説明

成膜装置、成膜方法及び記憶媒体

【課題】膜厚方向に亘って緻密な薄膜を得ること。また、良好なデバイス構造を得ること。
【解決手段】回転テーブル2を回転させることにより、Si含有ガスとO3ガスとを用いてウエハWに反応生成物を形成する成膜ステップと、プラズマにより前記反応生成物を改質する改質ステップと、からなる成膜−改質処理を複数回行うと共に、薄膜の形成途中にてプラズマの強度を変更する。具体的には、反応生成物の積層膜厚が薄い時(成膜−改質処理を開始した初期)にはプラズマの強度を小さくすると共に、反応生成物の積層膜厚が増加する程(成膜ステップの回数が増える程)、ウエハWに供給するプラズマの強度を段階的に大きくする。あるいは、反応生成物の膜厚が薄い時にプラズマの強度を強くして、その後弱くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空雰囲気にて複数種類の反応ガスを基板の表面に順番に供給して薄膜を形成する成膜装置、成膜方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
表面にピラー状またはライン状の凸部を含むパターンの形成された例えばシリコン(Si)からなる半導体ウエハなどの基板(以下「ウエハ」という)に対して、例えば酸化シリコン(SiO2)膜を成膜するにあたり、ALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれる成膜方法が用いられる場合がある。具体的には、真空雰囲気下でシリコンを含む有機系ガスと酸化ガスとをウエハに交互に供給して、反応生成物からなる原子層や分子層を積層することにより、酸化シリコン膜からなる薄膜が形成される。この成膜方法により形成された薄膜は、当該成膜方法における成膜温度が従来のCVD(Chemical Vapor Deposition)法などに比べて低いため、例えば前記有機系ガス中の有機物が薄膜中に不純物として残ることによって、良好な緻密性の得られない場合がある。
【0003】
そこで、薄膜を積層した後、ウエハに例えば酸素(O2)を含む処理ガスのプラズマを照射することにより、反応生成物を改質して緻密化することを検討しているが、薄膜の膜厚がプラズマの進入(透過)できる膜厚よりも厚い場合には、薄膜の下層側については改質が困難になってしまう。一方、薄膜の膜厚がプラズマの進入できる膜厚よりも薄い場合には、図34に示すように、薄膜の下地層であるウエハにプラズマが到達して、例えばシリコン層の表面を酸化してしまうおそれがある。この場合には、既述の凸部の幅寸法dが設計寸法よりも狭まり、求める電気特性が得られなくなってしまう。
【0004】
ところで、例えば既述の酸化シリコン膜をゲート酸化膜として用いる場合、ALD法あるいはCVD法により積層した薄膜では、当該薄膜とウエハとの間の界面の平坦性が熱酸化膜などに比べて悪く、欠陥の発生するおそれがある。
特許文献1〜3には、ALD法などについて記載されているが、既述の課題については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公報7,153,542号
【特許文献2】特許3144664号公報
【特許文献3】米国特許公報6,869,641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、真空雰囲気にて複数種類の反応ガスを基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成するにあたり、膜厚方向に亘って緻密な薄膜を得ることのできる技術を提供することにある。更に他の目的は、良好なデバイス構造を得ることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成膜装置は、
真空雰囲気にて複数種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成し、複数種類の反応ガスのうちの一つは、基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成するものである成膜装置において、
真空容器内に設けられ、基板を載置するための基板載置領域を備えた載置台と、
前記真空容器内を真空排気するための真空排気機構と、
前記基板載置領域に載置された基板に前記複数種類の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給部と、
基板に吸着された前記他の反応ガスの分子と反応する成分を含むプラズマを、薄膜の形成中において基板に供給して、基板上の薄膜の改質処理を行うためのプラズマ発生部と、
薄膜の形成途中にて、前記プラズマ発生部から薄膜に供給されるプラズマの強度を、それ以前に薄膜に供給されていたプラズマの強度とは異なる強度に変更するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の成膜装置の具体的な態様としては、以下の構成としても良い。
複数種類の反応ガスの一つは、基板に吸着された反応ガスの成分を酸化または窒化するためのガスであり、
前記薄膜は、金属またはシリコンの酸化膜、あるいは金属またはシリコンの窒化膜であること構成。前記薄膜の下地膜は前記金属またはシリコンを含む膜である構成。前記制御部は、前記プラズマ発生部に供給する高周波電力と前記真空容器内の真空度との少なくとも一方を調整することによってプラズマの強度を変更する構成。
【0009】
前記制御部は、薄膜の形成初期には、前記プラズマ発生部から薄膜に供給されるプラズマの強度を第1の強度に設定し、薄膜の形成初期よりも後の時点では、プラズマの強度を第1の強度よりも大きい第2の強度に設定する構成。前記制御部は、薄膜の形成初期には、前記プラズマ発生部から薄膜に供給されるプラズマの強度を第2の強度に設定し、薄膜の形成初期よりも後の時点では、プラズマの強度を第2の強度よりも小さい第1の強度に設定する構成。前記制御部は、プラズマの強度を前記第1の強度に設定した後、当該第1の強度よりも強い第3の強度に設定する構成。
【0010】
前記複数の反応ガス供給部及びプラズマ発生部は、前記真空容器の周方向に沿って互に離間して設けられることと、
前記載置台の基板載置領域が前記複数の反応ガス供給部から夫々供給される複数種類の反応ガスの供給領域を順番に通過するように、前記複数の反応ガス供給部及びプラズマ発生部に対して載置台を鉛直軸回りに回転させる回転機構を設けたことと、
基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成する反応ガスの反応領域、または当該反応領域よりも載置台の回転方向下流側領域にプラズマを発生させるようにプラズマ発生部が配置されていることと、
前記複数の反応ガス供給部から夫々反応ガスが供給される複数の領域の各々の間に、各領域を互に分離するために分離ガス供給部から分離ガスが供給される分離領域を設けた構成。
【0011】
本発明の成膜方法は、
真空雰囲気にて複数種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成し、複数種類の反応ガスのうちの一つは、基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成するものである成膜方法において、
真空容器内に設けられた載置台の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記真空容器内を真空排気する工程と、
次いで、前記基板載置領域に載置された基板に対して、複数種類の反応ガスを複数の反応ガス供給部から夫々順番に供給し、薄膜を形成する工程と、
基板に吸着された前記他の反応ガスの分子と反応する成分を含むプラズマを、薄膜の形成中においてプラズマ発生部から基板に供給して、基板上の薄膜の改質処理を行う工程と、
薄膜の形成途中にて、前記プラズマ発生部から薄膜に供給されるプラズマの強度を、それ以前に薄膜に供給されていたプラズマの強度とは異なる強度に変更する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記薄膜を形成する工程は、前記載置台の基板載置領域が前記複数の反応ガス供給部から夫々供給される複数種類の反応ガスの供給領域を順番に通過するように、前記真空容器の周方向に沿って互いに離間して設けられた前記反応ガス供給部に対して前記載置台を鉛直軸周りに回転させる工程であり、
前記改質処理を行う工程は、前記プラズマ発生部に対して前記載置台を回転させることにより、基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成する反応ガスの反応領域、または当該反応領域よりも載置台の回転方向下流側領域において基板にプラズマを照射する工程であり、
前記複数の反応ガス供給部から夫々反応ガスが供給される複数の領域を互いに分離するために、各領域間に設けられた分離領域に対して分離ガス供給部から分離ガスを供給する工程を行っても良い。
【0013】
また、本発明の別の成膜方法は、
真空雰囲気にて複数種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成し、複数種類の反応ガスのうちの一つは、基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成するものである成膜方法において、
真空容器内に設けられた載置台の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記真空容器内を真空排気する工程と、
次いで、前記他の反応ガスの分子あるいは基板上の一部または全部と反応する成分を含むプラズマを、プラズマ発生部から基板に供給すると共に、このプラズマ発生部に対して前記載置台を鉛直軸周りに複数回回転させる工程と、
続いて、前記載置台の基板載置領域が複数種類の反応ガスの供給領域及びプラズマの照射領域を順番に通過するように、前記真空容器の周方向に沿って互いに離間して設けられた複数の反応ガス供給部及び基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成する反応ガスの反応領域、または当該反応領域よりも載置台の回転方向下流側領域に設けられた前記プラズマ発生部に対して、前記載置台を鉛直軸周りに回転させると共に、複数の反応ガス供給部及び前記プラズマ発生部から夫々複数の反応ガス及びプラズマを基板に供給する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて複数種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、既述の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、真空雰囲気にて複数種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成するにあたり、薄膜の形成中において基板にプラズマを供給して基板上の薄膜の改質処理を行っているので、膜厚方向に亘って緻密な薄膜を得ることができる。そして薄膜の形成途中にて、プラズマの強度を変更しているため、例えば下地膜に対するプラズマの影響を制御することができ、あるいは薄膜の膜厚方向の緻密さの程度を揃えることができるなど、良好なデバイス構造を得ることに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面を示す図3のI−I’線縦断面図である。
【図2】前記成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】前記成膜装置の横断平面図である。
【図4】前記成膜装置の内部の一部の概略構成を示す斜視図である。
【図5】前記成膜装置の内部の一部の概略構成を示す縦断面図である。
【図6】前記成膜装置の内部の一部の概略構成を示す縦断面図である。
【図7】前記成膜装置に設けられた活性化ガスインジェクターの一例を示す縦断面図である。
【図8】前記成膜装置にて処理が行われる基板の一例を示す断面図である。
【図9】前記成膜装置にて行われる処理を示す概略図である。
【図10】プラズマの強度を示す概略図である。
【図11】前記成膜装置における処理の流れを示す模式図である。
【図12】前記成膜装置における処理の流れを示す模式図である。
【図13】前記成膜装置における処理の流れを示す模式図である。
【図14】前記成膜装置における改質ステップを示す模式図である。
【図15】前記成膜装置におけるガス流れを示す模式図である。
【図16】前記成膜装置にて処理された基板を示す模式図である。
【図17】前記成膜装置にて行われる他の処理を示す概略図である。
【図18】前記他の処理を示す模式図である。
【図19】本発明の他の例を説明するための模式図である。
【図20】前記他の例において基板に行われる処理を示す模式図である。
【図21】前記他の例において基板に行われる処理を示す模式図である。
【図22】前記他の例において基板に行われる処理を示す模式図である。
【図23】前記他の例において基板に行われる処理を示す概略図である。
【図24】本発明の他の例を説明するための模式図である。
【図25】前記他の例における処理を示す概略図である。
【図26】前記他の例の処理を示す模式図である。
【図27】前記他の例の処理を示す模式図である。
【図28】前記他の例の処理を示す模式図である。
【図29】本発明の他の例の装置を模式的に示す縦断面図である。
【図30】本発明の実施例にて得られる特性を示す特性図である。
【図31】本発明の実施例にて得られる特性を示す特性図である。
【図32】本発明の実施例にて得られる特性を示す特性図である。
【図33】本発明の実施例にて得られる特性を示す特性図である。
【図34】従来の手法により得られる薄膜を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態の一例である成膜装置について、図1〜図7を参照して説明する。この成膜装置は、図1(図3のI−I’線に沿った断面図)に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する載置台である回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から着脱できるように構成されている。天板11は、真空容器1内が減圧されることにより、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリング13を介して容器本体12側に引きつけられて気密状態を維持しているが、容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0018】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる回転機構である駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0019】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように、回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。このウエハWは、例えば直径寸法が300mmのシリコン(Si)から構成されており、図8に示すように、表面にはピラー状またはライン状の凸部90が複数箇所に形成されている。図8中dは、凸部90の幅寸法である。尚、図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。
【0020】
凹部24は、直径がウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウエハWの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウエハWを凹部24に落とし込むと、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うことになる。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。凹部24は、ウエハWを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位である。
【0021】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と、2本の分離ガスノズル41、42と、プラズマ発生部である活性化ガスインジェクター220と、が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。この例では、後述の搬送口15から見て時計回り(回転テーブル2の回転方向)に活性化ガスインジェクター220、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の反応ガスノズル32がこの順番で配列されており、これらの活性化ガスインジェクター220及びノズル31、32、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から回転テーブル2の回転中心に向かってウエハWに対向して水平に伸びるように各々取り付けられている。各ノズル31、32、41、42の基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは、真空容器1の外周壁を貫通している。これら反応ガスノズル31、32は、夫々第1の反応ガス供給部、第2の反応ガス供給部をなし、分離ガスノズル41、42は、分離ガス供給部をなしている。活性化ガスインジェクター220については、後で詳述する。
【0022】
第1の反応ガスノズル31は、流量調整バルブなどを介して、Si(シリコン)を含む第1の反応ガス例えばジイソプロピルアミノシランガスまたはBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されている。第2の反応ガスノズル32は、同様に流量調整バルブなどを介して、第2の反応ガス例えばO3(オゾン)ガスとO2(酸素)ガスとの混合ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されている。分離ガスノズル41、42は夫々流量調整バルブなどを介して分離ガスであるN2(窒素)ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されている。尚、以下においては、便宜上第2の反応ガスをO3ガスとして説明する。
【0023】
反応ガスノズル31、32の下面側には、これらノズル31、32の長さ方向に沿って複数箇所にガス吐出孔33が例えば等間隔に形成されている。反応ガスノズル31、32の下方領域は、夫々Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1及びウエハWに吸着したSi含有ガスとO3ガスとを反応させるための第2の処理領域P2となる。
分離ガスノズル41、42の下面側には、ガス吐出孔33が例えば等間隔に形成されている。これら分離ガスノズル41、42は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、図2及び図3に示すように、概略扇形の凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4に形成された溝部43内に収められている。
【0024】
分離ガスノズル41、42における回転テーブル2の周方向両側には、各反応ガス同士の混合を阻止するために、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在している。即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側から第2の反応ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側から第1の反応ガスが侵入することを阻止する。
【0025】
一方天板11の下面には、図5、図6に示すように、凸状部4における前記回転中心側の部位と連続して形成されると共に、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。また、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図5では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。
【0026】
凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、図2及び図5に示されているように、各反応ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲して屈曲部46を形成している。屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
【0027】
容器本体12の内周壁は、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部分における既述の第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2に連通する領域を夫々第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2と呼ぶことにすると、これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図1及び図3に示すように、夫々第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示すように各々排気管63を介して真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。なお図1中、65は圧力調整手段である。
【0028】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1及び図5に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWをプロセスレシピで決められた温度、例えば300℃に加熱するようになっている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画して回転テーブル2の下方領域へのガスの侵入を抑えるために、ヒータユニット7を全周に亘って囲むようにリング状のカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び当該外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。この外側部材71bは、既述の排気口61、62の上方側においてはこれら排気口61、62と回転テーブル2の上方領域とを連通させるために例えば円弧状に切りかかれて排気領域E1、E2をなし、屈曲部46の下方側においては上端面が当該屈曲部46に近接するように配置されている。
【0029】
真空容器1の底面部14は、コア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。この突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっており、前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。このヒータユニット7と回転テーブル2との間には、当該ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、既述の外側部材71bの内周壁から突出部12aの上端部との間を周方向に亘って接続する例えば石英からなる覆い部材7aが設けられている。
【0030】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出され、回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(Si含有ガス及びO3ガス)が混合することを防止している。
【0031】
更に真空容器1の側壁には図2、図3に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0032】
次に、既述の活性化ガスインジェクター220について詳述する。活性化ガスインジェクター220は、ウエハWが載置される基板載置領域の上方側における回転テーブル2の中心側から回転テーブル2の外周側に亘ってプラズマを発生させ、当該プラズマによりSi含有ガスとO3ガスとの反応によってウエハW上に成膜された反応生成物である酸化シリコン膜(SiO2膜)を改質するためのものである。この活性化ガスインジェクター220は、図4及び図7に示すように、プラズマ発生用の処理ガスを真空容器1内に供給するための例えば石英からなる処理ガス供給部をなすガス導入ノズル34と、このガス導入ノズル34における回転テーブル2の回転方向下流側に設けられ、当該ガス導入ノズル34から導入される処理ガスをプラズマ化するための各々石英からなる互いに平行な1対のシース管35a、35bと、を備えている。ガス導入ノズル34及びシース管35a、35aは、回転テーブル2上のウエハWと夫々平行になるように、また回転テーブル2の回転方向に対して直交するように、真空容器1の外周面に設けられた基端部80aから回転テーブル2の中心部側に向かって当該真空容器1内に夫々気密に挿入されている。図7中37は、シース管35a、35bの基端側に接続された保護管であり、341は、ガス導入ノズル34の長さ方向に沿って複数箇所に設けられたガス孔である。
【0033】
既述の図3に示すように、ガス導入ノズル34には、プラズマ発生用の処理ガスを供給するプラズマガス導入路251の一端側が接続されており、このプラズマガス導入路251の他端側は、2本に分岐して夫々バルブ252及び流量調整部253を介してAr(アルゴン)ガスの供給源254及びO2ガスの供給源255に夫々接続されている。
【0034】
シース管35a、35bは、例えば石英、アルミナ(酸化アルミニウム)あるいはイットリア(酸化イットリウム、Y2O3)により構成されており、図7に示すように、内部に例えばニッケル合金やチタンなどからなる電極36a、36bが各々貫挿されて平行電極をなしている。これら電極36a、36bの下端面と回転テーブル2上のウエハWの表面との間の離間距離kは、例えば7mmとなっている。これらの電極36a、36bには、図3に示すように、整合器225を介して例えば13.56MHz、例えば500W以下の高周波電力を供給するための高周波電源224が接続されており、後述の制御部100により電極36a、36bに供給する電力量が調整される。尚、図7以外では、シース管35a、35bを簡略化して示している。
【0035】
図7中221は、ガス導入ノズル34及びシース管35a、35bが配置された領域を上方側及び側面(長辺方向及び短辺方向における両側面)側から覆うように配置されたカバー体であり、このカバー体221は絶縁体例えば石英により構成されている。また、図7中222は、活性化ガスインジェクター220の長さ方向に沿って、カバー体221の両側面の下端部から外側に向かってフランジ状に水平に伸び出す気流規制面である。この気流規制面222は、回転テーブル2の上流側から通流するO3ガスやN2ガスのカバー体221の内部領域への侵入を抑えるために、当該気流規制面222の下端面と回転テーブル2の上面との間の隙間寸法tが小さくなるように、また回転テーブル2の中心部側からガス流の速くなる回転テーブル2の外周側に向かうほど、その幅寸法uが広くなるように形成されている。図6中223は、カバー体221を支持するために当該カバー体221と真空容器1の天板11との間に複数箇所に設けられた支持部材である。
【0036】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には後述の成膜ステップ及び改質ステップからなる成膜−改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムによって行われるこれら成膜ステップ及び改質ステップについて簡単に説明すると、成膜ステップではSi含有ガスとO3ガスとにより反応生成物である酸化シリコン膜が形成され、改質ステップでは当該反応生成物の改質(緻密化)が行われる。そして、反応生成物が複数層に亘って積層されるように、これら成膜ステップ及び改質ステップが例えば交互に繰り返される。この時、後述するように、複数回行われる改質ステップにおいて、薄膜を膜厚方向に亘って均一に改質するために、またウエハWに対してはプラズマの到達(透過)を抑えて当該ウエハWを構成するシリコンの酸化ができるだけ起こらないように、プラズマの強度を調整(変更)している。即ち、図9に示すように、反応生成物の積層膜厚が薄い時(成膜−改質処理を開始した初期)にはプラズマの強度をゼロにすると共に、反応生成物の積層膜厚が増加する程(成膜ステップの回数が増える程)、ウエハWに供給するプラズマの強度を段階的に大きくしている。
【0037】
ここで、「プラズマの強度」とは、ウエハWから見た時の(ウエハWが曝される)プラズマの強度であり、後述の実施例に示すように、電極36a、36bに供給する電力量、真空容器1内の圧力、更にはプラズマの照射時間やウエハWと電極36a、36bとの間の離間距離kなどによって変化する。そこで、この実施の形態では、ウエハWから見たプラズマの強度を簡単に表すために、図10に示すように、プラズマをシリコンウエハWに180秒間連続して照射した時に、当該ウエハWの表面(シリコン層)が酸化される膜厚jを指標として用いている。即ち、例えばウエハWにある条件でプラズマを180秒間照射した時に、ウエハWの表層に酸化膜が10Å生成した場合には、「酸化膜厚jが10Åに相当するプラズマの強度」として、またウエハWの表層に酸化膜が20Å生成した場合には、「酸化膜厚jが20Åに相当するプラズマの強度」としている。
【0038】
そして、成膜−改質処理を行っている間においては、真空容器1内の圧力などのパラメータをある値に固定すると共に、電極36a、36bに供給する電力量を調整することにより、プラズマの強度を調整している。具体的には、電極36a、36bとウエハWとの間の離間距離kを既述のように設定すると共に、真空容器1内の圧力を266Pa(2Torr)とした場合には、直径寸法が300mmのウエハWにおいては、「酸化膜厚jが10Åに相当するプラズマの強度」とは、電極36a、36bに供給する電力量が30Wであり、「酸化膜厚jが20Åに相当するプラズマの強度」とは、電極36a、36bに供給する電力量が65Wである。この酸化膜厚jと電力量との対応関係は、真空容器1内の圧力などの処理パラメータなどによって種々変化するので、例えば予めダミーウエハを用いて実験を行うことにより求められる。
前記プログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部101から制御部100内にインストールされる。
【0039】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。先ず、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にすると共に、回転テーブル2を例えば120rpmで時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば300℃に加熱する。次いで、反応ガスノズル31、32から夫々Si含有ガス及びO3ガスを吐出すると共に、ガス導入ノズル34からArガス及びO2ガスを夫々9.5slm、0.5slmで吐出する。また、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN2ガスを所定の流量で吐出し、分離カス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。そして、圧力調整手段65により真空容器1内を予め設定した処理圧力例えば266Pa(2Torr)に調整する。
【0040】
回転テーブル2の回転により、ウエハWの表面には第1の処理領域P1においてSi含有ガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したSi含有ガスが酸化され、薄膜成分である酸化シリコン膜の分子層が1層あるいは複数層形成されて反応生成物の成膜ステップ(各反応ガスの供給サイクル)が行われる。この時、電極36a、36bに高周波電力を供給していないので、プラズマの強度はゼロ(第1の強度)となる。そのため、酸化シリコン膜中には、例えばSi含有ガス中に含まれる残留基のため、水分(OH基)や有機物などの不純物が含まれている場合がある。こうして図9及び図11に示すように回転テーブル2を回転させて反応生成物の膜厚が例えば10Åとなるまで成膜ステップを続けた後、既述の酸化膜厚jが15Åに相当するプラズマの強度となるように、電極36a、36b間に45Wの電力(第2の強度)を供給する。尚、図11は、ウエハW及び当該ウエハW上に積層される反応生成物を模式的に示している。後述の図12及び図13についても同様である。
【0041】
活性化ガスインジェクター220において、ガス導入ノズル34から各ガス孔341を介して夫々のシース管35a、35bに向かって吐出されたアルゴンガス及びO2ガスは、シース管35a、35b間の領域に供給される高周波によって活性化されて、例えばイオンやラジカルなどのプラズマが生成する。このプラズマ(活性種)は、活性化ガスインジェクター220の下方側において回転テーブル2と共に移動(回転)するウエハWに向かって下降していく。そして、この活性化ガスインジェクター220の下方領域にウエハWが到達すると、前記プラズマにより酸化シリコン膜の改質ステップが行われることになる。具体的には、図14に模式的に示すように、例えばプラズマがウエハWの表面に衝突することにより、例えば酸化シリコン膜から前記不純物が放出されたり、酸化シリコン膜内の元素が再配列されて酸化シリコン膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。
【0042】
この時、プラズマ強度を既述のように設定していることから、図12の左側に模式的に示すように、プラズマは、上層側の反応生成物からウエハWの表層(シリコン層)に近接する位置までに亘って進入(透過)する。そのため、ウエハW上に積層された反応生成物については改質が膜厚方向に亘って行われ、即ちプラズマの強度をゼロに設定して成膜した既述の反応生成物について改質が行われ、一方ウエハWの表面については酸化が抑えられる。こうして反応生成物の膜厚が例えば20Åとなるまで、回転テーブル2を回転させることによって成膜ステップと改質ステップとからなる成膜−改質処理を例えば複数回繰り返す。成膜ステップを繰り返すことにより、反応生成物の膜厚が次第に増えて行くので、各々の改質ステップにおいてプラズマの到達する深さ位置は、次第にウエハWの表面から上方側に移動していく。尚、図12において、上下方向に伸びる矢印はプラズマの強度を模式的に示している。後述の図13についても同様である。
【0043】
ここで、真空容器1内には、活性化ガスインジェクター220と第2の反応ガスノズル32との間に分離領域Dを設けていないので、回転テーブル2の回転に引き連れられて、活性化ガスインジェクター220に向かって上流側からO3ガスやN2ガスが通流してくる。しかし、カバー体221を設けているので、活性化ガスインジェクター220に向かって上流側から流れてくるガスは、図7に示すように、カバー体221の上方領域を介して下流側の排気口62に通流していく。尚、改質処理により酸化シリコン膜から排出された不純物は、その後ガス化してO2ガスやN2ガスなどと共に排気口62に向かって排気されていく。
【0044】
また、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給し、また中心部領域Cにおいても分離ガスであるN2ガスを供給しているので、図15に示すように、Si含有ガスとO3ガス及び処理ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気されることとなる。なお、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域Eに流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばSi含有ガスがO3ガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
【0045】
次いで、既述の酸化膜厚jが37Åに相当するプラズマの強度となるように、電極36a、36b間に150Wの電力を供給する。この場合においても、図13に示すように、プラズマがウエハWの表層に近接する位置まで到達し、反応生成物の積層体に対して膜厚方向に亘って改質が行われると共に、ウエハWの表面の酸化が抑えられる。続いて更に反応生成物の膜厚が100Åとなるまで成膜−改質処理を続けると、図16に示すように、ウエハWの表面(シリコン層)の酸化が抑えられた状態で、当該ウエハWの表面に形成された凸部90の形状に倣うように、膜厚方向に亘って緻密な薄膜が成膜される。従って、凸部90について、薄膜の成膜(プラズマの照射)による幅寸法dの減少が抑えられる。
【0046】
上述の実施の形態によれば、Si含有ガスとO3ガスとを用いてウエハWに反応生成物を形成する成膜ステップと、プラズマにより前記反応生成物を改質する改質ステップと、からなる成膜−改質処理を複数回行うと共に、各々の改質ステップにおいて、反応生成物の積層膜厚が薄い時(成膜−改質処理を開始した初期)にはプラズマの強度をゼロにすると共に、反応生成物の積層膜厚が増加する程(成膜ステップの回数が増える程)、ウエハWに供給するプラズマの強度を段階的に大きくしている。そのため、プラズマによるウエハWの表面の酸化を抑えながら、膜厚方向に亘って緻密な薄膜を得ることができる。従って、既述の図16に示したように、良好なデバイス構造を得ることが出来る。
また、真空容器1の内部において、回転テーブル2の周方向においてウエハWが各処理領域P1、P2を通過する経路の途中において成膜処理に干渉しないように改質処理を行っているので、例えば薄膜の成膜が完了した後で改質処理を行うよりも短時間で改質処理を行うことができる。
【0047】
既述の例では、プラズマの強度を段階的に大きくしたが、図17及び図18に示すように、成膜ステップの回数が多くなる程、即ち回転テーブル2が例えば1回転する度に、プラズマの強度を連続的に大きくしても良い。この場合においても、成膜−改質処理を開始した初期(反応生成物が10Åまで)においては、プラズマの強度はゼロに設定される。このようにプラズマの強度を調整することにより、各々の改質ステップにおいて、プラズマがウエハWの表層に近接する位置に到達するので、膜厚方向に亘って改質が良好に行われる。尚、図18は、ウエハW及び反応生成物を模式的に示しており、プラズマの強度については上下方向に伸びる矢印によって表している。
ここで、成膜−改質処理を開始した初期において、プラズマの強度を例えば既述の酸化膜厚jが2Åに相当するように、電極36a、36b間の電力を5W程度に設定しても良いが、このように弱い出力のプラズマを安定的に保つことが困難であることから、既述のようにゼロにすることが好ましい。
【0048】
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の第2の実施の形態について、既述の酸化シリコン膜をゲート酸化膜として用いる場合について説明する。このゲート酸化膜では、酸化シリコン膜と下層側のシリコン層(ウエハW)との間における界面の平坦性の高いことが特に重要であり、一方通常のCVD(Chemical Vapor Deposition)やALD(Atomic Layer Deposition)またはMLD(Multi Layer Deposition)により成膜した酸化シリコン膜は、図19に示すように、当該平坦性が熱酸化膜などに比べて悪い場合がある。そこで、シリコンからなる下層膜と、当該下層膜の上層側の酸化シリコン膜との間の界面について良好な平坦性の得られる成膜方法について、以下に説明する。
【0049】
具体的には、回転テーブル2を回転させて成膜ステップと改質ステップとを交互に行うにあたり、図20及び図23に示すように、反応生成物の膜厚が30Åに至るまでは、酸化膜厚jが53Åに相当する第2の強度で(電極36a、36bに供給する電力を400Wに設定して)改質ステップを行う。このプラズマは、反応生成物を突き抜けて下層側のウエハWに到達し、当該ウエハWの表面を酸化する。
【0050】
そのため、ウエハWのシリコンからなる下地膜91上には、図21に示すように、当該下地膜91のプラズマ酸化によって生成した第1の酸化シリコン膜92と、成膜−改質処理により形成された第2の酸化シリコン膜93と、が下側からこの順番で積層されることになる。即ち、見かけ上、ウエハW(下地膜91)には、これら酸化シリコン膜92、93からなる酸化膜94が形成されていると言える。一般に、プラズマ酸化により形成された酸化シリコン膜と下地の界面の平坦性は熱酸化膜よりも良いため、この界面(下地膜91と酸化膜94との間の界面)の平坦性も良好となる。また、既述のように各々の成膜ステップにおいて反応生成物が1層または複数層の分子層ずつ積層されていくことから、ウエハWの面内に亘って反応生成物の膜厚が揃うので、当該反応生成物を介してウエハWに到達するプラズマの深さについても面内に亘って揃うことになる。従って、下地膜91と第1の酸化シリコン膜92との間の界面は、面内に亘って平坦になる。
【0051】
その後、図22に示すように、反応生成物の膜厚が100Åに到達するまで、成膜ステップと共に、酸化膜厚jが37Åに相当する第1の強度で改質ステップを行うと、下地膜91との間の界面が平滑で且つ膜厚方向に亘って緻密な薄膜が得られる。ここで、プラズマの強度を酸化膜厚jが53Åに相当する強度から酸化膜厚jが37Åに相当する強度まで小さくするのは、下地酸化膜厚の増膜をその時点で確実にストップし、酸化膜厚の制御性を向上するためである。
また、既述の例では成膜初期においてプラズマの強度を大きくしたが、ウエハWの表面を酸化すると共に緻密な薄膜を形成するにあたって、以下のようにしても良い。具体的には、各反応ガスの供給を開始する前に、真空雰囲気に保たれた真空容器1内においてウエハWを載置した回転テーブル2を回転させると共に、活性化ガスインジェクター220においてプラズマを発生させる。薄膜の形成されていないウエハWの表面にプラズマが照射されるので、当該表面がプラズマにより速やかに酸化される。そして、回転テーブル2を複数回例えば2回以上回転させた後、各反応ガス及び分離ガスを真空容器1内に供給して、薄膜の成膜と改質とを開始する。このような場合であっても、ウエハWの表面には酸化膜94が形成されると共に、緻密な薄膜が得られる。この時、プラズマの強度については、成膜を開始した後、成膜を開始する前よりも弱くしても良いし、あるいは成膜開始前後において揃えても良い。
従って、以上の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、プラズマの強度を調整することにより、薄膜の下地層への影響を制御していると言える。
【0052】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図24は、既述の第2の実施の形態において改質ステップを複数回行うにあたり、多層に積層された反応生成物を模式的に示したものである。図24には、各々の反応生成物に対して照射されたプラズマについて模式的に矢印で示している。また、各々のプラズマは、膜厚方向に亘って例えば各々複数層の反応生成物を透過(照射)しているものとする。各々のプラズマを示す矢印については、下層側の反応生成物に照射されたプラズマに対して、上層側に照射されたプラズマを模式的に順次右側にずらして描画している。
【0053】
ここで、ウエハWの表層から30Å〜100Åまでの反応生成物について、図24から分かるように、下層側では各々の反応生成物の層に対して夫々同じ回数の改質ステップが行われている(同じ量のプラズマが照射されている)が、上層側に向かうにつれて改質ステップの回数が少なくなり、多層に積層された反応生成物の層のうち最も上層側の反応生成物については、改質ステップが一度しか行われていない。そのため、30Å〜100Åまでの反応生成物について、上層側の反応生成物では、改質が不十分となっている場合があり、一方下層側の反応生成物(ウエハWの表層から30Å付近の反応生成物)については、プラズマの照射量の多すぎる場合がある。また、ウエハWの表層から30Åまでの反応生成物については、既述のようにウエハWの表面を酸化するために酸化膜厚jが53Åに相当する強度でプラズマを照射しているので、既述の30Å〜100Åまでの反応生成物よりもプラズマの照射量が多くなっている場合がある。
【0054】
そこで、膜厚方向に亘ってプラズマの照射量(反応生成物の改質の度合い)が揃うように、プラズマの強度を調整している。具体的には、図25及び図26に示すように、薄膜の上層側である80Å〜100Åの反応生成物に対しては、当該上層側におけるプラズマの強度を下層側より強くする(改質の度合いを揃える)ために、既述の図23に示した例よりも強い第3の強度(酸化膜厚jが53Åに相当する強度)でプラズマを照射している。また、30Å〜80Åまでの反応生成物については、下層側(ウエハWの表層から30Åまで)の反応生成物に対して照射されるプラズマの強度を抑えるために、酸化膜厚jが15Åに相当する強度から酸化膜厚jが37Åに相当する強度まで直線的に大きくしている。このようにプラズマの強度を調整することにより、膜厚方向に亘って改質の度合いが揃うので、均一な膜質の薄膜を得ることができる。
【0055】
この時、図27に示すように、ウエハWの表層から0〜10Åについては下地膜91を酸化するために酸化膜厚jが53Åに相当する強度でプラズマを照射し、10Å〜100Åについては酸化膜厚jが15Åに相当する強度から酸化膜厚jが53Åに相当する強度までプラズマの強度を曲線的に大きくしても良い。
また、既述の第1の実施の形態においても、この第3の実施の形態のように膜厚方向に亘って膜質を均質化しても良く、具体的には図28に示すように、ウエハWの表層から0〜40Åまでは酸化膜厚jが15Åに相当する強度から酸化膜厚jが20Åに相当する強度まで曲線的にプラズマの強度を大きくして、40Å〜70Åについてはプラズマの強度をゼロにする。そして、70Å〜100Åについては酸化膜厚jが30Åに相当する強度(電極36a、36bに供給する電力:110W)から酸化膜厚jが53Åに相当する強度まで曲線的にプラズマの強度を大きくしても良い。このようにプラズマの強度を調整することにより、薄膜の下層のウエハWの酸化を抑えながら、膜厚方向に亘って膜質が均質な薄膜を得ることができる。この場合においても、成膜を開始した初期(例えば膜厚が10Åに達するまで)は、プラズマの強度をゼロにしても良い。
【0056】
即ち、本発明では、デバイスの求められる特性に応じて、薄膜の膜厚方向におけるプラズマの強度を調整していると言える。そして、プラズマの強度を調整することにより、既述のように膜厚方向に亘って膜質を均質化しても良いし、あるいは不均一にしても良い。例えば酸化シリコン膜をゲート酸化膜として用いる場合には、既述のように下地膜91と酸化膜94との間の界面を平滑にしてチャンネルにおけるキャリアの移動度(mobility)を良くすると共に、当該酸化膜94の内部領域であるバルクについては成膜される各層が、改質に必要十分なプラズマ強度及び時間を得られるようにすることによってリーク電流が少なく、信頼性の高い膜質とする。また、酸化膜94の上層側については、プラズマの強度を更に高く設定することによって密度を高くしてガスバリア性を持たせるなど、デバイスに応じて膜厚方向における膜質を調整しても良い。
【0057】
既述の各例では、成膜ステップと改質ステップとを交互に行ったが、即ち回転テーブル2を回転させながら、Si含有ガス及びO3ガスの供給とプラズマの照射とを行ったが、複数回の成膜ステップ毎に改質ステップを行っても良い。この場合には、成膜ステップを連続して行っている間は電極36a、36bへの高周波電力の供給を停止して、改質ステップを行う時には電極36a、36bへ高周波電力を供給する。また、改質ステップを行う時には、例えばSi含有ガスとO3ガスとの供給を停止して、回転テーブル2を複数回回転させることによって、いわば改質ステップを連続して複数回行っても良い。
【0058】
既述の例では、プラズマを発生させるにあたって2本の電極36a、36bを用いたが、長さ方向の途中部位において屈曲して概略U字型をなす電極を用いて、当該電極の屈曲部分を回転テーブル2の中心側に配置すると共に、電極の両端側を真空容器1の側壁から外部に気密に夫々貫通させ、この電極に高周波を供給することにより、ICP(誘導結合型)のプラズマを発生させても良い。更に、プラズマ源としては、マイクロ波を用いた表面波(SWP)プラズマやECRプラズマを用いても良い。また、第2の反応ガスノズル32を設けずに、活性化ガスインジェクター220から供給される処理ガス(アルゴンガス及びO2ガス)のプラズマにより、ウエハW上のSi含有ガスの酸化及び反応生成物の改質を行っても良い。更に、既述の各例では主にプラズマの強度を変えるにあたって電極36a、36bに供給する電力量を調整したが、後述の実施例に示すように、この電力量に代えて、あるいは電力量と共に、真空容器1内の圧力を調整しても良い。また、第2の反応ガスとしてO2ガスまたはO3ガスを用い、プラズマ発生用の処理ガスとしてはアルゴンガスと共にO3ガスを用いても良い。
【0059】
また、既述の例では、Si含有ガスとO3ガスとを用いて酸化シリコン膜を成膜する例について説明したが、例えば第1の反応ガス及び第2の反応ガスとして夫々Si含有ガスとアンモニア(NH3)ガスとを用いて窒化シリコン膜を成膜しても良い。この場合には、プラズマを発生させるための処理ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガスまたはアンモニアガスなどが用いられ、既述の各例と同様にウエハWの窒化の有無が制御される。即ち、成膜処理を開始した初期にプラズマの強度を小さくあるいはゼロにして、その後プラズマの強度を大きくすると、ウエハWの窒化が抑えられると共に膜厚方向に亘って緻密な薄膜が得られる。一方、成膜開始初期において、プラズマがウエハWの表面に到達するようにプラズマの強度を大きくすると、ウエハWの表層が窒化されて、窒化シリコン膜とウエハWとの間の界面について良好な平坦性が得られる。
更に、例えば第1の反応ガス及び第2の反応ガスとして夫々TiCl2(塩化チタン)ガスとNH3(アンモニア)ガスとを用いて窒化チタン(TiN)膜を成膜しても良い。この場合には、ウエハWとしてはチタンからなる基板が用いられ、プラズマを発生させるためのプラズマ生成ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガスなどが用いられる。
【0060】
更に、成膜ステップと改質ステップとを行う装置としては、複数枚例えば5枚のウエハWに対して連続して処理を行ういわばミニバッチ式の図1に示した装置以外にも、例えば枚葉式の装置であっても良い。このような枚葉式の装置について簡単に説明すると、この装置の真空容器1内には、図29に示すように、ウエハWを載置する載置台2と、この載置台2に対向するように上方に配置されたガスシャワーヘッド200とが設けられ、当該ガスシャワーヘッド200の下面には多数のガス吐出孔201が形成されている。このガスシャワーヘッド200の上面には、第1の反応ガス、第2の反応ガス、分離ガス(パージガス)及びプラズマ発生用の処理ガスを夫々供給するためのガス供給路202、203、204、205が接続されており、これらガスが互いに混合せずにガス吐出孔201から真空容器1内に供給されるように、これら各々のガスについて専用のガス流路(図示せず)がガスシャワーヘッド200に夫々設けられている。そして、ガスシャワーヘッド200には高周波電源206が接続されており、平行平板型のプラズマ処理装置をなしている。尚、図29中210はウエハWの搬送口、211は排気口、212は絶縁部材である。
【0061】
この枚葉式の装置において成膜ステップを行う時には、第1の反応ガス及び第2の反応ガスが交互に真空容器1内に供給され、これらガスを切り替える時には真空容器1内へのパージガスの導入と真空容器1内の真空排気とが行われる。また、改質ステップを行う時には、パージガスの供給により真空容器1内のガスを置換して真空排気した後、真空容器1内に処理ガスを供給し、載置台2とガスシャワーヘッド200との間に高周波を供給する。こうして真空容器1内の雰囲気を切り替える時にはパージガスが供給されて、成膜ステップと改質ステップとが例えば交互に行われることになる。
【実施例】
【0062】
次に、改質ステップにおいて、プラズマの強度を変えることによる影響を確かめるために行った実験について説明する。
(実施例1)
先ず、真空容器1内の圧力及び高周波電力によってプラズマの強度が変化するかどうか確認した。実験には、バッチ型の実験装置を用いて、真空容器内にウエハWを載置すると共に、このウエハWに対向するようにICP型のプラズマ源(いずれも図示せず)を配置して、当該ウエハWにプラズマを180秒間照射した時に生成した酸化膜の膜厚jを確認した。そして、高周波電力を例えば2000Wに固定して真空容器内の圧力を種々変化させた時の酸化膜厚jと、真空容器内の圧力を266Pa(2Torr)に固定して高周波電力を種々変化させた時の酸化膜厚jと、を夫々評価した。これらの結果を図30及び図31に示す。尚、この時のウエハWとプラズマ源との間の離間距離は、各々80mmとした。
これらの図30及び図31から、真空容器内の圧力及び高周波電力のいずれを調整することによっても、プラズマの強度の変化することが分かった。
【0063】
(実施例2)
改質ステップを行わずにウエハW上に薄膜を形成した場合に対して、成膜ステップと共に改質ステップを行った場合について、薄膜の収縮率がどの程度となるかを計算した。この時、改質ステップを行うにあたり、プラズマの強度については種々変えて実験を行った。
その結果、図32に示すように、プラズマの強度と膜厚の収縮率とがほぼ比例関係にあることが分かった。そのため、既述の第3の実施の形態で説明したように、膜厚方向に亘って均質な膜質を形成するためには、当該膜厚方向に亘ってプラズマの強度を調整すれば良いことが分かる。
【0064】
(実施例3)
続いて、O2ガスを含むガスのプラズマによってシリコンからなるウエハWが酸化されるか否か実験を行った。この実験には、表面が清浄な(シリコン層が露出した)ベアシリコンウエハと、表面に膜厚が100Åの熱酸化膜が形成されたウエハとを用いた。そして、プラズマの照射時間を種々変えて実験を行った。尚、この実験は、既述の成膜装置を用いて、回転テーブル2を回転させながらプラズマを照射した。
その結果、ベアシリコンウエハ上には、プラズマを10分照射することにより、2.8nmの酸化膜が形成されていた。そのため、既述の各実施の形態で説明したように、膜厚方向においてプラズマの強度を調整することにより、ウエハWの表層への影響(酸化膜の有無)を調整できることが分かった。
【0065】
また、熱酸化膜では、プラズマを10分照射しても、酸化膜は0.6nmしか生成していなかった。プラズマの照射により生成する酸化膜は、酸化膜の堆積ではなく、シリコン層の酸化により成長する。そのため、シリコン層の上層に熱酸化膜が形成されていると、当該シリコン層に酸化種(プラズマ)が到達しにくくなるので、ベアシリコンよりも酸化膜の増加量が少なくなっていたと考えられる。また、この実験から、100Åもの厚さの酸化膜が形成されていても、プラズマが当該酸化膜を透過できることが分かる。従って、多層に積層された反応生成物について、膜厚方向に亘ってプラズマによる改質ができ、また反応生成物の層を介して下層のウエハWを酸化できることが分かる。
【符号の説明】
【0066】
W ウエハ
1 真空容器
2 回転テーブル
4 凸状部
31 第1の反応ガスノズル
32 第2の反応ガスノズル
34 ガス導入ノズル
35a、35b シース管
41、42 分離ガスノズル
220 活性化ガスインジェクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気にて複数種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成し、複数種類の反応ガスのうちの一つは、基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成するものである成膜装置において、
真空容器内に設けられ、基板を載置するための基板載置領域を備えた載置台と、
前記真空容器内を真空排気するための真空排気機構と、
前記基板載置領域に載置された基板に前記複数種類の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給部と、
基板に吸着された前記他の反応ガスの分子と反応する成分を含むプラズマを、薄膜の形成中において基板に供給して、基板上の薄膜の改質処理を行うためのプラズマ発生部と、
薄膜の形成途中にて、前記プラズマ発生部から薄膜に供給されるプラズマの強度を、それ以前に薄膜に供給されていたプラズマの強度とは異なる強度に変更するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
複数種類の反応ガスの一つは、基板に吸着された反応ガスの成分を酸化または窒化するためのガスであり、
前記薄膜は、金属またはシリコンの酸化膜、あるいは金属またはシリコンの窒化膜であることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記薄膜の下地膜は前記金属またはシリコンを含む膜であることを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記プラズマ発生部に供給する高周波電力と前記真空容器内の真空度との少なくとも一方を調整することによってプラズマの強度を変更することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記制御部は、薄膜の形成初期には、前記プラズマ発生部から薄膜に供給されるプラズマの強度を第1の強度に設定し、薄膜の形成初期よりも後の時点では、プラズマの強度を第1の強度よりも大きい第2の強度に設定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記制御部は、薄膜の形成初期には、前記プラズマ発生部から薄膜に供給されるプラズマの強度を第2の強度に設定し、薄膜の形成初期よりも後の時点では、プラズマの強度を第2の強度よりも小さい第1の強度に設定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項7】
前記制御部は、プラズマの強度を前記第1の強度に設定した後、当該第1の強度よりも強い第3の強度に設定することを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記複数の反応ガス供給部及びプラズマ発生部は、前記真空容器の周方向に沿って互に離間して設けられることと、
前記載置台の基板載置領域が前記複数の反応ガス供給部から夫々供給される複数種類の反応ガスの供給領域を順番に通過するように、前記複数の反応ガス供給部及びプラズマ発生部に対して載置台を鉛直軸回りに回転させる回転機構を設けたことと、
基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成する反応ガスの反応領域、または当該反応領域よりも載置台の回転方向下流側領域にプラズマを発生させるようにプラズマ発生部が配置されていることと、
前記複数の反応ガス供給部から夫々反応ガスが供給される複数の領域の各々の間に、各領域を互に分離するために分離ガス供給部から分離ガスが供給される分離領域を設けたことと、を備えたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項9】
真空雰囲気にて複数種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成し、複数種類の反応ガスのうちの一つは、基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成するものである成膜方法において、
真空容器内に設けられた載置台の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記真空容器内を真空排気する工程と、
次いで、前記基板載置領域に載置された基板に対して、複数種類の反応ガスを複数の反応ガス供給部から夫々順番に供給し、薄膜を形成する工程と、
基板に吸着された前記他の反応ガスの分子と反応する成分を含むプラズマを、薄膜の形成中においてプラズマ発生部から基板に供給して、基板上の薄膜の改質処理を行う工程と、
薄膜の形成途中にて、前記プラズマ発生部から薄膜に供給されるプラズマの強度を、それ以前に薄膜に供給されていたプラズマの強度とは異なる強度に変更する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
複数種類の反応ガスの一つは、基板に吸着された反応ガスの成分を酸化または窒化するためのガスであり、
前記薄膜は、金属またはシリコンの酸化膜、あるいは金属またはシリコンの窒化膜であることを特徴とする請求項9記載の成膜方法。
【請求項11】
前記薄膜の下地膜は前記金属またはシリコンを含む膜であることを特徴とする請求項10記載の成膜方法。
【請求項12】
前記それ以前に薄膜に供給されていたプラズマの強度とは異なる強度に変更する工程は、前記プラズマ発生部に供給する高周波電力と前記真空容器内の真空度との少なくとも一方を調整することよってプラズマの強度を変更する工程であることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項13】
薄膜の形成初期には、前記プラズマ発生部から薄膜に供給されるプラズマの強度を第1の強度に設定し、
前記それ以前に薄膜に供給されていたプラズマの強度とは異なる強度に変更する工程は、プラズマの強度を第1の強度よりも大きい第2の強度に設定する工程であることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項14】
薄膜の形成初期には、前記プラズマ発生部から薄膜に供給されるプラズマの強度を第2の強度に設定し、
前記それ以前に薄膜に供給されていたプラズマの強度とは異なる強度に変更する工程は、プラズマの強度を第2の強度よりも小さい第1の強度に設定する工程であることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項15】
前記それ以前に薄膜に供給されていたプラズマの強度とは異なる強度に変更する工程は、プラズマの強度を前記第1の強度に設定した後、当該第1の強度よりも強い第3の強度に設定する工程であることを特徴とする請求項14に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記薄膜を形成する工程は、前記載置台の基板載置領域が前記複数の反応ガス供給部から夫々供給される複数種類の反応ガスの供給領域を順番に通過するように、前記真空容器の周方向に沿って互いに離間して設けられた前記反応ガス供給部に対して前記載置台を鉛直軸周りに回転させる工程であり、
前記改質処理を行う工程は、前記プラズマ発生部に対して前記載置台を回転させることにより、基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成する反応ガスの反応領域、または当該反応領域よりも載置台の回転方向下流側領域において基板にプラズマを照射する工程であり、
前記複数の反応ガス供給部から夫々反応ガスが供給される複数の領域を互いに分離するために、各領域間に設けられた分離領域に対して分離ガス供給部から分離ガスを供給する工程を行うことを特徴とする請求項9ないし15のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項17】
真空雰囲気にて複数種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成し、複数種類の反応ガスのうちの一つは、基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成するものである成膜方法において、
真空容器内に設けられた載置台の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記真空容器内を真空排気する工程と、
次いで、前記他の反応ガスの分子あるいは基板上の一部または全部と反応する成分を含むプラズマを、プラズマ発生部から基板に供給すると共に、このプラズマ発生部に対して前記載置台を鉛直軸周りに複数回回転させる工程と、
続いて、前記載置台の基板載置領域が複数種類の反応ガスの供給領域及びプラズマの照射領域を順番に通過するように、前記真空容器の周方向に沿って互いに離間して設けられた複数の反応ガス供給部及び基板に吸着された他の反応ガスの分子と反応して薄膜成分を形成する反応ガスの反応領域、または当該反応領域よりも載置台の回転方向下流側領域に設けられた前記プラズマ発生部に対して、前記載置台を鉛直軸周りに回転させると共に、複数の反応ガス供給部及び前記プラズマ発生部から夫々複数の反応ガス及びプラズマを基板に供給する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項18】
真空容器内にて複数種類の反応ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項9ないし17のいずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−49394(P2012−49394A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191247(P2010−191247)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】