説明

感光性ポリアミド酸エステル組成物

【課題】電気・電子材料の製造に有用な、i線露光可能であり、かつ高い耐熱性及び耐薬品性を併せ持ったポリイミドパターンを与えうる感光性ポリアミド酸エステル組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位をからなるポリアミド酸エステル100質量部に対して、(B)光開始剤1〜15質量部と、(C)溶媒30〜600質量部とを含むことを特徴とする感光性ポリアミド酸エステル組成物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、多層配線基板などの電気・電子材料の製造に有用な感光性材料及び耐熱性を有する樹脂層の上に金属層を設けた積層体に関するものである。さらに詳しく言えば、本発明は、i線露光可能であり、かつ高い耐熱性および耐薬品性を持つポリイミドパターンを与え得るポリアミド酸エステル組成物及びポリイミド樹脂からなる層に接してチタンまたはアルミニウムからなる層を設けた積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、その高い熱的及び化学的安定性、低い誘電率及び優れた平坦化能のために、マイクロエレクトロニクス関係の材料として注目されており、半導体の表面保護膜、もしくは層間絶縁膜、またはマルチチップモジュールなどの材料として広く使用されている。
ポリイミド樹脂を用いて半導体装置を製造する場合には、通常、ポリイミド樹脂膜を基材上に形成し、リソグラフィー技術を利用して所望のパターンを形成する。具体的には、ポリイミド樹脂膜の上に、フォトレジストとフォトマスクを用いてフォトレジストのパターンを形成し、その後にエッチィングによるポリイミド樹脂のパターン化を行うという間接的なパターン形成方法が用いられる。しかしながら、この方法においては、初めにマスクとなるフォトレジストのパターンをポリイミド樹脂膜の上に形成し、次にポリイミド樹脂のエッチングを行い、最後に不要になったフォトレジストパターンの剥離を行わなければならないため、工程が複雑であり、更に間接的なパターン形成であるが故に解像度が低い。又、エッチングにヒドラジンのような有毒物質を溶剤として用いる必要があるため、安全性の問題もある。
【0003】
上記のような問題点を克服する目的で、光重合性の感光基をポリイミド前駆体に導入し、ポリイミド前駆体膜に直接パターンを形成する方法が実用化されている。例えば、二重結合を有する化合物をエステル結合、アミド結合、またはイオン結合などを介してポリアミド酸誘導体に結合してなるポリイミド前駆体、及び光開始剤等を含む感光性ポリイミド前駆体組成物で膜を形成し、これをパターンを有するフォトマスクを介して露光することによって上記塗膜の露光された部分のポリイミド前駆体を不溶化させる手段を用いてパターンを形成し、現像処理に付し、その後、加熱して感光基成分を除去することにより、ポリイミド前駆体を熱安定性を有するポリイミドに変換する方法が非特許文献1などで提案されている。この技術は、一般に感光性ポリイミド技術と呼ばれている。この技術によって、上記の従来の非感光性ポリイミド前駆体を用いるプロセスに伴う問題は克服された。そのため、ポリイミドパターンの形成を上記の感光性ポリイミド技術で行うことが多くなっている。
さらに、ポリイミド前駆体の原料として、特定の構造を有する芳香族ジアミンを用い、その特定の位置にアルキル基を導入することで、汎用有機溶剤に対して溶解性が向上させ、光に対して高感度にする技術が特許文献1に提案されている。しかし、それらの効果の一方で、硬化後の硬化レリーフパターンが耐薬品性に劣るものもある(後述の比較例3参照)。
【0004】
近年、半導体装置等に用いられるポリイミド膜のパターンを形成する際の解像度の向上が求められている。上記の感光性ポリイミド技術が開発される以前の非感光性ポリイミドを用いたプロセスにおいては高い解像度が得られなかったため、それを前提にして半導体装置や製造プロセスが設計されており、それによって半導体装置の集積率や精度が限られていた。一方、感光性ポリイミド技術を用いると、パターン形成時に高い解像度が得られることから、集積率や精度の高い半導体装置の製造が可能となる。これに関して以下に説明する。
例えば、メモリー素子等を製造する場合は、製品の収率を上げるために、あらかじめ予備の回路を作っておいて製品の検査後に不要な回路を切るという操作を行う。従来の非感光性ポリイミドを用いたプロセスでは、不要な回路の切断は、ポリイミドパターンの形成前に行っていたのに対し、感光性ポリイミドを用いるプロセスでは、ポリイミドパターン形成時の解像度が高いため、パターンに不要な回路を切るための穴を設けておいて、ポリイミドパターンの形成後に予備回路を切ることができる。したがって、最終製品の完成時点により近い段階で予備回路を切断することが可能となり、更に高い製品の収率が達成される。
【0005】
ポリイミドパターンに不要な回路を切るための穴を設けておく際には、半導体装置の高集積化のためにこの穴をより小さくすることが望まれており、そのためには、現在よりも更に高い解像度でパターン形成が可能な感光性ポリイミド前駆体が求められている。また、半導体装置の製造プロセスにおいて、高解像度のパターン形成を可能にする感光性ポリイミド前駆体を用いると、半導体装置の高集積化や高精度化に必要な広いプロセスマージンを達成することができる。ここで、「広いプロセスマージン」とは、当該プロセスにおけるパターン形成のための露光や現像時の使用可能条件(例えば、時間や温度などの条件)が広いことを意味する。従って、ポリイミドパターン形成時の解像度が高ければ高いほど望ましい。上記のことは、ポリイミドパターンをその他の半導体装置(マルチチップモジュール等)に用いる場合にも当てはまる。そのため、精度の高いパターンの形成を可能にする解像度の高い感光性ポリイミド前駆体組成物への要求は増してきている。
【0006】
ところで、半導体装置(以下、「素子」とも言う。)は目的に合わせて、様々な方法でプリント基板に実装される。通常の素子は、素子の外部端子(パッド)からリードフレームまで細いワイヤで接続するワイヤボンディング法が一般的であったが、素子の高速化が進み、動作周波数がGHzまで到達した今日、実装における各端子間の配線長さの違いが、素子の動作に影響を及ぼすまでに至った。その為に、ハイエンド用途の素子の実装では、実装配線の長さを正確に制御する必要が生じ、ワイヤボンディングではその要求を満たすことが不可能となった。
【0007】
そこで、半導体チップの表面に再配線層を形成し、その上にバンプ(電極)を形成し、チップを裏返して(フリップして)、プリント基板に直接実装するフリップチップ実装が提案されている。フリップチップ実装は配線距離を正確に制御できるため高速な信号を取り扱うハイエンド用途の素子や、実装サイズの小ささから携帯電話等に採用され、需要が急拡大している。フリップチップ実装にポリイミドを使用する場合、ポリイミド樹脂は高温でのレジスト剥離液耐性、また、はんだリフローに耐え得る耐熱性が要求される。そのため、再配線層の材料用としての感光性ポリイミド樹脂は、上述したような優れたパターン形成性や耐熱性に加えて、プロセス過程で使用されるレジスト剥離液への耐薬品性などの性能が重要視されている。さらにパターンを形成する際の露光源としてi線を使用する要求が高まっている。
【0008】
そこで、i線によりパターン形成可能で、耐熱性および耐薬品性を併せ持った感光性ポリイミドが要求されるようになった。一例として、メチルメラミン系の架橋剤、メチル尿素系の架橋剤などを用いて、i線によりパターン形成が可能なポリイミド前駆体に耐熱性および耐薬品性を付与する技術が提案されている。しかしながら、本発明者らが検討した結果、架橋によるポリイミドの表面状態の硬化により、Al、Tiなどの金属配線がポリイミドに付着しにくくなるといった弊害が起こる場合があることが判明した。
そのため、架橋剤を使用せず、上記のi線によりパターン形成が可能で、硬化後のポリイミドパターンが高い耐熱性および耐薬品性を併せ持った感光性ポリイミドが必要である。しかしながら、そのような優れたポリイミドを形成する感光性ポリイミド前駆体組成物は、これまでに知られていない。
【0009】
【特許文献1】特許2693168号公報
【非特許文献1】山岡・表、「ポリファイル」、1990年、第27巻、第2号、第14〜18頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、i線露光可能であり、かつ高い耐熱性及び耐薬品性を併せ持ったポリイミドパターンを与えうる感光性ポリアミド酸エステル組成物を提供することを目的とする。また、該組成物を硬化させてなるレリーフパターンと金属層からなる積層体であって、高接着性、耐薬品性、及び耐熱性を同時に有する積層体と、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、目標とする優れた特性を併せ持つポリイミドパターンを形成するために用いることができる感光性ポリイミド前駆体組成物を開発すべく鋭意検討を行った。その結果、ポリイミドの原料として用いた際に、特定の繰り返し単位からなるポリアミド酸エステルと、光開始剤と、溶媒からなる感光性組成物を用いることによって、i線露光可能であり、かつ高い耐熱性及び耐薬品性を併せ持ったポリイミドパターンを与えうる感光性ポリアミド酸エステル組成物が得られることを見いだした。本発明は、これらの新しい知見に基づいてなされたものである。
【0012】
すなわち、本発明の第一は、(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリアミド酸エステル100質量部に対して、(B)光開始剤1〜15質量部と、(C)溶媒30〜600質量部とを含むことを特徴とする感光性ポリアミド酸エステル組成物である。
【化1】

〔式中、Xは1個のベンゼン環を含む4価の芳香族基、または2個のベンゼン環が単結合した4価の芳香族基であり、X’は1個もしくは2個のベンゼン環を含む4価の芳香族基である。0.5≦m/(m+n)≦1.0である。RおよびR’はそれぞれ独立してオレフィン性二重結合を有する1価の基であり、同一であっても異なっていても良い。YおよびY’は下記一般式(2)で表される2価の芳香族基であり、同一であっても異なっていても良い。
【化2】

(式中、Aは炭素数が1〜4までの2価の脂肪族基であり、式中、Bは炭素数が1〜4までの1価の脂肪族基である。)〕
【0013】
また、本発明の第二は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する感光性ポリアミド酸エステル組成物を硬化させてなる硬化レリーフパターンからなる層、及び該層に接するチタン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくも1種の金属層を有することを特徴とする積層体である。
さらに、本発明の第三は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する感光性ポリアミド酸エステル組成物を基材に塗布して乾燥することにより該基材上に塗膜を形成する工程、パターンを有するフォトマスクを介して、又は直接に該塗膜に紫外線を照射する工程、現像液で現像することにより該塗膜の露光されなかった部分を除去して該基材上にレリーフパターンを形成する工程、該レリーフパターンを加熱することによりポリイミド樹脂からなる硬化レリーフパターンからなる層を該基材上に形成する工程、アルゴン、酸素、及び四フッ化炭素から選択される少なくとも1種のガスで該層の表面をドライエッチング処理する工程、ならびに該層に接してチタン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属層を形成する工程、からなることを特徴とする積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、i線露光可能で、かつ高い耐熱性及び耐薬品性を併せ持ったポリイミドパターンを与え得る感光性ポリアミド酸エステル組成物を提供することができる。また、該組成物を硬化させてなるレリーフパターンと金属層からなる積層体であって、高接着性、耐薬品性、耐熱性とを同時に有する積層体と、その積層体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
<感光性ポリアミド酸エステル組成物>
(A)ポリアミド酸エステル
本発明の組成物の成分であるポリアミド酸エステルは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリアミド酸エステルであり、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることができ、ジアミンとしては、例えば、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを用いることができ、これら両者を縮合反応に付すことによって製造することができる。これらのテトラカルボン酸二無水物やジアミンは、1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【化3】

(式中、Xは1個のベンゼン環を含む4価の芳香族基、または2個のベンゼン環が単結合した4価の芳香族基であり、X’は1個もしくは2個のベンゼン環を含む4価の芳香族基である。0.5≦m/(m+n)≦1.0である。RおよびR’はそれぞれ独立してオレフィン性二重結合を有する1価の基であり、同一であっても異なっていても良い。YおよびY’は下記一般式(2)で表される2価の芳香族基であり、同一であっても異なっていても良い。
【0016】
【化4】

(式中、Aは炭素数が1〜4までの2価の脂肪族基であり、式中Bは炭素数が1〜4までの1価の脂肪族基である。)〕
上記ポリアミド酸エステルにおいて、その繰り返し単位中のX基は、原料として用いるテトラカルボン二無水物に由来する。該テトラカルボン酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
上記ポリアミド酸エステルにおいて、その繰り返し単位中のX’は原料として用いるテトラカルボン酸二無水物に由来する。該テトラカルボン酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、
【0018】
2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3”,4”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)- プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、
【0019】
ペリレン−2,3,8,9−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−4,5,10,11−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−5,6,11,12−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,9,10−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でもかまわない。
【0020】
ポリアミド酸エステルの合成においては、通常、後述するテトラカルボン酸二無水物のエステル化反応を行って得られたテトラカルボン酸ジエステルをそのままジアミンとの縮合反応に付す方法が好ましく使用できる。
上記ポリアミド酸エステルにおいて、その繰り返し単位中のY及びY’基は、原料として用いる芳香族ジアミンに由来する。該芳香族ジアミンの例としては、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジイソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等を挙げることができる。
【0021】
上記のテトラカルボン酸二無水物のエステル化反応に用いるアルコール類は、オレフィン性二重結合を有するアルコール類である。具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルアルコール、2−アクリロイルオキシエチルアルコール、1−アクリロイルオキシ−2−プロピルアルコール、2−メタクリルアミドエチルアルコール、2−アクリルアミドエチルアルコール、メチロールビニルケトン、2−ヒドロキシエチルビニルケトン及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート等を挙げることができる。これらのアルコール類は、1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
また、特開平06−080776号公報に記載のように、上記のオレフィン性二重結合を有するアルコールに、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びアリルアルコールなどを一部混合して用いることもできる。
理論上、テトラカルボン酸二無水物のエステル化に使用するアルコール類の量は、テトラカルボン酸二無水物1.0当量あたり1.0当量であるが、本発明においては、テトラカルボン酸二無水物1.0当量あたり、1.01〜1.10当量になるようにアルコールを用いてテトラカルボン酸ジエステルを合成すると、最終的に得られる感光性ポリアミド酸エステル組成物の保存安定性が向上するので好ましい。
【0022】
本発明の組成物においては、上述した特定のテトラカルボン酸二無水物と特定のジアミンとを組合せたポリアミド酸エステルにより、i線透過性、及び高耐熱性および高耐薬品性とその他の性能とのバランスをとることができる。
ポリアミド酸エステルの合成に使用するテトラカルボン酸ジエステルとジアミンのモル比は、1.0付近であることが好ましいが、目的とするポリアミド酸エステルの分子量に応じて0.7〜1.3の範囲で用いることができる。
本発明に用いるポリアミド酸エステルの具体的な合成方法に関しては従来公知の方法を採用することができる。これについては、例えば、国際公開第00/43439号パンフレットに示されている方法を使用することができる。
本発明に用いるポリアミド酸エステルの重量平均分子量は、8000〜150000であることが好ましく、9000〜50000であることがより好ましい。重量平均分子量が8000以上で機械物性が向上し、150000以下で現像液への分散性がよくなり、レリーフパターンの解像性能が向上する。
【0023】
また、耐熱性及び耐薬品性を向上する成分として、本発明で使用されるポリアミド酸エステルの原料であるテトラカルボン酸二無水物の0〜50%を、以下の構造式(3)で表される2価の有機基を有するジカルボン酸化合物に置き換えて共重合を行ってもよい。
【化5】

(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R6 は1価の有機基であり、R5 は2価の有機基である。なお、式中の芳香族環上の水素原子は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フッ素原子、及びトリフルオロメチル基からなる群の中から選ばれる、少なくとも1個の基で置換されていても良い。)
【0024】
上記の式(3)で表される2価の有機基を有するジカルボン酸化合物は、具体的には、5−アミノイソフタル酸誘導体である。誘導体は以下の3つの系に分けることができる。
系1の誘導体としては、5−アミノイソフタル酸のアミノ基と熱架橋基を有する酸クロライド、酸無水物、イソシアネート、又はエポキシ化合物等とを反応させることで、5−アミノイソフタル酸のアミノ基に熱架橋基を導入した化合物である。
該熱架橋基としては、150〜400℃の範囲で自己架橋反応を起こすものが望ましく、ノルボルネン基、グリシジル基、シクロヘキセン基、エチニル基、アリル基、アルデヒド基、ベンゾシクロブテン基、フリル基、フルフリル基、ジメトキシジメチルアミノ基、ジヒドロキシジメチルアミノ基、アルキニル基、アルケニル基、オキセタン基、メタクリレート基、アクリレート基、シアノ基、チオフェン基が好ましい例として挙げられる。
【0025】
該熱架橋基を有する酸クロライド、酸無水物、イソシアネート、又はエポキシ化合物としては、具体的には、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、エキソ−3,6-エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3−エチニル−1,2−フタル酸無水物、4−エチニル−1,2−フタル酸無水物、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、マレイン酸無水物、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸クロライド、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、2−フランカルボン酸クロライド、クロトン酸クロライド、ケイ皮酸クロライド、メタクリル酸クロライド、アクリル酸クロライド、プロピオリック酸クロライド、テトロリック酸クロライド、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、チオフェン2−アセチルクロライド、イソシアナートエチルメタクリレート、アリルスクシン酸無水物、グリシジルメタクリレート及びアリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0026】
系2の誘導体としては、5−アミノイソフタル酸のアミノ基をウレタン型保護基、アシル型保護基、アルキル型保護基、シリコン型保護基、又はウレア型保護基等で保護した化合物である。この保護基はポリベンゾオキサゾール前駆体を加熱によって閉環させる工程で脱離し、アミノ基が再生するものを選択する。再生したアミノ基は、ポリマー主鎖の一部、または末端部と架橋反応を起こす。
ウレタン型保護基としては、ベンジルオキシカルボニル基、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、t −ブチルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、イソボルニルベンジルオキシカルボニル基、及びp−ビフェニルイソプロピルベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0027】
5−アミノイソフタル酸のアミノ基をウレタン型保護基で保護するに用いる化合物として具体的には、クロロ炭酸メチルエステル、クロロ炭酸エチルエステル、クロロ炭酸n−プロピルエステル、クロロ炭酸イソプロピルエステル、クロロ炭酸イソブチルエステル、クロロ炭酸2−エトキシエステル、クロロ炭酸−sec−ブチルエステル、クロロ炭酸ベンジルエステル、クロロ炭酸2−エチルヘキシルエステル、クロロ炭酸アリルエステル、クロロ炭酸フェニルエステル、クロロ炭酸2,2,2−トリクロロエチルエステル、クロロ炭酸−2−ブトキシエチルエステル、クロロ炭酸−p−ニトロベンジルエステル、クロロ炭酸−p−メトキシベンジルエステル、クロロ炭酸イソボルニルベンジルエステル、クロロ炭酸−p−ビフェニルイソプロピルベンジルエステルなどのクロロ炭酸エステル類、2−t−ブチルオキシカルボニル−オキシイミノ−2−フェニルアセトニトリル、S−t−ブチルオキシカルボニル−4,6−ジメチル−チオピリミジン、ジ−t−ブチル−ジカルボナートなどが挙げられる。
【0028】
アシル型保護基としては、ホルミル基、フタロイル基、ジチアスクシノイル基、トシル基、メシル基、o−ニトロフェニルスルフェニル基、o−ニトロピリジンスルフェニル基、及びジフェニルホスフィニル基が挙げられる。アシル型保護試薬としては、N−エトキシカルボニルフタルイミド、エチルジチオカルボニルクロライド、蟻酸クロライド、ベンゾイルクロライド、p−トルエンスルホン酸クロライド、メタンスルホン酸クロライド、アセチルクロライドなどが挙げられる。
アルキル型保護基としては、トリフェニルメチル基、及び2−ベンゾイル−1−メチルビニル基などが挙げられる。アルキル型保護試薬としては、塩化トリチルが挙げられる。シリコン型保護基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、及びt−ブチルジフェニルシリル基が挙げられる。シリコン型保護試薬としては、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、(N,N−ジメチルアミノ)トリメチルシラン、(ジメチルアミノ)トリメチルシラン、トリメチルシリルジフェニル尿素、ビス(トリメチルシリル)尿素などが挙げられる。
【0029】
ウレア型保護基としては、5−アミノイソフタル酸と各種モノイソシアネート化合物とを反応させれば良い。該モノイソシアネート化合物としては、イソシアン酸フェニルエステル、イソシアン酸n−ブチルエステル、イソシアン酸n−オクタデシルエステル、及びイソシアン酸o−トリルエステルが挙げられる。モノイソシアネート化合物としては、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸n−ブチル、イソシアン酸n−オクタデシル、及びイソシアン酸o−トリルなどが挙げられる。
系3の誘導体としては、5−アミノイソフタル酸のアミノ基をジカルボン酸無水物と反応させた化合物である。ジカルボン酸無水物としては、1,2−フタル酸無水物、及びシス−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物などが挙げられる。
【0030】
また、本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物には一般式(1)記載のポリアミド酸エステル(a)に対して、更に接着性を向上させるために下記一般式(4)で表されるポリアミド酸エステル(b)を混合して使用しても良い。ポリアミド酸エステル(b)の添加量は、ポリアミド酸エステル(a)との合計が100重量部になるように混合し、(a):(b)=100:0〜50:50の重量比であることが好ましい。
【化6】

(式中、X”は4価の芳香族基である。ただし、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は除く。R”はオレフィン性二重結合を有する1価の基である。Y”は2価の芳香族基である。)
【0031】
上記ポリアミド酸エステル(b)において、その繰り返し単位中のX”は原料として用いるテトラカルボン酸二無水物に由来する。X”として用いることができる好ましい芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体的な例としては、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス[(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、および1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物は、単独でも二種以上を同時に用いることも可能である。
【0032】
上記ポリアミド酸エステル(b)において、その繰り返し単位中のR”はテトラカルボン酸二無水物のエステル化反応に用いるアルコール類に由来する。上記のテトラカルボン酸二無水物のエステル化反応に用いるアルコール類は、オレフィン性二重結合を有するアルコール類である。具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルアルコール、2−アクリロイルオキシエチルアルコール、1−アクリロイルオキシ−2−プロピルアルコール、2−メタクリルアミドエチルアルコール、2−アクリルアミドエチルアルコール、メチロールビニルケトン、2−ヒドロキシエチルビニルケトン及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート等を挙げることができる。これらのアルコール類は、1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
また、特開平06−080776号公報に記載のように、上記のオレフィン性二重結合を有するアルコールに、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びアリルアルコールなどを一部混合して用いることもできる。
理論上、テトラカルボン酸二無水物のエステル化に使用するアルコール類の量は、テトラカルボン酸二無水物1.0当量あたり1.0当量であるが、本発明においては、テトラカルボン酸二無水物1.0当量あたり、1.01〜1.10当量になるようにアルコールを用いてテトラカルボン酸ジエステルを合成すると、最終的に得られる感光性ポリアミド酸エステル組成物の保存安定性が向上するので好ましい。
【0034】
上記ポリアミド酸エステル(b)において、その繰り返し単位中のY”は原料として用いる芳香族ジアミンに由来する。Y”として用いることができる好ましい芳香族ジアミン類の具体的な例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォキシド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、1、1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、あるいはこれらの芳香族ジアミン類の芳香族環と直接結合した水素原子の一部がメチル基、エチル基、及びハロゲン基からなる群から選択される基で置換されたものが挙げられる。
【0035】
(B)光開始剤
本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物の成分である光開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、及びフルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、及び2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等のアセトフェノン誘導体、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及びジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ベンジル、ベンジルジメチルケタール及び、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体、2,6−ジ(4’−ジアジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、及び2,6′−ジ(4’−ジアジドベンザル)シクロヘキサノン等のアジド類、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルプロパンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルプロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルプロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、及び1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N−フェニルグリシンなどのN−アリールグリシン類、ベンゾイルパーオキシドなどの過酸化物類、並びに芳香族ビイミダゾール類、チタノセン類などが用いられるが、厚膜での硬化性及び光感度の点で上記オキシム類が好ましい。
これらの光開始剤の添加量は、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対し、1〜15質量部が好ましい。開始剤をポリアミド酸エステル100質量部に対し1質量部以上添加することで光感度にすぐれ、15質量部以下添加することで厚膜i線硬化性にすぐれる。
【0036】
(C)溶媒
本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物の成分である溶媒としては、成分(A)及び(B)に対する溶解性の点から、極性の有機溶剤を用いることが好ましい。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどが挙げられ、これらは単独または二種以上の組合せで用いることができる。
これらの溶媒は、塗布膜厚、粘度に応じて、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対して、30〜600質量部の範囲で用いることができる。
さらに本発明のポリアミド酸エステル組成物の保存安定性を向上させるため、溶媒として使用する有機溶剤中にアルコール類を含むことが好ましい。
【0037】
使用可能なアルコール類としては、分子内にアルコール性水酸基を持つものであれば特に制限はないが、具体的な例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、乳酸エチル等の乳酸エステル類、プロピレングリコール−1−メチルエーテル、プロピレングリコール−2−メチルエーテル、プロピレングリコール−1−エチルエーテル、プロピレングリコール−2−エチルエーテル、プロピレングリコール−1−(n−プロピル)エーテル、プロピレングリコール−2−(n−プロピル)エーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル等のモノアルコール類、2−ヒドロキシイソ酪酸エステル類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のジアルコール類、を挙げることができる。これらの中では、乳酸エステル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、2−ヒドロキシイソ酪酸エステル類、エチルアルコールが好ましく、特に乳酸エチル、プロピレングリコール−1−メチルエーテル、プロピレングリコール−1−エチルエーテル、プロピレングリコール−1−(n−プロピル)エーテルがより好ましい。
全溶媒中に占めるアルコール類の含量は5〜50重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜30重量%である。アルコール類の含量が5重量%以上の場合、ポリアミド酸エステル組成物の保存安定性が良好になる。また50重量%以下の場合、(A)成分であるポリアミド酸エステルの溶解性が良好になる。
【0038】
(D)その他の成分
本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物には、更に光感度を向上させるために増感剤を添加することもできる。光感度を向上させるための増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビフェニレン)−ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4’−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、
【0039】
3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N’−エチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−p−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、4−モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2−d)チアゾール、2−(p−ジメチルアミノベンゾイル)スチレン、ベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。これらの中では、光感度の点で、メルカプト基を有する化合物とジアルキルアミノフェニル基を有する化合物を組み合わせて用いることが好ましい。これらは単独でまたは2〜5種類の組み合わせで用いることができる。
光感度を向上させるための増感剤は、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対して、0.1〜10質量部を用いるのが好ましい。
【0040】
また、本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物には、基材との接着性向上のため接着助剤を添加することもできる。接着助剤としては、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル−3−ピペリジノプロピルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、N−(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)スクシンイミド、N−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕フタルアミド酸、ベンゾフェノン−3,3’−ビス(N−〔3−トリエトキシシリル〕プロピルアミド)−4,4’−ジカルボン酸、ベンゼン−1、4−ビス(N−〔3−トリエトキシシリル〕プロピルアミド)−2,5−ジカルボン酸、3−(トリエトキシシリル)プロピルスクシニックアンハイドライド、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、及びアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系接着助剤などが挙げられる。
これらの内では接着力の点からシランカップリング剤を用いることがより好ましい。接着助剤の添加量は、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対し、0.5〜10質量部の範囲が好ましい。
【0041】
また、本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物には、保存時の組成物溶液の粘度や光感度の安定性を向上させるために熱重合禁止剤を添加することができる。熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、N−ニトロソジフェニルアミン、p−tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、N−フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6−ジ−tert−ブチル−p−メチルフェノール、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン、1−ニトロソ−2−ナフトール、2−ニトロソ−1−ナフトール、2−ニトロソ−5−(N−エチル−N−スルフォプロピルアミノ)フェノール、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソ−N(1−ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩等が用いられる。
感光性ポリアミド酸エステル組成物に添加する熱重合禁止剤の量としては、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対して、0.005〜5質量部の範囲が好ましい。
本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物においては、耐熱性及び耐薬品性を向上する成分として有機チタン化合物を使用することができる。使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機化学物質が共有結合あるいはイオン結合を介して結合しているものであれば特に制限はない。
【0042】
用いることのできる有機チタン化合物の具体的な例は、まずチタノセン類である。チタノセン類としては、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイドなどが用いられる。この際に、ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1−ヒドロピロール−1−イル)フェニル)チタノセンのような光開始剤として機能するチタノセン類を用いると、本発明に用いることのある他の光開始剤との干渉により、良好なパターンを得にくい場合があり、光開始剤として機能しない有機チタン化合物の方がより好ましい。
また、本発明に用いることのできる有機チタン化合物の別の具体的な例は、チタンキレート類である。本発明ではチタンキレート類の内、2個以上のアルコキシ基を有する物が、組成物の安定性及び良好なパターンが得られることからより好ましく、具体的な好ましい例としては、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n−ブトキサイド)(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等である。
【0043】
また、本発明には、チタニウムテトラ(n−ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2−エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n−ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n−プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス(ビス2,2−(アリロキシメチル)ブトキサイド)、等のテトラアルコキシド類、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルフォネート)イソプロポキサイド等のモノアルコキサイド類、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等のチタニウムオキサイド類、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のテトラアセチルアセトネート類、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルフォニルチタネート、等のチタネートカップリング剤類なども用いることができる。
これらの有機チタン化合物の添加量は、(A)ポリアミド酸エステル100質量部に対し、0.3〜10質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜2質量部である。添加量が0.3質量部以上で所望の耐熱性及び耐薬品性が発現し、また10質量部以下であれば保存安定性に優れる。
【0044】
また、本発明の感光性ポリアミド酸エステル組成物中には反応性モノマーを添加することもできる。反応性モノマーとしては、特に限定しないが、光ラジカル発生剤の作用によりラジカル重合反応するもの、あるいは光酸発生剤や光塩基発生剤の作用により開環重合反応するものなど選択できる。ラジカル重合反応する反応性モノマーとしては特に限定するものではないが、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールジメタクリレートをはじめとする、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールのモノまたはジアクリレートおよびメタクリレート、プロピレングリコールまたはポリプロピレングリコールのモノまたはジアクリレートおよびメタクリレート、グリセロールのモノ、ジまたはトリアクリレートおよびメタクリレート、シクロヘキサンジアクリレートおよびジメタクリレート、1,4−ブタンジオールのジアクリレートおよびジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールのジアクリレートおよびジメタクリレート、ネオペンチルグリコールのジアクリレートおよびジメタクリレート、ビスフェノールAのモノまたはジアクリレートおよびメタクリレート、ベンゼントリメタクリレート、イソボルニルアクリレートおよびメタクリレート、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびメタクリレート、グリセロールのジまたはトリアクリレートおよびメタクリレート、ペンタエリスリトールのジ、トリ、またはテトラアクリレートおよびメタクリレート、およびこれら化合物のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物などの化合物を挙げることができる。
【0045】
<硬化レリーフパターンの形成方法>
感光性ポリアミド酸エステル組成物を用いて、感光性ポリイミド樹脂からなる硬化レリーフパターンを形成する方法の1つの態様としては、以下の工程が好ましい。
(a)感光性ポリアミド酸エステル組成物を基材に塗布、乾燥することにより該基材上に塗膜を形成する工程。
(b)該塗膜を、パターンを有するフォトマスクまたはレチクルを介してまたは直接に紫外線を照射する工程。
(c)現像液で現像することにより該塗膜の露光されなかった部分を除去して、これにより該基板上にレリーフパターンを形成する工程。
(d)該レリーフパターンを加熱硬化することにより、該レリーフパターン中のポリアミド酸エステルをイミド化し、これにより該基板上にポリイミド樹脂からなる硬化レリーフパターンを形成する工程。
【0046】
硬化レリーフパターンの形成方法において使用できる基材としては、シリコンウエハー、金属、ガラス、半導体、金属酸化絶縁膜、窒化ケイ素などが挙げられるが、好ましくはシリコンウエハーが用いられる。
本発明に使用する感光性ポリアミド酸エステル組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から感光性ポリアミド酸エステル組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性ポリアミド酸エステル組成物中のポリアミド酸エステルのイミド化が起こらないような条件で行うことが望ましい。具体的には、風乾、あるいは加熱乾燥を行う場合、20℃〜140℃で1分〜1時間の条件で行うことができる。
【0047】
こうして得られた塗膜は、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等の露光装置を用いて、パターンを有するフォトマスクまたはレチクルを介して紫外線光源等により露光され、次いで現像される。
現像に使用される現像液としては、ポリアミド酸エステル組成物に対する良溶媒、または該良溶媒と貧溶媒との組み合わせが好ましい。良溶媒としては、N−メチルピロリドン(以下「NMP」ともいう)、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等が好ましく、貧溶媒としてはトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び水等が用いられる。良溶媒と貧溶媒とを混合して用いる場合には、ポリマーの溶解性によって良溶媒に対する貧溶媒の割合を調整する。また、各溶媒を数種類組み合わせて用いることもできる。
【0048】
現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択して使用することができる。
上記のようにして得られたポリアミド酸エステルのパターンは加熱して感光成分を希散させるとともにイミド化させることによって、ポリイミド樹脂からなるの硬化レリーフパターンに変換する。加熱硬化させる方法としては、ホットプレートによるもの、オーブンを用いるもの、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いるもの等種々の方法を選ぶことができる。加熱は、280℃〜450℃で30分〜5時間の条件で行うことができる。加熱硬化させる際の雰囲気気体としては空気を用いても良く、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
【0049】
<積層体の製造方法>
上述の感光性ポリアミド酸エステル組成物を用いて、ポリイミド樹脂からなる硬化レリーフパターン層と金属層とを有して成る積層体を製造する方法の1つの態様としては、以下の工程が好ましい。
上述の硬化レリーフパターンの形成方法により基材上に硬化レリーフパターンを形成する工程に続き、該層の表面をアッシング、またはプラズマエッチング等のドライエッチング処理する。
ドライエッチング処理としては、酸素、アルゴン、四フッ化炭素等のガスを使用して、圧力1〜100Pa、時間1〜30分の条件で行うことが好ましい。
上述のようにして、基材の上に得られたポリイミド樹脂からなる硬化レリーフパターンの上に接して、さらにバンプ用または再配線用のメタル層(チタン、アルミニウム、または銅等の金属層)をスパッタリング等の薄膜作成方法によって設けることで本発明の積層体を製造することができる。そして、該積層体の製造方法を公知の半導体装置の製造方法と組み合わせることで、ポリイミド樹脂層の上にチタン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属層を有する半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例及び比較例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
実施例、比較例及び参考例においては、感光性ポリアミド酸エステル組成物の物性を以下の方法に従って測定及び評価した。
(1)重量平均分子量
各ポリアミド酸エステルの重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(標準ポリスチレン換算)で測定した。
GPCの分析条件を以下に記す。
カラム:昭和電工社製 商標名 Shodex 805/804/803直列
容離液:テトラヒドロフラン 40℃
流速 :1.0ml/分
検出器:昭和電工社製 商標名 Shodex RI SE−61
(2)ポリイミド塗膜のガラス転移温度(Tg)の測定
基板となる厚み625μm±25μmの5インチシリコンウエハー(日本国、フジミ電子工業株式会社製)上に、硬化後の膜厚が約10μmとなるように感光性ポリアミド酸エステル組成物を回転塗布した後、窒素雰囲気下、350℃で2時間加熱して熱硬化したポリイミド塗膜を得た。得られたポリイミド塗膜をシリコンウエハーから剥がしてポリイミドテープとした。
得られたポリイミドテープを荷重200g/mm2 、昇温速度10℃/分、20〜500℃の範囲で熱機械試験装置(島津製作所製:TMA−50)により測定し、温度を横軸、変位量を縦軸にとった測定チャートにおけるポリイミドテープの熱降伏点の接線交点をTgとした。
【0051】
(3)硬化レリーフパターンの作製方法及び解像度の評価
感光性ポリアミド酸エステル組成物を5インチシリコンウエハー上にスピン塗布し、乾燥して10μm厚の塗膜を形成した。この塗膜にテストパターン付レチクルを用いてi線ステッパーNSR1755i7B(日本国、ニコン社製)により、300mJ/cm2 のエネルギーを照射した。次いで、ウエハー上に形成した塗膜を、現像液としてシクロペンタノンを用いて現像機(D−SPIN636型、日本国、大日本スクリーン製造社製)でスプレー現像し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートでリンスして硬化レリーフパターンを得た。
該レリーフパターンを形成したウエハーを昇温プログラム式キュア炉(VF−2000型、日本国、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、200℃で1時間、続いて350℃で2時間熱処理することにより、約5μm厚のポリイミド樹脂からなる硬化レリーフパターンをシリコンウエハー上に得た。
得られた硬化レリーフパターンについて、パターン形状やパターン部の幅を光学顕微鏡下で観察し、解像度を求めた。解像度に関しては、テストパターン付きレチクルを介して露光することにより複数の異なる面積の開口部を有するパターンを上記方法で形成し、得られたポリイミド樹脂のパターン開口部の面積が、対応するパターンレチクル開口面積の1/2以上であれば解像されたものとみなし、解像された開口部のうち最小面積を有するものに対応するレチクルの開口辺の長さを解像度とした。解像度は10μm以下であれば良好とした。
【0052】
(4)硬化レリーフパターンの耐薬品性の評価
上記(3)により得られた硬化レリーフパターンについて、NMP(40−60%)/スルホラン(30−50%)/1−アミノ−2−プロパノール(5−15%)の混合液(PRS−3000)に85℃で1時間、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)/ジメチルスルホキシド(DMSO)の重量比が6/94の混合溶液に60℃で40分浸漬した後、表面パターンを観察し、耐薬品性試験を行った。パターンの溶解、パターンの剥れ、塗膜のひびがなければ合格とした。
(5)ポリイミド塗膜のメタル接着性の評価
基板となる厚み625μm±25μmの5インチシリコンウエハー(日本国、フジミ電子工業株式会社製)上に、硬化後の膜厚が約10μmとなるように感光性ポリアミド酸エステル組成物を回転塗布した後、窒素雰囲気下、350℃で2時間加熱して熱硬化したポリイミド塗膜を得た。
【0053】
このポリイミド塗膜に低圧プラズマ処理をアッシング装置(神港精機社製、EXAM)を用いて酸素:四フッ化炭素の流量が40ml/分:1ml/分、50Pa、133Wの条件でプラズマアッシングを行った。このポリイミド塗膜に対し、スパッタ装置(アネルバ社製、L−430S−FH)を用いてアルゴンの流量が50sccm、1Pa、400Wの条件でアルゴンプラズマエッチングを行った。さらにこのポリイミド塗膜上にスパッタ装置(アネルバ社製、L−430S−FH)を用いて200nmの厚さでAl、またはTiの膜を形成した。このAlまたはTi膜上にエポキシ接着剤(昭和高分子社製、アラルダイトスタンダード)を用いて直径2mmのピンを接着し、これを引張り試験機(クワッドグループ社製、セバスチャン5型)を用いて引き剥がし試験を行った。引き剥がしに要する力が60MPa以上であれば合格とした。
【0054】
<参考例1>(ポリアミド酸エステルAの合成)
ピロメリット酸二無水物(PMDA)87.2gを2リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)104.1gとγ−ブチロラクトン400mlを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得た。反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、16時間放置した。
次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)165.1gをγ−ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加え、続いて3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン84.1gをγ−ブチロラクトン350mlに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて加えた。更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌し、次に、γ−ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
得られた反応液を3リットルのエチルアルコールに加えて粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28リットルの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリアミド酸エステルA)を得た。ポリアミド酸エステルAの重量平均分子量(Mw)は23000だった。
【0055】
<参考例2>(ポリアミド酸エステルBの合成)
テトラカルボン酸として、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)117.7gと、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン84.1gを用い、前述の参考例1と同様の方法にて反応させてポリアミド酸エステルBを得た。ポリアミド酸エステルBの重量平均分子量(Mw)は26000だった。
<参考例3>(ポリアミド酸エステルCの合成)
テトラカルボン酸として4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)62.0gと3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)58.8gを用い、ジアミンとして、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン84.1gを用い、前述の参考例1と同様の方法にて反応させてポリアミド酸エステルCを得た。ポリアミド酸エステルCの重量平均分子量(Mw)は26000だった。
【0056】
<参考例4>(ポリアミド酸エステルDの合成)
テトラカルボン酸として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)87.2gとジアミンとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)74.3gを用い、前述の参考例1と同様の方法にて反応させてポリアミド酸エステルDを得た。ポリアミド酸エステルDの重量平均分子量(Mw)は28000だった。
<参考例5>(ポリアミド酸エステルEの合成)
テトラカルボン酸として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)124.1gとジアミンとして、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン84.1gを用い、前述の参考例1と同様の方法にて反応させてポリアミド酸エステルEを得た。ポリアミド酸エステルEの重量平均分子量(Mw)は25000だった。
【0057】
<参考例6>(ポリアミド酸エステルFの合成)
テトラカルボン酸として、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)128.9gとジアミンとして、4,4’−メチレンジ−2,6−キシリジン94.5gを用い、前述の参考例1と同様の方法にて反応させてポリアミド酸エステルFを得た。ポリアミド酸エステルFの重量平均分子量(Mw)は27000だった。
<参考例7>(ポリアミド酸エステルGの合成)
テトラカルボン酸として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)124.1gとジアミンとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)74.4gを用い、前述の参考例1と同様の方法にて反応させてポリアミド酸エステルGを得た。ポリアミド酸エステルGの重量平均分子量(Mw)は18000だった。
【0058】
[実施例1]
得られたポリアミド酸エステルAを用いて以下の方法で感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、調整した組成物の評価を行った。
ポリアミド酸エステルA100gを、ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム(光開始剤)4g、テトラエチレングリコールジメタクリレート4g、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール2g、N−フェニルジエタノールアミン4g、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸3g、及び2−ニトロソ−1−ナフトール0.02gと共に、NMP80gと乳酸エチル20gからなる混合溶媒に溶解した。得られた溶液の粘度を、少量の該混合溶媒をさらに加えることによって約75ポイズに調整し、感光性ポリアミド酸エステル組成物とした。
該組成物から得たポリイミド塗膜のTgは350℃であった。また、硬化レリーフパターンの解像度は8μmであった。また、PRS−3000、TMAH/DMSOによる耐薬品性試験において、パターンの溶解、パターンの剥がれ、塗膜のひびは観察されなかった。
該組成物から得たポリイミド塗膜のメタル接着性を上記の方法によって測定したところ、Al、Ti共に60MPa以上であった。
【0059】
[実施例2]
ポリアミド酸エステルBをポリアミド酸エステルAの代わりに使用した以外は実施例1と同様に感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、評価を行った。
該組成物から得たポリイミド塗膜のTgは300℃であった。また、硬化レリーフパターンの解像度は7μmであった。また、PRS−3000、TMAH/DMSOによる耐薬品性試験において、パターンの溶解、パターンの剥がれ、塗膜のひびは観察されなかった。
該組成物から得たポリイミド塗膜のメタル接着性を上記の方法によって測定したところ、Al、Ti共に60MPa以上であった。
【0060】
[実施例3]
ポリアミド酸エステルCをポリアミド酸エステルAの代わりに使用した以外は実施例1と同様に感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、評価を行った。
該組成物から得たポリイミド塗膜のTgは285℃であった。また、硬化レリーフパターンの解像度は7μmであった。また、PRS−3000、TMAH/DMSOによる耐薬品性試験において、パターンの溶解、パターンの剥がれ、塗膜のひびは観察されなかった。
該組成物から得たポリイミド塗膜のメタル接着性を上記の方法によって測定したところ、Al、Ti共に60MPa以上であった。
【0061】
[比較例1]
ポリアミド酸エステルDをポリアミド酸エステルAの代わりに使用した以外は実施例1と同様に感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、評価を行った。
該組成物から得たポリイミド塗膜のTgは360℃であった。また、PRS−3000、TMAH/DMSOによる耐薬品性試験において、パターンの溶解、パターンの剥がれ、塗膜のひびは観察されなかった。しかし、i線ステッパーの露光においては、レリーフパターンが解像されなかった。
該組成物から得たポリイミド塗膜のメタル接着性を上記の方法によって測定したところ、Al、Ti共に60MPa以上であった。
【0062】
[比較例2]
ポリアミド酸エステルEをポリアミド酸エステルAの代わりに使用した以外は実施例1と同様に感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、評価を行った。
該組成物から得たポリイミド塗膜のTgは275℃であった。また、硬化レリーフパターンの解像度は7μmであった。しかし、PRS−3000、TMAH/DMSOによる耐薬品性試験において、パターンの溶解が観察された。
該組成物から得たポリイミド塗膜のメタル接着性を上記の方法によって測定したところ、Al、Ti共に60MPa以上であった。
【0063】
[比較例3]
ポリアミド酸エステルFをポリアミド酸エステルAの代わりに使用した以外は実施例1と同様に感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、評価を行った。
該組成物から得たポリイミド塗膜のTgは285℃であった。また、硬化レリーフパターンの解像度は6μmであった。しかし、PRS−3000、TMAH/DMSOによる耐薬品性試験において、パターンに溶解が観察された。
該組成物から得たポリイミド塗膜のメタル接着性を上記の方法によって測定したところ、Al、Ti共に60MPa以上であった。
【0064】
[比較例4]
ポリアミド酸エステルGをポリアミド酸エステルAの代わりに使用し、架橋剤として三和ケミカル製ニカラックMX−270を10g加えた以外は実施例1と同様に感光性ポリアミド酸エステル組成物を調整し、評価を行った。
該組成物から得たポリイミド塗膜のTgは270℃であった。また、硬化レリーフパターンの解像度は8μmであった。また、PRS−3000、TMAH/DMSOによる耐薬品性試験において、パターンの溶解、パターンの剥がれ、塗膜のひびは観察されなかった。
該組成物から得たポリイミド塗膜のメタル接着性を上記の方法によって測定したところ、Alで25MPa、Tiで34MPaであった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の組成物は、半導体装置、多層配線基板などの電気・電子材料の製造に有用な感光性材料の分野で好適に利用できる。さらに詳しく言えば、本発明の組成物は、i線露光可能であり、かつ高い耐熱性および耐薬品性を持つポリイミドパターンを与え得るポリアミド酸エステル組成物として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリアミド酸エステル100質量部に対して、(B)光開始剤1〜15質量部と、(C)溶媒30〜600質量部とを含むことを特徴とする感光性ポリアミド酸エステル組成物。
【化1】

〔式中、Xは1個のベンゼン環を含む4価の芳香族基、または2個のベンゼン環が単結合した4価の芳香族基であり、X’は1個もしくは2個のベンゼン環を含む4価の芳香族基である。0.5≦m/(m+n)≦1.0である。RおよびR’はそれぞれ独立してオレフィン性二重結合を有する1価の基であり、同一であっても異なっていても良い。YおよびY’は下記一般式(2)で表される2価の芳香族基であり、同一であっても異なっていても良い。
【化2】

(式中、Aは炭素数が1〜4までの2価の脂肪族基であり、式中、Bは炭素数が1〜4までの1価の脂肪族基である。)〕
【請求項2】
請求項1に記載の感光性ポリアミド酸エステル組成物を硬化させてなるレリーフパターンからなる層、及び該層に接するチタン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属層を有することを特徴とする積層体。
【請求項3】
請求項1に記載の感光性ポリアミド酸エステル組成物を基材に塗布して乾燥することにより該基材上に塗膜を形成する工程、パターンを有するフォトマスクを介して、又は直接に該塗膜に紫外線を照射する工程、現像液で現像することにより該塗膜の露光されなかった部分を除去して該基材上にレリーフパターンを形成する工程、該レリーフパターンを加熱することによりポリイミド樹脂からなる硬化レリーフパターンからなる層を該基材上に形成する工程、アルゴン、酸素、及び四フッ化炭素から選択される少なくとも1種のガスで該層の表面をドライエッチング処理する工程、ならびに該層に接してチタン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属層を形成する工程、からなることを特徴とする積層体の製造方法。

【公開番号】特開2008−83467(P2008−83467A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264308(P2006−264308)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】