説明

成膜装置

【課題】 長尺な基板を長手方向に搬送しつつ成膜行なう成膜装置であって、不要な領域にプラズマが生成されることを防止し、この不要なプラズマに起因する基板の損傷等の無い高品質な製品を安定して作製できる成膜装置を提供する。
【解決手段】 第1ユニットと、基板の搬送系を有する第2ユニットとを組み合わせて構成され、かつ、成膜中に、前記第1ユニットと第2ユニットとの間に電位差を生じないことにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な基板を搬送しつつ成膜を行なう成膜装置に関し、詳しくは、不要な領域でのプラズマの生成を防止して、適正な製品を安定して製造できる成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置、半導体装置、薄膜太陽電池など、各種の装置に、ガスバリアフィルム、保護フィルム、光学フィルタや反射防止フィルム等の光学フィルムなど、各種の機能性フィルム(機能性シート)が利用されている。
また、これらの機能性フィルムの製造に、スパッタリングやプラズマCVD等のプラズマの生成を伴う真空成膜法(気相体積法)による成膜(薄膜形成)が利用されている。
【0003】
気相成膜法によって、効率良く、高い生産性を確保して成膜を行なうためには、長尺な基板(ウェブ状の基板)を長手方向に搬送しつつ、連続的に成膜を行なうのが好ましい。
このような成膜方法を実施する装置として、長尺な基板をロール状に巻回してなる基板ロールから基板を送り出し、成膜済みの基板をロール状に巻回する、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll(以下、RtoRともいう))の成膜装置が知られている。
このRtoRの成膜装置は、基板に成膜を行なう成膜位置を通過する所定の経路で、基板ロールから巻取り軸まで長尺な基板を挿通し、基板ロールからの基板の送り出しと、巻取り軸による成膜済の基板の巻取りとを同期して行いつつ、成膜位置において、長手方向に搬送される基板に連続的に成膜を行なう。
【0004】
また、このようなRtoRによる成膜装置においては、円筒状のドラムの周面に基板を巻き掛けて搬送しつつ、成膜を行う装置が知られている。
例えば、特許文献1には、この導電性のドラムと、ドラムに対面して配置される、原料ガスを排出するノズルが多数形成された対向電極(以下、シャワー電極とする)とで電極対を形成するプラズマCVD装置において、対向電極のドラムとの対向面を、ドラムと平行な湾曲面とするプラズマCVD装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−152416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなRtoRによる成膜装置は、1つのユニットのみで形成されるのではなく、複数のユニットを組み合わせて構成される場合も有る。
例えば、特許文献1に記載されるような、基板を巻き掛けて搬送するドラムを用い、ドラムとシャワー電極とで電極対を構成するプラズマCVD装置であれば、一例として、装置が、真空チャンバおよびシャワー電極を有する、固定的に設置される反台車ユニットと、ドラムの含む基板の搬送系が構成された、移動可能な台車ユニットとで構成される。
この場合には、台車ユニットを移動して、搬送系を真空チャンバに挿入するようにして反台車ユニットと台車ユニットとを組み合わせることで、プラズマCVD装置が構成される。また、両ユニットを組み合わせることで、真空チャンバが閉塞され、成膜に対応する圧力に減圧することが可能となる。
【0007】
この装置では、プラズマ励起電力をシャワー電極もしくはドラムに供給し、他方を接地して成膜が行われる。あるいは、シャワー電極にプラズマ励起電力を供給し、ドラムにバイアス電力を供給して(もしくは、その逆)、成膜が行われる。
また、両ユニットは、互いの接合面で電気的に接続され、かつ、両ユニット共に接地される。
【0008】
ここで、RtoRによるプラズマCVD装置は、一般的に、電極/電源系、ドラムを含む基板の搬送系などの設備が必要であるため、どうしても、設置面積(いわゆるフットプリント)が大きくなってしまう。そのため、アース電位に分布が生じ易くなる。
また、反台車ユニットと台車ユニットとの接合部には、真空チャンバ内を所定圧力に保つためのOリング等の絶縁性のシール部材が配置され、これが、両ユニットの接合部の電気的な接合の妨げになってしまう場合が有る。さらに、装置を使用するにしたがって、反台車ユニットと台車ユニットの開放/閉塞による装置の歪みやシール部材の変形、接合部への成膜カスの堆積等が生じ、これらも、両ユニットの接合部の電気的な接合の妨げになってしまう。
【0009】
そのため、反台車ユニットと台車ユニットとからなるRtoRのプラズマCVD装置では、成膜中に、反台車ユニットと台車ユニットとの間に電位差が生じてしまい、この電位差によって成膜領域(ドラムとシャワー電極との間)以外の不要な領域、例えば、基板の送り出しや巻取りを行う室内等に、プラズマが生成されてしまう。
【0010】
このように、不要な領域にプラズマが生成されると、プラズマによって成膜前の基板が損傷してしまい、この基板の損傷に起因して、膜の割れや剥離等の膜質の劣化が生じ、適正な成膜を行うことができなくなってしまう。
また、成膜エリア外での不要な放電を生じるために、発熱による電力ロスが生じ、さらに、成膜領域のプラズマも不安定になってしまう。
加えて、成膜領域以外の真空チャンバ内壁面等に膜が堆積してしまい、その結果、壁面電位が変動して、成膜のためのプラズマの状態が経時と共に変動して、成膜が不安定になってしまう。さらに、堆積した膜を除去するために、装置内で清掃が必要な箇所が増えてしまい、装置のメンテナンス性も悪くなるという問題も有る。
【0011】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、台車ユニットと反台車ユニットなどのユニットを組み合わせて構成され、RtoRを利用して長尺な基板を搬送しつつ、プラズマCVDやスパッタリング等によって成膜を行う成膜装置において、ユニット間に電位差が生じるのを防止でき、従って、ユニット間の電位差に起因する不要なプラズマの生成を抑制して、不要なプラズマによる基板の損傷、電力ロス、プラズマの不安定化、不要な部位への膜の堆積等を、大幅に低減できる成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の成膜装置は、長尺な基板を長手方向に搬送しつつ成膜を行う成膜装置であって、真空チャンバを有する第1ユニットと、前記基板の搬送系を有する第2ユニットとを有し、この第1ユニットと第2ユニットとを組み合わせて構成され、かつ、成膜中に第1ユニットと第2ユニットとの間に電位差を生じないことを特徴とする成膜装置を提供する。
【0013】
このような本発明の成膜装置において、前記第1ユニットと第2ユニットとの接合面以外に、前記第1ユニットと第2ユニットとの間を導電的に接合する接合手段を有するのが好ましく、また、前記第2ユニットが円筒状のドラムを有し、このドラムの周面に巻き掛けて前記基板を長手方向に搬送しつつ、前記基板への成膜を行うのが好ましい。
また、前記真空チャンバ内において、成膜領域と、前記成膜領域以外とを隔離する隔壁を有し、この隔壁が、前記接合手段として作用するのが好ましく、また、前記第2ユニットが前記ドラムを囲むフレームを有し、このフレームが前記接合手段として作用するのが好ましく、また、前記隔壁が第1ユニットに設けられ、前記第1ユニットと第2ユニットとが組み合わされた際に、前記フレームと隔壁とが接触するのが好ましく、さらに、前記接合手段が、弾性を有するのが好ましい。
また、前記第1ユニットに、プラズマ生成用の電極が組み込まれるのが好ましく、また、前記ドラムと、前記プラズマ生成用の電極とで、電極対を構成するのが好ましく、また、前記第1ユニットおよび第2ユニットの少なくとも一方が、移動用の車輪を有するのが好ましく、さらに、前記長尺な基板をロール状に巻回してなる基板ロールから基板を送り出し、成膜済みの基板をロール状に巻回するのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明によれば、基板の搬送系を有する台車ユニット、および、真空チャンバや電極を有する反台車ユニットなどのように、複数のユニットを組み合わせて構成され、RtoRを利用して長尺な基板を搬送しつつ、プラズマCVDやスパッタリングのように成膜電力を供給(プラズマを生成)しつつ成膜を行う装置において、ユニット間に電位差が生じることを防止できる。
そのため、本発明の成膜装置は、ユニット間に生じる電位差によって、装置内に不要なプラズマが生成されることを抑制でき、不要なプラズマに起因する基板の損傷および膜質の劣化、成膜電力のロス、成膜用のプラズマの変動、不要な部位への膜の堆積等を、大幅に低減して、適正な膜を成膜された高品質な機能性フィルムを、安定して製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の成膜装置の一例を概念的に示す図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図2】図1に示す成膜装置を分解した際を概念的に示す図である。
【図3】図1に示す成膜装置の構成を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の成膜装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0017】
図1に、本発明の成膜装置の一例を概念的に示す。
図1に示す成膜装置10は、長尺な基板Zを長手方向に搬送しつつ、プラズマCVDによって成膜を行なう装置である。なお、図1において、(A)は、基板Zの搬送方向(図中矢印a方向)と直交する方向から見た図(正面図)であり、(B)は、基板Zの搬送方向の下流側から見た図(側面図)である。
【0018】
このような成膜装置10は、真空チャンバ12と、この真空チャンバ12内に配置される、ドラム14と、シェル16と、シャワー電極18と、供給軸20と、巻取り軸22と、ガイドローラ24および26と、隔壁36aおよび36bとを有して構成される。
また、シャワー電極18には、原料ガス供給手段28および高周波電源30が、ドラム14には、バイアス電源32が、それぞれ接続される。
【0019】
なお、図示例の成膜装置10において、シェル16は、ドラム14を内包して配置される略円筒状ものであるが、図1においては、装置の構成を明確に示すために、シェル16は点線で示し、その内部を可視化して示す。また、図1(A)は、真空チャンバ12の内部を示す正面図である(後述する壁部56を取り除いた状態)。
さらに、成膜装置10には、図示した部材以外にも、各種のセンサやガイドなど、基板Zを搬送しつつ成膜を行う装置に配置される、各種の部材を有してもよい。
【0020】
真空チャンバ12内は、2枚の隔壁36aおよび36bによって、図中上から、巻出し室38、搬送室40、および成膜室42に、略気密に分離される。
さらに、巻出し室38および搬送室40には、真空排気手段46が接続され、成膜室42には、真空排気手段48が接続される。
【0021】
また、成膜装置10は、図2に概念的に示すように、反台車ユニット50と、台車ユニット52とから構成される。なお、図2は、図1(B)と同様の側面図である。
図2に示すように、反台車ユニット50は、真空チャンバ12、シャワー電極18、および、隔壁36aおよび36bを有する。他方、台車ユニット52は、基板Zの搬送系すなわちドラム14、供給軸20、巻取り軸22、ガイドローラ24および26を有する。また、シェル16も、台車ユニット52に設けられる。
【0022】
従って、図示例の成膜装置10において、反台車ユニット50は、本発明における第1ユニットであり、台車ユニット52は、本発明における第2ユニットである。
成膜装置10において、真空チャンバ12を有する反台車ユニット50は、脚部50aによって固定的に設置される。他方、基板Zの搬送系を有する台車ユニット52は、キャスタ52aによって、移動可能に構成される。
なお、本発明の成膜装置は、これに限定はされず、第1ユニットを移動可能、第2ユニットを固定的に設置する構成であってもよく、両ユニット共に移動可能であってもよい。
【0023】
成膜装置10において、長尺な基板Zは、ロール状に巻回された基板ロール53として、供給される。
基板Zは、巻出し室38の基板ロール53から供給され、ドラム14に巻き掛けられた状態で長手方向(図中矢印a方向)に搬送されつつ、成膜室42において成膜されて、再度、巻出し室38に戻されて巻取り軸22に巻き取られる(ロール状に巻回される)。すなわち、成膜装置10は、前述のロール・ツー・ロール(Roll to Roll 以下、RtoRともいう)による成膜装置である。
【0024】
なお、本発明において、基板Zには、特に限定はなく、プラズマCVD等の気相堆積法(真空成膜法)による成膜が可能な可能な長尺なフィルム状物(シート状物)が、全て利用可能である。
一例として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルフッ化物(PVF)などのプラスチック(樹脂)フィルムが、基板Zとして、好適に利用可能である。
プラスチックフィルム等を基材として、平坦化層、保護層、密着層、反射層、反射防止層等の各種の機能を発現するための層(膜)を成膜してなるフィルム状物を、基板Zとして用いてもよい。
【0025】
成膜装置10において、反台車ユニット50が有する真空チャンバ12は、一面が開放する直方体状の筐体で、各種の真空成膜装置(気相堆積による成膜装置)に利用される真空チャンバと、同様のものである。
また、通常の真空チャンバと同様、この真空チャンバ12も、ステンレス等の導電性を有する金属材料で形成される。
【0026】
ドラム14は、中心線を中心に図中反時計方向に回転する円筒状の部材である。
ドラム14は、巻出し室38のガイドローラ24よって所定の経路で案内された基板Zを、周面の所定領域に掛け回して、搬送室40から成膜室42に送り、再度、搬送室40から内の所定経路で搬送して、再度、巻出し室38のガイドローラ26に送る。
基板Zは、ドラム14に支持されて搬送されている際に、成膜室42内で成膜される。
【0027】
ここで、ドラム14は、後述する成膜室42のシャワー電極18の対向電極としても作用(すなわち、ドラム14とシャワー電極18とで電極対を構成する)する。
また、ドラム14には、バイアス電源32が接続されている。バイアス電源32に関しては、後に詳述する。
ドラム14は、成膜中の基板Zの温度調整手段を行うために、温度調整手段を内蔵してもよい。ドラム14の温度調節手段には、特に限定はなく、冷媒等を循環する温度調節手段、ピエゾ素子等を用いる冷却手段等、各種の温度調節手段が利用可能である。
【0028】
シェル16は、ドラム14を内包する、円筒状の筐体である。
シェル16には、ガイドローラ24から案内されドラム14に巻き掛かる基板Zが通過するためのスリット16a、成膜を終了しドラム14からガイドローラ26に搬送される基板Zが通過するためのスリット16bが形成されている。さらに、シェル16は、基板Zへの成膜領域を規制するマスクも兼ねるものであり、シャワー電極18に対面する部分に、基板Zへの成膜を行うための開口部16cが形成される。
【0029】
このようなシェル16を有することにより、反台車ユニット50と台車ユニット52との位置決めが容易になる、装置のメンテナンスの際にドラム14を保護することができる、後述するように隔壁36aおよび36bと接触させることで、反台車ユニット50と台車ユニット52との電気的な接点とすることができ、両ユニット間の電位差を生じ難くできる、等の点で好ましい。
図示例において、このシェル16は、ステンレス等の導電性の金属で形成されている。
【0030】
前述のように、真空チャンバ12内は、2枚の隔壁36aおよび36bによって、図中上から、巻出し室38、搬送室40、および成膜室42に、略気密に分割される。
隔壁36aおよび36bは、真空チャンバ12の側面側(基板搬送方向側)および正面奥手側(図1(A)奥手側/図1(B)左側)の内壁面に固定され、真空チャンバ12内を図中上下方向に略気密に分離する、板状の部材である。図示例においては、隔壁36aの下方に隔壁36bが配置される。
また、隔壁36aおよび36bには、後述する台車ユニット52側に開口して、シェル16が挿入される矩形の切欠きを有する(図3参照)。すなわち、隔壁36aおよび36bは、台車ユニット52側が開口する、矩形の略C字状の板材である。
【0031】
図示例の成膜装置10においては、真空チャンバ12の内壁面12aと、ドラム16を内包するシェル16の上部周面と、隔壁36aとによって、真空チャンバ12上方の巻出し室38が形成される。
また、真空チャンバ12の内壁面12aと、シェル16の中央周面と、隔壁36aと隔壁36bとによって、真空チャンバ12中央の搬送室40が形成される。
さらに、真空チャンバ12の内壁面12aと、シェル16の下部周面と、隔壁36bとによって、真空チャンバ12下方の成膜室42が形成される。
【0032】
通常の装置では、各室の気密性を高く保つために、巻出し室や成膜室等の略気密に分離するための隔壁は、耐熱性の硬質ゴム等で形成され、すなわち、絶縁性である。
これに対し、本発明の成膜装置10においては、この隔壁36は、導電性を有する。この点に関しては、後に詳述する。
【0033】
巻出し室38は、供給軸20と、巻取り軸22と、ガイドローラ24および26と、供給軸20とが配置される。
供給軸20は、長尺な基板Zをロール状に巻回してなる基板ロール53を回転可能に軸支する軸である。ガイドローラ24および26は、基板Zを所定の搬送経路で案内する通常のガイドローラである。また、巻取り軸22は、成膜済みの基板Zを巻き取る、公知の長尺なシート状物の巻取り軸である。
【0034】
図示例において、基板ロール53は、供給軸20に装着される。基板ロール53が、供給軸20に装着されると、基板Zは、ガイドローラ24、ドラム14、および、ガイドローラ26を経て、巻取り軸22に至る、所定の経路を通される(挿通される)。
成膜装置10においては、基板ロール53からの基板Zの送り出しと、巻取り軸22における成膜済み基板Zの巻き取りとを同期して行なって、長尺な基板Zを所定の搬送経路で長手方向に搬送しつつ、成膜室42において、ドラム14に巻き掛けられた基板Zの表面に成膜を行なう。
【0035】
巻出し室38の下方に形成される搬送室40は、成膜前および成膜後に、ドラム14に巻き掛けられた基板Zが通過する空間である。
この搬送室40は、成膜前の基板Zが巻回される基板ロール53が装填され、また、成膜済みの基板Zが巻き取られる巻取り室38と、基板Zに成膜を行う成膜室40とを、より確実に分離する作用を有する。
【0036】
前述のように、巻出し室38と搬送室40には、真空排気手段46が接続される。
真空排気手段46は、巻出し室38および搬送室40内を、成膜室42の圧力(成膜圧力)に応じた圧力に減圧することにより、巻出し室38や搬送室40等の圧力が、成膜室42での成膜に悪影響を及ぼすことを防止するためのものである。
【0037】
本発明において、真空排気手段46には、特に限定はなく、ターボポンプ、メカニカルブースターポンプ、ロータリーポンプ、ドライポンプなどの真空ポンプ、さらには、クライオコイル等の補助手段、到達真空度や排気量の調整手段等を利用する、真空成膜装置に用いられている公知の(真空)排気手段が、各種、利用可能である。
この点に関しては、後述する真空排気手段48も同様である。
【0038】
搬送室40の下方には、成膜室42が形成される。
図示例の成膜装置10において、成膜室42は、一例として、CCP(Capacitively Coupled Plasma 容量結合型プラズマ)−CVDによって、基板Zの表面に成膜を行なうものであり、シャワー電極18が配置される。
また、シャワー電極18には、原料ガス供給手段28および高周波電源30が接続される。さらに、成膜室42には、真空排気手段48が接続される。
また、前述のように、ドラム14には、バイアス電源32が接続される。
【0039】
シャワー電極18は、CCP−CVDに利用される、公知のシャワー電極である。
図示例において、シャワー電極18は、一例として、中空の略直方体状であり、1つの最大面をドラム14の周面に対面して配置される。また、シャワー電極18のドラム14との対向面は、ドラム14の周面に応じて湾曲し、多数の貫通穴が全面的に成膜される。
【0040】
なお、図示例において、成膜室42には、シャワー電極18(CCP−CVDによる成膜手段)が、1個、配置されているが、本発明は、これに限定はされず、基板Zの搬送方向に、複数のシャワー電極を配列してもよい。この点に関しては、CCP−CVD以外のプラズマCVDを利用する際も同様である。
また、本発明は、シャワー電極18を用いるのにも限定はされず、通常の板状の電極と、原料ガス供給用のノズルとを用いるものであってもよい。
【0041】
原料ガス供給手段28は、プラズマCVD装置等の真空成膜装置に用いられる公知のガス供給手段であり、シャワー電極18の内部に、原料ガスを供給する。前述のように、シャワー電極18のドラム14との対向面には、多数の貫通穴が供給されている。従って、シャワー電極18に供給された原料ガスは、この貫通穴から、シャワー電極18とドラム14との間に導入される。
高周波電源30は、シャワー電極18に、プラズマ励起電力を供給する電源である。高周波電源30も、各種のプラズマCVD装置で利用されている、公知の高周波電源が、全て利用可能である。
さらに、真空排気手段48は、プラズマCVDによる成膜のために、成膜室42内を排気して、所定の成膜圧力に保つものである。
【0042】
なお、本発明の成膜装置10において、成膜室42で成膜する膜には、特に限定はなく、、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン等の無機膜や、DLC(ダイアモンドライクカーボン膜)、ITO(酸化インジウムスズ)等の透明導電膜等、プラズマCVDによって成膜可能なものが、全て、利用可能である。
【0043】
前述のように、ドラム14には、バイアス電源32が接続される。
図示例の成膜装置10においては、ドラム14は、CCP−CVDによる成膜において、シャワー電極18(プラズマ励起電極)の対向電極として作用する。成膜装置10においては、ドラム14にバイアス電源32を接続して、対向電極であるドラム14にバイアス電位を印加することにより、成膜する膜の緻密化など膜質向上や、生産性(成膜効率)の向上等を図っている。
【0044】
図示例において、バイアス電源32(ドラム14に電力を供給する電源)は、一例として、高周波電源であるが、本発明はこれに限定はされず、交流もしくは直流のパルス電源等、CCP−CVDにおいて対向電極にバイアス電位を印加するために利用される電源が、全て、利用可能である。
なお、本発明の成膜装置10は、ドラム14にバイアス電位を印可するのに限定はされず、ドラム14は、接地されていてもよく、あるいは、接地とバイアス電源32との接続とを切り換え可能にしてもよい。
【0045】
前述のように、成膜装置10は、反台車ユニット50と、台車ユニット52とを組み合わせることで構成される。
反台車ユニット50には、真空チャンバ12が配置され、真空チャンバ12の内壁面には、隔壁36aおよび隔壁36b(以下、両者をまとめて、隔壁36ともいう)が固定される。また、真空チャンバ12の下部には、高周波電源30に接続されるシャワー電極18が固定される。
【0046】
他方、台車ユニット52には、ドラム14、供給軸20、巻取り軸22、ガイドローラ24および26、すなわち基板Zの搬送系が配置される。また、ドラム14を内包するシェル16も、台車ユニット52に配置される。
台車ユニット52は、底面にキャスタ52aが配置される平板状の基台54と、この基台54に対して垂直に立設するように、基台54に固定される壁部56とを有する。基台54および壁部56は、共に、台車および反台車にユニット化された通常の成膜装置と同様に、ステンレス等の導電性の金属で形成される。
【0047】
ドラム14、供給軸20、巻取り軸22、ガイドローラ24および26は、いずれも、機密性を有する軸受け(図示省略)によって、台車ユニット52の壁部56に軸支されている。また、シェル16も、この壁部56に固定されている。
また、図1(B)に示されるように、壁部56は、真空チャンバ12の開放面を閉塞する、蓋体も兼ねている。そのため、真空チャンバ12開放面の端部(真空チャンバ12の壁面先端部)に当接する、壁部56端部近傍には、真空チャンバ12を気密に閉塞するためのOリング58が固定されている。
【0048】
さらに、図1および図2に示されるように、反台車ユニット50および台車ユニット52は、共に、接地(アース)されている。
【0049】
図1〜図3に示されるように、成膜装置10は、台車ユニット52のシェル16(ドラム14)、供給軸20(基板ロール53)、ガイドローラ24および26、巻取り軸22を、真空チャンバ12内に挿入するようにして、台車ユニット52と反台車ユニット50とを組み合わせることで、形成される。また、図3に概念的に示すように、シェル16は、隔壁36aおよび36bの切欠きに挿入される。
【0050】
台車ユニット52と反台車ユニット50とを組み合わせた状態では、各室の気密性を保つために、シェル16と、隔壁36とが接触する。すなわち、シェル16は、隔壁36と摺接しつつ、隔壁36の切欠きに挿入される。
さらに、各室の気密性を保つために、好ましくは、組み合わされた状態では、隔壁36の端部は、壁部56に当接する。
【0051】
ここで、前述のように、シェル16は、ステンレス等の導電性を有する金属で形成され、隔壁36は、導電性を有する。
従って、台車ユニット52と反台車ユニット50とを組み合わせた状態では、両ユニットは、互いの接合面(真空チャンバ12と壁部56との接触部)のみならず、シェル16と、隔壁36とによっても、導電的に接合される(電気的に接続される)。
本発明は、このような構成を有することにより、台車ユニット52と反台車ユニット50との間に電位差が生じることを防止し、また、装置内における電位差分布を大幅に低減し、この電位差に起因する、成膜領域以外の余分な領域でのプラズマの生成を抑制したものである。
【0052】
前述のように、RtoRによるプラズマCVD装置は、各種の設備が必要であるため、設置面積が大きくなって、アース電位に分布が生じ易くなる。しかも、反台車ユニットと台車ユニットとの接合部には、密閉用のOリングが配置されるので、これが、接合部の電気的な接合の妨げになってしまう。加えて、成膜装置は、使用に応じて、反台車ユニットと台車ユニットとの組み立てや離間を繰り返すので、使用するにしたがって、装置の歪みが生じ、さらに、接合部への成膜カスの堆積等も生じ、これらも、両ユニットの接合部の電気的な接合の妨げになってしまう。
そのため、反台車ユニットと台車ユニットとからなるプラズマCVD装置では、成膜中に、両ユニットの間に電位差が生じてしまい、この電位差によって、成膜領域以外の不要な領域(例えば、成膜装置10で言えば巻出し室38内など)にプラズマが生成され、その結果、基板の損傷、膜質の劣化、電力ロス、メンテナンス性の悪化等が生じているのは、前述のとおりである。
【0053】
これに対し、図示例の成膜装置10は、台車ユニット52と反台車ユニット50とを組み合わせた状態で、両ユニットの接合面のみならず、台車ユニット52に固定されるシェル16と、反台車ユニット50に固定される隔壁36とによっても、両ユニットを導電的に接合する。
そのため、成膜装置10によれば、台車ユニット52と反台車ユニット50との間で十分な電気的な接続(電気の導通)が確保されるので、両ユニットの間に電位差が生じることを、確実に防止することができる。そのため、成膜装置10は、成膜領域以外でのプラズマの生成を十分に抑制して、余分な領域にプラズマが生成されることに起因する、基板Zの損傷およびそれに伴う膜質の劣化等を、大幅に抑制して、基板Zの損傷が無く、適正な膜が成膜された、高品質な機能性フィルムを、安定して製造することが可能である。
【0054】
図示例の成膜装置10において、両ユニットの接合面以外で、台車ユニット52と反台車ユニット50とを導電的に接合するための、隔壁36は、ステンレス等の導電性を有する金属で形成してもよいが、弾性を有するのが好ましい。
このように、隔壁36(台車ユニット52と反台車ユニット50とを導電的に接合する接合手段)に、弾性を持たせることにより、隔壁36とシェル16とを、より確実に密着して、台車ユニット52と反台車ユニット50とを、より確実に導電的に接合することが可能となる。
【0055】
このような弾性を有する隔壁36としては、一例として、耐熱性を有する硬質ゴム等の、弾性を有する絶縁性材料からなる板材の表面を、メッキ等による導電性被膜で被覆してなる隔壁36が例示される。また、同様の弾性を有する材料からなる板材の表面を、アルミ箔等の導電性を有するシート状物で覆った隔壁36も、好適に利用可能である。
また、金属やカーボン等の導電性微粒子を分散してなる、導電性のゴムによって、隔壁36を構成するのも、好ましい。
さらに、隔壁36自体は、ステンレス等の導電性を有する金属で形成し、真空チャンバ12内壁面の隔壁36の固定部に、スプリング、ゴム、スポンジ等の弾性部材を配置することにより、隔壁36が弾性を有するような状態とするのも、好ましい。この隔壁36の固定部に弾性部材を設ける構成は、上記態様に併用してもよい。
【0056】
なお、本発明の成膜装置10において、台車ユニット52と反台車ユニット50とを導電的に接合するのは、シェル16と、隔壁36とに限定はされず、各種の部材が利用可能である。
例えば、シェル16を利用せずに、反台車ユニット50に配置される隔壁36を、図示例と同様に導電性にして、台車ユニット52と反台車ユニット50を組み合わせた状態で、隔壁36と台車ユニット52の壁部56とを当接させることにより、両ユニットの接合面以外で、台車ユニット52と反台車ユニット50とを導電的に接合してもよい。
また、台車ユニット52および/または反台車ユニット50に、両者を導電的に接合するための部材を設けて、台車ユニット52と反台車ユニット50を組み合わせた状態で、この部材によって、両ユニットを導電的に接合する方法も、利用可能である。例えば、除電ブラシのような導電性の部材を、真空チャンバ12の内壁面に固定して、台車ユニット52と反台車ユニット50を組み合わせた状態で、この除電ブラシと、ガイドローラ24とを接触させることにより、両ユニットの接合面以外で、台車ユニット52と反台車ユニット50とを導電的に接合するようにしてもよい。
なお、前述の弾性を有するのが好ましい点に関しては、両ユニットの接合面以外で台車ユニット52と反台車ユニット50とを導電的に接合する、これらの接合部材に関しても、同様である。
【0057】
しかしながら、真空チャンバ12内に、基本的に成膜とは無関係の部材を増加するのは、やはり、好ましくないので、接合部材は、シェル16や隔壁36など、元々、成膜装置が有している部材を利用するのが好ましい。
特に、図示例のシェル16や隔壁36のように、その機能上、しっかりと当接することが要求される部材同士を接合部材として用いるのは、より好ましい。
【0058】
以下、成膜装置10の作用を説明する。
準備の状態では、反台車ユニット50と、台車ユニット52とは、図2に示すように離間されている。
この状態で、台車ユニット52の供給軸20に基板ロール53を装填して、基板Zを引き出し、ガイドローラ24、ドラム14、およびガイドローラ26を経て、巻取り軸22に至る所定の搬送経路を挿通する。
【0059】
基板Zを挿通したら、台車ユニット52を移動して、反台車ユニット50の真空チャンバ12内に、ドラム14等の基板Zの搬送系を挿入するように、反台車ユニット50の真空チャンバ12を、台車ユニット52の壁部56で閉塞して、反台車ユニット50と台車ユニット52とを組み合わせ、固定する。両者の固定は、公知の方法で行えばよい。
【0060】
反台車ユニット50と台車ユニット52とを組み合わせたら、真空排気手段46および48を駆動して、巻出し室38および成膜室42の排気を開始する。
巻出し室38、搬送室40および成膜室42が所定の真空度以下まで排気されたら、次いで、原料ガス供給手段28を駆動して、成膜室42に原料ガスを供給する。
【0061】
巻出し室38、搬送室40および成膜室42の圧力が所定圧力で安定したら、ドラム14等の回転を開始して基板Zの搬送を開始し、さらに、高周波電源30およびバイアス電源32を駆動して、基板Zを長手方向に搬送しつつ、成膜室42における基板Zへの成膜を開始する。
ここで、本発明においては、両ユニットの接合面以外に、シェル16と隔壁36とによっても、台車ユニット52と反台車ユニット50とが導電的に接合されているので、両ユニットの間に電位差が生じることがなく、従って、巻出し室38内などの不要な領域でのプラズマの生成を抑制して、基板損傷や膜質劣化等の無い、適正な成膜を安定して行うことができる。
成膜された基板Zは、ガイドローラ26によって案内されて、巻取り軸22に巻回される。
【0062】
図1に示す成膜装置10は、CCP−CVDによって基板Zに成膜する装置であるが、本発明は、これに限定はされず、ICP−CVD法等の他のプラズマCVDも好適に利用可能である。
また、本発明の成膜装置が行う成膜は、プラズマCVDに限定されるわけでもなく、スパッタリングなどプラズマの生成を伴う成膜方法等、成膜のために電力の供給が必要な成膜装置に、全て、利用可能である。
【0063】
また、本発明の成膜装置は、図示例のように、基板Zをドラムに巻き掛けた状態で成膜を行う成膜装置に限定はされず、例えば、平行に配置した平板状の電極対の間を直線状に基板を搬送しつつ、成膜を行うCCP−CVD等であってもよい。
しかしながら、図示例のような基板Zをドラムに巻き掛けた状態で成膜を行う成膜装置は、成膜領域以外にも電圧がかかるため、装置内での電位差が生じ易い。そのため、本発明の効果が、より好適に発現できる等の点で、図示例のような、基板Zをドラムに巻き掛けた状態で成膜を行う成膜装置は、好適に利用可能である。
【0064】
以上、本発明の成膜装置について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんのことである。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の具体的実施例を示すことにより、本発明を、より詳細に説明する。
[実施例1]
図1に示す成膜装置10を用いて、基板Zに、酸化シリコン膜を成膜した。
なお、隔壁36aおよび隔壁36bは、共に、硬質ゴム(二トリルゴム)製の隔壁の表面全面を、アルミ箔で被覆した物を用いた。
【0066】
基板Zは、幅300mmのポリエステル樹脂フィルム(富士フイルム社製のポリエチレンテレフタレートフィルム)を用いた。
CCP−CVDによる酸化シリコン膜の原料ガスは、HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)、酸素ガス、および、窒素ガスを用い、成膜圧力は80Paとした。
高周波電源30は、周波数13.56MHzの高周波電源を用い、シャワー電極18に供給したプラズマ励起電力は2000Wとした。
また、バイアス電源32は周波数400kHzの高周波電源を用い、ドラム14に供給したバイアス電力は500Wとした。
【0067】
このような成膜条件の下、成膜装置10において、20mの基板Zに酸化シリコン膜の成膜を行なった。基板搬送速度は2m/minとした。
【0068】
成膜中に、真空チャンバ12に備えつけられた観察用窓から、真空チャンバ12内を観察した。その結果、成膜領域(ドラム14とシャワー電極18との間)以外の、不要な領域でのプラズマの生成は、認められなかった。
また、成膜を終了した基板Zを光学顕微鏡で観察したところ、基板Zにプラズマに起因する損傷は、認められなかった。
さらに、成膜終了後、真空チャンバ12内を目視で確認した所、巻出し室40および搬送室40内での膜の堆積は、認められなかった。
【0069】
[実施例2]
隔壁36を、二トリルゴムにカーボンを分散してなる導電性ゴム製の物に変更した以外は、実施例1と全く同様にして、基板Zに酸化シリコン膜の成膜を行なった。
実施例1と同様に、成膜中のプラズマの生成、基板の状態、および、真空チャンバ内の膜の堆積を確認した。その結果、実施例1と同様に、プラズマの生成、基板の損傷、膜の堆積の、いずれも認められなかった。
【0070】
[実施例3]
真空チャンバ12における隔壁36の固定部に、弾性部材(二トリルゴム製のスポンジ)を設けた以外は、実施例1と全く同様にして、基板Zに酸化シリコン膜の成膜を行なった。
実施例1と同様に、成膜中のプラズマの生成、基板の状態、および、真空チャンバ内の膜の堆積を確認した。その結果、実施例1と同様に、プラズマの生成、基板の損傷、膜の堆積の、いずれも認められなかった。
【0071】
[実施例4]
隔壁36をステンレス製とし、その固定部にスプリングを挿入した以外は、実施例1と全く同様にして、基板Zに酸化シリコン膜の成膜を行なった。
実施例1と同様に、成膜中のプラズマの生成、基板の状態、および、真空チャンバ内の膜の堆積を確認した。その結果、実施例1と同様に、プラズマの生成、基板の損傷、膜の堆積の、いずれも認められなかった。
【0072】
[比較例]
隔壁をアルミ箔で覆わない以外は、実施例1と全く同様にして、基板Zに酸化シリコン膜の成膜を行なった。
実施例1と同様に、成膜中のプラズマの生成、基板の状態、および、真空チャンバ内の膜の堆積を確認した。その結果、成膜中に巻出し室38および搬送室40内でプラズマの生成が認められた。また、成膜後の基板に、プラズマに起因すると思われれる損傷が認められた。さらに、成膜後の真空チャンバ12では、巻出し室40および搬送室40内に、膜の堆積が認められた。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、基板の熱ダメージや、この熱ダメージに起因する膜の剥離やひび割れ等の無い機能性フィルムを安定して製造できるので、ガスバリアフィルムの製造等に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 成膜装置
12 真空チャンバ
14 ドラム
16 シェル
18 シャワー電極
20 供給軸
22 巻取り軸
24,26 ガイドローラ
28 原料ガス供給手段
30 高周波電源
32 バイアス電源
36(36a,36b) 隔壁
38 巻出し室
40 搬送室
42 成膜室
46,48 真空排気手段
50 反台車ユニット
52 台車ユニット
53 基板ロール
54 基台
56 壁部
58 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な基板を長手方向に搬送しつつ成膜を行う成膜装置であって、
真空チャンバを有する第1ユニットと、前記基板の搬送系を有するた第2ユニットとを有し、この第1ユニットと第2ユニットとを組み合わせて構成され、かつ、成膜中に第1ユニットと第2ユニットとの間に電位差を生じないことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1ユニットと第2ユニットとの接合面以外に、前記第1ユニットと第2ユニットとの間を導電的に接合する接合手段を有する請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第2ユニットが円筒状のドラムを有し、このドラムの周面に巻き掛けて前記基板を長手方向に搬送しつつ、前記基板への成膜を行う請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記真空チャンバ内において、成膜領域と、前記成膜領域以外とを隔離する隔壁を有し、この隔壁が、前記接合手段として作用する請求項2または3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第2ユニットが前記ドラムを囲むフレームを有し、このフレームが前記接合手段として作用する請求項3または4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記隔壁が第1ユニットに設けられ、前記第1ユニットと第2ユニットとが組み合わされた際に、前記フレームと隔壁とが接触する請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記接合手段が、弾性を有する請求項2〜6のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第1ユニットに、プラズマ生成用の電極が組み込まれる請求項1〜6のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項9】
前記ドラムと、前記プラズマ生成用の電極とで、電極対を構成する請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記第1ユニットおよび第2ユニットの少なくとも一方が、移動用の車輪を有する請求項1〜8のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項11】
前記長尺な基板をロール状に巻回してなる基板ロールから基板を送り出し、成膜済みの基板をロール状に巻回する請求項1〜10のいずれかに記載の成膜装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−195873(P2011−195873A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62919(P2010−62919)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】