説明

搬送装置、塗布システム、及び検査システム

【課題】搬送に必要な推力の低減を図り、且つ被搬送物のたわみを抑制することが可能な搬送装置、これを備える塗布システム及び検査システムを提供する。
【解決手段】搬送装置12は、被搬送物28の搬送方向Xに延びる主面16aを有するベース16と、搬送方向Xに延びるガイド部材18と、ガイド部材18にガイドされて搬送方向Xに移動可能な移動部材20と、移動部材20に固定され主面16aから間隙を於いて被搬送物28を保持する保持部材24と、ベース16上の搬送方向Xにおける一部領域において、搬送方向Xに搬送される被搬送物28に対し気体の吐出及び吸引を行うための気体吐出吸引機構26と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板などの被搬送物を搬送する搬送装置、これを備える塗布システム及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板上にフォトレジストなどの塗布液を塗布するための塗布システムとして、例えば特許文献1に開示されているものがある。この塗布システムは、塗布液を塗布するための塗布装置と、塗布装置に対してガラス基板を移動させるための搬送装置と、を備えている。搬送装置は、ガラス基板を全面で吸着して保持するベースを有し、ガラス基板を吸着した状態でベースごと移動させることで、塗布装置に対してガラス基板を移動させる。
【0003】
なお、ガラス基板はベース上に固定したままで、ガラス基板に対して塗布装置を移動させるようにした塗布システムも開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−243476号公報
【特許文献2】特開2002−200450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、液晶用のガラス基板のサイズが大型化しているため、上記した特許文献1に開示の搬送装置では、ベースの重量が重くなり過ぎ、搬送に必要な推力が増大して、ガラス基板の搬送が困難になるという問題があった。また、ガラス基板に対して塗布装置を移動させるタイプの特許文献2に開示の塗布システムでは、またガラス基板の大型化によりガントリが大きくなって重量の増大を招くため、十分な移動精度が取れなくなるという問題があった。
【0006】
そこで、ガラス基板の一部を保持してガラス基板自体を搬送することを考えたが、この場合、均一な塗布を図るためには、ガラス基板のたわみを抑制する必要がある。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みて為されたものであり、搬送に必要な推力の低減を図り、且つ被搬送物のたわみを抑制することが可能な搬送装置、これを備える塗布システム及び検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る搬送装置は、(1)被搬送物の搬送方向に延びる主面を有するベースと、(2)搬送方向に延びるガイド部材と、(3)ガイド部材にガイドされて搬送方向に移動可能な移動部材と、(4)移動部材に固定され主面から間隙を於いて被搬送物を保持する保持部材と、(5)ベース上の搬送方向における一部領域において、搬送方向に搬送される被搬送物に対し気体の吐出及び吸引を行うための気体吐出吸引機構と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この装置によれば、保持部材により被搬送物を保持し、ガイド部材により移動部材を搬送方向にガイドして移動させることで、被搬送物が搬送方向に搬送される。このとき、ベース上の搬送方向における一部領域において、気体吐出吸引機構により被搬送物に対して気体の吐出及び吸引を行うことができる。このように、この搬送装置では、被搬送物を移動させるときにベースごと移動させる必要がないため、搬送に必要な推力の低減を図ることができる。また、搬送経路上の一部領域において被搬送物に対し気体の吐出及び吸引を行うことができるため、当該一部領域において被搬送物のたわみを抑制することができる。
【0010】
本発明に係る搬送装置では、保持部材は、被搬送物を吸着して保持可能であることを特徴としてもよい。このようにすれば、被搬送物を確実に保持することができる。
【0011】
本発明に係る搬送装置では、ガイド部材は一軸で構成されていることを特徴としてもよい。このようにすれば、被搬送物は一方の側縁の側から保持される。
【0012】
本発明に係る搬送装置では、保持部材は、ベースの主面の法線方向についてバネ性を有することを特徴としてもよい。このようにすれば、ベースの主面の法線方向について被搬送物の高さ位置を微調整することができ、被搬送物が気体吐出吸引機構に当たる等の不具合が生じるおそれを低減することができる。
【0013】
本発明に係る搬送装置では、保持部材は、ベースの主面の法線方向及び搬送方向の双方に直交する方向についてバネ性を有することを特徴としてもよい。このようにすれば、ガイド部材を二軸で構成するような場合において、ガイド部材の歪みにより両ガイド部材の間隔が変動しても、保持部材に保持されている被搬送物が破損したり、保持部材からの保持が外れたり、ズレたりするおそれを低減することができる。
【0014】
本発明に係る搬送装置は、ベースの主面と平行な面内における、被搬送物の回転を是正する回転是正手段を備えることを特徴としてもよい。このようにすれば、所定作業時に被搬送物の回転を嫌う系において、作業を好適に行うことが可能となる。
【0015】
本発明に係る搬送装置は、ベース上の一部領域以外の領域において、ベース側から被搬送物に向けて気体を吐出する第1の気体吐出機構を備えることを特徴としてもよい。このようにすれば、保持部材にかかる重量負荷が軽減され、被搬送物の搬送が容易になる。
【0016】
本発明に係る搬送装置では、被搬送物はガラス基板であることを特徴としてもよい。
【0017】
本発明に係る塗布システムは、上記した搬送装置と、被搬送物に対して塗布液を塗布するための塗布装置と、を備え、吐出吸引機構は、一部領域において、対向する一対の主面を有する被搬送物の一方の主面側に気体を吐出及び吸引し、塗布装置は、一部領域において、被搬送物の他方の主面側に塗布液を塗布する、ことを特徴とする。
【0018】
この塗布システムでは、ベース上の一部領域において被搬送物に対し気体の吐出及び吸引を行うことで、当該一部領域において被搬送物のたわみを抑制し、平面度を上げた状態で塗布液を塗布することができるため、塗布液を均一に塗布することが可能となる。
【0019】
本発明に係る塗布システムは、一部領域において、塗布装置よりも前段で、他方の主面側に被搬送物に対して気体を吐出する第2の気体吐出機構を備えることを特徴としてもよい。このようにすれば、一部領域における被搬送物の平面度をより高めることができ、塗布液をより均一に塗布することが可能となる。
【0020】
本発明に係る塗布方法は、対向する一対の主面を有する被搬送物を搬送しながら塗布液を塗布する方法である。この方法は、被搬送物に対して一方の主面側に気体を吐出及び吸引しながら、他方の主面側に塗布液を塗布することを特徴とする。
【0021】
この塗布方法では、被搬送物のたわみを抑制し、平面度を上げた状態で塗布液を塗布することができるため、塗布液を均一に塗布することが可能となる。
【0022】
本発明に係る検査システムは、上記した搬送装置と、被搬送物の検査を行うための検査装置と、を備え、気体吐出吸引機構は、一部領域において、対向する一対の主面を有する被搬送物の一方の主面側に気体を吐出及び吸引し、検査装置は、一部領域において、被搬送物の他方の主面側から被搬送物を検査することを特徴とする。
【0023】
この検査システムでは、ベース上の一部領域において被搬送物に対し気体の吐出及び吸引を行うことで、当該一部領域において被搬送物のたわみを抑制し、平面度を上げた状態で検査することができるため、検査精度の向上を図ることが可能となる。
【0024】
本発明に係る搬送装置において、保持部材は、搬送方向に沿って延びる基体部と、基体部からベースの主面の法線方向及び搬送方向の双方に直交する方向に延設された複数の支持梁部と、複数の支持梁部の先端にそれぞれ設けられており、被搬送物を吸着して保持するための吸着部と、を含む保持機構を有し、複数の支持梁部の各々は、少なくともベースの主面の法線方向についてバネ性を有すると共に、自身の軸周りにねじれ性を有することを特徴としてもよい。このようにすれば、ベース上の一部領域において気体の吐出及び吸引を行うことにより、被搬送物の高さが搬送方向に異なったものになる場合であっても、被搬送物を毀損することなく、確実に保持することができる。
【0025】
本発明に係る搬送装置は、移動部材及び保持部材をそれぞれ二個備え、移動部材の各々は、独立に速度制御可能に設けられており、保持部材の各々による被搬送物の保持位置が、ベースの主面の法線方向及び搬送方向の双方に直交する方向についてずれていることを特徴としてもよい。このようにすれば、二個の移動部材の移動速度を制御することで、ベースの主面と平行な面内における被搬送物の回転が是正され、所定作業時に被搬送物の回転を嫌う系において、作業を好適に行うことが可能となる。
【0026】
本発明に係る保持機構は、板状体を保持する保持機構であって、所定方向に沿って延びる基体部と、基体部から所定方向と交差する方向に延設された複数の支持梁部と、複数の支持梁部の先端にそれぞれ設けられており、板状体を吸着して保持するための吸着部と、を備え、複数の支持梁部の各々は、少なくとも所定方向及び支持梁部の延設方向の双方に直交する方向についてバネ性を有すると共に、自身の軸周りにねじれ性を有することを特徴とする。この保持機構によれば、板状体の高さが上記所定方向に異なったものになる場合であっても、板状体を毀損することなく、確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、搬送に必要な推力の低減を図り、且つ被搬送物のたわみを抑制することが可能な搬送装置、これを備える塗布システム及び検査システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る塗布システムの構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る塗布システムの構成を示す平面図である(塗布装置及びガントリは一点鎖線で示している)。
【図3】搬送装置の構成を示す部分拡大部である。
【図4】空気吐出吸引機構が有する複数の孔について、吸引用の孔(白丸で示す)と吐出用の孔(黒丸で示す)とが隣り合っている状態を説明する図である。
【図5】塗布装置の前段に設けられた空気吐出機構によりガラス基板の上面に空気を吐出する様子を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る塗布システムの構成を示す平面図である(塗布装置及びガントリは一点鎖線で示している)。
【図7】ガイドレールの歪みによりガラス基板がベースの上面と平行な面内で回転する様子を説明するための図である。
【図8】ガイドレールの歪みによるガラス基板の回転を是正する様子を説明するための図である。
【図9】第3実施形態に係る検査システムの構成を示す斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る検査システムの構成を示す平面図である。
【図11】検査装置の前段に設けられた空気吐出機構によりガラス基板の上面に空気を吐出する様子を示す図である。
【図12】検査装置に一体化された空気吐出機構を示す図である。
【図13】搬送装置の変形例を説明するための図である。
【図14】搬送装置の他の変形例を説明するための図である。
【図15】図14の搬送装置が備える保持機構を示す斜視図である。
【図16】空気吐出吸引機構によりガラス基板が変形する様子を説明する図である。
【図17】搬送装置の他の変形例を説明するための図である。
【図18】図17の搬送装置が備える保持部材の構成を示す斜視図である。
【図19】ガラス基板の保持位置とスライダの速度との関係を説明する図である。
【図20】図17の搬送装置においてガイドレールの歪みによるガラス基板の回転を是正する様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る塗布システムの構成を示す斜視図である。また図2は、本実施形態に係る塗布システムの構成を示す平面図である。なお、図2においては、塗布装置14及びガントリ40は一点鎖線で示している。
【0030】
図1及び図2に示すように、塗布システム10は、搬送装置12と、塗布装置14と、を備えている。搬送装置12は、ベース16と、1対のガイドレール(ガイド部材)18と、4つのスライダ(移動部材)20と、駆動機構22と、4つの保持部材24と、空気吐出吸引機構(気体吐出吸引機構)26と、を備えている。
【0031】
ベース16は、外形が直方体状をなし、床面などの水平面上に載置される。このベース16の上面(主面)16aは、所定方向に延びている。このベース16の上面16aの延びる方向が、ガラス基板(被搬送物)28の搬送方向となる。ベース16の幅は、ガラス基板28の幅よりも大きめに設けられている。なお、以下の説明においては、図1に示すように、ベース16の上面16aの延びる方向を搬送方向X、ベース16の上面16aの法線方向を鉛直方向Z、搬送方向X及び鉛直方向Zの双方に直交する方向を幅方向Yという。
【0032】
1対のガイドレール18は、搬送方向Xに延びるように、ベース16の上面16aに設置されている。これら1対のガイドレール18は、ガラス基板28の幅よりも若干大きめの間隔を開けて、互いに平行に配置されている。
【0033】
スライダ20は、1対のガイドレール18それぞれに2個ずつ設けられている。各スライダ20は、ガイドレール18にガイドされて、搬送方向Xに移動可能に設けられている。
【0034】
駆動機構22は、図3に示すように、固定子30と可動子32とを含むリニアモータ機構から構成されている。固定子30は、一対のガイドレール18それぞれの外側において、ガイドレール18に沿うようにベース16上に設けられている。可動子32は、図1から図3に示すように、固定子30と作用して駆動される駆動体33と、駆動体33の両端から搬送方向Xに延設され駆動体33とスライダ20とを連結する連結部材37と、を含んでいる。連結部材37は、スライダ20の外側面にそれぞれに固定されている。これにより、各ガイドレール18に設けられた2つのスライダ20は、一定距離を保ったまま同期して移動する。
【0035】
保持部材24は、4つのスライダ20の内側面にそれぞれ固定されている。保持部材24は、図3に示すように、吸着部34とバネ板部36とを含んでいる。この保持部材24は、吸着部34でのエア引きにより、ガラス基板28の側縁部を吸着して確実に保持する。これら保持部材24により、ガラス基板28はベース16の上面16aから離間した状態で保持される。バネ板部36は、鉛直方向Zに沿って延びる基部36aと、幅方向Yに沿って延びる屈曲部36bとを含んでいる。吸着部34は、屈曲部36b上に固定されている。
【0036】
ここで、バネ板部36の屈曲部36bは、図3に示すように、鉛直方向Zにバネ性を有すると好ましい。このようにすれば、保持部材24は鉛直方向Zにバネ性を有することとなり、鉛直方向Zについてガラス基板28の高さ位置を微調整することができる。これにより、ガラス基板28が気体吐出吸引機構26に当たる等の不具合が生じるおそれを低減することができる。
【0037】
また、一方のガイドレール18上に設けられた2つのスライダ20に固定された保持部材24について、バネ板部36の基部36aは、図3に示すように、幅方向Yにバネ性を有すると好ましい。このようにすれば、保持部材24は幅方向Yにバネ性を有することとなる。その結果、ガイドレール18が歪んでいるとき、他方のガイドレール18側を基準として、ガラス基板28の幅方向Yのズレやベース16の上面16aと平行な面内におけるガラス基板28の回転を是正することが可能となる(回転是正手段)。
【0038】
空気吐出吸引機構26は、ベース16上であって後述する塗布装置14の下方の塗布領域(一部領域)に設けられている。この空気吐出吸引機構26は、図3に示すように、ガラス基板28の下面(一方の主面)28a側に空気(気体)を吐出及び吸引する。空気吐出吸引機構26は、空気を通す複数の孔26aを有しており、これら複数の孔26aは、搬送方向X及び幅方向Yに規則的に配列されている。空気吐出吸引機構26の幅方向Yの長さは、ガラス基板28の幅と略同一に設けられている。空気吐出吸引機構26の搬送方向Xの長さは、塗布装置14の前後に十分な長さを採ると好ましい。一例として、搬送方向Xの長さが2300mm、幅方向Yの長さが2000mm、厚みが0.6mmのガラス基板28を250mm/secで搬送するとき、空気吐出吸引機構26の搬送方向Xの長さは、少なくとも400mm〜500mm程度採ると好ましい。
【0039】
塗布装置14は、ガラス基板28の上面(他方の主面)28b側にフォトレジスト液などの塗布液を塗布する。塗布装置14のノズルの先端部38は、幅方向Yに延びている。この塗布装置14は、ベース16上に設置されたガントリ40によって、ベース16上に所定高さで支持されている。
【0040】
次に、上記した塗布システム10を用いた塗布液の塗布方法について説明する。
【0041】
まず、ベース16上における塗布装置14よりも前段で、4つの保持部材24により、ガラス基板28を幅方向Yの側縁部にて吸着して保持する。このとき、ガラス基板28はベース16の上面16aから離間した状態で保持されている。より詳細には、ガラス基板28は、塗布領域において空気吐出吸引機構26の上面から10μm程度離間し、塗布装置14のノズルの先端部38から100μm〜200μm程度離間するように保持されている。
【0042】
次に、駆動機構22によりスライダ20を移動させることで、ガラス基板28を搬送方向Xに所定速度で搬送する。そして、ガラス基板28が塗布領域に来たとき、空気吐出吸引機構26によりガラス基板28の下面28aに空気の吐出及び吸引を行う。これにより、ガラス基板28は空気吐出吸引機構26上で浮いた状態で、塗布領域においてたわみが矯正されて、ガラス基板28の平面度が向上される。なお、本実施形態では、ガラス基板28のたわみの矯正は、最大位置で10μm〜100μm程度のものを考えている。このとき、空気吐出吸引機構26に設けられた複数の孔26aについて、図4に示すように、吸引用の孔(白丸で示す)と吐出用の孔(黒丸で示す)とが隣り合うようにして、ガラス基板28に対して空気の吸引と吐出とを均一に行うようにすると好ましい。このようにすれば、ガラス基板28の平面度がより一層向上される。
【0043】
そして、上記の通り、塗布領域においてガラス基板28の下面28aに空気の吐出及び吸引を行うと同時に、塗布装置14によりガラス基板28の上面28bに塗布液を塗布する。ここで、ガラス基板28の平面度は高められているため、ガラス基板28の上面28bに塗布液を均一に塗布することができる。このとき、図5に示すように、空気吐出吸引機構26の上方であって塗布装置14の前段に隣接するように空気吐出機構(第2の気体吐出機構)42を設け、塗布領域における塗布の前段でガラス基板28の上面28bに空気を吐出すると好ましい。このようにすれば、ガラス基板28の平面度がより一層高められ、より一層均一な塗布を行うことが可能となる。
【0044】
次に、塗布領域を通過してベース16の後段に搬送された塗布済みのガラス基板28に対し、保持部材24による吸着を解除する。そして、ガラス基板28を系外に搬出すると共に、次のガラス基板28に対する塗布のために、保持部材24をベース16の前段に戻す。
【0045】
以上詳述したように、本実施形態では、ガラス基板28を移動させるときにベースごと移動させる必要がないため、搬送に必要な推力の低減を図ることができる。またベースごと移動させるときと比べて、振動やガラス基板28に伝わる熱を低減することができる。また、空気吐出吸引機構26によりガラス基板28に対し空気の吐出及び吸引を行うことができるため、塗布領域においてガラス基板28のたわみを抑制することができる。その結果、塗布領域においてガラス基板28の平面度を上げた状態で塗布液を塗布することが可能となり、塗布液の均一な塗布が可能となる。
【0046】
また本実施形態では、保持部材24はガラス基板28を吸着して保持可能であるため、ガラス基板28を確実に保持することができる。またガラス基板28を下面28aから保持するものであるため、ガラス基板28を挟持する場合のようにガラスの割れや傷を生じるおそれが低く、またガラス基板28の上面28aの全体に塗布液の塗布を行うことができる。
【0047】
また本実施形態では、保持部材24は鉛直方向Zにバネ性を有するため、鉛直方向Zについてガラス基板28の高さ位置を微調整することができる。これにより、ガラス基板28が気体吐出吸引機構26に当たる等の不具合が生じるおそれを低減することができる。
【0048】
また本実施形態では、一方のガイドレール18上に設けられた2つのスライダ20に固定された保持部材24は幅方向Yにバネ性を有するため、ガイドレール18が歪んでいるとき、他方のガイドレール18側を基準として、ガラス基板28の幅方向Yのズレやベース16の上面16aと平行な面内におけるガラス基板28の回転を是正することが可能となる。
【0049】
また本実施形態では、塗布装置14よりも前段で、ガラス基板28の上面28b側に空気を吐出する空気吐出機構42を備えることで、塗布領域におけるガラス基板28の平面度をより高めることができ、塗布液をより均一に塗布することが可能となる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、上記した第1実施形態と同一の要素には同一の符号を附し、重複する説明を省略する。
【0050】
図6は、第2実施形態に係る塗布システム60の構成を示す平面図である。なお、図6においては、塗布装置14及びガントリ40は一点鎖線で示している。本実施形態に係る塗布システム60の構成は、搬送装置62の構成が異なる以外は、第1実施形態に係る塗布システム10と同様である。
【0051】
本実施形態において搬送装置62は、ガイドレール18が搬送方向Xに沿って1本のみ設けられ、一軸で構成されている。これにより、ガイドレール18を2本並設して二軸で構成する場合と比べて、駆動機構22としてのリニアモータ機構が片側だけで済み、コストの低減が図られる。
【0052】
この場合、ガラス基板28は保持部材24により一方の側縁部にて保持されるが、片持ち支持であるため保持部材24にかかる重量負荷が増大し、たわみによりベース16に接触して傷が付いたり、ガラス基板28が割れたりするおそれがある。そこで、ベース16上の塗布領域以外の領域において、ベース16側からガラス基板28の下面28aに向けて空気(気体)を吐出する気体吐出機構(第1の気体吐出機構)66が設けられている。気体吐出機構66は、複数の静圧軸受66aを含み、これら複数の静圧軸受66aが搬送方向X及び幅方向Yに規則的に配列されている。これら静圧軸受66aは、石、セラミック、あるいは金属の多孔質体からなる。
【0053】
なお、本実施形態において保持部材24は、鉛直方向Zにバネ性を有すると好ましい。このようにすれば、鉛直方向Zについてガラス基板28の高さ位置を微調整することができる。これにより、ガラス基板28が気体吐出吸引機構26に当たる等の不具合が生じるおそれを低減することができる。
【0054】
また本実施形態において搬送装置62は、ベース16の上面16aと平行な面内におけるガラス基板28の回転を強制的に是正する回転是正手段を備えていると好ましい。すなわち、ガイドレール18は必ずしも真直であるとは限らず、幅方向Yに歪んでいることもある。ガイドレール18が歪んでいると、図7において実線で示すように、ベース16の上面16aと平行な面内でガラス基板28が回転してしまう。ガラス基板28の回転は、塗布液を均一に塗布する上で好ましくない。
【0055】
そこで保持部材24は、図8に示すように、鉛直方向Zに沿う軸を中心として回転可能なヒンジ機構68を有し、更に一方の保持部材24には幅方向Yに数十μm程度の微小変位が可能なピエゾ素子70が取り付けられている。これにより、図8において一点鎖線で示すように、そのままではガラス基板28が回転してしまうのを、ピエゾ素子70により実線で示す位置に是正することができる。なお、ピエゾ素子70の代わりにボイスコイルや超音波モータ、リニアモータ、エアアクチュエータなどを使用してもよい。
【0056】
次に、上記した塗布システム60を用いた塗布液の塗布方法について説明する。
【0057】
まず、塗布装置14による塗布を行うことなく、ガラス基板28を搬送方向Xに搬送して、ガイドレール18の歪みにより、ベース16の上面16aと平行な面内におけるガラス基板28の回転の有無を検出する。そして、ガラス基板28の回転が認められるときは、回転を是正する方向にピエゾ素子70を駆動するように、予め制御プログラムを設定しておく。これにより、以降の塗布作業におけるガラス基板28の回転が防止される。
【0058】
次に、空気吐出機構66の複数の静圧軸受66aからガラス基板28の下面28aに向けて、空気の吐出を開始する。静圧軸受66aは、空気の吐出部とその吐出した空気を吸引する吸引部とを有していてもよい。このときの空気の吸引は、吐出した空気が細かいゴミ等を含んでいる場合があるため、このゴミ等がガラス基板に付着して塗布に悪影響を及ぼすことを防ぐためのものである。次に、ベース16上における塗布装置14よりも前段で、2つの保持部材24により、ガラス基板28を幅方向Yの側縁部にて吸着して片持ち保持する。このとき、ガラス基板28はベース16の上面16aから離間した状態で保持されている。より詳細には、ガラス基板28は、塗布領域において空気吐出吸引機構26の上面から10μm程度離間し、塗布装置14のノズルの先端部38から100μm〜200μm程度離間するように保持されている。
【0059】
次に、駆動機構22によりスライダ20を移動させることで、ガラス基板28を搬送方向Xに所定速度で搬送する。そして、ガラス基板28が塗布領域に来たとき、空気吐出吸引機構26によりガラス基板28の下面28aに空気の吐出及び吸引を行う。これにより、ガラス基板28は空気吐出吸引機構26上で浮いた状態で、塗布領域においてたわみが矯正されて、ガラス基板28の平面度が向上される。
【0060】
そして、上記の通り、塗布領域においてガラス基板28の下面28aに空気の吐出及び吸引を行うと同時に、塗布装置14によりガラス基板28の上面28bに塗布液を塗布する。ここで、ガラス基板28の平面度は高められているため、ガラス基板28の上面28bに塗布液を均一に塗布することができる。このとき、図5で示したように、空気吐出吸引機構26の上方であって塗布装置14の前段に隣接するように空気吐出機構(第2の気体吐出機構)42を設け、塗布領域における塗布の前段でガラス基板28の上面28bに空気を吐出すると好ましい。このようにすれば、ガラス基板28の平面度がより一層高められ、より一層均一な塗布を行うことが可能となる。
【0061】
次に、塗布領域を通過してベース16の後段に搬送された塗布済みのガラス基板28に対し、保持部材24による吸着を解除する。そして、ガラス基板28を系外に搬出すると共に、次のガラス基板28に対する塗布のために、保持部材24をベース16の前段に戻す。
【0062】
以上、本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に本実施形態では、ガイドレール18が一軸で構成されているため、二軸で構成する場合と比べて、駆動機構22としてのリニアモータ機構が片側だけで済み、コストの低減を図ることができる。このとき、ベース16上の塗布領域以外の領域において、ベース16側からガラス基板28の下面28aに向けて空気を吐出する空気吐出機構66を備えているため、吐出される空気によりガラス基板28を持ち上げることで保持部材24にかかる重量負荷を軽減することができ、ガラス基板28の搬送を容易にすることができる。
【0063】
また、ベース16の上面16aと平行な面内におけるガラス基板28の回転を強制的に是正することができるため、ガラス基板28の回転が防止され、塗布液のより一層均一な塗布が可能となる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、上記した第1及び第2実施形態と同一の要素には同一の符号を附し、重複する説明を省略する。
【0064】
図9は、第3実施形態に係る検査システム80の構成を示す斜視図である。また図10は、この検査システム80の構成を示す平面図である。なお、図10においては、ガントリ40は一点鎖線で示している。
【0065】
本実施形態に係る検査システム80は、図9及び図10に示すように、搬送装置12と、検査装置82と、を備えている。搬送装置12は、第1実施形態に係る塗布システム10の搬送装置と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
検査装置82は、上面28b側からガラス基板28を検査する。検査装置82としては、CCDカメラなどの撮像装置や、レーザ光を照射してその反射光を受光するレーザ計測装置が挙げられる。撮像装置によれば、例えばガラス基板28上に形成された回路パターン等の光学像が得られ、これにより不良品等の検査が可能となる。またレーザ計測装置によれば、レーザ光の反射率を調べることで、不良品等の検査が可能となる。なお検査装置82としては、これらCCDカメラやレーザ計測装置に限定されず、ガラス基板28の状態を非接触で検査可能な公知の装置が全て含まれる。
【0067】
この検査装置82は、ベース16上に設置されたガントリ40に、スライド部材84を介して取り付けられている。スライド部材84は、ガントリ40に沿って幅方向Yに移動可能である。従って、スライド部材84に取り付けられた検査装置82は幅方向Yに移動可能となり、ガラス基板28に対する幅方向Yのスキャンが可能となる。また、検査装置82自身も、スライド部材84に対して鉛直方向Zに移動可能であり、これにより検査装置82をベース16上の所定高さ位置で支持することができる。従って、撮像装置においては焦点の合った光学像が得られ、レーザ計測器においてはデータの精度が向上されることになり、検査精度の向上が図られる。
【0068】
次に、上記した検査システム80を用いたガラス基板28の検査方法について説明する。
【0069】
まず、ベース16上における検査装置82よりも前段で、4つの保持部材24により、ガラス基板28を幅方向Yの側縁部にて吸着して保持する。このとき、ガラス基板28はベース16の上面16aから離間した状態で保持されている。より詳細には、ガラス基板28は、検査領域(一部領域)において空気吐出吸引機構26の上面から10μm程度離間している。
【0070】
次に、駆動機構22によりスライダ20を移動させることで、ガラス基板28を搬送方向Xに所定速度で搬送する。そして、ガラス基板28が検査領域に来たとき、空気吐出吸引機構26によりガラス基板28の下面28aに空気の吐出及び吸引を行う。これにより、ガラス基板28は空気吐出吸引機構26上で浮いた状態で、検査領域においてたわみが矯正されて、ガラス基板28の平面度が向上される。なお、本実施形態では、ガラス基板28のたわみの矯正は、最大位置で10μm〜100μm程度のものを考えている。このとき、空気吐出吸引機構26に設けられた複数の孔26aについて、図4に示すように、吸引用の孔(白丸で示す)と吐出用の孔(黒丸で示す)とが隣り合うようにして、ガラス基板28に対して空気の吸引と吐出とを均一に行うようにすると好ましい。このようにすれば、ガラス基板28の平面度がより一層向上される。
【0071】
次に、上記の通り、検査領域においてガラス基板28の下面28aに空気の吐出及び吸引を行うと同時に、搬送方向Xへのガラス基板28の搬送を停止する。そして、スライド部材84を幅方向Yにスライドさせて、ガラス基板28上をスキャンする。このとき、必要に応じて検査装置82の鉛直方向の位置を微調整すると好ましい。スキャンが終了すると、搬送方向Xにガラス基板28を所定距離だけ移動させ、再び搬送を停止した後、2回目のスキャンを行う。このようにして複数回のスキャンを行うことで、検査装置82によりガラス基板28を上面28bから検査する。ここで、ガラス基板28の平面度は高められているため、ガラス基板28の検査精度の向上が図られる。このとき、図11に示すように、空気吐出吸引機構26の上方であって検査装置82の前段に空気吐出機構42を設け、検査領域における検査の前段でガラス基板28の上面28bに空気を吐出すると好ましい。このようにすれば、ガラス基板28の平面度がより一層高められ、より一層精度の高い検査を行うことが可能となる。なお、空気吐出機構42は、空気吐出吸引機構26の上方であって検査装置82の後段に設けてもよく、また前後段の双方に設けてもよい。更に、図12に示すように、撮像装置ではレンズの周りに、レーザ計測装置ではレーザ光の入出射部の周りに、環状の空気吐出機構42を設けて、検査装置82と一体化を図ってもよい。
【0072】
次に、検査領域を通過してベース16の後段に搬送された検査済みのガラス基板28に対し、保持部材24による吸着を解除する。そして、ガラス基板28を系外に搬出すると共に、次のガラス基板28に対する検査のために、保持部材24をベース16の前段に戻す。
【0073】
以上詳述したように、本実施形態では、ガラス基板28を移動させるときにベースごと移動させる必要がないため、搬送に必要な推力の低減を図ることができる。またベースごと移動させるときと比べて、振動やガラス基板28に伝わる熱を低減することができる。また、空気吐出吸引機構26によりガラス基板28に対し空気の吐出及び吸引を行うことができるため、検査領域においてガラス基板28のたわみを抑制することができる。その結果、検査領域においてガラス基板28の平面度を上げた状態で検査することが可能となり、検査精度の向上を図ることが可能となる。
【0074】
その他、本実施形態では、第1実施形態に係る塗布システム10と同一の構成によって、同様の作用効果を奏し得る。
【0075】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、第1実施形態の搬送装置12は、第2実施形態における搬送装置62と同様に、塗布領域以外の領域に空気吐出機構66を備えていてもよい。
【0076】
また第1実施形態の搬送装置12でも、第2実施形態における搬送装置62と同様に、ベース16の上面16aと平行な面内におけるガラス基板28の回転を強制的に是正するようにしてもよい。
【0077】
また、駆動機構22の固定子30は床面F上に設置するなどして、ベース16から切り離して設けると好ましい。このようにすれば、駆動機構22を駆動させることにより生じる反力を系外に逃がすことが可能となる。
【0078】
また、搬送方向Xに沿う方向のベース16の角部によりガイド部材を構成し、スライダ20はこの角部によりガイドされるように構成してもよい。このようにすれば、ガイドレール18を省略することで部品点数の減少を図ることが可能となる。
【0079】
また図13に示すように、第2実施形態に係る塗布システム60の搬送装置62において、ベース16を基台部70とエア機構部72とから構成し、エア機構部72を研削加工等して、空気吐出吸引機構26と空気吐出機構66とを一体に構成すると好ましい。このようにすれば、空気吐出吸引機構26の高さと空気吐出機構66の高さとを合わせる作業が省略でき、製造の効率化が図られる。
【0080】
また上記した実施形態では、スライダ20は一つのガイドレール18に2個設けられているが、スライダ20をガラス基板28の搬送方向Xの長さと同程度の長さを有する1個の部材で構成してもよい。このようにすれば、吸着部34の長さを長くすることができ、吸着力を向上することができる。また、スライダ20の数を減らして部品点数の減少を図ることができる。
【0081】
また、第1実施形態に係る塗布システム10及び第3実施形態に係る検査システム80が備える2軸の搬送装置12において、ガラス基板28の保持を次のように行ってもよい。保持部材24は、図14及び図15に示すような保持機構90を有している。この保持機構90は、搬送方向Xに沿って延びる基体部92と、基体部92から幅方向Yに延設された複数の支持梁部94と、複数の支持梁部94の先端にそれぞれ設けられており、ガラス基板28を吸着して保持するための吸着部96と、を含んでいる。基体部92の長さは、ガラス基板28の搬送方向Xの長さと同程度である。複数の支持梁部94の各々は、少なくとも鉛直方向Zについてバネ性を有すると共に、自身の軸α周りにねじれ性を有している。なお、複数の支持梁部94の各々は、搬送方向X、幅方向Y、及び鉛直方向Zのバネ性を有し、且つそれらの軸周りのねじれ性を有していて、6自由度を有していると最適である。支持梁部94の先端には、吸着部96を確実に搭載するために幅広の搭載部98が設けられている。
【0082】
この保持機構90が、ガイドレール18にスライド可能に設けられた2個のスライダ20の内側面に連結されている。より詳細には、基準となる一方のガイドレール18の側では、保持機構90は基板部92が2個のスライダ20に直接連結されており、他方のガイドレール18の側では、弾性部材99を介して保持機構90の基板部92が2個のスライダ20に連結されている。これにより、他方のガイドレールの側ではY方向にバネ性を有することになる。その結果、他方のガイドレール18が歪んでいるとき、一方のガイドレール18側を基準として、ガラス基板28の幅方向Yのズレやベース16の上面16aと平行な面内におけるガラス基板28の回転を是正することが可能となる。この弾性部材99としては、幅方向Yにバネ性を有するバネ板片等の弾性体が挙げられる。
【0083】
このような支持梁部94は、例えばSUS等の材料から形成することができる。典型的な寸法としては、長さT1が100mm程度であり、幅T2が10mm程度であり、厚みT3が1.5mm程度である。これにより、支持梁部94は軸αの周りに±2度程度のねじれ性を有することができる。
【0084】
ここで、図16に示すように、ベース16上の塗布領域或いは検査領域において、空気吐出吸引機構26によりガラス基板28に対して空気の吐出及び吸引を行うことにより、ガラス基板28の高さが搬送方向Xに異なったものになる。この高さの相違dは、50μm〜200μm程度になることがある。このとき、ガラス基板28の変形に追随して上手く保持できなければ、割れやひびが生じる等してガラス基板28を毀損するおそれがある。これに対し、上記した保持機構90によりガラス基板28を保持するようにすれば、複数の支持梁部94は少なくとも鉛直方向Zについてバネ性を有すると共に、自身の軸α周りにねじれ性を有しているため、ガラス基板28の変形に追随して確実に保持することができ、ガラス基板28が毀損するおそれを低減することができる。
【0085】
また、第2実施形態に係る塗布システム60が備える1軸の搬送装置62において、ガラス基板28の保持を次のように行ってもよい。保持部材24は、図17及び図18に示すように、バネ板部102と吸着部104とを有している。これら保持部材24は、バネ板部102を介して2個のスライダ20それぞれに連結されている。バネ板部102は、少なくとも鉛直方向Zにバネ性を有している。バネ板部102の先端に搭載された吸着部104は、エア引きによりガラス基板28を吸着して保持するための部材であり、図18に示すように、鉛直方向Zに沿う軸βの周りに回転可能に設けられている。
【0086】
上記した保持部材24を用いたガラス基板28の保持では、各々の保持部材24で吸着部104の幅方向Yの位置をずらしている。これにより、各々の保持部材24でガラス基板28を吸着して保持する保持位置が、幅方向Yについて異なっている。このズレ量Δyは、後述するようにガラス基板28の1度程度の回転を是正可能な量に設定されていると好ましい。例えば、搬送方向Xの長さが2000mmのガラス基板28を搬送するときには、ズレ量Δyは1mm以下であると好ましい。
【0087】
また上記した保持部材24を用いたガラス基板28の保持では、スライダ20の各々は独立に速度制御可能に設けられている。すなわち、上記した第2実施形態では、各々のスライダ20は一つの駆動体33により一定距離を保ったまま同期して移動可能に設けられていたが、ここでは各々のスライダ20はそれぞれ駆動体33により独立して速度制御可能に設けられている。
【0088】
これにより、図19に示すように、2個のスライダ20が同一速度で移動されているとき、ガラス基板28の保持位置がA点及びB点であったのが、前方のスライダ20の速度v2を後方のスライダ20の速度v1よりもΔvだけ大きくすることで、ガラス基板28の保持位置がA点及びC点となる。また、前方のスライダ20の速度v2を後方のスライダ20の速度v1よりもΔvだけ小さくすることで、ガラス基板28の保持位置がA点及びD点となる。このように、前方のスライダ20の速度v2と後方のスライダ20の速度v1とを制御することで、前方の保持部材24によるガラス基板28の保持位置Bの軌跡が、A点を中心とした半径lの円弧(図19において破線で示す)を描くことになる。その結果、図20に示すように、ガイドレール18が歪んでいるとき、前方のスライダ20の速度v2と後方のスライダ20の速度v1とを制御することで、ベース16の上面16aと平行な面内におけるガラス基板28の回転を是正することが可能となる。
【0089】
また上記した第3実施形態では、スライド部材84により検査装置82を幅方向Yにスライドさせて、ガラス基板28をスキャンする構成としたが、検査装置82を幅方向Yにアレイ状に並べた検査装置アレイを利用して検査システムを構成してもよい。このようにすれば、ガラス基板28を幅方向Yにスキャンする必要がなくなり、検査効率の向上が図られる。
【0090】
また上記した第1及び第2実施形態では、ガラス基板28上へのフォトレジストの塗布について説明したが、カラーフィルターを積層形成するときのインクの塗布などにも適用することができる。
【0091】
また上記した実施形態では、被搬送物としてガラス基板28の搬送について説明したが、被搬送物はフィルムや半導体基板などのたわみを生じ易い他の部材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る搬送装置は、例えばプラズマディスプレイパネル(PDP)を製造するPDP製造装置や、半導体基板の欠陥等の検査を行う半導体検査装置など、所定作業時に被搬送物のたわみを嫌うような他のシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10…塗布システム、12,62…搬送装置、14…塗布装置、16…ベース、18…ガイドレール、20…スライダ、24…保持部材、26…空気吐出吸引機構、28…ガラス基板、34…吸着部、36…バネ板部、42…空気吐出機構、66…空気吐出機構、80…検査システム、82…検査装置、90…保持機構、92…基体部、94…支持梁部、96…吸着部、X…搬送方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物の搬送方向に延びる主面を有するベースと、
前記搬送方向に延びるガイド部材と、
前記ガイド部材にガイドされて前記搬送方向に移動可能な移動部材と、
前記移動部材に固定され前記主面から間隙を於いて前記被搬送物を保持する保持部材と

前記ベース上の前記搬送方向における一部領域において、該搬送方向に搬送される前記被搬送物に対し気体の吐出及び吸引を行うための気体吐出吸引機構と、
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記被搬送物を吸着して保持可能であることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は一軸で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記保持部材は、前記ベースの前記主面の法線方向についてバネ性を有することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記ベースの前記主面の法線方向及び前記搬送方向の双方に直交する方向についてバネ性を有することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記ベースの前記主面と平行な面内における、前記被搬送物の回転を是正する回転是正手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記ベース上の前記一部領域以外の領域において、前記ベース側から前記被搬送物に向けて気体を吐出する第1の気体吐出機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記被搬送物はガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項9】
請求項1に記載の搬送装置と、
前記被搬送物に対して塗布液を塗布するための塗布装置と、を備え、
前記気体吐出吸引機構は、前記一部領域において、対向する一対の主面を有する前記被搬送物の一方の主面側に前記気体を吐出及び吸引し、
前記塗布装置は、前記一部領域において、前記被搬送物の他方の主面側に前記塗布液を塗布する、
ことを特徴とする塗布システム。
【請求項10】
前記一部領域において、前記塗布装置よりも前段で、前記他方の主面側に前記被搬送物に対して気体を吐出する第2の気体吐出機構を備えることを特徴とする請求項9に記載の塗布システム。
【請求項11】
対向する一対の主面を有する被搬送物を搬送しながら塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記被搬送物に対して一方の主面側に気体を吐出及び吸引しながら、他方の主面側に前記塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法。
【請求項12】
請求項1に記載の搬送装置と、
前記被搬送物の検査を行うための検査装置と、を備え、
前記気体吐出吸引機構は、前記一部領域において、対向する一対の主面を有する前記被搬送物の一方の主面側に前記気体を吐出及び吸引し、
前記検査装置は、前記一部領域において、前記被搬送物の他方の主面側から該被搬送物を検査する、
ことを特徴とする検査システム。
【請求項13】
前記保持部材は、
前記搬送方向に沿って延びる基体部と、
前記基体部から前記ベースの前記主面の法線方向及び前記搬送方向の双方に直交する方向に延設された複数の支持梁部と、
前記複数の支持梁部の先端にそれぞれ設けられており、前記被搬送物を吸着して保持するための吸着部と、を含む保持機構を有し、
前記複数の支持梁部の各々は、少なくとも前記ベースの前記主面の法線方向についてバネ性を有すると共に、自身の軸周りのねじれ性を有することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項14】
前記移動部材及び前記保持部材をそれぞれ二個備え、
前記移動部材の各々は、独立に速度制御可能に設けられており、
前記保持部材の各々による前記被搬送物の保持位置が、前記ベースの前記主面の法線方向及び前記搬送方向の双方に直交する方向についてずれていることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項15】
板状体を保持する保持機構であって、
所定方向に沿って延びる基体部と、
前記基体部から前記所定方向と交差する方向に延設された複数の支持梁部と、
前記複数の支持梁部の先端にそれぞれ設けられており、前記板状体を吸着して保持するための吸着部と、を備え、
前記複数の支持梁部の各々は、少なくとも前記所定方向及び該支持梁部の延設方向の双方に直交する方向についてバネ性を有すると共に、自身の軸周りのねじれ性を有することを特徴とする保持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−214106(P2009−214106A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120296(P2009−120296)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願2003−421506(P2003−421506)の分割
【原出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】