説明

排気浄化装置の制御方法

【課題】バーナ側で必要な燃焼用空気の抜き取り量を確実に確保し且つバーナ利用時におけるパティキュレートの増加やエンジンの出力低下を未然に回避し得るようにする。
【解決手段】排気管11の途中に装備した排気浄化触媒の上流にバーナ16を設け、該バーナ16にターボチャージャ2のコンプレッサ2aの下流から吸気4の一部を抜き出して燃焼用空気として導き得るようにした排気浄化装置の制御方法に関し、バーナ16の利用時に該バーナ16への燃焼用空気の抜き取り量を求め、その抜き取り量に応じてパティキュレートの増加を抑制し得るよう排気ガス9の再循環量を絞り且つ前記ターボチャージャ2のタービン2bのノズルベーン開度を絞ることにより吸気量を増加すると共に、ディーゼルエンジン1への吸気4の減少分に見合う出力低下を補填し得るようディーゼルエンジン1へのメイン噴射量を増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルエンジンにおいては、排気ガスが流通する排気管の途中に、酸素共存下でも選択的にNOxを還元剤と反応させる性質を備えた選択還元型触媒を装備し、該選択還元型触媒の上流側に必要量の還元剤を添加して該還元剤を選択還元型触媒上で排気ガス中のNOx(窒素酸化物)と還元反応させ、これによりNOxの排出濃度を低減し得るようにしたものがある。
【0003】
また、プラント等における工業的な排煙脱硝処理の分野では、還元剤にアンモニア(NH3)を用いてNOxを還元浄化する手法の有効性が既に広く知られているところであるが、自動車の場合には、アンモニアそのものを搭載して走行することに関し安全確保が困難であるため、近年においては、毒性のない尿素水を還元剤として使用することが研究されている。
【0004】
即ち、尿素水を選択還元型触媒の上流側で排気ガス中に添加すれば、該排気ガス中で尿素水がアンモニアと炭酸ガスに熱分解され、選択還元型触媒上で排気ガス中のNOxがアンモニアにより良好に還元浄化されることになる。
【0005】
他方、ディーゼルエンジンの排気浄化を図る場合、排気ガス中のNOxを除去するだけでは十分ではなく、排気ガス中に含まれるパティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)についてもパティキュレートフィルタを通して捕集する必要があるが、通常のディーゼルエンジンの運転状態においては、パティキュレートが自己燃焼するほどの高い排気温度が得られる機会が少ないため、PtやPd等を活性種とする酸化触媒をパティキュレートフィルタに一体的に担持させるようにしている。
【0006】
即ち、このような酸化触媒を担持させたパティキュレートフィルタを採用すれば、捕集されたパティキュレートの酸化反応が促進されて着火温度が低下し、従来より低い排気温度でもパティキュレートを燃焼除去することが可能となる。
【0007】
ただし、斯かるパティキュレートフィルタを採用した場合であっても、排気温度の低い運転領域では、パティキュレートの処理量よりも捕集量が上まわってしまうので、このような低い排気温度での運転状態が続くと、パティキュレートフィルタの再生が良好に進まずに該パティキュレートフィルタが過捕集状態に陥る虞れがある。
【0008】
そこで、パティキュレートフィルタの前段にフロースルー型の酸化触媒を付帯装備させ、パティキュレートの堆積量が増加してきた段階で前記酸化触媒より上流の排気ガス中に燃料を添加してパティキュレートフィルタを強制再生することが考えられている。
【0009】
つまり、酸化触媒より上流の排気ガス中に燃料を添加すれば、その添加燃料(HC)が前段の酸化触媒を通過する間に酸化反応するので、その反応熱で昇温した排気ガスの流入により直後のパティキュレートフィルタの触媒床温度が上げられてパティキュレートが燃やし尽くされ、パティキュレートフィルタの再生化が図られることになる。
【0010】
ただし、例えば冬季の朝の始動時等でエンジンが未だ冷機状態にある場合には、パティキュレートフィルタの前段の酸化触媒が冷えきっていて十分な触媒活性を発揮し得る活性下限温度までなかなか上昇してこないため、始動開始から暫くの間は燃料添加を実行することができず、下流側の選択還元型触媒の触媒床温度を上げて触媒活性を高めることもできないという不都合があった。
【0011】
このため、近年においては、前述の如き各種の排気浄化触媒(本発明ではパティキュレートフィルタを担体として酸化触媒等を担持させたものも排気浄化触媒に含まれるものとする)よりも上流側の排気管途中にバーナを設け、該バーナの火炎により排気ガスを大幅に昇温し、この高温の排気ガスを流入させることで各種の排気浄化触媒を加熱して早期に昇温させることが検討されている。
【0012】
尚、この種の排気浄化触媒や排気ガスをバーナを用いて加熱する技術に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1や特許文献2がある。
【特許文献1】特開平5−86845号公報
【特許文献2】特開平6−167212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、この種のバーナの燃焼を良好に維持できるほどの燃焼用空気が排気ガス中に存在していないため、ターボチャージャのコンプレッサの下流から吸気の一部を抜き出して導くことが考えられているが、単純にターボチャージャのコンプレッサの下流とバーナとの間を接続してバーナの利用時に開通させるだけでは、バーナ側で必要な燃焼用空気の抜き取り量を確保できない運転領域が存在する一方、バーナへ吸気の一部が抜き出されることによりエンジンでの吸入空気量が不足し、エンジンにおける燃焼性の悪化によりパティキュレートが増加したり、エンジンの出力が低下したりする虞れがあった。
【0014】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、バーナ側で必要な燃焼用空気の抜き取り量を確実に確保し且つバーナ利用時におけるパティキュレートの増加やエンジンの出力低下を未然に回避し得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、排気管の途中に装備した排気浄化触媒の上流にバーナを設け、該バーナにターボチャージャのコンプレッサの下流から吸気の一部を抜き出して燃焼用空気として導き得るようにした排気浄化装置の制御方法であって、バーナの利用時に該バーナ側で必要な燃焼用空気の抜き取り量を確保し得る過給圧が得られ且つその抜き取り量分を抜き出した状態でもエンジン側でパティキュレートの増加を抑制し得る吸気量が得られるようEGRラインにおける排気ガスの再循環量の絞り込みと前記ターボチャージャのタービンのノズルベーン開度の絞り込みを実行すると共に、エンジンへの吸気の減少分に見合う出力低下を補填し得るようエンジンへのメイン噴射量を増加することを特徴とするものである。
【0016】
而して、このようにすれば、バーナの利用時において、排気ガスの再循環量が絞り込まれることで新気の取り込み量が増え、しかも、ターボチャージャのタービンのノズルベーン開度が絞り込まれて排気ガスの旋速が上がることでタービンの回転数が高められて吸気量そのものも増えるので、通常運転時よりも過給圧が高められてバーナ側で必要な燃焼用空気の抜き取り量が確実に確保されることになり、しかも、ターボチャージャのコンプレッサの下流から吸気の一部が抜き出されても、エンジンにおける燃焼性が改善されてパティキュレートの増加が抑制されることになり、更には、エンジンへのメイン噴射量が増加されることでエンジンへの吸気の減少分に見合う出力低下が補填されることになる。
【0017】
また、本発明においては、排気ガスの再循環量を絞ることに対応してメイン噴射タイミングを遅延し且つ燃料噴射圧を下げることが好ましく、このようにすれば、排気ガスの再循環量を絞ることで発生し易くなるNOxをメイン噴射タイミングの遅延と燃料噴射圧の低下とにより良好に抑制することが可能となる。
【0018】
即ち、メイン噴射タイミングを遅延すれば、圧縮上死点付近でメイン噴射を実施する場合よりも圧力の下がったところでメイン噴射が実施される結果、その燃焼温度が低下してNOxの発生量が抑制されることになり、また、燃料噴射圧を低下すれば、燃料噴霧の速さが遅くなって燃料混合性が悪くなる結果、その燃焼温度が低下してNOxの発生量が抑制されることになる。
【0019】
更に、バーナの利用中に排気ブレーキが併用された時に、バーナの目標加熱温度を下げることが好ましく、このようにすれば、排気ブレーキの併用により燃焼用空気が大幅に不足してバーナの目標加熱温度になかなか到達しない状況となっているにもかかわらず、加熱温度を上げるべくバーナの燃料噴射量が増やされて燃料のリッチ傾向が更に進んでしまうといった事態が回避されることになり、未燃のHCやCOの増加を未然に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
上記した本発明の排気浄化装置の制御方法によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0021】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、バーナの利用時に通常運転時よりも過給圧を高めてバーナ側で必要な燃焼用空気の抜き取り量を確実に確保することができると共に、ターボチャージャのコンプレッサの下流から吸気の一部が抜き出されても、エンジンにおける燃焼性を改善してパティキュレートの増加を抑制することができ、しかも、エンジンへの吸気の減少分に見合う出力低下を補填することができる。
【0022】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、排気ガスの再循環量を絞ることで発生し易くなるNOxをメイン噴射タイミングの遅延と燃料噴射圧の低下とにより良好に抑制することができる。
【0023】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、バーナの利用中に排気ブレーキが併用されても、バーナの目標加熱温度を下げてバーナの燃料噴射量を抑制し、これによりバーナの燃料のリッチ傾向を緩和して未燃のHCやCOの増加を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1中における符号1はターボチャージャ2を装備したディーゼルエンジンを示しており、エアクリーナ3から導かれた吸気4が吸気管5を通し前記ターボチャージャ2のコンプレッサ2aへと送られ、該コンプレッサ2aで加圧された吸気4がインタークーラ6へと送られて冷却され、該インタークーラ6から更に吸気マニホールド7へと吸気4が導かれてディーゼルエンジン1の各気筒8(図1では直列6気筒の場合を例示している)に分配されるようになっており、また、前記ディーゼルエンジン1の各気筒8から排出された排気ガス9は、排気マニホールド10を介しターボチャージャ2のタービン2bへと送られ、該タービン2bを駆動した後に排気管11へと送り出されるようになっている。
【0026】
更に、排気マニホールド10における各気筒8の並び方向の一端部と、吸気マニホールド7に接続されている吸気管5の一端部との間がEGRライン12により接続されており、排気マニホールド10から抜き出した排気ガス9の一部が水冷式のEGRクーラ13及びEGRバルブ14を介して吸気管5に再循環されるようになっており、排気系から吸気系へ再循環された排気ガス9で各気筒8内での燃料の燃焼を抑制して燃焼温度を下げることによりNOxの発生を低減し得るようにしてある。
【0027】
また、前記排気管11の途中に、酸化触媒を一体的に担持したパティキュレートフィルタ15が装備されていると共に、該パティキュレートフィルタ15の前段には、適量の燃料を噴射して着火燃焼せしめるバーナ16が装備されており、該バーナ16は、図示しない燃料タンクからの適量の燃料を噴射する燃料噴射ノズルと、その噴射口から噴射された燃料に点火するための点火プラグとを備えて構成されるようになっている。
【0028】
ここで、前記バーナ16に対しては、ターボチャージャ2のコンプレッサ2aの下流から分岐した燃焼用空気供給管17が接続されており、該燃焼用空気供給管17により前記コンプレッサ2aで過給された吸気4の一部を抜き出して燃焼用空気として導き得るようにしてある。
【0029】
ただし、この燃焼用空気供給管17は、図示しない開閉弁によりバーナ16の利用時にのみ開通するようになっており、バーナ16の非利用時においては、前記開閉弁が閉じて流路が遮断されるようになっている。
【0030】
また、前記パティキュレートフィルタ15より下流の排気管11には、酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る性質を備えた選択還元型触媒18が装備されており、この選択還元型触媒18の入側には、図示しない尿素水タンクから導いた尿素水を排気ガス9中に添加し得るよう尿素水噴射ノズル19が設けられ、該尿素水噴射ノズル19による尿素水の添加位置と前記選択還元型触媒18との間には、尿素水と排気ガス9との混合促進を図り得るようガスミキサ20が設けられている。
【0031】
尚、前記尿素水噴射ノズル19による尿素水の添加位置とパティキュレートフィルタ15との間には、排気ガス9中の未燃HCを酸化処理し且つ排気ガス9中のNOのNO2への酸化反応を促す酸化触媒21が介装されている。
【0032】
更に、前記パティキュレートフィルタ15の前後位置には、排気ガス9の温度を計測するための温度センサ22,23が装備され、この温度センサ22,23の検出信号22a,23aが制御装置24に対し入力されるようになっており、これら温度センサ22,23の検出信号22a,23aに基づきパティキュレートフィルタ15の入側と出側の排気温度が平均化され、その平均温度が前記バーナ16による加熱温度として制御装置24に認識されるようになっている。
【0033】
また、前記制御装置24には、図示しない運転席のアクセルに装備されてアクセル開度をディーゼルエンジン1の負荷として検出するアクセルセンサ25(負荷センサ)からの負荷信号25aと、ディーゼルエンジン1の適宜位置に装備されて機関回転数を検出する回転センサ26からの回転数信号26aも前記制御装置24に入力されるようにしてある。
【0034】
そして、この制御装置24においては、前記アクセルセンサ25及び回転センサ26からの負荷信号25a及び回転数信号26aに基づき、ディーゼルエンジン1の各気筒8に燃料を噴射する燃料噴射装置27に向け燃料の噴射タイミング及び噴射量、噴射圧を指令する燃料噴射信号27aを出力するようになっている。
【0035】
ここで、前記燃料噴射装置27は、各気筒8毎に装備される図示しない複数のインジェクタ、サプライポンプ、コモンレールにより構成されており、燃料の噴射タイミング及び噴射量が各インジェクタの電磁弁を制御することで調整され、燃料の噴射圧がコモンレール内の圧力を制御することで調整されるようにしてある。
【0036】
更に、前記制御装置24では、パティキュレートフィルタ15の強制再生を行う必要が生じた際や、パティキュレートフィルタ15,酸化触媒21,選択還元型触媒18の触媒床温度を上げる必要が生じた際に、前記バーナ16に向け燃焼を指示する燃焼指令信号16aが出力されるようにしてある。
【0037】
また、この制御装置24からは、前記EGRバルブ14に向け開度信号14aが出力されて前記EGRバルブ14の開度が適宜に制御されるようになっていると共に、ターボチャージャ2のタービン2bにおけるノズルベーン開度を調整するアクチュエータ28に向け開度信号28aが出力されてタービン2bのノズルベーン開度が適宜に制御されるようにしてある。
【0038】
即ち、本発明で採用されているターボチャージャ2は、一般的にバリアブルジオメトリーターボチャージャと称される容量可変式のものであり、図2に拡大して示す如く、タービン2bのノズルベーン29は、タービンホイール30周囲のノズルリングプレート31にピン32を介し傾動自在に取り付けられており、これら各ノズルベーン29の角度が前記ノズルリングプレート31に対するリンクプレート33の円周方向への相対変位により連動して変更されるようになっていて、このリンクプレート33が前記アクチュエータ28によるレバー34の傾動操作でリンク35を介し回動操作されるようになっている。
【0039】
尚、図中36は制動時に排気管11を閉め切ることでディーゼルエンジン1をコンプレッサとして働かせる排気ブレーキを示し、この排気ブレーキ36は、運転室の排気ブレーキスイッチが入った状態でのアクセルオフ時に作動するようになっていて、その作動・非作動が制御装置24で把握されるようになっている。
【0040】
而して、このように構成された排気浄化装置においては、パティキュレートフィルタ15の強制再生を行う必要が生じた際や、パティキュレートフィルタ15,酸化触媒21,選択還元型触媒18の触媒床温度を上げる必要が生じた際に、制御装置24から燃焼指令信号16aが出力されてバーナ16が点火されることになるが、そのバーナ16の利用時には、前記制御装置24により以下に詳述する如き制御が実行される。
【0041】
先ず、バーナ16の利用時には、図示しない開閉弁が開いて燃焼用空気供給管17が開通し、ターボチャージャ2のコンプレッサ2aの下流から吸気4の一部が燃焼用空気として抜き出されてバーナ16へと導かれることになるが、この時のバーナ16への燃焼用空気の抜き取り量は、各温度センサ22,23により測定される現在の排気温度をバーナ16の利用目的に応じたターゲット温度(例えばパティキュレートフィルタ15の強制再生を行う場合には550〜650℃程度)まで上げるために必要な燃料の投入量に基づき、その燃料を全て燃やすために必要な酸素量を満足するよう加算されるべき燃焼用空気の供給量として決まる。
【0042】
そして、制御装置24からは、前記燃焼用空気の抜き取り量を確保し得る過給圧が得られ且つその抜き取り量分を抜き出した状態でもディーゼルエンジン1側でパティキュレートの増加を抑制し得る吸気量が得られるようEGRバルブ14へ向け開度信号14aが出力されて排気ガス9の再循環量が絞り込まれると共に、前記ターボチャージャ2のアクチュエータ28へ向け開度信号28aが出力されてタービン2bのノズルベーン開度が絞り込まれ、しかも、ディーゼルエンジン1への吸気4の減少分に見合う出力低下を補填し得るよう燃料噴射装置27へ向け燃料噴射信号27aが出力されてディーゼルエンジン1へのメイン噴射量が増加される。
【0043】
このように制御装置24により制御を行えば、バーナ16の利用時において、排気ガス9の再循環量が絞り込まれることで新気の取り込み量が増え、しかも、ターボチャージャ2のタービン2bのノズルベーン開度が絞り込まれて排気ガス9の旋速が上がることでタービン2bの回転数が高められて吸気量そのものも増えるので、通常運転時よりも過給圧が高められてバーナ16側で必要な燃焼用空気の抜き取り量が確実に確保されることになり、しかも、ターボチャージャ2のコンプレッサ2aの下流から吸気4の一部が抜き出されても、ディーゼルエンジン1における燃焼性が改善されてパティキュレートの増加が抑制されることになり、更には、ディーゼルエンジン1へのメイン噴射量が増加されることで該ディーゼルエンジン1への吸気4の減少分に見合う出力低下が補填されることになる。
【0044】
また、特に本形態例においては、排気ガス9の再循環量を絞ることに対応して燃料噴射装置27への燃料噴射信号27aによりメイン噴射タイミングを遅延し且つ燃料噴射圧を下げるようにもしており、このようにすることによって、排気ガス9の再循環量を絞ることで発生し易くなるNOxをメイン噴射タイミングの遅延と燃料噴射圧の低下とにより良好に抑制することが可能となる。
【0045】
即ち、メイン噴射タイミングを遅延すれば、圧縮上死点付近でメイン噴射を実施する場合よりも圧力の下がったところでメイン噴射が実施される結果、その燃焼温度が低下してNOxの発生量が抑制されることになり、また、燃料噴射圧を低下すれば、燃料噴霧の速さが遅くなって燃料混合性が悪くなる結果、その燃焼温度が低下してNOxの発生量が抑制されることになる。
【0046】
尚、メイン噴射の前後でパイロット噴射とアフタ噴射を実施する燃料噴射形式が採用されている場合には、これらパイロット噴射量とアフタ噴射量をバーナ16の利用時に増やし、その噴射タイミングをメイン噴射タイミングの遅延に合わせて遅延させることが好ましく、このようにすれば、メイン噴射をパイロット噴射とアフタ噴射に振り分けてメイン噴射量を相対的に減らせることで燃料の燃焼を緩慢化させ、燃焼温度を低下してNOxの発生量を抑制することが可能となる。
【0047】
更に、本形態例のように、ディーゼルエンジン1に排気ブレーキ36が備えられていて、バーナ16の利用中に前記排気ブレーキ36が併用された時には、バーナ16への燃焼指令信号16aにより目標加熱温度を下げるようにしている。
【0048】
このようにすれば、排気ブレーキ36の併用により燃焼用空気が大幅に不足してバーナ16の目標加熱温度になかなか到達しない状況となっているにもかかわらず、加熱温度を上げるべくバーナ16の燃料噴射量が増やされて燃料のリッチ傾向が更に進んでしまうといった事態が回避されることになり、未燃のHCやCOの増加を未然に防止することが可能となる。
【0049】
ここで、前述の如き排気ガス9の再循環量、ターボチャージャ2のタービン2bのノズルベーン開度、ディーゼルエンジン1へのメイン噴射量、メイン噴射タイミング、燃料噴射圧、バーナ16の目標加熱温度、パイロット噴射量及びアフタ噴射の噴射量と噴射タイミング等を調整するにあたり、これらの調整量は、制御装置24における計算で求めることも可能であるが、燃焼用空気を抜き取った状態で各種調整を予備実験して様々なモード別の制御マップを作成し、この制御マップを適宜に切り替えて調整量を読み出すようにしても良いことは勿論である。
【0050】
従って、上記形態例によれば、バーナ16の利用時に通常運転時よりも過給圧を高めてバーナ16側で必要な燃焼用空気の抜き取り量を確実に確保することができると共に、ターボチャージャ2のコンプレッサ2aの下流から吸気4の一部が抜き出されても、ディーゼルエンジン1における燃焼性を改善してパティキュレートの増加を抑制することができ、しかも、ディーゼルエンジン1への吸気4の減少分に見合う出力低下を補填することができ、更には、排気ガス9の再循環量を絞ることで発生し易くなるNOxをメイン噴射タイミングの遅延と燃料噴射圧の低下とにより良好に抑制することができる。
【0051】
また、バーナ16の利用中に排気ブレーキ36が併用されても、バーナ16の目標加熱温度を下げてバーナ16の燃料噴射量を抑制し、これによりバーナ16の燃料のリッチ傾向を緩和して未燃のHCやCOの増加を未然に防止することができる。
【0052】
尚、本発明の排気浄化装置の制御方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【図2】図1のタービンのノズルベーン開度を示す概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ディーゼルエンジン(エンジン)
2 ターボチャージャ
2a コンプレッサ
2b タービン
4 吸気
9 排気ガス
11 排気管
14 EGRバルブ
14a 開度信号
15 パティキュレートフィルタ(排気浄化触媒)
16 バーナ
16a 燃焼指令信号
17 燃焼用空気供給管
18 選択還元型触媒(排気浄化触媒)
21 酸化触媒(排気浄化触媒)
22 温度センサ
22a 検出信号
23 温度センサ
23a 検出信号
24 制御装置
27 燃料噴射装置
27a 燃料噴射信号
28 アクチュエータ
28a 開度信号
29 ノズルベーン
36 排気ブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管の途中に装備した排気浄化触媒の上流にバーナを設け、該バーナにターボチャージャのコンプレッサの下流から吸気の一部を抜き出して燃焼用空気として導き得るようにした排気浄化装置の制御方法であって、バーナの利用時に該バーナ側で必要な燃焼用空気の抜き取り量を確保し得る過給圧が得られ且つその抜き取り量分を抜き出した状態でもエンジン側でパティキュレートの増加を抑制し得る吸気量が得られるようEGRラインにおける排気ガスの再循環量の絞り込みと前記ターボチャージャのタービンのノズルベーン開度の絞り込みを実行すると共に、エンジンへの吸気の減少分に見合う出力低下を補填し得るようエンジンへのメイン噴射量を増加することを特徴とする排気浄化装置の制御方法。
【請求項2】
排気ガスの再循環量を絞ることに対応してメイン噴射タイミングを遅延し且つ燃料噴射圧を下げることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置の制御方法。
【請求項3】
バーナの利用中に排気ブレーキが併用された時に、バーナの目標加熱温度を下げることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−43563(P2010−43563A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206598(P2008−206598)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】