説明

接着剤およびこれを用いた電極接続方法

【課題】低い温度で、接着剤を介して電極間を接続する際に、電極間の接続信頼性を向上することができ、かつ保存安定性に優れる接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】接着剤2は、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂およびエポキシ基を含有しない樹脂の少なくとも一方を含有する第1の接着剤7と、フィルム形状を有するとともに、第1の接着剤と分離され、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂と、導電性粒子を含有する第2の接着剤8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の被接合部材の間に設けられ、加熱加圧処理を行うことにより、複数の被接合部材の各々に形成された電極間を接続する接着剤およびこれを用いた電極接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高機能化の流れの中で、構成部品(例えば、液晶製品における電子部品)内の接続端子の微小化が進んでいる。このため、エレクトロニクス実装分野においては、そのような端子間の接続を容易に行える種々の接着剤として、フィルム状の接着剤が広く使用されている。例えば、金メッキされた銅電極からなる金属電極が形成されたフレキシブルプリント配線板(FPC)と、ITO電極からなる配線電極が形成されたガラス基板等の配線基板の接合や、ICチップ等の電子部品とリジッド基板(PCB)の接合に使用されている。
【0003】
この接着剤は、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の硬化を促進させるための硬化剤に導電性粒子を分散させた接着剤であり、接続対象の間に挟まれ、加熱、加圧されて、接続対象を接着する。即ち、加熱、加圧により接着剤中の樹脂が流動し、例えば、フレキシブルプリント配線板の表面に形成された銅電極と、配線基板の表面に形成されたITO電極の隙間を封止すると同時に、導電性粒子の一部が対峙する銅電極とITO電極の間に噛み込まれて電気的接続が達成される。そして、接着剤においては、当該接着剤の厚み方向に相対峙する、接続された電極間の抵抗(接続抵抗、または導通抵抗)を低くするという導通性能と、接着剤の面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)を高くするという絶縁性能が必要とされている。
【0004】
また、一般に、この接着剤においては、高い保存安定性と高い反応性が要求されるが、反応性の高い熱硬化性樹脂(または、反応性の高い硬化剤)を使用すると、熱硬化性樹脂と硬化剤が低い温度で反応するため、保存安定性が低下するという問題があった。そこで、保存安定性と反応性を両立させるための接着剤が提案されている。
【0005】
より具体的には、反応性の低いエポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂硬化剤を含む第1の接着剤層と、反応性の高いエポキシ樹脂(B)を含む第2の接着剤層と、第1の接着剤層と第2の接着剤層との間に形成されたエポキシ樹脂硬化剤を含まない第3の接着剤層の3層を備える接着剤が開示されている。そして、エポキシ樹脂(A)として、エポキシ樹脂(B)よりゲルタイムが長いものを使用するとともに、第2の接着剤層にはエポキシ樹脂硬化剤が混入されていないか、第1の接着剤層より混入量を少なくする設定としている。このような構成により、保存安定性に優れ、高い反応性を有する接着剤を得ることができると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、反応性の低いエポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂硬化剤を含む第1の接着剤層と、第1の接着剤層に積層され、反応性の高いエポキシ樹脂(B)を含む第2の接着剤層との2層を備える接着剤が開示されている。そして、エポキシ樹脂(A)として、エポキシ樹脂(B)よりゲルタイムが長いものを使用するとともに、第2の接着剤層にはエポキシ樹脂硬化剤が混入されていないか、第1の接着剤層より混入量を少なくする設定としている。このような構成により、保存安定性に優れ、高い反応性を有する接着剤を得ることができると記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−273627号公報
【特許文献2】特開平10−273628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の接着剤においては、反応性の低いエポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂硬化剤を含む第1の接着剤層と、反応性の高いエポキシ樹脂(B)を含む第2の接着剤層との間に、エポキシ樹脂硬化剤を含まない第3の接着剤層を設ける構成としているため、反応性の高いエポキシ樹脂(B)とエポキシ樹脂硬化剤を接触させて反応を開始させるためには、ある程度の時間(20秒以上)をかけて第1の接着剤層と第2の接着剤層の間に設けられた第3の接着剤層を溶解する必要があった。従って、保存安定性に優れる接着剤ではあるが、低温(150℃以下)かつ短時間(10秒以下)で硬化させて高い接続信頼性を得ることは難しかった。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の接着剤においては、反応性の低いエポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂硬化剤を含む第1の接着剤層と、反応性の高いエポキシ樹脂(B)を含む第2の接着剤層を積層する構成となっており反応性には優れるが、第1の接着剤層と第2の接着剤層の境界面において、反応性の高いエポキシ樹脂(B)とエポキシ樹脂硬化剤が接触して反応が開始してしまい、接着剤の保存安定性が低下するという不都合が生じていた。
【0009】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、低い温度で、接着剤を介して電極間を接続する際に、電極間の接続信頼性を向上することができ、かつ保存安定性に優れる接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂およびエポキシ基を含有しない樹脂の少なくとも一方を含有するフィルム形状の第1の接着剤と、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂と、導電性粒子を含有するフィルム形状の第2の接着剤とを備えることを特徴とする接着剤である。
【0011】
同構成によれば、加熱加圧処理により第1の接着剤と第2の接着剤を加熱溶融させる際に、第1の接着剤が含有するエポキシ樹脂硬化剤と第2の接着剤が含有するエポキシ樹脂の反応速度を十分に向上させることができる。従って、例えば、フレキシブルプリント配線板の金属電極(例えば、金メッキが施された銅電極)と配線基板の配線電極(例えば、金メッキが施された銅電極)間を、接着剤を介して接続する際に、低温(150℃以下)かつ短時間(10秒間)で接着剤を硬化させることが可能になるとともに、高い接続信頼性を得ることができる。その結果、低温実装に有用な低温硬化型の接着剤を提供することが可能になる。
【0012】
また、第1の接着剤と第2の接着剤を分離する構成としているため、第2の接着剤が含有する反応性の高いエポキシ樹脂(即ち、第1の接着剤に含有されるエポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂)と、第1の接着剤に含有されるエポキシ樹脂硬化剤が接触して反応が開始することを防止できる。従って、接着剤の保存安定性を向上させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の接着剤であって、第2の接着剤が含有するエポキシ樹脂がナフタレン型エポキシ樹脂であることを特徴とする。同構成によれば、第2の接着剤が含有するエポキシ樹脂と第1の接着剤が含有するエポキシ樹脂硬化剤の反応性をより一層高めることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の接着剤であって、導電性粒子が磁性を有する単体、合金、もしくは複合体であることを特徴とする。同構成によれば、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子を配向させることが可能になる。導電性粒子が磁性を有する単体、合金、もしくは複合体としては、ニッケル、鉄、コバルトおよびこれらを含む2種類以上の合金を例示することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の接着剤であって、第1の接着剤の厚みが、2μm〜10μm以下であることを特徴とする。
同構成によれば、加熱加圧処理を行うことにより、第1の接着剤と第2の接着剤を加熱溶融させて、例えば、フレキシブルプリント配線板の金属電極と配線基板の配線電極間を、接着剤を介して接続する際に、導電性粒子を含有しない第1の接着剤の厚みが薄いため、接着剤の導電性を向上させることが可能になる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の接着剤であって、導電性粒子の長径方向を、フィルム形状を有する接着剤の厚み方向に配向させたことを特徴とする。
【0017】
同構成によれば、例えば、この接着剤を用い、加熱加圧処理を行うことにより、第1の接着剤と第2の接着剤を加熱溶融させて、第1の電極と第2の電極とを接続する際に、第1の電極と第2の電極との接続信頼性の低下を防止することができるとともに、フィルム形状を有する接着剤のフィルム面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)の低下を効果的に抑制することが可能になる。その結果、フレキシブルプリント配線板やリジッド基板において、ファインピッチ(最小ピッチが200μm以下)で形成された金属電極間を確実に接続することが可能になり、電極のファインピッチ化に対応することが可能になる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、第1の基板が有する第1の電極と、第1の基板に接合される第2の基板が有する第2の電極とを接続する電極接続方法である。また、第1の電極上に、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂およびエポキシ基を含有しない樹脂の少なくとも一方を含有する第1の接着剤を載置し、該第1の接着剤を第1の基板上に仮接着する工程と、第1の接着剤の表面上に、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂と、導電性粒子を含有する第2の接着剤を載置し、第2の接着剤を第1の接着剤上に積層して仮接着する工程と、第1の電極と、第2の電極が接続されるように、第1の基板と前記第2の基板との間に前記第1の接着剤と前記第2の接着剤を介在させた状態で、第1の基板と第2の基板の位置合わせを行う工程と、加熱加圧処理を行うことにより、第1の接着剤と第2の接着剤を加熱溶融させて、第1の電極と第2の電極とを接続する工程とを少なくとも含むことを特徴とする電極接続方法である。
【0019】
同構成によれば、加熱加圧処理を行うことにより、第1の接着剤と第2の接着剤を加熱溶融させる際に、第1の接着剤が含有するエポキシ樹脂硬化剤と第2の接着剤が含有するエポキシ樹脂の反応速度が向上することになる。従って、第1の基板の第1の電極(例えば、金メッキが施された銅電極)と第2の基板の第2の電極(例えば、金メッキが施された銅電極)間を、接着剤を介して接続する際に、低温(150℃以下)かつ短時間(10秒間)で接着剤を硬化させることが可能になるとともに、高い接続信頼性を得ることができる。
【0020】
また、第2の接着剤を第1の接着剤上に積層した後、加熱加圧処理を行うことにより、第1の接着剤と第2の接着剤を加熱溶融させて、第1の電極と第2の電極とを接続する構成としている。即ち、第1の接着剤と第2の接着剤を分離して保存しておき、第1の電極と第2の電極とを接続する際に、第1の接着剤と第2の接着剤を積層する構成としている。従って、第1の接着剤と第2の接着剤を分離して保存している状態において、第2の接着剤が含有する反応性の高いエポキシ樹脂(即ち、第1の接着剤に含有されるエポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂)と、第1の接着剤に含有されるエポキシ樹脂硬化剤が接触して反応が開始することを防止でき、接着剤の保存安定性を向上させることができる。従って、保存安定性に優れた接着剤により、第1の電極と第2の電極とを接続することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、第1の基板が有する第1の電極と、第1の基板に接合される第2の基板が有する第2の電極とを接続する電極接続方法である。また、第1の電極上に、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂と、導電性粒子を含有する第2の接着剤を載置し、第2の接着剤を第1の基板上に仮接着する工程と、第1の接着剤の表面上に、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂およびエポキシ基を含有しない樹脂の少なくとも一方を含有する第1の接着剤を載置し、第1の接着剤を前記第2の接着剤上に積層して仮接着する工程と、第1の電極と、第2の電極が接続されるように、前記第1の基板と前記第2の基板との間に前記第1の接着剤と前記第2の接着剤を介在させた状態で、第1の基板と第2の基板の位置合わせを行う工程と、加熱加圧処理を行うことにより、前記第1の接着剤と前記第2の接着剤を加熱溶融させて、第1の電極と第2の電極とを接続する工程とを少なくとも含むことを特徴とする電極接続方法である。
【0022】
同構成によれば、請求項6に記載の発明と同様の効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、低温実装に有用であり、かつ保存安定性に優れる低温硬化型の接着剤を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、接着剤により接合される被接合部材として、リジッドな基材上に形成された第1の電極を有する配線基板と、フレキシブルな基材上に形成された第2の電極を有するフレキシブルプリント配線板を例に挙げて説明する。図1は、本実施形態に係る接着剤により、フレキシブルプリント配線板を実装した配線基板を示す断面図である。図1に示すように、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分とする接着剤2を介して、第1の基板である配線基板1(例えば、ガラス基板やガラスエポキシ基板等)が有する第1の電極である金属電極4が、第2の基板であるフレキシブルプリント配線板3が有する第2の電極である金属電極5に接続されている。
【0025】
本発明の金属電極5としては、例えば、フレキシブルプリント配線板3の表面に、銅箔等の金属箔を積層し、当該金属箔を、常法により、露光、エッチング、メッキ処理することにより形成された、金メッキが施された銅電極が使用される。また、金属電極4としては、例えば、上述の金メッキが施された銅電極や、配線基板1上に形成されたITO電極が使用される。
【0026】
また、本発明に使用される接着剤2は、図2に示すように、フィルム形状を有する第1の接着剤7と、フィルム形状を有するとともに、第1の接着剤7と分離された第2の接着剤8とを備えている。
【0027】
そして、本実施形態においては、第1の接着剤7として、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂およびエポキシ基を含有しない樹脂の少なくとも一方を含有するものを使用する構成としている。なお、ここで言う「エポキシ当量」とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数のことを言い、エポキシ当量が大きいほど、1分子中のエポキシ基の存在確率が低くなるため、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応性が低いことを示す。即ち、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂硬化剤との反応性が低いことを示す。
【0028】
また、本実施形態においては、第2の接着剤8として、第1の接着剤7に含有されるエポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂と、導電性粒子を含有するものを使用する構成としている。例えば、絶縁性の熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分とし、当該樹脂中に導電性粒子が分散されたものが使用でき、エポキシ樹脂に、ニッケル、銅、銀、金あるいは黒鉛等の導電性粒子の粉末が分散されたものが挙げられる。なお、ここで言う「可使時間」とは、エポキシ樹脂90重量部とエポキシ樹脂硬化剤10重量部を配合した溶液を25℃で保存した場合に、溶液の粘度が、溶液の初期粘度の2倍に達するまでの時間のことを言い、可使時間が短いほど、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応性が高いことを示す。即ち、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂を使用することにより、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応性を高められる。また、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応性をより一層高めるとの観点から、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が5日以内となるエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0029】
このように、本実施形態においては、第1の接着剤7と第2の接着剤8が分離されているため、第1の接着剤7と第2の接着剤8が分離された状態において、第2の接着剤8が含有する反応性の高いエポキシ樹脂(即ち、第1の接着剤7に含有されるエポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂)と、第1の接着剤7に含有されるエポキシ樹脂硬化剤が接触して反応が開始することを防止できる。従って、接着剤2の保存安定性を向上させることができる。
【0030】
なお、第1の接着剤7としては、厚みが1μm〜15μmのものを使用することができ、また、第2の接着剤8としては、厚みが10μm〜30μmのものを使用することができる。特に、接着剤2の導電性を向上させるとの観点から、導電性粒子を含有しない第1の接着剤7の厚みを2μm〜10μm以下に設定することが好ましい。
【0031】
使用するエポキシ樹脂は、第1の接着剤7においては、エポキシ当量が1000以上のものであれば、特に制限はなく、また、第2の接着剤8においては、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるものであれば、特に制限はない。例えば、ビスフェノールA型、F型、S型、AD型、またはビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型のエポキシ樹脂や、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を用いることもできる。なお、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応性をより一層高めるとの観点から、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0032】
また、エポキシ樹脂の分子量は、接着剤2に要求される性能を考慮して、適宜選択することができる。高分子量のエポキシ樹脂を使用すると、フィルム形成性が高く、また、接続温度における樹脂の溶解粘度を高くでき、後述の導電性粒子の配向を乱すことなく接続できる効果がある。一方、低分子量のエポキシ樹脂を使用すると、架橋密度が高まって耐熱性が向上するとともに、樹脂の凝集力が高まるため、接着力が高くなるという効果が得られる。従って、分子量が15000以上の高分子量エポキシ樹脂と分子量が2000以下の低分子量エポキシ樹脂とを組み合わせて使用することにより、性能のバランスが取れるため、好ましい。なお、高分子量エポキシ樹脂と低分子量エポキシ樹脂の配合量は、適宜、選択することができる。
【0033】
また、エポキシ基を含有しない樹脂としては、フィルム形成が可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン等を使用することができる。
【0034】
また、本発明に使用されるエポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂との可使時間が10日以内であって、低温での貯蔵安定性に優れ、室温では殆ど硬化反応を起こさないが、熱や光等により、速やかに硬化反応を行う硬化剤が使用される。このエポキシ樹脂硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第三級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、酸無水物系、フェノール系とその変性物、およびラジカル硬化系やカチオン硬化系の硬化剤が例示され、これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0035】
また、これらのエポキシ樹脂硬化剤中でも、低温での貯蔵安定性、および速硬化性に優れているとの観点から、イミダゾール系硬化剤が好ましく使用される。イミダゾール系硬化剤としては、公知のイミダゾール系硬化剤を使用することができる。より具体的には、イミダゾール化合物のエポキシ樹脂との付加物が例示される。イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾールが例示される。
【0036】
また、接着剤2として、図3に示すように、導電性粒子6を含む異方導電性接着剤も使用することができる。より具体的には、接着剤2を構成する第2の接着剤8として、例えば、上述の第1の接着剤7に含有されるエポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂を主成分とし、当該エポキシ樹脂中に、微細な金属粒子(例えば、球状の金属微粒子や金属でメッキされた球状の樹脂粒子からなる金属微粒子)が多数、直鎖状に繋がった形状、または針形状を有する、所謂アスペクト比が大きい形状を有する金属粉末により形成された導電性粒子6が分散されたものを使用することができる。なお、ここで言うアスペクト比とは、図4に示す、導電性粒子6の短径(導電性粒子6の断面の長さ)Rと長径(導電性粒子6の長さ)Lの比のことを言う。
【0037】
このような導電性粒子6を使用することにより、異方導電性接着剤として、接着剤2の面方向(厚み方向Xに直交する方向であって、図3の矢印Yの方向)においては、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、厚み方向Xにおいては、多数の金属電極4−金属電極5間を、一度にかつ各々を独立して接続し、低抵抗を得ることが可能になる。
【0038】
また、導電性粒子6のアスペクト比が5以上であることが好ましい。このような導電性粒子6を使用することにより、接着剤2として、異方導電性接着剤を使用する場合に、導電性粒子6間の接触確率が高くなる。従って、導電性粒子6の配合量を増やすことなく、金属電極4と金属電極5を電気的に接続することが可能になる。
【0039】
また、この異方導電性接着剤において、導電性粒子6の長径Lの方向を、フィルム状の異方導電性接着剤を形成する時点で、異方導電性接着剤の厚み方向Xにかけた磁場の中を通過させることにより、当該厚み方向Xに配向させて用いるのが好ましい。このような配向にすることにより、上述の、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、多数の金属電極4−金属電極5間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になるという効果が、より一層向上する。
【0040】
また、本発明に使用される金属粉末は、その一部に強磁性体が含まれるものが良く、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることが好ましい。これは、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子6を配向させることが可能になるからである。例えば、ニッケル、鉄、コバルトおよびこれらを含む2種類以上の合金等を挙げることができる。
【0041】
なお、導電性粒子6のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定するが、断面が円でない導電性粒子6の場合は、断面の最大長さを短径としてアスペクト比を求める。また、導電性粒子6は、必ずしもまっすぐな形状を有している必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても、問題なく使用できる。この場合、導電性粒子6の最大長さを長径としてアスペクト比を求める。
【0042】
本実施形態の接着剤を用いたフレキシブルプリント配線板等の配線板の実装方法としては、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分とする接着剤2を介して、加熱加圧処理を行うことにより、当該エポキシ樹脂を硬化させ、フレキシブルプリント配線板の金属電極を配線基板の金属電極に接続する。
【0043】
より具体的には、図5(a)に示すように、ガラス基板やガラスエポキシ基板等の配線基板1が有する金属電極4上に、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂およびエポキシ基を含有しない樹脂の少なくとも一方を含有する第1の接着剤7を載置し、当該第1の接着剤7を所定の温度に加熱した状態で、配線基板1の方向へ所定の圧力で加圧し、第1の接着剤7を配線基板1上に仮接着する。
【0044】
次いで、図5(b)に示すように、第1の接着剤7の表面上に、フィルム形状を有するとともに、第1の接着剤7に含有されるエポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂と、導電性粒子を含有する第2の接着剤8を載置し、当該第2の接着剤8を所定の温度に加熱した状態で、第1の接着剤7の方向へ所定の圧力で加圧し、第2の接着剤8を第1の接着剤7上に積層して仮接着する。
【0045】
次いで、図5(c)に示すように、フレキシブルプリント配線板3を下向きにした状態で、配線基板1の表面に形成された金属電極4と、フレキシブルプリント配線板3の表面に形成された金属電極5とが接続されるように、配線基板1とフレキシブルプリント配線板3との間に接着剤2を構成する第1の接着剤7と第2の接着剤8を介在させた状態で、配線基板1の表面に形成された金属電極4と、フレキシブルプリント配線板3の表面に形成された金属電極5との位置合わせを行う。
【0046】
次いで、図5(d)に示すように、第1の接着剤7と第2の接着剤8が所定の温度(150℃以下)になるように、適切な温度(例えば、160℃)に加熱された圧着部材であるプレスヘッド(不図示)を、フレキシブルプリント配線板3の上方に設置し、当該プレスヘッドを配線基板1の方向に移動させて、第1の接着剤7と第2の接着剤8を所定の温度に加熱した状態で、フレキシブルプリント配線板3を介して、第1の接着剤7と第2の接着剤8を配線基板1の方向へ所定の圧力で加圧することにより、第1の接着剤7と第2の接着剤8を加熱溶融させる。なお、この際、図5(d)に示すように、加熱溶融した第1の接着剤7と第2の接着剤8は混合して一体となって、接着剤2を構成することになる。また、この際、第1の接着剤7にエポキシ樹脂硬化剤が含有されるとともに、第2の接着剤8に反応性の高いエポキシ樹脂(即ち、第1の接着剤7に含有されるエポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂)が含有されているため、低温(150℃以下)で実装する際の、エポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂の反応速度が向上することになる。そして、予め設定した接着剤2の硬化時間(10秒)が経過すると、接着剤2の硬化温度の維持状態、および加圧状態を開放し、冷却を開始することにより、導電性の接着剤2を介して、金属電極4と金属電極5を接続し、フレキシブルプリント配線板3を配線基板1上に実装して、配線基板1とフレキシブルプリント配線板3を接合する。
【0047】
このように、本実施形態の電極接続方法においては、第2の接着剤8を第1の接着剤7上に積層した後、加熱加圧処理を行うことにより、第1の接着剤7と第2の接着剤8を加熱溶融させて、金属電極4と金属電極5とを接続する構成としている。即ち、第1の接着剤7と第2の接着剤8を分離して保存しておき、金属電極4と金属電極5とを接続する際に、第1の接着剤7と第2の接着剤8を積層する構成としている。従って、第1の接着剤7と第2の接着剤8を分離して保存している状態(即ち、接着剤2を用いて、金属電極4と金属電極5を接続する前の状態)において、第2の接着剤8が含有する反応性の高いエポキシ樹脂と、第1の接着剤7に含有されるエポキシ樹脂硬化剤が接触して反応が開始することを防止でき、接着剤2の保存安定性を向上させることができる。
【0048】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、接着剤2が、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂およびエポキシ基を含有しない樹脂の少なくとも一方を含有する第1の接着剤7と、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂と、導電性粒子を含有する第2の接着剤8とを備えている。従って、加熱加圧処理を行うことにより、第1の接着剤と第2の接着剤を加熱溶融させる際に、第1の接着剤が含有するエポキシ樹脂硬化剤と第2の接着剤が含有するエポキシ樹脂の反応速度が向上することになる。従って、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5と配線基板1の金属電極4間を、接着剤2を介して接続する際に、低温(150℃以下)かつ短時間(10秒間)で接着剤2を硬化させることが可能になるとともに、高い接続信頼性を得ることができる。その結果、低温実装に有用な低温硬化型の接着剤を提供することが可能になる。
【0049】
(2)本実施形態においては、第1の接着剤7と第2の接着剤8を分離する構成としている。従って、第1の接着剤7と第2の接着剤8を分離して保存することが可能になり、第2の接着剤8が含有する反応性の高いエポキシ樹脂と、第1の接着剤7に含有されるエポキシ樹脂硬化剤が接触して反応が開始することを防止できる。従って、接着剤2の保存安定性を向上させることができる。
【0050】
(3)本実施形態においては、第2の接着剤8が、第1の接着剤7に含有されるエポキシ樹脂硬化剤との可使時間が5日以内となるエポキシ樹脂を含有する構成としている。従って、第2の接着剤8が含有するエポキシ樹脂と第1の接着剤7が含有するエポキシ樹脂硬化剤の反応性をより一層高めることができる。
【0051】
(4)本実施形態においては、第2の接着剤8が含有するエポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂を使用する構成としている。従って、第2の接着剤8が含有するエポキシ樹脂と第1の接着剤7が含有するエポキシ樹脂硬化剤の反応性をより一層高めることができる。
【0052】
(5)本実施形態においては、第1の接着剤7の厚みを、2μm〜10μm以下に設定する構成としている。従って、加熱加圧処理を行うことにより、第1の接着剤7と第2の接着剤8を加熱溶融させて、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5と配線基板1の金属電極4間を、接着剤2を介して接続する際に、導電性粒子を含有しない第1の接着剤7の厚みが薄いため、接着剤2の導電性を向上させることが可能になる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
・上記実施形態においては、接着剤2を介して、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5を配線基板1の金属電極4に接続する構成としたが、本発明の接着剤2を、例えば、ICチップ等の電子部品の突起電極(または、バンプ)と配線基板1の金属電極4との接続に使用する構成としても良い。
【0054】
・また、第2の接着剤に、エポキシ樹脂との反応性の低い潜在性硬化剤を含有する構成としても良い。この潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第三級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、酸無水物系、フェノール系、および、これらの変性物を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜およびケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものを使用することができる。
【0055】
・上記実施形態においては、第1の接着剤7を配線基板1上に仮接着する。次いで、第1の接着剤7の表面上に、第2の接着剤8を載置し、当該第2の接着剤8を所定の温度に加熱した状態で、第1の接着剤7の方向へ所定の圧力で加圧し、第2の接着剤8を第1の接着剤7上に積層して仮接着するが、他の方法であっても良い。例えば、第2の接着剤8を配線基板1上に仮接着する。次いで、第2の接着剤8の表面上に、第1の接着剤7を載置し、当該第1の接着剤7を所定の温度に加熱した状態で、第2の接着剤8の方向へ所定の圧力で加圧し、第1の接着剤7を第2の接着剤8に積層して仮接着しても良い。
【実施例1】
【0056】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0057】
(実施例1)
(接着剤の作製)
第1の接着剤を作製するにあたり、エポキシ樹脂として、(1)ビスフェノールA型のエポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名JER1007、エポキシ当量約2000〕を使用し、また、エポキシ樹脂硬化剤としては、(2)イミダゾール系硬化剤〔四国化成工業(株)製、商品名キュアゾール2E4MZ−CN〕を使用し、これら(1)〜(2)を重量比で(1)50/(2)50の割合で配合した。そして、これらのエポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂硬化剤を、2−エトキシエチルアセタートに溶解して、分散させた後、三本ロールによる混練を行い、固形分が75重量%である溶液を作製した。次いで、この溶液を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、70℃で15分間、乾燥、固化させることにより、厚さ5μmのフィルム形状を有する第1の接着剤を作製した。
【0058】
第2の接着剤を作成するにあたり、導電性粒子として、長径Lの分布が3μmから20μm、短径Rの分布が0.1μmから0.3μmである直鎖状ニッケル微粒子を用いた。また、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂としては、(3)ナフタレン型エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン4032D、可使時間2日〕を使用し、他のフィルム形成が可能なエポキシ樹脂としては、(4)ビスフェノールA型のフェノキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名JER1256〕、および(5)エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名JER1007〕を使用した。更に、マイクロカプセル型潜在性硬化剤としては、(6)マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3932HP〕を使用し、これら(3)〜(6)を重量比で(3)30/(4)50/(5)20/(6)40の割合で配合した。そして、これらのエポキシ樹脂、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を、2−エトキシエチルアセタートに溶解して、分散させた後、三本ロールによる混練を行い、固形分が50重量%である溶液を作製した。この溶液に、固形分の総量(Ni粉末+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が、0.2体積%となるように上記Ni粉末を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することによりNi粉末を均一に分散し、第2の接着剤用の複合材料を作製した。次いで、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、磁束密度100mTの磁場中、60℃で30分間、乾燥、固化させることにより、膜中の直鎖状粒子が磁場方向に配向した、厚さ25μmのフィルム形状の異方導電性をもつ第2の接着剤を作製した。
【0059】
(接続信頼性評価)
まず、幅80μm、長さ3mm、高さ18μmの金メッキが施された銅電極が120μm間隔で32個配列されたフレキシブルプリント配線板と、幅80μm、長さ3mm、高さ18μmの金メッキが施された銅電極が120μm間隔で32個配列された配線基板(ガラスクロスエポキシ基板)とを用意した。そして、配線基板が有する銅電極上に作製した第1の接着剤を載置し、第1の接着剤を40℃に加熱した状態で、配線基板1の方向へ0.5MPaの圧力で加圧し、第1の接着剤を配線基板上に仮接着した。次いで、第1の接着剤の表面上に第2の接着剤を載置し、当該第2の接着剤を60℃に加熱した状態で、第1の接着剤7の方向へ0.5MPaの圧力で加圧し、第2の接着剤を第1の接着剤上に積層して仮接着した。次いで、フレキシブルプリント配線板を下向きにした状態で、配線基板の表面に形成された銅電極と、フレキシブルプリント配線板の表面に形成された銅電極とが接続されるように、配線基板とフレキシブルプリント配線板との間に接着剤を構成する第1の接着剤と第2の接着剤を介在させた状態で、配線基板の表面に形成された銅電極と、フレキシブルプリント配線板の表面に形成された銅電極との位置合わせを行った。そして、第1,第2の接着剤が所定の温度(150℃)になるように、適切な温度(160℃)に加熱されたプレスヘッドをフレキシブルプリント配線板の上方に設置し、当該プレスヘッドを配線基板の方向に移動させて、第1,第2の接着剤を所定の温度(150℃)に加熱しながら、第1の接着剤と第2の接着剤を加熱溶融させるとともに、4MPaの圧力で10秒間加圧して接着させて実装し、加熱溶融した第1の接着剤と第2の接着剤が混合して一体となった接着剤を介して、電極間が接着されたフレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を得た。次いで、この接合体において、銅電極、および接着剤を介して接続された連続する32個の電極の抵抗値を四端子法により求め、求めた値を32で除することにより、1電極あたりの接続抵抗(以下、「初期接続抵抗」という。)を求めた。そして、この評価を10回繰り返し、初期接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0060】
(耐熱・耐湿評価)
また、耐熱・耐湿試験として、上記の温度(150℃)にて実装されたフレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を、温度を80℃、湿度を95%に設定した恒温恒湿槽中に500時間放置した後、接合体を恒温恒湿槽から取り出し、再び、上記と同様にして、接続抵抗(以下、「500時間後の接続抵抗」という。)の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0061】
(保存安定性評価)
また、作製した第1,第2の接着剤を25℃の温度で1ヶ月間放置した後、上述と同様にして、フレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を得た。その後、上述と同一条件により、接続信頼性評価、および耐熱・耐湿評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
第1の接着剤を作製するにあたり、エポキシ樹脂硬化剤として、実施例1において使用したイミダゾール系硬化剤とは種類の異なるイミダゾール系硬化剤〔四国化成工業(株)製、商品名キュアゾール2MZ−A〕を使用し、また、第2の接着剤を作製するにあたり、実施例1において使用したナフタレン型エポキシ樹脂の代わりに、上述のイミダゾール系硬化剤〔四国化成工業(株)製、商品名キュアゾール2MZ−A〕との可使時間が25日となるビスフェノールA型のエポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン850〕を使用したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、第1,第2の接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続信頼性評価、耐熱・耐湿評価、および保存安定性評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0063】
(比較例2)
(接着剤の作製)
上述の実施例1において作製した第1,第2の接着剤を作製する代わりに、上述の(3)〜(6)と、上述の(2)イミダゾール系硬化剤〔四国化成工業(株)製、商品名キュアゾール2E4MZ−CN〕を使用するとともに、これら(2)〜(6)を重量比で(2)10/(3)30/(4)50/(5)20/(6)40の割合で配合し、上述の実施例1と同様にして、厚さ28μmのフィルム形状の異方導電性をもつ接着剤を作製した。
【0064】
(接続信頼性評価)
まず、幅80μm、長さ3mm、高さ18μmの金メッキが施された銅電極が120μm間隔で32個配列されたフレキシブルプリント配線板と、幅80μm、長さ3mm、高さ18μmの金メッキが施された銅電極が120μm間隔で32個配列された配線基板(ガラスクロスエポキシ基板)とを用意した。そして、このフレキシブルプリント配線板と配線基板の間に作製した接着剤を挟み、接着剤が所定の温度(150℃)になるように、適切な温度(160℃)に加熱されたプレスヘッドをフレキシブルプリント配線板の上方に設置し、当該プレスヘッドを配線基板の方向に移動させて、接着剤を所定の温度(150℃)に加熱しながら、4MPaの圧力で10秒間加圧して接着させて実装し、接着剤を介して、電極間が接着されたフレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を得た。次いで、この接合体において、銅電極、および接着剤を介して接続された連続する32個の電極の抵抗値を四端子法により求め、求めた値を32で除することにより、1電極あたりの接続抵抗(以下、「初期接続抵抗」という。)を求めた。そして、この評価を10回繰り返し、初期接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0065】
その後、上述の実施例1と同一条件により、耐熱・耐湿評価、および保存安定性評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

表1に示すように、実施例1においては、低温(150℃)で実装した場合の初期接触抵抗、および500時間後の接続抵抗が殆ど変化しておらず、低温で実装を行う場合であっても、電極間の接続信頼性が高いことが判る。これは、実施例1の接着剤においては、可使時間が2日となるエポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせを選択したため、第1の接着剤と第2の接着剤を加熱溶融させる際に、両者の反応速度が向上したためであると考えられる。また、実施例1においては、第1,第2の接着剤を25℃の温度で1ヶ月間放置した後の初期接触抵抗、および500時間後の接続抵抗が殆ど変化しておらず、保存安定性に優れていることが判る。これは、実施例1においては、第1の接着剤と第2の接着剤を分離して保存しておき、電極間を接続する際に、第1の接着剤と第2の接着剤を積層する構成としているため、第2の接着剤が含有する反応性の高いエポキシ樹脂(即ち、第1の接着剤7に含有されるエポキシ樹脂硬化剤との可使時間が2日となるナフタレン型エポキシ樹脂)と、第1の接着剤に含有されるエポキシ樹脂硬化剤が接触して反応が開始することを防止できたためであると考えられる。
【0067】
一方、比較例1においては、表1に示すように、初期接触抵抗に比し、500時間後の接続抵抗が大幅に上昇しており、低温で実装を行う際に、電極間の接続信頼性を維持することができなかったことが判る。また、比較例1においては、第1,第2の接着剤を25℃の温度で1ヶ月間放置した後の初期接触抵抗に比し、500時間後の接続抵抗が大幅に上昇しており、保存安定性に乏しいことが判る。これは、比較例1の接着剤においては、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が25日となるビスフェノールA型のエポキシ樹脂を使用しているため、低温(150℃)で実装した場合に、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の硬化反応が十分に進行しなかったため、接着力が低下して、接続不良が発生したためであると考えられる。
【0068】
また、比較例2においては、低温(150℃)で実装した場合の初期接触抵抗、および500時間後の接続抵抗が殆ど変化しておらず、低温で実装を行う場合であっても、電極間の接続信頼性が高いものの、第1,第2の接着剤を25℃の温度で1ヶ月間放置した後の初期接触抵抗と、500時間後の接続抵抗が大幅に上昇しており、保存安定性に乏しいことが判る。これは、比較例2においては、第1の接着剤と第2の接着剤を分離して保存しておき、電極間を接続する際に、第1の接着剤と第2の接着剤を積層する構成とした実施例1とは異なり、単層の接着剤にエポキシ樹脂硬化剤と、このエポキシ樹脂硬化剤との可使時間が2日となるナフタレン型エポキシ樹脂を含有する構成としているため、単層の接着剤において、ナフタレン型エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤が接触して反応が直ちに開始したためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の活用例としては、複数の被接合部材の間に設けられ、加熱加圧処理を行うことにより、複数の被接合部材の各々に形成された電極間を接続する接着剤およびこれを用いた電極接続方法が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態に係る接着剤により、フレキシブルプリント配線板を実装した配線基板を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る接着剤の構成を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態に係る接着剤として、導電性粒子を含有する異方導電性接着剤を使用し、異方導電性接着剤を介して、フレキシブルプリント配線板を配線基板に実装した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る接着剤において使用される導電性粒子を説明するための図である。
【図5】(a)〜(d)は、本実施形態に係る接着剤を用いたフレキシブルプリント配線板と配線基板の実装方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0071】
1…配線基板、2…接着剤、3…フレキシブルプリント配線板、4…金属電極(金メッキが施された銅電極)、5…金属電極(金メッキが施された銅電極)、6…導電性粒子、7…第1の接着剤、8…第2の接着剤、L…導電性粒子の長径、R…導電性粒子の短径、X…フィルム形状を有する接着剤の厚み方向、Y…フィルム形状を有する接着剤の面方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂およびエポキシ基を含有しない樹脂の少なくとも一方を含有するフィルム形状の第1の接着剤と、
前記エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂と、導電性粒子を含有するフィルム形状の第2の接着剤と
を備えることを特徴とする接着剤。
【請求項2】
前記第2の接着剤が含有するエポキシ樹脂がナフタレン型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記導電性粒子が磁性を有する単体、合金、もしくは複合体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記第1の接着剤の厚みが、2μm〜10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
前記導電性粒子の長径方向を、前記フィルム形状を有する接着剤の厚み方向に配向させたことを特徴とする1乃至請求項4のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項6】
第1の基板が有する第1の電極と、該第1の基板に接合される第2の基板が有する第2の電極とを接続する電極接続方法において、
前記第1の電極上に、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂およびエポキシ基を含有しない樹脂の少なくとも一方を含有する第1の接着剤を載置し、該第1の接着剤を第1の基板上に仮接着する工程と、
前記第1の接着剤の表面上に、フィルム形状を有するとともに、前記エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂と、導電性粒子を含有する第2の接着剤を載置し、該第2の接着剤を前記第1の接着剤上に積層して仮接着する工程と、
前記第1の電極と、前記第2の電極が接続されるように、前記第1の基板と前記第2の基板との間に前記第1の接着剤と前記第2の接着剤を介在させた状態で、前記第1の基板と前記第2の基板の位置合わせを行う工程と、
加熱加圧処理を行うことにより、前記第1の接着剤と前記第2の接着剤を加熱溶融させて、前記第1の電極と前記第2の電極とを接続する工程と
を少なくとも含むことを特徴とする電極接続方法。
【請求項7】
第1の基板が有する第1の電極と、該第1の基板に接合される第2の基板が有する第2の電極とを接続する電極接続方法において、
前記第1の電極上に、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤との可使時間が10日以内となるエポキシ樹脂と、導電性粒子を含有する第2の接着剤を載置し、該第2の接着剤を第1の基板上に仮接着する工程と、
前記第1の接着剤の表面上に、フィルム形状を有するとともに、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ当量が1000以上のエポキシ樹脂およびエポキシ基を含有しない樹脂の少なくとも一方を含有する第1の接着剤を載置し、該第1の接着剤を前記第2の接着剤上に積層して仮接着する工程と、
前記第1の電極と、前記第2の電極が接続されるように、前記第1の基板と前記第2の基板との間に前記第1の接着剤と前記第2の接着剤を介在させた状態で、前記第1の基板と前記第2の基板の位置合わせを行う工程と、
加熱加圧処理を行うことにより、前記第1の接着剤と前記第2の接着剤を加熱溶融させて、前記第1の電極と前記第2の電極とを接続する工程と
を少なくとも含むことを特徴とする電極接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−37389(P2010−37389A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199890(P2008−199890)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】