズマを利用した処理全般を含むものである。
【0021】
プラズマ発生部16は、NCステージ56上に設けられた下部電極24、下部電極24
から所定の高さの位置に設置された上部電極18、下部電極24及び上部電極18に高周
波の電力を供給し、上部電極18と下部電極との間にプラズマ発生領域Sを形成する高周
波電源28により構成される。
【0022】
上部電極18は、例えば円柱状、四角柱状の柱形状を有しており、柱の長手方向を鉛直
方向に立てた配置で筐体(不図示)に固定されており、高周波電源28と電気的に接続さ
れている。また上部電極18は、その下側部分が誘電体20で覆われている。なお上部電
極18は、上部電極18を上下方向(Z方向)にスライド可能なアクチュエータ22を介
して筐体(不図示)に取り付けられ、プラズマを効率よく発生させるために後述の制御部
60により上部電極18の高さ位置を調整することができる。もちろん制御部60ではな
く手動で上部電極18の高さ位置を調整できるようにしても良い。
【0023】
一方、下部電極24はNCステージ56上に載置され、高周波電源28と電気的に接続
されるとともに接地されている。また下部電極24は平面視して矩形な平板形状を有して
おり、平面視してワーク12をはみ出ないような寸法を有するとともに、その上面が誘電
体26で覆われている。このように上部電極18、下部電極24をそれぞれ誘電体20、
26で覆うことにより、上部電極18と下部電極24との間の電界を均一に発生させるこ
とができるとともに、電極間のインピーダンスの増大を防止することができ、比較的低電
圧で所望の放電を生じさせ、プラズマを確実に発生させることができる。なお下部電極2
4を覆う誘電体26上にはワーク12を固定するホルダ(不図示)が設けられ、ワーク1
2を後述の加工計画データ70に基づいて加工できる位置に固定できるものとする。
【0024】
高周波電源28は、上部電極18及び下部電極24に電気的に接続され、制御部60か
らの駆動信号により上部電極18及び下部電極24に高周波の電力を印加するものである
。この高周波の周波数は、特に限定されないが、10〜70MHzであることが好適であ
る。また前記高周波のRFパワーは、特に限定されないが、10〜150Wであることが
好適である。この高周波の周波数及びRFパワーは高周波電源側で調整してもよいし、制
御部60から制御できるようにしてもよい。
【0025】
上述の上部電極18及び下部電極24の材料としては、特に限定されないが、例えば、
銅、アルミニウム、鉄、銀等の金属単体、ステンレス鋼、真鍮、アルミニウム合金等の各
種合金、金属間化合物、各種炭素繊維等が挙げられる。
【0026】
また誘電体20、26の構成材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポ
リエチレンテレフタラート等の各種プラスチック、石英ガラス、水晶等の各種ガラス、無
機酸化物等が挙げられる。前記無機酸化物としては、例えばAl(アルミナ)、S
iO、ZrO、TiO等の金属酸化物、窒化シリコンなどの窒化物、BaTiO
(チタン酸バリウム)等の複合酸化物等が挙げられる。これらのうち、金属酸化物が好ま
しく、アルミナがより好ましい。
【0027】
下部電極24上に載置されるワーク12としては、特に限定されないが、例えば、石英
ガラス、無アルカリガラス等の各種ガラス、水晶等の結晶性材料、アルミナ、シリカ、チ
タニア等の各種セラミックス、シリコン、ガリウム−ヒ素等の各種半導体材料、ダイアモ
ンド、黒鉛等の炭素系材料、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチ
レンテレフタラート、液晶ポリマー、フェノール樹脂、アクリル樹脂等各種プラスチック
(樹脂材料)のような誘電体材料で構成されたものが挙げられる。以下、本実施形態では
ワーク12を水晶で構成した素板とし、これをエッチングするものとして説明するが、こ
れに限定されるものではない。
【0028】
ガス供給部30は、キャリアガス(He)を蓄えたガスボンベ32、反応ガス(CF
)を蓄えたガスボンベ34、触媒ガス(O)を蓄えたガスボンベ36を有している。ま
た各ガスボンベの後段にはそれぞれ手動のバルブ32a、34a、36aと各ガスボンベ
からのガスからの圧力を検知するチェッカー32b、34b、36bが設けられている。
そして各ガスボンベはそれぞれ第1の配管38に接続され混合器に並列に接続される。こ
こでキャリアガスは、放電開始と放電維持のために導入するガスのことであって、上述の
材料のほかに、Ne、Ar、Xe等の希ガスを用いることができる。また処理ガスとして
は上述のCF以外にも、C、C、C、CClF、SF等のフッ
素系原子含有化合物ガスや、Cl、BCl、CCl等の塩素系原子含有化合物ガス
などの各種ハロゲン系ガスが用いられる。
【0029】
また第1の配管38にはそれぞれ流量調節器40、42、44(マスフローコントロー
ラー)が介装されている。流量調節器40、42、44はそれぞれ後述の制御部60から
流量の情報が入力されることにより、それぞれ所定の流量でガスを出力することができる
。あるいは手動で流量を調整可能とするとともに、その流量の情報を制御部60に出力す
ることができる。また第1の配管38には第1の配管内の流路の開閉制御が可能な第1の
バルブ46が介装されている。第1のバルブ46は通常閉じているが、制御部60からの
駆動信号により流路を開放する。
【0030】
混合器48は入力側が3つの第1の配管38に接続され、出力側が第2の配管50に接
続されている。混合器48は第1の配管38から流入してきたキャリアガス、反応ガス、
触媒ガスを混合して処理ガスを生成し第2の配管50に出力するものである。第2の配管
50には、第1の配管38と同様に第2の配管50内の流路の開閉制御が可能な第2のバ
ルブ52が介装されている。第2のバルブ52は通常流路を閉じているが、制御部60か
らの駆動信号により流路を開放する。また第2の配管50の先端にはノズル54が設けら
れており、プラズマ発生部16を構成する上部電極18と下部電極24との間のプラズマ
発生領域Sに処理ガスを供給できる向きに配置されるとともに、上部電極18との相対的
位置が固定された状態となっている。
【0031】
なお、ガス供給部30により、上部電極18と下部電極24との間のプラズマ発生領域
Sに供給され、プラズマ処理に供された処理済みの処理ガスは、排気手段(不図示)によ
り排気することが好適である。この排気手段(不図示)としては、特に限定されないが、
例えば吸引ノズル(不図示)や、上部電極18及び下部電極24がチャンバー(不図示)
内に設置されている場合に前記チャンバー(不図示)内のガスを排気するファン(不図示
)などが挙げられる。
【0032】
NCステージ56は筐体(不図示)に固定され、ワーク12を載置するとともに水平方
向(X方向、Y方向)にワーク12を平行移動させるものである。またNCステージ56
はNC制御装置58を介して制御部60に接続され、後述の加工計画データ70で設定さ
れるX軸上の位置、及びY軸上の位置に制御部60からの制御により移動することができ
る。これによりワーク12と上部電極18すなわちプラズマ発生領域Sとの相対位置を変
化させてワーク12の被処理面14とプラズマ発生領域Sとの接触位置を変化させ、ワー
ク12の被処理面14の所定位置において所望のプラズマ処理を行うことができる。なお
ワーク12をエッチングする場合、例えば上述のプラズマ発生領域Sがワーク12の被処
理面14を一筆書きでその全面を走査するように後述の制御部60が後述の加工計画デー
タに基づいてNCステージ56をプラズマ処理の初期位置からプラズマ処理の最終位置ま
で駆動させる。
【0033】
制御部60は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)、PCにインストールされたア
プリケーション、PCの周辺機器等より構成され、プラズマ発生部16、ガス供給部30
、NCステージ56を駆動させるものである。
【0034】
制御部60は、上部電極18の高さ方向を調整するアクチュエータ22及び流量調節器
40、42、44に電気的に接続され、また制御部60はキー入力等が可能な操作部62
に接続されている。制御部60は操作部62からのキー入力等により上部電極18の高さ
位置の情報が入力され上部電極18の高さ調整するアクチュエータ22に上部電極18の
高さに対応した情報を包含する駆動信号を出力したり、流量調節器40、42、44のそ
れぞれの流量の情報を入力し、各流量調節器の流量を調整するアクチュエータ(不図示)
に流量に対応した情報を包含する駆動信号を出力することができる。
【0035】
制御部60は流量調節器40、42、44の後段にある第1のバルブ46、混合器48
の後段にある第2のバルブ52にそれぞれ電気的に接続され、駆動信号をそれぞれ出力し
て第1のバルブ46、第2のバルブ52を開放することができる。また制御部60は高周
波電源28に接続され、高周波電源28に駆動信号を出力することにより高周波電源28
を駆動させ上部電極18と下部電極24との間にプラズマ発生領域Sを発生させることが
できる。さらに制御部はNC制御装置に接続され、後述の加工計画データ70において設
定されたX軸、Y軸の情報を包含する駆動信号を出力することにより、NCステージ56
を設定された所定のX軸上の位置、Y軸上の位置にそれぞれ平行移動させることができる

【0036】
制御部60は、表面測定器64に接続されている。表面測定器64は、ワーク12の被
処理面14の形状、特に凹凸の有無及びその程度を検出する検出部(不図示)と、その測
定結果に基づいてワーク12の被処理面14の実測形状を示す実測形状データ66(凹凸
形状プロファイル)を作成するデータ作成部(不図示)を有しており、表面測定器64か
ら制御部60に実測形状データ66が入力される。
【0037】
また、制御部60は、ネットワークまたは制御部60に付属するフロッピー(登録商標
)等の補助記憶装置等を介して外部から入力されたワーク12の目標形状を示す目標形状
データ68を入力する。そして、制御部60は、予めテストピースで用いて求めた所定条
件(高周波電圧の強さ、上部電極18と下部電極24との距離、処理ガスの種類、処理ガ
スの流量等の組み合わせ)でのエッチングレートと、入力された実測形状データ66と目
標計画データ68とを用いて、予め設定されたプログラムにしたがって、ワーク12の被
処理面14の所定位置ごと決められたプラズマ発生領域Sの通過速度及び滞在時間を定め
る加工計画データ70を作成して記憶回路72に記憶する。そして制御部60は、記憶回
路72から加工計画データ70を読み出しその加工計画データ70に基づいて、大気圧プ
ラズマ処理装置10のプラズマ発生部16、ガス供給部30、NCステージ56等の駆動
を制御する。なお加工計画データ70の具体的な作成手順は従来技術なので説明を省略す
る。
【0038】
また制御部60は、NCステージ56が実際に初期位置に移動したこと、バルブ46、
52及び高周波電源28が実際に駆動したことを制御部60からの駆動信号とは独立に電
気的または機械的に認識する処理開始認識手段74を有する。処理開始認識手段74は、
NCステージ56が初期位置にあること、第1のバルブ46、第2のバルブ52、高周波
電源28が駆動したこと、を同時に認識すると信号を制御部60に出力する。そして制御
部60は処理開始認識手段74からの信号を受けて、上述の加工計画データ70に基づい
たワーク12に対するプラズマ処理を開始する。また制御部60はNCステージ56が実
際にプラズマ処理の最終位置に移動したこと、第1のバルブ46、第2のバルブ52及び
高周波電源28の駆動が実際に停止したことを電気的または機械的に認識する処理終了認
識手段76を有する。処理終了認識手段76は、NCステージ56がプラズマ処理の最終
位置にあること、第1のバルブ46、第2のバルブ52及び高周波電源28が停止したこ
と、を同時に認識すると信号を制御部60に出力する。そして制御部60は処理終了認識
手段76からの信号を受けて大気圧プラズマ処理装置10の電源を立ち下げる、或いは次
のワークのプラズマ処理を行うための各種データを外部から入力するものとする。
【0039】
上述の加工計画データ70に基づいてワーク12に対して精度よくプラズマ処理を行う
ためには、処理ガスのプラズマを安定的に立ち上げる必要がある。そこで制御部60は、
加工計画データ70に基づいた制御において以下のような動作をするものとする。
【0040】
制御部60は、ネットワークや補助記憶装置等から第2のバルブ52の開放時からプラ
ズマが安定するまでの時間を処理ガスの流量ごとに測定した遅延時間データ群78を参照
する。そして操作部62においてキー操作等により入力された処理ガスの流量に対応する
遅延時間データ80を遅延時間データ群78から抽出して記憶回路72に記憶する。そし
て制御部60は記憶回路72から遅延時間データ80を抽出し、高周波電源28を駆動す
る駆動信号を第2のバルブ52を駆動する駆動信号より遅延時間だけ遅らせて出力する制
御を行う。このような制御は、例えばPCのアプリケーションとしてインストールされ、
第2のバルブ52に対する駆動信号を受けてリセットされるとともにPCのクロックをト
リガとしてカウントするカウンタ(不図示)と、同様にインストールされ現在のカウンタ
値が遅延時間に対応するカウンタ値となったところで高周波電源28を駆動する駆動信号
を出力するデコーダ(不図示)等を用いることにより行なうことができる。
【0041】
このような構成とすることにより、プラズマ発生部16(プラズマ発生領域S)に到達
する処理ガスの流量や組成が安定したのちにプラズマ化することになる。また処理対象の
ワーク12への処理の開始はプラズマ発生部16の駆動とほぼ同時に行われることになる
。したがってワーク12への初期段階からプラズマ化した処理ガスを安定的に供給するこ
とになるので、ワーク12の表面のダメージ等を抑制して高精度な処理を行うことが可能
な大気圧プラズマ処理装置10となる。
【0042】
また、プラズマ発生部16(プラズマ発生領域S)に到達する処理ガスの流量や組成が
安定する時間は設定された処理ガスの流量に依存する。よってプラズマ発生部16を処理
ガスの流量に対応した遅延時間だけ第2のバルブ52の開放時から遅らせて駆動させるこ
とにより、プラズマ化せずに外部に流出する処理ガスの量を抑制して製造コストを抑制す
ることが可能な大気圧プラズマ処理装置となる。
【0043】
ここで、処理ガスの流量は流量調節器40、42、44で設定された流量の総和となる
が、キャリアガスは反応ガスや触媒ガスに比べて充分に大きな流量を有するため、キャリ
アガスの流量を処理ガスの流量とみなして遅延時間を算出してもよい。
【0044】
図2に制御部のタイムチャートを示す。制御部60は、上述のように加工計画データ7
0に基づいて1つのワーク12に対して時刻T1から時刻T5までの動作を行なう。まず
、時刻T1前に上述の加工計画データ70及び遅延時間データ80を取得する。そして時
刻T1において流量調節器40、42、44の流量調整及び第1のバルブ46の開放を行
うとともに、実際の第1のバルブ46の開放を処理開始認識手段74が認識する。
【0045】
次に時刻T2において第2のバルブ52を開放するとともに、実際の第2のバルブ52
の開放を処理開始認識手段74が認識する。そして時刻T2から上述の遅延時間データ8
0に係る遅延時間経過後の時刻T3において高周波電源28を駆動するとともに、処理開
始認識手段74は実際の高周波電源28の駆動を認識し信号を制御部60に出力する。
【0046】
すると制御部60は、加工計画データ70に基づいてワーク12の被処理面14の所定
位置ごと決められたプラズマ発生領域Sの通過速度及び滞在時間に対応してNCステージ
56を駆動させワーク12の被処理面14のプラズマ処理を行う。
【0047】
一方、時刻T4において制御部60はNCステージ56をプラズマ処理の最終位置に移
動させ被処理面14の最終位置におけるプラズマ処理を行うとともに、処理終了認識手段
76は実際にNCステージ56がその最終位置に到達したことを認識する。
【0048】
次に時刻T5において、制御部60は第1のバルブ46、第2のバルブ52及び高周波
電源28への駆動信号を停止させることによりそれぞれ停止させ、処理終了認識手段76
は実際にバルブ46、52および高周波電源28が停止したことを認識して信号を制御部
60に出力する。このとき流量調節器40、42、44への駆動信号も停止する。
【0049】
そして制御部60は大気圧プラズマ処理装置10を立ち下げる、或いは次のワークのプ
ラズマ処理のための各種データを外部から取得する。次のワークに対するプラズマ処理の
条件が異なる場合は流量調節器40、42、44における流量の変更がなされることがあ
るが、制御部60はこのような流量の変更に対応して上述の遅延時間を変更して、処理ガ
スの無駄を削減しつつプラズマを安定的に立ち上げるとことができる。
【符号の説明】
【0050】
10………大気圧プラズマ処理装置、12………ワーク、14………被処理面、16……
…プラズマ発生部、18………上部電極、20………誘電体、22………アクチュエータ
、24………下部電極、26………誘電体、28………高周波電源、30………ガス供給
部、32………ガスボンベ、32a………バルブ、32b………チェッカー、34………
ガスボンベ、34a………バルブ、34b………チェッカー、36………ガスボンベ、3
6a………バルブ、36b………チェッカー、38………第1の配管、40………流量調
節器42………流量調節器、44………流量調節器、46………第1のバルブ、48……
…混合器、50………第2の配管、51………流路、52………第2のバルブ、54……
…ノズル、56………NCステージ、58………NC制御装置、60………制御部、62
………操作部、64………表面測定器、66………実測形状データ、68………目標形状
データ、70………加工計画データ、72………記憶回路、74………処理開始認識手段
、76………処理終了認識手段、78………遅延時間データ群、80………遅延時間デー
タ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスが流通する流路に介装され、前記流路を開閉可能なバルブと、
前記流路から前記処理ガスが供給され、前記処理ガスを大気圧下でプラズマ化するプラ
ズマ発生部と、
前記プラズマ発生部及び前記バルブに接続され、前記バルブの開放時から一定の遅延時
間経過後に前記プラズマ発生部を駆動させる制御部と、を有することを特徴とする大気圧
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記処理ガスは流量調節器により流量が調整されるとともに、
前記制御部は、前記流量調節器で設定された流量の情報に基づいて前記遅延時間を設定
することを特徴とする請求項1に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項3】
処理ガスを流通する流路に前記流路を開閉可能なバルブを介装し、
前記流路から供給される前記処理ガスを大気圧下でプラズマ化するプラズマ発生部を設
け、
前記バルブを開放して前記処理ガスを流通させるとともに、前記バルブの開放時から一
定の遅延時間経過後に前記プラズマ発生部を駆動させることを特徴とする大気圧プラズマ
処理方法。
【請求項4】
前記遅延時間は、前記処理ガスの流量に対応して設定することを特徴とする請求項3に
記載の大気圧プラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−18821(P2012−18821A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155487(P2010−155487)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】