説明

搬送装置、処理システム、搬送装置の制御方法およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

【課題】 減圧環境下においても、障害物と接触したことを検出することが可能な搬送装置を提供すること。
【解決手段】 前進後退が可能な、搬送体Gを支持する支持部材71と、支持部材71が前進したとき、支持部材71の先端が障害物に接触したことを検出するセンサ8と、を備え、センサ8が、支持部材71の先端に接地された状態で設けられた、可撓性を有する第1の導電性リング81と、第1の導電性リング81の内側に、第1の導電性リング81から離隔して設けられた、第2の導電性リング82と、第1の導電性リング81が障害物に接触し変形して第2の導電性リング82に接触したとき、第1の導電性リング81と第2の導電性リング82とが短絡したことを検出する検出器と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送装置、処理システム、搬送装置の制御方法およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
CVD装置など、ガラス基板を高温にして処理する装置の場合、ガラス基板が熱などにより割れることがある。ガラス基板の搬入出に際しては、チャンバー内にてガラス基板の端を保持してガラス基板をリフトアップし、リフトアップされたガラス基板の下方に搬送装置のピックを進入させる。ガラス基板が割れていると、ガラス基板の片側しか持ち上がらないため、割れたガラス基板がピックの進入経路を塞いでしまう。このため、ピックの先端がガラス基板に衝突し、割れたガラス基板が細かく砕け散り、かけらがチャンバー内に散乱する。割れたガラス基板やかけらをチャンバー内から取り除き、装置を復旧させるためには、膨大な時間がかかる。この間、製造ラインは停止である。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に記載されているように、ピック(ロボットハンド)の先端に障害物が接触したことを検出するセンサを、搬送装置に取り付けるようにしている。
【0004】
特許文献1においては、内部に流体を封入した膨張収縮自在な中空体を、ピックの先端に取り付ける。中空体が障害物に接触すると中空体は潰れ、内部に封入された流体の圧力が上昇する。この圧力上昇を圧力センサで検出することで、ピックの先端に障害物が接触したことが検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−60004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、中空体の内部に封入された流体の圧力の上昇を圧力センサで検出する方式である。このため、搬送装置がガラス基板を、減圧環境下で搬送する場合には中空体の変形が起こり難く、障害物が接触したことを検出することが難しい、という事情がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、減圧環境下においても障害物と接触したことを検出することが可能な搬送装置、この搬送装置を備えた処理システム、障害物の破壊を抑制し得る搬送装置の制御方法、及びこの制御方法を搬送装置に実行させるプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の態様に係る搬送装置は、搬送体を搬送する搬送装置であって、前進後退が可能な、前記搬送体を支持する支持部材と、前記支持部材が前進したとき、前記支持部材の先端が障害物に接触したことを検出するセンサと、を備え、前記センサが、前記支持部材の先端に接地された状態で設けられた、可撓性を有する第1の導電性リングと、前記第1の導電性リングの内側に、前記第1の導電性リングから離隔して設けられた、第2の導電性リングと、前記第1の導電性リングが前記障害物に接触し変形して前記第2の導電性リングに接触したとき、前記第1の導電性リングと前記第2の導電性リングとが短絡したことを検出する検出器と、を含む。
【0009】
この発明の第2の態様に係る処理システムは、共通搬送室と、前記共通搬送室に接続された、被処理体に処理を施す処理室と、前記共通搬送室に配置された、前記被処理体を搬送する搬送装置と、を備えた処理システムであって、前記搬送装置に、第1の態様に係る搬送装置が用いられている。
【0010】
この発明の第3の態様に係る搬送装置の制御方法は、前進後退が可能な、搬送体を支持する支持部材と、前記支持部材が前進したとき、前記支持部材の先端が障害物に接触したことを検出するセンサと、を備えた、前記搬送体を搬送する搬送装置の制御方法であって、前記支持部材を、所定の位置に向けて第1の速度で前進させるステップと、前記所定の位置の手前に設定された、前記障害物の有無を確認する確認区間において、前記第1の速度よりも遅い第2の速度で、前記支持部材を、前記所定の位置に向けて前進させるステップと、前記確認区間を通過した後、前記第2の速度よりも速い第3の速度で、前記支持部材を、前記所定の位置に向けて前進させるステップと、を含む。
【0011】
この発明の第4の態様に係るコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータ上で動作し、搬送体を搬送する搬送装置を制御する制御プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、第3の態様に係る制御方法が行われるように、前記搬送装置を制御させる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、減圧環境下においても障害物と接触したことを検出することが可能な搬送装置、この搬送装置を備えた処理システム、障害物の破壊を抑制し得る搬送装置の制御方法、及びこの制御方法を搬送装置に実行させるプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る搬送装置を備えた処理システムの一例を示す水平断面図
【図2A】図1中のII−II線に沿う断面図(搬送装置が退避した状態)
【図2B】図1中のII−II線に沿う断面図(搬送装置が進出した状態)
【図3A】センサの一例を示す斜視図
【図3B】センサの分解図
【図4A】センサに障害物が接触する状態を示す平面図
【図4B】センサに障害物が接触する状態を示す平面図
【図4C】センサに障害物が接触する状態を示す平面図
【図5A】センサの等価回路の一例を示す等価回路図
【図5B】センサの等価回路の一例を示す等価回路図
【図6】この発明の第2の実施形態に係る搬送装置の制御方法の一例を示すタイムチャート
【図7】区間i、確認区間ii、区間iiiの一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。この説明において、参照する図面全てにわたり、同一の部分については同一の参照符号を付す。
【0015】
(第1の実施形態)
図1はこの発明の第1の実施形態に係る搬送装置を備えた処理システムの一例を示す水平断面図、図2A及び図2Bは図1中のII−II線に沿う断面図である。図1、図2A及び図2Bに示す処理システムは、搬送体として太陽電池モジュールやFPDの製造に用いられるガラス基板を用い、このガラス基板に成膜を施す処理システムである。
【0016】
図1に示すように、処理システム1は、ロードロック室2、処理室3a及び3b、並びに共通搬送室4を含んで構成される。ロードロック室2では、大気側と減圧側との間で圧力変換が行われる。処理室3a及び3bでは、搬送体G、例えば、ガラス基板に対して加熱、成膜等の熱的処理が施される。
【0017】
本例においては、ロードロック室2、処理室3a及び3b、並びに共通搬送室4は真空装置であり、それぞれ搬送体Gを所定の減圧状態下におくことが可能な、気密に構成された容器本体21、31a、31b、及び41を備えている。容器本体21、31a、31b、及び41には、内部を減圧状態とするために排気口を介して真空ポンプなどの排気機構が接続されている。図2A及び図2Bには、処理室3aに設けられた排気口32a及び排気口32aに接続された真空ポンプ5a、並びに共通搬送室4に設けられた排気口42及び排気口42に接続された真空ポンプ5bが示されている。さらに、容器本体21、31a、31b、及び41には、開口部23a、23b、33a、33b、43a、43b、及び43cが設けられている。搬送体Gは、これらの開口部を介して搬入出される。
【0018】
ロードロック室2の容器本体21は、開口部23a、及びゲートバルブ室6aを介して、処理システム1の外部、即ち、大気側に連通される。ゲートバルブ室6aには、開口部23aを開閉するゲートバルブGVが収容されている。なお、ゲートバルブGVの一例は、図2Aに示されている。また、容器本体21は、開口部23b、ゲートバルブ室6b、及び開口部43aを介して容器本体41に連通される。ゲートバルブ室6bには、開口部23bを開閉するゲートバルブGVが収容されている。
【0019】
処理室3aの容器本体31aは、開口部33a、この開口部33aを開閉するゲートバルブGVが収容されたゲートバルブ室6c、及び開口部43bを介して容器本体41に連通される。同様に、処理室3bの容器本体31bは、開口部33b、この開口部33bを開閉するゲートバルブGVが収容されたゲートバルブ室6d、及び開口部43cを介して容器本体41に連通される。
【0020】
共通搬送室4の容器本体41の平面形状は、本例では矩形状である。矩形状の四辺のうち、三辺に、開口部43a、43b、43cが設けられている。共通搬送室4の内部には、この発明の第1の実施形態に係る搬送装置7が設置されている。搬送装置7は、搬送体Gを、ロードロック室2から処理室3a又は3bへ、処理室3a又は3bから処理室3b又は3aへ、処理室3a又は3bからロードロック室2へと搬送する。このため、搬送装置7は、搬送体Gを昇降させる昇降動作、及び搬送体Gを旋回させる旋回動作に加え、ロードロック室2、処理室3a及び3bの内部への進出退避動作が可能に構成されている。
【0021】
このような処理システム1の各部の制御、及び搬送装置7の制御は、制御部100により行われる。制御部100は、例えば、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるプロセスコントローラ101を有する。コントローラ101には、オペレータが処理システム1を管理するために、コマンドの入力操作等を行うキーボードや、処理システム1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース102が接続されている。
【0022】
プロセスコントローラ101には記憶部103が接続されている。記憶部103は、処理システム1で実行される各種処理を、プロセスコントローラ101の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて処理システム1の各部に処理を実行させるためのレシピが格納される。レシピは、例えば、記憶部103の中の記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。レシピは、必要に応じて、ユーザーインターフェース102からの指示等にて記憶部103から読み出され、読み出されたレシピに従った処理をプロセスコントローラ101が実行することで、処理システム1、及び搬送装置7が、プロセスコントローラ101の制御のもと、所望の処理、制御が実施される。
【0023】
搬送装置7が共通搬送室4内に退避した状態を図2Aに、搬送装置7が処理室3a内に進出した状態を図2Bに示す。
【0024】
図2A及び図2Bに示すように、搬送装置7は、搬送体Gを支持する支持部材であるピック71を備えたピックユニット72と、ピックユニット72をスライドさせるスライドユニット73と、スライドユニット73を駆動させるドライブユニット74とを含んで構成される。
【0025】
スライドユニット73には、スライドベース73aが取り付けられており、ピックユニット72はスライドベース73aに取り付けられる。スライドベース73aは、スライドベース駆動部73bにより、スライドユニット73の長手方向に前後にスライドされる。これにより、ピックユニット72は前進後退し、ロードロック室2、処理室3a及び3bの内部に対して進出退避する。例えば、図2Bに示すように、スライドベース73aがスライドされると、スライドベース73aに取り付けられたピックユニット72は、例えば、開口部43b及び33aを介して処理室3a内に進出される。また、スライドユニット73は、ドライブユニット74により、昇降、及び旋回される。これにより、スライドユニット73は、例えば、共通搬送室4内において、昇降、及び旋回される。
【0026】
本例の処理システム1は、一度に複数枚の搬送体Gを高さ方向に水平に載置して、複数の搬送体Gを処理するように構成されている。例えば、処理室3aにおいては、一対の下部電極34及び上部電極35を備えた段が、複数段配置されている。本例では、2段の下部電極34及び上部電極35が配置されており、各対における上部電極と下部電極の間に発生したプラズマによって同時に2枚の搬送体Gに処理を施すことが可能となっている。そのため、搬送装置7は、一度に複数枚の搬送体Gを搬送できるように構成されている。本例では、ピックユニット72が、二段のピック71を備えており、一度に二枚の搬送体Gを搬送することができる。二段のピック71のそれぞれの先端には、ピック71の進出先に、障害物があるか否かを検出するセンサ8が取り付けられている。
【0027】
図3Aは、センサ8の一例を示す斜視図である。また、図3Bに、センサ8の分解図を示す。
【0028】
図3A及び図3Bに示すように、センサ8は、ピック71の先端に設けられた第1の導電性リング81と、第1の導電性リング81の内側に設けられた第2の導電性リング82と、を有する。第1の導電性リング81、及び第2の導電性リング82には、例えば、バネ鋼が用いられ、ともに可撓性を有している。バネ鋼の例としては、ステンレスや、りん青銅などを挙げることができる。
【0029】
第1の導電性リング81、及び第2の導電性リング82の、ピック71の先端への取り付け方の一例は次の通りである。
【0030】
まず、凸部を有するベース83を、ピック71の先端に、例えば、ネジ止めにて固定する。次に、第1の導電性リング81の側面の一部を、ベース83の凸部と絶縁部材84とで挟む。絶縁部材84は、第1の導電性リング81と第2の導電性リング82とを互いに絶縁させた状態、かつ、離間させた状態で保持する保持部材である。第2の導電性リング82には、その上部に、第2の導電性リング82の外側に向かって延びる電気的接触端子85が設けられている。この電気的接触端子85を絶縁部材84の上面に載せるとともに、第2の導電性リング82の側面を絶縁部材84に当接させる。次に、絶縁性のネジ86を用いて、第2の導電性リング82、絶縁部材84、及び第1の導電性リング81をベース83に固定する。ここで、ベース83を導電性の材料で構成しておくと、ピック71は接地されているので、第1の導電性リング81をベース83に取り付けるだけで、第1の導電性リング81を接地できる、という利点を得ることができる。次に、検出端子87を、電気的接触端子85に当接させる。検出端子87の他端は、第1の導電性リング81と第2の導電性リング82とが短絡したか否かを検出する検出器に接続される。次に、導電性のネジ88を用いて、検出端子87、及び電気的接触端子85を絶縁部材84の上面に固定する。
【0031】
このようにして、第1の導電性リング81、及び第2の導電性リング82を、ピック71の先端に取り付けることができる。
【0032】
なお、本実施の形態においては、電気的接触端子85が第2の導電性リング82の上部から外側に向う構造となっているが、下部から外側に向ってもよく、また、検出端子87が接続可能であれば必ずしも外側に向って伸びる構造である必要は無い。
【0033】
次に、具体的な検出の一例を説明する。
【0034】
図4A〜図4Cは、センサ8に、障害物が接触する状態を示す平面図である。
【0035】
まず、図4Aに示すように、ピック71の進出先に障害物89があると、ピック71の前進に伴って第1の導電性リング81が障害物89に接触する。第1の導電性リング81は可撓性を有する。このため、障害物89に接触すると、ピック71の前進に伴い、つぶれる。やがて、図4Bに示すように、第1の導電性リング81は、第2の導電性リング82に接触し、接地された第1の導電性リング81と第2の導電性リング82とが短絡する。この短絡を検出器により検出することで、ピック71の先端が障害物に接触したことを検出することができる。
【0036】
また、本例のように、第2の導電性リング82も可撓性を有する導電性材料で構成しておくと、短絡、短絡検出、ピック71の停止までの間、ピック71が前進を続けても、図4Cに示すように、第2の導電性リング82がつぶれるので、障害物89の破損を抑制できる、という利点を得ることができる。
【0037】
なお、第1の導電性リング81のサイズ、材質の一例を挙げるとするならば、直径55mm、板厚0.05mmのステンレスである。また、第2の導電性リング82のサイズ、材質の一例を挙げるとするならば、直径36mm、板厚0.05mmのステンレスである。
【0038】
このように、第1の導電性リング81、及び第2の導電性リング82の双方とも、板圧を0.05mm程度と薄くすることで、復元性を持たせることができる。このため、第1の導電性リング81が障害物に接触して変形した、また、第2の導電性リング82が第1の導電性リング81と接触して変形したとしても、それぞれ復元可能であるので、再度使用することができる。
【0039】
また、第1の導電性リング81と第2の導電性リング82との離隔距離は、上記サイズ例によれば、約10mmとなる。この程度、第1の導電性リング81と第2の導電性リング82とを離隔させておけば、ピック71の前進後退時や旋回時に、第1の導電性リング81及び第2の導電性リング82が振動した場合でも、互いに接触してしまうことを抑制することができる。
【0040】
図5A及び図5Bは、センサ8の等価回路の一例を示す等価回路図である。
【0041】
図5Aに示すように、一実施形態では、4本のピック71を有する。このため、本等価回路例では、センサ8は、4個の第1の導電性リング81及び4個の第2の導電性リング82を有する。4個の第1の導電性リング81はそれぞれ接地されている。また、4個の第2の導電性リング82はそれぞれ検出器9の一端に接続されている。検出器9は、例えば、抵抗rと、検出回路91とを備えている。抵抗rの一端は電源Vsourceに接続され、他端は4個の第2の導電性リング82のそれぞれに接続されている。検出回路91の入力は、抵抗rと4個の第2の導電性リング82との相互接続点92に接続されており、出力はプロセスコントローラ101に接続されている。
【0042】
検出回路91には、電源Vsourceから抵抗rを介して、検出用の電流Iが流されている。図5Aに示すように、第1の導電性リング81と第2の導電性リング82とが短絡していない状態では電流Iの値は一定である。このため、相互接続点92の電位は一定の値となる。
【0043】
なお、電源Vsourceの電位の一例を挙げるとするならば24V程度、電流Iの一例を挙げるとするならば15mA程度である。
【0044】
第1の導電性リング81が一つでも第2の導電性リング82に接触すると、図5Bに示すように、相互接続点92が、互いに接触した第1の導電性リング81と第2の導電性リング82とを介して接地点GNDに短絡される。このため、電流Iは、電源Vsourceから接地点GNDに向かって流れ、相互接続点92の電位が変化、本例では電位が低下する。この電位の低下を、検出回路91が検出することで、ピック71の先端が障害物に接触したことを検出することができる。検出回路91には、電圧計、電流計、抵抗rの両端の電位差を比較するコンパレータなど、相互接続点92の電位の低下を検出できるものであれば用いることができる。検出回路91は、相互接続点92の電位の低下を検出すると、“障害物に接触したこと”を示す信号Sをプロセスコントローラ101に送信する。“障害物に接触したこと”を示す信号Sをプロセスコントローラ101が受信すると、プロセスコントローラ101は、搬送装置7に対してピック71の前進を停止させるコマンドを出力する。このコマンドを受け、搬送装置7はピック71の前進を停止させる。この後、搬送装置7はピック71を後退させる。この後、処理システム1を停止させ、障害物の除去作業が行える状態とするか、あるいは処理室が複数ある場合には、障害物があった処理室の使用を一時的に停止させるなどの処置が行われる。
【0045】
また、第1の導電性リング81及び第2の導電性リング82は、双方とも機械的な接点である。このため、第1の導電性リング81が第2の導電性リング82に接触した際、チャタリングが起きる可能性がある。チャタリングが起きると、相互接続点92の電位は、低下と上昇とを繰り返し、揺動しながら徐々に接地電位に収束していく。チャタリングが起きている間、検出回路91は、上記信号Sを繰り返し発することになる。
【0046】
このような事情を抑制するには、例えば、電位の低下がソフトの制御周期(制御クロックの周期)の複数回に及んで継続して観測された場合に、ピック71の先端が“障害物に接触した”と判断するようにすれば良い。制御周期の一例は20msである。例えば、20msの制御周期で2回以上継続して電位の低下が観測された場合に、検出回路91が、上記信号Sをプロセスコントローラ101に送信するようにする。あるいはプロセスコントローラ101が信号Sを20msの制御周期で2回以上継続して受信し続けた場合に、プロセスコントローラ101が、ピック71の先端が“障害物に接触した”と判断するようにしても良い。
【0047】
また、このような判断手法によれば、前進後退時の振動や、旋回時の遠心力による第1の導電性リング81と第2の導電性リング82との瞬間的な接触については、“障害物に接触した”と判断しないようにもできる。このため、センサ8の“障害物の接触”に関する判断精度が高まり、誤検出を抑制できる、という利点も得ることもできる。
【0048】
このように、第1の実施形態に係る搬送装置は、センサ8が、ピック71の先端に接地された状態で設けられた可撓性を有する第1の導電性リング81、及び第1の導電性リング81の内側に設けられた第2の導電性リング82を有する。さらに、センサ8は、接地された第1の導電性リング81が、障害物89との接触により変形して第2の導電性リング82に接触したとき、第1の導電性リング81と第2の導電性リング82とが短絡したことを検出する検出器9を備えている。
【0049】
このような第1の実施形態に係る搬送装置によれば、減圧環境下においても、ピック71の先端が、障害物と接触したことを検出することが可能となる、という利点を得ることができる。
【0050】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、障害物の破壊を抑制し得る搬送装置の制御方法に関する。
【0051】
第2の実施形態に係る搬送装置の制御方法は、上記第1の実施形態に係る搬送装置の制御方法として適用されることが好ましい。
【0052】
しかし、第2の実施形態に係る搬送装置の制御方法は、上記第1の実施形態に係る搬送装置に適用されるばかりでなく、前進後退が可能な、搬送体を支持する支持部材(ピック)と、この支持部材が前進したとき、支持部材の先端が障害物に接触したことを検出するセンサと、を備えた搬送装置であれば、適用することができる。
【0053】
第2の実施形態に係る搬送装置の制御方法においては、例えば、処理室に搬送体Gがないときと、あるときとで、ピック71が前進する速度を変える。即ち、処理室に搬送体Gがないときと、あるときとで、スライドユニット73によるピックユニット72のスライド制御を変えるものである。
【0054】
図6は、この発明の第2の実施形態に係る搬送装置の制御方法の一例を示すタイムチャートである。図6の縦軸は、ピック71のスライド速度を示し、横軸は時間を示している。
【0055】
(処理室に搬送体がないとき)
例えば、処理室に搬送体Gがないときは、ピック71の前進先に“障害物はない”と考えることができる。このため、図6の上段の波形に示すように、ピック71を、共通搬送室内から処理室内の所定の位置、例えば、処理室内の搬送体Gの受け渡し位置までの全区間、最高速度Vmaxを使って前進させることができる。
【0056】
(処理室に搬送体があるとき)
例えば、処理室に搬送体Gがあるときは、ピック71の前進先に“障害物が存在する可能性がある”と考えることができる。このため、本例では、図6の下段の波形に示すように、ピック71を、共通搬送室から処理室内の搬送体Gの受け渡し位置までの全区間、最高速度Vmaxを使って前進させない。本例では、“障害物が存在するであろう”と推定される区間(以下本明細書では確認区間iiという)においては、ピック71の前進速度を、最高速度未満に制限された制限速度Vlmtを上限とし、速度を制限して前進させる。
【0057】
より詳しくは図6に示すように、初期の位置、例えば、共通搬送室内から確認区間iiに至るまでの区間iは、ピック71を、速度制限をせずに前進させる。区間iでは速度制限はしないので、ピック71は最高速度Vmaxとなる場合もある。しかし、区間iが短い場合には、図6に示す一例のように、最高速度Vmaxに達する前に減速に入ることもある。
【0058】
ピック71は、確認区間iiに入るまでに、制限速度Vlmtまで減速される。確認区間iiは、ピック71を、速度制限をして制限速度Vlmtで前進させる。もし、ピック71の先端が障害物に接触したら、制限速度Vlmtから速度をゼロに落とし、ピック71を停止させる。このとき、ピック71が停止するまでの時間は、速度が制限されているため、速度が制限されていない場合に比較して短くて済む。
【0059】
ピック71が確認区間iiを通過した後、速度制限を解除し、ピック71を、処理室内の搬送体Gの受け渡たし位置まで前進させる(区間iii)。区間iiiでは、速度制限はしないので、図6に示す一例のようにピック71は最高速度Vmaxとなる場合もある。しかし、区間iiiが短い場合には、最高速度Vmaxに達する前に減速に入ることもある。
【0060】
図7に、区間i、確認区間ii、区間iiiの具体的な一例を示す。
【0061】
図7に示すように、処理室3aの受け渡し位置に搬送体Gがあり、さらに、搬送体Gは受け渡し位置においてリフトアップされており、ピック71の進出を待っている状態が示されている。
【0062】
区間iは、共通搬送室4にピック71が退避している状態から確認区間iiの先端までの区間である。
確認区間iiは、受け渡し位置に配置された搬送体Gの共通搬送室4側の先端前後の区間である。確認区間iiを、搬送体Gの共通搬送室4側の先端前後とする理由は、障害物として、割れた搬送体Gを想定しているためである。
区間iiiは、確認区間iiの末端から受け渡し位置までの区間である。
これらの区間i、確認区間ii、区間iiiそれぞれの長さは、搬送体Gのサイズや、共通搬送室4や処理室3aのサイズに応じて適宜変わることはもちろんである。
【0063】
ただし、確認区間iiについては、“障害物が存在するであろう”と推定される場所、例えば、受け渡し位置に配置された搬送体Gの共通搬送室4側の先端から90〜100mm先の位置から、同先端から処理室3aの内側に向かって50〜60mmの位置まで、長さにして約140〜160mmとすることが良いであろう。障害物の一例は、割れた搬送体Gである。
【0064】
このような第2の実施形態によれば、“障害物が存在するであろう”と推定される確認区間iiにおいては、ピック71の前進速度を、最高速度未満に制限された制限速度Vlmtを上限とする。このため、ピック71の先端が障害物に接触したとしても、制限速度Vlmtに制限されているために、障害物の、更なる破壊を抑制できる、という利点を得ることができる。
【0065】
さらに、センサ8が“障害物に接触した”と判断した場合においても、ピック71の前進速度が制限速度Vlmtに制限されているために、ピック71を短時間で停止させることができる。
【0066】
また、処理室に搬送体Gがないときと、あるときとで、スライドユニット73によるピックユニット72のスライド制御を変え、処理室に搬送体Gがないときには、ピック71の速度を制限しない。このように、処理室に搬送体Gがないときには、ピック71の速度を制限しないことで、搬送装置7による搬送体Gの搬入時間の増大を抑制することができ、処理システム1による処理時間の増大を、最小限度に抑えることができる、という利点を得ることができる。
【0067】
以上、この発明を実施形態に従って説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されることは無く、種々変形可能である。
【0068】
例えば、上記第2の実施形態においては、共通搬送室4から処理室3aへ、ピック71を進出させる例を示したが、共通搬送室4からロードロック室2へ、ピック71を進出させる場合にも適用できる。
【0069】
また、図1などにおいては、センサ8の上に、搬送体Gが重なっている状態を示しているが、これは、センサ8が、ピック71の先端が、割れた搬送体Gに接触したことを検出するためのものであるからである。このため、ピック71に搬送体Gが支持されている状態では、搬送体Gがセンサ8の上に重なってもよいし、もちろん、重ならないようにしても良い。
【0070】
その他、この発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【符号の説明】
【0071】
G…搬送体、8…センサ、9…検出器、71…ピック(支持部材)、81…第1の導電性リング、82…第2の導電性リング、89…障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送体を搬送する搬送装置であって、
前進後退が可能な、前記搬送体を支持する支持部材と、
前記支持部材が前進したとき、前記支持部材の先端が障害物に接触したことを検出するセンサと、を備え、
前記センサが、
前記支持部材の先端に接地された状態で設けられた、可撓性を有する第1の導電性リングと、
前記第1の導電性リングの内側に、前記第1の導電性リングから離隔して設けられた、第2の導電性リングと、
前記第1の導電性リングが前記障害物に接触し変形して前記第2の導電性リングに接触したとき、前記第1の導電性リングと前記第2の導電性リングとが短絡したことを検出する検出器と、
を含むことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記第2の導電性リングが可撓性を有することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第2の導電性リングの上部に、外側に向かって延びる電気的接触端子が設けられており、
前記支持部材の先端に取り付けられる、凸部を有したベースと、
前記第1の導電性リングと前記第2の導電性リングとを互いに絶縁させた状態、かつ、離間させた状態で保持する絶縁性保持部材と、
一端が前記検出器に接続された検出端子と、さらに、有し、
前記第1の導電性リング及び前記第2の導電性リングが、
前記第1の導電性リングの側面の一部を前記ベースの凸部と前記絶縁性保持部材とで挟み、前記電気的接触端子を前記絶縁性保持部材の上面に載せるとともに、前記第2の導電性リングの側面を絶縁性保持部材に当接させた状態で、前記支持部材の先端に取り付けられ、
前記検出端子の他端が、前記電気的接触端子に当接されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記支持部材が接地され、前記ベースが導電性であることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記検出器が、前記検出端子の一端の電位の変化を検出し、前記第1の導電性リングと前記第2の導電性リングとが短絡したことを検出することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
共通搬送室と、
前記共通搬送室に接続された、被処理体に処理を施す処理室と、
前記共通搬送室に配置された、前記被処理体を搬送する搬送装置と、を備えた処理システムであって、
前記搬送装置に、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の搬送装置が用いられていることを特徴とする処理システム。
【請求項7】
前記処理室及び前記搬送室が、内部を減圧状態とすることが可能な気密容器として構成されていることを特徴とする請求項6に記載の処理システム。
【請求項8】
前記処理室が、前記被処理体を熱的処理することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の処理システム。
【請求項9】
前進後退が可能な、搬送体を支持する支持部材と、前記支持部材が前進したとき、前記支持部材の先端が障害物に接触したことを検出するセンサと、を備えた、前記搬送体を搬送する搬送装置の制御方法であって、
前記支持部材を、所定の位置に向けて第1の速度で前進させるステップと、
前記所定の位置の手前に設定された、前記障害物の有無を確認する確認区間において、前記第1の速度よりも遅い第2の速度で、前記支持部材を、前記所定の位置に向けて前進させるステップと、
前記確認区間を通過した後、前記第2の速度よりも速い第3の速度で、前記支持部材を、前記所定の位置に向けて前進させるステップと、
を含むことを特徴とする搬送装置の制御方法。
【請求項10】
前記センサに、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のセンサが用いられていることを特徴とする請求項9に記載の搬送装置の制御方法。
【請求項11】
コンピュータ上で動作し、搬送体を搬送する搬送装置を制御する制御プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、実行時に、請求項9に記載の制御方法が行われるように、前記搬送装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−64795(P2012−64795A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208228(P2010−208228)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】